説明

胞巣状横紋筋肉腫に使用するためのスタウロスポリン誘導体

本発明は、増殖性疾患、特にPAX3/FKHR転座およびPAX7/FKHR転座を含むPAX/FKHR転座と関連する疾患、より特定的には固形腫瘍疾患、例えば肉腫、最も特定的には胞巣状横紋筋肉腫の進行の遅延または処置のために、電離放射線と組み合わせて用いられた際に有効であるスタウロスポリン誘導体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増殖性疾患、特にPAX/FKHR転座と関連する疾患、特に肉腫、特に胞巣状横紋筋肉腫の進行の遅延または処置に使用する、有機化合物、特に医薬組成物に関する。
【発明の開示】
【0002】
我々は、特定のFLT−3阻害剤、特にスタウロスポリン誘導体が、PAX/FKHR転座と関連する疾患、特にPAX/FKHR発現と関連する疾患、最も特定的には小児肉腫胞巣状横紋筋肉腫(“aRMS”)の処置に用いられた時に有効であることが見出された。一つの態様において、aRMSは、染色体転座イベントt(2;13)によるキメラ融合タンパク質PAX3/FKHRを発現する。別の態様において、aRMSは、染色体転座イベントt(1;13)によるキメラ融合タンパク質PAX7/FKHRを発現する。Mendelian Inheritance in Man accno. #268220 を参照のこと。
【0003】
本発明によると、増殖性疾患の処置が必要な対象において、増殖性疾患、特にPAX/FKHR転座と関連する疾患、特に肉腫、より特定的に胞巣状横紋筋肉腫の進行を遅らせるまたは処置する方法であって、該処置が、該対象に、有効量の式:
【化1】

(ここで、化合物(II)は、化合物(I)の部分水素化誘導体である。)
【化2】

[式中、
およびRは、互いに独立して、非置換または置換アルキル、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、エーテル化またはエステル化ヒドロキシ、アミノ、一置換または二置換アミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、置換メルカプト、カルボキシ、エステル化カルボキシ、カルバモイル、N−一置換またはN,N−二置換カルバモイル、スルホ、置換スルホニル、アミノスルホニルまたはN−一置換またはN,N−二置換アミノスルホニルであり;
【0004】
nおよびmは、互いに独立して、0から4の数(0および4を含む)であり;
n'およびm'は、互いに独立して、0から4の数(0および4を含む)であり;
、R、RおよびR10は、互いに独立して、水素、−O、30個までの炭素原子を有するアシル、それぞれ29個までの炭素原子を有する脂肪族、炭素環または炭素環−脂肪族基、それぞれ20個までの炭素原子およびそれぞれ9個までのヘテロ原子を有するヘテロ環またはヘテロ環−脂肪族基、30個までの炭素原子を有するアシルであり、この場合、Rは存在しなくてもよく、
あるいは、Rが30個までの炭素原子を有するアシルならば、Rはアシルではなく;
が存在しないならばpは0であり、あるいはRおよびRが両方とも存在し、それぞれ上記の基の一つであるならばpは1であり;
【0005】
は、水素、それぞれ29個までの炭素原子を有する脂肪族、炭素環または炭素環−脂肪族基、またはそれぞれ20個までの炭素原子およびそれぞれ9個までのヘテロ原子を有するヘテロ環またはヘテロ環−脂肪族基、または30個までの炭素原子を有するアシルであり;
、RおよびRは、アシルまたは−(低級アルキル)−アシル、非置換または置換アルキル、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、エーテル化またはエステル化ヒドロキシ、アミノ、一置換または二置換アミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、置換メルカプト、カルボキシ、カルボニル、カルボニルジオキシ、エステル化カルボキシ、カルバモイル、N−一置換またはN,N−二置換カルバモイル、スルホ、置換スルホニル、アミノスルホニルまたはN−一置換またはN,N−二置換アミノスルホニルであり;
【0006】
Xは、2個の水素原子を表すか、1個の水素原子およびヒドロキシを表すか、Oを表すか、あるいは水素および低級アルコキシを表し;
Zは、水素または低級アルキルを表し;
波線によって示された2個の結合は環A中は存在せず、4個の水素原子によって置き換えられ、そして環B中の2本の波線はそれぞれ、各々と平行な結合と一体となって二重結合を表すか、
あるいは、波線によって示された2個の結合は環B中では存在せず、総計4個の水素原子によって置き換えられ、そして環A中の2本の波線はそれぞれ、各々と平行な結合と一体となって二重結合を表すか、
あるいは、環A中および環Bの両方で、4本の波線全てが存在せず、総計8個の水素原子によって置き換えられている。]
のスタウロスポリン誘導体、または少なくとも1個の塩形成基が存在するならばその塩
を投与することを含む方法を提供する。
【0007】
上記および下記で用いられる一般的な用語および定義は、好ましくは、該スタウロスポリン誘導体について、下記の意味を有する。
接頭辞“低級”は、関連する基が、好ましくは最大7個の炭素原子、特に4個以下の炭素原子を有することを示す。
【0008】
低級アルキルは、特にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、またはtert−ブチルであり、さらに、ペンチル、ヘキシル、またはヘプチルである。
【0009】
非置換または置換アルキルは、好ましくはC−C20アルキル、特に低級アルキル、典型的にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、またはtert−ブチルであり、これらは非置換であるか、または、特にハロゲン(例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素)、C−C14アリール(例えばフェニルまたはナフチル)、ヒドロキシ、エーテル化ヒドロキシ(例えば低級アルコキシ、フェニル−低級アルコキシまたはフェニルオキシ)、エステル化ヒドロキシ(例えば低級アルカノイルオキシまたはベンゾイルオキシ)、アミノ、一置換または二置換アミノ(例えば低級アルキルアミノ、低級アルカノイルアミノ、フェニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−(フェニル−低級アルキル)アミノ)、シアノ、メルカプト、置換メルカプト(例えば低級アルキルチオ)、カルボキシ、エステル化カルボキシ(例えば低級アルコキシカルボニル)、カルバモイル、N−一置換またはN,N−二置換カルバモイル(例えばN−低級アルキルカルバモイルまたはN,N−ジ−低級アルキルカルバモイル)、スルホ、置換スルホ(例えば低級アルカンスルホニルまたは低級アルコキシスルホニル)、アミノスルホニルまたはN−一置換またはN,N−二置換アミノスルホニル(例えばN−低級アルキルアミノスルホニルまたはN,N−ジ−低級アルキルアミノスルホニル)によって置換されている。
【0010】
ハロゲンは、好ましくはフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であり、特にフッ素または塩素である。
【0011】
エーテル化ヒドロキシは、特に低級アルコキシ、C−C14アリールオキシ、例えばフェニルオキシ、またはC−C14アリール−低級アルコキシ、例えばベンジルオキシである。
【0012】
エステル化ヒドロキシは、好ましくは低級アルカノイルオキシまたはC−C14アリールカルボニルオキシ、例えばベンゾイルオキシである。
【0013】
一置換または二置換アミノは、特に低級アルキル、C−C14アリール、C−C14アリール−低級アルキル、低級アルカノイル、またはC−C12アリールカルボニルによって一置換または二置換されているアミノである。
【0014】
置換メルカプトは、特に低級アルキルチオ、C−C14アリールチオ、C−C14アリール−低級アルキルチオ、低級アルカノイルチオ、またはC−C14アリール−低級アルカノイルチオである。
【0015】
エステル化カルボキシは、特に低級アルコキシカルボニル、C−C14アリール−低級アルコキシカルボニルまたはC−C14アリールオキシカルボニルである。
【0016】
N−一置換またはN,N−二置換カルバモイルは、特に低級アルキル、C−C14アリールまたはC−C14アリール−低級アルキルによってN−一置換またはN,N−二置換されているカルバモイルである。
【0017】
置換スルホニルは、特にC−C14アリールスルホニル(例えばトルエンスルホニル)、C−C14アリール−低級アルカンスルホニルまたは低級アルカンスルホニルである。
【0018】
N−一置換またはN,N−二置換アミノスルホニルは、特に低級アルキル、C−C14アリールまたはC−C14アリール−低級アルキルによってN−一置換またはN,N−二置換されているアミノスルホニルである。
【0019】
−C14アリールは、環系中6から14個の炭素原子を有するアリール基であり、例えばフェニル、ナフチル、フルオレニル、またはインデニルであり、これらは、非置換であるか、または、特にハロゲン(例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素)、フェニルまたはナフチル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、フェニル−低級アルコキシ、フェニルオキシ、低級アルカノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、低級アルカノイルアミノ、フェニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−(フェニル−低級アルキル)アミノ、シアノ、メルカプト、低級アルキルチオ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−低級アルキルカルバモイル、N,N−ジ−低級アルキルカルバモイル、スルホ、低級アルカンスルホニル、低級アルコキシスルホニル、アミノスルホニル、N−低級アルキルアミノスルホニルまたはN,N−ジ−低級アルキルアミノスルホニルによって置換されている。
【0020】
記号nおよびmは、それぞれ、好ましくは1、2であるか、または特に0である。一般的に、nおよびmがそれぞれ0(ゼロ)である式Iの化合物が特に望ましい。
【0021】
29個までの炭素原子を有する脂肪族炭化水素基R、R、RまたはR10は、非環式置換基によって置換されており、好ましくは最大18個、特に最大12個、かつ一般に最大7個の炭素原子を有しており、これらは、飽和であっても不飽和であってもよく、また特に非置換であるか、または非環式置換基によって置換されている直鎖もしくは分枝鎖低級アルキル、低級アルケニル、低級アルカジエニルまたは低級アルキニル基である。低級アルキルは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチルであり、さらに、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシルおよびn−ヘプチルであり;低級アルケニルは、例えば、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2−または3−メタリル、および2−または3−ブテニルであり;低級アルカジエニルは、例えば、1−ペンタ−2,4−ジエニルであり;低級アルキニルは、例えば、プロパルギルまたは2−ブチニルである。対応する不飽和基において、二重結合は、特に自由原子価に関するα位より高位に位置する。置換基は、特にRの置換基として下記に定義したアシル基であり、好ましくは遊離またはエステル化カルボキシ、例えばカルボキシまたは低級アルコキシカルボニル、シアノまたはジ−低級アルキルアミノである。
【0022】
それぞれ29個までの炭素原子を有する炭素環または炭素環−脂肪族基R、R、RまたはR10は、特に芳香環、脂環式環、脂環式環−脂肪族、または芳香環−脂肪族基であって、非置換型で存在するか、またはRの置換基として下記に記載した基によって置換されている。芳香環基(アリール基)RまたはRは、最も特定的にはフェニルであり、さらにナフチル(例えば1−または2−ナフチル)、ビフェニル(例えば特に4−ビフェニル)であり、さらにアントリル、フルオレニルおよびアズレニル、ならびに1個以上の飽和環を有するその芳香環アナログであって、該アナログは、非置換型で存在するか、またはRの置換基として下記に記載された基によって置換されているかの何れかである。望ましい芳香環−脂肪族基は、アリール−低級アルキル−またはアリール−低級アルケニル基であり、例えば末端にフェニル基を有するフェニル−低級アルキルまたはフェニル−低級アルケニル、例えばベンジル、フェネチル、1−、2−、または3−フェニルプロピル、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル)、トリチル、およびシンナミルであり、さらに1−または2−ナフチルメチルである。非環式基、例えば低級アルキルを有するアリール基のうち、種々の位置にメチル基を有するo−、m−およびp−トリルまたはキシリル基が特記される。
【0023】
29個までの炭素原子を有する脂環式環基R、R、RまたはR10は、特に置換されている、または好ましくは非置換の、単環式、二環式または多環式シクロアルキル−、シクロアルケニル−、またはシクロアルカジエニル基である。好ましくは、最大14個の、特に12個の環炭素原子を有する基であり、3員から8員の、好ましくは5員から7員の、最も特定的には6員環であって、かつ1個以上の、例えば2個の脂肪族炭化水素基、例えば上で挙げた基、特に低級アルキル基、または置換基として他の脂環式環を有し得る。望ましい置換基は、Rについて下記で挙げた非環式置換基である。
【0024】
29個までの炭素原子を有する脂環式環−脂肪族基R、R、RまたはR10は、特に最大7個の、好ましくは最大4個の炭素原子を有する非環式基(例えば特にメチル、エチルおよびビニル)が、上で定義した1個以上の脂環式環を有する基である。特に、シクロアルキル−低級アルキル基、ならびに環および/または鎖において不飽和であるが非芳香族性であるそのアナログ、および鎖の末端の炭素原子に環を有しているそのアナログを言う。望ましい置換基は、Rについて下記で挙げた非環式置換基である。
