説明

脱染用組成物

【課題】チオグリコール酸特有の不快臭を抑え、充分な脱染効果を得ることができ、さらに毛髪へのダメージを抑えることができる脱染用組成物を提供する。
【解決手段】チオグリコール酸アンモニウムを含有する酸性媒体からなるpHが1.8〜3の脱染用組成物であって、該酸性媒体がアニオン性界面活性剤および/またはカチオン性界面活性剤を含むことを特徴とする脱染用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオグリコール酸アンモニウムを含む酸性媒体からなり、酸性媒体がアニオン性界面活性剤および/またはカチオン性界面活性剤を含む脱染用組成物、および該脱染用組成物と酸化剤を含んだ前処理剤を用いた毛髪の脱染処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアダイと呼ばれる染毛剤には、酸化型染料や直接染料(ニトロ染料など)が含まれており、このようなヘアダイで染色された毛髪を脱染する場合、アルカリ剤、酸化剤および過硫酸塩などを配合した脱染剤を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この脱染剤は、酸化剤および過硫酸塩から発生する酸素により脱染効果を得るものであるが、同時に毛髪のメラニン色素も酸化分解してしまうため、毛髪本来の色が次第に明るくなっていくという問題があった。そこで、チオグリコール酸を含有するパーマネントウエーブ用剤を用いて、毛髪を膨潤させて着色成分を抜き取る方法が一般に採用されている。この方法によれば、メラニン色素を分解することがないので、毛髪自体の色が次第に明るくなるという変化も生じないが、脱染力が弱く、また毛髪の過度の膨潤により毛髪の損傷が生じやすいという問題があった。
【0003】
特許文献2には、ジチオジグリコール酸、ジチオジグリコール酸の塩、システインおよびシステイン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と亜硫酸塩とを含有する毛髪用脱染剤が記載されている。しかし、pHが7〜9.5と非常に高いため、硫黄に由来する臭気を減少させるものではなかった。
【0004】
また、特許文献3には、リダクトンおよび/またはチオールおよび/または亜硫酸塩を含むことを特徴とする還元脱色するための薬剤が開示されている。しかし、特許文献3では、pH値が1.8〜6と広範囲であって、また、チオールとしてシステイン、グルタチオンを使用しており、酸性領域でのチオグリコール酸の臭いや刺激を充分に抑えることについて考慮されたものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2003−95883号公報
【特許文献2】特開平10−273432号公報
【特許文献3】特表2000−504348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、メラニン色素を分解することがなく、染色された毛髪に対し、手軽にカラーチェンジを施すことができるような高い脱染効果を付与し、さらにはチオグリコール酸特有の不快臭を抑えることのできる脱染用組成物を提供することを目的とする。また、脱染効果を増すことができる前処理剤を用いた処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、チオグリコール酸アンモニウムを含有する酸性媒体からなるpHが1.8〜3の脱染用組成物であって、該酸性媒体がアニオン性界面活性剤および/またはカチオン性界面活性剤を含むことを特徴とする脱染用組成物に関する。
【0008】
前記界面活性剤が、一般式(1)および一般式(2)で示されるリン酸系アニオン性界面活性剤から選択される1種以上であることが好ましい。
【0009】
【化1】

