脊椎手術支援用超音波プローブ及びその製造方法
【課題】触覚による検査と超音波診断による検査とを行える脊椎手術支援用超音波プローブにおいて、挿入部の先端部において絶縁性を確保すると共に良好な振動伝達を行えるようにする。
【解決手段】挿入部34の先端には先端部品56が設けられている。先端部品56は金属部品58と樹脂部品60とからなり、金属部品58は触覚部材44とアンカー62とで構成される。樹脂部品60はキャップ部分68と包囲部分70とにより構成される。先端部品56における差込部分56Bがパイプ74の先端部74A内に差し込まれる。アンカー62と先端部74Aとは一定の距離隔てられつつも近接しており、これによって絶縁性が確保されつつ、ヘッド44Aから伝達された振動がアンカー62からパイプ74に良好に伝達される。
【解決手段】挿入部34の先端には先端部品56が設けられている。先端部品56は金属部品58と樹脂部品60とからなり、金属部品58は触覚部材44とアンカー62とで構成される。樹脂部品60はキャップ部分68と包囲部分70とにより構成される。先端部品56における差込部分56Bがパイプ74の先端部74A内に差し込まれる。アンカー62と先端部74Aとは一定の距離隔てられつつも近接しており、これによって絶縁性が確保されつつ、ヘッド44Aから伝達された振動がアンカー62からパイプ74に良好に伝達される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脊椎手術支援用超音波プローブに関し、特に、脊椎手術において椎骨に形成された案内孔の内部を検査するための超音波プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、生体組織に対する超音波の送受波によって得られた受信信号に基づいて超音波画像を形成する装置である。超音波診断装置は、装置本体と超音波プローブとにより構成される。装置本体は、送信部、受信部、画像形成部、表示器、操作パネル、等を備える。超音波プローブは装置本体に対して着脱自在に装着される。超音波プローブは、一般に、アレイ振動子を備える。アレイ振動子は整列した複数の振動素子により構成され、それらによって超音波ビームが形成される。超音波ビームの電子走査によってビーム走査面が形成される。装置本体は、超音波プローブから出力された受信信号に基づいて、ビーム走査面に対応する二次元断層画像(Bモード画像)を形成する。超音波画像として、二次元断層画像の他に、二次元血流画像、ドプラ画像、三次元画像等が知られている。
【0003】
ところで、脊椎を構成する複数の椎骨を金属部品を利用して固定する手術方法が普及しつつある。それが図1に示されている。脊椎は複数の椎骨10,12を有する。それらの間には椎間板14が存在している。各椎骨10,12には、それぞれ2つのボルト(スクリュー)16,18が取り付けられ、つまり図示の例では合計4つのボルトが取り付けられる。椎骨10,12の右側に並ぶ2つのボルト16,18が金属ロッド20によって連結される。椎骨10,12の左側に並ぶ2つのボルト(図示されていない)も別の金属ロッドによって連結される。このような方法により、2つの椎骨10,12の位置関係が相互に固定される。
【0004】
上記の固定術においては、各椎骨に対して2つのボルトを取り付ける前に、各椎骨に対して2つの案内孔(パイロット孔)が形成される。図2には椎骨10が示されている。椎骨10は椎体22と椎弓24とにより構成される。椎骨10は神経が通る椎孔(脊柱管)26を有している。2つの案内孔28,30はそれぞれ適正な位置に適正な角度で形成されなければならない。特に、案内孔28,30が椎孔26に進入したり近接したりすることは回避されなければならない。仮にそのような不適な案内孔にボルトを取り付けるならば、そのボルトをして椎孔26を通っている神経に損傷を与えてしまうおそれが生じる。そのような事項を踏まえつつ、各案内孔28,30は外科手術用ドリルを用いて慎重に形成される。しかし、各案内孔28,30の形成過程において、各案内孔28,30の内部の様子を目視観察することは不可能である。
【0005】
そこで、従来においては、各案内孔28,30の形成過程において、触覚検査専用の金属器具が繰り返し利用される。金属器具は、針金のような細長い軸部分と、それに連結されたやや太いグリップ部分と、を有する。軸部分の先端には小さな球状の触覚子が備えられている。軸部分とグリップ部分は一体化されており、すなわち、金属器具は直線的に伸長した単一の金属部材として構成されている。金属器具のグリップを摘みながら、金属器具の先端部を案内孔に差し込み、その状態で案内孔の内壁面を触覚部材(つまり触角あるいは接触子)でなぞることによって、案内孔の内壁面形状を触覚にて間接的に知覚することが可能である。すなわち、内壁面の凹凸形状は、触覚子の振動(位置や力の変化を含む)としてグリップ部分まで伝わってくる。その振動を複数の指先で感じ取ることにより、間接的に内壁面の凹凸形状を知覚することが可能である。
【0006】
しかしながら、上記専用の金属器具を用いた触覚による検査法では、案内孔の状態を必ずしも十分に評価することはできない。触覚法では微小なひびを特定困難であり、また表面より内部の様子を観察することは不可能である。触覚による検査それ自体に問題がないとしても、安全性をより高めるという観点から、触覚とは別の方法で、案内孔の状態(あるいは椎骨の構造)を検査した方が望ましい。以上から、触覚検査及び超音波診断の両方を行える組織挿入型の超音波プローブの実現が要請される。かかる超音波プローブによれば、挿入部の抜き差しなくして、触覚検査の直後に超音波診断を行ったり、逆に、超音波診断の直後に触覚検査を行ったり、あるいは、触覚検査と同時に超音波診断を行ったりすることが可能である。
【0007】
特許文献1には、骨に形成されたパイロット孔に対して超音波の送受波を行う部材を挿入することによって超音波診断を行うシステムが開示されている。しかし、特許文献1には、触覚検査と超音波診断の両者を行えるプローブについては開示されていない。また、特許文献1には、二次元断層画像を形成するための具体的な構成(アレイ振動子、配線、等)については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6579244号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
触覚検査及び超音波診断の両方を行える脊椎手術支援用の超音波プローブの実現に当たっては、振動の良好な伝達と確実な絶縁の両方を達成する必要がある。すなわち、触覚部材で生じた振動を管部材及び操作部を経由して使用者の手まで確実に伝達するという観点からは、触覚部材や管部材をそれぞれ硬質部材(通常、金属部材)で構成すると共に、触覚部材と管部材とを直接的に連結してしまうのが望ましい。しかしながら、管部材には電圧が印加される振動子ユニットが収容され、また、管部材はシールド部材として電気的部品としても機能し得るので、管部材と触覚部材とを直接的に連結するのは安全性の観点からは望ましくない。結局、両者間の電気的導通を確実に遮断しつつ両者を機械的あるいは物理的に強固に連結することが要請される。
【0010】
本発明の目的は、触覚検査及び超音波診断の両方を行える脊椎手術支援用超音波プローブを提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、脊椎手術支援用超音波プローブにおいて、振動の良好な伝達と絶縁性の確実な確保とを実現することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、触覚部材と管部材とを機械的あるいは物理的に強固に連結できる、脊椎手術支援用超音波プローブの製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、部材接合のための加熱処理の影響がアレイ振動子に及ばない、脊椎手術支援用超音波プローブの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る脊椎手術支援用超音波プローブは、椎骨に形成された案内孔に挿入される挿入部と、前記挿入部に連結され、前記挿入部から振動が伝達され、使用者によって把持される操作部と、を含む。前記挿入部は、管部材と、先端部品と、を含む。前記先端部品は、前記管部材の先端部に設けられ、前記椎骨の内部を超音波診断により検査するための複数の振動素子を有するアレイ振動子と、前記管部材の先端部に設けられた部品であって、前記椎骨の内部を前記使用者の触覚により検査するための触覚部材と当該触覚部材に連なるアンカーとを有する金属部材と、前記アンカーを包囲した包囲部分を有する絶縁部材と、を備える。前記先端部品の内で前記アンカー及び前記包囲部分からなる差込部分が前記管部材の中に嵌め込まれる。
【0015】
上記構成によれば、超音波プローブを利用して触覚により組織内部を検査でき、また、超音波診断(超音波の送受波)により組織内部を検査できる。具体的には、触覚部材を組織表面に当接させそれを前後左右に動かすことによって、組織内部の形態を触角によって間接的に知覚することが可能である。触覚部材で生じた振動あるいは力は管部材を伝搬して操作部に伝わり、そこから操作部を把持した手に伝わる。そのような触覚を利用した検査の前又は後に、あるいは、それと同時に、超音波の送受波による超音波診断を実行できる。通常、断層画像が形成され、椎骨の内部(例えば案内孔の表層)が画像化される。触覚的判断及び超音波画像の視覚的判断の併用によって案内孔が適正に形成されているのか否かを評価することが可能である。例えば椎骨の表層まで評価できるから、案内孔が椎孔に近接しているような状態を容易に判断することが可能である。
【0016】
上記構成においては、先端部品が金属部材と絶縁部材とで構成され、特に金属部材の内でアンカーが絶縁部材の包囲部分によって覆われているから、金属部材が管部材に不用意に接触してしまうことを効果的に防止できる。また、金属部材が振動子ユニットに不用意に接触してしまうことも効果的に防止できる。先端部品における差込部分が管部材の中に嵌め込まれるから、望ましくは圧入されるから、両者を機械的に強固に連結することが可能である。特に、そのような嵌め込み状態においては、金属部材の内でアンカーが管部材の内部に位置することになるから、管部材の内部に位置したアンカーを通じて、その周囲に存在する管部材へ振動を効率的に伝達することが可能である。キャップ部分は管部材の先端開口を塞ぎ、管部材内への体液等の進入を阻止する。キャップ部材の形状を前方に膨らんだドーム状とすれば、生体への安全性を高められる。
【0017】
包囲部分におけるアンカー周囲の厚みは、絶縁性と振動伝達の両者の観点から定めるのが望ましい。一般に前者の観点からはできるだけ厚くした方がよいが、後者の観点からはできるだけ薄くした方がよい。アンカーの形態を管部材の軸方向に伸長した形態とすることが望ましく、特に、管部材の内部空間の形態と同じく、円柱形状にするのが望ましい。
【0018】
望ましくは、前記差込部分は円柱形状を有し、前記アンカーは、抜け止め構造を有する側面をもった円柱形状を有する。アンカーを単純な円柱形状とした場合、それが抜け出やすくなる。そこで、上記のようにアンカーの側面に抜け止め構造を設けるのが望ましい。望ましくは、前記抜け止め構造は少なくとも1つの凹部又は凸部を有する。それらの形状要素は、中心軸に直交する方向に起伏を生じさせるものである。
【0019】
望ましくは、前記管部材はシールド作用及び振動伝達作用を発揮する金属パイプ部材により構成され、前記挿入部は更に前記管部材の外側を覆う絶縁性シースチューブを有し、前記絶縁部材は前記包囲部分に連なり前記管部材の先端用口部を覆うキャップ部分を有し、前記キャップ部分と前記絶縁性シースチューブの先端開口部とが接着される。絶縁性シースチューブは金属パイプ部材としての管部材の保護と生体の保護とを同時に図り、また、管部材を生体から電気的に隔てるものである。キャップ部分と絶縁性シースチューブとが同一材料又は類似材料で構成されていてもよい。少なくとも両者の接着が確実に行えるように各部材の材料を構成する決めるのが望ましい。
【0020】
望ましくは、前記キャップ部分と前記絶縁性シースチューブの先端開口部とが熱溶着により一体化される。これにより両者間が完全にシールされる。熱溶着を利用すれば挿入部から接着剤が漏れ出ることを防止できる。
【0021】
望ましくは、前記キャップ部分は前方へ膨らんだドーム形状を有し、前記触覚部材は、前記キャップ部分の中央部から突出して前記管部材の中心軸に直交する所定方位へ向かう軸と、当該軸の先端部に設けられた球状のヘッドと、を有する。触覚部材としては各種の形態が考えられる。いずれにしても、案内孔の内壁面に自然にアプローチでき、骨の表面に滑らかに接することができるように構成するのが望ましい。望ましくは、前記ヘッドの全部又は一部が前記所定方位において前記管部材の側面レベルよりも生体側へ突出する。この構成によればヘッドを案内孔の内壁面に確実に当接させることが可能となる。
【0022】
望ましくは、前記管部材の先端部において前記所定方位に前記アレイ振動子で送波及び受波される超音波を通過させる開口部が形成され、前記管部材における前記開口部の奥側に前記アレイ振動子を備えた振動子ユニットが埋設される。望ましくは、前記振動子ユニットの周囲に絶縁性モールドが施される。
【0023】
本発明に係る脊椎手術支援用超音波プローブの製造方法は、触覚部材とそれに連なるアンカーとを有する金属部材と、キャップ部分とそれに連なり前記アンカーを包囲した包囲部分とを有する絶縁部材と、を備える先端部品を製作する工程と、前記先端部品と絶縁性シースチューブとを接着する工程であって、前記キャップ部分と前記絶縁性シースチューブの開口部とを熱溶着により一体化させることによりアウターアセンブリを製作する工程と、アレイ振動子を備えた振動子ユニットを金属パイプ部材の先端部内に設けることよりインナーアセンブリを製作する工程と、前記アウターアセンブリの中に前記インナーアセンブリを差し込むことにより挿入部を製作する工程と、前記挿入部と操作部とを連結させる工程と、を含む。
