説明

胴縁取付用ブラケット及びその取付方法

【課題】 建物の躯体壁表面の構造上の凹凸を避けることなく取り付け可能な胴縁取付用ブラケットを提供する。
【解決手段】 杆状のブラケット本体1の一端側に、建物の躯体壁に固定されるアンカー固定部5を有し、ブラケット本体1の他端側に、該ブラケット本体1から外方に張り出す胴縁受け板4が取り付けられる胴縁取付用ブラケットにおいて、
上記胴縁受け板4が、ブラケット本体1から外方に張り出す胴縁受け板本体4aと、ブラケット本体1の他端の雄ネジ部6に螺合される雌ネジ部21を内側に有する円筒状の調整用部材4eとを有し、調整用部材4eの一端が上記胴縁受け板本体4aの中央部に設けた孔部の内側にかしめて取り付けられている構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に鉄筋コンクリート(RC)、プレキャストコンクリート(PC)、軽量気泡コンクリート(ALC)などのコンクリート製の建物の躯体壁に胴縁を取り付けるために用いる胴縁取付用ブラケット及びその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、胴縁取付用ブラケットとしては、一端に設けられた鍔状部材、他端側外周に設けられた雄ネジ部及び中心部を軸方向に貫通して設けられた雌ネジ部を備えた杆状のブラケット本体と、ブラケット本体の雌ネジ部の鍔状部材側に螺合されて接続されるアンカー部と、雄ネジ部に順次螺合される断熱材押さえ板及び胴縁受け板とからなるものが知られている(例えば、特許文献1,非特許文献2参照)。また、これら文献には、建物の躯体壁外面側に固定されたアンカー部にブラケット本体を鍔状部材側からねじ込んで取り付け、断熱材をブラケット本体の雄ネジ部を貫通させて躯体壁外面上に押し付け、断熱材より外方に突出した雄ネジ部に断熱材押さえ板をねじ込んで、断熱材を躯体壁外面との間に挟持させ、さらに雄ネジ部に胴縁受け板を螺合させた後、同様にして取り付けた複数の胴縁受け板に胴縁を掛け渡して取り付けて、さらに胴縁に外装材を取り付けた建物の外壁構造が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−251031号公報
【非特許文献1】2004年8月発行「日本建築学会大会学術講演梗概集(北海道)」709及び710頁の「RC造外断熱工法の実証研究(その1 工法の概要)」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の胴縁取付用ブラケットは、太径のブラケット本体の雄ネジ部に、ガタツキなくしっかり胴縁受け板を螺合させるものとなっている。
【0005】
即ち、従来の胴縁取付用ブラケットを建物の躯体壁に取り付ける場合、外装材表面を同一面上に揃えて仕上げるためには、胴縁受け板の胴縁が取り付けられる表面(以下、「胴縁受け面」と記す)を同一面上に揃えて配置する必要があり、躯体壁に生じる施工誤差などによる不陸に応じて、胴縁受け面の位置を調整する必要があった。躯体壁に生じる不陸は、躯体がPC及びALCの場合は5mm程度であるが、RCの場合は一般的に20〜30mm、大きい場合は50mm程度の不陸が生じる事もある。従って、鉄筋コンクリートの場合など施工誤差などによる不陸が大きい場合は、従来の胴縁取付用ブラケットで対応するには限界があるため、長さが異なる複数のブラケットを用意しておいて、現場で生じた不陸に応じて適切な長さのブラケットを選択して用いる必要があった。しかし、この方法では、事前にブラケット本体の取付位置の不陸や凹凸の程度を正確に調査した上でブラケット本体を選択しなければならず、壁面全体の不陸や凹凸の分布を把握してからでないと施工を開始する事ができず、部分的な施工開始ができないために待ち時間がかさむ問題があった。また、ブラケット本体を取付ける位置が設計上やアンカーが鉄筋に当たる等の施工上の理由で途中で変更になった場合は、変更した位置での不陸や凹凸を再度調査して、別のブラケット本体を手配する必要があった。また、一度取付けたブラケットを設計変更等の理由で取り外すのに大変な労力を要した。また、他の方法としては、長めのブラケットを用意しておいて施工誤差に応じて余分な長さを切断して用いたりする必要があったが、切断手間がかかる、切断時に生じる火花による断熱材などの引火事故、切断部分の防錆処理の問題等があった。
【0006】
また、躯体壁に構造や意匠上の理由による凹凸がある場合は、該凹凸を避けて胴縁取付用ブラケットを取り付ける必要があった。
【0007】
新築の建物の場合であれば、予め胴縁取付用ブラケットの取付位置を考慮して躯体壁の構造を設計すればよいが、既にある建物の改修工事の場合には、躯体壁表面の構造上の凹凸を避けて胴縁取付用ブラケットを取り付けることには限界がある。そのため、ブラケット本体の長さが異なる複数種の胴縁取付用ブラケットを用意する、或いは、ブラケット本体の端部に延長部材を取り付けるなどの対応策が必要であるが、いずれの場合も前記同様の問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、建物の躯体壁表面に生じる施工誤差などによる不陸を吸収し、構造や意匠上の凹凸を避けることなく容易に取り付け可能な胴縁取付用ブラケットとその取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第一に、杆状のブラケット本体の一端側に、建物の躯体壁に固定されるアンカー固定部を有し、ブラケット本体の他端側に、該ブラケット本体から外方に張り出す胴縁受け板が取り付けられる胴縁取付用ブラケットにおいて、
