説明

脂肪酸エステルの製造方法

【課題】 食用油の製造工程で発生する脱酸廃棄物から効率よく脂肪酸エステルを回収する方法を提供すること
【解決手段】 遊離脂肪酸およびグリセリドを含有する混合物(例えば、脱酸廃棄物)から脂肪酸エステルを製造する方法であって、(1)酵素の存在下、遊離脂肪酸とアルコールとを反応させて脂肪酸エステルを含む反応混合物を得、この混合物中の水を除去して、混合物中のグリセリドを酵素でアルコリシスし、脂肪酸エステルを回収する方法、あるいは、(2)グリセリドを加水分解して遊離脂肪酸を含有する油分を回収し、酵素の存在下、この油分中の遊離脂肪酸を脂肪酸エステルとし、エステル化により生じた水を除去した後、さらに、油分中の未反応の遊離脂肪酸をグリセロールの存在下でエステル化し、脂肪酸エステルを回収する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸エステルの製造方法に関する。さらに詳しくは、グリセリドと遊離脂肪酸を含む混合物、特に食用油の製造工程において発生する脱酸廃棄物に由来する油分(以下、ダーク油ということがある)からの脂肪酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油、石炭などの化石燃料を燃焼させると、二酸化炭素、NOx、SOxなどが発生し、地球温暖化、大気汚染などの原因となる。その中でも、ディーゼル自動車に用いられている軽油には窒素化合物、硫黄化合物などが含まれており、CO、NOx、SOxなどが大量に発生する。そこで、この軽油の代わりに、天然に存在する植物、動物、魚あるいは微生物が生産する油脂を用いる、いわゆるバイオディーゼル燃料の開発が進められている。
【0003】
バイオディーゼル燃料(以下、単にバイオ燃料ということがある)は、脂肪酸低級アルコールエステルであり、植物油などの構成成分である脂肪酸と低級アルコールとの反応により得られる。欧米では、特にバイオ燃料への関心が高く、植物油をバイオ燃料に変換し、軽油と混合して利用している。バイオ燃料生産量は年々増加傾向にあり、2003年には166万kLのバイオ燃料が世界中で生産されている。
【0004】
バイオ燃料を製造する方法には、化学的方法と生物学的方法とがある。現在のバイオ燃料生産の主流である化学的方法ではアルカリ触媒を用いるが、製造過程で発生するアルカリ性廃棄物の処理が問題になっている。そこで、酵素(リパーゼ)を用いる生物学的方法が検討されている。
【0005】
生物学的方法においては、資源の有効利用の観点から、廃食用油をバイオ燃料に変換する技術が開示されている(例えば、特許文献1、非特許文献1〜3などを参照)。特許文献1においては、廃食用油に含まれるトリグリセリドをアルコリシスして、トリグリセリドを構成する脂肪酸をエステル化し、脂肪酸エステル(すなわち、バイオ燃料)を得る方法を記載している。この方法においては、トリグリセリド1モルから3モルの脂肪酸が遊離することから、理論的に等モルとなるようにトリグリセリドに対して3モルのメタノールを添加すると、酵素が不可逆的に失活することが記載されている。この酵素が失活する問題を解消するため、メタノールを廃食用油に逐次添加し、脂肪酸メチルエステルへの変換率を96%以上にすることができる。しかも、酵素を連続的に100日以上繰り返し使用することができる。
【0006】
また、遊離脂肪酸をバイオ燃料に変換する方法も検討されている(例えば、特許文献2、非特許文献4)。この方法では、遊離脂肪酸、メタノール、固定化酵素を含む反応系で反応させると、エステル化に伴って生成する水のため、エステル化率を83%よりも高めることができない。そこで、エステル化反応後に生成する水を除去し、再びメタノールと固定化酵素を添加して、さらにエステル化を行う2段階酵素法を採用することにより、エステル化率を95〜98%にまで高めることができたことが記載されている。
【0007】
ところで、食用油、特に植物油などは、一般に、搾油、脱ガム、脱酸、脱色、脱臭などの各工程を経て製造される。脱ガム工程で排出される副成物は乳化剤として利用されているレシチンやリゾレシチンを製造する原料として利用される。また、脱色工程からの廃棄物である着色白土の一部はコンクリート助剤や土壌改良剤として利用されている。さらに、脱臭工程からの廃棄物はトコフェロール、ステロール、ステリルエステル生産の原料として活用されている。
【0008】
一方、脱酸工程で排出される脱酸廃棄物(アルカリ油滓)には約50%の水、25%の脂肪酸、25%の中性脂質(トリグリセリドとジグリセリド)が含まれ、年間約12万トン排出されている。この脱酸廃棄物からは脂肪酸が抽出され、この脂肪酸は、塗料、潤滑油、石鹸などの原料として使用されている。しかし、脂肪酸の需要の低下から価格の下落を引き起こしている。そのため、脂肪酸エステルとして、再資源化し、バイオ燃料を製造することが望まれている。
【0009】
この脱酸廃棄物はアルカリ性であるため、このまま酵素を作用させることができない。そこで、酵素を作用させるためには、脱酸廃棄物を硫酸、塩酸、リン酸などの酸で中和した後、水を除去して油分を回収する必要がある。この回収された油分にはグリセリドおよび遊離脂肪酸が含まれているが、この油分に酵素とアルコールとを作用させても、グリセリドと遊離脂肪酸の両方を同時に脂肪酸エステルに変換することはできない。これは、遊離脂肪酸のエステル化に伴って生成する水がグリセリドのアルコリシスを妨害するからである。そこで、グリセリドと遊離脂肪酸との混合物から、効率よく脂肪酸エステルを製造する方法の開発が望まれている。
【特許文献1】国際公開公報 WO00/12743号公報
【特許文献2】特開2001−245686号公報
【非特許文献1】島田ら、J. Am. Oil Chem. Soc., 76巻, 789-793頁 (1999年)
【非特許文献2】渡辺ら、J. Am. Oil Chem. Soc., 78巻, 703-707頁 (1999年)
【非特許文献3】島田ら、J. Mol. Cat. B: Enzyme 17巻, 133-142頁 (2002年)
【非特許文献4】渡辺ら、J. Oleo Sci., 51巻, 655-661頁 (2002年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、遊離脂肪酸およびグリセリドを含有する混合物から脂肪酸アルコールエステルを効率よく製造する方法を提供することを目的とする。特に、例えば、脱酸廃棄物に由来するダーク油から簡単な方法で、脂肪酸低級アルコールエステル(バイオ燃料)を回収する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、遊離脂肪酸およびグリセリドを含有する混合物から脂肪酸エステルを製造する方法であって、(1)エステル化反応を触媒し得る酵素の存在下、該遊離脂肪酸とアルコールとを反応させて脂肪酸エステルを得る第1反応工程;(2)第1反応工程で生じた水を反応混合物から除去する工程;(3)該水が除去された反応混合物とアルコールとを、グリセリドをアルコリシスし得る酵素の存在下で反応させ、グリセリド中の脂肪酸を脂肪酸エステルに変換する第2反応工程;および(4)得られた脂肪酸エステルを回収する工程;を含む方法を提供する。
【0012】
一つの実施態様では、前記アルコールが直鎖低級アルコールである。
【0013】
好ましい実施態様では、直鎖低級アルコールがメタノールまたはエタノールである。
【0014】
別の実施態様では、前記混合物が脱酸廃棄物に由来する油分(ダーク油)である。
【0015】
異なる実施態様では、前記第2反応工程において、グリセロールおよび/またはグリセリドを添加してアルコリシスが行われる。
【0016】
さらに別の実施態様では、前記グリセリドが植物油脂、動物油脂、魚油、および微生物油脂からなる群から選択される少なくとも一つの油脂である。
【0017】
また、別の実施態様では、前記油分が、植物油脂、動物油脂、魚油、または微生物油脂からの油脂の製造工程において発生する脱酸廃棄物に由来する。
【0018】
異なる実施態様では、前記第1反応工程において、直鎖低級アルコールは、遊離脂肪酸に対して等モル以上から前記酵素を失活させない量で使用され、第2反応工程において添加する直鎖低級アルコールは、グリセリド中の脂肪酸に対して0.5モル当量以上から前記酵素を失活させない量で使用される。
【0019】
さらに、本発明は、遊離脂肪酸およびグリセリドを含有する混合物から脂肪酸エステルを製造する方法であって、(1)該グリセリドを加水分解して脂肪酸を遊離させ、油水分離により遊離脂肪酸を主成分とする油分を得る第1工程;(2)エステル化反応を触媒し得る酵素の存在下、該第1工程で生じた遊離脂肪酸とアルコールを反応させ、脂肪酸エステルを得る第2工程;(3)該第2工程で生じた水を反応混合物から除去する第3工程;(4)該第3工程で水が除去された反応混合物中の未反応の遊離脂肪酸を、エステル化反応を触媒し得る酵素およびグリセロールの存在下でアルコールと反応させ、遊離脂肪酸を脂肪酸エステルに変換する、第4工程;および(5)得られた脂肪酸エステルを回収する工程;を含む方法を提供する。
【0020】
一つの実施態様では、前記第1工程の加水分解が、グリセリドを加水分解し得る酵素および水の存在下、行われる。
【0021】
一つの実施態様では、前記アルコールが、直鎖低級アルコールである。
【0022】
別の実施態様では、前記直鎖低級アルコールが、メタノールまたはエタノールである。
【0023】
別の実施態様では、前記混合物が脱酸廃棄物に由来する油分(ダーク油)である。
【0024】
さらに別の実施態様では、前記油分が、植物油脂、動物油脂、魚油、または微生物油脂からの油脂の製造工程において発生する脱酸廃棄物に由来する。
【0025】
異なる実施態様では、前記第4工程において、グリセロール量が反応液合計量の1〜50質量%である。
【0026】
さらに別の実施態様においては、前記第2および第4工程において、直鎖低級アルコールは、遊離脂肪酸に対して等モル量以上から酵素を失活させない量で使用される。
【発明の効果】
【0027】