【0024】
上記構成によれば、アウターアセンブリとインナーアセンブリとを別々に製作した上で、両者が組み合わされる。前者の製作に当たって加熱処理が行われるとしても、後者に熱的な影響は及ばない。これによりアレイ振動子の分極消失等の問題を未然に回避できる。上記構成では、先端部品がまず製作され、その段階でアンカーと金属パイプ部材の内面との間の隙間が包囲部分の形状及び厚みとして規定される。よって、その後の工程において製作誤差が発生しても絶縁性及び良好な振動伝達を確保できる。先端部品と絶縁性シースチューブの熱溶着によって両者が一体化され、アウターアセンブリの内部は前方に完全に閉じた空間となるから、そこに接着剤を多量に入れても、生体側へ流出することはない。
【0025】
望ましくは、前記アウターアセンブリを製作する工程では、前記先端部品における差込部分と前記絶縁性シースチューブとの間に円筒形スリットが形成され、前記挿入部を製作する工程では、前記円筒形スリットに前記金属パイプ部材の先端部が挿入される。
【0026】
望ましくは、前記挿入部を製作する工程では、前記触覚部材が向かう方位と前記アレイ振動子が向く方位とが揃うように前記アウターアセンブリの中に前記インナーアセンブリが位置決められる。
【0027】
望ましくは、前記挿入部を製作する工程では、前記アウターアセンブリの中に前記インナーアセンブリを差し込む前に前記アウターアセンブリの中にモールド用接着剤が流し込まれる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、触覚検査及び超音波診断の両方を行える脊椎手術支援用超音波プローブを提供できる。あるいは、本発明によれば、脊椎手術支援用超音波プローブにおいて、振動の良好な伝達と絶縁性の確実な確保とを実現できる。あるいは、本発明によれば、触覚部材と管部材とを機械的あるいは物理的に強固に連結できる。あるいは、本発明によれば、部材接合のための加熱処理の影響がアレイ振動子に及ばないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】金属器具を利用した脊椎固定手術を説明するための図である。
【図2】椎骨に形成される2つの案内孔を説明するための図である。
【図3】実施形態に係る脊椎手術支援用超音波プローブの斜視図である。
【図4】図3に示した脊椎手術支援用超音波プローブの側面図である。
【図5】図3に示した脊椎手術支援用超音波プローブの使用状態を示す図である。
【図6】図3に示した脊椎手術支援用超音波プローブの先端部の構造を示す断面図である。
【図7】図6に示した振動子ユニットの断面図である。
【図8】図4に示した挿入軸の断面図である。
【図9】操作部の断面図である。
【図10】本実施形態に係る超音波プローブの製造方法を示すフローチャートである。
【図11】金属部品の側面図である。
【図12】金属部品におけるアンカーの斜視図である。
【図13】先端部品の断面図である。
【図14】アウターアセンブリの先端部分を示す断面図である。
【図15】FPC基板が取り付けられた振動子ユニットを示す第1の斜視図である。
【図16】FPC基板が取り付けられた振動子ユニットを示す第2の斜視図である。
【図17】パイプの先端部を示す断面図である。
【図18】アウターアセンブリに対するインナーアセンブリの挿入を説明するための図である。
【図19】超音波診断システムの構成例を示す図である。
【図20】超音波診断システムの他の構成例を示す図である。
【図21】他の実施形態に係る配線構造体を示す斜視図である。
【図22】図21に示した配線構造体を構成する2つのFPC基板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
図3には、本発明に係る超音波プローブの好適な実施形態が示されており、図3はその斜視図である。本実施形態に係る組織挿入型超音波プローブは、具体的には、脊椎手術支援用超音波プローブ32である。この超音波プローブ32は、金属器具を用いて脊椎の固定手術を行う場合において用いられるものである。ただし、以下に説明するいくつかの技術的特徴はいずれも他の組織挿入型超音波プローブに適用可能である。
【0032】
図3において、脊椎手術支援用超音波プローブ32は、挿入部34および操作部36を備えている。挿入部34はその中心軸方向に沿って伸長した軸状の部材である。挿入部34の後端部が操作部36に連結されている。操作部36は使用者によって握られる部分である。操作部36の後端にはレセプタクル38が設けられている。レセプタクル38はコネクタを構成し、それに対しては、ケーブル42が接続されたコネクタ40が着脱自在に装着される。ケーブル42が操作部36に対して直接的に接続されてもよい。
【0033】
図4には、図3に示した脊椎手術支援用超音波プローブ32の側面図が示されている。挿入部34はその中心軸方向に沿って伸長した形態を有し、その挿入部34は椎骨に形成された案内孔の中に挿入されるものである。挿入部34の先端部には触覚部材(接触子)44が設けられている。この触覚部材44は、案内孔の内壁面に当接されるものであり、このような当接により生じる振動や力が、挿入軸48および操作部36を介して使用者の手に伝達される。挿入部34における先端部には上記の触覚部材44の他にアレイ振動子46が設けられている。このアレイ振動子46は複数の振動素子により構成されるものであり、アレイ振動子46によって超音波ビームが形成され、その超音波ビームは電子的に走査される。後に説明するように、挿入部34にはアレイ振動子46を備えた振動子ユニットが配置されている。
【0034】
操作部36は使用者によって握られる部分であり、操作部36は連結部50,くびれ部52およびグリップ54を有している。また上述したようにレセプタクル38等を有している。連結部50は挿入部34の後端部を保持した部分であり、連結部50は図示されるようにやや肥大した形態を有している。それに連なるくびれ部52はグリップ54よりもやや細いくびれた部分である。グリップ54は棒状の形態を有し、その部分がユーザーにより握り持たれる。
【0035】
図4に示されるように、挿入部34の中心軸と操作部36の中心軸は互いに所定角度をもって交差しており、これによって操作部36を持った状態においても前方の視野が確保されている。ちなみに、本実施形態においてはコネクタ40に磁気センサが設けられ、一方、レセプタクル38にマグネットが設けられている。コネクタ40をレセプタクル38に装着した状態においては、磁気センサによってマグネットの磁気が検知され、装着状態が電気的に判断されている。そのような装着状態においてのみ送信信号が供給され、装着状態が終了した状態においては送信信号の供給が停止されるように構成するのが望ましい。ちなみに、このようなコネクタ接続の採用により、超音波プローブ32の使用後において、コネクタ40よりも生体側の部分すなわちハンドピース部分を廃棄することが可能となる。すなわち超音波プローブ32それ自体をディスポーザブル型の部材として用いることが可能である。なお、図4において符号VIIIは後に図8に示す断面の位置を示している。
【0036】
図5には、超音波プローブ32の使用例が示されている。図5に示されるように、椎体10Aには案内孔28A,30Aが形成される。それらの案内孔28A,30Aは専用の器具を利用して形成される。そのような形成過程において、必要に応じて、超音波プローブ32が利用され、案内孔28A,30Aの内部の状態が検査される。本実施形態の超音波プローブ32によれば、触覚を利用して案内孔内壁の形状を検査することができる。すなわち、触覚部材44から伝達される振動が符号55で示されるような経路を伝わって操作部36に到達し、その振動が操作部36を保持している手に伝わることになる。触覚部材44を前後に動かしたりあるいは回転させたりすることにより内壁面の形状を触覚にて知覚することが可能である。その後あるいはそれに先だって、アレイ振動子46を利用して案内孔28A,30Aの内部において超音波の送受波を実行し、すなわち超音波診断を実行することが可能である。例えば、触覚部材44を利用して触覚による内部形状の検査を行った上で、挿入部34をやや奥に進行させ、接触部材44の当接位置において今度は超音波診断により案内孔28A,30Aの状態を検査することが可能である。
【0037】
例えば、図5において案内孔28Aと椎孔26Aはかなり近接しており、触覚部材44による接触ではそのような状態を確認できないとしても、超音波診断によればアレイ振動子46の前方における断面を画像化可能であるので、案内孔28Aの表面より奥側を画面上において確認することが可能となる。通常は、案内孔の深さを段階的に大きくしていく作業が実施され、その各段階において超音波プローブ32を利用して案内孔の内部が検査される。上記説明においては触覚による検査の後に超音波診断による検査が実施されていれていたが、もちろん両者を同時に実施することも可能である。超音波画像の表示にあたっては、通常のBモード画像を90度回転させたものを表示するようにしてもよい。
【0038】
なお、案内孔28A,30Aの中には体液や洗浄液等の液体が含まれているため超音波の伝搬経路に空気層が介在することはなく、良好な超音波伝搬状況を構築することが可能である。したがって、アレイ振動子46の全面あるいは音響開口面を案内孔28A内の内壁面へ密着させる必要は必ずしもない。すなわち触覚部材44の先端部分が挿入部34の表面レベルよりも生体側に突出していたとしても、超音波診断上の支障は生じない。
【0039】
図6には、挿入部34の先端部の構造が断面図として示されている。先端部には先端部品56が取り付けられている。この先端部品56は大別して金属部品58と樹脂部品60とからなるものである。金属部品58は触覚部材44とそれに連なるアンカー62とにより構成される。触覚部材44とアンカー62は一体化されており、すなわち単一の金属部品として構成されている。金属部品58を構成する材料としてはステンレス等が挙げられる。
【0040】
樹脂部品60はキャップ部分68とそれに連なる包囲部分70とからなるものである。キャップ部分68と包囲部分70は一体成形されており、例えば、その材料はポリエチレン等である。樹脂部品60は樹脂モールドにより成形され得る。
【0041】
先端部品56についてさらに詳しく説明する。触覚部材44は、ヘッド44Aと軸44Bとからなるものである。ヘッド44Aは小球状の形態を有しており、その直径は例えば1.5mmである。軸44Bの直径は例えば0.8mmである。ヘッド44Aはその全部または一部が、中心軸64と直交する方向において挿入部34の側面レベルよりも生体側へ突出しており、その突出量66は例えば1.0mmである。軸44Bは挿入部34の先端開口の中心軸64に沿って前方に伸びた上で、上述した直交方向に湾曲しており、具体的には所定方位に向かって湾曲している。当該方位に対して後に説明するように超音波診断が実行される。
【0042】
アンカー62はそれ全体として円筒形状を有しており、ただし一部分が切り欠かれてその側面に凹凸構造が存在している。これはアンカー62が容易に抜けでないための構造的工夫である。キャップ部分68は前方に突出したドーム状の形態を有しており、その中央部分から上記の軸44Bが前方に突き出ている。キャップ部分68の背面側に上述した包囲部分70が連なっており、その包囲部分70は円筒形状を有している。包囲部分70は全体として円筒形状を有するアンカー62の全体を取り囲んでおり、包囲部分70の外径は後に説明する管部材としてのパイプ74の内径に一致している。すなわちパイプ74の先端部74A内に包囲部分70が差し込まれている。この状態において、アンカー62の側面とパイプ74の先端部74Aの内面とは一定の距離隔てられており、そこには樹脂材料からなる中間部分72が存在している。その中間部分72は包囲部分70の一部をなすものである。この中間部分72によって金属部品58と金属製のパイプ74との間における絶縁性が確保されている。またアンカー62の側面がパイプ74の先端部74Aの内面に近接しているため、ヘッド44Aから伝達された振動が中間部分72を介してパイプ74に効率的に伝達される。すなわち金属部品58とパイプ74とを樹脂層を介在させつつも機械的にあるいは物理的に強固に連結することが可能である。
【0043】
キャップ部分68の外径は図6に示す例において、絶縁シースチューブ76の外径と一致している。ただし、キャップ部分68の外径をシースチューブ76の内径あるいはパイプ74の内径に一致させてもよい。いずれにしても、本実施形態においてはキャップ部分68の背面と絶縁シースチューブ76の先端とが熱溶着により接着されており両者が一体化されている。図6においてはそれが熱溶着部79として示されている。このようなプロセスにより先端部品56がシースチューブ76に連結されて、それらによってアウターアセンブリが構成される。アウターアセンブリの内部には、後に説明するインナーアセンブリが差し込まれる。
【0044】
先端部品56は、別の見方をすると、パイプ74の内部に圧入される差込部分56Bと、それよりも前方の部分すなわちパイプ74の先端開口よりも前方に突き出た部分56Aと、で構成されるものである。例えば部分56Aは4.0mmの長さを有し、差込部分56Bは例えば6.0mmの長さを有する。パイプ74の外形は例えば、2.4mmであり、その内径は例えば1.99mmである。パイプ74は本実施形態において金属部材により構成され、その金属部材は例えばステンレスである。挿入部34の外形は例えば2.5〜3.0mmの範囲内に設定され、本実施形態においてその外形は例えば2.8mmである。アンカー62の直径は例えば1.4mmであり、中間部分72の厚みは例えば0.3mmである。アンカー62は例えば5.0mmの長さを有する。したがって、アンカー62と後に説明する振動子ユニット82との間には1.0mmの絶縁層が設けられることになる。
