説明

背負式噴霧機

【課題】 ノズルを安定して保持することが出来、使用に制約のないノズルホルダを提供する。
【解決手段】 背負式噴霧機10は、背負い可能な背負架台に一体化される液体タンク12と、液体タンク12内に収容される液体を放出するノズル32と、ノズル32を下側から水平に保持可能な凹部40a,40bが形成され、液体タンク12に固定されるホルダ38a,38bとを有する。ノズル32をホルダ38a,38bに装着すると、ノズル32は凹部40a,40bにより水平に保持されるため、安定して保持される。また、蓋18にホルダ38a,38bが形成されたときのような使用の制約がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農薬散布等に使用される背負式噴霧機に関する。
【背景技術】
【0002】
背負式噴霧機は、一般に、作業者が背負い可能な背負架台に液体タンク、液体タンク内の液体を圧送するポンプ及びこれを駆動する原動機が搭載されてその本体が形成される。また、背負式噴霧機にはポンプにより圧送される液体を放出するノズルが用意される。ノズルは可撓性のホースを介して背負式噴霧機本体に接続されるため、背負式噴霧機の搬送又は保管時の便、あるいは作業中にノズルを一時的に置く必要から、背負式噴霧機本体にはノズルを保持するホルダが設けられることが多い。
【0003】
特許文献1には、背負架台と一体成形される背負式噴霧機用の液体タンクにおいて、その前面に形成されたノズルホルダが開示される。より詳述すると、特許文献1の液体タンクでは、その正面視右よりの箇所において、縦方向に延びる溝が液体タンクと一体で形成され、さらにこの溝内において溝の左右両側から内向きに突出する突起が液体タンクと一体で形成されている。これら溝と突起によりノズルホルダは構成される。ノズルは溝へ縦置きで装着され、突起により溝からの脱落が阻止されてホルダに装着された状態となる。
【0004】
また、特許文献2には、背負式噴霧機において、液体タンクの液体投入口にねじ留めされる蓋に形成されたノズルホルダが開示される。特許文献2のノズルホルダはノズルを水平に保持している。
【特許文献1】意匠登録第1167891号公報
【特許文献2】意匠登録第1167963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のノズルホルダは、ノズルを縦置きで装着するため安定性が
悪く、ノズル及びホースの自重若しくはホースの弾力でノズルがホルダから外れることがある。
【0006】
特許文献2のノズルホルダは、蓋の締め込み具合により装着するノズルの向きが変わってしまうため使い勝手が悪い。また、液体タンクへの薬液投入時には蓋が外されているため、このときノズルをホルダに装着しておくことができない。
【0007】
この発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、使用に制約のなくノズルを安定して保持することが出来るホルダを有する背負式噴霧機の提供を主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明の背負式噴霧機(10)は、背負い可能な背負架台(14,16)と、前記背負架台(14,16)に一体化される液体タンク(12)と、前記液体タンク(12)内に収容される液体を放出するノズル(32)と、前記ノズル(32)を下側から水平に保持可能な凹部(40a,40b)が形成され前記背負架台(14,16)又は前記液体タンク(12)に固定されるホルダ(38a,38b)とを有していることを特徴とする。
【0009】
背負架台(14,16)と液体タンク(12)とは、一体成形であっても別体で成形されたものを固定し一体化したものであってもよい。この構成では、ノズル(32)をホルダ(38a,38b)に装着すると、ノズル(32)は凹部(40a,40b)により水平に保持されるため、自重などによってノズル(32)がホルダ(38a,38b)から外れることはなくノズル(32)は安定的に保持される。さらに、ノズル(32)の装着される向きが変わったり、液体タンク(12)への液体投入時にノズル(32)の装着ができないといった使用の制約もない。
【0010】
また、この発明の背負式噴霧機(10)では、ホルダ(38a,38b)は、背負架台(14,16)及び前記液体タンク(12)とは別体で形成され、背負いバンド取付部材(36)の保持を行ないながら背負架台(14,16)又は前記液体タンク(12)に固定されることが有効である。