【0025】
それぞれ20個までの炭素原子およびそれぞれ9個までのヘテロ原子を有するヘテロ環基R、R、RまたはR10は、特に単環式であるが、さらに二環式または多環式である、芳香族性のアザ−、チア−、オキサ−、チアザ−、オキサアザ−、ジアザ−、トリアザ−、またはテトラアザ非環式基、ならびに部分的または最も特定的には完全に飽和である対応するこのタイプのヘテロ環基{これらの基は、必要であれば、場合によりさらに非環式基、炭素環基、またはヘテロ環基を有し、そして/または場合により官能基、好ましくは脂肪族炭化水素基の置換基として上で挙げた基によって一置換、二置換、または多置換されている}である。最も特定的には、それらは、窒素、酸素、または硫黄原子を有する非置換または置換単環式基、例えば2−アジリジニルであり、特にこのタイプの芳香環、例えばピリル(pyrryl)(例えば2−ピリルまたは3−ピリル)、ピリジル(例えば2−、3−、または4−ピリジル)、さらにチエニル(例えば2−または3−チエニル)、またはフリル(例えば2−フリル)であり;酸素、硫黄、または窒素原子を有する類似の二環式基は、例えば、インドリル(典型的に2−または3−インドリル)、キノリル(典型的に2−または4−キノリル)、イソキノリル(典型的に3−または5−イソキノリル)、ベンゾフラニル(典型的に2−ベンゾフラニル)、クロメニル(典型的に3−クロメニル)、またはベンゾチエニル(典型的に2−または3−ベンゾチエニル)であり;幾つかのヘテロ原子を有する望ましい単環式および二環式基は、例えば、イミダゾリル(典型的に2−または4−イミダゾリル)、ピリミジニル(典型的に2−または4−ピリミジニル)、オキサゾリル(典型的に2−オキサゾリル)、イソオキサゾリル(典型的に3−イソオキサゾリル)、またはチアゾリル(典型的に2−チアゾリル)、およびベンゾイミダゾリル(典型的に2−ベンゾイミダゾリル)、ベンゾオキサゾリル(典型的に2−ベンゾオキサゾリル)、またはキナゾリル(典型的に2−キナゾリニル)である。適切な部分的または特に完全に飽和の類似の基はまた、例えば2−テトラヒドロフリル、2−または3−ピロリジニル、2−、3−、または4−ピペリジル、さらに2−または3−モルホリニル、2−または3−チオモルホリニル、2−ピペラジニルおよびN−モノ−またはN,N'−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニル基が考えられる。これらの基はまた、1個以上の非環式基、炭素環基、またはヘテロ環基を有し、特に上で記載した基を有する。ヘテロ環基RまたはRの自由原子価は、その炭素原子の1個から生じる。ヘテロ環は、非置換であっても、1個以上の、好ましくは1個または2個の、Rについて下記で挙げた置換基によって置換されていてもよい。
【0026】
ヘテロ環−脂肪族基R、R、RまたはR10は、特に1個、2個またはそれ以上のヘテロ環基(例えば前述のパラグラフに記載した基)を有する、低級アルキル基(特に最大7個の、好ましくは最大4個の炭素原子を有する基(例えば上で挙げた基))であって、該ヘテロ環式環は場合により該脂肪族鎖と1個のその窒素原子で結合している。望ましいヘテロ環−脂肪族基Rは、例えば、イミダゾール−1−イルメチル、4−メチルピペラジン−1−イルメチル、ピペラジン−1−イルメチル、2−(モルホリン−4−イル)エチルであり、さらにピリド−3−イルメチルである。ヘテロ環は、非置換であっても、1個以上の、好ましくは1個または2個の、Rについて下記で挙げられた置換基によって置換されている。
【0027】
それぞれ20個までの炭素原子およびそれぞれ10個までのヘテロ原子を有するヘテロ脂肪族基R、R、RまたはR10は、1個、2個またはそれ以上の炭素原子に代わって、同一または異なるヘテロ原子、例えば特に酸素、硫黄、および窒素を含む脂肪族基である。ヘテロ脂肪族基Rのうち特に望ましいものは、1個以上の炭素原子が、好ましくは直鎖アルキルにおいて、酸素原子によって置き換えられ、該酸素原子は、好ましくは幾つかの(特に2個の)炭素原子によって互いが隔てられているオキサ−アルキル基の形態をとり、その結果、それらがリピーティング・グループを形成し、必要ならばマルチ・リピーティング・グループ(O−CH−CH−)[ここで、q=1から7]である。
【0028】
、R、RまたはR10として特に望ましいのは、アシルは別として、低級アルキル、特にメチルまたはエチル;低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、特にメトキシカルボニルメチルまたは2−(tert−ブトキシカルボニル)エチル;カルボキシ−低級アルキル、特にカルボキシメチルまたは2−カルボキシエチル;またはシアノ−低級アルキル、特に2−シアノエチルである。
【0029】
30個までの炭素原子を有するアシル基R、R、R、R、R、R、またはR10は、カルボン酸から誘導され、必要であれば官能基で修飾され、有機スルホン酸、またはリン酸(例えばピロ−またはオルトリン酸)から誘導され、必要であればエステル化されている。
【0030】
Acで示されカルボン酸から誘導されるアシルは、必要であれば官能基で修飾され、特に式:Y−C(=W)−の一つであり、ここで、Wは、酸素、硫黄、またはイミノであり、そしてYは、水素、29個までの炭素原子を有するヒドロカルビルR、ヒドロカルビルオキシR−O−、アミノ基または置換アミノ基、特に式:RHN−またはRN−(ここで、R基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。)の一つである。
【0031】
ヒドロカルビル基(炭化水素基)Rは、それぞれ29個までの炭素原子を有する、特に18個までの、好ましくは12個までの炭素原子を有する、非環式(脂肪族)、炭素環、または炭素環−非環式炭化水素基であり、そして飽和または不飽和であり、非置換であるかまたは置換されている。1個、2個またはそれ以上の炭素原子に代わって、それは、同一のまたは異なるヘテロ原子、例えば特に酸素、硫黄、および窒素を、非環式部分および/または環式部分中に含んでもよい;後者の場合、それはヘテロ環基(heterocyclic)(ヘテロ環基(heterocyclyl))またはヘテロ環−非環式基と記載される。
【0032】
不飽和基は、1個以上の、特に共役および/または単独の、多重結合(二重結合または三重結合)を含む基である。環式基という用語はまた、共役二重結合を有する芳香環および非芳香環基、例えば少なくとも1個の6員炭素環または5員から8員のヘテロ環式環が最大数の非重複二重結合を含む基を含む。少なくとも1個の環が6員の芳香環(すなわちベンゼン環)として存在する炭素環基は、アリール基と定義される。
【0033】
非環式非置換炭化水素基Rは、特に直鎖または分枝鎖の低級アルキル−、低級アルケニル−、低級アルカジエニル−、または低級アルキニル基である。低級アルキルRは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、さらにn−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシルおよびn−ヘプチルであり;低級アルケニルは、例えば、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2−または3−メタリル、および2−または3−ブテニルであり;低級アルカジエニルは、例えば、1−ペンタ−2,4−ジエニルであり;低級アルキニルは、例えば、プロパルギルまたは2−ブチニルである。対応する不飽和基において、二重結合は、特に、自由原子価に関してα位より高位に位置する。
【0034】
炭素環炭化水素基Rは、特に単環式、二環式または多環式シクロアルキル−、シクロアルケニル−、またはシクロアルカジエニル基、または対応するアリール基である。最大14個の、特に12個の環炭素原子を有し、かつ、3員環から8員環、好ましくは5員環から7員環、最も特定的には特に6員環(ここで、該環は、1個以上の、例えば2個の非環式基、例えば上で挙げた基、特に低級アルキル基、または他の炭素環基を有し得る)を有する基が望ましい。炭素環−非環式基は、非環式基、特に最大7個の、好ましくは最大4個の炭素原子を有する基(例えば特にメチル、エチルおよびビニル)が、1個以上の炭素環(必要であれば上記の定義の芳香環)を有している基である。シクロアルキル−低級アルキル基およびアリール−低級アルキル基、ならびに環および/または鎖中で不飽和であり、かつ鎖の末端の炭素原子に環を有するそのアナログが、特記される。
【0035】
シクロアルキルRは、最も特定的に、10個を含む3から10個の炭素原子を有し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチル、ならびにビシクロ[2,2,2]オクチル、2−ビシクロ[2,2,1]ヘプチルおよびアダマンチルであり、これらは、1個、2個またはそれ以上の、例えば低級アルキル基、特にメチル基によって置換されていてもよく;シクロアルケニルは、例えば1位、2位、または3位で二重結合を有する、前述の単環式シクロアルキル基の一つである。シクロアルキル−低級アルキルまたは−低級アルケニルは、例えば上記のシクロアルキル基の1つによって置換された−メチル、−1−または−2−エチル、−1−または−2−ビニル、−1−、−2−、または−3−プロピルまたは−アリルであり、直鎖の末端で置換された基が望ましい。
【0036】
アリール基Rは、最も特定的には、フェニル、さらにナフチル(例えば1−または2−ナフチル)、ビフェニル(例えば特に4−ビフェニル)、さらにアントリル、フルオレニルおよびアズレニル、ならびに1個以上の飽和環を有するその芳香環アナログである。望ましいアリール−低級アルキルまたはアリール−低級アルケニル基は、例えば、末端にフェニル基を有するフェニル−低級アルキルまたはフェニル−低級アルケニルであり、例えばベンジル、フェネチル、1−、2−、または3−フェニルプロピル、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル)、トリチルおよびシンナミル、さらに1−または2−ナフチルメチルである。アリールは、非置換であっても置換されていてもよい。
【0037】
ヘテロ環−非環式基を含むヘテロ環基は、芳香族性を有する、特に単環式の、さらに二環式または多環式の、アザ−、チア−、オキサ−、チアザ−、オキサアザ−、ジアザ−、トリアザ−、またはテトラアザ環式基、あるいは部分的に、または最も特定的には完全に飽和である対応するこのタイプのヘテロ環基であり;必要であれば、例えば上記の炭素環またはアリール基の場合では、これらの基は、さらに、非環式の炭素環またはヘテロ環基を有していてもよく、かつ/または官能基によって一置換、二置換または多置換されていてもよい。ヘテロ環−非環式基中の非環式部分は、例えば対応する炭素環−非環式基について示した意味を有する。最も特定的には、それらは、窒素、酸素、または硫黄原子を有する非置換または置換単環式基、例えば2−アジリジニル、特にこのタイプの芳香環基、例えばピロリル(例えば2−ピロリルまたは3−ピロリル)、ピリジル(例えば2−、3−または4−ピリジル)、さらにチエニル(例えば2−または3−チエニル)、またはフリル(例えば2−フリル)であり;酸素、硫黄または窒素原子を有する類似の二環式基は、例えば、インドリル(典型的に2−または3−インドリル)、キノリル(典型的に2−または4−キノリル)、イソキノリル(典型的に3−または5−イソキノリル)、ベンゾフラニル(典型的に2−ベンゾフラニル)、クロメニル(典型的に3−クロメニル)、またはベンゾチエニル(典型的に2−または3−ベンゾチエニル)であり;望ましい幾つかのヘテロ原子を有する単環式および二環式基は、例えば、イミダゾリル(典型的に2−イミダゾリル)、ピリミジニル(典型的に2−または4−ピリミジニル)、オキサゾリル(典型的に2−オキサゾリル)、イソオキサゾリル(典型的に3−イソオキサゾリル)、またはチアゾリル(典型的に2−チアゾリル)、およびベンゾイミダゾリル(典型的に2−ベンゾイミダゾリル)、ベンゾオキサゾリル(典型的に2−ベンゾオキサゾリル)、またはキナゾリル(典型的に2−キナゾリニル)である。適切な部分的に、または特に完全に飽和の類似の基はまた、例えば2−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロフリル、2−または3−ピロリジル、2−、3−、または4−ピペリジル、さらに、2−または3−モルホリニル、2−または3−チオモルホリニル、2−ピペラジニル、およびN,N'−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニル基が考えられ得る。これらの基はまた、1個以上の非環式、炭素環、またはヘテロ環基、特に上記の基を有していてもよい。ヘテロ環−非環式基は、特に、最大7個の、好ましくは最大4個の炭素原子、例えば上で挙げた基を有する非環式基から誘導され、また1個、2個またはそれ以上のヘテロ環基、例えば上で挙げた基を有していてもよく、該環は、場合により脂肪族鎖にその窒素原子の一つで結合している。
【0038】
すでに記載されたように、ヒドロカルビル(ヘテロ環を含む)は、1個、2個またはそれ以上の同一または異なる置換基(官能基)によって置換され得る;1個以上の次に掲げる置換基が考えられ得る:低級アルキル;遊離、エーテル化およびエステル化ヒドロキシル基;カルボキシ基およびエステル化カルボキシ基;メルカプト基および低級アルキルチオ基およびフェニルチオ基(これらは必要であれば置換されている);ハロゲン原子、典型的に塩素およびフッ素、さらに臭素およびヨウ素;ハロゲン−低級アルキル基;ホルミル(すなわちアルデヒド)およびケト基、さらに対応するアセタールまたはケタールの形態で存在するオキソ基;アジド基;ニトロ基;シアノ基;第1級、第2級および好ましくは第3級アミノ基、アミノ−低級アルキル、一置換または二置換アミノ−低級アルキル、慣用の保護基(特に低級アルコキシカルボニル、典型的にtert−ブトキシカルボニル)によって保護された第1級または第2級アミノ基;低級アルキレンジオキシ、さらに遊離または官能基で修飾されたスルホ基、典型的に遊離塩基または塩として存在するスルファモイルまたはスルホ基。該ヒドロカルビル基はまた、カルバモイル、ウレイド、またはグアニジノ基(遊離であるか、または1個または2個の置換基を有する)、およびシアノ基を有する。“基”という語の上記の使用はまた、個別の基を意味する。
