説明

脊椎動物の被験体におけるサルモネラ種細菌感染症の治療または予防のためのワクチンおよび方法

サルモネラ・エンテリカは、世界中で深刻な病的状態および死亡の原因となっている。ヒトにおいて病気を引き起こすサルモネラ・エンテリカの血清型は、チフス菌、パラチフスA菌およびパラチフスB菌、およびネズミチフス菌である。本発明では、サルモネラ種感染症の予防および治療のための、単離サルモネラ種細胞培養上清を有するワクチン組成物が提供される。培養上清は、サルモネラ種細胞を低リン酸および低マグネシウム培地(LPM)中でインキュベートすることによって、サルモネラ病原性島2(SPI−2)誘導条件下で産生される。ワクチン組成物を投与することによって被験体におけるサルモネラ種の定着および排菌を低下させる方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願への相互参照
本願は、米国特許法のもと2006年8月31日に出願された米国仮特許出願第60/841,213号(題名「サルモネラ・エンテリカ由来の分泌タンパク質」)からの優先権を主張し、米国仮特許出願第60/841,213号はその全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
分野
本発明は、脊椎動物の被験体におけるグラム陰性細菌感染症、例えばサルモネラ種細菌感染症の治療または予防のためのワクチンおよび方法に関する。細菌の定着および/または感染を低下または排除するのに効果的な量で、脊椎動物の被験体に細菌性物質を投与するための方法が提供される。鳥類種または哺乳動物種におけるサルモネラ種感染症の治療または予防のための方法が提供される。
【背景技術】
【0003】
サルモネラ・エンテリカは、世界中で深刻な病的状態および死亡の原因となっている。ヒトにおいて病気を引き起こすサルモネラ・エンテリカの血清型は、チフス菌、パラチフスA菌およびパラチフスB菌、およびネズミチフス菌である。チフス菌およびパラチフス菌血清型が厳密なヒト病原菌であり腸チフスを引き起こす一方で、非チフス型サルモネラ・エンテリカ亜種であるネズミチフス菌は、主にヒトの胃腸炎を引き起こす。しかし、重要なことには、ネズミチフス菌は厳密なヒト病原菌ではなく、多くの動物種に対する感染能を有し、動物からヒトへの伝播がよく見られ、広く認知された問題となっている。異種間感染は通常、農産物、例えば鶏肉の汚染に起因する。これらの微生物は、蓄牛に見られる胃腸炎など、農業における深刻な病気の原因にもなりうる。
【0004】
家禽および豚に使用するための数種のサルモネラワクチンが開発されている。単一および2つの遺伝子改変(またはノックアウト)弱毒化サルモネラワクチンを中心に、取り組みが続けられている。排除の標的となる遺伝子(1つ以上)は通常、SPI−1およびSPI−2または芳香族アミノ酸生合成経路である。
【0005】
代謝機能または重要な毒力因子に影響を与える変異の同定によって、多くのネズミチフス菌ベースの生ワクチンが開発されている。非特許文献1。
【0006】
代謝的に弱毒化される最も一般的な株は、ピリミジン(aroA、aroC、aroD)、プリン(purA)などの芳香族アミノ酸の生合成、アデニル酸シクラーゼ(cya)もしくはサイクリックAMP(crp)の産生、二成分制御系phoP/phoQ、または前述のように、サルモネラ病原性島2が欠損した変異体である。非特許文献2。
【0007】
現在では、多くのワクチンが、病原性を低下させるためにサルモネラ病原性島(SPI−1)の遺伝子改変による弱毒化を利用している。非特許文献3、非特許文献4。
【0008】
本明細書で説明される、分泌タンパク質の上清を利用するものと同様のテクニックの開発は、大腸菌および蓄牛を利用することにより成功している。大腸菌O157:H7によって分泌されるタンパク質での蓄牛へのワクチン接種によって、排出された細菌の数、菌を排出した動物の数、および排菌の期間が有意に低下した。非特許文献5。これらのタンパク質は、III型分泌系によっても分泌され、ウシ以外の宿主の定着に関与する。非特許文献6。このタンパク質または物質を利用することで、生ワクチンまたは弱毒化ワクチンと比較して、確実にワクチンの病原性を制限することができる。非特許文献7。微生物を利用する弱毒化ワクチンは、有毒状態に戻る能力を持っている。非特許文献8。
【0009】
微生物をワクチン接種するのにタンパク質を利用すると、競合的排除効果が低下する。生菌ワクチンの使用によって定着の阻害がもたらされ、使用した防御細菌がその他の関連細菌による確立および定着に対して多大な抵抗性を発揮する。非特許文献9。
【0010】
これまでの研究が示すように、効果的な免疫応答の誘導にとって、in vivoでの持続は重要な要素である。非特許文献10。消化管の定着が増強すると、保菌者による抗原の提示が、より強く、より長くなる可能性がある。そのような抗原、例えば感染に対する非体液性応答において役割を果たすものの感染前の提示は有用でありうる。
【0011】
脊椎動物の被験体、例えば鳥類種または哺乳動物種のグラム陰性細菌感染症、例えばサルモネラ種細菌感染症の治療または予防のための改良型ワクチンおよび方法が求められている。例えば、サルモネラ感染症は、胃腸炎、腸チフス、菌血症症候群、または限局性疾患として発現しうる。ヒトの病気を減少させるために、動物によるサルモネラ種の保因を防ぐことも求められている。サルモネラ種は、毒力因子を細菌細胞から宿主細胞に分泌する、2つのIII型分泌系(SPI−1)および(SPI−2)を有している。サルモネラ種の病原性島1および2(SPI−2)によってコード化されたIII型分泌系は、サルモネラ症の発病に寄与する主要な毒力因子を含む。宿主細胞内に入ると、これらの“エフェクター”は、病気のメカニズムと関連することが多い細胞プロセスを乱す。SPI−1およびSPI−2は、両方とも個別の分泌エフェクタータンパク質のセットを有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Clin.Microbiol.Rev.5(1992)328−342
【非特許文献2】Infect Immun.67(1999)1093−1099
【非特許文献3】J Infect Dis.2005 Aug 1;192(3):360−6
【非特許文献4】Infect Immun.2002 Jul;70(7):3457−67
【非特許文献5】Vaccine22(2004)362−369
【非特許文献6】Can J.Microbiol.1999;45(4):279−86
【非特許文献7】Epidemiol Infect.2005 Dec;133(6):959−78
【非特許文献8】I Methods 38(2006)133−143
【非特許文献9】Int J Food Microbiol.1999 Aug 1;49(1−2):35−42
【非特許文献10】Infect Immun.68(2000)2135−2141
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、単離サルモネラ種細胞培養上清を特徴とする。本発明は、全般的には、脊椎動物の被験体における、グラム陰性細菌感染症および保菌、例えばサルモネラ種細菌感染症およびサルモネラ種保菌の予防または治療のためのワクチンおよび方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様において、本発明は、効果的な免疫量の単離サルモネラ種細胞培養上清および薬学的に許容される担体を有するワクチン組成物を提供し、該ワクチン組成物は、脊椎動物の被験体においてグラム陰性細菌感染症の低減または排除に効果的である。いくつかの態様において、感染症はサルモネラ種感染症である。他の態様において、組成物は、サルモネラ種保菌の低減または排除にさらに効果的である。いくつかの態様において、組成物は、保菌および細菌感染症両方の低減または排除に効果的である。いくつかの態様において、サルモネラ種細胞培養上清は、SPI−2誘導条件下で、低リン酸、低マグネシウム培地(LPM)が添加された最少培地を有する培地中で細胞培養物をインキュベートするプロセスによって産生され、LPM培地の組成は、5mM KCl、7.5mM(NHSO、0.5mM KSO、38mMグリセロール(0.3%v/v)、0.1%カザミノ酸、8μM MgCl、337μM PO3−、80mM 2‐[N‐モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)、pH5.8である。他の態様において、LPM培地の組成は、5mM KCl、7.5mM(NHSO、0.5mM KSO、38mMグリセロール(0.3%v/v)、0.1%カザミノ酸、8μM MgCl、337μM PO3−、および100mMトリス‐HCl、pH7.0である。いくつかの態様において、脊椎動物の被験体は哺乳動物の被験体または鳥類の被験体である。いくつかのそのような態様において、鳥類の被験体は1日齢またはそれ以上である。いくつかのそのような態様において、鳥類の被験体は卵内にある。いくつかの態様において、ワクチンは免疫アジュバントを有する。いくつかの態様において、アジュバントは、水中油型乳剤、鉱物油、およびジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、またはVSA3でありうる。ある態様において、VSA3は約20%〜約40%(v/v)の濃度で組成物中に存在する。他の態様において、VSA3は、約30%(v/v)の濃度で組成物中に存在する。他の態様において、ワクチン組成物は、単離サルモネラ種細胞培養上清から選択される、1つ以上の組み換えまたは精製抗原を有する。
【0015】
別の態様において、本発明は、脊椎動物の被験体においてグラム陰性細菌感染症を予防または治療するための方法を提供し、この方法は、細菌感染症を低減または排除するのに効果的な量で、単離サルモネラ種細胞培養上清を脊椎動物の被験体に投与するステップを有する。いくつかの態様において、サルモネラ種細胞培養上清は、低リン酸、低マグネシウム培地(LPM)が添加された最小限の培地を有する培地中で細胞培養物をインキュベートするプロセスによってSPI−2誘導条件下で産生され、LPM培地の組成は5mM KCl、7.5mM(NHSO、0.5mM KSO、38mMグリセロール(0.3%v/v)、0.1%カザミノ酸、8μM MgCl、337μM PO3−、80mM 2‐[N‐モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)、pH5.8である。他の態様において、LPM培地の組成は、5mM KCl、7.5mM(NHSO、0.5mM KSO、38mMグリセロール(0.3%v/v)、0.1%カザミノ酸、8μM MgCl、337μM PO3−、100mMトリス‐HCl、pH7.0である。いくつかの態様において、感染症はサルモネラ種感染症である。いくつかの態様において、単離サルモネラ種細胞培養上清由来のタンパク質または物質はIII型分泌系に関与する。いくつかの態様において、脊椎動物の被験体は、哺乳動物の被験体または鳥類の被験体である。いくつかのそのような態様において、鳥類の被験体は1日齢またはそれ以上である。他のそのような態様において、鳥類の被験体は卵内にある。いくつかの態様において、方法は免疫アジュバントを有する。いくつかのそのような態様において、免疫アジュバントは、水中油型乳剤、鉱物油およびジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、またはVSA3を有する。ある態様において、VSA3は約20%〜約40%(v/v)の濃度で組成物中に存在する。他の態様において、VSA3は、約30%(v/v)の濃度で組成物中に存在する。他の態様において、ワクチン組成物は、単離サルモネラ種細胞培養上清から選択される1つ以上の組み換え抗原または精製抗原を有する。
【0016】
別の態様において、本発明は、脊椎動物の被験体においてサルモネラ種細菌感染症に対する免疫応答を誘導するための方法を提供し、この方法は、細菌感染症を低減または排除するのに効果的な量で、単離サルモネラ種細胞培養上清を脊椎動物の被験体に投与するステップを有する。いくつかの態様において、単離サルモネラ種細胞培養上清由来のタンパク質または物質はIII型分泌系に関与する。他の態様において、脊椎動物の被験体は哺乳動物の被験体または鳥類の被験体である。いくつかのそのような態様において、鳥類の被験体は1日齢またはそれ以上である。他のそのような態様において、鳥類の被験体は卵内にある。
【0017】
別の態様において、本発明は、脊椎動物の被験体においてサルモネラ種細菌の定着を低減するための方法を提供し、この方法は、III型分泌系に関与する、単離サルモネラ種細胞培養上清由来のタンパク質および免疫アジュバントを有する組成物を、脊椎動物の被験体におけるサルモネラ種細菌数を減少させるのに効果的な量で脊椎動物の被験体に投与するステップを有する。いくつかの態様において、脊椎動物の被験体におけるグラム陰性細菌の定着の低減は、脊椎動物の被験体からの感染の伝達のリスクを低下させるステップをさらに有する。
【0018】
別の態様において、本発明は、脊椎動物の被験体におけるサルモネラ種細菌の排菌を低減するための方法を提供し、この方法は、III型分泌系に関与する、単離サルモネラ種細胞培養上清由来のタンパク質および免疫アジュバントを有する組成物を、脊椎動物の被験体においてサルモネラ種細菌数を減少させるのに効果的な量で脊椎動物の被験体に投与するステップを有する。いくつかの態様において、脊椎動物の被験体におけるサルモネラ種細菌の排菌の低減は、脊椎動物の被験体からの感染の伝達のリスクを低下させるステップをさらに有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】SPI−2培養条件下で増殖させた発酵槽培養を使用した、分泌タンパク質のスケールアップ生産である。この図は、細胞培養上清(CCS)の濃度を示し、その後SPI−2エフェクター(SseB)でプローブしたが、これはSPI−2誘導条件のリードアウトである。“Neat”は、上清が濃縮されていないことを意味し、“conc”は上清が濃縮された(従ってより多くのSseBが存在する)ことを意味する。上清はフラスコまたは発酵槽のいずれかで培養された。
【図2】SPI−2III型分泌活性が欠如した△ssaRsp変異体である。この図は、1つは野生型(SL1344)由来のもの、もう1つはSPI−2変異体(ssaR)由来のもの2種類の上清から得たCCSプロファイルを示す。両上清は、本明細書で説明されるようなSPI−2誘導に有利な条件下で作製された後、SseBに対する抗体でプローブされた。予想通り、SPI−2変異体は上清中にSseBを含まないが、それでもこの製剤(Vacc2)はマウスにおいて良好な防御をもたらした。このことは、SPI−2誘導条件下で培養されたが、SPI−2エフェクターを欠く上清、例えばSseBが、なおワクチンにおいて機能することを示し、従って、CCSワクチン組成物中の防御源としてSPI−2分泌タンパク質は除外される(後述の実施例1も参照されたい)。
【図3】分泌タンパク質の、再現性のある発酵槽スケール生産である。この図は、上清の発酵槽でのランによって、再現性が高い状態で上清が過剰生産されうることを示す。
【図4】ワクチン接種後のマウスの盲腸は、病理学的萎縮からの保護を示しており、4つのサンプルについて、プラスとマイナスの平均誤差を示している。この図は、非常に良好なワクチンの“有効性”を示す。サルモネラ感染症が強力な場合、盲腸が縮小し罹患しているため、その重量は軽い。盲腸の重量が重いということは、より健康的な転帰を意味している。マウスに4つの異なるワクチンを接種した後、全てのマウスに対して経口的にサルモネラによるチャレンジを行った。生理食塩水および生理食塩水/アジュバントの両者では、活動性感染および高感染が見られたため、盲腸の重量は軽かった(すなわち、防御なし)。野生型またはSPI−2変異体(ssaR)由来の上清を含有するワクチンが良好な防御効果をもたらしたため、盲腸の重量は正常であった。
【図5】ワクチン接種後のマウスの盲腸は、病理学的萎縮からの保護を示しており、有意な統計値が示されている。各点は単一の動物を表す。図4と同様である。
【図6】全身の細菌負荷は、ワクチン接種後のマウス(脾臓)で有意に減少する。サルモネラ疾患の別のリードアウトは、脾臓中のサルモネラの数である(感染マウスの脾臓を摘出し、すりつぶし、プレーティングして、カウントする)。数が多いほど病気は重篤である。この図は、生理食塩水およびアジュバント添加生理食塩水の両者ともに、脾臓中のサルモネラの数に対する防御能を有さないが、WTおよびSPI−2変異体のCCS(ともにアジュバント添加)が、脾臓中のサルモネラの数を約3〜4log減少させることを示している(すなわち、強力な防御)。
【図7】全身の細菌負荷は、ワクチン接種後のマウス(肝臓)において有意に減少する。この図は、図6に示した脾臓のデータと類似している。肝臓での数値は多くの場合脾臓での数値と類似する。
【図8】ワクチン接種後のマウスは、盲腸内の細菌負荷の約5logの減少を示している。この図は、盲腸の数値を示していることを除いて(盲腸は小腸内にある)、図6および図7と類似している。小腸内における劇的な細菌数の有意な減少が示されており、ワクチンが排菌を減少させるであろうことを示唆している。
【図9】サルモネラ・エンテリカ血清型のネズミチフス菌による感染後の、ワクチン接種後マウスおよび対照マウスにおける病理学的スコアである。病気の等級付けのための病理学的スコアリングシステムを用いた。それぞれのマウスがスコアを与えられた(それぞれのワクチンに対して4匹のマウス)。図9は、WTおよびSPI−2由来のCCSでは、チャレンジ後の病理学的変化がはるかに少ない(すなわち病気が少ない)ことを示す。
【図10】サルモネラ・エンテリカ血清型のネズミチフス菌による感染後の、ワクチン接種マウスおよび対照マウスにおける病理学的スコアの平均値である。この図は、図9の病理学的スコアの平均を示す。
【図11】ネズミチフス菌による感染後の、盲腸(A)およびその他の臓器(B)の定着である。SPI−1およびSPI−2誘導条件下で培養された細菌由来の上清で、ニワトリのワクチン接種を行った。SPI−2条件は、UBC(フラスコ培養)またはNRC(発酵槽培養)のものである。この図は、SPI−2誘導条件で培養されたCCSが、ニワトリでの定着を減少させるものの、SPI−1誘導条件で培養されたCCSはその性質を示さないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、一般的に、脊椎動物の被験体における、グラム陰性細菌感染症および保菌、例えばサルモネラ種細菌感染症およびサルモネラ種保菌の予防または治療のためのワクチンおよび方法に関する。鳥類種または哺乳動物種におけるサルモネラ種感染症または保因の治療または予防のための方法が提供される。この方法は、III型分泌系に関与するタンパク質または物質を、グラム陰性細菌感染症または保菌(例、サルモネラ種細菌感染症もしくは保菌または両方)を低減または排除するのに効果的な量で脊椎動物の被験体に投与するステップを提供する。
【0021】
グラム陰性細菌、例えばサルモネラ種細菌の、鳥類種における定着を低減するためのワクチン組成物および方法が提供され、この方法は、III型分泌系に関与する単離サルモネラ種細胞培養上清またはサルモネラ種細胞培養上清タンパク質もしくは物質と、免疫アジュバントを有する組成物を、鳥類種におけるグラム陰性細菌数(例えばサルモネラ種細菌数)を減少させるのに効果的な量で鳥類種に投与するステップを有する。この方法は、鳥類(またはウシ)種からヒトへの感染の伝達のリスクを低下させるステップをさらに有する。
【0022】
本明細書で用いられる場合、用語、サルモネラ種“細胞培養上清”またはサルモネラ種“CCS”は、1つ以上のサルモネラ種血清型の細胞培養物から得られる上清を意味し、この上清は、サルモネラ種細菌細胞またはそのような細胞のライセートを実質的に含まず、成長培地中に分泌されたサルモネラ種抗原のミクスチャーを含有する。一般に、サルモネラ種“CCS”は、少なくともサルモネラ種感染症の原因となる抗原、およびその断片または凝集体を含有することになる。本発明のCCSは、その他の分泌タンパク質または物質も含みうる。サルモネラ種疾患が縮小または予防される、および/またはサルモネラ種の定着が縮小または抑制されるように、宿主被験体においてCCSが免疫応答を刺激する機能を持ち続ける限りは、タンパク質は、天然の形態、または変性もしくは分解した形態で存在することができる。いくつかの例では、CCSには、その他の分泌タンパク質のいずれかだけでなく、追加の組み換えまたは精製分泌抗原が添加されてよい。
【0023】
