説明

脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物

【課題】本発明は、衝撃強度、剛性、耐熱性に優れ、射出成形品等各種用途に好適に用いることができ、また、植物由来の成分を多く含む環境に優しい組成物を提供する。
【解決手段】脂肪族ジカルボン酸単位、脂肪族ジオール単位及びポリエーテルポリオール単位より構成される脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)と繊維(B)とを含む脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、十分な衝撃強度を有し、かつ剛性、耐熱性に優れ、繊維強化脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現代社会において、各種食品、薬品、雑貨用等の液状物や粉粒物、固形物の包装用資材、農業用資材、建築資材など幅広い用途で、紙、プラスチック、アルミ箔等が用いられている。特にプラスチックは強度、耐水性、成形性、透明性、コスト等において優れており、袋や容器として、多くの用途で使用されている。現在これらの用途に使用されているプラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等がある。しかしながら、上記プラスチックからなる成形品は、自然環境下においては生分解又は加水分解しないか、又は分解速度が極めて遅いために、使用後埋設処理された場合は土中に残存したり、投棄された場合は景観を損ねたりすることがある。また、焼却処理された場合でも、有害なガスを発生したり、焼却炉を傷めたりするなどの問題がある。
【0003】
そこで上述の問題を解決する手段として、生分解性を有する材料についての研究が数多くなされてきた。
代表的な生分解性を有する材料例としては、ポリ乳酸系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂がある。ところが、これらの樹脂は農業資材、包装材や日用品のような消費材としての実用化例は多数あるが、自動車部品、家電部品のような耐久材としての実用化例は少ない。家電部品や自動車部品として使用する場合には、この用途で広く使われているポリプロピレン樹脂、フィラー充填ポリプロピレン複合樹脂と比較して、ポリ乳酸系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂は衝撃強度、剛性、耐熱性が低いからである。
【0004】
これらの問題を解決する為に、生分解性を有し、十分に高分子量であり機械的物性に優れた脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体が開発された。(特許文献1)
しかしながら、依然として衝撃強度、剛性、耐熱性(荷重たわみ温度)等の実用可能な物性を満たすことができず、これらの物性を満たす生分解性樹脂又はその組成物が要望されている。
【特許文献1】特開2004−83882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、より高い衝撃強度、剛性、耐熱性を兼ね備えた脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物及びその成形体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体に種々の繊維を配合することにより、剛性、衝撃強度、耐熱性を同時に向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明の要旨は、脂肪族ジカルボン酸単位、脂肪族ジオール単位及びポリエーテルポリオール単位を構成単位として含む脂脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)と繊維(B)とを含む脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物、に存する。
【0007】
第2の要旨は、脂肪族ポリエステル(A)が更に脂肪族オキシカルボン酸単位を構成単位として含むことを特徴とする上記記載の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成
物、に存する。
第3の要旨は、繊維(B)が植物繊維、有機合成繊維、無機繊維、再生繊維よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記記載の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物、に存する。
【0008】
第4の要旨は、ポリ乳酸(C)を含有させることを特徴とする、上記記載の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物、に存する。
第5の要旨は、脂肪族ジカルボン酸単位及び脂肪族ジオール単位(ただし、ポリエーテルポリオール単位を除く)を必須単位とする脂肪族ポリエステル(D)を含有させることを特徴とする、上記記載の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物、に存する。
【0009】
第6の要旨は、上記記載の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物からなる成形体、に存する。
第7の要旨は、上記記載の成形体が射出成形して得られる成形体、に存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物は、より高い衝撃強度、剛性、耐熱性を兼ね備え、射出成形品等各種用途に好適に用いることができる。特に、自動車部品、家電部品の射出成形用途に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の組成物は、脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)に、繊維(B)、ポリ乳酸(C)、脂肪族ジカルボン酸単位及び脂肪族ジオール単位(ただし、ポリエーテルポリオール単位を除く)より構成される脂肪族ポリエステル(D)(以下、脂肪族ポリエステル(D)ともいう)を適宜選択し(但し(B)は必ず含まれる)混練したものであ
る。好ましくは、脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)と繊維(B)、より好ましくは、脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)と繊維(B)とポリ乳酸(C)、脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)と繊維(B)と脂肪族ポリエステル(D)、特に好ましくは、脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)と繊維(B)とポリ乳酸(C)と脂肪族ポリエステル(D)からなる組成物である。
【0012】
以下に各成分ついて詳細に説明する。
<脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)>
本発明において用いられる脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)とは、脂肪族ポリエステル部分とポリエーテル部分とを有するものである。
(1)脂肪族ポリエステル部分
脂肪族ポリエステル部分は、主として脂肪族ジオール単位及び脂肪族ジカルボン酸単位からなり、必要に応じて脂肪族オキシカルボン酸単位を有していても良い。
【0013】
(脂肪族ジカルボン酸単位)
本発明の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)に用いられる脂肪族ジカルボン酸単位としては、脂肪族ジカルボン酸及び/又はその誘導体から誘導されるものである。脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、ダイマー酸ならびにシクロヘキサンジカルボン酸等の、通常、炭素数が2以上40以下の鎖状或いは脂環式ジカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸の誘導体として、上記脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等の低級アルキルエステルや例えば無水コハク酸等の上記脂肪族ジカルボン酸の環状酸無水物も使用できる。これらは、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。これらの内、脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸、ダイマー酸またはこれらの混合物が好ましく、脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、アジピン酸及びコハク酸のメチルエステル、またはこれらの混合物が好ましい。これらの中でもコハク酸を主成分とするものがより好ましい。本発明でいう主成分とは、全ジカルボン酸単位に対して、通常50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上を示す。
【0014】
本発明のポリエステルは、好ましいポリエステルの製造方法の一態様として、後述するように、これらの脂肪族ジカルボン酸及びその酸無水物環状体を反応系から留去しながらポリエステルを製造する形態をとることができる。この場合、遊離の脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物環状体を生成させるためには、末端がカルボキシル基である方が有利であるため、上記のジカルボン酸成分としては脂肪族ジカルボン酸を用いるのが好ましい。具体的には、比較的分子量の小さい脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物環状体が減圧下での加熱により比較的容易に留去できる点から、アジピン酸及びコハク酸が好ましい。
【0015】
脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、アジピン酸及びコハク酸のメチルエステル、またはこれらの混合物が更に好ましく、特にコハク酸が好ましい。
これらのジカルボン酸は単独でも2種以上混合して使用することもできる。
また、上記の脂肪族ジカルボン酸及び/又はその誘導体の他に、芳香族ジカルボン酸又はその誘導体を併用してもよい。芳香族ジカルボン酸の具体的な例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びジフェニルジカルボン酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、前記した芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物として上記脂肪族カルボン酸に加えて使用してもよい。この内、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。
【0016】
これらの他のジカルボン酸の使用量は、ジカルボン酸全量中、通常、50モル%以下、好ましくは30モル%以下、より好ましくは、10モル%以下である。
本発明において、これらのジカルボン酸は、バイオマス資源から誘導されるものでもよい。
バイオマス資源としては、例えば、木材、稲わら、籾殻、米ぬか、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、そば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣、水産物残渣、家畜排泄物、下水汚泥、食品廃棄物等が挙げられる。この中でも木材、稲わら、籾殻、米ぬか、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、そば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣等の植物資源が好ましく、より好ましくは、木材、稲わら、籾殻、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、芋、油脂、古紙、製紙残渣であり、最も好ましくはとうもろこし、さとうきび、キャッサバ、サゴヤシである。これらのバイオマス資源は、一般に、窒素元素やNa、K、Mg、Ca等の多くのアルカリ金属、アルカリ土類金属を含有する。