【0039】
ハロゲン−低級アルキルは、好ましくは1から3個のハロゲン原子を含み;好ましくはトリフルオロメチルまたはクロロメチルである。
【0040】
ヒドロカルビルに置換基として存在するエーテル化ヒドロキシル基は、例えば、低級アルコキシ基、典型的にメトキシ−、エトキシ−、プロポキシ−、イソプロポキシ−、ブトキシ−、およびtert−ブトキシ基であり、
(i) ヘテロ環 [ここで、ヘテロ環は、好ましくは4から12個の環原子を有し、不飽和であっても、部分的または完全に飽和であってもよく、単環式環または二環式環であり、そして窒素、酸素および硫黄から選択される3個までのヘテロ原子を含み、最も特定的にはピロリル(例えば2−ピロリルまたは3−ピロリル)、ピリジル(例えば2−、3−または4−ピリジル)、さらにチエニル(例えば2−または3−チエニル)、またはフリル(例えば2−フリル)、インドリル(典型的に2−または3−インドリル)、キノリル(典型的に2−または4−キノリル)、イソキノリル(典型的に3−または5−イソキノリル)、ベンゾフラニル(典型的に2−ベンゾフラニル)、クロメニル(典型的に3−クロメニル)、ベンゾチエニル(典型的に2−または3−ベンゾチエニル);イミダゾリル(典型的に1−または2−イミダゾリル)、ピリミジニル(典型的に2−または4−ピリミジニル)、オキサゾリル(典型的に2−オキサゾリル)、イソオキサゾリル(典型的に3−イソオキサゾリル)、チアゾリル(典型的に2−チアゾリル)、ベンゾイミダゾリル(典型的に2−ベンゾイミダゾリル)、ベンゾオキサゾリル(典型的に2−ベンゾオキサゾリル)、キナゾリル(典型的に2−キナゾリニル)、2−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロフリル、2−または4−テトラヒドロピラニル、1−、2−または3−ピロリジル、1−、2−、3−、または4−ピペリジル、1−、2−または3−モルホリニル、2−または3−チオモルホリニル、2−ピペラジニルまたはN,N'−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニル;
(ii) ハロゲン原子 [例えば2,2,2−トリクロロエトキシ、2−クロロエトキシ、または2−ヨードエトキシ基において、特に2位で、一置換、二置換または多置換されている];または
(iii) ヒドロキシ;または
(iv) 低級アルコキシ基 [それぞれは、好ましくは2−メトキシエトキシ基のように、特に2位で一置換されている];
によって置換されていてもよい。このようなエーテル化ヒドロキシル基はまた、非置換または置換フェノキシ基およびフェニル−低級アルコキシ基、例えば特にベンジルオキシ、ベンズヒドリルオキシ、およびトリフェニルメトキシ(トリチルオキシ)、ならびにヘテロ環オキシ基[ここで、該ヘテロ環は、好ましくは4から12個の環原子を有し、不飽和であっても、部分的または完全に飽和であってもよく、単環式または二環式であり、窒素、酸素および硫黄から選択される3個までのヘテロ原子を含んでいてもよく、最も特定的にはピロリル(例えば2−ピロリルまたは3−ピロリル)、ピリジル(例えば2−、3−または4−ピリジル)、さらにチエニル(例えば2−または3−チエニル)、またはフリル(例えば2−フリル)、インドリル(典型的に2−または3−インドリル)、キノリル(典型的に2−または4−キノリル)、イソキノリル(典型的に3−または5−イソキノリル)、ベンゾフラニル(典型的に2−ベンゾフラニル)、クロメニル(典型的に3−クロメニル)、ベンゾチエニル(典型的に2−または3−ベンゾチエニル);イミダゾリル(典型的に1−または2−イミダゾリル)、ピリミジニル(典型的に2−または4−ピリミジニル)、オキサゾリル(典型的に2−オキサゾリル)、イソオキサゾリル(典型的に3−イソオキサゾリル)、チアゾリル(典型的に2−チアゾリル)、ベンゾイミダゾリル(典型的に2−ベンゾイミダゾリル)、ベンゾオキサゾリル(典型的に2−ベンゾオキサゾリル)、キナゾリル(典型的に2−キナゾリニル)、2−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロフリル、2−または4−テトラヒドロピラニル、1−、2−または3−ピロリジル、1−、2−、3−、または4−ピペリジル、1−、2−または3−モルホリニル、2−または3−チオモルホリニル、2−ピペラジニルまたはN,N'−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニル;例えば特に2−または4−テトラヒドロピラニルオキシである。]である。
【0041】
エーテル化ヒドロキシル基は、本明細書中において、シリル化ヒドロキシル基、典型的に例えばトリ−低級アルキルシリルオキシ、典型的にトリメチルシリルオキシ、およびジメチル−tert−ブチルシリルオキシ、またはフェニルジ−低級アルキルシリルオキシおよび低級アルキル−ジフェニルシリルオキシを含むとされる。
【0042】
置換基としてヒドロカルビル中に存在するエステル化ヒドロキシル基は、例えば、低級アルカノイルオキシである。
【0043】
置換基としてヒドロカルビル中に存在するカルボキシル基は、水素原子が上で特定されたヒドロカルビル基、好ましくは低級アルキル−またはフェニル−低級アルキル基の一つによって置き換えらた基であり;エステル化カルボキシル基の例は、低級アルコキシカルボニルまたは必要ならばフェニル部分で置換されているフェニル−低級アルコキシカルボニルであり、特にメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、およびベンジルオキシカルボニル基、ならびにラクトン化カルボキシル基である。
【0044】
ヒドロカルビルの置換基としての第1級アミノ基−NHはまた、慣用の保護基によって保護されていてもよい。第2級アミノ基は、2個の水素原子のうちの1個に代わって、ヒドロカルビル基、好ましくは非置換の基、典型的に上に挙げた基の一つ、特に低級アルキルを有し、また保護された形態で存在してもよい。
【0045】
置換基としてヒドロカルビル中に存在する第3級アミノ基は、2個の異なる、または好ましくは同一のヒドロカルビル基(ヘテロ環基を含む)、例えば上で特定された非置換ヒドロカルビル基、特に低級アルキルを有する。
【0046】
望ましいアミノ基は、式:R11(R12)N−{ここで、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、非置換非環式C−C−ヒドロカルビル(例えば特にC−CアルキルまたはC−Cアルケニル)または単環式アリール、アラルキル、またはアラルケニルであって、該基は、必要であればC−C−アルキル、C−C−アルコキシ、ハロゲン、および/またはニトロによって置換されており、最大10個の炭素原子を有し、ここで、該炭素含有基は、炭素−炭素結合を介して、または、酸素原子、硫黄原子、または窒素原子(必要であればヒドロカルビルによって置換されている)を介して連結している}を有する基である。このような場合において、それらは、アミノ基の窒素原子を有する窒素含有ヘテロ環式環を形成する。特に望ましい二置換アミノ基の例は次に掲げるものである:ジ−低級アルキルアミノ、典型的にジメチルアミノまたはジエチルアミノ、ピロリジノ、イミダゾール−1−イル、ピペリジノ、ピペラジノ、4−低級アルキルピペラジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジノまたは4−メチルピペラジノ、ならびにジフェニルアミノおよびジベンジルアミノ(必要であれば、特にフェニル部分で、例えば低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、および/またはニトロによって置換されている);それらの保護された基、特に低級アルコキシカルボニルアミノ、典型的にtert−ブトキシカルボニルアミノ、フェニル−低級アルコキシカルボニルアミノ、典型的に4−メトキシベンジルオキシカルボニルアミノ、および9−フルオレニルメトキシカルボニルアミノ。
【0047】
アミノ−低級アルキルは、最も特定的には低級アルキル鎖の1位でアミノによって置換されている基であり、特にアミノメチルである。
【0048】
一置換または二置換アミノ−低級アルキルは、1個または2個の基によって置換されたアミノ−低級アルキルであり、ここで、アミノ−低級アルキルは、最も特定的には低級アルキル鎖の1位でアミノによって置換されている基であり、特にアミノメチルであり;該アミノ置換基は、好ましくは(もし2個の置換基がそれぞれのアミノ基中で互いに独立して存在しているならば)、低級アルキル(例えば特にメチル、エチルまたはn−プロピル)、ヒドロキシ−低級アルキル(典型的に2−ヒドロキシエチル)、C−Cシクロアルキル(特にシクロヘキシル)、アミノ−低級アルキル(典型的に3−アミノプロピルまたは4−アミノブチル)、N−モノ−またはN,N−ジ(低級アルキル)−アミノ−低級アルキル(典型的に3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル)、アミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−低級アルキルアミノおよびN−モノ−またはN,N−ジ−(ヒドロキシ−低級アルキル)アミノを含む群から選択される。
【0049】
二置換アミノ−低級アルキルはまた、窒素原子(好ましくは1位で)を介して低級アルキルに結合し、かつ酸素、窒素および硫黄から選択される、0から2個の、特に0個または1個の他のヘテロ原子を有する5員または6員の、飽和または不飽和のヘテロ環であって、該基は、非置換であるか、または、特に、低級アルキル、典型的にメチル、およびオキソを含む群から選択される1個または2個の基によって置換されている。ピロリジノ(1−ピロリジニル)、ピペリジノ(1−ピペリジニル)、ピペラジノ(1−ピペラジニル)、4−低級アルキルピペラジノ、典型的に4−メチルピペラジノ、イミダゾリノ(1−イミダゾリル)、モルホリノ(4−モルホリニル)、またはチオモルホリノ、S−オキソ−チオモルホリノ、またはS,S−ジオキソチオモルホリノが、ここで望ましい。
【0050】
低級アルキレンジオキシは、特にメチレンジオキシである。
【0051】
1個または2個の置換基を有するカルバモイル基は、特にその窒素で1個または2個の基によって置換されているアミノカルボニル(カルバモイル)であり;該アミノ置換基は、本明細書中で、好ましくは(それぞれのアミノ基に2個の置換基が存在するならば互いに独立して)、低級アルキル(例えば特にメチル、エチルまたはn−プロピル)、ヒドロキシ−低級アルキル(典型的に2−ヒドロキシエチル)、C−Cシクロアルキル(特にシクロヘキシル)、アミノ−低級アルキル(典型的に3−アミノプロピルまたは4−アミノブチル)、N−モノ−またはN,N−ジ(低級アルキル)−アミノ−低級アルキル(典型的に3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル)、アミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−低級アルキルアミノ、およびN−モノ−またはN,N−ジ−(ヒドロキシ−低級アルキル)アミノを含む群から選択され;アミノカルバモイル中の二置換アミノはまた、結合している窒素原子、ならびに酸素、窒素および硫黄から選択される、0から2個の、特に0または1個の他のヘテロ原子を有する、5員または6員の、飽和または不飽和のヘテロ環であって、該基は、非置換であるか、または、特に、低級アルキル(典型的にメチル)およびオキソを含む群から選択される1個または2個の基によって置換されている。ピロリジノ(1−ピロリジニル)、ピペリジノ(1−ピペリジニル)、ピペラジノ(1−ピペラジニル)、4−低級アルキルピペラジノ、典型的に4−メチルピペラジノ、イミダゾリノ(1−イミダゾリル)、モルホリノ(4−モルホリニル)、またはさらにチオモルホリノ、S−オキソ−チオモルホリノ、またはS,S−ジオキソチオモルホリノが、ここで望ましい。
【0052】
Acで示される有機スルホン酸から誘導されたアシルは、特に、式:R−SO−(ここで、Rは、一般的な意味および特定の意味において上に定義したヒドロカルビルであり、後者が一般的に本明細書中で望ましい。)を有する基である。低級アルキルフェニルスルホニル、特に4−トルエンスルホニルが、特に望ましい。
【0053】
Acで示される、リン酸から誘導され、必要ならばエステル化されたアシルは、特に式:RO(RO)P(=O)−(ここで、基Rは、互いに独立して、上で示した一般的なおよび特定の意味において定義した通りである。)を有する基である。
【0054】
上記および下記の置換基についての限定されたデータは、望ましいものであると考えられる。
【0055】
本発明によると、望ましい化合物は、例えば、Rが次に掲げる望ましい意味を有する化合物である:低級アルキル(特にメチルまたはエチル)、アミノ−低級アルキル{ここで、該アミノ基は、保護されていないか、または、慣用のアミノ保護基、特に低級アルコキシカルボニル(典型的にtert−低級アルコキシカルボニル、例えばtert−ブトキシカルボニル)によって保護されている。}(例えばアミノメチル、R,S−、R−または好ましくはS−1−アミノエチル、tert−ブトキシカルボニルアミノメチルまたはR,S−、R−、または好ましくはS−1−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチル)、カルボキシ−低級アルキル(典型的に2−カルボキシエチル)、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル(典型的に2−(tert−ブトキシカルボニル)エチル)、シアノ−低級アルキル(典型的に2−シアノエチル)、テトラヒドロピラニルオキシ−低級アルキル(典型的に4−(テトラヒドロピラニル)−オキシメチル)、モルホリノ−低級アルキル(典型的に2−(モルホリノ)エチル)、フェニル、低級アルキルフェニル(典型的に4−メチルフェニル)、低級アルコキシフェニル(典型的に4−メトキシフェニル)、イミダゾリル−低級アルコキシフェニル(典型的に4−[2−(イミダゾール−1−イル)エチル)オキシフェニル)、カルボキシフェニル(典型的に4−カルボキシフェニル)、低級アルコキシカルボニルフェニル(典型的に4−エトキシカルボニルフェニルまたは4−メトキシフェニル)、ハロゲン−低級アルキルフェニル(典型的に4−クロロメチルフェニル)、ピロリジノフェニル(典型的に4−ピロリジノフェニル)、イミダゾール−1−イルフェニル(典型的に4−(イミダゾール−1−イル)フェニル)、ピペラジノフェニル(典型的に4−ピペラジノフェニル)、(4−低級アルキルピペラジノ)フェニル(典型的に4−(4−メチルピペラジノ)フェニル)、モルホリノフェニル(典型的に4−モルホリノフェニル)、ピロリジノ−低級アルキルフェニル(典型的に4−ピロリジノメチルフェニル)、イミダゾール−1−イル−低級アルキルフェニル(典型的に4−(イミダゾール−1−イルメチル)フェニル)、ピペラジノ−低級アルキルフェニル(典型的に4−ピペラジノメチルフェニル)、(4−低級アルキルピペラジノメチル)−フェニル(典型的に4−(4−メチルピペラジノメチル)フェニル)、モルホリノ−低級アルキルフェニル(典型的に4−モルホリノメチルフェニル)、ピペラジノカルボニルフェニル(典型的に4−ピペラジノカルボニルフェニル)、または(4−低級アルキル−ピペラジノ)フェニル(典型的に4−(4−メチルピペラジノ)フェニル)。