【0045】
挿入部34の構造についてさらに詳述する。挿入部34は、上述したパイプ74を有する。パイプ74は管部材であり、それはシールド機能および振動伝達機能を有している。さらに、パイプ74の外側には絶縁性材料で構成されたシースチューブ76が設けられている。絶縁性材料としては例えばポリエチレン等が知られている。シースチューブ76は、本実施形態において透明な材料で構成されているが、もちろんそれが着色材料で構成されていてもよい。パイプ74における先端部には二つの開口部78,80が形成されている。二つの開口部78,80の内で、超音波の開口として機能するものは開口部78である。開口部80は製作時の作業性を向上するために形成されている。開口部78の奥側には、すなわちパイプ74の内部には振動子ユニット82が設けられている。振動子ユニット82はアレイ振動子46を有するものである。アレイ振動子46は軸方向に並んだ複数の振動素子からなるものであり、アレイ振動子46によって超音波ビーム84が形成され、その超音波ビームは電子的に走査される。これによって二次元データ取込領域である走査面が構成される。その走査面上において得られたエコーデータをマッピングすることにより二次元断層画像(Bモード画像)を形成することが可能である。本実施形態においては、複数の超音波ビーム84が形成され、いずれの超音波ビームも開口部78を通過している。すなわち開口部78は送信時および受信時において超音波の伝搬を妨げないような大きさに形成されている。
【0046】
振動子ユニット82にはFPC(フレキシブル印刷回路)基板86が取り付けられている。FPC基板86は配線用のシート部材あるいはフィルム部材である。例えば、絶縁性ベースシート上に多数のシグナルラインが印刷により形成されている。本実施形態においては、アレイ振動子46が50個の振動素子により構成され、このためFPC基板86上にも少なくとも50本のシグナルラインが形成されている。それらはシグナルライン列を構成する。FPC基板86は振動子ユニット82に取り付けられた基板であり、そのFPC基板86は図6において図示されていない別のFPC基板86に接続されている。アレイ振動子46の生体側には銅からなる薄い箔が設けられており、それがグランド電極として機能している。そのグランド電極に対してはグランドラインとしてのケーブル88の導体が接続されている。ケーブル88はパイプ74における中心部分の空間を利用して後端側へ引き出されている。ちなみにパイプ74における内壁面に沿って上述した他のFPC基板が丸めて挿入されている。これについては後に詳述する。アレイ振動子46の生体側には必要に応じて1または複数の整合層が設けられ、さらに必要に応じて音響レンズが設けられる。本実施形態において、振動子ユニット82の周囲にモールド材90が充填されており、モールド材90は接着剤である。モールド材90は超音波の伝搬を妨げないように生体に近い音響インピーダンスを有する材料をもって構成される。シースチューブ76を構成する材料も生体の音響インピーダンスに近い音響インピーダンスを有する材料によって構成されるのが望ましい。
【0047】
アレイ振動子46の向きは触覚部材44が引き出されている方位と一致しており、すなわち挿入部34において触覚による検査を行いたい方向に超音波ビームが形成されている。もちろん、それらの方向を別々に定めることも可能である。但し本実施形態のような方位の一致によれば、接触による触覚検査に続いて超音波プローブを軸回転させることなく同一の部位に対して超音波検査を行うことが可能である。偏向走査技術を利用して振動子ユニット82から見て斜め前方に超音波ビームを形成するようにしてもよい。本実施形態においては電子リニア走査が利用されていたが、電子セクタ走査等の他の電子走査方式を適用することも可能である。また2Dアレイ振動子を設けることも可能である。
【0048】
図7には、図6に示したVIIによって示される位置の断面図が示されている。図7において、シースチューブ76の内部にはパイプ74が設けられている。逆に言えば、パイプ74を被覆するようにシースチューブ76が設けられている。パイプ74には二つの開口部78,80が形成され、図7において、開口部78が下側に示され、開口部80が上側に示されている。パイプ74内には振動子ユニット82が設けられている。振動子ユニット82は、上述したようにアレイ振動子46を有し、さらにその背面側にバッキング92を有する。その背面側には台座94が設けられている。アレイ振動子46の生体側にすなわち前方に必要に応じて1または複数の整合層が設けられる。振動子ユニット82の周囲にはモールド材90が設けられている。特にアレイ振動子46の前方側にはモールド材90Aが存在し、それによって超音波伝搬が確保されている。超音波はそのようなモールド材90Aおよびシースチューブの一部76Aを通過する。振動子ユニット82を取り囲むようにFPC基板86が設けられている。そのようなFPC基板86は三つの部分86A,86B,86Cを有しており、三つの面にそれぞれ設けられている。なお、図6において上述した銅箔は図示省略されている。符号90Aで示したモールド材の厚みは例えば0.3mmである。FPC基板86には複数の振動素子に対して接続される複数のシグナルラインが印刷により形成されている。FPC基板86の後端部が、他のFPC基板の前端部に熱圧着により接続されている。これによって一方のシグナルライン列と他方のシグナルライン列とが一対一の関係をもって相互に電気的に接続されている。FPC基板86上にグランドラインを設けるようにしてもよいし、上述したようにケーブルを利用してグランドラインを取り出すようにしてもよい。
【0049】
図8には挿入部の中間位置における断面が示されている。上述したように、パイプ74の外側にはシースチューブ76が設けられている。図8に示されるように、パイプ74の内部空間74BにはFPC基板96が設けられている。このFPC基板96は挿入部の先端部から後端部まで伸長した帯状の細長いシートであり、パイプ74の内部においてその内面に沿って湾曲している。すなわち、図示のように筒のように丸まった形態をもってパイプ74内に挿入されている。パイプ74の挿入前に図示されるようなC字型の形状を有していてもよいし、パイプ74の内壁面の形態に沿って湾曲することにより、図示のようにC字形態となるようにしてもよい。
【0050】
FPC基板96には、幅方向すなわち湾曲方向に沿って多数のシグナルラインが印刷により形成されており、それらがシグナルライン列を構成している。各シグナルラインは軸方向に伸長するラインである。印刷技術を利用すれば、各ラインを極めて細い幅をもって形成することができ、また隣接ライン間のピッチもかなり小さくできるから、FPC基板96上に高密度で多数のシグナルラインを形成することが容易である。必要に応じて、FPC基板96上に一または複数のグランドラインを形成してもよいし、一方面側にシグナルライン列を形成し、他方面側をグランド用ベタ電極とするようにしてもよい。FPC基盤96は、本実施形態において、パイプ74内において上述したようにC字形態をもって湾曲しており、すなわち一方端縁と他方端縁とが互いに隔てられた状態となっている。実質的には円筒に近い形態を有しているが、両端部は相互に一定のギャップ領域をもって隔てられている。このような構成によれば端部のオーバーラップが生じないためクロストークを防止または軽減できるという利点が得られる。もちろんシールドラインやグランドラインを適宜設けて端部のオーバーラップを生じさせるようにしてもよい。うずまきのような形態をもってFPC基板を差し込むこともできるし、らせん状の形態をもってFPC基板を差し込むことも可能である。変形例としては折り畳み形態も考えられる。
【0051】
図8に示されるように、丸まった形態を有するFPC基板96の内側には中心軸に沿って一定の部分空間が生じ、そのようなデッドスペースを利用するという観点から、本実施形態においては当該部分空間にケーブル88が設けられている。ケーブル88は中心導体88Aと被覆88Bとからなるものである。このような構成によれば、太い導体も利用してグランドを形成できるので、良好なグランドを構築できるという利点が得られる。本実施形態においては、一本のケーブルがパイプ74の中に入れられていたが、なおスペースに空きがあるようであれば複数本のケーブルを挿入するようにしてもよい。ただしあまりそこに多数のケーブルを挿入するならば、パイプ74における振動伝達作用も場合によっては妨げる可能性があるため、そのようなおそれがない限りにおいて内部構造体の構成を定めるのが望ましい。よって、スペース上余裕があれば、複数のFPC基板をパイプ74の中に湾曲させて挿入するようにしてもよい。図8に示すような通常の湾曲形態によれば、FPC基板96をパイプ74内に容易に挿入できるという利点が得られる。例えば50本のワイヤあるいはケーブルを極めて細いパイプの中に挿入するのは非常に困難であるが、本実施形態によればそのような多数のシグナルラインを容易に配線できるという利点が得られる。
【0052】
ちなみに、図8に示す湾曲形態において、FPC基板96の外側面96Aおよび内側面96Bのうちいずれか一方にシグナルライン列を形成すればよい。もちろん両者にシグナルライン列を形成してもよい。パイプ74は導体により構成され、それは接地されている。よってパイプ74により外来ノイズを遮断できるという利点が得られる。
【0053】
図9には、操作部36の断面図が示されている。操作部36は上述したようにグリップ54およびくびれ部52を有し、さらに連結部50を有している。操作部36の内部空間36AにはFPC基板100が設けられている。そのFPC基板100は操作部36の軸方向に伸長した帯状の形態を有しており、その先端部100Aは幅方向に肥大している。連結部50内にはやや肥大した空間98が形成されており、そこには上述したパイプを通過するFPC基板96の後端部が引き出されている。具体的にはパイプから出た後端部96Cは幅方向に肥大しており、その後端部96Cが上述したFPC基板100の先端部100Aに接続される。具体的には一方のシグナルライン列と他方のシグナルライン列とが熱圧着により一対一の関係をもって電気的にかつ物理的に接続される。その熱圧着部分が符号102で示されている。各端部を肥大化させた上で接着を行うことにより、幅方向の位置ずれの許容範囲を大きくでき、信号線間におけるクロストークを効果的に防止することができる。よって作業性を向上できるという利点を得られる。ちなみにシグナルライン列の形態は印刷技術を利用すれば容易に設計することが可能である。
【0054】
FPC基板100は図示されるように、操作部36内を通過しその後端部がレセプタクル38に電気的に接続されている。この場合においても熱圧着法が利用されている。これにより、レセプタクル38を介してケーブル側のコネクタとの電気的接続が図られる。ちなみに符号104,106はOリングを示している。符号103はコネクタ接続を行う場合における枠体を示している。磁気の力を利用して接着力が生じるようにしてもよい。ちなみに図9においては、グランドラインを構成するケーブルについては図示省略されている。そのケーブルは連結部50内から内部空間36Aを介してレセプタクル38のグランド端子に接続される。もちろん中継ケーブルを利用してそのような接続を行うようにしてもよい。ちなみに各FPC基板96,100においては、その横幅方向に複数のシグナルラインが整列しており、本実施形態においてはシグナルライン列が一面上に並べられているが、もちろん多層基盤等を利用して三次元的に複数のシグナルラインを並べるようにしてもよい。
【0055】
次に図10乃至図18を用いて超音波プローブの製造方法について詳述する。
【0056】
図10に示すS10では、先端部品が製作される。これについて図11〜13を用いて説明する。図11には金属部品58が示されている。それは触覚部材44とアンカー62とからなるものである。図12にはアンカー62の斜視図が示されている。アンカー62の側面には図12に示す例において1つの凹部108が形成され、それは飛び出し防止構造である。凹部108に代えて凸部を形成するようにしてもよい。また複数の凹部等を形成するようにしてもよい。図13に示されるように、金属部品58に対するモールド処理により、すなわちアンカー62を取り囲むようにモールド材60を設けることにより、先端部品56が製作される。ちなみにモールド材60は上述した樹脂部品であり(図6)、それはキャップ部分68と包囲部分70とにより構成される。
【0057】
図10に戻って、S12ではアウターアセンブリが製作される。アウターアセンブリの構造は図14に示されており、また図18の(A)に示されている。図14において、アウターアセンブリ110の製作にあたっては、樹脂部品60におけるキャップ部分68の背面にシースチューブ76の先端縁を熱溶着によって接着する作業が実施される。符号79は熱溶着部分を示している。図14に示す例において、キャップ部分68の外形とシースチューブ76の外形とが一致しているが、熱溶着を行える限りにおいてそのような寸法の一致は必ずしも必要ではない。シースチューブ76の先端部内には、その内面から隔てられつつ包囲部分70が設けられることになり、その周囲には円筒形状をもったスリット118が構成される。そのスリット118には後に説明するようにパイプの先端部が差し込まれる。厚み114,116は絶縁性を確実に確保でき、且つ機械的な連結を強固に行える範囲内に設定するのが望ましい。アウターアセンブリ110の製作にあたって、上述した熱溶着作業が実施され、これによってシースチューブ76の先端側が完全に封止される。
【0058】
