説明

脂肪族炭化水素に可溶性の赤色染料

式(I)


の染料の実質的量を含有している染料成分を含む安定な液状濃厚物であって、染料成分が脂肪族炭化水素または脂環式炭化水素どちらかの中に溶解されている、前記の安定な液状濃厚物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願についてのクロスリファレンス)
本願は2005年6月1日の出願であって、その全体が本明細書の中に組み入れられる「脂肪族炭化水素に可溶性の赤色染料」についての米国仮特許出願第60/575,393号に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は赤色染料に関する。より詳しくは、本発明は脂肪族または脂環式炭化水素の中に可溶性である新規な赤色染料に関する。
【背景技術】
【0003】
歴史的に、炭化水素に可溶性の赤色染料は多数の目的に、特に、石油燃料の着色に、使用されてきた。たとえば、1921年にゼネラルモーターズ社(General Motors Corporation)のトーマス・ミゼレイ(Thomas Midgeley)によってガソリンのアンチノック剤として四エチル鉛が発見されると、四エチル鉛はエンジンに供給されるガソリンの添加剤として速やかに導入された。この結果の一つは頻発する鉛中毒事故であり、そのうちのいくつかは致死性であった。このことが引き金となって米公衆衛生省(US Department of Public Health)は全ての有鉛ガソリンは危険を表わす赤に着色されてガソリンの高い毒性について公衆に警告しなければならないと命令した。ガソリンは以前から工具クリーニングや塗装業のように人間が曝露されることを伴う様々な補助目的のために使用されてきており、ドライクリーニング液として及び家庭用の照明または加熱を目的として特別に設計されているがしばしば開放型のランプの中で燃やされている。
【0004】
米国では有鉛ガソリンの販売は総じて減少している又は消滅しそうでさえあるが、最近では、燃料向けに赤色染料の需要が高まっている。2号燃料油(Number 2 fuel oil)は2つの主要グループに分類できる幾つかの様態で販売されている。第一はディーゼルエンジン自動車の燃料としてであり、この用途での使用は大抵の工業国では燃料税の引き上げを受けやすい。2号燃料油のもう一つの主要用途は家庭用加熱用オイルとしてであり、それは通常、税の引き上げを受けにくい。その他の免税が適用される燃料は農業用途、定置発動機(stationary engines)および鉄道機関車の燃料にある。ディーゼル自動車の人気が高まってきており、無法者達が彼らの自動車の稼動に特に全ての自動車の稼動に課税ディーゼル燃料の代わりに非課税燃料を使用するのは自然のなりゆきであり、これにより税を逃れることによって膨大な量の金額を節約している。1993年には、対応する非課税オフロード燃料を染料の添加によって明白な赤色に着色することが決まった。
【0005】
有鉛ガソリン着色の殆どの年月で使用された主な赤色染料はカラーインデックス(Colour Index)によってC.I.ソルベントレッド(Solvent Red)24として番号で現在特定されている化合物であった。これは19世紀に発見された乾燥粉末染料であり、それは芳香族炭化水素含有ガソリンの中には限られた直接溶解性を有しており、そしてディーゼルまたは家庭用加熱用オイルのように本質的に脂肪族炭化水素系燃料の中には直接溶解性を有しない。
【0006】
この溶解度の問題は2つのやり方で取り組まれた;第一は、ソルベントレッド24のような染料を10〜15%含有する溶液を、染料の溶解度をかなり向上させる物質であるアルキルフェノールの混合物をもって製造することによる。これら処方物は通常、その粘度を低下させるために芳香族炭化水素の中にブレンドされてもいた。この技術の例はLitke他の米国特許第3,494,714号明細書およびElstonのカナダ特許第772,062号明細書の中に見出され、それら特許明細書の開示はそれらの全体が本明細書の中に組み入れられる。この技術は染料物質の濃度が比較的低いことと厳しい冬季および長い貯蔵の間の処方物の結晶化抵抗性が限られていることとによって範囲が制約されていた。