本発明が、特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生物系に限定されるものではなく、当然のことながら、変更されうることが理解されるものである。本明細書で用いられる専門用語が、特定の態様を説明するためのものにすぎず、限定することを目的としていないことも理解されるものである。本明細書および添付の請求項で使用される場合、単数形“ある”および“その”は、文脈による別段の指示がない限りは複数の指示対象を含む。故に、例えば“あるサルモネラ種細菌”への言及は、2つ以上のそのような細菌のミクスチャーなどを含む。
【0024】
量、期間など測定可能な数値を言及する際に本明細書で用いられる場合の用語“約”は、規定値から±20%または±10%の変動、より好ましくは±5%の変動、さらにより好ましくは±1%の変動、さらにより好ましくは±0.1%の変動を包含するものであり、開示される方法を実施するのにそのような変動は適切である。
【0025】
別段の定めがない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が関連する分野の業者によって一般に理解されるものと同じ意味を持つ。本発明の試験を実施する上で、本明細書で説明されるものと類似するまたは等しいあらゆる方法および材料が使用されうるが、好ましい材料および方法が本明細書で説明される。本発明を説明し特許請求するにあたり、以下の専門用語が用いられる。
【0026】
本明細書で開示される場合に用いられる特定の略語:MPL(モノホスホリルリピドA)、TDM(トレハロースジコリノミコラート)、RIBI(Sigmaから購入可能なアジュバント)、Sm(ストレプトマイシン)、SP(分泌タンパク質)、SPI(サルモネラ病原性島)
“脊椎動物”、“哺乳動物”、“被験体”、または“患者”は互換可能に用いられ、哺乳動物、例えばヒトの患者およびヒト以外の霊長類だけでなく、実験動物、例えばウサギ、ラット、およびマウスならびにその他の動物を意味する。動物には、全ての脊椎動物、例えば哺乳動物および非哺乳動物、例えばヒツジ、イヌ、ウシ、鳥類種、カモ、ガチョウ、ニワトリ、両生類、および爬虫類が含まれる。
【0027】
“鳥類”および“鳥類の被験体”は、あらゆる鳥類種の雄および雌を意味するが、卵、肉を目的として、またはペットとして商業的に飼育された家禽を主に包含することを目的としている。従って、用語“鳥類”および“鳥類の被験体”は特に、ニワトリ、シチメンチョウ、カモ、ガチョウ、ウズラ、キジ、インコ、オウムなどを包含することを目的としている。鳥類の被験体は孵化後の鳥であってよく、この用語は新しく孵化したもの(すなわち孵化後の最初の約3日間)だけでなく孵化後しばらく経過した鳥、例えば幼鳥および成鳥を包含する。鳥類の被験体は、孵化前すなわち卵内にあってもよい。
【0028】
本明細書で用いられる場合、“ワクチン”は、サルモネラ種抗原、例えばIII型分泌サルモネラ種抗原に対する免疫応答を刺激するように働くCCS組成物を意味する。免疫応答は、サルモネラ種感染症に対して、またはサルモネラ種の定着および排菌に対して完全な防御および/または治療を提供する必要はない。たとえ、サルモネラ種細菌の定着および排菌に対する部分的な防御であっても、排菌および汚染された肉の生産が減少することから、本明細書にその利用が見出される。一部の例では、免疫応答を増強するために、ワクチンは免疫アジュバントを含む。用語“アジュバント”は、特定の抗原または抗原の組み合わせに対する免疫応答を高めることにより、目的とする抗原に対する十分な免疫応答を生じさせるために、ある任意のワクチン中に必要な抗原の量、および/または必要な注射の頻度を減らすために、非特異的な方式で作用する物質を意味する。例えば、A.C.Allison J.Reticuloendothel.Soc.(1979)26:619‐630を参照されたい。そのようなアジュバントは下記でさらに説明する。
【0029】
本明細書で用いられる場合、“定着”は、反すう動物などの哺乳動物の腸管内に、グラム陰性細菌、例えばサルモネラ種が存在することを意味する。
【0030】
本明細書で用いられる場合、“排菌”は、グラム陰性細菌、例えばサルモネラ種が糞便中に存在することを意味する。
【0031】
“保菌”は、被験体を病気に罹患させることなく、サルモネラ種などの細菌が正常な被験体中で成長しうるプロセスである。保菌は、環境、宿主、および病原体の非常に複雑な相互作用である。疾患と対比した無症状の保因に各種の因子が影響を与える。従って、本発明の態様は、含む。
【0032】
“治療する”または“治療”は、(i)感染または再感染の阻止、例えば予防、または(ii)目的とする疾患の症状の緩和または排除、例えば治療、のいずれかを意味する。“治療する”または“治療”は、III型分泌系に関与するタンパク質抗原(例えばサルモネラ種CCSタンパク質)を有するワクチン組成物の投与を意味しうる。鳥類種または哺乳動物種をこのワクチン組成物で治療することにより、ヒトへの感染リスクの予防または低下が可能である。治療は、予防的(病気の発症を防ぐもしくは遅らせる、またはその臨床もしくは亜臨床的な症状の発現を防ぐため)または病気が発現した後での症状の治療的抑制または緩和であってよい。“治療する”または“治療”は、サルモネラ種細菌感染症または保菌に起因する、病気の症状、合併症、または生化学的徴候の発現を防ぎ、または遅らせるための、本発明の抗体組成物、化合物もしくは物質、ペプチド、ペプチド模倣薬、低分子化学インヒビターRNA、低分子ヘアピン型RNA、リボザイム、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与も意味し、これによって、症状を緩和する、または病気、症状、または疾患(例、サルモネラ種細菌感染症または保菌)のさらなる進行を止めるまたは抑制する。
【0033】
“予防する”または“予防”は、抗原製剤、例えばIII型分泌系に関与するタンパク質(例えば、サルモネラ種CCSタンパク質)を有する抗原の予防的な投与またはワクチン接種を意味する。グラム陰性細菌、例えばサルモネラ種による感染症を予防することは、鳥類種または哺乳動物種の定着を防ぐことを意味する。病的状態または死亡は、鳥類種または哺乳動物種の感染症または定着に起因しうる。“予防する”または”予防“は、脊椎動物の被験体においてサルモネラ種細菌感染症を防ぐまたはそのレベルを有意に低下させるための、サルモネラ種細菌へ脊椎動物の被験体がさらされる前の、本発明の抗体組成物、化合物もしくは物質、ペプチド、ペプチド模倣薬、低分子化学インヒビターRNA、低分子ヘアピン型RNA、リボザイム、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドも意味しうる。
【0034】
“治療有効量”または“細菌感染症を低減または排除するのに効果的な量”は、グラム陰性細菌感染症を防ぐのに、またはサルモネラ種細菌感染症に関連する症状の少なくとも1つを緩和する(和らげる、減少させる、低減する)のに十分な、サルモネラ種CCSタンパク質のアンタゴニストの量を意味する。化合物の投与による利点が不利益を上回る限り、化合物の投与がサルモネラ種細菌感染症の症状を排除する必要はない。同様に、本明細書で用いられる場合の、サルモネラ種細菌感染症に関する用語“治療する”および“治療すること”は、鳥類の被験体が必ず治癒すること、またはその全ての臨床的徴候が排除されることを意味することを目的とせず、III型分泌系に関与するタンパク質または物質のアンタゴニストの投与によって、鳥類の被験体の症状のある程度の緩和または改善が達成されることを意味するにすぎない。
【0035】
“III型分泌系に関与するタンパク質または物質”は、III型分泌系に関与するタンパク質または物質、例えばサルモネラ種CCSタンパク質を意味する。
【0036】
“細菌のサルモネラ種CCSタンパク質または物質によって調節されるIII型分泌系に関与するタンパク質”は、サルモネラ種CCSタンパク質または物質の調節ターゲットであるタンパク質を意味する。
【0037】
“防御免疫”または“防御免疫応答”は、宿主の哺乳動物または宿主の鳥が細菌の鞭毛の抗原成分に対して能動性免疫応答を開始することで、それ以後のグラム陰性細菌への曝露または細菌でのチャレンジの際に、その哺乳動物または鳥が感染と闘えるようになることを意味することを目的とする。故に、防御免疫応答は、宿主の哺乳動物または宿主の鳥における、それ以後のグラム陰性細菌への曝露による病的状態および死亡の発生率を低下させる。
【0038】
防御免疫応答は、宿主の鳥におけるグラム陰性細菌による定着も減少させる。このようにして、鳥類種から哺乳動物種への感染性グラム陰性細菌の伝播は減少し、制御される。当業者は、商業用の家禽の場合、群れ全体に対するワクチン接種の効果を評価することによって、防御免疫応答の発生が判定されうること、例えば、ワクチン接種後の個々の鳥においては病的状態および死亡が発生しうることを理解するであろう。
【0039】
“能動的免疫応答”は、ある抗原に対する、被験体の免疫原性の応答を意味する。特に、この用語は、その防御が部分的なものであるか完全なものであるかにかかわらず、死亡率の低下、病変の減少、飼料要求率の改善、または病気のその他のあらゆる有害な影響の低下などの形態のいずれを問わず、被験体の集団においてはある程度の利点である、グラム陰性細菌または細菌抗原へのその後の曝露からのあらゆるレベルの防御を意味することを目的としている。“能動的免疫応答”または“能動免疫”は、“免疫原と遭遇した後の宿主組織および細胞の参加であり、リンパ細網組織内での免疫担当細胞の分化および増殖を伴い、これにより抗体の合成もしくは細胞媒介反応性の発達、または両方がもたらされること”によって特徴付けられる。Herbert B.Herscowitz,“Immunophysiology:cell Function and Cellular Interactions in Antibody Formation,”in Immunology:Basic Processes 117(Joseph A.Bellanti ed.,1985).換言すると、能動的免疫応答は、感染による免疫原への曝露後に、またはこの場合はワクチン接種によって、宿主によって開始される。能動免疫は、“能動的に免疫付与された宿主から、免疫のない宿主への合成された物質(抗体、伝達因子、胸腺移植片、インターロイキン‐2)の伝達によって獲得される受動免疫と対比されうる。(同文献)。
【0040】
細胞中のIII型分泌系の“インヒビター”、“アクチベーター”、および“モジュレーター”はそれぞれ、III型分泌系のin vitroおよびin vivoアッセイを使用して同定される、阻害分子、活性化分子、または調節分子を意味するために用いられ、例えばリガンド、アゴニスト、アンタゴニスト、およびそれらのホモログおよび模倣薬がある。
【0041】
“モジュレーター”は、インヒビターおよびアクチベーターを含む。インヒビターは、例えば、部分的または完全に、III型分泌系に関与する細菌性タンパク質について、刺激をブロックする、低下させる、防ぐ、活性化を遅らせる、不活化する、脱感作する、または抑制するために結合する物質、例えばアンタゴニストである。アクチベーターは、III型分泌系に関与するタンパク質の活性を刺激する、高める、開く、活性化する、促進する、活性化を増強する、感作する、またはアップレギュレートするために結合する物質、例えばアゴニストである。モジュレーターは、例えばIII型分泌系に関与するタンパク質の相互作用を変化させる物質を含む。つまり、アクチベーターまたはインヒビター、レセプターに結合するタンパク質であり、これにはタンパク質、ペプチド、脂質、炭水化物、多糖、または上記の組み合わせ、例えばリポタンパク質、糖タンパク質などが含まれる。モジュレーターは、例えば、活性が変化した、III型分泌系に関与する天然タンパク質の遺伝的改変形態だけでなく、天然および合成のリガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、小化学分子などを含む。インヒビターおよびアクチベーター用の“細胞ベースアッセイ”は、本明細書で説明するように、例えば、推定モジュレーター化合物を、サルモネラ種CCSタンパク質または物質を発現する細胞に適用した後、III型分泌系に対する機能的効果を判定するステップを含む。“細胞ベースアッセイ”は、哺乳動物の被験体由来のin vivo組織または細胞サンプル、または、阻害の程度を試験するために、インヒビター、アクチベーター、もしくはモジュレーターなしの対照サンプルと比較される、潜在的なアクチベーター、インヒビター、もしくはモジュレーターで処理されたIII型分泌系に関与するタンパク質を有するin vitro細胞ベースアッセイを含むがこれらに限定されない。対照サンプル(インヒビターで処理されていない)には、100%の相対細菌III型分泌活性値が与えられる。対照と比較してIII型活性値が約80%、場合により50%または25〜0%のときにIII型分泌系の阻害が達成される。対照と比較してIII型活性値が110%、場合により150%、場合により200〜500%、または1000〜3000%より高いときにIII型分泌系の活性化が達成される。
【0042】
ある分子がIII型分泌系に関与するタンパク質に結合する能力は、例えば、推定リガンドがアッセイプレート上にコーティングされたイムノアドヘジン(III型分泌系に関与するタンパク質に対する抗体)に結合する能力によって判定されうる。結合の特異性は、III型分泌系に関与しないタンパク質への結合と比較することで判定されうる。
【0043】
“試験化合物”は、III型分泌系に関与するタンパク質のモジュレーターとして試験される任意の化合物を意味する。試験化合物は、任意の有機小分子、または生物学的実体、例えばタンパク質、例えば抗体もしくはペプチド、糖、核酸、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi、またはリボザイム、あるいは脂質でありうる。あるいは、試験化合物は、III型分泌系に関与するタンパク質の遺伝的に改変された形態のモジュレーターでありうる。典型的には、試験化合物は有機小分子、ペプチド、脂質、または脂質アナログである。
一般的な方法
本発明の中核をなすのは、サルモネラ種分泌抗原を含有するサルモネラ種培養物から得られた細胞培養上清が、それらが投与された動物において免疫応答を引き起こし、それによってサルモネラ種感染症に対する防御、例えば定着に対する防御を提供することを発見したことである。ある態様において、組成物はサルモネラ種分泌抗原のミクスチャーを有する。本発明のCCSは、その他の分泌タンパク質も含みうる。他の態様において、追加の組み換えまたは精製サルモネラ種抗原がCCSに添加される。組成物は、複数のサルモネラ種微生物(例えば、サルモネラ・エンテリティディス、ネズミチフス菌、およびチフス菌を含むサルモネラ・エンテリカ血清型)に対する防御を提供するために、2つ以上のサルモネラの血清型由来の、細胞培養上清および追加のアジュバントを含みうる。大部分の腸チフス以外のサルモネラ感染症は、サルモネラ・エンテリティディスが原因である。これらの感染症は世界中でよく見られ、依然として公衆衛生上の深刻な問題となっている。サルモネラ・エンテリティディスの多くの血清型に名称が与えられており、非公式には、実際はそうではないにもかかわらずあたかもそれらが異なる種であるかのように呼ばれている。最も一般的なサルモネラ血清型には、ネズミチフス菌、サルモネラ・エンテリティディス、およびチフス菌が含まれる。その他の血清型には、S.heidelberg、S.newport、S.javiana、S.oranienburg、S.muenchen、S.thompson、S.paratyphi B tartrate positive、S.infantis、S.braenderup、S.infantis、S.agona、S.montevideo、およびS.saintpaulが含まれる。さらに、薬学的に許容されるアジュバントが細胞培養上清とともに投与されうる。組成物は、分泌抗原の1つ以上に対する免疫応答を誘導し、それによりサルモネラ種感染症を低減または排除するのに効果的な量で投与される。いくつかの例では、動物のサルモネラ種定着が低減または排除される。好ましい態様において、動物はニワトリまたはその他の鳥である。他の好ましい態様において、動物はヒツジまたはその他の反すう動物である。他の好ましい態様において、動物はヒトである。特に好ましい態様において、細胞培養上清はサルモネラ・エンテリカの細胞培養物から得られる。
【0044】
CCSでの免疫付与は、免疫された動物の免疫系を刺激し、1つ以上の分泌サルモネラ種抗原に対する抗体を産生させ、これが腸上皮細胞へのサルモネラ種の付着をブロックし、サルモネラ種の定着を妨げ、これによって動物によるサルモネラ種の排菌を減少させる。このサルモネラ種排菌の減少によって、食品および水のサルモネラ種汚染が減少し、またヒトにおけるサルモネラ種が原因の疾患が減少する。さらに、サルモネラ種定着および哺乳動物による排菌を防ぎ、減少させ、排除する、CCS免疫付与の予想外の驚くべき効力は、医学分野において長年満たされないままであったニーズに対処するものであり、ヒトにとって重要な利点を提供する。
【0045】
さらに、本発明のCCSは、ヒトなどその他の哺乳動物におけるサルモネラ種感染症を治療または予防するために使用されうる。ヒトに使用される場合、CCSは、毒性をノックアウトまたはノックダウンするように操作された変異型サルモネラ種から産生されうる。
【0046】
上述のように、CCSの治療有効性は、組み換えまたは精製形態の分泌抗原、その断片および/またはそのアナログの1つ以上をそれに加えることで高められうる。CCSの治療有効性を高めるその他の方法には、CCSを天然または合成の担体と混合し、別の抗サルモネラ種物質の前、同じ時期、または後にそのCCSを投与するステップが含まれるがこれに限定されない。そのような物質には、生物学的な、生物学的に操作された、化学的な、核酸ベースの、および組み換えタンパク質抗サルモネラ種物質が含まれるがこれらに限定されない。
【0047】
本明細書で使用するためのCCSは、本明細書で開示されるものを含む任意のサルモネラ種血清型の培養物から得られる。そのようなサルモネラ種血清型は、感染した動物の血清から容易に得られる。単離サルモネラ種に用いる方法は当該技術分野で周知である。さらに、CCSは、毒性をノックアウトまたはノックダウンするように遺伝的に操作されたサルモネラ種血清型から得られる。
【0048】
一般に、CCSは、III型抗原分泌に有利な条件下でサルモネラ種細菌を適当な培地中で培養することによって産生される。サルモネラ種病原性島1および2(SPI−2)でコードされたIII型分泌系は、サルモネラ症の発症に寄与する主要な毒性因子である。SPI−1およびSPI−2は両方とも、個別の分泌エフェクタータンパク質のセットを有する。サルモネラ種細菌の培養に適した培地および条件は当該技術分野で既知であり、例えばCoombes,B.K.et al.,2005,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.102:17460‐17465およびCoombes,B.K.et al.,J Biol Chem.279:49804‐49815(開示内容全体が参考として本明細書で援用される)に記載されている。
【0049】
一般に、CCSは、III型抗原分泌に有利な条件下でサルモネラ種細菌を適当な培地中で培養することによって産生される。CCS中で防御性物質を生成するのに好ましい培養条件は、SPI−2誘導条件である。サルモネラ種細菌の培養に適した培地および条件は当該技術分野で既知であり、例えばCoombes,B.K.et al.,2005,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.102:17460‐17465およびCoombes,B.K.et al.,J Biol Chem.279:49804‐49815(開示内容全体が参考として本明細書で援用される)に記載されている。SPI−2誘導条件下でサルモネラ種細菌を増殖させるのに特に好ましい方法は、低リン酸、低マグネシウム培地(LPM)、pH5.8を使用して達成される。具体的には、5mM KCl、7.5mM(NHSO、0.5mM KSO、38mMグリセロール(0.3%v/v)、0.1%カザミノ酸、8μM MgCl、337μM PO3−、80mM 2‐[N‐モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)である。別の特に好ましい方法では、LPM培地はpH7.0であり、5mM KCl、7.5mM(NHSO、0.5mM KSO、38mMグリセロール(0.3%v/v)、0.1%カザミノ酸、8μM MgCl、337μM PO3−、100mMトリス‐HCl(pH7.0に滴定するため)を有する。
