説明

脂肪族ジアルデヒドの脂肪族ジオールへの水素化

脂肪族ジオール、好ましくはC〜C16脂環式ジオール、最も好ましくはシス/トランス−(1,3)(1,4)−シクロヘキサンジメタノールを生成するための、脂肪族ジアルデヒド、好ましくはC〜C16脂環式ジカルボキシアルデヒドの水素化方法。この方法には、1種又はそれ以上の脂肪族ジアルデヒドを、液相中で、水素化ゾーン内で水素化触媒の存在下に、水素化への全液体供給物の重量基準で、10重量%と同じか又はそれ以上の量の水の存在下に、水素と接触させることが含まれる。この脂環式ジカルボキシアルデヒドは、好ましくはオレフィンのヒドロホルミル化、続くヒドロホルミル化生成物流からの脂環式ジカルボキシアルデヒド生成物の抽出によって製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願に対するクロスリファレンス
本件特許出願は、2007年9月7日出願の米国仮特許出願第60/967825号の利益を請求する。
本発明は、対応する脂肪族ジオール、好ましくは脂環式ジオールを製造するための、水素化触媒の存在下での水素による、脂肪族ジアルデヒド、好ましくは脂環式ジアルデヒドの水素化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族ジオールは、溶媒として及び工業的に有用な化学品の製造に於ける中間体としての有用性を見出している。脂環式ジオール、例えば1,3−及び1,4−シクロヘキサンジオールのシス/トランス異性体は、溶媒として並びに可塑剤及び洗剤の製造に於ける中間体として有用であることが知られている。
【0003】
アルデヒドは、水素化触媒の存在下で水素によって接触還元されて、アルコールを形成できることが知られている。水素化触媒は、有利には、下記のように参照される、元素の周期律表の第6、7、8、9、10、11又は12族の少なくとも1種の金属を含む。アルデヒドの水素化は、気相又は液相中で、連続式で又は回分式で実施することができる。オレフィンのヒドロホルミル化(「オキソ法」)から得られるアルデヒドの水素化によるアルコールの工業的製造のために、固定床内で水素化触媒を使用する連続式気相又は液相方法が好ましい。本明細書中に使用する用語「ヒドロホルミル化」は、少なくとも1個の不飽和炭素−炭素(C=C)二重結合によって特徴付けられるオレフィン性不飽和化合物を、ヒドロホルミル化触媒の存在下に、一酸化炭素及び水素(合成ガス又はシンガス)と接触させて、それからカルボキシアルデヒド(ホルミル)置換基(−CH=O)によって特徴付けられるアルデヒド生成物を得る方法を指す。ヒドロホルミル化触媒は、有機リン配位子、有利にはオルガノホスファイト配位子、好ましくはトリオルガノモノホスファイト又はオルガノビスホスファイト配位子に錯化された遷移金属を含む。
【0004】
高分子量アルデヒド、即ち炭素数6又はそれ以上(C6+)のアルデヒドは、特に、このような化合物の分子質量及び沸点が、一般的に、気相方法のためには高すぎるので、好ましくは液相中で水素化される。しかしながら、液相中の水素化は、アルデヒド及びアルコールの両方の高い濃度のために、高沸点物の生成が二次反応によって促進されるという点で、欠点を示す。特に、アルデヒドは、アルコールによるアルドール反応(付加及び/又は縮合)を受けて、不飽和アルデヒド(エナール)、ヘミアセタール及び/又はアセタールを生成し得る。このヘミアセタール及びアセタールは、続いて、それぞれ水又はアルコールの除去を受けて、エノールエーテル(これは水素化条件下で飽和エーテルを生成する)を形成し得る。ジアルデヒドは、自己縮合を受けて、二量体、三量体及びより高級のオリゴマーを含む重質物(heavies)を生成する。エナール、ヘミアセタール、アセタール、エノールエーテル及び飽和エーテル副生物並びに自己縮合重質物の全ては、「重質物」と考えられ、これらは所望のアルコールの収率を低下させる。
【0005】
ヒドロホルミル化によって製造された炭素数6又はそれ以上の高分子量アルデヒドの水素化は、アルコールへのアルデヒドの液相水素化に於いて追加の問題点を示す。C6+アルデヒド生成物の高分子量のために、このようなアルデヒドの粘度は許容できないほど高く、その結果、液相中でこれらのアルデヒドを輸送し及び取り扱う際に困難さを増大させる。更に、ホットスポット(hot spot)が、許容できないほど粘稠な液相中に発生し、重質物の生成の増大に至り得る。更に、ヒドロホルミル化方法から得ることができる、水素化方法へのアルデヒド供給物は、不利に、小量の、1種若しくはそれ以上のオルガノホスファイト配位子及び/又はオルガノホスファイト配位子(群)から誘導される分解生成物を含有し得る。これらのオルガノホスファイト又はそれらの分解生成物は、水素化触媒に結合し、それを失活させることができる。更なる欠点として、ジ−及びポリ−カルボキシアルデヒドの水素化は、モノ−カルボキシアルデヒドの水素化と比較して、一般的に、ポリマー性重質物(二量体及び三量体を含む)並びにラクトンの増加した生成になる。更に、分子内副反応に取り込まれて、例えば環式アセタール又はラクトンを生成し得る。
【0006】
上記に鑑みて、脂肪族ジアルデヒド、好ましくはヒドロホルミル化方法から誘導されるC6+脂環式ジアルデヒドの液相水素化に於ける改良が、対応するジオール、好ましくはC6+脂環式ジオールを製造する際に望ましい。
【0007】
特許文献1には、アルコールの製造のためのオキソ生成物の水素化段階に於ける制御された量の水の使用が開示されており、ここでは、水素化器に供給される硫黄、塩素及びヒドロホルミル化触媒残渣の量に於ける減少を伴って、直列で少なくとも2個の反応器が使用されている。水素化器の中に注入される生成物の重量基準で、0.5〜3重量%、特に1〜2重量%の量の水が使用されている。
【0008】
特許文献2には、1種又はそれ以上のC〜C16オレフィン、例えばジブテンのヒドロホルミル化から誘導されるアルデヒド生成物の水素化方法が開示されている。この水素化は、過剰の水素、第8族遷移金属触媒及び別の水相を形成しないような0.05〜10重量%の水の存在下で実施されている。
【0009】
特許文献3及び特許文献4には、水素化の前の熱処理ゾーンに於いて、ヒドロホルミル化アルデヒド生成物を水で予備処理することが開示されている。水は、アルデヒド供給物の体積基準で、約1〜8体積%の量で、水素化に添加できることが開示されている。
【0010】
特許文献5には、水素、硫化物水素化触媒及び添加した水蒸気の存在下での、アルデヒドの蒸気相水素化が開示されている。水素化ゾーンの中に導入される水の量は、好ましくは、アセタール1モル当たり水1〜10モル又は好ましくはアルデヒド供給物の体積基準で、約1〜8体積%である。添加された水を蒸気相に維持するために、大過剰の水素が使用されている(例えば、液体供給速度0.25〜2v/v/h及び水素供給速度5000〜20,000ft/供給物バレル(barrel))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0161829A1号明細書
【特許文献2】米国特許第B2−6,680,414号明細書
【特許文献3】米国特許第5,059,710号明細書
【特許文献4】米国特許第4,401,834号明細書
【特許文献5】米国特許第2,809,220号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
一つの面に於いて、本発明は、対応する脂肪族ジオールを製造するための、脂肪族ジアルデヒドの水素化を提供する。従って、本発明の方法は、1種又はそれ以上の脂肪族ジアルデヒド(本明細書に於いて「ジカルボキシアルデヒド」ともいう)を、液相中で、水素化ゾーン内で水素化触媒の存在下に、水素化方法への全液体供給物の重量基準で、10重量%又はそれ以上の量の水の存在下に、水素と接触させることを含んでなる。この接触は、対応する1種又はそれ以上の脂肪族ジオールを製造するのに十分な反応条件下で実施される。本明細書中に使用する「水素化方法への合計液体供給物」は、これらに限定されないが、合計水供給物及び/又は共供給物、使用されてよいとき任意の他の溶媒又は希釈剤、1種又はそれ以上の脂肪族ジカルボキシアルデヒド(群)、これらに限定されないが、有機リン配位子、有機リン配位子分解生成物、ヘミアセタール、アセタール、ラクトン並びに/又は二量体、三量体及びより高級のオリゴマーを含む他の重質物を含む、脂肪族ジカルボキシアルデヒド(群)中に存在する任意の不純物及び/又は副生物並びに、これらに限定されないが、未反応脂肪族ジカルボキシアルデヒド(群)、脂肪族ジオール生成物(群)及び任意の溶媒、不純物及び水素化排出流中に存在する副生物を含む、水素化方法からの任意のリサイクル流を含む、水素化ゾーンに供給される任意の液体供給物を指す。
【0013】
本発明の方法は、脂肪族ジアルデヒド又はこれらの混合物、好ましくは1種又はそれ以上のC〜C16脂環式ジアルデヒドを、対応する脂肪族ジオール又はこれらの混合物、好ましくは、1種又はそれ以上のC〜C16脂環式ジオールに転化させる。本発明の好ましい態様に於いて、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドのシス/トランス異性体の混合物(以下「シス/トランス−(1,3)(1,4)−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド」)は、液相中で、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのシス/トランス異性体の対応する混合物(以下「シス/トランス−(1,3)(1,4)−シクロヘキサンジメタノール」)に水素化され、このアルコール組成物は、ポリエステル樹脂又は可塑剤の製造に於いて有用である。本発明の方法は、副生物ヘミアセタール、アセタール、エノールエーテル及び他の重質物を含有する重質物(これは、他の方法では、脂肪族ジアルデヒド中の不純物として存在し得る)を有効に減少させ、それによって所望の脂肪族ジオールの収率を増加させる。
【0014】
上記のものに加えて、本発明の方法は、他の有利な効果を提供することができるが、本発明は、これらの何れかの記載によって限定されるべきではない。例えば本発明の方法は、典型的には、粘稠で取扱いが困難である、炭素数6又はそれ以上(C6+)の高分子量脂肪族ジアルデヒドで有利に使用される。本発明の方法に於いて使用される水は、水素化方法に供給される高分子量ジアルデヒド(群)の粘度を低下させ、それによって、液体ジアルデヒド(群)の輸送及び取扱いを、一層許容できるようにする。更に、水素化方法の中に導入される水は、水素化の熱を消散させることを助け、それによって、重質物生成を促進するホットスポットの可能性を減少させる。更なる利点として、オルガノホスファイト配位子又はオルガノホスファイト配位子から誘導される分解生成物(これらは水素化方法への供給物中に存在し得る)は、水によって加水分解され、それによって、結果としての触媒の失活を伴う、このようなオルガノホスファイト及びオルガノホスファイト配位子分解生成物の水素化触媒への結合を回避する。
【0015】
別の面に於いて、本発明は、1種又はそれ以上の脂肪族ジオールの製造であって、
(a)ヒドロホルミル化ゾーン内で、オレフィン性不飽和脂肪族アルデヒドを、一酸化炭素及び水素と、遷移金属−有機リン配位子錯体触媒及び任意的な遊離有機リン配位子の存在下で、1種又はそれ以上の脂肪族ジカルボキシアルデヒド、遷移金属−有機リン配位子錯体触媒及び任意的な遊離有機リン配位子を含んでなるヒドロホルミル化生成物組成物を製造するのに十分なヒドロホルミル化条件下で接触させる工程、
(b)抽出ゾーン内で、このヒドロホルミル化生成物組成物を、水及び任意的な非極性溶媒と、相分離により、遷移金属−有機リン配位子錯体触媒、任意的な遊離有機リン配位子及び任意的な非極性溶媒を含む非極性相並びに水及び1種又はそれ以上の脂肪族ジカルボキシアルデヒドを含んでなる極性相を得るのに十分な条件下で混合する工程、
(c)水及び1種又はそれ以上の脂肪族ジカルボキシアルデヒドを含んでなる、工程(b)からの極性相の少なくとも一部を、共供給する追加の水と共に又はこれ無しで、水の全量が、水素化ゾーンへの全液体供給物の重量基準で10重量%又はそれ以上であるようにして、水素化ゾーンの中に供給し、そして液相中の1種又はそれ以上の脂肪族ジカルボキシアルデヒドを、該水の存在下に且つ水素化触媒の存在下に、1種又はそれ以上の対応する脂肪族ジオールを製造するのに十分な水素化条件下で、水素によって水素化する工程
を含んでなる製造を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に於いて、元素の周期律表に対する参照は、Nomenclature of Inorganic Chemistry: IUPAC Recommendations 2005, Royal Society of Chemistry, 2005, N. G. Connelly及びT. Damhus編で刊行された元素の周期律表を指すものとする。また、元素の族又は族群に対する任意の参照は、族に番号を付けるためのIUPACシステムを使用するこの元素の周期律表中に反映されている族又は族群であるものとする。
【0017】
