説明

脂質組成物

経口送達および任意選択で日周性リズムに従う送達に適合する、脂質系医薬組成物が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口送達および任意選択で日周性リズムに従う送達に適合する医薬組成物に関し、該組成物を使用するホルモン関連疾患の治療方法を含む。
【背景技術】
【0002】
ステロイドホルモンは、副腎ステロイド(アルドステロン、コルチゾール、DHEA、DHEAS)、甲状腺ホルモンおよびレチノイン酸、ビタミンD、ならびに男性および女性のホメオスタシスおよび発達を調節する性腺ステロイド(アンドロステンジオン、ジヒドロテストステロン、エストラジオール、プロゲステロンおよびテストステロン)を含む広く包括的な化合物群を表す。ステロイドホルモンの中で2つの重要な群は、エストロゲンおよびアンドロゲンである。エストロゲンは、女性の発情周期を調節する女性ステロイドであり、女性の生殖および女性の二次性徴の発現に重要である。エストロゲンには、エストラジオール、エストリオールおよびエストロンの3つの種類がある。エストロゲンは、卵胞刺激ホルモンおよび黄体形成ホルモンに反応して、主として卵巣により産生される。エストロゲンは、シグナル伝達カスケードを開始して遺伝子発現を調節するエストロゲン受容体を介して、この作用を発揮する。アンドロゲンの一例は、テストステロンである。テストステロンは、男性の睾丸および女性の卵巣で産生され、少量が副腎により分泌される。男性および女性両者において、テストステロンは、生殖能、発達、性欲、身体組成およびエネルギー代謝を調節することに関与する重要なステロイドである。アンドロゲンは、アンドロゲン受容体と相互作用し標的組織の遺伝子発現を制御することを通して、この作用を発揮する。テストステロンは、天然型で、または投与した場合により良好なバイオアベイラビリティを有する[例えば、テストステロンのアルキル化またはエステル化のいずれかによる]合成アナログとして生成され得る。
【0003】
エストロゲンまたはアンドロゲンの過剰もしくは不十分な産生に関係している疾患は、典型的にはホルモン療法を用いて治療される。加えて、エストロゲンおよびアンドロゲンは、避妊薬として使用される。ホルモン療法には、疾患の治療におけるホルモン作用薬またはホルモン拮抗薬の投与が含まれる。例えば、ホルモン療法は、通常、ステロイドホルモンの投与による癌の治療に用いられる。ホルモン補充療法は、閉経前および閉経後の女性におけるエストロゲンおよびテストステロンの補充に用いられ、外科的[例えば、子宮摘出または精巣摘除]に誘発する閉経の結果として失ったホルモンの補充のためにも用いられる。エストロゲン療法は、骨粗しょう症および他の更年期症状を治療または予防するために、閉経後の女性に用いられる。エストロゲンは、また、膣萎縮、無月経および月経困難症の治療にも使用される。テストステロンおよびテストステロンアナログは、睾丸によるテストステロンの産生過少または無産生に起因する、男性における性腺機能低下症の治療に使用される。テストステロンまたはテストステロンアナログを使用する他の適応には、生殖能の治療、性欲欠乏、骨粗しょう症、筋成長の増大、貧血および鬱病が含まれる。
【0004】
ステロイドホルモン補充療法、特にテストステロン補充療法は、多くの製剤および送達経路により促進される。例えば、現在利用可能な(アルキル化またはエステル化されたいずれかの)テストステロンの経口剤形が、薬物動態の相当な変動性および長期の安全性問題を示すので、大部分のテストステロン療法には、注射剤、皮膚用パッチ剤、ゲル剤またはバッカル錠の使用が含まれている。筋肉内経路を介して1〜3週間おきに投与される注射により、この薬物動態の変動性の問題に対する解決策が得られるが、これらは苦痛であり、使用にはきわめて不便であることが知られている。ウンデカン酸テストステロンの注射は、10〜12週毎に1回投与し得るが、日内変動を全く起こさず、苦痛である。テストステロンパッチ剤(陰嚢用および非陰嚢用)は、概して患者に好まれるが、テストステロンの皮膚吸収の増大を促進するビヒクルに起因する、中等度から重度の皮膚反応を引き起こす可能性がある。テストステロンのゲル剤は、飛び抜けて効果があり広く使われる製品である。しかし、これらは高価であり、女性および子供がうっかり触れてしまうことを避けるために、注意を払わなければならない。加えて、多くの患者は、その量と不便さのためにゲル剤を塗布することを好まない。
【0005】
ステロイドホルモン、特にテストステロンなどのステロイドホルモンの天然型の投与のための、代替の送達手段を開発する必要がある。好ましい送達経路は、経口である。
【0006】
テストステロンなどのステロイドの経口手段による送達は、当技術分野で知られている。例えば、WO2005/076899は、バイオアベイラビリティを増大させるためにフィナステリドまたはデュタステリドと併用した、油ビヒクル中のテストステロンの経口投与を開示している。フィナステリドおよびデュタステリドは、テストステロンのより活性型のジヒドロテストステロンへの変換を阻害する、5α還元酵素阻害薬である。EP0 001 851は、トコール[ヒドロキノンとフィトールの縮合物]と組み合わせた、ステロイドの経口製剤を開示している。US2007/0026066は、活性剤をマイクロカプセル化した脂質ビヒクル中で組み合わせることにより、薬物、例えばテストステロンの持続放出をもたらす、複合的な送達ビヒクルを記載している。さらに、AmoryおよびBremner[J.Clin Endocrinol Metab、90(5)、2005年、2610〜2617頁]は、油性ビヒクル(ゴマ油)中のテストステロンの送達により、有効血清中濃度が得られたことを実証している。WO2006/113505には、テストステロンおよびテストステロンエステルなどの疎水性薬物の経口送達に適合した、親水性および親油性官能基を含む複数の脂質単位を含む、脂質系送達ビヒクルが記載されている。
【0007】
例えばテストステロンの経口送達に関しての主要な課題は、ホルモンが迅速かつ完全に吸収される一方、腸壁内およびバイオアベイラビリティのほぼ98%の減少を占める肝初回通過間の両方において、かなりの代謝があることである。テストステロン(結晶粉末形態)を約200mgの用量まで送達する試みは、ほぼ失敗に終わり、血清中曝露が非常に低濃度となった。テストステロンの結晶形態を操作しても、このバイオアベイラビリティにはわずかな効果しかなく、主要な肝代謝経路は変化しないままである。この代謝的な不安定性を回避する難しさの結果として、テストステロンのバイオアベイラビリティを向上させる試みは、アルキル化またはエステル化のいずれかを介してより安定な化学付加物を開発することに、主に焦点が置かれてきた。
【0008】
