説明

脱塩素設備における製品搬送装置

【課題】垂直バケットコンベアと傾斜移送パイプとの組合わせにより、摩耗部分が殆んどなく、小型・安全で高効率の脱塩素設備における製品搬送装置を提供する。
【解決手段】脱塩素設備における製品搬送装置1は、少なくとも垂直バケットコンベア11と傾斜移送パイプ17とを有し、前記垂直バケットコンベア11の下部からバケット14で搬送される製品は、前記傾斜移送パイプ17内を金網コンベア5上に流下し、水と分離されて篩分装置6に供給され、製品の搬送による装置側の摩耗をなくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱塩素設備における製品搬送装置に関し、特に、垂直バケットコンベアと傾斜移送パイプとの組合わせにより、摩耗部分が殆んどなく、小型で安全で効率的な構成を得るための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大量に廃棄されるプラスチックスの再資源化処理が行われているが、この廃棄プラスチックスの中に塩化ビニール等の塩素を含むプラスチックスが混入している場合、環境保護および材質改善の観点から、塩素の除去すなわち脱塩素処理が行われる。この脱塩素処理の一つの方法として、押出機を脱塩素機として使用する方法が実施されている。すなわち、前処理により金属類等の不純物が除去された廃棄プラスチックスが、押出機へ供給され、溶融混練され、ガス化した塩素を含む不純ガスが排気除去され、カッター装置を介して粒状の製品として生産されている。
【0003】
この脱塩素機から排出される製品は、通常、溶融状態のプラスチックスが紐状に押出され、押出し直後に適宜の長さの粒状に切断され、冷却水により冷却固化され、その後冷却水が分離され、脱水され、選別され、集積されている。このような廃棄プラスチックスの再資源化処理では、廃棄プラスチックスが脱塩素機へ連続的に供給され、再生した製品が連続的に生産されている。
【0004】
従来の製品搬送装置を図2に示す。図2において、符号1で示されるものは製品搬送装置であり、この製品搬送装置1は、受入水槽1a、排出槽1c、受入水槽1aと排出槽1cとの間を連結する搬送パイプ1eおよび戻りパイプ1fにより閉ループ状態に構成されるパイプコンベアで構成されている。また、これらで構成される閉ループには、無端状に連結されたチェーン(図示せず)が内蔵され、このチェーンには適宜の間隔でブレードが組付けられ、駆動されて閉ループ内を移動可能に構成されている。
【0005】
前記製品搬送装置1の受入水槽1aは、脱塩素機2の先端部付近に配置され、その先端にはカッター装置3が組付けられている。前記カッター装置3の下方には、下方へ傾斜するシュート4が配置されている。このシュート4には、その表面に冷却水を散布できるように、傾斜方向の複数箇所の上方に散布ノズル4aが設けられている。前記製品搬送装置1の排出槽1cには排出口1dが形成され、この排出口1dの下方には、篩分装置6が配置されている。前記製品搬送装置1の搬送パイプ1eには、補助水槽1gが設けられている。
【0006】
以上のように構成された製品搬送装置1において、廃棄プラスチックスが脱塩素機2において溶融混練され、脱塩素処理が行われ、脱塩素機2の先端から紐状に押出され、カッター装置3により粒状に切断されて連続的に排出される。この粒状に切断された製品は、散布ノズル4aにより冷却水が散布されているシュート4の表面を流下して冷却される。その後、受入水槽1a内へ冷却水とともに順次流入する。
【0007】
また、無端状に連結されると共に適宜の間隔でブレードが組付けられたチェーン(図示せず)が搬送パイプ1e及び戻りパイプ1f内で駆動されて移動していることにより、冷却水と共に受入水槽1a内へ流入した製品は、ブレードにより、搬送パイプ1e内を排出槽1cへ冷却水と共に搬送される。この搬送中、粒状製品は、冷却水により徐々に冷却され、排出槽1cにおいて、冷却水が分離され、排出口1dから次工程の篩分装置6へ排出される。尚、前述の従来構成は社内製作のみで特許出願されていないため、ここでは、その従来構成を示すための特許文献等を開示していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の脱塩素設備における製品搬送装置は以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。すなわち、パイプコンベアで構成される製品搬送装置は搬送距離が長く(例えば、20m)、このパイプコンベアの主要構成部材であるパイプは建屋内の狭い空間あるいは機器間を、三次元的に適宜に屈曲できるが、結果的に経路すなわち搬送距離が長くなり、屈曲部の箇所も多くなっていた。
【0009】
また、パイプが長くなり、屈曲部の箇所が多くなることにより、ブレードを有するチェーンが長くなり、パイプ内周との接触抵抗が増して駆動力を多く必要とし、部材の摩耗量が多くなり、部品の交換頻度が高くなり、部品交換等の保全停止により生産性が低下する。さらには、パイプが作業通路の床上を横断して設置される場合は、作業者等の通行の妨げになり、作業性が低下することになっていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による脱塩素設備における製品搬送装置は、少なくとも垂直バケットコンベアと傾斜移送パイプとを有し、前記垂直バケットコンベアの下部に形成された受入口が脱塩素機の先端部に配置されるシュートの出口に位置し、前記垂直バケットコンベアの上部に形成された排出口が前記傾斜移送パイプの受入口の上方に位置し、前記傾斜移送パイプの排出口が金網コンベア上方に位置し、前記金網コンベアの排出端が篩分装置の上方に位置している構成であり、また、前記垂直バケットコンベア内および前記傾斜移送パイプの受入口に、冷却水の散布ノズルが設けられている構成である。
【発明の効果】
【0011】
本発明による脱塩素設備における製品搬送装置は以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。すなわち、製品搬送装置が少なくとも垂直バケットコンベアと傾斜移送パイプとにより構成されていることにより、製品は、脱塩素機の先端部の位置から、まず、垂直バケットコンベアにより垂直に建屋内の高所へ搬送され、次に、傾斜移送パイプにより直線的に篩分装置まで搬送される。その結果、従来のような強度の摩耗作用の発生する搬送経路が殆んどなくなる。