「少なくとも」は、「よりも大きい又はに等しい」に等価であり、「最大」は、「よりも小さい又はに等しい」に等価である。「少なくとも」、「よりも大きい」、「よりも大きい又はに等しい」又は同様に記載されたパラメーターから、「最大」、「まで」、「よりも小さい」、「よりも小さい又はに等しい」又は同様に記載されたパラメーターまでの全ての範囲は、それぞれのパラメーターについて示される好ましさの相対程度に無関係に好ましい範囲である。従って、最も好ましい上限と組み合わせられた有利な下限を有する範囲は、本発明の実施のために好ましい。用語「有利な」は、必要なものよりも大きい好ましさの程度を示すために使用されるが、よりも小さいは、用語「好ましくは」によって示される。
【0018】
他の方法で記載されない限り、望ましくない影響を起こすことができる要素、材料又は工程は、それが、許容できない程度までその影響を起こさないような量で又は形で存在するとき、これは、本発明の実施のために実質的に不存在と考えられる。更に、用語「許容できない」及び「許容できなく」は、商業的に有用である、与えられた状況で他の方法で有用である又は予定の限界(この限界は、特定の状況及び応用と共に変化し、任意に予定、例えば性能仕様によって設定される)の外であると考えられるものからの逸脱を指すために使用される。当業者は、許容できる限界が、装置、条件、応用及びその他の変数と共に変化するが、それらが応用可能であるそれぞれの状況に於ける過度の実験無しに決定できることを認識している。幾つかの例に於いて、一つのパラメーターに於ける変動又は逸脱は他の所望の目的を達成するために許容できる。
【0019】
本明細書中の記載に於いて、本発明者らが本発明の目的のために定義する幾つかの化学用語が使用される。句、項目若しくは語の意味を解釈するとき、特別の応用のために、本明細書中のどこかで異なった意味が記載されていない限り又はその句、項目若しくは語の使用の文脈が、明らかに、本明細書中に示された定義とは異なった意味が意図されることを示していない限り、本明細書中のその定義が支配する。
【0020】
炭素数が、特別の化学用語(例えばアルキル基)に対して適切である場合、その数は、本明細書中の定義に於いて記載されない。それは、この数は、化学用語のそれぞれの使用と共に変化するからである。以後の明細書に、化学用語のそれぞれの使用のために好ましい炭素数を記載する。炭素数又は単位若しくは化合物を形成するそれらの範囲は、それぞれ、式「C」又は「C〜C」(式中、m及びnは整数である)によって単位又は化合物に接頭辞を付けることによって定義される。例えばCアルカンは、アルカンが4個の炭素原子を有することを意味し、C〜C20アルキルは、アルキルが1〜20個の炭素原子の範囲内である炭素原子の数を有することを意味する。
【0021】
冠詞(a及びthe)は、冠詞によって修飾されているものの単数形又は複数形を指す。2個又はそれ以上の員のリストの最初の員の前で使用されるとき、冠詞(a及びthe)は、そのリスト内のそれぞれの員を指す。本明細書中に使用されるとき、冠詞(a,an及びthe)、「少なくとも一つの」及び「一つ又はそれ以上の」は、互換的に使用される。用語「を含んでなる(comprise)」及びその変形は、これらの用語が説明及び特許請求の範囲中に現れる場合、限定する意味を有しない。従って、例えば「一つ(a)」の配位子を含んでなる反応剤混合物は、この配位子が「1種又はそれ以上」の配位子を含有することを意味するとして解釈することができる。
【0022】
用語「を含んでなる(comprising)」は、「含む」、「含有する」又は「によって特徴付けられる」と同義であり、包括的又は制限が無く、追加の挙げられていない要素、材料又は工程を排除しない。用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特定の要素、材料又は工程に加えて、挙げられていない要素、材料又は工程が、主題の少なくとも一つの基本的で新規な特徴に許容できないほど重大に影響を与えない量で任意に存在することを示す。用語「のみからなる(consisting of)」は、挙げられていない要素、材料又は工程が、感知できる影響を有さず、実質的に不存在である程度まで任意に存在する以外は、記載された要素、材料又は工程のみが存在することを示す。
【0023】
用語「ヒドロカルビル基」又は「炭化水素基」は、炭素原子及び水素原子を含み、線状、分枝状、環式、飽和及び不飽和種、例えばアルキル、脂環式、アルケニル、アリール、アルカリール及びアラルキル基を含む有機基を指す。用語「置換されたヒドロカルビル」又は「置換された炭化水素基」は、後で開示されるような1種又はそれ以上の置換基によって置換されているヒドロカルビル又は炭化水素基を指す。ヒドロカルビル又は炭化水素基は、明細書中で特定されるように一価、二価又は三価であってよい。
【0024】
用語「脂肪族」は、直鎖若しくは分枝鎖構造又は閉環構造によって特徴付けられる有機化合物又は基を指し、これらの何れも、飽和炭素結合及び任意的に1個又はそれ以上の非共役炭素−炭素不飽和結合、例えば炭素−炭素二重結合を含有する。本発明の目的のために、用語「脂肪族」には、また、後で定義される「脂環式」化合物が含まれる。
【0025】
用語「脂環式」は飽和炭素結合及び任意的に1個又はそれ以上の非共役炭素−炭素二重結合を含んでなる閉環構造を含有する、脂肪族有機化合物又は基を指す。
【0026】
用語「アルキル」は、線状又は分枝状であってよい飽和一価ヒドロカルビル基、例えばメチル、エチル、プロピル及びイソプロピルを指す。
【0027】
用語「アルキレン」は二価のアルキル基を指す。
【0028】
用語「アルケニル」は、1個又はそれ以上の非共役不飽和炭素−炭素二重結合を含有する、一価の直鎖又は分枝鎖ヒドロカルビル基を指す。
【0029】
用語「アリール」は、1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって、アレーン(arene)から誘導される一価の単位として定義される。このアレーンは、単独の芳香族環又は一緒に縮合され、直接的に結合され又は(異なった芳香族基が、共通の基、例えばメチレン単位又はエチレン単位に結合されるように)間接的に結合されている複数の芳香族環を含んでよい。好ましいアリール基には、1個の芳香族環又は2〜4個の縮合若しくは結合された芳香族環、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル等が含まれる。用語「置換されたアリール」は、1個又はそれ以上の後記のような置換基によって置換されている芳香族基を指す。脂肪族化合物又はアルキル若しくはアルケニル基とは異なるものとして、アリール基は、(4δ+2)個のπ−電子(式中、δは、1又はそれ以上の整数である)によって特徴付けられる共役炭素−炭素二重結合を含有する。
【0030】
用語「アルカリール」は1個又はそれ以上のアルキル置換基を有する一価のアリール基を指す。
【0031】
用語「アリールアルキル」又は「アラルキル」は1個のアリール置換基を含有する一価のアルキル基を指す。
【0032】
本明細書中に使用される用語「ヒドロカルビル」、「脂肪族」、「脂環式」、「アルキル」、「アルキレン」、「アルケニル」、「アリール」、「アルカリール」及び「アラルキル」の何れか及び全部は、それらの置換された変異体(variant)を含むように意図される。用語「置換された」又は語「それらの置換された変異体」は、炭素原子、例えばアルキル又はアリール炭素原子に結合している少なくとも1個の水素原子の、非水素単位による置換を指す。本発明のための好ましい置換基には、ヒドロキシ、アルキル、アリール、アラルキル及びアルカリール基が含まれ、ここで、上記の有機基は、最大1〜約8個の炭素原子を含有する。
【0033】
用語「任意的な(optional))」又は「任意的に(optionally)」は、続いて記載される状況が生じてもよく又は生じなくてもよいことを意味する。例えば用語「任意的に置換された」は、非水素置換基が、与えられた原子上に存在してもよく存在しなくてもよいことを意味し、従って、この記載は、非水素置換基が存在する構造及び非水素置換基が存在しない構造を含む。
【0034】
本明細書中で使用される「式を有する」又は「式によって表される」は、限定されることを意図せず、用語「を含んでなる」が一般的に使用されるのと同じ方法で使用される。
【0035】
本明細書中で引用したそれぞれの文献の関連する教示は米国法律によって許容される最大範囲まで本明細書に含めるものとする。
【0036】
前記のように、基本的な面に於いて本発明は、脂肪族ジオール、好ましくはC〜C16脂肪族ジオールを製造するための、脂肪族ジアルデヒド、好ましくはC〜C16脂肪族ジアルデヒドの水素化を提供する。この方法は、1種又はそれ以上の脂肪族ジアルデヒドを、液相中で、水素化ゾーン内で水素化触媒の存在下で、水素化方法への全液体供給物の重量基準で、10重量%又はそれ以上の量の水の存在下で、水素と接触させることを含んでなる。更に、この接触は1種又はそれ以上の対応する脂肪族ジオールを製造するために十分な反応条件下に実施される。
【0037】
別の面に於いて、本発明は、1種又はそれ以上の脂肪族ジオール、好ましくは1種又はそれ以上のC〜C16脂肪族ジオールの製造であって、
(a)ヒドロホルミル化ゾーン内で、オレフィン性不飽和脂肪族アルデヒドを、一酸化炭素及び水素と、遷移金属−有機リン配位子錯体触媒及び任意的な遊離有機リン配位子の存在下に、1種又はそれ以上の脂肪族ジカルボキシアルデヒド、遷移金属−有機リン配位子錯体触媒及び任意に遊離有機リン配位子を含んでなるヒドロホルミル化生成物組成物を製造するのに十分なヒドロホルミル化条件下で接触させる工程、
(b)抽出ゾーン内で、このヒドロホルミル化生成物組成物を、水及び任意的な非極性溶媒と、相分離により、遷移金属−有機リン配位子錯体触媒、任意的な遊離有機リン配位子及び任意的な非極性溶媒を含んでなる非極性相並びに水及び1種又はそれ以上の脂肪族ジカルボキシアルデヒドを含んでなる極性相を得るのに十分な条件下で混合する工程、
(c)水及び1種又はそれ以上の脂肪族ジカルボキシアルデヒドを含んでなる、工程(b)からの極性相の少なくとも一部を、共供給する追加の水と共に又は、これ無しで、水の全量が、水素化ゾーンへの全液体供給物の重量基準で10重量%又はそれ以上であるようにして、水素化ゾーンの中に供給し、そして液相中の1種又はそれ以上の脂肪族ジカルボキシアルデヒドを、該水の存在下で且つ水素化触媒の存在下で、1種又はそれ以上の対応する脂肪族ジオールを製造するために十分な水素化条件下で、水素によって水素化する工程
を含んでなる製造を提供する。
【0038】
本発明の好ましい態様に於いて、この脂肪族ジアルデヒドは、脂環式ジアルデヒド、更に好ましくは、単環式C〜C16脂肪族ジカルボキシアルデヒド、最も好ましくは、シス/トランス−(1,3)(1,4)−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの混合物を含んでなる。関連する好ましい態様に於いて、この脂肪族ジオールは、脂環式ジオール、更に好ましくは単環式C〜C16脂肪族ジオール、最も好ましくはシス/トランス−(1,3)(1,4)−シクロヘキサンジメタノールの混合物を含んでなる。
【0039】
本発明の別の好ましい態様に於いて、工程(b)の抽出段階に於いて、水は、抽出工程への全供給物の重量基準で約4重量%よりも多い、好ましくは、約10重量%よりも多い、更に好ましくは、約20重量%よりも多く約95重量%以下の量で使用される。本明細書中に使用される「抽出工程への合計供給物」は、これらに限定されないが、合計水供給物及び/又は共供給物、使用されてよいとき非極性溶媒及び極性非水性溶媒を含む任意の他の溶媒(群)又は希釈剤(群)、1種又はそれ以上の脂肪族ジカルボキシアルデヒド並びにこれらに限定されないが、有機リン配位子、有機リン配位子分解生成物、ヘミアセタール、アセタール、ラクトン並びに/又は二量体、三量体及びより高級のオリゴマーを含む他の重質物を含む、脂肪族ジカルボキシアルデヒド(群)中に存在する任意の不純物及び/又は副生物を含む、工程(b)に於いて抽出器に供給される合計の液体供給物を指す。
【0040】
本発明の水素化方法に於いて使用される脂肪族ジアルデヒドは、少なくとも2個のカルボキシアルデヒド(ホルミル)置換基(−CH=O)を含有する任意の脂肪族化合物を含んでなる。前記のように、用語「脂肪族」は、直鎖、分枝鎖又は閉環構造の炭化水素を指し、ここで、炭素原子(ホルミル置換基を除く)は、完全に飽和された結合を有し、それぞれの炭素原子は、アルカンに於けるように、単結合で4個の他の原子に結合しており、そして任意に、オレフィンに於けるように、1個又はそれ以上の単離された(即ち、非共役の)炭素−炭素二重結合を有して、任意のC=C二重結合の配置が「芳香族」として分類されないようになっている。好ましい脂肪族ジアルデヒドは、脂環式ジアルデヒド(これは、縮合された又は結合された、飽和された又は飽和されていないが芳香性を有しない、1個又はそれ以上の環の脂肪族閉環システムを指し、更に、環炭素に直接結合されているか又は環炭素に結合されている置換基に結合されている2個のカルボキシアルデヒド置換基を含んでなる)を含んでなる。更に好ましい脂肪族ジアルデヒドは、全部で6〜16個の炭素原子を有し、2個のカルボキシアルデヒド置換基及び任意の他の炭素含有置換基を含有する単一の脂肪族環化合物を含んでなる、単環式C〜C16脂肪族ジカルボキシアルデヒドを含んでなる。好ましくは、この単環式C〜C16脂肪族ジカルボキシアルデヒドは、下記の式(I):
【0041】
【化1】

