脂肪族生物分解性リンカーに基づく放出可能な高分子コンジュゲート
【化1】
のような活性化された高分子ビシンコンジュゲートならびにそれを用いて作られたコンジュゲートを開示する。本ビシン誘導体を製造および使用する方法も開示する。
のような活性化された高分子ビシンコンジュゲートならびにそれを用いて作られたコンジュゲートを開示する。本ビシン誘導体を製造および使用する方法も開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生物学的活性物質のin vivo循環寿命を延長するために有用である分枝高分子に関する。本発明はまた、その高分子を用いて作製したコンジュゲートにも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ペプチドまたはポリペプチドをポリ(エチレングリコール)PEGおよび類似した水溶性ポリ(アルキレンオキシド)とカップリングする考えのいくつかは、最初に米国特許第4,179,337号に開示されており、その開示は本明細書に参照により組み入れられる。これらの高分子を用いて改変したポリペプチドは免疫原性/抗原性が低下し、未改変のポリペプチド種より血流中で長く循環する。
【0003】
ポリ(アルキレンオキシド)をコンジュゲート化するために、ヒドロキシル末端基の1つは反応性官能基に転化される。この反応はしばしば「活性化(activation)」と呼ばれ、生成物は「活性化されたポリ(アルキレンオキシド)」と呼ばれる。他の実質的に非抗原性の高分子も同様に「活性化される」かまたは官能基化される。
【0004】
活性化された高分子を、結合部位として作用する求核性官能基を有する治療薬と反応させる。結合部位として通常利用される求核性官能基の1つはリシンのε-アミノ基である。遊離カルボン酸基、適切に活性化されたカルボニル基、酸化された糖鎖成分およびメルカト基も結合部位として利用されている。
【0005】
インスリンおよびヘモグロビンは、とりわけ最初にコンジュゲート化された治療薬コンジュゲートであった。これらの比較的大きいペプチドは複数の遊離ε-アミノ結合部位を有する。十分な数の高分子を結合させて、生物学的活性を有意に消失することなく、免疫原性を低下しかつ循環寿命を延長することができる。
【0006】
しかし、過剰の高分子コンジュゲートの作成、および/または生物学的活性に関係する基が見出される治療薬成分活性部位に関わるコンジュゲートの作成は、活性、即ち治療上の有用性を低下することが多い。これは、生物学的活性に無関係な結合部位を少ししか有しない低分子量ペプチドの場合に多い。多くの非ペプチド治療薬も、高分子による改変の利益を得るために十分な数の結合部位を持たない。
【0007】
以上考察した問題を克服するための1つの示唆は、より長くより大きい分子量の高分子を利用することである。しかし、これらの物質は製造が困難でありかつ使用するには高価である。さらに、これらの物質はより容易に利用しうる高分子を上回る改善を少ししか提供しない。
【0008】
示唆される他の代替物は、2本鎖の高分子をトリアジン環を経由してタンパク質のアミノ基に結合させることである。例えば、Enzyme, 26, 49-53 (1981)およびProc. Soc. Exper. Biol. Med., 188, 364-9 (1988)を参照されたい。しかし、トリアジンは毒性物質であって、コンジュゲート化後に許容されるレベルまで低下することが難しい。さらに、トリアジンは平面基であって二重の高分子置換しか出来ない。平面構造は2つの高分子鎖を平面に強固に固定する。これによって高分子コンジュゲート形成の利益は限定され、高分子鎖長を伸ばすことにより得られる利益とほぼ同じである。従って、非トリアジン系の活性化された高分子が当技術分野に実質的な利益を提供しうるであろう。
【0009】
しかし上記の事例においては、高分子と親の生物学的活性成分の間に、実質的に加水分解耐性のある結合(連鎖)を有する生物学的活性高分子コンジュゲートが形成された。従って、本来のプロドラッグ(最終的に親分子がin vivoで放出される)よりもむしろ永久に結合した長期持続性コンジュゲートが作られた。
【0010】
本願出願人による米国特許第5,643,575号、第5,919,455号および第6,113,906号は、脂肪族リンカーを介して求核試薬との共通結合点を共有する、PEGの多重鎖に関するさらなる改良を開示している。初期のトリアジン系の分枝高分子コンジュゲートと異なり、脂肪族リンカーは、当業者にトリアジンの毒性を回避するだけでなく他の有用な利益も提供することができる。
【0011】
さらに、長年の間、プロドラッグを製造するいくつかの方法が示唆されている。プロドラッグは生物学的に活性な親化合物の化学誘導体を含むものであり、投与すると、最終的に活性な親化合物をin vivoで放出する。プロドラッグの利用により、当業者は生物学的活性化合物のin vivo作用の開始および/または期間を改変することが可能になる。プロドラッグは、親化合物または活性化合物の生物学的に不活性なまたは実質的に不活性な形態である場合が多い。活性薬の放出速度はいくつかの要因の影響を受け、それには親の生物学的活性化合物をプロドラッグ担体と結合するリンカーの加水分解速度が含まれる。
【0012】
エステルまたはリン酸結合に基づくいくつかのプロドラッグが報じられている。ほとんどの場合、プロドラッグを形成するために利用される特定のエステル結合のタイプは、水環境において数日までの加水分解のt1/2を与える。プロドラッグは形成されていると予想されるが、ほとんどのコンジュゲートはin vivoで十分な加水分解を受ける前に排出される。従って、高分子-薬物結合のより速やかなin vivo加水分解を可能にする結合を有し、それによって親の薬剤化合物をより速やかに生じるプロドラッグを提供することが好ましい。
【0013】
アミドまたはカーバメート結合に基づくプロドラッグも報じられている。一般的に、アミド結合は高度な加水分解耐性を有することが知られている。しかし、最近、ε-アミノ酸のC末端アミドは、N-端末が1つまたは2つのヒドロキシエチル基によりN-ヒドロキシエチル化されると、25℃、pH7にて容易に加水分解されることが見出された。ビスN-2-ヒドロキシエチルグリシン(ビシン)がこのような加水分解における重要な分子である。しかし、このようなビシン基はプロドラッグ、特に高分子系プロドラッグの合成に利用されていない。
【発明の開示】
【0014】
さらに、高分子系のプロドラッグを改善する必要性がある。本発明はかかる必要性に取組むものである。
【0015】
発明の概要
本発明の一態様においては、式(I):
【化1】
【0016】
[式中、R1とR2は実質的に非抗原性の高分子残基、C1-6アルキル、アラルキル、および末端分枝基からなる群から独立して選択され;
Zは、標的細胞中に能動輸送される成分、疎水性成分、二官能性結合成分およびそれらの組合わせから選択され;
Y1-3は、O、SまたはNR11のなかから独立して選択され;
L1とL2は独立して選択される二官能性リンカーであり;
R3〜R11、R24およびR25は、水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシならびにC1-6ヘテロアルコキシからなる群から独立して選択され;
Aは、脱離基、官能基およびアミンを含有する薬剤の残基、ならびにOHから選択され;
aとcはそれぞれ独立して0または正の整数であり;
b、dおよびeは独立して0または1であり;そして
m、n、o、およびpは独立して選択される正の整数である]
で表される化合物が提供される。
【0017】
本発明の他の態様は、(R1)と(R2)の少なくとも1つがαおよびω末端結合基の両方を含む高分子残基であるときに形成される二官能性化合物を含む。本発明のこの態様においては、当業者は2当量の生物学的活性薬、タンパク質、ポリペプチド、その他を高分子(好ましくはPEG)ビシンシステムと結合することができる。かかる二官能性高分子コンジュゲートの例は以下に式(IIa)および(IIb)のように例示される。
【化2】
【化3】
【0018】
[式中、全ての変数は上記の通りであり、そしてY4はO、SまたはNR11でありかつL3は二官能性リンカーである]
本発明の化合物を調製する方法および上記化合物を用いて治療する方法も提供される。
【0019】
本発明の目的における用語「残基」は、参照する化合物が高分子プロドラッグ担体成分を結合するための置換反応を受けた後に残存する、その化合物の成分を意味するものとする。
【0020】
本発明の目的における用語「高分子残基」または「PEG残基」は、生物学的活性化合物との反応を受けた後に残存する高分子またはPEGの成分を意味するものとする。
【0021】
本発明の目的における用語「アルキル」は、直鎖、分枝、置換、例えば、ハロ-、アルコキシ-、およびニトロ-、C1-12アルキル、C3-8シクロアルキルまたは置換シクロアルキルなどを包含するものとする。
【0022】
本発明の目的における「置換」とは、官能基または化合物に含まれる1個以上の原子に1個以上の異なる原子を付加するまたはそれと置き換えることを包含するものとする。
【0023】
本発明の目的において、置換アルキルは、カルボキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、ヒドロキシアルキルおよびメルカプトアルキルを包含し;置換アルケニルは、カルボキシアルケニル、アミノアルケニル、ジアルケニルアミノ、ヒドロキシアルケニルおよびメルカプトアルケニルを包含し;置換アルキニルは、カルボキシアルキニル、アミノアルキニル、ジアルキニルアミノ、ヒドロキシアルキニルおよびメルカプトアルキニルを包含し;置換シクロアルキルは、4-クロロシクロヘキシルなどの成分を包含し;アリールは、ナフチルなどの成分を包含し;置換アリールは、3-ブロモ-フェニルなどの成分を包含し;アラルキルは、トルイルなどの成分を包含し;ヘテロアルキルは、エチルチオフェンなどの成分を包含し;置換ヘテロアルキルは、3-メトキシ-チオフェンなどの成分を包含し;アルコキシは、メトキシなどの基を包含し;そしてフェノキシは、3-ニトロフェノキシなどの成分を包含する。ハロ-はフルオロ、クロロ、ヨードおよびブロモを包含するものとする。
【0024】
本発明の目的における「十分な量」は、当業者によって理解されている治療効果を達成する量を意味するものである。
【0025】
本発明の目的における「効果的に非抗原性」および「実質的に非抗原性」は、哺乳類動物において実質的に無毒でありかつ識別しうる免疫応答を誘発しないと当技術分野で理解されている全ての高分子材料を包含することを意味するものとする。
【0026】
本発明の目的における「正の整数」とは、正の全ての数、好ましくはほぼ1〜6、そしてさらに好ましくは1または2を意味するものとする。
【0027】
本発明の1つの主な利点は、ビシンリンカーによりプロドラッグの加水分解速度を操作して、それにより天然の物質をin vivoならびにin vitroにおいて様々な速度で放出することが可能になることである。例えば、アミノ酸または短いペプチド残基を含む様々な二官能性成分をL1〜L3のいずれかの成分として含ませて、プロドラッグのin vivoおよびin vitroでの加水分解速度および/または細胞取り込みなどを調節することができる。
【0028】
本発明の他の利点として、高分子輸送系を介して送達される標的化合物は、水溶解度およびin vivoでの循環寿命の測定可能な増加を示すことが多い。
【0029】
図面の簡単な説明
図1〜17は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【0030】
発明の詳細な説明
A.式(I)の化合物
本発明の一実施形態においては、式(I):
【化4】
【0031】
[式中、R1とR2は独立して実質的に非抗原性の高分子残基、C1-6アルキル、アラルキル、および末端分枝基からなる群から選ばれ;
Y1-3は、O、SまたはNR11のなかから独立して選択され;
L1とL2は独立して選択される二官能性リンカーであり;
Zは、標的細胞中に能動輸送される成分、疎水性成分、二官能性結合成分およびそれらの組合わせから選択され;
R3〜R11、R24およびR25は、水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシならびにC1-6ヘテロアルコキシからなる群から独立して選択され;
Aは、脱離基、官能基およびアミンを含有する薬剤の残基、例えば生物学的に活性なタンパク質、ペプチド、化学治療薬など、ならびにOHから選択され;
aとcはそれぞれ独立して0または正の整数であり;
b、dおよびeは独立して0または1であり;そして
m、n、o、およびpは独立して選択される正の整数である。]
で表される化合物が提供される。
【0032】
本発明のある特定の好ましい態様においては、1以上のR1とR2は実質的に非抗原性の高分子残基、例えばポリエチレングリコール(PEG)基を含む。場合によっては、R1-2は本明細書においてJと記載したキャッピング基を含む。高分子キャッピングに用いるための好ましいJ基は、OH、NH2、SH、CO2H、C1-6アルキル成分、例えばCH3、ならびに式(IIIa)および(IIIb):
【化5】
【0033】
[式中、全ての変数は先に定義した通りである]
で表される化合物などの成分を含む。
【0034】
本発明の式を構成する他の変数について、本発明のある特定の態様においては、以下のものが好ましい:すなわち、
ある特定の態様においては、R1とR2はポリアルキレンオキシド残基、そしてさらに好ましくはポリエチレングリコール残基であり;
他の態様においては、R1とR2は以下にさらに詳細に記載されるビシン系の末端分枝基であって、多重高分子鎖ローディングを可能にし;
R3〜R10およびR24-25はそれぞれ水素であり;
a、b、c、d、m、 n、oおよびpは好ましくはそれぞれ1であり;
eは好ましくは0または1であり;
L1とL2はそれぞれ好ましくはNHCH(CH3)C(O)-、NHCH2C(O)-、NH(CH2CH2O)2CH2C(O)-、またはNH(CH)3OC(O)-の1つであり;そして
Zは先に定義したとおり
【化6】
【0035】
であるか、または、代わりにZはアミノ酸残基、ペプチド残基、標的細胞中に能動輸送される基、疎水基を含むかまたはそのような特性の組み合わせを有するものであり、そして生物学的活性のあるA基と組合わせると、式(I)、(II)などのビシン高分子成分から放出されるプロドラッグが形成される。本願出願人による米国特許出願第09/758,993号も参照すること、なおこの内容は本明細書に参照により組み入れられる。
【0036】
B.実質的に非抗原性の高分子
以上記載したように、R1とR2は好ましくは、それぞれ実質的に非抗原性である水溶性高分子残基、例えばポリアルキレンオキシド(PAO)そしてさらに好ましくはポリエチレングリコール、例えばmPEGである。説明のためで、限定するものでないが、R1のポリエチレングリコール(PEG)残基成分は、
J-O-(CH2CH2O)x-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2C(O)-O-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2NR12-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2SH-、
-OC(O)CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2C(O)-O-、
-NR12CH2CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2CH2NR12-および
-SHCH2CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2CH2SH-
の中から選択することができる。
【0037】
同様に、R2のPEG残基は、
J-O-(CH2CH2O)x-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2C(O)-O-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2NR13-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2SH-、
-OC(O)CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2C(O)-O-、
-NR13CH2CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2CH2NR13-および
-SHCH2CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2CH2SH-
の中から選択することができる。
【0038】
以上の全ての場合に、xは重合度であり、R23-24は水素、C1-6アルキル、C3-12分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシの中から個々に選択され、そしてJは式IIについて記載したキャッピング基である。
【0039】
或る特に好ましい実施形態においては、R1-2はCH3-O-(CH2CH2O)x-、CH3-O-(CH2CH2O)x-CH2C(O)-O-、CH3-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2NH-およびCH3-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2SH-
(式中、xは正の整数であり、好ましくは重量平均分子量が約2,000〜約25,000Daとなるように選択される)の中から選択される。本発明の代わりの実施形態においては、高分子の分子量は当業者の必要性に依存して数百〜40,000以上の範囲にある。PEGは一般的に構造:-O-(CH2CH2O)x-により表され、そしてR1とR2は好ましくはこの式で表される残基を含む。
【0040】
高分子の重合度(x)は約10〜約2,300であってよい。この重合度は高分子鎖中の繰り返し単位数を表し、高分子の分子量に依存する。(J)成分は、本明細書に定義したキャッピング基、すなわち、高分子の端末に見出される基であって、複数の態様においては、NH2、OH、SH、CO2H、C1-6アルキルまたは他のPEG末端活性化基のいずれから選択してもよく、当業者はこのような基を理解している。
【0041】
また、ポリプロピレングリコール、分枝PEG誘導体、例えば本願出願人による米国特許第5,643,575号('575特許)に記載されたもの、「星型PEG」および多枝(multi-armed)PEG、例えばShearwater社の2001年カタログ「生物医療用のポリエチレングリコールおよび誘導体(Polyethylene Glycol and Derivatives for Biomedical Application)」に記載されたものなども有用である。以上のそれぞれの開示は本明細書に参照により組み入れられる。'575特許に記載される分枝の作製は、生物学的活性分子または酵素上の単一結合点からの高分子ローディングを増加する方法として、ビシン基からの第二級または第三級分枝の作製を可能にする。必要であれば、必要以上の試験を行うことなく、水溶性高分子を官能化して二官能性結合基を付加することができるのは理解されるであろう。
【0042】
PAOおよびPEGは実質的に重量平均分子量が変化してもよいが、本発明のほとんどの態様において、好ましくは、R1とR2はそれぞれ約2,000〜約25,000Daの重量平均分子量を有する。
【0043】
本明細書に含まれる高分子材料は、好ましくは、室温で水溶性である。そのような高分子の限定するものでないリストとしては、ポリアルキレンオキシドホモポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオール、それらのコポリマーおよびそれらのブロックコポリマー(ブロックコポリマーの水溶性が維持されることを条件として)が挙げられる。
【0044】
さらなる実施形態において、そしてPAO系高分子の代替として、R1とR2は、それぞれ任意に1以上の効果的に非抗原性の物質、例えばデキストラン、ポリビニルアルコール、糖鎖系高分子、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)、ポリアルキレンオキシドおよび/またはそのコポリマーから選択される。本願出願人による米国特許第6,153,655号も参照されたい(その内容は参照により本明細書に組み入れられる)。当業者ならば、本明細書にPAO、例えばPEGに対して記載したのと同じタイプの活性化を採用できることを理解するであろう。当業者ならばさらに、上記のリストは例示にすぎず、本明細書において記載する性質を有する全ての高分子材料が包含されかつ他のポリアルキレンオキシド誘導体、例えばポリプロピレングリコールなども包含されることを理解するであろう。
【0045】
本発明の高分子はまた、二官能性材料、例えばポリ(アルキレングリコール)ジアミンを用いて共重合して、浸透性コンタクトレンズ、創傷包帯、薬物送達デバイスなどに利用する上で好適な相互貫入高分子ネットワークを形成することもできる。このような分枝作製の立体的制限と水溶性は、当業者であれば容易に理解するであろう。好ましくは、しかし、多分枝高分子の分子量は80,000ダルトンを超えるものでない。
【0046】
C.二官能性リンカー基:L1およびL2
本発明の多くの態様、そして特に式(I)において、L1および/またはL2は、ビシン誘導体の高分子鎖、例えばR1および/またはR2への付加を容易にする結合基である。提供される結合は、直接の結合または当業者に公知のさらなるカップリング基を介する結合のいずれであってもよい。色々なLx基が明細書に記述されていて、それらはL1と同じ基の中から選択されると解釈される。本発明のこの態様において、L1は、好ましくは:
【化7】
【0047】
[式中、R14〜R17およびR19は、水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群から独立して選択され;
R18は、水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシ、NO2、ハロアルキルならびにハロゲンからなる群から選択され;そして
tとqは個々に選択される正の整数、好ましくは約1〜約4である]
の中から選択される。
【0048】
同様に、L2は、
【化8】
【0049】
[式中、R20〜R23およびR25は、独立して水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群から選択され、
R24は、水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシ、NO2、ハロアルキルならびにハロゲンからなる群から選択され;そして
vとwは、個々に選択される正の整数、好ましくは約1〜約4である]
の中から選択される。
【0050】
本発明の他の態様においては、L1および/またはL2はアミノ酸残基を含んでもよい。アミノ酸は、公知の天然L-アミノ酸、例えば、いくつかを挙げれば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、セリン、トレオニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、および/またはそれらの組合わせから選択することができる。L1および/またはL2がペプチドを含むとき、そのペプチドのサイズは、例えば、約2〜約10個のアミノ酸残基の範囲内にある。或る好ましい実施形態においては、そのペプチドは、Gly-Phe-Leu-である。あるいは、グリシンを上記トリペプチドのロイシンの後に加えて4残基ペプチドを作ってもよい。
【0051】
アミノ酸残基は、好ましくは、式
【化9】
【0052】
[式中、X’はO、SまたはNR26であり、Y5はO、SまたはNR27であり、そしてR26、R27およびR28は独立してR3を定義する基と同じ基から選択されるが、好ましくはHまたは低級アルキルであり;そしてfは約1〜約10の正の整数であり、好ましくは1である]
で表される。
【0053】
天然アミノ酸の誘導体および類似体だけでなく、様々な当技術分野で公知の疎水性または非疎水性の非天然アミノ酸(DまたはL)も本発明の範囲内にあると意図している。単に例として挙げると、アミノ酸類似体および誘導体は:2-アミノアジピン酸、3-アミノ-アジピン酸、β-アラニン、β-アミノプロピオン酸、2-アミノ酪酸、4-アミノ-酪酸、ピペリジン酸、6-アミノカプロン酸、2-アミノヘプタン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-アミノピメリン酸、2,4-ジアミノ酪酸、デスモシン、2,2-ジアミノピメリン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、n-エチルグリシン、N-エチルアスパラギン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロイソロイシン、N-メチルグリシン、サルコシン、N-メチルイソロイシン、6-N-メチル-リシン、N-メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、およびその他を含み、これらは記述するにはあまりにも多数であり、参照により本明細書に組み入れられる63 Fed. Reg., 29620, 29622に掲げられている。
【0054】
短いペプチドは、例えば、先に記述した、2〜約10個、または以上、のアミノ酸残基からなるペプチドである。
【0055】
D.Z成分とその官能基
本発明の一態様においては、Zは、L3-C(=Y4)[式中、L3は、L1およびL2を定義する基の中から選択される二官能性リンカーでありかつY4は、Y1-3を定義する基と同じ基の中から選択される]である。本発明のこの態様においては、Z基は、A基とビシン輸送形態の残部との間の結合の役割を果たす。
【0056】
本発明の他の態様においては、Zは、標的細胞中に能動輸送(active transport)される成分、疎水性成分、およびそれらの組合わせである。Zは好ましくは1価であるが、場合によっては、Zは2価または多価であり、複数個のA基のビシン系高分子との結合を可能にしてもよい。能動輸送を達成するために、Zは、L1およびL2について先に記載したいずれかのアミノ酸またはペプチド残基、糖残基、脂肪酸残基、C6-18アルキル、置換アリール、ヘテロアリール、-C(=O)、-C(=S)または-C(=NR29)[式中、R29はH、低級アルキル、その他である]などを含んでもよい。
【0057】