(式中、R1およびR2は、同一でも異なっていてもよく、炭素数8〜24の直鎖状アルキル基を表わす。)
【0010】
【化2】

(式中、R3は、炭素数8〜24の直鎖状アルキル基を表わし、nは10〜20の中から選ばれる整数である。)
前記界面活性剤が、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸および/またはリン酸ジセチルであることが好ましい。
【0011】
前記界面活性剤が、第四級アンモニウム塩であることが好ましい。
【0012】
チオグリコール酸アンモニウムの含有量が4重量%以下であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、(a)染色した毛髪に、酸化剤を0.01〜1重量%含有する前処理剤を塗布する工程、および(b)前記前処理剤を塗布した毛髪に、前記脱染用組成物を塗布する工程を含む毛髪の脱染処理方法に関する。
【0014】
前記(a)工程における酸化剤が過硫酸カリウムまたは過酸化水素であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の脱染用組成物を用いた場合、pH1.8〜3の範囲で、チオグリコール酸アンモニウムと界面活性剤を含むので、チオグリコール酸特有の不快臭を抑え、十分な脱染効果を得ることができる。さらに毛髪へのダメージを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、チオグリコール酸アンモニウムを含有する酸性媒体からなるpHが1.8〜3の脱染用組成物であって、該酸性媒体がアニオン性界面活性剤および/またはカチオン性界面活性剤を含むことを特徴とする脱染用組成物に関する。
【0017】
本発明における還元成分はチオグリコール酸アンモニウムである。チオグリコール酸アンモニウムを用いることによって、損傷やメラニンの分解をすることなく毛髪の脱染をすることができる。
【0018】
チオグリコール酸アンモニウムの含有量は、脱染用組成物全量に対して4重量%以下であることが好ましく、2重量%以下であることがより好ましい。チオグリコール酸アンモニウムの含有量は、4重量%を超える場合は、脱染効果はそのままにチオグリコール酸特有の臭いが強くなる傾向がある。チオグリコール酸アンモニウムの含有量の下限は、還元効果を発揮するためには、1重量%である。
【0019】
本発明においては、前記還元成分を酸性媒体に含有させて用いる。酸性媒体を調製するために使用する酸は特に限定されるものではないが、リン酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酢酸などがあげられる。これらの中でも、比較的容易にpHを3以下にできる点から、リン酸を用いることが好ましい。
【0020】
本発明の脱染組成物は、アニオン性界面活性剤および/またはカチオン性界面活性剤を含む。界面活性剤が、ラメラ液晶構造を形成することにより、層と層の間の比較的自由度の高い部分にチオグリコール酸が含まれることにより、チオグリコール酸特有の臭いを抑えることが可能となる。
【0021】
アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、金属石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸塩、アシル乳酸塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシルアラニン塩、N−アシルサルコシン塩、N−アシル−ω−アミノ酸塩などのカルボン酸塩;アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン塩などのスルホン酸塩;アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルカノールアミド硫酸エステル塩などの硫酸塩;アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩、脂肪酸アミドエーテルリン酸塩などのリン酸塩などがあげられる。チオグリコール酸特有の臭いを効果的に抑えることができ、経時的安定性に優れた液晶構造を可能とする点から、特に一般式(1)および一般式(2)で示されるリン酸系アニオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0022】
【化3】

