胴縁、胴縁受部材及び下地部材
【課題】胴縁及び胴縁受部材で構成される下地部材の変形を抑制する。
【解決手段】胴縁受部材6は、ボルト穴11が形成された底板部12と、底板部12の両端縁において上側に鋭角に屈曲形成された側板部13a,13bと、各側板部13a,13bの先端縁において外側に鋭角に屈曲形成される固定板部14a,14bとを備え、胴縁7は、外壁が取り付けられる天板部15と、天板部15の両端縁において下側に鋭角に屈曲形成された側板部16a,16bと、各側板部16a,16bの先端縁において外側に鋭角に屈曲形成された固定板部17a,17bとを備える。そして、固定板部17a,17bには、ビス8の先端を嵌め込み、ビス8を固定板部17a,17bに対して直角に配置した際に、ビス8の頭部を嵌め込んだアダプタ20が側板部16a,16bに当接又は近接する位置に、ガイド溝18が形成される。
【解決手段】胴縁受部材6は、ボルト穴11が形成された底板部12と、底板部12の両端縁において上側に鋭角に屈曲形成された側板部13a,13bと、各側板部13a,13bの先端縁において外側に鋭角に屈曲形成される固定板部14a,14bとを備え、胴縁7は、外壁が取り付けられる天板部15と、天板部15の両端縁において下側に鋭角に屈曲形成された側板部16a,16bと、各側板部16a,16bの先端縁において外側に鋭角に屈曲形成された固定板部17a,17bとを備える。そして、固定板部17a,17bには、ビス8の先端を嵌め込み、ビス8を固定板部17a,17bに対して直角に配置した際に、ビス8の頭部を嵌め込んだアダプタ20が側板部16a,16bに当接又は近接する位置に、ガイド溝18が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、躯体に取り付けられる胴縁、胴縁受部材及び下地部材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物に外壁などを取り付けるための下地部材は、建築物の躯体に固定されたボルトに取り付けられる胴縁受部材と、この胴縁受部材に取り付けられて外壁が取り付けられる胴縁とで構成される。この下地部材を構成する胴縁は、断面略矩形ハット状に形成されており、外壁が取り付けられる天板部と、天板部の両端縁において同じ面側に屈曲形成された一対の側板部と、各側板部の端縁において外側に屈曲形成されて前記天板部と略平行となり胴縁受部材に固定される一対の固定板部とで構成される。そして、各固定板部にビスをねじ込み、各固定板部と胴縁受部材とをビス留めすることで、胴縁を胴縁受部材に固定している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−100905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の胴縁及び胴縁受部材は、天板部、側板部及び固定板部がそれぞれ直角に屈曲された断面略矩形ハット状に形成されているため、胴縁を胴縁受けに固定する際や外壁などから加重を受けた際に、天板部、側板部及び固定板部が互いに撓みやすいという問題がある。
【0005】
ところで、ここのようなビス留めはインパクトレンチを用いて行うのが一般的である。ところが、インパクトレンチで固定板部に対して直角にビスをねじ込むのは難しく、作業者の力の入れ方によっては、ビスが固定板部に対して斜めにねじ込まれたり、固定板部が持ち上がったりするという不具合が発生する。そこで、インパクトレンチのアタッチメントを胴縁の側板部に当接又は近接させて、ビスのねじ込み方向を規制することも考えられる。しかしながら、従来の胴縁を用いると、側板部とアタッチメントが面接触するため、アタッチメントの回転に対する側板部の干渉が大きくなり、適切にビスを固定板部にねじ込むのが難しくなる。
【0006】
そこで、本発明は、変形を抑制することができる胴縁、胴縁受部材及び下地部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る胴縁は、胴縁受部材に取り付けられる胴縁であって、天板部と、天板部の両端縁において同じ面側に鋭角に屈曲形成された一対の側板部と、各側板部の端縁において外側に鋭角に屈曲形成されて天板部と略平行となり胴縁受部材に固定される一対の固定板部と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る胴縁によれば、一対の側板部を天板部側に向けて内側に入り込むように傾斜させることで、一対の側板部を広げる力に対して一対の側板部を内側に引き戻す強い復元力が作用する。このため、胴縁を胴縁受部材に固定する際や胴縁に取り付けられる外壁などから加重を受けた際に、胴縁が大きく変形するのを抑制することができる。
【0009】
この場合、固定板部は、ビス留めにより胴縁受部材に固定されることが好ましい。このように、ビス留めにより固定板部と胴縁受部材とを固定することで、胴縁受部材に対して胴縁を確実に固定することができる。しかも、一対の側板部が天板部側に向けて内側に入り込むように形成されていることから、ビスをねじ込む工具を側板部に当接させても、工具と側板部とは点でしか接触しない。その結果、工具の回転に対する側板部の干渉を最小限に抑えられるため、工具を側板部に近接又は当接させながらビスをねじ込むことができ、側板部を工具のガイドとして適切に機能させることができる。
【0010】
更に、固定板部には、ビスの位置決めを行うガイド溝が形成されており、ガイド溝は、ビスの先端を嵌め込んでビスを固定板部に対して直角に配置した際に、ビスを固定板部にねじ込む工具が側板部に当接又は近接する位置に形成されていることが好ましい。このように固定板部にガイド溝を形成すると、ビスの先端をガイド溝に嵌め込み工具を側板部に当接又は近接させることで、ビスを固定板部に対して直角に配置させることができる。これにより、側板部のガイド機能が効果的に発揮されるため、ビスが固定板部に対して傾いた状態でねじ込まれるなどの作業ミスを更に低減することができる。
【0011】
本発明に係る胴縁受部材は、建物躯体に取り付けられて胴縁が取り付けられる胴縁受部材であって、建物躯体に固定されたボルトがねじ込まれるボルト穴が形成された底板部と、底板部の両端縁において同じ面側に鋭角に屈曲形成された一対の側板部と、各側板部の端縁において外側に鋭角に屈曲形成されて底板部と略平行となり胴縁が固定される一対の固定板部と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る胴縁受部材によれば、一対の側板部を底板部側に向けて内側に入り込むように傾斜させることで、一対の側板部を広げる力に対して一対の側板部を内側に引き戻す強い復元力が作用する。このため、胴縁を胴縁受部材に固定する際や胴縁から加重を受けた際に、胴縁受部材に荷重を受けても胴縁受部材が大きく変形するのを抑制することができる。
【0013】
本発明に係る下地部材は、上記の何れかの胴縁と、上記の胴縁受部材と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る下地部材によれば、胴縁受部材及び胴縁の側板部がそれぞれ底板部側及び天板部側に向けて内側に入り込むように傾斜しているため、下地部材全体として大きな変形を抑制することができる。また、胴縁受部材と胴縁の各側板部により、ボルト穴が形成される胴縁受部材の底板部から胴縁の天板部までの空間を十分に確保できるため、ボルト穴からのボルトのねじ込み量を調整することにより行う下地部材のレベル調整幅を大きくとることができる。
【0015】
この場合、ボルト穴を交点とした交差状に前記胴縁受部材と前記胴縁とが固定されることが好ましい。このように胴縁受部材と胴縁とを配置すると、ボルト穴にねじ込んだボルトの先端を胴縁にまで到達させることで、胴縁及び胴縁受部材は一対の側板部の間にボルトが内挿される。これにより、加重を受けるなどして胴縁及び胴縁受部材が変形したとしても、このボルトが変形する胴縁及び胴縁受部材を受け止めるため、胴縁及び胴縁受部材が大きく変形するのを防止することができ、外壁などの破損まで進行するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る下地部材の一部分を示す破断斜視図である。
【図2】図1に示す下地部材の詳細図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図3】胴縁受部材の斜視図であり、(a)は上側から見た斜視図、(b)は下側から見た斜視図である。
【図4】胴縁受部材の平面図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図5】胴縁の斜視図であり、(a)は上側から見た斜視図、(b)は下側から見た斜視図である。