上記胴縁受け板が、ブラケット本体から外方に張り出す胴縁受け板本体と、ブラケット本体の他端に取り付けられる円筒状の調整用部材とを有することを特徴とする胴縁取付用ブラケットを提供するものである。
【0010】
上記本発明にかかる胴縁取付用ブラケットは、該調整用部材の一端が上記胴縁受け板本体の中央部に設けた孔部の内側にかしめて取り付けられていることを好ましい態様として含むものである。
【0011】
また本発明は、第二に、杆状のブラケット本体の一端側に、建物の躯体壁に固定されるアンカー固定部を有し、ブラケット本体の他端側に、該ブラケット本体から外方に張り出す胴縁受け板が取り付けられる胴縁取付用ブラケットにおいて、
胴縁受け板が、ブラケット本体から外方に張り出す胴縁受け部と、該胴縁受け部の中央部をアンカー固定部側に突出させて設けた窪み部と、該窪み部の底部より胴縁受け部に対し垂直方向に突出し、ブラケット本体に取り付けられる円筒状片とを有することを特徴とする胴縁取付用ブラケットを提供するものである。
【0012】
また本発明は、第三に、杆状のブラケット本体の一端側に、建物の躯体壁に固定されるアンカー固定部を有し、ブラケット本体の他端側に、該ブラケット本体から外方に張り出す胴縁受け板が取り付けられる胴縁取付用ブラケットにおいて、胴縁受け板が、ブラケット本体から外方に張り出す胴縁受け部と、該胴縁受け部の中央部をアンカー固定部側に突出させて設けた窪み部と、該窪み部の底部より胴縁受け面に対し垂直方向に突出し、ブラケット本体に取り付けられる円筒状の調整用部材とを有することを特徴とする胴縁取付用ブラケットである。
【0013】
上記本発明にかかる胴縁取付用ブラケットは、
胴縁受け板が、螺合によりブラケット本体に取り付けられること、
胴縁受け板が、外周端よりアンカー固定部側に突出する補強片を有すること、
胴縁受け板の平面形状が略方形であること、
を好ましい態様として含むものである。
【0014】
また、本発明は、第四に、上記いずれかの胴縁取付用ブラケットを建物の躯体壁に取り付ける胴縁取付用ブラケットの取付方法において、躯体壁に形成した削孔内にアンカー部を取り付け、ブラケット本体の一端側のアンカー固定部を該削孔内に挿入して上記アンカー部に連結し、ブラケット本体に胴縁受け板を取り付けると同時に、該胴縁受け板の取り付け位置をブラケット本体の長さ方向に調整することを特徴とする胴縁取付用ブラケットの取付方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる胴縁取付用ブラケットは、胴縁受け板のブラケット本体への取り付け位置を調整することにより、取り付けた躯体壁表面の施工誤差などによる不陸や構造及び意匠上の凹凸にかかわらず、胴縁受け板の胴縁取り付け側表面(胴縁受け面)を所定の高さにそろえることができる。よって、既にある建物の改修工事においても、同じ胴縁取付用ブラケットで対応することができる。
【0016】
また、新築改修を問わず不陸が狭い壁面の範囲で大きく変化する場合でも、同じ長さのブラケット本体を躯体壁面に取付けた後に、ブラケット本体の取付位置における躯体壁の不陸や凹凸を正確に調査した上で複数の胴縁受け板を用いる事もできる。従って、部分的にブラケット本体の取付け工事を開始できるので施工の待ち時間がない上、施工開始後にシャフト本体の取付け位置が変更になった場合も対応が容易である。
【0017】
また、調整用部材或いは窪み部を設けたことにより、胴縁受け面よりブラケット本体が突出しないように胴縁受け板をブラケット本体に取り付けることができ、その場合には、取り付ける胴縁の形状の制約がなくなり、タイル下地や面材などを直接取り付けて壁厚を薄くすることができる。
【0018】
また、窪み部を設け、該窪み部の底部に調整用部材をアンカー固定部側に向けて設けた場合は、ブラケット本体を取付ける躯体壁に生じるより大きな不陸や凹凸に対応することができる。
【0019】
また、胴縁受け板の外周端に補強片を設けることにより、胴縁受け面が補強され、胴縁受け板に薄型の板材を用いることができ、胴縁のビス止めが容易になり、作業効率が向上する。
【0020】
さらに、胴縁受け面の平面形状を略方形とすることにより、同じ原板から作られる円形の場合に比較して胴縁固定位置の範囲を約1.4倍に広げることができる。
【0021】
さらにまた、胴縁受け板を円筒状片を用いてブラケット本体に取付ける場合には、胴縁受け面がブラケット本体の中心軸と直交する方向に対してブラケット本体周りに傾動可能となるように構成することにより、地震や振動によりブラケットに軸方向の曲げ変形や根元部分の回転が生じ、ブラケット先端が傾斜した場合でも、胴縁受け面はその影響を受けずに元々の面を保つことができ、胴縁や外装材に歪みや損傷が生じることを防ぐことができる。また、躯体壁表面の不陸等によりブラケット本体が多少傾いて取り付けられても、胴縁を掛け渡す複数の胴縁受け面を容易に同一面上に一致させることができる。従って、この胴縁取付用ブラケットを用いた建物の外壁構造によれば、耐震性に優れた外壁構造とすることができる。また、ハツリやモルタル塗布などの下地処理を施すことなく、胴縁を安定した状態でしっかり取り付けることができ、良好な外装材の仕上がり面を得ることができる。また、躯体壁の状態が一定ではない改修工事にも容易に対応することができる。