本発明のこの態様は、ビシン-高分子系プロドラッグコンジュゲートに組込むのに好適な生物学的活性物質はそれ自身、ビシン結合組成物からの加水分解放出後に活性を持たない物質/化合物であるが、さらなる化学プロセス/反応を受けた後に活性を持つようになるという原理に広く基づくものである。この実施形態については、ビシン系高分子システムにより血流に送達される治療薬または診断薬、ペプチド、ポリペプチドなどは、目的の標的細胞中に進入するまたは能動輸送されるまで不活性のままであり、到達すると、細胞内化学により、例えば組織または細胞に存在する酵素または酵素系により活性化される。
【0058】
本発明のこの態様のプロドラッグは、ビシン-高分子系コンジュゲートがin vivo加水分解により切断されると、生物学的活性物質(本明細書ではAと記載)は、Z成分と結合したままで細胞外液中に放出されるように調製する。本発明のこの態様における生物学的活性物質は、好ましくは、限定されるものでないが、小分子の治療薬および/または診断薬である。例えば、1つの可能なZ-A組合わせはロイシン-ドキソルビシンであり、他の組合わせはアミノ酸結合カンプトテシンまたはパクリタキセルであり、そして治療される組織は腫瘍組織である。
【0059】
本発明が作用する機構についていずれかの理論または仮説に束縛されることを意図しないが、例えば、EPR効果を示す組織の細胞外組織空間中への、保護および/または輸送増強された形態での生物学的活性物質の腫瘍細胞中への輸送率は、生物学的活性物質の送達による輸送エンハンサーとして選択される付加成分に依存すると考えられる。
【0060】
なおさらなる選択肢においては、輸送エンハンサー(Z)は細胞膜輸送系に対する公知の基質の中から選択される。単に例として挙げれば、細胞はある特定の栄養および内分泌因子などを能動輸送することが公知であり、そのような栄養またはその類似体は、生物学的有効物質を標的細胞中への能動輸送を増強するために容易に採用される。これらの栄養の例としては、アミノ酸残基、ペプチド、例えば、約2〜約10残基または以上の、サイズの短いペプチド、単純な糖および脂肪酸、内分泌因子などが挙げられる。
【0061】
短いペプチドは、上記のように、例えば2〜約10個、または以上の、アミノ酸残基のペプチドである。本発明のこの実施形態において、そのようなペプチド輸送エンハンサーは疎水性である必要はないが、色々な方法で摂取を増強しおよび/または結合した小分子薬を一般血流中の早発性加水分解から保護する機能があると考えられる。例えば、ペプチド輸送エンハンサーおよび他の類似の分子量範囲の輸送エンハンサーは、血漿に基づく加水分解酵素による生物学的活性薬からの切断を立体的に妨害するが、次いで標的細胞内において、様々なペプチドおよび/またはプロテアーゼ、例えばカテプシンにより切断されると考えられる。
【0062】
ある特定の好ましい態様においては、Zは疎水性成分である。疎水性が有効性に寄与する方法についてのいずれかの理論または仮説に束縛されることを意味するのでなく、疎水性成分は、細胞外組織空間、例えば血漿中に存在する加水分解酵素などの攻撃を阻止することにより、輸送エンハンサーを活性生物学的薬から切り離す細胞外切断を阻止すると思われる。従って、いくつかの好ましい輸送エンハンサーとしては、例えば、疎水性アミノ酸、例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン、ならびに、先に述べたように、それらの非天然誘導体およびそれらの類似体が挙げられる。
【0063】
さらなる選択肢における輸送エンハンサーは疎水性有機成分である。単なる例として、有機成分はC6-18、またはそれより大きく、アルキル、アリールまたはヘテロアリール置換されているかまたは置換されてない。有機成分輸送エンハンサーはまた、例えば、-C(=S)および/または-C(=O)を含む有機官能基を包含しかつ含むことも考えられる。
【0064】
E.式(I)のA基
1.脱離基
Aが脱離基である態様においては、好適な成分としては、限定されることなく、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、ハロゲン、N-ヒドロキシフタルイミジル、p-ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N-ヒドロキシスクシンイミジル;チアゾリジニルチオン、O-アシル尿素、または
【化10】
【0065】
などの基であり、当業者には他の好適な脱離基も明らかであろう。
【0066】
本発明の目的に対して、脱離基は、所望の標的、すなわち生物学的活性成分、二官能性スペーサー、中間物などに見出される求核成分と反応することができる基と理解されるものとする。従って標的は、置換のための基、例えばタンパク質、ペプチド、酵素、天然または化学合成されたドキソルビシンのような治療薬分子、化合物42などの単保護ジアミンのようなスペーサーに見出されるNH2基を含有する。
【0067】
本発明の化合物はまた、所望であれば、ビシン基と脱離基または結合標的(薬物)との間のスペーサー基を含んでもよい。スペーサー成分は、18個以下の炭素原子を含有するヘテロアルキル、アルコキシ、アルキルまたはさらに付加された高分子鎖であってもよい。スペーサー成分は標準の合成技術を用いて付加することができる。A用に選択されるこれらの成分はまた、生物学的活性のある求核成分だけでなく他の成分と反応してもよいと理解されるべきである。
【0068】
2.官能基
Aはまた官能基であってもよい。限定するものでないそのような官能基の例としては、ビシン成分とアミン含有スペーサーを介して結合できるマレイミジル、ビニル、スルホンの残基、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、メルカプト、ヒドラジド、カルバゼート(carbazate)などが挙げられる。ビシン成分と一度結合すると、官能基(例えばマレイミド)を用いて、ビシン-高分子を標的、例えばポリペプチドのシステイン残基、アミノ酸またはペプチドスペーサーなどに付着させることができる。
【0069】
3.アミンを含有する化合物の残基
本発明のいくつかの態様においては、Aはアミンを含有する化合物の残基である。限定するものでないそのような好適な化合物のリストは、有機化合物、酵素、タンパク質、ポリペプチドなどの残基を含む。有機化合物は、限定するものでなく、例えばダウノルビシン、ドキソルビシンを含むアントラサイクリン化合物;p-アミノアニリンカラシ油(p-aminoaniline mustard)、メルファラン、Ara-C(シトシンアラビノシド)および関係抗代謝物化合物、例えば、ゲムシタビン、などの成分を含む。あるいは、Aはアミンを含有する心血管薬、抗新生物薬、抗感染薬、抗真菌薬、例えばニスタチンおよびアンフォテリシンB、抗不安薬、胃腸薬、中枢神経系活性化薬、鎮痛薬、受精薬、避妊薬、抗炎症薬、ステロイド薬などの残基であってもよい。
【0070】
以上に加えて、Aはまた、酵素、タンパク質、ポリペプチド、などの残基であってもよい。高分子結合に利用しうる少なくとも1つの基、例えばε-アミノ、システイン、チオ、N-末端アミノを有する好適なタンパク質、ポリペプチド、酵素、ペプチドなどとしては、生理学的または薬理学的活性を有する物質、ならびに有機溶媒中の反応を触媒することができる物質が挙げられる。アミンを含有する物質の唯一の他の要件は、これらの物質が、未改変タンパク質、酵素、ペプチドなどに付随する活性の少なくともいくつかの部分を、高分子輸送体と結合した後に、または、もし関連があれば、親化合物が加水分解されかつ放出された後に維持することである。
【0071】
目的のタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドとしては、限定されるものでないが、ヘモグロビン、血清タンパク質、例えば第VII、VIII、およびIX因子を含む血液因子;免疫グロブリン、サイトカイン、例えばインターロイキン、すなわちIL-1〜IL-13、など、α、β、およびγ-インターフェロン、顆粒球コロニー刺激因子を含むコロニー刺激因子、血小板由来増殖因子およびホスホリパーゼ活性化タンパク質(PLAP)が挙げられる。他の一般的な生物学的または治療上の目的のタンパク質としては、インスリン、植物タンパク質、例えばレクチンおよびリシン、腫瘍壊死因子と関係タンパク質、増殖因子、例えばトランスフォーミング増殖因子、例えばTGFαまたはTGFβおよび上皮細胞増殖因子、ホルモン、ソマトメジン、エリスロポエチン、色素ホルモン、視床下部放出因子、抗利尿ホルモン、プロラクチン、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、組織プラスミノゲンアクチベーターなどが挙げられる。目的の免疫グロブリンとしては、IgG、IgE、IgM、IgA、IgDおよびそれらのフラグメントが挙げられる。
【0072】
いくつかのタンパク質、例えばインターロイキン、インターフェロンおよびコロニー刺激因子も、通常、組換え技術を利用する結果として、非グリコシル化形態で存在する。非グリコシル化バージョンも本発明のタンパク質に包含される。
【0073】
目的の酵素としては、糖鎖特異酵素、タンパク質分解酵素、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、加水分解酵素、リアーゼ、異性化酵素およびリガーゼが挙げられる。特定の酵素に限定されることなく、目的の酵素の例としては、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アルギニンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、エンドトキシナーゼ、カタラーゼ、キモトリプシン、リパーゼ、ウリカーゼ、アデノシンジホスファターゼ、チロシナーゼおよびビリルビンオキシダーゼが挙げられる。目的の糖鎖特異酵素としては、グルコースオキシダーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、グルクロニダーゼなどが挙げられる。
【0074】
本明細書に含まれるのはまた、in vivo生物活性を示す生物学的高分子のいずれかの部分である。これには、アミノ酸配列、核酸(DNA、RNA)、ペプチド核酸(PNA)、オリゴヌクレオチド、抗体フラグメント、1本鎖結合タンパク質(例えば米国特許第4,946,778号を参照、なおこの開示は本明細書に参照により組み入れられる)、抗体またはフラグメントの融合体を含む結合分子、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体および触媒抗体が含まれる。
【0075】
タンパク質またはその部分は、当業者に公知である技術、例えば組織培養、動物供給源からの抽出によって、または組換えDNA手法によって調製または単離することができる。タンパク質、ポリペプチド、アミノ酸配列などのトランスジェニック供給源も意図している。そのような物質は、タンパク質が乳、血液または組織に発現されるトランスジェニック動物、すなわちマウス、ブタ、ウシなどから得られる。トランスジェニック昆虫およびバキュロウイルス発現系も供給源として意図している。さらにタンパク質の突然変異バージョン、例えば突然変異インターフェロンも本発明の範囲に包含される。
【0076】
他の目的のタンパク質はアレルゲンタンパク質、例えばブタクサ(ragweed)、抗原E、ミツバチ毒、ダニアレルゲンなどである。以上は本発明に好適であるタンパク質の例示である。本明細書に定義した、具体的に記述していないが利用しうるアミノ基を有するタンパク質も意図されており、本発明の範囲に包含されることは理解されるべきである。
【0077】
本発明の好ましい態様において、アミノを含有する化合物は、動物、例えばヒトを含む哺乳動物の治療において、治療を所望する症状に対する医療または診断に用いることが好適である生物学的活性化合物である。以上のリストは、改変しうる化合物についての例示を意味し、限定するものではない。当業者であれば、他のそのような化合物/組成物も必要以上の実験なしに同様に改変しうることを理解するであろう。具体的に記述しないが、好適な結合基を有する生物学的活性物質もまた意図されており、本発明の範囲内に包含されることは理解されるべきである。
【0078】
F.ビシン結合高分子の合成
具体的なビシン系高分子化合物の合成を実施例で説明する。さて、説明のために図1を参照すると、1つの好ましい方法は:
1) 酸保護されたビシン、例えば
【化11】
【0079】
[式中、tBuは保護基でありかつ全ての他の変数は先に式(I)で説明したのと同じである]
を合成するステップ、
2) ブロックされた二官能性スペーサーをビシン分子のそれぞれのヒドロキシル基とコンジュゲート化するステップ、
3) 得られる中間体を脱保護して、それを活性化された高分子、例えばPNP-PEGまたはSC-PEGと塩基性カップリング条件下で反応させるステップ
4) ブロックされた酸を脱保護し、その後に酸を好適な活性化基、例えばチアゾリジニルチオンを用いてカップリング条件下で活性化するステップから成る。他の当技術分野で認識されている保護基をt-Buの代わりに用いてもよいことは理解されるであろう。このように活性化されたPEGまたは高分子ビシン誘導体は、以後、医薬、ペプチド、スペーサーなどと反応することができる。
【0080】
好適なカップリング剤としては、限定されるものでないが、1,3-ジイソプロピル-カルボジイミド(DIPC)、好適なジアルキルカルボジイミド、2-ハロ-1-アルキル-ピリジニウムハロゲン化物(Mukaiyama試薬)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDC)、プロパンホスホン酸環状無水物(PPACA)およびフェニルジクロロリン酸など(例えば、Sigma-Aldrich Chemicalのような市販先から入手可能であるかまたは公知の技術を用いて合成されるもの)が挙げられる。
【0081】
好ましくは置換基を、不活性溶媒、例えばテトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(CH3CN)、メチレンクロライド(DCM)、クロロホルム(CHCl3)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはそれらの混合物中で反応させる。好適な塩基としては、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミン、KOH、カリウムt-ブトキシドおよびNaOHなどが挙げられる。反応は通常、約0℃〜約22℃(室温)の温度で実施する。
【0082】
さらに具体的に、活性化されたビシン誘導体を作る1つの方法は、
1) ビスN-2-ヒドロキシエチルグリシンのt-ブチルエステルを作って中間物:
【化12】
【0083】
を得るステップ、
2) N-ヒドロキシエチル基を、保護されたアミノ酸または他の保護されたリンカー(L1)とコンジュゲート化してさらなる中間物:
【化13】
【0084】
を得るステップ、
3) 次いで、二官能性スペーサーを脱保護して該中間物をPEG化するステップ、および
4) 残るブロッキング基を脱保護してビシン誘導体を活性化するステップ
から成る。
【0085】
選択する経路に関わらず、本明細書に記載の合成技術から得られる好ましい化合物の数例としては、
【化14】
【0086】
[式中、A1は脱離基、例えば
【化15】
【0087】
または上記のE.1節で記載した脱離基などの他の脱離基である]が挙げられる。活性化されたビシン-高分子の好適な標的との反応は、A1をA2(A2は生物学的活性成分、スペーサーなどの残基である)に変換して、活性化された高分子のコンジュゲートへの変換をもたらす。
【0088】
G.多重的な高分子のローディング
本発明のなおさらなる態様においては、ビシン系の多重分枝高分子化合物が提供される。特に、基本のビシン誘導体は1以上の末端分枝基を含むようにさらに改変される。好ましくは、末端分枝基は、式:
【化16】
【0089】
[式中、Y5はO、SまたはNR46であり;
L4はL1を定義する基と同じ基から選択される二官能性リンカーであり;
R40〜R46は水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6 アルコキシ、フェノキシおよびC1-6 ヘテロアルコキシからなる群から独立して選択され;
jとkはそれぞれ独立して0または正の整数であり;
qは0または1であり;
g、h、vとwは正の整数から独立して選択され;
R50は実質的に非抗原性の高分子残基、C1-6アルキル、C1-6アラルキル、および
【化17】
【0090】
(式中、L5はL1を定義する基と同じ基から選択される二官能性リンカーであり;
そして、R60は実質的に非抗原性の高分子残基、C1-6アルキルおよびC1-6アラルキルからなる群から選択される)からなる群から選択される]
で表される。
【0091】
得られる分枝ビシン誘導体の構造式は:
【化18】
【0092】
[式中、全ての変数は先に定義した通りである]
である。
【0093】
以下におよび実施例において示すように、ブロックされた第一級アミンを含有するビシン誘導体中間物を2当量の活性化されたビシン高分子と反応させて、生物学的活性分子、酵素、標的などと、単一の結合点で接続した高分子を4本鎖まで含有するビシン高分子系を作る。この方法を繰返して、2当量の上記4本鎖高分子ビシン誘導体を1当量のブロックした第一級アミンビシン誘導体と反応させることにより、8本鎖の誘導体を作ることができる。
【0094】
H.混合リンカーシステム
本発明の他の態様においては、生物学的活性成分(本明細書ではAとして記載した)に付着した第2の異なるタイプの高分子システムを含有するビシン系高分子輸送システムを提供する。混合リンカーまたはハイブリッドシステムは少なくとも2つの方法により調製することができる。例えば、最初にビシン系システムを以上考察したように合成し、次いでビシンが付着した生物学的活性成分を、チアゾリジニルチオン、スクシンイミジルカーボネートまたはマレイミドで活性化されたPEGなどの当技術分野で公知の方法で活性化された高分子を用いて、PEG化することができる。あるいは、生物学的活性物質を最初にPEG化し、次いで上記の活性化されたビシン系システムと反応させることができる。混合リンカーまたはハイブリッドシステムは、複数のアミノ基(例えば、リシンのアミノ基またはN末端基)、システインまたはチオ基を様々な高分子リンカーの結合に利用可能なタンパク質、酵素などにとって、より好適であることは理解されるであろう。本発明の目的における用語「活性化された高分子(activated polymers)」は、酵素、タンパク質などに見出される1以上のアミノ基、ヒスチジン窒素、カルボキシル基、スルフヒドリル基など、ならびに合成によって調製された有機化合物に見出されるこのような基と反応することができる1以上の末端基を含有する高分子を含むことが理解されるであろう。さらに、活性化基(activating group)を用いて、上記の活性化されたビシンシステムを作ることができるのも理解されるであろう。
【0095】
活性化末端基は、従って、本発明の二重プロドラッグ輸送系が合成される前または後に、高分子の生物学的活性物質、すなわちタンパク質、酵素などとのコンジュゲート形成を容易にする基である。例えば、米国特許第4,179,337号および本願出願人による米国特許第6,113,906号を参照すること、またこの開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0096】
I.in vivo診断学
本発明のさらなる態様は、場合によっては、診断または造影を目的として選択される診断タグを上記の輸送エンハンサーに結合して調製した本発明のコンジュゲートを提供する。従って、好適なタグは、好適な成分、例えばアミノ酸残基を、当技術分野の標準放射性同位元素、放射線不透過性標識、磁気共鳴標識、またはその他、磁気共鳴映像法に好適なその他の非放射性同位元素標識、蛍光標識、外科処置中の腫瘍組織のイメージングを可能にする可視色を呈する標識および/または紫外線、赤外線または電気化学的刺激下で蛍光発光可能な標識などに結合させることにより作製される。場合によっては、コンジュゲート化する治療成分に診断タグを組み込みおよび/または結合させ、動物またはヒト患者内の治療用生物活性材料の分布をモニターできるようにする。
【0097】
本発明のなおさらなる態様では、本発明のタグ付きコンジュゲートが当技術分野で公知な方法により、例えば、放射性同位元素標識をはじめとする好適な標識を用いて容易に作製される。単なる例として、これらの標識には、in vivoにおいて腫瘍細胞に選択的に取り込まれる放射免疫シンチグラフ用薬剤を製造するための131ヨウ素、125ヨウ素、99mテクネチウムおよび/または111インジウムが挙げられる。例えば、単なる例として、参照により本明細書に組み入れる米国特許第5,328,679号;同第5,888,474号;同第5,997,844号;および同第5,997,845号により示された方法を含む、ペプチドをTc-99mに結合させる当技術分野で公知の方法が多数ある。
【0098】
一般的に、患者の腫瘍組織の解剖学的局在化を決定するために、腫瘍を有すると予測される患者または動物にコンジュゲートタグが投与される。標識化免疫グロブリンが腫瘍部位に局在化するのに十分な時間が経過した後、標識が発生するシグナルを、例えば、X線ラジオグラフィー、コンピュータ体軸横断X線断層撮影、MRIにより、発光性タグの機器検出により、ガンマカメラなどのフォトスキャン装置、または選択されるタグの性質に好適なその他の方法もしくは装置により視覚的に検出する。
【0099】
次いで、検出されたシグナルを画像または腫瘍部位の解剖学的および/もしくは生理学的判定に変換する。この画像によりin vivoにおける腫瘍の位置付けが可能になり、好適な治療計画の立案ができる。タグ付き成分自体が治療薬である実施形態では、検出されたシグナルによって治療中の解剖学的局在化の確証が得られ、診断的および治療的インターベンションを追跡するための基準が得られる。
【0100】
J.治療方法
本発明の他の態様は、哺乳類における種々の病状に対する治療方法を提供する。これらの方法は、かかる病状の治療が必要な哺乳類に、本明細書に記載したように製造したプロドラッグ、例えばドキソルビシン-ビシン結合-PEGコンジュゲートの有効量を投与することを含む。該組成物は特に、新生物性疾患を治療する、全身腫瘍組織量を減少させる、新生物転移を予防する、および哺乳類における腫瘍/新生物増殖の再発を予防するのに有用である。
【0101】
投与するプロドラッグの量はその中に含まれる親分子、例えばペプチド、ポリペプチド、タンパク質、酵素などに応じたものとなる。一般的に、治療方法に使用するプロドラッグの量は哺乳類において所望の治療効果を効果的に達成する量である。必然的に、種々のプロドラッグ化合物の投与量は親化合物、in vivo加水分解速度、高分子の分子量などによって多少変わる。当業者は、臨床経験および治療適用に基づき、選択されるプロドラッグの最適投与量を決定するであろう。実際の投与量については必要以上の試験を行うことなく、当業者には明らかであろう。
【0102】
本発明の組成物を、哺乳類へ投与するために好適な1種以上の医薬組成物中に含ませることができる。医薬組成物は当技術分野で周知の方法に従って製造される液剤、懸濁剤、錠剤、カプセル剤などの形態であってよい。また、当業者が要すれば、かかる組成物の投与は経口および/または非経口経路によるものであってよいと考えられる。該組成物の溶液および/または懸濁液は、例えば、当技術分野で公知の方法、例えば、静脈内、筋肉内、皮下注射などによる、組成物の注入または浸潤用の担体ビヒクルとして使用してもよい。
【0103】
かかる投与はまた、体内空間もしくは体腔中への注入、ならびに吸入および/または経鼻経路によるものであってもよい。しかしながら、本発明の好ましい態様では、プロドラッグはその必要のある哺乳類に非経口投与される。
【実施例】
【0104】
次の実施例は本発明のさらなる理解を進めるためのものであり、決して本発明の有効範囲を制限するものではない。実施例で列挙した下線引き太字体の数字(化合物に対する)は図1〜17に示される数字と対応する。
【0105】
概説 反応は全て乾燥窒素またはアルゴン雰囲気下で行った。市販の試薬はさらなる精製を行わずに使用した。全てのPEG化合物は使用前に真空下またはトルエンからの共沸蒸留により乾燥させた。NMRスペクトルはVarian Mercury(登録商標)300 NMR分光計および、特に断らない限り、溶媒として重水素化クロロホルムを用いて取得した。化学シフト(σ)はテトラメチルシラン(TMS)から低磁場へ向かう100万分の1(ppm)単位で報じた。
【0106】
HPLC手法 反応混合物および中間体と最終生成物の純度は、Beckman Coulter System Gold(登録商標)HPLC計器により、ZOBAX(登録商標)300 SB C-8逆相カラム(150 x 4.6mm)またはPhenomenex Jupiter(登録商標)300A C18逆相カラム(150 x 4.6mm)を採用し、多波長UV検出器によって、0.5%トリフルオロ酢酸(TFA)中のアセトニトリル30〜90%の勾配を用いて、1mL/minの流速でモニターした。
【0107】
実施例1
化合物(3)の合成
化合物1(24.0g、0.228mol)と化合物2(12.0g、0.061mol)の無水塩化メチレン(DCM、400mL)中の溶液を、室温で18時間攪拌した。反応混合物を水(4x150mL)を用いて洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムを通して乾燥し、次いで濾過し、そして溶媒を真空で除去して、化合物3(6.1g、0.0279mol、46%)を得た。13C NMR(67.8 MHz、CDCl3)δ 172.1、81.4、59.5、57.0、56.3、27.8。
【0108】
実施例2
化合物(4)の合成
化合物3(0.50g、2.28mmol)、N-トリチルグリシン(4.26g、13.4mmol)、4,4’-ジメチルアミノピリジン(DMAP、2.18g、17.8mmol)およびスカンジウムトリフラート(0.65g、1.32mmol)の無水DCM(25mL)中の溶液を、-8℃まで氷塩浴中で30分間冷却した。1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC、3.0g、15.6mmol)を加えて、反応混合物を-8℃にて30分間、次いで室温にて12時間攪拌した。反応混合物を濾過し、濾液を0.1N HCl(3x20mL)、蒸留水(20mL)を用いて洗浄し、乾燥し(MgSO4)、そして真空で溶媒を蒸発させた。生成物をさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製して、化合物4(1.40g、1.71mmol、75%)を得た。13C NMR(67.8MHz、CDCl3)δ 172.38、170.67、145.46、128.71、128.03、126.61、81.14、70.67、63.08、56.18、52.70、45.79、28.02。
