説明

脱気システム

【課題】 補給水と復水とが混合される給水の脱気処理を確実に行うとともに、脱気処理に係る省電力を実現する。
【解決手段】 脱気処理された給水をボイラ8へ供給する脱気システム1であって、補給水を脱気処理する第一脱気部2と、脱気処理された補給水を貯留する補給水貯留部3と、前記ボイラ8で発生させた蒸気の復水を脱気処理する第二脱気部4とを備え、前記第二脱気部4で脱気処理された復水を前記補給水貯留部3へ供給し、補給水と復水とが混合された給水を前記ボイラ8へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、復水の回収を行っているボイラ装置において、ボイラへの給水を脱気処理し、ボイラ,蒸気配管および復水配管の腐食を抑制する脱気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ装置は、さまざまな業種の工場設備において熱源に使用され、製造ラインの負荷機器へ蒸気を供給している。この負荷機器へ供給された蒸気は、製品の生産に直接使用される場合と、熱交換などの方法によって間接的に使用される場合とがある。蒸気を間接的に使用する場合、前記負荷機器で使用した蒸気の凝縮水を復水として回収し、新たな補給水と混合した給水をボイラへ供給することが一般的に行われている。
【0003】
前記ボイラ装置では、蒸気を復水として前記ボイラへ還流させているため、前記ボイラへの補給水量を削減することができる。また、復水の熱で給水が加温されているため、蒸気を生成させるための熱量が少なくて済み、前記ボイラで消費する燃料を節約することができる。したがって、復水を回収する前記ボイラ装置では、経済的な運転が可能となる。
【0004】
ところで、前記ボイラの缶体を構成する水管や管寄せ,前記負荷機器へ蒸気を供給する蒸気配管,あるいは前記負荷機器から復水を回収する復水配管は、通常、非不動態化金属,たとえば炭素鋼や鋳鉄などが使用されている。これらの非不動態化金属は、水中の溶存酸素や溶存炭酸ガスの影響により腐食が起こりやすい。
【0005】
溶存酸素を含む給水が前記ボイラへ供給されると、水管や管寄せとボイラ水(すなわち、前記缶体内に貯留されている給水)との接触面側から厚さ方向の反対側へ向かう孔状の腐食,すなわち水管や管寄せの肉厚方向に発生する孔食を引き起こす。また、ボイラ水中の溶存酸素が前記缶体内で加熱されて蒸気とともに持ち出されると、凝縮水に溶解して溶存酸素を含む復水が生成される。そして、横引き施工された前記蒸気配管や前記復水配管の下部などで、これらの配管と復水との接触面側から厚さ方向の反対側へ向かう孔状の腐食,すなわち配管の肉厚方向に発生する孔食を引き起こす。
【0006】
一方、炭酸塩や炭酸水素塩を含む給水が前記ボイラへ供給された場合、これらの炭酸塩類が前記缶体内で熱分解され、炭酸ガスが生成する。この炭酸ガスが蒸気とともに持ち出されると、凝縮水に溶解して酸性の復水が生成され、この復水と接触している前記蒸気配管や前記復水配管の内面を腐食させる。したがって、前記ボイラ装置の経済的な運転を維持するためには、前記ボイラ,前記蒸気配管および前記復水配管などの腐食による破損を防止することが重要になる。
【0007】
さて、給水中の溶存酸素を低減するためには、たとえば膜式脱気装置が使用される。この膜式脱気装置は、通常、中空糸状の高分子膜を使用しており、この高分子膜の熱劣化や閉塞の問題から、給水が高温,あるいは懸濁物質を多く含む場合、使用することができない。すなわち、復水の回収を行っている前記ボイラ装置においては、常温,かつ清浄な補給水の脱気処理にのみ適用することができる。このため、回収された復水が高濃度の溶存酸素を含む場合,たとえば前記ボイラ装置の停止時などに前記復水配管内へ侵入した大気中の酸素が復水に溶解するような場合には、復水と補給水とを混合した給水の溶存酸素濃度が高くなり、前記ボイラ,前記蒸気配管および前記復水配管などの腐食を十分に抑制できなくなる。
【0008】
また、給水中の溶存酸素を低減するために、給水を処理槽内へノズルを介して散布し、