【図6】胴縁の平面図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図7】ガイド溝の形成位置を説明するための図である。
【図8】ジョイント部材を用いた胴縁の連結状態を示した図であり、(a)は2つの胴縁をジョイント部材で連結した状態を示した上面図、(b)はジョイント部材に胴縁を挿入した状態を示した斜視図である。
【図9】ジョイント部材の平面図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図10】比較例の胴縁にビスをねじ込む状態を示した図である。
【図11】本実施形態の胴縁に作用する復元力を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る胴縁、胴縁受部材及び下地部材の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、実施形態に係る下地部材の一部分を示す破断斜視図である。図2は、図1に示す下地部材の詳細図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。なお、図2(a)は、図1のII(a)線方向から見た図であり、図2(b)は、図1のII(b)線方向から見た図であり、図2(c)は、図1のII(c)線方向から見た図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、下地部材1は、コンクリートなどで構成された建築物の躯体2に外壁(不図示)を取り付けるためのものであり、外断熱工法などの場合は、断熱材3を介して躯体2に取り付けられる。この下地部材1は、躯体2に固定されたボルト5に取り付けられる胴縁受部材6と、胴縁受部材6に固定されて外壁が取り付けられる胴縁7とにより構成される。胴縁受部材6に対する胴縁7の固定は、ビス8を用いたビス留めにより行われ、胴縁7は、ジョイント部材9により複数本連結可能となっている。なお、本実施形態では、躯体2からボルト5が突出して延びる方向を下地部材1の高さ方向とし、下地部材1における躯体2側を下側(又は裏側)、下地部材1における躯体2の反対側を上側(又は表側)とする。
【0021】
図3は、胴縁受部材の斜視図であり、(a)は上側から見た斜視図、(b)は下側から見た斜視図である。図4は、胴縁受部材の平面図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【0022】
図3及び図4に示すように、胴縁受部材6は、上側に開放された断面略台形ハット状を成しており、例えば、1枚の矩形金属板が4箇所屈曲されることにより構成される。すなわち、胴縁受部材6は、ボルト5がねじ込まれるボルト穴11が形成された細長い矩形状の底板部12と、底板部12の幅方向両端縁において上側に鋭角に屈曲形成された細長い矩形状の一対の側板部13a,13bと、各側板部13a,13bの幅方向先端縁において外側(底板部12に対して各側板部13a,13bが屈曲する方向の反対側)に鋭角に屈曲形成される細長い矩形状の一対の固定板部14a,14bと、を備える。なお、本実施形態では、底板部12、側板部13a,13b、固定板部14a,14bの長辺方向(図4(a)において上下方向)を長さ方向とし、同短辺方向を幅方向とする。
【0023】
底板部12と各側板部13a,13bとの成す角と各側板部13a,13bと各固定板部14a,14bとの成す角とは、略同一(同一を含む)の角度となっており、底板部12と各固定板部14a,14bとは、略平行(並行を含む)となっている。また、側板部13aと側板部13bとの離間距離は、底板部12から固定板部14a,14bに向かうに従い狭くなっており、固定板部14aと固定板部14bとの離間距離は、底板部12の幅よりも狭い寸法となっている。また、胴縁受部材6の肉厚は、胴縁7の保持強度を確保する観点から、胴縁7と同じ又は胴縁7よりも厚くなっている。
【0024】
ボルト穴11は、ボルト5のネジ山に適合するタップ加工されており、ボルト5をねじ込むことが可能となっている。そして、底板部12は、ボルト穴11の周囲が他よりも肉厚となっており、ボルト穴11の長さが延長されている。これにより、ボルト5とボルト穴11との接合面積が増えるため、ボルト穴11にボルト5がねじ込まれた際に、ボルト5に対する胴縁受部材6の保持強度を向上させることができる。
【0025】
このボルト穴11は、例えば、パンチング加工により底板部12を下側に抜くことで形成することができる。その際、底板部12から抜いた部分を完全に剪断することなく一部を残しておくことで、底板部12から抜かれた部分が底板部12の下側に垂れるため、ボルト穴11の形成と、ボルト穴11の周囲を肉厚にしてボルト穴11の長さを延長することを同時に行うことができる。
【0026】
なお、ボルト穴11は、1つのみであってもよく、複数あってもよい。胴縁受部材6の安定性の観点から、ボルト穴11が1つの場合は、ボルト穴11を底板部12の中央に形成し、ボルト穴11が複数の場合は、ボルト穴11を底板部12に等間隔に形成することが好ましい。
【0027】
側板部13a,13bは、底板部12(固定板部14a,14b)に垂直な面(胴縁受部材6の高さ方向に平行な面)に対して底板部12側(固定板部14a,14b側)に倒れ込むように傾斜していればよく、その傾斜角度には制限されない。但し、胴縁受部材6の加工作業性や形状保持強度の観点から、その傾斜角度が3〜30°であることが好ましく、7〜20°であることが更に好ましい。なお、図では、その傾斜角度を15°としている。
【0028】
固定板部14a,14bは、ビス8により胴縁7と固定される部位である。このため、固定板部14a,14bは、作業性の観点から、ビス8をねじ込むために必要十分な幅を有することが好ましい。
【0029】
図5は、胴縁の斜視図であり、(a)は上側から見た斜視図、(b)は下側から見た斜視図である。図6は、胴縁の平面図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【0030】
図5及び図6に示すように、胴縁7は、下側に開放された断面略台形ハット状を成しており、例えば、1枚の金属板が4箇所屈曲されることにより構成される。すなわち、胴縁7は、外壁が取り付けられる細長い矩形状の天板部15と、天板部15の幅方向両端縁において下側に鋭角に屈曲形成された細長い矩形状の一対の側板部16a,16bと、各側板部16a,16bの幅方向先端縁において外側(天板部15に対して各側板部16a,16bが屈曲する方向の反対側)に鋭角に屈曲形成される細長い矩形状の一対の固定板部17a,17bと、を備える。なお、本実施形態では、天板部15、側板部16a,16b、固定板部17a,17bの長辺方向(図6(a)において左右方向)を長さ方向とし、同短辺方向を幅方向とする。
【0031】
天板部15と各側板部16a,16bとの成す角と各側板部16a,16bと各固定板部17a,17bとの成す角とは、略同一(同一を含む)の角度となっており、天板部15と各固定板部17a,17bとは、略平行(並行を含む)となっている。また、側板部16aと側板部16bとの離間距離は、天板部15から固定板部17a,17bに向かうに従い狭くなっており、固定板部17aと固定板部17bとの離間距離は、天板部15の幅よりも狭い寸法となっている。
【0032】
側板部16a,16bは、天板部15(固定板部17a,17b)に垂直な面(胴縁7の高さ方向に平行な面)に対して天板部15側(固定板部17a,17b側)に傾斜していればよく、その傾斜角度には制限されない。但し、胴縁7の加工作業性や形状保持強度の観点から、その傾斜角度が3〜30°であることが好ましく、7〜20°であることが更に好ましい。なお、図では、その傾斜角度を15°としている。
【0033】
固定板部17a,17bは、ビス8により胴縁受部材6の固定板部14a,14bに固定する部位である。このため、固定板部17a,17bは、作業性の観点から、ビス8をねじ込むために必要十分な幅を有することが好ましい。
【0034】
この固定板部17a,17bには、ビス8の位置決めを行うガイド溝18が形成されている。ガイド溝18は、長さ方向に直線状に延びるV溝となっており、ビス8の先端を嵌め込むことで、ビス8の位置決めを行うことが可能となっている。
【0035】
ところで、固定板部17a,17bにビス8をねじ込み、固定板部17a,17bを固定板部14a,14bに固定するために、回転工具のインパクトレンチ(不図示)が用いられる。具体的に説明すると、まず、インパクトレンチのアダプタ20(図7参照)をビス8の頭部に嵌め込み、ビス8の先端を固定板部17a,17bに当て、ビス8を固定板部17a,17bに対して直角に保持する。なお、アダプタ20も回転工具の一部となる。そして、この状態でインパクトレンチを駆動させ、ビス8にインパクト(打撃)を与えながら回転させる。これにより、ビス8が固定板部17a,17b及び固定板部14a,14bにねじ込まれ、固定板部17a,17bと固定板部14a,14bとが固定される。