図10に戻って、S14では、振動子ユニットへの電気的な接続作業が実施される。これについて図15および図16を用いて説明する。図15には振動子ユニット82を上方から見た図が示され、図16には振動子ユニット82を下方から見た図が示されている。図15において、振動子ユニット82にはFPC基板86が取り付けられており、そのFPC基板86における引出端部がFPC基板96の先端部と接続される。その接続部分が熱圧着部120として示されている。FPC基板96はパイプ内において筒のように丸みをもって挿入配置されたものである。そのFPC基板86におけるシグナルライン列とFPC基板96におけるシグナルライン列とが個別的に接続され、これによって振動子ユニット82内の各送受信チャンネルすなわち各振動素子に個別的にシグナルラインが接続されることになる。図16においては、まるまった状態のFPC基板96が示されており、その中にはグランド用のケーブルが挿通されるが、図16においてそれは図示省略されている。ちなみに符号84は超音波ビームの向きを示している。図15および図16に示す構成は例示である。
【0059】
図10に戻って、以上のような電気的な部品が製作された上で、S16において、インナーアセンブリが製作される。これについて図17および図18の(B)を用いて説明する。図17には、パイプ74の先端部が示されている。先端部には開口部78,80が形成され、その両者間で挟まれる空間が振動子ユニットの配置スペース122である。その前方側には先端部品の差込スペース124が存在している。上述したように上方の開口部80については製作しなくてもよい。図18の(B)に示されるように、パイプ74内に、いずれかの開口部を介して振動子ユニットが差し込まれる。それに先立って振動子ユニット82に連なるFPC基板がパイプ74内に湾曲した形態をもって後端側へ差し込まれる。図9に示したようにFPC基板96の後端部は肥大しているため、パイプ74へのFPC基板96の差し込みにあたっては当該後端部が小さく丸められる。もちろん、振動子ユニット82を配置した後に、それに既に取り付けられているFPC基板とパイプ内に既に丸め挿入されるFPC基板との接続をパイプ内において行うようにしてもよい。振動子ユニット82の配設にあたっては接着剤等が利用される。振動子ユニットをパイプ74の後端側から差し込むようにしてもよい。
【0060】
図10に戻って、S18では、図18に示すように挿入部が製作される。すなわち、図18の(A)にはアウターアセンブリ110が示されており、(B)にはインナーアセンブリ126が示されている。アウターアセンブリ110の内部にその後端側からインナーアセンブリ126が差し込まれる。それに先だって、図18において符号130で示されるように接着剤がアウターアセンブリ110における先端部内に注入される。この接着剤は振動子ユニット周囲のモールド材を構成するものである。アウターアセンブリ110へのインナーアセンブリ126の差し込みにより、パイプ74の先端部74A内に先端部品における差込部分が挿入されることになり、つまり、円筒形状をもったスリットにパイプ74の先端部分が嵌め込まれる。上述したように、既に先端部品が成形されており、しかもそれがシースチューブに溶着されて一体化されているので、アウターアセンブリ110にインナーアセンブリ126を差し込むだけで、パイプ74の先端部74Aとアンカーとの位置関係を常に適正化することが可能であり、すなわち両者の位置決めを適切に行うことが可能である。
【0061】
図10に戻って、S22においては、S20において製作された操作部が挿入部と連結され、これによってハンドピースが製作される。操作部は上述した図9に示されており、ハンドピースは上述した図3および図4に示されている。
【0062】
図19および図20にはシステム構成例が示されている。図19に示す構成例では、脊椎手術支援用超音波プローブ32がアレイ振動子を有し、そのレセプタクルにはコネクタ40が着脱自在に装着される。コネクタ40は磁気センサ128を有しており、コネクタ装着状態が磁気検出によって判断されている。コネクタ40にはケーブル130が取り付けられ、そのケーブル130の他方端側にはコネクタ132が設けられ、それが超音波診断装置本体140に着脱自在に装着される。このような構成においては、使用後に超音波プローブ32を廃棄するにあたり、コネクタ40を取り外せばよいことになる。
【0063】
図20には、他のシステム構成例が示されている。超音波プローブ32Aはアレイ振動子を有する。それに対してはケーブル130Aが固定的に連結されており、その端部にはコネクタ142が設けられている。コネクタ142は中継ボックス144に着脱自在に装着される。その装着を磁気センサ146を用いて検知するようにしてもよい。中継ボックス144にはケーブルが取り付けられており、その端部にはコネクタ148が設けられている。コネクタ148は超音波診断装置本体140Aに着脱自在に装着される。超音波診断装置本体140Aは、送信部、受信部、画像形成部、表示器、操作パネル等を備えるものである。
【0064】
上記実施形態によれば、触覚検査および超音波診断の両方を行える組織挿入型超音波プローブを構成することが可能である。また、上記実施形態によれば挿入部が細径化されていても、その内部に多数のシグナルラインを簡便に設けることが可能である。また、上記実施形態によれば先端部品における差込部分をパイプの中に差し込んだ状態において、アンカーとパイプとが電気的に隔てられつつも両者が機械的に強固に連結したような状態となるので、絶縁性を確保しつつも振動の伝達を良好に行えるという利点を得られる。
【0065】
図21及び図22には他の実施形態の要部構成が示されている。図21に示される配線構造体は、挿入部を構成するパイプの先端部内に構築されるものである。すなわち、図示されていない振動子ユニットにはFPC基板200が取り付けられている。FPC基板202はパイプ内部において丸まった形態をもって挿入されるものである。図22の(A)及び(B)には、FPC基板200及びFPC基板202の展開図が示されている。FPC基板200は、振動子ユニットにおけるアレイ振動子に接続される部分204と、そこから引き出された部分206と、を有している。部分206は肥大しており、その端部(引出端部)208はコンタクト部分を構成している。FPC基板200はシグナルライン列210を有する。シグナルライン列210において、部分204におけるライン間ピッチよりもコンタクト部分208におけるライン間ピッチの方が大きい。FPC基板202は、本体部分212と肥大した端部214とを有し、端部214の先端部分がコンタクト部分216を構成している。FPC基板202はシグナルライン列218を有する。シグナルライン列218において、本体部分212におけるライン間ピッチよりもコンタクト部分216におけるライン間ピッチの方が大きい。2つのコンタクト部分208,216のライン間ピッチ(配線パターン)は互いに同一であり、両者は加圧接着等の方法により重合接続される。
【0066】
図21において、符号217は振動子ユニットにおけるバッキング等が配置される空間を示している。FPC基板200における部分204の上側にはアレイ振動子が配設される。アレイ振動子の上側にはグランド電極をなす銅箔が設けられる。グランドラインについては図示省略されている。振動子ユニットに対してFPC基板200が取り付けられた状態において、それに対してFPC基板202が接続される。その後、振動子ユニットにおけるバッキングを包み込むようにFPC基板200が折り曲げられる。それに伴い、FPC基板202の端部214も折り曲げられる。FPC基板202の本体部分212はパイプ内において丸められた状態におかれる。
【0067】
上記の配線構造体をパイプ内に配置する場合、まず、振動子ユニットに配線構造体が連なっている状態において、丸められたFPC基板202の後端部がパイプ先端部に形成された開口部に差し込まれ、当該後端部がパイプ内部へ徐々に送り込まれる。その後端部はパイプの後端開口から外部へ引き出される。その上で、振動子ユニットがパイプ先端部の所定位置に接着剤等を利用して固定される。図21及び図22に示した構成によれば、2つのFPC基板の連結を確実かつ容易に行える。2つのコンタクト部においてライン間ピッチが広げられているので接続時の作業性が良好になる。また誤配線の問題が生じにくい。
【符号の説明】
【0068】
32 脊椎手術支援用超音波プローブ、34 挿入部、36 操作部、44 触覚部材、46 アレイ振動子、48 挿入軸、54 グリップ、56 先端部品、58 金属部品、60 樹脂部品、74 パイプ、76 シースチューブ、82 振動子ユニット、86 FPC基板(第3FPC基板)、96 FPC基板(第1FPC基板)、100 FPC基板(第2FPC基板)。
【技術分野】
【0001】
本発明は脊椎手術支援用超音波プローブに関し、特に、脊椎手術において椎骨に形成された案内孔の内部を検査するための超音波プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、生体組織に対する超音波の送受波によって得られた受信信号に基づいて超音波画像を形成する装置である。超音波診断装置は、装置本体と超音波プローブとにより構成される。装置本体は、送信部、受信部、画像形成部、表示器、操作パネル、等を備える。超音波プローブは装置本体に対して着脱自在に装着される。超音波プローブは、一般に、アレイ振動子を備える。アレイ振動子は整列した複数の振動素子により構成され、それらによって超音波ビームが形成される。超音波ビームの電子走査によってビーム走査面が形成される。装置本体は、超音波プローブから出力された受信信号に基づいて、ビーム走査面に対応する二次元断層画像(Bモード画像)を形成する。超音波画像として、二次元断層画像の他に、二次元血流画像、ドプラ画像、三次元画像等が知られている。
【0003】
ところで、脊椎を構成する複数の椎骨を金属部品を利用して固定する手術方法が普及しつつある。それが図1に示されている。脊椎は複数の椎骨10,12を有する。それらの間には椎間板14が存在している。各椎骨10,12には、それぞれ2つのボルト(スクリュー)16,18が取り付けられ、つまり図示の例では合計4つのボルトが取り付けられる。椎骨10,12の右側に並ぶ2つのボルト16,18が金属ロッド20によって連結される。椎骨10,12の左側に並ぶ2つのボルト(図示されていない)も別の金属ロッドによって連結される。このような方法により、2つの椎骨10,12の位置関係が相互に固定される。
【0004】
上記の固定術においては、各椎骨に対して2つのボルトを取り付ける前に、各椎骨に対して2つの案内孔(パイロット孔)が形成される。図2には椎骨10が示されている。椎骨10は椎体22と椎弓24とにより構成される。椎骨10は神経が通る椎孔(脊柱管)26を有している。2つの案内孔28,30はそれぞれ適正な位置に適正な角度で形成されなければならない。特に、案内孔28,30が椎孔26に進入したり近接したりすることは回避されなければならない。仮にそのような不適な案内孔にボルトを取り付けるならば、そのボルトをして椎孔26を通っている神経に損傷を与えてしまうおそれが生じる。そのような事項を踏まえつつ、各案内孔28,30は外科手術用ドリルを用いて慎重に形成される。しかし、各案内孔28,30の形成過程において、各案内孔28,30の内部の様子を目視観察することは不可能である。
【0005】
そこで、従来においては、各案内孔28,30の形成過程において、触覚検査専用の金属器具が繰り返し利用される。金属器具は、針金のような細長い軸部分と、それに連結されたやや太いグリップ部分と、を有する。軸部分の先端には小さな球状の触覚子が備えられている。軸部分とグリップ部分は一体化されており、すなわち、金属器具は直線的に伸長した単一の金属部材として構成されている。金属器具のグリップを摘みながら、金属器具の先端部を案内孔に差し込み、その状態で案内孔の内壁面を触覚部材(つまり触角あるいは接触子)でなぞることによって、案内孔の内壁面形状を触覚にて間接的に知覚することが可能である。すなわち、内壁面の凹凸形状は、触覚子の振動(位置や力の変化を含む)としてグリップ部分まで伝わってくる。その振動を複数の指先で感じ取ることにより、間接的に内壁面の凹凸形状を知覚することが可能である。
【0006】
しかしながら、上記専用の金属器具を用いた触覚による検査法では、案内孔の状態を必ずしも十分に評価することはできない。触覚法では微小なひびを特定困難であり、また表面より内部の様子を観察することは不可能である。触覚による検査それ自体に問題がないとしても、安全性をより高めるという観点から、触覚とは別の方法で、案内孔の状態(あるいは椎骨の構造)を検査した方が望ましい。以上から、触覚検査及び超音波診断の両方を行える組織挿入型の超音波プローブの実現が要請される。かかる超音波プローブによれば、挿入部の抜き差しなくして、触覚検査の直後に超音波診断を行ったり、逆に、超音波診断の直後に触覚検査を行ったり、あるいは、触覚検査と同時に超音波診断を行ったりすることが可能である。
【0007】
特許文献1には、骨に形成されたパイロット孔に対して超音波の送受波を行う部材を挿入することによって超音波診断を行うシステムが開示されている。しかし、特許文献1には、触覚検査と超音波診断の両者を行えるプローブについては開示されていない。また、特許文献1には、二次元断層画像を形成するための具体的な構成(アレイ振動子、配線、等)については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6579244号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
触覚検査及び超音波診断の両方を行える脊椎手術支援用の超音波プローブの実現に当たっては、振動の良好な伝達と確実な絶縁の両方を達成する必要がある。すなわち、触覚部材で生じた振動を管部材及び操作部を経由して使用者の手まで確実に伝達するという観点からは、触覚部材や管部材をそれぞれ硬質部材(通常、金属部材)で構成すると共に、触覚部材と管部材とを直接的に連結してしまうのが望ましい。しかしながら、管部材には電圧が印加される振動子ユニットが収容され、また、管部材はシールド部材として電気的部品としても機能し得るので、管部材と触覚部材とを直接的に連結するのは安全性の観点からは望ましくない。結局、両者間の電気的導通を確実に遮断しつつ両者を機械的あるいは物理的に強固に連結することが要請される。