本発明の方法により、遊離脂肪酸およびグリセリドを含む混合物、例えば、食用油の製造工程で発生する脱酸廃棄物に由来する油分(ダーク油)などから、簡便な方法および装置で、バイオ燃料が製造される。例えば、大豆油製造過程で発生する脱酸廃棄物に由来する油分(例えばダーク油)に含まれるグリセリドと遊離脂肪酸の脂肪酸メチルエステルへの変換率は98%以上であり、100日以上連続して、酵素の失活を起こすことなく、脂肪酸エステルが生産される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(A:本発明に用いられる材料)
(A−1:遊離脂肪酸とグリセリドとの混合物)
本発明に用いられる遊離脂肪酸およびグリセリドを含有する混合物は、種類および起源を問わない。好ましい混合物は、遊離脂肪酸およびグリセリドを含有する脱酸廃棄物である。脱酸廃棄物は、植物、動物、魚、微生物などを原料とし、植物油脂、動物油脂、魚油、微生物油脂などを製造する工程の1つである脱酸工程で発生する廃棄物をいう。植物油脂としては、例えば大豆油、菜種油、パーム油、オリーブ油、綿実油、米ぬか油、亜麻仁油、月見草油、胡麻油などが挙げられる。動物油脂としては、牛脂、豚脂、鯨油、アザラシ油などが挙げられる。魚油としては、イワシ油、マグロ油、サケ油などが挙げられる。微生物が生産する油としては、モルティエレラ属(Mortierella)やシゾキトリウム属(Schizochytrium)が生産する油脂などが挙げられる。
【0029】
通常、脱酸工程後の原油中の遊離脂肪酸の中和には、水酸化ナトリウム水溶液が用いられるため、脱酸廃棄物自体は水を含んだアルカリ性であり、遊離脂肪酸は脂肪酸の金属塩(石鹸)として存在している。そのため、本発明に用いる原料とするためには、塩酸、硫酸、リン酸などの酸による中和、遠心分離や濾過などによる不溶性物質の除去、遠心分離や蒸留などによる水分の除去などの処理が必要となる。あるいは脱酸廃棄物を加圧条件下でケン化分解した後、中和する処理が必要となる。ダーク油は、このような処理を経て得られる油である。ダーク油以外にも、脱ガム油滓、脱臭留出物などが用いられる。以下、脱酸廃棄物由来の油分として、ダーク油を用いる場合について主に説明するが、その他の油分についても同様である。
【0030】
なお、本発明に用いる混合物中の遊離脂肪酸とグリセリドとの比率(モル比、質量比)は特に制限されない。例えば、遊離脂肪酸とグリセリドとは、質量比で5:95〜95:5、あるいは10:90〜90:10の割合で含まれる混合油が用いられる。
【0031】
(A−2:グリセリド)
本発明で、グリセリドは中性脂質ともいい、グリセロールと脂肪酸とのエステルをいい、トリグリセリド(TG)、ジグリセリド(DG)およびモノグリセリド(MG)からなる群から選択される少なくとも一つのアシル化グリセロールを含有する。
【0032】
(A−3:遊離脂肪酸)
遊離脂肪酸は、遊離のカルボキシル基を有する脂肪酸をいい、その種類を問わない。好ましくは、炭素数が6〜22の遊離脂肪酸である。一価の脂肪酸が好ましく用いられる。遊離脂肪酸は、直鎖の脂肪酸であってもよく、分岐の脂肪酸であってもよい。また、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。一般には、植物油、動物油、魚油、微生物油などに含まれる遊離脂肪酸またはこれらの油に含まれるグリセリドに由来する遊離脂肪酸が好ましく用いられる。
【0033】
(A−4:アルコール)
以下に説明する、本発明の第1発明における第1反応工程および第2反応工程、あるいは第2発明における第2工程および第4工程において用いられるアルコールに制限はなく、一価および多価アルコールが用いられる。バイオ燃料に用いるには一価のアルコールが好ましく、炭素数1〜8の直鎖低級アルコールがさらに好ましく用いられる。もっとも好ましくは、メタノールおよびエタノールである。
【0034】
(A−5:酵素)
本発明には、遊離脂肪酸のエステル化反応を触媒し得る酵素、グリセリドをアルコリシスし得る酵素、および、グリセリドを加水分解し得る酵素が用いられる。リパーゼは、これらの活性を有するので、特に好ましく用いられる。リパーゼ以外にも、エステラーゼ、クチナーゼ、ホスフォリパーゼなども用いることができる。
【0035】
リパーゼは、トリグリセリドなどの中性脂質に作用して、トリグリセリドをグリセロールまたは部分グリセリドと脂肪酸に分解する能力を有する酵素を指す。このリパーゼは、トリグリセリドの1,3−位に特異的であってもよく、非特異的であってもよい。脂肪酸エステルへの変換という面から、非特異的である方がより好ましい。
【0036】
リパーゼの起源は問わない。微生物、動物、植物などに由来する酵素が用いられる。例えば、微生物に由来するリパーゼとしては、リゾムコール属、ムコール属、アスペルギルス属、リゾプス属、ペニシリウム属等に属する糸状菌;キャンディダ属、ゲオトリカム属、ピヒア属等に属する酵母;シュードモナス属、セラチア属、アルカリゲネス属、バークホルデリア属、スタッフィロコッカス属、バシラス属(枯草菌)等に属する細菌;などに由来するリパーゼが用いられる。動物に由来するリパーゼとしては、豚膵臓等に由来するリパーゼが挙げられる。
【0037】
市販の酵素も用いられる。例えば、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)由来のリパーゼ(商品名:リポザイムIM60、ノボザイムズ社製)、キャンディダ・アンタークティカ(Candida antarctica)のリパーゼ(商品名:ノボザイム435、ノボザイムズ社製)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae:旧称Rhizopus delemar)のリパーゼ(商品名:リパーゼT、リパーゼD、またはリパーゼF−AP15、天野エンザイム社製)、サーモマイセス・ラヌギノーサ(Thermomyces lanuginosa:旧称Humicola lanuginosa)のリパーゼ(商品名:リポザイムTLIM、ノボザイムズ社製)、キャンディダ・ルゴーサ(Candida rugosa:旧称Candida cylindracea)のリパーゼ(商品名:リパーゼOF、名糖産業社製)、シュードモナス(Pseudomonas)属のリパーゼ(商品名:リパーゼPS、リパーゼAK、天野エンザイム社製)、アルカリゲネス(Alcaligenes)属のリパーゼ(商品名:リパーゼQLM、名糖産業社製)などが挙げられる。
【0038】
使用する酵素の形状は問わない。粉末でもよいし、固定化されていてもよい。また、リパーゼを産生する微生物、細胞表層にリパーゼを提示している微生物を直接用いてもよいし、これらの微生物を固定化して用いてもよい。これらの中では、酵素の再使用が容易という面から、固定化されたリパーゼを用いるのが最も好ましい。
【0039】
これらのリパーゼを担体に固定化する方法は公知であり、担体としては、イオン交換樹脂、セラミック樹脂、ガラスビーズ、ケイ藻土、活性炭等が挙げられる。耐久性、リパーゼとの親和性などを考慮すると、イオン交換樹脂、セラミック担体等がより好ましい。固定化方法としては、包括法、架橋法、物理的吸着法、イオン吸着法、疎水結合法などが挙げられるが、架橋法、イオン吸着法、疎水結合法がより好ましい。
【0040】
本発明は、以下に説明する第1発明および第2発明を含んでいる。いずれの発明も、複数回の酵素反応を行い、その間に脱水処理を施すこと、各反応工程において同じ酵素を用いてもよいことなどから、酵素は固定化されていることが好ましい。固定化酵素としては、市販の固定化リパーゼ、例えば、商品名:ノボザイム435、リポザイムIM60、リポザイムTLIM(いずれもノボザイムズ社製)などが用いられる。固定化されたノボザイム435が最も好ましく用いられる。あるいは、常法に基づいて、上記微生物あるいは上記微生物に由来する酵素を精製し、固定化して用いてもよい。
【0041】
(本発明の方法)
本発明は、遊離脂肪酸およびグリセリドを含有する混合物から脂肪酸エステルを回収する方法であって、(A)この混合物中の遊離脂肪酸をまず脂肪酸エステルとし、ついで、グリセリド中の脂肪酸をアルコリシスによって脂肪酸エステルとし、得られた脂肪酸エステルを回収する第1発明と(B)この混合物中のグリセリドを加水分解してグリセリド中の脂肪酸を遊離脂肪酸とし、ついで、混合物中の遊離脂肪酸を2段階の反応で脂肪酸エステルとし、得られた脂肪酸エステルを回収する第2発明の2つの発明を含む。以下、それぞれの発明について説明する。
【0042】
(第1発明)
第1発明は、(1)遊離脂肪酸およびグリセリドを含有する混合物とアルコールとを、エステル化反応を触媒し得る酵素の存在下で反応させ、遊離脂肪酸をエステル化する、第1反応工程と、(2)第1反応工程で生じた水を除去する工程、(3)水が除去された脱水混合物とアルコールとを、グリセリドをアルコリシスし得る酵素の存在下で反応させる第2反応工程;および(4)得られた脂肪酸エステルを回収する工程;を含んでいる。以下、これらの各工程について、説明する。
【0043】
(B−1:第1反応工程)
第1反応工程は、遊離脂肪酸およびグリセリドを含有する混合物とアルコールとを、エステル化反応を触媒し得る酵素の存在下で反応させ、遊離脂肪酸をエステル化する工程である。この工程においては、エステル化反応により水が生成する。この生成した水により、グリセリドのアルコリシスが阻害される結果、第1反応においては、遊離脂肪酸のアルコールエステル化が、選択的に進行する。この反応に使用する酵素およびアルコールは上記の通りである。
【0044】
一般に、アルコール、特にメタノールが過剰に存在する反応系では、反応は進行するものの、酵素が失活しやすく、酵素の繰り返し利用が困難になる。そのため、酵素の繰り返し利用を目的としないときは過剰量のアルコールを添加しても構わないが、酵素の繰り返し利用を目的とする場合、用いる酵素が失活しないアルコール濃度で使用することが必要である。以下、メタノールを使用する場合について説明するが、他のアルコールについても、同様である。
【0045】