【0036】
そこで、図7に示すように、ガイド溝18は、ビス8の先端を嵌め込み、ビス8を固定板部17a,17bに対して直角に配置した際に、ビス8の頭部を嵌め込んだアダプタ20が側板部16a,16bに当接又は近接する位置に形成される。このとき、側板部16a,16bは、天板部15との連結部分である肩部19が固定板部17a,17b側(外側)にせり出しているため、アダプタ20が側板部16a,16bに当接しても、アダプタ20と側板部16a,16bとは肩部19において点でしか接触しない。
【0037】
このような位置に形成されるガイド溝18は、アダプタ20が肩部19に当接又は近接することで、ビス8を固定板部17a,17bに対して直角にねじ込ませるガイド機能を持つ。このようなガイド溝18のガイド機能を効果的に発揮させる観点から、ガイド溝18は、ビス8の先端を嵌め込み、ビス8を固定板部17a,17bに対して直角に配置した際に、ビス8の頭部を嵌め込んだインパクトレンチのアダプタ20と側板部16a,16bとの距離が0〜2mmの範囲となる位置に形成することが好ましく、この距離が0〜1mmの範囲となる位置に形成することが更に好ましい。なお、アダプタ20と側板部16a,16bとの距離が0mmとは、アダプタ20と側板部16a,16bとが当接した状態を意味する。
【0038】
図8は、ジョイント部材を用いた胴縁の連結状態を示した図であり、(a)は2つの胴縁をジョイント部材で連結した状態を示した上面図、(b)はジョイント部材に胴縁を挿入した状態を示した斜視図である。図9は、ジョイント部材の平面図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【0039】
図8及び図9に示すように、ジョイント部材9は、2つの胴縁7の固定板部17a,17bを挿入して固定板部17a,17bを挟み込み、この状態でジョイント部材9と各胴縁7の固定板部17a,17bとをビス留めすることにより、2つの胴縁7を長手方向に連結するものである。このジョイント部材9は、上側に開口を有する薄い断面略C字状を成しており、1枚の矩形金属板が4箇所屈曲されることにより構成される。すなわち、ジョイント部材9は、矩形状の支持板部21と、支持板部21の幅方向両端縁において上側に屈曲形成される細長い矩形状の一対の側板部22a,22bと、各側板部22a,22bの幅方向先端縁において内側(支持板部21に対して各側板部22a,22bが屈曲する方向と同じ側)に屈曲形成される細長い矩形状の一対の係止板部23a,23bと、を備える。なお、本実施形態では、側板部22a,22b、係止板部23a,23bの長辺方向(図9(a)において上下方向)を長さ方向とし、同短辺方向を幅方向とする。
【0040】
支持板部21は、胴縁7の固定板部17a,17bを下側から支える部位である。このため、支持板部21の幅は、胴縁7の幅(固定板部17aの幅方向外縁端から固定板部17bの幅方向外縁端までの長さ)と同じ又は胴縁7の幅よりも僅かに広い寸法となっている。
【0041】
側板部22a,22bは、支持板部21と係止板部23a,23bとを略平行(並行を含む)に連結し、支持板部21と係止板部23a,23bとの間に胴縁7の固定板部17a,17bを挟み込む空間(スペース)を確保する部位である。このため、側板部22a,22bの幅(支持板部21に対する立ち上がり高さ)は、胴縁7の肉厚と同じ又は胴縁7の肉厚よりも僅かに広い寸法となっている。なお、側板部22a,22bは、支持板部21と係止板部23a,23bとを略平行(平行を含む)に連結することができれば、支持板部21及び係止板部23a,23bに対して如何なる角度に屈曲形成されても良い。また、側板部22a,22bは、支持板部21と係止板部23a,23bとの間に所定の空間を確保することができれば、如何なる形状であってもよく、例えば、屈曲加工の容易性を考慮して、支持板部21から係止板部23a,23bに湾曲した形状であってもよい。この場合、支持板部21に対する側板部22a,22bの屈曲と、側板部22a,22bに対する係止板部23a,23bの屈曲とを一気に行える。
【0042】
係止板部23a,23bは、固定板部17a,17bを上側から押さえ、ビス10をねじ込む部位である。このため、係止板部23a,23bの幅は、各固定板部17a,17bの幅よりも狭い寸法となっており、作業性の観点から、ビス10をねじ込むために必要十分な寸法を有することが好ましい。
【0043】
この係止板部23a,23bには、固定板部17a,17bにねじ込むビス10の位置決めを行うためのビス穴24が形成されている。図9では、各係止板部23a,23bにビス穴24が2つ形成されているが、1つのみ形成されていてもよく、また3つ以上形成されていてもよい。なお、このビス穴24は、ビス10の位置決めを目的として形成しているため、ビス10の位置決めが不要であれば、特に形成しなくてもよい。
【0044】
このように構成される胴縁受部材6、胴縁7及びジョイント部材9の具体的な寸法は、施工場所や施工条件などに応じて適宜設定されるが、以下にその一例を示す。
【0045】
図4に示すように、底板部12にボルト穴11が1箇所形成される胴縁受部材6の寸法は、例えば、肉厚aを2.3mm、胴縁受部材6の長さbを95mm、底板部12の幅cを35mm、固定板部14a,14bの幅dを35.5mm、固定板部14aと固定板部14bとの離間距離eを24mm、胴縁受部材6の幅fを95mm、胴縁受部材6の高さgを15mm、ボルト穴11の内径hを12mm、ボルト穴11の長さiを6mm、底板部12に垂直な面に対する側板部13a,13bの傾斜角度θ1を15°とする。
【0046】
図6に示すように、胴縁7の寸法は、例えば、肉厚jを1.6mm、胴縁7の長さkを3000mm、天板部15の幅lを40mm、側板部16a,16bの肩部19を通り固定板部17a,17bに垂直な面から固定板部17a,17bの幅方向端面までの幅mを16mm、胴縁7の幅nを72mm、胴縁7の高さoを20mm、固定板部17a,17bの幅方向端縁からガイド溝18までの距離pを8mm、側板部16a,16bの肩部19を通り固定板部17a,17bに垂直な面からガイド溝18までの距離qを8mm、天板部15に垂直な面に対する側板部16a,16bの傾斜角度θ2を15°とする。
【0047】
図9に示すように、各係止板部23a,23bにビス穴24が2箇所形成されるジョイント部材9の寸法は、例えば、肉厚rを1.6mm、ジョイント部材9の長さsを80mm、ジョイント部材9の幅tを76mm、係止板部23a,23bの幅uを18mm、係止板部23a,23bの外側端縁からビス穴24の中心までの距離vを10mm、ジョイント部材9の高さwを6mm、ジョイント部材9の長さ方向両端縁からビス穴24の中心までの距離xを20mm、各係止板部23a,23bにおけるビス穴24の中心間距離yを40mm、ビス穴24の内径zを2mmとする。
【0048】
次に、下地部材1の施工方法について説明する。
【0049】
まず、躯体2に固定された各ボルト5に胴縁受部材6を取り付ける。この工程は、ボルト5に胴縁受部材6のボルト穴11を嵌め合わせ、ボルト5に対して胴縁受部材6を回転させることにより行う。そして、ボルト5に対する胴縁受部材6の回転量を調整することで、全ての胴縁受部材6の固定板部14a,14bが同一平面状に配置されるように、各胴縁受部材6のレベル調整を行う。その際、ボルト5の先端を、胴縁受部材6の固定板部14a,14bから突出させる。但し、胴縁7を胴縁受部材6に取り付ける際にボルト5が邪魔にならないように、固定板部14a,14bに対するボルト5の突出長さは、胴縁7の高さoから胴縁7の肉厚jを引いた長さよりも短くする。
【0050】
次に、胴縁7を所望長さとするために、ジョイント部材9を用いて複数の胴縁7を連結する。この工程では、まず、連結する胴縁7の固定板部17a,17bをジョイント部材9における支持板部21と係止板部23a,23bとの間に双方から挿入する。そして、係止板部23a,23bに形成されたビス穴24からビス10をねじ込み、双方の胴縁7に対して支持板部21及び係止板部23a,23bと固定板部17a,17bとをビス留めすることで、胴縁7を連結する。
【0051】
