説明

胡瓜の漬物における製造方法

【課題】 胡瓜の漬物において、適度な歯ごたえを有するようにすると共に食べ易くし、しかも歯切れを持たせて食感の良いものにすることのできる胡瓜の漬物における製造方法を提供する。
【解決手段】 塩漬けされかつ表皮を剥離した胡瓜を、人が食することができる大きさに切断かつ水洗いによる塩抜きを行い、切断及び塩抜きを行った後、温度約65℃〜80℃かつ時間約20分〜30分による燻製処理を行って、この燻製処理後に調味液に漬け込んで味付けを行うようにした胡瓜の漬物における製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胡瓜の漬物における製造方法であって、特に燻製処理を行うようにした胡瓜の漬物における製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、胡瓜の漬物を製造する方法としては、以下のような製造方法が知られていた。
生の胡瓜を、まず15%以上の塩分で漬け込み、つまり塩漬けを行う。この塩漬けを行った後、今度は塩抜きを行って、胡瓜の塩分を整える。そして、この胡瓜を調味液に浸して、味付けを行う。このような製造方法により胡瓜の漬物を製造するようにしていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、漬物という食品にとって、歯ごたえは非常に重要な要素であった。これは、漬物を食べたときに感じる堅さである歯ごたえによって、漬物としての美味しさが大きく左右されてしまうため、漬物に適度な歯ごたえを有するようにする必要があった。そこで、漬物を製造する際、塩漬けを行うことにより、組織を強固にして、漬物に適度な歯ごたえを有するようにしていた。
【0004】
しかしながら、前述した胡瓜の漬物における製造方法において出来上がった胡瓜の漬物にあっては、塩漬けによって組織が強固になり、堅さが増すようになるが、胡瓜の場合、その内側の部分と表皮の部分とで堅さが全く異なってしまい、特に、表皮の部分は非常に堅くなり過ぎて、実際に食べたとき、この堅くなった表皮の部分が非常に食べ難くなるという問題があった。
【0005】
そこで、前述の問題を無くすため、胡瓜の表皮を無くして、胡瓜の漬物を製造することも考えられるが、胡瓜はその90%以上が水分であり、胡瓜の表皮を無くして内側の部分のみにしてしまうと、今度は、食べたときの噛み切り具合である歯切れがほとんど無くなり、食感が非常に悪いものになるといった問題があった。
【0006】
本発明は、前記のそれぞれの問題を鑑み、胡瓜の漬物において、適度な歯ごたえを有するようにすると共に食べ易くし、しかも歯切れを持たせて食感の良いものにすることのできる胡瓜の漬物における製造方法を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の発明は、塩漬けされかつ表皮を剥離した胡瓜を、人が食することができる大きさに切断かつ水洗いによる塩抜きを行い、切断及び塩抜きを行った後、温度約65℃〜80℃かつ時間約20分〜30分による燻製処理を行って、この燻製処理後に調味液に漬け込んで味付けを行うようにした胡瓜の漬物における製造方法である。
【0008】
第二の発明は、第一の発明において、燻製処理後で調味液に漬け込んで味付けを行う前に圧搾を行って、この圧搾によって胡瓜を圧搾前の重量の50%〜60%重量になるようにした胡瓜の漬物における製造方法である。
【0009】
第三の発明は、第一の発明又は第二の発明において、胡瓜を調味液に漬け込んで味付けを行った後、袋詰めを行い、袋詰めを行った後に温度90度前後の熱水による殺菌を行うようにした胡瓜の漬物における製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
第一の発明によれば、胡瓜の表皮を剥離したことにより、漬物としての滑らかな食感を有することができ、非常に食べ易いものにすることができる。しかも、調味液による味付けにおいて、表皮が剥離されていることで、味ののりを極めて良好に行うことができる。また、温度約65℃〜80℃かつ時間約20分〜30分による燻製処理を行うことにより、胡瓜の表皮が無くても適度な歯切れを持たせて食感の良いものにすることができると共に、さらに燻製によるほのかな香りが付くことにより風味を持たせて漬物としての美味しさを際立たせることができ、しかも、燻製の防腐効果により日持ちのする、すなわち保存性の良いものにすることもできる。このように胡瓜の表皮を剥離すると共に、燻製処理を行うことにより、適度な歯ごたえを有するようにすると共に食べ易くし、しかも歯切れを持たせて食感の良いものにすることで、極めて美味しい漬物にすることができる。
【0011】
第二の発明によれば、燻製処理後に圧搾を行って、この圧搾によって胡瓜を圧搾前の重量の50%〜60%重量になるようにしたにより、前の燻製処理によって胡瓜にある程度の適度な歯切れを持たせたものをさらに食べたときの噛み切り具合が最高となる極めて良好な歯切れを持たせることができる。