【0007】
1972年には、この技術はRichard B.Orelupの発見によって改善され、それは米国特許第3,690,809号明細書および第3,704,106号明細書の中に開示されており、それら特許明細書の開示はそれらの全体が本明細書の中に組み入れられる。彼は、選択されたアルキル基をC.I.ソルベントレッド24の分子本体に共有結合させることによって、少なくともC.I.ソルベントレッド24の40%溶液に相当する量(equivalent、当量)を含有する、長期の冷凍・貯蔵安定性の芳香族炭化水素溶液を得た。Orelupの研究の主な商業的成果はC.I.ソルベントレッド164として知られた染料である。
【0008】
染料自体の技術が進歩したように、燃料の中への染料の導入の技術も進歩した。かつては、「はっきり見える」まで燃料の中に染料を本質的に手動で添加する原則で行われていたが、このごろの染料添加は燃料の通常の流れの中に染料のアリコートを注入する高価な高精度の巧みに工作されたポンプによって行われる。この精度は燃料の中に導入すべき染料の濃度およびそれの許容差に関する様々な行政管理仕様によって要求されている。これらポンプは他の添加剤を燃料に注入するのにも使用されるが、かかる添加剤は通常、ある種の脂肪族または脂環式の溶剤たとえば限定されるものではないが灯油(kerosene)の中で支給されている。
【0009】
C.I.ソルベントレッド164の、キシレンまたはその他の既知の芳香族炭化水素溶剤の形態でもって明らかになってきた有意な問題は、染料溶液に曝されたポンプの駆動部の摩耗が灯油性添加剤(kerosene based additives)または脂肪族もしくは脂環式炭化水素性の添加剤によって起こる摩耗に比べて遥かに速い速度であることである。これは注入ポンプの使用寿命を事実上低下させるし、そしてより頻繁に経費のかかる保守作業を必要とする。
【0010】
この問題に対する解決策はソルベントレッド164組成物の中に使用されるキシレンを脂肪族炭化水素たとえば限定されるものではないが灯油に置き換えることである。しかしながら、不都合なことに、この組合せは非常に不安定であり、そして周囲温度においてさえ急速に結晶化するであろう。この問題の部分的解決は標準の純キシレン性の染料(standard full strength xylene−based dye)を、その半分を同量のキシレンとブレンドすることによって、半分に希釈することであった。この組合せは実際にポンプの摩耗を減少させるが、結晶化抵抗性の形態におけるその安定性は温和な気候の地域以外では信頼できない。
【0011】
C.I.ソルベントレッド164は芳香族炭化水素の中にのみ可溶性であったので、全ての類似の組成物も脂肪族および脂環式炭化水素の中には容易に溶解できないと広く信じられていた。たとえば、米国特許第5,676,708号明細書の中に記載された化合物はソルベントレッド164に似た構造をもつ非突然変異誘発性染料(non−mutagenic dyes)である。これら染料はこの特許出願の中には、多数の特別に列挙された芳香族炭化水素を含めて多数の溶剤の中に溶解できると記載されている。第’708号特許明細書の実施例5に記載されているx−tert−ブチル2ナフトール由来染料を含めて、この特許出願によって開示された多数の染料は脂肪族炭化水素の中では可溶性でなくそして安定な液状濃厚物を形成しない。同時に、第’708号特許に特許請求されている化合物の全ては脂肪族炭化水素の中への溶解度を検査することを示唆または動機付けされていなかった、何故ならば、溶解度の問題はソルベントレッド164に似た染料に遭遇するものであったからである。開示された多数の化合物は脂肪族および脂環式炭化水素の中に可溶性とはされていなかったので、開示された組成物のうちのどれが脂肪族および脂環式炭化水素の中に可溶性であるかを決定するには独特の実験を要求するであろう。従って、本発明の態様の利点は脂肪族および脂環式炭化水素の中に可溶性である染料組成物を提供することである。
【0012】