経口薬物送達のための脂質系製剤には、「単純な」1成分もしくは2成分の油混合物、またはミセル、マイクロエマルション、自己乳化系、リポソームもしくはマクロエマルションなどのより「複雑な」多成分システムが含まれる。薬物の可溶化を向上させ、製剤が生体内で乳化する傾向を高め、これによりリンパ系への迅速な取込みを可能にするために、多成分の脂質系製剤を利用することが考えられている。しかし最近の研究では、さらなる外来の乳化剤の必要がなくても、生体内で十分な乳化が起こるので、これらの主張は正しくないであろうと示唆された。その上、コロイド粒子径の範囲(リンパ管の取込みに要求される粒子径に一致させるように設計される)は、異なる環境条件および胃腸内分泌の高い変動性により、生体内では概して再現されない。
【0009】
しかも、ホルモンの分泌は、日周性リズムに従い得ることが知られている。例えば、コルチゾール値は、朝一番に高く、真夜中近くには非常に低い。ACTHひいてはコルチゾール値は、午前3時近くに上がり始め、午前7時にピークに達し、日中に徐々に低下し、真夜中に最下点に達する。日周性の放出パターンに従うホルモンのさらなる例は、TSHおよびトリヨードチロニン(T3)である。T3の上昇は、20時以降に始まり、24時後にピークに達し、目覚め時まで一晩中高く保持され、その後下降し15時頃に最下点になる。なおいっそうの例はテストステロンである。テストステロンについては日周性のリズムが見られ、早朝の時間帯に最大であり、夕方に最小である。テストステロンの夜に活発になるリズムは、熟睡および急速眼球運動(REM)/非REMの睡眠周期に関係している。テストステロンのピークは、REM睡眠の開始と一致する。若者では、睡眠に関係したテストステロンの上昇は、最初のREM睡眠エピソードの出現と関係している。テストステロン産生パターンの理解を深めることは、長期間のテストステロン補充に関して、適切な治療投与計画、および男性の24時間にわたる生理的補充に必要な適正な用量を選択する際に、臨床的に意義があり得る上、男性のホルモン避妊法の開発に役立ち得る。異なる時点における、生理量を超える用量および生理量に満たない用量には共に、アンドロゲン受容体の非常に広範な分布を反映して副作用が伴い得る。テストステロンの生理量を超える用量は、ヘマトクリット値の上昇、HDL値の減少および平均血圧の上昇と関係があるが、一方、不十分な補充は、貧血、骨粗しょう症および性欲減弱をもたらす。加えて、テストステロン値は、認知機能、具体的には空間認識と関連付けられており、テストステロンの正確な生理的リズムは、最適な認知にとって重要となり得る。
【0010】
中年の男性において、夜間のテストステロンの分泌は、若く健康な男性に比べると減少しており、このことは、加齢に伴うテストステロン放出の正常なリズムの混乱を示唆している[Luboshitzkyら、Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism、88(7):3160〜3166頁参照]。ホルモン補充療法において、日周性リズムに従ってステロイドホルモンを投与し、ホルモンの正常な生理的分泌により近い治療法を提供することは望ましいことであろう。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、ステロイドホルモン、例えばテストステロンを、経口でリンパ系を経由して送達するための脂質系代替製剤、およびホルモン療法の日周性の送達におけるこの使用に関する。
【0012】
本発明の1つの態様によると、
ステロイドホルモンと、
脂質系担体であり、前記担体が少なくとも1つのトリグリセライド脂肪酸を含み、該脂肪酸が少なくとも炭素原子10個の長さである脂質系担体と
を含む、ステロイドの経口送達に適合した医薬組成物が提供される。
【0013】
本発明の1つの態様によると、
テストステロンまたはテストステロンの官能性変異体と、
少なくとも1つのトリグリセライド脂肪酸を含む脂質系担体であり、脂肪酸の長さが少なくとも炭素原子10個である脂質系担体と、
組成物中のテストステロンまたは前記官能性変異体の溶解性を促進する少なくとも1つの薬品と
を含む、テストステロンまたはテストステロンの官能性変異体の経口送達に適合した医薬組成物が提供される。
【0014】
本発明の好ましい実施形態において、前記ステロイドホルモンはアンドロゲンである。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、前記アンドロゲンはテストステロンまたはジヒドロテストステロンである。
【0016】
本発明の代替の好ましい実施形態において、前記アンドロゲンはテストステロンの官能性変異体である。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、前記官能性変異体は、プロピオン酸テストステロン、エナント酸テストステロン、シピオン酸テストステロン、ウンデカン酸テストステロン、テストステロンブシシエート(buciciate)、メチルテストステロン、フルオキシメステロンまたはメステロロンから成る群から選択される。
【0018】
本発明の代替の好ましい実施形態において、前記ステロイドホルモンはエストロゲンである。
【0019】
好ましくは、前記エストロゲンは、エストラジオール、エストリオールおよびエストロンから成る群から選択される。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、前記脂肪酸の鎖長が、炭素原子10〜22個であり、好ましくは炭素原子14〜18個の長さである。
【0021】
本発明の好ましい実施形態において、不飽和脂肪酸の飽和脂肪酸に対する比は、少なくとも3または3より大きい。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、前記脂肪酸は、一価飽和脂肪酸である。
【0023】
好ましくは、前記一価飽和脂肪酸は、組成物の脂質含量の少なくとも30%である。
【0024】
本発明の代替の好ましい実施形態において、前記脂肪酸は、多価飽和脂肪酸である。
【0025】
好ましくは、前記多価飽和脂肪酸は、組成物の脂質含量の少なくとも30%である。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、前記脂肪酸は、必須脂肪酸である。
【0027】