植物油と遊離脂肪酸との混合物をエステル化する場合、例えば、トリグリセリドと遊離脂肪酸が質量比で1:1程度含まれている混合物(ダーク油のモデル混合物)のとき、添加するメタノール量は、遊離脂肪酸に対して等モル以上から、酵素の失活が認められない量とする必要がある。好ましくは、遊離脂肪酸に対して4モル当量以下、さらに好ましくは2モル当量以下とする必要がある。
【0046】
ダーク油を原料とする反応において使用するメタノール量の決定方法も、基本的には上記ダーク油のモデル混合物の場合と同じである。すなわち、メタノールは遊離脂肪酸に対して等モル量以上から酵素の失活が認められない量にすればよい。好ましくは、遊離脂肪酸に対して10モル当量以下、さらに好ましくは7.5モル当量以下とすればよい。ただし、ダーク油の場合は、酵素反応を阻害する物質および/または酵素をメタノールによる失活から保護する物質が含まれている可能性がある。酵素のメタノールによる失活を保護する物質が含まれている場合には、ダーク油のモデル混合物を原料としたときより多い量のメタノールを添加することにより、酵素が安定となり、効率的に遊離脂肪酸のエステル化反応を行うことができる。
【0047】
第1反応工程における酵素、混合物およびアルコールを反応させる方法に特に制限はなく、静置、振盪、攪拌いずれの方法で行ってもよい。振盪または攪拌による方法が、反応を均一に行える点で好ましい。反応装置にも特に制限はなく、例えば、攪拌式リアクター、流動層型リアクターなどのバッチ型反応装置、あるいは、固定化酵素を充填したリアクターなどの連続型反応装置を用いてもよい。
【0048】
第1反応工程に用いる酵素量は、目的とする反応率を達成し得る量であれば、特に制限はない。好ましくはダーク油の質量に対して0.05〜40質量%、より好ましくは0.2〜10質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
【0049】
第1反応工程の反応温度も特に制限はない。好ましくは0〜80℃、より好ましくは10〜50℃、さらに好ましくは20〜40℃である。耐熱性酵素を使用する場合は、より高い温度が用いられる。
【0050】
第1反応工程における反応時間に特に制限はない。好ましくは0.5〜120時間、より好ましくは2〜96時間、さらにより好ましくは5〜72時間である。連続反応の場合は、全体の反応速度を考慮して、決定すればよい。
【0051】
例えば、第1反応工程でダーク油とメタノールとを質量比で66:34(遊離脂肪酸に対して5モル当量のメタノール)の割合で混合し、上記条件で反応させたとき、遊離脂肪酸に対するエステル化率が96%以上であり、酵素(固定化酵素)を少なくとも100日以上繰り返し利用できる。
【0052】
第1反応終了後の反応混合物は水分を含んでいるが、そのまま、第2反応工程に用いることもできる。第2反応工程において、固定化酵素を大過剰量添加する、あるいは反応時間を大きく伸ばすことによりグリセリドのアルコリシスを行ってもよい。しかし、コストの面から現実的ではない。そこで、第1反応終了後の反応混合物から、以下に示すように生成した水と、必要に応じて、未反応のアルコールを除いておくことが好ましい。
【0053】
(B−2:水除去工程)
第1反応工程では、遊離脂肪酸のアルコールエステル化にともない、水が発生する。この水は、第2反応工程におけるグリセリドのアルコリシスを阻害するため、除去する必要がある。さらに、第1反応工程終了後の反応混合物にアルコールが存在し、第2反応工程において反応を阻害する場合、アルコールを除去する必要がある場合がある。従って、水および必要に応じて、過剰のアルコールを除去する。水およびアルコールの除去は、好ましくは、まず、濾過などにより不純物を除き、ついで、静置、遠心分離によって分離してくる油層を回収してもよい。さらに回収した油層を蒸留し、水とアルコールを除去してもよい。
【0054】
ダーク油を用いる場合、通常、酵素反応が終了した反応液を静置または遠心分離するとメタノール層と油層とに分離されるので、油層を回収すればよい。回収後の反応混合物は、そのまま、次の第2工程の反応に用いてもよい。しかし、油層に存在する微量の水を除く方が、第2反応工程における反応の効率が良くなるという観点から、油層を蒸留することにより脱水、あるいは脱アルコールを行う方が好ましい。第2反応工程に使用する反応混合物の水分含量は、好ましくは5000ppm以下であり、より好ましくは1000ppm以下であり、さらに好ましくは300ppm以下である。
【0055】
(B−3:第2反応工程)
水分が除去され、必要に応じてアルコールが除去された反応混合物(以下、脱水混合物ということがある)を、ついで、グリセリドのアルコリシス反応を触媒し得る酵素の存在下、アルコールでアルコリシスする。この反応により、グルセリドを構成する脂肪酸は、グリセリドから遊離し、アルコールと反応する。その結果、脂肪酸エステルとグリセロールが生成する。
【0056】
この第2反応工程に使用するアルコールおよび酵素は、上記の通りである。
【0057】
第2反応工程で使用するアルコールの量には制限はない。メタノールを例に取ると、使用するメタノール量は、グリセリド中の脂肪酸量に対して0.5モル当量以上で、酵素の失活が認められない量、添加される。好ましくは4モル当量以下、さらに好ましくは2モル当量以下とすればよい。なお、脂肪酸量に対して等モル以下のメタノールを用いるときは、最終的に等モル以上となるように逐次添加するとよい。
【0058】
ダーク油から脂肪酸エステルを回収する場合、第2反応工程において、グリセロールおよび/またはトリグリセリドを添加してアルコリシスを行うことが、酵素の安定化あるいは反応の効率を上げる上で、好ましい。
【0059】
グリセロールは、残存する遊離脂肪酸から生成する水を吸収し、酵素を安定化する効果を有すると思われる。グリセロールの添加量は特に制限はない。好ましくはダーク油に由来する脱水混合物の質量を基準にして1〜50質量%であり、より好ましくは3〜30質量%であり、さらに好ましくは5〜20質量%である。グリセロールは、第2反応工程終了後に回収し、繰り返し利用してもよい。
【0060】
ダーク油には、酵素を不安定にする未知の物質が含まれていることもある。この場合、トリグリセリドの添加は、この未知の物質の濃度を下げる(希釈する)ため、酵素の安定化や、反応の効率化に寄与し得ると考えられる。トリグリセリドとしては、植物、動物、魚、微生物などから調製された油(例えば、食用油)が好ましく用いられる。中でも、入手の容易性という観点から、大豆油、菜種油、パーム油、オリーブ油、綿実油、米ぬか油、亜麻仁油、月見草油、胡麻油などの植物油が好ましく用いられる。また、トリグリセリドおよびグリセロールは、それぞれ、廃食用油など、および廃食用油などを起源として得られるものでもよいが、脱水されていることが好ましい。
【0061】
トリグリセリドの添加量は特に制限はないが、一般的には、脱水混合物の質量を基準にして、10〜80質量%添加される。好ましくは20〜60質量%であり、さらに好ましくは30〜50質量%である。
【0062】
第2反応工程における反応方法、反応装置、反応温度、反応時間については、第1反応工程での説明がそのまま、適用される。
【0063】
第2反応工程の反応に用いる酵素量は特に制限はないが、添加する反応混合液の質量を基準にして0.1〜60質量%、より好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは2〜10質量%である。
【0064】
第2反応工程において、反応が不十分で、脂肪酸エステルの生成率が低い場合、さらに第1および第2反応工程を繰り返してもよい。
【0065】
例えば、ダーク油の脱水混合物、植物油、メタノール、グリセロールを質量比で、52:42.5:5.5:10の割合(メタノールはグリセリド中の脂肪酸に対して等モル量)で混合し、上記反応条件で反応させたとき、遊離脂肪酸およびトリグリセリド中の脂肪酸の脂肪酸メチルエステルへの変換率は、第1および第2反応工程を通じて98%以上に達し、グリセリドおよび遊離脂肪酸の含量がそれぞれ1質量%以下になる。さらに、第2反応工程における酵素(固定化酵素)は、少なくとも100日以上繰り返し利用できる。
【0066】
(B−4:脂肪酸エステルの回収)
第2反応終了後の反応液にはグリセロール、水、および未反応のメタノールが混在している。反応液を静置あるいは遠心分離によってグリセロール層を除去してもよい、水洗等によってグリセロールを除去してもよい。脂肪酸エステルは、溶媒による抽出、蒸留による分離などの常法によって、さらに精製することもできる。
【0067】
上記のように、脱酸廃棄物に由来するダーク油などのグリセリドと遊離脂肪酸を含有する廃棄物に対して、酵素反応を2段階にわけて行うことにより、廃棄物中に含まれる脂肪酸の98%以上を脂肪酸エステルとして回収することができる。この方法では用いる酵素が安定に保たれるため、バイオ燃料を低コストで製造することができる。
【0068】
(第2発明)
第2発明は、遊離脂肪酸およびグリセリドを含有する混合物から脂肪酸エステルを製造する方法であって、(1)混合物中のグリセリドを加水分解して脂肪酸を遊離させ、油水分離により遊離脂肪酸を主成分とする油分を得る第1工程;(2)エステル化反応を触媒し得る酵素の存在下、該第1工程で生じた遊離脂肪酸とアルコールを反応させ、脂肪酸エステルを得る第2工程;(3)該第2工程で生じた水を反応混合物から除去する第3工程;(4)該第3工程で水が除去された反応混合物中の未反応の遊離脂肪酸を、エステル化反応を触媒し得る酵素およびグリセロールの存在下でアルコールと反応させ、遊離脂肪酸を脂肪酸エステルに変換する、第4工程;および(5)得られた脂肪酸エステルを回収する工程;を含んでいる。以下、これらの各工程について、説明する。
【0069】
(C−1:第1工程)
第1工程は、遊離脂肪酸およびグリセリドを含有する混合物中のグリセリドを加水分解し、グリセリド中の脂肪酸を遊離する工程である。このグリセリドの加水分解に特に制限はなく、化学的な加水分解でもよく、酵素による分解でも良い。
【0070】
化学的な加水分解方法としては、当業者が通常行う方法、例えば、アルカリ加水分解、酸加水分解などの方法が挙げられる。
【0071】
