説明

胸骨変形防止用プロテクタ

【課題】新生児、乳児であっても負担が小さい胸骨変形防止用プロテクタを提供する。
【解決手段】装着部3は胸部側装着部5と背中側装着部7から成り、胸部側装着部5と背中側装着部7とは分離可能である。装着部3は、合成樹脂製のスポンジから成る芯材17を布製のカバー材19によって覆ったものである。カバー材19は、ナイロン製のパイル生地から成る表面21と、コットン製の生地から成る裏面23とから成る。表面21が面ファスナーの被連結部としての雌部材を構成する。面ファスナーの連結部としての雄部材25は、一対の胸側帯状部11と一対の背中側帯状部15の裏面の先端部にそれぞれ備えられている。発泡ウレタンから成るパッド27は可撓性を有している。パッド27の一方側の面には面ファスナーの雄部材が備えられ、胸側主部9の裏面23には面ファスナーの雌部材29が備えられている。パッド27は胸側主部9に対して着脱自在である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は胸部を例えば上下方向に切開する手術を受けた後に胸骨が徐々に隆起するのを防止する胸骨変形防止用プロテクタに係り、特に新生児、乳児に適した胸骨変形防止用プロテクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の胸骨変形防止用プロテクタとしては、特許文献1に記載されたものがある。この胸骨変形防止用プロテクタは金属板やプラスチック板、天然皮革等によって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−345868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の胸骨変形防止用プロテクタは、金属板、天然皮革等によって構成されているので、どうしてもある程度の重量を有することとなり、また金属板自体は相当な硬度を有するものであり、新生児、乳児に適用するには負担が大きいという問題があった。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、新生児、乳児であっても負担が小さい胸骨変形防止用プロテクタの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、体に装着して少なくとも胸部を覆う装着部と、前記装着部に備えられ胸部切開部位を押圧する可撓性を有するパッドとを有する胸骨変形防止用プロテクタにおいて、前記装着部全体を軽量、且つ柔軟な材料によって構成したことを特徴とする胸骨変形防止用プロテクタである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載した胸骨変形防止用プロテクタにおいて、装着部全体を構成する軽量、且つ柔軟な材料は、合成樹脂製のスポンジから成る芯材を布製のカバー材によって覆ったものであることを特徴とする胸骨変形防止用プロテクタである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した胸骨変形防止用プロテクタにおいて、装着部は胸側装着部と背中側装着部とに二分割でき、前記胸側装着部と前記背中側装着部とが連結手段によって互いに連結されてループ状となることを特徴とする胸骨変形防止用プロテクタである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載した胸骨変形防止用プロテクタにおいて、胸側装着部は胸部を覆う胸側主部と前記胸側主部に一体に設けられ左右両側に延びる胸側帯状部とから成り、背中側装着部は背中を覆う背中側主部と前記背中側主部に一体に設けられ左右両側に延びる背中側帯状部とから成っており、連結手段によって前記胸側帯状部の裏面が背中側主部の表面に連結され、前記背中側帯状部の裏面が胸側主部の表面に連結されることを特徴とする胸骨変形防止用プロテクタである。
【0009】
請求項5の発明は、請求項4に記載した胸骨変形防止用プロテクタにおいて、連結手段は面ファスナーであり、前記面ファスナーの連結部と被連結部の一方側が胸側帯状部と背中側帯状部の裏面の先端部に設けられ、面ファスナーの連結部と被連結部の他方側が胸側主部と背中側主部の表面の全体に設けられていることを特徴とする胸骨変形防止用プロテクタである。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載した胸骨変形防止用プロテクタにおいて、パッドは装着部に対し着脱自在であることを特徴とする胸骨変形防止用プロテクタである。