【0012】
第三の発明によれば、袋詰めを行った後に温度90度前後の熱水による殺菌を行うことにより、袋の内部に入れた胡瓜の漬物の歯切れを損なうこと無く良好に殺菌を行うことで、胡瓜の漬物である食品としての安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明による胡瓜の漬物における製造方法の一実施形態について説明する。
まず、胡瓜を用意する。この用意する胡瓜は生の胡瓜でも塩付けされたものでもどちらでも良い。但し、生の胡瓜の場合は、表皮を剥離して、剥離後、塩漬けし、この塩漬けは約1日漬けておき、15%塩分程度となるようにしておく。一方、塩付けされた胡瓜の場合は、15%塩分程度のものを使用し、この胡瓜の表皮を剥離しておく。
【0014】
そして、このように用意された塩漬けされかつ表皮を剥離した胡瓜を、人が食することができる大きさに切断し、具体的には、後述する胡瓜の圧搾を考慮して、6mm〜8mm程度の幅で切断するのが最も好ましいが、これに限定されるものではない。
【0015】
塩漬け及び表皮を剥離した胡瓜を切断した後、この胡瓜に対して水洗いによる塩抜きを行って、胡瓜の塩分を整える。これは、水洗いすることにより、塩抜きつまりは脱塩するものであり、この脱塩の目安としては塩分0.5%以下である。
【0016】
なお、前述したものは、塩漬け及び表皮を剥離した胡瓜を切断した後に水洗いによる塩抜きを行っているが、これとは逆に、先に水洗いによる塩抜きを行い、塩抜きを行った後に胡瓜を人が食することができる大きさに切断するようにしても良い。
【0017】
そして、次に切断及び塩抜きが行われた胡瓜に燻製処理を行う。この燻製処理にあっては、温度を約65℃〜80℃とし、時間を約20分〜30分の短時間とする。ただし、この燻製処理の条件において、一番最適な条件は、温度約70℃、時間約25分〜30分である。また、燻材としては、一般的な堅木で樹脂分の少ないカシ、カシワ、サクラ、ナラ、クヌギ、ケヤキ、ブナ等のおがくず、木くず、まき等が良いが、これらに限定されるものではない。
【0018】
燻製処理後、燻製処理が行われた胡瓜に圧搾を行う。この圧搾にあっては、プレス装置によって行われ、胡瓜を圧搾前の重量の50%〜60%重量になるようにする。この圧搾により前の燻製処理によって胡瓜にある程度の適度な歯切れを持たせたものをさらに食べたときの噛み切り具合が最高となる極めて良好な歯切れを持たせることができる。
【0019】
そして、圧搾が行われた胡瓜を調味液に漬け込んで味付けを行う。この味付けは調味液によって異なるが、調味液に浸して約6時間〜24時間、冷蔵庫に入れて低温にて漬け込むことで、味を付ける。この味付けに使用する調味液は、例えば、醤油を主体にして、これに酢等の酸味料、昆布や鰹節や煮干やシイタケ等の煮出汁である旨味料等を混ぜ合わせたものである。なお、この調味液については、これらに限定されるものではなく、他のものでも良い。
【0020】
次に、調味液に漬け込んで味付けを行った胡瓜の漬物の袋詰めを行う。この袋詰めは所定の規格の重量になるように行う。袋は食品を密封可能にする食品専用の袋である。
【0021】
そして、袋詰めを行った後、熱水による殺菌を行って、食品としての安全性を高める。この熱水は、その温度を90度前後とすることが好ましい。これは内部に入れた胡瓜の漬物の歯切れを損なうこと無く良好に殺菌を行うことができるからである。
【0022】
熱水による殺菌を行った後、今度は冷却を行う。この冷却は、袋詰めした胡瓜の漬物を流水で充分に冷やすものである。
【0023】
なお、すぐに販売する場合は、袋詰め以降の工程を無くして、袋に詰めることなく味付けを行った胡瓜の漬物を直に販売するようにしても良い。また、袋詰めすることなく熱水による殺菌のみを行うようにしても良い。
【0024】
以上のような各工程を経て出来上がった胡瓜の漬物にあっては、漬物としての味、風味とも格別な美味しさにすることができ、今までに味わったことのない極めて画期的な胡瓜の漬物にすることができる。
【0025】
特に、最初に胡瓜の表皮を剥離することで、漬物としての滑らかな食感を有することができると共に、従来塩漬けにより堅くなる表皮の部分が無くなることにより、非常に食べ易いものにすることができる。しかも、後工程で行う調味液による味付けにおいて、表皮を剥離したことで、味ののりを極めて良好に行うことができる。
【0026】
一方、燻製処理を行うことで、胡瓜の表皮が無くても適度な歯切れを持たせて食感の良いものにすることができると共に、さらに燻製によるほのかな香りが付くことにより風味を持たせて漬物としての美味しさを際立たせることができ、しかも、燻製の防腐効果により日持ちのする、すなわち保存性の良いものにすることもできる。なお、燻製処理の時間を約25分〜30分と極めて短時間にしたことにより、胡瓜に強い燻製臭が付くのを無くして、燻製によるほのかな香りのみが付くようにすることができると共に、燻製処理によって茶色乃至黒褐色に近い色になることを極力抑えることができ、胡瓜の漬物を淡い色にすることも可能となり、例えば、紅色等の食欲をそそる色合いにすることもできる。