酵素を用いる場合、グリセリドを加水分解し得る酵素であれば、特に制限はない。トリグリセリドの1,3位に特異的であってもよく、非特異的であってもよい。グリセリドの2位に位置する脂肪酸は、反応中にアシル基転移を起こして1または3位に転移しやすいため、1,3位に特異的な酵素であっても、グリセリドの全ての脂肪酸を加水分解することができる。
【0072】
このような酵素としては、上記リパーゼが好ましく用いられる。好ましくはキャンディダ・ルゴーサ(Candida rugosa)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、シュードモナス(Pseudomonas)属の微生物、あるいはアルカリゲネス(Alcaligenes)属の微生物のリパーゼが用いられる。より好ましくは、加水分解率が高いという観点から、キャンディダ・ルゴーサのリパーゼである。
【0073】
リパーゼの形状は、粉末でも固定化されていてもどちらでもよいが、キャンディダ・ルゴーサのリパーゼを用いた加水分解反応では、粉末酵素を水に溶解して用いる方が好ましい。
【0074】
第1工程における酵素で混合物中のグリセリドを加水分解する方法に特に制限はなく、静置、振盪、攪拌いずれの方法で行ってもよい。振盪または攪拌による方法が、反応を均一に行える点で好ましい。反応装置にも特に制限はなく、例えば、攪拌式リアクター、流動層型リアクターなどのバッチ型反応装置、あるいは、固定化酵素を充填したリアクターなどの連続型反応装置を用いてもよい。
【0075】
加水分解における水分量は、加水分解が進行するならば、特に制限はない。好ましくは、反応液中に0.1から95質量%、より好ましくは2〜80質量%、さらにより好ましくは10〜50質量%含まれている。第1工程に用いる酵素量は、目的とする加水分解率を達成する量であれば特に制限はない。好ましくは加水分解したい油と水の質量の合計1gに対して0.1〜10000単位(1単位は、オリーブ油を基質として1分間に1マイクロモルの脂肪酸を遊離する酵素量)、より好ましくは0.5から2000単位、さらに好ましくは2から500単位である。
【0076】
第1工程の反応温度も特に制限はない。好ましくは0〜80℃、より好ましくは10〜50℃、さらに好ましくは20〜40℃である。耐熱性酵素を使用する場合は、より高い温度が用いられる。
【0077】
第1工程における反応時間に特に制限はない。好ましくは0.5〜120時間、より好ましくは2〜96時間、さらにより好ましくは5〜72時間である。連続反応の場合は、全体の反応速度を考慮して、決定すればよい。
【0078】
加水分解終了後、反応混合物を油水分離によって得られた油層を回収する。油層の回収方法には特に制限はない。アルカリ加水分解あるいは酸加水分解を行った場合、処理後の反応液を適切なpHに調整後、油水分離を行うことが好ましい。例えば、まず、濾過などにより不純物を除き、ついで、静置、遠心分離などによって分離してくる油層を回収してもよい。回収した油層には通常、数%の水が含まれている。この水を蒸留などの手段によって数百ppm以下まで減少させてから、次の第2工程(遊離脂肪酸のエステル化)を行ってもよい。しかし、エステル化反応により水が生成するという観点から、第2工程の前には特に蒸留などの脱水操作をおこなう必要はない。
【0079】
(C−2:第2工程)
第2工程は、第1工程で回収した油層に含まれる遊離脂肪酸とアルコールとをエステル化反応を触媒し得る酵素の存在下で反応させ、脂肪酸エステルを得る工程である。使用する酵素およびアルコールとしては、前記第1発明で用いられる酵素およびアルコールが用いられる。
【0080】
この第2工程におけるエステル化は、前記第1発明の第1反応工程で記載したエステル化とほぼ同一の条件で行われる。すなわち、添加するメタノール量は遊離脂肪酸に対して等モル量以上から、酵素の失活が認められない量であり、上記ダーク油のモデル混合物の場合、添加するメタノール量は、好ましくは、遊離脂肪酸に対して4モル当量以下、さらに好ましくは2モル当量以下である。ダーク油を原料とする場合、好ましくは、遊離脂肪酸に対して10モル当量以下、さらに好ましくは7.5モル当量以下とすればよい。反応温度などの反応条件も上記第1発明の第1反応工程の記載の通りである。
【0081】
第2工程では、脂肪酸エステルと同時に水が生成するため、遊離脂肪酸と脂肪酸エステルとの間で反応が平衡化する。そのためすべての遊離脂肪酸がエステル化されることはなく、遊離脂肪酸が存在する。そこで、第2工程で生じた水を反応混合物から除去する第3工程を行う。
【0082】
(C−3:第3工程)
第3工程は、第2工程で生じた水を反応混合物から除去する工程である。この工程は、上記(B−2:水除去工程)と同じ方法が適用される。例えば、まず、濾過などにより不純物を除き、ついで、静置、遠心分離によって分離してくる油層を回収してもよい。さらに回収した油層を蒸留し、水とアルコールを除去してもよい。油層に存在する微量の水を除く方が、第4工程における反応の効率が良くなるという観点から、油層を蒸留することにより脱水、あるいは脱アルコールを行う方が好ましい。第4工程に使用する反応混合物の水分含量は、好ましくは5000ppm以下であり、より好ましくは1000ppm以下であり、さらに好ましくは300ppm以下である。
【0083】
(C−4:第4工程)
第4工程は、第3工程で水が除去された反応混合物中の未反応の遊離脂肪酸を、エステル化反応を触媒し得る酵素およびグリセロールの存在下でアルコールと反応させ、遊離脂肪酸を脂肪酸エステルに変換する工程である。第4工程において使用する酵素およびアルコールは、前記第2工程と同じであり得る。第4工程において使用するアルコール量には特に制限がないが、メタノールを例にとると、添加するメタノール量は遊離脂肪酸に対して等モル量以上から、酵素の失活が認められない量(未反応の遊離脂肪酸に対して好ましくは50モル当量以下、より好ましくは20モル当量以下、さらにより好ましくは10モル当量以下である。)
【0084】
この第4工程では、未反応の遊離脂肪酸に対するエステル化率を高めるために、生成する水を除去しながら反応させる方が好ましい。生成する水を除去するためには、例えば、減圧下で反応させる方法や、モレキュラーシーブなどの脱水剤を使う方法などが知られている。しかし、モレキュラーシーブなどの脱水剤はコストが高いという欠点がある。減圧下で反応させる方法の場合、アルコールとしてメタノールやエタノールなどを用いた場合、これらのアルコールの沸点が水よりも低いため、現実的ではない。そこで、第4工程でグリセロールを添加して反応させることにより、生成水がグリセリン層に移行し、エステル化率を向上させることが可能となる。この反応に添加するグリセロールは、反応効率を高める効果があればいずれの量でも構わないが、第3工程終了後の脱水反応液とアルコールの合計に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは2〜30質量%である。グリセロールは、繰り返し使用しても良いし、毎回新たに添加しても良い。その他の反応温度、反応時間、酵素量、混合方法などの条件については、第2工程と同様の方法でおこなうことができる。
【実施例】
【0085】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明がこの実施例に制限されないことはいうまでもない。なお、実施例1および2は第1発明の実施例、実施例3は第2発明の実施例である。
【0086】
(実施例1:菜種油および遊離脂肪酸を含有する混合物からの脂肪酸エステルの調製)
(1A:第1反応工程)
(1A−1:固定化酵素の安定性に及ぼすメタノール量の影響)
菜種油(トリグリセリド)/菜種油由来の遊離脂肪酸の混合液(50:50, wt/wt)とメタノールとを、質量比で9:1(メタノール10質量%;遊離脂肪酸に対して2モル当量)、8:2(メタノール20質量%;遊離脂肪酸に対して4.4モル当量)、7:3(メタノール30質量%;遊離脂肪酸に対して7.6モル当量)、5:5(メタノール50質量%;遊離脂肪酸に対して17.6モル当量)で混合した混合物10gに、固定化酵素(ノボザイム435)を0.05g加えて、30℃、130振盪/分で振盪しながら反応させた。1および24時間後にそれぞれ0.2gをサンプリングし、生じた脂肪酸メチルエステル(FAME)含量をTLC−FID(イアトロスキャンMK−5,ヤトロン社製)を用いて測定した。なお、TLC−FID分析では、一次展開溶媒としてベンゼン:クロロホルム:酢酸=50:20:0.5(容量比)を、二次展開溶媒としてヘキサン:ジエチルエーテル=65:5(容量比)を用いて行った。24時間後、反応液を回収・除去して、残った固定化酵素に上記と同様の新しい混合物を添加して反応を行った。このサイクルを8回繰り返した。なお、以降、トリグリセリドをTGと、遊離脂肪酸をFFAと、そして脂肪酸メチルエステルをFAMEと省略して記載することがある。結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
反応初期である1時間後のFAME含量より、メタノール添加量が多いほどエステル化の速度が遅いことが分かる。メタノール含量が10質量%(以下、wt%と記載する)および20wt%の時の24時間後のFAME含量は、ほぼ同じレベル(50wt%)に達しており、かつ8サイクル繰り返してもFAME含量の低下が見られなかった。しかし、メタノール含量が30wt%以上になると24時間後のFAME含量は50wt%に達せず、かつ反応の繰り返しと共にFAME含量が低下した。これは固定化酵素の不可逆的失活のためである。以上の結果から、第1反応工程(FFAのエステル化)に最適なメタノール含量は10wt%(FFAに対して2倍モル当量)であることが分かった。
【0089】
(1A−2:固定化酵素量の影響)
菜種油/菜種油由来の遊離脂肪酸の混合液(50:50、wt/wt)9gにメタノールを1g添加し、これに、種々の量(0.025g、0.05g、0.1g、0.2g、および0.4g)の固定化酵素(ノボザイム435)を加えて、30℃、130振盪/分で振盪しながら反応させた。1および24時間後にそれぞれ0.2gをサンプリングし、生じたFAME、FFA、TG含量をTLC−FIDを用いて測定した。結果を表2に示す。
【0090】
【表2】