【0050】
in vitro培養条件は、SPI−2遺伝子の発現および分泌を誘導するために使用された最少培地に基づいて作成された(ともに開示内容全体が参考として本明細書で援用される、Nikolaus,T.et al.,2001,J.Bacteriol.183:6036‐6045およびBeuzon,C.R.et al.,1999,Mol.Microbiol.33:806‐816を参照)。サルモネラ株はLB培養液中で一晩培養され、低リン酸、低マグネシウム含有培地(LPM)で2回洗浄された後、pH7.0または5.8のいずれかの3mlのLPM培地に1:50の希釈倍率で接種されうる。上述の通り、LPM培地の組成は、5mM KCl、7.5mM(NHSO、0.5mM KSO、38mMグリセロール(0.3%v/v)、0.1%カザミノ酸、8μM MgCl、337μM PO3−、100mMトリス‐HCl(pH7.0に滴定するため)、または80mM 2‐[N‐モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)(pH5.8に滴定するため)であってよい。培養物は、37℃で振盪しながら4〜6時間培養され、その後600nmにおける光学密度が測定されうる。細菌は12,000rpm、2分間の遠心分離(4℃)によって回収されうる。CCSは、フィルター、例えば0.22μmフィルターまたは当業者に既知のその他の適当なフィルターで濾過された後、トリクロロ酢酸(最終濃度10%、v/v)で、4℃にて4〜16時間沈殿させる。他の方法では、培養物由来の細菌が培養上清から分離され、培養上清は、例えばタンジェンシャルフロー限外濾過または当業者に既知のその他の適当な濃縮方法を使用して濃縮されうる。
組み換え核酸のテクニック
本発明を実施するために用いられる核酸は、RNA、siRNA、アンチセンス核酸、cDNA、ゲノムDNA、ベクター、ウイルス、またはこれらのハイブリッドのいずれであっても、遺伝的に操作された、増幅された、および/または組み換え発現/生成された様々な材料から単離されうる。これらの核酸から作製された組み換えポリペプチドは、個々に単離またはクローン化され、所望の活性について検査されうる。細菌、哺乳動物、酵母、昆虫、または植物細胞の発現系を含むあらゆる組み換え発現系が使用されうる。
【0051】
あるいは、これらの核酸は、例えば、Adams,J.Am.Chem.Soc.105:661,1983、Belousov,Nucleic Acids Res.25:3440‐3444,1997、Frenkel,Free Radic.Biol.Med.19:373‐380,1995、Blommers,Biochemistry 33:7886‐7896,1994、Narang,Meth.Enzymol.68:90,1979、Brown Meth.Enzymol.68:109,1979、Beaucage,Tetra.Lett.22:1859,1981、米国特許第4,458,066号に記載されているような、周知の化学合成テクニックを用いてin vitroで合成されうる。
【0052】
本発明は、本発明の配列、例えば本発明の代表的な配列の部分配列を有するオリゴヌクレオチドを提供する。オリゴヌクレオチドは、例えば、化学的に合成されうる一本鎖のポリデオキシヌクレオチドまたは2つの相補的なポリデオキシヌクレオチド鎖を含みうる。
【0053】
核酸の操作に用いられるテクニック、例えば、サブクローニング、プローブのラベリング(例、Klenowポリメラーゼ、ニックトランスレーション、増幅を使用するランダムプライマー標識)、シークエンシング、ハイブリダイゼーションなどは科学文献および特許文献に詳しく記載されており、例えば、Sambrook and Russell,ed.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL(3rd ED.),Vols.1‐3,Cold Spring Harbor Laboratory,2001、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、Ausubel,ed.John Wiley&Sons,Inc.,New York,1997、LABORATORY TECHNIQUES IN BIOCHEMISTRY AND MOLECULAR BIOLOGY:HYBRIDIZATION WITH NUCLEIC ACID PROBES,Part I. Theory and Nucleic Acid Preparation,Tijssen,ed.Elsevier,N.Y.,1993を参照されたい。
【0054】
核酸、ベクター、カプシド、ポリペプチなどは、当業者に周知の数多くの一般的な手段のいずれかを用いて解析され定量されうる。これらには、例えば、生化学的解析方法、例えばNMR、分光光度法、X線写真術、電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、およびハイパーディフュージョンクロマトグラフィー、各種の免疫学的手法、例えば液体またはゲル沈降反応、免疫拡散法、免疫電気泳動法、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫測定法(ELISA)、免疫蛍光測定法、サザン解析、ノーザン解析、ドットブロット解析、ゲル電気泳動法(例、SDS‐PAGE)、核酸または標的またはシグナル増幅法、放射性同位元素標識法、シンチレーション計数、およびアフィニティークロマトグラフィーが含まれる。
【0055】
本発明の方法を実施するために用いられる核酸の入手および操作は、ゲノムサンプルからのクローニング、および所望であれば、例えば遺伝子クローンまたはcDNAクローンから単離されたまたは増幅された挿入断片のスクリーニングおよび再クローニングによって行われてよい。本発明の方法において用いられる核酸の材料には、例えば哺乳動物の人工染色体(MAC)(例えば、米国特許第5,721,118号、第6,025,155号を参照)、ヒトの人工染色体(例えば、Rosenfeld,Nat.Genet.15:333‐335,1997参照)、酵母の人工染色体(YAC)、細菌の人工染色体(BAC)、P1人工染色体(例えば、Woon,Genomics 50:306‐316,1998を参照)、P1由来ベクター(PAC)(例えば、Kern,Biothechniques 23:120‐124,1997を参照)、コスミド、組み換えウイルス、ファージ、またはプラスミドに含まれるゲノムライブラリまたはcDNAライブラリが含まれる。
【0056】
本発明は、融合タンパク質およびそれらをコードする核酸を提供する。例えば、サルモネラ種CCSタンパク質は、異種のペプチドまたはポリペプチド、例えば、安定性が高いまたは精製が単純であるなど所望の特性を与えるN末端同定ペプチドと融合されうる。本発明のペプチドおよびポリペプチドは、組み換え合成したペプチドをより容易に単離するため、抗体および抗体発現B細胞を同定および単離するためなどを目的として、免疫原性の高いペプチドを産生するために、それと連結される1つ以上の追加ドメインとの融合タンパク質として合成され発現されることもできる。検出および精製を容易にするドメインには、例えば、固定化金属上での精製を可能にする金属キレートペプチド、例えばポリヒスチジン鎖およびヒスチジン‐トリプトファンモジュール、固定化免疫グロブリン上での精製を可能にするプロテインAドメイン、およびFLAGSエクステンション/アフィニティー精製システム(Immunex Corp,ワシントン州シアトル)において利用されるドメインが含まれる。精製を容易にするために、精製ドメインおよびモチーフを含むペプチドまたはポリペプチドの間に切断可能なリンカー配列、例えばファクターXaまたはエンテロキナーゼ(Invitrogen,カリフォルニア州サンディエゴ)を入れる。例えば、発現ベクターは、後ろにチオレドキシンおよびエンテロキナーゼ切断部位が結合した6つのヒスチジン残基と結合したエピトープコード化核酸配列を含みうる(例えば、Williams,Biochemistry 34:1787‐1797,1995、Dobeli,Protein Expr.Purif 12:404‐414,1998を参照)。ヒスチジン残基が検出および精製を容易にする一方で、エンテロキナーゼ切断部位は、融合タンパク質の残りの部分からエピトープを精製するための手段を提供する。一態様において、ポリペプチドをコードする核酸は、翻訳されたポリペプチドまたはその断片の分泌を誘導しうるリーダー配列によって適切な相において組み立てられる。融合タンパク質をコードするベクターおよび融合タンパク質の応用に関する技術は科学文献および特許文献に詳細に記載されており、例えばKroll,DNA Cell.Biol.12:441‐53,1993を参照されたい。
A.転写調節因子
本発明の態様として、核酸はプロモーターに操作可能に連結されうる。あるプロモーターは、核酸の転写を誘導する1つのモチーフまたは一連の核酸制御配列でありうる。あるプロモーターは、転写の開始部位の近くに必要な核酸配列を含むことができ、例えばポリメラーゼII型プロモーターの場合はTATA因子である。あるプロモーターは、場合により、転写開始部位から数千塩基対ほども離れた場所に位置しうる遠位部のエンハンサーまたはリプレッサー因子も含む。“構成的”プロモーターは、大部分の環境または発生条件下において活性なプロモーターである。“誘導”プロモーターは、環境または発生調節下にあるプロモーターである。“組織特異的プロモーター”は、生物の特定の種類の組織において活性であるが、同種の生物のその他の種類の組織においては活性でない。用語“操作可能に連結される”は、核酸発現制御配列(例えばプロモーター、または一連の転写因子結合部位)と第2の核酸配列の間の機能的結合を意味し、発現制御配列は、第2の配列に対応する核酸の転写を誘導する。
B.発現ベクターおよびクローニング媒体
本発明の態様は、本発明の核酸、例えば本発明のタンパク質をコードする配列を有する発現ベクターおよびクローニング媒体を提供する。発現ベクターおよびクローニング媒体は、ウイルス粒子、バキュロウイルス、ファージ、プラスミド、ファージミド、コスミド、フォスミド、細菌の人工染色体、ウイルスDNA(例、ワクチニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、SV40の誘導体)、P1系の人工染色体、酵母プラスミド、酵母の人工染色体、および目的とする特定の宿主に特異的なその他任意のベクター(例えば桿菌、アスペルギルス、および酵母)を含みうる。ベクターは、染色体DNA配列、非染色体DNA配列、および合成DNA配列を含みうる。多数の適当なベクターが当業者に既知であり、購入可能である。
【0057】
本発明の核酸は、所望であれば、ルーチンの分子生物学的手法を使用して様々なベクターのいずれかにクローニングされ、in vitroで増幅された核酸をクローニングするための方法は、例えば、米国特許第5426039号に記載されている。増幅された配列のクローニングを容易にするために、制限酵素部位がPCRのプライマーペアに“組み込まれ”うる。
【0058】
本発明は、本発明のポリペプチドおよびペプチドをコードする発現ベクターのライブラリを提供する。これらの核酸は、ゲノム内または細胞の細胞質内または核内に導入され、科学文献および特許文献に詳細に記載されている様々な従来の技術を用いて発現されうる。例えば、Roberts,Nature 328:731,1987、Schneider,Protein Expr.Purif.6435:10,1995、Sambrook,Tijssen or Ausubelを参照されたい。ベクターは、ATCCまたはGenBankライブラリなどのソースから得られる天然の材料から単離されうる、または合成もしくは組み換え法によって作製されうる。例えば、本発明の核酸は、細胞内で安定的にまたは一時的に発現される、発現カセット、ベクター、またはウイルス内で発現されうる(例、エピソーム発現系)。選択マーカーは、形質転換細胞および配列に選択可能な表現型を与えるために発現カセットおよびベクター内部に組み込まれうる。例えば、選択マーカーはエピソーム状態の維持と複製をコードすることができ、宿主のゲノム内への組み込みが不要となる。
【0059】
一態様において、本発明の核酸は、本発明のペプチドまたはポリペプチドのin situ発現のためにin vivoで投与される。核酸は、“裸DNA”として(例えば、米国特許第5,580,859号参照)、または発現ベクターの形態、例えば組み換えウイルスとして投与されうる。核酸は、後述のように腫瘍周辺または腫瘍内部を含む、任意の経路で投与されうる。in vivoで投与されるベクターは、好ましくはバキュロウイルス科、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科、アデノウイルス科、またはピコルナウイルスから選択される、組み換え改変されたエンベロープを持つまたはエンベロープを持たないDNAおよびRNAウイルスを含むウイルスゲノムから得られる。親ベクターの特性のそれぞれの利点を活用するキメラベクターも使用されうる(例えば、Feng,Nature Biotechnology 15:866‐870,1997参照)。そのようなウイルスゲノムは、組み換えDNA技術によって本発明の核酸を含むように改変され、複製しないように、条件付きで複製可能なように、または複製可能となるようにさらに操作されうる。別の態様において、ベクターは、アデノウイルスゲノム(例、ヒトアデノウイルスゲノムから得られた複製能力のないベクター、例えば米国特許第6,096,718号、第6,110,458号、第6,113,913号、第5,631,236号を参照)、アデノ随伴ウイルスゲノム、およびレトロウイルスゲノムから得られる。レトロウイルスベクターは、ネズミ白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびこれらの組み合わせに基づくものを含みうる。例えば、米国特許第6,117,681号、第6,107,478号、第5,658,775号、第5,449,614号、Buchscher,J.Virol.66:2731‐2739,1992、Johann,J.Virol.66:1635‐1640,1992を参照されたい。アデノ随伴ウイルス(AAV)系のベクターが、標的核酸を持つ細胞を放射性免疫付与するために、例えば核酸およびペプチドのin vitro産生において、in vivoおよびex vivo遺伝子治療手技において使用されうる。例えば、米国特許第6,110,456号、第5,474,935号、Okada,Gene Ther.3:957‐964,1996を参照されたい。
【0060】
本明細書で用いられる場合の“発現カセット”は、そのような配列に適合する宿主において、構造遺伝子の発現に影響を与えうるヌクレオチド配列(すなわち、タンパク質をコードする配列、例えば本発明のポリペプチド)を意味する。発現カセットは、ポリペプチドをコードする配列と、および場合によりその他の配列、例えば転写終結シグナルと操作可能に連結されたプロモーターを少なくとも含む。発現をもたらすのに必要なまたは有用なさらなる因子も使用されてよく、例えばエンハンサーである。
【0061】
ある核酸は、それが別の核酸配列と機能的関係におかれるとき“操作可能に連結される”。例えば、あるプロモーターまたはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を与えるのであればコード配列に操作可能に連結される。転写調節配列に関しては、操作可能に連結される、は、連結しているDNA配列が隣接していること、またタンパク質をコードする2つの領域を連結する必要がある場合は、隣接していてリーディングフレーム内にあることを意味する。スイッチ配列では、操作可能に連結される、は、配列がスイッチ組み換えを行う能力を持つことを示す。故に、発現カセットはプラスミド、発現ベクター、組み換えウイルス、任意の形態の組み換え“裸DNA”ベクターなども含む。
【0062】
“ベクター”は、それが連結された別の核酸を運ぶ能力を持つ核酸分子を意味することを目的としている。ベクターの種類の1つは“プラスミド”であり、その内部にさらなるDNAセグメントがライゲーションされうる環状の二本鎖DNAループを意味する。別の種類のベクターはウイルスベクターであり、さらなるDNAセグメントはウイルスゲノム内にライゲーションされる。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞内において自己複製することができる(例、細菌性複製開始点を持つ細菌ベクターおよび哺乳動物エピソームベクター)。その他のベクター(例、哺乳動物非エピソームベクター)は、宿主細胞へ導入される際に宿主細胞のゲノム内に組み込まれ、これによって宿主ゲノムと一緒に複製されうる。さらに、特定のベクターは、それらが操作可能に連結される遺伝子の発現を誘導することができる。そのようなベクターは本明細書では“組み換え発現ベクター”(または単に“発現ベクター)と呼ぶ。一般に、組み換えDNA技術において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。プラスミドは最も汎用されるベクターの形態であることから、本明細書では“プラスミド”および“ベクター”は互換可能に用いられる。しかし、本発明は、ウイルスベクター(例、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)のような、等しく機能するその他の形態の発現ベクターを含むことを目的とする。
C.宿主細胞および形質転換細胞
本発明は、本発明の核酸配列、例えば本発明のポリペプチドをコードする配列、または本発明のベクターを有する形質転換細胞も提供する。宿主細胞は、当業者に既知の宿主細胞のいずれであってもよく、原核細胞、真核細胞、例えば細菌細胞、真菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、または植物細胞が含まれる。典型的な細菌細胞には、大腸菌、ストレプトマイセス、枯草菌、ネズミチフス菌、およびシュードモナス属、ストレプマイセス属、およびスタフィロコッカス属に含まれる様々な種が含まれる。典型的な昆虫細胞には、Drosophila S2およびSpodoptera Sf9が含まれる。典型的な動物細胞には、CHO、COS、またはBowesメラノーマまたは任意のマウスもしくはヒト細胞株が含まれる。適切な宿主の選択は、当業者の能力の範囲内である。
【0063】
ベクターは、形質転換、トランスフェクション、形質導入、ウイルス感染、遺伝子銃、またはTi媒介遺伝子導入を含む様々な技術のいずれかを用いて宿主細胞に導入されうる。特定の方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE‐デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、または電気穿孔法が含まれる。
【0064】
操作された宿主細胞は、プロモーターの活性化、形質転換細胞の選択、または本発明の遺伝子の増幅に適するように改良された従来の栄養培地中で培養されうる。適当な宿主株を形質転換し、宿主株を適切な細胞密度まで増殖させた後、適切な手段(例、温度シフトまたは化学的誘導)を用いて特定のプロモーターが誘導され、細胞に所望のポリペプチドまたはその断片を産生させるために、それらの細胞をさらに培養することができる。
【0065】
細胞は遠心分離で回収され、物理的または化学的手段で破壊されて、得られた粗抽出物がさらなる精製用に保存される。タンパク質の発現用に用いられる微生物細胞は、凍結融解サイクル、超音波、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用を含む、任意の便利な方法で破壊されうる。そのような方法は当業者に周知である。発現されたポリペプチドまたは断片は、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーを含む方法によって、組み換え細胞培養物から回収・精製されうる。ポリペプチドの構造を完成させる際に、必要ならばタンパク質の再フォールディングステップが使用されうる。所望であれば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を最終精製ステップに用いてよい。
【0066】