【0011】
ホルダ(38a,38b)を背負架台(14,16)及び前記液体タンク(12)と別体で形成することにより、ホルダ(38a,38b)製作上の自由度は高まる。しかも、ホルダ(38a,38b)に、本来より前記液体タンク(12)と別体部品で形成されることの多い背負いバンド取付部材(36)の機能を兼用させることにより部品点数の増大を防止し背負式噴霧機(10)を低コスト化できる。
【0012】
さらに、この発明の背負式噴霧機(10)では、背負いバンド取付部材(36)は、両端部が同軸上に形成され、ホルダ(38a,38b)は第一のホルダ(38a)及び第二のホルダ(38b)から成り、第一のホルダ(38a)及び第二のホルダ(38b)にはそれぞれ、凹部(40a,40b)と、水平方向に延び第一のホルダ(38a)と第二のホルダ(38b)とではそれぞれ逆向きの側面に開口している第一の穴(66)とが形成され、第一のホルダ(38a)及び第二のホルダ(38b)は、背負いバンド取付部材(36)の両端部を第一のホルダ(38a)に形成される第一の穴(66)及び第二のホルダ(38b)に形成される第一の穴(66)にそれぞれ挿入させ、これら各第一の穴(66)からの背負いバンド取付部材(36)の抜けが阻止された状態で背負架台(14,16)又は前記液体タンク(12)に固定されることが好ましい。
【0013】
この構成では、背負いバンド取付部材(36)の保持が簡単な構造で行なえ、背負式噴霧機(10)をさらに低コスト化できる。
【0014】
さらに、この発明の背負式噴霧機(10)では、背負架台(14,16)及び液体タンク(12)は合成樹脂で成形され、第一のホルダ(38a)及び第二のホルダ(38b)の背負架台(14,16)又は液体タンク(12)への固定は、第一のホルダ(38a)及び第二のホルダ(38b)を背負架台(14,16)又は液体タンク(12)へインサートした状態で背負架台(14,16)又は液体タンク(12)を成形することにより行なわれるのが好ましい。
【0015】
こうしたインサート成形により第一のホルダ(38a)及び第二のホルダ(38b)の背負架台(14,16)又は液体タンク(12)への組み付け作業を簡略化できる。
【0016】
さらに、この発明の背負式噴霧機(10)では、第一のホルダ(38a)及び第二のホルダ(38b)に形成される各第一の穴(66)はそれぞれその底部を画定する壁(67)を備え、これら各壁(67)が背負いバンド取付部材(36)の軸方向の動きを規制することにより、各第一の穴(66)からの背負いバンド取付部材(36)の抜けが阻止されるようにすることができる。
【0017】
さらに、この発明の背負式噴霧機(10)では、背負いバンド取付部材(36)は直線状部材とされ、第一のホルダ(38a)及び第二のホルダ(38b)にはそれぞれ、第一の穴(66)と略同軸上であって壁(67)を挟んで反対側の位置に第二の穴(68)が形成されることが好ましい。
【0018】
背負式噴霧機(10)に寿命が来て廃棄する場合、その構成部品はリサイクルに供するために分別回収できることが好ましい。この構成では、第一のホルダ(38a)及び第二のホルダ(38b)の一方に形成される第二の穴(68)に適当な治具を差込み、それを外側から叩く。すると、第一のホルダ(38a)及び第二のホルダ(38b)の他方に形成される壁(67)は破壊され、直線状の背負いバンド取付部材(36)は第一のホルダ(38a)及び第二のホルダ(38b)の他方に形成される第二の穴(68)より脱落する。こうして、背負いバンド取付部材(36)は第一のホルダ(38a)及び第二のホルダ(38b)と分別回収される。
【0019】
なお、上記における括弧内の符号は、図面における対応する符号を便宣的に示したものであり、この発明は図面上の記載に限定されるものではない。これは「特許請求の範囲」についても同様である。
【発明の効果】
【0020】
上述したように、この発明によれば、ノズルを安定して保持出来ると同時に使用の制約がないノズルホルダを備える背負式噴霧機の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は背負式噴霧機10の正面図であって、ホルダ20にノズル32を装着した状態を描いてある。また、図2及び図3は背負式噴霧機の後方斜視図であり、図2はホルダ38a,38bにノズル32を装着した状態を描いてあり、図3はノズル32を装着しない状態を描いてある。
【0022】