脂肪族炭化水素に可溶性の赤色染料についてのもう一つの応用は溶剤系の工業用インクジェット印刷の更に同時代的な分野にある。石油燃料の場合と同じように、要件は、失敗無しに1分当り1,000コピー以上を配給することを要求されるインクジェットの詰りを防ぐために、染料に求められるその溶剤担体からの結晶化に対する非常に高い抵抗性である。染料はまた、悪い気候条件で受け止められる又はそうでなくても水に曝されることのある製品容器にラベリングするのに使用できるように完全に防水性であることも要求される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って必要とされているものは脂肪族炭化水素に可溶性である赤色染料である。特に、脂肪族または脂環式炭化水素に可溶性の赤色染料が、キシレン系または芳香族系炭化水素溶剤に可溶性の赤色染料に取って代わることが必要とされている。
【0014】
従って、本発明の全てではないにしても幾つかの態様の利点は脂肪族炭化水素に可溶性である新規赤色染料を提供することであり、それは下記の発明の概要の中に概説されており、そして詳細な記述の中に更に十分に説明されている。
【0015】
本発明の様々な態様の更なる利点は、一部は以下の説明の中に記載されており、そして一部は当業者には発明の記載から及び/又は発明の実施から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の概要)
本発明は、脂肪族または脂環式炭化水素に可溶性である、下記式を成す染料組成物を提供する:
【0017】
【化1】

【0018】
式中、Rはエチルまたはイソプロピル基であり、そしてRは炭素原子6〜12のアルキル基であり、そしてnは1、2または3の数である。
【0019】
上記の挑戦に応えて、本発明者は、革新的な、脂肪族および脂環式炭化水素に可溶性の赤色染料を開発した。上記の包括的な記述および下記の詳細な記述はどちらも単に例示的および説明的であり、そして特許請求されている通りの発明を制限するものではないということを理解すべきである。
【0020】
(発明の詳細)
次に、本発明の態様について詳細に言及する。
【0021】
その開示が全体に本明細書の中に組み入れられる米国特許第5,676,708号明細書の中にSmithによってC.I.ソルベントレッド164に対する非突然変異誘発性代替物として開示されておりそしてレッド164とは2〜6個の追加メチレン基の存在によって異なっている染料のうちのいくつかは、それらが脂肪族または脂環式炭化水素、たとえば限定されるものではないが灯油、ディーゼル燃料、ミネラルスピリット、ヘキサンなどの中で安定な非結晶化性の溶液を形成するという予想外かつ予測外の性質を有しており、それによって、芳香族炭化水素溶剤を全く含まない赤色染料濃厚液について精製業者および燃料ターミナルラック(fuel terminal racks)の管理者の表明する要望を満たすことができる。限定されるものではないが灯油のような脂肪族または脂環式炭化水素を基材とした染料濃厚液は、キシレンを含有するものと比べて、その遥かに低い蒸気圧から生じる更なる利点をも有する。これらはキシレンを基材としたものについての83°Fと比べて150°Fという高い引火点を有するので製品を引火し難くし、他方で、固有の低毒性溶剤の低蒸気圧は人間が危険に曝されるのを低減する。たとえば、脂肪族炭化水素たとえば限定されるものではないが灯油性の染料の商業的利点は、危険等級が低いせいで染料濃厚液の輸送コストがキシレン性の対応するものよりも実質的に低くなることであろう。
【0022】
本発明の染料成分は下記の式1によって表わされる:
【0023】
【化2】

【0024】
式中、Rはエチルまたはイソプロピル基であり、そしてRは炭素原子数6〜12のアルキル基であり、そしてnは1、2または3の数である。
【0025】
この染料成分は脂肪族および脂環式どちらの炭化水素にも可溶性である:たとえば、限定されるものではないが、灯油またはパラフィン油、ディーゼル燃料、ミネラルスピリット、ヘキサン、ペンタン、および炭素原子25〜40を含む枝分れおよび非枝分れ炭素鎖に可溶性である。
【0026】