【0011】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれかに記載した胸骨変形防止用プロテクタにおいて、パッドは穴を有する外枠部材と、前記外枠部材の穴に保持され前記外枠部材よりも柔軟な材料から成る柔軟部材とによって構成されていることを特徴とする胸骨変形防止用プロテクタである。
【0012】
請求項8の発明は、請求項7に記載した胸骨変形防止用プロテクタにおいて、柔軟部材はハイドロゲルであることを特徴とする胸骨変形防止用プロテクタである。
【0013】
請求項9の発明は、請求項1から8のいずれかに記載した胸骨変形防止用プロテクタにおいて、装着部が胸部を覆う状態に前記装着部を保持するストラップを有することを特徴とする胸骨変形防止用プロテクタである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の胸骨変形防止用プロテクタによれば、装着部を軽量、且つ柔軟な材料によって構成しているので、新生児、乳児であっても負担を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1に係る胸骨変形防止用プロテクタの斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1の胸骨変形防止用プロテクタの装着した状態を示す正面図である。
【図4】図1の胸骨変形防止用プロテクタの装着した状態を示す背面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る胸骨変形防止用プロテクタのパッドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態1に係る胸骨変形防止用プロテクタ1を図面にしたがって説明する。
符号3は装着部を示し、この装着部3は胸部側装着部5と背中側装着部7とによって構成されており、胸部側装着部5と背中側装着部7とは分離可能となっている。即ち、装着部3は二分割できるようになっている。
【0017】
胸部側装着部5は胸側主部9と、この胸側主部9に一体に設けられた一対の胸側帯状部11とから成っている。一対の胸側帯状部11は胸側主部9よりも細幅に形成されており、一対の胸側帯状部11は胸側主部9の左右両側に僅かに斜め上方へ向かって延びている。胸側主部9と胸側帯状部11の境界部分の上側の縁は連続する緩やかな凹状を形成するようにカーブしている。
【0018】
背中側装着部7は背中側主部13と、この背中側主部13に一体に設けられた一対の背中側帯状部15とから成っている。一対の背中側帯状部15は背中側主部13よりも細幅に形成されており、一対の背中側帯状部15は背中側主部13の左右両側に斜め上方へ向かって延びてから湾曲し、先端部が僅かに斜め下方へ向かって延びている。背中側主部13と背中側帯状部15の境界部分の上側の縁は連続する緩やかな凹状を形成するようにカーブしている。
【0019】
図2に示すように装着部3(胸部側装着部5と背中側装着部7)は、合成樹脂製のスポンジから成る芯材17を布製のカバー材19によって覆ったものである。カバー材19は、ナイロン製のパイル生地から成る表面21と、コットン製の生地から成る裏面23とによって構成されている。
このように装着部3全体は、スポンジ、布等の軽量、且つ柔軟な材料によって構成されている。
【0020】
上記したようにカバー材19の表面21はパイル生地から成っており、この表面21が面ファスナーの被連結部としての雌部材を構成する。
符号25は面ファスナーの連結部としての雄部材を示し、この雄部材25は、一対の胸側帯状部11と一対の背中側帯状部15の裏面の先端部にそれぞれ備えられている。
連結手段はカバー材19の表面21と雄部材25とから成る面ファスナーによって構成されている。
【0021】
符号27は発泡ウレタンから成るパッドを示し、このパッド27は可撓性を有している。パッド27の一方側の面(図1において見える側とは反対側の面)には図示しない面ファスナーの雄部材が備えられており、また、胸側主部9の裏面23には面ファスナーの雌部材29が備えられている。これによりパッド27は胸側主部9に対して着脱自在となっている。
【0022】
符号31は一対のストラップを示し、これらのストラップ31も、装着部3と同様にスポンジ、布等の軽量、且つ柔軟な材料によって構成されている。一対のストラップ31の先端部には、面ファスナーの雄部材33がそれぞれ備えられている。