この処理槽内を減圧することによって脱気処理を行う真空式脱気装置が使用される例もある(特許文献1)。さらに、給水を処理槽内へノズルを介して散布し、水滴と窒素ガスとを接触させることによって脱気処理(正確には、脱酸素や脱炭酸処理)を行う窒素置換式脱気装置(「窒素置換式脱酸素装置」とも云う。)が使用される例もある(特許文献2)。前記真空式脱気装置や前記窒素置換式脱気装置は、給水が高温,あるいは懸濁物質を多く含む場合でも、熱劣化や閉塞の問題を回避でき、取扱い可能な給水の性状が幅広い。このため、復水と補給水とを混合した給水が、高温,かつ前記蒸気配管や前記復水配管などからの溶出物を含む場合でも、この給水の脱気処理に適用することができる。
【0009】
しかしながら、前記真空式脱気装置や前記窒素置換式脱気装置は、通常、前記ボイラにおける給水の要求量と関係なく、最大処理量を維持するように運転されている。たとえば、給水の要求量が少ない場合、単純に処理量を低下させると、前記ノズルから散布される給水の水滴が大きくなる。この場合、前記処理槽内における水滴の表面積の合計が少なくなるため、液相部と気相部との接触率が低下し、脱気能力が大幅に低下する。この結果、給水の溶存酸素濃度や溶存炭酸ガス濃度を所望の値まで低減できなくなる。
【0010】
そこで、前記真空式脱気装置や前記窒素置換式脱気装置は、前記処理槽内へ給水を供給する加圧ポンプおよび前記処理槽内から給水を取り出す送水ポンプを常時一定の回転数で駆動させ、前記処理槽内へ供給する給水の量と、前記処理槽内から取り出す給水の量とが、それぞれ最大処理量と一致するように運転されている。そして、前記ボイラにおける給水の要求量が少ない場合、最大処理量から要求量を差し引いた過剰分の給水を前記処理槽の上流側に設けたタンクへ還流させるようにしている(特許文献3)。したがって、従来の前記真空式脱気装置や前記窒素置換式脱気装置は、脱気能力を維持するための過剰運転により消費電力が大きく、ランニングコストの増大を招きやすい。
【0011】
【特許文献1】特開平8−108005号公報
【特許文献2】特開2000−176436号公報
【特許文献3】特開2003−300062号公報
【0012】
この出願において、「脱気」とは、水中の溶存気体を除去する場合だけでなく、水中の溶存気体を他の気体と置換する場合,たとえば水中の溶存酸素や溶存炭酸ガスを窒素ガスなどの不活性ガスと置換する場合も含む用語として用いる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この発明が解決しようとする課題は、補給水と復水とが混合される給水の脱気処理を確実に行うとともに、脱気処理に係る省電力を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、脱気処理された給水をボイラへ供給する脱気システムであって、補給水を脱気処理する第一脱気部と、脱気処理された補給水を貯留する補給水貯留部と、前記ボイラで発生させた蒸気の復水を脱気処理する第二脱気部とを備え、前記第二脱気部で脱気処理された復水を前記補給水貯留部へ供給し、補給水と復水とが混合された給水を前記ボイラへ供給することを特徴としている。
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、補給水は、前記第一脱気処理部において脱気処理され、この脱気された補給水が前記補給水貯留部内に貯留される。一方、復水は、前記第二脱気処理部へ直接導入され、この第二脱気処理部において脱気処理された後、前記補給水貯留部へ供給される。そして、前記補給水貯留部内では、脱気された補給水と脱気された復
水とが混合されて給水として確保され、この給水が前記ボイラへ供給される。
【0016】
さらに、請求項2に記載の発明は、脱気処理された給水をボイラへ供給する脱気システムであって、補給水を脱気処理する第一脱気部と、脱気処理された補給水を貯留する補給水貯留部と、前記ボイラで発生させた蒸気の復水を貯留する復水貯留部と、この復水貯留部内の復水を脱気処理する第二脱気部とを備え、前記第二脱気部で脱気処理された復水を前記補給水貯留部へ供給し、補給水と復水とが混合された給水を前記ボイラへ供給することを特徴としている。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、補給水は、前記第一脱気処理部において脱気処理され、この脱気された補給水が前記補給水貯留部内に貯留される。一方、復水は、前記復水貯留部に貯留された後、前記第二脱気処理部へ導入される。この復水は、前記第二脱気処理部において脱気処理された後、前記補給水貯留部へ供給される。