【0056】
望ましいアシル基Acは、カルボン酸のアシル基であり、式:R−CO−(ここで、Rは、ヒドロカルビル基Rの上記の一般的および特定の意味の一つを有する。)によって特徴付けられる。特に望ましい基Rは、低級アルキル(特にメチルまたはエチル)、アミノ−低級アルキル{ここで、該アミノ基は、保護されていないか、または、慣用のアミノ保護基、特に低級アルコキシカルボニル(典型的にtert−低級アルコキシカルボニル、例えばtert−ブトキシカルボニル)によって保護される。}(例えばアミノメチル、R,S−、R−、または好ましくはS−1−アミノエチル、tert−ブトキシカルボニルアミノメチルまたはR,S−、R−、または好ましくはS−1−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチル)、カルボキシ−低級アルキル(典型的に2−カルボキシエチル)、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル(典型的に2−(tert−ブトキシカルボニル)エチル)、テトラヒドロピラニルオキシ−低級アルキル(典型的に4−(テトラヒドロピラニル)オキシメチル)、フェニル、イミダゾリル−低級アルコキシフェニル(典型的に4−[2−(イミダゾール−1−イル)エチル]オキシフェニル)、カルボキシフェニル(典型的に4−カルボキシフェニル)、低級アルコキシカルボニルフェニル(典型的に4−エトキシカルボニルフェニル)、ハロゲン−低級アルキルフェニル(典型的に4−クロロメチルフェニル)、イミダゾール−1−イルフェニル(典型的に4−(イミダゾール−1−イル)フェニル)、ピロリジノ−低級アルキルフェニル(典型的に4−ピロリジノメチルフェニル)、ピペラジノ−低級アルキルフェニル(典型的に4−ピペラジノメチルフェニル)、(4−低級アルキルピペラジノメチル)フェニル(典型的に4−(4−メチルピペラジノメチル)フェニル)、モルホリノ−低級アルキルフェニル(典型的に4−モルホリノメチルフェニル)、ピペラジノカルボニルフェニル(典型的に4−ピペラジノカルボニルフェニル)、または(4−低級アルキルピペラジノ)フェニル(典型的に4−(4−メチルピペラジノ)フェニル)である。
【0057】
さらに望ましいアシルAcは、炭酸のモノエステルから誘導され、式:R−O−CO−によって特徴付けられる。該低級アルキル基、特にtert−ブチルが、特に望ましいこれらの誘導体中のヒドロカルビル基Rである。
【0058】
別の望ましいアシルAcは、炭酸(またはチオ炭酸)のアミドから誘導され、式:RHN−C(=W)−またはRN−C(=W)−(ここで、基Rは、互いに独立して、上で定義した通りであり、そしてWは、硫黄であり、特に酸素である。)によって特徴付けられる。特に、Acが式:RHN−C(=W)−(ここで、Wは酸素であり、そしてRは、下記の望ましい意味の一つを有する:モルホリノ−低級アルキル、典型的に2−モルホリノエチル、フェニル、低級アルコキシフェニル、典型的に4−メトキシフェニルまたは4−エトキシフェニル、カルボキシフェニル、典型的に4−カルボキシフェニル、または低級アルコキシカルボニルフェニル、典型的に4−エトキシカルボニルフェニル。)の基である化合物が望ましい化合物である。
【0059】
式:R−SO−(ここで、Rは、上の一般的なおよび特定の意味において定義したヒドロカルビルである。)の望ましいアシルAcは、低級アルキルフェニルスルホニル、典型的に4−トルエンスルホニルである。
【0060】
pが0であるならば、Rが結合している窒素原子は電荷を帯びていない。pが1であるならば、Rもまた存在していなければならず、RおよびRが結合している窒素原子(第4級窒素)は、正に荷電している。
【0061】
それぞれ29個までの炭素原子を有する脂肪族、炭素環、または炭素環−脂肪族基についての定義、それぞれ20個までの炭素原子およびそれぞれ9個までのヘテロ原子を有するヘテロ環またはヘテロ環−脂肪族基についての定義、あるいは、それぞれ30個までの炭素原子を有するアシルについての定義は、好ましくは、対応する基RおよびRについて示された定義と一致している。Rが低級アルキルであり、特にメチルであり、または最も特定的には水素である場合が特に望ましい。
【0062】
Zは、特に低級アルキルであり、最も特定的にはメチルまたは水素である。
【0063】
波線によって示された2個の結合が環A中で存在しないならば、式I中で数1、2、3、および4によって特徴付けられた炭素原子間に二重結合が存在せず(四水素化誘導体)、一重結合のみであるのに対して、環Bは、芳香環(式I中で8および9によって、ならびに10および11によって特徴付けられた炭素原子間に二重結合がある)である。波線によって示された2個の結合が環B中で存在しないならば、式I中で数8、9、10、および11によって特徴付けられた炭素原子間に二重結合は存在せず(四水素化誘導体)、一重結合のみであるのに対して、環Aは、芳香環(式I中で、1および2によって、ならびに3および4によって特徴付けられた炭素原子間で二重結合がある)である。波線によって示された総数4個の結合が、環AおよびB中で存在せず、総数8個の水素原子によって置き換えられているならば、式I中で1、2、3、4、8、9、10、および11の番号が付けられた炭素原子間に二重結合が存在せず(八水素化誘導体)、一重結合のみである。
【0064】
その性質上、本発明の化合物はまた、それが塩形成基を含むならば、薬学的に、すなわち生理学的に許容される塩の形態で存在してもよい。単離および精製のために、薬学的に許容されない塩もまた用いられ得る。治療上の使用のためには、薬学的に許容される塩のみが使用され、これらの塩が望ましい。
【0065】
従って、遊離酸の基、例えば遊離のスルホ、ホスホリルまたはカルボキシル基を有する式Iの化合物は、塩として、好ましくは塩形成塩基性成分との生理学的に許容される塩として存在してもよい。これらは、主に金属塩またはアンモニウム塩であってもよく、例えばアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩またはカルシウム塩であってもよく、あるいは、アンモニアまたは適当な有機アミン類、特に第3級モノアミン類およびヘテロ環塩基、例えばトリエチルアミン、トリ−(2−ヒドロキシエチル)−アミン、N−エチルピペリジンまたはN,N'−ジメチルピペラジンとのアンモニウム塩であってもよい。
【0066】
塩基性を有する本発明の化合物はまた、付加塩として、特に、無機酸とのおよび有機酸との酸付加塩として存在してもよく、また第4級塩として存在してもよい。従って、例えば、置換基として塩基性基(例えばアミノ基)を有する化合物は、一般的な酸と酸付加塩を形成し得る。適当な酸は、例えば、ハロゲン化水素酸(例えば塩酸および臭化水素酸)、硫酸、リン酸、硝酸または過塩素酸、あるいは脂肪族、脂環式環、芳香環またはヘテロ環カルボン酸またはスルホン酸(例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、シュウ酸、ピルビン酸、フェニル酢酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、アントラニル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、パモ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、エチレンジスルホン酸、ハロベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、またはスルファニル酸、さらに、メチオニン、トリプトファン、リジンまたはアルギニン、さらにアスコルビン酸である。
【0067】
化合物(特に式Iの化合物)の遊離形と、その塩の形態(例えば新規化合物の精製または同定において中間体として使用され得る塩を含む)と、それらの溶媒和物の間の密接な関係を考慮すると、遊離形の化合物についての本明細書中の上記および下記の全ての記載は、必要に応じて、また好適ならば、対応する塩およびそれらの溶媒和物(例えば水和物)についても記載していると解されるべきである。
【0068】
式A、B、C、D、I、II、III、IV、VまたはVIの化合物、特にRが水素である化合物は、有益な薬理学的な性質を有する。
【0069】
上記および下記の基または化合物のグループの場合、一般的な定義は、適切な限り、また好適な限り、上記および下記のより特定的な定義によって置き換えられ得る。
【0070】
望ましいのは、
およびRが、互いに独立して、低級アルキル、あるいはハロゲン、C−C14アリール、ヒドロキシ、低級アルコキシ、フェニル−低級アルコキシ、フェニルオキシ、低級アルカノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、低級アルカノイルアミノ、フェニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−(フェニル−低級アルキル)アミノ、シアノ、メルカプト、低級アルキルチオ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−低級アルキルカルバモイル、N,N−ジ−低級アルキルカルバモイル、スルホ、低級アルカンスルホニル、低級アルコキシスルホニル、アミノスルホニル、N−低級アルキルアミノスルホニルまたはN,N−ジ−低級アルキルアミノスルホニルによって置換された低級アルキル;ハロゲン;低級アルコキシ;C−C14アリールオキシ;C−C14アリール−低級アルコキシ;低級アルカノイルオキシ;C−C14アリールカルボニルオキシ;低級アルキル、C−C14アリール、C−C14アリール−低級アルキル、低級アルカノイルまたはC−C12アリールカルボニルによって一置換または二置換されたアミノ;シアノ;ニトロ;メルカプト;低級アルキルチオ;C−C14アリールチオ;C−C14アリール−低級アルキルチオ;低級アルカノイルチオ;C−C14アリール−低級アルカノイルチオ;カルボキシ;低級アルコキシカルボニル、C−C14アリール−低級アルコキシカルボニル;C−C14アリールオキシカルボニル;カルバモイル;低級アルキル、C−C14アリールまたはC−C14アリール−低級アルキルによってN−一置換またはN,N−二置換されているカルバモイル;スルホ;C−C14アリールスルホニル;C−C14アリール−低級アルカンスルホニル;低級アルカンスルホニル;または、低級アルキル、C−C14アリールまたはC−C14アリール−低級アルキルによってN−一置換またはN,N−二置換されているアミノスルホニル{ここで、C−C14アリールが、環系中に6から12個の炭素原子を有するアリール基であって、非置換であるか、またはハロゲン、フェニルまたはナフチル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、フェニル−低級アルコキシ、フェニルオキシ、低級アルカノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、低級アルカノイルアミノ、フェニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−(フェニル−低級アルキル)アミノ、シアノ、メルカプト、低級アルキルチオ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−低級アルキルカルバモイル、N,N−ジ−低級アルキルカルバモイル、スルホ、低級アルカンスルホニル、低級アルコキシスルホニル、アミノスルホニル、N−低級アルキルアミノスルホニルまたはN,N−ジ−低級アルキルアミノスルホニルによって置換されている。};
nおよびmが、互いに独立して、0または1または2であり、好ましくは0であり;
【0071】
