説明

脱ハロゲン化方法

【課題】従来の脱ハロゲン化方法に比べ収率及び選択率が向上され、実質的に水素化された副生成物を低減されたビニル化合物を得るための、塩素及び/又は臭素を含むハロフルオロ化合物の脱ハロゲン化方法を提供する。
【解決手段】亜鉛などの遷移金属の存在下に、パーフルオロポリエーテルなどの(パー)フルオロ系溶媒と、ジメチルアセタミドなどの非プロトン性双極性溶媒又はジグリムなどのエーテル類からなる系中で、パーフルオロ−1,2,3,4−テトラクロロ−ブタンなどのハロフルオロ化合物を、共存溶媒のモル数/ハロフルオロ化合物の当量数との比が0.5〜10の範囲で、脱ハロゲン化して、パーフルオロ−1,3−ブタジエンなどのビニル化合物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子内にフッ素以外のハロゲン原子を含むハロフルオロ化合物の脱ハロゲン化によってフッ素系オレフィン類を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、非特許文献1に示されているように、塩素及び/又は臭素から選ばれるハロゲン原子を含むハロフルオロ化合物の脱ハロゲン化のプロセスは、1又はそれ以上の遷移金属と、アルコール類などのプロトン性溶媒、ジオキサンのようなエーテル類、又はジメチルフォルムアミド(DMF)のような双極性非プロトン性溶媒のいずれかである溶媒とからなる不均一系を使って行われることがよく知られている。遷移金属は、例えば、亜鉛、マグネシウム、銅から選択される。Zn/Cu、Zn/Sn、Zn/Hgなどように金属を組み合わせても使うことができる。また、脱ハロゲン化において、水素原子を含んだ、飽和及び/又は不飽和のフッ素系の還元副生成物が得られ、それによって主生成物の収率を低下させる。上記文献によれば、特に127頁を参照すると、双極性非プロトン性溶媒を使うことによって、水素化された望ましくない化合物の量が減り、収率を向上させることができる。
【0003】
脱ハロゲン化反応に、プロトン性溶媒と同様に、双極性非プロトン性溶媒を用いることによって、反応途中で、遷移金属のハロゲン塩と錯体を形成することが知られている。例えば、亜鉛を使った場合には、ハロゲン塩は塩化亜鉛である。
溶媒−遷移金属ハロゲン塩錯体の生成は、溶媒の回収を困難にするので工業的な観点から問題である。さらに、従来の脱ハロゲン化法では、原料化合物中で二次反応が起きて結果的に収率を低下させるので、脱ハロゲン化反応生成物と溶媒との長時間の接触を避けることが重要である。
【0004】
脱ハロゲン化において二次反応を減らす一つの方法として、できる限りすばやく、脱ハロゲン化反応生成物を原料化合物中から取り除く方法がある。溶媒に対して脱ハロゲン化反応生成物の揮発性が高い場合には、蒸留によってこの方法を実施することができる。
また、この方法は、同様の化学−物理的特性を持つ水素化された副生成物を含んでいても、得られた脱ハロゲンされた化合物の精製において有用である。従って、副生成物を主生成物から分離することがほとんどできない。
【0005】
例えば、マイクロリソグラフィー製品又はポリマー製光ファイバー用のモノマーなどの高純度が要求される用途では、可能な限り高い純度を持つ脱ハロゲン化された化合物を得ることが工業的に重要である。従って、脱ハロゲン化反応生成物の中に取り除くことができない不純物が含まれていることは工業的な観点からも問題である。
【非特許文献1】Houben Weyl Encyclopedia, E 10B2巻, 125-161頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来の脱ハロゲン化方法に比べ収率及び選択率が向上され、実質的に水素化された副生成物が低減されたビニル化合物を得るための、塩素及び/又は臭素を含むハロフルオロ化合物の脱ハロゲン化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願人は、驚いたことにまた意外なことに、上記の技術的課題を解決する製法を見出した。
本発明の対象は、
【0008】
【化1】

〔Y及びYは、同じでも異なっていてもよい、Cl、Br、Iから選択されるものである。〕
の基を少なくとも1つ分子内に含む、直鎖、分枝または環構造のハロフルオロ化合物を
遷移金属の存在下に、
(パー)フルオロ系溶媒と、双極性非プロトン性溶媒(共存溶媒)とからなる互いに非相溶な二つ溶媒相からなる系中で、
共存溶媒のモル数/ハロフルオロ化合物の当量数の比が0.5〜10、好ましくは0.5〜5、さらに好ましくは1〜3の範囲で、
脱ハロゲン化して、ビニル化合物を製造する方法である。
【0009】
共存溶媒として、双極性非プロトン性溶媒の代わりに、プロトン性溶媒を用いることができる。
【0010】
ハロフルオロ化合物の当量数は、該化合物中に存する
【0011】
【化2】