【0022】
さらにまた、胴縁受け板を円筒状片を用いてブラケット本体に取付ける場合には、ブラケット本体の他端側の先端が円筒状片を貫通し、胴縁受け面側に露出するため、その露出した長さを目視することにより必要な数のネジ山がかかっているかの確認を容易かつ確実に行うことができる。また、胴縁受け部、窪み部、円筒状片の各部位が継ぎ目なく一体に成形できるため、防錆処理が必要な材料を用いた場合に通常防錆上の弱点となる溶接部や部材間の隙間等がなく耐久性に優れる。さらにまた、窪み部が胴縁受け板の胴縁受け部を補強する効果を有するので、薄い板を用いても大型の胴縁受け板を作ることができる。大型の胴縁受け板を用いると外装材のジョイント部等に用いる大型の胴縁を取付けるのに好都合である上、シャフト本体の取付け位置が胴縁よりずれた場合も対応が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1〜図4に基づいて、本発明の一例に係る胴縁取付用ブラケットと、この胴縁取付用ブラケットを用いた建物の外壁構造の一例を説明する。
【0024】
図1は、本発明の第一の胴縁取付用ブラケットの一例を示す側面図、図2は、図1の胴縁取付用ブラケットに取り付けられている胴縁受け板の平面図及び断面図、図3は、図1の胴縁取付用ブラケットを用いて施工中の建物の外壁構造の一部を示す斜視図、図4は、係る建物の外壁構造の一部を示す断面図である。
【0025】
まず、胴縁取付用ブラケットについて説明する。図1において、1はブラケット本体、2はアンカー部、3は断熱材押え板、4は胴縁受け板である。
【0026】
ブラケット本体1は、断熱性を重視した場合はプラスチック製でもよいが、一般的には鋼、ステンレススチールなどの金属の杆状体で構成されており、一端側中心部に、アンカー固定部として雌ネジ部5が設けられ、他端側外周面に雄ネジ部6が設けられている。また、雄ネジ部6が設けられた他端側端部には、六角ソケットが嵌まる凸部形状をなす、工具受け部7が設けられている。この工具受け部7は、ネジの締め付けに用いるレンチなどの工具を接続する箇所で、例えば雄型の六角レンチなどが嵌まり合う凹部として設けることもできる。
【0027】
上記ブラケット本体1の中間部に、外方に張り出した鍔部8が設けられている。また、この鍔部8のアンカー部2側には、ブラケット本体1を囲む位置に窪み部9が形成されており、この窪み部9に対応する位置に、1または複数の貫通孔10が形成されている。窪み部9と貫通孔10の役割については後述する。
【0028】
アンカー部2は、一端側が雄ネジ部11、他端側が、他端側の端部に向かって徐々に拡径した拡径頭部12となっており、雄ネジ部11の基部付近(雄ネジ部11の拡径頭部12側の端部付近)にストッパー13が設けられた杆状体のアンカーピン14を備えている。また、ストッパー13と拡径頭部12との間には、拡径頭部12側の端縁から軸方向にスリット15が切り込まれたアンカー環16が、軸方向にスライド可能に嵌め込まれている。
【0029】
上記アンカー部2は、図4に示されるように、躯体壁17の外面に形成された削孔18内に打ち込んだ後、アンカー部2の雄ネジ部11にブラケット本体1の雌ネジ部5を螺合させ、ブラケット本体1の他端側先端部をハンマー等で叩くことによりブラケット本体1の鍔部8を躯体壁17の外面に当接もしくは近接させた後に、工具受け部7に接続したレンチなどでブラケット本体1を締め付けることで、躯体壁17に固定されるものである。つまり、鍔部8が躯体壁17の外面に当接した後にさらにブラケット本体1を締め付けると、アンカーピン14がブラケット本体1に徐々に引き寄せられ、その拡径頭部12がアンカー環16内に入り込んで拡径させ、アンカー環16が削孔18の内壁に強く係合するものとなっている。アンカー環16の径は削孔18の径よりもわずかに小さく、該アンカー環16の表面に備えられた凸状片16aだけが削孔18の内壁面に接触するように構成され、さらに凸状片16aは打ち込む方向には抵抗が小さいが、抜け出し方向には抵抗が大きい構造としている。従って、アンカーピン14がブラケット本体1に引き寄せられる時に、アンカー環16だけは移動せず、拡径頭部12がアンカー環16内に入り込んで拡径させることが可能となる。鍔部8を躯体壁17の外面に近接させずにインパクトドライバーなどの電動工具で締付けると、アンカー部に引張り力が生じるまでに時間がかかり、その間は回転数及び回転の速度が大きくなるため、アンカーの凸状片16aが削孔内で容易に空回りし、一旦空回りすると凸状片16aは削孔内に係止されず締付け不能となる。
【0030】
尚、ブラケット本体1の鍔部8が躯体壁17の外面に当接した後もさらにブラケット本体1を締め付けることにより拡径頭部がアンカー環16内に入り込んで、アンカー部2の固定が完了する。即ち、アンカー部2の角度は削孔18に打ち込んだ角度にかかわらず、締付け完了までの間に躯体壁17に対して垂直の状態に矯正される。
【0031】