、R、R、R10が、互いに独立して、水素、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルカジエニルであり、該基がそれぞれ、非置換であるか、または次に掲げる基から独立して選択される置換基によって一置換または多置換されている、好ましくは一置換または二置換されている:低級アルキル;ヒドロキシ;低級アルコキシ[ここで、該基が、非置換であっても、(i)4から12個の環原子を有するヘテロ環{ここで、該環が、不飽和であっても、完全に飽和または部分的に飽和であってもよく、また単環式または二環式であり、かつ窒素、酸素および硫黄から選択される3個までのヘテロ原子を含んでもよく、最も特定的にはピロリル(例えば2−ピロリルまたは3−ピロリル)、ピリジル(例えば2−、3−または4−ピリジル)、またはより広い意味では、チエニル(例えば2−または3−チエニル)、またはフリル(例えば2−フリル)、インドリル(典型的に2−または3−インドリル)、キノリル(典型的に2−または4−キノリル)、イソキノリル(典型的に3−または5−イソキノリル)、ベンゾフラニル(典型的に2−ベンゾフラニル)、クロメニル(典型的に3−クロメニル)、ベンゾチエニル(典型的に2−または3−ベンゾチエニル);イミダゾリル(典型的に1−または2−イミダゾリル)、ピリミジニル(典型的に2−または4−ピリミジニル)、オキサゾリル(典型的に2−オキサゾリル)、イソオキサゾリル(典型的に3−イソオキサゾリル)、チアゾリル(典型的に2−チアゾリル)、ベンゾイミダゾリル(典型的に2−ベンゾイミダゾリル)、ベンゾオキサゾリル(典型的に2−ベンゾオキサゾリル)、キナゾリル(典型的に2−キナゾリニル)、2−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロピラニル、1−、2−または3−ピロリジル、1−、2−、3−、または4−ピペリジル、1−、2−または3−モルホリニル、2−または3−チオモルホリニル、2−ピペラジニルまたはN,N'−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニルである。}によって、(ii)ハロゲンによって、(iii)ヒドロキシによって、または(iv)低級アルコキシによって一置換、二置換、または三置換されていてもよい。];フェノキシ;フェニル−低級アルコキシ;ヘテロ環オキシ{ここで、該ヘテロ環が、ピロリル(例えば2−ピロリルまたは3−ピロリル)、ピリジル(例えば2−、3−または4−ピリジル)、またはより広い意味では、チエニル(例えば2−または3−チエニル)、またはフリル(例えば2−フリル)、インドリル(典型的に2−または3−インドリル)、キノリル(典型的に2−または4−キノリル)、イソキノリル(典型的に3−または5−イソキノリル)、ベンゾフラニル(典型的に2−ベンゾフラニル)、クロメニル(典型的に3−クロメニル)、ベンゾチエニル(典型的に2−または3−ベンゾチエニル);イミダゾリル(典型的に1−または2−イミダゾリル)、ピリミジニル(典型的に2−または4−ピリミジニル)、オキサゾリル(典型的に2−オキサゾリル)、イソオキサゾリル(典型的に3−イソオキサゾリル)、チアゾリル(典型的に2−チアゾリル)、ベンゾイミダゾリル(典型的に2−ベンゾイミダゾリル)、ベンゾオキサゾリル(典型的に2−ベンゾオキサゾリル)、キナゾリル(典型的に2−キナゾリニル)、2−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロフリル、2−または4−テトラヒドロピラニル、1−、2−または3−ピロリジル、1−、2−、3−、または4−ピペリジル、1−、2−または3−モルホリニル、2−または3−チオモルホリニル、2−ピペラジニルまたはN,N'−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニルである。}(例えば特に2−または4−テトラヒドロピラニルオキシ);低級アルカノイルオキシ;カルボキシ;低級アルコキシカルボニル;フェニル−低級アルコキシカルボニル;メルカプト;低級アルキルチオ;フェニルチオ;ハロゲン;ハロゲン−低級アルキル;オキソ(1位以外。1位ではアシルとなるため);アジド;ニトロ;シアノ;アミノ;モノ−低級アルキルアミノ;ジ−低級アルキルアミノ;ピロリジノ;イミダゾール−1−イル;ピペリジノ;ピペラジノ;4−低級アルキルピペラジノ;モルホリノ;チオモルホリノ;ジフェニルアミノまたはジベンジルアミノ(非置換であるか、またはフェニル部分で低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲンおよび/またはニトロによって置換されている);低級アルコキシカルボニルアミノ;フェニル−低級アルコキシカルボニルアミノ(非置換であるか、またはフェニル部分で低級アルキルまたは低級アルコキシによって置換されている);フルオレニルメトキシカルボニルアミノ;アミノ−低級アルキル;一置換または二置換アミノ−低級アルキル{ここで、該アミノ置換基が、低級アルキル、ヒドロキシ−低級アルキル、C−Cシクロアルキル、アミノ−低級アルキル、N−モノ−またはN,N−ジ−(低級アルキル)アミノ−低級アルキル、アミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−低級アルキルアミノおよびN−モノ−またはN,N−ジ−(ヒドロキシ−低級アルキル)アミノから選択される。};ピロリジノ−低級アルキル;ピペリジノ−低級アルキル;ピペラジノ−低級アルキル;4−低級アルキルピペラジノ−低級アルキル;イミダゾール−1−イル−低級アルキル;モルホリノ−低級アルキル;チオモルホリノ−低級アルキル;S−オキソ−チオモルホリノ−低級アルキル;S,S−ジオキソチオモルホリノ−低級アルキル;低級アルキレンジオキシ;スルファモイル;スルホ;カルバモイル;ウレイド;グアニジノ;シアノ;窒素上で1個または2個の基によって置換されているアミノカルボニル(カルバモイル)およびアミノカルボニルオキシ{ここで、該アミノ置換基が、互いに独立して、低級アルキル、ヒドロキシ−低級アルキル、C−Cシクロアルキル、アミノ−低級アルキル、N−モノ−またはN,N−ジ−(低級アルキル)アミノ−低級アルキル、アミノ、N−モノ−またはN,N−ジ−低級アルキルアミノおよびN−モノ−またはN,N−ジ−(ヒドロキシ−低級アルキル)アミノを含む群から選択される。};ピロリジノカルボニル;ピペリジノカルボニル;ピペラジノカルボニル;4−低級アルキルピペラジノカルボニル;イミダゾリノカルボニル;モルホリノカルボニル;チオモルホリノカルボニル;S−オキソ−チオモルホリノカルボニル;およびS,S−ジオキソチオモルホリノ;フェニル、ナフチル、末端にフェニル基を有するフェニル−低級アルキルまたはフェニル−低級アルケニル{ここで、該基が、非置換であるか、または低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルカジエニルの置換基として上で挙げた基によって、一置換または二置換されている。};またはヘテロ環−低級アルキル{ここで、該ヘテロ環が、ピロリル(例えば2−ピロリルまたは3−ピロリル)、ピリジル(例えば2−、3−または4−ピリジル)、またはより広い意味では、チエニル(例えば2−または3−チエニル)、またはフリル(例えば2−フリル)、インドリル(典型的に2−または3−インドリル)、キノリル(典型的に2−または4−キノリル)、イソキノリル(典型的に3−または5−イソキノリル)、ベンゾフラニル(典型的に2−ベンゾフラニル)、クロメニル(典型的に3−クロメニル)、ベンゾチエニル(典型的に2−または3−ベンゾチエニル);イミダゾリル(典型的に1−または2−イミダゾリル)、ピリミジニル(典型的に2−または4−ピリミジニル)、オキサゾリル(典型的に2−オキサゾリル)、イソオキサゾリル(典型的に3−イソオキサゾリル)、チアゾリル(典型的に2−チアゾリル)、ベンゾイミダゾリル(典型的に2−ベンゾイミダゾリル)、ベンゾオキサゾリル(典型的に2−ベンゾオキサゾリル)、キナゾリル(典型的に2−キナゾリニル)、2−テトラヒドロフリル、4−テトラヒドロフリル、2−または4−テトラヒドロピラニル、1−、2−または3−ピロリジル、1−、2−、3−、または4−ピペリジル、1−、2−または3−モルホリニル、2−または3−チオモルホリニル、2−ピペラジニルまたはN,N'−ビス−低級アルキル−2−ピペラジニルである。}(これらの基は、それぞれの場合で、非置換であるか、または低級アルキル、低級アルケニル、または低級アルカジエニルの置換基として上で挙げた基によって一置換または二置換されている。);
【0072】
あるいは、R、R、R、R10が、式:Y−C(=W)− {ここで、Wが酸素であり、そしてYが水素、R、R−O−、RHN−、またはRN−(ここで、基Rが、同一であっても異なっていてもよい。)である。}のアシルであるか、
あるいは、式:R−SO−のアシルであり、この場合、Rは式IIの化合物において存在しなくてもよく;
あるいは、
が、式IIにおいて存在せず、式Iにおいて水素またはCHであり、そして
が、式:Y−C(=W)− {ここで、Wが酸素であり、そしてYが、水素、R、R−O−、RHN−、またはRN−(ここで、基Rが同一であっても異なっていてもよい。)である。}のアシルであるか、あるいは
式:R−SO−のアシルであり、ここで、該基におけるRが、次に掲げる意味を有する:置換または非置換低級アルキル(特にメチルまたはエチル)、アミノ−低級アルキル、ヒドロキシ−低級アルキル{ここで、該アミノ基が、保護されていないか、または慣用のアミノ保護基(特に低級アルコキシカルボニル、典型的にtert−低級アルコキシカルボニル、例えばtert−ブトキシカルボニル)によって保護されている。}(例えばアミノメチル、R,S−、R−または好ましくはS−1−アミノエチル、tert−ブトキシカルボニルアミノメチルまたはR,S−、R−または好ましくはS−1−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチル)、カルボキシ−低級アルキル(典型的に2−カルボキシエチル)、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル(典型的に2−(tert−ブトキシカルボニル)エチル)、シアノ−低級アルキル(典型的に2−シアノエチル)、テトラヒドロピラニルオキシ−低級アルキル(典型的に4−(テトラヒドロピラニル)オキシメチル)、モルホリノ−低級アルキル(典型的に2−(モルホリノ)エチル)、フェニル、低級アルキルフェニル(典型的に4−メチルフェニル)、低級アルコキシフェニル(典型的に4−メトキシフェニル)、イミダゾリル−低級アルコキシフェニル(典型的に4−[2−(イミダゾール−1−イル)エチル)オキシフェニル)、カルボキシフェニル(典型的に4−カルボキシフェニル)、低級アルコキシカルボニルフェニル(典型的に4−エトキシカルボニルフェニルまたは4−メトキシフェニル)、ハロゲン−低級アルキルフェニル(典型的に4−クロロメチルフェニル)、ピロリジノフェニル(典型的に4−ピロリジノフェニル)、イミダゾール−1−イルフェニル(典型的に4−(イミダゾール−1−イル)フェニル)、ピペラジノフェニル(典型的に4−ピペラジノフェニル)、(4−低級アルキルピペラジノ)フェニル(典型的に4−(4−メチルピペラジノ)フェニル)、モルホリノフェニル(典型的に4−モルホリノフェニル)、ピロリジノ−低級アルキルフェニル(典型的に4−ピロリジノメチルフェニル)、イミダゾール−1−イル−低級アルキルフェニル(典型的に4−(イミダゾール−1−イルメチル)フェニル)、ピペラジノ−低級アルキルフェニル(典型的に4−ピペラジノメチルフェニル)、(4−低級アルキルピペラジノメチル)−フェニル(典型的に4−(4−メチルピペラジノメチル)フェニル)、モルホリノ−低級アルキルフェニル(典型的に4−モルホリノメチルフェニル)、ピペラジノカルボニルフェニル(典型的に4−ピペラジノカルボニルフェニル)、または(4−低級アルキルピペラジノ)フェニル(典型的に4−(4−メチルピペラジノ)フェニル);
【0073】
が存在しないならばpは0であり、あるいは、RおよびRが共に存在するならばpは1であり、それぞれの場合で上記の基(式IIの化合物について記載)の一つであり;
が水素または低級アルキルであり、特に水素であり、
Xが2個の水素原子を表すか、Oを表すか、または1個の水素原子およびヒドロキシを表すか;または1個の水素原子および低級アルコキシを表し;
Zが水素であるか、または特に低級アルキルであり、最も特定的にはメチルであり;
そして式IIの化合物について、波線によって示された2個の結合が、好ましくは環A中で存在せず、4個の水素原子によって置き換えられ、そして環B中の2本の波線がそれぞれ、それぞれと平行な結合と一体となって二重結合を表すか;
あるいは、環B中の波線によって示された二個の結合が存在せず、4個の水素原子によって置き換えられ、そして環A中の2本の波線はそれぞれ、それぞれと平行な結合と一体となって二重結合を表し;
あるいは、環Aおよび環B中の両方で、4本の波線の結合全てが存在せず、総数8個の水素原子によって置き換えられている;
式I、II、III、IV、V、VIの化合物または少なくとも1個の塩形成基が存在するならばそれらの塩である。
【0074】
特に望ましいのは、
mおよびnが、それぞれ0であり;
およびRが、互いに独立して、水素、非置換または一置換または二置換低級アルキルであり、特にカルボキシ、低級アルコキシカルボニルおよびシアノから互いに独立して選択される基によって一置換された低級アルキルであるか、
あるいは
が、水素または−CHであり、そして
が上で定義した通りであるか、または好ましくはRが、式:R−CO[ここで、Rは低級アルキル、アミノ−低級アルキル{ここで、該アミノ基は保護されていない形態で存在するか、あるいは低級アルコキシカルボニルによって保護されている。}、テトラヒドロピラニルオキシ−低級アルキル、フェニル、イミダゾリル−低級アルコキシフェニル、カルボキシフェニル、低級アルコキシカルボニルフェニル、ハロゲン−低級アルキルフェニル、イミダゾール−1−イルフェニル、ピロリジノ−低級アルキルフェニル、ピペラジノ−低級アルキルフェニル、(4−低級アルキルピペラジノメチル)フェニル、モルホリノ−低級アルキルフェニル、ピペラジノカルボニルフェニルまたは(4−低級アルキルピペラジノ)フェニルである。]のアシルであるか、
あるいは、式:R−O−CO−(ここで、Rは低級アルキルである。)のアシルであるか、
あるいは、式:RHN−C(=W)−(ここで、Wは酸素であり、そしてRはモルホリノ−低級アルキル、フェニル、低級アルコキシフェニル、カルボキシフェニル、または低級アルコキシカルボニルフェニルの意味を有する。)のアシルであるか、
あるいは、Rが、低級アルキルフェニルスルホニル(典型的に4−トルエンスルホニル)であり、ここで、R基のさらに特定の例は、望ましい式IIの化合物について下に記載した基であり、
が、水素または低級アルキルであり、特に水素であり;
Xが、2個の水素原子を表すか、またはOを表し;
Zが、メチルまたは水素である;
式Iの化合物または少なくとも1個の塩形成基が存在するならばその塩である。
【0075】
特に望ましいのは、
mおよびnが、それぞれ0であり;
およびRが、互いに独立して、水素、低級アルキル(非置換であるか、または、カルボキシ、低級アルコキシカルボニルおよびシアノから互いに独立して選択される基によって一置換または二置換されている、特に一置換されている)であり、この場合、Rはまた存在しなくてもよく;
あるいは、Rが存在せず、そして