【0010】
本発明の目的は、触覚検査及び超音波診断の両方を行える脊椎手術支援用超音波プローブを提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、脊椎手術支援用超音波プローブにおいて、振動の良好な伝達と絶縁性の確実な確保とを実現することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、触覚部材と管部材とを機械的あるいは物理的に強固に連結できる、脊椎手術支援用超音波プローブの製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、部材接合のための加熱処理の影響がアレイ振動子に及ばない、脊椎手術支援用超音波プローブの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る脊椎手術支援用超音波プローブは、椎骨に形成された案内孔に挿入される挿入部と、前記挿入部に連結され、前記挿入部から振動が伝達され、使用者によって把持される操作部と、を含む。前記挿入部は、管部材と、先端部品と、を含む。前記先端部品は、前記管部材の先端部に設けられ、前記椎骨の内部を超音波診断により検査するための複数の振動素子を有するアレイ振動子と、前記管部材の先端部に設けられた部品であって、前記椎骨の内部を前記使用者の触覚により検査するための触覚部材と当該触覚部材に連なるアンカーとを有する金属部材と、前記アンカーを包囲した包囲部分を有する絶縁部材と、を備える。前記先端部品の内で前記アンカー及び前記包囲部分からなる差込部分が前記管部材の中に嵌め込まれる。
【0015】
上記構成によれば、超音波プローブを利用して触覚により組織内部を検査でき、また、超音波診断(超音波の送受波)により組織内部を検査できる。具体的には、触覚部材を組織表面に当接させそれを前後左右に動かすことによって、組織内部の形態を触角によって間接的に知覚することが可能である。触覚部材で生じた振動あるいは力は管部材を伝搬して操作部に伝わり、そこから操作部を把持した手に伝わる。そのような触覚を利用した検査の前又は後に、あるいは、それと同時に、超音波の送受波による超音波診断を実行できる。通常、断層画像が形成され、椎骨の内部(例えば案内孔の表層)が画像化される。触覚的判断及び超音波画像の視覚的判断の併用によって案内孔が適正に形成されているのか否かを評価することが可能である。例えば椎骨の表層まで評価できるから、案内孔が椎孔に近接しているような状態を容易に判断することが可能である。
【0016】
上記構成においては、先端部品が金属部材と絶縁部材とで構成され、特に金属部材の内でアンカーが絶縁部材の包囲部分によって覆われているから、金属部材が管部材に不用意に接触してしまうことを効果的に防止できる。また、金属部材が振動子ユニットに不用意に接触してしまうことも効果的に防止できる。先端部品における差込部分が管部材の中に嵌め込まれるから、望ましくは圧入されるから、両者を機械的に強固に連結することが可能である。特に、そのような嵌め込み状態においては、金属部材の内でアンカーが管部材の内部に位置することになるから、管部材の内部に位置したアンカーを通じて、その周囲に存在する管部材へ振動を効率的に伝達することが可能である。キャップ部分は管部材の先端開口を塞ぎ、管部材内への体液等の進入を阻止する。キャップ部材の形状を前方に膨らんだドーム状とすれば、生体への安全性を高められる。
【0017】
包囲部分におけるアンカー周囲の厚みは、絶縁性と振動伝達の両者の観点から定めるのが望ましい。一般に前者の観点からはできるだけ厚くした方がよいが、後者の観点からはできるだけ薄くした方がよい。アンカーの形態を管部材の軸方向に伸長した形態とすることが望ましく、特に、管部材の内部空間の形態と同じく、円柱形状にするのが望ましい。
【0018】
望ましくは、前記差込部分は円柱形状を有し、前記アンカーは、抜け止め構造を有する側面をもった円柱形状を有する。アンカーを単純な円柱形状とした場合、それが抜け出やすくなる。そこで、上記のようにアンカーの側面に抜け止め構造を設けるのが望ましい。望ましくは、前記抜け止め構造は少なくとも1つの凹部又は凸部を有する。それらの形状要素は、中心軸に直交する方向に起伏を生じさせるものである。
【0019】
望ましくは、前記管部材はシールド作用及び振動伝達作用を発揮する金属パイプ部材により構成され、前記挿入部は更に前記管部材の外側を覆う絶縁性シースチューブを有し、前記絶縁部材は前記包囲部分に連なり前記管部材の先端用口部を覆うキャップ部分を有し、前記キャップ部分と前記絶縁性シースチューブの先端開口部とが接着される。絶縁性シースチューブは金属パイプ部材としての管部材の保護と生体の保護とを同時に図り、また、管部材を生体から電気的に隔てるものである。キャップ部分と絶縁性シースチューブとが同一材料又は類似材料で構成されていてもよい。少なくとも両者の接着が確実に行えるように各部材の材料を構成する決めるのが望ましい。
【0020】
望ましくは、前記キャップ部分と前記絶縁性シースチューブの先端開口部とが熱溶着により一体化される。これにより両者間が完全にシールされる。熱溶着を利用すれば挿入部から接着剤が漏れ出ることを防止できる。
【0021】
望ましくは、前記キャップ部分は前方へ膨らんだドーム形状を有し、前記触覚部材は、前記キャップ部分の中央部から突出して前記管部材の中心軸に直交する所定方位へ向かう軸と、当該軸の先端部に設けられた球状のヘッドと、を有する。触覚部材としては各種の形態が考えられる。いずれにしても、案内孔の内壁面に自然にアプローチでき、骨の表面に滑らかに接することができるように構成するのが望ましい。望ましくは、前記ヘッドの全部又は一部が前記所定方位において前記管部材の側面レベルよりも生体側へ突出する。この構成によればヘッドを案内孔の内壁面に確実に当接させることが可能となる。
【0022】
望ましくは、前記管部材の先端部において前記所定方位に前記アレイ振動子で送波及び受波される超音波を通過させる開口部が形成され、前記管部材における前記開口部の奥側に前記アレイ振動子を備えた振動子ユニットが埋設される。望ましくは、前記振動子ユニットの周囲に絶縁性モールドが施される。
【0023】
本発明に係る脊椎手術支援用超音波プローブの製造方法は、触覚部材とそれに連なるアンカーとを有する金属部材と、キャップ部分とそれに連なり前記アンカーを包囲した包囲部分とを有する絶縁部材と、を備える先端部品を製作する工程と、前記先端部品と絶縁性シースチューブとを接着する工程であって、前記キャップ部分と前記絶縁性シースチューブの開口部とを熱溶着により一体化させることによりアウターアセンブリを製作する工程と、アレイ振動子を備えた振動子ユニットを金属パイプ部材の先端部内に設けることよりインナーアセンブリを製作する工程と、前記アウターアセンブリの中に前記インナーアセンブリを差し込むことにより挿入部を製作する工程と、前記挿入部と操作部とを連結させる工程と、を含む。
【0024】
上記構成によれば、アウターアセンブリとインナーアセンブリとを別々に製作した上で、両者が組み合わされる。前者の製作に当たって加熱処理が行われるとしても、後者に熱的な影響は及ばない。これによりアレイ振動子の分極消失等の問題を未然に回避できる。上記構成では、先端部品がまず製作され、その段階でアンカーと金属パイプ部材の内面との間の隙間が包囲部分の形状及び厚みとして規定される。よって、その後の工程において製作誤差が発生しても絶縁性及び良好な振動伝達を確保できる。先端部品と絶縁性シースチューブの熱溶着によって両者が一体化され、アウターアセンブリの内部は前方に完全に閉じた空間となるから、そこに接着剤を多量に入れても、生体側へ流出することはない。
【0025】
望ましくは、前記アウターアセンブリを製作する工程では、前記先端部品における差込部分と前記絶縁性シースチューブとの間に円筒形スリットが形成され、前記挿入部を製作する工程では、前記円筒形スリットに前記金属パイプ部材の先端部が挿入される。
【0026】
望ましくは、前記挿入部を製作する工程では、前記触覚部材が向かう方位と前記アレイ振動子が向く方位とが揃うように前記アウターアセンブリの中に前記インナーアセンブリが位置決められる。
【0027】
望ましくは、前記挿入部を製作する工程では、前記アウターアセンブリの中に前記インナーアセンブリを差し込む前に前記アウターアセンブリの中にモールド用接着剤が流し込まれる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、触覚検査及び超音波診断の両方を行える脊椎手術支援用超音波プローブを提供できる。あるいは、本発明によれば、脊椎手術支援用超音波プローブにおいて、振動の良好な伝達と絶縁性の確実な確保とを実現できる。あるいは、本発明によれば、触覚部材と管部材とを機械的あるいは物理的に強固に連結できる。あるいは、本発明によれば、部材接合のための加熱処理の影響がアレイ振動子に及ばないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】金属器具を利用した脊椎固定手術を説明するための図である。
【図2】椎骨に形成される2つの案内孔を説明するための図である。
【図3】実施形態に係る脊椎手術支援用超音波プローブの斜視図である。
【図4】図3に示した脊椎手術支援用超音波プローブの側面図である。
【図5】図3に示した脊椎手術支援用超音波プローブの使用状態を示す図である。
【図6】図3に示した脊椎手術支援用超音波プローブの先端部の構造を示す断面図である。
【図7】図6に示した振動子ユニットの断面図である。
【図8】図4に示した挿入軸の断面図である。
【図9】操作部の断面図である。
【図10】本実施形態に係る超音波プローブの製造方法を示すフローチャートである。
【図11】金属部品の側面図である。
【図12】金属部品におけるアンカーの斜視図である。
【図13】先端部品の断面図である。
【図14】アウターアセンブリの先端部分を示す断面図である。
【図15】FPC基板が取り付けられた振動子ユニットを示す第1の斜視図である。
【図16】FPC基板が取り付けられた振動子ユニットを示す第2の斜視図である。
【図17】パイプの先端部を示す断面図である。
【図18】アウターアセンブリに対するインナーアセンブリの挿入を説明するための図である。
【図19】超音波診断システムの構成例を示す図である。
【図20】超音波診断システムの他の構成例を示す図である。
【図21】他の実施形態に係る配線構造体を示す斜視図である。
【図22】図21に示した配線構造体を構成する2つのFPC基板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
図3には、本発明に係る超音波プローブの好適な実施形態が示されており、図3はその斜視図である。本実施形態に係る組織挿入型超音波プローブは、具体的には、脊椎手術支援用超音波プローブ32である。この超音波プローブ32は、金属器具を用いて脊椎の固定手術を行う場合において用いられるものである。ただし、以下に説明するいくつかの技術的特徴はいずれも他の組織挿入型超音波プローブに適用可能である。
【0032】
図3において、脊椎手術支援用超音波プローブ32は、挿入部34および操作部36を備えている。挿入部34はその中心軸方向に沿って伸長した軸状の部材である。挿入部34の後端部が操作部36に連結されている。操作部36は使用者によって握られる部分である。操作部36の後端にはレセプタクル38が設けられている。レセプタクル38はコネクタを構成し、それに対しては、ケーブル42が接続されたコネクタ40が着脱自在に装着される。ケーブル42が操作部36に対して直接的に接続されてもよい。
【0033】
図4には、図3に示した脊椎手術支援用超音波プローブ32の側面図が示されている。挿入部34はその中心軸方向に沿って伸長した形態を有し、その挿入部34は椎骨に形成された案内孔の中に挿入されるものである。挿入部34の先端部には触覚部材(接触子)44が設けられている。この触覚部材44は、案内孔の内壁面に当接されるものであり、このような当接により生じる振動や力が、挿入軸48および操作部36を介して使用者の手に伝達される。挿入部34における先端部には上記の触覚部材44の他にアレイ振動子46が設けられている。このアレイ振動子46は複数の振動素子により構成されるものであり、アレイ振動子46によって超音波ビームが形成され、その超音波ビームは電子的に走査される。後に説明するように、挿入部34にはアレイ振動子46を備えた振動子ユニットが配置されている。
【0034】
操作部36は使用者によって握られる部分であり、操作部36は連結部50,くびれ部52およびグリップ54を有している。また上述したようにレセプタクル38等を有している。連結部50は挿入部34の後端部を保持した部分であり、連結部50は図示されるようにやや肥大した形態を有している。それに連なるくびれ部52はグリップ54よりもやや細いくびれた部分である。グリップ54は棒状の形態を有し、その部分がユーザーにより握り持たれる。
【0035】