(式中、R1およびR2は、同一でも異なっていてもよく、炭素数8〜24の直鎖状アルキル基を表わす。)
【0023】
【化4】

(式中、R3は、炭素数8〜24の直鎖状アルキル基を表わし、nは10〜20の中から選ばれる整数である。)
【0024】
前記リン酸系アニオン性界面活性剤のなかでも、ラウリルリン酸、ラウリルリン酸ナトリウム、セチルリン酸カリウム、リン酸ジセチル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸が好ましい。これらのアニオン性界面活性剤は、単独で用いても、2種以上を併せて用いてもよい。
【0025】
また、カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、脂肪族アミドアミン塩、エステル含有第三級アミン塩、アーコベル型第三級アミン塩などのアミン塩;モノアルキル型第四級アンモニウム塩、ジアルキル型第四級アンモニウム塩、トリアルキル型第四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型第四級アンモニウム塩などのアルキル第四級アンモニウム塩等があげられる。なかでも、経時的安定性と毛髪に付与する感触が良好となる点から、モノアルキル型第四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。カチオン性界面活性剤のアルキル基としては、直鎖または分枝の炭素数12〜22のものが好ましく、炭素数が12〜18であることがより好ましい。前記カチオン性界面活性剤は、単独で用いても、2種以上を併せて用いてもよい。
【0026】
アニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤を組み合わせて用いる場合、これらの組合せは、前記アニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤から選択されるものであれば特に限定されるものではないが、アニオン性界面活性剤に対するカチオン性界面活性剤の重量比を3/4〜4/3とすることが好ましく、前記重量比とした場合は、脱染用組成物の安定性をより向上させることができ、脱染後の毛髪の感触をさらさらにすることができる。
【0027】
界面活性剤の配合量としては、脱染用組成物全量中に1〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは3〜10重量%である。界面活性剤の配合量が1重量%より少ない場合は、充分なラメラ液晶構造を形成することができないためにチオグリコール酸特有の臭いを抑えることができない傾向がある。界面活性剤の配合量が、20重量%を超える場合は、クリーム状である脱染用組成物が固くなり、毛髪に塗布したときの延びが悪くなるだけではなく、充分な脱染効果を得ることができなくなる傾向がある。
【0028】
本発明の脱染用組成物には、前記成分以外に、化粧品や医薬部外品等に用いられる成分を目的に応じて用いることができる。例えば、界面活性剤以外の界面活性剤、油脂、ロウ類、炭化水素、脂肪酸、高級アルコール、高級アルコール以外のアルコール、上記エステル以外のエステル、シリコーン油、多価アルコール、糖類、高分子、植物抽出物、加水分解物、金属イオン封鎖剤、pH調整剤などがあげられる。
【0029】
界面活性剤以外の界面活性剤としては、例えば、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ヤシ油アルキルベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタインなどの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、自己乳化型モノステアリン酸エチレングリコール、ポリオキシエチレン(20)ステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、イソステアリン酸ポリオキシエチレン(3)ソルビット、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ポリ(2〜10)グリセリル、ショ糖脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤があげられる。
【0030】
油脂としては、小麦胚芽油、コメヌカ油、シアバター、マカデミアナッツ油、メドウホーム油、卵黄油などがあげられる。
【0031】
ロウ類としては、ホホバ油、ミツロウ、カルナウバロウなどがあげられる。
【0032】
炭化水素としては、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、セレシン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、流動パラフィン、流動イソパラフィン、ワセリンなどがあげられる。
【0033】
脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸などがあげられる。
【0034】
高級アルコールとしては、炭素数が8〜24のアルコールであることが好ましく、化粧品に汎用される点で、炭素数8〜22であることがより好ましい。具体的には、特に限定されないが、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコールから選ばれる少なくとも1種以上があげられる。また、適切な粘度に調整しやすく、かつ経時安定性に優れた液晶構造を補助する点から、セチルアルコールとステアリルアルコールの混合物であるセトステアリルアルコールが好ましい。
【0035】
高級アルコール以外のアルコールとしては、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどの低級アルコール、動植物性のステロール類があげられる。
【0036】
上記エステル以外のエステルとしては、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル、ラウリン酸イソステアリル、オレイン酸オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸ヘキシル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、コハク酸ジオクチル、イソステアリン酸フィトステリルなどがあげられる。
【0037】
シリコーン油としては、デカメチルトリシロキサン、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体エマルション、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、トリメチルシロキシケイ酸、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどがあげられる。