【0091】
この結果から、酵素量の増加と共に反応速度が増加することがわかった。以下の実験では酵素量を0.5wt%とすることにした。なお、表2から、反応が進んでもTG含量はあまり減少していなかったことが分かる。これは、FFAのエステル化によって生成する水がTGのメタノリシス反応を妨害しているためである。
【0092】
(1A−3:FFAのエステル化:連続反応による酵素の安定性)
菜種油/菜種油由来の遊離脂肪酸の混合物(50:50,wt/wt)を9g、メタノールを1g、および固定化酵素(ノボザイム435)を0.05g混合して、30℃、130振盪/分で振盪しながら反応させた。1、3、6、および24時間後に0.2gサンプリングし、FAME、FFAの含量をTLC−FIDを用いて測定した。24時間後、反応液を回収・除去して、残った固定化酵素に上記と同様の新しい混合物を添加して反応を行った。これを100日間繰り返した。結果を表3に示す。
【0093】
【表3】

【0094】
反応初期である1、3、および6時間後のFAME含量は、反応の繰り返しと共に少しずつ低下していったが(酵素活性の半減期150日以上)、1サイクルを24時間としたとき、24時間後のFAME含量は50wt%以上、未反応のFFA含量は2%前後を維持していた。したがって、第1反応工程におけるFFAのエステル化には、同じ固定化酵素を100日以上繰り返して使用できることが分かった。なお、100日目における24時間後のFFA含量は2.7wt%であったが、反応時間を48時間まで延長するとFFA含量は1.5wt%まで低下した。このことから、酵素活性が低下した時は反応時間を延長すれば良い(1サイクルの時間を長くすればよい)と言える。
【0095】
以上の予備的検討後、菜種油/菜種油由来の遊離脂肪酸の混合液(50:50、wt/wt)1440g、メタノールを160g(FFAに対して2モル当量)、および8gのノボザイム435を2Lの撹拌翼付反応器にいれ、30℃、120回転/分で撹拌しながら、24時間反応させ、第1反応工程の反応液を得た。
【0096】
(1B:脱水工程)
第1反応工程で得られた反応液から、水およびメタノールを4mmHg、80℃、30分の条件下で除去し、脱水混合物を得た。
【0097】
(1C:第2反応工程)
(1C−1:メタノール量の影響)
1Bで得られた脱水混合物とメタノールとを質量比で95:5(メタノール5wt%;グリセリド中の脂肪酸に対して等モル量)、90:10(メタノール10wt%;グリセリド中の脂肪酸に対して2モル当量)、80:20(メタノール20wt%;グリセリド中の脂肪酸に対して4モル当量)で混合した混合物10gに、固定化酵素(ノボザイム435)を0.4g加えて、30℃、130振盪/分で振盪しながら反応させた。1、3、6、および24時間後に0.2gサンプリングし、残存するTG含量をTLC−FIDを用いて測定した。さらに24時間を1サイクルとし、24時間後に反応液を回収・除去して、残った固定化酵素に、新しい脱水混合物を追加した。このサイクルを4回行った。各反応液について、反応初期におけるTGの減少速度を求めた。メタノール5wt%、1サイクル目のTGの減少速度を100としたときの相対速度を表4に示す。
【0098】
【表4】

【0099】
第2反応工程では、1サイクル目ではメタノールが10wt%の時、最も反応速度が速かった。メタノールが10wt%より多くなると、反応の繰り返しと共に固定化酵素が失活していくことが分かった。これに対しメタノール5wt%の時は酵素の失活が見られなかった。
【0100】
(1C−2:酵素量の影響)
脱水混合物とメタノールとを質量比95:5で混合した混合物10gに、固定化酵素(ノボザイム435)を0.2〜1.0g(脱水混合物に対して2〜10wt%)加えて、30℃、130振盪/分で振盪しながら反応させた。4、9、および24時間後に0.2gサンプリングし、FAME含量をTLC−FIDを用いて測定した。結果を表5に示す。
【0101】
【表5】

【0102】
表5からわかるように、添加した酵素量が2〜8wt%の場合は、酵素量の増加と共にFAME含量が増加した。酵素量10wt%の時、FAME含量がやや低下した。これは、反応速度の低下に起因すると思われる。以下の実験では、脱水混合物に対して、酵素量を6wt%に設定することにした。
【0103】
(1C−3:連続100日間の運転)
脱水混合物とメタノールとを質量比95:5で混合した混合物30gに、固定化酵素(ノボザイム435)を0.6g加えて、30℃、130振盪/分で振盪しながら反応させた。2時間後および24時間後に0.2gサンプリングし、FAME、FFA、およびTGの各含量をTLC−FIDを用いて測定した。24時間後、反応液を回収・除去して、残った固定化酵素に、上記脱水混合物とメタノールとの混合物を添加して反応を行った。これを100日間繰り返した。結果を表6に示す。
【0104】
【表6】