「必須脂肪酸」は、ヒトまたは動物により自然に合成することができない脂肪酸を意味し、それ故、食事から得なければならない。例えば、必須脂肪酸は、植物中に発見され[例えば、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸]、魚類から得られる[例えば、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸]。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、前記必須脂肪酸は、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸またはドコヘキサエン(docohexaenoic)酸から成る群から選択される。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、前記必須脂肪酸は、リノール酸である。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、前記必須脂肪酸は、リノレン酸である。
【0031】
本発明の好ましい実施形態において、前記必須脂肪酸は、オレイン酸である。
【0032】
本発明の代替の好ましい実施形態において、前記脂質系担体は、油である。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、前記油は、植物油である。
【0034】
好ましくは、前記植物油は、アーモンドオイル、ラッカセイ油、菜種油、肝油、コーンオイル、綿実油、アマニ油、ブドウ種子油、ピーナッツ油、サフラワー油、ゴマ油、大豆油、ひまわり油またはクルミ油から成る群から選択される。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、前記油は、ゴマ油である。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、前記組成物は、少なくとも30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%または40%w/wのゴマ油を含む。
【0037】
本発明の代替の好ましい実施形態において、前記植物油は、少なくとも1つのポリアルキレンポリオール、好ましくは、ポリオキシエチル化杏仁油、ポリオキシエチル化コーンオイルまたはポリエチル化水素化ココナッツを含む。
【0038】
本発明の代替の好ましい実施形態において、前記脂質系担体は、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(Migyol810および812)、カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリド(Miglyol818)、カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸の脂肪酸トリグリセリド(Softisan378)、カピル酸(capylic)/カプリン酸/コハク酸の脂肪酸トリグリセリド(Miglyol829)、ステアラルコニウムベノナイト(benonite)とプロピレンカーボネートを加えたカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(Migyol Gel T)、ステアラルコニウムヘクトライトとプロピレンカーボネートを加えたカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(Migyol Gel B)から成る群から選択される脂肪酸の少なくとも1つまたはその組合せを含む。
【0039】
本発明のさらなる代替の好ましい実施形態において、前記脂質系担体は、ココグリセリドもしくはココトリグリセリドの少なくとも1つまたはその組合せを含む。
【0040】
典型的には、ココグリセリドまたはココトリグリセリドは、10〜18個の炭素原子を含むと考えられ、例えば、市販のSoftisan100、133、134、138、142、154である。
【0041】
本発明の好ましい実施形態において、前記脂質系担体は、ミリスチン酸トリグリセリドを含むまたはこれから成る。
【0042】
本発明の好ましい実施形態において、前記脂質系担体は、パルミチン酸トリグリセリドを含むまたはこれから成る。
【0043】
本発明の好ましい実施形態において、前記脂質系担体は、ステアリン酸トリグリセリドを含むまたはこれから成る。
【0044】
本発明の好ましい実施形態において、前記脂質系担体は、トリグリセリドとポリアルキレンポリオールの組合せを含む。
【0045】
本発明の好ましい実施形態において、前記ポリアルキレンポリオールは、ポリオキシエチル化杏仁油、ポリオキシエチル化コーンオイルまたはポリオキシエチル化ココナッツオイルから成る群から選択される。
【0046】
本発明のさらに好ましい実施形態において、前記脂質系担体はプロピレングリコール脂肪酸を含む。好ましくは、前記プロピレングリコール脂肪酸は、モノエステルである。
【0047】
好ましくは、前記モノエステルは、モノラウリン酸プロピレングリコールまたはモノミリスチン酸プロピレングリコールである。
【0048】
本発明の好ましい実施形態において、前記モノエステルは、モノラウリン酸プロピレングリコールである。
【0049】
好ましくは、前記組成物は、少なくとも20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%または30%w/wのモノラウリン酸プロピレングリコールを含む。
【0050】
本発明の代替の好ましい実施形態において、前記プロピレングリコール脂肪酸は、ジエステルである。
【0051】
好ましくは、前記ジエステルは、ジカプリル酸/ジカプリン酸、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールおよびジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールから成る群から選択される。
【0052】
本発明の組成物は、有効量で投与される。「有効量」は、所望の反応を生じる、単独のまたは追加用量と一緒にした組成物の量である。例えば、テストステロン産生量は、男性で約3〜6mg/日および女性では0.2〜0.4mg/日であり、効果的な治療では、テストステロンのこの量を、朝一番により高いテストステロン値の日周性リズムの中で、血流中に送達すると考えられる。エストラジオールに関しては、毎日の産生量は24時間当たり約20〜60μgであり、思春期女子においては、夜間により高く朝一番でピークに達するエストラジオール値の明確な日周性リズムがある。
【0053】
このような量は、言うまでもなく、治療される特定の状態、状態の重症度、および年齢、体調、背格好、体重、治療期間、(もしあれば)併用療法の性質を含む個々の患者の指標、ならびに医療従事者の知見および専門知識範囲内の同様な因子に依存するであろう。これらの因子は、当技術分野の通常の当業者によく知られており、日常の実験だけで対処することができる。個々の成分の最大投与量またはその組合せ、すなわち、妥当な医学的判断による最大安全量を使用することが、一般に好ましい。しかし、患者は、医学的根拠、精神的な理由または事実上の任意の他の理由のために、低用量または耐用量を強く主張し得ることが、当技術分野の通常の当業者によって理解されよう。