【0017】
そしてこれらのバイオマス資源は、特に限定はされないが、例えば酸やアルカリ等の化学処理、微生物を用いた生物学的処理、物理的処理等の公知の前処理・糖化の工程を経て炭素源へ誘導される。その工程には、例えば、通常、特に限定はされないが、バイオマス資源をチップ化する、削る、擦り潰す等の前処理による微細化工程が含まれる。必要に応じて、更にグラインダーやミルで粉砕工程が含まれる。こうして微細化されたバイオマス資源は、更に前処理・糖化の工程を経て炭素源へ誘導されるが、その具体的な方法としては、硫酸、硝酸、塩酸、燐酸等の強酸で酸処理、アルカリ処理、アンモニア凍結蒸煮爆砕法、溶媒抽出、超臨界流体処理、酸化剤処理等の化学的方法や、微粉砕、蒸煮爆砕法、マ
イクロ波処理、電子線照射等の物理的方法、微生物や酵素処理による加水分解等生物学的処理が挙げられる。
【0018】
上記のバイオマス資源から誘導される炭素源としては、通常、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のヘキソース、アラビノース、キシロース、リボース、キシルロース、リブロース等のペントース、ペントサン、サッカロース、澱粉、セルロース等の2糖・多糖類、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノクチン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、セラコレン酸等の油脂、グリセリン、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が用いられ、このうちグルコース、フルクトース、キシロースが好ましく、特にグルコースが好ましい。より広義の植物資源由来の炭素源としては、紙の主成分であるセルロースが好ましい。
【0019】
これらの炭素源を用いて、微生物変換による発酵法や加水分解・脱水反応・水和反応・酸化反応等の反応工程を含む化学変換法ならびにこれらの発酵法と化学変換法の組み合わせによりジカルボン酸が合成される。これらの中でも微生物変換による発酵法が好ましい。
【0020】
微生物変換に用いる微生物としては、ジカルボン酸の生産能を有すれば特に限定されないが、例えば、Anaerobiospirillum属 (米国特許第5143833
号明細書)等の嫌気性細菌、Actinobacillus属(米国特許第5504004号明細書)、Escherichia属(米国特許第5770435号明細書)等の通性嫌気性細菌、Corynebacterium属(特開平11−113588号公報)などの好気性細菌、Bacillus属、Rizobium属、Brevibacterium属、Arthrobacter属に属する好気性細菌(特開2003−235593号公報)、Bacteroidesruminicola、Bacteroides amylophilus等の嫌気性ルーメン細菌、E.coli(J.Bacteriol.,57:147−158)又はE.coliの株の変異体(特表2000−500333号公報、米国特許第6159738号明細書)を用いることができる。
【0021】
より具体的には、本発明に使用できる細菌の親株は、コリネ型細菌(coryneform bacterium)、バチルス属細菌、又はリゾビウム属細菌が好ましく、コリ
ネ型細菌がより好ましい。これらの菌は、微生物変換により琥珀酸の生産能を有する。
コリネ型細菌としては、コリネバクテリウム属に属する微生物、ブレビバクテリウム属に属する微生物又はアースロバクター属に属する微生物が挙げられ、このうち好ましくは、コリネバクテリウム属又はブレビバクテリウム属に属するものが挙げられ、更に好ましくは、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)又はブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)に属する微生物が挙げられる。
【0022】
上記細菌の親株の特に好ましい具体例としては、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233(FERM BP−1497)、同MJ−233 AB−41(FERM BP−1498)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC6872、コリネバクテリウム・グルタミカム ATCC31831、及びブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869等が挙げられる。なお、ブレビバクテリウム・フラバムは、現在、コリネバクテリウム・グルタミカムに分類される場合もあることから(Lielbl
, W., Ehrmann, M., Ludwig, W. and Schleifer
, K. H., International Journal of Systematic Bacteriology, 1991, vol. 41, p255−260)、本
発明においては、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233株、及びその変異株MJ−233 AB−41株はそれぞれ、コリネバクテリウム・グルタミカムMJ−233株及びMJ−233 AB−41株と同一の株であるものとする。
【0023】
なお、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233は、1975年4月28日に、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現独立法人 産業技術総合研究所 特許寄託
センター)(〒305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号FERM P−3068として寄託され、1981年5月1日にブダペスト条約に
基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP−1497が付与されている。
【0024】
微生物変換における反応温度、圧力等の反応条件は、選択される菌体、カビなど微生物の活性に依存することになるが、ジカルボン酸を得るための好適な条件を各々の場合に応じて選択すればよい。
微生物変換においては、pHが低くなると微生物の代謝活性が低くなったり、或いは微生物が活動を停止するようになり、製造歩留まりが悪化したり、微生物が死滅するため、通常には中和剤を使用する。通常はpHセンサーによって反応系内のpHを計測し、所定のpH範囲となるように中和剤の添加によりpHを調節する。中和剤の添加方法については特に制限はなく、連続添加であっても間欠添加であってもよい。
【0025】
中和剤としてはアンモニア、炭酸アンモニウム、尿素、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩が挙げられる。好ましくはアンモニア、炭酸アンモニウム、尿素である。なお上記アルカリ(土類)金属の水酸化物としてはNaOH、KOH、Ca(OH)、Mg(OH)等、或いはこれらの混合物などが挙げられ、アルカリ(土類)金属の炭酸塩としては、NaCO、KCO、CaCO、MgCO、NaKCO等、或いはこれらの混合物などが挙げられる。
【0026】
pH値は、用いる菌体、カビ等の微生物の種類に応じて、その活性が最も有効に発揮される範囲に調整されるが、一般的には、pH4〜10、好ましくは6〜9程度の範囲である。
発酵法を含む製造方法により得られるジカルボン酸の精製方法は電気透析を用いる方法、イオン交換樹脂を用いる方法、塩交換法等が知られている。例えばジカルボン酸塩を分離し純粋な酸を生成する電気透析および水分解工程を組み合わせて用いることによって製造し、更なる精製を、一連のイオン交換カラムに生成物ストリームを通すことによって達成しても良いし、ジカルボン酸の過飽和溶液に変換するための水分解電気透析を用いても良い(米国特許第5,034,105号明細書)。また、塩交換法は例えばジカルボン酸のアンモニア塩を硫酸水素アンモニウム及び/または硫酸と十分に低いpHで混合して反応させジカルボン酸及び硫酸アンモニウムを生成させても良い(特表2001−514900号公報)。イオン交換樹脂を用いる具体的方法としては、ジカルボン酸の溶液から遠心分離、濾過等により菌体等の固形分を除去した後、イオン交換樹脂で脱塩し、その溶液から結晶化或いはカラムクロマトグラフィーによりジカルボン酸を分離精製する方法が挙げられる。精製方法はどのような方法を用いても良い。特に、コスト、効率の点でイオン交換法又は塩交換法が好ましく、工業的生産性の点で塩交換法が特に好ましい。
【0027】
精製によりジカルボン酸中に含まれる不純物の窒素化合物や金属カチオンの量を減らすことが、通常、実用的な重合体を得るために必要である。
上述の方法にてバイオマス資源から誘導されたジカルボン酸には、バイオマス資源由来
、発酵処理ならびに酸による中和工程を含む精製処理に起因して不純物として窒素元素が含まれてくる。具体的には、アミノ酸、たんぱく質、アンモニウム塩、尿素、発酵菌由来等の窒素元素が含まれてくる。
【0028】
上述の方法にてバイオマス資源から誘導されたジカルボン酸中に含まれる窒素原子含有量は、ジカルボン酸中に、原子換算として、上限は通常2000ppm以下、好ましくは、1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下である。下限は通常、0.05ppm以上、好ましくは、精製工程の経済性の理由から0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、特に好ましくは10ppm以上である。
【0029】
窒素原子含有量は、元素分析法等の公知の方法や、アミノ酸分析計を用い、生体アミノ酸分離条件にて試料中のアミノ酸やアンモニアを分離し、これらをニンヒドリン発色させて検出する方法により測定される値である。
窒素原子含有量が上記の範囲にあるジカルボン酸を用いることで、得られるポリエステルの着色の減少に有利になる。また、ポリエステルの重合反応の遅延化を抑制する効果も併せ持つ。
【0030】
ジカルボン酸中に含まれる不純物のアンモニアの量を効率的に減らす具体的な方法として、目的とするジカルボン酸よりもpHの高い弱酸性の有機酸を使用した反応晶析方法が挙げられる。
また、発酵法により製造したジカルボン酸を用いる場合には、酸による中和工程を含む精製処理により硫黄原子が含まれてくる場合がある。具体的に、硫黄原子が含有される不純物としては、硫酸、硫酸塩、亜硫酸、有機スルホン酸、有機スルホン酸塩等が挙げられる。
【0031】
ジカルボン酸中に含まれる硫黄原子含有量は、ジカルボン酸中に、原子換算として、上限は通常100ppm以下、好ましくは、20ppm以下、より好ましくは、上限が5ppm以下、最も好ましくは、上限は0.5ppm以下である。一方、下限は通常、0.05ppm以上、好ましくは、0.1ppm以上である。多すぎると、重合反応が遅延化したり、ポリマーの安定性が低下する傾向がある。一方、少なすぎる系は、好ましい形態であるが、精製工程が煩雑となり経済的に不利になる。硫黄原子含有量は、公知の元素分析法により測定される値である。
【0032】
本発明において、上述の方法で得られたバイオマス資源由来のジカルボン酸をポリエステル原料として使用するにあたり、重合系に連結される該ジカルボン酸を貯蔵するタンク内の酸素濃度を一定値以下に制御してもよい。これによりポリエステルの不純物である窒素源の酸化反応による着色を防止することができる。
酸素濃度を制御し原料を貯蔵するためには、通常タンクが用いられる。しかし、タンク以外でも酸素濃度を制御できる装置であれば特に限定されない。貯蔵タンクの種類は具体的には限定は無く、公知の金属製もしくはこれらの内面にガラス、樹脂などのライニングを施したもの、さらにはガラス製、樹脂製の容器などが用いられる。強度の面などから金属製もしくはそれらにライニングを施したものが好んで用いられる。金属製タンクの材としては、公知のものが使用され、具体的には、炭素鋼、フェライト系ステンレス鋼、SUS410等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS310、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼、クラッド鋼、鋳鉄、銅、銅合金、アルミニウム、インコネル、ハステロイ、チタン等が挙げられる。
