説明

脂肪減少作用組成物、脂肪減少作用食品および脂肪減少作用薬

【課題】内臓脂肪減少作用、メタボリック症候群関連項目予防および改善作用を有するエルカンプーレエキスパウダ錠剤を提供する。
【解決手段】少なくともエルカンプーレから抽出したエキス粉末を含むエルカンプーレエキスパウダ錠剤は、血清総コレステロールおよび中性脂肪の少なくとも一方の減少作用、血圧値の改善作用および内臓脂肪減少作用を有する。エルカンプーレエキスパウダ錠剤は、肥満、高脂血症、高血圧および糖尿病のうち、肥満を含む3つ以上の該当するメタボリック症候群の予防および改善作用を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともエルカンプーレを含有する脂肪減少作用組成物、脂肪減少作用食品および脂肪減少作用薬に関する。
【背景技術】
【0002】
南米ペルーのアンデス地方の高地に生育している多年性の双子葉植物であるエルカンプーレが、インカ以前の時代より伝統的な薬草として服用されている。そして、このエルカンプーレは、ペルーを中心とするアンデス地方の伝承薬として、抗糖尿病作用をはじめ、腎・肝臓機能の再生、抗肝炎、マラリア熱の沈静化、浄血、胆汁分泌刺激等の効能があると伝えられている。
【0003】
そして近年、このエルカンプーレには、血圧上昇抑制作用や、悪玉コレステロール抑制作用、善玉コレステロール上昇作用、抗糖尿病効果、抗肥満効果などといった生活習慣病予防および改善作用を有することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−172号公報(第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように、エルカンプーレの抗肥満効果の具体的な作用については未だ明確に解明されていないという問題を有している。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、脂肪減少作用を有する脂肪減少作用組成物、脂肪減少作用食品および脂肪減少作用薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の脂肪減少作用組成物は、少なくともエルカンプーレを含有し、脂肪減少作用を有するものである。
【0007】
請求項2記載の脂肪減少作用組成物は、請求項1記載の脂肪減少作用組成物において、内臓脂肪減少作用を有するものである。
【0008】
請求項3記載の脂肪減少作用組成物は、請求項1または2記載の脂肪減少作用組成物において、皮下脂肪減少作用を有するものである。
【0009】
請求項4記載の脂肪減少作用組成物は、請求項1ないし3いずれか記載の脂肪減少作用組成物において、メタボリック症候群関連項目予防および改善作用を有するものである。
【0010】
請求項5記載の脂肪減少作用食品は、請求項1ないし4いずれか記載の脂肪減少作用組成物を含むものである。
【0011】
請求項6記載の脂肪減少作用薬は、請求項1ないし4いずれか記載の脂肪減少作用組成物を含むものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の脂肪減少作用組成物によれば、少なくともエルカンプーレを含有するので、脂肪減少作用を期待できる。
【0013】
請求項2記載の脂肪減少作用組成物によれば、請求項1記載の脂肪減少作用組成物の効果に加え、内臓脂肪減少作用を期待できる。
【0014】
請求項3記載の脂肪減少作用組成物によれば、請求項1または2記載の脂肪減少作用組成物の効果に加え、皮下脂肪減少作用を期待できる。
【0015】
請求項4記載の脂肪減少作用組成物によれば、請求項1ないし3いずれか記載の脂肪減少作用組成物の効果に加え、メタボリック症候群関連項目予防および改善作用を期待できる。
【0016】
請求項5記載の脂肪減少作用食品によれば、請求項1ないし4いずれか記載の脂肪減少作用組成物を含む食品を食することにより、脂肪減少作用を期待できる。
【0017】
請求項6記載の脂肪減少作用薬によれば、請求項1ないし4いずれか記載の脂肪減少作用組成物を含む薬を用いることにより、脂肪減少作用を期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態の脂肪減少作用組成物について説明する。
【0019】