また、鍔部8は、これを躯体壁17の外面に当接させた状態でブラケット本体1をアンカー部2に固定すると、ブラケット本体1に外装材24の重量など軸直交方向に外力を受けた際の固定度を向上させブラケット根元の回転を生じにくくする効果を有する。また、鍔部8を設けることにより、ブラケット本体1の一定長さを躯体壁17から突出させて取り付けることが容易に可能となる。アンカー部2は打ち込みに伴って先端が開いてアンカー効果を発揮するタイプのものを使うと技能レベルの低い職人でも施工が可能となるが、打ち込んだ際にアンカー部2の位置が固定されてしまうため、躯体壁17に対して斜めに打ち込まれると、後にブラケット本体1を締付けて固定する際に鍔部8が躯体壁17に当接しなかったりアンカー部2が折れてしまうなどの支障が生じ易い。
【0032】
断熱材押え板3は、本例では図1に示されるように板状材で、ブラケット本体1の周囲に張り出した状態で取り付けられ、アンカー部2で躯体壁17に固定したブラケット本体1を貫通させて躯体壁17外面に押し付けた断熱材20を、躯体壁17との間に挟持するものとなっている。該断熱材押え板3は、ブラケット本体1と接触する部分の断熱材押え板3の肉厚をブラケット本体1の雄ネジ部6に設けられたネジ山間の間隔と略同一とし、中央部のブラケット本体1が貫通する孔の径を雄ネジ部6のネジ部の谷径よりわずかに大きく、雄ネジ部6のネジ部の山径より小さくしている。このような構成により、断熱材押え板3はブラケット本体1に差し込む作業により装着でき、該断熱材押え板3が断熱材20を押し付ける程度も特別な工具を用いずに容易に調整できるし、振動による緩み等も生じにくい。
【0033】
他の方法としては断熱材押え板3の中央部に雌ネジを設け、ブラケット本体の雄ネジと螺合させる方法があるが、前者の方法と比べると、十分な押さえ付け程度を確保し振動等により緩みが発生しないようにするためには所要のトルクで締付ける必要があり、作業に特別な工具を用意し、さらに押え板にも工具を装着するための特別な加工をする必要がある上、作業時間もより多くかかる。また、断熱材20に柔らかい材料を用いる場合は、断熱材20から所要の反発力を得ることが困難であるため、ネジ込みによらない方法が好ましい。
【0034】
断熱材押え板3は、金属製とすることもできるが、熱損失を抑えるために合成樹脂製とすることが好ましい。また、断熱材押え板3は、断熱材20を設けない場合は勿論のこと、断熱材20の取り付け形態によっては省略することができる。
【0035】
本例の胴縁受け板4について図2を用いて説明する。図2(a)は図1中の胴縁受け板4を胴縁受け面側から見た平面図であり、(b)は(a)のA−A’断面図である。
【0036】
図2に示すように、本例の胴縁受け板4は、ブラケット本体1から外方に張り出す胴縁受け板本体4aと、ブラケット本体1の他端の雄ネジ部6に螺合される雌ネジ部21を内側に有する円筒状の調整用部材4eとを有しており、胴縁受け板本体4aと調整用部材4eとは、該調整用部材4eの一端が胴縁受け板本体4aの中央部に設けた孔部の内側にかしめて取り付けられている。図中、4fは調整用部材4eの一端に設けたかしめ片であり、胴縁受け板本体4aの中央部の孔部近傍はかしめ片4fが胴縁受け面よりも突出しないだけの深さを持った窪み部4cが形成されており、該窪み部4cの端部の調整用部材接合部4dとかしめ片4fとで調整用部材4eと胴縁受け板本体4aとが一体化されている。
【0037】
かしめ片4fは図2(c)に示される状態で受け板本体4aの中央部の孔部に挿入され、その後、該かしめ片4fが外周側に押し潰されることにより、調整用部材4eと胴縁受け板本体4aとが一体化される。かしめ片4fは環状の全周に亘ったものでもよいし、全周にわたらずに所要の大きさのかしめ片を円周上に適当な間隔をもって必要個数設ける方法でもよい。
【0038】
かかる胴縁受け板4は、上記断熱材押え板3の後から調整用部材4eの内側の雌ネジ部21をブラケット本体1の雄ネジ部6に螺合させることで、ブラケット本体1の周囲に張り出した状態で取り付けられるものとなっている。
【0039】
本例の胴縁受け板4は、調整用部材4eをブラケット本体1に螺合させることで、ブラケット本体1に取り付けた際の取り付け位置を調整することができる。特に、該調整用部材4eはブラケット本体1の長さ方向における長さが長く構成されていることにより、ブラケット本体1の端部に取り付けた際には、ブラケット本体1の延長部材として働く。よって、かかる調整用部材4eは、2〜10cm程度が好ましく、2cmより短いと施工誤差の吸収や凹凸への対応の面での効果が十分に得られないし、10cmを超えるとブラケット本体1の軸部や根元部分に働く曲げモーメントが大きくなり、そのモーメントに耐えるにはブラケット本体1が大型化してしまい好ましくない。また、図1,図4に示すように、ブラケット本体1の端部が該調整用部材4e内に埋没するように取り付けることで、胴縁22の形状の制約がなくなり、胴縁受け面にタイル下地や面材などを直接取り付けることで壁厚を薄くすることが可能である。
【0040】
胴縁受け板本体4aは、図3、図4に示されるように、胴縁22の取り付け部となるもので、通常、金属で構成され、例えば1.6〜3.2mm程度の鋼板であり、調整用部材4eは先端にかしめ片4fが設けられた特殊な長ナットが用いられる。該長ナットの肉厚は期待する変形能力と耐久性とを考慮して決定される。一般的には既製の長ナットと同じ厚肉とすれば比較的安価に製作でき肉厚が厚いので耐久性にも優れるが、肉厚を胴縁受け板本体4aより薄くすれば胴縁受け板4に傾動が生じた場合も、胴縁受け板本体4aに変形が生じることなく、調整用部材4eが変形することにより傾動角を吸収することができ、胴縁受け板本体4a、胴縁22、外装材24及びそれらを接合するビス25,26に歪みや損傷が生じることを防ぐことができる。