本実施の形態に係る背負式噴霧機10は、農薬等の液体を収容する液体タンク12と、この液体タンク12内の液体を吸引してノズル32に圧送するポンプ(図示せず)と、ポンプを駆動するための原動機ある内燃エンジン22とを備えている。これらは背負架台に配設されて噴霧機本体を形成しており、使用者はこの噴霧機本体を背負って作業を行う。
【0023】
液体タンク12は、合成樹脂製でありブロー成形により背負架台と一体で成形される。液体タンク12を形成する合成樹脂は半透明であり、内部の液体の量を外部から視認することができる。液体タンク12の頂部には、液体タンク12の内部に液体を投入するための投入口が形成されている。投入口は液体タンク12の頂部から突設された略円筒体であり、その外周面にはねじ部が形成されている。このねじ部に蓋18が螺合される。
【0024】
背負架台は起立部14及び台座部16を有している。台座部16は内燃エンジン22を防振材を介し支持している。内燃エンジン22には、液体を圧送するポンプが内燃エンジン22の背面側の位置において固定されている。
【0025】
起立部14の側面にはケース26が固定され、ケース26には、内燃エンジン22の出力を調節するスロットルレバー30と、背引きグリップ28が装着される。背引きグリップ28は、内燃エンジン22のスタータ24と始動ロープにより連結されており、使用者が背負式噴霧機10を背負った状態でこの背引きグリップ28を引くことにより内燃エンジン22を始動することができるようになっている。スタータ24は背引きグリップ28の引力を低減するため、ばね蓄力式のものが用いられる。
【0026】
ノズル32は、グリップ70、ランス72、及び噴口74を有している。グリップ70は、内部に送液路を有し、ホース80を介しポンプの吐出口に接続される。ランス72は、円筒型のパイプであり、グリップ70と同様内部に送液路を有し、基端部をグリップ70に接続される。噴口74は、ランス72の先端部に接続され、ポンプから、ホース80、グリップ70、及びランス72を通して送出される液体を噴射する。グリップ70にはレバーが設けられ、このレバーは、グリップ70内の送液路に配設されたバルブの開閉を制御し、グリップ70からランス72及び噴口74への液体の送出を制御する。
【0027】
液体タンク12の正面側には、図1において右よりの位置にホルダ20が形成される。
ホルダ20は、前記液体タンク12と一体に形成される縦方向に延びる溝形状をしている。ノズル32はランス72をホルダ20の溝へ収めることによりホルダ20へ縦置きで装着される。さらに、ホルダ20の溝内には複数の突起が形成されており、これらの突起はホルダ20へノズル32が装着された際、ランス72の溝内への保持を行なう。このホルダ20は、前途の特許文献1に記載されたノズルホルダと同じ構造である。
【0028】
液体タンク12及び起立部14の背面側には背当て44が取り付けられている。背当て44は、ほぼ左右対象の形状をしており、中央に平板部45を、平板部の左右両脇には平板部より肉厚のクッション部47を備えている。クッション部47は、使用者が背負式噴霧機10を背負った際、使用者の背中に当接する。また、背当て44の平板部45には通孔46が形成される。使用者が背負式噴霧機10を背負った状態では、使用者の背中と平板部45との間に空間が生じているが、通孔46はこの空間の外部への通気性を促進し、使用者の背中のむれを抑制する。
【0029】
液体タンク12の背面側上部には、液体タンク12の他の表面に対しわずかに窪んだ凹平面部34が形成される。この凹平面部34には、背負式噴霧機10の背面側からみて左右対称位置にホルダ38a及びホルダ38bがそれぞれ固定して設けられる。ホルダ38a及びホルダ38bの上部にはそれぞれ上方へ開口する凹部40a及び凹部40bが形成される。この凹部40a及び凹部40bへ、ノズル32はランス72を装着することができる。
【0030】
ホルダ38a及びホルダ38bには、背負バンド取付部材である背環36が支持固定される。また、起立部14の背面側の左右側部には、背負バンド取付孔42がそれぞれ形成される。左右の背負バンド(図示しない)は、上端部を背環36に下端部を背負バンド取付孔42にそれぞれ接続し、背負式噴霧機10に取り付けられる。背負式噴霧機10は、こうして背負可能な状態とされる。
【0031】