【0109】
実施例3
化合物(5)の合成
化合物4(0.240g、0.292mmol)を、トリフルオロ酢酸(TFA)のDCM(10mL)中の1%溶液に溶解し、室温で30分間攪拌した。溶媒を減圧下で部分的に除去し、エチルエーテル(50mL)を加えて生成物を沈殿させた。デカントして上清のエーテルを移した後に、残留物を再びDCMに溶解し、真空下で蒸発して化合物5(0.148g、0.263mmol、90%)を得た。13C NMR(67.8MHz、CDCl3/CD3OD)δ 167.85、166.81、83.40、61.81、55.11、52.78、39.79、27.47。
【0110】
実施例4
化合物(6)の合成
モノメトキシポリ(エチレングリコール)4-ニトロフェニルカルボナート(mPEG-PNP、12kDa、6.0g、0.49mmol)とDMAP(0.12g、0.98mmol)の無水DCM(35mL)中の溶液に、化合物5(0.17g、0.30mmol)のDCM/ジメチルホルムアミド(DMF)(32mL/3mL)中の溶液を滴状で30分間の時間をかけて加えた。得られる混合物を室温でさらに12時間攪拌した。溶媒を減圧下で部分的に除去し、次いでPEG誘導体をエチルエーテルを用いて沈殿させた。濾過により粗PEG生成物を得て、これをDCM/エチルエーテル(24mL/96mL)から、次いでイソプロパノール(IPA、120mL)からそれぞれ結晶化して化合物6(5.6g、0.23mmol、76%)を得た。13C NMR(67.8MHz、CDCl3)δ 170.16、169.68、156.10、80.76、63.11、58.67、58.52、52.46、42.23、27.82。
【0111】
実施例5
化合物(7)の合成
PEG誘導体6(5.6g、0.23mmol)をTFA/DCM(30mL/60mL)に溶解し、室温で12時間攪拌した。溶媒を減圧下で除去した。残留物を10mL DCMに再溶解し、エチルエーテルを用いて沈殿させ、濾過し、そして複数部のエーテルを用いて洗浄し、化合物7(5.1g、0.21mmol、91%)を得た。13C NMR(67.8MHz、CDCl3)δ 171.25、169.68、156.21、62.46、58.66、58.49、52.82、42.24。
【0112】
実施例6
化合物(8)の合成
化合物7(5.1g、0.21mmol)、DMAP(0.076g、0.63mmol)、および2-メカプトチアゾリン(2-MT、0.075g、0.63mmol)の無水DCM(70mL)中の溶液を、0℃に氷浴中で30分間冷却し、そしてEDC(0.12g、0.63mmol)をひとまとめにして加えた。混合物を室温にゆっくりと加温し、12時間攪拌した。溶媒を減圧下で部分的に除去し、次いでPEGリンカーをエチルエーテル(200mL)を用いて沈殿させた。粗生成物を濾過により得て、そしてDCM/エチルエーテル(20mL/80mL)から、次いでイソプロパノール(IPA、100mL)からそれぞれ結晶化して化合物8(4.5g、0.18mmol、80%)を得た。13C NMR(67.8MHz、CDCl3)δ 201.11、172.70、169.59、156.03、63.20、58.44、55.18、52.37、42.09、28.53。
【0113】
実施例7
化合物(9)の合成
化合物8(2.0g、0.082mmol)、ドキソルビシン塩酸塩(0.095g、0.16mmol)、およびDMAP(0.040g、0.33mmol)の無水DMF/DCM(20mL/20mL)中の溶液を、室温で12時間攪拌した。溶媒を減圧下で部分的に除去し、次いで最終生成物をエチルエーテル(80mL)を用いて沈殿させた。固体を濾過し、DMF/メタノール(35mL/25mL)から再結晶して化合物9(1.75g、0.070mmol、86%)を得た。13C NMR(67.8MHz、CDCl3)δ 212.93、186.13、169.95、169.46、160.68、156.68、155.95、155.36、135.73、135.36、133.80、133.56、119.78、118.69、111.46、101.09、75.63、69.40-74.00(PEG)、68.29、65.53、64.93、63.16、61.87、60.25、59.58、57.35、55.36、45.46、43.32、36.51、34.71、30.74、17.91。
【0114】
実施例8
化合物(11)の合成
化合物3(0.60g、2.74mmol)、ベンジルオキシカルボニルアラニン(3.61g、16.3mmol)、DMAP(2.64g、21.6mmol)、およびスカンジウムトリフラート(0.96g、1.95mmol)の無水DCM(72mL)中の溶液を、-8℃に氷塩浴中で30分間冷却した。次いで1,3-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC、2.42g、19.2mmol)を加え、反応混合物を-8℃にて30分間、次いで室温にて12時間攪拌した。その反応混合物を濾過し、濾液を0.1N HCl(3x20mL)、蒸留水(20mL)を用いて洗浄し、乾燥し(MgSO4)、そして溶媒を真空で蒸発させた。生成物をさらにシリカゲルカラムにより精製して純粋な化合物11(1.08g、1.71mmol、75%)を得た。
【0115】
13C NMR(67.8MHz、CDCl3)δ 172.98、170.64、155.68、136.25、128.44、128.04、81.11、66.62、63.54、56.06、52.67、49.43、27.93、18.19。
【0116】
実施例9
化合物(12)の合成
化合物11(0.60g、0.95mmol)および水酸化パラジウム/炭素(0.60g)のエタノール(150mL)中の懸濁液を、室温にて50psi水素圧下で密閉容器に入れて24時間振とうした。混合物を濾過し、そして溶媒を真空中で除去して、化合物12(0.29g、0.81mmol、85%)を得た。13C NMR(67.8MHz、CDCl3)δ 170.38、81.70、64.26、56.43、52.99、49.40、28.06、15.92。
【0117】
実施例10
化合物(13)の合成
モノメトキシポリ(エチレングリコール)スクシンイミジルカルボナート(SC-mPEG、12kDa、2.0g、0.164mmol)、化合物12(0.030g、0.083mmol)およびDMAP(0.022g、0.183mmol)の無水クロロホルム(20mL)中の溶液を、12時間還流させた。溶媒を減圧下で部分的に除去し、次いでPEG誘導体をエチルエーテルを用いて沈殿させた。濾過により、粗PEG生成物を得て、これをIPA(40mL)から結晶化して化合物13(1.5g、0.061mmol、74%)を得た。13C NMR(67.8MHz、CDCl3)δ 172.46、170.13、155.22、80.78、63.28、58.59、55.82、52.48、49.16、27.77、18.03。
【0118】
実施例11
化合物(14)の合成
化合物13(1.5g、0.061mmol)をTFA/DCM(6.5mL/13.5mL)に溶解し、室温にて24時間攪拌した。溶媒を減圧下で部分的に除去した。残留物を5mL DCMに溶解し、エチルエーテル(80mL)を用いて沈殿させ、濾過して化合物14(1.2g、0.049mmol、80%)を得た。13C NMR(67.8MHz、CDCl3)δ 172.31、168.23、155.16、63.18、58.49、55.82、52.44、49.15、27.70、17.92。
【0119】
実施例12
化合物(15)の合成
化合物14(0.80g、0.033mmol)、DMAP(0.016g、0.13mmol)、および2-MT(0.016g、0.13mmol)の無水DCM(10mL)中の溶液を、-0℃に氷浴中で30分間冷却し、次いでEDC(0.025g、0.13mmol)を加えた。混合物をゆっくりと室温まで加温し、そして12時間攪拌した。溶媒を減圧下で部分的に除去し、次いでPEGリンカーをエチルエーテル(20mL)を用いて沈殿させた。粗生成物を濾過し、DCM/エチルエーテル(4mL/16mL)から結晶化し、そして最後にIPA(20mL)から再結晶して化合物15(0.50g、0.020mmol、62%)を得た。生成物の構造をNMRにより確認した。
【0120】
実施例13
化合物(16)の合成
化合物15(0.5g、0.020mmol)、ダウノルビシン塩酸塩(0.023g、0.041mmol)、およびDMAP(0.005g、0.041mmol)の無水DMF/DCM(10mL/10mL)中の溶液を、室温で12時間攪拌した。溶媒を減圧下で部分的に除去し、次いで最終生成物をエチルエーテル(30mL)を用いて沈殿させた。固体を濾過し、IPA(20mL)から結晶化して化合物16(0.4g、0.016mmol、80%)を得た。生成物の構造をNMRにより確認した。
【0121】
実施例14
化合物(17)の合成
ジ-tert-ブチルカルボナート(10.27g、47.2mmol)のクロロホルム(40mL)中の溶液を2-(2-アミノエトキシ)-エタノール(5.0g、47.62mmol)のクロロホルム(40mL)中の溶液に加え、その混合物を室温で1.5時間攪拌した。その溶液を水(30mL)を用いて洗浄し、有機層を乾燥し(MgSO4)、そして溶媒を真空中で除去して、2-(2-Boc-アミノエトキシ)-エタノール(9.6g、99%)を得た。1H NMR(300MHz, CDCl3)δ 5.43(s, 1H)、3.43(s, 1H)、3.56(m, 4H)、3.73(t, 2H, J = 5.4 Hz)、3.32(m, 2H)、1.45(s, 9H);13C NMR(67.8MHz, CDCl3)δ 156.06、79.06、77.18、72.14、70.08、61.31、40.21、28.21。
【0122】
2-(2-Boc-アミノエトキシ)-エタノール(4.5g、24.39mmol)のトルエン(100mL)中の溶液に、1.0Mカリウムt-ブトキシドのt-ブタノール(36.6mL、36.6mmol)中の溶液を、-10〜-20℃にて加えて1.5時間攪拌し、次いでブロモ酢酸エチル(8.15g、48.78mmol)を加えた。得られる混合物を3時間、-10〜-20℃の温度にて攪拌し、次いで0.25N HCl(50mL)を加えた。有機層を分離し、無水MgSO4上で乾燥した。溶媒を除去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(30〜50%酢酸エチルを含むヘキサン)を用いて精製し、[2-(2-Boc-アミノエトキシ)-エトキシ]-酢酸エチルエステル(4.0g、15.36mmol、63%)を得た。1H NMR(300MHz, CDCl3)δ 5.20(s, 1H)、4.22(q, 2H, J = 7.29 Hz)、4.14(s, 2H)、3.66-3.75(m, 4H)、3.55(m, 2H)、3.31(m, 2H)、1.44(s, 9H)、1.29(t, 3H, J = 7.29 Hz);13C NMR(67.8MHz, CDCl3)δ 170.02、155.72、78.68、70.52、69.94、68.29、60.44、40.04、28.06、13.85。
【0123】
NaOH(5.0g、0.125mol)のH2O(5mL)中の溶液にエタノール(50mL)を加え、次いで[2-(2-Boc-アミノエトキシ)-エトキシ]-酢酸エチルエステル(4.0g、15.36mmol)のエタノール(40mL)中の溶液を氷浴にて滴状で加えた。添加中、温度を<20℃に保った。その混合物を2時間攪拌し、次いで6N HClを用いてpH 2.5に酸性化した。混合物を濾過し、濾液ケーキをエタノールを用いて洗浄し、そして濾液を真空中で濃縮した。残留物をDCM/H2Oを用いて抽出して化合物17(2.55g、11.52mmol、75%)を得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3)δ 6.25 (br s, 1H)、5.31 (s, 1H)、5.20 & 3.31 (m, 2H)、4.20 (s, 2H)、3.66-3.75 (m, 4H)、3.55 (m, 2H)、1.45 (s, 9H);13C NMR (67.8 MHz, CDCl3)δ 173.38、156.12、80.05、79.55、70.77、70.12、68.20、53.32、40.15、28.21。
【0124】
実施例15
化合物(18)の合成
化合物3(0.10g、0.45mmol)、化合物17(0.70g、2.66mmol)、DMAP(0.90g、7.38mmol)、およびスカンジウムトリフラート(0.022g、0.045mmol)の無水DCM(35mL)中の溶液を、-8℃に氷塩浴中で30分間冷却し、EDC(0.67g、3.49mmol)を加え、そして反応混合物を-8℃にてさらに30分間、次いで室温にて4.5時間攪拌した。反応混合物を0.1N HCl(3x30mL)、0.1N NaHCO3(3x30mL)、蒸留水(30mL)を用いて洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、そして溶媒を蒸発させて化合物18(0.33g、0.45mmol、100%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3)δ 170.28、170.05、155.73、81.13、78.99、70.77、70.18、68.42、62.96、56.15、52.87、40.31、28.37、28.15。
【0125】
実施例16
化合物(19)の合成
化合物18(0.33g、0.45mmol)をTFAのDCM(10mL)中の20%溶液に溶解し、そして室温で15分間攪拌した。溶媒を真空で除去し、残留物をDCMに溶解し、次いで真空下で数回蒸発させて痕跡のTFAを除去し、化合物19(0.33g、0.45mmol、100%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3/CD3OD)δ 170.08、164.91、84.56、70.50、69.60、67.58、66.33、59.21、52.99、39.17、27.42。
【0126】
実施例17
化合物(20)の合成
12kDa SC-mPEG(2.0g、0.164mmol)の無水DCM(10mL)中の溶液に、化合物19(0.15g、0.20mmol)とDMAP(0.040g、0.327mmol)のDCM(10mL)中の溶液を1時間にわたって滴状で加えた。得られる混合物を室温でさらに12時間攪拌し、そして溶媒を減圧下で部分的に除去し、次いでPEG誘導体をエチルエーテルを用いて沈殿させた。濾過により粗PEG生成物を得て、次いでIPA(40mL)から結晶化し、化合物20(1.8g、0.073mmol、89%)を得た。13C NMR (67.8 MHz, CDCl3)δ 169.89、169.65、155.83、63.42、62.61、58.53、55.86、52.55、49.99、27.84。
【0127】
実施例18
化合物(21)の合成
化合物20(2.0g、0.081mmol)のDCM/TFA(20mL/10mL)中の溶液を室温で8時間攪拌し、次いで溶媒を減圧下で部分的に除去した。生成物をエチルエーテルを用いて沈殿させ、濾過によって回収し、そしてエチルエーテルにより洗浄して化合物21(1.8g、0.073mmol、90%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3)δ 40.32、52.78、55.28、58.52、62.29、63.35、66.58、67.64、68.02-71.41(PEG)、155.82、169.62。
【0128】
実施例19
化合物(22)の合成
化合物21(1.8g、0.073mmol)、2-MT(0.018g、0.147mmol)、およびDMAP(0.054g、0.443mmol)の無水DCM(20mL)中の溶液を0℃に冷却し、次いでEDC(0.028g、0.147mmol)を加えた。この混合物を室温まで加温し、12時間攪拌し、次いで溶媒を減圧下で部分的に除去した。生成物をエチルエーテルを用いて沈殿させ、濾過により回収し、そしてIPAから結晶化して化合物22(1.5g、0.061mmol、83%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3)δ 28.65、40.34、52.47、53.63、55.25、58.50、62.84、63.37、68.03、69.06、69.58-73.03(PEG)、155.79、169.60、172.55 および200.90 ppm。
【0129】
実施例20
化合物(23)の合成
化合物22(1.0g、0.041mmol)およびドキソルビシン塩酸塩(0.047g、0.081mmol)のDCM/DMF(10mL/10mL)混合物中の溶液に、DMAP(0.020g、0.162mmol)を加えた。この混合物を、窒素下で18時間攪拌し、次いで溶媒を減圧下で部分的に除去した。PEG誘導体をエチルエーテルを用いて沈殿させ、濾過により回収し、そしてDMF/IPA(4mL/16mL)から2回結晶化して化合物23(0.44g、0.018mmol、44%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3)δ 16.80、29.77、33.83、35.59、38.49、40.66、44.57、54.20、55.33、56.53、58.82、63.71、67.20、67.34、68.27、69.40、69.69-73.22(PEG)、100.72、111.34、118.27、119.56、133.35、133.49、135.25、135.48、155.39、155.93、156.14、160.75、169.92、170.14、186.36、186.73 および213.35。
【0130】
実施例21
化合物(24)の合成
tert-ブチル-N-(3-ヒドロキシプロピル)-カルバマート(3.00g、17.14mmol)の無水クロロホルム(60mL)中の溶液に、N,N’-ジスクシンイミジルカルボナート(DSC、5.48g、21.43mmol)および無水ピリジン(1.73mL、21.43mmol)を加えた。反応混合物を室温で12時間攪拌した。溶液を濾過し、0.5M HCl溶液(4x60mL)を用いて洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、そして溶媒を真空で除去して化合物24(4.88g、15.43mmol、90%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3)δ 25.37、28.27、28.80、36.71、68.89、79.29、151.48、155.85、168.69。
【0131】
実施例22
化合物(25)の合成
化合物3(0.30g、1.37mmol)、化合物24(1.30g、4.11mmol)、およびスカンジウムトリフラート(0.067g、0.137mmol)の無水DCM(45mL)中の溶液を、0℃に氷浴中で30分間冷却した。次いで、DMAP(0.52g、4.26mmol)を加え、そして反応混合物を室温まで加温して12時間攪拌した。反応混合物を0.1N HCl(3x30mL)、0.1N NaHCO3(3x30mL)を用いて洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、溶媒を蒸発させ、そして残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィにより精製して化合物25(0.275g、0.44mmol、32%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3)δ 170.41、155.77、155.05、81.13、79.14、66.18、65.40、56.24、53.00、37.14、29.14、28.40、28.18。
【0132】
実施例23
化合物(26)の合成
化合物25(0.388g、0.624mmol)をTFAのDCM(15mL)中の20%溶液に溶解し、そして室温で15分間攪拌した。溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させて除去し、残留物をクロロホルムに溶解し、次いで真空下で数回蒸発させて化合物26(0.388g、0.624mmol、100%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3/CD3OD)δ 164.93、153.73、84.39、65.02、62.26、53.72、53.20、36.46、27.31、26.02。
【0133】
実施例24
化合物(27)の合成
m12kDa PEG-PNP(10.0g、0.822mmol)の無水DCM/DMF(24mL/16mL)中の溶液に、化合物26(0.400g、0.617mmol)とDMAP(0.152g、1.24mmol)のDCM中の溶液(15mL)の一部分(11mL)を滴状で1時間にわたって加えた。得られる混合物を室温でさらに3時間攪拌し、次いで化合物26の上記溶液の2mLをさらに加えた。上記溶液の最後の2mLを3時間後にさらにDMAP(0.076g、0.62mmol)と一緒に加え、そして反応混合物をさらに12時間攪拌した。溶媒をロータリーエバポレーターにより部分的に除去し、次いでエチルエーテルを用いてPEG誘導体を沈殿させた。濾過により粗PEG生成物を得て、これを次いでIPA(200mL)から結晶化して化合物27(9.6g、0.789mmol、96%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3)δ 170.00、155.91、154.62、80.71、65.80、64.91、63.43、58.64、55.83、52.62、37.15、28.71、27.87。
【0134】
実施例25
化合物(28)の合成
化合物27(4.6g、0.188mmol)のDCM/TFA(50mL/25mL)中の溶液を室温で12時間攪拌し、次いで溶媒をロータリーエバポレーターにより部分的に除去した。生成物をエチルエーテルを用いて沈殿させ、濾過により回収し、そしてエチルエーテルにより洗浄して化合物28(4.0g、0.163mmol、87%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3)δ 171.47、156.00、154.51、65.51、64.96、63.48、58.61、55.27、52.82、37.14、28.66。
【0135】
実施例26
化合物(29)の合成
化合物28(4.0g、0.163mmol)、2-MT(0.058g、0.491mmol)、およびDMAP(0.080g、0.654mmol)の無水DCM(60mL)中の溶液を0℃に冷却し、次いでEDC(0.094g、0.491mmol)を加えた。この混合物を室温まで加温し、そして12時間攪拌し、次いで溶媒を真空中で部分的に除去した。生成物をエチルエーテルを用いて沈殿させ、濾過により回収し、そしてIPA(80mL)から結晶化して化合物29(3.6g、0.147mmol、90%)を得た。13C NMR (67.8 MHz, CDCl3)δ 200.97、172.86、155.97、154.66、66.07、65.00、63.54、60.39、58.73、55.39、52.67、37.22、28.78。
【0136】
実施例27
化合物(30)の合成
化合物29(2.0g、0.082mmol)およびドキソルビシン塩酸塩(0.094g、0.163mmol)のDMF(20mL)中の溶液に、DMAP(0.040g、0.326mmol)を加えた。この混合物を窒素下で12時間攪拌した。PEG誘導体をエチルエーテルを用いて沈殿させ、濾過し、DMF/IPA(8mL/32mL)から2回再結晶して化合物30(1.50g、0.0615mmol、75%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3)δ 213.24、186.61、186.17、169.25、160.57、156.11、155.82、155.24、154.57、135.42、135.03、133.29、120.37、119.39、118.15、111.10、110.90、100.63、73.50-69.20(PEG)、68.53、67.12、65.32、65.17、64.98、63.57、58.70、56.41、53.66、44.70、37.16、35.43、33.59、28.75、26.73、16.71。
【0137】
実施例28
化合物(32)の合成
化合物3(0.30g、1.37mmol)、化合物31(1.75g、4.11mmol)、およびスカンジウムトリフラート(0.067g、0.137mmol)の無水DCM(45 mL)中の溶液を、0℃に氷浴中で30分間冷却する。次いでDMAP(0.52g、4.26mmol)を加え、そして反応混合物を室温に加温し、そして12時間攪拌する。反応混合物を0.1N HCl(3 x 30mL)、0.1N NaHCO3(3 x 30mL)を用いて洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、そして溶媒を蒸発させ、残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィにより精製して化合物32を得る。化合物32の構造をNMRにより確認する。
【0138】
実施例29
化合物(33)の合成
化合物32(0.30g、0.36mmol)、およびピペリジン(0.062g、0.72mmol)の無水DCM(25mL)中の溶液を室温で2時間攪拌する。溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をシリカゲル上のクロマトグラフィにより精製して化合物33を得る。化合物33の構造をNMRにより確認する。
【0139】
実施例30
化合物(34)の合成
化合物3(1.00g、4.57mmol)および無水酢酸(0.466g、4.57mmol)の無水DCM(45mL)中の溶液を0℃に氷浴中で15分間冷却し、反応混合物を室温に加温し、そして2時間攪拌する。反応混合物を0.1N NaHCO3(3 x 30mL)を用いて洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、そして溶媒を蒸発させ、そして残留物をシリカゲル上のクロマトグラフィにより精製して化合物34を得る。化合物34の構造をNMRにより確認する。
【0140】
実施例31
化合物(35)の合成