で表される基の数を乗算したハロフルオロ化合物のモル数を意味する。
【0012】
脱ハロゲン化反応は、様々なハロフルオロ化合物、例えば、遷移金属と反応可能な官能基を含まないものや、上記不均一系を形成する(パー)フルオロ系溶媒および共存溶媒と反応可能な官能基を含まないものにも適用することができる。
【0013】
本発明において、相互に非相溶な溶媒は、二つの異なる相を形成するそれぞれの溶媒を意味する。
脱ハロゲン化反応に適用ができる化合物としては、例えば、次式(A)、(B)の分類のものが挙げられる。
【0014】
(A)
−(O)z”−R−[(OCFY−(CFYz’−CF
〔Y及びYは上記の意味であり;
z=0、1;
z’=0、1(zはz’と異なる。);
z”=0、1;
は、直鎖又は分枝構造のC−C20、好ましくはC−C10の、1又はそれ以上の酸素原子が含まれていてもよいフルオロアルキレン、好ましくは1又はそれ以上の酸素原子が含まれていてもよいパーフルオロアルキレン;
(CO)、
(CFXO) 〔但し、XはF又はCF〕、
(CO)、
(CF(CFx’CFO) 〔但し、x’は1又は2の整数〕、
(CRCFCFO) 〔但し、R及びRは同じでも異なってもよい、H、Clから選択されるものであり、パーフルオロメチレン単位中の一つのフッ素原子はH、Cl又は(パー)フルオロアルキル(例えば、炭素数1〜4個のもの)で置換されていてもよい。〕
の1又はそれ以上の単位が統計学的に主鎖に分布した(パー)フルオロポリオキシアルキレンであり、;
が(パー)フルオロアルキレンである場合に、下記のzaが1であるとき、z”は0、Rが(パー)フルオロポリオキシアルキレンである場合には、za=0のとき、z=0、z”=1;
はF又は、−(CFYO)za−(CFYz’ −CY
〔zaは0又は1;Y、Y、z’は上記と同じ。〕の構造を持つ置換基である。〕、
【0015】
(B)
【0016】
【化3】