図4は背負式噴霧機10の背環36周辺部を示す背面図である。液体タンク12の凹平面部34において、ホルダ38a及びホルダ38bは背負式噴霧機10の背面側からみて左側及び右側にそれぞれ設けられる。ホルダ38a及びホルダ38bは、液体タンク12の成形前に予め合成樹脂で成形され、後述のように液体タンク12の成形時に液体タンク12へインサートされる。背環36は、金属製で、直線状の形状をしており、当然その両端部も同一直線上に位置している。そして、後述のように、両端部をホルダ38a及びホルダ38bに支持され液体タンク12に固定される。
【0032】
図5(a)〜(d)は、左側に設けられるホルダ38aの平面図、左側面図、正面図、及び図5(b)で指示されるA−A断面図である。ホルダ38aは、正面視で楕円形状をしており、平面視(図5(a))でその背面側から順にみて、埋没部50及び露出部52に分けられる。埋没部50はさらに、拡径部54と縮径部56とに分けられる。拡径部54は、埋没部50において背面側端部に位置し、正面視の楕円形状とほぼ等しい輪郭の周面を備える。縮径部56は、埋没部50において拡径部54よりも正面側であって露出部52に近接する位置に形成され、正面視の楕円形状に対し縮径された楕円状の周面を備える。露出部52は、その周面が正面視に現れる楕円形状となっており、また、露出部52は、側面視では、上半部より下半部が肉厚形状となっている。露出部52の上部には凹部40aが形成される。凹部40aは、互いに平行で対峙しあう正面側起立面60及び背面側起立面62と、正面側起立面60及び背面側起立面62の下端部を連ねかつこれらに垂直な水平面58とにより画成される。正面側起立面60及び背面側起立面62は、露出部52の背面側すなわち埋没部50側に形成される端面と平行とされる。また、正面側起立面60と背面側起立面62の距離は、ランス72の直径とほぼ等しくされる。これら正面側起立面60、背面側起立面62、及び水平面58により、凹部40aは、露出部52において上方及び左右両側方が開放された形状となっている。正面側起立面60には、凹部40a内において背面側起立面62側へ内向きに突出する突起64が形成される。突起64の最も内側へ突出した箇所と背面側起立面62との距離はランス72の直径よりもわずかに小さくされる。
【0033】
露出部52には、凹部40aの下の位置に第一の穴66が形成される。第一の穴66は、正面側起立面60、背面側起立面62及び水平面58と平行で水平方向に延びる円筒状の穴であり、ホルダ38aの露出部52において右側側方へ開口している。また、露出部52には、第一の穴66と同軸上に延びる第二の穴68が形成される。第二の穴68は、第一の穴66よりも少しだけ径の大きい円筒状の穴であり、ホルダ38aの露出部52において左側側方へ開口している。さらに、露出部52には、第一の穴66及び第二の穴68の境界を形成する壁67が形成される。すなわち、壁67は第一の穴66及び第二の穴68の底部を画定し、第一の穴66及び第二の穴68は壁67を挟んで反対側に位置することとなる。壁67はホルダ38aの正面視において中央より左寄りに位置し、よって、第一の穴66の長さ(深さ)は第二の穴68の長さよりも大とされる。
【0034】
以上、左側に設けられるホルダ38aを中心に説明したが、右側に設けられるホルダ38bは、ホルダ38aとは、背負式噴霧機10の背面視における上下中心線を軸に左右対称形状である。念のため、ホルダ38bのホルダ38aに対する相違点を述べると、ホルダ38bでは、第一の穴66及び第二の穴68はそれぞれ左側側方及び右側側方へ開口し、壁67はホルダ38bの正面視において中央より右寄りに位置する。
【0035】
次に、ホルダ38a及びホルダ38bの液体タンク12(及び背負架台の起立部14及び台座部16)への固定方法について説明する。液体タンク12を合成樹脂で成形する際、ホルダ38a及びホルダ38bは予め成形された部品として用意される。そして、ホルダ38a及びホルダ38bは、ホルダ38aに形成される第一の穴66及びホルダ38bに形成される第一の穴66に背環36の両端部をそれぞれホルダ38a及びホルダ38bの各壁67に当接する付近まで挿入し、ホルダ38a及びホルダ38bの正面側を背負式噴霧機10の背面側に向け、背環36が水平方向を向き、ホルダ38a及びホルダ38bの各露出部52の埋没部50側に形成される端面が凹平面部34と一致した状態で、ホルダ38a及びホルダ38bの各埋没部50が液体タンク12の材内部に埋没されるように、液体タンク12へインサートされる。この状態で、液体タンク12の成形が完了すると、液体タンク12を形成する合成樹脂が、ホルダ38a及びホルダ38bの各縮径部56の周りにいきわたり、ホルダ38a及びホルダ38bは液体タンク12へ固定された状態となる。同時に背環36もホルダ38a及びホルダ38bの各第一の穴66に支持され、各壁67に軸方向への動きを規制されて、液体タンク12と一体化される。こうして、ホルダ38a、ホルダ38b、及び背環36は、液体タンク12に一体化され、組み付け作業が簡素化される。また、ホルダ38a及びホルダ38bの各水平面58は同一平面状に置かれ、同様にホルダ38a及びホルダ38bの各正面側起立面60及び各背面側起立面62もそれぞれ同一平面状に置かれた状態とされる。