図4に示されるように、挿入部34の中心軸と操作部36の中心軸は互いに所定角度をもって交差しており、これによって操作部36を持った状態においても前方の視野が確保されている。ちなみに、本実施形態においてはコネクタ40に磁気センサが設けられ、一方、レセプタクル38にマグネットが設けられている。コネクタ40をレセプタクル38に装着した状態においては、磁気センサによってマグネットの磁気が検知され、装着状態が電気的に判断されている。そのような装着状態においてのみ送信信号が供給され、装着状態が終了した状態においては送信信号の供給が停止されるように構成するのが望ましい。ちなみに、このようなコネクタ接続の採用により、超音波プローブ32の使用後において、コネクタ40よりも生体側の部分すなわちハンドピース部分を廃棄することが可能となる。すなわち超音波プローブ32それ自体をディスポーザブル型の部材として用いることが可能である。なお、図4において符号VIIIは後に図8に示す断面の位置を示している。
【0036】
図5には、超音波プローブ32の使用例が示されている。図5に示されるように、椎体10Aには案内孔28A,30Aが形成される。それらの案内孔28A,30Aは専用の器具を利用して形成される。そのような形成過程において、必要に応じて、超音波プローブ32が利用され、案内孔28A,30Aの内部の状態が検査される。本実施形態の超音波プローブ32によれば、触覚を利用して案内孔内壁の形状を検査することができる。すなわち、触覚部材44から伝達される振動が符号55で示されるような経路を伝わって操作部36に到達し、その振動が操作部36を保持している手に伝わることになる。触覚部材44を前後に動かしたりあるいは回転させたりすることにより内壁面の形状を触覚にて知覚することが可能である。その後あるいはそれに先だって、アレイ振動子46を利用して案内孔28A,30Aの内部において超音波の送受波を実行し、すなわち超音波診断を実行することが可能である。例えば、触覚部材44を利用して触覚による内部形状の検査を行った上で、挿入部34をやや奥に進行させ、接触部材44の当接位置において今度は超音波診断により案内孔28A,30Aの状態を検査することが可能である。
【0037】
例えば、図5において案内孔28Aと椎孔26Aはかなり近接しており、触覚部材44による接触ではそのような状態を確認できないとしても、超音波診断によればアレイ振動子46の前方における断面を画像化可能であるので、案内孔28Aの表面より奥側を画面上において確認することが可能となる。通常は、案内孔の深さを段階的に大きくしていく作業が実施され、その各段階において超音波プローブ32を利用して案内孔の内部が検査される。上記説明においては触覚による検査の後に超音波診断による検査が実施されていれていたが、もちろん両者を同時に実施することも可能である。超音波画像の表示にあたっては、通常のBモード画像を90度回転させたものを表示するようにしてもよい。
【0038】
なお、案内孔28A,30Aの中には体液や洗浄液等の液体が含まれているため超音波の伝搬経路に空気層が介在することはなく、良好な超音波伝搬状況を構築することが可能である。したがって、アレイ振動子46の全面あるいは音響開口面を案内孔28A内の内壁面へ密着させる必要は必ずしもない。すなわち触覚部材44の先端部分が挿入部34の表面レベルよりも生体側に突出していたとしても、超音波診断上の支障は生じない。
【0039】
図6には、挿入部34の先端部の構造が断面図として示されている。先端部には先端部品56が取り付けられている。この先端部品56は大別して金属部品58と樹脂部品60とからなるものである。金属部品58は触覚部材44とそれに連なるアンカー62とにより構成される。触覚部材44とアンカー62は一体化されており、すなわち単一の金属部品として構成されている。金属部品58を構成する材料としてはステンレス等が挙げられる。
【0040】
樹脂部品60はキャップ部分68とそれに連なる包囲部分70とからなるものである。キャップ部分68と包囲部分70は一体成形されており、例えば、その材料はポリエチレン等である。樹脂部品60は樹脂モールドにより成形され得る。
【0041】
先端部品56についてさらに詳しく説明する。触覚部材44は、ヘッド44Aと軸44Bとからなるものである。ヘッド44Aは小球状の形態を有しており、その直径は例えば1.5mmである。軸44Bの直径は例えば0.8mmである。ヘッド44Aはその全部または一部が、中心軸64と直交する方向において挿入部34の側面レベルよりも生体側へ突出しており、その突出量66は例えば1.0mmである。軸44Bは挿入部34の先端開口の中心軸64に沿って前方に伸びた上で、上述した直交方向に湾曲しており、具体的には所定方位に向かって湾曲している。当該方位に対して後に説明するように超音波診断が実行される。
【0042】
アンカー62はそれ全体として円筒形状を有しており、ただし一部分が切り欠かれてその側面に凹凸構造が存在している。これはアンカー62が容易に抜けでないための構造的工夫である。キャップ部分68は前方に突出したドーム状の形態を有しており、その中央部分から上記の軸44Bが前方に突き出ている。キャップ部分68の背面側に上述した包囲部分70が連なっており、その包囲部分70は円筒形状を有している。包囲部分70は全体として円筒形状を有するアンカー62の全体を取り囲んでおり、包囲部分70の外径は後に説明する管部材としてのパイプ74の内径に一致している。すなわちパイプ74の先端部74A内に包囲部分70が差し込まれている。この状態において、アンカー62の側面とパイプ74の先端部74Aの内面とは一定の距離隔てられており、そこには樹脂材料からなる中間部分72が存在している。その中間部分72は包囲部分70の一部をなすものである。この中間部分72によって金属部品58と金属製のパイプ74との間における絶縁性が確保されている。またアンカー62の側面がパイプ74の先端部74Aの内面に近接しているため、ヘッド44Aから伝達された振動が中間部分72を介してパイプ74に効率的に伝達される。すなわち金属部品58とパイプ74とを樹脂層を介在させつつも機械的にあるいは物理的に強固に連結することが可能である。
【0043】
キャップ部分68の外径は図6に示す例において、絶縁シースチューブ76の外径と一致している。ただし、キャップ部分68の外径をシースチューブ76の内径あるいはパイプ74の内径に一致させてもよい。いずれにしても、本実施形態においてはキャップ部分68の背面と絶縁シースチューブ76の先端とが熱溶着により接着されており両者が一体化されている。図6においてはそれが熱溶着部79として示されている。このようなプロセスにより先端部品56がシースチューブ76に連結されて、それらによってアウターアセンブリが構成される。アウターアセンブリの内部には、後に説明するインナーアセンブリが差し込まれる。
【0044】
先端部品56は、別の見方をすると、パイプ74の内部に圧入される差込部分56Bと、それよりも前方の部分すなわちパイプ74の先端開口よりも前方に突き出た部分56Aと、で構成されるものである。例えば部分56Aは4.0mmの長さを有し、差込部分56Bは例えば6.0mmの長さを有する。パイプ74の外形は例えば、2.4mmであり、その内径は例えば1.99mmである。パイプ74は本実施形態において金属部材により構成され、その金属部材は例えばステンレスである。挿入部34の外形は例えば2.5〜3.0mmの範囲内に設定され、本実施形態においてその外形は例えば2.8mmである。アンカー62の直径は例えば1.4mmであり、中間部分72の厚みは例えば0.3mmである。アンカー62は例えば5.0mmの長さを有する。したがって、アンカー62と後に説明する振動子ユニット82との間には1.0mmの絶縁層が設けられることになる。
【0045】
挿入部34の構造についてさらに詳述する。挿入部34は、上述したパイプ74を有する。パイプ74は管部材であり、それはシールド機能および振動伝達機能を有している。さらに、パイプ74の外側には絶縁性材料で構成されたシースチューブ76が設けられている。絶縁性材料としては例えばポリエチレン等が知られている。シースチューブ76は、本実施形態において透明な材料で構成されているが、もちろんそれが着色材料で構成されていてもよい。パイプ74における先端部には二つの開口部78,80が形成されている。二つの開口部78,80の内で、超音波の開口として機能するものは開口部78である。開口部80は製作時の作業性を向上するために形成されている。開口部78の奥側には、すなわちパイプ74の内部には振動子ユニット82が設けられている。振動子ユニット82はアレイ振動子46を有するものである。アレイ振動子46は軸方向に並んだ複数の振動素子からなるものであり、アレイ振動子46によって超音波ビーム84が形成され、その超音波ビームは電子的に走査される。これによって二次元データ取込領域である走査面が構成される。その走査面上において得られたエコーデータをマッピングすることにより二次元断層画像(Bモード画像)を形成することが可能である。本実施形態においては、複数の超音波ビーム84が形成され、いずれの超音波ビームも開口部78を通過している。すなわち開口部78は送信時および受信時において超音波の伝搬を妨げないような大きさに形成されている。
【0046】
振動子ユニット82にはFPC(フレキシブル印刷回路)基板86が取り付けられている。FPC基板86は配線用のシート部材あるいはフィルム部材である。例えば、絶縁性ベースシート上に多数のシグナルラインが印刷により形成されている。本実施形態においては、アレイ振動子46が50個の振動素子により構成され、このためFPC基板86上にも少なくとも50本のシグナルラインが形成されている。それらはシグナルライン列を構成する。FPC基板86は振動子ユニット82に取り付けられた基板であり、そのFPC基板86は図6において図示されていない別のFPC基板86に接続されている。アレイ振動子46の生体側には銅からなる薄い箔が設けられており、それがグランド電極として機能している。そのグランド電極に対してはグランドラインとしてのケーブル88の導体が接続されている。ケーブル88はパイプ74における中心部分の空間を利用して後端側へ引き出されている。ちなみにパイプ74における内壁面に沿って上述した他のFPC基板が丸めて挿入されている。これについては後に詳述する。アレイ振動子46の生体側には必要に応じて1または複数の整合層が設けられ、さらに必要に応じて音響レンズが設けられる。本実施形態において、振動子ユニット82の周囲にモールド材90が充填されており、モールド材90は接着剤である。モールド材90は超音波の伝搬を妨げないように生体に近い音響インピーダンスを有する材料をもって構成される。シースチューブ76を構成する材料も生体の音響インピーダンスに近い音響インピーダンスを有する材料によって構成されるのが望ましい。
【0047】
アレイ振動子46の向きは触覚部材44が引き出されている方位と一致しており、すなわち挿入部34において触覚による検査を行いたい方向に超音波ビームが形成されている。もちろん、それらの方向を別々に定めることも可能である。但し本実施形態のような方位の一致によれば、接触による触覚検査に続いて超音波プローブを軸回転させることなく同一の部位に対して超音波検査を行うことが可能である。偏向走査技術を利用して振動子ユニット82から見て斜め前方に超音波ビームを形成するようにしてもよい。本実施形態においては電子リニア走査が利用されていたが、電子セクタ走査等の他の電子走査方式を適用することも可能である。また2Dアレイ振動子を設けることも可能である。
【0048】
図7には、図6に示したVIIによって示される位置の断面図が示されている。図7において、シースチューブ76の内部にはパイプ74が設けられている。逆に言えば、パイプ74を被覆するようにシースチューブ76が設けられている。パイプ74には二つの開口部78,80が形成され、図7において、開口部78が下側に示され、開口部80が上側に示されている。パイプ74内には振動子ユニット82が設けられている。振動子ユニット82は、上述したようにアレイ振動子46を有し、さらにその背面側にバッキング92を有する。その背面側には台座94が設けられている。アレイ振動子46の生体側にすなわち前方に必要に応じて1または複数の整合層が設けられる。振動子ユニット82の周囲にはモールド材90が設けられている。特にアレイ振動子46の前方側にはモールド材90Aが存在し、それによって超音波伝搬が確保されている。超音波はそのようなモールド材90Aおよびシースチューブの一部76Aを通過する。振動子ユニット82を取り囲むようにFPC基板86が設けられている。そのようなFPC基板86は三つの部分86A,86B,86Cを有しており、三つの面にそれぞれ設けられている。なお、図6において上述した銅箔は図示省略されている。符号90Aで示したモールド材の厚みは例えば0.3mmである。FPC基板86には複数の振動素子に対して接続される複数のシグナルラインが印刷により形成されている。FPC基板86の後端部が、他のFPC基板の前端部に熱圧着により接続されている。これによって一方のシグナルライン列と他方のシグナルライン列とが一対一の関係をもって相互に電気的に接続されている。FPC基板86上にグランドラインを設けるようにしてもよいし、上述したようにケーブルを利用してグランドラインを取り出すようにしてもよい。
【0049】
図8には挿入部の中間位置における断面が示されている。上述したように、パイプ74の外側にはシースチューブ76が設けられている。図8に示されるように、パイプ74の内部空間74BにはFPC基板96が設けられている。このFPC基板96は挿入部の先端部から後端部まで伸長した帯状の細長いシートであり、パイプ74の内部においてその内面に沿って湾曲している。すなわち、図示のように筒のように丸まった形態をもってパイプ74内に挿入されている。パイプ74の挿入前に図示されるようなC字型の形状を有していてもよいし、パイプ74の内壁面の形態に沿って湾曲することにより、図示のようにC字形態となるようにしてもよい。
【0050】