【0017】
〔Y及びYは上記と同じ;
PはF、C−Cのパーフルオロアルキル(R)、OR
及びYは、同じでも異なってもよい、F、CFである。〕
の構造のジオキソラン類。
【0018】
式(A)の化合物において、Rが(パー)フルオロポリオキシアルキレン置換基である場合には、それの数平均分子量が66〜12,000、好ましくは66〜1,000、より好ましくは300〜800である。
【0019】
式(A)の化合物において、Rが(パー)フルオロポリオキシアルキレン置換基である場合には、Rの(CO)単位は(CFCF(CF)O)又は(CF(CF)CFO)から選択される。
【0020】
式(A)の化合物において、パーフルオロオキシアルキレン鎖Rは、例えば、下記から選択される。
(a’)
−(CFCFO)p’(CFO)q’
〔p’及びq’は、q’/p’の比が0.2と4との間にあり、p’が零でなく;数平均分子量が上記の範囲になる整数である。〕
【0021】
(b’)
−(CFCF(CF)O)r’−(CFCFO)s’−(CFXO)t’
〔Xは上記と同じ;r’、s’及びt’は、r’+s’が1と50との間にあり、t’/(r’+s’)の比が0.01と0.05との間にあり、(r’+s’)が零でなく;数平均分子量が上記の範囲になる整数である。〕
【0022】
(c’)
−(CF(CF)CFO)u’−RO−(CF(CF)CFO)u’
〔RはC〜Cの二官能のパーフルオロアルキルラジカル;u’は数平均分子量が上記の範囲になる整数である。〕
【0023】
(c”)
(CFXO)t’−(CFCF(CF)O)r’−RO−(CFCF(CF)O)r’−(CFXO)t’
〔RはC〜Cの二官能のパーフルオロアルキルラジカル;r’、t’及びXは上記と同じ;r’及びt’は数平均分子量が上記の範囲になる数である。〕
【0024】
(d’)
−(CF(CFx’CFO)v’
〔v’は数平均分子量が上記の範囲になる整数であり、x’は1又は2の整数である。〕
【0025】
(e’)
−(CFCFCHO)w’−RO−(CHCFCFO)w’
〔Rは上記と同じ;w’は数平均分子量が上記の範囲になる整数である。〕
【0026】
Rfは式(a’)又は(b’)であることが好ましい。
【0027】
本発明の製造方法を使うことによって、式(A)の化合物からビニルエーテル及びオレフィン系の化合物がそれぞれ得られ、式(B)の化合物からそれに対応するジオキソール類が得られる。
【0028】
−(OCFYza−(CFYz’ −CF
を末端単位として含む式(A)の化合物〔Rがパーフルオロアルキルであり、Tが上記の意味である。〕は、za=1の場合は、欧州特許1,388,531号公報、欧州特許1,333,020号公報に記載の方法で得られ、za=0の場合は、非特許文献1に記載の方法で得られる。
【0029】
−(OCFYza−(CFYz’ −CF
を末端単位として含む式(A)の化合物〔Tが上記の意味であり、Rが(パー)フルオロポリオキシアルキレンである。〕は、−COFを末端基に有する、対応する(パー)フルオロポリオキシアルキレン類から始めることによって得られる。英国特許1,104,482号公報、米国特許3,715,378号公報、米国特許3,242,218号公報、米国特許4,647,413号公報、欧州特許148,482号公報、米国特許4,523,039号公報、欧州特許340,740号公報、国際公開WO90/03357号公報、米国特許3,810,874号公報、欧州特許239,123号公報、米国特許5,149,842号公報、米国特許5,258,110号公報など参照。
【0030】
式(B)の化合物は、米国特許5,225,576号公報及び米国特許5,495,028号公報に記載の方法で得ることができる。
【0031】
本発明の製法は、通常、室温(20℃)と200℃との間、好ましくは50℃と150℃との間の温度で行われる。但し、反応温度は、使用される(パー)フルオロ系溶媒及び共存溶媒の沸点よりも低くする。一般に大気圧下で本発明の製造方法は行われる。
【0032】
本発明の製造方法で使われる遷移金属は、好ましくは亜鉛、マンガン及び銅から選択される。又は、Zn/Cu、Zn/Sn、Zn/Hgなどで例示されるような遷移金属の組み合わせを代用することができる。
【0033】
本発明の製造方法では、(パー)フルオロ系溶媒として、上記温度において、液体で且つ不活性な化合物が使用できる。(パー)フルオロカーボン類、(パー)フルオロエーテル類、(パー)フルオロポリエーテル類、パーフルオロアミン類、ハイドロフルオロエーテル類、ハイドロポリフルオロエーテル類、又はこれらの混合物から選択され、例えば、HFE(登録商標)、やH−Galden(登録商標)がそれぞれ使うことができる。