【0054】
性腺機能低下症を治療するケースでは、所望の反応が疾患の進行を抑制している。これには、一時的に疾患の進行を遅らせることだけが含まれるかもしれないが、より好ましくは、疾患の進行を永続的に止めることが含まれる。好ましくは、ホルモン補充療法は、ホルモンの正常値およびリズムを取り戻さなければならない。このことは、テストステロンのケースでは、24時間を通してテストステロン値を測定することにより、またエストラジオールのケースでは、24時間にわたり17−βエストラジオールを測定して補充することにより取り組むことができる。ホルモン補充の影響は、下垂体ホルモンのLHおよびFSHに関するフィードバックを測定することによっても、また対処することができる。
【0055】
前述の方法で使用される医薬組成物は、好ましくは、非滅菌であり、患者への経口投与に適切であり、体重または体積単位で所望の反応を生じるステロイドホルモンの有効量を含有する。反応は、例えば、症状の減少を判定することにより測定することができる。
【0056】
患者に投与されるステロイドホルモンの用量は、様々な指標に従って選択できる。因子には、治療の所望期間が含まれる。適用された初回量で患者の反応が不十分な場合には、より高用量(異なるより局所的な送達経路による、効果的な高用量)を、患者の耐性が許す範囲まで採用し得る。
【0057】
投与する場合、脂質組成物は、薬学的に許容される量および薬学的に許容される組成で適用される。用語「薬学的に許容される」とは、生理学的にまたは毒物学的に許容されることを意味する。このような調製物は、慣例的に、塩、緩衝剤、保存剤、適合性担体、および任意選択で他の治療薬を含有し得る。このような薬品は与えられるか、適切な高分子カプセルの剤形内に入れられてもよく、カプセルは、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HMPC)、または他のセルロース高分子の誘導体から作ることができる。脂質組成物中のステロイドホルモンの溶解性を高めるための、典型的な添加剤としては、エタノール、ベンジルアルコール、グリセロール、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、クレマフォール、ポリソルベート(Tween80)、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0058】
本発明の好ましい実施形態において、前記可溶化剤は、エタノールおよび/またはベンジルアルコールである。
【0059】
本発明の好ましい実施形態において、前記組成物は、テストステロン、ゴマ油、ラウログリコール(lauroglycol)、エタノールおよびベンジルアルコールを含む。
【0060】
本発明の好ましい実施形態において、前記組成物は、少なくとも1%、2%、3%、4%または5%w/wのエタノールを含む。
【0061】
本発明の好ましい実施形態において、前記組成物は、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%または15%w/wのベンジルアルコールを含む。
【0062】
好ましくは、前記組成物は、
2.5〜7.5%w/wのテストステロン、
少なくとも40%w/wのゴマ油、
少なくとも30%w/wのラウログリコール、
少なくとも5%w/wのエタノール、および
少なくとも15%w/wのベンジルアルコールから成る。
【0063】
本発明の好ましい実施形態において、前記組成物は、表2に記載したように、テストステロン、ゴマ油、ラウログリコール、エタノールおよびベンジルアルコールから成る。
【0064】
組成物は、所望する場合、ステロイドホルモンを保存するためかつ脂質系担体を保護するために、さらなる薬学的に許容される担体と組み合わせてもよい。本明細書で用いられる用語「薬学的に許容される担体」は、ヒトへの投与に適切かつステロイドホルモンおよび脂質系担体と適合性の、1つまたは複数の適合性固体または液体充填剤、希釈剤またはカプセル化物質を意味する。この関係における用語「薬学的に許容される担体」は、活性成分をこれらと組み合わせ適用を容易にするまたは活性剤を保護する、有機または無機成分、天然または合成成分を意味する。例えば、これら担体には、脂質ビヒクル(またはこの外部パッケージユニット)の化学分解を防ぐおよび/またはステロイドホルモンの安定性を保つための、これらに限定されないが、安定剤、防腐剤、酸化防止剤、可塑剤が含まれる。そのような薬学的に許容される物質としては、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、混合トコフェノール、芳香族フェノール、リグナンなどを挙げることができる。
【0065】
また、医薬組成物の成分は、所望する薬剤の有効性を実質的に損なうと思われる相互作用がないような方法で、互いに本発明の分子と混合させることもできる。
【0066】
組成物は、好都合には単位剤形で提供され、製薬業界でよく知られた方法の任意のものにより調製され得る。全ての方法には、活性剤を1つまたは複数の副成分から成る担体と結合させるステップが含まれる。一般に組成物は、活性化合物を、液体担体、微粉化した固体担体、または両担体と均一かつ密接に結合させることにより調製し、次に必要ならば、生成物を成形する。
【0067】
経口投与に適切な組成物は、カプセル剤、錠剤、ロゼンジなどの個別単位として提供させてもよく、各々は、活性化合物の所定量を含有する。経口投与に適切な担体の配合は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、PAに見出すことができる。
【0068】
本発明のさらなる態様によると、ホルモン療法における本発明による組成物の使用が提供される。
【0069】
本発明の好ましい実施形態において、前記ホルモン療法は、テストステロンホルモン療法である。
【0070】
好ましくは、テストステロン療法は、男性の原発性および続発性の両性腺機能低下症の治療である。
【0071】
男性の性腺機能低下症に関連する状況としては、生殖能力の治療、性欲欠乏、骨粗しょう症、筋成長の増大、貧血、インスリン耐性および鬱病が挙げられる。
【0072】
本発明の代替の好ましい実施形態において、前記ホルモン療法は、エストロゲン療法である。
【0073】
好ましくは、エストロゲン療法は、女性の性腺機能低下症である。
【0074】