次に、胴縁受部材6に胴縁7を取り付ける。この工程は、まず、胴縁受部材6の固定板部14a,14bに胴縁7の固定板部17a,17bを重ね合わせる。その際、胴縁受部材6から突出したボルト5が、胴縁受部材6の側板部13aと側板部13bとの間に挿入されると共に、胴縁7の側板部16aと側板部16bとの間に胴縁受部材6から突出したボルト5が挿入されるように、胴縁受部材6から突出したボルト5の軸線(ボルト穴11の位置)を交点として、胴縁受部材6と胴縁7とを略直角に交差させて重ね合わせる。そして、インパクトレンチを用いて固定板部14a,14bと固定板部17a,17bとをビス留めする。これにより、ボルト穴11を交点とした交差状に胴縁受部材6と前記胴縁7とが固定される。その際、固定板部17a,17bに形成されたガイド溝18にビス8の先端を嵌め込み、ビス8の頭部を嵌め込んだアダプタ20を肩部19に当接又は近接させながらインパクトレンチを駆動させることで、ビス8を固定板部17a,17bにねじ込む。
【0052】
これにより、胴縁受部材6における一対の側板部13a,13bの間にボルト5が内挿されると共に、胴縁7における一対の側板部16a,16bの間にボルト5が内挿された状態で、胴縁受部材6と胴縁7とがビス留め(螺着)された下地部材1がボルト5に取り付けられる。
【0053】
ここで、比較例として、天板部、側板部、固定板部の連結部がそれぞれ直角に屈曲された従来の断面略矩形ハット状の胴縁を用い、胴縁受部材に胴縁をビス留めする状態を説明する。
【0054】
図10は、比較例の胴縁にビスをねじ込む状態を示した図である。図10(a)に示すように、作業者は、通常、ビスを固定板部に対して垂直に保持してビスを固定板部にねじ込もうとする。しかしながら、図10(b)に示すように、作業者の力の入れ方によっては、ビスが斜めにねじ込まれることや、固定板部が持ち上がることがある。しかも、断面略矩形ハット状の胴縁は、本実施形態のような断面略台形ハット状の胴縁に比べて、側板部16a,16bを外側に広げる力に対して側板部を内側に引き戻す復元力が小さいため、図10(c)に示すように、側板部の広がった変形状態で胴縁が胴縁受けに固定されることもある。
【0055】
これに対し、本実施形態では、図7に示すように、肩部19がアダプタ20のガイドとなるため、ビス8を固定板部17a,17bに対して垂直に保持した状態でビス8を固定板部17a,17bにねじ込むことができる。しかも、図11に示すように、胴縁7は、断面略台形ハット状であるため、側板部16a,16bを外側に広げる力に対して側板部16a,16bを内側に引き戻す強い復元力が作用する。このため、たとえビス8を斜めにねじ込んだとしても胴縁7の変形を抑制することができ、胴縁7に強い外力が作用したとしても、胴縁7の変形を抑制することができる。
【0056】
このように、本実施形態によれば、胴縁7の側板部16a,16bを天板部15側に向けて内側に入り込むように傾斜させることで、側板部16a,16bを広げる力に対して側板部16a,16bを内側に引き戻す強い復元力が作用する。このため、胴縁7を胴縁受部材6に固定する際や胴縁7に取り付けられる外壁などから加重を受けた際に、胴縁7が大きく変形するのを抑制することができる。
【0057】
同様に、胴縁受部材6の側板部13a,13bを底板部12側に向けて内側に入り込むように傾斜させることで、側板部13a,13bを広げる力に対して側板部13a,13bを内側に引き戻す強い復元力が作用する。このため、胴縁7を胴縁受部材6に固定する際や胴縁7から加重を受けた際に、胴縁受部材6が大きく変形するのを抑制することができる。
【0058】
そして、ビス留めにより胴縁受部材6の固定板部14a,14bと胴縁7の固定板部17a,17bとを固定することで、胴縁受部材6に対して胴縁7を確実に固定することができる。しかも、胴縁7は、側板部16a,16bが天板部15側に向けて内側に入り込むように形成されていることから、アダプタ20を側板部16a,16bに当接させても肩部19において点でしか接触しない。その結果、アダプタ20の回転に対する側板部16a,16bの干渉を最小限に抑えられるため、アダプタ20を側板部16a,16bに近接又は当接させながらビス8をねじ込むことができ、側板部16a,16bをアダプタ20のガイドとして適切に機能させることができる。
【0059】
また、固定板部17a,17bにガイド溝18を形成し、ビス8の先端をガイド溝18に嵌め込みアダプタ20を側板部16a,16bに当接又は近接させることで、ビス8を固定板部17a,17bに対して直角に配置させることができる。これにより、側板部16a,16bのガイド機能が効果的に発揮されるため、ビス8が固定板部17a,17bに対して傾いた状態でねじ込まれるなどの作業ミスを更に低減することができる。
【0060】
そして、下地部材1を構成する胴縁受部材6と胴縁7とは、互いに、側板部13a,13b及び側板部16a,16bが底板部12側及び天板部15側に向けて内側に入り込むように傾斜しているため、下地部材1全体として大きな変形を抑制することができる。また、胴縁受部材6の側板部13a,13bと胴縁7の側板部16a,16bとにより、ボルト穴11が形成される胴縁受部材6の底板部12から胴縁7の天板部15までの空間を十分に確保できるため、ボルト穴11に対するボルト5のねじ込み量により調整する下地部材のレベル調整幅を大きくとることができる。
【0061】
また、ボルト穴11にねじ込んだボルト5の先端を胴縁7にまで到達させることで、胴縁受部材6における一対の側板部13a,13bの間にボルト5が内挿されると共に、胴縁7における一対の側板部16a,16bの間にボルト5が内挿される。これにより、加重を受けるなどして胴縁7及び胴縁受部材6が変形したとしても、このボルト5が変形する胴縁7及び胴縁受部材6を受け止めるため、胴縁7及び胴縁受部材6が大きく変形するのを防止することができ、外壁などの破損まで進行するのを防止することができる。
【0062】
そして、胴縁受部材6及び胴縁7をこのような単純な形状とすることで、部品点数を少なくすることができると共に、胴縁受部材6及び胴縁7の形成加工が容易になる。このため、肉厚を厚くすることができ、耐候性に優れた金属素材を選択することができ、更には、胴縁受部材6と胴縁7の素材を同じ金属とすることで接触防食を防止することができる。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、胴縁受部材6の固定板部14a,14bと胴縁7の固定板部17a,17bとの固定としてビス8を用いて行ったが、例えば、リベットのような固定部材を用いて行っても良い。
【0064】
また、上記実施形態では、ガイド溝18が長手方向に直線状に延びるものとして説明したが、間欠的な直線状に延びるものとしてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、胴縁受部材6と胴縁7の双方とも断面略台形ハット状に形成するものとしたが、何れか一方のみを断面略台形ハット状に形成するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…下地部材、2…躯体、3…断熱材、5…ボルト、6…胴縁受部材、7…胴縁、8…ビス、9…ジョイント部材、10…ビス、11…ボルト穴、12…底板部、13a,13b…側板部、14a,14b…固定板部、15…天板部、16a,16b…側板部、17a,17b…固定板部、18…ガイド溝、19…肩部、20…アダプタ(工具)、21…支持板部、22a,22b…側板部、23a,23b…係止板部、24…ビス穴。
【技術分野】
【0001】
この発明は、躯体に取り付けられる胴縁、胴縁受部材及び下地部材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物に外壁などを取り付けるための下地部材は、建築物の躯体に固定されたボルトに取り付けられる胴縁受部材と、この胴縁受部材に取り付けられて外壁が取り付けられる胴縁とで構成される。この下地部材を構成する胴縁は、断面略矩形ハット状に形成されており、外壁が取り付けられる天板部と、天板部の両端縁において同じ面側に屈曲形成された一対の側板部と、各側板部の端縁において外側に屈曲形成されて前記天板部と略平行となり胴縁受部材に固定される一対の固定板部とで構成される。そして、各固定板部にビスをねじ込み、各固定板部と胴縁受部材とをビス留めすることで、胴縁を胴縁受部材に固定している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−100905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の胴縁及び胴縁受部材は、天板部、側板部及び固定板部がそれぞれ直角に屈曲された断面略矩形ハット状に形成されているため、胴縁を胴縁受けに固定する際や外壁などから加重を受けた際に、天板部、側板部及び固定板部が互いに撓みやすいという問題がある。
【0005】