【0042】
(式中、各Rは、独立に、水素、ヒドロキシ及びC〜C一価ヒドロカルビル基、好ましくは水素及びC〜Cアルキル基から選択され、各Rは、独立に、水素、ヒドロキシ及びC〜C一価ヒドロカルビル基、好ましくは水素及びC〜Cアルキル基から選択され、各nは、0〜約6、好ましくは0〜3、更に好ましくは2の整数であり、各kは、0〜約6、好ましくは0〜3、更に好ましくは2の整数であり、n+kは2よりも大きく、そして各mは、独立に、0〜約3、好ましくは0又は1の整数である)
によって表される。n又はkが0である場合、m個の炭素原子を含有する2個の鎖は互いに対して直接的に結合される。R及びRは、1個又はそれ以上の、本発明の方法を妨害しない実質的に不活性の置換基によって置換されていてよく、この置換基の限定されない例には、ヒドロキシ、アルキル、アリール、アラルキル及びアルカリール基が含まれ、上記の有機基は、好ましくは、1〜約8個の炭素原子を含んでなる。好ましくは、この不活性置換基はヒドロキシを含んでなる。ジカルボキシアルデヒド中の炭素原子の全数が、16の上限を超えない限り、R、R、n、m、kの定義内の任意の選択が許容できる。
【0043】
本発明の水素化方法に於いて使用するための適切な一価の脂肪族C〜C16ジカルボキシアルデヒドの限定されない例には、シス−1,3−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、トランス−1,3−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、シス−1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、シス−1,3−シクロオクタンジカルボキシアルデヒド、トランス−1,3−シクロオクタンジカルボキシアルデヒド、シス−1,4−シクロオクタンジカルボキシアルデヒド、トランス−1,4−シクロオクタンジカルボキシアルデヒド、シス−1,5−シクロオクタンジカルボキシアルデヒド及びトランス−1,5−シクロオクタンジカルボキシアルデヒド、上記の化合物の任意の混合物並びにこれらの類似体(analogue)が含まれる。最も好ましくは、単環式C〜C16脂肪族ジカルボキシアルデヒドはシス及びトランス−1,3−及び1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの混合物(シス/トランス−(1,3)(1,4)−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド)を含む。該シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの可能性のある4種の異性体の2種は下記の式IIa(トランス形である1,3−異性体であるが、シス異性体としても存在し得る)及びIIb(シス形である1,4−異性体であるが、トランス異性体としても存在し得る)によって表される。
【0044】
【化2】