上記のように、胸骨変形防止用プロテクタ1は金属製部材を使用しておらず、レントゲン、MRI等の検査を装着したままで行うことができる。
【0023】
次に、胸骨変形防止用プロテクタ1の使用方法を説明する。
胸部側装着部5の胸側主部9にパッド27を取り付けておく。
背中側装着部7の背中側主部13を背中に当て、そして、胸部側装着部5の胸側主部9を胸部に当てて、パッド27を胸部切開部位に位置させる。次に、一対の背中側帯状部15を軽く引っ張り、これらの先端部を胸側主部9の表面21に貼り付ける(図3参照)。次いで、一対の胸側帯状部11を軽く引っ張り、これらの先端部を背中側主部13の表面21に貼り付ける(図4参照)。これにより胸部側装着部5と背中側装着部7が互いに連結される。
【0024】
このように胸側帯状部11の裏面を背中側主部13の表面21に連結し、また背中側帯状部15の裏面を胸側主部9の表面21に連結することで、装着部3はループ状となって体にフィットした状態に装着される。
次に、一対のストラップ31を両肩に掛けて、これらの先端部を装着部3に貼り付ける。これにより装着部3が胸部を覆う状態に保持される。従って、装着部3がずれてしまうのを防止することができる。
【0025】
前述したように装着部3は二分割できるようになっており、しかも連結手段はカバー材19の表面21と雄部材25とから成る面ファスナーによって構成されているので、装着部3の着脱を容易に行うことができる。
更に、パッド27は胸側主部9に対して着脱自在となっているので、パッド27の交換を容易に行うことができる。
【0026】
胸側帯状部11は背中側主部13に連結され、背中側帯状部15は胸側主部9に連結されるので、胸回り全体を締付けることなく、ある程度の力で胸部切開部位を押圧することができる。
また、背中側主部13と背中側帯状部15の境界部分の上側の縁は連続する緩やかな凹状を形成するようにカーブしているので、装着部3が脇に当たらない状態に装着されることとなり、従って、装着者が違和感を覚えることがない。
【0027】
前述したように装着部3は、スポンジ、布等の軽量、且つ柔軟な材料によって構成されている。これにより胸骨変形防止用プロテクタ1は、従来の金属板、天然皮革等によって構成されたものと比べて軽量でしかも柔軟性を有するものとなっている。従って、新生児、乳児であっても負担を小さくすることができる。
上記のように装着部3を体に装着していれば、パッド27が胸部切開部位を押圧し続けるので、胸骨が隆起してしまうのを確実に防止することができる。
【0028】
次に、実施の形態2に係る胸骨変形防止用プロテクタを図5にしたがって説明する。
実施の形態2に係る胸骨変形防止用プロテクタは、パッド41を除いた他の構成部分が実施の形態1に係る胸骨変形防止用プロテクタ1のパッド27を除いた他の構成部分と同じであるので、パッド41についてのみ説明し、胸骨変形防止用プロテクタ1と同じの構成部分については説明を省略することとする。
【0029】
符号43は発泡ウレタンから成る外枠部材を示し、この外枠部材43は可撓性を有している。外枠部材43は穴45を有しており、この穴45には柔軟部材としてのハイドロゲル47が嵌め込まれて保持されている。ハイドロゲル47は水分を多く含むもので、このハイドロゲル47は外枠部材43よりも柔軟性を有している。
パッド41の一方側の面(図5において見える側とは反対側の面)には図示しない面ファスナーの雄部材が備えられている。従って、パッド41は、実施の形態1のパッド27と同様に胸側主部9に対して着脱自在となっている。
【0030】
上記パッド41を構成するハイドロゲル47は、前述したように水分を多く含んでおり、しかも十分な柔軟性を有している。従って、肌にやさしく、しかも柔らかいタッチで胸部切開部位を押圧することができる。
よって、パッド41は、肌の弱い新生児、乳児に適用することが可能である。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
上記実施の形態では、装着部3の芯材17を合成樹脂製のスポンジによって構成し、カバー材19を布によって構成したが、芯材17、カバー材19の材料は上記スポンジ、布に限定されない。
また、装着部3の表面21をナイロン製のパイル生地によって構成したが、例えば表面21をコットン製のパイル生地によって構成してもよい。
【0032】