本発明の一態様は、計算上少なくともC.I.ソルベントレッド24、25または26の40%溶液に相当する量の色材を含有する安定な液状濃厚物を提供することである。安定な液状濃厚物は計算上少なくともC.I.ソルベントレッド24、25または26の40%溶液を付与するに十分な式Iの染料成分を含有し、溶液の残余部分は脂肪族もしくは脂環式炭化水素のいずれか又はそれらの組合せを含有する。
【0027】
これら染料がn−へキサンのような低沸点脂肪族炭化水素の中で安定な濃厚溶液を形成するという事実は、その燃料染色用途とは別に、これら染料を溶剤系の工業用インクジェットインクに使用する機会を与える。小さな事務所や自宅事務所での用途に使用されているインクジェットプリンターは比較的乾燥の遅いそしてしばしば後の水との接触に対する耐性を欠く水性インクを相変わらず使用している。対照的に、1分当り数千枚のコピーを配給することを要求される工業用インクジェットプリンターはメタノール、エタノール、アセトン、ブタノンのような揮発性有機溶剤を基材とした速乾性かつ防水性のインクをしばしば使用しており、それら溶剤のいずれもが毒性問題を有する。低毒性の脂肪族炭化水素は今まではこれら溶剤の中への十分な溶解度と後の結晶化に対する抵抗性とをもった染料が入手可能でなかったことから魅力的な代替物である。後の結晶化が起こると、インクがそこを通って基体へ吐き出されるところの非常に細かいジェットが詰まり、結果として、経費のかかる非稼動時間を生じる。溶剤系インクジェット印刷におけるこれら染料の更なる利点はそれらが水による除去を全く受け付けないことである。他方で、それらは大抵の熱可塑性の表面に適用された場合、その中に僅かに拡散しそして耐久的かつ消去不能なマークを生じる。
【0028】
揮発性脂肪族炭化水素の中に溶解された染料についての更なる用途は耐久マーカーペン(permanent marker pens)の分野にある。約20年以前までは、殆どのペンは芳香族炭化水素溶剤、代表的にはキシレンおよび/またはトルエンの中に溶解された染料を含有していた。それらのインク皮膜は非多孔質基体の上でさえ急速に乾燥した。特に、狭い空間でペンを使用した場合の、芳香族炭化水素に集中した毒性問題ゆえに、このタイプの筆記具は漸次廃止されそして概してn−プロパノールを使用するペンによって置き換えられた。この欠点の一つはインク皮膜が乾燥するときに大気から若干の水分を吸収する傾向のあることであり、そのことはインク皮膜が最終的にべとつかない状態まで乾燥するのを大幅に遅らせる。芳香族炭化水素に代わる理想的な代替物は同程度に揮発性の脂肪族炭化水素である。しかしながら、その時点では、このタイプの媒体の中に完全に可溶性である染料は入手可能でなかった。しかしながら、本発明の染料が脂肪族または脂環式炭化水素の中に完全に可溶性でありかつその中で安定であるということは、この技術が今や開発に向けて開かれることを意味する。上記のインクジェット環境をもってすると、これら現赤色染料がポリエチレン袋のような非多孔質基体の中に若干程度浸透するだろうことはプロパノール性インクでは起こらない追加の利点である。
【0029】
この染料システムについての更なる用途は木材の染色または色付けにある。染料の炭化水素系溶液は木材にその木目を浮き立たせることなく速やかに浸透するであろう。着色された木材はそれから、水性アクリルまたはポリウレタンコーティングの保護コートによって仕上げることが、その中への染料の好ましくないブリード(bleeding)を生じることなく、可能である:他の染料システムではブリードがしばしば起こり得る。
【0030】
以下の実施例は本発明を例証するものであって、本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例1】
【0031】