【0045】
有利には、シス/トランス−(1,3)(1,4)−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの更に好ましい異性体混合物は、重量基準で、約50〜60%の1,3−異性体及び約40〜50%の1,4−異性体を含んでなる。
【0046】
脂肪族ジカルボキシアルデヒドには、ヒドロホルミル化方法(これから、脂肪族ジカルボキシアルデヒドが優先的に製造される)から得られる、小量の不純物及び副生物が含有され得る。1個又は2個のRC(O)OH官能基(式中、Rは、一価のヒドロカルビル基を表す)によって特徴付けられる不純物カルボン酸は、ヒドロホルミル化方法のモノ−カルボキシアルデヒド反応剤及びジ−カルボキシアルデヒド生成物の酸化から生じ得る。ヘミアセタールは、ヒドロホルミル化の間のアルデヒド生成物の加水分解又は次の水素化の間のアルコールとアルデヒドとの単純な縮合から生じ得る。ヘミアセタールは、水和されたアルデヒドRHC(OH)又はRHC(OR’)(OH)(式中、R及びR’は、同じか又は異なっていてよい、一価のヒドロカルビル基を表す)として有利に特徴付けられる。オルガノホスファイト及びオルガノホスファイトからの分解生成物は、不純物として存在し得、そのあり得る源泉は、ヒドロホルミル化触媒中に使用された配位子である。他の不純物には、重質物、例えばヒドロホルミル化又は次の水素化の間に形成される二量体、三量体及びより高級オリゴマーが含まれる。本明細書中で使用する用語「重質物」は、更に詳しくは、ジカルボキシアルデヒドのものよりも高い分子量又はジオールのものよりも高い標準沸点を有する化合物を指す。ジオールを参照して、用語「標準沸点」は、本明細書に於いて、1気圧(101kPa)のジオール蒸気圧で、ジオールの液相及び気相が、平衡で存在する温度として定義される。典型的には、本発明の水素化方法に於いて使用される前記の脂肪族ジアルデヒドは、開始時に、脂肪族ジアルデヒドの全重量基準で計算して、それぞれ、約0.005〜約5重量%の、アセタール、ヘミアセタール及び他の重質物(二量体、三量体及びより高級オリゴマーを含む)を含んでなる。
【0047】
脂肪族ジアルデヒド及び付随する不純物の同定は、一般的なもので、これらに限定されないが、任意的に質量分析計を連結した気相クロマトグラフィー(GC)(GC−MS)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、H、13C及び31P核磁気共鳴分光法及び赤外分光法を含む、種々の公知の分析方法を含む。
【0048】
脂肪族ジアルデヒドは、例えば米国特許第B1-6,252,121号明細書及び米国特許第B1-6,307,110号明細書及び米国特許第5,952,530号明細書(参照して本明細書に含める)に開示されているような、当業者に公知の合成方法によって製造することができる。好ましくは、単環式C〜C16脂肪族ジカルボキシアルデヒドは、例えば米国特許第B1-6,252,121号明細書に記載されている脂環式オレフィン性不飽和カルボキシアルデヒドのヒドロホルミル化によって製造される。米国特許第B1-6,252,121号明細書には、特に脂環式オレフィン性不飽和カルボキシアルデヒドを、一酸化炭素及び水素(合成ガス又はシンガス)と、遷移金属−有機リン配位子錯体触媒の存在下に、オレフィン性基をカルボキシアルデヒド基に転化させるために十分な反応条件下で接触させ、それによって脂環式ジカルボキシアルデヒド生成物を生成することが開示されている。脂環式オレフィン性不飽和カルボキシアルデヒドは、ジエン、即ちオレフィン性不飽和炭素−炭素二重結合の共役対を有する化合物と、ジエノフィル、即ちジエンと有利に反応する傾向がある化合物、例えばオレフィン性不飽和カルボキシアルデヒドとのディールス−アルダー付加で、適切に製造される。最も好ましい例に於いて、ブタジエンは、ディールス−アルダー付加でアクロレインと反応して、脂環式オレフィン性不飽和カルボキシアルデヒドとしての1,2,3,6−テトラヒドロベンズアルデヒド(これは、ロジウム−トリオルガノホスファイト配位子錯体触媒の存在下にシンガスによってヒドロホルミル化されて、シス/トランス−(1,3)(1,4)−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドを製造する)を製造する。
【0049】
上記のディールス−アルダー縮合によってオレフィン性不飽和カルボキシアルデヒドに適切に転化することができる例示的オレフィン性不飽和ジエンには、限定することなく、ブタジエン、イソプレン及び1,3−シクロオクタジエンが含まれる。得られる環式不飽和アルデヒドの例には、3−又は4−ジカルボキシシクロヘキサン(ブタジエン+アクロレイン)及び3−又は4−シアノ−ホルミルシクロヘキサン(ブタジエン+アクリロニトリル)が含まれる。ジカルボキシアルデヒドにヒドロホルミル化することができる他のジエンには、これらに限定するものではないが、1,4−シクロペンタジエン、4−ビニルシクロヘキセン(ブタジエン二量体)、1,4−シクロオクタジエン及び1,5−シクロオクタジエンが含まれる。
【0050】
脂肪族ジカルボキシアルデヒドを製造するためのヒドロホルミル化方法に於いて使用することができる金属−有機リン配位子錯体触媒は、当該技術分野で公知であり、前記参照した特許中に開示されているものを含む。一般的に、このような触媒は、予備形成されるか又はヒドロホルミル化方法に於いてインシトゥ(in situ)で形成されることができ、有機リン配位子、好ましくはオルガノホスファイト配位子と錯体組合せにある金属から本質的になる。一酸化炭素がまた存在し、活性種内の金属と錯化し、この活性種は金属に直接結合された水素も含有し得ると信じられる。
【0051】
金属−配位子錯体を形成する許容される金属には、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)及びこれらの混合物から選択された、周期律表の第8、9及び10族からの遷移金属が含まれ、好ましい金属はロジウム、コバルト、イリジウム及びルテニウムであり、更に好ましくはロジウム、コバルト及びルテニウムであり、最も好ましくはロジウムである。他の許容される金属には、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)及びこれらの混合物から選択された、第6族金属が含まれる。第6、8、9及び10族からの金属の混合物も、本発明に於いて使用することができる。このような金属上の利用可能な配位部位の数は、当該技術分野で公知である。従って、ヒドロホルミル化触媒は、好ましくは金属、例えばロジウムの1分子当たり錯化された少なくとも1個の有機リン含有分子によって特徴付けられる、モノマー性、ダイマー性又は高級ヌクリアリティ(nuclearity)形にある錯体触媒混合物からなっていてよい。
【0052】
本明細書及び特許請求の範囲中に使用する用語「錯体」は、1個又はそれ以上の電子的に富んだ分子又は原子と、1個又はそれ以上の電子的に乏しい分子又は原子との結合体(union)によって形成される配位化合物を意味する。例えば本発明に於いて使用することができるオルガノホスファイト配位子は、各1個の電子の利用可能な又は非共有対(unshared pair)を有する1個又はそれ以上のリンドナー原子を有し、それぞれは、独立に又は多分、金属と(例えばキレート化により)協力して配位共有結合を形成することができる。一酸化炭素も存在することができ、金属と錯化することができる。錯体触媒の最終組成物は、また、追加の配位子、例えば水素又は金属の配位部位又は核電位を満たすアニオンを含有することができる。例示的追加の配位子には、例えばハロゲン(Cl、Br、I)、アルキル、アリール、置換されたアリール、アシル、CF、C、CN、(R)PO及びRP(O)(OH)O(式中、各Rは、同じか又は異なっており、置換又は非置換の一価の炭化水素基、例えばアルキル又はアリールである)、アセテート、アセチルアセトネート、SO、PF、PF、NO、NO、CHO、CH=CHCH、CHCH=CHCH、CCN、CHCN、NH、ピリジン、(CN、モノオレフィン、ジオレフィン及びトリオレフィン、テトラヒドロフラン等が含まれる。
【0053】
金属−有機リン配位子錯体及び遊離有機リン配位子を作る好ましい有機リン配位子には、オルガノモノホスファイト及びオルガノポリホスファイトが含まれる。所望により、金属−オルガノホスファイト配位子錯体触媒及び/又は遊離配位子中に、このような配位子の混合物を使用することができ、遊離及び錯化された配位子のこのような混合物は同じか又は異なっていてよい。
【0054】
代表的なモノオルガノホスファイトには、式III:
【0055】
【化3】

【0056】
(式中、Rは、置換又は非置換の炭素数約4〜40の三価の炭化水素基、例えば三価の非環式基及び三価の環式基、例えば三価のアルキレン基、例えば1,2,2−トリメチロールプロパンから誘導されるもの又は三価のシクロアルキレン基、例えば1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサンから誘導されるものを表す)
を有するものが含まれる。このようなモノオルガノホスファイトは例えば米国特許第4,567,306号明細書(その開示を参照して本明細書に含める)中により詳細に記載されている。
【0057】
代表的なジオルガノホスファイトには、式IV:
【0058】
【化4】

【0059】
(式中、Rは、置換又は非置換の炭素数約4〜40の二価の炭化水素基を表し、Wは、置換又は非置換の炭素数1〜約18の一価の炭化水素基を表す)
を有するものが含まれる。
【0060】
上記の式に於いて、Wによって表される代表的な置換及び非置換の一価の炭化水素基には、アルキル及びアリール基が含まれ、他方、Rによって表される、代表的な置換又は非置換の二価の炭化水素基には、二価の非環式基及び二価の芳香族基が含まれる。例示的二価の非環式基には、例えばアルキレン、アルキレン−オキシ−アルキレン、アルキレン−NX−アルキレン(式中、Xは水素又は置換若しくは非置換の一価の炭化水素基である)、アルキレン−S−アルキレン及びシクロアルキレン基が含まれる。更に好ましい二価の非環式基は、例えば米国特許第3,415,906号明細書、米国特許第4,567,306号明細書(これらの開示を参照して本明細書に含める)中に一層完全に開示されているような二価のアルキレン基である。例示的二価の芳香族基には、例えばアリーレン、ビスアリーレン、アリーレン−アルキレン、アリーレン−アルキレン−アリーレン、アリーレン−オキシ−アリーレン、アリーレン−NX−アリーレン(式中、Xは前記定義した通りである)、アリーレン−S−アリーレン及びアリーレン−S−アルキレンが含まれる。更に好ましくは、Rは、例えば米国特許第4,599,206号明細書及び米国特許第4,717,775号明細書(これらの開示を参照して本明細書に含める)中に一層完全に開示されているような二価の芳香族基である。
【0061】
ジオルガノホスファイトの更に好ましいクラスの代表は、式V:
【0062】
【化5】

【0063】
(式中、Wは前記定義した通りであり、各Arは、同じか又は異なり、置換又は非置換の二価のアリール基を表し、各yは、同じか又は異なり、0又は1の値であり、Qは、−C(R−、−O−、−S−、−NR−、−Si(R−及び−COから選択された二価の橋架け基を表し、各Rは、同じか又は異なり、水素、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル、トリル及びアニシルから選択され、Rは水素又は炭素数1〜10のアルキル基、好ましくはメチルを表し、各Rは、同じか又は異なり、水素又は炭素数1〜10のアルキル基、好ましくは、メチルを表し、そしてxは、0又は1の値である)
のものである。このようなジオルガノホスファイトは、例えば米国特許第4,599,206号明細書、米国特許第4,717,775号明細書及び米国特許第4,835,299号明細書(これらの開示を参照して本明細書に含める)中に一層詳細に記載されている。
【0064】
代表的なトリオルガノホスファイトには、式VI:
【0065】
【化6】

【0066】
(式中、各Rは、同じか又は異なり、置換又は非置換の一価の炭化水素基、例えばアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール又はアラルキル基(これらは1〜24個の炭素原子を含有してよい)である)
を有するものが含まれてよい。例示的トリオルガノホスファイトには、例えばトリアルキルホスファイト、ジアルキルアリールホスファイト、アルキルジアリールホスファイト及びトリアリールホスファイト、例えばトリフェニルホスファイト、トリス(2,6−トリイソプロピル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスファイト並びにより好ましいトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが含まれる。一価の炭化水素基単位自体が、官能基が、遷移金属と著しく相互作用しないか又は他の方法でヒドロホルミル化を妨害しない限り、官能化されていてよい。代表的な官能基には、アルキル又はアリール基、エーテル、ニトリル、アミド、エステル、−N(R、−Si(R、ホスフェート等(式中、R及びRは前記定義の通りである)が含まれる。このようなトリオルガノホスファイトは米国特許第3,527,809号明細書(その開示を参照して本明細書に含める)中に一層詳細に記載されている。
【0067】
基R〜Rの何れも、1個又はそれ以上の不活性置換基によって置換されていてよい。更に詳しくは、例示的置換基には、例えば第一級、第二級及び第三級アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、アミル、sec−アミル、t−アミル、イソオクチル、デシル及びオクタデシル;アリール基、例えばフェニル及びナフチル;アラルキル基、例えばベンジル、フェニルエチル及びトリフェニルメチル;アルカリール基、例えばトリル及びキシリル;脂環式基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、シクロオクチル及びシクロヘキシルエチル;アルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、t−ブトキシ、−OCHCHOCH、−O(CHCHOCH及び−O(CHCHOCH;アリールオキシ基、例えばフェノキシ並びにシリル基、例えば−Si(CH、−Si(OCH及び−Si(C;アミノ基、例えば−NH、−N(CH、−NHCH及び−NH(C);アリールホスフィン基、例えば−P(C;アシル基、例えば−C(O)CH、−C(O)C及び−C(O)C;カルボニルオキシ基、例えば−C(O)OCH;オキシカルボニル基、例えば−O(CO)C;アミド基、例えば−CONH、−CON(CH及び−NHC(O)CH;スルホニル基、例えば−S(O);スルフィニル基、例えば−S(O)CH;スルフェニル基、例えば−SCH、−SC及び−SC;ホスホニル基、例えば−P(O)(C、−P(O)(CH、−P(O)(C、−P(O)(C、−P(O)(C、−P(O)(C13、−P(O)CH(C)及び−P(O)(H)(C)が含まれる。
【0068】
最も好ましい有機リン配位子はトリオルガノ−モノホスファイト配位子、更に好ましくは式VII:
【0069】
【化7】