【0033】
ジカルボン酸の貯蔵タンク内の酸素濃度は、貯蔵タンク全体積に対して、下限は特に限定されないが、通常0.00001%以上、好ましくは0.01%以上である。一方、上
限が16%以下、好ましくは14%以下、より好ましくは、12%以下である。酸素濃度が低すぎる場合には、設備や管理工程が煩雑になり経済的に不利であり、一方、高すぎる場合には、製造されるポリマーの着色が増加する傾向がある。
【0034】
ジカルボン酸の貯蔵タンク内の温度は、下限が通常−50℃以上、好ましくは0℃以上である。一方、上限が通常200℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは、50℃以下であるが、温度管理の必要がない理由から室温で貯蔵する方法が最も好ましい。温度が低すぎる場合には、貯蔵コストが増大する傾向があり、また、高すぎる場合には、カルボン酸の脱水反応等が併発する傾向がある。
【0035】
ジカルボン酸の貯蔵タンク内の湿度は、貯蔵タンク全体積に対して、下限は特に限定されないが、通常0.0001%以上、好ましくは 0.001%以上であり、より好ましくは、0.01%以上、最も好ましくは、0.1%以上であり、上限が80%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは、40%以下である。湿度が低すぎる場合には、管理工程が煩雑で経済的に不利になる傾向があり、また、高すぎる場合には、貯蔵タンクや配管へのジカルボン酸の付着、ジカルボン酸のブロック化、貯蔵タンクが金属製の場合にはタンクの腐食等が問題になる傾向がある。
【0036】
ジカルボン酸の貯蔵タンク内の圧力は、通常、大気圧(常圧)である。
(ジオール単位)
本発明においてジオール単位とは、芳香族ジオール及び/又は脂肪族ジオールから誘導されるものであり、公知の化合物を用いることができるが、脂肪族ジオールを使用するのが好ましい。脂肪族ジオールとは、2個のOH基を有する脂肪族及び脂環式化合物であれば特に制限はされないが、炭素数の下限値が2以上であり、上限値が通常10以下、好ましくは6以下の脂肪族ジオールが挙げられる。
【0037】
脂肪族ジオールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。
この内、エチレングリコール、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオール、及び1,4−シクロヘキサンジメタノ−ルが好ましく、その中でも、エチレングリコール及び1,4−ブタンジオ−ル、及びこれらの混合物が好ましく、更には、1,4−ブタンジオ−ルが主成分とするもの、または、1,4−ブタンジオ−ルが特に好ましい。本発明でいう主成分とは、全ジオール単位に対して、通常50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上を示す。
【0038】
また、全ジオール成分中の脂肪族ジオールの割合は、全ジオール成分中、通常、70モル%以上、好ましくは80モル%以上である。
芳香族ジオールとしては、2個のOH基を有する芳香族化合物であれば、特に制限はされないが、炭素数の下限値が6以上であり、上限値が通常15以下の芳香族ジオールが挙げられる。芳香族ジオールの具体例としては、例えば、ヒドロキノン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、4,4‘−ジヒドロキシジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン及びビス(p−ヒドロキシフェニル)―2,2―プロパン等が挙げられる。本発明において、ジオール全量中、芳香族ジオールの含有量は、通常、30モル%以下、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。
【0039】
本発明において、これらのジオールは、バイオマス資源から誘導されたものを用いてもよい。具体的には、ジオール化合物はグルコース等の炭素源から発酵法により直接製造してもよいし、発酵法により得られたジカルボン酸、ジカルボン酸無水物、環状エーテルを
化学反応によりジオール化合物に変換しても良い。
【0040】
例えば1,4−ブタンジオールをコハク酸、コハク酸無水物、コハク酸エステル、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸エステル、テトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン等から化学合成により1,4−ブタンジオールを製造しても良いし、発酵法により得られた1,3−ブタジエンから1,4−ブタンジオールを製造してもよい。この中でもコハク酸を還元触媒により水添して1,4−ブタンジオールを得る方法が効率的で好ましい。
【0041】
コハク酸を水添する触媒の例として、Pd、Ru、Re、Rh、Ni、Cu、Co及びその化合物が挙げられ、より具体的には、Pd/Ag/Re、Ru/Ni/Co/ZnO、Cu/Zn酸化物、Cu/Zn/Cr酸化物、Ru/Re、Re/C、Ru/Sn、Ru/Pt/Sn、Pt/Re/アルカリ、Pt/Re、Pd/Co/Re、Cu/Si、Cu/Cr/Mn、ReO/CuO/ZnO、CuO/CrO、Pd/Re、Ni/Co、Pd/CuO/CrO、リン酸Ru、Ni/Co、Co/Ru/Mn、Cu/Pd/KOH、Cu/Cr/Znが挙げられる。この中でもRu/Sn又はRu/Pt/Snが触媒活性の点で好ましい。
【0042】
更に、バイオマス資源から公知の有機化学触媒反応の組み合わせによりジオール化合物を製造する方法も積極的に用いられる。例えば、バイオマス資源としてペントースを利用する場合には公知の脱水反応、触媒反応の組み合わせで容易にブタンジオール等のジオールを製造できる。
バイオマス資源由来から誘導されたジオールには、バイオマス資源由来、発酵処理ならびに酸による中和工程を含む精製処理に起因して不純物として窒素原子が含まれてくる場合がある。この場合、具体的には、アミノ酸、蛋白質、アンモニア、尿素、発酵菌由来の窒素原子が含まれてくる。
【0043】
発酵法により製造したジオール中に含まれる窒素原子含有量は、ジオール中に、原子換算にして、上限は通常2000ppm以下、好ましくは、1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下である。下限は特に制限されないが、通常、0.01ppm以上、好ましくは、精製工程の経済性の理由から0.1ppm以上である。
【0044】
発酵法により製造したジオールを用いる場合には、酸による中和工程を含む精製処理により硫黄原子が含まれてくる場合がある。この場合、具体的に、硫黄原子が含有される不純物としては、硫酸、亜硫酸、有機スルホン酸塩等が挙げられる。
ジオール中に含まれる硫黄原子含有量は、ジオール中に、原子換算にして、上限は通常100ppm以下、好ましくは、10ppm以下、より好ましくは、上限が5ppm以下、最も好ましくは、上限は0.5ppm以下である。一方、下限は特に制限されないが、通常、0.001ppm以上、好ましくは、0.01ppm以上、より好ましくは、0.1ppm以上である。多すぎると、重合反応が遅延化したり、製造するポリマーの安定性が低下する傾向がある。一方、硫黄原子含有量が少ない程、好ましい形態であるが、精製工程が煩雑となり経済的に不利になる。硫黄原子含有量は、公知の元素分析法により測定される値である。
【0045】
本発明において、上述の方法で得られたバイオマス資源由来のジオールをポリエステル原料として使用するにあたり、上記不純物に起因するポリエステルの着色を抑制するため、重合系に連結されるジオールを貯蔵するタンク内の酸素濃度や温度を制御してもよい。この制御により、不純物により促進されるジオールの酸化反応が抑制され、不純物自身の着色やジオール酸化生成物によるポリエステルの着色を防止することができる。
【0046】
酸素濃度を制御し原料を貯蔵するためには、通常タンクが用いられる。しかし、タンク以外でも酸素濃度を制御できる装置であれば特に限定されない。貯蔵タンクの種類は具体的には限定は無く、公知の金属製もしくはこれらの内面にガラス、樹脂などのライニングを施したもの、さらにはガラス製、樹脂製の容器などが用いられる。強度の面などから金属製もしくはそれらにライニングを施したものが好んで用いられる。金属製タンクの材としては、公知のものが使用され、具体的には、炭素鋼、フェライト系ステンレス鋼、SUS410等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS310、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼、クラッド鋼、鋳鉄、銅、銅合金、アルミニウム、インコネル、ハステロイ、チタン等が挙げられる。
【0047】
ジオールの貯蔵タンク内の酸素濃度は、貯蔵タンク全体積に対して、下限は特に限定されないが、通常0.00001%以上、好ましくは 0.0001%以上であり、より好ましくは、0.001%以上、最も好ましくは、0.01%以上であり、上限が通常10%以下、好ましくは 5%以下、より好ましくは、1%以下、最も好ましくは、0.1%以下である。酸素濃度が低すぎる場合には、管理工程が煩雑となり経済的に不利になる傾向があり、また、高すぎる場合には、ジオールの酸化反応生成物によるポリマーの着色が増大する傾向がある。
【0048】
ジオールの貯蔵タンク内の貯蔵温度は、下限が通常15℃以上、好ましくは 30℃以上であり、より好ましくは、50℃以上、最も好ましくは、100℃以上であり、上限が230 ℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは、180℃以下、最も好ましくは、160℃以下である。温度が低すぎる場合には、ポリエステル製造時の昇温に時間を要し、ポリエステル製造が経済的に不利になる傾向があるばかりかジオールの種類によっては固化してしまう場合がある。一方、高すぎる場合には、ジオールの気化により高圧対応の貯蔵設備が必要となり経済的に不利になるばかりかジオールの劣化が増大する傾向がある。
【0049】
ジオールの貯蔵タンク内の圧力は、通常大気圧(常圧)である。圧力が低すぎたり、高すぎる場合には、管理設備が煩雑になり経済的に不利となる。
(2)ポリエーテル部分
脂肪族ポリエステル(A)の必須構成要件であるポリエーテル部分を構成するポリエーテルポリオール単位を下記式(1)で示す。
【0050】
【化1】

【0051】
式(1)中、Rは水素原子または通常、炭素数が1以上5のアルキル基であり、Rの具体例及び好ましい例としては、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基及びイソブチル基等が挙げられる。この内、水素及びメチル基が好ましく、最も好ましくは水素である。
式(1)のポリエーテルポリオールを構成するポリエーテルポリオール成分としては、下記式(2)ポリエーテルポリオール成分が挙げられる。
【0052】
【化2】

【0053】
式(2)中、R1は水素原子または通常、炭素数が1以上5のアルキル基であり、R1の具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基及びイソブチル基等が挙げられる。この内、水素及びメチル基が好ましく、最も好ましくは水素である。またR2及びR3は、それぞれ独立に水素又は有機基を示し、少なくとも一つは水素である。ここで有機基としては、通常、炭素数が1以上5のものであり、有機基の例としては、アルキル基、グリシジル基、エポキシキ基及びアシル基が挙げられる。好ましいR2及びR3としては、水素、メチル基、エチル基及びグリシジル基が、反応性及び入手のし易さから水素及びメチル基が最も好ましい。これらのポリエーテル成分は、単独でも、2種以上を混合して使用することができる。
【0054】