ところで、ここのようなビス留めはインパクトレンチを用いて行うのが一般的である。ところが、インパクトレンチで固定板部に対して直角にビスをねじ込むのは難しく、作業者の力の入れ方によっては、ビスが固定板部に対して斜めにねじ込まれたり、固定板部が持ち上がったりするという不具合が発生する。そこで、インパクトレンチのアタッチメントを胴縁の側板部に当接又は近接させて、ビスのねじ込み方向を規制することも考えられる。しかしながら、従来の胴縁を用いると、側板部とアタッチメントが面接触するため、アタッチメントの回転に対する側板部の干渉が大きくなり、適切にビスを固定板部にねじ込むのが難しくなる。
【0006】
そこで、本発明は、変形を抑制することができる胴縁、胴縁受部材及び下地部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る胴縁は、胴縁受部材に取り付けられる胴縁であって、天板部と、天板部の両端縁において同じ面側に鋭角に屈曲形成された一対の側板部と、各側板部の端縁において外側に鋭角に屈曲形成されて天板部と略平行となり胴縁受部材に固定される一対の固定板部と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る胴縁によれば、一対の側板部を天板部側に向けて内側に入り込むように傾斜させることで、一対の側板部を広げる力に対して一対の側板部を内側に引き戻す強い復元力が作用する。このため、胴縁を胴縁受部材に固定する際や胴縁に取り付けられる外壁などから加重を受けた際に、胴縁が大きく変形するのを抑制することができる。
【0009】
この場合、固定板部は、ビス留めにより胴縁受部材に固定されることが好ましい。このように、ビス留めにより固定板部と胴縁受部材とを固定することで、胴縁受部材に対して胴縁を確実に固定することができる。しかも、一対の側板部が天板部側に向けて内側に入り込むように形成されていることから、ビスをねじ込む工具を側板部に当接させても、工具と側板部とは点でしか接触しない。その結果、工具の回転に対する側板部の干渉を最小限に抑えられるため、工具を側板部に近接又は当接させながらビスをねじ込むことができ、側板部を工具のガイドとして適切に機能させることができる。
【0010】
更に、固定板部には、ビスの位置決めを行うガイド溝が形成されており、ガイド溝は、ビスの先端を嵌め込んでビスを固定板部に対して直角に配置した際に、ビスを固定板部にねじ込む工具が側板部に当接又は近接する位置に形成されていることが好ましい。このように固定板部にガイド溝を形成すると、ビスの先端をガイド溝に嵌め込み工具を側板部に当接又は近接させることで、ビスを固定板部に対して直角に配置させることができる。これにより、側板部のガイド機能が効果的に発揮されるため、ビスが固定板部に対して傾いた状態でねじ込まれるなどの作業ミスを更に低減することができる。
【0011】
本発明に係る胴縁受部材は、建物躯体に取り付けられて胴縁が取り付けられる胴縁受部材であって、建物躯体に固定されたボルトがねじ込まれるボルト穴が形成された底板部と、底板部の両端縁において同じ面側に鋭角に屈曲形成された一対の側板部と、各側板部の端縁において外側に鋭角に屈曲形成されて底板部と略平行となり胴縁が固定される一対の固定板部と、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る胴縁受部材によれば、一対の側板部を底板部側に向けて内側に入り込むように傾斜させることで、一対の側板部を広げる力に対して一対の側板部を内側に引き戻す強い復元力が作用する。このため、胴縁を胴縁受部材に固定する際や胴縁から加重を受けた際に、胴縁受部材に荷重を受けても胴縁受部材が大きく変形するのを抑制することができる。
【0013】
本発明に係る下地部材は、上記の何れかの胴縁と、上記の胴縁受部材と、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る下地部材によれば、胴縁受部材及び胴縁の側板部がそれぞれ底板部側及び天板部側に向けて内側に入り込むように傾斜しているため、下地部材全体として大きな変形を抑制することができる。また、胴縁受部材と胴縁の各側板部により、ボルト穴が形成される胴縁受部材の底板部から胴縁の天板部までの空間を十分に確保できるため、ボルト穴からのボルトのねじ込み量を調整することにより行う下地部材のレベル調整幅を大きくとることができる。
【0015】
この場合、ボルト穴を交点とした交差状に前記胴縁受部材と前記胴縁とが固定されることが好ましい。このように胴縁受部材と胴縁とを配置すると、ボルト穴にねじ込んだボルトの先端を胴縁にまで到達させることで、胴縁及び胴縁受部材は一対の側板部の間にボルトが内挿される。これにより、加重を受けるなどして胴縁及び胴縁受部材が変形したとしても、このボルトが変形する胴縁及び胴縁受部材を受け止めるため、胴縁及び胴縁受部材が大きく変形するのを防止することができ、外壁などの破損まで進行するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る下地部材の一部分を示す破断斜視図である。
【図2】図1に示す下地部材の詳細図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図3】胴縁受部材の斜視図であり、(a)は上側から見た斜視図、(b)は下側から見た斜視図である。
【図4】胴縁受部材の平面図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図5】胴縁の斜視図であり、(a)は上側から見た斜視図、(b)は下側から見た斜視図である。
【図6】胴縁の平面図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図7】ガイド溝の形成位置を説明するための図である。
【図8】ジョイント部材を用いた胴縁の連結状態を示した図であり、(a)は2つの胴縁をジョイント部材で連結した状態を示した上面図、(b)はジョイント部材に胴縁を挿入した状態を示した斜視図である。
【図9】ジョイント部材の平面図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図10】比較例の胴縁にビスをねじ込む状態を示した図である。
【図11】本実施形態の胴縁に作用する復元力を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る胴縁、胴縁受部材及び下地部材の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、実施形態に係る下地部材の一部分を示す破断斜視図である。図2は、図1に示す下地部材の詳細図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。なお、図2(a)は、図1のII(a)線方向から見た図であり、図2(b)は、図1のII(b)線方向から見た図であり、図2(c)は、図1のII(c)線方向から見た図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、下地部材1は、コンクリートなどで構成された建築物の躯体2に外壁(不図示)を取り付けるためのものであり、外断熱工法などの場合は、断熱材3を介して躯体2に取り付けられる。この下地部材1は、躯体2に固定されたボルト5に取り付けられる胴縁受部材6と、胴縁受部材6に固定されて外壁が取り付けられる胴縁7とにより構成される。胴縁受部材6に対する胴縁7の固定は、ビス8を用いたビス留めにより行われ、胴縁7は、ジョイント部材9により複数本連結可能となっている。なお、本実施形態では、躯体2からボルト5が突出して延びる方向を下地部材1の高さ方向とし、下地部材1における躯体2側を下側(又は裏側)、下地部材1における躯体2の反対側を上側(又は表側)とする。
【0021】
図3は、胴縁受部材の斜視図であり、(a)は上側から見た斜視図、(b)は下側から見た斜視図である。図4は、胴縁受部材の平面図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【0022】
図3及び図4に示すように、胴縁受部材6は、上側に開放された断面略台形ハット状を成しており、例えば、1枚の矩形金属板が4箇所屈曲されることにより構成される。すなわち、胴縁受部材6は、ボルト5がねじ込まれるボルト穴11が形成された細長い矩形状の底板部12と、底板部12の幅方向両端縁において上側に鋭角に屈曲形成された細長い矩形状の一対の側板部13a,13bと、各側板部13a,13bの幅方向先端縁において外側(底板部12に対して各側板部13a,13bが屈曲する方向の反対側)に鋭角に屈曲形成される細長い矩形状の一対の固定板部14a,14bと、を備える。なお、本実施形態では、底板部12、側板部13a,13b、固定板部14a,14bの長辺方向(図4(a)において上下方向)を長さ方向とし、同短辺方向を幅方向とする。