化合物34(1.04g、4.00mmol)、化合物17(2.83g、12.00mmol)、およびスカンジウムトリフラート(1.77g、3.60mmol)の無水DCM(70mL)中の溶液を0℃に氷浴中で30分間冷却する。次いで、DMAP(1.46g、12.00mmol)を加え、そして反応混合物を室温に加温し、そして12時間攪拌する。反応混合物を0.1N HCl(3x30mL)、0.1N NaHCO3(3x30mL)を用いて洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、そして溶媒を蒸発させ、そして残留物をシリカゲル上のクロマトグラフィにより精製して化合物35を得る。化合物35の構造をNMRにより確認する。
【0141】
実施例32
化合物(36)の合成
化合物35(1.52g、3.00mmol)をTFAのDCM(45mL)中の20%溶液に溶解し、そして室温にて15分間攪拌する。溶媒を減圧下で除去し、次いで残留物をクロロホルムに溶解し、次いで真空で数回蒸発させてTFAを除去し、化合物36を得る。化合物36の構造をNMRにより確認する。
【0142】
実施例33
化合物(37)の合成
40kDa PEG二酸(20.0g、0.500mmol)、化合物36(1.01g、2.00mmol)、およびDMAP(0.976g、8.00mmol)の無水DCM(400mL)中の溶液にEDC(0.769g、4.00mmol)を加え、そして反応混合物を室温にて12時間攪拌する。溶媒を減圧下で除去し、残留物をIPA(400mL)から結晶化して化合物37を得る。化合物37の構造をNMRにより確認する。
【0143】
実施例34
化合物(38)の合成
化合物38を化合物28と同じ条件下で作る。化合物38の構造をNMRにより確認する。
【0144】
実施例35
化合物(39)の合成
化合物39を化合物29と同じ条件下で作る。化合物39の構造をNMRにより確認する。
【0145】
実施例36
化合物(40)の合成
化合物40を化合物30と同じ条件下で作る。化合物40の構造をNMRにより確認する。
【0146】
実施例37
化合物(42)の合成
無水マレイン酸(0.196g、2.00mmol)、DMAP(0.244g、2.00mmol)、および化合物41(0.496g、2.00mmol)のDCM(40mL)中の溶液を室温にて2時間攪拌する。溶媒を減圧下で除去して化合物42を得る。化合物42の構造をNMRにより確認する。
【0147】
実施例38
化合物(43)の合成
化合物42(0.496g、2.00mmol)および酢酸ナトリウム(0.82g、10.0mmol)のアセトニトリル(40mL)中の溶液を45分間還流する。溶媒を減圧下で除去して化合物43を得る。化合物43の構造をNMRにより確認する。
【0148】
実施例39
化合物(44)の合成
化合物43(0.496g、2.00mmol)をTFAのDCM(45mL)中の20%溶液に溶解し、そして室温にて15分間攪拌する。溶媒を真空中で除去し、そして残留物をクロロホルムに溶解し、次いで減圧下で数回蒸発させてTFAを除去し、化合物44を得る。化合物44の構造をNMRにより確認する。
【0149】
実施例40
化合物(45)の合成
化合物22(6.10g、0.25mmol)および化合物44(0.328g、1.00mmol)のDCM(120mL)中の溶液にDMAP(0.122g、1.00mmol)を加える。この混合物を窒素下で室温にて12時間攪拌する。PEG誘導体をエチルエーテルを用いて沈殿させ、濾過し、IPA(120mL)から結晶化して化合物45を得る。化合物45の構造をNMRにより確認する。
【0150】
実施例41
化合物(47)の合成
化合物22(6.10g、0.25mmol)および化合物46(0.121g、1.00mmol)のDCM(120mL)中の溶液に、DMAP(0.122g、1.00mmol)を加える。この混合物を窒素下で室温にて12時間攪拌する。PEG誘導体をエチルエーテルを用いて沈降させ、濾過し、IPA(120mL)から結晶化して化合物47を得る。化合物47の構造をNMRにより確認する。
【0151】
実施例42
化合物(49)の合成
化合物22(6.10g、0.25mmol)および化合物48(0.536g、1.00mmol)のDCM(120mL)中の溶液に、DMAP(0.122g、1.00mmol)を加える。この混合物を窒素下で室温にて12時間攪拌する。PEG誘導体をエチルエーテルを用いて沈降させ、濾過し、IPA(120mL)から結晶化して化合物49を得る。化合物49の構造をNMRにより確認する。
【0152】
実施例43
化合物(52)の合成
化合物8(6.10g、0.25mmol)および化合物5(0.0701g、0.125mmol)のDCM(120mL)中の溶液に、DMAP(0.122g、1.00mmol)を加える。この混合物を窒素下で室温にて12時間攪拌する。PEG誘導体をエチルエーテルを用いて沈降させ、濾過し、IPA(120mL)から結晶化して化合物50を得る。化合物50の構造をNMRにより確認する。化合物50を、TFAを用いて化合物7を作るのと同じ条件下で処理して化合物51を得る。化合物51の構造をNMRにより確認する。次いで化合物51を、化合物8を作るのと同じ条件下で活性化して化合物52を得る。化合物52の構造をNMRにより確認する。化合物52をDox-HClと、化合物9を作るのと同じ条件下で反応させて化合物52aを作る。
【0153】
実施例44
化合物(53)の合成
化合物53を、化合物15および12をそれぞれ化合物8および5の代わりに用いることを除いて、実施例43と同じ条件で作る。化合物53の構造をNMRにより確認する。
【0154】
実施例45
化合物(54)の合成
化合物54を、化合物22および19をそれぞれ化合物8および5の代わりに用いることを除いて、実施例43と同じ条件で作る。化合物54の構造をNMRにより確認する。
【0155】
実施例46
化合物(55)の合成
化合物55を、化合物29および26をそれぞれ化合物8および5の代わりに用いることを除いて、実施例43と同じ条件で作る。化合物55の構造をNMRにより確認する。
【0156】
実施例47
化合物(56)の合成
化合物56を、化合物52を化合物8の代わりに用いることを除いて、実施例43と同じ条件で作る。化合物56の構造をNMRにより確認する。
【0157】
実施例48
化合物(57)の合成
化合物57を、化合物8を化合物5と反応させる代わりに、化合物53をチアゾリジンチオン誘導体に転化して化合物12と反応させることを除いて、実施例43と同じ条件で作る。化合物57の構造をNMRにより確認する。
【0158】
実施例49
化合物(58)の合成
化合物58を、化合物8を化合物5と反応させる代わりに、化合物54をチアゾリジンチオン誘導体に転化して化合物19と反応させることを除いて、実施例43と同じ条件で作る。化合物58の構造をNMRにより確認する。
【0159】
実施例50
化合物(59)の合成
化合物59を、化合物8を化合物5と反応させる代わりに、化合物55をチアゾリジンチオン誘導体に転化して化合物26と反応させることを除いて、実施例43と同じ条件で作る。化合物59の構造をNMRにより確認する。
【0160】
実施例51
ビシン-緑色蛍光タンパク質(GFP)コンジュゲートの合成
材料 放出可能なPEGリンカーとして、化合物8を本研究に用いた。PBS(10mMリン酸、pH7.4、138mM NaCl、および2.7mM KCl)はSigma Inc.(St. Louis、MO)から購入した。プレキャスト10%Tris-グリシンSDS電気泳動ゲルおよびゲル泳動バッファーはInvitrogen(Carlsbad、CA)から入手した。動物を屠殺したその同じ日に、ドライアイスで保冷したEDTA中のラット血漿を得た。
【0161】
方法
I. 緑色蛍光タンパク質の調製と精製
実験に使用したGFPは強化バージョンのEGFPであり、最大励起波長488nmおよび最大発光波長507〜509nmである。EGFP配列(Santa Cruz Biotechnology、Inc.、Santa Cruz、CA)を、カルボキシル末端にヒスチジンタグを含有するpET22bベクター中にサブクローニングし、そして大腸菌(E.coli)のBL21株(Novagen、Inc.、Madison、WI)にIPTG誘導を用いて発現させた。可溶性で細胞内可溶質のEGFPを、細菌上清から、Ni-カラム(Novagen、Inc.、Madison、WI)、次いでDEAEアニオン交換クロマトグラフィ(Pharmacia Biotech Products、Piscataway、NJ)を用いて精製し、ほぼ均質化した。蛍光強度はHITACHI F-2000 蛍光分光光度計により測定した。タンパク質濃度(15mMTris、pH7.4バッファー中の1〜140ng/ml)対蛍光強度の直線標準曲線を、タンパク質濃度定量に用いた。
【0162】
II. PEGのGFPとのコンジュゲート化およびPEG-PEG化合物の精製
急速攪拌しながら、化合物8を、0.05M NaHCO3(pH 8.1)中のGFP溶液(2mg/ml)に30:1(化合物8:GFP)のモル比で加えた。その溶液をN2下、25℃にて暗所で45分間攪拌した。45分後、溶液のpHをナトリウムリン酸バッファー(pH 6.4)を加えることにより低下させ、最終濃度77mM(最終pHは6.8であった)とした。未結合のPEGをSuperdex 200 Hiload 16/60カラム(Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ)上でBiocadパーフュージョンクロマトグラフィ・ワークステーションを用いて除去した。溶出バッファーは、10mMリン酸ナトリウムおよび140mMNaCl(pH6.8)から成った。280nmと蛍光の両方の吸収を示す画分をプールし、30k NMWL膜(Millipore Corp.、Bedford、MA)を備えたウルトラフリー15遠心濾過機を用いて濃縮した。精製コンジュゲートの収率は約59%であった。PEG-GFPの濃度はBCAタンパク質アッセイ試薬(Pierce、Rockford、IL)および蛍光強度の数値化によって定量した。
【0163】
III. ラットにおけるGFPおよびPEG-GFPコンジュゲートの薬物動態学
意識のあるラットを拘束し、尾静脈を経由してGFPまたはPEG-GFPのいずれかを用いて5mg/kg用量で静脈内に注射した。化合物を投与した後、血液のサンプリングを予定通り開始した。ラットを30%酸素/70%二酸化炭素混合物を用いて軽く麻酔し、後眼窩洞(retroorbital sinus)を経由して全血0.5mlを採血した。全血をEDTAマイクロチューブ内に採集し、直ぐに処理して血漿を得た。血漿をドライアイス上で即座に凍結し、さらなる分析まで-20℃にて保存した。
【0164】
IV. 血漿中のGFPとPEG-GFPコンジュゲートの分析および放出プロセス
血漿サンプルを-20℃から4℃へ解凍した。GFPまたはPEG-GFPを含有する10ulの血漿アリコートを1mLの15mM Tris(7.4)を用いて希釈した。十分混合した後に、蛍光強度をHITACHI F-2000蛍光分光光度計を用いて測定した。血漿が単独に発生する自己蛍光は、15mM Trisバッファー(pH 7.4)をブランクに利用して、全サンプルから差引いた。放出プロセスについては、色々な時点に採集した血漿サンプルを-20℃から4℃へ解凍し、PBSにより希釈し、そしてSuperdex 75 HR 10/30カラム(Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ)上で、Biocadパーフージョンクロマトグラムを用いて分析した。GFPは21個の遊離アミン、すなわちリシン側鎖由来の20個とN末端由来の1個を有する。反応を30:1モル比(PEG:GFP)で実施したとき、全ての精製PEG-GFPコンジュゲートは、10%SDS電気泳動ゲル上で200,000Daを超える見掛けの分子量を有した。ゲル上で求めたPEG化数は10〜14 PEG分子/GFPであった。
【0165】
結果
ラットにおけるGFPおよびPEG-GFPコンジュゲートの薬物動態学と薬物動態学パラメーター
GFPおよびPEG-GFPコンジュゲートの薬物動態学パラメーター、例えば半減期(t1/2)、曲線下面積(AUC)、クリアランス(CL)、および平均残留時間(MRT)をノンコンパートメント手法を用いて求めた(表1)。データは、PEG化の後に、GFPの半減期が156倍増加しかつクリアランスが167倍減少しうることを示す。ワンコンパートメントモデルを用いて、単一静脈内用量投与後の用量血漿濃度-対-時間経過の曲線を予測した。結果は、予測曲線と観察曲線の間の相関が、天然GFPについては93%、そしてPEG-GFPについては96%であることを示した。pKデータは、ビシンシステムを利用するPEG-GFPコンジュゲートは、天然GFPをより長い時間放出しうることを示す。
【表1】
【0166】
以下の表2は、様々なPEG-ビシンコンジュゲートに対応するプロドラッグ放出時間を示す。
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】図1は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図2】図2は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図3】図3は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図4】図4は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図5】図5は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図6】図6は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図7】図7は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図8】図8は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図9】図9は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図10】図10は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図11】図11は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図12】図12は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図13】図13は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図14】図14は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図15】図15は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図16】図16は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図17】図17は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生物学的活性物質のin vivo循環寿命を延長するために有用である分枝高分子に関する。本発明はまた、その高分子を用いて作製したコンジュゲートにも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ペプチドまたはポリペプチドをポリ(エチレングリコール)PEGおよび類似した水溶性ポリ(アルキレンオキシド)とカップリングする考えのいくつかは、最初に米国特許第4,179,337号に開示されており、その開示は本明細書に参照により組み入れられる。これらの高分子を用いて改変したポリペプチドは免疫原性/抗原性が低下し、未改変のポリペプチド種より血流中で長く循環する。
【0003】
ポリ(アルキレンオキシド)をコンジュゲート化するために、ヒドロキシル末端基の1つは反応性官能基に転化される。この反応はしばしば「活性化(activation)」と呼ばれ、生成物は「活性化されたポリ(アルキレンオキシド)」と呼ばれる。他の実質的に非抗原性の高分子も同様に「活性化される」かまたは官能基化される。
【0004】
活性化された高分子を、結合部位として作用する求核性官能基を有する治療薬と反応させる。結合部位として通常利用される求核性官能基の1つはリシンのε-アミノ基である。遊離カルボン酸基、適切に活性化されたカルボニル基、酸化された糖鎖成分およびメルカト基も結合部位として利用されている。
【0005】
インスリンおよびヘモグロビンは、とりわけ最初にコンジュゲート化された治療薬コンジュゲートであった。これらの比較的大きいペプチドは複数の遊離ε-アミノ結合部位を有する。十分な数の高分子を結合させて、生物学的活性を有意に消失することなく、免疫原性を低下しかつ循環寿命を延長することができる。
【0006】
しかし、過剰の高分子コンジュゲートの作成、および/または生物学的活性に関係する基が見出される治療薬成分活性部位に関わるコンジュゲートの作成は、活性、即ち治療上の有用性を低下することが多い。これは、生物学的活性に無関係な結合部位を少ししか有しない低分子量ペプチドの場合に多い。多くの非ペプチド治療薬も、高分子による改変の利益を得るために十分な数の結合部位を持たない。
【0007】
以上考察した問題を克服するための1つの示唆は、より長くより大きい分子量の高分子を利用することである。しかし、これらの物質は製造が困難でありかつ使用するには高価である。さらに、これらの物質はより容易に利用しうる高分子を上回る改善を少ししか提供しない。
【0008】
示唆される他の代替物は、2本鎖の高分子をトリアジン環を経由してタンパク質のアミノ基に結合させることである。例えば、Enzyme, 26, 49-53 (1981)およびProc. Soc. Exper. Biol. Med., 188, 364-9 (1988)を参照されたい。しかし、トリアジンは毒性物質であって、コンジュゲート化後に許容されるレベルまで低下することが難しい。さらに、トリアジンは平面基であって二重の高分子置換しか出来ない。平面構造は2つの高分子鎖を平面に強固に固定する。これによって高分子コンジュゲート形成の利益は限定され、高分子鎖長を伸ばすことにより得られる利益とほぼ同じである。従って、非トリアジン系の活性化された高分子が当技術分野に実質的な利益を提供しうるであろう。
【0009】
しかし上記の事例においては、高分子と親の生物学的活性成分の間に、実質的に加水分解耐性のある結合(連鎖)を有する生物学的活性高分子コンジュゲートが形成された。従って、本来のプロドラッグ(最終的に親分子がin vivoで放出される)よりもむしろ永久に結合した長期持続性コンジュゲートが作られた。
【0010】
本願出願人による米国特許第5,643,575号、第5,919,455号および第6,113,906号は、脂肪族リンカーを介して求核試薬との共通結合点を共有する、PEGの多重鎖に関するさらなる改良を開示している。初期のトリアジン系の分枝高分子コンジュゲートと異なり、脂肪族リンカーは、当業者にトリアジンの毒性を回避するだけでなく他の有用な利益も提供することができる。
【0011】
さらに、長年の間、プロドラッグを製造するいくつかの方法が示唆されている。プロドラッグは生物学的に活性な親化合物の化学誘導体を含むものであり、投与すると、最終的に活性な親化合物をin vivoで放出する。プロドラッグの利用により、当業者は生物学的活性化合物のin vivo作用の開始および/または期間を改変することが可能になる。プロドラッグは、親化合物または活性化合物の生物学的に不活性なまたは実質的に不活性な形態である場合が多い。活性薬の放出速度はいくつかの要因の影響を受け、それには親の生物学的活性化合物をプロドラッグ担体と結合するリンカーの加水分解速度が含まれる。
【0012】
エステルまたはリン酸結合に基づくいくつかのプロドラッグが報じられている。ほとんどの場合、プロドラッグを形成するために利用される特定のエステル結合のタイプは、水環境において数日までの加水分解のt1/2を与える。プロドラッグは形成されていると予想されるが、ほとんどのコンジュゲートはin vivoで十分な加水分解を受ける前に排出される。従って、高分子-薬物結合のより速やかなin vivo加水分解を可能にする結合を有し、それによって親の薬剤化合物をより速やかに生じるプロドラッグを提供することが好ましい。
【0013】
アミドまたはカーバメート結合に基づくプロドラッグも報じられている。一般的に、アミド結合は高度な加水分解耐性を有することが知られている。しかし、最近、ε-アミノ酸のC末端アミドは、N-端末が1つまたは2つのヒドロキシエチル基によりN-ヒドロキシエチル化されると、25℃、pH7にて容易に加水分解されることが見出された。ビスN-2-ヒドロキシエチルグリシン(ビシン)がこのような加水分解における重要な分子である。しかし、このようなビシン基はプロドラッグ、特に高分子系プロドラッグの合成に利用されていない。
【発明の開示】
【0014】
さらに、高分子系のプロドラッグを改善する必要性がある。本発明はかかる必要性に取組むものである。
【0015】
発明の概要
本発明の一態様においては、式(I):
【化1】
【0016】
[式中、R1とR2は実質的に非抗原性の高分子残基、C1-6アルキル、アラルキル、および末端分枝基からなる群から独立して選択され;
Zは、標的細胞中に能動輸送される成分、疎水性成分、二官能性結合成分およびそれらの組合わせから選択され;
Y1-3は、O、SまたはNR11のなかから独立して選択され;
L1とL2は独立して選択される二官能性リンカーであり;
R3〜R11、R24およびR25は、水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシならびにC1-6ヘテロアルコキシからなる群から独立して選択され;
Aは、脱離基、官能基およびアミンを含有する薬剤の残基、ならびにOHから選択され;
aとcはそれぞれ独立して0または正の整数であり;
b、dおよびeは独立して0または1であり;そして
m、n、o、およびpは独立して選択される正の整数である]
で表される化合物が提供される。
【0017】
本発明の他の態様は、(R1)と(R2)の少なくとも1つがαおよびω末端結合基の両方を含む高分子残基であるときに形成される二官能性化合物を含む。本発明のこの態様においては、当業者は2当量の生物学的活性薬、タンパク質、ポリペプチド、その他を高分子(好ましくはPEG)ビシンシステムと結合することができる。かかる二官能性高分子コンジュゲートの例は以下に式(IIa)および(IIb)のように例示される。
【化2】
【化3】
【0018】
[式中、全ての変数は上記の通りであり、そしてY4はO、SまたはNR11でありかつL3は二官能性リンカーである]
本発明の化合物を調製する方法および上記化合物を用いて治療する方法も提供される。
【0019】
本発明の目的における用語「残基」は、参照する化合物が高分子プロドラッグ担体成分を結合するための置換反応を受けた後に残存する、その化合物の成分を意味するものとする。
【0020】
本発明の目的における用語「高分子残基」または「PEG残基」は、生物学的活性化合物との反応を受けた後に残存する高分子またはPEGの成分を意味するものとする。
【0021】
本発明の目的における用語「アルキル」は、直鎖、分枝、置換、例えば、ハロ-、アルコキシ-、およびニトロ-、C1-12アルキル、C3-8シクロアルキルまたは置換シクロアルキルなどを包含するものとする。
【0022】
本発明の目的における「置換」とは、官能基または化合物に含まれる1個以上の原子に1個以上の異なる原子を付加するまたはそれと置き換えることを包含するものとする。
【0023】
本発明の目的において、置換アルキルは、カルボキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、ヒドロキシアルキルおよびメルカプトアルキルを包含し;置換アルケニルは、カルボキシアルケニル、アミノアルケニル、ジアルケニルアミノ、ヒドロキシアルケニルおよびメルカプトアルケニルを包含し;置換アルキニルは、カルボキシアルキニル、アミノアルキニル、ジアルキニルアミノ、ヒドロキシアルキニルおよびメルカプトアルキニルを包含し;置換シクロアルキルは、4-クロロシクロヘキシルなどの成分を包含し;アリールは、ナフチルなどの成分を包含し;置換アリールは、3-ブロモ-フェニルなどの成分を包含し;アラルキルは、トルイルなどの成分を包含し;ヘテロアルキルは、エチルチオフェンなどの成分を包含し;置換ヘテロアルキルは、3-メトキシ-チオフェンなどの成分を包含し;アルコキシは、メトキシなどの基を包含し;そしてフェノキシは、3-ニトロフェノキシなどの成分を包含する。ハロ-はフルオロ、クロロ、ヨードおよびブロモを包含するものとする。
【0024】
本発明の目的における「十分な量」は、当業者によって理解されている治療効果を達成する量を意味するものである。
【0025】
本発明の目的における「効果的に非抗原性」および「実質的に非抗原性」は、哺乳類動物において実質的に無毒でありかつ識別しうる免疫応答を誘発しないと当技術分野で理解されている全ての高分子材料を包含することを意味するものとする。
【0026】
本発明の目的における「正の整数」とは、正の全ての数、好ましくはほぼ1〜6、そしてさらに好ましくは1または2を意味するものとする。
【0027】
本発明の1つの主な利点は、ビシンリンカーによりプロドラッグの加水分解速度を操作して、それにより天然の物質をin vivoならびにin vitroにおいて様々な速度で放出することが可能になることである。例えば、アミノ酸または短いペプチド残基を含む様々な二官能性成分をL1〜L3のいずれかの成分として含ませて、プロドラッグのin vivoおよびin vitroでの加水分解速度および/または細胞取り込みなどを調節することができる。
【0028】
本発明の他の利点として、高分子輸送系を介して送達される標的化合物は、水溶解度およびin vivoでの循環寿命の測定可能な増加を示すことが多い。
【0029】
図面の簡単な説明
図1〜17は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【0030】
発明の詳細な説明
A.式(I)の化合物
本発明の一実施形態においては、式(I):
【化4】
【0031】
[式中、R1とR2は独立して実質的に非抗原性の高分子残基、C1-6アルキル、アラルキル、および末端分枝基からなる群から選ばれ;
Y1-3は、O、SまたはNR11のなかから独立して選択され;
L1とL2は独立して選択される二官能性リンカーであり;
Zは、標的細胞中に能動輸送される成分、疎水性成分、二官能性結合成分およびそれらの組合わせから選択され;
R3〜R11、R24およびR25は、水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシならびにC1-6ヘテロアルコキシからなる群から独立して選択され;