組み換えタンパク質の発現のために、各種の哺乳動物細胞培養系も利用されうる。哺乳動物の発現系の例には、サル腎線維芽細胞のCOS‐7株および適合するベクターからタンパク質を発現させる能力を持つその他の細胞株、例えばC127、3T3、CHO、HeLa、およびBHK細胞株が含まれる。
【0067】
宿主細胞中の構築物は、組み換え配列によってコードされた遺伝子産物を産生するために従来の方法で使用されうる。組み換え産生手順で用いられる宿主に応じて、ベクターを含む宿主細胞によって産生されるポリペプチドはグリコシル化されうる、またはグリコシル化されなくてよい。本発明のポリペプチドは、最初のメチオニンアミノ酸残基を含むことができる、または含むことができない。
【0068】
本発明のポリペプチドを産生するために、無細胞翻訳系も利用されうる。無細胞翻訳系は、ポリペプチドまたはその断片をコードする核酸に操作可能に連結されたプロモーターを有するDNA構築物から転写されたmRNAを使用できる。いくつかの態様において、DNA構築物は、in vitro転写反応が実施される前に線状化されうる。その後、転写されたmRNAは、所望のポリペプチドまたはその断片を産生するために、適切な無細胞翻訳抽出物、例えばウサギ網状赤血球抽出物とともにインキュベートされる。
【0069】
発現ベクターは、形質転換細胞の選択の表現型形質、例えば真核細胞培養物ではジヒドロ葉酸還元酵素またはネオマイシン抵抗性を、あるいは大腸菌ではテトラサイクリンまたはアンピシリン抵抗性を与えるために1つ以上の選択可能なマーカー遺伝子を含みうる。
D.核酸の増幅
本発明を実施する上で、本発明のポリペプチドをコードする核酸、または改変された核酸は、例えば増幅によって複製されうる。本発明は、本発明のポリペプチドをコードする核酸の増幅に用いられる増幅プライマー配列ペア、例えば、サルモネラ種CCSタンパク質を有する核酸配列、またはその部分配列を増幅する能力を持つプライマーペアを提供する。
【0070】
増幅方法には、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、PCR(PCR PROTOCOLS,A GUIDE TO METHODS AND APPLICATIONS,ed.Innis,Academic Press,N.Y.,1990およびPCR STRATEGIES,1995,ed.Innis,Academic Press,Inc.,N.Y.、リガーゼ連鎖反応(LCR)(例えば、Wu,Genomics 4:560,1989、Landegren,Science 241:1077,1988、Barringer,Gene 89:117,1990参照)、転写増幅(例えば、Kwoh,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173,1989を参照)、および自律的な配列複製(例えば、Guatelli,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874,1990)、Qベータレプリカーゼ増幅(例えばSmith,J.Clin.Microbiol.35:1477‐1491,1997参照)、自動Q‐ベータレプリカーゼ増幅アッセイ(例えばBurg,Mol.Cell.Probes 10:257‐271,1996参照)およびその他のRNAポリメラーゼ媒介テクニック(例、NASBA、Cangene、オンタリオ州ミシサガ)が含まれる。また、Berger,Methods Enzymol.152:307‐316,1987、Sambrook、Ausubel、米国特許第4,683,195号および第4,683,202号、Sooknanan,Biotechnology 13:563‐564,1995も参照されたい。
E.核酸のハイブリダイゼーション
本発明は、本発明の代表的な配列、例えばサルモネラ種CCSタンパク質配列、またはそのいずれかの相補体、または本発明のポリペプチドをコードする核酸に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、単離または組み換え核酸を提供する。他の態様において、ストリンジェントな条件は、当該技術分野で既知であり、また本明細書で説明するように、高ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件、または低ストリンジェントな条件である。これらの方法は本発明の核酸を単離するのに使用されうる。
【0071】
他の態様において、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするそれらの能力によって定められる本発明の核酸の長さは、約5残基〜本発明の核酸の全長であってよく、例えば、それらの長さは、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、55、60、65、70、75、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800残基またはそれ以上、または遺伝子もしくはコード配列の全長、例えばcDNAであってよい。全長よりも短い核酸も含まれる。これらの核酸は、例えば、ハイブリダイゼーションプローブ、標識プローブ、PCRオリゴヌクレオチドプローブ、iRNA、アンチセンスまたは抗体結合ペプチド(エピトープ)モチーフ、活性部位などをコードする配列として有用でありうる。
【0072】
“〜に、選択的に(または特異的に)ハイブリダイズする”は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、その配列が複合ミクスチャー中(例、全細胞またはライブラリDNAもしくはRNA)に存在するときに、特定のヌクレオチド配列と分子が結合、二本鎖形成、またはハイブリダイズすることを意味し、特定のヌクレオチド配列は、少なくとも約10倍のバックグラウンドにおいて検出される。一態様において、ある核酸は、ストリンジェントな条件下で、それ以外の方法で本発明の範囲に含まれると判定された核酸(例えば、本明細書で説明される代表的な配列)とハイブリダイズするその能力によって本発明の範囲内に含まれると判定される。
【0073】
“ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件”は、典型的には核酸の複合ミクスチャー中においてプローブがその標的配列にハイブリダイズするが、多量に存在するその他の配列にはハイブリダイズしない(陽性シグナル(例、本発明の核酸の同定)が、約10倍のバックグラウンドのハイブリダイゼーションである)条件を意味する。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、様々な状況下で変化する。配列の長さが長いと、高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに関する広範囲にわたる説明は、Sambrook and Russell,ed.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL(3rd ED.),Vols.1‐3,Cold Spring Harbor Laboratory,2001、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、Ausubel,ed.John Wiley&Sons,Inc.,New York,1997、LABORATORY TECHNIQUES IN BIOCHEMISTRY AND MOLECULAR BIOLOGY:HYBRIDIZATION WITH NUCLEIC ACID PROBES,PART I. Theory and Nucleic Acid Preparation,Tijssen,ed.Elsevier,N.Y.,1993に認められる。
【0074】
一般に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度、pHにおける特定の配列の熱融点Iから約5〜10℃低くなるように選択される。Tmは、標的に相補的なプローブの50%が、平衡状態で標的配列とハイブリダイズする温度(規定のイオン強度、pH、および核濃度条件下で)である(標的配列が過剰に存在するので、Tにおいて、プローブの50%は平衡状態で占有している)。ストリンジェントな条件は、pH7.0〜8.3において塩の濃度が約1.0Mのナトリウムイオンよりも低い、典型的には約0.01〜1.0Mナトリウムイオン濃度(またはその他の塩)であり、温度が、短いプローブ(例、10〜50ヌクレオチド)では少なくとも約30℃、長いプローブ(例、50ヌクレオチドより長い)では少なくとも約60℃であるものである。ストリンジェントな条件は、Sambrook(上記)に記載されるように、不安定化剤、例えばホルムアミドの添加でも達成されうる。高ストリンジェンシーなハイブリダイゼーションでは、陽性シグナルは少なくとも2倍のバックグラウンドであり、好ましくは10倍のバックグラウンドのハイブリダイゼーションである。典型的な高ストリンジェンシーまたはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には:50%ホルムアミド、5×SSCおよび1%SDS、42℃でインキュベーション、または5×SSCおよび1%SDS、65℃でインキュベーションに、0.2×SSCおよび0.1%SDS、65℃での洗浄が含まれる。選択的または特異的ハイブリダイゼーションでは、陽性シグナル(例、本発明の核酸の同定)は約10倍のバックグラウンドのハイブリダイゼーションである。本発明の範囲に含まれる核酸を同定するために用いられるストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、例えば、50%ホルムアミド、5×SSC、および1%SDSを有するバッファー中、42℃でハイブリダイゼーション、または5×SSCおよび1%SDSを有するバッファー中、65℃でのハイブリダイゼーションが含まれ、両方とも0.2×SSCおよび0.1%SDS、65℃での洗浄が含まれる。本発明では、本明細書で開示される核酸配列を使用して、ストリンジェントな条件下での標準的なサザンブロットで、本発明の核酸を有するゲノムDNAまたはcDNAが同定されうる。そのようなハイブリダイゼーション(本発明の範囲に含まれる核酸の同定のため)に用いられるさらなるストリンジェントな条件は、40%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSのバッファー中、37℃でのハイブリダイゼーションを含むものである。
【0075】
しかし、ハイブリダイゼーションのフォーマットの選択は重要ではなく、ある核酸が本発明の範囲に含まれるかどうかを決定する条件を定めるのは洗浄条件のストリンジェンシーである。本発明の範囲内に含まれる核酸を同定するために用いられる洗浄条件には、例えばpH7で約0.02モーラーの塩の濃度、および少なくとも約50℃、もしくは約55℃〜約60℃の温度、または約0.15M NaClの塩の濃度、72℃で約15分間、または約0.2X SSCの塩濃度、少なくとも約50℃もしくは約55℃〜約60℃の温度で約15分〜約20分間、またはハイブリダイゼーション複合体を、0.1%SDSを含有する約2X SSCの塩濃度の溶液で、室温にて約15分間2回洗浄し、その後0.1%SDSを含有する0.1X SSCで68℃にて15分間2回洗浄を行う、または同等の条件が含まれる。SSCバッファーおよび同等の条件の説明は、Sambrook,Tijssen and Ausubelを参照されたい。
F.オリゴヌクレオチドプローブおよびそれらの使用方法
本発明は、III型分泌系のモジュレーターまたはインヒビターであるポリペプチド、またはIII型分泌系に関与するタンパク質、例えばサルモネラ種CCSタンパク質をコードする核酸を同定するための核酸プローブも提供する。一態様において、プローブは、本発明の核酸の少なくとも10個の連続する塩基を有する。あるいは、本発明のプローブは、本発明の核酸に示されるような配列の、少なくとも約5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、150、または約10〜50、約20〜60、約30〜70個の連続する塩基でありうる。プローブは、結合および/またはハイブリダイゼーションによって核酸を同定する。下記の説明を参照されたいが、プローブは、本発明の配列において使用されうる。本発明のプローブは、他の核酸またはポリペプチドを単離するためにも使用されうる。
G.配列同一度の決定
本発明は、例えば、サルモネラ種CCS遺伝子と、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を有する核酸を提供する。本発明は、サルモネラ種CCSタンパク質と、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を有するポリペプチドを提供する。配列同一性は、配列比較アルゴリズムによる解析または目視検査によって決定されうる。タンパク質および/または核酸の配列同一性(またはホモロジー)は、当該技術分野で既知の様々な配列比較アルゴリズムおよびプログラムのいずれかを使用して評価されうる。
【0076】
配列比較では、典型的には1つの配列がリファレンス配列の役割を果たし、これと試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列およびリファレンス配列がコンピューターに入力され、必要であれば部分配列の座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムのパラメーターが指定される。デフォルトのプログラムパラメーターを使用できる、または他のパラメーターが指定されうる。次に、配列比較アルゴリズムが、プログラムのパラメーターに基づいてリファレンス配列に対する試験配列の%配列同一性を計算する。核酸およびタンパク質の配列比較については、BLASTおよびBLAST2.2.2.またはFASTAバージョン3.0t78アルゴリズムならびに後述のデフォルトのパラメーターが使用されうる。
【0077】
本明細書で用いる場合の“比較ウインドウ”は、2つの配列が最適にアラインメントされた後の配列が同じ数の隣接部位を持つリファレンス配列と比較されうる、20〜600、多くの場合約50〜約200、より多くの場合約100〜約150からなる群から選択される隣接部位の数のうち任意の1つのセグメントに対する言及を含む。比較のための配列のアラインメント方法は当該技術分野で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482,1981の局所的ホモロジーアルゴリズムによって、Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443,1970のホモロジーアラインメントアルゴリズムによって、Pearson&Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444、1988の類似性検索法によって、これらのアルゴリズム(FASTDB(Intelligenetics)、BLAST(National Center for Biomedical Information)、Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group、ウィスコンシン州マディソン、サイエンスドライブ575)に含まれるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、のコンピューターによる実行またはマニュアルアラインメントおよび目視検査によって実施されうる(例えば、Ausubel et al.,(1999 Suppl.),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.,1987を参照)。
【0078】
%配列同一性および配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの好ましい例は、FASTAアルゴリズムであり、これはPearson&Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444、1988に記載されている。Pearson,Methods Enzymol.266:277‐258,1996も参照されたい。%同一性を計算するためにDNA配列のFASTAアラインメントにおいて使用される好ましいパラメーターは最適化される、BL50マトリックス15:−5、k‐タプル=2、joining penalty=40、最適化=28、gap penalty−12、gap length penalty=−2、およびwidth=16。
【0079】
%配列同一性および配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの別の好ましい例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、これらはAltschul et al.,Nuc.Acids Res.25:3389‐3402,1977、およびAltschul et al.,J.Mol.Biol.215:403‐410,1990にそれぞれ記載されている。BLASTおよびBLAST2.0は、本発明の核酸およびタンパク質の%配列同一性を決定するために、本明細書で説明されるパラメーターを用いて使用される。BLAST解析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公的に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中のある程度の長さの単語とアラインメントされたとき、ある正の値の閾値スコアTと一致するか、これを満たす、クエリ配列中の長さWの短い単語を同定することにより、まずHigh Scoring Sequence Pair(HSP)を同定するステップを含む。Tは、類義語スコア閾値と呼ばれる(Altschul et al.,上記参照)。これらの最初の類義語ヒットは、それらを含むより長いHSPを発見するための検索を開始するための種配列として作用する。単語ヒットは、累積アラインメントスコアが増加できる限りは、各配列に沿って両方向に伸長する。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメーターM(一致する残基のペアに対するreward score、常に>0)およびN(一致しない残基のペアに対するペナルティスコア:常に<0)を使用して計算される。アミノ酸配列では、累積スコアを計算するためにスコアリングマトリックスが用いられる。各方向の単語ヒットの伸長が停止するのは:累積アラインメントスコアが、得られた最大値から量Xだけ低下した場合、1つ以上のネガティブスコア残基アラインメントが原因で、累積スコアがゼロ以下になった場合、またはいずれかの配列の末端に到達した場合である。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、およびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、単語の長さ(W)が11、予測(E)が10、M=5、N=−4、および両方の鎖の比較を既定値として使用する。アミノ酸配列の場合は、BLASTPプログラムは、単語の長さ3、予測(E)が10、およびBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff&Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:10915,1989参照)、アラインメント(B)50、予測(E)10、M=5、N=−4、および両方の鎖の比較を既定値として使用する。
【0080】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計学的解析も実行する(例えばKarlin&Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:5873‐5787,1993参照)。BLASTアルゴリズムが提供する類似性測定法の1つは、smallest sum probability(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然に起こる確率の指標を提供する。例えば、ある試験核酸とあるリファレンス核酸との比較においてsmallest sum probabilityが約0.2未満であるとき、より好ましくは約0.01未満であるとき、最も好ましくは約0.001未満であるとき、その核酸は、リファレンス配列と類似すると見なされる。