そして、前記補給水貯留部内では、脱気された補給水と脱気された復水とが混合されて給水として確保され、この給水が前記ボイラへ供給される。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、補給水と復水とが混合される給水の脱気処理を確実に行うことできるとともに、脱気処理に係る省電力を実現することができる。この結果、脱酸素剤や復水処理剤などの水処理剤を使用することなく,あるいは必要最少量の水処理剤使用により、ボイラ,蒸気配管および復水配管などの腐食を効果的に抑制でき、また水処理に係るランニングコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明は、復水の回収を行っているボイラ装置の給水系統において好適に実施される。
【0020】
(第一実施形態)
まず、この発明に係る脱気システムの第一実施形態について説明する。第一実施形態に係る脱気システムは、第一脱気部と、補給水貯留部と、第二脱気部とを主に備えている。
【0021】
前記第一脱気部は、ボイラへの補給水を脱気処理するものであって、この第一脱気部は、前記補給水貯留部と補給水供給経路で接続されている。すなわち、前記第一脱気部で脱気処理された補給水は、前記補給水供給経路を介して前記補給水貯留部へ供給され、貯留されるようなっている。
【0022】
この構成において、前記補給水供給経路は、脱気処理された補給水が大気と接触することを防止するため、前記補給水貯留部の下部へ補給水を供給するように接続することが望ましい。このように構成すると、より低溶存酸素濃度の給水を前記ボイラへ供給することができる。
【0023】
前記補給水貯留部の下部は、前記ボイラと給水供給経路で接続されている。前記ボイラは、生成した蒸気を負荷機器,たとえば暖房機器,乾燥機器,生産機器などへ供給するため、この負荷機器と給蒸経路,すなわち蒸気配管で接続されている。前記負荷機器は、蒸気を熱交換することによって生成する凝縮水を復水として回収するため、復水回収経路,すなわち復水配管の一端側と接続されている。
【0024】
前記第二脱気部は、前記復水回収経路の他端側と接続されている。すなわち、前記復水回収経路を介して回収される復水を前記第二脱気部へ直接導入し、この第二脱気部で復水を脱気処理するように構成されている。また、前記第二脱気部は、前記補給水貯留部と復
水取出経路で接続されている。すなわち、前記第二脱気部で脱気処理された復水を前記復水取出経路を介して前記補給水貯留部へ供給し、この補給水貯留部内に貯留された補給水と混合するように構成されている。
【0025】
この構成において、前記復水取出経路は、脱気処理された復水が大気と接触することを防止するため、前記補給水貯留部の下部へ復水を供給するように接続することが望ましい。また、復水と補給水とを均一に混合するため、前記補給水貯留部において、復水の流入部と補給水の流入部とを近接して設けてもよい。さらに、復水と補給水とを均一に混合するための他の構成として、前記補給水貯留部に循環経路を接続し、この循環経路に循環ポンプを設けてもよい。このように構成すると、復水と補給水とを水流を利用して均一に混合できるとともに、より低溶存酸素濃度の給水を前記ボイラへ供給することができる。
【0026】
ここで、前記第一脱気部および前記第二脱気部について具体的に説明する。前記第一脱気部は、常温の補給水を処理可能な脱気装置であれば、とくに制限なく使用することができる。前記第一脱気部として適用可能な脱気装置は、たとえば膜式脱気装置,真空式脱気装置および窒素置換式脱気装置を挙げることができる。
【0027】
前記膜式脱気装置は、たとえば酸素などの気体は透過するが液体は透過しない特性を有する中空糸状の高分子膜の多数本を束ねてハウジング内に収容し、これらの各高分子膜の両端部を樹脂剤などで封止した構造の脱気モジュールを使用する。そして、前記各高分子膜の一側へ被処理水を供給し、前記各高分子膜の他側を真空ポンプなどで減圧することにより、被処理水に含まれる溶存気体を低減させる構成の装置である。
【0028】
前記真空式脱気装置は、まず被処理水を加圧することにより処理槽の上部に設けられたノズルへ供給し、被処理水を前記処理槽内の上部から下部へ向かって散布する。そして、前記処理槽内を減圧することにより、被処理水に含まれる溶存気体を低減させた後、処理水を前記処理槽内から取り出す構成の装置である。