まず、この脂肪減少作用組成物としては、血清総コレステロール、中性脂肪の減少、血圧値の改善、皮下脂肪減少作用および内臓脂肪減少作用を有している。さらに、この脂肪減少作用組成物は、少なくともエルカンプーレ(Gentianella alborosea(Gilg)Fabris)を含有している。ここで、このエルカンプーレは、双子葉類、リンドウ科、リンドウ属の多年草の植物であり、南米ペルーのアンデス地方の標高3500m〜4000mのプナと呼ばれる寒冷な高原地帯に生息している。
【0020】
さらに、このエルカンプーレは、このエルカンプーレの乾燥全草(根・茎・葉)に5倍量の含水アルコールである70%アルコールを加えてから浸漬抽出した溶液にデキストリンを加えた後に噴霧乾燥したエキス粉末であるエルカンプーレエキス末としてのエルカンプーレエキスパウダとして糖尿病抑制組成物に含有されている。そして、このエルカンプーレエキスパウダには、キサントン誘導体が豊富に含有されている。
【0021】
また、この脂肪減少作用組成物は、メタボリック症候群関連項目予防および改善作用を有している。ここで、このメタボリック症候群は、いわゆる代謝異常症候群である危険因子集積状態としてのメタボリック・シンドローム(metabolic syndrome)とも呼ばれている。さらに、このメタボリック症候群は、シンドローム・エックス(syndrome X)、ザ・デッドリ・カルテット(the deadly quartet)、あるいはマルチプル・リスク・ファクタ・クラスタリング(multiple risk factor clustering)とも呼ばれている。
【0022】
そして、このメタボリック症候群とは、動脈硬化を促進させる生活習慣病を複数もっている状態、すなわち複合生活習慣病にかかっている状態のことをいう。そして、メタボリック症候群のヒトは、動脈硬化が進むリスクが格段に高くなり、結果として脳梗塞や、狭心症、心筋梗塞などを起しやすい。また、このメタボリック症候群とは、メタボリック症候群関連項目として、肥満であることが前提であり、この肥満、高脂血症、高血圧および糖尿病のうち、肥満を含む3つ以上の該当する場合をいう。
【0023】
さらに、肥満とは、へその高さの周りの腹囲が男性の場合で85cm以上、女性の場合で90cm以上の場合をいう。また、高脂血症とは、中性脂肪(TG)値が150mg/dl以上である場合と、いわゆる善玉コレステロールであるHDLコレステロール値が40mg/dl未満の場合との少なくとも一方に該当する状態をいう。さらに、高血圧とは、収縮期血圧が130mmHg以上で、拡張期血圧が85mmHg以上の場合をいう。また、糖尿病とは、空腹時血糖値が境界型である110mg/dl以上の場合をいう。
【0024】
また、このメタボリック症候群関連項目予防および改善作用を有する脂肪減少作用組成物としては、この脂肪減少作用組成物を含有する機能性食品、化粧料、皮膚外用あるいは医薬として用いることもできる。したがって、この脂肪減少作用組成物としては、皮膚外用剤や、機能性食品、医薬品、化粧品として適宜用いることもできる。このため、この脂肪減少作用組成物は、少なくともエルカンプーレから抽出したエキス粉末であるエルカンプーレエキスパウダを含有し、メタボリック症候群の予防および改善作用を有するものであることを特徴とし、メタボリック症候群の予防および改善のために用いられるものである旨の表示を付した飲食品や医薬品などとして用いられる。
【0025】
そして、この脂肪減少作用組成物を提供する形態としては、散剤、顆粒、錠剤、糖衣錠、カプセル、液剤、シロップ状のいずれであっても良く、これらは適宜助剤、賦香料とともに賦形されてもよい。用いられる賦形剤、希釈剤としては、ゼラチン、糖類、澱粉類、脂肪酸およびその塩、油脂、タルク、生理食塩水、その他のマスキング剤などが挙げられる。これらのものをそのまま服用してもよいが、各種料理品、菓子、キャンデなどの食品に混ぜて服用するのも好都合である。
【実施例】
【0026】
次に、エルカンプーレエキスパウダの摂取がメタボリック症候群関連項目に及ぼす影響についての一実施例を説明する。
【0027】
(試験対象者)
まず、対象者は、健康な日常生活を営む健常人、すなわち健診においてメタボリック症候群関連項目の中で何らかの項目が境界域付近であるヒトを含み、かつ医薬品の投与を受けていない者とした。具体的に、男性10名と女性2名の計12名の全員を被験者として試験食摂取群とした。なお、試験は、ヘルシンキ宣言に基づく倫理原則および試験実施計画書を遵守して実施した。さらに、これら各被験者に対しては、研究内容、方法および予想される副作用などのそれぞれについて十分な説明をし、各被験者の自由意思にて文書での同意を取り交わした後に試験をした。