【0081】
有用なアルゴリズムの別の例は、PILEUPである。PILEUPは、関係性および%配列同一性を示すために、プログレッシブペアワイズアラインメントを使用して、関連する配列のグループからマルチプル配列アラインメントを作成する。このアルゴリズムは、アラインメントを作成するために使用されるクラスター関係を示すツリーまたは系統樹もプロットする。PILEUPは、Feng&Doolittle,J.Mol.Evol.35:351‐360,1987のプログレッシブアラインメント法を簡素化したものを使用する。使用される方法は、Higgins&Sharp,CABIOS 5:151‐153,1989で説明される方法に類似している。このプログラムは、最大で300の配列のアラインメントが可能であり、それぞれの配列の最大長は5000ヌクレオチドまたはアミノ酸である。マルチプルアラインメントの手順は、2つの最も類似する配列のペアワイズアラインメントから始まり、2つのアラインメントされた配列のクラスターを作成する。次に、このクラスターは、次に最も関連のある配列またはアラインメントされた配列とアラインメントされる。配列の2つのクラスターは、2つの個々の配列のペアワイズアラインメントの単純な伸長によってアラインメントされる。最終的なアラインメントは、一連のプログレッシブペアワイズアラインメントによって行われる。特定の配列と、配列比較領域のそれらのアミノ酸またはヌクレオチド座標を指定することと、プログラムパラメーターを指定することによってプログラムが実行される。PILEUPを使用すると、次のパラメーター:デフォルトギャップウェイト(3.00)、デフォルトギャップレングスウェイト(0.10)、および重み付けしたエンドギャップを使用して%配列同一性の関係性を決定するために、あるリファレンス配列がその他の試験配列と比較される。PILEUPは、GCG配列解析ソフトウェアパッケージ、例えばバージョン7.0(Devereaux et al.,Nuc.Acids Res.12:387‐395,1984から入手可能である。
【0082】
複数のDNAおよびアミノ酸配列アラインメントに適したアルゴリズムの別の好ましい例は、CLUSTALWプログラムである(Thompson et al.,Nucl.Acids.Res.22:4673‐4680,1994)。ClustalWは、配列グループ間の多重ペアワイズ比較を実行し、ホモロジーに基づいてそれらを多重アラインメントに構築する。ギャップオープンペナルティーおよびギャップエクステンションペナルティーは、それぞれ10および0.05とした。アミノ酸アラインメントでは、プロテイン・ウェイト・マトリックスとしてBLOSUMアルゴリズムが使用可能である(Henikoff and Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:10915‐10919,1992)。
【0083】
“配列同一性”は、アミノ酸またはヌクレオチド配列間の類似性の1つの指標を意味し、当該技術分野で既知の方法、例えば下記で説明するものを使用して測定されうる。
【0084】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における“同一”または%“同一性”は、以下の配列比較アルゴリズムを使用して、またはマニュアルアラインメントおよび目視検査によって測定して、比較ウインドウ、または指定された領域にわたって最大一致に関して比較されアラインメントされた場合に、同一である、または特定の割合の同一のアミノ酸残基もしくはヌクレオチドを有する(すなわち、特定の領域にわたって、60%の同一性、好ましくは、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、またはそれ以上の同一性)、2つ以上の配列または部分配列を意味する。
【0085】
2つの核酸またはポリペプチドの文脈における“実質的に同一”は、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して、または目視検査によって測定して、最大一致について比較されアラインメントされた場合に、少なくとも60%、多くの場合少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%、または少なくとも95%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の同一性を有する、2つ以上の配列または部分配列を意味する。好ましくは、実質的な同一性は、長さが少なくとも約50塩基または残基の配列の領域にわたって存在し、より好ましくは少なくとも約100塩基または残基の領域にわたって存在し、最も好ましくは、配列は、少なくとも約150塩基または残基にわたって実質的に同一である。最も好ましい態様において、配列は、コード化領域の長さ全域にわたって実質的に同一である。
【0086】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における“ホモロジー”および“同一性”は、任意の数の配列比較アルゴリズムを使用して、またはマニュアルアラインメントおよび目視検査によって測定して、比較ウインドウまたは指定された領域にわたって最大一致について比較されアラインメントされた場合に、同一である、または特定の割合の同一のアミノ酸残基もしくはヌクレオチドを有する2つ以上の配列もしくは部分配列を意味する。配列比較では、1つの配列はリファレンス配列(サルモネラ種CCS遺伝子産物またはポリペプチドの代表的な配列)としての役目を果たすことができ、これと試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列およびリファレンス配列がコンピューターに入力され、必要であれば部分配列の座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムのパラメーターが指定される。デフォルトのプログラムパラメーターが使用できる、または他のパラメーターを指定することも可能である。次に、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメーターに基づいてリファレンス配列に対する試験配列の%配列同一性を計算する。
【0087】
本明細書で用いられる場合の“比較ウインドウ”は、連続する残基の数の任意の1つのセグメントへの言及を含む。例えば、本発明の別の態様において、本発明の代表的なポリペプチドまたは核酸配列、例えば単離サルモネラ種CCSポリヌクレオチドまたはポリペプチドの20個〜全長の範囲におよぶ連続する残基は、2つの配列が最適にアラインメントされた後に、同じ数の連続する位置のリファレンス配列と比較される。リファレンス配列が、本発明の代表的なポリペプチドまたは核酸配列に対して必要とされる配列同一性、例えばサルモネラ種CCSポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の同一性を有する場合は、その配列は本発明の範囲に含まれる。
【0088】
上記のプログラムを使用して検出されうるモチーフには、ロイシンジッパー、へリックス‐ターン‐へリックスモチーフ、グリコシル化部位、ユビキチン化部位、アルファへリックス、およびベータシートをコードする配列、コード化されたタンパク質の分泌を誘導するシグナルペプチドをコードするシグナル配列、転写調節に関与する配列、例えばホメオボックス、酸性の配列、酵素活性部位、基質結合部位、および酵素切断部位が含まれる。
H.コンピューターシステムおよびコンピュータープログラム製品
配列同一性、構造的相同性、モチーフなどをコンピューターで決定し同定するために、コンピューターでの読み取りやアクセスが可能な任意の媒体上で本発明の配列が保存され、記録され、操作されうる。従って、本発明は、本発明の核酸およびポリペプチド配列が記録または保存される、コンピューター、コンピューターシステム、コンピューター可読媒体、コンピュータープログラム製品などを提供する。本明細書で用いられる場合、用語“記録される”および“保存される”は、情報をコンピューター媒体上に保存するためのプロセスを意味する。熟練者は、本発明の核酸および/またはポリペプチド配列の1つ以上を有する製品を作成するために、コンピューター可読媒体上に情報を記録するためのあらゆる既知の方法を容易に習得可能である。
【0089】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの本発明の核酸および/またはポリペプチド配列が記録された、コンピューター可読媒体である。コンピューター可読媒体には、磁気読み取り媒体、光学読み取り媒体、電子読み取り媒体、および磁気/光学媒体が含まれる。例えば、コンピューター可読媒体は、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ、CD‐ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、または読み出し専用メモリ(ROM)だけでなく、当業者に既知のその他の種類の別の媒体であってよい。
【0090】
本明細書で用いられる場合、用語“コンピューター”、“コンピュータープログラム”および“プロセッサ”は、それらの幅広い一般的文脈において使用され、全てのそのようなデバイスを含む。
サルモネラ種タンパク質抗原のワクチン組成物
サルモネラ種CCSタンパク質配列は、オリゴヌクレオチドプローブの設計するために、また他のサルモネラ種血清型由来の遺伝子についてゲノムライブラリまたはcDNAライブラリをスクリーニングするために使用されうる。オリゴヌクレオチドプローブおよびDNAライブラリの作成、ならびに核酸ハイブリダイゼーションによるそれらのスクリーニングのための基本的な方法は当業者に周知である。例えばDNA Cloning:Vol.I(上記参照)、Nucleic Acid Hybridization(上記参照)、Oligonucleotide Synthesis(上記参照)、Sambrook et al.,(上記参照)を参照されたい。スクリーニングされたライブラリ由来のクローンが陽性ハイブリダイゼーションによって同定された後は、特定のライブラリ挿入物質が、サルモネラ種CSS遺伝子またはそのホモログを含むことが、制限酵素解析およびDNAシークエンシングによって確認されうる。次に、標準的なテクニックと、所望であれば全長配列の一部を除去するために用いられるPCRアプローチまたは制限酵素を使用して、遺伝子はさらに単離されうる。
【0091】
同様に、遺伝子は、既知のテクニック、例えばフェノール抽出を使用して細菌から直接単離され、任意の所望の変化を作成するために配列がさらに操作されうる。例えば、DNAを得るためおよび単離するために用いられるテクニックの説明については、Sambrook et al.(上記参照)を参照されたい。あるいは、目的とするタンパク質をコードするDNA配列は、クローン化ではなく合成で作成されうる。DNA配列は、特定のアミノ酸配列に対する適切なコドンを使用してデザインされうる。一般に、もしも配列が発現に用いられるのであれば、目的とする宿主に対する好ましいコドンが選択されるであろう。標準的な方法で調製されたオーバーラップするオリゴヌクレオチドから完全な配列が構築され、完全なコード配列に構築されうる。例えば、Edge(1981)Nature 292:756、Nambair et al.(1984)Science 223:1299、Jay et al.(1984)J.Biol.Chem.259:6311を参照されたい。
【0092】
所望のタンパク質に対するコード配列が作製または単離されると、それらは任意の適当なベクターまたはレプリコンにクローニングされる。多くのクローニングベクターが当業者に既知であり、適切なクローニングベクターは自由に選択できる。クローニング用の組み換えDNAベクターおよび形質転換可能な宿主細胞の例には、バクテリオファージλ(大腸菌)、pBR322(大腸菌)、pACYC177(大腸菌)、pKT230(グラム陰性細菌)、pGV1106(グラム陰性細菌)、pLAFRl(グラム陰性細菌)、pME290(大腸菌以外のグラム陰性細菌)、pHV14(大腸菌および枯草菌)、pBD9(バシラス属)、pIJ61(ストレプトマイセス属)、pUC6(ストレプトマイセス属)、YIp5(サッカロミセス属)、YCp19(サッカロミセス属)、およびウシパピローマウイルス(哺乳動物細胞)が含まれる。例えば、Sambrook et al.(上記参照)、DNA Cloning(上記参照)、B.Perbal(上記参照)を参照されたい。この発現構築物を含むベクターによって形質転換された宿主細胞内で所望のタンパク質をコードするDNA配列がRNAに転写されるように、遺伝子は、プロモーター、リボソーム結合部位(細菌発現の場合)、および場合によりオペレーター(本明細書ではまとめて“制御”因子と呼ぶ)の制御下に置かれうる。コード配列は、シグナルペプチドまたはリーダー配列を含むこともできるし、できないこともある。リーダー配列は、翻訳後プロセッシングにおいて宿主によって除去されうる。例えば、米国特許第4,431,739号、第4,425,437号、第4,338,397号を参照されたい。
【0093】
宿主細胞の増殖に対するタンパク質配列の発現の調節を可能にするその他の調節配列も望ましい場合がある。調節配列は当業者に既知であり、その例には、調節化合物の存在をはじめとした化学的または物理的刺激に反応して、遺伝子の発現をオンまたはオフにするものが含まれる。その他の種類の調節要素はベクター内に存在でき、例えばエンハンサー配列である。
【0094】
制御配列およびその他の調節配列は、ベクター、例えば上述のクローニングベクターへ挿入される前にコード配列にライゲーションされうる。あるいは、コード配列は、制御配列および適切な制限酵素認識部位をすでに含む発現ベクターに直接クローニングされうる。
【0095】
いくつかの場合において、コード配列が適切な向きに制御配列に連結されるよう、すなわち正しいリーディングフレームを維持するために、コード配列の改変が必要である。タンパク質の変異体またはアナログを作成するのが望ましい場合もある。変異体またはアナログは、タンパク質をコードする配列の一部の欠失によって、配列の挿入によって、および/または配列中の1つ以上のヌクレオチドの置換によって調製されうる。ヌクレオチド配列を改変するためのテクニック、例えば部位特異的突然変異誘発法は、例えばSambrook et al.(上記参照)、DNA Cloning(上記参照)、Nucreic Acid Hybridization(上記参照)に記載されている。
【0096】
次に、発現ベクターを使用して適切な宿主細胞を形質転換する。多くの哺乳動物細胞株が当該技術分野で既知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な不死化細胞株、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、Hela細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHepG2)、メイディン‐ダービー・ウシ腎臓(“MDBK”)細胞、ならびのその他のものが含まれるがこれらに限定されない。同様に、細菌の宿主、例えば大腸菌、枯草菌、およびストレプトコッカス種は、本発明の発現構築物との利用が見出されるであろう。本発明において有用な酵母の宿主には、サッカロミセス・セレビシエ、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・マルトサ、ハンセヌラ・ポリモルファ、クリベロミセス・フラギリス、クリベロミセス・ラクチス、ピキア・ギリエルモンディ、ピキア・パストリス、シゾサッカロミセス・ポンベおよびYarrowia lipolyticaが含まれるがこれらに限定されない。バキュロウイルス発現ベクターとともに使用するための昆虫細胞には、ネッタイシマカ、オートグラファ・カリフォルニカ、カイコ、キイロショウジョウバエ、スポドプテラ・フルギペルダ、およびイラクサギンウワバが含まれるがこれらに限定されない。
【0097】
選択される発現系および宿主に応じて、上述の発現ベクターで形質転換した宿主細胞を目的とするタンパク質が発現する条件下で培養することによって、本発明のタンパク質が産生される。次に、タンパク質が宿主細胞から単離され、精製される。適切な増殖条件および回収方法は、当該技術分野の技術の範囲内である。
【0098】
サルモネラ種CCSタンパク質は、既知のアミノ酸配列または目的とする遺伝子のDNA配列から得られたアミノ酸配列を使用して、化学的合成、例えば固相ペプチド合成法によっても産生されうる。そのような方法は当業者に既知である。例えば、固相ペプチド合成テクニックに関しては、J.M.Stewart and J.D.Young,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd Ed.,Pierce Chemical Co.,Rockford,IL(1984)およびG.Barany and R.B.Merrifield,The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology,editors E.Gross and J.Meienhofer,Vol.2,Acedemic Press,New York,(1980),pp.3‐254を、伝統的な溶液合成に関しては、M.Bodansky,Principles of Peptides Synthesis,Springer‐Verlag,Berlin(1984)およびE.Gross and J.Meienhofer,Eds.,The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology(上記参照),Vol.1を参照されたい。問題としている抗原の小断片が、目的とする被験体において免疫応答を誘発する能力を有する場合、ペプチドの化学的合成が好ましい場合がある。
【0099】
上記の細胞培養上清と、所望であれば追加の組み換えおよび/または精製タンパク質が産生された後は、それらは、哺乳動物の被験体に送達することを目的とする組成物に配合される。ワクチン組成物は、単独で投与される、または薬学的に許容される媒体または賦形剤と混合される。適当な媒体は、例えば水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびこれらの組み合わせである。さらに、媒体は、微量の添加物質、例えば湿潤剤もしくは乳化剤、pH調整剤、またはワクチン組成物の場合は、ワクチンの有効性を高めるアジュバントを含みうる。適当なアジュバントは下記でさらに説明する。本発明の組成物は、添加物質、例えば薬剤、サイトカイン、またはその他の生物反応修飾物質も含みうる。
【0100】
本発明の態様におけるワクチン組成物は、サルモネラ種CCSタンパク質抗原の1つ以上ものの免疫原性をさらに高めるために、アジュバントを含みうる。そのようなアジュバントは、任意の化合物、またはサルモネラ種CCSタンパク質抗原または抗原の組み合わせに対する免疫応答を高める働きをすることにより、ワクチン中に必要な抗原の量、および/または十分な免疫応答を生成するために必要な注射の頻度を減少させる化合物を含む。アジュバントは、例えば、乳化剤、ムラミルジペプチド、アブリジン、水性アジュバント、例えば水酸化アルミニウム、キトサン系アジュバント、および各種サポニンのいずれか、油、ならびに当該技術分野で既知のその他の物質、例えばAmphigen、LPS、細菌の細胞壁抽出物、細菌DNA、合成オリゴヌクレオチドならびにこれらの組み合わせ(Schijns et al.,Curr.Opi.Immunol.(2000)12:456)、マイコバクテリウム・フレイ(M.phlei)細胞壁抽出物(MCWE)(米国特許第4744984号)、M.phleiのDNA(M‐DNA)、M‐DNA‐M.phlei細胞壁複合体(MCC)を含みうる。例えば、本明細書において乳化剤として作用しうる化合物には、天然および合成の乳化剤だけでなく、陰イオン性、陽イオン性、および非イオン化合物が含まれる。合成化合物の中では、陰イオン性乳化剤には、例えば、ラウリン酸およびオレイン酸のカリウム塩、ナトリウム塩、およびアンモニウム塩、脂肪酸のカルシウム塩、マグネシウム塩、およびアルミニウム塩(すなわち金属せっけん)、ならびに有機スルホン酸塩、例えばラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。合成陽イオン性物質には、例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミドが含まれ、合成非イオン物質の代表的なものはグリセリルエステル(例、グリセリルモノステアラート)、ポリオキシエチレングリコールエステルおよびエーテル、およびソルビタン脂肪酸エステル(例、ソルビタンモノパルミタート)ならびにそれらのポリオキシエチレン誘導体(例、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート)である。天然の乳化剤には、アカシア、ゼラチン、レシチン、およびコレステロールが含まれる。