【0012】
また、傾斜移送パイプは、その内部を製品が冷却水の自然流下により搬送されることにより、摩耗量が極端に減少し、駆動装置が無く、部品の交換頻度が低く、生産性を低下させることがなくなる。
【0013】
また、垂直バケットコンベアおよび傾斜移送パイプに、冷却水の散布ノズルが設けられていることにより、製品の冷却が充分に行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、少なくとも垂直バケットコンベア及び傾斜移送パイプを組合わせて製品を搬送することにより、摩耗部分が殆んどなく、小型で、安全で効率的な脱塩素設備における製品搬送装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0015】
以下、図面と共に本発明による脱塩素設備における製品搬送装置の好適な実施の形態について説明する。尚、従来と同一あるいは同等部分については同一符号を用いて説明する。図1において、符号1で示すものは製品搬送装置であり、この製品搬送装置1は、少なくとも主として垂直バケットコンベア11および傾斜移送パイプ17により構成されている。
【0016】
前記垂直バケットコンベア11は、垂直に直立して設置されるコンベア容器12、このコンベア容器12内の上部および下部において回転支持されると共に回転駆動される無端状に連結されたチェーン13、およびチェーン13の移動方向の複数ヶ所に、例えば等間隔に組付けられた複数個のバケット14により構成されている。このコンベア容器12の下部には、受入水槽12aが形成されていると共に受入水槽12aの上部に受入口12bが形成されている。コンベア容器12の上部には、排出口12cが形成されている。前記コンベア容器12のバケット14が上昇する側の壁面に沿って複数ヶ所に冷却水の散布ノズル15が設けられている。前記受入口12bには、脱塩素機2のカッター装置3から送られる製品が上方に配置された散布ノズル4aを有するシュート4を介して送り込まれるように構成されている。
【0017】
前記傾斜移送パイプ17は、全体が下方へ傾斜して配置される筒状部材で形成され、受入口17aと排出口17bが形成されている。この傾斜移送パイプ17は建屋内の高所に配置されて、前記垂直バケットコンベア11と後述する金網コンベア5との間を連絡する搬送流路を構成している。前記傾斜移送パイプ17の受入口17aには、冷却水の散布ノズル16が設けられている。また、前記傾斜移送パイプ17の下流側には、金網コンベア5と冷却水受槽5aが設けられ、この金網コンベア5の下方には篩分装置6が設けられている。
【0018】
次に、動作について述べる。まず、廃棄プラスチックスが脱塩素機2において溶融混練され、脱塩素処理が行われて紐状に押出され、カッター装置3により粒状に切断されて連続的に排出される。この粒状に切断された製品は、散布ノズル4aにより冷却水が散布されているシュート4の一端へ排出され、シュート4の表面を流下する冷却水により冷却され、製品は、コンベア容器12の受入口12bから受入水槽12a内へ冷却水とともに順次流入する。
【0019】
前記コンベア容器12内をチェーン13を介してバケット14が上下方向へ回転駆動され、このバケット14が製品をすくい上げ、上方へ搬送する。このバケット14により上方へ搬送される製品は、散布ノズル15から冷却水が散布されて冷却され、コンベア容器12の上部において、バケット14が反転し、搬送されてきた製品が冷却水とともに放り出され、排出口12cから傾斜移送パイプ17内へ排出される。
【0020】
前記傾斜移送パイプ17において、コンベア容器12の排出口12cから冷却水とともに排出された製品が、受入口17aから排出口17bを経て金網コンベア5上へ排出され、冷却水が分離され、篩分装置6へ排出される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による脱塩素設備における製品搬送装置を示す構成図である。
【図2】従来の脱塩素設備における製品搬送装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0022】
1 製品搬送装置
2 脱塩素機(押出機)
3 カッター装置
4 シュート
4a 散布ノズル
5 金網コンベア
5a 排水水槽
6 篩分装置
11 垂直バケットコンベア
12 コンベア容器
12a 受入水槽
12b 受入口
12c 排出口
13 チェーン
14 バケット
15 散布ノズル
16 散布ノズル
17 傾斜移送パイプ
17a 受入口
17b 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも垂直バケットコンベア(11)と傾斜移送パイプ(17)とを有し、前記垂直バケットコンベア(11)の下部に形成された受入口(12b)が脱塩素機(2)の先端部に配置されるシュート(4)の出口に位置し、前記垂直バケットコンベア(11)の上部に形成された排出口(12c)が前記傾斜移送パイプ(17)の受入口(17a)の上方に位置し、前記傾斜移送パイプ(17)の排出口(17b)が金網コンベア(5)上方に位置し、前記金網コンベア(5)の排出端が篩分装置(6)の上方に位置していることを特徴とする脱塩素設備における製品搬送装置。
【請求項2】
前記垂直バケットコンベア(11)内および前記傾斜移送パイプ(17)の受入口(17a)に、冷却水の散布ノズル(15,16)が設けられていることを特徴とする請求項1記載の脱塩素設備における製品搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−87909(P2008−87909A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270669(P2006−270669)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】