【0105】
反応を繰り返すに従って、2時間後のFAME含量が増加し、TG含量が減少した。これは、反応の繰り返しと共に固定化酵素が活性化され、酵素の反応速度が増加したためである。反応開始から30日目をすぎる頃から、酵素の反応速度が大きくなった。60日を経過するころから、酵素活性が徐々に低下し始めた。なお、酵素活性の半減期は300日程度と推定される。運転開始から5サイクル目までは1サイクル48時間、6サイクル目以降は1サイクルを24時間に設定すると、固定化酵素を100日間連続使用してもTG、およびFFA含量は、共に1wt%以下であり、FAME含量が98wt%以上を保っていた。このことから、第1反応工程〜第2反応工程を通じたFFAおよびトリグリセリド中の脂肪酸のFAMEへの変換率は98%以上であったことがわかる。
【0106】
以上の結果から、脱水混合物とメタノールとを質量比95:5(グリセリド中の脂肪酸に対して等モル量のメタノール)で混合した混合物10gに、固定化酵素(ノボザイム435)を0.6g(混合物に対して6wt%)加えて、30℃、130振盪/分で振盪しながら反応させ、24時間反応させた。脱水混合物中のFAMEへの変換率は98%以上であり、酵素は100日以上使用できた。
【0107】
(実施例2:ダーク油からの脂肪酸エステルの製造)
(2A:ダーク油の前処理)
大豆および菜種油製造工程で発生した脱酸廃棄物を遠心分離し、水および不溶物を除去することにより、ダーク油を調製した。ダーク油の脱酸廃棄物からの回収率は約90%であった。このダーク油の組成は、ロットにより異なるが、水分が約1wt%、遊離脂肪酸(FFA)が約75〜80wt%、トリグリセリド(TG)が約5〜10wt%、ジグリセリド(DG)が約3wt%、植物ステロールが約1wt%、ステリルエステルが約2wt%、残りがその他の炭化水素である。
【0108】
なお、この実験に用いたダーク油の脂肪酸組成は、パルミチン酸が5.6wt%、ステアリン酸が2wt%、オレイン酸が39.3%、リノール酸が44.9%、リノレン酸が7.6%であった。
【0109】
(2B:第1反応工程)
(2B−1:固定化酵素の安定性に及ぼすメタノール量の影響)
ダーク油とメタノールとを質量比90.7:9.3(メタノール量はFFAに対して等モル量)で混合した混合物30gに、固定化酵素(ノボザイム435)を0.3g加えて、30℃、130振盪/分で振盪しながら反応させた。1、6、および24時間後にそれぞれ0.5gサンプリングし、0.5M KOH溶液を用いて酸価(試料1gを中和するのに要するKOHのmg数)を測定した。反応前と反応後の酸価の減少量から、FFAに対するエステル化率を求めた。24時間後、反応液を回収・除去して、残った固定化酵素に上記と同様の新しいダーク油混合物を添加して反応を行った。反応を10回繰り返した。結果を表7に示す。
【0110】
【表7】

【0111】
菜種油および菜種油由来の遊離脂肪酸を用いた実施例1においては、メタノールを10wt%添加したとき、表3のデータから固定化酵素の半減期を推定すると、150日以上であった。これに対して、ダーク油にメタノールを9.3wt%添加(FFAに対して等モル量)したとき、酵素の失活が非常に早くなり、酵素の半減期(1時間後のエステル化率より推定)は約3日であった。このように、実施例1の第1反応工程(FFAのエステル化)と同じ反応条件をダーク油の第1反応工程に当てはめることができないことが分かった。
【0112】
そこで、ダーク油を用いる場合の最適なメタノール濃度を検討した。ダーク油とメタノールとを、質量比で90.7:9.3(FFAに対して等モル量のメタノール)、83.0:17.0(FFAに対して2モル当量のメタノール)、76.5:23.5(FFAに対して3モル当量のメタノール)、71.0:29.0(FFAに対して4モル当量のメタノール)、66.2:33.8(FFAに対して5モル当量のメタノール)、62.0:38.0(FFAに対して6モル当量のメタノール)、56.6:43.4(FFAに対して7.5モル当量のメタノール)、および49.5:50.5(FFAに対して10モル当量のメタノール)の割合で混合した混合物30gに、固定化酵素(ノボザイム435)を0.3g加えて、30℃、130振盪/分で振盪しながら反応させた。1時間後にそれぞれ0.5gをサンプリングし、0.5M KOH溶液を用いて酸価を測定した。反応前と反応後の酸価の減少量から、FFAに対するエステル化率を求めた。24時間後に反応液を回収・除去して、残った固定化酵素に上記と同様の新たなダーク油混合物を添加して反応を行った。この1サイクルを24時間として、このサイクルを5回繰り返し、以下の式:{(5サイクル目に入って1時間目のエステル化率)/(1サイクル目の1時間目のエステル化率)}×100(%)の値を求め、固定化酵素の安定性を評価した。その結果を表8に示す。
【0113】
【表8】

【0114】
実施例1でも記載したように、菜種油および菜種油由来の遊離脂肪酸を含む混合物では、メタノールが10wt%の時、酵素は非常に安定であったが、メタノールを30wt%以上含む場合、固定化酵素の失活がみられた。これとは逆に、ダーク油の第1反応工程では、メタノール量が9.3wt%の時、酵素は極めて不安定であった。そして、メタノール量が増加すると共に酵素が安定になり、メタノール量が29.0から43.4wt%のとき、固定化酵素は高い安定性を示すことがわかった。これは、ダーク油中に酵素反応を阻害する物質が含まれているために、メタノールによる希釈で酵素の安定性が高まったため、および/または酵素のメタノールによる失活を保護する物質がダーク油中に含まれているためと推定される。メタノール量33.8wt%のとき、酵素の安定性が最も高かったので、今後の実験ではメタノール量を33.8wt%(FFAに対して5モル当量)で行うことにした。
【0115】
(2B−2:酵素量の影響)
ダーク油とメタノールとを質量比で66:34の割合で混合したダーク油混合物30gに、固定化酵素(ノボザイム435)を0.075g(0.25wt%)、0.15g(0.5wt%)、0.3g(1wt%)、0.6g(2wt%)、または1.2g(4wt%)加えて、30℃、130振盪/分で振盪しながら反応させた。1、3、6、および24時間後にそれぞれ0.5gサンプリングし、0.5M KOH溶液を用いて酸価を測定した。反応前と反応後の酸価の減少量から、FFAに対するエステル化率を求めた。結果を表9に示す。
【0116】
【表9】

【0117】
酵素量の増加と共に、エステル化反応の速度が大きくなることが分かる。以下の実験では、酵素量をダーク油とメタノールとの混合物に対して、1wt%使用することにした。
【0118】
(2B−3:ダーク油中のFFAのエステル化:連続100日間の運転)
ダーク油とメタノールとを質量比66:34の割合で混合したダーク油混合物30gに、固定化酵素(ノボザイム435)を0.3g加えて、30℃、130振盪/分で振盪しながら反応させた。1、6、および24時間後にそれぞれ0.5gをサンプリングし、0.5M KOH溶液を用いて酸価を測定した。反応前と反応後の酸価の減少量から、FFAに対するエステル化率を求めた。24時間後、反応液を回収・除去して、残った固定化酵素に上記と同様の新たなダーク油混合物を添加して反応を行った。反応を100日間繰り返した。結果を表10に示す。また、1サイクル目と100サイクル目の反応の経時変化を表11に示す。
【0119】
【表10】

【0120】
【表11】

【0121】
反応を繰り返すに従って、徐々に固定化酵素の活性が低下し、FFAに対するエステル化率が低下した。この時、固定化酵素の半減期は約120日と推定された。1サイクルを24時間とすると、90サイクル目までは92%以上のエステル化率を保っていた。100サイクル目、24時間後のエステル化率は88%であったが、反応時間を48時間まで延長すると、エステル化率は96%にまで上昇した。したがって、100サイクル目以降は反応時間を伸ばせば、固定化酵素をさらに長期間使用できることが分かった。なおこの反応では、TG含量は殆ど変化しなかった。
【0122】
(2B−4:ダーク油中のFFAのエステル化:スケールアップした連続100日間の運転)
ダーク油とメタノールとを質量比66:34の割合で混合したダーク油混合物2000gに、固定化酵素(ノボザイム435)を20g加えて、30℃、120回転/分で攪拌しながら、5Lの反応槽内で反応させた。1、6、および24時間後にそれぞれ0.5gサンプリングし、0.5M KOH溶液を用いて酸価を測定した。反応前と反応後の酸価の減少量から、FFAに対するエステル化率を求めた。24時間後、反応液を回収・除去して、残った固定化酵素に上記と同様の新たなダーク油混合物を添加して反応を行った。反応を100日間繰り返した。結果を表12に示す。
【0123】
【表12】

【0124】
反応を繰り返すに従って、徐々に固定化酵素の活性が低下し、エステル化率が低下した。1サイクルを24時間とすると、100サイクル目までは92%以上のエステル化率を保っていた。このように2B−3で記載した30gスケールでの反応は、2Lスケールの反応へスケールアップしても完全に再現されることが分かった。
【0125】
以上の予備的検討後、ダーク油とメタノールとを質量比66:34(FFAに対して5モル当量のメタノール)の割合で混合した混合物1600gに、固定化酵素(ノボザイム435)を16g加えて、30℃、120回転/分で攪拌しながら24時間反応させた。反応液を静置すると2層に分離したので、1155gの油層と、435gのメタノール層をそれぞれ回収した。
【0126】
(2B:脱水工程)
第1反応工程で得られた反応液から、水およびメタノールを、4mmHg、80℃、30分間の条件下で除去し、1100gの油層(以下、ダーク油脱水画分という)を回収した。このダーク油脱水画分中のFFA含量は2.8wt%、TG含量は9.5wt%、水分含量は0.03%であった(この値はロットによって異なる)。
【0127】
(2C:第2反応工程)
(2C−1:酵素の安定性の検討)
ダーク油脱水画分とメタノールとを質量比94.5:5.5(グリセリド中の脂肪酸に対して5モル当量のメタノール)の割合で混合したダーク油脱水混合物30gに、固定化酵素(ノボザイム435)を1.8g加えて、30℃、130振盪/分で振盪しながら反応させた。24時間後に0.2gをサンプリングし、残存TG含量をTLC−FIDを用いて測定した。さらに24時間後、反応液を回収・除去して、残った固定化酵素に上記と同様の新たなダーク油脱水混合物を添加し、反応を行った。これを5日間繰り返した。結果を表13に示す。
【0128】
【表13】