【0041】
また、図2の胴縁受け板本体4aは外周端よりアンカー固定部側に突出する補強片4bを備えている。補強片4bは、平板の胴縁受け板本体4aの外周端を折り曲げることで容易に形成することができ、胴縁受け面に対して30〜150度の範囲で形成される。このような補強片4bを胴縁受け板本体4aの外周端に設けておくことにより、胴縁受け面が補強され、胴縁受け板本体4aに薄型の板材を用いることができ、胴縁22のビス止めが容易になり、作業効率が向上する。
【0042】
さらに、図2の胴縁受け板本体4aの胴縁受け面の平面形状は略方形である。そのため、該胴縁受け面を任意方向に回転させることで、同じ原板から作られる円形の胴縁受け板本体に比較して、胴縁22の取り付け位置の範囲を約1.4倍に広げることができる。
【0043】
ブラケット本体1の躯体壁17と当接する面と胴縁受け板4までの距離は、一般的には20〜150mm、躯体壁17の表面に断熱材20を装着する場合は40〜150mmとなり、さらに一般的には各々20〜100mm、40〜100mmが用いられる。またブラケット本体1の外径は、躯体壁17と当接する面と胴縁受け板4までの距離や想定する外装材24の重量、地震力及び振動荷重等によって決定されるが、一般的には8〜24mm、さらに一般的には10〜20mmが用いられる。
【0044】
次に、建物の外壁構造について説明する。
【0045】
図4に示されるように、建物の躯体壁17の外面側には削孔18が形成されており、この削孔18にアンカー部2が拡径頭部12側から打ち込まれている。
【0046】
削孔18は、全体がアンカー部2の拡径頭部12よりわずかに大きく凸状片16aが適切に接触する径のものでもよいが、アンカー部2を打ち込んだ削孔18内に、例えば樹脂モルタルなどの接着剤23を注入する場合、削孔18の後端側(開口部側)の径を先端側(底部側)の径より大きくし、接着剤23を注入しやすくしておくことが好ましい。
【0047】
アンカー部2の雄ネジ部11には、ブラケット本体1の雌ネジ部5(図1参照)が螺合されている。この螺合は、前述したように、ブラケット本体1の鍔部8が躯体壁17の外面に当接した後も工具受け部7に接続したレンチなどでさらにブラケット本体1を締め付けることで行われている。この締め付けにより、アンカーピン16が徐々に引き寄せられ、その拡径頭部12がアンカー環16内に入り込んで拡径させ、アンカー環16が削孔18の内壁に強く係合してアンカー部2が削孔18内に固定されると共に、アンカー部2にブラケット本体1が取り付けられている。
【0048】
削孔18内に接着剤23を注入する場合、十分な量の接着剤23を注入しておくことが好ましいが、過剰の接着剤23を注入すると、アンカー部2の雄ネジ部11にブラケット本体1の雌ネジ部5(図1参照)を螺合させたときに、余剰の接着剤23が削孔18から溢れ出て、躯体壁17への鍔部8の密着が妨げられてしまうことが生じる。前記鍔部8に設けられた窪み部9と貫通孔10(図1参照)は、これを防止するためのものである。これらを設けておくと、削孔18から溢れ出た接着剤23は窪み部9に収容され、窪み部9に収容しきれない接着剤23は貫通孔10から排出されるので、削孔18から溢れ出た接着剤23によって鍔部8が押し上げられて、躯体壁17への鍔部8の密着が妨げられるのを防止することができる。また、貫通孔10から接着剤23が流出することを目視することで、十分な接着剤23の充填が行われていることを確認することができる。
【0049】
ブラケット本体1は、上記のようにして躯体壁17に多数固定されているもので、ブラケット本体1が固定された躯体壁17の外面には、ブラケット本体1を貫通させて断熱材20が押し付けられている。この断熱材20は、各ブラケット本体1の雄ネジ部6に螺合された断熱材押え板3によって、躯体壁17との間に挟持されている。断熱材20としては、フェノールフォーム・ポリスチレンフォーム・硬質ウレタンフォームなどの合成樹脂系断熱材やグラスウールなどの繊維系断熱材を用いることができる。中でも5%歪時の圧縮強度が30N/cm2以下、好ましくは10〜20N/cm2程度のフェノールフォーム系断熱材で、表面材にポリエステル不織布が用いられたものが最も適する。この断熱材20はブラケット本体1を貫通させる場合、断熱材20に下孔加工をしなくても突き刺すことができるし、直径3〜10cm程度の大きさの断熱材押え板3で容易に安定的に固定することができる。断熱材20もしくは表面材がより硬いと下孔加工が必要となるし、より柔らかい場合は突き刺した時に周辺部分も大きく崩れ補修が必要になったり、断熱材押え板3と断熱材20との間に適切な反発力が発生しにくいので断熱材20の保持が不安定で位置ズレが生じやすくなる。断熱材押え板3の位置ズレを防止するために、断熱材押え板3とブラケット本体1の接合をネジ止めとしてさらにダブルナット等の緩み止め処置をするなど特別の手段が必要になる。
【0050】
各ブラケット本体1の雄ネジ部6には、さらに胴縁受け板4が螺合されており、複数の胴縁受け板4間に跨って掛け渡された胴縁22が、胴縁受け板4にビス25などによって取り付けられている。胴縁22としては、下向きコ字形断面の金属長尺材の両端を外方に屈曲させて鍔状突出部としたハット型材料を用いることができる。本例における胴縁22は、このハット型材料で、鍔状突出部をビスなどで胴縁受け板4に固定することで取り付けられている。また、ハット型材料の胴縁22には、外装材24が、その頂部にビスなどで取り付けられている。