【0101】
その他の適当なアジュバントは、油成分、例えば単一の油、油の混合物、油中水型エマルション、または水中油型乳剤で形成されうる。油は、鉱物油、植物油、または動物油でありうる。鉱物油、または油成分が鉱物油である水中油型乳剤が好ましい。この点において、“鉱物油”は本明細書において、蒸留法によってワセリンから得られた液体炭化水素の混合物として定義され、この用語は“流動パラフィン”、“流動ワセリン”、および“白色鉱油“と同義である。この用語はまた、“軽油”、すなわち同様にワセリンの蒸留によって得られるが、白色鉱油よりもわずかに比重が低い油を含むことも目的としている。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(上記参照)を参照されたい。特定の好ましい油成分は、MVP Laboratories(ネブラスカ州、Ralston)より購入可能な、EMULSIGEN PLUS(登録商標)(軽油だけでなく、0.05%ホルマリン、および保存剤として30mcg/mLのゲンタマイシンを含有する)の商標名で販売されている水中油型乳剤である。適当な動物油には、例えば、タラの肝油、ハリバ肝油、ニシン油、オレンジ・ラッフィー油、およびサメ肝油が含まれ、これらは全て市販されている。適当な植物油には、キャノーラ油、アーモンド油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ラッカセイ油、サフラワー油、ゴマ油、ダイズ油などが含まれるがこれらに限定されない。
【0102】
あるいは、多くの脂肪族窒素含有塩基が、ワクチン製剤とともにアジュバントとして使用されうる。例えば、既知の免疫アジュバントには、mines、第四級アンモニウム化合物、グアニジン、ベンズアミジン、およびチオウロニウム(Gall,D.(1966)Immunology 11:369‐386)が含まれる。特定の化合物は、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)(Kodakより販売)およびN,N‐ジオクタデシル‐N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)プロパンジアミン(“アブリジン”)を含む。DDAの免疫アジュバントとしての使用は記載されており、例えば、Kodak Laboratory Chemicals Bulletin 56(1):1‐5(1986)、Adv.Drug Deliv.Rev.5(3):163‐187(1990)、J.Controlled Realese 7:123‐132(1988)、Clin.Exp.Immunol.78(2):256‐262(1989)、J.Immunol.Methods 97(2):159‐164(1987)、Immunology 58(2):245‐250(1986)、およびInt.Arch.Allergy Appl.Immunol.68(3):201‐208(1982)を参照されたい。アブリジンも周知のアジュバントである。例えば、全般的にはN,N‐高級アルキル‐N’,N’‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、特にAvridineのワクチンアジュバントとしての使用が記載されている、Wolff,III et al.による米国特許第4,310,550号を参照されたい。米国特許第5,151,267号(Babiuk)およびBabiuk et al.(1986)Virology 159:57‐66も、アブリジンのワクチンアジュバントとしての使用に関する。
【0103】
ワクチンと一緒に使用するためのアジュバントは、“VSA3”であり、これはEMULSIGEN PLUS(登録商標)アジュバントの修飾形態であり、DDAを含む(開示内容全体が参考として本明細書で援用される、米国特許第5,951,988号を参照)。
【0104】
本発明の態様におけるサルモネラ種CCSタンパク質抗原の1つ以上を含むワクチン組成物は、混合、超音波処理、およびマイクロフルイダイゼーションを含むがこれらに限定されない、当業者に周知のテクニックを使用して、均一かつ密接にワクチン組成物製剤とアジュバントを結合させることによって調製されうる。アジュバントは好ましくは、ワクチンの約10〜50%(v/v)を構成し、より好ましくは約20〜40%(v/v)、最も好ましくは約20〜30%もしくは35%(v/v)、またはこれらの範囲に含まれる任意の整数の値のワクチンを構成する。
【0105】
本発明の態様の組成物は通常、液体もしくは懸濁液のいずれかの注射剤として、または注射前の液体溶媒に含まれる溶液もしくは懸濁液に適した固体として調製される。製剤は、固体の状態、乳化された状態、またはリポソーム担体もしくは持続型送達用のその他の粒子キャリアーに封入された有効成分としても調製されうる。例えば、ワクチンはオイルエマルション、油中水型エマルション、水/油/水型乳剤、部位特異的エマルション、長時間抵抗性エマルション、粘着性エマルション、ミクロエマルション、ナノエマルション、リポソーム、ミクロ粒子、ミクロスフェア、ナノスフェア、ナノ粒子、および各種の天然または合成ポリマー、例えば非再吸収性不透性ポリマー、例えばエチレンビニルアセタートコポリマーおよびHytrel(登録商標)コポリマー、膨潤性コポリマー、例えばヒドロゲル、または再吸収性ポリマー、例えばコラーゲンおよびあるポリアシッドまたはポリエステル、例えばワクチンの徐放性放出を可能にする、再吸収性縫合糸を作製するために使用されるものなどであってよい。
【0106】
さらに、例えば、サルモネラ種CCSタンパク質または物質抗原の1つ以上を含むワクチン組成物は、中性のまたは塩の形態で組成物に配合されうる。薬学的に許容される塩は、酸付加塩(活性ポリペプチドの遊離アミノ基と形成される)を含み、無機酸、例えば、塩酸もしくはリン酸、または有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などを使用して形成される。遊離カルボキシル基から形成される塩も、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄、および例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2‐エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から得られる。
【0107】
そのような剤形を調製する実際の方法は、当業者には既知であるか、または明らかであろう。例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvaniaの最新版を参照されたい。
【0108】
組成物は、効果的な量のサルモネラ種CCSタンパク質または物質抗原を含むように配合され、正確な量は当業者によって容易に決定されるものであり、この量は、治療を受ける動物および動物の免疫系が抗体を合成する能力に依存する。投与される組成物または製剤は、治療される被験体において所望の状態を達成するのに十分な量の1つ以上の分泌サルモネラ種CCSタンパク質または物質抗原を含むことになる。本発明の目的では、サルモネラ種CCSタンパク質または物質抗原の細胞抽出物を有する、治療有効量のワクチン(組み換えおよび/または精製分泌サルモネラ種CCSタンパク質が添加されたもの、またはされないもの)は、約0.05〜1500μgの分泌タンパク質または物質抗原を含み、好ましくは約10〜1000μgの分泌タンパク質または物質抗原を含み、より好ましくは約30〜500μg、最も好ましくは40〜300pg、またはこれらの値の間の任意の整数値の分泌タンパク質または物質抗原を含む。サルモネラ種CCSタンパク質または物質抗原は、細胞抽出物タンパク質または物質の総量の約10%〜50%を構成し、例えば、約15%〜40%、最も好ましくは約15%〜25%を構成しうる。組み換えサルモネラ種CCSタンパク質または物質抗原が添加される場合、ワクチンは、約5〜500μgのタンパク質または物質、より好ましくは約10〜250μg、最も好ましくは約20〜125μgのタンパク質または物質を含みうる。
【0109】
投与経路には、経口、局所、皮下、筋肉内、静脈内、皮下、皮内、経皮、および皮下が含まれるがこれらに限定されない。投与経路に応じて、1ドーズ当たりの量は、好ましくは約0.001〜10mlであり、より好ましくは約0.01〜5mlであり、最も好ましくは約0.1〜3mlである。被験体の年齢、体重、および状態、使用される特定のワクチン製剤、ならびに投与経路に適したスケジュールおよび期間において、単回投与治療または複数投与治療(追加免疫)でワクチンが投与されうる。
【0110】
脊椎動物の被験体、例えば、鳥類の被験体または哺乳動物の被験体へ組成物を送達するために、あらゆる適当な医薬品送達手段が利用されうる。例えば、従来の針付きシリンジ、スプリングまたは圧縮ガス(空気)注射器(米国特許第1,605,763号(Smoot)、第3,788,315号(Laurens)、第3,853,125号(Clark et al.)、第4,596,556号(Morrow et al.)、および第5,062,830号(Dunlap)、液体ジェット注射器(米国特許第2754818号(Scherer)、第3,330,276号(Gordon)、および第4,518,385号(Lindcaner et al.)、ならびに粒子注射器(米国特許第5,149,655号(McCabe et al.)および第5,204,253号(Sanford et al.)は全て、組成物の送達に適している。
【0111】
ジェット注射器が用いられる場合、高い圧力と速度、例えば1200〜1400PSIで液体のワクチン組成物の単回ジェットが噴出されることによって皮膚に穴を開け、免疫付与に適した深さまで入っていく。
治療の方法
本明細書では、疾患のリスクにさらされている(または疾患にかかりやすい)被験体を治療の予防的および治療的方法の両方、またはグラム陰性細菌感染症、例えばサルモネラ種感染症を、III型分泌系のアンタゴニストを投与することによって防ぐまたは治療する方法も説明される。
予防的方法
本発明の態様は、III型分泌系に関与する効果的な免疫量のタンパク質または物質と、薬学的に許容される担体を含むワクチン組成物を投与することによって、被験体におけるサルモネラ細菌感染症もしくは保菌、またはその両方を防ぐまたは治療するための方法に関し、前述のワクチン組成物は、脊椎動物の被験体においてグラム陰性細菌感染症を低減するまたは排除するのに効果的である。治療用組成物は、細菌感染症または保菌を低減するまたは排除するのに効果的な量で脊椎動物被験体に投与されるIII型分泌系のアンタゴニストであってもよい。疾患、またはサルモネラ種細菌感染症および保菌に起因する、またはこれらが関与する望ましくない症状のリスクにさらされている被験体は、例えば、本明細書で説明される、または当該技術分野で既知の診断的アッセイまたは予測的アッセイの組み合わせのいずれかによって同定されうる。一般に、そのような疾患は、例えば、サルモネラ種細菌感染症または保菌の結果による、先天性免疫系の望ましくない活性化を伴う。物質を、その物質が存在しない場合の症状と比較して、症状を防ぐ、遅らせる、または軽減できるように、症状の発現の前に予防的物質として投与することができる。いくつかの態様において、物質はIII型分泌系を低下させる。いくつかの態様において、物質は、III型分泌系に関与するタンパク質、例えばサルモネラ種CCSタンパク質または物質の合成または活性を低下させる。適切な物質は、本明細書で説明されるようにスクリーニングアッセイに基づいて同定されうる。一般に、そのような物質はサルモネラ種CCSポリペプチドに特異的に結合する。
治療方法
本発明の一態様は、III型分泌系に関与する効果的な免疫量のタンパク質または物質と、薬学的に許容される担体を含むワクチン組成物を投与することによって、被験体におけるサルモネラ種細菌感染症または保菌を防ぐまたは治療するための方法に関し、前述のワクチン組成物は、脊椎動物の被験体においてグラム陰性細菌感染症を低減するまたは排除するのに効果的である。
【0112】
本発明は、病気または疾患、例えばグラム陰性細菌感染症、より具体的にはサルモネラ種細菌感染症または保菌に罹患する個体を予防するまたは治療するための方法を提供する。一態様において、前記方法は、III型分泌系に関与する効果的な免疫量の単離サルモネラ種CCSタンパク質もしくは物質および、薬学的に許容される担体を含むワクチン組成物、またはIII型分泌系に関与する治療薬、例えばタンパク質または物質のインヒビターを含むワクチン組成物を投与するステップとを含む。物質によって治療されうる状態には、被験体が、グラム陰性細菌感染症、例えばサルモネラ種感染症の治療をうける状態が含まれる。
キット
本発明は、組成物、例えば、核酸、発現カセット、ベクター、細胞、およびポリペプチドを有するキットを提供する。前記キットは、本明細書で説明されるような本発明の手順および使用を教示する取り扱い説明資料も含みうる。
治療上の用途
本発明の方法によって同定される化合物およびモジュレーターは、様々な治療方法において使用されうる。故に、本発明は、グラム陰性細菌感染症、例えばサルモネラ種感染症、およびグラム陰性保菌、例えばサルモネラ種保因を治療するための組成物および方法を提供する。
【0113】
典型的な感染性疾患には細菌性疾患が含まれるがこれに限定されない。本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、感染性物質を治療するまたは検出するために使用されうる。例えば、免疫応答を高めることによって、特にB細胞および/またはT細胞の増殖と分化を高めることによって、感染性疾患が治療されうる。免疫応答は、既存の免疫応答を増強すること、または新たな免疫応答を誘導することのいずれかによって高められうる。あるいは、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、免疫応答を誘発する必要なしに、感染性物質を直接阻害しうる。
【0114】
典型的な感染性疾患にはグラム陰性細菌感染症が含まれるがこれに限定されない。病気または症状の原因となり、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドによって治療または検出されうるグラム陰性細菌物質には、以下のグラム陰性細菌科が含まれるがこれらに限定されない。グラム陰性細菌は菌血症の原因にもなりうる。グラム陰性細菌は、薄い壁でできた細胞膜を有し、これは単層のペプチドグリカンと、リポ多糖、リポタンパク質、およびリン脂質の外層から成る。代表的なグラム陰性の微生物には、カンピロバクター属、エシェリキア属、シゲラ属、エドワードシエラ属、サルモネラ属、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、ハフニア属、セラシア属、プロテウス属、モルガネラ属、プロビデンシア属、エルシニア属、エルウィニア属、ブティアウクセラ属、セデセア属、エウィンゲラ属、クライベラ属、テイタメラ属、およびラーネラ属からなる腸内細菌科が含まれるがこれらに限定されない。腸内細菌科に含まれないその他の代表的なグラム陰性の微生物には、緑膿菌、ステノトロホモナス・マルトフィリア、バークホルデリア・セパシア、ガードネレラ・バギナリス、およびアシネトバクター種が含まれるがこれらに限定されない。
【0115】
好ましくは、本発明のワクチン組成物またはポリペプチドもしくはポリヌクレオチドを使用する治療は、グラム陰性細菌感染症に感染している、またはグラム陰性細菌感染症(例えばサルモネラ種細菌感染症)のリスクにさらされている哺乳動物の患者または鳥類の患蓄に、効果的な量のポリペプチドを投与するステップのいずれかによって行うことができる。さらに、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、グラム陰性細菌性感染疾患、例えばサルモネラ種感染疾患に対する免疫応答を誘発するためのワクチンにおいて抗原として使用されうる。
医薬組成物の処方および投与
本発明の態様は、III型分泌系に関与する効果的な免疫量の単離サルモネラ種細胞培養物上清タンパク質または物質と、薬学的に許容される担体を有するワクチン組成物を提供し、前述のワクチン組成物は、脊椎動物の被験体においてグラム陰性細菌感染症を低減するまたは排除するのに効果的である。さらなる態様は、本発明の核酸、ポリペプチド(抗体を含む)、ペプチド模倣薬、非核酸有機小分子、または無機小分子を有する医薬組成物を提供する。上述のように、本発明の核酸、ポリペプチド、化学小分子は、内因性のサルモネラ種CCSポリペプチドの発現を阻害するために使用されうる。細胞中またはヒト以外の動物におけるそのような阻害によって、グラム陰性細菌感染症、例えばサルモネラ種細菌感染症またはグラム陰性保菌を治療するまたは緩和するための化合物を同定するためのスクリーニング様式がもたらされる。本発明の医薬組成物の被験体への投与は、被験体において免疫寛容を誘発する免疫学的環境を作り出すために使用される。これは、被験体において、ある抗原に対する免疫寛容を誘導するために用いられうる。
【0116】
ワクチン組成物、または核酸、ポリペプチド、もしくは化学小分子は、薬理組成物を作製するために薬学的に許容される担体(賦形剤)と混合されうる。薬学的に許容される担体は、例えば、本発明の医薬組成物の吸収速度またはクリアランス速度を安定化させる、または増加もしくは低下させるように働く、生理学的に許容可能な化合物を含みうる。生理学的に許容可能な化合物は、例えば、炭水化物、例えばブドウ糖、白糖、もしくはデキストラン、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸もしくはグルタチオン、キレート剤、低分子量タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチドのクリアランスもしくは加水分解を低下させる組成物、または賦形剤、あるいはその他の安定化剤および/または緩衝剤を含みうる。医薬組成物の吸収を安定化する、または増加もしくは低下させるために、リポソーム担体を含む界面活性剤も使用されうる。ペプチドおよびポリペプチド用の薬学的に許容される担体および製剤は当業者に既知であり、科学文献および特許文献で詳細に説明されており、例えば、最新版のRemington’s Pharmaceutical Science,Mack Publishing Company,Easton,Pa(“Remington’s”)を参照されたい。
【0117】
その他の生理学的に許容可能な化合物には、湿潤剤、乳化剤、分散剤、または微生物の増殖または作用を防ぐのに特に有用な保存剤が含まれる。各種保存剤は周知であり、例えば、フェノールおよびアスコルビン酸が含まれる。生理学的に許容可能な化合物を含む薬学的に許容される担体の選択が、例えば、本発明のペプチドまたはポリペプチドの投与経路やその特定の生理化学的特性に依存することが当業者には明らかであろう。
【0118】
一態様において、ワクチン組成物、または核酸、ペプチド、もしくはポリペプチドの溶液は、もしも組成物が水溶性の場合は、薬学的に許容される担体、例えば水性担体に溶解される。腸内、非経口、または経皮的薬物送達用の製剤において使用されうる水溶液の例には、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ハンク液、リンガー溶液、デキストロース/生理食塩水、ブドウ糖液などが含まれる。製剤は、生理学的条件に近づけるために必要な薬学的に許容される添加物質、例えば緩衝剤、等張化剤、湿潤剤、界面活性剤などを含みうる。添加剤は、さらなる活性成分、例えば殺菌薬、または安定化剤を含みうる。例えば、溶液は、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、またはトリエタノールアミンオレアートを含みうる。これらの組成物は、周知の伝統的な滅菌テクニックによって滅菌が可能である、または濾過滅菌されうる。得られた水溶液は、そのまま使用するように包装されうる、または凍結乾燥され、凍結乾燥製剤は投与前に滅菌水溶液と混合する。これらの製剤中のペプチドの濃度は非常に様々であり、主に、選択される特定の投与様式および患者のニーズに従って、液量、粘度、体重などに応じて選択される。