【0034】
ハイドロフルオロエーテル類及びハイドロポリフルオロエーテル類において、その分子末端基は、−H(H−Galden〔登録商標〕)、−OCH、−OC、−OC(HFE)である。後者は、ソルバーユ ソレクシス社及び3M社によってそれぞれ製造されている。H−Galden(登録商標)が好ましく使われる。
一般に、低蒸気圧の溶媒であるようにそして反応中にドラッギング現象が生じないように、高沸点の(パー)フルオロ系溶媒が使われる。例えば、沸点約200℃のGalden HT−200(登録商標)、又は沸点約215℃のGalden LS−215(登録商標)を使うことができる。
【0035】
使用される共存溶媒は、反応条件下で、液体で且つ実質的に不活性でなければならない。例えば、直鎖または分枝構造のC〜Cのアルコール類;ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセタミド、ジメチルスルフォキシド、モルフォリン、アセトニトリルなどの双極性非プロトン性溶媒;ジグリム、テトラグリム、1,4−ジオキサンなどのエーテル類;又はそれらの混合物から選択される。
【0036】
前もって反応温度に上げられた、(パー)フルオロ系溶媒、共存溶媒、遷移金属又は遷移金属の組合せからなる混合物に、ハロフルオロ化合物を添加して、攪拌下で、通常、反応させる。
【0037】
通常、脱ハロゲン化の反応は、実質的に完全に(即ち反応率100%で)行う。反応時間は通常8時間未満である。
【0038】
遷移金属は、遷移金属のモル数/ハロフルオロ化合物の当量数の比は1と5の間、好ましくは1と2との間になるような量で使用される。
【0039】
本発明の製造方法において、(パー)フルオロ系溶媒の量は特に制限されないが、(パー)フルオロ系溶媒:ハロフルオロ化合物の重量比が1:2〜1:20、好ましくは1:2〜1:5の範囲であることが好適である。
【0040】
以上のように、本発明の製造方法で得られる脱ハロゲン化反応生成物は、従来技術によってハロフルオロ系化合物を脱ハロゲン化したものに比べ、水素化された副生成物の量が少ない。さらに、実施例に示すように収率が向上する。さらに本発明の製造方法においては、反応生成物が反応原料物中に残っていても、そして低揮発性であるために反応中の蒸留によって反応原料物から分離しなくても、脱ハロゲン化反応生成物の収率及び選択率が高く維持される。
【実施例】
【0041】
本発明を実施例によって説明する。これらは本発明を実施例だけに限定するものではない。
【0042】
脱ハロゲン化によって得られた化合物の純度の測定
定量19F−NMR及びH−NMR、定量ガスクロマトグラフィー及び質量分析器によって、反応生成物の同定と定量を行った。
【0043】
比較例1A
式(II): CFCFOCFOCFClCFCl で表される1,2−ジクロロ−3,5−ジオキサパーフルオロヘプタンを原料にして、従来技術に従って脱ハロゲン化(脱塩素化)して、
式(VIII): CFCFOCFOCF=CF (MOVE1)で表される化合物を合成する。
【0044】
B. Ameduri et al., J. Fluorine Chem. 35 (1999) 1557-1566及びP. A. Morken et al., J. Org. Chem. 58 (1993) 1167-1172に記載の方法に従って脱ハロゲン化反応を行った。
溶媒としてDMF35g、及びZn0.074モルを、滴下容器、ヴィグロ、温度計、磁気攪拌具を備えた3つ口フラスコに仕込む。その混合物を亜鉛が活性化するように、20分間、80℃に加熱する。次いで欧州特許1,454,940号公報に従って得られた式(II)の化合物0.049モル(亜鉛数/化合物(II)のモル比=1.5)を0.6モル/時間の流量で滴下添加する。80℃で磁気攪拌具で攪拌し、式(II)の化合物が完全に反応するまで、例えば60分間、反応させる。脱塩素化反応生成物を、蒸留器によってヴィグロに連結され、−80℃の冷浴に浸けられた、10ml単位の目盛りが付いた真空試験管に溜める。
反応率は19F−NMRによって反応中に合間をおいて粗生成物を分析し、−80℃のトラップに集められたオレフィン(VIII)のml量で調整することによって求めた。
主な水素化フルオロ生成物は、
式(XI): CFCFOCFOCFCFH であることがわかった。この化合物の含有量(ppm)を表1に示した。
【0045】
【化4】