Aは、脱離基、官能基およびアミンを含有する薬剤の残基、例えば生物学的に活性なタンパク質、ペプチド、化学治療薬など、ならびにOHから選択され;
aとcはそれぞれ独立して0または正の整数であり;
b、dおよびeは独立して0または1であり;そして
m、n、o、およびpは独立して選択される正の整数である。]
で表される化合物が提供される。
【0032】
本発明のある特定の好ましい態様においては、1以上のR1とR2は実質的に非抗原性の高分子残基、例えばポリエチレングリコール(PEG)基を含む。場合によっては、R1-2は本明細書においてJと記載したキャッピング基を含む。高分子キャッピングに用いるための好ましいJ基は、OH、NH2、SH、CO2H、C1-6アルキル成分、例えばCH3、ならびに式(IIIa)および(IIIb):
【化5】
【0033】
[式中、全ての変数は先に定義した通りである]
で表される化合物などの成分を含む。
【0034】
本発明の式を構成する他の変数について、本発明のある特定の態様においては、以下のものが好ましい:すなわち、
ある特定の態様においては、R1とR2はポリアルキレンオキシド残基、そしてさらに好ましくはポリエチレングリコール残基であり;
他の態様においては、R1とR2は以下にさらに詳細に記載されるビシン系の末端分枝基であって、多重高分子鎖ローディングを可能にし;
R3〜R10およびR24-25はそれぞれ水素であり;
a、b、c、d、m、 n、oおよびpは好ましくはそれぞれ1であり;
eは好ましくは0または1であり;
L1とL2はそれぞれ好ましくはNHCH(CH3)C(O)-、NHCH2C(O)-、NH(CH2CH2O)2CH2C(O)-、またはNH(CH)3OC(O)-の1つであり;そして
Zは先に定義したとおり
【化6】
【0035】
であるか、または、代わりにZはアミノ酸残基、ペプチド残基、標的細胞中に能動輸送される基、疎水基を含むかまたはそのような特性の組み合わせを有するものであり、そして生物学的活性のあるA基と組合わせると、式(I)、(II)などのビシン高分子成分から放出されるプロドラッグが形成される。本願出願人による米国特許出願第09/758,993号も参照すること、なおこの内容は本明細書に参照により組み入れられる。
【0036】
B.実質的に非抗原性の高分子
以上記載したように、R1とR2は好ましくは、それぞれ実質的に非抗原性である水溶性高分子残基、例えばポリアルキレンオキシド(PAO)そしてさらに好ましくはポリエチレングリコール、例えばmPEGである。説明のためで、限定するものでないが、R1のポリエチレングリコール(PEG)残基成分は、
J-O-(CH2CH2O)x-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2C(O)-O-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2NR12-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2SH-、
-OC(O)CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2C(O)-O-、
-NR12CH2CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2CH2NR12-および
-SHCH2CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2CH2SH-
の中から選択することができる。
【0037】
同様に、R2のPEG残基は、
J-O-(CH2CH2O)x-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2C(O)-O-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2NR13-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2SH-、
-OC(O)CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2C(O)-O-、
-NR13CH2CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2CH2NR13-および
-SHCH2CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2CH2SH-
の中から選択することができる。
【0038】
以上の全ての場合に、xは重合度であり、R23-24は水素、C1-6アルキル、C3-12分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシの中から個々に選択され、そしてJは式IIについて記載したキャッピング基である。
【0039】
或る特に好ましい実施形態においては、R1-2はCH3-O-(CH2CH2O)x-、CH3-O-(CH2CH2O)x-CH2C(O)-O-、CH3-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2NH-およびCH3-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2SH-
(式中、xは正の整数であり、好ましくは重量平均分子量が約2,000〜約25,000Daとなるように選択される)の中から選択される。本発明の代わりの実施形態においては、高分子の分子量は当業者の必要性に依存して数百〜40,000以上の範囲にある。PEGは一般的に構造:-O-(CH2CH2O)x-により表され、そしてR1とR2は好ましくはこの式で表される残基を含む。
【0040】
高分子の重合度(x)は約10〜約2,300であってよい。この重合度は高分子鎖中の繰り返し単位数を表し、高分子の分子量に依存する。(J)成分は、本明細書に定義したキャッピング基、すなわち、高分子の端末に見出される基であって、複数の態様においては、NH2、OH、SH、CO2H、C1-6アルキルまたは他のPEG末端活性化基のいずれから選択してもよく、当業者はこのような基を理解している。
【0041】
また、ポリプロピレングリコール、分枝PEG誘導体、例えば本願出願人による米国特許第5,643,575号('575特許)に記載されたもの、「星型PEG」および多枝(multi-armed)PEG、例えばShearwater社の2001年カタログ「生物医療用のポリエチレングリコールおよび誘導体(Polyethylene Glycol and Derivatives for Biomedical Application)」に記載されたものなども有用である。以上のそれぞれの開示は本明細書に参照により組み入れられる。'575特許に記載される分枝の作製は、生物学的活性分子または酵素上の単一結合点からの高分子ローディングを増加する方法として、ビシン基からの第二級または第三級分枝の作製を可能にする。必要であれば、必要以上の試験を行うことなく、水溶性高分子を官能化して二官能性結合基を付加することができるのは理解されるであろう。
【0042】
PAOおよびPEGは実質的に重量平均分子量が変化してもよいが、本発明のほとんどの態様において、好ましくは、R1とR2はそれぞれ約2,000〜約25,000Daの重量平均分子量を有する。
【0043】
本明細書に含まれる高分子材料は、好ましくは、室温で水溶性である。そのような高分子の限定するものでないリストとしては、ポリアルキレンオキシドホモポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオール、それらのコポリマーおよびそれらのブロックコポリマー(ブロックコポリマーの水溶性が維持されることを条件として)が挙げられる。
【0044】
さらなる実施形態において、そしてPAO系高分子の代替として、R1とR2は、それぞれ任意に1以上の効果的に非抗原性の物質、例えばデキストラン、ポリビニルアルコール、糖鎖系高分子、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)、ポリアルキレンオキシドおよび/またはそのコポリマーから選択される。本願出願人による米国特許第6,153,655号も参照されたい(その内容は参照により本明細書に組み入れられる)。当業者ならば、本明細書にPAO、例えばPEGに対して記載したのと同じタイプの活性化を採用できることを理解するであろう。当業者ならばさらに、上記のリストは例示にすぎず、本明細書において記載する性質を有する全ての高分子材料が包含されかつ他のポリアルキレンオキシド誘導体、例えばポリプロピレングリコールなども包含されることを理解するであろう。
【0045】
本発明の高分子はまた、二官能性材料、例えばポリ(アルキレングリコール)ジアミンを用いて共重合して、浸透性コンタクトレンズ、創傷包帯、薬物送達デバイスなどに利用する上で好適な相互貫入高分子ネットワークを形成することもできる。このような分枝作製の立体的制限と水溶性は、当業者であれば容易に理解するであろう。好ましくは、しかし、多分枝高分子の分子量は80,000ダルトンを超えるものでない。
【0046】
C.二官能性リンカー基:L1およびL2
本発明の多くの態様、そして特に式(I)において、L1および/またはL2は、ビシン誘導体の高分子鎖、例えばR1および/またはR2への付加を容易にする結合基である。提供される結合は、直接の結合または当業者に公知のさらなるカップリング基を介する結合のいずれであってもよい。色々なLx基が明細書に記述されていて、それらはL1と同じ基の中から選択されると解釈される。本発明のこの態様において、L1は、好ましくは:
【化7】
【0047】
[式中、R14〜R17およびR19は、水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群から独立して選択され;
R18は、水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシ、NO2、ハロアルキルならびにハロゲンからなる群から選択され;そして
tとqは個々に選択される正の整数、好ましくは約1〜約4である]
の中から選択される。
【0048】
同様に、L2は、
【化8】
【0049】
[式中、R20〜R23およびR25は、独立して水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群から選択され、
R24は、水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシ、NO2、ハロアルキルならびにハロゲンからなる群から選択され;そして
vとwは、個々に選択される正の整数、好ましくは約1〜約4である]
の中から選択される。
【0050】
本発明の他の態様においては、L1および/またはL2はアミノ酸残基を含んでもよい。アミノ酸は、公知の天然L-アミノ酸、例えば、いくつかを挙げれば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、セリン、トレオニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、および/またはそれらの組合わせから選択することができる。L1および/またはL2がペプチドを含むとき、そのペプチドのサイズは、例えば、約2〜約10個のアミノ酸残基の範囲内にある。或る好ましい実施形態においては、そのペプチドは、Gly-Phe-Leu-である。あるいは、グリシンを上記トリペプチドのロイシンの後に加えて4残基ペプチドを作ってもよい。
【0051】
アミノ酸残基は、好ましくは、式
【化9】
【0052】
[式中、X’はO、SまたはNR26であり、Y5はO、SまたはNR27であり、そしてR26、R27およびR28は独立してR3を定義する基と同じ基から選択されるが、好ましくはHまたは低級アルキルであり;そしてfは約1〜約10の正の整数であり、好ましくは1である]
で表される。
【0053】
天然アミノ酸の誘導体および類似体だけでなく、様々な当技術分野で公知の疎水性または非疎水性の非天然アミノ酸(DまたはL)も本発明の範囲内にあると意図している。単に例として挙げると、アミノ酸類似体および誘導体は:2-アミノアジピン酸、3-アミノ-アジピン酸、β-アラニン、β-アミノプロピオン酸、2-アミノ酪酸、4-アミノ-酪酸、ピペリジン酸、6-アミノカプロン酸、2-アミノヘプタン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-アミノピメリン酸、2,4-ジアミノ酪酸、デスモシン、2,2-ジアミノピメリン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、n-エチルグリシン、N-エチルアスパラギン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロイソロイシン、N-メチルグリシン、サルコシン、N-メチルイソロイシン、6-N-メチル-リシン、N-メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、およびその他を含み、これらは記述するにはあまりにも多数であり、参照により本明細書に組み入れられる63 Fed. Reg., 29620, 29622に掲げられている。
【0054】
短いペプチドは、例えば、先に記述した、2〜約10個、または以上、のアミノ酸残基からなるペプチドである。
【0055】
D.Z成分とその官能基
本発明の一態様においては、Zは、L3-C(=Y4)[式中、L3は、L1およびL2を定義する基の中から選択される二官能性リンカーでありかつY4は、Y1-3を定義する基と同じ基の中から選択される]である。本発明のこの態様においては、Z基は、A基とビシン輸送形態の残部との間の結合の役割を果たす。
【0056】
本発明の他の態様においては、Zは、標的細胞中に能動輸送(active transport)される成分、疎水性成分、およびそれらの組合わせである。Zは好ましくは1価であるが、場合によっては、Zは2価または多価であり、複数個のA基のビシン系高分子との結合を可能にしてもよい。能動輸送を達成するために、Zは、L1およびL2について先に記載したいずれかのアミノ酸またはペプチド残基、糖残基、脂肪酸残基、C6-18アルキル、置換アリール、ヘテロアリール、-C(=O)、-C(=S)または-C(=NR29)[式中、R29はH、低級アルキル、その他である]などを含んでもよい。
【0057】
本発明のこの態様は、ビシン-高分子系プロドラッグコンジュゲートに組込むのに好適な生物学的活性物質はそれ自身、ビシン結合組成物からの加水分解放出後に活性を持たない物質/化合物であるが、さらなる化学プロセス/反応を受けた後に活性を持つようになるという原理に広く基づくものである。この実施形態については、ビシン系高分子システムにより血流に送達される治療薬または診断薬、ペプチド、ポリペプチドなどは、目的の標的細胞中に進入するまたは能動輸送されるまで不活性のままであり、到達すると、細胞内化学により、例えば組織または細胞に存在する酵素または酵素系により活性化される。
【0058】
本発明のこの態様のプロドラッグは、ビシン-高分子系コンジュゲートがin vivo加水分解により切断されると、生物学的活性物質(本明細書ではAと記載)は、Z成分と結合したままで細胞外液中に放出されるように調製する。本発明のこの態様における生物学的活性物質は、好ましくは、限定されるものでないが、小分子の治療薬および/または診断薬である。例えば、1つの可能なZ-A組合わせはロイシン-ドキソルビシンであり、他の組合わせはアミノ酸結合カンプトテシンまたはパクリタキセルであり、そして治療される組織は腫瘍組織である。
【0059】
本発明が作用する機構についていずれかの理論または仮説に束縛されることを意図しないが、例えば、EPR効果を示す組織の細胞外組織空間中への、保護および/または輸送増強された形態での生物学的活性物質の腫瘍細胞中への輸送率は、生物学的活性物質の送達による輸送エンハンサーとして選択される付加成分に依存すると考えられる。
【0060】
なおさらなる選択肢においては、輸送エンハンサー(Z)は細胞膜輸送系に対する公知の基質の中から選択される。単に例として挙げれば、細胞はある特定の栄養および内分泌因子などを能動輸送することが公知であり、そのような栄養またはその類似体は、生物学的有効物質を標的細胞中への能動輸送を増強するために容易に採用される。これらの栄養の例としては、アミノ酸残基、ペプチド、例えば、約2〜約10残基または以上の、サイズの短いペプチド、単純な糖および脂肪酸、内分泌因子などが挙げられる。
【0061】
短いペプチドは、上記のように、例えば2〜約10個、または以上の、アミノ酸残基のペプチドである。本発明のこの実施形態において、そのようなペプチド輸送エンハンサーは疎水性である必要はないが、色々な方法で摂取を増強しおよび/または結合した小分子薬を一般血流中の早発性加水分解から保護する機能があると考えられる。例えば、ペプチド輸送エンハンサーおよび他の類似の分子量範囲の輸送エンハンサーは、血漿に基づく加水分解酵素による生物学的活性薬からの切断を立体的に妨害するが、次いで標的細胞内において、様々なペプチドおよび/またはプロテアーゼ、例えばカテプシンにより切断されると考えられる。
【0062】
ある特定の好ましい態様においては、Zは疎水性成分である。疎水性が有効性に寄与する方法についてのいずれかの理論または仮説に束縛されることを意味するのでなく、疎水性成分は、細胞外組織空間、例えば血漿中に存在する加水分解酵素などの攻撃を阻止することにより、輸送エンハンサーを活性生物学的薬から切り離す細胞外切断を阻止すると思われる。従って、いくつかの好ましい輸送エンハンサーとしては、例えば、疎水性アミノ酸、例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン、ならびに、先に述べたように、それらの非天然誘導体およびそれらの類似体が挙げられる。
【0063】
さらなる選択肢における輸送エンハンサーは疎水性有機成分である。単なる例として、有機成分はC6-18、またはそれより大きく、アルキル、アリールまたはヘテロアリール置換されているかまたは置換されてない。有機成分輸送エンハンサーはまた、例えば、-C(=S)および/または-C(=O)を含む有機官能基を包含しかつ含むことも考えられる。
【0064】
E.式(I)のA基
1.脱離基
Aが脱離基である態様においては、好適な成分としては、限定されることなく、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、ハロゲン、N-ヒドロキシフタルイミジル、p-ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N-ヒドロキシスクシンイミジル;チアゾリジニルチオン、O-アシル尿素、または
【化10】
【0065】
などの基であり、当業者には他の好適な脱離基も明らかであろう。
【0066】
本発明の目的に対して、脱離基は、所望の標的、すなわち生物学的活性成分、二官能性スペーサー、中間物などに見出される求核成分と反応することができる基と理解されるものとする。従って標的は、置換のための基、例えばタンパク質、ペプチド、酵素、天然または化学合成されたドキソルビシンのような治療薬分子、化合物42などの単保護ジアミンのようなスペーサーに見出されるNH2基を含有する。
【0067】
本発明の化合物はまた、所望であれば、ビシン基と脱離基または結合標的(薬物)との間のスペーサー基を含んでもよい。スペーサー成分は、18個以下の炭素原子を含有するヘテロアルキル、アルコキシ、アルキルまたはさらに付加された高分子鎖であってもよい。スペーサー成分は標準の合成技術を用いて付加することができる。A用に選択されるこれらの成分はまた、生物学的活性のある求核成分だけでなく他の成分と反応してもよいと理解されるべきである。
【0068】
2.官能基
Aはまた官能基であってもよい。限定するものでないそのような官能基の例としては、ビシン成分とアミン含有スペーサーを介して結合できるマレイミジル、ビニル、スルホンの残基、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、メルカプト、ヒドラジド、カルバゼート(carbazate)などが挙げられる。ビシン成分と一度結合すると、官能基(例えばマレイミド)を用いて、ビシン-高分子を標的、例えばポリペプチドのシステイン残基、アミノ酸またはペプチドスペーサーなどに付着させることができる。
【0069】
3.アミンを含有する化合物の残基
本発明のいくつかの態様においては、Aはアミンを含有する化合物の残基である。限定するものでないそのような好適な化合物のリストは、有機化合物、酵素、タンパク質、ポリペプチドなどの残基を含む。有機化合物は、限定するものでなく、例えばダウノルビシン、ドキソルビシンを含むアントラサイクリン化合物;p-アミノアニリンカラシ油(p-aminoaniline mustard)、メルファラン、Ara-C(シトシンアラビノシド)および関係抗代謝物化合物、例えば、ゲムシタビン、などの成分を含む。あるいは、Aはアミンを含有する心血管薬、抗新生物薬、抗感染薬、抗真菌薬、例えばニスタチンおよびアンフォテリシンB、抗不安薬、胃腸薬、中枢神経系活性化薬、鎮痛薬、受精薬、避妊薬、抗炎症薬、ステロイド薬などの残基であってもよい。
【0070】
以上に加えて、Aはまた、酵素、タンパク質、ポリペプチド、などの残基であってもよい。高分子結合に利用しうる少なくとも1つの基、例えばε-アミノ、システイン、チオ、N-末端アミノを有する好適なタンパク質、ポリペプチド、酵素、ペプチドなどとしては、生理学的または薬理学的活性を有する物質、ならびに有機溶媒中の反応を触媒することができる物質が挙げられる。アミンを含有する物質の唯一の他の要件は、これらの物質が、未改変タンパク質、酵素、ペプチドなどに付随する活性の少なくともいくつかの部分を、高分子輸送体と結合した後に、または、もし関連があれば、親化合物が加水分解されかつ放出された後に維持することである。
【0071】
目的のタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドとしては、限定されるものでないが、ヘモグロビン、血清タンパク質、例えば第VII、VIII、およびIX因子を含む血液因子;免疫グロブリン、サイトカイン、例えばインターロイキン、すなわちIL-1〜IL-13、など、α、β、およびγ-インターフェロン、顆粒球コロニー刺激因子を含むコロニー刺激因子、血小板由来増殖因子およびホスホリパーゼ活性化タンパク質(PLAP)が挙げられる。他の一般的な生物学的または治療上の目的のタンパク質としては、インスリン、植物タンパク質、例えばレクチンおよびリシン、腫瘍壊死因子と関係タンパク質、増殖因子、例えばトランスフォーミング増殖因子、例えばTGFαまたはTGFβおよび上皮細胞増殖因子、ホルモン、ソマトメジン、エリスロポエチン、色素ホルモン、視床下部放出因子、抗利尿ホルモン、プロラクチン、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、組織プラスミノゲンアクチベーターなどが挙げられる。目的の免疫グロブリンとしては、IgG、IgE、IgM、IgA、IgDおよびそれらのフラグメントが挙げられる。
【0072】
いくつかのタンパク質、例えばインターロイキン、インターフェロンおよびコロニー刺激因子も、通常、組換え技術を利用する結果として、非グリコシル化形態で存在する。非グリコシル化バージョンも本発明のタンパク質に包含される。
【0073】
目的の酵素としては、糖鎖特異酵素、タンパク質分解酵素、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、加水分解酵素、リアーゼ、異性化酵素およびリガーゼが挙げられる。特定の酵素に限定されることなく、目的の酵素の例としては、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アルギニンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、エンドトキシナーゼ、カタラーゼ、キモトリプシン、リパーゼ、ウリカーゼ、アデノシンジホスファターゼ、チロシナーゼおよびビリルビンオキシダーゼが挙げられる。目的の糖鎖特異酵素としては、グルコースオキシダーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、グルクロニダーゼなどが挙げられる。
【0074】
本明細書に含まれるのはまた、in vivo生物活性を示す生物学的高分子のいずれかの部分である。これには、アミノ酸配列、核酸(DNA、RNA)、ペプチド核酸(PNA)、オリゴヌクレオチド、抗体フラグメント、1本鎖結合タンパク質(例えば米国特許第4,946,778号を参照、なおこの開示は本明細書に参照により組み入れられる)、抗体またはフラグメントの融合体を含む結合分子、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体および触媒抗体が含まれる。
【0075】
タンパク質またはその部分は、当業者に公知である技術、例えば組織培養、動物供給源からの抽出によって、または組換えDNA手法によって調製または単離することができる。タンパク質、ポリペプチド、アミノ酸配列などのトランスジェニック供給源も意図している。そのような物質は、タンパク質が乳、血液または組織に発現されるトランスジェニック動物、すなわちマウス、ブタ、ウシなどから得られる。トランスジェニック昆虫およびバキュロウイルス発現系も供給源として意図している。さらにタンパク質の突然変異バージョン、例えば突然変異インターフェロンも本発明の範囲に包含される。
【0076】
他の目的のタンパク質はアレルゲンタンパク質、例えばブタクサ(ragweed)、抗原E、ミツバチ毒、ダニアレルゲンなどである。以上は本発明に好適であるタンパク質の例示である。本明細書に定義した、具体的に記述していないが利用しうるアミノ基を有するタンパク質も意図されており、本発明の範囲に包含されることは理解されるべきである。
【0077】
本発明の好ましい態様において、アミノを含有する化合物は、動物、例えばヒトを含む哺乳動物の治療において、治療を所望する症状に対する医療または診断に用いることが好適である生物学的活性化合物である。以上のリストは、改変しうる化合物についての例示を意味し、限定するものではない。当業者であれば、他のそのような化合物/組成物も必要以上の実験なしに同様に改変しうることを理解するであろう。具体的に記述しないが、好適な結合基を有する生物学的活性物質もまた意図されており、本発明の範囲内に包含されることは理解されるべきである。
【0078】
F.ビシン結合高分子の合成
具体的なビシン系高分子化合物の合成を実施例で説明する。さて、説明のために図1を参照すると、1つの好ましい方法は:
1) 酸保護されたビシン、例えば
【化11】
【0079】
[式中、tBuは保護基でありかつ全ての他の変数は先に式(I)で説明したのと同じである]