より具体的には、ポリエーテル単位として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ1,3−プロパンジオール及びポリテトラメチレングリコール、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどが挙げられ、好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ1,3−プロパンジオール及びポリテトラメチレングリコールであり、より好ましくは、ポリ1,3−プロパンジオール及びポリテトラメチレングリコールであり、特に好ましくは、ポリテトラメチレングリコール単位、又は、ポリテトラメチレングリコール単位を主として含む単位である。
【0055】
式(1)中および式(2)中のmは1以上10以下の整数であり、好ましくは6以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは、3以下、最も好ましくは3である。また、nは4以上1000以下の整数であり、好ましい下限は10以上、より好ましい下限は20以上、好ましい上限は200以下、より好ましい上限は50以下である。
ポリエーテルポリオールのOH価は、通常10以上、400以下、好ましくは20以上200以下、より好ましくは30以上150以下である。この値が少なすぎると、反応する末端OHが少なくなるのでポリエステルエーテルの高分子量化が困難になる傾向があり、多すぎると、ポリエーテルの分子量が小さいため伸びや弾性率等の機械物性の改良効果が小さく傾向がある。
【0056】
また、数平均分子量は、通常200以上、10000以下、好ましくは 600以上 6000以下、より好ましくは800以上3000以下である。この値が少なすぎると、ポリエーテルの分子量が小さいため伸びや弾性率等の機械物性の改良効果が小さくなる傾向があり、多すぎると、反応する末端OHが少なくなるのでポリエステルエーテルの高分子量化が困難になる傾向がある。
【0057】
好ましいポリエーテル成分としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ1,3−プロパンジオール及びポリテトラメチレングリコールがあり、また、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどの環状エーテルを反応させて得られるランダム共重合体又はブロック共重合体から選択される少なくとも一つである。これらは、単独でも、2種以上を混合して使用することもできる。また、バイオマス資源から製造されるポリエーテルポリオール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールを用いてもよいし、具体的にはポリテトラメチレングリコールやポリトリメチレングリコール等を用いてもよい。
ポリエーテル部分の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体に対する重量割合は、0
.1〜90重量%であり、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、最も好ましくは20%以上、また好ましい上限値は、80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。最も好ましくは50重量%以下である。ポリエーテル部分の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体に対する重量割合が0.1重量%未満であると機械物性改良効果が小さく、90重量%を超えると、耐熱性が低下し、成形性の点で好ましくない。
【0058】
上述のポリエーテルポリオールは、公知の技術で製造することができ、特に限定されないが、市販のものをそのまま用いることもできる。
ポリエステルポリエーテル共重合体(A)の製造方法は、公知の技術で製造することができ、特に限定されないが、例えば、特開2004−83882号公報に記載されているような製法を用いればよい。
(3)その他の共重合成分
本発明においては、上記のポリエステルポリエーテル共重合体(A)又は下記に示す脂肪族ポリエステル(D)に下記の示すような多官能化合物及び/又は化合物を含有させても良い。
(多官能化合物)
ポリエステルポリエーテル共重合体(A)又は下記に示す脂肪族ポリエステル(D)に多官能化合物を含有させる場合、具体的には、2官能のオキシカルボン酸や、架橋構造を形成するために3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸及び/又はその無水物並びに3官能以上のオキシカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の多官能化合物が挙げられる。これらの共重合成分の中では、高重合度のポリエステルが容易に製造できる傾向があるため、特に2官能及び/又は3官能以上のオキシカルボン酸が好適に使用される。その中でも、3官能以上のオキシカルボン酸の使用は、後述する鎖延長剤を使用することなく、極少量で容易に高重合度のポリエステルを製造できるのでもっとも好ましい方法である。
【0059】
2官能のオキシカルボン酸としては、具体的には、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、カプロラクトン等が挙げられるが、これらはオキシカルボン酸のエステルやラクトン、或いはオキシカルボン酸重合体等の誘導体であっても良い。また、これらオキシカルボン酸は単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体、またはラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体、または水溶液であってもよい。これらの中では、入手の容易な乳酸またはグリコール酸が特に好ましい。形態は、30〜95%の水溶液のものが容易に入手することができるので好ましい。高重合度のポリエステルを容易に製造する目的で2官能のオキシカルボン酸を共重合成分として使用する場合、その効果が発現する使用量の下限としては、通常、原料モノマーに対して通常、0.02モル%以上、好ましくは0.5モル%以上、より好ましくは1.0モル%以上である。一方、使用量の上限は、通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。上記の2官能のオキシカルボン酸単位の量は、ゲルの発生原因となるため通常、ポリエステルポリエーテル共重合体(A)又は下記に示す脂肪族ポリエステル(D)を構成する全単量体単位100モル%に対して、上限値が通常、50モル%以下、好ましくは30モル%以下、更に好ましくは、20モル%以下、特に好ましくは10モル%以下である。下限は、0.1モル%、好ましくは1モル%、より好ましくは、3モル%、特に好ましくは、5モル%である。
【0060】
3官能以上の多価アルコールとしては、具体的には、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。
3官能以上の多価カルボン酸またはその無水物としては、具体的には、プロパントリカルボン酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタテトラカルボン酸無水物等が挙げられ、単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。
【0061】
3官能以上のオキシカルボン酸としては、具体的には、リンゴ酸、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキシメチルグルタル酸、酒石酸、クエン酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸等が挙げられ、単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。その中でも、入手のし易さから、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸ならびにその混合物がより好ましく、特にポリエステルの熱安定化性を向上させる理由から、リンゴ酸、クエン酸ならびにその混合物が特に好ましい。
【0062】
上記の3官能以上の多官能化合物単位の量は、ゲルの発生原因となるため通常、ポリエステルポリエーテル共重合体(A)又は下記に示す脂肪族ポリエステル(D)を構成する全単量体単位100モル%に対して、上限値が通常、5モル%以下、好ましくは1モル%以下、更に好ましくは、0.50モル%以下、特に好ましくは0.3モル%以下である。一方、高重合度のポリエステルポリエーテル共重合体(A)又は下記に示す脂肪族ポリエステル(D)を容易に製造する目的で3官能以上の化合物を共重合成分として使用する場合、その効果が発現する3官能以上の化合物単位の、ポリエステルを構成する全単量体単位に対する量の下限値としては、通常、0.0001モル%以上、好ましくは、0.001モル%以上、より好ましくは、0.005モル%以上、特に好ましくは0.01モル%以上である。
【0063】
(鎖延長剤)
本発明のポリエステルポリエーテル共重合体(A)又は下記に示す脂肪族ポリエステル(D)は、カーボネート化合物やジイソシアネート化合物等の鎖延長剤を使用することもできる。
その量は、通常、ポリエステルポリエーテル共重合体(A)又は下記に示す脂肪族ポリエステル(D)を構成する全単量体単位に対し、カーボネート結合ならびにウレタン結合が10モル%以下である。しかしながら、本発明のポリエステルを生分解性樹脂として使用する場合には、ジイソシアネートやカーボネート結合が存在すると、生分解性を阻害する可能性があるため、その使用量は、ポリエステルを構成する全単量体単位に対し、カーボネート結合が1モル%未満、好ましくは、0.5モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下であり、ウレタン結合が、0.06モル%未満、好ましくは0.01モル%以下、より好ましくは0.001モル%以下である。
【0064】
カーボネート化合物としては、具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジアミルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが例示される。その他、フェノール類、アルコール類のようなヒドロキシ化合物から誘導される、同種、または異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物が使用可能である。
【0065】
ジイソシアネート化合物としては、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、
2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合体、ジ
フェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の公知のジイソシアネートなどが例示される。
【0066】
また、その他の鎖延長剤として、ジオキサゾリン、珪酸エステルなどを使用してもよい。 珪酸エステルとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジヒドロキシラン等が例示される。
珪酸エステルは、環境保全ならびに安全性の面の理由からは、特にその使用量に制限はされないが、操作が煩雑になったり、重合速度に影響を与える可能性があるため、その使用量は少ない方が良い場合がある。従って、この含有量は、ポリエステルを構成する全単量体単位に対して、0.1 モル%以下とするのが好ましく、10 -5 モル%以下とする
のが更に好ましい。
【0067】
本発明においては実質上鎖延長剤を含有しないポリエステルポリエーテル共重合体(A)又は下記に示す脂肪族ポリエステル(D)が最も好ましい。但し、溶融テンションを高めるために、毒性の低い化合物を添加する限り、少量のパーオキサイドを添加してもよい。
また本発明においては、ポリエステル末端基をカルボジイミド、エポキシ化合物、単官能性のアルコール又はカルボン酸で封止しても良い。
【0068】
<ポリエステルポリエーテル共重合体(A)の製造方法>