【0028】
(試験食品)
試験食品としては、1錠中にエルカンプーレエキスパウダを150mgほど配合したエルカンプーレエキスパウダ錠剤(PREMIEX(登録商標) エルカンプーレエキスパウダ錠)を用いた。
【0029】
(試験スケジュールおよび摂取方法)
まず、試験スケジュールについては、前観察期間として非摂取期間を3週間とし、摂取期間を12週間とし、後観察期間として非摂取期間を3週間とした計18週間とした。そして、非摂取時の採血は食後3時間後にし、摂取後の採血は2週間毎に食後3時間後にした。さらに、採血前のアルコール摂取および喫煙を厳禁とした。
【0030】
また、摂取方法については、上述した試験食品を1日に女性の場合は8錠以上10錠以下とし、男性の場合は10錠以上12錠以下とし、朝食後30分以内と夕食後30分以内の2回に分けて摂取させた。さらに、この試験食品には、苦味があることから、各自適宜調節できるように、摂取量の幅を持たせた。また、被験者には、試験食品を毎日摂取すること以外、摂取以前と同様の食生活、喫煙および運動などの日常生活において変化させないようにした。さらに、毎日の喫煙およびアルコール摂取を含む簡単な食事摂取記録および体調記録をつけた。
【0031】
(測定方法)
まず、血圧および脈拍の測定方法については、前観察期間、摂取期間および後観察期間において、各自週1回決まった時間に測定した。そして、これら血圧および脈拍の測定方法としては、WHO/ISH高血圧治療ガイドラインに沿って行い、各被験者ともに5分間安静座位の後、数分間隔で3回測定して、これら3回の平均値を測定値とした。
【0032】
また、身体計測および臨床検査については、身長、体重、BMI、基礎代謝量、体脂肪率、筋肉量および内臓脂肪率のそれぞれを、各自週1回決まった時間に測定した。そして、採血後の血液検査および生化学検査については、近畿大学医学部付属病院臨床検査部に依頼した。
【0033】
さらに、これら測定項目としては、血清分析としてTP、Alb、GOT、GPT、γ−GTP、LDH、Glu、ALP、Na、K、Ca、Cl、BUN、CRN、UA、T−Cho、TG、HDL−Choの18項目とし、血球算出としてRBC、WBC、Hb、Ht、Pltの5項目とした。
【0034】
次に、上記一実施例での実験結果について説明する。
【0035】
上記一実施例の実験において、試験食品の摂取後および摂取による何らかの原因にて脱落した被験者はいなかった。また、血清中の肝臓機能関連酵素活性への悪影響もないと考えられた。
【0036】
そして、血清中性脂肪値では、開始時値が150mg/dL以上の異常値者3名中2名に、血清中性脂肪値の減少を観察できた。ここで、血清中性脂肪値は、食事の影響を受けやすく、変動しやすい項目であるが、エルカンプーレエキスパウダ錠剤の摂取によって、図1に示すように、中性脂肪高めの被験者に対して、中性脂肪の減少について有効に作用していると考えられた。
【0037】
また、血清総コレステロール値では、開始時値が200mg/dL以上の異常値者や、基準値内でも比較的高めの被験者を合わせて9名中6名に緩やかな減少を観察できた。さらに、摂取6週間後までとすると、被験者全員に総コレステロール値減少が認められた。したがって、エルカンプーレエキスパウダ錠剤の摂取によって、図2に示すように、血清コレステロール値が高めの被験者に対して、血清コレステロール値の減少について有効に作用している可能性が高いと考えられた。
【0038】
さらに、血圧に関しては、境界域に近い値の被験者5名中3名について、最高血圧、最低血圧およびこれらそれぞれの低下作用を観察できた。ここで、血圧は、日内変動が大きく、かつ測定方法によってもばらつくことが多いが、エルカンプーレエキスパウダ錠剤の摂取によって、血圧が境界域付近の被験者に対して、血圧の低下について有効に作用している可能性が考えられた。
【0039】
一方、摂取開始時と摂取終了時に、コンピュータ断層診断装置(マルチスライスCT)にて内臓脂肪面積と皮下脂肪面積とのそれぞれを精査した3名の1名のA氏に、図3および図4に示すように、約2ヶ月で内臓脂肪面積が223cmから182cmへと減少していたので、内臓脂肪面積の18.4%の減少を観察できた。さらに、図5および図6に示すように、他の1名のB氏に、約2ヶ月で内臓脂肪面積が38.5cmから33.8cmへと減少し、皮下脂肪面積が94.3cmから78.5cmへと減少していたので、内臓脂肪面積の12.2%の減少と皮下脂肪面積の16.8%の減少とを観察できた。したがって、エルカンプーレエキスパウダ錠剤の摂取によって、血清総コレステロール、中性脂肪の減少、血圧値の改善、および内臓脂肪減少作用を観察できた。よって、エルカンプーレエキスパウダ錠剤の摂取は、メタボリック症候群の予防および改善に有効に作用すると考えられた。