【0046】
比較例1B
式(III)で表される2,2,4−トリフルオロ−4,5−ジクロロ−5−トリフルオロメトキシ−1,3−ジオキソールを原料にして、従来技術に従って、脱塩素化して、式(IX)で表される、2,2,4−トリフルオロ−5−トリフルオロメトキシ−1,3−ジオキソールを製造する。
【0047】
【化5】

【0048】
化合物(III)は米国特許5,495,028号公報に従って製造される。比較例1Aと同様の方法を繰り返す。
主な水素化フルオロ生成物は、式(XII)で表される化合物であることがわかった。この化合物の含有量(ppm)を表1に示した。
【0049】
【化6】

【0050】
比較例1C
式(VII): CFCl−CFCl−CFCl−CFCl で表される、パーフルオロ−1,2,3,4−テトラクロロ−ブタンを原料にして、従来技術に従って、脱塩素化して、
式(X): CF=CF−CF=CF で表される、パーフルオロ−1,3−ブタジエンを製造する。
比較例1Aと同様の方法を繰返す。
主な水素化フルオロ生成物は、
式(XIII): HCF−CF=CF−CFH で表される化合物であることがわかった。この化合物の含有量(ppm)を表1に示した。
【0051】
実施例2
実施例2A〜2Cでは、本発明の脱ハロゲン化方法を用いた。
ハロフルオロ化合物の重量の2倍量のHT−200(パーフルオロポリエーテル、Galden(登録商標) Y、沸点200℃)、ハロフルオロ化合物のモル量の1.5倍の細かく粉砕した亜鉛、及びハロフルオロ化合物のモル量の2倍のジメチルアセタミド(DMA)(炭化水素系共存溶媒)を、滴下容器、バブル凝縮器、温度計、磁気攪拌具を備えた3つ口フラスコに仕込む。80℃と110℃との間の各実施例2A〜2Cでそれぞれ示す温度で攪拌を続け、ハロフルオロ化合物を0.6当量/時間の流量で滴下添加する。該ハロフルオロ化合物が完全に全て反応するまで(約2時間)、反応温度を維持し、攪拌を続ける。反応率は上記の方法と同じ方法で行う。
【0052】
反応終了時に、反応粗生成物を濾過し、残留亜鉛及び、反応途中に生成した亜鉛塩を除去する。反応生成物からフッ素系溶媒及び炭化水素系共存溶媒を蒸留によって除去する。実施例2A〜2Cで得られた水素化フルオロ化合物の含有量(ppm)を表1にそれぞれ示した。
【0053】
実施例2A
式(II): CFCFOCFOCFClCFCl で表される化合物を脱ハロゲン化(脱塩素化)反応させて、
式(VIII): CFCFOCFOCF=CF で表される化合物を得る。
実施例2に示した本発明製法を反応温度100℃で行った。得られた水素化フルオロ化合物は
式(XI): CFCFOCFOCFCFH で表されるものである。この水素化フルオロ化合物の含有量(ppm)を表1に示した。
【0054】
【化7】

【0055】
実施例2B
式(III)で表される化合物を脱ハロゲン化(脱塩素化)反応させて、式(IX)で表される化合物を得る。
【0056】
【化8】

【0057】
実施例2に示した本発明製法を反応温度80℃で行った。式(XII)で表される水素化フルオロ化合物の含有量(ppm)を表1に示した。
【0058】
【化9】

【0059】
実施例2C
式(VII): CFCl−CFCl−CFCl−CFCl で表される化合物を脱ハロゲン化(脱塩素化)反応させて、
式(X): CF=CF−CF=CF で表される化合物を得る。
実施例2に示した本発明製法を反応温度110℃で行った。
式(XIII): HCF−CF=CF−CFH で表される水素化フルオロ化合物の含有量(ppm)を表1に示した。
【0060】
実施例3
共存溶媒としてジグリムを使って脱ハロゲン化反応を行った。
炭化水素系共存溶媒としてジグリムを使った他は実施例2Aと同様の方法を繰り返す。式(II)の化合物の反応率は20%、式(VIII)の化合物の選択率は99.0%であった。
【0061】
実施例4
ClCFCFClO(CFOCFClCFCl で表される化合物を脱ハロゲン化した。
上記化合物を用い、反応温度を110℃にした以外は実施例2と同様の方法を繰り返す。反応粗生成物から分離された反応生成物は、
式(XX): CF=CFO(CFOCF=CF 及び
式(XXI): HCFCFO(CFOCFCFH で表される化合物であった。
19F−NMR(200MHz)による分析によって、−CFCFH末端基の量が反応混合物の総量に対して8,260ppmであることが判った。
−OCF=CF末端基 及び −CFCFH末端基、それぞれの選択率を表2に示した。
【0062】
比較例5
ClCFCFClO(CFOCFClCFCl で表される化合物をDMF中で脱ハロゲン化した。
上記化合物を用い、反応温度を110℃にした以外は比較例1と同様の方法を繰り返す。反応混合物中に 主化合物(XX)、化合物(XXI)が等量含まれていた。
19F−NMR(200MHz)による分析によって、−CFCFH末端基の量が反応混合物の総量に対して35,000ppm(3.5重量%)であることが判った。
−OCF=CF末端基 及び −CFCFH末端基、それぞれの選択率を表2に示した。
【0063】
得られた脱ハロゲン化合物を蒸留しない反応条件においても、本発明の製法によれば、水素化副生成物の量が、比較例のものに比べて、顕著に少なくなることが、表2の結果からわかる。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】