【0023】
底板部12と各側板部13a,13bとの成す角と各側板部13a,13bと各固定板部14a,14bとの成す角とは、略同一(同一を含む)の角度となっており、底板部12と各固定板部14a,14bとは、略平行(並行を含む)となっている。また、側板部13aと側板部13bとの離間距離は、底板部12から固定板部14a,14bに向かうに従い狭くなっており、固定板部14aと固定板部14bとの離間距離は、底板部12の幅よりも狭い寸法となっている。また、胴縁受部材6の肉厚は、胴縁7の保持強度を確保する観点から、胴縁7と同じ又は胴縁7よりも厚くなっている。
【0024】
ボルト穴11は、ボルト5のネジ山に適合するタップ加工されており、ボルト5をねじ込むことが可能となっている。そして、底板部12は、ボルト穴11の周囲が他よりも肉厚となっており、ボルト穴11の長さが延長されている。これにより、ボルト5とボルト穴11との接合面積が増えるため、ボルト穴11にボルト5がねじ込まれた際に、ボルト5に対する胴縁受部材6の保持強度を向上させることができる。
【0025】
このボルト穴11は、例えば、パンチング加工により底板部12を下側に抜くことで形成することができる。その際、底板部12から抜いた部分を完全に剪断することなく一部を残しておくことで、底板部12から抜かれた部分が底板部12の下側に垂れるため、ボルト穴11の形成と、ボルト穴11の周囲を肉厚にしてボルト穴11の長さを延長することを同時に行うことができる。
【0026】
なお、ボルト穴11は、1つのみであってもよく、複数あってもよい。胴縁受部材6の安定性の観点から、ボルト穴11が1つの場合は、ボルト穴11を底板部12の中央に形成し、ボルト穴11が複数の場合は、ボルト穴11を底板部12に等間隔に形成することが好ましい。
【0027】
側板部13a,13bは、底板部12(固定板部14a,14b)に垂直な面(胴縁受部材6の高さ方向に平行な面)に対して底板部12側(固定板部14a,14b側)に倒れ込むように傾斜していればよく、その傾斜角度には制限されない。但し、胴縁受部材6の加工作業性や形状保持強度の観点から、その傾斜角度が3〜30°であることが好ましく、7〜20°であることが更に好ましい。なお、図では、その傾斜角度を15°としている。
【0028】
固定板部14a,14bは、ビス8により胴縁7と固定される部位である。このため、固定板部14a,14bは、作業性の観点から、ビス8をねじ込むために必要十分な幅を有することが好ましい。
【0029】
図5は、胴縁の斜視図であり、(a)は上側から見た斜視図、(b)は下側から見た斜視図である。図6は、胴縁の平面図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【0030】
図5及び図6に示すように、胴縁7は、下側に開放された断面略台形ハット状を成しており、例えば、1枚の金属板が4箇所屈曲されることにより構成される。すなわち、胴縁7は、外壁が取り付けられる細長い矩形状の天板部15と、天板部15の幅方向両端縁において下側に鋭角に屈曲形成された細長い矩形状の一対の側板部16a,16bと、各側板部16a,16bの幅方向先端縁において外側(天板部15に対して各側板部16a,16bが屈曲する方向の反対側)に鋭角に屈曲形成される細長い矩形状の一対の固定板部17a,17bと、を備える。なお、本実施形態では、天板部15、側板部16a,16b、固定板部17a,17bの長辺方向(図6(a)において左右方向)を長さ方向とし、同短辺方向を幅方向とする。
【0031】
天板部15と各側板部16a,16bとの成す角と各側板部16a,16bと各固定板部17a,17bとの成す角とは、略同一(同一を含む)の角度となっており、天板部15と各固定板部17a,17bとは、略平行(並行を含む)となっている。また、側板部16aと側板部16bとの離間距離は、天板部15から固定板部17a,17bに向かうに従い狭くなっており、固定板部17aと固定板部17bとの離間距離は、天板部15の幅よりも狭い寸法となっている。
【0032】
側板部16a,16bは、天板部15(固定板部17a,17b)に垂直な面(胴縁7の高さ方向に平行な面)に対して天板部15側(固定板部17a,17b側)に傾斜していればよく、その傾斜角度には制限されない。但し、胴縁7の加工作業性や形状保持強度の観点から、その傾斜角度が3〜30°であることが好ましく、7〜20°であることが更に好ましい。なお、図では、その傾斜角度を15°としている。
【0033】
固定板部17a,17bは、ビス8により胴縁受部材6の固定板部14a,14bに固定する部位である。このため、固定板部17a,17bは、作業性の観点から、ビス8をねじ込むために必要十分な幅を有することが好ましい。
【0034】
この固定板部17a,17bには、ビス8の位置決めを行うガイド溝18が形成されている。ガイド溝18は、長さ方向に直線状に延びるV溝となっており、ビス8の先端を嵌め込むことで、ビス8の位置決めを行うことが可能となっている。
【0035】
ところで、固定板部17a,17bにビス8をねじ込み、固定板部17a,17bを固定板部14a,14bに固定するために、回転工具のインパクトレンチ(不図示)が用いられる。具体的に説明すると、まず、インパクトレンチのアダプタ20(図7参照)をビス8の頭部に嵌め込み、ビス8の先端を固定板部17a,17bに当て、ビス8を固定板部17a,17bに対して直角に保持する。なお、アダプタ20も回転工具の一部となる。そして、この状態でインパクトレンチを駆動させ、ビス8にインパクト(打撃)を与えながら回転させる。これにより、ビス8が固定板部17a,17b及び固定板部14a,14bにねじ込まれ、固定板部17a,17bと固定板部14a,14bとが固定される。
【0036】
そこで、図7に示すように、ガイド溝18は、ビス8の先端を嵌め込み、ビス8を固定板部17a,17bに対して直角に配置した際に、ビス8の頭部を嵌め込んだアダプタ20が側板部16a,16bに当接又は近接する位置に形成される。このとき、側板部16a,16bは、天板部15との連結部分である肩部19が固定板部17a,17b側(外側)にせり出しているため、アダプタ20が側板部16a,16bに当接しても、アダプタ20と側板部16a,16bとは肩部19において点でしか接触しない。
【0037】
このような位置に形成されるガイド溝18は、アダプタ20が肩部19に当接又は近接することで、ビス8を固定板部17a,17bに対して直角にねじ込ませるガイド機能を持つ。このようなガイド溝18のガイド機能を効果的に発揮させる観点から、ガイド溝18は、ビス8の先端を嵌め込み、ビス8を固定板部17a,17bに対して直角に配置した際に、ビス8の頭部を嵌め込んだインパクトレンチのアダプタ20と側板部16a,16bとの距離が0〜2mmの範囲となる位置に形成することが好ましく、この距離が0〜1mmの範囲となる位置に形成することが更に好ましい。なお、アダプタ20と側板部16a,16bとの距離が0mmとは、アダプタ20と側板部16a,16bとが当接した状態を意味する。
【0038】
図8は、ジョイント部材を用いた胴縁の連結状態を示した図であり、(a)は2つの胴縁をジョイント部材で連結した状態を示した上面図、(b)はジョイント部材に胴縁を挿入した状態を示した斜視図である。図9は、ジョイント部材の平面図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【0039】
図8及び図9に示すように、ジョイント部材9は、2つの胴縁7の固定板部17a,17bを挿入して固定板部17a,17bを挟み込み、この状態でジョイント部材9と各胴縁7の固定板部17a,17bとをビス留めすることにより、2つの胴縁7を長手方向に連結するものである。このジョイント部材9は、上側に開口を有する薄い断面略C字状を成しており、1枚の矩形金属板が4箇所屈曲されることにより構成される。すなわち、ジョイント部材9は、矩形状の支持板部21と、支持板部21の幅方向両端縁において上側に屈曲形成される細長い矩形状の一対の側板部22a,22bと、各側板部22a,22bの幅方向先端縁において内側(支持板部21に対して各側板部22a,22bが屈曲する方向と同じ側)に屈曲形成される細長い矩形状の一対の係止板部23a,23bと、を備える。なお、本実施形態では、側板部22a,22b、係止板部23a,23bの長辺方向(図9(a)において上下方向)を長さ方向とし、同短辺方向を幅方向とする。
【0040】