【0040】
すなわち、エルカンプーレエキスパウダ錠剤は、内臓脂肪蓄積によって生じる複合的な疾病、いわゆるメタボリック症候群に対して抑制作用、例えば予防作用および改善作用があると考えられる。すなわち、このエルカンプーレエキスパウダ錠剤は、エネルギ過剰による疾病抑制組成物、言い換えるとエネルギ過剰基因病抑制組成物として用いることができる。ここで、このメタボリック症候群としては、図7に示すように、主として内臓脂肪蓄積に基因する生活習慣病、すなわち肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病などの集積状態である。さらに、高脂血症は高中性脂肪血症、低HDLコレステロール血症あるいは高コレステロール血症などであり、糖尿病はインスリン抵抗性、血清遊離脂肪酸あるいは血清グルコース値の上昇と密接に関係している。
【0041】
そして、上述のメタボリック症候群を予防および改善して、動脈硬化を予防および改善することにより、睡眠時無呼吸症候群などの呼吸器疾患や、肝臓における中性脂肪、コレステロール上昇による脂肪肝あるいは胆石症、脳梗塞および脳出血などの脳血管障害、狭心症および心筋梗塞などの虚血性心疾患などの予防や改善が可能となる。
【0042】
具体的に、図8に示すように、糖尿病は、エネルギ過剰による内臓脂肪蓄積を基盤として、遊離脂肪酸の上昇、アディポサイトカイン分泌、インスリン抵抗性上昇および血糖値上昇(血清グルコース値上昇)によって発症する。また同時に、エネルギ過剰による内臓脂肪蓄積を基盤として、遊離脂肪酸の上昇、肝臓中性脂肪合成増加によって、脂肪肝が発症し、さらにVLDL合成・分泌上昇、VLDLレムナント上昇、およびLDL上昇が伴って高脂血症が発症する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例のエルカンプーレエキスパウダ錠剤摂取が血清中性脂肪値に及ぼす影響を示すグラフである。
【図2】同上エルカンプーレエキスパウダ錠剤摂取が血清総コレステロール値に及ぼす影響を示すグラフである。
【図3】同上エルカンプーレエキスパウダ錠剤摂取開始時のA氏のへその高さの周りの腹囲のマルチスライスCT写真である。
【図4】同上エルカンプーレエキスパウダ錠剤摂取12週間後のA氏のへその高さの周りの腹囲のマルチスライスCT写真である。
【図5】同上エルカンプーレエキスパウダ錠剤摂取開始時のB氏のへその高さの周りの腹囲のマルチスライスCT写真である。
【図6】同上エルカンプーレエキスパウダ錠剤摂取12週間後のB氏のへその高さの周りの腹囲のマルチスライスCT写真である。
【図7】内臓脂肪蓄積に基因する生活習慣病を示す説明図である。
【図8】内臓脂肪蓄積による糖および脂質代謝異常を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともエルカンプーレを含有し、脂肪減少作用を有する
ことを特徴とした脂肪減少作用組成物。
【請求項2】
内臓脂肪減少作用を有する
ことを特徴とした請求項1記載の脂肪減少作用組成物。
【請求項3】
皮下脂肪減少作用を有する
ことを特徴とした請求項1または2記載の脂肪減少作用組成物。
【請求項4】
メタボリック症候群関連項目予防および改善作用を有する
ことを特徴とした請求項1ないし3いずれか記載の脂肪減少作用組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか記載の脂肪減少作用組成物を含む
ことを特徴とした脂肪減少作用食品。
【請求項6】
請求項1ないし4いずれか記載の脂肪減少作用組成物を含む
ことを特徴とした脂肪減少作用薬。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−290801(P2006−290801A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113962(P2005−113962)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(300022526)TOWA CORPORATION 株式会社 (8)
【Fターム(参考)】