【0119】
固形製剤は、腸内(経口)投与に使用されうる。それらは、例えば、丸剤、錠剤、散剤、またはカプセル剤として製されうる。固形組成物については、従来の非毒性固体担体が用いられ、これには例えば、医薬品グレードのマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、ブドウ糖、白糖、炭酸マグネシウムなどが含まれる。経口投与では、例えば、通常用いられる賦形剤、例えば先に記載した担体のようなもののいずれか、および一般に10%〜95%の活性成分(例、ペプチド)を加えることによって、薬学的に許容される非毒性組成物が形成される。非固形製剤も腸内投与に使用されうる。担体は、石油、動物、植物、または合成由来のものを含む各種の油、例えばラッカセイ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油などから選択されうる。適当な医薬用賦形剤には、例えば、デンプン、セルロース、タルク、ブドウ糖、乳糖、白糖、ゼラチン、麦芽、コメ、コムギ、白墨、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールが含まれる。
【0120】
経口投与された場合、ワクチン組成物、または核酸、ポリペプチド、もしくは化学小分子は消化から保護されうる。これは、核酸、ペプチド、もしくはポリペプチドを、それらに酸加水分解および酵素加水分解に対する耐性を与える組成物と混合することによって、または適切な耐性を有する担体、例えばリポソーム中に核酸、ペプチド、もしくはポリペプチドを封入することのいずれかによって達成されうる。化合物を消化から保護する手法は当該技術分野で周知であり、例えば、治療薬の経口送達用の脂質組成物が記載されている、Fix,Pharm Res.13:1760‐1764,1996、Samanen,J.Pharm.Pharmacol.48:119‐135,1996、米国特許第5391377号を参照されたい(リポソーム送達は下記で詳しく取り上げる)。
【0121】
全身投与は、経粘膜的または経皮的手段によっても行われうる。経粘膜的または経皮的投与については、通過するべき障壁に適した浸透剤が製剤中に使用されうる。そのような浸透剤は当該技術分野で一般に知られており、例えば、経粘膜的投与の場合、胆汁塩およびフシジン酸誘導体が含まれる。さらに、通過を促進するために界面活性剤が使用されうる。経粘膜的投与は、鼻腔内スプレーによって、または坐剤の使用であってよい。例えば、Sayani,Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.13:85‐184,1996を参照されたい。局所の、経皮的投与では、物質は、軟膏剤、クリーム、軟膏、散剤、およびゲルに製される。経皮的送達システムは、パッチ剤も含みうる。
【0122】
本発明の態様によるワクチン組成物、または核酸、ポリペプチド、もしくは化学小分子は、製剤の内部送達が可能な、持続型送達または持続型放出メカニズムでも投与されうる。例えば、ペプチドの持続型送達が可能な、生分解性ミクロスフェアもしくはカプセルまたはその他の生分解性ポリマー構造が本発明の製剤に加えられうる(例えば、Putney,Nat.Biotechnol.16:153‐157,1998を参照)。
【0123】
吸入では、本発明の態様によるワクチン組成物、または核酸、ポリペプチド、もしくは化学小分子は、ドライパウダーエアロゾル、液体送達システム、エアージェットネブライザー、高圧噴射システムなどを含む当該技術分野で既知の任意のシステムを使用して送達されうる。例えば、Patton,Biotechniques 16:141‐143,1998、例えば、Dura Pharmaceuticals(カリフォルニア州サンディエゴ)、Aradigrn(カリフォルニア州ヘイワード)、Aerogen(カリフォルニア州サンタクララ)、Inhale Therapeutic Systems(カリフォルニア州サンカルロス)などによる、ポリペプチドマクロ分子用の製品および吸入送達システムを参照されたい。例えば、医薬製剤は、エアロゾルまたはミストの形態で投与されうる。エアロゾル投与では、界面活性剤および高圧ガスとともに、製剤は微細な形態で供給されうる。別の態様において、製剤を呼吸器組織に送達するための器具は、内部で製剤が気化される吸入器である。その他の液体送達システムには、例えば、エアージェットネブライザーが含まれる。
【0124】
本発明の態様によるワクチン組成物、または核酸、ポリペプチド、もしくは化学小分子が、任意適当な手段を用いて鳥類の被験体に投与されうる。代表的な手段は、経口投与(例、飼料または飲料水に加える)、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注射、腹腔内注射、点眼薬、または鼻腔内スプレーである。また、スプレーキャビネット(すなわち、鳥を内に入れて、ワクチンを含有する蒸気に当てるキャビネット)内で、またはコーススプレーによって、化合物を鳥類の被験体に投与することもできる。本明細書で説明する化合物を孵化後の鳥に投与する場合は、皮下注射またはスプレーキャビネットによる投与が一般的に使用される技術である。
【0125】
本発明の態様によるワクチン組成物、または核酸、ポリペプチド、もしくは化学小分子は、卵の内部に投与されうる。化合物の卵内投与は、卵内に保持されている間の鳥の胚への化合物の投与を含む。当業者には明らかであろうが、化合物は、卵のあらゆる適当な区画(例、尿嚢、卵黄嚢、羊膜、気胞、または鳥の胚そのもの)に投与されうる。化合物が投与される卵は、インキュベーションの好ましくは後半、より好ましくはインキュベーションの最後の4分の1の時期にある受精卵である。鶏卵は、好ましくはインキュベーションの約18日目に処理されるが、その他の時期が用いられてもよい。本発明が卵内の期間における予め定められた様々な時期において実施されうることが、当業者には明らかであろう。
【0126】
殻を通過して化合物を運ぶ任意の手段によって、本発明の態様によるワクチン組成物、または核酸、ポリペプチド、もしくは化学小分子が卵に投与されうる。しかし、投与の一般的な方法は注入によるものである。例えば、化合物は、卵の胚外の区画(卵黄嚢、羊膜、尿嚢、気胞)または胚そのものに注入されうる。一例として、注入部位は、羊水および胚そのものを含む、羊膜によって定められる領域内であってよい。インキュベーションの最後の4分の1の初めまでに、羊膜は十分に拡大しており、縦軸に沿って卵の大きいほうの一端の中央から注入を行うと、ほぼ全ての時期において確実に羊膜を通過できる。
【0127】
卵への注入のメカニズムは重要ではないが、処理によって孵化率が低下しないように、この方法が、胚の組織および臓器、またはそれを覆っている胚外の膜に必要以上に損傷を与えないことが好ましい。針のサイズおよび貫通の長さは、当業者によって決定されうる。針の損傷または鈍化を防ぐために、針を挿入する前に、殻にパイロットホールをパンチでまたはドリルで開けることが可能である。所望であれば、望ましくない細菌が二次的に侵入するのを防ぐため、実質的に細菌を通さない密閉材料、例えばワックスまたは同様のもので卵を密閉できる。
【0128】
本発明の医薬品を作製する上で、薬物動態および生体内分布を変化させるために、様々な製剤修飾が用いられ、操作されうる。薬物動態および生体内分布を変化させるための多数の方法が当業者に既知である。そのような方法の例には、タンパク質、脂質(例えば、リポソーム、下記参照)、炭水化物、または合成ポリマー(上述)のような物質からなる担体内での本発明の組成物の保護が含まれる。薬物動態に関する一般的な考察については、例えば、Remington’s,第37〜39章を参照されたい。
【0129】
本発明のワクチン組成物、または核酸、ポリペプチド、もしくは化学小分子は、当該技術分野で既知の任意の手段、例えば全身性、部位的、局所的(例、腫瘍内に直接、または腫瘍を標的して)、動脈内、髄膜内(IT)、静脈内(IV)、非経口、胸腔内、局所的、経口的、または限局性投与、皮下、気管内(例、エアロゾルによる)、または経粘膜的(例、頬粘膜、膀胱粘膜、膣粘膜、子宮粘膜、直腸粘膜、鼻粘膜)によって、単独で、または医薬組成物として送達されうる。投与可能な組成物を作製するための実際の方法は当業者に既知である、または当業者には明らかであり、科学文献および特許文献で詳細に説明されており、例えば、Remington’sを参照されたい。例えば、特定の臓器に重点をおくための“局所的効果”については、投与の一形態には、例えば、特定の臓器、例えば脳および中枢神経系に重点をおくための動脈内または髄腔内(IT)注射が含まれる(例えば、Gurun,Anesth Analg.85:317‐323,1997を参照)。例えば、本発明の核酸、ペプチド、またはポリペプチドを脳に直接送達するのが望ましい場合は頸動脈注射が好ましい。もしも高い全身用量が必要な場合は、非経口投与は好ましい送達経路である。非経口的に投与可能な組成物を作製するための実際の方法は、当業者に既知である、または当業者には明らかであり、例えば、Remington’sで詳細に説明されている。Bai,J.Neuroimmunol.80:65‐75,1997、Warren,J.Neurol.Sci.152:31‐38,1997、Tonegawa,J.Exp.Med.186:507‐515,1997も参照されたい。
【0130】
一態様において、本発明のワクチン組成物、または核酸、ポリペプチド、もしくは化学小分子を有する医薬製剤は、脂質単層または二重層、例えばリポソームに封入され、例えば、米国特許第6,110,490号、第6,096,716号、第5,283,185号、第5,279,833号を参照されたい。本発明の態様は、本発明の水溶性核酸、ペプチド、またはポリペプチドが、単層または二重層の表面に結合された製剤も提供する。例えば、ペプチドは、ヒドラジド‐PEG‐(ジステアロイルホスファチジル)エタノールアミン含有リポソームに結合されうる(例えば、Zalipsky,Bioconjug.Chem.6:705‐708,1995参照)。リポソーム、または任意の形態の脂質メンブレン、例えば平面脂質メンブレンまたはインタクトな細胞の細胞膜、例えば赤血球が使用されうる。リポソーム製剤は、静脈内、経皮的(例えば、Vulta,J.Pharm.Sci.85:5‐8,1996)、経粘膜的、または経口的投与を含む、任意の手段によるものであってよい。本発明は、本発明の核酸、ペプチド、および/またはポリペプチドがミセルおよび/またはリポソームに封入されている医薬製剤も提供する(例えば、Suntres,J.Pharm.Pharmacol.46:23‐28,1994、Woodle,Pharm.Res.9:260‐265,1992参照)。リポソームおよびリポソーム製剤は標準的な方法に従って作製可能であり、当該技術分野で周知である、例えば、Remington’s、Akimaru,Cytokines Mol.Ther.1:197‐210,1995、Alving,Immunol.Rev.145:5‐31,1995、Szoka,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467,1980、米国特許第4,235,871号、第4,501,728号、および第4,837,028号を参照されたい。
【0131】
一態様において、活性化合物は、化合物が身体から急速に排除されるのを防ぐ担体を使用して作製され、これは例えば放出制御製剤であり、埋め込み剤およびマイクロカプセル化送達システムが含まれる。生分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレンビニルアセタート、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸が使用されうる。そのような製剤の作製方法は当業者に明らかであろう。材料も、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から購入可能である。リポソームサスペンション(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞を標的するリポソームを含む)も、薬学的に許容される担体として使用されうる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるような、当業者に既知の方法に従って作製されうる。
【0132】
投与を簡単にし、投与量を均一にするために、経口または非経口組成物を単位剤形として製するのが有利である。本明細書で用いられる場合の単位剤形は、治療を受ける被験体に用いる単位用量として適した物理的に個別の単位を意味し、各単位は、所望の治療効果をもたらすように計算された既定の量の活性化合物を、必要な医薬用担体とともに含有する。
【0133】
そのような化合物の毒性および治療効力は、例えばLD50(集団の50%が死に至る用量)およびED50(集団の50%に治療効果がある用量)を判定するために、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順によって判定されうる。毒性と治療効果の間の用量比は治療インデックスであり、これは比LD50/ED50として表すことができる。高い治療インデックスを示す化合物が好ましい。毒性の副作用を示す化合物も使用できるが、未感染細胞への損傷の可能性を最小限に抑えることにより副作用を低下させるため、罹患した組織部位へそのような化合物を標的するシステムを設計するよう注意する必要がある。
【0134】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトに使用するための用量範囲の処方に使用されうる。そのような化合物の用量は好ましくは、毒性がほとんど、または全くない、ED50を含む血中濃度の範囲内に含まれる。用量は、用いられる剤形および用いられる投与経路に応じてこの範囲内で変動可能である。本発明の方法において使用される任意の化合物について、治療有効量が細胞培養アッセイからはじめに算出されうる。用量は、例えば炎症または望ましくない炎症を伴う疾患の動物モデルにおいて、細胞培養物において決定されたように、IC50(すなわち、症状の1/2最大阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む血漿濃度範囲を達成するために処方されうる。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用されうる。血漿中のレベルは、例えば、一般的に標識化された物質の高速液体クロマトグラフィーで測定されうる。研究、例えば前臨床プロトコールにおいて有用な動物モデルは当該技術分野で既知であり、例えば、炎症性疾患の動物モデル、例えばSonderstrup(Springer,Sem.Immunopathol.25:35‐45,2003)およびNikula et al.,Inhal.Toxicol.4(12):123‐53,2000)に記載されているもの、ならびに当該技術分野で既知のもの、例えばグラム陰性細菌感染症、例えばサルモネラ種感染症の動物モデルである。
【0135】
本明細書で定める通り、治療有効量のワクチン組成物、タンパク質、またはポリペプチド、例えば抗体(すなわち、有効量)は、約0.001〜30mg/体重kg、例えば約0.01〜25mg/体重kg、約0.1〜20mg/体重kg、または約1〜10mg/kg、2〜9mg/kg、3〜8mg/kg、4〜7mg/kg、または5〜6mg/体重kgに及ぶ。タンパク質またはポリペプチドは、約1〜10週間、例えば2〜8週間、約3〜7週間、または約4、5、または6週間にわたって、1日に、または1週間に1回もしくは複数回投与されうる。いくつかの例では、用量は、数ヶ月またはそれ以上にわたって必要となる場合がある。病気または疾患の重篤度、以前の治療、被験体の全体的な健康および/または年齢、ならびに存在するその他の病気を含むがこれらに限定されない特定の因子が、被験体を効果的に治療するのに必要な用量および時間に影響を与えうることを熟練者は理解するであろう。さらに、治療有効量の物質、例えばタンパク質またはポリペプチド(抗体を含む)での被験体の治療は、単回治療、または好ましくは一連の治療を含みうる。
【0136】
抗体については、用量は一般に体重の0.1mg/kg(例えば、10mg/kg〜20mg/kg)である。部分的にヒトの抗体および完全にヒトの抗体は、ヒトの体内においてその他の抗体よりも一般的に半減期が長い。従って、少ない用量と少ない投与回数が可能となる場合が多い。抗体を安定化させ、取り込みと組織浸透(例、脳内への)を高めるために、脂質化のような修飾も使用されうる。抗体の脂質化のための方法は、Cruikshank et al.,J.Acquired Immune Deficiency Syndromes and Human Retrovirology,14:193,1997に記載されている。
【0137】
本発明の態様は、脊椎動物の被験体においてグラム陰性細菌感染症を低減するまたは排除するのに効果的である、III型分泌系に関与する効果的な免疫量の単離サルモネラ種細胞培養物上清またはCCSタンパク質または物質と、薬学的に許容される担体を有するワクチン組成物、またはサルモネラ種細菌のIII型分泌系を調節または阻害するために、サルモネラ種CCS遺伝子発現の発現または活性を調節する物質または化合物を包含する。物質または化合物は、グラム陰性細菌感染症、例えばサルモネラ種細菌感染症の予防または治療のための方法において有用である。物質は、例えば化学小分子でありうる。そのような化学小分子には、ペプチド、ペプチド模倣薬(例、ペプトイド)、アミノ酸、アミノ酸アナログ、分子量が約10,000グラム/モル未満の非核酸の小さい有機化合物または無機化合物(すなわち、ヘテロ有機および有機金属化合物を含む)、分子量が約5,000グラム/モル未満の有機化合物または無機化合物、分子量が約1,000グラム/モル未満の有機化合物または無機化合物、分子量が約500グラム/モル未満の有機化合物または無機化合物、およびそのような化合物の塩、エステル、ならびにその他の薬学的に許容される形態が含まれるがこれらに限定されない。
【0138】
典型的な用量には、被験体の体重またはサンプルの重量1キログラム当たりミリグラムまたはマイクログラム量の化学小分子が含まれる(例、約1マイクログラム/キログラム〜約500ミリグラム/キログラム、約100マイクログラム/キログラム〜約5ミリグラム/キログラム、または約1マイクログラム/キログラム〜約50マイクログラム/キログラム)。化学小分子の適切な量が、調節されるべき発現または活性に対する化学小分子の効力に依存することがさらに理解される。これらの化学小分子の1つ以上が、本発明のポリペプチドまたは核酸の発現または活性を調節するために動物(例、ヒト)に投与されるとき、医師、獣医師、または研究者は、例えばはじめに比較的低い用量を処方し、その後、適切な反応が得られるまで用量を増やすことができる。さらに、任意特定の動物被験体に用いられる特定の用量レベルは、使用される特定の化合物の活性、被験体の年齢、体重、全体的な健康、性別、および食事、投与の時間、投与経路、排出速度、任意の薬剤の組み合わせ、ならびに調節されるべき発現または活性の程度をはじめとする、さまざまな因子に応じて変化することが理解される。
【0139】
医薬組成物は、投与説明資料とともに、容器、パック、またはディスペンサーに入れられる。
【0140】
本明細書で説明するような化合物は、本明細書で説明される治療方法のいずれかにおいて使用するための薬剤の作製に使用されうる。
【0141】
医薬組成物は一般に、滅菌済みで、実質的に等張であり、米国食品医薬品局の全ての医薬品製造管理および品質管理基準を全面的に遵守するものとして処方されうる。
治療レジメン:薬物動態
本発明の態様の医薬組成物は、投与方法に応じて様々な単位剤形で投与されうる。典型的なワクチン組成物、または核酸、ペプチド、およびポリペプチド医薬組成物用の用量は当業者に周知である。そのような用量は、典型的には推奨されるものであり、特定の治療上の状態又は患者の耐性に応じて調節される。これを達成するのに十分な核酸、ペプチド、またはポリペプチドの量は、“治療有効量”と定義される。この使用に効果的な投与スケジュールおよび量、すなわち“投薬レジメン”は、病気または状態のステージ、病気または状態の重篤度、患者の健康の全体的な状態、患者の身体状態、年齢、医薬品製剤、および活性物質の濃度などをはじめとする様々な因子に依存する。ある患者の投薬レジメンを計算する上で、投与様式も考慮される。投薬レジメンは、薬物動態、すなわち医薬組成物の吸収速度、バイオアベイラビリティ、代謝、クリアランスなども考慮しなければならない。例えば、最新版のRemington’s、Egleton,Peptides 18:1431‐1439,1997、Langer,Science 249:1527‐1533,1990を参照されたい。