【0029】
前記窒素置換式脱気装置は、まず被処理水を加圧することにより処理槽の上部に設けられたノズルへ供給し、被処理水を前記処理槽内の上部から下部へ向かって散布する。そして、前記処理槽内へ窒素ガスを供給し、被処理水に含まれる溶存酸素や溶存炭酸ガスを窒素ガスと置換して低減させた後、処理水を前記処理槽内から取り出しながら、酸素や炭酸ガスが含まれた窒素ガスを前記処理槽内から排気する構成の装置である。
【0030】
また、前記窒素置換式脱気装置の他の構成としては、まず被処理水を加圧することにより管路内を連続的に流通させながら処理槽へ供給する。そして、前記管路内へ窒素ガスを吹き込んで被処理水をバブリングまたは撹拌し、溶存酸素や溶存炭酸ガスを窒素ガスと置換して低減させた後、処理水を前記処理槽内から取り出しながら、酸素や炭酸ガスが含まれた窒素ガスを前記管路から排気する構成も可能である。さらに、被処理水を前記処理槽内を流通させずに、単に貯留し、被処理水中へ窒素ガスを吹き込んでバブリングまたは撹拌するバッチ式の構成も可能である。
【0031】
前記第二脱気部は、高温,かつ懸濁物質を含む復水を処理可能な脱気装置であれば、とくに制限なく使用することができる。前記第二脱気部として適用可能な脱気装置は、たとえば前記真空式脱気装置および前記窒素置換式脱気装置を挙げることができる。
【0032】
以下、第一実施形態に係る前記脱気システムの作用について説明する。まず、補給水が前記第一脱気部において脱気処理され、補給水に含まれる溶存酸素や溶存炭酸ガスが低減される。この補給水は、前記補給水供給経路を介して前記補給水貯留部へ供給される。ここにおいて、前記第一脱気部は、補給水が必要なときのみ作動するように制御される。し
たがって、最大処理量を小さく設定することができ、消費電力を低減することが可能になる。
【0033】
つぎに、前記復水回収経路を介して回収された復水は、前記第二脱気部へ直接導入され、この第二脱気部において脱気処理されることにより、復水に含まれる溶存酸素や溶存炭酸ガスが低減される。そして、この復水は、前記復水取出経路を介して前記補給水貯留部へ供給される。ここにおいて、前記第二脱気部は、復水が回収されているときのみ作動するように制御される。この結果、最大処理量を小さく設定することができ、消費電力を低減することが可能になる。
【0034】
前記補給水貯留部内では、脱気処理された補給水と脱気処理された復水とが混合され、溶存酸素や溶存炭酸ガスが低減された給水として確保される。この給水は、前記給水供給経路を介して前記ボイラへ供給される。前記ボイラ内では、貯留された給水,すなわちボイラ水が加熱されることにより蒸気が生成される。ここで、前記ボイラ内では、ボイラ水中の溶存酸素が低減されているため、水管や管寄せなどの腐食,具体的には孔食が効果的に抑制される。また、前記ボイラ内では、ボイラ水中の溶存酸素や溶存炭酸ガスが低減されているため、蒸気に含まれる酸素や炭酸ガスが低減される。
【0035】
前記ボイラで生成された蒸気は、前記給蒸経路を介して前記負荷機器へ供給される。この蒸気は、前記負荷機器において熱交換されることにより、凝縮水へ変化する。この凝縮水は、復水として前記復水回収経路を介して回収され、前記第二脱気部へ導入される。ここで、前記給蒸経路や前記復水回収経路では、蒸気に含まれる酸素や炭酸ガスが低減されているため、これらの気体の凝縮水への溶解量が低減され、配管の腐食,具体的には孔食や減肉的な腐食が効果的に抑制される。
【0036】
以上、説明したように、この第一実施形態によれば、補給水と復水とが混合される給水の脱気処理を確実に行うことができるとともに、脱気処理に係る省電力を実現することができる。この結果、脱酸素剤や復水処理剤などの水処理剤を使用することなく,あるいは必要最少量の水処理剤の使用により、ボイラ,蒸気配管および復水配管などの腐食を効果的に抑制でき、また水処理に係るランニングコストを低減することができる。
【0037】
(第二実施形態)
つぎに、この発明に係る脱気システムの第二実施形態について説明する。第二実施形態に係る脱気システムは、前記第一実施形態で説明した前記第一脱気部,前記補給水貯留部および前記第二脱気部に加えて復水貯留部を主に備えている。ここでは、前記第一実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0038】