を合成するステップ、
2) ブロックされた二官能性スペーサーをビシン分子のそれぞれのヒドロキシル基とコンジュゲート化するステップ、
3) 得られる中間体を脱保護して、それを活性化された高分子、例えばPNP-PEGまたはSC-PEGと塩基性カップリング条件下で反応させるステップ
4) ブロックされた酸を脱保護し、その後に酸を好適な活性化基、例えばチアゾリジニルチオンを用いてカップリング条件下で活性化するステップから成る。他の当技術分野で認識されている保護基をt-Buの代わりに用いてもよいことは理解されるであろう。このように活性化されたPEGまたは高分子ビシン誘導体は、以後、医薬、ペプチド、スペーサーなどと反応することができる。
【0080】
好適なカップリング剤としては、限定されるものでないが、1,3-ジイソプロピル-カルボジイミド(DIPC)、好適なジアルキルカルボジイミド、2-ハロ-1-アルキル-ピリジニウムハロゲン化物(Mukaiyama試薬)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDC)、プロパンホスホン酸環状無水物(PPACA)およびフェニルジクロロリン酸など(例えば、Sigma-Aldrich Chemicalのような市販先から入手可能であるかまたは公知の技術を用いて合成されるもの)が挙げられる。
【0081】
好ましくは置換基を、不活性溶媒、例えばテトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(CH3CN)、メチレンクロライド(DCM)、クロロホルム(CHCl3)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはそれらの混合物中で反応させる。好適な塩基としては、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミン、KOH、カリウムt-ブトキシドおよびNaOHなどが挙げられる。反応は通常、約0℃〜約22℃(室温)の温度で実施する。
【0082】
さらに具体的に、活性化されたビシン誘導体を作る1つの方法は、
1) ビスN-2-ヒドロキシエチルグリシンのt-ブチルエステルを作って中間物:
【化12】
【0083】
を得るステップ、
2) N-ヒドロキシエチル基を、保護されたアミノ酸または他の保護されたリンカー(L1)とコンジュゲート化してさらなる中間物:
【化13】
【0084】
を得るステップ、
3) 次いで、二官能性スペーサーを脱保護して該中間物をPEG化するステップ、および
4) 残るブロッキング基を脱保護してビシン誘導体を活性化するステップ
から成る。
【0085】
選択する経路に関わらず、本明細書に記載の合成技術から得られる好ましい化合物の数例としては、
【化14】
【0086】
[式中、A1は脱離基、例えば
【化15】
【0087】
または上記のE.1節で記載した脱離基などの他の脱離基である]が挙げられる。活性化されたビシン-高分子の好適な標的との反応は、A1をA2(A2は生物学的活性成分、スペーサーなどの残基である)に変換して、活性化された高分子のコンジュゲートへの変換をもたらす。
【0088】
G.多重的な高分子のローディング
本発明のなおさらなる態様においては、ビシン系の多重分枝高分子化合物が提供される。特に、基本のビシン誘導体は1以上の末端分枝基を含むようにさらに改変される。好ましくは、末端分枝基は、式:
【化16】
【0089】
[式中、Y5はO、SまたはNR46であり;
L4はL1を定義する基と同じ基から選択される二官能性リンカーであり;
R40〜R46は水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6 アルコキシ、フェノキシおよびC1-6 ヘテロアルコキシからなる群から独立して選択され;
jとkはそれぞれ独立して0または正の整数であり;
qは0または1であり;
g、h、vとwは正の整数から独立して選択され;
R50は実質的に非抗原性の高分子残基、C1-6アルキル、C1-6アラルキル、および
【化17】
【0090】
(式中、L5はL1を定義する基と同じ基から選択される二官能性リンカーであり;
そして、R60は実質的に非抗原性の高分子残基、C1-6アルキルおよびC1-6アラルキルからなる群から選択される)からなる群から選択される]
で表される。
【0091】
得られる分枝ビシン誘導体の構造式は:
【化18】
【0092】
[式中、全ての変数は先に定義した通りである]
である。
【0093】
以下におよび実施例において示すように、ブロックされた第一級アミンを含有するビシン誘導体中間物を2当量の活性化されたビシン高分子と反応させて、生物学的活性分子、酵素、標的などと、単一の結合点で接続した高分子を4本鎖まで含有するビシン高分子系を作る。この方法を繰返して、2当量の上記4本鎖高分子ビシン誘導体を1当量のブロックした第一級アミンビシン誘導体と反応させることにより、8本鎖の誘導体を作ることができる。
【0094】
H.混合リンカーシステム
本発明の他の態様においては、生物学的活性成分(本明細書ではAとして記載した)に付着した第2の異なるタイプの高分子システムを含有するビシン系高分子輸送システムを提供する。混合リンカーまたはハイブリッドシステムは少なくとも2つの方法により調製することができる。例えば、最初にビシン系システムを以上考察したように合成し、次いでビシンが付着した生物学的活性成分を、チアゾリジニルチオン、スクシンイミジルカーボネートまたはマレイミドで活性化されたPEGなどの当技術分野で公知の方法で活性化された高分子を用いて、PEG化することができる。あるいは、生物学的活性物質を最初にPEG化し、次いで上記の活性化されたビシン系システムと反応させることができる。混合リンカーまたはハイブリッドシステムは、複数のアミノ基(例えば、リシンのアミノ基またはN末端基)、システインまたはチオ基を様々な高分子リンカーの結合に利用可能なタンパク質、酵素などにとって、より好適であることは理解されるであろう。本発明の目的における用語「活性化された高分子(activated polymers)」は、酵素、タンパク質などに見出される1以上のアミノ基、ヒスチジン窒素、カルボキシル基、スルフヒドリル基など、ならびに合成によって調製された有機化合物に見出されるこのような基と反応することができる1以上の末端基を含有する高分子を含むことが理解されるであろう。さらに、活性化基(activating group)を用いて、上記の活性化されたビシンシステムを作ることができるのも理解されるであろう。
【0095】
活性化末端基は、従って、本発明の二重プロドラッグ輸送系が合成される前または後に、高分子の生物学的活性物質、すなわちタンパク質、酵素などとのコンジュゲート形成を容易にする基である。例えば、米国特許第4,179,337号および本願出願人による米国特許第6,113,906号を参照すること、またこの開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0096】
I.in vivo診断学
本発明のさらなる態様は、場合によっては、診断または造影を目的として選択される診断タグを上記の輸送エンハンサーに結合して調製した本発明のコンジュゲートを提供する。従って、好適なタグは、好適な成分、例えばアミノ酸残基を、当技術分野の標準放射性同位元素、放射線不透過性標識、磁気共鳴標識、またはその他、磁気共鳴映像法に好適なその他の非放射性同位元素標識、蛍光標識、外科処置中の腫瘍組織のイメージングを可能にする可視色を呈する標識および/または紫外線、赤外線または電気化学的刺激下で蛍光発光可能な標識などに結合させることにより作製される。場合によっては、コンジュゲート化する治療成分に診断タグを組み込みおよび/または結合させ、動物またはヒト患者内の治療用生物活性材料の分布をモニターできるようにする。
【0097】
本発明のなおさらなる態様では、本発明のタグ付きコンジュゲートが当技術分野で公知な方法により、例えば、放射性同位元素標識をはじめとする好適な標識を用いて容易に作製される。単なる例として、これらの標識には、in vivoにおいて腫瘍細胞に選択的に取り込まれる放射免疫シンチグラフ用薬剤を製造するための131ヨウ素、125ヨウ素、99mテクネチウムおよび/または111インジウムが挙げられる。例えば、単なる例として、参照により本明細書に組み入れる米国特許第5,328,679号;同第5,888,474号;同第5,997,844号;および同第5,997,845号により示された方法を含む、ペプチドをTc-99mに結合させる当技術分野で公知の方法が多数ある。
【0098】
一般的に、患者の腫瘍組織の解剖学的局在化を決定するために、腫瘍を有すると予測される患者または動物にコンジュゲートタグが投与される。標識化免疫グロブリンが腫瘍部位に局在化するのに十分な時間が経過した後、標識が発生するシグナルを、例えば、X線ラジオグラフィー、コンピュータ体軸横断X線断層撮影、MRIにより、発光性タグの機器検出により、ガンマカメラなどのフォトスキャン装置、または選択されるタグの性質に好適なその他の方法もしくは装置により視覚的に検出する。
【0099】
次いで、検出されたシグナルを画像または腫瘍部位の解剖学的および/もしくは生理学的判定に変換する。この画像によりin vivoにおける腫瘍の位置付けが可能になり、好適な治療計画の立案ができる。タグ付き成分自体が治療薬である実施形態では、検出されたシグナルによって治療中の解剖学的局在化の確証が得られ、診断的および治療的インターベンションを追跡するための基準が得られる。
【0100】
J.治療方法
本発明の他の態様は、哺乳類における種々の病状に対する治療方法を提供する。これらの方法は、かかる病状の治療が必要な哺乳類に、本明細書に記載したように製造したプロドラッグ、例えばドキソルビシン-ビシン結合-PEGコンジュゲートの有効量を投与することを含む。該組成物は特に、新生物性疾患を治療する、全身腫瘍組織量を減少させる、新生物転移を予防する、および哺乳類における腫瘍/新生物増殖の再発を予防するのに有用である。
【0101】
投与するプロドラッグの量はその中に含まれる親分子、例えばペプチド、ポリペプチド、タンパク質、酵素などに応じたものとなる。一般的に、治療方法に使用するプロドラッグの量は哺乳類において所望の治療効果を効果的に達成する量である。必然的に、種々のプロドラッグ化合物の投与量は親化合物、in vivo加水分解速度、高分子の分子量などによって多少変わる。当業者は、臨床経験および治療適用に基づき、選択されるプロドラッグの最適投与量を決定するであろう。実際の投与量については必要以上の試験を行うことなく、当業者には明らかであろう。
【0102】
本発明の組成物を、哺乳類へ投与するために好適な1種以上の医薬組成物中に含ませることができる。医薬組成物は当技術分野で周知の方法に従って製造される液剤、懸濁剤、錠剤、カプセル剤などの形態であってよい。また、当業者が要すれば、かかる組成物の投与は経口および/または非経口経路によるものであってよいと考えられる。該組成物の溶液および/または懸濁液は、例えば、当技術分野で公知の方法、例えば、静脈内、筋肉内、皮下注射などによる、組成物の注入または浸潤用の担体ビヒクルとして使用してもよい。
【0103】
かかる投与はまた、体内空間もしくは体腔中への注入、ならびに吸入および/または経鼻経路によるものであってもよい。しかしながら、本発明の好ましい態様では、プロドラッグはその必要のある哺乳類に非経口投与される。
【実施例】
【0104】
次の実施例は本発明のさらなる理解を進めるためのものであり、決して本発明の有効範囲を制限するものではない。実施例で列挙した下線引き太字体の数字(化合物に対する)は図1〜17に示される数字と対応する。
【0105】
概説 反応は全て乾燥窒素またはアルゴン雰囲気下で行った。市販の試薬はさらなる精製を行わずに使用した。全てのPEG化合物は使用前に真空下またはトルエンからの共沸蒸留により乾燥させた。NMRスペクトルはVarian Mercury(登録商標)300 NMR分光計および、特に断らない限り、溶媒として重水素化クロロホルムを用いて取得した。化学シフト(σ)はテトラメチルシラン(TMS)から低磁場へ向かう100万分の1(ppm)単位で報じた。
【0106】
HPLC手法 反応混合物および中間体と最終生成物の純度は、Beckman Coulter System Gold(登録商標)HPLC計器により、ZOBAX(登録商標)300 SB C-8逆相カラム(150 x 4.6mm)またはPhenomenex Jupiter(登録商標)300A C18逆相カラム(150 x 4.6mm)を採用し、多波長UV検出器によって、0.5%トリフルオロ酢酸(TFA)中のアセトニトリル30〜90%の勾配を用いて、1mL/minの流速でモニターした。
【0107】
実施例1
化合物(3)の合成
化合物1(24.0g、0.228mol)と化合物2(12.0g、0.061mol)の無水塩化メチレン(DCM、400mL)中の溶液を、室温で18時間攪拌した。反応混合物を水(4x150mL)を用いて洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムを通して乾燥し、次いで濾過し、そして溶媒を真空で除去して、化合物3(6.1g、0.0279mol、46%)を得た。13C NMR(67.8 MHz、CDCl3)δ 172.1、81.4、59.5、57.0、56.3、27.8。
【0108】
実施例2
化合物(4)の合成
化合物3(0.50g、2.28mmol)、N-トリチルグリシン(4.26g、13.4mmol)、4,4’-ジメチルアミノピリジン(DMAP、2.18g、17.8mmol)およびスカンジウムトリフラート(0.65g、1.32mmol)の無水DCM(25mL)中の溶液を、-8℃まで氷塩浴中で30分間冷却した。1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC、3.0g、15.6mmol)を加えて、反応混合物を-8℃にて30分間、次いで室温にて12時間攪拌した。反応混合物を濾過し、濾液を0.1N HCl(3x20mL)、蒸留水(20mL)を用いて洗浄し、乾燥し(MgSO4)、そして真空で溶媒を蒸発させた。生成物をさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィにより精製して、化合物4(1.40g、1.71mmol、75%)を得た。13C NMR(67.8MHz、CDCl3)δ 172.38、170.67、145.46、128.71、128.03、126.61、81.14、70.67、63.08、56.18、52.70、45.79、28.02。
【0109】
実施例3
化合物(5)の合成
化合物4(0.240g、0.292mmol)を、トリフルオロ酢酸(TFA)のDCM(10mL)中の1%溶液に溶解し、室温で30分間攪拌した。溶媒を減圧下で部分的に除去し、エチルエーテル(50mL)を加えて生成物を沈殿させた。デカントして上清のエーテルを移した後に、残留物を再びDCMに溶解し、真空下で蒸発して化合物5(0.148g、0.263mmol、90%)を得た。13C NMR(67.8MHz、CDCl3/CD3OD)δ 167.85、166.81、83.40、61.81、55.11、52.78、39.79、27.47。
【0110】
実施例4
化合物(6)の合成
モノメトキシポリ(エチレングリコール)4-ニトロフェニルカルボナート(mPEG-PNP、12kDa、6.0g、0.49mmol)とDMAP(0.12g、0.98mmol)の無水DCM(35mL)中の溶液に、化合物5(0.17g、0.30mmol)のDCM/ジメチルホルムアミド(DMF)(32mL/3mL)中の溶液を滴状で30分間の時間をかけて加えた。得られる混合物を室温でさらに12時間攪拌した。溶媒を減圧下で部分的に除去し、次いでPEG誘導体をエチルエーテルを用いて沈殿させた。濾過により粗PEG生成物を得て、これをDCM/エチルエーテル(24mL/96mL)から、次いでイソプロパノール(IPA、120mL)からそれぞれ結晶化して化合物6(5.6g、0.23mmol、76%)を得た。13C NMR(67.8MHz、CDCl3)δ 170.16、169.68、156.10、80.76、63.11、58.67、58.52、52.46、42.23、27.82。
【0111】
実施例5
化合物(7)の合成
PEG誘導体6(5.6g、0.23mmol)をTFA/DCM(30mL/60mL)に溶解し、室温で12時間攪拌した。溶媒を減圧下で除去した。残留物を10mL DCMに再溶解し、エチルエーテルを用いて沈殿させ、濾過し、そして複数部のエーテルを用いて洗浄し、化合物7(5.1g、0.21mmol、91%)を得た。13C NMR(67.8MHz、CDCl3)δ 171.25、169.68、156.21、62.46、58.66、58.49、52.82、42.24。
【0112】
実施例6
化合物(8)の合成
化合物7(5.1g、0.21mmol)、DMAP(0.076g、0.63mmol)、および2-メカプトチアゾリン(2-MT、0.075g、0.63mmol)の無水DCM(70mL)中の溶液を、0℃に氷浴中で30分間冷却し、そしてEDC(0.12g、0.63mmol)をひとまとめにして加えた。混合物を室温にゆっくりと加温し、12時間攪拌した。溶媒を減圧下で部分的に除去し、次いでPEGリンカーをエチルエーテル(200mL)を用いて沈殿させた。粗生成物を濾過により得て、そしてDCM/エチルエーテル(20mL/80mL)から、次いでイソプロパノール(IPA、100mL)からそれぞれ結晶化して化合物8(4.5g、0.18mmol、80%)を得た。13C NMR(67.8MHz、CDCl3)δ 201.11、172.70、169.59、156.03、63.20、58.44、55.18、52.37、42.09、28.53。
【0113】
実施例7
化合物(9)の合成
化合物8(2.0g、0.082mmol)、ドキソルビシン塩酸塩(0.095g、0.16mmol)、およびDMAP(0.040g、0.33mmol)の無水DMF/DCM(20mL/20mL)中の溶液を、室温で12時間攪拌した。溶媒を減圧下で部分的に除去し、次いで最終生成物をエチルエーテル(80mL)を用いて沈殿させた。固体を濾過し、DMF/メタノール(35mL/25mL)から再結晶して化合物9(1.75g、0.070mmol、86%)を得た。13C NMR(67.8MHz、CDCl3)δ 212.93、186.13、169.95、169.46、160.68、156.68、155.95、155.36、135.73、135.36、133.80、133.56、119.78、118.69、111.46、101.09、75.63、69.40-74.00(PEG)、68.29、65.53、64.93、63.16、61.87、60.25、59.58、57.35、55.36、45.46、43.32、36.51、34.71、30.74、17.91。
【0114】
実施例8
化合物(11)の合成
化合物3(0.60g、2.74mmol)、ベンジルオキシカルボニルアラニン(3.61g、16.3mmol)、DMAP(2.64g、21.6mmol)、およびスカンジウムトリフラート(0.96g、1.95mmol)の無水DCM(72mL)中の溶液を、-8℃に氷塩浴中で30分間冷却した。次いで1,3-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC、2.42g、19.2mmol)を加え、反応混合物を-8℃にて30分間、次いで室温にて12時間攪拌した。その反応混合物を濾過し、濾液を0.1N HCl(3x20mL)、蒸留水(20mL)を用いて洗浄し、乾燥し(MgSO4)、そして溶媒を真空で蒸発させた。生成物をさらにシリカゲルカラムにより精製して純粋な化合物11(1.08g、1.71mmol、75%)を得た。
【0115】
13C NMR(67.8MHz、CDCl3)δ 172.98、170.64、155.68、136.25、128.44、128.04、81.11、66.62、63.54、56.06、52.67、49.43、27.93、18.19。
【0116】
実施例9
化合物(12)の合成
化合物11(0.60g、0.95mmol)および水酸化パラジウム/炭素(0.60g)のエタノール(150mL)中の懸濁液を、室温にて50psi水素圧下で密閉容器に入れて24時間振とうした。混合物を濾過し、そして溶媒を真空中で除去して、化合物12(0.29g、0.81mmol、85%)を得た。13C NMR(67.8MHz、CDCl3)δ 170.38、81.70、64.26、56.43、52.99、49.40、28.06、15.92。
【0117】
実施例10
化合物(13)の合成
モノメトキシポリ(エチレングリコール)スクシンイミジルカルボナート(SC-mPEG、12kDa、2.0g、0.164mmol)、化合物12(0.030g、0.083mmol)およびDMAP(0.022g、0.183mmol)の無水クロロホルム(20mL)中の溶液を、12時間還流させた。溶媒を減圧下で部分的に除去し、次いでPEG誘導体をエチルエーテルを用いて沈殿させた。濾過により、粗PEG生成物を得て、これをIPA(40mL)から結晶化して化合物13(1.5g、0.061mmol、74%)を得た。13C NMR(67.8MHz、CDCl3)δ 172.46、170.13、155.22、80.78、63.28、58.59、55.82、52.48、49.16、27.77、18.03。
【0118】
実施例11
化合物(14)の合成
化合物13(1.5g、0.061mmol)をTFA/DCM(6.5mL/13.5mL)に溶解し、室温にて24時間攪拌した。溶媒を減圧下で部分的に除去した。残留物を5mL DCMに溶解し、エチルエーテル(80mL)を用いて沈殿させ、濾過して化合物14(1.2g、0.049mmol、80%)を得た。13C NMR(67.8MHz、CDCl3)δ 172.31、168.23、155.16、63.18、58.49、55.82、52.44、49.15、27.70、17.92。
【0119】
実施例12
化合物(15)の合成
化合物14(0.80g、0.033mmol)、DMAP(0.016g、0.13mmol)、および2-MT(0.016g、0.13mmol)の無水DCM(10mL)中の溶液を、-0℃に氷浴中で30分間冷却し、次いでEDC(0.025g、0.13mmol)を加えた。混合物をゆっくりと室温まで加温し、そして12時間攪拌した。溶媒を減圧下で部分的に除去し、次いでPEGリンカーをエチルエーテル(20mL)を用いて沈殿させた。粗生成物を濾過し、DCM/エチルエーテル(4mL/16mL)から結晶化し、そして最後にIPA(20mL)から再結晶して化合物15(0.50g、0.020mmol、62%)を得た。生成物の構造をNMRにより確認した。
【0120】
実施例13
化合物(16)の合成
化合物15(0.5g、0.020mmol)、ダウノルビシン塩酸塩(0.023g、0.041mmol)、およびDMAP(0.005g、0.041mmol)の無水DMF/DCM(10mL/10mL)中の溶液を、室温で12時間攪拌した。溶媒を減圧下で部分的に除去し、次いで最終生成物をエチルエーテル(30mL)を用いて沈殿させた。固体を濾過し、IPA(20mL)から結晶化して化合物16(0.4g、0.016mmol、80%)を得た。生成物の構造をNMRにより確認した。
【0121】
実施例14
化合物(17)の合成
ジ-tert-ブチルカルボナート(10.27g、47.2mmol)のクロロホルム(40mL)中の溶液を2-(2-アミノエトキシ)-エタノール(5.0g、47.62mmol)のクロロホルム(40mL)中の溶液に加え、その混合物を室温で1.5時間攪拌した。その溶液を水(30mL)を用いて洗浄し、有機層を乾燥し(MgSO4)、そして溶媒を真空中で除去して、2-(2-Boc-アミノエトキシ)-エタノール(9.6g、99%)を得た。1H NMR(300MHz, CDCl3)δ 5.43(s, 1H)、3.43(s, 1H)、3.56(m, 4H)、3.73(t, 2H, J = 5.4 Hz)、3.32(m, 2H)、1.45(s, 9H);13C NMR(67.8MHz, CDCl3)δ 156.06、79.06、77.18、72.14、70.08、61.31、40.21、28.21。
【0122】
2-(2-Boc-アミノエトキシ)-エタノール(4.5g、24.39mmol)のトルエン(100mL)中の溶液に、1.0Mカリウムt-ブトキシドのt-ブタノール(36.6mL、36.6mmol)中の溶液を、-10〜-20℃にて加えて1.5時間攪拌し、次いでブロモ酢酸エチル(8.15g、48.78mmol)を加えた。得られる混合物を3時間、-10〜-20℃の温度にて攪拌し、次いで0.25N HCl(50mL)を加えた。有機層を分離し、無水MgSO4上で乾燥した。溶媒を除去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(30〜50%酢酸エチルを含むヘキサン)を用いて精製し、[2-(2-Boc-アミノエトキシ)-エトキシ]-酢酸エチルエステル(4.0g、15.36mmol、63%)を得た。1H NMR(300MHz, CDCl3)δ 5.20(s, 1H)、4.22(q, 2H, J = 7.29 Hz)、4.14(s, 2H)、3.66-3.75(m, 4H)、3.55(m, 2H)、3.31(m, 2H)、1.44(s, 9H)、1.29(t, 3H, J = 7.29 Hz);13C NMR(67.8MHz, CDCl3)δ 170.02、155.72、78.68、70.52、69.94、68.29、60.44、40.04、28.06、13.85。
【0123】
NaOH(5.0g、0.125mol)のH2O(5mL)中の溶液にエタノール(50mL)を加え、次いで[2-(2-Boc-アミノエトキシ)-エトキシ]-酢酸エチルエステル(4.0g、15.36mmol)のエタノール(40mL)中の溶液を氷浴にて滴状で加えた。添加中、温度を<20℃に保った。その混合物を2時間攪拌し、次いで6N HClを用いてpH 2.5に酸性化した。混合物を濾過し、濾液ケーキをエタノールを用いて洗浄し、そして濾液を真空中で濃縮した。残留物をDCM/H2Oを用いて抽出して化合物17(2.55g、11.52mmol、75%)を得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3)δ 6.25 (br s, 1H)、5.31 (s, 1H)、5.20 & 3.31 (m, 2H)、4.20 (s, 2H)、3.66-3.75 (m, 4H)、3.55 (m, 2H)、1.45 (s, 9H);13C NMR (67.8 MHz, CDCl3)δ 173.38、156.12、80.05、79.55、70.77、70.12、68.20、53.32、40.15、28.21。
【0124】