【0036】
背負式噴霧機10の格納時、運搬時、薬剤散布の予備作業時、若しくは作業の一時中断時等において、ノズル32はホルダに装着される。ノズル32のホルダ38a及びホルダ38bへの装着は、ノズル32のランス72をホルダ38a及びホルダ38bの各凹部40a,40bの位置に合わせ、ランス72をホルダ38a及びホルダ38bのそれぞれについて、突起64に押し付け、正面側起立面60及び背面側起立面62の上側を押し広げて各凹部40a,40bへ完全に挿入し、装着した状態へとする。
【0037】
この状態では、ノズル32は、突起64により上方への抜けを阻止され、各水平面58によりランス72を下側から水平に支持される状態となり、安定した保持が行なわれることとなる。すなわち、ノズル32をホルダ22に装着した場合のような縦置きの装着の場合では、ノズル32及びホース80の自重、若しくはホース80の弾性力によりノスル32がホルダ20から脱落するようなことが起こるが、ノズル32のホルダ38a及びホルダ38bへの装着の場合は、このようなことが非常に起こりにくい。また、ホルダ38a及びホルダ38bは、蓋18のような一時的に離脱させるような部材に設けているわけではないので、液体タンク12への水や薬剤の投入時に使用が制限されるということもない。
【0038】
ホルダ38a及びホルダ38bの利用法は、ノズル32の装着機能に限られず、背負式噴霧機10の運搬時、運搬用の車両に背負式噴霧機10を紐でくくりつける際のフックとして用いることも可能である。
【0039】
また、ホルダ38a及びホルダ38bは、液体タンク12とは別体の合成樹脂で予め成形されるため、ホルダ20のような液体タンク12と一体成形されるものに較べ、機能上若しくは寸法管理上有利なものの製作が可能である。しかも、背環36の保持も同時に行なう。背環36は本実施の形態のように金属製とするのが有効であるが、これを合成樹脂性の液体タンク12に保持された状態とするためには、液体タンク12とは別体の保持部材を用いることが実質上不可欠である。このため、背負式噴霧機10には本来、こうした保持部材が用いられているが、この保持部材に機能を兼用させる形でホルダ38a及びホルダ38bが製作されるため、いたずらな部品点数の増加は防がれている。
【0040】
このような背負式噴霧機10に寿命が訪れ、廃棄処分とする場合、リサイクル可能な部品を分別回収できることが好ましい。分別回収を行なう場合、合成樹脂製の液体タンク12及びホルダ38a,38bと金属製の背環36とを分離する必要が生じてくる。この場合、背環36をホルダ38a及びホルダ38bから分離するには、まず、適当な棒状の工具又は治具を用意し、これをホルダ38a又はホルダ38bの第二の穴68に挿入する。この状態で前記の工具又は治具を外側からハンマー等で強打すると、ホルダ38a又はホルダ38bのうち前記の工具又は治具が挿入されていない方の壁67は、背環36を通じその衝撃力を受け破壊される。こうして、背環36は、破壊された壁67に接する第二の穴68より脱落し、ホルダ38a及びホルダ38bから分離回収される。なお、壁67は、こうした作業により破壊可能な厚さでなおかつ背負式噴霧機10を通常に使用しているときには破壊されない厚さでなければならない。
【0041】
以上、この発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、この発明が上記の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0042】
例えば、液体タンク12は、背負架台を形成する起立部14や台座部16と一体で成形される必要はなく、別体で成形された後、互いに固定されるものであってもよい。また、ホルダ38a又はホルダ38bは、背負架台に固定されてもよく、インサート以外の固定方法であってもよい。
【0043】
また、背環36は、両端部が同軸上に形成されれば必ずしも全体が直線上である必要はなく、例えば両端部のみが同軸上に配設された略三角形状のものであってもよい。さらに、背環36の両端部は外側ではなく内側へ突出するものであってもよい。