【0142】
治療上の用途では、グラム陰性細菌感染症、例えばサルモネラ種細菌感染症の危険にさらされている患者、またはグラム陰性細菌感染症、例えばサルモネラ種に罹患している患者に、少なくとも部分的に症状または病気、およびまたはその合併症を抑えるまたは防ぐのに十分な量で組成物が投与される。組成物は、グラム陰性保菌、例えばサルモネラ種保菌の危険にさらされている患者、またはグラム陰性保菌、例えばサルモネラ種がある患者に投与される。例えば、一態様において、静脈内(IV)投与用の溶解性ペプチド医薬組成物用量を有するワクチン組成物は、数時間(典型的には1、3、または6時間)かけて投与される約0.01mg/時間〜約1.0mg/時間となり、これを断続的なサイクルで数週間繰り返すことができる。血流中ではなく定められた部位、例えば体腔、または臓器の内腔、例、脳脊髄液(CSF)に薬物が投与される場合、著しく高い用量(例、最大で約10mg/mlに及ぶ)が使用されうる。
【0143】
以下の、本発明を実施するための特定の態様の実施例は、例を示すものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
典型的な態様
方法
細胞増殖:
サルモネラ・エンテリカの血清型であるネズミチフス菌を使用した、分泌タンパク質のin vitro産生を、低リン酸、低マグネシウム培地(LPM)、pH5.8で得たSPI−2誘導条件下で30リットル容量の発酵槽培養中で増殖させた。具体的には、5mM KCl、7.5mM(NHSO、0.5mM KSO、38mMグリセロール(0.3%v/v)、0.1%カザミノ酸、8μM MgCl、337μM PO3−、80mM 2‐[N‐モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)である。発酵槽培養器からの細菌を、培養上清から分離し、培養上清をタンジェンシャルフロー限外濾過(Coombes et al.,J Biol Chem.,2004,279:49804‐15)で濃縮した。
【0144】
図1は、上清の濃度を示し、SPI−2エフェクター(SseB)でプローブしたが、これは適切な誘導条件のリードアウトである。“Neat”は、“濃縮されていない上清”を意味し、“conc”は上清が濃縮された(従って、SseBがより多く存在する)ことを意味する。上清は、フラスコまたは発酵槽(NTCで)のいずれかで増殖される。図1は、この結果から、CCS産生のスケールアップが可能であることを示す。
マウス:
C57BL/6(雌)を使用した。これらのマウスは感染症にかかりやすく、大腸炎のストレプトマイシン前治療モデルおよび全身性腸チフス感染症の両方に使用されうる。この実験では非Sm‐前治療モデルを使用し、エンドポイント測定値として盲腸、脾臓、および肝臓の定着を調査した。
【0145】
3つの実験グループのマウスを使用した。
(A)対照(生理食塩水のみのマウス10匹、RIBI+生理食塩水のマウス5匹)
(B)SL1344SPグループ(SL1344SP+RIBIを2回注射されるマウス15匹)
(C)△ssaR SPグループ(△ssaR SP+RIBIを2回注射されるマウス15匹)
RIBIアジュバントを使用した注射の合計数=70
抗原
サルモネラのSL1344および△ssaR株から得た発酵槽培養物由来の上清を濃縮(4000〜5000倍)して、高濃度の分泌タンパク質(SP)を得た。濃縮SPは、5mg/ml(SL1344バッチ#3)と2mg/ml(△ssaRバッチ#4)の範囲にあった。SP抗原を滅菌生理食塩水(0.9%)で希釈し、RIBIアジュバントと混合した。
プライム
0日目:各マウスに、50μgのSP+アジュバントを、総用量200μL(2つの異なる部位に100μLの皮下注射)で投与した。
追加免疫
初回注射(0日目)の後、初回注射と同じ用量で30日目に追加免疫注射を行った。60日目に、106野生型サルモネラ(SL1344)でマウスのチャレンジ(経口感染)を行った。
RIBIアジュバント
シグマアルドリッチより販売されている、MPL+TDMエマルション(製品番号M6536)である。各バイアルは、10回の注射に十分な量であり、7つのバイアルが必要である。
抗原およびRIBIアジュバント用希釈剤:
滅菌生理食塩水(0.9%)
1mLシリンジ/針、ボルテックス、チューブなど。
【0146】
この方法は、1匹のマウスの接種を説明するものである。
【0147】
SPを生理食塩水で50μg/100μLの濃度に希釈する。例:もし抗原ストックが5mg/mL(5μg/μL)の場合、10μLを90μLの生理食塩水と混合する。混合および注射の際のロスを補うため、必要量より少し多めに作製する。従って、12μLのSPと108μLの生理食塩水を混合して120μLとし、100μLを使用する。
【0148】
RIBIアジュバントを40〜45℃に温める。1mLシリンジを使用して、ラバーストッパーから1mLの生理食塩水をバイアルに直接注入する(ラバーキャップシールはそのままにしておく)。2〜3分間激しくボルテックスするか混合して、エマルションを形成する。バイアルを反転し、さらに1分間ボルテックスする。これにより、2×濃度のアジュバントが得られ、これは、等量のSP抗原と混合すると10回分の注射に十分な量である。
【0149】
シリンジを使って、100μLのRIBIエマルションを取り、1.5mLの滅菌マイクロチューブに移す。[残りのRIBIは、4℃で最長60日間保管可能]100μLの希釈SP抗原(50μg/100μL)+100μL RIBIをマイクロチューブに加えて混和する。これによって、50μgSP+RIBIを含有する全量200μLが得られる(1回の注射に十分な量)。
【0150】
すべてのRIBIバイアルをRIBI‐SPエマルションの作製に使用するために、2mLのSP溶液(25μg/100μL)をRIBIバイアルに直接加え、激しく混和する。これによって、50μgの抗原を含む200μLの溶液が得られる。
【0151】
注射の前に、チューブを37℃に温め、軽くボルテックスする。
【0152】
100μLを1箇所に皮下注射した後、別の箇所に100μLを皮下注射する。
【0153】
尾の付け根から離れていない、腰椎‐仙椎部領域(マウスの背中)の両側に注射するのが有用である。
【実施例】
【0154】
(実施例1)
研究者が、マウスに2種類の毒性タンパク質を注射することにより行った典型的なトライアルでは、接種されたマウスは、腸内の細菌数の減少(CFU)、盲腸重量の増加(盲腸の重量を減少させることが多い、盲腸における病理学的反応を制限して)、複数の腸内部位(粘膜、上皮、粘膜下層)における一般的な炎症の低下を示した。マウスで行ったこれらのトライアルは、ワクチン接種されたマウスにおけるサルモネラによる定着を抑制する上で、印象深く、統計学的に有意な結果を示した。このデータの概要を下記の表に示す。
【0155】
【表1】

家禽におけるSPI−1およびSPI−2ベースワクチンの防御能をテストするために、National Research Council(オタワ)およびブリティッシュコロンビア大学(バンクーバー)から入手したCCSサンプルをアジュバントVSA3とともに下記のように処方した。
【0156】
【表2】

各ワクチン用量が100μgのCCSタンパク質を含有するように単独の抗原を投与される全てのグループの処方を行い、50μgの各抗原でCCS SPI−1/SPI−2の組み合わせのワクチンを処方した。抗原を含まないプラセボグループは、その他のグループと同じVSA3濃度で、リン酸緩衝生理食塩水で希釈されたアジュバントを含んでいた。21週齢のニワトリのグループを各CCS製剤の皮下注射により免疫し、14日後に同じワクチンで追加免疫を行った。2回目の免疫の10日後に、1ml量の経口経路で、5×10CFUのネズミチフス菌で全ての鳥のチャレンジを行った。感染5日後、全ての鳥を安楽死させ、盲腸、肝臓、および脾臓をそれぞれの鳥から摘出した。盲腸内容物の重量を計測し、希釈し、腸内の定着レベルを判定するためにブリリアントグリーン寒天培地にプレーティングした。ホモジナイズした肝臓および脾臓のサンプルも、プレーティングの前に複製サンプルもサルモネラ豊富培養液中で培養したことを除いて、同様に処理した。
【0157】
図11Aは、グループそれぞれにおける盲腸の定着のレベルを示し、免疫グループのいずれにおいても有意な差は認められなかった。図11Bは、肝臓および脾臓の定着を示し、CCS SPI−2ワクチンが投与された両グループとも、その他のグループのいずれよりも有意に低い定着を示した(p≦.05)。CCS SPI−1製剤またはCCS SPI−1/SPI−2製剤で免疫されたニワトリの定着と、プラセボが投与された鳥に有意な差はなかった。
【0158】
この研究は、2つの異なる提供源からのCCS SPI−2ワクチン製剤が、ネズミチフス菌の全身への拡がりから有意に鳥を防御することができたことを示唆する。CCS SPI−1およびCCS SPI−2タンパク質の両方が投与されたグループは、微生物の全身への拡がりに対する有意な防御を示さなかった。ワクチン製剤のうち、腸粘膜の定着に対する防御をもたらしたものはなかった。
【0159】
本発明の特定の態様を例示し説明したが、そのような態様は本発明の例を示すものに過ぎず、添付の請求項に従って解釈される本発明を限定するものではないと考えられるべきである。
【0160】
本明細書において言及した全ての出版物および特許出願は、あたかも個々の出版物または特許出願を具体的かつ個別に参照することにより引用するものとして示されるかのように、参照することによりその全体を本明細書に引用したものとする。
【0161】
より明確な理解のために前述の発明を例示および実施例によってある程度詳細に説明したが、本発明の教示に照らして、添付の請求項の精神または範囲から逸脱することなしに、特定の変更および改変が加えられてもよいことが当業者には容易に明らかになるであろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
効果的な免疫量の単離サルモネラ種細胞培養上清と、薬学的に許容される担体を有するワクチン組成物であって、該ワクチン組成物は、脊椎動物の被験体においてグラム陰性細菌感染症を低減または排除するのに効果的である、ワクチン組成物。
【請求項2】
前記感染症はサルモネラ種感染症である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
前記組成物は、サルモネラ種保菌の低減または排除にさらに効果的である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項4】
前記組成物は、保菌および細菌感染症の両方の低減または排除に有効である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項5】
前記サルモネラ種細胞培養上清は、SPI−2誘導条件下において、前記細胞培養を、低リン酸、低マグネシウム培地(LPM)が添加された最少培地を含む培地中でインキュベートするプロセスによって産生され、前記LPM培地の組成は、5mM KCl、7.5mM(NHSO、0.5mM KSO、38mM グリセロール(0.3% v/v)、0.1% カザミノ酸、8μM MgCl、337μM PO3−、80mM 2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)、pH5.8である、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
前記LPM培地の組成は、5mM KCl、7.5mM(NHSO、0.5mM KSO、38mM グリセロール(0.3% v/v)、0.1% カザミノ酸、8μM MgCl、337μM PO3−、および100mM Tris−HCl、pH7.0である、請求項5に記載のワクチン組成物。
【請求項7】
前記脊椎動物の被験体は哺乳動物の被験体または鳥類の被験体である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項8】
前記鳥類の被験体は1日齢またはそれ以上である、請求項7に記載のワクチン。
【請求項9】
前記鳥類の被験体は卵内にある、請求項8に記載のワクチン
【請求項10】
免疫アジュバントをさらに含む、請求項1に記載のワクチン。
【請求項11】
前記免疫アジュバントは、水中油型乳剤を含む、請求項10に記載のワクチン。
【請求項12】
前記免疫アジュバントは、鉱物油およびジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミドを含む、請求項10に記載のワクチン。
【請求項13】
前記免疫アジュバントは、VSA3である、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項14】
VSA3は、約20%〜約40%(v/v)の濃度で前記組成物中に存在する、請求項11に記載のワクチン組成物。
【請求項15】
VSA3は、約30%(v/v)の濃度で前記組成物中に存在する、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項16】
前記単離サルモネラ種細胞培養上清から選択される、1つ以上の組み換え抗原または精製抗原をさらに含む、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項17】
脊椎動物の被験体においてグラム陰性細菌感染症を予防または治療するための方法であって、
単離サルモネラ種細胞培養上清を、前記細菌感染症を低減するかまたは排除するのに効果的な量で前記脊椎動物の被験体に投与するステップを有する、方法。
【請求項18】
前記サルモネラ種細胞培養上清は、SPI−2誘導条件下で前記細胞培養物を、低リン酸、低マグネシウム培地(LPM)が添加された最少培地を含む培地中でインキュベートするプロセスによって産生され、前記LPM培地の組成は、5mM KCl、7.5mM(NHSO、0.5mM KSO、38mM グリセロール(0.3% v/v)、0.1% カザミノ酸、8μM MgCl、337μM PO3−、80mM 2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)、pH5.8である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記LPM培地の組成は、5mM KCl、7.5mM(NHSO、0.5mM KSO、38mM グリセロール(0.3% v/v)、0.1% カザミノ酸、8μM MgCl、337μM PO3−、100mM Tris−HCl、pH7.0である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記感染症はサルモネラ種感染症である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記単離サルモネラ種細胞培養上清由来のタンパク質または物質は、III型分泌系に関与する、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記脊椎動物の被験体は、哺乳動物の被験体または鳥類の被験体である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記鳥類の被験体は、1日齢またはそれ以上である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記鳥類の被験体は、卵内にある、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
免疫アジュバントをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記免疫アジュバントは、水中油型乳剤を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記免疫アジュバントは、鉱物油およびジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミドを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記免疫アジュバントはVSA3である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
VSA3は、約20%〜約40%(v/v)の濃度で前記組成物中に存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
VSA3は、約30%(v/v)の濃度で前記組成物中に存在する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記単離サルモネラ種細胞培養上清から選択される、1つ以上の組み換え抗原または精製抗原をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項32】
脊椎動物の被験体において、サルモネラ種細菌感染症に対する免疫応答を誘導するための方法であって、単離サルモネラ種細胞培養上清を、前記細菌感染症を低減するまたは排除するのに効果的な量で前記脊椎動物の被験体に投与するステップを有する、方法。
【請求項33】
前記単離サルモネラ種細胞培養上清由来のタンパク質または物質は、III型分泌系に関与する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記脊椎動物の被験体は、哺乳動物の被験体または鳥類の被験体である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記鳥類の被験体は、1日齢またはそれ以上である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記鳥類の被験体は、卵内にある、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
脊椎動物被験体においてサルモネラ種細菌の定着を低減するための方法であって、前記脊椎動物の被験体に、III型分泌系に関与する単離サルモネラ種細胞培養上清由来のタンパク質と、免疫アジュバントを含む組成物を、前記脊椎動物の被験体においてサルモネラ種細菌数を減少させるのに効果的な量で投与するステップを有する、方法。
【請求項38】
前記脊椎動物の被験体においてグラム陰性細菌の定着を低減するステップは、前記脊椎動物の被験体からの感染の伝達のリスクを低減するステップをさらに有する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
脊椎動物の被験体において、サルモネラ種細菌の排菌を減少させるための方法であって、前記脊椎動物の被験体に、III型分泌系に関与する単離サルモネラ種細胞培養上清由来のタンパク質と、免疫アジュバントを含む組成物を、前記脊椎動物の被験体においてサルモネラ種細菌数を減少させるのに効果的な量で投与するステップを有する、方法。
【請求項40】
前記脊椎動物の被験体においてサルモネラ種細菌の排菌を減少させるステップは、前記脊椎動物の被験体からの感染の伝達のリスクを低減するステップをさらに有する、請求項39に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−501599(P2010−501599A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525882(P2009−525882)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001555
【国際公開番号】WO2008/025171
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(502087932)ザ ユニヴァーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア (10)
【出願人】(509060040)ユニバーシティー オブ サスカチュワン アズ リプレゼンテッド バイ バクシン アンド インフェクシャス ディジーズ オーガナイゼーション (1)
【Fターム(参考)】