実施例15
化合物(18)の合成
化合物3(0.10g、0.45mmol)、化合物17(0.70g、2.66mmol)、DMAP(0.90g、7.38mmol)、およびスカンジウムトリフラート(0.022g、0.045mmol)の無水DCM(35mL)中の溶液を、-8℃に氷塩浴中で30分間冷却し、EDC(0.67g、3.49mmol)を加え、そして反応混合物を-8℃にてさらに30分間、次いで室温にて4.5時間攪拌した。反応混合物を0.1N HCl(3x30mL)、0.1N NaHCO3(3x30mL)、蒸留水(30mL)を用いて洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、そして溶媒を蒸発させて化合物18(0.33g、0.45mmol、100%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3)δ 170.28、170.05、155.73、81.13、78.99、70.77、70.18、68.42、62.96、56.15、52.87、40.31、28.37、28.15。
【0125】
実施例16
化合物(19)の合成
化合物18(0.33g、0.45mmol)をTFAのDCM(10mL)中の20%溶液に溶解し、そして室温で15分間攪拌した。溶媒を真空で除去し、残留物をDCMに溶解し、次いで真空下で数回蒸発させて痕跡のTFAを除去し、化合物19(0.33g、0.45mmol、100%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3/CD3OD)δ 170.08、164.91、84.56、70.50、69.60、67.58、66.33、59.21、52.99、39.17、27.42。
【0126】
実施例17
化合物(20)の合成
12kDa SC-mPEG(2.0g、0.164mmol)の無水DCM(10mL)中の溶液に、化合物19(0.15g、0.20mmol)とDMAP(0.040g、0.327mmol)のDCM(10mL)中の溶液を1時間にわたって滴状で加えた。得られる混合物を室温でさらに12時間攪拌し、そして溶媒を減圧下で部分的に除去し、次いでPEG誘導体をエチルエーテルを用いて沈殿させた。濾過により粗PEG生成物を得て、次いでIPA(40mL)から結晶化し、化合物20(1.8g、0.073mmol、89%)を得た。13C NMR (67.8 MHz, CDCl3)δ 169.89、169.65、155.83、63.42、62.61、58.53、55.86、52.55、49.99、27.84。
【0127】
実施例18
化合物(21)の合成
化合物20(2.0g、0.081mmol)のDCM/TFA(20mL/10mL)中の溶液を室温で8時間攪拌し、次いで溶媒を減圧下で部分的に除去した。生成物をエチルエーテルを用いて沈殿させ、濾過によって回収し、そしてエチルエーテルにより洗浄して化合物21(1.8g、0.073mmol、90%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3)δ 40.32、52.78、55.28、58.52、62.29、63.35、66.58、67.64、68.02-71.41(PEG)、155.82、169.62。
【0128】
実施例19
化合物(22)の合成
化合物21(1.8g、0.073mmol)、2-MT(0.018g、0.147mmol)、およびDMAP(0.054g、0.443mmol)の無水DCM(20mL)中の溶液を0℃に冷却し、次いでEDC(0.028g、0.147mmol)を加えた。この混合物を室温まで加温し、12時間攪拌し、次いで溶媒を減圧下で部分的に除去した。生成物をエチルエーテルを用いて沈殿させ、濾過により回収し、そしてIPAから結晶化して化合物22(1.5g、0.061mmol、83%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3)δ 28.65、40.34、52.47、53.63、55.25、58.50、62.84、63.37、68.03、69.06、69.58-73.03(PEG)、155.79、169.60、172.55 および200.90 ppm。
【0129】
実施例20
化合物(23)の合成
化合物22(1.0g、0.041mmol)およびドキソルビシン塩酸塩(0.047g、0.081mmol)のDCM/DMF(10mL/10mL)混合物中の溶液に、DMAP(0.020g、0.162mmol)を加えた。この混合物を、窒素下で18時間攪拌し、次いで溶媒を減圧下で部分的に除去した。PEG誘導体をエチルエーテルを用いて沈殿させ、濾過により回収し、そしてDMF/IPA(4mL/16mL)から2回結晶化して化合物23(0.44g、0.018mmol、44%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3)δ 16.80、29.77、33.83、35.59、38.49、40.66、44.57、54.20、55.33、56.53、58.82、63.71、67.20、67.34、68.27、69.40、69.69-73.22(PEG)、100.72、111.34、118.27、119.56、133.35、133.49、135.25、135.48、155.39、155.93、156.14、160.75、169.92、170.14、186.36、186.73 および213.35。
【0130】
実施例21
化合物(24)の合成
tert-ブチル-N-(3-ヒドロキシプロピル)-カルバマート(3.00g、17.14mmol)の無水クロロホルム(60mL)中の溶液に、N,N’-ジスクシンイミジルカルボナート(DSC、5.48g、21.43mmol)および無水ピリジン(1.73mL、21.43mmol)を加えた。反応混合物を室温で12時間攪拌した。溶液を濾過し、0.5M HCl溶液(4x60mL)を用いて洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、そして溶媒を真空で除去して化合物24(4.88g、15.43mmol、90%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3)δ 25.37、28.27、28.80、36.71、68.89、79.29、151.48、155.85、168.69。
【0131】
実施例22
化合物(25)の合成
化合物3(0.30g、1.37mmol)、化合物24(1.30g、4.11mmol)、およびスカンジウムトリフラート(0.067g、0.137mmol)の無水DCM(45mL)中の溶液を、0℃に氷浴中で30分間冷却した。次いで、DMAP(0.52g、4.26mmol)を加え、そして反応混合物を室温まで加温して12時間攪拌した。反応混合物を0.1N HCl(3x30mL)、0.1N NaHCO3(3x30mL)を用いて洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、溶媒を蒸発させ、そして残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィにより精製して化合物25(0.275g、0.44mmol、32%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3)δ 170.41、155.77、155.05、81.13、79.14、66.18、65.40、56.24、53.00、37.14、29.14、28.40、28.18。
【0132】
実施例23
化合物(26)の合成
化合物25(0.388g、0.624mmol)をTFAのDCM(15mL)中の20%溶液に溶解し、そして室温で15分間攪拌した。溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させて除去し、残留物をクロロホルムに溶解し、次いで真空下で数回蒸発させて化合物26(0.388g、0.624mmol、100%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3/CD3OD)δ 164.93、153.73、84.39、65.02、62.26、53.72、53.20、36.46、27.31、26.02。
【0133】
実施例24
化合物(27)の合成
m12kDa PEG-PNP(10.0g、0.822mmol)の無水DCM/DMF(24mL/16mL)中の溶液に、化合物26(0.400g、0.617mmol)とDMAP(0.152g、1.24mmol)のDCM中の溶液(15mL)の一部分(11mL)を滴状で1時間にわたって加えた。得られる混合物を室温でさらに3時間攪拌し、次いで化合物26の上記溶液の2mLをさらに加えた。上記溶液の最後の2mLを3時間後にさらにDMAP(0.076g、0.62mmol)と一緒に加え、そして反応混合物をさらに12時間攪拌した。溶媒をロータリーエバポレーターにより部分的に除去し、次いでエチルエーテルを用いてPEG誘導体を沈殿させた。濾過により粗PEG生成物を得て、これを次いでIPA(200mL)から結晶化して化合物27(9.6g、0.789mmol、96%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3)δ 170.00、155.91、154.62、80.71、65.80、64.91、63.43、58.64、55.83、52.62、37.15、28.71、27.87。
【0134】
実施例25
化合物(28)の合成
化合物27(4.6g、0.188mmol)のDCM/TFA(50mL/25mL)中の溶液を室温で12時間攪拌し、次いで溶媒をロータリーエバポレーターにより部分的に除去した。生成物をエチルエーテルを用いて沈殿させ、濾過により回収し、そしてエチルエーテルにより洗浄して化合物28(4.0g、0.163mmol、87%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3)δ 171.47、156.00、154.51、65.51、64.96、63.48、58.61、55.27、52.82、37.14、28.66。
【0135】
実施例26
化合物(29)の合成
化合物28(4.0g、0.163mmol)、2-MT(0.058g、0.491mmol)、およびDMAP(0.080g、0.654mmol)の無水DCM(60mL)中の溶液を0℃に冷却し、次いでEDC(0.094g、0.491mmol)を加えた。この混合物を室温まで加温し、そして12時間攪拌し、次いで溶媒を真空中で部分的に除去した。生成物をエチルエーテルを用いて沈殿させ、濾過により回収し、そしてIPA(80mL)から結晶化して化合物29(3.6g、0.147mmol、90%)を得た。13C NMR (67.8 MHz, CDCl3)δ 200.97、172.86、155.97、154.66、66.07、65.00、63.54、60.39、58.73、55.39、52.67、37.22、28.78。
【0136】
実施例27
化合物(30)の合成
化合物29(2.0g、0.082mmol)およびドキソルビシン塩酸塩(0.094g、0.163mmol)のDMF(20mL)中の溶液に、DMAP(0.040g、0.326mmol)を加えた。この混合物を窒素下で12時間攪拌した。PEG誘導体をエチルエーテルを用いて沈殿させ、濾過し、DMF/IPA(8mL/32mL)から2回再結晶して化合物30(1.50g、0.0615mmol、75%)を得た。13C NMR(67.8 MHz, CDCl3)δ 213.24、186.61、186.17、169.25、160.57、156.11、155.82、155.24、154.57、135.42、135.03、133.29、120.37、119.39、118.15、111.10、110.90、100.63、73.50-69.20(PEG)、68.53、67.12、65.32、65.17、64.98、63.57、58.70、56.41、53.66、44.70、37.16、35.43、33.59、28.75、26.73、16.71。
【0137】
実施例28
化合物(32)の合成
化合物3(0.30g、1.37mmol)、化合物31(1.75g、4.11mmol)、およびスカンジウムトリフラート(0.067g、0.137mmol)の無水DCM(45 mL)中の溶液を、0℃に氷浴中で30分間冷却する。次いでDMAP(0.52g、4.26mmol)を加え、そして反応混合物を室温に加温し、そして12時間攪拌する。反応混合物を0.1N HCl(3 x 30mL)、0.1N NaHCO3(3 x 30mL)を用いて洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、そして溶媒を蒸発させ、残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィにより精製して化合物32を得る。化合物32の構造をNMRにより確認する。
【0138】
実施例29
化合物(33)の合成
化合物32(0.30g、0.36mmol)、およびピペリジン(0.062g、0.72mmol)の無水DCM(25mL)中の溶液を室温で2時間攪拌する。溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をシリカゲル上のクロマトグラフィにより精製して化合物33を得る。化合物33の構造をNMRにより確認する。
【0139】
実施例30
化合物(34)の合成
化合物3(1.00g、4.57mmol)および無水酢酸(0.466g、4.57mmol)の無水DCM(45mL)中の溶液を0℃に氷浴中で15分間冷却し、反応混合物を室温に加温し、そして2時間攪拌する。反応混合物を0.1N NaHCO3(3 x 30mL)を用いて洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、そして溶媒を蒸発させ、そして残留物をシリカゲル上のクロマトグラフィにより精製して化合物34を得る。化合物34の構造をNMRにより確認する。
【0140】
実施例31
化合物(35)の合成
化合物34(1.04g、4.00mmol)、化合物17(2.83g、12.00mmol)、およびスカンジウムトリフラート(1.77g、3.60mmol)の無水DCM(70mL)中の溶液を0℃に氷浴中で30分間冷却する。次いで、DMAP(1.46g、12.00mmol)を加え、そして反応混合物を室温に加温し、そして12時間攪拌する。反応混合物を0.1N HCl(3x30mL)、0.1N NaHCO3(3x30mL)を用いて洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、そして溶媒を蒸発させ、そして残留物をシリカゲル上のクロマトグラフィにより精製して化合物35を得る。化合物35の構造をNMRにより確認する。
【0141】
実施例32
化合物(36)の合成
化合物35(1.52g、3.00mmol)をTFAのDCM(45mL)中の20%溶液に溶解し、そして室温にて15分間攪拌する。溶媒を減圧下で除去し、次いで残留物をクロロホルムに溶解し、次いで真空で数回蒸発させてTFAを除去し、化合物36を得る。化合物36の構造をNMRにより確認する。
【0142】
実施例33
化合物(37)の合成
40kDa PEG二酸(20.0g、0.500mmol)、化合物36(1.01g、2.00mmol)、およびDMAP(0.976g、8.00mmol)の無水DCM(400mL)中の溶液にEDC(0.769g、4.00mmol)を加え、そして反応混合物を室温にて12時間攪拌する。溶媒を減圧下で除去し、残留物をIPA(400mL)から結晶化して化合物37を得る。化合物37の構造をNMRにより確認する。
【0143】
実施例34
化合物(38)の合成
化合物38を化合物28と同じ条件下で作る。化合物38の構造をNMRにより確認する。
【0144】
実施例35
化合物(39)の合成
化合物39を化合物29と同じ条件下で作る。化合物39の構造をNMRにより確認する。
【0145】
実施例36
化合物(40)の合成
化合物40を化合物30と同じ条件下で作る。化合物40の構造をNMRにより確認する。
【0146】
実施例37
化合物(42)の合成
無水マレイン酸(0.196g、2.00mmol)、DMAP(0.244g、2.00mmol)、および化合物41(0.496g、2.00mmol)のDCM(40mL)中の溶液を室温にて2時間攪拌する。溶媒を減圧下で除去して化合物42を得る。化合物42の構造をNMRにより確認する。
【0147】
実施例38
化合物(43)の合成
化合物42(0.496g、2.00mmol)および酢酸ナトリウム(0.82g、10.0mmol)のアセトニトリル(40mL)中の溶液を45分間還流する。溶媒を減圧下で除去して化合物43を得る。化合物43の構造をNMRにより確認する。
【0148】
実施例39
化合物(44)の合成
化合物43(0.496g、2.00mmol)をTFAのDCM(45mL)中の20%溶液に溶解し、そして室温にて15分間攪拌する。溶媒を真空中で除去し、そして残留物をクロロホルムに溶解し、次いで減圧下で数回蒸発させてTFAを除去し、化合物44を得る。化合物44の構造をNMRにより確認する。
【0149】
実施例40
化合物(45)の合成
化合物22(6.10g、0.25mmol)および化合物44(0.328g、1.00mmol)のDCM(120mL)中の溶液にDMAP(0.122g、1.00mmol)を加える。この混合物を窒素下で室温にて12時間攪拌する。PEG誘導体をエチルエーテルを用いて沈殿させ、濾過し、IPA(120mL)から結晶化して化合物45を得る。化合物45の構造をNMRにより確認する。
【0150】
実施例41
化合物(47)の合成
化合物22(6.10g、0.25mmol)および化合物46(0.121g、1.00mmol)のDCM(120mL)中の溶液に、DMAP(0.122g、1.00mmol)を加える。この混合物を窒素下で室温にて12時間攪拌する。PEG誘導体をエチルエーテルを用いて沈降させ、濾過し、IPA(120mL)から結晶化して化合物47を得る。化合物47の構造をNMRにより確認する。
【0151】
実施例42
化合物(49)の合成
化合物22(6.10g、0.25mmol)および化合物48(0.536g、1.00mmol)のDCM(120mL)中の溶液に、DMAP(0.122g、1.00mmol)を加える。この混合物を窒素下で室温にて12時間攪拌する。PEG誘導体をエチルエーテルを用いて沈降させ、濾過し、IPA(120mL)から結晶化して化合物49を得る。化合物49の構造をNMRにより確認する。
【0152】
実施例43
化合物(52)の合成
化合物8(6.10g、0.25mmol)および化合物5(0.0701g、0.125mmol)のDCM(120mL)中の溶液に、DMAP(0.122g、1.00mmol)を加える。この混合物を窒素下で室温にて12時間攪拌する。PEG誘導体をエチルエーテルを用いて沈降させ、濾過し、IPA(120mL)から結晶化して化合物50を得る。化合物50の構造をNMRにより確認する。化合物50を、TFAを用いて化合物7を作るのと同じ条件下で処理して化合物51を得る。化合物51の構造をNMRにより確認する。次いで化合物51を、化合物8を作るのと同じ条件下で活性化して化合物52を得る。化合物52の構造をNMRにより確認する。化合物52をDox-HClと、化合物9を作るのと同じ条件下で反応させて化合物52aを作る。
【0153】
実施例44
化合物(53)の合成
化合物53を、化合物15および12をそれぞれ化合物8および5の代わりに用いることを除いて、実施例43と同じ条件で作る。化合物53の構造をNMRにより確認する。
【0154】
実施例45
化合物(54)の合成
化合物54を、化合物22および19をそれぞれ化合物8および5の代わりに用いることを除いて、実施例43と同じ条件で作る。化合物54の構造をNMRにより確認する。
【0155】
実施例46
化合物(55)の合成
化合物55を、化合物29および26をそれぞれ化合物8および5の代わりに用いることを除いて、実施例43と同じ条件で作る。化合物55の構造をNMRにより確認する。
【0156】
実施例47
化合物(56)の合成
化合物56を、化合物52を化合物8の代わりに用いることを除いて、実施例43と同じ条件で作る。化合物56の構造をNMRにより確認する。
【0157】
実施例48
化合物(57)の合成
化合物57を、化合物8を化合物5と反応させる代わりに、化合物53をチアゾリジンチオン誘導体に転化して化合物12と反応させることを除いて、実施例43と同じ条件で作る。化合物57の構造をNMRにより確認する。
【0158】
実施例49
化合物(58)の合成
化合物58を、化合物8を化合物5と反応させる代わりに、化合物54をチアゾリジンチオン誘導体に転化して化合物19と反応させることを除いて、実施例43と同じ条件で作る。化合物58の構造をNMRにより確認する。
【0159】
実施例50
化合物(59)の合成
化合物59を、化合物8を化合物5と反応させる代わりに、化合物55をチアゾリジンチオン誘導体に転化して化合物26と反応させることを除いて、実施例43と同じ条件で作る。化合物59の構造をNMRにより確認する。
【0160】
実施例51
ビシン-緑色蛍光タンパク質(GFP)コンジュゲートの合成
材料 放出可能なPEGリンカーとして、化合物8を本研究に用いた。PBS(10mMリン酸、pH7.4、138mM NaCl、および2.7mM KCl)はSigma Inc.(St. Louis、MO)から購入した。プレキャスト10%Tris-グリシンSDS電気泳動ゲルおよびゲル泳動バッファーはInvitrogen(Carlsbad、CA)から入手した。動物を屠殺したその同じ日に、ドライアイスで保冷したEDTA中のラット血漿を得た。
【0161】
方法
I. 緑色蛍光タンパク質の調製と精製
実験に使用したGFPは強化バージョンのEGFPであり、最大励起波長488nmおよび最大発光波長507〜509nmである。EGFP配列(Santa Cruz Biotechnology、Inc.、Santa Cruz、CA)を、カルボキシル末端にヒスチジンタグを含有するpET22bベクター中にサブクローニングし、そして大腸菌(E.coli)のBL21株(Novagen、Inc.、Madison、WI)にIPTG誘導を用いて発現させた。可溶性で細胞内可溶質のEGFPを、細菌上清から、Ni-カラム(Novagen、Inc.、Madison、WI)、次いでDEAEアニオン交換クロマトグラフィ(Pharmacia Biotech Products、Piscataway、NJ)を用いて精製し、ほぼ均質化した。蛍光強度はHITACHI F-2000 蛍光分光光度計により測定した。タンパク質濃度(15mMTris、pH7.4バッファー中の1〜140ng/ml)対蛍光強度の直線標準曲線を、タンパク質濃度定量に用いた。
【0162】
II. PEGのGFPとのコンジュゲート化およびPEG-PEG化合物の精製
急速攪拌しながら、化合物8を、0.05M NaHCO3(pH 8.1)中のGFP溶液(2mg/ml)に30:1(化合物8:GFP)のモル比で加えた。その溶液をN2下、25℃にて暗所で45分間攪拌した。45分後、溶液のpHをナトリウムリン酸バッファー(pH 6.4)を加えることにより低下させ、最終濃度77mM(最終pHは6.8であった)とした。未結合のPEGをSuperdex 200 Hiload 16/60カラム(Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ)上でBiocadパーフュージョンクロマトグラフィ・ワークステーションを用いて除去した。溶出バッファーは、10mMリン酸ナトリウムおよび140mMNaCl(pH6.8)から成った。280nmと蛍光の両方の吸収を示す画分をプールし、30k NMWL膜(Millipore Corp.、Bedford、MA)を備えたウルトラフリー15遠心濾過機を用いて濃縮した。精製コンジュゲートの収率は約59%であった。PEG-GFPの濃度はBCAタンパク質アッセイ試薬(Pierce、Rockford、IL)および蛍光強度の数値化によって定量した。
【0163】
III. ラットにおけるGFPおよびPEG-GFPコンジュゲートの薬物動態学
意識のあるラットを拘束し、尾静脈を経由してGFPまたはPEG-GFPのいずれかを用いて5mg/kg用量で静脈内に注射した。化合物を投与した後、血液のサンプリングを予定通り開始した。ラットを30%酸素/70%二酸化炭素混合物を用いて軽く麻酔し、後眼窩洞(retroorbital sinus)を経由して全血0.5mlを採血した。全血をEDTAマイクロチューブ内に採集し、直ぐに処理して血漿を得た。血漿をドライアイス上で即座に凍結し、さらなる分析まで-20℃にて保存した。
【0164】
IV. 血漿中のGFPとPEG-GFPコンジュゲートの分析および放出プロセス
血漿サンプルを-20℃から4℃へ解凍した。GFPまたはPEG-GFPを含有する10ulの血漿アリコートを1mLの15mM Tris(7.4)を用いて希釈した。十分混合した後に、蛍光強度をHITACHI F-2000蛍光分光光度計を用いて測定した。血漿が単独に発生する自己蛍光は、15mM Trisバッファー(pH 7.4)をブランクに利用して、全サンプルから差引いた。放出プロセスについては、色々な時点に採集した血漿サンプルを-20℃から4℃へ解凍し、PBSにより希釈し、そしてSuperdex 75 HR 10/30カラム(Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ)上で、Biocadパーフージョンクロマトグラムを用いて分析した。GFPは21個の遊離アミン、すなわちリシン側鎖由来の20個とN末端由来の1個を有する。反応を30:1モル比(PEG:GFP)で実施したとき、全ての精製PEG-GFPコンジュゲートは、10%SDS電気泳動ゲル上で200,000Daを超える見掛けの分子量を有した。ゲル上で求めたPEG化数は10〜14 PEG分子/GFPであった。
【0165】
結果
ラットにおけるGFPおよびPEG-GFPコンジュゲートの薬物動態学と薬物動態学パラメーター
GFPおよびPEG-GFPコンジュゲートの薬物動態学パラメーター、例えば半減期(t1/2)、曲線下面積(AUC)、クリアランス(CL)、および平均残留時間(MRT)をノンコンパートメント手法を用いて求めた(表1)。データは、PEG化の後に、GFPの半減期が156倍増加しかつクリアランスが167倍減少しうることを示す。ワンコンパートメントモデルを用いて、単一静脈内用量投与後の用量血漿濃度-対-時間経過の曲線を予測した。結果は、予測曲線と観察曲線の間の相関が、天然GFPについては93%、そしてPEG-GFPについては96%であることを示した。pKデータは、ビシンシステムを利用するPEG-GFPコンジュゲートは、天然GFPをより長い時間放出しうることを示す。