第二実施形態において、前記復水回収経路の他端側は、前記復水貯留部と接続されている。この復水貯留部の底部は、前記第二脱気部と復水供給経路で接続されている。すなわち、前記復水回収経路を介して回収される復水を前記復水貯留部内へ貯留した後、この復水を復水供給経路を介して前記第二脱気部へ供給し、この第二脱気部で復水を脱気処理するように構成されている。
【0039】
この構成において、前記復水回収経路は、回収される復水へ空気が巻き込まれることを防止するため、前記復水貯留部の下部へ復水を供給するように接続することが望ましい。このように構成すると、復水への酸素や炭酸ガスの再溶存が抑制され、前記第二処理部で効率よく脱気処理することができる。
【0040】
また、前記第二脱気部は、前記補給水貯留部と復水取出経路で接続されている。すなわち、前記第二脱気部で脱気処理された復水を前記復水取出経路を介して前記補給水貯留部
へ供給し、この補給水貯留部内に貯留された補給水と混合するように構成されている。
【0041】
ここで、前記補給水貯留部および前記復水貯留部は、必ずしも別体に設ける必要はなく、たとえば1個のタンクを仕切板で2つに分割し、それぞれを前記補給水貯留部および前記復水貯留部に割り当てるように構成してもよい。このように構成すると、前記補給水貯留部および前記復水貯留部の設置スペースを削減することができる。また、前記仕切板を介して、復水の熱で補給水が加温されるため、復水の熱を効率よく回収することができる。
【0042】
前記の構成において、前記第一脱気部は、前記第一実施形態と同様、常温の補給水を処理可能な脱気装置であれば、とくに制限なく使用することができる。前記第一脱気部として適用可能な脱気装置は、たとえば前記膜式脱気装置,前記真空式脱気装置および前記窒素置換式脱気装置を挙げることができる。
【0043】
また、前記第二脱気部は、前記第一実施形態と同様、高温,かつ懸濁物質を含む復水を処理可能な脱気装置であれば、とくに制限なく使用することができる。前記第二脱気部として適用可能な脱気装置は、たとえば前記真空式脱気装置および前記窒素置換式脱気装置を挙げることができる。
【0044】
以下、第二実施形態に係る前記脱気システムの作用について説明する。まず、補給水が前記第一脱気部において脱気処理され、補給水に含まれる溶存酸素や溶存炭酸ガスが低減される。この補給水は、前記補給水供給経路を介して前記補給水貯留部へ供給される。こにおいて、前記第一脱気部は、補給水が必要なときのみ作動するように制御される。したがって、最大処理量を小さく設定することができ、消費電力を低減することが可能になる。
【0045】
つぎに、前記復水回収経路を介して回収された復水は、前記復水貯留部へ供給され、貯留される。この貯留された復水は、前記復水供給経路を介して前記第二脱気部へ供給され、この第二脱気部において脱気処理されることにより、復水に含まれる溶存酸素や溶存炭酸ガスが低減される。そして、この復水は、前記復水取出経路を介して前記補給水貯留部へ供給される。ここにおいて、前記第二脱気部は、復水が回収されているときのみ作動するように制御される。したがって、最大処理量を小さく設定することができ、消費電力を低減することが可能になる。
【0046】
前記補給水貯留部内では、脱気処理された補給水と脱気処理された復水とが混合され、溶存酸素や溶存炭酸ガスが低減された給水として確保される。この給水は、前記給水供給経路を介して前記ボイラへ供給される。前記ボイラ内では、貯留された給水,すなわちボイラ水が加熱されることにより蒸気が生成される。ここで、前記ボイラ内では、ボイラ水中の溶存酸素が低減されているため、水管や管寄せなどの腐食,具体的には孔食が効果的に抑制される。また、前記ボイラ内では、ボイラ水中の溶存酸素や溶存炭酸ガスが低減されているため、蒸気に含まれる酸素や炭酸ガスが低減される。
【0047】
前記ボイラで生成された蒸気は、前記給蒸経路を介して前記負荷機器へ供給される。この蒸気は、前記負荷機器において熱交換されることにより、凝縮水へ変化する。この凝縮水は、復水として前記復水回収経路を介して回収され、前記第二脱気部へ導入される。ここで、前記給蒸経路や前記復水回収経路では、蒸気に含まれる酸素や炭酸ガスが低減されているため、これらの気体の凝縮水への溶解量が低減され、配管の腐食,具体的には孔食や減肉的な腐食が効果的に抑制される。