女性の性腺機能低下症に関連する状況としては、閉経前および閉経後の女性におけるホルモン補充療法、および手術で誘発された月経閉止の予後としてのホルモン欠乏の補充の目的、骨粗しょう症、膣萎縮、無月経および月経困難が挙げられる。
【0075】
本発明のさらなる態様によると、ステロイド補充療法が有益と思われる状態を治療するための方法が提供され、この方法には、本発明による組成物の有効量をホルモン補充を必要とする患者に投与することが含まれ、組成物は、前記ステロイドの生理的な補充を提供するために、前記ステロイドの日周性分泌に従って投与される。
【0076】
生理的なテストステロン値は、夕方に低値で、これらの値が夜間に上昇し朝の早い時間帯にピークに達する、明確な日周性リズムを示す。さらに、エストロゲンもまた、とりわけ思春期の始まりおよびこの期間に、分泌の日周性パターンを示す。したがって、経口HRT用の天然型17−β−エストラジオールを、特に思春期の間に日周性の療法として与えることが望ましいであろう。
【0077】
本発明の好ましい方法において、前記ステロイドはアンドロゲンである。
【0078】
本発明の好ましい方法において、前記アンドロゲンは、テストステロンまたはジヒドロテストステロンである。
【0079】
本発明の代替の好ましい方法において、前記アンドロゲンは、テストステロンの官能性変異体である。
【0080】
本発明の好ましい方法において、前記官能性変異体は、プロピオン酸テストステロン、エナント酸テストステロン、シピオン酸テストステロン、ウンデカン酸テストステロン、テストステロンブシシエート(buciciate)、メチルテストステロン、フルオキシメステロン、またはメステロロンから成る群から選択される。
【0081】
本発明の好ましい方法において、前記組成物は、睡眠前、好ましくは、20時から24時の間に投与される。
【0082】
好ましくは、前記ステロイド補充療法は、男性の性腺機能低下症の治療である。
【0083】
本発明の代替の好ましい方法において、前記ステロイドはエストロゲンである。好ましくは、前記エストロゲンは、エストラジオール、エストリオールおよびエストロンから成る群から選択される。
【0084】
好ましくは、前記ステロイド補充療法は、女性の性腺機能低下症の治療である。
【0085】
本発明の好ましい方法において、前記組成物は、睡眠前、好ましくは、20時から24時の間に投与される。
【0086】
本発明のさらなる態様によると、
ステロイドと、
脂肪酸が少なくとも炭素原子10個の長さの少なくとも1つのトリグリセライド脂肪酸を含む脂質系担体と、
組成物中のステロイドの溶解性を高める少なくとも1つの薬品と
を含む、ステロイドの経口送達に適合した医薬組成物が提供される。
【0087】
本発明の好ましい実施形態において、前記ステロイドホルモンは、エストロゲンである。
【0088】
好ましくは、前記エストロゲンは、エストラジオール、エストリオールおよぶエストロンから成る群から選択される。
【0089】
本明細書の記載および請求項を通して、用語「含む」および「含有する」、ならびにこれらが変化した用語、例えば「含んでいる」および「(3人称単数が主語の)含む」は、「これらだけに限定されないが含んでいる」ことを意味し、他の部分、添加物、成分、整数値またはステップを排除することを目的としない(また排除しない)。
【0090】
本明細書の記載および請求項を通して、文脈が別に求める場合を除いて、単数は複数を包含する。特に、不明確な物品が使用される場合、本明細書は、文脈が別に求める場合を除いて、単独と同様に多数も考慮するものとして理解されたい。
【0091】
本発明の特定の態様、実施形態または実施例に関係して記載される、特徴、整数値、特性、化合物、化学部分または化学基は、本明細書に記載の任意の他の態様、実施形態または実施例に、これと矛盾しない限り適用できることを理解されたい。
【0092】
次に、以下の図および表を参照して、本発明の実施形態を実施例により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】給餌状態の下で雌のビーグル犬に40mgで投与した、テストステロンの脂質製剤B2およびテストステロンの対照配合物の薬物動態プロファイルを示す図である。
【図2】給餌状態の下で雌のビーグル犬に40mgで投与した、テストステロンの脂質製剤B3およびテストステロンの対照配合物の薬物動態プロファイルを示す図である。
【図3】給餌状態の下で雌のビーグル犬に40mgおよび80mgで投与した、テストステロンの脂質製剤B2の薬物動態プロファイルを示す図である。
【図4】絶食状態および給餌状態の下で雌のビーグル犬に40mgで投与した、テストステロンの脂質製剤B2の薬物動態プロファイルを示す図である。
【0094】
材料および方法
テストステロンの送達に使用される脂質系は、天然食用油、この特定の蒸留画分、または合成的に修飾した誘導体から選択され得る。そのような系は、
A.植物または動物源から、炭素単位が10を超える(主)鎖長の脂肪酸を含有するトリグリセリドと共に得た食用油、すなわち、アーモンドオイル、アラキス(ラッカセイ)油、菜種油、肝油、コーン(トウモロコシ)油、綿実油、アマニ油、ブドウ種子油、ピーナッツ油、サフラワー油、ゴマ油、大豆油、ひまわり油およびクルミ油(表1参照)と、
B.カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(Migyol810および812)、カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリド(Miglyol818)、カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸トリグリセリド(Softisan378)、カピル酸(capylic)/カプリン酸/コハク酸トリグリセリド(Miglyol829)、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(および)ステアラルコニウムベノナイト(benonite)(および)プロピレンカーボネート(Migyol Gel T)、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(および)ステアラルコニウムヘクトライト(および)プロピレンカーボネート(Migyol Gel B)などの中長鎖のトリグリセリドの蒸留画分(表2参照)と、
C.中長鎖の水素化ココグリセリドの蒸留画分−C10〜C18の脂肪酸のトリグリセリド(Softisan100、133、134、138、142、154)(表3参照)と、
D.個々の脂肪酸の蒸留画分−ミリスチン酸のトリグリセリド(Trimyristin Dynasan1140)、パルミチン酸のトリグリセリド(Tripalmintin Dynasan116)およびステアリン酸のトリグリセリド(Tristearin Dynasan118)(表4参照)と、