が、式:R−CO[ここで、Rが、低級アルキル、特にメチルまたはエチル;アミノ−低級アルキル{ここで、該アミノ基が保護されていないか、または低級アルコキシカルボニル、典型的にtert−低級アルコキシカルボニル(例えばtert−ブトキシカルボニル)によって保護されている。}(例えばアミノメチル、R,S−、R−、または好ましくはS−1−アミノエチル、tert−ブトキシカルボニルアミノメチルまたはR,S−、R−、または好ましくはS−1−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチル);テトラヒドロピラニルオキシ−低級アルキル(典型的に4−(テトラヒドロピラニル)オキシメチル);フェニル;イミダゾリル−低級アルコキシフェニル(典型的に4−[2−(イミダゾール−1−イル)エチル)オキシフェニル);カルボキシフェニル(典型的に4−カルボキシフェニル);低級アルコキシカルボニルフェニル(典型的に4−メトキシ−または4−エトキシカルボニルフェニル);ハロゲン−低級アルキルフェニル(典型的に4−クロロメチルフェニル);イミダゾール−1−イルフェニル(典型的に4−(イミダゾール−1−イル)フェニル);ピロリジノ−低級アルキルフェニル(典型的に4−ピロリジノメチルフェニル);ピペラジノ−低級アルキルフェニル(典型的に4−ピペラジノメチルフェニル);(4−低級アルキルピペラジノメチル)フェニル(典型的に4−(4−メチルピペラジノメチル)フェニル);モルホリノ−低級アルキルフェニル(典型的に4−モルホリノメチルフェニル);ピペラジノカルボニルフェニル(典型的に4−ピペラジノカルボニルフェニル);または(4−低級アルキルピペラジノ)フェニル(典型的に4−(4−メチルピペラジノ)フェニル)である。]のアシルであるか;
または、式:R−O−CO−{ここでRが低級アルキルである。}のアシルであるか;
または、式:RHN−C(=W)−{ここで、Wが、酸素であり、そしてRが、次に掲げる望ましい意味を有する:モルホリノ−低級アルキル(典型的に2−モルホリノエチル)、フェニル、低級アルコキシフェニル(典型的に4−メトキシフェニルまたは4−エトキシフェニル)、カルボキシフェニル(典型的に4−カルボキシフェニル)、または低級アルコキシカルボニルフェニル(典型的に4−エトキシカルボニルフェニル)。}のアシルであるか;
または、低級アルキルフェニルスルホニル(典型的に4−トルエンスルホニル)であり;
【0076】
が存在しないならばpは0であり、あるいは、RおよびRが両方とも存在し、それぞれ上記の基の一つであるならば、pは1であり;
は、水素または低級アルキルであり、特に水素であり;
Xが、2個の水素原子を表すか、またはOを表し;
Zが、メチルまたは水素であり;そして
【0077】
波線によって示された二個の結合が、好ましくは環A中で存在せず、4個の水素原子によって置き換えられ、環B中の2本の波線がそれぞれ、それぞれと平行な結合と一体となって二重結合を表すか、
あるいは、波線によって示された二個の結合が、環B中で存在せず、総数4個の水素原子によって置き換えられ、そして環A中の2本の波線がそれぞれ、それぞれと平行な結合と一体となって二重結合を表すか、
あるいは、環Aおよび環Bの両方で、4本の波線全てが存在せず、総数8個の水素原子によって置き換えられている、
式IIの化合物、または少なくとも1個の塩形成基が存在するならばその塩である。
【0078】
最も特定的には、式IIの望ましい化合物は、次に掲げるものから選択される:
8,9,10,11−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−[4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)ベンゾイル]−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−クロロメチルベンゾイル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−(ピロリジン−1−イルメチル)ベンゾイル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−(モルホリン−4−イルメチル)ベンゾイル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−(ピペラジン−1−イルメチル)ベンゾイル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−トシル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−トリフルオロアセチル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−[4−(2−イミダゾール−1−イル−エトキシ)ベンゾイル]−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−メトキシカルボニルメチル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−カルボキシメチル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−テレフタロイルメチルエステル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−テレフタロイル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−エチルピペラジニルカルボニルベンゾイル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(2−シアノエチル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−ベンゾイル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
ヨウ化 N,N−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリニウム;
N−BOC−グリシル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−グリシル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(3−(tert−ブトキシカルボニル)プロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(3−カルボキシプロピル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−イミダゾール−1−イル)ベンゾイル]−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−[(テトラヒドロ−2h−ピラン−4−イルオキシ)アセチル]−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−BOC−l−アラニル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−l−アラニル−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン塩酸塩;
N−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチルスタウロスポリン;
N−(4−カルボキシフェニルアミノカルボニル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(4−エチルフェニルアミノカルボニル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(N−フェニルアミノカルボニル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(N−[2−(1−モルホリノ)エチル]アミノカルボニル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−(N−[4−メトキシフェニル]アミノカルボニル)−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチルスタウロスポリン;
N−BOC−1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン;
N−BOC−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチルスタウロスポリン;
N−BOC−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチル−7−オキソ−スタウロスポリン;
1,2,3,4,8,9,10,11−オクタヒドロスタウロスポリン;
または、少なくとも1個の塩形成基が存在するならばその薬学的に許容される塩。
【0079】
最も特定的には、式Iにおいて、
mおよびnが0であり、
が水素であり、
塩が存在しないならば(p=0)、Rは存在せず、または、塩が存在するならば(p=1)、水素であり、
が水素であり、
波線によって示された二個の結合は環A中で存在せず、総数4個の水素原子によって置き換えられ、そして環B中の波線によって示された二重結合は、それぞれの場合で、平行な結合と一体となって二重結合であり、
Xが2個の水素原子を表し、そして
Zがメチルである、
1,2,3,4−テトラヒドロスタウロスポリン、または(特に薬学的に許容される)その塩で示される、式Iの化合物が望ましい。
【0080】
最も特定的には、
A) X=O;R、R、R=H;Q=−(CH)−O−CH(CH)OH−(CH)
B) X=O;R、R、R=H;Q=−(CH)−O−CH(CHN(CH))−(CH)
C) X=2個の水素原子;R、R、R=H;Q=
【化3】

である、式Aの化合物が望ましい。
【0081】
最も特定的には、
A) X=2個の水素原子;R、R、R、R=H;R=CH;Z=CH(スタウロスポリン)
B)(R)または(S)−異性体形態においてX=1個の水素原子および1個のヒドロキシ;R、R、R、R=H;R=CH;Z=CH(UCN-01およびUCN-02)
C) X=2個の水素原子;R、R、R=H;R=CH;R=ベンゾイル;Z=CH(CGP41251またはPKC412またはMIDOSTAURIN)
D) X=O;R、R、R=H;R=CH;R=エチルオキシカルボニル;Z=CH(NA 382 ;CAS=143086-33-3)
E) X=1個の水素原子および1個のヒドロキシ;R、R、R=H;R=CH;Z=CH;そしてRが、−(CH)OH;−CHCH(OH)CHOH;−CO(CH)CONa;−(CH)COH;−COCHN(CH)
【化4】

から選択される;
F) X=2個の水素原子;R、R、R=H;R=CH;Z=CH;そしてRが、N−[0−(テトラヒドロピラン−4−イル)−D−ラクトイル];N−[2−メチル−2−(テトラヒドロピラン−4−イルオキシ)−プロピオニル;N−[0−(テトラヒドロピラン−4−イル)−L−ラクトイル];N−[0−(テトラヒドロピラン−4−イル)−D−ラクトイル];N−[2−(テトラヒドロ−ピラン−4−イルオキシ)−アセチル)]から選択される;
G) X=O;R、R、R=H;R=CH;Z=CH;そしてRが、N−[0−(テトラヒドロピラン−4−イル)−D−ラクトイル];N−[2−(テトラヒドロ−ピラン−4−イルオキシ)−アセチル)]から選択される;
H) X=1個の水素原子および1個のヒドロキシ;R、R、R=H;R=CH;Z=CH;そしてRが、N−[0−(テトラヒドロピラン−4−イル)−D−ラクトイル];N−[2−(テトラヒドロ−ピラン−4−イルオキシ)−アセチル)]から選択される、
式Iの化合物が望ましい。
【0082】
略語“CAS”は、the CHEMICAL ABSTRACTS 登録番号を表す。
【0083】
最も望ましい式Iの化合物、例えばMIDOSTAURIN [国際一般名]は、欧州特許第0 296 110号(1988年12月21日発行)、ならびに米国特許第5,093,330号(1992年3月3日発行)、および日本特許第2 708 047号に含まれ、またこれらに特に記載されている。他の望ましい化合物は、特許出願 WO 95/32974 および WO 95/32976 (共に1995年12月7日発行)に含まれ、またこれらに記載されている。これらの文献に記載された全ての化合物は、言及によって、本明細書に組み込まれる。
【0084】
最も特定的には、
A) X=2個の水素原子;R、R、R=H;R=CH;R=メチルオキシカルボニル;Z=H(2−メチル K252a)
B) X=2個の水素原子;R、R、R、R=H;R=メチルオキシカルボニル;Z=H(K-252a)
C) X=2個の水素原子;R、R、R、R=H;R=メチルオキシカルボニル;Z=CH(KT-5720)
である、式IIIの化合物が望ましい。
【0085】
最も特定的には
A) X=O;R、R、R=H;R=CH−NMe;R=CH;m'=n'=2
B) X=O;R、R、R=H;R=CH−NH;R=CH;m'=2;n'=1(Ro-31-8425;CAS=151342-35-7)
である、式IVの化合物が望ましい。
【0086】
最も特定的には、
A) X=O;R、R、R=H;R=CH;R10=−(CH)−NH;(Ro-31-7549;CAS=138516-31)
B) X=O;R、R、R=H;R=CH;R10=−(CH)−S−(C=NH)−NH;(Ro-31-8220 ;CAS=125314-64-9))
C) X=O;R、R、R=H;R=CH;R10=−CH
である、式Vの化合物が望ましい。
【0087】
最も特定的には、
A) X=2個の水素原子;R、R、R=H;R=CH;Z=CH;Rが、メチルまたは(C−C10)アルキル、アリールメチル、CCH−から選択される、
である、式VIの化合物が望ましい。
【0088】
スタウロスポリン誘導体およびその製造方法は、多くの先行文献で特に記載されており、当業者に周知である。
【0089】
式A、B、C、Dの化合物およびその製造方法は、例えば、欧州特許第0 657 458号(1995年6月14日発行)、欧州特許第0 624 586号(1994年11月17日発行)、欧州特許第0 470 490号(1992年2月12日発行)、欧州特許第0 328 026号(1989年8月16日発行)、欧州特許第0 384 349号(1990年8月29日発行)、ならびに多くの文献、例えばBarry M. Trost* and Weiping Tang Org. Lett., 3(21), 3409-3411に記載されている。
【0090】