【0048】
以上、説明したように、この第二実施形態によれば、補給水と復水とが混合される給水
の脱気処理を確実に行うことできるとともに、脱気処理に係る省電力を実現することができる。この結果、脱酸素剤や復水処理剤などの水処理剤を使用することなくなく,あるいは必要最少量の水処理剤の使用により、ボイラ,蒸気配管および復水配管などの腐食を効果的に抑制でき、また水処理に係るランニングコストを低減することができる。
【実施例】
【0049】
(第一実施例)
以下、この発明の第一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、第一実施例に係る脱気システムの概略構成図を示している。第一実施例に係る脱気システムは、ボイラ装置の給水系統に接続され、蒸気が凝縮した復水(蒸気ドレン)を回収し、補給水と復水とが混合された給水をボイラへ供給する場合に適用される。図1において、脱気システム1は、第一脱気部2と、補給水貯留部3と、第二脱気部4とを主に備えている。
【0050】
前記補給水貯留部3には、補給水供給経路5が接続されており、この補給水供給経路5の下流側端部は、前記補給水貯留部3の底部へ向かって延びている。そして、前記補給水供給経路5には、上流側から順に軟水装置6と前記第一脱気部2とが設けられている。
【0051】
前記軟水装置6は、水道水,工業用水,地下水などの原水から硬度成分(カルシウムイオンやマグネシウムイオン)を陽イオン交換樹脂を使用して除去し、後述するボイラ内におけるスケール生成を防止するための水処理機器である。一方、前記第一脱気部2は、所定本数の脱気モジュール(図示省略)を備えた膜式脱酸素装置である。すなわち、原水から硬度成分が除去された水,すなわち軟水は、前記第一脱気部2で脱気処理された後、補給水として前記補給水供給経路5を介して前記補給水貯留部3へ供給されるように構成されている。また、前記補給水貯留部3には、貯留された補給水の水位を検出するための水位センサ7が設けられている。
【0052】
前記補給水貯留部3の底部は、ボイラ8と給水供給経路9で接続されており、この給水供給経路9には、給水ポンプ10が設けられている。前記ボイラ8は、生成した蒸気を負荷機器11へ供給するため、この負荷機器11と給蒸経路12(蒸気配管)で接続されている。前記負荷機器11は、蒸気の凝縮水を復水として回収するため、復水回収経路13(復水配管)の一端側と接続されている。そして、この復水回収経路13には、上流側から順にスチームトラップ14と温度センサ15が設けられている。前記スチームトラップ14は、前記負荷機器11や前記給蒸経路12で生成する復水を蒸気圧力を利用して排出するためのものである。また、前記温度センサ15は、前記復水回収経路13から復水が回収されているか否かを検出するためのものである。
【0053】
前記第二脱気部4は、処理槽16の上部にノズル17が設けられた真空式脱気装置であり、前記ノズル17は、前記復水回収経路13の他端側と接続されている。また、前記処理槽16の上部には、この処理槽16内を真空吸引して排気するための排気経路18が接続されており、この排気経路18には、真空ポンプ19が設けられている。すなわち、前記復水回収経路13を介して回収される復水を前記ノズル17を介して前記処理槽16内へ散布し、この貯留槽16内を減圧することにより脱気処理するように構成されている。
【0054】
前記処理槽16の底部は、前記補給水貯留部3の底部と復水取出経路20で接続されており、この復水取出経路20には、送水ポンプ21が設けられている。すなわち、前記処理槽16内で脱気処理された復水を前記復水取出経路20を介して前記補給水貯留部3へ供給し、この補給水貯留部3内に貯留された補給水と混合して給水を生成するように構成されている。
【0055】
以下、第一実施例に係る前記脱気システム1の作用について説明する。まず、補給水供
給経路5を流れる原水は、前記軟水装置6において、イオン交換により軟水化処理される。この軟水は、さらに前記第一脱気部2,すなわち膜式脱気装置において脱気処理され、補給水に含まれる溶存酸素や溶存炭酸ガスが低減される。この脱気された軟水は、補給水として前記補給水貯留部3へ供給され、貯留される。
【0056】