【0051】
尚、前記したように、本発明においては胴縁受け板4の調整用部材4eの長さを利用して、該調整用部材4e内にブラケット本体1の端部を埋没させて取り付けることができるため、胴縁22の形状の制約がなくなる。或いは、胴縁22を用いずに直接外装材24を胴縁受け板4に取り付けことも可能となる。
【0052】
また、前述のように、胴縁受け板4の調整用部材4eの肉厚を胴縁受け板4より薄くすれば胴縁受け板4に傾動が生じた場合も、胴縁受け板本体4aに変形が生じることなく、調整用部材4eが変形することにより傾動角を吸収することができ、胴縁受け板本体4a、胴縁22、外装材24及びそれらを接合するビス25,26に歪みや損傷が生じることを防ぐことができる。また、ブラケット本体1が傾いて取り付けられている場合でも、調整用部材4eが変形することにより、胴縁22が取り付けられる各胴縁受け板4の胴縁受け面を同一面上に揃えることができる。さらに、複数の平行に配置された胴縁22に跨って外装材24もしくは二次胴縁をビス止めやボルト止め等の手段で緊結することにより、各々の胴縁22は外装材24もしくは二次胴縁の面と同一の面に矯正される。従って、胴縁22の取り付け状態を安定させやすく、外装材24の仕上がり面も良好なものとなる。
【0053】
胴縁受け板4は、断熱材20と外装材22との間に十分な通気用空間を確保するために、断熱材20から離れた位置に取り付けておくことが好ましい。また、胴縁22は、通常縦方向に取り付けられるが、横方向に取り付けることもできる。また、胴縁22に外装材22を取り付けるのではなく、胴縁22に交差する方向に二次胴縁(図示されていない)を取り付けて、この二次胴縁に外装材22を取り付けることもできる。
【0054】
次に、図5,図6に基づいて、本発明の第二の胴縁取付用ブラケットについて説明する。
【0055】
図5(a)は、本発明第二の胴縁取付用ブラケットに取り付けられる胴縁受け板の一例の胴縁受け面側平面図であり、(b)は(a)のA−A’断面図である。尚、胴縁受け板以外の構成については、図1と同様である。また、図6は胴縁と外装材を取り付けた状態の、本例に係る胴縁取付用ブラケットを示す側面図である。尚、図5,図6において、図1〜図4と同じ符号は同様の部材を示し、類似の符号は類似の部材を示す。
【0056】
本例の胴縁受け板4’は、ブラケット本体1から外方に張り出す胴縁受け部4gと、該胴縁受け部4gの中央部をアンカー固定部側に突出させて設けた窪み部4hと、該窪み部4hの底部よりアンカー固定部側に突出し、ブラケット本体に取り付けられる円筒状片4iとを有しており、平板の中央部を椀状に、さらにその中央部を円筒状に絞り出して形成したものである。円筒状片4iの内側には雌ネジ部21が形成され、該雌ネジ部21がブラケット本体1の雄ネジ部6に螺合されて取り付けられる。特に本例における胴縁受け板4’は、雌ネジ部21が、ブラケット本体1の雄ネジ部6に対して遊びを持って緩く螺合されるものとなっており、当該構成により、図2の胴縁受け板4と同様に、胴縁受け面がブラケット本体1の中心軸と直交する方向に対して傾動可能であり、その最大傾動角度はブラケット本体1周りに1〜10度となっている。
【0057】
本発明の胴縁受け板4’は通常、金属で構成され、例えば1.6〜3.2mm程度の鋼板であり、円筒状片4iは胴縁受け部4gの板厚の1/3〜2/3の板厚で形成され、該円筒状片4iの内部には必要な数の雌ネジが設けられる。雌ネジの数は胴縁受け板4’をブラケット本体1に連結させるに必要な強度と胴縁受け板4’とブラケット本体1との間に設けるべき傾動角度によって決定される。雌ネジの数は1山では十分な連結強度を確保するのが困難であるし、胴縁受け板4’とブラケットとの間の傾動角度が大き過ぎて好ましくない。一方、5山を越えると胴縁受け板4’とブラケットとの間の傾動可能な角度が小さくなり、地震時や振動を受けた際に胴縁もしくは胴縁に連結される外装材に損傷が生じやすくなる。従ってこの場合は、外装材の取付部分に免震性が必要となる。2〜4山とすると必要な連結強度を得ながら、ブラケットに連結される胴縁受け板の傾動可能な角度が適当で地震時や振動を受けた際に胴縁や外装材に損傷が生じにくく好ましい。
【0058】
尚、前記の胴縁受け板4’とブラケットとの間の傾動角度はねじ山の数だけでなく、円筒状片4iに設けた雌ネジ部の径とブラケット本体1の雄ネジ部の径との差にも影響される。
【0059】
また、円筒状片4iを胴縁受け部4gの板厚の1/3〜2/3の板厚で形成すると胴縁受け板4’に当初設定した以上の傾動が生じた場合も、胴縁受け部4gに変形が生じることなく、円筒状片4iが変形することにより設定した以上の傾動角を吸収することができ、胴縁受け部4g、胴縁22、外装材24及びそれらを接合するビス25,26に歪みや損傷が生じることを防ぐことができる。
【0060】