【0044】
さらに、背環36のホルダ38a及びホルダ38bからの抜けの阻止は、壁67によって行なわれる必要は必ずしもなく、前記の略三角形状の背環の場合、背環とホルダとの当接により抜けが阻止されるようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】背負式噴霧機の正面図。
【図2】背負式噴霧機の後方斜視図(ノズルを装着した状態)。
【図3】背負式噴霧機の後方斜視図(ノズルを装着しない状態)。
【図4】背負式噴霧機の背環周辺部を示す背面図。
【図5】ホルダの平面図、左側面図、正面図、及びA−A断面図。
【符号の説明】
【0046】
10…背負式噴霧機、12…液体タンク、14…起立部(背負架台)、16…台座部(背負架台)、32…ノズル、36…背環(背負いバンド取付部材)、38a…ホルダ(第一のホルダ)、38b…ホルダ(第二のホルダ)、40a…凹部、40b…凹部、66…第一の穴、67…壁、68…第二の穴。






【特許請求の範囲】
【請求項1】
背負い可能な背負架台(14,16)と、前記背負架台(14,16)に一体化される液体タンク(12)と、前記液体タンク(12)内に収容される液体を放出するノズル(32)と、前記ノズル(32)を下側から水平に保持可能な凹部(40a,40b)が形成され前記背負架台(14,16)又は前記液体タンク(12)に固定されるホルダ(38a,38b)とを有していることを特徴とする背負式噴霧機。
【請求項2】
前記ホルダ(38a,38b)は、前記背負架台(14,16)及び前記液体タンク(12)とは別体で形成され、背負いバンド取付部材(36)の保持を行ないながら前記背負架台(14,16)又は前記液体タンク(12)に固定されることを特徴とする請求項1記載の背負式噴霧機。
【請求項3】
前記背負いバンド取付部材(36)は、両端部が同軸上に形成され、
前記ホルダ(38a,38b)は第一のホルダ(38a)及び第二のホルダ(38b)から成り、
前記第一のホルダ(38a)及び前記第二のホルダ(38b)にはそれぞれ、前記凹部(40a,40b)と、水平方向に延び前記第一のホルダ(38a)と前記第二のホルダ(38b)とではそれぞれ逆向きの側面に開口している第一の穴(66)とが形成され、
前記第一のホルダ(38a)及び前記第二のホルダ(38b)は、前記背負いバンド取付部材(36)の両端部を前記第一のホルダ(38a)に形成される第一の穴(66)及び前記第二のホルダ(38b)に形成される第一の穴(66)にそれぞれ挿入させ、これら各第一の穴(66)からの前記背負いバンド取付部材(36)の抜けが阻止された状態で前記背負架台(14,16)又は前記液体タンク(12)に固定されることを特徴とする請求項2記載の背負式噴霧機。
【請求項4】
前記背負架台(14,16)及び前記液体タンク(12)は合成樹脂で成形され、前記第一のホルダ(38a)及び前記第二のホルダ(38b)の前記背負架台(14,16)又は前記液体タンク(12)への固定は、前記第一のホルダ(38a)及び前記第二のホルダ(38b)を前記背負架台(14,16)又は前記液体タンク(12)へインサートした状態で前記背負架台(14,16)又は前記液体タンク(12)を成形することにより行なわれることを特徴とする請求項3記載の背負式噴霧機。
【請求項5】
前記第一のホルダ(38a)及び前記第二のホルダ(38b)に形成される各第一の穴(66)はそれぞれその底部を画定する壁(67)を備え、これら各壁(67)が前記背負いバンド取付部材(36)の軸方向の動きを規制することにより、前記各第一の穴(66)からの前記背負いバンド取付部材(36)の抜けが阻止されていることを特徴とする請求項3又は4記載の背負式噴霧機。
【請求項6】
前記背負いバンド取付部材(36)は直線状部材とされ、前記第一のホルダ(38a)及び前記第二のホルダ(38b)にはそれぞれ、前記第一の穴(66)と略同軸上であって前記壁(67)を挟んで反対側の位置に第二の穴(68)が形成されることを特徴とする請求項5記載の背負式噴霧機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−14647(P2006−14647A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195168(P2004−195168)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】