【0129】
1C−3で記載したように、菜種油および菜種油由来の遊離脂肪酸を用いた反応系における第2反応工程では、固定化酵素の半減期は300日以上であった。これに対して、ダーク油脱水画分を用いた反応では、固定化酵素の失活のため、反応を繰り返すに従ってTG残存量が増加し、5サイクル目で殆ど酵素活性を失っていることが分かった。このように、菜種油および菜種油由来の遊離脂肪酸を用いた反応系における第2反応工程と同じ反応条件を、ダーク油脱水画分を用いる第2反応工程に当てはめることができないことが分かった。
【0130】
(2C−2:酵素の安定化の検討−その1)
ダーク油脱水画分とメタノールとを質量比94.5:5.5(グリセリド中の脂肪酸に対して5モル当量のメタノール)で混合したダーク油脱水画分混合物30gに、グリセロール3.0gと固定化酵素(ノボザイム435)を1.8g加えて、30℃、130振盪/分で振盪しながら反応させた。24時間後に0.2gをサンプリングし、残存するTG含量をTLC−FIDを用いて測定した。24時間後、反応液を回収・除去して、残った固定化酵素に上記と同様の新たなダーク油脱水画分とメタノールとの混合物を添加して反応を行った。24時間を1サイクルとし、このサイクルを5回繰り返した。結果を表14に示す。
【0131】
【表14】

【0132】
ダーク油脱水画分中に含まれるグリセリドのアルコリシス反応において、グリセロールを添加することにより、酵素が安定化され、グリセロールを添加しない場合に比べてTGの残存量が減少した。しかし、5サイクル目でもTGが4.3wt%残っており、固定化酵素が長期間の連続反応に耐えないであろうと推測された。
【0133】
(2C−3:酵素の安定化の検討−その2)
2C−1と同様にして、ダーク油脱水画分を調製した。このダーク油脱水画分中のTG含量は8.2wt%であった。このダーク油脱水画分を用いて、以下の検討を行った。
【0134】
(検討1)
ダーク油脱水画分とメタノールとを質量比94.5:5.5(グリセリド中の脂肪酸に対して5モル当量のメタノール)の割合で混合した混合物30gに、固定化酵素(ノボザイム435)を1.8g加えて、30℃、130振盪/分で振盪しながら反応させた。2、4、および24時間後にそれぞれ0.2gをサンプリングし、残存するTG含量をTLC−FIDを用いて測定した。24時間後、反応液を回収・除去して、残った固定化酵素に上記と同様の新たな混合物を添加して、反応を行った。反応を10日間繰り返した。結果を表15に示す。
【0135】
【表15】

【0136】
ダーク油脱水画分に酵素とメタノール以外は何も添加しなかったとき、反応を繰り返すと、TG残存量が増加することから、固定化酵素が速やかに失活していることが分かる。この時、酵素活性の半減期は10日以下であった。
【0137】
(検討2)
菜種油の添加効果を検討した。ダーク油脱水画分、菜種油、およびメタノールを質量比52.0:42.5:5.5(グリセリド中の脂肪酸に対して等モル量のメタノール)の割合で混合した混合物30g(この時のFAME含量は49wt%、TG含量は49wt%であった)に、固定化酵素(ノボザイム435)を1.8g加えて、30℃、130振盪/分で振盪しながら反応させた。2、4、および24時間後にそれぞれ0.2gをサンプリングし、残存するTG含量をTLC−FIDを用いて測定した。24時間後、反応液を回収・除去して、残った固定化酵素に上記と同様の新たな混合物を添加して、反応を行った。反応を41日間繰り返した。結果を表16に示す。
【0138】
【表16】

【0139】
菜種油を添加することにより、何も添加しないとき(検討1)に比較して、固定化酵素の安定性が増加し、酵素活性の半減期は、約25日であった。したがって、ダーク油のアルコリシス反応において、植物油を添加することにより酵素の安定性が増加することが分かった。
【0140】
(検討3)
グリセロールと菜種油の添加効果を検討した。ダーク油脱水画分、菜種油、およびメタノールを質量比52.0:42.5:5.5(グリセリド中の脂肪酸に対して等モル量のメタノール)の割合で混合した混合物30g(この時のFAME含量は49wt%、TG含量は49wt%であった)に、グリセロールを3.0gおよび固定化酵素(ノボザイム435)を1.8g加えて、30℃、130振盪/分で振盪しながら反応させた。2、4、および24時間後にそれぞれ0.2gをサンプリングし、残存するTG含量をTLC−FIDを用いて測定した。24時間後、反応液を回収・除去して、残った固定化酵素に上記と同様の新たな混合物を添加して、反応を行った。反応を100日間繰り返した。結果を表17に示す。
【0141】
【表17】

【0142】
この表からわかるように、ダーク油のアルコリシス反応時に、グリセロールおよび菜種油を添加することにより、グリセロールの単独添加(2C−2)、あるいは菜種油の単独添加時(検討2)の時よりもさらに固定化酵素の安定性が増加した。酵素活性の半減期は120日程度まで伸びた。
【0143】
なお、反応開始から4サイクル目まで、および100サイクル目以降では24時間後の残存TG含量が1.5wt%よりも大きくなった。しかし、反応時間を48時間まで伸ばすことにより、残存TG含量を検出限界以下まで下げることができた(データ示さず)。また、残存TG含量が検出限界以下まで下がったとき、第1反応工程〜第2反応工程を通したFFAとグリセリド中の脂肪酸のFAMEへの変換率は98〜99%、酸価は1.2であった。
【0144】
これらの結果から、ダーク油を用いる第2反応工程では、ダーク油脱水画分のみを反応に使用すると、酵素の耐久性が悪いことがわかった。一方、ダーク油脱水画分にトリグリセリド(植物油)およびグリセロールを添加することによって、酵素の安定性が格段に向上することが分かった。このトリグリセリド(植物油)およびグリセロールを含む第2反応工程を、1サイクルを24時間、TG残存量1.5wt%以下に目標を設定した場合、固定化酵素は少なくとも100サイクル連続使用可能で、100サイクル目以降は反応時間を48時間に伸ばせばさらに長期間連続使用可能となる。
【0145】
(2C−4:酵素の安定化の検討(スケールアップ)−その3)
ダーク油脱水画分、菜種油、およびメタノールを質量比52.0:42.5:5.5で混合した混合物2000g(この時のFAME含量は49wt%、TG含量は49wt%であった)に、グリセロール200gと固定化酵素(ノボザイム435)を120g加えて、30℃、140回転/分で攪拌しながら反応させた。2、4、および24時間後にそれぞれ0.2gをサンプリングし、TG含量をTLC−FIDを用いて測定した。24時間後、反応液を回収・除去して、残った固定化酵素に上記と同様の新たな混合物を添加して、反応を行った。反応を100日間繰り返した。結果を表18に示す。
【0146】
【表18】

【0147】
ダーク油脱水画分混合物を2000gにスケールアップして反応させたとき、小スケールでの反応(表17)の時に比べて反応速度が速かった。これは、小スケールの場合、50mlのバイアル瓶内で30gの混合物の往復振盪であったことと、反応系に添加したグリセロールの粘度が高いことなどの理由で、酵素と反応液との混合効率があまり良くなかったからと思われる。これに対し、2Lスケールでの反応では、攪拌翼を用いて攪拌したため、酵素と反応液との混合効率が向上し、反応速度が向上したと考えられる。また、2Lスケールでの反応における酵素の安定性は、30gスケールでの安定性と同じであった。このように、ダーク油からの脂肪酸エステルの製造を2Lにスケールアップしても、十分な反応効率と安定性が得られることが分かった。なお、2Lスケールでの反応における第1反応工程〜第2反応工程を通したFFAおよびグリセリド中の脂肪酸のFAMEへの変換率は98〜99%、酸価は1.2であった。
【0148】
(実施例3:ダーク油からの脂肪酸エステルの製造)
(3A:ダーク油の前処理)
大豆および菜種油製造工程で発生した脱酸廃棄物を遠心分離し、水および不溶物を除去することにより、ダーク油を調製した。実施例3に用いたダーク油の組成は、水分が約1wt%、遊離脂肪酸(FFA)が77.9wt%、トリグリセリド(TG)が12wt%、ジグリセリド(DG)が4.8wt%、植物ステロールが0.9wt%、ステリルエステルが2.2wt%、残りがその他の炭化水素である。酸価は151mg KOH/gであった。
【0149】
(3B:第1工程)
ダーク油1.7kgに、水1.13kgおよび56,600単位のキャンディダ・ルゴーサのリパーゼを添加し、120rpmで攪拌しながら、30℃で反応させた。反応は10時間でほぼ定常に達した。攪拌を停止後、反応液を60℃まで上昇させて静置することにより水層と油層を分離させ、上層の油分を回収した。この油分(以下、ダーク油加水分解油分と略する)の組成を調べたところ、FFA;91.5wt%、TG;0.8wt%、DG;0.2wt%、ステロール;0.4wt%、ステリルエステル;2.5wt%、その他の炭化水素;4.6wt%をそれぞれ含んでおり、酸価は183mg KOH/gであった。このダーク油加水分解油分には水分量が1.5wt%含まれていたが、蒸留などによる脱水をせずに、次の工程をおこなった。
【0150】
(3C:第2工程)
(3C−1:ダーク油加水分解油分のエステル化;メタノール量の影響)
ダーク油加水分解油分とメタノール(FFAに対して等モル量、2モル当量、5モル当量、7モル当量、および10モル当量のメタノール)の混合液10g、および固定化酵素(ノボザイム435)0.1gを30℃で振とうしながら反応させた。1サイクル目(反応開始から1または24時間後)にそれぞれ0.5gサンプリングし、0.5M KOH溶液を用いて酸価を測定した。反応前後の酸価の減少量から、FFAに対するエステル化率を求めた。反応液を回収・除去し、残った固定化酵素に上記と同様に新たな混合物を添加して、さらに24時間反応を行った(2サイクル目の反応)。1サイクルを24時間として、このサイクルを5回繰り返し、以下の式:{(5サイクル目に入って1時間目のエステル化率)/(1サイクル目の1時間目のエステル化率)}×100(%)の値を求め、固定化酵素の安定性を評価した。結果を表19に示す。
【0151】
【表19】