E.天然または水素化植物油のトリグリセリドのエステル交換生成物およびポリアルキレンポリオール−ポリオキシエチル化杏仁油(Labrafil M1944CS)、ポリオキシエチル化コーンオイル(Labrafil M2125CS)およびポリエチル化水素化ココナッツ(Gelucire37/06)(表5参照)と、
F.脂肪酸のプロピレングリコールモノおよび/またはジエステル−プロピレングリコールモノラウリン酸(ラウログリコール)、プロピレングリコールモノミリスチン酸(Mipryl)、プロピレングリコールジカプリル酸/ジカプリン酸(Capex200)、プロピレングリコールジカプリル酸/ジカプリン酸(Miglyol840)およびプロピレングリコールジカプリル酸/ジカプリン酸(NeobeeM−20)(表6参照)と
を含む。
【0095】
配合物系
表1に列挙した配合物系は、全てがテストステロンに対して顕著な可溶化容量(>50mg/)を示し、これは、水媒体中で達成可能な可溶化容量(<0.3mg/g)より少なくとも100倍高く、単一成分の脂質ビヒクル単独中で達成可能な可溶化容量(最大値、<10mg/g)より少なくとも5倍高い。
【0096】
N.B:水系に対してはlg=1mL;油系に対してはlg=>lmL。
【0097】
表2および3は、それぞれ配合物系BおよびD(表1参照)に基づいたテストステロンの脂質配合を示し、テストステロンの全濃度は、治療的要件を満たすため、および胃腸管に沿った配合物の分散安定性を最適にするために、変えてもよい。
【0098】
テストステロンの脂質製剤の調製
表1〜3に列挙した配合物系は、下記の方法に従って調製した。
a.液体添加剤は、配合物の各々に規定した重量比で、適当な容器内で混合し、均一なビヒクルを作った。
b.所定量のテストステロンを、完全な溶解を確保するために連続撹拌しながら、適切な場合軽く加熱して、均一なビヒクルに加えた。
c.テストステロン溶液の一定分量を、適切な用量強度を提供するために適当なサイズのカプセル(名目上のカプセルサイズ00)に充填した。
d.適当な粘度を有するゼラチン溶液を用いて、カプセル蓋でカプセル本体に封をし、密封(漏れのない)した。
【0099】
胃腸内環境における分散安定性
表2〜4に記載したテストステロンの脂質配合物の分散安定性を、模擬胃内条件(pH1)および模擬腸内条件(pH6.8)の下で評価した。サンプルは、(ゼラチンカプセル中に充填した)テストステロン配合物を、Caleva溶解槽において37℃に維持した媒体250ml中に設置することにより評価した。パドル装置を用いて50rpmで穏やかに撹拌した。沈殿物に関して分散性を視覚的に観察し、形成物が溶液中に残留した時間を記録した。溶液系は、15、30および60分の時点において観察し、いくらかの沈殿が起こった場合、さらに試験することを中止した。変化が観察されない場合、試験を継続し、1時間毎に最大7時間監視し、その後24時間夜通し放置した。
【0100】
安定性試験
表2〜3に記載したテストステロンの脂質配合物の物理的安定性を、室温(20〜25℃)において、および促進させた温度条件下(50℃)で、2週間にわたり評価した。テストステロンの脂質配合物は、サイズ00のゼラチンカプセル中に充填し、規定した各々の保存条件において安定性試験を行った。カプセルは、ガラスバイアル中に直立状態で(および水平に)保存した。全てのサンプルは、変色、沈殿、分離および(カプセルからの)漏出に関して、2週間にわたり毎日観察した。
【0101】
生体内試験
脂質配合物B2およびB3の吸収挙動は、雌のビーグル犬において、投与間に少なくとも6日のウォッシュアウト期間をおき6相において評価した。給餌条件下の動物に全ての配合物を服用させ、1つの配合物(B2)は、絶食条件下でも服用させた。ゴマ油中のテストステロン懸濁液を含む対照配合物を、対照として含めた。試験品目の詳細および投薬シーケンスは、表4に示されている。
【0102】
試験配合物の各々は、約1〜2歳、体重約6〜10kgの4匹のビーグル犬の群に投与した。試験前の待機期間および試験期間中、動物は、この種に適切なケージに収容した。順応期間および試験期間中、温度および湿度を管理した。
【0103】
既知の配合物(Harlan Teklad Global Diet コード2021)の標準的な実験飼料の1日の所要量400gを、各々のイヌに提供した。給餌試験では、投薬30分前にイヌに飼料を与え、絶食試験では、イヌを一晩中絶食させ、投与後2時間経ってから飼料を与えた。
【0104】
経口投与(6相)に続いて、4匹の雌犬において投与後24時間までに血液サンプルを採取した。以下の目標時間、すなわち、投薬前、投薬後0.5、1、2、3、4、6、10、12および24時間において、血液サンプル(約0.5mL)を頸静脈から採血し固有にラベルを貼ったチューブに、凝固促進用ゲル(BD Vacutainer(登録商標)gold top)と一緒に入れた。血液サンプル中のテストステロンの分析を、従来の固相抽出(エタノールからの沈殿物)を用いて行い、液体クロマトグラフィー分離を介して試験し、質量分析を介して検出した。薬物動態パラメーターは、Kenetica5.0(Thermo Fisher)を用いて、非コンパートメント解析により得られた。
【0105】
例:
配合物の重要な生体外性能のデータセットの概要は、表5に提供されている。全ての非配合物系は、内容物を胃内環境へ放出するゼラチンカプセルの迅速な溶解を示した。テストステロン溶液の放出に続き、全ての配合物は、充填濃度依存性の分散安定性プロファイルを示した。非常に高いテストステロン充填濃度(配合物B1、>10mg/g)の安定性は、微細な(および限定された)沈殿の徴候があるまで最大10分間維持された。より低い濃度では、配合物系(B2、B3およびB4)は、最大1時間安定で、1時間を超えても胃腸管から生じる吸収には十分であった。
【0106】
試験した全ての配合物は、2週間の試験期間にわたり、周囲条件および促進させた試験条件の下で、物理的に安定であることが分かった。沈殿物、変色またはカプセルからの漏出は観察されなかった。
【0107】
雌のビーグル犬におけるテストステロンの代表的な脂質配合物の薬物動態プロファイルは、図1〜4に示されている。全ての脂質配合物は、ゴマ油中にテストステロン懸濁液を含有する対照配合物に対して、そのプロファイルをまとめた。図1および2は、対照配合物に対する脂質配合物の薬物動態プロファイルを示しており、全て給餌状態の下で投薬した。テストステロンの最大血清濃度(Cmax)および濃度曲線下面積(AUC)を特徴とする総合的吸収度は、同等用量において対照配合物より脂質配合物(B2およびB3)で有意に高かった(11〜77%)。さらに、図3は、合計投与量を40mgから80mgまで増加させることにより、曝露のレベル(AUCにより反映される)は、用量とは不釣り合いに3倍を超えて増大した(表6)。図4では、絶食状態下の動物への配合物B2の投薬は、AUCのわずか約30%の減少しかもたらさず、テストステロン関連の経口製剤で観察された減少よりも有意に少なく、絶食状態下のバイオアベイラビリティは20倍を超え得ることが示されている。