ここにおいて、前記第一脱気部2は、前記水位センサ7で検出される前記補給水貯留部3内の水位および前記送水ポンプ21の作動状態に基づいて、その運転が制御される。具体的には、前記補給水貯留部3内の水位が所定値未満,かつ前記送水ポンプ21が停止しているときには、貯留された補給水が不足しており、また復水が前記補給水貯留部3へ供給されていないと判断する。そして、この判断結果に基づいて、補給水の脱気処理を行うとともに、この補給水を前記補給水貯留部3へ供給するように制御する。
【0057】
つぎに、前記ボイラ8の燃焼中には、前記スチームトラップ14の作動により、前記復水回収経路13を介して復水が回収される。この復水は、蒸気圧力により加圧され、前記ノズル17を介して前記処理槽16内へ散布される。前記第二脱気部4では、前記真空ポンプ19を作動させることによって、前記処理槽16内を減圧し、復水に含まれる溶存酸素や溶存炭酸ガスが除去される。復水から除去された溶存酸素や溶存炭酸ガスは、前記排気経路18を介して系外へ排気される。また、脱気処理された復水は、前記処理槽16内の下部へ貯留される。この復水は、前記送水ポンプ21を作動させることにより、前記処理槽16内から取り出され、前記復水取出経路20を介して前記補給水貯留部3へ供給される。
【0058】
ここにおいて、前記真空ポンプ19および前記送水ポンプ21は、前記貯留槽16内の水位および前記温度センサ15で検出される前記復水回収経路13内の温度に基づいて、それぞれの運転が制御される。具体的には、前記復水回収経路13内の温度が所定値以上のときには、復水が回収されていると判断する。そして、この判断結果に基づいて、前記真空ポンプ19を作動させ、復水の脱気処理を行うように制御する。また、前記貯留槽16内の水位が所定値以上のときは、脱気処理された復水が十分に貯留されており、前記送水ポンプ21の作動に支障がないと判断する。そして、この判断結果に基づいて、前記送水ポンプ21を作動させ、脱気処理された復水を前記補給水貯留部3へ供給するように制御する。
【0059】
前記補給水貯留部3内では、脱気処理された補給水と脱気処理された復水とが混合され、溶存酸素や溶存炭酸ガスが低減された給水として確保される。この給水は、前記ボイラ8内の水位に応じて前記給水ポンプ10を作動させることにより、前記給水供給経路9を介して前記ボイラ8へ供給される。前記ボイラ8内では、貯留された給水,すなわちボイラ水が加熱されることにより蒸気が生成される。前記ボイラ8内で生成された蒸気は、前記給蒸経路12を介して前記負荷機器11へ供給される。この蒸気は、前記負荷機器11において熱交換されることにより、凝縮水へ変化する。この凝縮水は、復水として前記復水回収経路13を介して回収され、前記第二脱気部4へ供給される。
【0060】
(第二実施例)
つぎに、この発明の第二実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図2は、第二実施例に係る脱気システムの概略構成図を示している。第二実施例に係る脱気システム22は、前記第一実施例で説明した前記第一脱気部2,前記補給水貯留部3および前記第二脱気部4に加えて復水貯留部23を主に備えている。図2において、前記第一実施例と同一の符号は、同一の部材を示しており、その詳細な説明は省略する。
【0061】
第二実施例において、前記復水回収経路13の他端側は、前記復水貯留部23と接続されている。前記復水回収経路13の下流側端部は、前記復水貯留部23の底部へ向かって
延びている。
【0062】
前記復水貯留部23の底部は、前記第二脱気部4の前記ノズル17と復水供給経路24で接続されており、この復水供給経路24には、加圧ポンプ25が設けられている。すなわち、前記復水回収経路13を介して回収される復水を前記復水貯留部23内に貯留した後、この復水を復水供給経路24を介して前記処理槽16内へ供給し、この処理槽16内で復水を脱気処理するように構成されている。
【0063】
前記処理槽16の底部は、前記補給水貯留部3の底部と復水取出経路20で接続されており、この復水取出経路20には、送水ポンプ21が設けられている。すなわち、前記処理槽16内で脱気処理された復水を前記復水取出経路20を介して前記補給水貯留部3へ供給し、この補給水貯留部3内に貯留された補給水と混合して給水を生成するように構成されている。
【0064】