【0152】
1サイクル目(24時間後)のエステル化率は、2モル当量以上のメタノール添加で94%以上に達した。しかし、5モル当量以上添加してもエステル化率は96%を越えなかった。1サイクル目と5サイクル目のエステル化率から、固定化酵素の安定性を測定した結果、固定化酵素は理論量よりも5から7モル当量のメタノール存在下で高い安定性を示すことがわかった。この結果は、表8の結果とよく似ている。
【0153】
(3C−2:ダーク油加水分解油分のエステル化;経時変化および連続反応)
ダーク油加水分解油分66g、メタノール34g(FFAに対して5モル当量)と固定化酵素(ノボザイム435)1gを30℃で振とうしながら反応させた。適宜サンプリングして反応液の酸価を測定し、反応前後の酸価の減少量からFFAに対するエステル化率の経時変化を求めた。結果を表20に示す。
【0154】
【表20】

【0155】
反応はおよそ10時間で定常に達し、24時間後のFFAに対するエステル化率は96%であった。さらに、本反応を24時間毎に基質を交換して繰り返した。その結果、100日間以上同様の反応率が維持されており、100サイクル目、24時間後のFFAに対するエステル化率は、1サイクル目のそれと全く同じであった。
【0156】
(3D:第3工程)
第4工程のための試料を調製した。第1工程で得られたダーク油加水分解油分660g、メタノール340gと固定化酵素(ノボザイム435)10gを30℃、150回転/分で攪拌しながら24時間反応させた。静置後、分離したメタノール層を除去した。油層を回収し、残存するメタノールおよび水を4mmHg、80℃、30分の条件下で除去すると、FFAを3.5wt%および水を0.03wt%含む油分673gが得られた。この油分を、以下、第3工程脱水油分といい、残存するFFAをさらにエステル化するために、次の第4工程に供した。
【0157】
(3E:第4工程)
(3E−1:未反応FFAのエステル化:グリセロールの添加効果)
第3工程脱水油分とメタノール(残存するFFAに対して等モル、5モル当量、および10モル当量のメタノール)の混液10gに固定化酵素(ノボザイム435)0.1gを加え、30℃で振とうしながら24時間反応させた。24時間後、反応液の酸価を測定し、反応前後の酸価の減少量からFFAに対するエステル化率を求めた。
【0158】
他方で、エステル化反応に伴って生成する水の除去を目的として、反応系にグリセロールを添加した。第3工程脱水油分とメタノール(残存するFFAに対して等モル、5モル当量、および10モル当量のメタノール)の混液10gに、グリセロール1gと固定化酵素(ノボザイム435)0.1gを加え、30℃で振とうしながら24時間反応させた。24時間後、反応液の酸価を測定し、反応前後の酸価の減少量からFFAに対するエステル化率を求めた。その結果を表21に示す。
【0159】
【表21】

【0160】
残存FFAに対して等モル量(0.4wt%)のメタノールを添加したとき、残存FFAに対する反応率は8%に過ぎなかった。そこで、この反応率を向上させるために、メタノール量を5モル当量(2.2wt%)および10モル当量(4.4wt%)に増加させたとき、エステル化率は各々43%、52%に上昇し、2回のエステル化反応を合わせた総反応率は98%に達した。したがって、第4工程において、効率の良いエステル化のためには、メタノールを過剰量添加しなければならないことがわかった。
【0161】
他方、グリセロールを添加したとき、残存FFAに対するエステル化率は、等モル量のメタノール添加でも67%、5モル当量の添加で71%にまで上昇し、2回のエステル化反応を合わせた総反応率は99%に到達した。したがって、グリセロールの添加によって生成水がグリセロール層へ移行し、エステル化率が格段に向上すること、また、メタノールを過剰量添加しなくても高いエステル化率が得られることがわかった。
【0162】
(3E−2:未反応FFAのエステル化、連続反応)
第3工程脱水油分とメタノール(残存するFFAに対して5倍モル当量)の混液10gに、グリセロール1gと固定化酵素(ノボザイム435)0.1gを加え、30℃で振とうしながら24時間反応させた。24時間後、反応液を回収・除去し、残った固定化酵素に上記と同様に新たな混合物を添加して、反応を100日間繰り返した。その結果、2回のエステル化反応を合わせた総反応率は100日間高いレベルを維持し、30日目までは99%、31から100日目までは98.5%以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の方法により、食用油などの製造工程で発生する脱酸廃棄物に含まれる遊離脂肪酸およびグリセリドから効率よく脂肪酸エステルが製造される。そのため、廃棄物の利用が可能となるとともに、生じた脂肪酸エステルは、バイオディーゼル燃料として利用されるため、二酸化炭素、窒素酸化物、硫黄化合物などの地球温暖化物質あるいは大気汚染物質の環境への放出を減少できるので、産業上有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離脂肪酸およびグリセリドを含有する混合物から脂肪酸エステルを製造する方法であって、
(1)エステル化反応を触媒し得る酵素の存在下、該遊離脂肪酸とアルコールとを反応させて脂肪酸エステルを得る第1反応工程;
(2)第1反応工程で生じた水を反応混合物から除去する工程;
(3)該水が除去された反応混合物とアルコールとを、グリセリドをアルコリシスし得る酵素の存在下で反応させ、グリセリド中の脂肪酸を脂肪酸エステルに変換する第2反応工程;および
(4)得られた脂肪酸エステルを回収する工程;を含む、方法。
【請求項2】
前記アルコールが、直鎖低級アルコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記直鎖低級アルコールが、メタノールまたはエタノールである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物が、脱酸廃棄物に由来する油分である、請求項1から3のいずれかの項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2反応工程において、グリセロールおよび/またはグリセリドを添加してアルコリシスを行う、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記グリセリドが植物油脂、動物油脂、魚油、および微生物油脂からなる群から選択される少なくとも一つの油脂である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記油分が、植物油脂、動物油脂、魚油、または微生物油脂からの油脂の製造工程において発生する脱酸廃棄物に由来する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記第1反応工程において、直鎖低級アルコールは、遊離脂肪酸に対して等モル以上から前記酵素を失活させない量で使用され、第2反応工程において添加する直鎖低級アルコールは、グリセリド中の脂肪酸に対して0.5モル当量以上から前記酵素を失活させない量で使用される、請求項1から7のいずれかの項に記載の方法。
【請求項9】
遊離脂肪酸およびグリセリドを含有する混合物から脂肪酸エステルを製造する方法であって、
(1)該グリセリドを加水分解して脂肪酸を遊離させ、油水分離により遊離脂肪酸を主成分とする油分を得る第1工程;
(2)エステル化反応を触媒し得る酵素の存在下、該第1工程で生じた遊離脂肪酸とアルコールを反応させ、脂肪酸エステルを得る第2工程;
(3)該第2工程で生じた水を反応混合物から除去する第3工程;
(4)該第3工程で水が除去された反応混合物中の未反応の遊離脂肪酸を、エステル化反応を触媒し得る酵素およびグリセロールの存在下でアルコールと反応させ、遊離脂肪酸を脂肪酸エステルに変換する、第4工程;および
(5)得られた脂肪酸エステルを回収する工程;を含む、方法。
【請求項10】
前記第1工程の加水分解が、グリセリドを加水分解し得る酵素および水の存在下、行われる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アルコールが、直鎖低級アルコールである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記直鎖低級アルコールが、メタノールまたはエタノールである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記混合物が、脱酸廃棄物に由来する油分である、請求項9から12のいずれかの項に記載の方法。
【請求項14】
前記油分が、植物油脂、動物油脂、魚油、または微生物油脂からの油脂の製造工程において発生する脱酸廃棄物に由来する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第4工程において、グリセロール量が反応液合計量の1〜50質量%である、請求項9から14のいずれかの項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2および第4工程において、直鎖低級アルコールは、遊離脂肪酸に対して等モル量以上から酵素を失活させない量で使用される、請求項9から15のいずれかの項に記載の方法。

【公開番号】特開2006−288228(P2006−288228A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−110660(P2005−110660)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成15および16年度、経済産業省 地域新生コンソーシアム研究開発事業、「植物油製造過程で発生する脱酸廃棄物からのバイオ燃料の実用化生産」で得られた成果に基づくものであり、産業再生法第30条の適用をうけるもの)
【出願人】(591030499)大阪市 (64)
【Fターム(参考)】