色素C.I.ソルベントレッド164を含む組成物(たとえば、限定されるものではないが、ユニソル(Unisol)(登録商標)リキッドレッドB)の500gを秤量して、真空蒸留に適した1リットルの攪拌・加熱されるガラスフラスコの中に入れる。フラスコの内容物を良好な真空下に置き、そしてフラスコから更なる物質が蒸留されなくなるまで内容物を100℃に加熱する;実際、キシレンの殆どは約60℃で除去される。溶剤ストリッピングが完了したら、真空を解放し、熱を加えるのをやめて、そしてフラスコの内容物を灯油で500gに戻す。周囲温度に冷却した後、染料の6つの80g部分を秤量してそれぞれ透明ガラスジャーの中に入れる。これらを2つずつ、それぞれ、周囲温度(20〜22℃)、穏やかな冬季条件を表わす−10℃、および厳しい冬季貯蔵条件を表わす−40℃で貯蔵する。24時間後に、染料サンプルを一緒に集め、そして試験する。周囲温度で貯蔵されたサンプルでさえ、酷く結晶化されていた。他方、2つの冷凍庫からのものは凍結されて固体になっており、そして室温に温めた後でも何ら大きな程度の改善がなかった。それで、本発明者らはC.I.ソルベントレッド164は灯油での溶液濃厚物としては安定でないとの結論を導いた。
【実施例2】
【0032】
22.5gの2,2´−ジメチルアミノ−アゾベンゼンを200mLの水によって45℃でスラリー化する。それから、このアミン塩基の十分に攪拌されたスラリーの中に30gの32%塩酸を滴下すると、アミン塩基は短時間の後にその塩酸塩の赤色分散物に転化する。このシステムに氷を加えて0℃に冷却する。水15mLの中に溶解された亜硝酸ナトリウム7.5gの溶液を急速に添加し、そして温度を10〜15℃に上昇するにまかせる。短時間の攪拌の後に、対応する塩化ジアゾニウムの深褐色溶液が得られる。それから、過剰の亜硝酸塩をスルファミン酸の添加によって除去する。
【0033】
一方で、約0.105モルのX−ヘプチル−2−ナフトールを100mLのトルエンの中に溶解し、そして15gの炭酸ナトリウムを添加する。この混合物を十分に攪拌しながらジアゾニウム水溶液を流し込む。アゾカップリングは、深赤色染料溶液の形成および二酸化炭素ガスの発生をもって、瞬時におこる。それから、このカップリングしたものを60℃に加熱し、そして分離するにまかせる。下方の水性相を廃棄する。それから、染料のトルエン溶液を完全真空下で140℃に加熱してこれら条件下で揮発性の全物質を除去する。液状染料を70°に冷却し、そして100mLのメタノールを慎重に添加する。この混合物を還流させ、それから、放冷し、そして上方のメタノール層をデカントし、そして染料を清浄メタノールで洗浄する。これを2回繰り返し、その後、真空蒸留によってメタノールの最後の痕跡を除去する。これらの抽出の手段によって、未反応中間体および副次的有機化合物が染料から除去され、染料は周囲温度で脆い過冷却液体を形成する。500gのキシレン性の染料を本願の実施例1の手順に従ってストリッピングしてキシレンを除いた。染料を灯油で再標準化した後に、それを梱包しそして上記実施例1に詳述したのと同じ貯蔵条件に曝した。24時間後、全てのサンプルは結晶質染料を全く含有しないことが観察され、−40℃で貯蔵した染料の粘度は実に高かったが、周囲温度に温めるとその通常の低粘度にもどった。この試験手順は染料の周期的な観察および融解を伴って6ヶ月を超えて継続され、その間に染料濃厚物の外観に変化は観察させずそして特に固体結晶質物質の形成は見られなかった。
【実施例3】
【0034】
実施例2の手順に従って製造した灯油性の染料の250gを同量の灯油と混合し、それによって、その色強度を半分に低下させた。それから、サンプルを−40℃で貯蔵したことを除き、実施例2と同様に実験した。冷凍庫からサンプルをだして直ぐに観察したときでさえ燃料注入ポンプによって容易に取り扱い可能な粘度を有していた。
【実施例4】
【0035】
実施例1の手順を繰り返すが、22.5gの2,2´−ジメチルアミノアゾベンゼンを25.3gの2,2´−ジエチルアミノアゾベンゼンに置き換えた。500gの染料を本願の実施例2における染料と同様に試験した。その高い分子量のせいで染料の粘度がいくらか増すが、同じ結果の周囲/冷凍貯蔵安定性が観察された。
【実施例5】
【0036】
実施例4に従って製造した染料の250gを、未染色の商業用ディーゼル燃料で500gに希釈した。包装され、貯蔵され、そして同じ冷凍/融解の一連作業を受けた後に、染料の溶液は結晶質物質を全く含有しないことを観察された。
【実施例6】
【0037】