本発明のポリエステルポリエーテル共重合体(A)の製造方法は、公知の方法が採用できる。また、この際の重縮合反応は、従来から採用されている適切な条件を設定することができ、特に制限されない。脂肪族ジオールの使用量は、脂肪族ジカルボン酸100モルに対し、実質的に等モルであるが、一般には、エステル化中の留出があることから、1〜20モル%過剰に用いられる。脂肪族オキシカルボン酸を添加する場合は、脂肪族ジカルボン酸100重量部に対し0.1〜100重量部の割合で添加して重縮合反応を行う。0.1重量部未満であると添加効果が表れず、100重量部を超えると結晶性が失われ成形上好ましくなく、耐熱性、機械的特性などが不十分である。好ましい割合は、1.0重量部以上、より好ましくは2.0重量部以上が、また、好ましい上限値は、50重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。
【0069】
脂肪族オキシカルボン酸を添加する場合、脂肪族オキシカルボン酸の添加時期及び方法は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、例えば、(1) あらかじめ触媒を脂肪族
オキシカルボン酸溶液に溶解させた状態で添加する方法、(2) 原料仕込み時触媒を添
加すると同時に添加する方法、などが挙げられる。
本発明の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体を製造する際の温度、時間及び圧力などの条件は、温度が150〜260℃、好ましくは180〜230℃の範囲で選ぶのがよく、重合時間は2時間以上、好ましくは4〜15時間の範囲で選ぶのがよい。減圧度は1.33×10Pa以下、より好ましくは0.27×10Pa以下で選ぶのがよい。
【0070】
本発明の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体の組成比は、脂肪族ジオールのヒドロキシル基とポリエーテル末端ヒドロキシル基の合計量と脂肪族ジカルボン酸のカルボキシル基量のモル比が、実質的に等しいことが必要である。
本発明の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体は、重合触媒の存在下で製造される。触媒としては、ゲルマニウム化合物が好適である。ゲルマニウム化合物としては、特に制限されるものではなく、酸化ゲルマニウム及びテトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物、塩化ゲルマニウムなどの無機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム及びテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特には、酸化ゲルマニウムが好適である。また、本発明の目的を損なわない限り、他の触媒の併用を妨げない。
【0071】
触媒の使用量は、使用するモノマー量に対して0.001〜3重量%、より好ましくは0.005〜1.5重量%である。触媒の添加時期は、重縮合以前であれば特に限定され
ないが、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。原料仕込み時に乳酸及び/又はグリコール酸等の脂肪族オキシカルボン酸と同時に添加するか、または脂肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して添加しても良い。
【0072】
本発明において用いられるポリエステルポリエーテル共重合体(A)の還元粘度ηsp/Cは、下限が、通常1.0以上、好ましくは1.5以上であり、上限が、通常4.0以下、好ましくは3.5以下である。還元粘度が1.0以下では十分な機械的物性が得られず、また還元粘度が4.0以上は成型時の流動性が低下して使用が困難である。
<繊維(B)>
本発明に使用される補強用繊維の種類としては、木材繊維、茎幹繊維、葉脈繊維、靱皮繊維、種子繊維等から得られる任意の植物繊維、ナイロン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリ乳酸繊維、ポリアリレート、ビニロン等の有機合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維、セルロース系繊維等の再生繊維が使用でき、これら単独あるいは複合して用いることができる。この中でも、植物繊維、有機合成繊維、再生繊維等が好ましく、植物繊維、有機合成繊維等がより好ましく、有機合成繊維等が、加工性、繊維の均質性、物性補強効果のバランス等の理由から特に好ましい。
【0073】
表面処理剤、集束剤の種類、量などについては通常用いられているものと同じであれば使用できる。なお、繊維の太さは100μm以下、望ましくは60μm以下、より望ましくは40μm以下である。繊維強化樹脂組成物中の補強用繊維の配合量は特に制限されるものではないが、一般的にいって使用目的、樹脂の種類、繊維の種類等により若干の差はあるが、1重量%から60重量%である。望ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40%である。
【0074】
繊維(B)を脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)に混練する場合には、脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)の重量に対して、通常、1重量%〜200重量%、好ましくは、3重量%〜150重量%、より好ましくは、5重量%〜100重量%、特に好ましくは、10重量%〜65重量%の組成割合で配合する。
<ポリ乳酸(C)>
ポリ乳酸(C)の合成方法は、特に限定されるものではなく、通常、L−乳酸および/またはD−乳酸を原料として一旦環状2量体であるラクチドを生成せしめ、その後開環重合を行う2段階のラクチド法や、L−乳酸および/またはD−乳酸を原料として溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法が用いられる。
【0075】
具体的には、ラクチド法によって得られるポリマーの場合には、ポリマー中に含有される環状2量体が溶融紡糸時に気化して糸斑の原因となるため、溶融紡糸以前の段階でポリマー中に含有される環状2量体の含有量を0.5重量%以下とすることが望ましい。直接重合法の場合には、環状2量体に起因する問題が実質的にないため、製糸性の観点からはより好適である。
【0076】
ポリ乳酸の数平均分子量は、通常、上限は100万以下、下限は5万以上、好ましくは、上限は50万以下、下限は8万以上であり、より好ましくは、上限は30万以下、下限は10万以上である。数平均分子量が小さすぎる場合には繊維の強度物性が低下する傾向がある。また大きすぎる場合には溶融粘度が高くなりすぎ、溶融紡糸が困難になる場合がある。
【0077】
ポリ乳酸中のL−乳酸のD−乳酸に対するモル比は90/10以上が好ましく、より好ましくは95/5以上である。D−乳酸のモル比が高くなると、耐熱性、弾性率が低下する傾向がある。
また、本発明におけるポリ乳酸は、L−乳酸、D−乳酸の他にエステル形成能を有するその他の成分を共重合した共重合ポリ乳酸であってもよい。共重合可能な成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体が挙げられる。
【0078】
共重合成分は、ポリ乳酸に対して、通常、下限が0wt%以上、上限は50wt%以下であり、好ましくは、下限は0.1wt%以上、上限は30wt%以下である。
ポリ乳酸(C)を脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)に混練する場合には、脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)の重量に対して、通常、5重量%〜2000重量%、好ましくは、10重量%〜1000重量%、より好ましくは、20重量%〜500重量%、特に好ましくは、40重量%〜300重量%の組成割合で配合する。
<脂肪族ジカルボン酸単位及び脂肪族ジオール単位(ただし、ポリエーテルポリオール単位を除く)よりを必須単位とする脂肪族ポリエステル(D)>
脂肪族ポリエステル(D)は、脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位並びに脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸単位を必須単位とするものである、より好ましくは、オキシカルボン酸単位を含むものである。
【0079】
上記脂脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位の具体例としては、例えば、エチレングリコール単位、ジエチレングリコール単位、トリエチレングリコール単位、プロピレングリコール単位、ジプロピレングリコール単位、1,3−ブタンジオール単位、1,4−ブタンジオール単位、3−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル単位、1,6−へキサンジオール単位、1,9−ノナンジオール単位、ネオペンチルグリコール単位、ポリテトラメチレングリコール単位、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位等が挙げられる。また、これらは2種以上混合して用いることもできる。
【0080】
上記脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸単位の具体例としては、例えば、コハク酸単位、シュウ酸単位、マロン酸単位、グルタル酸単位、アジピン酸単位、ピメリン酸単位、スベリン酸単位、アゼライン酸単位、セバシン酸単位、ウンデカン二酸単位、ドデカン二酸単位、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位等が挙げられる。また、これらは2種以上混合して用いることもできる。
【0081】
上記脂肪族オキシカルボン酸系樹脂を構成する脂肪族オキシカルボン酸単位の具体例としては、例えば、グリコール酸単位、乳酸単位、3−ヒドロキシ酪酸単位、4−ヒドロキシ酪酸単位、4−ヒドロキシ吉草酸単位、5−ヒドロキシ吉草酸単位、6−ヒドロキシカプロン酸単位を挙げることができる。また、これらは2種以上混合して用いることもできる。
【0082】
上記脂肪族ポリエステル(D)には、乳酸単位、6−ヒドロキシカプロン酸単位等のオキシカルボン酸単位、トリメチロールプロパン単位、グリセリン単位、ペンタエリスリトール単位、プロパントリカルボン酸単位、リンゴ酸単位、クエン酸単位、酒石酸単位等の3官能以上の脂肪族多価アルコール単位、脂肪族多価カルボン酸単位、脂肪族多価オキシカルボン酸単位が共重合されていても良い。上記記載の単位の量は、脂肪族ポリエステル(D)を構成する全単量体単位100モル%に対して、上限は通常90モル%以下、好ましくは70モル%以下、50モル%以下である。また、脂肪族オキシカルボン酸系樹脂には、1,4−ブタンジオール単位、コハク酸単位、アジピン酸単位等の脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位並びに脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸単位、トリメチロールプロパン単位、グリセリン単位、ペンタエリスリトール単位、プロパントリカルボン酸単位、リンゴ酸単位、クエン酸単位、酒石酸単位等の3官能以上の脂肪族多価アルコール単位、脂肪族多価カルボン酸単位、脂肪族多価オキシカルボン酸単位が共重合されていても良い。上記記載の単位の量は、脂肪族ポリエステル(D)を構成する全単量体単位100モル%に対して、上限は通常90モル%以下、好ましくは70モル%以下、より好ましくは、50モル%以下である。
【0083】
また、上記脂肪族ポリエステル(D)を構成するジオール(多価アルコール)単位、ジカルボン酸(多価カルボン酸)単位、及びオキシカルボン酸単位は、脂肪族系が主成分であるが、生分解性を損なわない範囲で、少量の他の成分、例えば、芳香族ジオール(多価アルコール)単位、芳香族ジカルボン酸(多価カルボン酸)単位、芳香族オキシカルボン酸単位等の芳香族系化合物単位を含有してもよい。芳香族ジオール(多価アルコール)単位の具体例としては、ビスフェノールA単位、1,4−ベンゼンジメタノール単位等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸(多価カルボン酸)単位の具体例としては、テレフタル酸単位、イソフタル酸単位、トリメリット酸単位、ピロリメリット酸単位、ベンゾフェノンテトラカルボン酸単位、フェニルコハク酸単位、1,4−フェニレンジ酢酸単位等が挙げられる。芳香族オキシカルボン酸単位の具体例としては、ヒドロキシ安息香酸単位が挙げられる。これらの芳香族系化合物単位の導入量は、脂肪族ポリエステル(D)中50モル%以下、好ましくは30モル%以下である。