更に、面ファスナーの被連結部をパイル生地から成る表面21によって構成したが、例えば、表面21に面ファスナーの雌部材を別途備える構成としてもよい。
面ファスナーの連結部を雄部材とし、被連結部を雌部材としたが、連結部を雌部材とし、被連結部を雄部材としてもよい。
柔軟部材をハイドロゲル47によって構成したが、柔軟部材を外枠部材43よりも柔軟なスポンジ等で構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は胸骨変形防止用プロテクタの製造業に利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…胸骨変形防止用プロテクタ 3…装着部 5…胸部側装着部
7…背中側装着部 9…胸側主部 11…胸側帯状部
13…背中側主部 15…背中側帯状部 17…芯材
19…カバー材 21…表面 23…裏面
25…雄部材 27…パッド 29…雌部材
31…ストラップ 33…雄部材 41…パッド
43…外枠部材 45…穴 47…ハイドロゲル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体に装着して少なくとも胸部を覆う装着部と、前記装着部に備えられ胸部切開部位を押圧する可撓性を有するパッドとを有する胸骨変形防止用プロテクタにおいて、前記装着部全体を軽量、且つ柔軟な材料によって構成したことを特徴とする胸骨変形防止用プロテクタ。
【請求項2】
請求項1に記載した胸骨変形防止用プロテクタにおいて、装着部全体を構成する軽量、且つ柔軟な材料は、合成樹脂製のスポンジから成る芯材を布製のカバー材によって覆ったものであることを特徴とする胸骨変形防止用プロテクタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載した胸骨変形防止用プロテクタにおいて、装着部は胸側装着部と背中側装着部とに二分割でき、前記胸側装着部と前記背中側装着部とが連結手段によって互いに連結されてループ状となることを特徴とする胸骨変形防止用プロテクタ。
【請求項4】
請求項3に記載した胸骨変形防止用プロテクタにおいて、胸側装着部は胸部を覆う胸側主部と前記胸側主部に一体に設けられ左右両側に延びる胸側帯状部とから成り、背中側装着部は背中を覆う背中側主部と前記背中側主部に一体に設けられ左右両側に延びる背中側帯状部とから成っており、連結手段によって前記胸側帯状部の裏面が背中側主部の表面に連結され、前記背中側帯状部の裏面が胸側主部の表面に連結されることを特徴とする胸骨変形防止用プロテクタ。
【請求項5】
請求項4に記載した胸骨変形防止用プロテクタにおいて、連結手段は面ファスナーであり、前記面ファスナーの連結部と被連結部の一方側が胸側帯状部と背中側帯状部の裏面の先端部に設けられ、面ファスナーの連結部と被連結部の他方側が胸側主部と背中側主部の表面の全体に設けられていることを特徴とする胸骨変形防止用プロテクタ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載した胸骨変形防止用プロテクタにおいて、パッドは装着部に対し着脱自在であることを特徴とする胸骨変形防止用プロテクタ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載した胸骨変形防止用プロテクタにおいて、パッドは穴を有する外枠部材と、前記外枠部材の穴に保持され前記外枠部材よりも柔軟な材料から成る柔軟部材とによって構成されていることを特徴とする胸骨変形防止用プロテクタ。
【請求項8】
請求項7に記載した胸骨変形防止用プロテクタにおいて、柔軟部材はハイドロゲルであることを特徴とする胸骨変形防止用プロテクタ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載した胸骨変形防止用プロテクタにおいて、装着部が胸部を覆う状態に前記装着部を保持するストラップを有することを特徴とする胸骨変形防止用プロテクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−61027(P2012−61027A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205314(P2010−205314)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(501211361)有限会社大川原整形器械製作所 (1)
【Fターム(参考)】