【0027】
このように本発明による胡瓜の漬物における製造方法によって出来上がった胡瓜の漬物にあっては、適度な歯ごたえを有するようにすると共に食べ易くし、しかも歯切れを持たせて食感の良いものにすることで、極めて美味しい漬物にすることができる。
【0028】
次に、燻製処理の条件を異ならせて行った実験例について説明する。
この実験例としては、その燻製処理の条件を、温度40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃で、時間10分、15分、20分、25分、30分、40分、60分、100分、120分で、それぞれ行う。そして、燻製処理後の胡瓜に圧搾及び調味液による味付け等の工程をそれぞれ行って、最終的なものでの胡瓜の漬物としての良し悪しを判断した。具体的には、○が非常に良い、△がやや良い、×が悪いで表中に表わした。
【0029】
【表1】

【0030】
表1の実験結果から明らかなように、温度60℃でかつ時間30分と、温度70℃でかつ時間20分とにおいて、△のやや良いとなり、温度70℃でかつ時間25分と、温度70℃でかつ時間30分とにおいて、○の非常に良いとなり、さらに、温度80℃でかつ時間20分と時間25分と時間30分とにおいて、△のやや良いとなった。
【0031】
以上の結果から、燻製処理における温度と時間の条件としては、温度約65℃〜80℃、時間約20分〜30分が良いことが判明した。ただし、特に一番最適な条件は、温度約70℃、時間約25分〜30分が非常に良いことが判明した。この一番最適な条件では、胡瓜の漬物として、適度な歯ごたえ、食べ易さ、歯切れによる食感のすべてが最高であり極めて美味しい胡瓜の漬物になることがわかった。
【0032】
また、前記条件以外の条件では、胡瓜の漬物としては、歯ごたえが無かったり、食べ難くなったり、あるいは、歯切れの無い食感が非常に悪くなるといった問題がそれぞれあった。これは、低温で極めて短時間の場合、例えば温度40℃や50℃でかつ時間10分の場合、非常に柔らかくて歯ごたえが全く無い食感の悪いものとなり、しかも、燻製による防腐効果も全く有さないといった問題があり、胡瓜の漬物として不適当であった。また、低温で長時間の場合、例えば温度40℃でかつ時間60分や100分や120分の場合、非常に柔らかく歯ごたえが無い食感の悪いものとなると共に、強い燻製臭が付いたりあるいは表面が黒ずんだりといった問題があり、胡瓜の漬物として不適当であった。さらに、高温で極めて短時間の場合、例えば温度90℃や100℃でかつ時間10分の場合、表面が焼け焦げた感じになり、食感が非常に悪いものになるといった問題があり、胡瓜の漬物として不適当であった。また、高温で長時間の場合、例えば温度90℃や100℃でかつ時間100分や120分のとき、すべて焼け焦げてしまい全体が乾燥して、しかも強い燻製臭が付いて食品として食することができないといった問題があり、胡瓜の漬物として不適当であった。
【0033】
一方、胡瓜の表皮を剥離したものと、そうでない(表皮を残した)ものとを同じ条件で燻製処理する実験も行った。燻製処理の条件としては、前述の燻製処理における実験例で判明した一番最適な条件となる温度70℃でかつ時間25分で行う。この実験により、以下のことが判明した。
【0034】
胡瓜の表皮を剥離したものは、滑らかな食感を有し、しかも非常に食べ易くなると共に、前述した条件による燻製処理により、適度な歯切れを持った食感の良いものにすることで、美味しさが際立った胡瓜の漬物にすることができた。一方、胡瓜の表皮を剥離しない、つまり表皮を残したものは、表皮の部分が塩漬けによって堅くなり、しかも燻製処理によりさらに表皮の部分が堅くなり過ぎて、非常に食べ難くなると共に、滑らかな食感や適度な歯切れも全く無く、漬物としての美味しさが無くなっていた。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩漬けされかつ表皮を剥離した胡瓜を、人が食することができる大きさに切断かつ水洗いによる塩抜きを行い、切断及び塩抜きを行った後、温度約65℃〜80℃かつ時間約20分〜30分による燻製処理を行って、この燻製処理後に調味液に漬け込んで味付けを行うようにしたことを特徴とする胡瓜の漬物における製造方法。
【請求項2】
燻製処理後で調味液に漬け込んで味付けを行う前に圧搾を行って、この圧搾によって胡瓜を圧搾前の重量の50%〜60%重量になるようにしたことを特徴とする請求項1記載の胡瓜の漬物における製造方法。
【請求項3】
胡瓜を調味液に漬け込んで味付けを行った後、袋詰めを行い、袋詰めを行った後に温度90度前後の熱水による殺菌を行うようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の胡瓜の漬物における製造方法。