【0084】
また、生分解性に影響を与えない範囲で、脂肪族ポリエステル系樹脂には、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、エーテル結合、ケトン結合等が導入されていても良い。また脂肪族ポリエステルとしては、例えばイソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、酸無水物、過酸化物等を用いて分子量を高めたり、架橋させたものを用いてもよい。さらに末端基をカルボジイミド、エポキシ化合物、単官能性のアルコール又はカルボン酸で封止していても良い。
【0085】
多糖類としては、セルロース、酢酸セルロースの様な変性セルロース、キチン、キトサン、澱粉、変性澱粉が挙げられる
その他の分解性樹脂としては、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。
【0086】
汎用の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン等の含ハロゲン系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などのスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリイソプレン、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−イソプレン共重合ゴム等のエラストマー、ナイロン6,6、ナイロン6等のポリアミド系樹脂の他、ポリ酢酸ビニル、メタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン等が挙げられる。また各種相溶化剤を併用して、諸特性を調製することもできる。
【0087】
また、従来公知の各種添加剤を配合して組成物にすることも出来る。
添加剤としては、例えば、結晶核剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、耐光剤、可塑剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、離型剤、帯電防止剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、顔料、滑剤、分散助剤や各種界面活性剤などの樹脂用添加剤が挙げられる。これらの添加量は、全組成物中、通常0.01〜5重量%である。これ等は一
種又は二種以上の混合物として用いる事もできる。
脂肪族ポリエステル(D)の融点の下限は、通常、50℃以上あり、好ましくは、80℃以上より好ましくは90℃以上である。また上限は140℃以下であり、好ましくは130℃以下である。低すぎると耐熱性が低下する傾向にある。
【0088】
本発明において、脂肪族ポリエステル(D)を得るためのジオール成分とジカルボン酸成分とのモル比は、その目的や原料の種類により好ましい範囲は異なるが、ジカルボン酸成分1モルに対するジオール成分の量は、通常、下限が通常0.8モル以上、好ましくは0.9モル以上であり、上限が通常1.5モル以下、好ましくは1.3モル以下、特に好ましくは1.2モル以下である。
【0089】
また、脂肪族ポリエステル(D)の数平均分子量は、通常、下限が通常 1万以上、好ましくは3万以上であり、上限が通常50万以下、好ましくは30万以下である。本発明における脂肪族ポリエステル(D)の製造方法としては、従来の公知の方法が使用でき、例えば、上記の脂肪族ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重縮合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によっても製造することができるが、経済性ならびに製造工程の簡略性の観点から、無溶媒下で行う溶融重縮合でポリエステルを製造する方法が好ましい。
【0090】
また、重縮合反応は、重合触媒の存在下に行うのが好ましい。重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。
重合触媒としては、一般には、周期表で、水素、炭素を除く1族〜15族金属元素を含む化合物である。具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウムおよびカリウムからなる群から選ばれた、少なくとも1種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩またはβ―ジケトナート塩等の有機基を含む化合物、更には前記した金属の酸化物や複合酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物及びそれらの混合物が挙げられる。
【0091】
更には、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)等に記載される公知の層状珪酸塩を単独で或いは上記金属化合物と組み合わせた触媒を使用すると、重合速度が向上する場合があるため、このような触媒系もまた好んで使用される。
層状珪酸塩としては、具体的には、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク及び緑泥石群等が挙げられる。
【0092】
これらの中では、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム及びカルシウムを含む金属化合物、並びにそれらの混合物が好ましく、その中でも、特に、チタン化合物、ジルコニウム化合物及びゲルマニウム化合物が好ましい。また、触媒は、重合時に溶融或いは溶解した状態であると重合速度が高くなる場合がある為、重合時に液状であるか、エステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物が好んで使用される。また、本発明において重縮合は無溶媒で行うことが好ましいが、これとは別に、触媒を溶解させるために小量の溶媒を使用しても良い。この触媒溶解用の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオールなどの前述のジオール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、ヘプタン、トルエン等の炭化水素化合物、水ならびにそれらの混合物等が挙げられ、その使用量は、触媒濃度が、通常0.0001重量%以上、99%重量%以下となるように使用する。
【0093】
チタン化合物としては、テトラアルキルチタネートが好ましく、具体的には、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート及びこれらの混合チタネートが挙げられる。また、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタン(ジイソプロキシド)アセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、チタン(トリエタノールアミネート)イソプロポキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ブチルチタネートダイマー等も好んで用いられる。更には、酸化チタンや、チタンと珪素を含む複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製のチタニア/シリカ複合酸化物(製品名:C−94))も好んで用いられる。これらの中では、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート及びテトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、酸化チタン、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C−94)が好ましく、テトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C−94)がより好ましく、特に、テトラ−n−ブチルチタネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C−94)が好ましい。
【0094】
ジルコニウム化合物としては、具体的には、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニルジアセテイト、シュウ酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシド、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネートならびにそれらの混合物が例示される。更には、酸化ジルコニウムや、例えばジルコニウムと珪素を含む複合酸化物も好適に使用される。これらの中では、ジルコニルジアセテイト、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシドが好ましく、ジルコニルジアセテイト、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシドがより好ましく、特にジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレートが着色のない高重合度のポリエステルが容易に得られる理由から好ましい。
【0095】
ゲルマニウム化合物としては、具体的には、酸化ゲルマニウムや塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物、テトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物
が挙げられる。価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム及びテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特に、酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0096】
これらの重合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒添加量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限値が通常、0.1ppm以上、好ましくは0.5ppm以上、より好ましくは1ppm以上であり、上限値が通常、30000ppm以下、好ましくは500ppm以下、より好ましくは250ppm以下、更に好ましくは100ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなく、理由は未だ詳らかではないが、ポリマー中のカルボキシル基末端濃度が多くなる傾向がある為、カルボキシル基末端量ならびに残留触媒濃度の増大によりポリマーの熱安定性や耐加水分解性が低下する場合がある。逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリマー製造中にポリマーの熱分解が誘発され、実用上有用な物性を示すポリマーが得られにくくなる。
【0097】
また、生分解性の機能を有し且つ環境に優しい脂肪族ポリエステルを提供する本発明の趣旨からは、上記の重合触媒の中で、特に、錫含有化合物やアンチモン含有化合物は、毒性が比較的高いため、それらの化合物の使用量を制限するのが好ましい。従って、錫含有化合物やアンチモン含有化合物を重合触媒として使用する場合の使用量は、錫化合物触媒の場合、生成するポリエステルに対する金属量として、通常、60ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは1ppm以下であり、一方、アンチモン化合物触媒の場合は、生成するポリエステルに対する金属量として、通常、100ppm以下、好ましくは50ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。