【0108】
Schnabelら、Andriol(登録商標)Testocaps(登録商標)Clin Endocrinol、2007年、4月1日;66(4):579〜585頁の経口投与後の、血中テストステロン濃度に関する食品成分の効果。
【0109】
【表1】

【0110】
【表2】

【0111】
【表3】

【0112】
【表4】

【0113】
【表5】

【0114】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テストステロンまたはテストステロンの官能性変異体、
長さが少なくとも炭素原子10個のトリグリセライド脂肪酸を少なくとも1つと、組成物中のテストステロンまたは前記官能性変異体の溶解性を高める少なくとも1つの作用剤とを含む脂質系担体、
を含むことを特徴とする、テストステロンまたはテストステロンの官能性変異体の経口送達に適合した医薬組成物。
【請求項2】
前記官能性変異体が、プロピオン酸テストステロン、エナント酸テストステロン、シピオン酸テストステロン、ウンデカン酸テストステロン、テストステロンブシシエート(buciciate)、メチルテストステロン、フルオキシメステロンまたはメステロロンから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記脂肪酸の鎖長が、10〜22個の炭素原子である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記脂肪酸鎖が、14〜18個の炭素原子の長さである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
不飽和脂肪酸の飽和脂肪酸に対する比が、少なくとも3または3より大きい、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記脂肪酸が、一価飽和脂肪酸である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記一価飽和脂肪酸が、組成物の脂質含量の少なくとも30%である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記脂肪酸が、多価飽和脂肪酸である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記多価飽和脂肪酸が、組成物の脂質含量の少なくとも30%である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記脂肪酸が、必須脂肪酸である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記必須脂肪酸が、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸またはドコヘキサエン(docohexaenoic)酸から成る群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記必須脂肪酸が、リノール酸である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記必須脂肪酸が、リノレン酸である、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記必須脂肪酸が、オレイン酸である、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記脂質系担体が、油である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記油が、植物油である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記植物油が、アーモンドオイル、ラッカセイ油、菜種油、肝油、コーンオイル、綿実油、アマニ油、ブドウ種子油、ピーナッツ油、サフラワー油、ゴマ油、大豆油、ひまわり油またはクルミ油から成る群から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記油が、ゴマ油である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記植物油が、少なくとも1つのポリアルキレンポリオールを含む、請求項16または17に記載の組成物。
【請求項20】
前記ポリアルキレンポリオールが、ポリオキシエチル化杏仁油、ポリオキシエチル化コーンオイルまたはポリエチル化水素化ココナッツから成る群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記脂質系担体が、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリド、カピル酸(capylic)/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸の脂肪酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/コハク酸の脂肪酸トリグリセリド、ステアラルコニウムベノナイト(benonite)とプロピレンカーボネートを加えたカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ステアラルコニウムヘクトライトとプロピレンカーボネートを加えたカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドから成る群から選択される、脂肪酸の少なくとも1つまたはその組合せを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記脂質系担体が、ココグリセリドまたはココトリグリセリドの少なくとも1つまたはその組合せを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記脂質系担体が、ミリスチン酸トリグリセリドを含むまたはこれから成る、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記脂質系担体が、パルミチン酸トリグリセリドを含むまたはこれから成る、