【0070】
によって表されるトリス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト配位子を含む。
【0071】
脂肪族ジアルデヒドを製造するためのヒドロホルミル化方法の反応流体中に存在する金属−配位子錯体触媒の量は、選択されたヒドロホルミル化に触媒作用するために必要な最少量であることのみを必要とする。ヒドロホルミル化反応流体中の遊離金属として計算した、約10部/100万〜約1000部/100万の範囲内の、金属、好ましくはロジウム濃度が、殆どの方法のために有利に使用されるが、約10〜500部/100万の金属、更に好ましくは25〜350部/100万の金属を使用することが好ましい。
【0072】
金属−配位子錯体触媒に加えて、遊離配位子(即ち金属と錯化していない配位子)が所望により、ヒドロホルミル化反応流体中に存在してもよい。遊離配位子は、前記の有機リン配位子の何れかに対応してよい。有利には、ヒドロホルミル化反応流体中の金属1モル当たり、約0.1モル〜約100モルの遊離配位子が使用される。好ましくは、ヒドロホルミル化方法は、反応流体中に存在する金属の1モル当たり、約1〜約50モルの配位子、更に好ましくは約1.1〜約4モルの配位子の存在下で実施され、配位子の該量は、金属に結合(錯化)されている配位子の量及び存在する遊離(錯化されていない)配位子の量の両方の合計である。所望により、補充(make-up)又は追加の配位子を、任意の時点で任意の適切な方法で、反応流体中の遊離配位子の予定のレベルを維持するために、ヒドロホルミル化方法の反応流体に供給することができる。
【0073】
脂肪族ジカルボキシアルデヒドを製造するためのヒドロホルミル化方法の反応条件は、当該技術分野で十分に開示されている。例えば気体状水素の一酸化炭素に対するH:COモル比は、有利には約1:10〜100:1の範囲であり、更に好ましいモル比は、約1:10〜約10:1である。有利にはヒドロホルミル化は、約−25℃よりも高い、更に好ましくは約50℃よりも高いが、約200℃よりも低い、好ましくは約120℃よりも低い反応温度で、実施される。有利には、水素、一酸化炭素及びオレフィン性反応剤を含んでなる全気体圧力は、約1psia(6.8kPa)〜約10,000psia(68.9MPa)、好ましくは約1psia(6.8kPa)〜約2,000psia(13,800kPa)よりも低い、更に好ましくは約1psia(6.8kPa)〜約500psia(3,450kPa)よりも低い範囲である。一酸化炭素分圧は、有利には、約1psia(6.8kPa)〜約1000psia(6,900kPa)、好ましくは約3psia(20.7kPa)〜約800psia(5,516kPa)の範囲であり、他方、水素分圧は、有利には、約5psia(34.5kPa)〜約500psia(3,450kPa)、好ましくは約10psia(68.0kPa)〜約300psia(2,070kPa)の範囲である。供給流量は、例えば“Process Economics Program Report 21D: Oxo Alcohols 21d,”SRI Consulting、カリフォルニア州Menlo Park、1999年12月刊行(参照して本明細書に含める)に記載されているように、当該技術分野で公知である。
【0074】
1種又はそれ以上の脂肪族ジアルデヒド、遷移金属−有機リン配位子錯体触媒及び任意的な遊離有機リン配位子を含む、ヒドロホルミル化工程から得られるヒドロホルミル化生成物組成物を、その後、相分離に付して、1種又はそれ以上の脂肪族ジアルデヒド生成物を分離し、ヒドロホルミル化方法にリサイクルするための遷移金属−有機リン配位子錯体触媒及び任意の遊離有機リン配位子を含有するリサイクル流を回収する。勿論、このヒドロホルミル化生成物組成物は、例えば未転化のオレフィン性不飽和カルボキシアルデヒド反応剤、使用したときの炭化水素溶媒(群)、オレフィン性不飽和カルボキシアルデヒドの水素化から生じる飽和脂肪族カルボキシアルデヒド及び潜在的にまたオレフィン性不飽和カルボキシアルデヒド反応剤のオレフィン性異性体並びに前記の重質物及びその他の不純物を含む、追加の成分を含有していてよい。
【0075】
後で記載する場合を除いて、抽出工程は、先行技術に於いて、例えば米国特許第B1-6,252,121号明細書(参照して本明細書に含める)中に適切に記載されている。抽出に於いて、1種又はそれ以上の脂肪族ジアルデヒド、好ましくは1種又はそれ以上の脂環式ジカルボキシアルデヒド、遷移金属−有機リン配位子錯体触媒及び任意的な遊離有機リン配位子を含んでなる、ヒドロホルミル化生成物組成物を、水及び任意に非極性溶媒と、相分離によって遷移金属−有機リン配位子錯体触媒、任意的な遊離有機リン配位子及び任意的な非極性溶媒を含む非極性相並びに水及び1種又はそれ以上の脂肪族ジアルデヒド生成物を含んでなる極性相を得るために十分な条件下に混合する。
【0076】
水は好ましい抽出溶媒である。任意的に、1種又はそれ以上の非水性極性溶媒を、水と共に使用することができる。適切な非水性極性溶媒の非限定例には、C〜Cアルカノール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、これらの高級同族体並びに上記化合物の混合物が含まれる。水及び非水性極性溶媒(群)の全量はヒドロホルミル化生成物組成物の相分離を誘導するために十分であるようにすべきである。更に好ましくは、水及び非水性極性溶媒(群)の全量は、ヒドロホルミル化生成物組成物の相分離を誘導するためのみならず、脂肪族ジカルボキシアルデヒド生成物(群)の約85重量%よりも多く、好ましくは、約90重量%よりも多くを、一つの極性水性層又は相の中に実質的に抽出するために十分である。
【0077】
好ましくは、抽出工程を実施するための2個の方法の何れか一方が使用される。一つの好ましい態様に於いて、抽出に於いて使用される水及び非水性極性溶媒(群)の量は、抽出器への全供給物の重量基準で、約10重量%よりも多く約20重量%以下を含んでなる。この態様に於いて、水レベルは先行技術に開示された好ましい範囲を超え、有利に3個の液層又は相、即ち(存在する場合の)非極性溶媒、ヒドロホルミル化触媒及び遊離有機リン配位子を含む非極性相、水及び任意の極性非水性溶媒を含む水相並びに脂肪族ジカルボキシアルデヒドを含む有機極性相になる。別の好ましい態様に於いて、抽出に於いて使用される水及び非水性極性溶媒(群)の量は、抽出工程への合計供給物の重量基準で、約20%よりも多く、更に好ましくは約50%よりも多く、約95%以下を含む。更に好ましくは、好ましい態様に於いて、水レベルは、抽出器への合計供給物の重量基準で、50重量%を超え、最も好ましくは、約80〜95重量%の範囲である。この後の態様に於いて、水は、先行技術に開示された範囲を十分に超え、有利に、3個ではなくて2個、即ち(存在する場合には)非極性溶媒、ヒドロホルミル化触媒及び遊離有機リン配位子を含む非極性相並びに水、任意の極性非水性溶媒(群)及び極性相が1個の層のみを含むように、その中に本質的に完全に溶解された1種又はそれ以上の脂肪族ジカルボキシアルデヒドを含む極性相になる。
【0078】
使用される特定のヒドロホルミル化触媒及び反応剤に依存して、所望により、1種又はそれ以上の非極性溶媒、例えば液体アルカン、シクロアルカン、アルケン、芳香族炭化水素及びこれらの混合物を、抽出工程に於いて使用することができる。例示的非極性溶媒には、限定することなく、2,2−ジメチルプロパン、2,2−ジメチルブタン、ペンタン、イソプロピルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、イソ酪酸イソブチル、トリブチルヘプチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタン、シクロヘキサン、イソブチルベンゼン、n−ノニルベンゼン、n−オクチルベンゼン、p−キシレン、エチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、m−キシレン、トルエン,o−キシレン、デセン、ドデセン及びテトラデセンが含まれる。米国特許第6,252,121号明細書及び米国特許第6,307,110号明細書(参照して本明細書に含める)には、追加の使用できる非極性溶媒が記載されている。使用する場合、非極性溶媒の量は重要ではなく、有利には、抽出器に供給されるヒドロホルミル化生成物組成物の全重量基準で、約1重量%から約20重量%までの範囲である。
【0079】
有利には、ヒドロホルミル化生成物組成物の一部又は全部をヒドロホルミル化ゾーンから取り出し、抽出器に供給し、その場合、水並びに任意的な他の極性溶媒及び非極性溶媒も供給し、全部の混合物を混合し、沈降させるか又はその代わりに、成分をデカンターに供給し、前記のように2個又は3個の相に沈降させる。
【0080】
抽出器又はデカンターから、脂肪族ジカルボキシアルデヒドを含有する相が、所望により全部又は部分的に、水素化ゾーンに供給される。この時点で、水素化ゾーンに供給される水の量を、水素化への合計液体供給物の重量基準で、10重量%又はそれ以上、好ましくは10重量%よりも多い、更に好ましくは約15重量%よりも多い、なお更に好ましくは約20重量%よりも多い量を確保するように調節することができる。水の好ましい量は、約95重量%よりも少ない。水のなお更に好ましい量は、水素化への全液体供給物の重量基準で、約20重量%又はそれ以上で、約95重量%よりも少ない。従って、抽出器又はデカンターからの脂肪族ジカルボキシアルデヒド含有相が、少なすぎる水を含有する場合に、水素化ゾーンの中に追加の水を共供給して、水素化のために必要なレベルまで、水レベルを上昇させることが必要であろう。他方、抽出器又はデカンターからの水性極性相中の水の量が高すぎる場合に、例えば蒸留又は蒸発によって極性相から水を除去して、水素化のために必要なレベルまで、水レベルを低下させることが必要であろう。好ましくは水レベルは調節を必要としないか又は簡単な追加の水の共供給によって上昇させることを必要とする。
【0081】
水素化に供給される水が、前記のように約20重量%又はそれ以上であるとき、水素化で使用される水の量は、好ましくは脂肪族ジカルボキシアルデヒドの1モル当量当たり水約4モル当量よりも多いか又は水素化ゾーンに供給されるホルミル置換基の1モル当量当たり水約2モル当量よりも多い。
【0082】
本発明の方法に於いて、脂肪族ジアルデヒドの水素化は、液相中で、好ましくは水素化触媒との連続式又は断続式流動接触で実施される。この触媒は、通常固体固定床中の水素化ゾーンに、好ましくは、沈殿した、ペレット化した、造形した又は押し出した粒子として供給される。当業者に公知であるような、回分式反応器、流動床反応器、トリクルベッド反応器、単一及び複数通路反応器を含む、他の形式の水素化反応器又はゾーンも、実施可能である。この反応は、所望により1段又はそれ以上で、断熱的に又は等温的に実施することができる。転化されなかった脂肪族ジアルデヒドを、更なる転化のために水素化反応器に戻しリサイクルさせることができる。脂肪族ジオール生成物の一部を、所望により希釈剤として使用するために、水素化反応ゾーンにリサイクルさせることができる。
【0083】
水素化触媒は、周期律表の第6、7、8、9、10、11及び12族、好ましくは第6、10及び11族、更に好ましくはクロム、ニッケル、銅、パラジウム、白金及びこれらの混合物から選択された1種又はそれ以上の金属を含む。触媒金属を、担体無しの形で又はその代わりに、担体又は支持体、例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、アルミノケイ酸塩、炭素及び当業者に公知の任意の他の一般的な支持体材料に固定させて使用することが可能である。担体又は支持体を使用する場合、担体又は支持体上への全触媒金属(群)の担持量は、有利には約0.01重量%から約20重量%までの範囲であるが、より少ない又はより多い量の他の担持量を使用することができる。水素化触媒は、任意的に、所望の脂肪族ジオールへの水素化反応を促進する及び/又は安定化する追加の材料及び/又は安定剤からなっていてよい。このような追加の材料及び/又は安定剤には、限定することなく、アルカリ金属及びアルカリ土類金属酸化物並びにアルカリ金属及びアルカリ土類金属水酸化物が含まれる。その物理的特性、例えば耐摩耗性を改良するために、担体材料、例えばシリカ及びアルミナを、触媒に添加することができる。好ましい触媒はアルミナ上に担持されたニッケルを含んでなる。好ましい触媒はスルファクティブ(sulfactive)水素化触媒、例えば第6、7、8、9、10、11及び12族硫化物、好ましくは硫化モリブデン、硫化タングステン及び硫化ニッケルを排除する。
【0084】
水素化方法条件は使用する脂肪族ジアルデヒド及び触媒の特定種に依存して変化し得る。有利には、水素は脂肪族ジアルデヒド供給物中の全カルボニル(ホルミル)基に対して過剰量で導入される。好ましくは、水素のカルボニル(ホルミル)基のモル数に対するモル比は、1.3:1よりも大きく、更に好ましくは約1.5:1よりも大きい。好ましくは、水素のカルボニル基のモル数に対するモル比は、約10:1よりも小さく、更に好ましくは約5:1よりも小さく、なお更に好ましくは約3:1よりも小さい。
【0085】
水素化は、有利には、約40℃よりも高い、好ましくは約70℃よりも高い温度で実施され、有利には、約200℃よりも低い、好ましくは約150℃よりも低い温度で実施される。水素化は、有利には、約3バール(300kPa)よりも高い、好ましくは約5バール(500kPa)よりも高い水素圧力で実施され、有利には、約50バール(5,000kPa)よりも低い、好ましくは約30バール(3,000kPa)よりも低い水素圧力で実施される。連続方式の運転に於いて、抽出方法からの少なくとも或る濃度の水キャリーオーバーを含有する液体脂肪族ジアルデヒド供給物の時間基準の液空間速度は、有利には、約0.01cm液体供給物/cm触媒/時間(h−1)〜約100h−1の範囲である。任意の追加の水供給物の時間基準の液空間速度は、ジアルデヒド供給物の水含有量及び水素化への合計液体供給物中の水の所望の重量パーセントに基づいて決定される。
【0086】
水素化排出流は、水素化反応器から回収され、それから、1種又はそれ以上の脂肪族ジオールを、当業者に公知の全ての一般的な方法によって分離し、回収することができる。このような分離方法には、例えば分別蒸留、抽出、結晶化、クロマトグラフィー及び膜濾過が含まれる。好ましい方法には、現在、2008年7月7日に出願された国際特許出願第PCT/US2008/069308号(代理人ドケット(Docket)番号第64964A号)として出願係属中である、Glenn A Miller、Edward Yonemoto及びRanier Potthastの名前及び発明の名称「C〜C16脂肪族ジオールの精製方法(PROCESS OF REFINING C−C16ALIPHATIC DIOLS)」で2007年7月30日に出願された未公開の米国仮特許出願第60/962,548号(代理人ケース番号第64964号)明細書中に記載されているような蒸留が含まれる。第一蒸留が、軽留分を除去するために大気圧で有利に実施され、続いて、第二蒸留が、所望のジオール生成物(群)を回収するために減圧下で実施される。
【0087】
好ましい単環式C〜C16脂肪族ジオールは、下記の式(VIII):
【0088】
【化8】