【0038】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、1,3−ブチレングリコールなどがあげられる。
【0039】
糖類としては、ソルビトール、トレハロースなどがあげられる。
【0040】
高分子としては、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどがあげられる。
【0041】
植物抽出物としては、アボカドエキス、アルモンドエキス、甘草エキスなどがあげられる。
【0042】
加水分解物としては、加水分解ケラチン、加水分解コラーゲンなどがあげられる。
【0043】
金属イオン封鎖剤としては、アラニン、エデト酸、エデト酸二ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸などがあげられる。
【0044】
pH調製剤としては、酸としては酸性媒体を調製するために使用する酸と同じ物を用い、アルカリ剤としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、アルギニンなどの塩基があげられる。
【0045】
前記成分を含む本発明の脱染用組成物は、pHが1.8〜3である。脱染用組成物のpHは2〜3であることがより好ましく、pH2.5〜3であることがさらに好ましい。脱染用組成物のpHが1.8未満では、多量の酸を用いることが必要であり、脱染用組成物をすすぎ落とした後の毛髪の感触が極めて悪くなる傾向があり、pHが3を超える場合は、充分な脱染効果を得ることができない傾向があり好ましくない。
【0046】
本発明は、(a)染色した毛髪に、前記脱染用組成物を塗布する工程、(b1)前記脱染用組成物を毛髪から洗い落とした後、該脱染用組成物を洗い落とした毛髪に、過酸化水素を含有する組成物(後処理剤)を塗布する工程を含む毛髪の脱染処理方法に関する。
【0047】
(a)工程における塗布は、特に限定されるものではなく、刷毛、ヘラなどを用いて公知の方法により脱染を望む毛髪の部分または全体に均一になるように塗布すればよい。
【0048】
(b1)工程において、脱染用組成物を洗い落とす方法も特に限定されるものではなく、通常に行われる充分な洗浄により行うことができる。
【0049】
また、(b1)工程における後処理剤は、過酸化水素を含むものであれば特に限定されるものではないが、後処理剤の過酸化水素の含有量が、0.5〜5重量%であることが好ましく、0.5〜3重量%であることがより好ましい。過酸化水素含有量が0.5重量%未満では、経日的な色戻りを十分に防ぐことができず、5重量%を超える場合は、毛髪の損傷を引き起こす傾向がある。
【0050】
後処理剤を塗布する方法は、特に限定されるものではなく、脱染を望む毛髪の部分または全体に均一になるように、ヘラなどを用いて、通常の方法で塗布することができる。
【0051】
また、本発明は、(a)染色した毛髪に、前記脱染用組成物を塗布する工程、および(b2)前記脱染剤組成物を塗布した毛髪に、pHが5.5〜7.5の染毛剤組成物を塗布する工程を含む毛髪の染色処理方法に関する。
【0052】
(a)工程は前記した方法と同様の方法により行うことができる。
【0053】
(b2)工程における染毛剤組成物はpHが5.5〜7.5である。pHが5.5〜7であることがより好ましく、さらに好ましくは、pH6〜pH7である。pHが5.5未満では、染毛剤としての効果が低くなり、pHが7.5を超える場合では、アルカリ量が多くなり、染色のくすみの原因となる。
【0054】
前記染毛剤組成物の基材は、一般に染毛剤に用いられる成分であれば特に限定はされないが、例えば、特開2003−252735号公報に記載されている、少なくとも酸化染料、酸化防止剤、キレート剤、防腐剤およびアルキル基の炭素数が12〜18でエチレンオキシドの付加モル数が50〜150のポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する水相、ならびに高級アルコールおよびアルキル基の炭素数が12〜18であるハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム含有する油相を含む酸化型染毛剤組成物が好ましい。
【0055】
前記酸化型染毛剤組成物において、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量は0.3〜3重量%であることが好ましく、高級アルコールは1〜20重量%であることが好ましい。また、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルのなかでも、ポリオキシエチレンオレイルエーテルを用いた場合により良好な染色を得ることができる。
【0056】
本発明の脱染用組成物は、チオグリコール酸由来の臭気を充分に抑えたものであって、種々の酸化型染色剤の脱染に適用することができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の脱染用組成物および毛髪の脱染処理方法を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0058】
実施例1〜16、比較例1〜2
表1、2に示す組成にしたがって、各化合物を混合し、脱染用組成物を得た。流動パラフィンとしては、エッソ石油(株)製のクリストール70、セトステアリルアルコールには、花王(株)製のセチルアルコール:ステアリルアルコール=7:3(体積比)のカルコール6870を用いた。得られた脱染用組成物のpHを表1に示す。なお、表中の各化合物の配合量は、重量部単位である。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
(硫化水素濃度の測定)
実施例1〜16および比較例1〜2で得られた脱染用組成物と参照実験として50%チオグリコール酸アンモニウム水溶液を用いて、GC/PFPD(パルス方式炎光光度検出器)により発生する硫化水素濃度を測定した。測定は、脱染用組成物を0.1g入れた10mlのヘッドスペースバイアル瓶に、標準物質溶液として50%チオグリコール酸アンモニウム水溶液5μLを滴下した標準物質を用いて行った。前記滴下後、直にバイアル瓶を密栓し放置し、30分経過後のヘッドスペースの気体を、ガス体とシリンジを用いて1mL採取してGC/PFPDにより分析し、硫化水素に帰属されるピークのピーク面積値(相対比)た。測定条件は、以下のとおりである。結果を表3に示す。
【0062】
GC:GC−2010AF(島津製作所(株)製)
カラム:Rtx−1(レステック製)
オーブン温度:40度(5分間保持)
注入時間:0.1分
注入口:160℃
検出器:FPD(Sフィルタ)(島津製作所(株)製)
キャリヤーガス:ヘリウム
【0063】
【表3】