実施例2に従って製造した染料の25mg/Lの溶液を、未染色のディーゼル燃料の中で調製した。同じ冷凍/融解の6ヶ月管理を受けた後に、染料の染色強度の損失は観察されなかった。
【実施例7】
【0038】
実施例3に従って製造した染料を使用して実施例6の手順を繰り返し、やはり、色強度は損失せず、望まない結晶化は起こらなかった。
【実施例8】
【0039】
実施例2の手順に従ってストリッピングした染料の500gを冷却しそして同量のn−へキサンで希釈した。サンプルを−10℃で長期間貯蔵したが、その間に結晶化は見られなかった。
【実施例9】
【0040】
実施例8に従って製造される赤色染料の5%溶液をn−へキサンの中で調製した。溶液は白色ボンド紙(white bond paper)の上に印刷されたとき、それは523nmの主波長をもつ鮮やかな青みがかった赤色画像を生じる。印刷画像の一部を飲用水の中に2週間浸漬しても、水の中への染料の滲み出しまたは紙の上の色強度の損失を示さなかった。上記処方に従って製造されたインクはまた、何らの悪影響も認められることなく長期の冷貯蔵を受けた。
【実施例10】
【0041】
実施例9に従って製造したインクジェットインクのサンプルをポリエチレン袋の表面に適用しそして乾燥するにまかせた。10分後、画像を、トルエンに浸したパッドで拭き、再乾燥した。インクの殆どはトルエンによってポリマー表面から除去されたが、ポリマーはその中に拡散した若干の色材によって本質的に恒久的に染色されたことが観察された。
【実施例11】
【0042】
実施例4に従って製造した染料溶液10gを、脂肪族炭化水素に可溶性の樹脂5gを既に含有しているイソオクタン90gに添加する。この簡単なインク処方物の適切な量を耐久マーカーペンのインク溜めの中に装填し、次いでそのペンを平衡化するために短時間静置する。次いで、ペンを使用してポリエチレンサンドイッチ袋の上にマークをつくる。インク皮膜は非常に迅速に乾燥してべとつかない表面になる。短時間静置した後、表面マークを、トルエンに浸した吸収性組織をもつクイックワイプによって可能な限り除去する。若干の染料がプラスチックの中に直接拡散していたので、乾燥後、元のマーキングがなお目視可能である。
【実施例12】
【0043】
米国特許第5,676,708号明細書の実施例5に概説された方法によって製造されたx−tert−ブチル−2−ナフトール由来染料の40gを、60gの灯油(アルドリッチケミカル社(Aldrich Chemical Co.)カタログ番号329460)と混合して粘稠スラリーを形成した。それから、混合物を100℃に加熱し、そして15分間攪拌して殆ど全ての染料を溶解または溶融させた。それから、混合物を一晩静置して周囲温度に冷却した。観察したところ、先に溶解された混合物の多くは溶液から結晶化されてしまっており、それは攪拌したときに結晶質スラリーのその元の物理的形態を回復するということが観察された。対照的に、ヘプチル化またはノニル化された2−ナフトールから誘導された好ましい染料は易動溶液(mobile solutions)を形成し、その溶液からは濾過によって固体物質が回収されなかった。これら染料濃厚液は−25℃で6ヶ月貯蔵した後でさえ析出固体無しのままであった。
【0044】
以上、構造および機能の詳細な説明と一緒に、多数の特性および利点を記載した。新規な特徴は特許請求の範囲に指摘されている。しかしながら、開示は、仔細部においては、特に、希釈の仕方、溶剤、および組成物においては、単なる例示であって、特許請求の範囲の中に表現されている用語の広い包括的意味によって示される全広がりにまで変更が可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】


(式中、Rはエチルまたはイソプロピル基であり、そしてRは炭素原子6〜12のアルキル基であり、そしてnは1、2または3の数である)
の染料の実質的量を含んでいる染料成分を含む安定な液状濃厚物であって、染料成分が脂肪族炭化水素または脂環式炭化水素どちらかの中に溶解されている、前記の安定な液状濃厚物。
【請求項2】
がエチル基であり、そしてRがヘプチルおよびノニルアルキル基からなる群から選ばれる、請求項1の組成物。
【請求項3】