【0089】
(式中、各Rは、独立に、水素、ヒドロキシ及びC〜C一価ヒドロカルビル基、好ましくは水素及びC〜Cアルキル基から選択され、各Rは、独立に、水素、ヒドロキシ及びC〜Cヒドロカルビル基、好ましくは水素及びC〜Cアルキル基から選択され、nは、0〜約6、好ましくは0〜3、更に好ましくは2の整数であり、kは、0〜約6、好ましくは0〜3、更に好ましくは2の整数であり、n+kは2よりも大きく、そして各mは、独立に0〜約3、好ましくは0又は1の整数である)
によって表すことができる。n又はkが0である場合、m個の炭素原子の2個の鎖は直接的に結合される。R及びRは、1個又はそれ以上の、前記のような実質的に不活性の置換基によって置換されていてよい。好ましくは、この不活性置換基は、ヒドロキシを含む。再び、ジアルデヒド中の炭素原子の全数が、16を超えない限り、R、R、m、n及びkは、ここで定義された任意の値を取ることができる。
【0090】
最も好ましいC〜C16脂肪族ジオールはシス/トランス−(1,3)(1,4)−シクロヘキサンジジメタノールを含む。4種の可能性のある異性体の2種は、式IXa(トランス形で示される1,3−異性体であるが、シス形でも生じ得る)及びIXb(シス形で示される1,4−異性体であるが、トランス異性体でも生じ得る):
【0091】
【化9】

【0092】
によって表される。
【0093】
脂肪族ジアルデヒドの水素化を、本発明に従って、即ち水素化ゾーンへの合計液体供給物の重量基準で、10重量%又はそれ以上、更に好ましくは約15重量%よりも多い、なお更に好ましくは約20重量%よりも多いそして約95重量%よりも少ない量の水の存在下で実施するとき、望ましくない重質物の収率は減少し、一方、望まれる脂肪族ジオールの収率は増加する。ジオール収率は、10重量%よりも少ない量の水を使用する同様の方法に対して比較したとき、約1.5〜約2.0重量%程増加する。
【実施例】
【0094】
下記の実施例は、本発明の例示として記載する。しかしながら、実施例は本発明の限定であるとは意図されない。本明細書中の記載に鑑みて、当業者は特許請求の範囲内の実施例をどのように変化させるかを理解するであろう。
【0095】
反応器装置
106.7cm(42インチ)長さ、3.5cm(1.36インチ)内径のステンレススチールパイプからなる水素化反応器を組み立てる。この反応器に、ニッケル−アルミナ沈殿触媒(Ni50〜60重量%、Engelhard、カタログ番号E3288)及び触媒を含めるためのそれぞれの端部にガラスウールの小さい栓を装填する。圧力は、反応器の出口上の圧力トランスデューサー付き制御バルブによって制御する。反応器の温度は複数の熱テープ及び熱を均一に分布させるための数個の断熱層によって制御する。
【0096】
液体ジアルデヒド供給物を、供給ポンプによって付与する。気体状水素を、流量計によって制御し、液相及び気相は、上昇流れ反応器の底に入る前の予熱器内の混合上昇流である。アルコール生成物は、反応器の頂部から出て、環境露出によって冷却され、その後サンプリングされる。生成物の一部を、希釈剤として供給物流に戻しリサイクルさせる。液体生成物を集め、DB WAX(30メートル×0.32mm×0.25ミクロン)毛細管カラムを取り付けたHP6890ガスクロマトグラフ(GC)によって分析する。このサンプルを、また、ジオールを重質物、例えば二量体及び三量体種から分別するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって分析する。供給物及び生成物中の水を、カールフィッシャー滴定によって分析する。
【0097】
実施例1
前記のように形作られた水素化反応器に、前記のニッケル系触媒(1000cc)を装填する。3個の独立の共供給物の一つであるジアルデヒド供給物を、水素化反応器に供給する。このジアルデヒド供給物は、重量基準で、水4%、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドのシス及びトランス異性体を含有する全ジアルデヒド異性体87%、ヘプタン7%及びテトラヒドロベンズアルデヒド、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド、重質物及び酸を含有するその他2%を含む。反応器からの排出流を、10重量%を生成物として取得し、90重量%を希釈剤として水素化反応器に戻しリサイクルさせるように分割する。追加の水を、水素化反応器に共供給する。全水−ジアルデヒド及びリサイクル供給物を、1.0h−1の全液空間速度(LHSV)で供給する。合計の流れについて、ジアルデヒド供給物を10重量%で維持し、水を、流れの残りを作る水素化反応器からのリサイクルによって20重量%に調節する(重量%は、水素化反応器への合計液体供給物の重量基準である)。20重量%の水は、ジアルデヒド1モル当量当たり10モル当量の水又はホルミル置換基1モル当たり5モルの水に等価である。一緒にした供給物は、処理及び取扱いのために許容できる粘度をもたらす。予熱器〜反応器は110℃に加熱され、反応器自体は100〜140℃に維持されている。反応器を、水素によって4826kPa(700psig)まで加圧する。水素を、50標準リットル/時又はジオールへの完全転化に必要なものの50%モル過剰で供給する。触媒床温度は、反応の発熱のために100℃から140℃まで上昇する。この方法を、生成物をほぼ24時間毎にサンプリングしながら、2100時間(87.5日間)運転する。所望のシス/トランス−(1,3)(1,4)−シクロヘキサンジメタノールを含む各生成物サンプルを、GC、GPC及びカールフィッシャー滴定によって評価し、運転を通した平均結果を表1に要約する。
【0098】
【表1】

【0099】
比較実験1(CE−1)
4重量%の水を含有するジアルデヒド供給物のみを使用し、追加の水及びリサイクル流を水素化反応器に供給しない以外は、実施例1の水素化を繰り返す。生成物の実施可能な処理粘度を確保するために、イソプロピルアルコールを15重量%で添加する。そうしないと、供給物は、処理するには不適切な粘度を有するであろう。4重量%の水は、ジアルデヒド1モル当量当たり2モル当量の水又はホルミル置換基1モル当たり1モルの水に等価である。実験を、生成物をサンプリングしながら400時間行う。結果を表1に示す。実施例1を、比較実験1と比較したとき、本発明に従った20重量%での水の添加は、ヘミアセタール(例えば式Xで下に示すような1,3−ヘミアセタール)の分子内生成を減少させるのみならず、ジアルデヒド自己縮合からの二量体及び三量体オリゴマー生成を著しく減少させることが判る。同時に、ジアルデヒド原材料効率は、本発明のこの態様に於いて1.8%増加する。
【0100】
【化10】