【0064】
(官能評価)
実施例1〜16、比較例1〜2で得られた試料およびチオグリコール酸希釈液(50%)を官能評価により評価した。評価方法および評価結果は次の通りである。
【0065】
評価方法
各試料19点を各々20gずつ100MLスクリュー管に入れ、25℃の雰囲気中に5分間放置した後、スクリュー管内部の臭気を専門パネラー5名(評価者A〜E)に嗅いでもらう。希釈液と比較した臭気について以下の基準で各自評価した結果を表4に示す。
希釈液と比較して、
かなり不快臭を感じる・・・・・4
ほとんど同じ・・・・・・・・・3
不快臭を感じる・・・・・・・・2
不快臭をわずかに感じる・・・・1
不快臭をほとんど感じない・・・0
【0066】
また、表4中の記号は、以下の合計点数に該当することを示す。
【0067】
◎・・・0〜4
○・・・5〜9
△・・・10〜15
×・・・16以上
【0068】
【表4】

【0069】
硫化水素濃度の測定および官能評価の結果からわかるように、チオグリコール酸アンモニウムおよびアニオン性および/またはカチオン性界面活性剤を含有する本発明の脱染用組成剤は、チオグリコール酸特有の臭気を著しく低減することがわかる。
【0070】
実施例17〜18、比較例3
以下の処理方法により、染毛した髪を本発明の脱染用組成物により脱染した後、染毛する処理を行なった。
【0071】
(脱染用毛束調製処理)
市販の酸化型染毛剤の第1剤として「プロマティス フレーブ(商品名)8−5」((株)ミルボン製、赤色)を、第2剤として「プロマティス フレーブ オキシダン6.0%」((株)ミルボン製、酸化剤として過酸化水素を6.0%含有する)を、それぞれ5gずつ採取し、それらを充分に混合した後、白髪100%の毛束BM−W((株)ビューラックス製)に塗布し、30℃で30分間放置して染毛した。染毛後の毛束を水洗いし、さらに市販のシャンプーを用いて洗浄し、さらに市販のトリートメントを塗布し、すすぎ後、乾燥し、脱染用毛束とした。
【0072】
(脱染用毛束の脱染処理)
上記の脱染用毛束に、実施例13で得られた脱染用組成物を10g塗布し、45℃で20分間放置して脱染処理した後、水洗し、さらに市販のシャンプーを用いて2回洗浄し、さらに市販のヘアトリートメントを塗布し、すすぎ後、乾燥した。
【0073】
(再染毛処理)
表5に示す組成の各酸化型染毛剤、表6に示す第2剤を調製した。実施例17、18および比較例3について、それぞれ以下の処理方法1〜3によって脱染処理後の毛髪(毛束)を染毛した。
【0074】
処理方法1
第1剤として実施例17で得られた酸化型染毛剤の溶液100mLと、第2剤100mLを混合し、前記脱染処理後の毛束を浸漬し、30℃で30分間放置して染毛した。染毛後の毛束を水洗いし、さらに市販のシャンプーを用いて洗浄し、さらに市販のトリートメントを塗布し、すすぎ後、乾燥した。
【0075】
処理方法2
第1剤として実施例18の溶液100mLと、第2剤100mLを混合し、前記脱染処理後の毛束を浸漬し、30℃で30分間放置して染毛した。染毛後の毛束を水洗いし、さらに市販のシャンプーを用いて洗浄し、さらに市販のトリートメントを塗布し、すすぎ後、乾燥した。
【0076】
処理方法3
第1剤として比較例3の溶液100mLと、第2剤100mLを混合し、前記脱染処理後の毛束を浸漬し、30℃で30分間放置して染毛した。染毛後の毛束を水洗いし、さらに市販のシャンプーを用いて洗浄し、さらに市販のトリートメントを塗布し、すすぎ後、乾燥した。
【0077】
【表5】

【0078】
【表6】

【0079】
(染毛処理結果)
上記染毛処理後の毛束のL値(明度値)を色差計(ミノルタ(株)製彩色差計CR−200)で測定した。その結果を表7に示す。この色差測定では、L値が小さいほど色が鮮明で濃く染まっていることを示す。
【0080】
【表7】

【0081】
表7に示すように、実施例17と実施例18では、比較例3に比べて、L値が小さく、くすんだ色味にならず、鮮明な色味にできることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の脱染用組成物は、極めて簡単に毛髪のカラーチェンジができ、ホームカラーなどの毛先の残留色素を簡単に取り除くことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオグリコール酸アンモニウムを含有する酸性媒体からなるpHが1.8〜3の脱染用組成物であって、該酸性媒体がアニオン性界面活性剤および/またはカチオン性界面活性剤を含むことを特徴とする脱染用組成物。
【請求項2】
界面活性剤が、下記一般式(1)および一般式(2)で示されるリン酸系アニオン性界面活性剤から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1記載の脱染用組成物。
【化1】

(式中、R1およびR2は、同一でも異なっていてもよく、炭素数8〜24の直鎖状アルキル基を表わす。)
【化2】

(式中、R3は、炭素数8〜24の直鎖状アルキル基を表わし、nは10〜20の中から選ばれる整数である。)
【請求項3】
界面活性剤が、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸および/またはリン酸ジセチルであることを特徴とする請求項1または2記載の脱染用組成物。
【請求項4】
界面活性剤が、第四級アンモニウム塩であることを特徴とする請求項1記載の脱染用組成物。
【請求項5】
チオグリコール酸アンモニウムの含有量が4重量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の脱染用組成物。
【請求項6】
(a)染色した毛髪に、請求項1〜5のいずれかに記載の脱染用組成物を塗布する工程、(b1)前記脱染用組成物を毛髪から洗い落とした後、該脱染用組成物を洗い落とした毛髪に、過酸化水素を含有する組成物を塗布する工程を含む毛髪の脱染処理方法。
【請求項7】
(a)染色した毛髪に、請求項1〜5のいずれかに記載の脱染用組成物を塗布する工程、および(b2)前記脱染処理をした毛髪に、pHが5.5〜7.5の染毛剤組成物を塗布する工程を含む毛髪の染色処理方法。

【公開番号】特開2007−204401(P2007−204401A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23412(P2006−23412)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】