FPC基板96には、幅方向すなわち湾曲方向に沿って多数のシグナルラインが印刷により形成されており、それらがシグナルライン列を構成している。各シグナルラインは軸方向に伸長するラインである。印刷技術を利用すれば、各ラインを極めて細い幅をもって形成することができ、また隣接ライン間のピッチもかなり小さくできるから、FPC基板96上に高密度で多数のシグナルラインを形成することが容易である。必要に応じて、FPC基板96上に一または複数のグランドラインを形成してもよいし、一方面側にシグナルライン列を形成し、他方面側をグランド用ベタ電極とするようにしてもよい。FPC基盤96は、本実施形態において、パイプ74内において上述したようにC字形態をもって湾曲しており、すなわち一方端縁と他方端縁とが互いに隔てられた状態となっている。実質的には円筒に近い形態を有しているが、両端部は相互に一定のギャップ領域をもって隔てられている。このような構成によれば端部のオーバーラップが生じないためクロストークを防止または軽減できるという利点が得られる。もちろんシールドラインやグランドラインを適宜設けて端部のオーバーラップを生じさせるようにしてもよい。うずまきのような形態をもってFPC基板を差し込むこともできるし、らせん状の形態をもってFPC基板を差し込むことも可能である。変形例としては折り畳み形態も考えられる。
【0051】
図8に示されるように、丸まった形態を有するFPC基板96の内側には中心軸に沿って一定の部分空間が生じ、そのようなデッドスペースを利用するという観点から、本実施形態においては当該部分空間にケーブル88が設けられている。ケーブル88は中心導体88Aと被覆88Bとからなるものである。このような構成によれば、太い導体も利用してグランドを形成できるので、良好なグランドを構築できるという利点が得られる。本実施形態においては、一本のケーブルがパイプ74の中に入れられていたが、なおスペースに空きがあるようであれば複数本のケーブルを挿入するようにしてもよい。ただしあまりそこに多数のケーブルを挿入するならば、パイプ74における振動伝達作用も場合によっては妨げる可能性があるため、そのようなおそれがない限りにおいて内部構造体の構成を定めるのが望ましい。よって、スペース上余裕があれば、複数のFPC基板をパイプ74の中に湾曲させて挿入するようにしてもよい。図8に示すような通常の湾曲形態によれば、FPC基板96をパイプ74内に容易に挿入できるという利点が得られる。例えば50本のワイヤあるいはケーブルを極めて細いパイプの中に挿入するのは非常に困難であるが、本実施形態によればそのような多数のシグナルラインを容易に配線できるという利点が得られる。
【0052】
ちなみに、図8に示す湾曲形態において、FPC基板96の外側面96Aおよび内側面96Bのうちいずれか一方にシグナルライン列を形成すればよい。もちろん両者にシグナルライン列を形成してもよい。パイプ74は導体により構成され、それは接地されている。よってパイプ74により外来ノイズを遮断できるという利点が得られる。
【0053】
図9には、操作部36の断面図が示されている。操作部36は上述したようにグリップ54およびくびれ部52を有し、さらに連結部50を有している。操作部36の内部空間36AにはFPC基板100が設けられている。そのFPC基板100は操作部36の軸方向に伸長した帯状の形態を有しており、その先端部100Aは幅方向に肥大している。連結部50内にはやや肥大した空間98が形成されており、そこには上述したパイプを通過するFPC基板96の後端部が引き出されている。具体的にはパイプから出た後端部96Cは幅方向に肥大しており、その後端部96Cが上述したFPC基板100の先端部100Aに接続される。具体的には一方のシグナルライン列と他方のシグナルライン列とが熱圧着により一対一の関係をもって電気的にかつ物理的に接続される。その熱圧着部分が符号102で示されている。各端部を肥大化させた上で接着を行うことにより、幅方向の位置ずれの許容範囲を大きくでき、信号線間におけるクロストークを効果的に防止することができる。よって作業性を向上できるという利点を得られる。ちなみにシグナルライン列の形態は印刷技術を利用すれば容易に設計することが可能である。
【0054】
FPC基板100は図示されるように、操作部36内を通過しその後端部がレセプタクル38に電気的に接続されている。この場合においても熱圧着法が利用されている。これにより、レセプタクル38を介してケーブル側のコネクタとの電気的接続が図られる。ちなみに符号104,106はOリングを示している。符号103はコネクタ接続を行う場合における枠体を示している。磁気の力を利用して接着力が生じるようにしてもよい。ちなみに図9においては、グランドラインを構成するケーブルについては図示省略されている。そのケーブルは連結部50内から内部空間36Aを介してレセプタクル38のグランド端子に接続される。もちろん中継ケーブルを利用してそのような接続を行うようにしてもよい。ちなみに各FPC基板96,100においては、その横幅方向に複数のシグナルラインが整列しており、本実施形態においてはシグナルライン列が一面上に並べられているが、もちろん多層基盤等を利用して三次元的に複数のシグナルラインを並べるようにしてもよい。
【0055】
次に図10乃至図18を用いて超音波プローブの製造方法について詳述する。
【0056】
図10に示すS10では、先端部品が製作される。これについて図11〜13を用いて説明する。図11には金属部品58が示されている。それは触覚部材44とアンカー62とからなるものである。図12にはアンカー62の斜視図が示されている。アンカー62の側面には図12に示す例において1つの凹部108が形成され、それは飛び出し防止構造である。凹部108に代えて凸部を形成するようにしてもよい。また複数の凹部等を形成するようにしてもよい。図13に示されるように、金属部品58に対するモールド処理により、すなわちアンカー62を取り囲むようにモールド材60を設けることにより、先端部品56が製作される。ちなみにモールド材60は上述した樹脂部品であり(図6)、それはキャップ部分68と包囲部分70とにより構成される。
【0057】
図10に戻って、S12ではアウターアセンブリが製作される。アウターアセンブリの構造は図14に示されており、また図18の(A)に示されている。図14において、アウターアセンブリ110の製作にあたっては、樹脂部品60におけるキャップ部分68の背面にシースチューブ76の先端縁を熱溶着によって接着する作業が実施される。符号79は熱溶着部分を示している。図14に示す例において、キャップ部分68の外形とシースチューブ76の外形とが一致しているが、熱溶着を行える限りにおいてそのような寸法の一致は必ずしも必要ではない。シースチューブ76の先端部内には、その内面から隔てられつつ包囲部分70が設けられることになり、その周囲には円筒形状をもったスリット118が構成される。そのスリット118には後に説明するようにパイプの先端部が差し込まれる。厚み114,116は絶縁性を確実に確保でき、且つ機械的な連結を強固に行える範囲内に設定するのが望ましい。アウターアセンブリ110の製作にあたって、上述した熱溶着作業が実施され、これによってシースチューブ76の先端側が完全に封止される。
【0058】
図10に戻って、S14では、振動子ユニットへの電気的な接続作業が実施される。これについて図15および図16を用いて説明する。図15には振動子ユニット82を上方から見た図が示され、図16には振動子ユニット82を下方から見た図が示されている。図15において、振動子ユニット82にはFPC基板86が取り付けられており、そのFPC基板86における引出端部がFPC基板96の先端部と接続される。その接続部分が熱圧着部120として示されている。FPC基板96はパイプ内において筒のように丸みをもって挿入配置されたものである。そのFPC基板86におけるシグナルライン列とFPC基板96におけるシグナルライン列とが個別的に接続され、これによって振動子ユニット82内の各送受信チャンネルすなわち各振動素子に個別的にシグナルラインが接続されることになる。図16においては、まるまった状態のFPC基板96が示されており、その中にはグランド用のケーブルが挿通されるが、図16においてそれは図示省略されている。ちなみに符号84は超音波ビームの向きを示している。図15および図16に示す構成は例示である。
【0059】
図10に戻って、以上のような電気的な部品が製作された上で、S16において、インナーアセンブリが製作される。これについて図17および図18の(B)を用いて説明する。図17には、パイプ74の先端部が示されている。先端部には開口部78,80が形成され、その両者間で挟まれる空間が振動子ユニットの配置スペース122である。その前方側には先端部品の差込スペース124が存在している。上述したように上方の開口部80については製作しなくてもよい。図18の(B)に示されるように、パイプ74内に、いずれかの開口部を介して振動子ユニットが差し込まれる。それに先立って振動子ユニット82に連なるFPC基板がパイプ74内に湾曲した形態をもって後端側へ差し込まれる。図9に示したようにFPC基板96の後端部は肥大しているため、パイプ74へのFPC基板96の差し込みにあたっては当該後端部が小さく丸められる。もちろん、振動子ユニット82を配置した後に、それに既に取り付けられているFPC基板とパイプ内に既に丸め挿入されるFPC基板との接続をパイプ内において行うようにしてもよい。振動子ユニット82の配設にあたっては接着剤等が利用される。振動子ユニットをパイプ74の後端側から差し込むようにしてもよい。
【0060】
図10に戻って、S18では、図18に示すように挿入部が製作される。すなわち、図18の(A)にはアウターアセンブリ110が示されており、(B)にはインナーアセンブリ126が示されている。アウターアセンブリ110の内部にその後端側からインナーアセンブリ126が差し込まれる。それに先だって、図18において符号130で示されるように接着剤がアウターアセンブリ110における先端部内に注入される。この接着剤は振動子ユニット周囲のモールド材を構成するものである。アウターアセンブリ110へのインナーアセンブリ126の差し込みにより、パイプ74の先端部74A内に先端部品における差込部分が挿入されることになり、つまり、円筒形状をもったスリットにパイプ74の先端部分が嵌め込まれる。上述したように、既に先端部品が成形されており、しかもそれがシースチューブに溶着されて一体化されているので、アウターアセンブリ110にインナーアセンブリ126を差し込むだけで、パイプ74の先端部74Aとアンカーとの位置関係を常に適正化することが可能であり、すなわち両者の位置決めを適切に行うことが可能である。
【0061】
図10に戻って、S22においては、S20において製作された操作部が挿入部と連結され、これによってハンドピースが製作される。操作部は上述した図9に示されており、ハンドピースは上述した図3および図4に示されている。
【0062】
図19および図20にはシステム構成例が示されている。図19に示す構成例では、脊椎手術支援用超音波プローブ32がアレイ振動子を有し、そのレセプタクルにはコネクタ40が着脱自在に装着される。コネクタ40は磁気センサ128を有しており、コネクタ装着状態が磁気検出によって判断されている。コネクタ40にはケーブル130が取り付けられ、そのケーブル130の他方端側にはコネクタ132が設けられ、それが超音波診断装置本体140に着脱自在に装着される。このような構成においては、使用後に超音波プローブ32を廃棄するにあたり、コネクタ40を取り外せばよいことになる。
【0063】
図20には、他のシステム構成例が示されている。超音波プローブ32Aはアレイ振動子を有する。それに対してはケーブル130Aが固定的に連結されており、その端部にはコネクタ142が設けられている。コネクタ142は中継ボックス144に着脱自在に装着される。その装着を磁気センサ146を用いて検知するようにしてもよい。中継ボックス144にはケーブルが取り付けられており、その端部にはコネクタ148が設けられている。コネクタ148は超音波診断装置本体140Aに着脱自在に装着される。超音波診断装置本体140Aは、送信部、受信部、画像形成部、表示器、操作パネル等を備えるものである。
【0064】
上記実施形態によれば、触覚検査および超音波診断の両方を行える組織挿入型超音波プローブを構成することが可能である。また、上記実施形態によれば挿入部が細径化されていても、その内部に多数のシグナルラインを簡便に設けることが可能である。また、上記実施形態によれば先端部品における差込部分をパイプの中に差し込んだ状態において、アンカーとパイプとが電気的に隔てられつつも両者が機械的に強固に連結したような状態となるので、絶縁性を確保しつつも振動の伝達を良好に行えるという利点を得られる。
【0065】
図21及び図22には他の実施形態の要部構成が示されている。図21に示される配線構造体は、挿入部を構成するパイプの先端部内に構築されるものである。すなわち、図示されていない振動子ユニットにはFPC基板200が取り付けられている。FPC基板202はパイプ内部において丸まった形態をもって挿入されるものである。図22の(A)及び(B)には、FPC基板200及びFPC基板202の展開図が示されている。FPC基板200は、振動子ユニットにおけるアレイ振動子に接続される部分204と、そこから引き出された部分206と、を有している。部分206は肥大しており、その端部(引出端部)208はコンタクト部分を構成している。FPC基板200はシグナルライン列210を有する。シグナルライン列210において、部分204におけるライン間ピッチよりもコンタクト部分208におけるライン間ピッチの方が大きい。FPC基板202は、本体部分212と肥大した端部214とを有し、端部214の先端部分がコンタクト部分216を構成している。FPC基板202はシグナルライン列218を有する。シグナルライン列218において、本体部分212におけるライン間ピッチよりもコンタクト部分216におけるライン間ピッチの方が大きい。2つのコンタクト部分208,216のライン間ピッチ(配線パターン)は互いに同一であり、両者は加圧接着等の方法により重合接続される。