〔Y及びYは、同じでも異なっていてもよい、Cl、Br、Iから選択されるものである。〕
の基を少なくとも1つ分子内に含む、直鎖、分枝または環構造のハロフルオロ化合物を、
遷移金属の存在下に、
(パー)フルオロ系溶媒と、非プロトン性双極性溶媒又はプロトン性溶媒(共存溶媒)とからなる互いに非相溶な二つ溶媒相からなる系中で、共存溶媒のモル数/ハロフルオロ化合物の当量数の比が0.5〜10の範囲で、
脱ハロゲン化して、ビニル化合物を製造する方法。
【請求項2】
ハロフルオロ化合物が、次式(A)、(B)の分類から選択されるものである、請求項1に記載の製造方法。
(A)
−(O)z”−R−[(OCFY−(CFYz’−CF
〔Y及びYは上記の意味であり;
z=0、1;
z’=0、1(zはz’と異なる。);
z”=0、1;
は、直鎖又は分枝構造のC−C20の、1又はそれ以上の酸素原子を含んでいてもよいフルオロアルキレン;
(CO)、
(CFXO) 〔但し、XはF又はCF〕、
(CO)、
(CF(CFx’CFO) 〔但し、x’は1又は2の整数〕、
(CRCFCFO) 〔但し、R及びRは同じでも異なってもよい、H、Clから選択されるものであり、パーフルオロメチレン単位中の一のフッ素原子はH、Cl又は炭素数1〜4の(パー)フルオロアルキルで置換されていてもよい。〕
の1又はそれ以上の単位が統計学的に主鎖に分布して含有してなる(パー)フルオロポリオキシアルキレンであり、
が(パー)フルオロアルキレンである場合に、下記のzaが1であるときz”は0、Rが(パー)フルオロポリオキシアルキレンである場合に、za=0のとき、z=0、z”=1;
はF又は、CF−(CFYz’−(CFYO)za
〔zaは0又は1の整数;Y、Y、z’は上記と同じ。〕の構造を持つ置換基である。〕、
(B)

〔Y及びYは上記と同じ;
PはF、C−Cのパーフルオロアルキル(R)、OR
及びYは、同じでも異なってもよい、F、CFである。〕
の構造のジオキソラン類。
【請求項3】
式(A)の化合物において、Rが(パー)フルオロポリオキシアルキレン置換基であり、数平均分子量が66〜12,000である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
式(A)の化合物において、Rが(パー)フルオロポリオキシアルキレン置換基であり、Rの(CO)単位が、(CFCF(CF)O)又は(CF(CF)CFO)から選択されるものである請求項2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
式(A)の化合物において、パーフルオロオキシアルキレン鎖Rが、下記から選択される請求項2〜4のいずれかに記載の製造方法。
(a’)
−(CFCFO)p’(CFO)q’
〔p’及びq’は、q’/p’の比が0.2と4との間にあり、p’が零でなく;数平均分子量が上記の範囲に含まれる整数である。〕
(b’)
−(CFCF(CF)O)r’−(CFCFO)s’−(CFXO)t’
〔Xは上記と同じ;r’、s’及びt’は、r’+s’が1と50との間にあり、t’/(r’+s’)の比が0.01と0.05との間にあり、(r’+s’)が零でなく;数平均分子量が上記の範囲になる整数である。〕
(c’)
−(CF(CF)CFO)u’−RO−(CF(CF)CFO)u’
〔RはC〜Cの二官能のパーフルオロアルキルラジカル;u’は数平均分子量が上記の範囲になる整数である。〕
(c”)
(CFXO)t’−(CFCF(CF)O)r’−RO−(CFCF(CF)O)r’−(CFXO)t’
〔RはC〜Cの二官能のパーフルオロアルキルラジカル;r’、t’及びXは上記と同じ;r’及びt’は数平均分子量が上記の範囲になる数である。〕
(d’)
−(CF(CFx’CFO)v’
〔v’は数平均分子量が上記の範囲になる整数であり、x’は1又は2の整数である。〕
(e’)
−(CFCFCHO)w’−RO−(CHCFCFO)w’
〔Rは上記と同じ;w’は数平均分子量が上記の範囲になる整数である。〕
【請求項6】
Rfが式(a’)又は(b’)である請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
温度が20〜200℃の範囲である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
遷移金属が亜鉛、マンガン及び銅から選択される請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
遷移金属を組み合わせて用いる請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
(パー)フルオロ系溶媒が、(パー)フルオロカーボン類、(パー)フルオロエーテル類、(パー)フルオロポリエーテル類、パーフルオロアミン類、ハイドロフルオロエーテル類、ハイドロポリフルオロエーテル類、又はこれらの混合物から選択される請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
共存溶媒が、直鎖または分枝構造のC〜Cのアルコール類;双極性非プロトン性溶媒;エーテル類;又はそれらの混合物から選択される請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
遷移金属のモル数/ハロフルオロ化合物の当量数の比が1と5の間にある請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
(パー)フルオロ系溶媒:ハロフルオロ化合物の重量比が1:2〜1:20の範囲である請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−312637(P2006−312637A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129128(P2006−129128)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(398011217)
【Fターム(参考)】