【0098】
温度、時間、圧力などの条件は、従来公知の範囲を採用できる。
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。反応圧力は、通常、常圧〜10kPaであるが、常圧が好ましい。
【0099】
反応時間は、通常1時間以上であり、上限が通常10時間以下、好ましくは、4時間以下である。
その後の重縮合反応は、圧力を、下限が通常0.01×10Pa以上、好ましくは0.05×10Pa以上であり、上限が通常1.4×10Pa以下、好ましくは0.6×10Pa以下、更に好ましくは0.3×10Pa以下の真空度下として行う。重合製造時の圧力が高すぎると、ポリエステルの重合製造時間が長くなり、それに伴いポリエステルの熱分解による分子量低下や着色が引き起こされ、実用上充分な特性を示すポリエステルを製造が難しくなる傾向がある。一方、超高真空重合設備を用いて製造する手法は重合速度を向上させる観点からは好ましい態様であるが、極めて高額な設備投資が必要なばかりでなく、それでも未だポリエステルの重合製造時間が長くなる傾向があるため、それに伴うポリエステルの熱分解による分子量低下や着色が懸念される。
【0100】
この時の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、更に好ましくは200℃以上であり、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下の範囲である。この温度が低すぎると、重合反応速度が遅く、高重合度のポリエステル製造に長時間を要するばかりでなく、高動力の撹拌機も必要となる為、経済的に不利である。一方、反応温度が高すぎると製造時のポリマーの熱分解が引き起こされ、高重合度のポリエステルの製造が難しくなる傾向がある。
【0101】
反応時間は、下限が通常2時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは8時
間以下、より好ましくは6時間以下である。反応時間が短すぎると反応が不充分で低重合度のポリエステルが得られ、機械物性が充分でなく、また、そのカルボキシル基末端量が多いこともあり、引張り破断伸び率等の物性劣化も著しくなる場合が多い。一方、反応時間が長すぎると、ポリエステルの熱分解による分子量低下が顕著となり、機械物性が低下するばかりでなく、耐加水分解性に影響を与えるカルボキシル基末端量が熱分解により増加する場合がある。
【0102】
本発明において、有機リン化合物は、特に添加順序には限定はなく、例えば、原料のモノマーと一括に反応釜に入れて反応することもできるし、ジオール成分と脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体とをエステル化反応又はエステル交換反応させた後に反応釜に添加しても良い。
更に本発明において、ジカルボン酸成分として脂肪族カルボン酸に加えて芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルを混合して使用する場合は、特に添加順序には限定はなく、例えば、第1として、原料のモノマーを一括に反応釜に入れて反応することもできるし、第2として、ジオール成分と脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体とをエステル化反応又はエステル交換反応させた後、ジオール成分と芳香族ジカルボン酸又はその誘導体をエステル化反応又はエステル交換反応させ、更に重縮合反応させる方法等種々の方法を採用することができる。
【0103】
本発明においてポリエステルを製造する反応装置としては、公知の縦型あるいは横型撹拌槽型反応器を用いることができる。例えば、溶融重合を同一又は異なる反応装置を用いて、エステル化及び/又はエステル交換の工程と減圧重縮合の工程の2段階で行い、減圧重縮合の反応器としては、真空ポンプと反応器を結ぶ減圧用排気管を具備した攪拌槽型反応器を使用する方法が挙げられる。また、真空ポンプと反応器とを結ぶ減圧用排気管の間には、凝縮器が結合されており、該凝縮器にて縮重合反応中に生成する揮発成分や未反応モノマーが回収される方法が好んで用いられる。
【0104】
本発明においては、ポリエステルの製造方法として、従来の、上記の脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下で、ポリエステルのアルコール末端のエステル交換反応により生成するジオールを留去しながらポリエステルの重合度を高める方法、或いは、ポリエステルの脂肪族カルボン酸末端から脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物を留去させながらポリエステルの重合度を高める方法が用いられる。後者の場合、重縮合反応条件下では、留出される脂肪族ジカルボン酸は容易に酸無水物になりやすいため、酸無水物の形態で加熱留出させる場合が多い。また、その際、ジオールから誘導される鎖状又は環状エーテル及び/又はジオールもまた脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物と共に除去されてもよい。更に、ジカルボン酸成分とジオール成分の環状単量体を共に留去させる方法は、重合速度が向上するため、好ましい態様である。
【0105】
本発明においては、脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物を留去する方法により高重合度のポリエステルを製造する場合には、真空ポンプと反応器を結ぶ減圧用排気管の反応容器側排気口の温度を、脂肪族ジカルボン酸無水物の融点、或いは重縮合反応時の真空度での脂肪族ジカルボン酸無水物環状体の沸点のいずれか低い方の温度以上に保持すると生成する酸無水物環状体が効率よく反応系から除去でき、目的の高重合度のポリエステルが短時間で製造できるため好ましい。更には、反応容器側排気口から凝縮器までの配管温度を酸無水物の融点、或いは重縮合反応時の真空度での沸点のいずれか低い方の温度以上に保持するとより好ましい。
【0106】
本発明において、目的とする重合度の脂肪族ポリエステル(D)を得るためのジオール成分とジカルボン酸成分とのモル比は、その目的や原料の種類により好ましい範囲は異な
るが、酸成分1モルに対するジオール成分の量が、下限が通常0.8モル以上、好ましくは、0.9モル以上であり、上限が通常1.5モル以下、好ましくは1.3モル以下、特に好ましくは1.2モル以下である。
【0107】
更に、脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物の留去により高重合度の脂肪族ポリエステル(D)を製造する場合には、末端カルボン酸量が多い方が重合において有利であるため、従来の方法で用いられるような原料としてより過剰なジオールの使用は必要ではない。この場合もやはり目的とする脂肪族ポリエステル(D)の重合度や種類によってジオール成分とジカルボン酸成分とのモル比の好ましい範囲は異なるが、酸成分1モルに対するジオール成分の量が、下限が通常0.8モル以上、好ましくは、0.9モル以上、更に好ましくは0.95以上であり、上限が通常1.15モル以下、好ましくは1.1モル以下、更に好ましくは1.06モル以下である。
【0108】
本発明における脂肪族ポリエステル(D)は、還元粘度(ηsp/C)を高め、製造される脂肪族ポリエステル(D)中の末端カルボン酸量を低く抑えることにより、耐熱安定性、耐加水分解性にすぐれた脂肪族ポリエステル(D)となるが、上記の仕込み比を制御することにより、製造されるポリエステル中のカルボキシル基末端量を調整することも可能である。これにより、ポリエステルの耐加水分解性や生分解性を調整することも可能となる。
【0109】
脂肪族ポリエステル(D)を脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)に混練する場合には、脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)の重量に対して、通常、10重量%〜1000重量%、好ましくは、20重量%〜500重量%、より好ましくは、40重量%〜300重量%、特に好ましくは、60重量%〜200重量%の組成割合で配合する。
<脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物>
本発明の(A)に(B)〜(D)を適宜選択して混練して得られた脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物は、下記に示すような物性を示す。
【0110】
曲げ剛性は、通常、200MPa以上、好ましくは、500MPa以上、より好ましくは1000MPa以上、特に好ましくは、1500MPa以上である。
アイゾット(衝撃強度)は、通常、5kJ/m以上、好ましくは、10kJ/m以上、より好ましくは、15kJ/m以上、特に好ましくは、20kJ/m以上である。
【0111】
荷重たわみ温度(耐熱性)は、通常、60℃以上、好ましくは、80℃以上、より好ましくは、100℃以上、特に好ましくは、120℃以上である。
これらの数値が低すぎると、自動車部材や家電部品、その他成形品へ適用するに好適な物性を満たすことが出来ない。
<他成分>
また、本発明の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物には、本発明の効果を損なわない限り、実用に供するに際して、必要に応じて滑材、ワックス類、着色剤、フィラー、安定剤、カルボジイミド等の加水分解抑制剤、その他添加剤などを併用することができる。
【0112】
剛性、耐熱性等の向上を目的として、本発明の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物に無機充填材を添加することができる。具体的には、シリカ、タルク、カオリン、クレー、アルミナ、非膨潤性マイカ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪藻土、アスベスト、ガラス繊維、金属粉等が例示される。添加量は、20重量%以下が好ましく、20重量%を上回ると、衝撃強度、成形加工性、耐加水分解性等が低下する傾向にあり、好ましくない。
【0113】
また、特にポリ乳酸を使用した際の耐熱性、剛性の向上を目的として、結晶化促進剤を添加することができる。結晶化促進剤としては、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、ベントナイト、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、黒鉛、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、硫酸バリウム、ホウ酸亜鉛、含水ホウ酸カルシウム、アルミナ、マグネシア、ウォラストナイト、ゾノトライト、セピオライト、ウィスカー、ガラス繊維、金属粉末、ビーズ、シリカバルーン、シラスバルーンなどがあげられる。また、上記結晶化促進剤の表面をチタン酸、脂肪酸、シランカップリング剤などで処理することにより樹脂との接着性を向上させ、結晶化促進効果を向上させることも可能である。
【0114】
結晶化促進剤の配合量としては、0.1〜5質量%配合することが好ましい。かかる範囲を下回ると結晶化促進効果が十分に得られず、上回る場合には、衝撃強度、成形加工性、耐加水分解性等が低下する傾向にあり、好ましくない。
同様に、ポリ乳酸を使用した際の耐熱性をさらに向上させるための結晶化促進方法として、事前に温度の上げられた金型で成形し、金型内で結晶化させる方法や、成形後に金型の温度を上げ金型内で結晶化させる方法、あるいは、成形体を非晶状態で金型から取り出した後、熱風、蒸気、温水、遠赤外線ヒーター、IHヒーターなどで結晶化させる方法があげられる。
<脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物の製造方法>
繊維強化脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物を製造する方法としては、特に限定はされず一般的に知られている方法を用いることができる。具体的には、あらかじめ所定の長さを有するカット繊維やステープルを樹脂と共に押出成形機の中で混合して成形材料(ペレット)とする方法等があるが、樹脂を押出成形機により可塑化溶融し、溶融物の吐出側に長繊維を連続的に導入し、繊維に溶融樹脂を浸透させ押出し、これを切断して成形材料(ペレット)とする電線被覆類似の溶融含侵引き抜き法等を用いることが好ましい.その理由として、これらの成形法は製造工程中に繊維の粉砕を伴わず、成形材料中の繊維の長さを任意に選択できるため補強効果を高くすることが容易であるということがある。