【0066】
図21において、符号217は振動子ユニットにおけるバッキング等が配置される空間を示している。FPC基板200における部分204の上側にはアレイ振動子が配設される。アレイ振動子の上側にはグランド電極をなす銅箔が設けられる。グランドラインについては図示省略されている。振動子ユニットに対してFPC基板200が取り付けられた状態において、それに対してFPC基板202が接続される。その後、振動子ユニットにおけるバッキングを包み込むようにFPC基板200が折り曲げられる。それに伴い、FPC基板202の端部214も折り曲げられる。FPC基板202の本体部分212はパイプ内において丸められた状態におかれる。
【0067】
上記の配線構造体をパイプ内に配置する場合、まず、振動子ユニットに配線構造体が連なっている状態において、丸められたFPC基板202の後端部がパイプ先端部に形成された開口部に差し込まれ、当該後端部がパイプ内部へ徐々に送り込まれる。その後端部はパイプの後端開口から外部へ引き出される。その上で、振動子ユニットがパイプ先端部の所定位置に接着剤等を利用して固定される。図21及び図22に示した構成によれば、2つのFPC基板の連結を確実かつ容易に行える。2つのコンタクト部においてライン間ピッチが広げられているので接続時の作業性が良好になる。また誤配線の問題が生じにくい。
【符号の説明】
【0068】
32 脊椎手術支援用超音波プローブ、34 挿入部、36 操作部、44 触覚部材、46 アレイ振動子、48 挿入軸、54 グリップ、56 先端部品、58 金属部品、60 樹脂部品、74 パイプ、76 シースチューブ、82 振動子ユニット、86 FPC基板(第3FPC基板)、96 FPC基板(第1FPC基板)、100 FPC基板(第2FPC基板)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎骨に形成された案内孔に挿入される挿入部と、
前記挿入部に連結され、前記挿入部から振動が伝達され、使用者によって把持される操作部と、
を含み、
前記挿入部は、
管部材と、
前記管部材の先端部に設けられ、前記椎骨の内部を超音波診断により検査するための複数の振動素子を有するアレイ振動子と、
前記管部材の先端部に設けられた部品であって、前記椎骨の内部を前記使用者の触覚により検査するための触覚部材と当該触覚部材に連なるアンカーとを有する金属部材と、前記アンカーを包囲した包囲部分を有する絶縁部材と、を備える先端部品と、
を含み、
前記先端部品の内で前記アンカー及び前記包囲部分からなる差込部分が前記管部材の中に嵌め込まれた、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブ。
【請求項2】
請求項1記載の脊椎手術支援用超音波プローブにおいて、
前記差込部分は円柱形状を有し、
前記アンカーは、抜け止め構造を有する側面をもった円柱形状を有する、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブ。
【請求項3】
請求項2記載の脊椎手術支援用超音波プローブにおいて、
前記抜け止め構造は少なくとも1つの凹部又は凸部を有する、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の脊椎手術支援用超音波プローブにおいて、
前記管部材はシールド作用及び振動伝達作用を発揮する金属パイプ部材により構成され、
前記挿入部は更に前記管部材の外側を覆う絶縁性シースチューブを有し、
前記絶縁部材は前記包囲部分に連なり前記管部材の先端用口部を覆うキャップ部分を有し、
前記キャップ部分と前記絶縁性シースチューブの先端開口部とが接着された、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブ。
【請求項5】
請求項4記載の生体内挿入型超音波プローブにおいて、
前記キャップ部分と前記絶縁性シースチューブの先端開口部とが熱溶着により一体化された、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブ。
【請求項6】
請求項4に記載の脊椎手術支援用超音波プローブにおいて、
前記キャップ部分は前方へ膨らんだドーム形状を有し、
前記触覚部材は、前記キャップ部分の中央部から突出して前記管部材の中心軸に直交する所定方位へ向かう軸と、当該軸の先端部に設けられた球状のヘッドと、を有する、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブ。
【請求項7】
請求項6記載の脊椎手術支援用超音波プローブにおいて、
前記ヘッドの全部又は一部が前記所定方位において前記管部材の側面レベルよりも生体側へ突出した、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブ。
【請求項8】
請求項7記載の脊椎手術支援用超音波プローブにおいて、
前記管部材の先端部において前記所定方位に前記アレイ振動子で送波及び受波される超音波を通過させる開口部が形成され、
前記管部材における前記開口部の奥側に前記アレイ振動子を備えた振動子ユニットが埋設された、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブ。
【請求項9】
請求項8記載の脊椎手術支援用超音波プローブにおいて、
前記振動子ユニットの周囲に絶縁性モールドが施された、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブ。
【請求項10】
触覚部材とそれに連なるアンカーとを有する金属部材と、キャップ部分とそれに連なり前記アンカーを包囲した包囲部分とを有する絶縁部材と、を備える先端部品を製作する工程と、
前記先端部品と絶縁性シースチューブとを接着する工程であって、前記キャップ部分と前記絶縁性シースチューブの開口部とを熱溶着により一体化させることによりアウターアセンブリを製作する工程と、
アレイ振動子を備えた振動子ユニットを金属パイプ部材の先端部内に設けることよりインナーアセンブリを製作する工程と、
前記アウターアセンブリの中に前記インナーアセンブリを差し込むことにより挿入部を製作する工程と、
前記挿入部と操作部とを連結させる工程と、
を含むことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブの製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の製造方法において、
前記アウターアセンブリを製作する工程では、前記先端部品における差込部分と前記絶縁性シースチューブとの間に円筒形スリットが形成され、
前記挿入部を製作する工程では、前記円筒形スリットに前記金属パイプ部材の先端部が挿入される、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブの製造方法。
【請求項12】
請求項10記載の製造方法において、
前記挿入部を製作する工程では、前記触覚部材が向かう方位と前記アレイ振動子が向く方位とが揃うように前記アウターアセンブリの中に前記インナーアセンブリが位置決められる、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブの製造方法。
【請求項13】
請求項10記載の製造方法において、
前記挿入部を製作する工程では、前記アウターアセンブリの中に前記インナーアセンブリを差し込む前に前記アウターアセンブリの中にモールド用接着剤が流し込まれる、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブの製造方法。
【請求項1】
椎骨に形成された案内孔に挿入される挿入部と、
前記挿入部に連結され、前記挿入部から振動が伝達され、使用者によって把持される操作部と、
を含み、
前記挿入部は、
管部材と、
前記管部材の先端部に設けられ、前記椎骨の内部を超音波診断により検査するための複数の振動素子を有するアレイ振動子と、
前記管部材の先端部に設けられた部品であって、前記椎骨の内部を前記使用者の触覚により検査するための触覚部材と当該触覚部材に連なるアンカーとを有する金属部材と、前記アンカーを包囲した包囲部分を有する絶縁部材と、を備える先端部品と、
を含み、
前記先端部品の内で前記アンカー及び前記包囲部分からなる差込部分が前記管部材の中に嵌め込まれた、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブ。
【請求項2】
請求項1記載の脊椎手術支援用超音波プローブにおいて、
前記差込部分は円柱形状を有し、
前記アンカーは、抜け止め構造を有する側面をもった円柱形状を有する、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブ。
【請求項3】
請求項2記載の脊椎手術支援用超音波プローブにおいて、
前記抜け止め構造は少なくとも1つの凹部又は凸部を有する、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の脊椎手術支援用超音波プローブにおいて、
前記管部材はシールド作用及び振動伝達作用を発揮する金属パイプ部材により構成され、
前記挿入部は更に前記管部材の外側を覆う絶縁性シースチューブを有し、
前記絶縁部材は前記包囲部分に連なり前記管部材の先端用口部を覆うキャップ部分を有し、
前記キャップ部分と前記絶縁性シースチューブの先端開口部とが接着された、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブ。
【請求項5】
請求項4記載の生体内挿入型超音波プローブにおいて、
前記キャップ部分と前記絶縁性シースチューブの先端開口部とが熱溶着により一体化された、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブ。
【請求項6】
請求項4に記載の脊椎手術支援用超音波プローブにおいて、
前記キャップ部分は前方へ膨らんだドーム形状を有し、
前記触覚部材は、前記キャップ部分の中央部から突出して前記管部材の中心軸に直交する所定方位へ向かう軸と、当該軸の先端部に設けられた球状のヘッドと、を有する、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブ。
【請求項7】
請求項6記載の脊椎手術支援用超音波プローブにおいて、
前記ヘッドの全部又は一部が前記所定方位において前記管部材の側面レベルよりも生体側へ突出した、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブ。
【請求項8】
請求項7記載の脊椎手術支援用超音波プローブにおいて、
前記管部材の先端部において前記所定方位に前記アレイ振動子で送波及び受波される超音波を通過させる開口部が形成され、
前記管部材における前記開口部の奥側に前記アレイ振動子を備えた振動子ユニットが埋設された、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブ。
【請求項9】
請求項8記載の脊椎手術支援用超音波プローブにおいて、
前記振動子ユニットの周囲に絶縁性モールドが施された、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブ。
【請求項10】
触覚部材とそれに連なるアンカーとを有する金属部材と、キャップ部分とそれに連なり前記アンカーを包囲した包囲部分とを有する絶縁部材と、を備える先端部品を製作する工程と、
前記先端部品と絶縁性シースチューブとを接着する工程であって、前記キャップ部分と前記絶縁性シースチューブの開口部とを熱溶着により一体化させることによりアウターアセンブリを製作する工程と、
アレイ振動子を備えた振動子ユニットを金属パイプ部材の先端部内に設けることよりインナーアセンブリを製作する工程と、
前記アウターアセンブリの中に前記インナーアセンブリを差し込むことにより挿入部を製作する工程と、
前記挿入部と操作部とを連結させる工程と、
を含むことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブの製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の製造方法において、
前記アウターアセンブリを製作する工程では、前記先端部品における差込部分と前記絶縁性シースチューブとの間に円筒形スリットが形成され、
前記挿入部を製作する工程では、前記円筒形スリットに前記金属パイプ部材の先端部が挿入される、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブの製造方法。
【請求項12】
請求項10記載の製造方法において、
前記挿入部を製作する工程では、前記触覚部材が向かう方位と前記アレイ振動子が向く方位とが揃うように前記アウターアセンブリの中に前記インナーアセンブリが位置決められる、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブの製造方法。
【請求項13】
請求項10記載の製造方法において、
前記挿入部を製作する工程では、前記アウターアセンブリの中に前記インナーアセンブリを差し込む前に前記アウターアセンブリの中にモールド用接着剤が流し込まれる、
ことを特徴とする脊椎手術支援用超音波プローブの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−90857(P2012−90857A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241908(P2010−241908)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]