支持板部21は、胴縁7の固定板部17a,17bを下側から支える部位である。このため、支持板部21の幅は、胴縁7の幅(固定板部17aの幅方向外縁端から固定板部17bの幅方向外縁端までの長さ)と同じ又は胴縁7の幅よりも僅かに広い寸法となっている。
【0041】
側板部22a,22bは、支持板部21と係止板部23a,23bとを略平行(並行を含む)に連結し、支持板部21と係止板部23a,23bとの間に胴縁7の固定板部17a,17bを挟み込む空間(スペース)を確保する部位である。このため、側板部22a,22bの幅(支持板部21に対する立ち上がり高さ)は、胴縁7の肉厚と同じ又は胴縁7の肉厚よりも僅かに広い寸法となっている。なお、側板部22a,22bは、支持板部21と係止板部23a,23bとを略平行(平行を含む)に連結することができれば、支持板部21及び係止板部23a,23bに対して如何なる角度に屈曲形成されても良い。また、側板部22a,22bは、支持板部21と係止板部23a,23bとの間に所定の空間を確保することができれば、如何なる形状であってもよく、例えば、屈曲加工の容易性を考慮して、支持板部21から係止板部23a,23bに湾曲した形状であってもよい。この場合、支持板部21に対する側板部22a,22bの屈曲と、側板部22a,22bに対する係止板部23a,23bの屈曲とを一気に行える。
【0042】
係止板部23a,23bは、固定板部17a,17bを上側から押さえ、ビス10をねじ込む部位である。このため、係止板部23a,23bの幅は、各固定板部17a,17bの幅よりも狭い寸法となっており、作業性の観点から、ビス10をねじ込むために必要十分な寸法を有することが好ましい。
【0043】
この係止板部23a,23bには、固定板部17a,17bにねじ込むビス10の位置決めを行うためのビス穴24が形成されている。図9では、各係止板部23a,23bにビス穴24が2つ形成されているが、1つのみ形成されていてもよく、また3つ以上形成されていてもよい。なお、このビス穴24は、ビス10の位置決めを目的として形成しているため、ビス10の位置決めが不要であれば、特に形成しなくてもよい。
【0044】
このように構成される胴縁受部材6、胴縁7及びジョイント部材9の具体的な寸法は、施工場所や施工条件などに応じて適宜設定されるが、以下にその一例を示す。
【0045】
図4に示すように、底板部12にボルト穴11が1箇所形成される胴縁受部材6の寸法は、例えば、肉厚aを2.3mm、胴縁受部材6の長さbを95mm、底板部12の幅cを35mm、固定板部14a,14bの幅dを35.5mm、固定板部14aと固定板部14bとの離間距離eを24mm、胴縁受部材6の幅fを95mm、胴縁受部材6の高さgを15mm、ボルト穴11の内径hを12mm、ボルト穴11の長さiを6mm、底板部12に垂直な面に対する側板部13a,13bの傾斜角度θ1を15°とする。
【0046】
図6に示すように、胴縁7の寸法は、例えば、肉厚jを1.6mm、胴縁7の長さkを3000mm、天板部15の幅lを40mm、側板部16a,16bの肩部19を通り固定板部17a,17bに垂直な面から固定板部17a,17bの幅方向端面までの幅mを16mm、胴縁7の幅nを72mm、胴縁7の高さoを20mm、固定板部17a,17bの幅方向端縁からガイド溝18までの距離pを8mm、側板部16a,16bの肩部19を通り固定板部17a,17bに垂直な面からガイド溝18までの距離qを8mm、天板部15に垂直な面に対する側板部16a,16bの傾斜角度θ2を15°とする。
【0047】
図9に示すように、各係止板部23a,23bにビス穴24が2箇所形成されるジョイント部材9の寸法は、例えば、肉厚rを1.6mm、ジョイント部材9の長さsを80mm、ジョイント部材9の幅tを76mm、係止板部23a,23bの幅uを18mm、係止板部23a,23bの外側端縁からビス穴24の中心までの距離vを10mm、ジョイント部材9の高さwを6mm、ジョイント部材9の長さ方向両端縁からビス穴24の中心までの距離xを20mm、各係止板部23a,23bにおけるビス穴24の中心間距離yを40mm、ビス穴24の内径zを2mmとする。
【0048】
次に、下地部材1の施工方法について説明する。
【0049】
まず、躯体2に固定された各ボルト5に胴縁受部材6を取り付ける。この工程は、ボルト5に胴縁受部材6のボルト穴11を嵌め合わせ、ボルト5に対して胴縁受部材6を回転させることにより行う。そして、ボルト5に対する胴縁受部材6の回転量を調整することで、全ての胴縁受部材6の固定板部14a,14bが同一平面状に配置されるように、各胴縁受部材6のレベル調整を行う。その際、ボルト5の先端を、胴縁受部材6の固定板部14a,14bから突出させる。但し、胴縁7を胴縁受部材6に取り付ける際にボルト5が邪魔にならないように、固定板部14a,14bに対するボルト5の突出長さは、胴縁7の高さoから胴縁7の肉厚jを引いた長さよりも短くする。
【0050】
次に、胴縁7を所望長さとするために、ジョイント部材9を用いて複数の胴縁7を連結する。この工程では、まず、連結する胴縁7の固定板部17a,17bをジョイント部材9における支持板部21と係止板部23a,23bとの間に双方から挿入する。そして、係止板部23a,23bに形成されたビス穴24からビス10をねじ込み、双方の胴縁7に対して支持板部21及び係止板部23a,23bと固定板部17a,17bとをビス留めすることで、胴縁7を連結する。
【0051】
次に、胴縁受部材6に胴縁7を取り付ける。この工程は、まず、胴縁受部材6の固定板部14a,14bに胴縁7の固定板部17a,17bを重ね合わせる。その際、胴縁受部材6から突出したボルト5が、胴縁受部材6の側板部13aと側板部13bとの間に挿入されると共に、胴縁7の側板部16aと側板部16bとの間に胴縁受部材6から突出したボルト5が挿入されるように、胴縁受部材6から突出したボルト5の軸線(ボルト穴11の位置)を交点として、胴縁受部材6と胴縁7とを略直角に交差させて重ね合わせる。そして、インパクトレンチを用いて固定板部14a,14bと固定板部17a,17bとをビス留めする。これにより、ボルト穴11を交点とした交差状に胴縁受部材6と前記胴縁7とが固定される。その際、固定板部17a,17bに形成されたガイド溝18にビス8の先端を嵌め込み、ビス8の頭部を嵌め込んだアダプタ20を肩部19に当接又は近接させながらインパクトレンチを駆動させることで、ビス8を固定板部17a,17bにねじ込む。
【0052】
これにより、胴縁受部材6における一対の側板部13a,13bの間にボルト5が内挿されると共に、胴縁7における一対の側板部16a,16bの間にボルト5が内挿された状態で、胴縁受部材6と胴縁7とがビス留め(螺着)された下地部材1がボルト5に取り付けられる。
【0053】
ここで、比較例として、天板部、側板部、固定板部の連結部がそれぞれ直角に屈曲された従来の断面略矩形ハット状の胴縁を用い、胴縁受部材に胴縁をビス留めする状態を説明する。
【0054】
図10は、比較例の胴縁にビスをねじ込む状態を示した図である。図10(a)に示すように、作業者は、通常、ビスを固定板部に対して垂直に保持してビスを固定板部にねじ込もうとする。しかしながら、図10(b)に示すように、作業者の力の入れ方によっては、ビスが斜めにねじ込まれることや、固定板部が持ち上がることがある。しかも、断面略矩形ハット状の胴縁は、本実施形態のような断面略台形ハット状の胴縁に比べて、側板部16a,16bを外側に広げる力に対して側板部を内側に引き戻す復元力が小さいため、図10(c)に示すように、側板部の広がった変形状態で胴縁が胴縁受けに固定されることもある。
【0055】
これに対し、本実施形態では、図7に示すように、肩部19がアダプタ20のガイドとなるため、ビス8を固定板部17a,17bに対して垂直に保持した状態でビス8を固定板部17a,17bにねじ込むことができる。しかも、図11に示すように、胴縁7は、断面略台形ハット状であるため、側板部16a,16bを外側に広げる力に対して側板部16a,16bを内側に引き戻す強い復元力が作用する。このため、たとえビス8を斜めにねじ込んだとしても胴縁7の変形を抑制することができ、胴縁7に強い外力が作用したとしても、胴縁7の変形を抑制することができる。
【0056】
このように、本実施形態によれば、胴縁7の側板部16a,16bを天板部15側に向けて内側に入り込むように傾斜させることで、側板部16a,16bを広げる力に対して側板部16a,16bを内側に引き戻す強い復元力が作用する。このため、胴縁7を胴縁受部材6に固定する際や胴縁7に取り付けられる外壁などから加重を受けた際に、胴縁7が大きく変形するのを抑制することができる。
【0057】
同様に、胴縁受部材6の側板部13a,13bを底板部12側に向けて内側に入り込むように傾斜させることで、側板部13a,13bを広げる力に対して側板部13a,13bを内側に引き戻す強い復元力が作用する。このため、胴縁7を胴縁受部材6に固定する際や胴縁7から加重を受けた際に、胴縁受部材6が大きく変形するのを抑制することができる。