式Iの化合物およびその製造方法は、欧州特許第0 296 110号(1988年12月21日発行)、ならびに米国特許第5,093,330号(1992年3月3日発行)、および日本特許第2 708 047号に特に記載されている。R上にテトラヒドロピラン−4−イル)−ラクトイル置換基を有する式Iの化合物は、欧州特許第0 624 590号(1994年11月17日発行)に記載されている。他の化合物は、欧州特許第0 575 955号(1993年12月29日発行)、欧州特許第0 238 011号(1987年9月23日発行)(UCN-O1)、国際特許出願第 EP98/04141号(WO99/02532として1998年7月3日発行)に記載されている。
【0091】
式IIの化合物およびその製造方法は、欧州特許第0 296 110号(1988年12月21日発行)、ならびに米国特許第5,093,330号(1992年3月3日発行)、および日本特許第2 708 047号に特に記載されている。
【0092】
式IIIの化合物およびその製造方法は、米国特許出願第US 920102号(1992年7月24日出願)の優先権を主張した特許出願(すなわち欧州特許第0 768 312号(1997年4月16日発行)、第1 002 534号(2000年5月24日発行)、第0 651 754号(1995年5月10日発行))に特に記載されている。
【0093】
式IVの化合物およびその製造方法は、英国特許出願第GB 9309602号および第GB 9403249号(それぞれ1993年5月10日および1994年2月21日に出願)の優先権を主張した特許出願(すなわち欧州特許第0 624 586号(1994年11月17日発行)、第1 002 534号(2000年5月24日発行)、第0 651 754号(1995年5月10日発行))に特に記載されている。
【0094】
式Vの化合物およびその製造方法は、英国特許出願第GB 8803048号、GB 8827565号、第GB 8904161号および第GB 8928210号(それぞれ、1988年2月10日、1988年11月25日、1989年2月23日、および1989年12月13日に出願)の優先権を主張した特許出願(すなわち欧州特許第0 328 026号(1989年8月16日発行)および第0 384 349号(1990年8月29日発行))に特に記載されている。
【0095】
式VIの化合物およびその製造方法は、米国特許出願第07/777,395号(Con)(1991年10月10日出願)の優先権を主張した特許出願(すなわち国際特許出願第WO 93/07153号(1993年4月15日発行))に特に記載されている。
【0096】
特許出願または科学文献の引例が、特にスタウロスポリン誘導体化合物を示すそれぞれの場合において、最終生成物の対象物、医薬製剤および請求項は、これらの文献について言及することによって本明細書に組み込まれる。
【0097】
コード番号、一般名または商品名によって識別された活性な薬物の構造は、標準的な抄録 “The Merck Index”の現行の版または例えば Patents International (例えばIMS World Publications)といったデータベースから取得され得る。その対応する内容は、言及によって組み込まれている。
【0098】
本発明の望ましいスタウロスポリン誘導体は、式(VII):
【化5】

のN−[(9S,10R,11R,13R)−2,3,10,11,12,13−ヘキサヒドロ−10−メトキシ−9−メチル−1−オキソ−9,13−エポキシ−1H,9H−ジインドロ[1,2,3−gh:3',2',1'−lm]ピロロ[3,4−j][1,7]ベンゾジアゾニン−11−イル]−N−メチルベンズアミドまたはその塩(以後、式VIIの化合物またはMIDOSTAURIN)である。
【0099】
式VIIの化合物はまた、MIDOSTAURIN[国際一般名]またはPKC412としても知られている。
MIDOSTAURINは、天然由来のアルカロイドであるスタウロスポリンの誘導体であり、欧州特許第0 296 110号(1988年12月21日発行)、ならびに米国特許第5,093,330号(1992年3月3日発行)、および日本特許第2 708 047号に特に記載されている。
【0100】
さらに、本発明は、増殖性疾患の処置に使用する医薬を製造するための、式Iの化合物(またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグエステル)の使用を提供する。
【0101】
さらなる態様において、本発明は、増殖性疾患、特に肉腫、より特定的にaRMSを処置するための、式Iの化合物(またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグエステル)の使用を提供する。
【0102】
また、さらなる態様において、本発明は、活性成分として、増殖性疾患、特に肉腫、より特定的にはaRMSの処置に使用するための、式Iの化合物(またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグエステル)を提供する。
【0103】
また、さらなる態様において、本発明は、式Iの化合物(またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグエステル)を、増殖性疾患、特に肉腫、より特定的にはaRMSの処置のための使用についての指示書と共に含むパッケージを提供する。
【0104】
本明細書中で用いる用語“進行の遅延”は、処置されるべき増殖性疾患の初期段階である患者に対する該組成物の投与を意味する。
【0105】
本明細書中で用いる“固形腫瘍疾患”という用語は、神経膠腫、甲状腺癌、乳癌、卵巣癌、直腸および一般的に消化器の癌、子宮頸癌、肺癌、特に小細胞肺癌および非小細胞肺癌、頭頚部癌、膀胱癌、前立腺癌、または肉腫、例えばカポジ肉腫または胞巣状横紋筋肉腫を含み、これらに限定されない。本発明の一つの望ましい態様において、処置されるべき腫瘍疾患は、胞巣状横紋筋肉腫、神経膠腫、前立腺癌、または甲状腺癌である。本組成物は、固形腫瘍だけではなく液性腫瘍(liquid tumor)の成長も阻害する。さらに、腫瘍のタイプおよび用いられる特定の組成物に依存して、腫瘍体積の減少ももたらされ得る。本明細書中で開示した組成物はまた、腫瘍の転移の広がりおよびミクロ転移の成長または発症を予防するのに適している。
【0106】
固形腫瘍疾患などの増殖性疾患の性質は、多因子性である。特定の状況下では、異なる作用メカニズムを有する薬物を組み合わせ得る。しかし、異なる作用方法を有する薬物の何らかの組み合わせを単に考慮するだけでは、有益な効果を有する組み合わせに必ずしも至らない。
【0107】
一つの態様において、本発明の組成物は、放射線と組み合わせて投与される。組み合わせとは、ある量の電離放射線の投与と組み合わせたある量の式Iの化合物の投与であって、それにより、電離放射線を別個に、同時にまたは連続して投与せずに式Iの化合物を投与したならば得られない相乗効果があるものを言う。ここで、電離放射線の投与は、継続的、連続的または散発的であり得る。あるいは、別個に、同時にまたは連続して、式Iの化合物を投与(該投与は継続的、連続的または散発的であり得る)せずに、電離放射線を投与したならば、その効果は得られない。
【0108】
好ましくは、組み合わせは、ある量の電離放射線の投与と組み合わせたある量の式Iの化合物の投与であって、それにより、もし
a. 電離放射線が、その前に、それと同時に、またはそれに続いて投与されずに、式Iの化合物が投与されても(該投与は継続的、連続的または散発的であり得る)
b. 式Iの化合物が、その前に、それと同時に、またはそれに続いて投与されずに、電離放射線が投与されても(該投与は継続的、連続的または散発的であり得る)
得られない、相乗的な抗増殖効果および/またはクローン原性細胞死効果があるものを言う。
【0109】
上記および下記の“電離放射線”という用語は、電磁波(例えばX線およびγ線)または粒子線(例えばα粒子線およびβ粒子線)の何れかとして生じる電離放射線を意味する。電離放射線は、放射線治療(これに限定されない)で提供され、当技術分野で既知である(Hellman, Principles of Radiation Therapy, Cancer, in Principles and Practice of Oncology, 248-275 (Devita et al., ed., 4th Ed., V1, 1993)。
【0110】
本発明の別の組み合わせにおいて、式Iの化合物およびその薬学的に許容される塩およびプロドラッグ誘導体は、好ましくは、所望により無機または有機の固体または液体の、投与に適切な薬学的に許容される担体と共にまたは混合して、関連する治療に有効な量の活性成分を含む医薬製剤の形態で用いられる。
【0111】
望ましい態様において、それぞれの患者は、式Iの化合物の投与と同時期に、電離放射線の投与を受ける。
【0112】
代替の態様において、電離放射線は、前処置として、すなわち本発明の組成物での処置を開始する前に、電離放射線を投与する。電離放射線のみを一定時間患者に投与し、例えば電離放射線を1日1回、2、3日間または2、3週間投与する。
【0113】
上で記載したように、上記の疾患および状態を処置するために用いられるべきFLT−3阻害剤の正確な投与量は、宿主、処置される状態の性質および重症度、投与方法を含む幾つかの因子に依存する。しかしながら、一般的に、FLT−3阻害剤が非経腸で(例えば腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内または直腸内)、または経腸で(例えば経口)、好ましくは静脈内で、または好ましくは経口で、静脈内で、0.1から10mg/kg体重で、好ましくは1から5mg/kg体重で投与されたとき、満足のいく結果が達成される。ヒトの試験において、最大耐容用量(MTD)は225mg/日であろうと推定された。望ましい静脈内1日用量は、0.1から10mg/kg体重であり、より大きな霊長類では、200〜300mgの1日用量であった。典型的な静脈内投与量は、3から5mg/kgで、週3回から5回である。
【0114】
最も好ましくは、FLT−3阻害剤、特にMIDOSTAURINは、経口で、例えばミクロエマルジョン、軟ゲル、または固体分散物などの投与形態で、1日1回、2回または3回で投与される場合に約250mg/日までの、特に225mg/日までの投与量で投与される。
【0115】
通常、始めに少ない用量で投与し、処置される宿主に最適の投与量が決まるまで投与量を徐々に増大させる。投与量の上限は、副作用によって定められるものであり、処置される宿主についての試験によって決定され得る。
【0116】
FLT−3阻害剤は、1種以上の薬学的に許容される担体、および1種以上の慣用の医薬アジュバントと組み合わされてもよく、また経腸で、例えば経口で、錠剤、カプセル剤などの形態で、あるいは、非経腸で、例えば腹腔内または静脈内で、滅菌処理された注射用溶液または懸濁液の形態で投与されてもよい。
【0117】
本発明による輸液は、好ましくは滅菌処理されている。これは、例えば滅菌濾過膜での濾過によって、容易に達成され得る。液体形態の全ての組成物の無菌製剤、バイアルの無菌封入、および/または本発明の医薬組成物を無菌条件下で適当な希釈剤と合わせることは、当業者に周知である。
【0118】
FLT−3阻害剤は、上で挙げた疾患および状態を処置するのに有効な量の活性な物質を含む、経腸および非経腸の医薬組成物に製剤化され得る。該組成物は、単位投与形であり、また該組成物は、薬学的に許容される担体を含む。
【0119】
FLT−3阻害剤の有用な組成物の例は、欧州特許第0 296 110号、第0 657 164号、第0 296 110号、第0 733 372号、第0 711 556号、第0 711 557号に記載されている。
【0120】
FLT−3阻害剤の望ましい組成物は、欧州特許第0 657 164号(1995年6月14日発行)に記載されている。記載された医薬組成物は、飽和ポリアルキレン グリコール グリセリド中の式Iの化合物、例えばMIDOSTAURINの溶液または分散液を含み、ここで、該グリコール グリセリドは、1種以上のC−C18飽和脂肪酸グリセリルおよびポリエチレングリコールエステルの混合物である。
【0121】
FLT−3阻害剤のこのような組成物の2つの製造方法を以下に記載する:
【0122】
組成物A:
Gelucire 44/14 (82部)を、60℃に加熱することによって融解する。粉末状MIDOSTAURIN (18部)を融解した物質に加える。得られた混合物を均質化し、得られた分散体を異なるサイズの硬ゼラチンカプセルに入れ、その結果、25mg用量のMIDOSTAURINを含むものと、75mg用量のMIDOSTAURINを含むものを得る。得られたカプセルは経口投与に適当である。
【0123】
組成物B:
Gelucire 44/14 (86部)を60℃に加熱することによって融解する。粉末状MIDOSTAURIN (14部)を融解した物質に加える。該混合物を均質化し、得られた分散体を異なるサイズの硬ゼラチンカプセルに入れ、その結果、25mg用量のMIDOSTAURINを含むものと75mg用量のMIDOSTAURINを含むものを得る。得られたカプセルは経口投与に適当である。
【0124】
Gelucire 44/14 (Gattefosseにより市販)は、C8−C18飽和脂肪酸とグリセロールのエステル、および約1500の分子量を有するポリエチレン グリコールの混合物であり、詳述すると、脂肪酸成分の組成は、4〜10重量% カプリル酸、3〜9重量% カプリン酸、40〜50重量% ラウリン酸、14〜24重量% ミリスチン酸、4〜14重量% パルミチン酸および5〜15重量% ステアリン酸である。
【0125】
Gelucire製剤の望ましい例は、
Gelucire (44/14):47g
MIDOSTAURIN: 3.0g(60mLのツイスト・オフ・フラスコに充填)
からなる。
【0126】
軟ゲルの望ましい例は、下記のマイクロエマルジョンを含む。
【表1】

【0127】
しかし、それが例示のみのためであることは、明確に理解されるべきである。
【0128】