【表1】
【0166】
以下の表2は、様々なPEG-ビシンコンジュゲートに対応するプロドラッグ放出時間を示す。
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】図1は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図2】図2は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図3】図3は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図4】図4は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図5】図5は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図6】図6は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図7】図7は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図8】図8は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図9】図9は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図10】図10は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図11】図11は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図12】図12は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図13】図13は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図14】図14は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図15】図15は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図16】図16は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【図17】図17は、詳細な説明および実施例に記載した本発明の化合物を作製する方法を図解する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、R1とR2は独立して実質的に非抗原性の高分子残基、C1-6アルキル、アラルキル、および末端分枝基からなる群から選択され;
Y1-3はO、SまたはNR11であり;
L1とL2は独立して選択される二官能性リンカーであり;
Zは、標的細胞中に能動輸送される成分、疎水性成分、二官能性結合成分およびそれらの組合わせから選択され;
R3〜R11、R24およびR25は、水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシならびにC1-6ヘテロアルコキシからなる群から独立して選択され;
Aは、脱離基、官能基およびアミンを含有する薬剤の残基、ならびにOHから選択され;
aとcはそれぞれ独立して0または正の整数であり;
b、dおよびeは独立して0または1であり;そして
m、n、o、およびpは独立して選択される正の整数である。]
で表される化合物。
【請求項2】
R3〜R10およびR24-25がそれぞれ水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
a、b、c、d、m、n、oおよびpがそれぞれ1でありかつeが0または1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R1がポリアルキレンオキシドを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R2がポリアルキレンオキシドを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
R1がポリエチレングリコールを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
R2がポリエチレングリコールを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
R1またはR2がさらに、OH、NH2、SH、CO2H、C1-6アルキル成分、
【化2】
から成る群から選択されるキャッピング基Jを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
【化3】
[式中、L3は二官能性リンカーでありかつY4はO、SまたはNR11である]
から成る群から選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
R1が
J-O-(CH2CH2O)x-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2C(O)-O-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2NR12-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2SH-、
-OC(O)CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2C(O)-O-、
-NR12CH2CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2CH2NR12-、および
-SHCH2CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2CH2SH-
[式中、xは重合度であり;R12は水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群から選択され;そしてJはキャッピング基である]
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
R1-2がCH3-O-(CH2CH2O)x-、CH3-O-(CH2CH2O)x-CH2C(O)-O-、CH3-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2NH-およびCH3-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2SH-[式中、xは重合度である]からなる群から個々に選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
R2が
J-O-(CH2CH2O)x-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2C(O)-O-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2NR13-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2SH-、
-OC(O)CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2C(O)-O-、
-NR13CH2CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2CH2NR13-、および
-SHCH2CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2CH2SH-
[式中、xは重合度であり;R13は水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群から選択され;そしてJはキャッピング基である]
からなる群から選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
R1およびR2がそれぞれ式-O-(CH2CH2O)x-の高分子残基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
R1およびR2がそれぞれ約2,000〜約25,000Daの重量平均分子量を有する、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
L1が
【化4】
[式中、R14-R17およびR19は、水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群から独立して選択され;
R18は、水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシ、NO2、ハロアルキルならびにハロゲンからなる群から選択され;そして
tとqは個々に選択される正の整数である]
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
L2が
【化5】
[式中、R20〜R23およびR25は、独立して水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群から選択され、
R24は、水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシ、NO2、ハロアルキルならびにハロゲンからなる群から選択され;そして
vとwは、個々に正の整数から選択される]
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
式:
【化6】
で表される化合物を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
【化7】
[式中、A1は脱離基である]
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
A1が
【化8】
からなる群から選択される脱離基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
Aがマレイミジル、ビニル、スルホンの残基、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、メルカプト、ヒドラジド、カルバゼート(carbazate)官能基からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
Aが式:
【化9】
で表される、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
末端分枝基が、式:
【化10】
[式中、Y5はO、SまたはNR46であり;
L4は二官能性リンカーであり;
R40-R46は水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8 シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6 アルコキシ、フェノキシおよびC1-6 ヘテロアルコキシからなる群から独立して選択され;
jとkはそれぞれ独立して0または正の整数であり;
qは0または1であり;
g、h、vおよびwは正の整数から独立して選択され;そして
R50は実質的に非抗原性の高分子残基、C1-6アルキル、C1-6アラルキル、および
【化11】
(式中、L5は二官能性リンカーであり;そして
R60は実質的に非抗原性の高分子残基、C1-6アルキルおよびC1-6アラルキルからなる群から選択される)から選択される]
を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
構造:
【化12】
を含む、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
構造:
【化13】
を含む、請求項22に記載の化合物。
【請求項25】
【化14】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項26】
【化15】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項27】
高分子コンジュゲートを調製する方法であって、式:
【化16】
[式中、A1は脱離基であり;
R1とR2は実質的に非抗原性の高分子残基、C1-6アルキル、アラルキル、および末端分枝基からなる群から独立して選択され;
Y1-3は、O、SまたはNR11であり;
L1とL2は独立して選択される二官能性リンカーであり;
Zは、標的細胞中に能動輸送される成分、疎水性成分、二官能性結合成分およびそれらの組合わせから選択され;
R3〜R11、R24およびR25は、水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシならびにC1-6ヘテロアルコキシからなる群から独立して選択される]
で表される化合物をアミンを含有する生物学的活性薬と、式:
【化17】
[式中、A2はアミンを含有する生物学的活性薬の残基である]
で表される化合物を生成するのに十分な条件のもとで反応させることを含む、上記方法。
【請求項28】
ビシン系高分子輸送システムを調製する方法であって、
a) 酸保護されたビシンを合成するステップ;
b) ブロックされた二官能性スペーサーを酸保護されたビシンのそれぞれのヒドロキシルと結合するステップ;
c) 得られる中間物を脱保護しかつそれを活性化された高分子と塩基性カップリング条件下で反応させるステップ;および
d) 上記の酸保護されたビシンのブロックされた酸を脱保護してカップリング条件下で活性化するステップを含むものである、上記方法。
【請求項29】
その必要がある哺乳類動物に、請求項1に記載の化合物の有効量を投与することを含む治療の方法であって、Aがアミンを含有する生物学的活性薬である上記方法。
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、R1とR2は独立して実質的に非抗原性の高分子残基、C1-6アルキル、アラルキル、および末端分枝基からなる群から選択され;
Y1-3はO、SまたはNR11であり;
L1とL2は独立して選択される二官能性リンカーであり;
Zは、標的細胞中に能動輸送される成分、疎水性成分、二官能性結合成分およびそれらの組合わせから選択され;
R3〜R11、R24およびR25は、水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシならびにC1-6ヘテロアルコキシからなる群から独立して選択され;
Aは、脱離基、官能基およびアミンを含有する薬剤の残基、ならびにOHから選択され;
aとcはそれぞれ独立して0または正の整数であり;
b、dおよびeは独立して0または1であり;そして
m、n、o、およびpは独立して選択される正の整数である。]
で表される化合物。
【請求項2】
R3〜R10およびR24-25がそれぞれ水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
a、b、c、d、m、n、oおよびpがそれぞれ1でありかつeが0または1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R1がポリアルキレンオキシドを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R2がポリアルキレンオキシドを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
R1がポリエチレングリコールを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
R2がポリエチレングリコールを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
R1またはR2がさらに、OH、NH2、SH、CO2H、C1-6アルキル成分、
【化2】
から成る群から選択されるキャッピング基Jを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
【化3】
[式中、L3は二官能性リンカーでありかつY4はO、SまたはNR11である]
から成る群から選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
R1が
J-O-(CH2CH2O)x-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2C(O)-O-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2NR12-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2SH-、
-OC(O)CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2C(O)-O-、
-NR12CH2CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2CH2NR12-、および
-SHCH2CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2CH2SH-
[式中、xは重合度であり;R12は水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群から選択され;そしてJはキャッピング基である]
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
R1-2がCH3-O-(CH2CH2O)x-、CH3-O-(CH2CH2O)x-CH2C(O)-O-、CH3-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2NH-およびCH3-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2SH-[式中、xは重合度である]からなる群から個々に選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
R2が
J-O-(CH2CH2O)x-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2C(O)-O-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2NR13-、
J-O-(CH2CH2O)x-CH2CH2SH-、
-OC(O)CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2C(O)-O-、
-NR13CH2CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2CH2NR13-、および
-SHCH2CH2-O-(CH2CH2O)X-CH2CH2SH-
[式中、xは重合度であり;R13は水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群から選択され;そしてJはキャッピング基である]
からなる群から選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
R1およびR2がそれぞれ式-O-(CH2CH2O)x-の高分子残基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
R1およびR2がそれぞれ約2,000〜約25,000Daの重量平均分子量を有する、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
L1が
【化4】
[式中、R14-R17およびR19は、水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群から独立して選択され;
R18は、水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシ、NO2、ハロアルキルならびにハロゲンからなる群から選択され;そして
tとqは個々に選択される正の整数である]
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
L2が
【化5】
[式中、R20〜R23およびR25は、独立して水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群から選択され、
R24は、水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシ、NO2、ハロアルキルならびにハロゲンからなる群から選択され;そして
vとwは、個々に正の整数から選択される]
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
式:
【化6】
で表される化合物を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
【化7】
[式中、A1は脱離基である]
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
A1が
【化8】
からなる群から選択される脱離基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
Aがマレイミジル、ビニル、スルホンの残基、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、メルカプト、ヒドラジド、カルバゼート(carbazate)官能基からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
Aが式:
【化9】
で表される、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
末端分枝基が、式:
【化10】
[式中、Y5はO、SまたはNR46であり;
L4は二官能性リンカーであり;
R40-R46は水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8 シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6 アルコキシ、フェノキシおよびC1-6 ヘテロアルコキシからなる群から独立して選択され;
jとkはそれぞれ独立して0または正の整数であり;
qは0または1であり;
g、h、vおよびwは正の整数から独立して選択され;そして
R50は実質的に非抗原性の高分子残基、C1-6アルキル、C1-6アラルキル、および
【化11】
(式中、L5は二官能性リンカーであり;そして
R60は実質的に非抗原性の高分子残基、C1-6アルキルおよびC1-6アラルキルからなる群から選択される)から選択される]
を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
構造:
【化12】
を含む、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
構造:
【化13】
を含む、請求項22に記載の化合物。
【請求項25】
【化14】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項26】
【化15】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項27】
高分子コンジュゲートを調製する方法であって、式:
【化16】
[式中、A1は脱離基であり;
R1とR2は実質的に非抗原性の高分子残基、C1-6アルキル、アラルキル、および末端分枝基からなる群から独立して選択され;
Y1-3は、O、SまたはNR11であり;
L1とL2は独立して選択される二官能性リンカーであり;
Zは、標的細胞中に能動輸送される成分、疎水性成分、二官能性結合成分およびそれらの組合わせから選択され;
R3〜R11、R24およびR25は、水素、C1-6アルキル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシならびにC1-6ヘテロアルコキシからなる群から独立して選択される]
で表される化合物をアミンを含有する生物学的活性薬と、式:
【化17】
[式中、A2はアミンを含有する生物学的活性薬の残基である]
で表される化合物を生成するのに十分な条件のもとで反応させることを含む、上記方法。
【請求項28】
ビシン系高分子輸送システムを調製する方法であって、
a) 酸保護されたビシンを合成するステップ;
b) ブロックされた二官能性スペーサーを酸保護されたビシンのそれぞれのヒドロキシルと結合するステップ;
c) 得られる中間物を脱保護しかつそれを活性化された高分子と塩基性カップリング条件下で反応させるステップ;および
d) 上記の酸保護されたビシンのブロックされた酸を脱保護してカップリング条件下で活性化するステップを含むものである、上記方法。
【請求項29】
その必要がある哺乳類動物に、請求項1に記載の化合物の有効量を投与することを含む治療の方法であって、Aがアミンを含有する生物学的活性薬である上記方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2006−505634(P2006−505634A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−528078(P2004−528078)
【出願日】平成15年8月13日(2003.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2003/025252
【国際公開番号】WO2004/014424
【国際公開日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【出願人】(504177103)エンゾン,インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年8月13日(2003.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2003/025252
【国際公開番号】WO2004/014424
【国際公開日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【出願人】(504177103)エンゾン,インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】
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