【0101】
発明の態様
本発明は以下の態様を含む。
1.1種又はそれ以上の脂肪族ジアルデヒドを、液相中で、水素化ゾーン内で水素化触媒の存在下に、水素化ゾーンへの全液体供給物の重量基準で、10重量%又はそれ以上の量の水の存在下で、1種又はそれ以上の対応する脂肪族ジオールを製造するのに十分な反応条件下で、水素と接触させることを含んでなる脂肪族ジオールを製造するための、脂肪族ジアルデヒドの水素化方法。
2.(a)ヒドロホルミル化ゾーン内で、オレフィン性不飽和脂肪族アルデヒドを、一酸化炭素及び水素と、遷移金属−有機リン配位子錯体触媒及び任意的な遊離有機リン配位子の存在下に、1種又はそれ以上の脂肪族ジカルボキシアルデヒド、遷移金属−有機リン配位子錯体触媒及び任意的に遊離有機リン配位子を含んでなるヒドロホルミル化生成物組成物を製造するのに十分なヒドロホルミル化条件下で接触させる工程、
(b)このヒドロホルミル化生成物組成物を、抽出ゾーン内で、水及び任意的な非極性溶媒と、相分離により、遷移金属−有機リン配位子錯体触媒、任意的な遊離有機リン配位子及び任意的な非極性溶媒を含んでなる非極性相並びに水及び1種又はそれ以上の脂肪族ジカルボキシアルデヒドを含んでなる極性相を得るのに十分な条件下で混合する工程、
(c)水及び1種又はそれ以上の脂肪族ジアルデヒドを含んでなる抽出工程(b)からの極性相の少なくとも一部を、水の追加の共供給物と共に又はこれ無しで、水素化ゾーンへの全液体供給物の重量基準で10重量%又はそれ以上である水の量で、水素化ゾーンの中に供給し、そして液相中の脂肪族ジカルボキシアルデヒド(群)を、該水の存在下に且つ水素化触媒の存在下に、1種又はそれ以上の対応する脂肪族ジオールを製造するのに十分な水素化条件下で、水素によって水素化する工程
を含んでなる1種又はそれ以上の脂肪族ジオールの製造方法。
3.脂肪族ジアルデヒドが、脂環式ジアルデヒド、更に好ましくは、単環式C〜C16脂肪族ジカルボキシアルデヒド、最も好ましくは、シス/トランス−(1,3)(1,4)−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの混合物を含む前記態様の何れか一つ。
4.この単環式C〜C16脂肪族ジカルボキシアルデヒドが、下記の式(I):
【0102】
【化11】

【0103】
(式中、各Rは、独立に、水素、ヒドロキシ及びC〜C一価ヒドロカルビル基、好ましくは水素及びC〜Cアルキル基から選択され、各Rは、独立に、水素、ヒドロキシ及びC〜C一価ヒドロカルビル基、好ましくは水素及びC〜Cアルキル基から選択され、各nは0〜約6、好ましくは0〜3、更に好ましくは2の整数であり、各kは、0〜約6、好ましくは0〜3、更に好ましくは2の整数であり、n+kは2よりも大きく、そして各mは、独立に、0〜約3、好ましくは0又は1の整数であり、そしてn又はkが0である場合、m個の炭素原子を含有する2個の鎖は互いに対して直接的に結合され、更に、R及びRは、1個又はそれ以上の、本発明の方法を妨害しない実質的に不活性の置換基によって置換されていてよく、この置換基の限定されない例には、ヒドロキシ、アルキル、アリール、アラルキル及びアルカリール基(但し、上記の有機基は、好ましくは1〜約8個の炭素原子を含んでなる)が含まれ、好ましくは、ヒドロキシである)
によって表される、前記態様の何れか一つ。
5.一価の脂肪族ジカルボキシアルデヒドがシス−1,3−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、トランス−1,3−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、シス−1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、シス−1,3−シクロオクタンジカルボキシアルデヒド、トランス−1,3−シクロオクタンジカルボキシアルデヒド、シス−1,4−シクロオクタンジカルボキシアルデヒド、トランス−1,4−シクロオクタンジカルボキシアルデヒド、シス−1,5−シクロオクタンジカルボキシアルデヒド及びトランス−1,5−シクロオクタンジカルボキシアルデヒド並びに上記の化合物の混合物から選択される前記態様の何れか一つ。
6.単環式C〜C16脂肪族ジカルボキシアルデヒドが、シス/トランス−(1,3)−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド及びシス/トランス−(1,4)−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの異性体混合物を含んでなり、任意的に、この異性体混合物が、重量基準で、約50〜60%の1,3−異性体及び約40〜50%の1,4−異性体を含んでなる前記態様の何れか一つ。
7.脂肪族ジアルデヒドが1種又はそれ以上の、不純物カルボン酸、アセタール、ヘミアセタール、エノールエーテル、飽和エーテル、オルガノホスファイト及びその分解生成物並びに二量体、三量体及びより高級オリゴマーを含む自己縮合重質物を含んでなる前記態様の何れか一つ。
8.脂肪族ジアルデヒドが、脂肪族ジアルデヒドの全重量基準で計算して、それぞれ、約0.005〜約5重量%の、アセタール、ヘミアセタール及び他の重質物(二量体、三量体及びより高級オリゴマーを含む)を含んでなる前記態様の何れか一つ。
9.脂肪族ジアルデヒドが、ジエンとジエノフィル、例えば不飽和アルデヒドとのディールス−アルダー縮合反応で製造される不飽和脂肪族モノカルボキシアルデヒドのヒドロホルミル化によって製造される前記態様の何れか一つ。
10.脂肪族ジアルデヒドを製造するためのヒドロホルミル化方法に於いて使用することができる金属−有機リン配位子錯体触媒が、金属−オルガノホスファイト配位子錯体触媒を含んでなる前記態様の何れか一つ。
11.脂肪族ジアルデヒドを製造するためのヒドロホルミル化方法の金属−配位子錯体触媒の金属が、周期律表の第8、9及び10族から選択された遷移金属、好ましくはロジウム、コバルト、イリジウム及びルテニウム、更に好ましくはロジウム、コバルト及びルテニウム、最も好ましくはロジウムを含んでなる前記態様の何れか一つ。
12.オルガノモノホスファイト配位子が式III:
【0104】
【化12】

【0105】
(式中、Rは置換又は非置換の炭素数約4〜40の三価の炭化水素基、例えば三価の非環式基及び三価の環式基を表す)
のオルガノホスファイトを含んでなる前記態様の何れか一つ。
13.オルガノモノホスファイトが、式IV:
【0106】
【化13】

【0107】
(式中、Rは置換又は非置換の炭素数約4〜40の二価の炭化水素基を表し、Wは、置換又は非置換の炭素数1〜約18の一価の炭化水素基を表す)
によって表される、前記態様の何れか一つ。
14.オルガノホスファイトが、式V:
【0108】
【化14】

【0109】
(式中、Wは置換又は非置換の炭素数1〜約18の一価の炭化水素基を表し、各Arは同じか又は異なり、置換又は非置換の二価のアリール基を表し、各yは同じか又は異なり、0又は1の値であり、Qは−C(R−、−O−、−S−、−NR−、−Si(R−及び−COから選択された二価の橋架け基を表し、各Rは同じか又は異なり、水素、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル、トリル及びアニシルから選択され、Rは水素又は炭素数1〜10のアルキル基、好ましくはメチルを表し、各Rは同じか又は異なり、水素又は炭素数1〜約10のアルキル基、好ましくはメチルを表し、そしてxは、0又は1の値である)
のジオルガノホスファイトである前記態様の何れか一つ。
15.オルガノホスファイトが式VI:
【0110】
【化15】

【0111】
(式中、各Rは、同じか又は異なり、置換又は非置換の炭素数1〜24の一価の炭化水素基、好ましくは、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール又はアラルキル基である)
によって表されるトリオルガノホスファイトである前記態様の何れか一つ。
16.オルガノホスファイトが、式VII:
【0112】
【化16】

【0113】
のトリス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトである前記態様の何れか一つ。
17.脂肪族ジアルデヒドを製造するためのヒドロホルミル化方法の反応流体中に存在する金属−配位子錯体触媒の量が、ヒドロホルミル化反応流体中の遊離金属として計算して、約10部/100万〜約1000部/100万の金属、更に好ましくは約10〜500部/100万の金属、なお更に好ましくは25〜350部/100万の金属の範囲である前記態様の何れか一つ。
18.遊離オルガノホスファイト配位子が、ヒドロホルミル化反応流体中の金属1モル当たり、約0.1モル〜約100モルの遊離配位子、好ましくは反応流体中に存在する金属の1モル当たり、約1〜約50モルの配位子、更に好ましくは約1.1〜約4モルの配位子の量(この配位子の量は、金属に結合(錯化)されている配位子の量及び存在する遊離(錯化されていない)配位子の量の両方の合計である)でヒドロホルミル化反応流体中に存在する前記態様の何れか一つ。
19.脂肪族ジアルデヒドを製造するヒドロホルミル化方法が、約1:10〜100:1の範囲である気体状水素の一酸化炭素に対するH:COモル比で実施され、更に好ましいモル比が、約1:10〜約10:1である前記態様の何れか一つ。
20.脂肪族ジアルデヒドを製造するヒドロホルミル化方法が、約−25℃よりも高い、更に好ましくは約50℃よりも高いが、約200℃よりも低い、好ましくは約120℃よりも低い反応温度で実施される前記態様の何れか一つ。
21.脂肪族ジアルデヒドを製造するヒドロホルミル化方法が、約1psia(6.8kPa)〜約10,000psia(68.9MPa)、好ましくは約1psia(6.8kPa)〜約2,000psia(13,800kPa)よりも低い、更に好ましくは約1psia(6.8kPa)〜約500psia(3,450kPa)よりも低い範囲である、水素、一酸化炭素及びオレフィン性反応剤(不飽和カルボキシアルデヒド)を含む全気体圧力で実施される前記態様の何れか一つ。
22.脂肪族ジアルデヒドを製造するヒドロホルミル化方法が約1psia(6.8kPa)〜約1000psia(6,900kPa)、好ましくは約3psia(20.7kPa)〜約800psia(5,516kPa)の範囲である一酸化炭素分圧で実施され、他方、水素分圧が約5psia(34.5kPa)〜約500psia(3,450kPa)、好ましくは約10psia(68.0kPa)〜約300psia(2,070kPa)の範囲である前記態様の何れか一つ。
23.抽出工程(b)に於いて、好ましい抽出溶媒としての水が、任意的に、非水性極性溶媒、好ましくはC〜Cアルカノール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール及びブタノールとの組合せで使用される前記態様の何れか一つ。
24.抽出工程(b)が、抽出器への全供給物の重量基準で、約10重量%よりも多く、約20重量%以下を含んでなる水及び非水性極性溶媒(群)の量で実施される前記態様の何れか一つ。
25.抽出工程(b)が、抽出工程への全供給物の重量基準で、約20%よりも多く、更に好ましくは約50%よりも多く、約95%以下を含んでなる、水及び非水性極性溶媒(群)の量を使用して実施され、更に好ましくは、水レベルが、抽出器への全供給物の重量基準で、50重量%を超え、最も好ましくは、約80〜95重量%の範囲である前記態様の何れか一つ。
26.抽出工程(b)が1種又はそれ以上の非極性溶媒、例えば液体アルカン、シクロアルカン、アルケン、芳香族炭化水素及びこれらの混合物の存在下で実施され、その例示的種には、限定無しに、2,2−ジメチルプロパン、2,2−ジメチルブタン、ペンタン、イソプロピルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、イソ酪酸イソブチル、トリブチルヘプチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタン、シクロヘキサン、イソブチルベンゼン、n−ノニルベンゼン、n−オクチルベンゼン、p−キシレン、エチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、m−キシレン、トルエン,o−キシレン、デセン、ドデセン及びテトラデセンが含まれる前記態様の何れか一つ。
27.水素化が脂肪族ジカルボキシアルデヒドの1モル当量当たり水約4モル当量よりも多いか又はホルミル置換基の1モル当量当たり水約2モル当量よりも多い水の量を使用して実施される前記態様の何れか一つ。
28.水素化触媒が、固体固定床として、好ましくは沈殿した、ペレット化した、造形した若しくは押し出した粒子として供給されるか又はその代わりに、回分式反応器、流動床反応器、トリクルベッド反応器、単一若しくは複数通路反応器中で供給される前記態様の何れか一つ。
29.水素化触媒が、任意的に、担体又は支持体、例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、アルミノケイ酸塩、炭素に固定された、周期律表の第6、7、8、9、10、11及び12族、好ましくは第6、10及び11族、更に好ましくはクロム、ニッケル、銅、パラジウム、白金及びこれらの混合物から選択された1種又はそれ以上の金属を含んでなる前記態様の何れか一つ。
30.水素化触媒に於いて、担体又は支持体上への全触媒金属(群)の担持量が、約0.01重量%から約20重量%までの範囲である前記態様。
31.水素化触媒が、限定無しに、アルカリ金属及びアルカリ土類金属酸化物並びにアルカリ金属及びアルカリ土類金属水酸化物を含む、所望の脂肪族ジオールへの水素化反応を促進する及び/又は安定化する材料及び/又は安定剤を含んでなる前記態様の何れか一つ。
32.好ましい水素化触媒がアルミナ上に担持されたニッケルを含む前記態様の何れか一つ。
33.好ましい水素化触媒が、スルファクティブ水素化触媒、例えば第6、7、8、9、10、11及び12族硫化物、好ましくは硫化モリブデン、硫化タングステン及び硫化ニッケルを排除する前記態様の何れか一つ。
34.水素化に於いて、水素のカルボニル(ホルミル)基のモル数に対するモル比が、1.3:1よりも大きく、更に好ましくは約1.5:1よりも大きく、好ましくは、約10:1よりも小さく、更に好ましくは約5:1よりも小さく、なお更に好ましくは約3:1よりも小さい前記態様の何れか一つ。
35.水素化が、約40℃よりも高い、好ましくは約70℃よりも高い、約200℃よりも低い、好ましくは約150℃よりも低い温度で実施される、前記態様の何れか一つ。
36.水素化が、約3バール(300kPa)よりも高い、好ましくは約5バール(500kPa)よりも高い水素圧力で実施され、有利には、約50バール(5,000kPa)よりも低い、好ましくは約30バール(3,000kPa)よりも低い圧力で実施される、前記態様の何れか一つ。
37.水素化が、連続方式の運転で実施され、抽出方法からの少なくとも或る濃度の水キャリーオーバーを含有する液体脂肪族ジアルデヒド供給物の時間基準の液空間速度が、有利には、約0.01cm液体供給物/cm触媒/時間(h−1)〜約100h−1の範囲である前記態様の何れか一つ。
38.C〜C16脂肪族ジオールが、下記の式(VIII):
【0114】
【化17】