本発明第二の胴縁取付用ブラケットはブラケット本体1が多少傾いた状態で取り付けられた場合でも、胴縁受け面を傾動させることで、該胴縁受け面を垂直且つ同一面上に揃えることができ、また、地震や振動によりブラケット本体1に回転や曲げ撓みが生じた場合にも、胴縁受け面には回転が生じず、胴縁22や外装材24の歪みや損傷を防ぐ事ができる。前記の最大傾動角度は1〜10度の範囲であれば上記効果を得ることができるが、尚好ましくは上下それぞれ2〜7度とする。胴縁受け面の傾動角度が1度未満では、地震や振動によりブラケット本体1の回転や曲げ変形が生じた際にブラケット本体1の傾きを十分修正しにくく、胴縁受け面の傾動角度が10度を超えると、胴縁受け板本体4aが不安定になって作業性が悪くなる。
【0061】
また、本例の胴縁受け板4’においては、窪み部4hを設けたことにより、該窪み部4h内にブラケット本体1の端部を埋没させて、図2の胴縁受け板4と同様に、ブラケット本体1の延長部材として作用させることができると同時に、胴縁22の形状の制約がなくなり、タイル下地や面材などを直接取り付けて壁厚を薄くすることができる。よって、かかる窪み部4hの深さは2〜5cm程度が好ましい。
【0062】
さらに、本例においても、図2の胴縁受け板4と同様に、胴縁受け板4’の胴縁受け部4gの外周端に補強片4bが形成されており、同様の効果が得られる。
【0063】
図7(a)は、本発明第二の胴縁取付用ブラケットに取り付けられる胴縁受け板の他の例の胴縁受け面側平面図であり、(b)は(a)のA−A’断面図である。尚、胴縁受け板以外の構成については、図6と同様である。尚、図7において、図1〜図4と同じ符号は同様の部材を示し、類似の符号は類似の部材を示す。
【0064】
本例の胴縁受け板4”は、図5に示す胴縁受け板4’における円筒状片4iを胴縁受け面側に突出させたものであり、胴縁受け板4’と同様の効果が得られるとともに、メッキ処理や製品の搬送時に該胴縁受け板が受ける衝撃による円筒状片4iの変形や損傷を防ぐ。そのため、円筒状片4iの損傷部からの腐食の危険性を低減し、ブラケット本体1の雄ネジ部6への螺合に不具合が生じるのを防止する効果が得られる。
【0065】
また、円筒状片4iにシャフト本体からその軸方向に外力が加わった場合の強度には方向性が存在する。即ち、円筒状片4iを窪み部4cの底部に押し込む方向の強度の方が円筒状片4iを窪み部4cの底部から引き離す方向の強度より大きい。よって、本例のように構成すると大地震時に胴縁受け板がシャフト本体軸方向に繰り返し荷重を受けた場合は胴縁受け板が躯体壁側に外れる事になり、胴縁受け板がシャフト本体から脱落する事を防ぐ事ができる。
【0066】
さらに、本例においても、図2の胴縁受け板4と同様に、胴縁受け板4”の胴縁受け部4gの外周端に補強片4bが形成されており、同様の効果が得られる。
【0067】
図8は、本発明第二の胴縁取付用ブラケットを、コンクリートの型枠施工に用いるセパレーター27をアンカー部として利用して取り付け、2枚の外装材24をジョイント部24aを中心として胴縁22’に取り付けた状態を示す側面図である。図8において、図1〜図6と同じ符号は同様の部材を示し、類似の符号は類似の部材を示す。セパレーター27は、その両端に雄ネジ部28、29が形成され、外装材24側の雄ネジ部28にブラケット本体1が取り付けられ、他方の雄ネジ部29に、セパレーター27の引抜けを防止するためのワッシャー30、ナット31が取り付けられている。
【0068】
本例のブラケット本体1の取り付け方法は、コンクリート型枠を固定する際に用いるPコン等によって生じた、型枠解体後の穴32を用いることで、アンカーを用いた図3、図4、図6のような取り付け方法に比べ、コンクリートの硬化後にアンカー部を打ち込み、樹脂モルタルなどの接着剤を注入するためにハンマードリル等の工具により穿孔作業をする必要が無くなる。よって施工がより簡便になり、また作業によって生じる騒音、粉塵等の問題も解消される。
【0069】
さらに外装材のジョイント部は、従来幅広い胴縁受け板を取り付け、幅の広い胴縁を施工し、その上に2枚の外装材を固定するか、ジョイント部の両側に各々胴縁取付用ブラケット、胴縁受け板及び胴縁を設けて、外装材を固定しなければならなかったが、本例のようにハット型材料の胴縁22’の底面部33を胴縁受け板4’にビスや溶接などで固定し、ハット型材料の鍔状突出部にそれぞれ外装材をビスなどで取り付けることにより、ジョイント部に用いる胴縁受け板に、ジョイント部以外に用いる胴縁を施工することによって外装材のジョイント部の胴縁を容易に取り付けることが出来、ジョイント部とジョイント部以外の部品を共有でき好ましい。
【0070】
次に図9により本発明の第一、第二及び従来技術の胴縁取付用ブラケットの各々の不陸調整範囲について説明する。図9の(a)、(b)、(c)は各々本発明の第一、第二及び従来技術の胴縁取付用ブラケットの不陸調整範囲を示しており、図示の状態は同一の長さのブラケット本体を用いて、胴縁受け板を最も外部側に張り出した状態である。図9(a)において、ブラケット本体1の先端には工具受け部7が設けられ、該工具受け部7に続いてブラケット本体の鍔部8に向かって雄ネジ部6が設けられている。該雄ネジ部6の先端寄りは不完全ねじ山部分Lwであり、ブラケット本体1と調整用部材4eの連結に強度上有効な部分は有効螺合部分Leである。不完全ねじ山部分Lwは一般的には2〜3山程度であり、有効螺合部分Leは3山程度として設計されるのが一般的である。不陸調整可能範囲dは図9(a)の状態から、シャフト本体1の先端が胴縁22の内面に当たる位置までの範囲となる。図9(b)、(c)に示す不完全ねじ山部分Lw、有効螺合部分Le及び不陸調整可能範囲dは図9(a)と同様である。図9(a)、(b)、(c)を比較すると本発明の胴縁取付用ブラケットが従来技術の胴縁取付用ブラケットより大きな不陸調整範囲を有することが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第一の胴縁取付用ブラケットの一例を示す側面図である。