脂肪族または脂環式炭化水素が、灯油、ディーゼル燃料、ミネラルスピリット、ヘキサン、ペンタン、および炭素原子25〜40を含む枝分れおよび非枝分れ炭素鎖からなる群から選ばれる、請求項1の組成物。
【請求項4】
nが1である、請求項2の組成物。
【請求項5】
脂肪族または脂環式炭化水素が、灯油、ディーゼル燃料、ミネラルスピリット、ヘキサン、ペンタン、および炭素原子25〜40を含む枝分れおよび非枝分れ炭素鎖からなる群から選ばれる、請求項2の組成物。
【請求項6】
脂肪族または脂環式炭化水素が灯油である、請求項5の組成物。
【請求項7】
がイソプロピル基であり、そしてRがヘプチルおよびノニルアルキル基からなる群から選ばれる、請求項1の組成物。
【請求項8】
脂肪族または脂環式炭化水素が、灯油、ディーゼル燃料、ミネラルスピリット、ヘキサン、ペンタン、および炭素原子25〜40を含む枝分れおよび非枝分れ炭素鎖からなる群から選ばれる、請求項7の組成物。
【請求項9】
脂肪族または脂環式炭化水素が灯油である、請求項8の組成物。
【請求項10】
nが1である、請求項2の組成物。
【請求項11】
更に石油製品を含む、請求項1の組成物。
【請求項12】
石油製品が、ディーゼル燃料、ガソリン、および重質石油ナフタレン化合物からなる群から選ばれる、請求項11の組成物。
【請求項13】

【化2】


(式中、Rはエチルまたはイソプロピル基であり、そしてRは炭素原子6〜12のアルキル基であり、そしてnは1、2または3の数である)
の染料を実質的量含んでいる染料成分を含む安定な液状濃厚物であって;
安定な液状濃厚物は、計算上少なくともC.I.ソルベントレッド24、25または26の40%溶液に相当する量の色材を付与するのに十分に染料成分を含有しており;そして
染料成分は脂肪族炭化水素または脂環式炭化水素どちらかの中に溶解されている;
前記の安定な液状濃厚物。
【請求項14】
がエチル基であり、そしてRがヘプチルおよびノニルアルキル基からなる群から選ばれる、請求項13の組成物。
【請求項15】
脂肪族または脂環式炭化水素が、灯油、ディーゼル燃料、ミネラルスピリット、ヘキサン、ペンタン、および炭素原子25〜40を含む枝分れおよび非枝分れ炭素鎖からなる群から選ばれる、請求項14の組成物。
【請求項16】
脂肪族または脂環式炭化水素が灯油である、請求項15の組成物。
【請求項17】
nが1である、請求項15の組成物。
【請求項18】
がイソプロピル基であり、そしてRがヘプチルおよびノニルアルキル基からなる群から選ばれる、請求項13の組成物。
【請求項19】
脂肪族または脂環式炭化水素が、灯油、ディーゼル燃料、ミネラルスピリット、ヘキサン、ペンタン、および炭素原子25〜40を含む枝分れおよび非枝分れ炭素鎖からなる群から選ばれる、請求項17の組成物。
【請求項20】
脂肪族または脂環式炭化水素が灯油である、請求項19の組成物。
【請求項21】
脂肪族または脂環式炭化水素がワックスである、請求項3の組成物。
【請求項22】
ワックスが脂肪族溶剤システムの有意部分である、請求項21の組成物。
【請求項23】
脂肪族溶剤システムが蜜ろう(Beeswax)である、請求項22の組成物。
【請求項24】
組成物が相変化(phase change)インクジェットインク用の色材として使用される、請求項23の組成物。
【請求項25】
脂肪族または脂環式炭化水素がヘキサンである、請求項19の組成物。
【請求項26】
前記組成物が耐久マーカーペンインク用の色材として使用される、請求項25の組成物。

【公表番号】特表2008−501823(P2008−501823A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515518(P2007−515518)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/019198
【国際公開番号】WO2005/117555
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(502001259)ユナイテッド・カラー・マニュファクチャリング・インコーポレイテッド (4)