【0115】
(式中、各Rは、独立に、水素、ヒドロキシ及びC〜C一価ヒドロカルビル基、好ましくは水素及びC〜Cアルキル基から選択され、各Rは、独立に、水素、ヒドロキシ及びC〜Cヒドロカルビル基、好ましくは水素及びC〜Cアルキル基から選択され、nは、0〜約6、好ましくは0〜3、更に好ましくは2の整数であり、kは、0〜約6、好ましくは0〜3、更に好ましくは2の整数であり、n+kは2よりも大きく、そして各mは、独立に、0〜約3、好ましくは0又は1の整数であり、n又はkが0である場合、m個の炭素原子の2個の鎖は直接的に結合され、更に、R及びRは、任意的に、1個又はそれ以上の、実質的に不活性の置換基、例えばアルキル、アリール、アラルキル及びアルカリール及びヒドロキシによって置換されていてよく、上記の有機置換基は1〜約8個の炭素原子を含有する)
によって表される前記態様の何れか一つ。
39.C〜C16脂肪族ジオールが、シス/トランス−(1,3)−シクロヘキサンジメタノール及びシス/トランス−(1,4)−シクロヘキサンジメタノールの異性体混合物を含んでなる前記態様の何れか一つ。
40.水素化方法に於ける水の量が、水素化ゾーンへの全液体供給物の重量基準で、約15重量%よりも多く、なお更に好ましくは約20重量%又はそれ以上で、約95重量%よりも少ない、前記態様の何れか一つ。
41.水素化方法から得られる脂肪族ジオールの収率が10重量%よりも少ない量の水を使用する同様の方法に比較して、約1.5〜約2.0重量%程増加する前記態様の何れか一つ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又はそれ以上の脂肪族ジアルデヒドを、液相中で、水素化ゾーン内で水素化触媒の存在下で、水素化ゾーンへの全液体供給物の重量基準で、10重量%と同じか又はそれ以上の量の水の存在下に、1種又はそれ以上の対応する脂肪族ジオールを製造するのに十分な反応条件下で、水素と接触させることを含んでなる脂肪族ジオールへの脂肪族ジアルデヒドの水素化方法。
【請求項2】
1種又はそれ以上の脂肪族ジアルデヒドが、1種又はそれ以上のC〜C16脂環式ジカルボキシアルデヒドを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1種又はそれ以上のC〜C16脂環式ジカルボキシアルデヒドが、それぞれ、下記の式:
【化1】

(式中、各Rは、独立に、水素、ヒドロキシ及びC〜C一価ヒドロカルビル基から選択され、各Rは、独立に、水素、ヒドロキシ及びC〜C一価ヒドロカルビル基から選択され、各nは、0〜約6の整数であり、各kは、0〜約6の整数であり、n+kは2よりも大きく、そして各mは、独立に、0〜約3の整数であり、R、R、k、m、nは炭素原子の合計数が16を超えないように選択する)
によって表される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記1種又はそれ以上の脂肪族ジアルデヒドがシス−1,3−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、トランス−1,3−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、シス−1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、シス−1,3−シクロオクタンジカルボキシアルデヒド、トランス−1,3−シクロオクタンジカルボキシアルデヒド、シス−1,4−シクロオクタンジカルボキシアルデヒド、トランス−1,4−シクロオクタンジカルボキシアルデヒド、シス−1,5−シクロオクタンジカルボキシアルデヒド及びトランス−1,5−シクロオクタンジカルボキシアルデヒド並びにこれらの混合物から選択される請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記水素化触媒が、任意的に、担体又は支持体に担持された、周期律表の第6、7、8、9、10、11及び12族の1種又はそれ以上の金属並びにこれらの混合物から選択される請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記水素化触媒がクロム、ニッケル、銅、パラジウム、白金及びこれらの混合物から選択される請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記水素化触媒がアルミナ担体上に担持されたニッケルを含んでなる請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、約40℃よりも高く、約200℃よりも低い温度で、約3バール(300kPa)よりも高く、約50バール(5,000kPa)よりも低い水素圧力で実施される請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
脂肪族ジアルデヒド中のカルボニル(ホルミル)基に対する、水素のモル比が約1.3:1よりも大きく、約10:1よりも小さい請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
水の量が、水素化方法への全液体供給物基準で20重量%よりも多く、95重量%よりも少ない範囲である請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記脂肪族ジオールが脂肪族単環式ジオールである請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記脂肪族単環式ジオールが下記の式:
【化2】

(式中、各Rは、独立に、水素、ヒドロキシ及びC〜C一価ヒドロカルビル基から選択され、各Rは、独立に、水素、ヒドロキシ及びC〜C一価ヒドロカルビル基から選択され、nは0〜約6の整数であり、kは0〜約6の整数であり、n+kは2よりも大きく、そして各mは、独立に、0〜約3の整数であり、R、R、k、m、nは炭素原子の合計数が16を超えないように選択される)
によって表される請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記脂肪族ジオールがシス/トランス−(1,3)(1,4)−シクロヘキサンジメタノールの1種又はそれ以上の異性体を含んでなる請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
水素化ゾーンに供給される脂肪族ジアルデヒドのモル数に対する、水のモル数が4/1よりも大きい(又は水のモル数/ホルミル置換基のモル当量が2/1よりも大きい)請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
水素化方法から得られる脂肪族ジオールの収率が、10重量%よりも少ない量の水を使用する同様の方法に比較して、約1.5〜約2.0重量%増加する請求項1〜14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
(a)ヒドロホルミル化ゾーン内で、オレフィン性不飽和脂肪族アルデヒドを、一酸化炭素及び水素と、遷移金属−有機リン配位子錯体触媒及び任意的な遊離有機リン配位子の存在下に、1種又はそれ以上の脂肪族ジカルボキシアルデヒド、遷移金属−有機リン配位子錯体触媒及び任意的に遊離有機リン配位子を含んでなるヒドロホルミル化生成物組成物を製造するのに十分なヒドロホルミル化条件下で接触させる工程、
(b)前記ヒドロホルミル化生成物組成物を、抽出ゾーン内で、水及び任意的な非極性溶媒と、相分離により、遷移金属−有機リン配位子錯体触媒、任意的な遊離有機リン配位子及び任意的な非極性溶媒を含んでなる非極性相並びに水及び1種又はそれ以上の脂肪族ジカルボキシアルデヒドを含んでなる極性相を得るのに十分な条件下で混合する工程、
(c)水及び1種又はそれ以上の脂肪族ジアルデヒドを含んでなる抽出工程(b)からの極性相の少なくとも一部を、水の追加の共供給物と共に又はこれ無しで、水素化ゾーンへの全液体供給物の重量基準で10重量%又はそれ以上である水の量で、水素化ゾーンの中に供給し、そして液相中の脂肪族ジカルボキシアルデヒド(群)を、該水の存在下に且つ水素化触媒の存在下に、1種又はそれ以上の対応する脂肪族ジオールを製造するのに十分な水素化条件下で、水素によって水素化する工程
を含んでなる1種又はそれ以上の脂肪族ジオールの製造方法。
【請求項17】
抽出工程(b)を、抽出器への全供給物の重量基準で、10重量%よりも多く、約20重量%以下の量の水で実施する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
抽出工程(b)を、抽出器への全供給物の重量基準で、50%よりも多く、95%よりも少ない量の水で実施する請求項16に記載の方法。
【請求項19】
水素化ゾーンに供給される脂肪族ジカルボキシアルデヒド(群)のモル数に対する、水のモル数が4/1よりも大きい(又は水のモル数/ホルミル置換基のモル当量が2/1よりも大きい)請求項16〜18の何れか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−538075(P2010−538075A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524088(P2010−524088)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/073800
【国際公開番号】WO2009/035838
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】