【0115】
脂肪族ポリエステル共重合およびポリ乳酸等は、溶融成形時に加水分解を起こしやすいので、あらかじめ乾燥するか、真空ベント押出工程を経ることが望ましい。また,成形後の材料(ペレット)も、含水分による加水分解を避けるため、乾燥処理することが望ましい。
<脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物中の繊維長さ>
上述した溶融含侵引き抜き法にて作られた脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物は、通常1〜50mmの長さに切断した成形用材料ペレットとして好適に用いられるが、好ましくは2〜20mm程度である。ペレット中の補強繊維はペレット長と同等の長さで長さ方向に揃えられた状態で存在している。
<脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物の成形方法>
本発明の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物は、通常のプラスチックの成形に用いられる成形法、及び成形装置を用いることが可能であるが、目的に合わせ、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、SMC法等が用いられる。射出成形においては、目的に応じて、一般的な射出成形法から、ガスアシスト成形法、射出圧縮成形法、インモールド成形法、二色成形法、サンドイッチ成形法、ガスプレス成形法、PUSH−PULL、SCORIM等の成形法を用いることが可能である。この場合、成形温度は170〜230℃が好ましい。
<脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物成形体中の繊維径、繊維長さ>
上述した脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物のペレットを用いて射出成形することにより得られた成形体中の補強繊維の状態は、繊維束径が200μm以下、繊維長
さが1mm以上に分散した状態が好ましい。ペレット中でペレット長と同等の長さの補強繊維が成形体中において、開繊せず集束体のままで残ると、成形品中の補強繊維の分散が悪いため外観不良となったり、機械物性等が安定化しない等の問題がある。また、射出成形時の繊維破断が少なく成形品中の繊維長さを保つことにより、機械物性特に耐衝撃性を大きく高めることができる。
<ポリエステル及び脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物の物性の測定方法>(1)ポリエステルポリエーテル共重合体(A)及び脂肪族ポリエステル(D)の含有される各単位の割合測定
本発明において、ポリエステルポリエーテル共重合体(A)及び脂肪族ポリエステル(D)の各単位のモル%は、脂肪族ポリエステルを、H−NMRにより測定して求めることができる。また、脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体の場合、ポリエーテル部分の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体に対する重量割合は、ポリエーテル部分のモル分率よりポリエーテルの重量を求め、共重合体中の重量割合を算出することにより求めることができる。
(2)衝撃強度試験及び剛性試験: 得られた脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物のペレットを、東芝機械製IS55EPN成形機を用いて、成形温度190℃、金型温度40℃、スクリュー回転数30rpm、背圧10kg/cmの条件で試験片を射出成形し、得られた成形体よりJIS K 7110及び6911に準拠して、衝撃強度(アイゾッド;ノッチ付き)及び剛性率を測定した。
(3)荷重たわみ温度(HDT)
ASTM D648 に準拠して、上記条件と同様に射出成形により試験片を作成し、荷重たわみ温度を測定した。測定は、エッジワイズ法、曲げ応力は0.45MPaの条件で行った。
<用途>
本発明の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物は、十分な衝撃強度、剛性及び耐熱性を有するため、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、SMC法等に好適であり、自動車部材、家電部品、各種筐体、家庭用雑貨、各種包装材、建築材料など、様々な成形品に好適に利用できるが,特に、自動車内装部材、自動車外板材、輸送機器、家電部品、OA機器部品、光学機器部品、精密機器部品、各種筐体、農業材料、漁業用具、林業用具、建材、家具、包装材料、緩衝材、食品容器、食品包装材料、医療機器部品、雑貨、玩具、文房具、スポーツ用品、日用品、衣料品、履物等の射出成形分野に好適に利用できる。
【実施例】
【0116】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定はされない。
(脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体の製造方法)
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度センサー及び減圧口を備えた反応容器に、原料としてコハク酸59.1部、1,4−ブタンジオールを45.5部、数平均分子量2,000のポリテトラメチレングリコール(PTMG)88.0部、及び酸化ゲルマニウムをあらかじめ1重量%溶解させた90%乳酸水溶液3.63部を仕込んだ。容器内容物を攪拌下、窒素ガスを導入し、減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。次に、系内を撹拌しながら220℃に昇温し、この温度で1時間反応させた。次に、30分かけて230℃まで昇温し、同時に1時間30分かけて0.07×10Paになるように減圧し、0.07×10Paで4.5時間反応を行い重合を終了し、白色の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(以下、「共重合体」という。)を得た。得られた共重合体の還元粘度(ηsp/c)は2.85であった。共重合体中の脂肪族ポリエステル部分のモル%は、コハク酸単位49.2%モル、1,4−ブタンジオール単位49.0モル%、乳酸単位1.8モル%であった。ポリエーテル部分の重量割合は、49.9重量%であった。
(実施例1)
脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)に、補強用繊維としてポリエチレンテレフタレート繊維(融点:255℃、1670dtex−250filament 帝人製)を使用し、表1の配合で溶融含浸引き抜き法により、ペレット長さが7mmとなるように成形した。得られたペレットを東芝機械製IS55EPN成形機を用いて試験片を作成した。次に、試験片を熱風乾燥機(TABAI製、LC−112)内に静置して、70℃で4時間熱処理を行い、結晶化を促進させた。得られた試験片にて、各物性について評価した。
(実施例2)
脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)に、補強用繊維としてポリ乳酸繊維(カネボウ合繊製、商品名「ラクトロン」)を使用し、表1の配合で、実施例1と同様に試験片を作成し各物性について評価した。
(実施例3〜5)
脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)とポリエチレンテレフタレート繊維とポリ乳酸(C)(三井化学製、商品名「レイシアH−400」(MFR=3g/10min、融点:166℃))を、表1の配合で,実施例1と同様に試験片を作成し、各物性について評価した。
(実施例6)
脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)とポリ乳酸(C)に、補強用繊維としてポリエチレンナフタレート繊維(融点:270℃、1670dtex−250filament 帝人製)を使用し、表1の配合で、実施例1と同様に試験片を作成し、各物性について評価した。
(実施例7)
脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)とポリ乳酸(C)に、補強用繊維としてケナフ繊維を使用し、表1の配合で、実施例1と同様に試験片を作成し、各物性について評価した。
(実施例8)
脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)とポリ乳酸(C)に、補強用繊維としてセルロース繊維(レンチング社製、商品名「テンセル」)を使用し、表1の配合で、実施例1と同様に試験片を作成し、各物性について評価した。
(実施例9)
脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)とポリエチレンテレフタレート繊維とポリ乳酸(C)と脂肪族ポリエステル(D)(三菱化学製、商品名「GSPla AZ91T」(MFR=4.5g/10min、融点:110℃))を、表1の配合で,実施例1と同様に試験片を作成し、各物性について評価した。
(比較例1)
脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)のペレットを射出成形し、試験片を作成して、各物性について評価した。
(比較例2)
ポリ乳酸(C)のペレットを射出成形し、試験片を作成して、各物性について評価した。(比較例3)
脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)とポリ乳酸(B)のペレットを、表1の配合で、日本製鋼所製30mmφ小型同方向回転二軸押出機を用いて190℃でコンパウンドし、得られたペレットを射出成形し、試験片を作成して、各物性について評価した。
【0117】
結果を表−1に示す。
【0118】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ジカルボン酸単位、脂肪族ジオール単位及びポリエーテルポリオール単位を構成単位として含む脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(A)と繊維(B)とを含む脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物。
【請求項2】
脂肪族ポリエステル(A)が更に脂肪族オキシカルボン酸単位を構成単位として含むことを特徴とする請求項1に記載の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物。
【請求項3】
繊維(B)が植物繊維、有機合成繊維、無機繊維、再生繊維よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物。
【請求項4】
ポリ乳酸(C)を含有させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物。
【請求項5】
脂肪族ジカルボン酸単位及び脂肪族ジオール単位(ただし、ポリエーテルポリオール単位を除く)を必須単位とする脂肪族ポリエステル(D)を含有させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物。
【請求項6】
請求項1〜5にいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体組成物からなる成形体。
【請求項7】
請求項6に記載の成形体が射出成形して得られる成形体。

【公開番号】特開2007−186545(P2007−186545A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3639(P2006−3639)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】