特に、本発明の組成物の治療上有効量のそれぞれの組み合わせパートナーは、同時にまたは何れかの順序で連続して投与されてもよく、該成分は、別個にまたは固定化された組み合わせ剤として投与されてもよい。例えば、本発明による増殖性疾患の進行の遅延または処置は、(i) 第1組み合わせパートナーの投与;および(ii) 第2組み合わせパートナーの投与を含んでもよく、ここで、組み合わせパートナーの投与は、同時にまたは何れかの順序で連続して、併用治療上有効な量で、好ましくは相乗効果有効量で、例えば本明細書中で記載した量に対応する1日用量または1週用量で行われ得る。本発明の組成物の個別の組み合わせパートナーは、治療工程の間の異なる時間で、または同時に投与され得る。さらに、投与という用語はまた、in vivoで組み合わせパートナーそれ自体に変換される式Iの化合物のプロドラッグの使用を含む。本発明は、従って、全てのこのような同様のまたは交互の処置レジメを含むと理解されるべきであり、「投与」という用語は、これに従って解釈されるべきである。
【0129】
互いに関連する電離放射線と式Iの化合物の用量は、好ましくは、相乗効果の比率である。
【0130】
式Iの化合物の特定の投与方法および用量は、患者の特色、特に年齢、体重、ライフスタイル、活動レベルなどを考慮して、担当医によって選択され得る。
【0131】
式Iの化合物の用量は、種々の因子、例えば活性成分の作用の有効性および持続時間、投与方法、電離放射線の作用の有効性および持続時間、および/または処置される対象の性別、年齢、体重および個々の状態に依存し得る。
【0132】
電離放射線の用量は、種々の因子、例えば電離放射線の有効性および持続時間、投与方法、投与される場所、式Iの化合物の作用の有効性および持続時間、および/または処置される対象の性別、年齢、体重および個別の条件に依存し得る。電離放射線の用量は、一般的に放射吸収量、時間、時間およびフラクションであり、担当医によって注意深く定義されなければならない。
【0133】
本発明の一つの望ましい態様において、該組み合わせ剤は、式(VII):
【化6】

のN−[(9S,10R,11R,13R)−2,3,10,11,12,13−ヘキサヒドロ−10−メトキシ−9−メチル−1−オキソ−9,13−エポキシ−1H,9H−ジインドロ[1,2,3−gh:3',2',1'−lm]ピロロ[3,4−j][1,7]ベンゾジアゾニン−11−イル]−N−メチルベンズアミドまたはその塩を含む。
【0134】
さらに、本発明は、増殖性疾患を有する温血動物を処置する方法であって、増殖性疾患に対して治療上有効である方法で本発明の組成物を該動物に投与することを含む方法で、かつ該組み合わせパートナーがその薬学的に許容される塩の形態で存在し得る方法に関する。
【0135】
さらに、本発明は、増殖性疾患の進行の遅延または処置のための本発明の組成物の使用、ならびに増殖性疾患の進行の遅延または処置のための医薬の製造における本発明の組成物の使用に属する。
【0136】
本発明の一つの態様において、式Iの化合物の投与に際して、時に見られる下痢を防ぎ、制御し、または止めるために、止瀉薬が本発明の組成物と共に投与される。従って、本発明はまた、式Iの化合物の投与に関連する下痢を防ぐ、制御するまたは止める方法であって、本発明の組成物での処置を受けた患者に有効量の止瀉薬を投与することを含む方法に関する。止瀉薬とその投与のためのプロトコルは、当業者に既知である。本方法および本組成物における使用に適当な止瀉薬は、天然オピオイド類、例えばアヘンチンキ、パレゴリックおよびコデイン、合成オピオイド類、例えばジフェノキシラート、ジフェノキシンおよびロペラミド、次サリチル酸ビスマス、オクトレチド(例えばSANDOSTATINTMとして市販されている)、モチリン・アンタゴニストおよび伝統的な抗下痢治療薬、例えばカオリン、ペクチン、ベルベリンおよびムスカリン作用薬を含み、これらに限定されない。
【0137】
下記の実施例は、本発明を説明することを意図しており、それに限定されると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0138】
実施例1
染色体の転座生成物は、腫瘍形成プロセスにおいて、および治療的介在のための標的として、重大な役割を果たす。しかしながら、BCR/ABL(このキナーゼ活性は、特に小分子化合物(Glivec)によって特異的に阻害され得る)と異なり、ほとんどの染色体転座は、天然の腫瘍形成転写因子を上方制御するか、またはキメラ腫瘍形成転写因子を発生させ、これらは一般に小分子化合物での阻害ではあまり修正され得ない。
【0139】
近年、我々は、染色体転座イベントt(2;13)によるキメラ融合タンパク質PAX3/FKHRを発現する小児肉腫胞巣状横紋筋肉腫(“aRMS”)に特徴的な遺伝子サインを立証した。このサインに基づいて、潜在的な治療標的分子の幾つかをさらなる試験で選択し、例えばFGFR2である。ここで、我々は、本来PKCに対して開発されたスタウロスポリン誘導体であるPKC412が、aRMS細胞のin vitroでの細胞成長を有効に阻害し、カスパーゼ3活性の増加によりアポトーシスを誘導させ得ることを示す。さらに、腫瘍成長はまた、マウス異種移植片腫瘍モデルを用いて、in vivoで阻害され得た。
【0140】
siRNAまたはアンチセンス・オリゴヌクレオチドの何れかによるPAX3/FKHRの特定の下方制御が、同様に、aRMS細胞においてアポトーシスを誘発し得るため、我々は、特定の標的遺伝子、例えばCB1の発現を分析することによって、PKC412のPAX3/FKHRに対する全ての可能性のある効果を調べた。興味深いことに、CB1発現は、PKC412での処置によって、完全に消失し、このことは、該化合物がPAX3/FKHRの活性を制御することを示唆している。驚くべきことに、この阻害はまた、PAX3/NCOA1でも観察され、従って、このことは融合タンパク質のPAX3部分がPKC412の阻害機能の標的であることを示唆している。最終的に、我々は、活性のレギュレーターとして作用する可能性がある、PAX3領域中の幾つかのリン酸化部位を同定した。
【0141】
これらの試験は、aRMSのPKC412での処置が、PAX3/FKHRであるキメラ腫瘍形成転写因子の活性の阻害により介在されると考えられる、in vitroおよびin vivoでのアポトーシス細胞死および腫瘍成長阻害の誘発をもたらすことを示唆している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増殖性疾患の処置が必要な対象において増殖性疾患を処置する方法であって、該方法が、式(I)〜(VI):
【化1】

[式中、
およびRは、互いに独立して、非置換または置換アルキル、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、エーテル化またはエステル化ヒドロキシ、アミノ、一置換または二置換アミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、置換メルカプト、カルボキシ、エステル化カルボキシ、カルバモイル、N−一置換またはN,N−二置換カルバモイル、スルホ、置換スルホニル、アミノスルホニルまたはN−一置換またはN,N−二置換アミノスルホニルであり;
nおよびmは、互いに独立して、0から4の数(0および4を含む)であり;
n'およびm'は、互いに独立して、1から4の数(1および4を含む)であり;
、R、RおよびR10は、互いに独立して、水素、それぞれ29個までの炭素原子を有する脂肪族、炭素環または炭素環−脂肪族基、それぞれ20個までの炭素原子およびそれぞれ9個までのヘテロ原子を有するヘテロ環またはヘテロ環−脂肪族基、30個までの炭素原子を有するアシルであり、この場合、Rは存在しなくてもよく;
あるいは、Rは30個までの炭素原子を有するアシルであり、そしてRはアシルではなく;
が存在しないならばpは0であり、あるいはRおよびRが両方とも存在し、それぞれ上記の基であるならばpは1であり;
は、水素、それぞれ29個までの炭素原子を有する脂肪族、炭素環または炭素環−脂肪族基、またはそれぞれ20個までの炭素原子およびそれぞれ9個までのヘテロ原子を有するヘテロ環またはヘテロ環−脂肪族基、または30個までの炭素原子を有するアシルであり;
、RおよびRは、アシルまたは−(低級アルキル)−アシル、非置換または置換アルキル、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、エーテル化またはエステル化ヒドロキシ、アミノ、一置換または二置換アミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、置換メルカプト、カルボキシ、カルボニル、カルボニルジオキシ、エステル化カルボキシ、カルバモイル、N−一置換またはN,N−二置換カルバモイル、スルホ、置換スルホニル、アミノスルホニルまたはN−一置換またはN,N−二置換アミノスルホニルであり;
Xは、2個の水素原子を表すか、1個の水素原子およびヒドロキシを表すか、Oを表すか、あるいは水素および低級アルコキシを表し;
Zは、水素または低級アルキルを表し;
波線によって示された2個の結合は環A中では存在せず、4個の水素原子によって置き換えられ、そして環B中の2本の波線はそれぞれ、各々と平行な結合と一体となって二重結合を表すか、
あるいは、波線によって示された2個の結合は環B中では存在せず、総計4個の水素原子によって置き換えられ、そして環A中の2本の波線はそれぞれ、各々と平行な結合と一体となって二重結合を表すか、
あるいは、環A中および環Bの両方で、4本の波線全てが存在せず、総計8個の水素原子によって置き換えられている。]
の化合物、または少なくとも1個の塩形成基が存在するならばその塩
から選択される化合物を投与することを含み、そして
該増殖性疾患が、PAX/FKHR転座と関連している方法。
【請求項2】
式I:
【化2】

[式中、
mおよびnは、それぞれ0であり;
およびRは、互いに独立して水素であるか、非置換であるか、またはカルボキシ、低級アルコキシカルボニルおよびシアノから互いに独立して選択される基によって一置換または二置換されている、特に一置換されている低級アルキルであるか、
あるいはRは水素または−CHであり、そして
は、式:R−CO {ここで、Rは低級アルキルである}のアシル;アミノ−低級アルキル{ここで、該アミノ基は非保護形態で存在するか、または低級アルコキシカルボニルによって保護されている};テトラヒドロピラニルオキシ−低級アルキル;フェニル;イミダゾリル−低級アルコキシフェニル;カルボキシフェニル;低級アルコキシカルボニルフェニル;ハロゲン−低級アルキルフェニル;イミダゾール−1−イルフェニル;ピロリジノ−低級アルキルフェニル;ピペラジノ−低級アルキルフェニル;(4−低級アルキルピペラジノメチル)フェニル;モルホリノ−低級アルキルフェニル;ピペラジノカルボニルフェニル;または(4−低級アルキルピペラジノ)フェニルであるか、
または式:R−O−CO−{ここで、Rは低級アルキルである}のアシルであるか、
または式:RHN−C(=W)−{ここで、Wは酸素であり、そしてRは、モルホリノ−低級アルキル、フェニル、低級アルコキシフェニル、カルボキシフェニル、または低級アルコキシカルボニルフェニルの意味を有する}のアシルであるか、
またはRは、低級アルキルフェニルスルホニル、典型的に4−トルエンスルホニルであり;
は、水素または低級アルキルであり:
Xは、2個の水素原子またはOを表し;
Zは、メチルまたは水素である。]
の化合物、または少なくとも1個の塩形成基が存在するならばその塩を投与することを含み、そして
該増殖性疾患がPAX/FKHR転座と関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
N−[(9S,10R,11R,13R)−2,3,10,11,12,13−ヘキサヒドロ−10−メトキシ−9−メチル−1−オキソ−9,13−エポキシ−1H,9H−ジインドロ[1,2,3−gh:3',2',1'−lm]ピロロ[3,4−j][1,7]ベンゾジアゾニン−11−イル]−N−メチルベンズアミドを投与することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
対象が増殖性疾患を有する温血動物である請求項1、2または3に記載の方法であって、該動物に、請求項1、2または3の何れか1項に記載の組成物を、増殖性疾患に対して治療上有効な方法で投与することを含む方法。
【請求項5】
増殖性疾患に対して治療上有効な量の式Iの化合物および少なくとも1種の薬学的に許容される担体を投与することを含む、請求項1から4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
増殖性疾患の進行を遅らせるための、該処置が必要な対象における請求項1、2、3、4または5に記載の方法。
【請求項7】
該PAX/FKHR転座が、PAX3/FKHR転座およびPAX7/FKHR転座から選択される、PAX/FKHR転座と関連する増殖性疾患の処置のための、請求項1、2、3、4または5に記載の方法。
【請求項8】
増殖性疾患の進行の遅延または処置に使用する医薬の製造における、請求項1、2または3に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項9】
該増殖性疾患が肉腫である、請求項6、7または8に記載の方法。
【請求項10】
該増殖性疾患がPAX3/FKHR転座と関連する、請求項6、7または8に記載の方法。
【請求項11】
該増殖性疾患が胞巣状横紋筋肉腫である、請求項6、7または8に記載の方法。
【請求項12】
AがOまたはNRNを表し、ここでRNが水素または低級アルキルであり、Rが水素または低級アルキルであり、そしてZがOまたは結合である式Iの化合物(またはその薬学的に許容される塩またはプロドラッグエステル)を、増殖性疾患の処置に使用するための指示書と共に含むパッケージ。

【公表番号】特表2009−515858(P2009−515858A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539452(P2008−539452)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068410
【国際公開番号】WO2007/054579
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(501393966)ウニヴェルジテート・チューリッヒ (13)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAET ZUERICH
【Fターム(参考)】