【図2】図1の胴縁取付用ブラケットに取り付けられた胴縁受け板の平面図及び断面図である。
【図3】図1の胴縁取付用ブラケットを用いて施工中の建物の外壁構造の一部を示す斜視図である。
【図4】図1の胴縁取付用ブラケットを用いた建物の外壁構造の一部を示す断面図である。
【図5】本発明の第二の胴縁取付用ブラケットに取り付けられた胴縁受け板の一例の平面図及び断面図である。
【図6】図5の胴縁受け板を取り付けた胴縁取付用ブラケットを用いた建物の外壁構造の一例を示す断面図である。
【図7】本発明の第二の胴縁取付用ブラケットに取り付けられた胴縁受け板の他の例の平面図及び断面図である。
【図8】図5の胴縁受け板を取り付けた胴縁取付用ブラケットを用いた建物の外壁構造の他の例を示す断面図である。
【図9】本発明の第一、第二の胴縁取付用ブラケットと従来技術による胴縁取付用ブラケットとの不陸調整範囲を比較して説明する図である。
【符号の説明】
【0072】
1 ブラケット本体
2 アンカー部
3 断熱材押え板
4,4’,4” 胴縁受け板
4a 胴縁受け板本体
4b 補強片
4c 窪み部
4d 調整用部材接合部
4e 調整用部材
4f かしめ片
4g 胴縁受け部
4h 窪み部
4i 円筒状片
5 雌ネジ部(アンカー固定部)
6 雄ネジ部
7 工具受け部
8 鍔部
9 窪み部
10 貫通孔
11 雄ネジ部
12 拡径頭部
13 ストッパー
14 アンカーピン
15 スリット
16 アンカー環
16a 凸状片
17 躯体壁
18 削孔
20 断熱材
21 雌ネジ部
22,22’ 胴縁
23 接着剤
24 外装材
24a 外装材ジョイント部
25 ビス
26 ビス
27 セパレーター
28 雄ネジ部
29 雄ネジ部
30 ワッシャ−
31 ナット
32 Pコン穴
33 底面部
34 雌ねじ部
d 不陸調整範囲
Le 有効螺合部分
Lw 不完全ねじ山部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杆状のブラケット本体の一端側に、建物の躯体壁に固定されるアンカー固定部を有し、ブラケット本体の他端側に、該ブラケット本体から外方に張り出す胴縁受け板が取り付けられる胴縁取付用ブラケットにおいて、
上記胴縁受け板が、ブラケット本体から外方に張り出す胴縁受け板本体と、ブラケット本体の他端に取り付けられる円筒状の調整用部材とを有することを特徴とする胴縁取付用ブラケット。
【請求項2】
上記調整用部材の一端が上記胴縁受け板本体の中央部に設けた孔部の内側にかしめて取り付けられている請求項1に記載の胴縁取付用ブラケット。
【請求項3】
杆状のブラケット本体の一端側に、建物の躯体壁に固定されるアンカー固定部を有し、ブラケット本体の他端側に、該ブラケット本体から外方に張り出す胴縁受け板が取り付けられる胴縁取付用ブラケットにおいて、
胴縁受け板が、ブラケット本体から外方に張り出す胴縁受け部と、該胴縁受け部の中央部をアンカー固定部側に突出させて設けた窪み部と、該窪み部の底部より胴縁受け部に対し垂直方向に突出し、ブラケット本体に取り付けられる円筒状片とを有することを特徴とする胴縁取付用ブラケット。
【請求項4】
杆状のブラケット本体の一端側に、建物の躯体壁に固定されるアンカー固定部を有し、ブラケット本体の他端側に、該ブラケット本体から外方に張り出す胴縁受け板が取り付けられる胴縁取付用ブラケットにおいて、
胴縁受け板が、ブラケット本体から外方に張り出す胴縁受け部と、該胴縁受け部の中央部をアンカー固定部側に突出させて設けた窪み部と、該窪み部の底部よりアンカー固定部側に突出し、ブラケット本体に取り付けられる円筒状の調整用部材とを有することを特徴とする胴縁取付用ブラケット。
【請求項5】
上記胴縁受け板が、螺合によりブラケット本体に取り付けられる請求項1〜4のいずれかに記載の胴縁取付用ブラケット。
【請求項6】
上記胴縁受け板が、外周端よりアンカー固定部側に突出する補強片を有する請求項1〜5のいずれかに記載の胴縁取付用ブラケット。
【請求項7】
上記胴縁受け板の平面形状が略方形である請求項1〜6のいずれかに記載の胴縁取付用ブラケット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの胴縁取付用ブラケットを建物の躯体壁に取り付ける胴縁取付用ブラケットの取付方法において、躯体壁に形成した削孔内にアンカー部を取り付け、ブラケット本体の一端側のアンカー固定部を該削孔内に挿入して上記アンカー部に連結し、ブラケット本体に胴縁受け板を取り付けると同時に、該胴縁受け板の取り付け位置をブラケット本体の長さ方向に調整することを特徴とする胴縁取付用ブラケットの取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−23708(P2007−23708A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−211041(P2005−211041)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】