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記脂質系担体が、ステアリン酸トリグリセリドを含むまたはこれから成る、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記脂質系担体が、トリグリセリドとポリアルキレンポリオールの組合せを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記ポリアルキレンポリオールが、ポリオキシエチル化杏仁油、ポリオキシエチル化コーンオイルまたはポリオキシエチル化ココナッツオイルから成る群から選択される、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記脂質系担体が、プロピレングリコール脂肪酸を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記プロピレングリコール脂肪酸が、モノエステルである、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記モノエステルが、モノラウリン酸プロピレングリコールまたはモノミリスチン酸プロピレングリコールである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記モノエステルが、モノラウリン酸プロピレングリコールである、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記プロピレングリコール脂肪酸が、ジエステルである、請求項28に記載の組成物。
【請求項33】
前記ジエステルが、ジカプリル酸/ジカプリン酸、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールおよびジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールから成る群から選択される、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記可溶化剤が、エタノール、ベンジルアルコール、グリセロール、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、クレマフォール、ポリソルベート(Tween80)、またはこれらの組合せから成る群から選択される、請求項1から33のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
前記可溶化剤が、エタノールおよび/またはベンジルアルコールである、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
テストステロン、ゴマ油、ラウログリコール、エタノールおよびベンジルアルコールを含む、請求項1から35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
2.5〜7.5%w/wのテストステロン、
少なくとも40%w/wのゴマ油、
少なくとも30%w/wのラウログリコール、
少なくとも5%w/wのエタノールおよび、
少なくとも15%w/wのベンジルアルコール
から実質的に成る、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
表2に記載したように、テストステロン、ゴマ油、ラウログリコール、エタノールおよびベンジルアルコールから成る、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
テストステロン補充療法における、請求項1から38のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項40】
テストステロン療法が、男性の性腺機能低下症の治療である、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
請求項1から38のいずれかに記載の組成物の有効量をテストステロン補充を必要とする患者に投与することを含み、組成物は、テストステロンを生理的に補充するためにテストステロンの日周性分泌に従って投与される、テストステロンまたはテストステロンの官能性変異体の補充療法が有益と思われる状態を治療する方法。
【請求項42】
前記官能性変異体が、プロピオン酸テストステロン、エナント酸テストステロン、シピオン酸テストステロン、ウンデカン酸テストステロン、テストステロンブシシエート(buciciate)、メチルテストステロン、フルオキシメステロンまたはメステロロンから成る群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記組成物が、睡眠前に投与される、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
前記組成物が、好ましくは、20時から24時の間に投与される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
テストステロン補充療法が、男性の性腺機能低下症の治療である、請求項41から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
ステロイド、
脂質系担体であり、長さが少なくとも炭素原子10個のトリグリセライド脂肪酸を少なくとも1つと、組成物中のステロイドホルモンの溶解性を高める少なくとも1つの作用剤とを含む脂質系担体
を含む、ステロイドの経口送達に適合した医薬組成物。
【請求項47】
前記ステロイドホルモンが、エストロゲンである、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記エストロゲンが、エストラジオール、エストリオールおよびエストロンから成る群から選択される、請求項47に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−519846(P2011−519846A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506766(P2011−506766)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001068
【国際公開番号】WO2009/133352
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(510285724)ダイアーナル リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】DIURNAL LIMITED
【Fターム(参考)】