【0058】
そして、ビス留めにより胴縁受部材6の固定板部14a,14bと胴縁7の固定板部17a,17bとを固定することで、胴縁受部材6に対して胴縁7を確実に固定することができる。しかも、胴縁7は、側板部16a,16bが天板部15側に向けて内側に入り込むように形成されていることから、アダプタ20を側板部16a,16bに当接させても肩部19において点でしか接触しない。その結果、アダプタ20の回転に対する側板部16a,16bの干渉を最小限に抑えられるため、アダプタ20を側板部16a,16bに近接又は当接させながらビス8をねじ込むことができ、側板部16a,16bをアダプタ20のガイドとして適切に機能させることができる。
【0059】
また、固定板部17a,17bにガイド溝18を形成し、ビス8の先端をガイド溝18に嵌め込みアダプタ20を側板部16a,16bに当接又は近接させることで、ビス8を固定板部17a,17bに対して直角に配置させることができる。これにより、側板部16a,16bのガイド機能が効果的に発揮されるため、ビス8が固定板部17a,17bに対して傾いた状態でねじ込まれるなどの作業ミスを更に低減することができる。
【0060】
そして、下地部材1を構成する胴縁受部材6と胴縁7とは、互いに、側板部13a,13b及び側板部16a,16bが底板部12側及び天板部15側に向けて内側に入り込むように傾斜しているため、下地部材1全体として大きな変形を抑制することができる。また、胴縁受部材6の側板部13a,13bと胴縁7の側板部16a,16bとにより、ボルト穴11が形成される胴縁受部材6の底板部12から胴縁7の天板部15までの空間を十分に確保できるため、ボルト穴11に対するボルト5のねじ込み量により調整する下地部材のレベル調整幅を大きくとることができる。
【0061】
また、ボルト穴11にねじ込んだボルト5の先端を胴縁7にまで到達させることで、胴縁受部材6における一対の側板部13a,13bの間にボルト5が内挿されると共に、胴縁7における一対の側板部16a,16bの間にボルト5が内挿される。これにより、加重を受けるなどして胴縁7及び胴縁受部材6が変形したとしても、このボルト5が変形する胴縁7及び胴縁受部材6を受け止めるため、胴縁7及び胴縁受部材6が大きく変形するのを防止することができ、外壁などの破損まで進行するのを防止することができる。
【0062】
そして、胴縁受部材6及び胴縁7をこのような単純な形状とすることで、部品点数を少なくすることができると共に、胴縁受部材6及び胴縁7の形成加工が容易になる。このため、肉厚を厚くすることができ、耐候性に優れた金属素材を選択することができ、更には、胴縁受部材6と胴縁7の素材を同じ金属とすることで接触防食を防止することができる。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、胴縁受部材6の固定板部14a,14bと胴縁7の固定板部17a,17bとの固定としてビス8を用いて行ったが、例えば、リベットのような固定部材を用いて行っても良い。
【0064】
また、上記実施形態では、ガイド溝18が長手方向に直線状に延びるものとして説明したが、間欠的な直線状に延びるものとしてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、胴縁受部材6と胴縁7の双方とも断面略台形ハット状に形成するものとしたが、何れか一方のみを断面略台形ハット状に形成するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…下地部材、2…躯体、3…断熱材、5…ボルト、6…胴縁受部材、7…胴縁、8…ビス、9…ジョイント部材、10…ビス、11…ボルト穴、12…底板部、13a,13b…側板部、14a,14b…固定板部、15…天板部、16a,16b…側板部、17a,17b…固定板部、18…ガイド溝、19…肩部、20…アダプタ(工具)、21…支持板部、22a,22b…側板部、23a,23b…係止板部、24…ビス穴。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴縁受部材に取り付けられる胴縁であって、
天板部と、
前記天板部の両端縁において同じ面側に鋭角に屈曲形成された一対の側板部と、
前記各側板部の端縁において外側に鋭角に屈曲形成されて前記天板部と略平行となり前記胴縁受部材に固定される一対の固定板部と、
を有することを特徴とする胴縁。
【請求項2】
前記固定板部は、ビス留めにより前記胴縁受部材に固定されることを特徴とする請求項1に記載の胴縁。
【請求項3】
前記固定板部には、ビスの位置決めを行うガイド溝が形成されており、
前記ガイド溝は、前記ビスの先端を嵌め込んで前記ビスを前記固定板部に対して直角に配置した際に、前記ビスを前記固定板部にねじ込む工具が前記側板部に当接又は近接する位置に形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の胴縁。
【請求項4】
建物躯体に取り付けられて胴縁が取り付けられる胴縁受部材であって、
建物躯体に固定されたボルトがねじ込まれるボルト穴が形成された底板部と、
前記底板部の両端縁において同じ面側に鋭角に屈曲形成された一対の側板部と、
前記各側板部の端縁において外側に鋭角に屈曲形成されて前記底板部と略平行となり前記胴縁が固定される一対の固定板部と、
を有することを特徴とする胴縁受部材。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載の胴縁と、請求項4に記載の胴縁受部材と、を有することを特徴とする下地部材。
【請求項6】
前記ボルト穴を交点とした交差状に前記胴縁受部材と前記胴縁とが固定されることを特徴とする、請求項5に記載の下地部材。
【請求項1】
胴縁受部材に取り付けられる胴縁であって、
天板部と、
前記天板部の両端縁において同じ面側に鋭角に屈曲形成された一対の側板部と、
前記各側板部の端縁において外側に鋭角に屈曲形成されて前記天板部と略平行となり前記胴縁受部材に固定される一対の固定板部と、
を有することを特徴とする胴縁。
【請求項2】
前記固定板部は、ビス留めにより前記胴縁受部材に固定されることを特徴とする請求項1に記載の胴縁。
【請求項3】
前記固定板部には、ビスの位置決めを行うガイド溝が形成されており、
前記ガイド溝は、前記ビスの先端を嵌め込んで前記ビスを前記固定板部に対して直角に配置した際に、前記ビスを前記固定板部にねじ込む工具が前記側板部に当接又は近接する位置に形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の胴縁。
【請求項4】
建物躯体に取り付けられて胴縁が取り付けられる胴縁受部材であって、
建物躯体に固定されたボルトがねじ込まれるボルト穴が形成された底板部と、
前記底板部の両端縁において同じ面側に鋭角に屈曲形成された一対の側板部と、
前記各側板部の端縁において外側に鋭角に屈曲形成されて前記底板部と略平行となり前記胴縁が固定される一対の固定板部と、
を有することを特徴とする胴縁受部材。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載の胴縁と、請求項4に記載の胴縁受部材と、を有することを特徴とする下地部材。
【請求項6】
前記ボルト穴を交点とした交差状に前記胴縁受部材と前記胴縁とが固定されることを特徴とする、請求項5に記載の下地部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−21282(P2012−21282A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158226(P2010−158226)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(510192307)株式会社栗林商会 (1)
【出願人】(510192020)有限会社大沢テクノ工業 (1)
【出願人】(504339712)サイトウ商工株式会社 (9)
【出願人】(502306903)八潮建材工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(510192307)株式会社栗林商会 (1)
【出願人】(510192020)有限会社大沢テクノ工業 (1)
【出願人】(504339712)サイトウ商工株式会社 (9)
【出願人】(502306903)八潮建材工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]