また、前記補給水貯留部3には、貯留された補給水の水位を検出するための第一水位センサ26が設けられている。一方、前記復水貯留部23には、貯留された復水の水位を検出するための第二水位センサ27が設けられている。
【0065】
以下、第二実施例に係る前記脱気システム22の作用について説明する。まず、補給水供給経路5を流れる原水は、前記軟水装置6において、イオン交換により軟水化処理される。この軟水は、さらに前記第一脱気部2,すなわち膜式脱気装置において脱気処理され、補給水に含まれる溶存酸素や溶存炭酸ガスが低減される。この脱気された軟水は、補給水として前記補給水貯留部3へ供給され、貯留される。
【0066】
ここにおいて、前記第一脱気部2は、前記第一水位センサ26で検出される前記補給水貯留部3内の水位および前記送水ポンプ21の作動状態に基づいて、その運転が制御される。具体的には、前記補給水貯留部3内の水位が所定値未満,かつ前記送水ポンプ21が停止しているときには、貯留された補給水が不足しており、また復水が前記補給水貯留部3へ供給されていないと判断する。そして、この判断結果に基づいて、補給水の脱気処理を行うとともに、この補給水を前記補給水貯留部3へ供給するように制御する。
【0067】
つぎに、前記ボイラ8の燃焼中には、前記スチームトラップ14の作動により、前記復水回収経路13を介して復水が回収され、前記復水貯留部23へ供給される。前記復水貯留部23内に復水が貯留されると、前記加圧ポンプ25を作動させる。この復水は、前記復水供給経路24を介して前記第二脱気部4へ圧送され、前記ノズル17を介して前記処理槽16内へ散布される。前記第二脱気部4では、前記真空ポンプ19を作動させることによって、前記処理槽16内を減圧し、復水に含まれる溶存酸素や溶存炭酸ガスが除去される。復水から除去された溶存酸素や溶存炭酸ガスは、前記排気経路18を介して系外へ排気される。また、脱気処理された復水は、前記処理槽16内の下部へ貯留される。この復水は、前記送水ポンプ21を作動させることにより、前記処理槽16内から取り出され、前記復水取出経路20を介して前記補給水貯留部3へ供給される。
【0068】
ここにおいて、前記加圧ポンプ25,前記真空ポンプ19および前記送水ポンプ21は、前記第二水位センサ27で検出される前記復水貯留部23内の水位および前記処理槽16内の水位に基づいて、それぞれの運転が制御される。具体的には、前記復水貯留部23内の水位が所定値以上のときには、回収された復水が十分に貯留されていると判断する。そして、この判断結果に基づいて、前記真空ポンプ19および前記加圧ポンプ25を作動させ、復水の脱気処理を行うように制御する。また、前記処理槽16内の水位が所定値以上のときは、脱気処理された復水が十分に貯留されており、前記送水ポンプ21の作動に支障がないと判断する。そして、この判断結果に基づいて、前記送水ポンプ21を作動さ
せ、脱気処理された復水を前記補給水貯留部3へ供給するように制御する。
【0069】
前記補給水貯留部3内では、脱気処理された補給水と脱気処理された復水とが混合され、溶存酸素や溶存炭酸ガスが低減された給水として確保される。この給水は、前記ボイラ8内の水位に応じて前記給水ポンプ10を作動させることにより、前記給水供給経路9を介して前記ボイラ8へ供給される。前記ボイラ8内では、貯留された給水,すなわちボイラ水が加熱されることにより蒸気が生成される。前記ボイラ8内で生成された蒸気は、前記給蒸経路12を介して前記負荷機器11へ供給される。この蒸気は、前記負荷機器11において熱交換されることにより、凝縮水へ変化する。この凝縮水は、復水として前記復水回収経路13を介して回収され、前記復水貯留部23へ供給される。
【0070】
(第三実施例)
つぎに、この発明の第三実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図3は、第三実施例に係る脱気システムの概略構成図を示している。第三実施例に係る脱気システム28は、前記第二実施例の変形例であり、前記第一脱気部2,前記補給水貯留部3,前記第二脱気部4および前記復水貯留部23を主に備えている。図3において、前記第一実施例および前記第二実施例と同一の符号は、同一の部材を示しており、その詳細な説明は省略する。
【0071】
第三実施例に係る脱気システム1は、タンク29を備えている。このタンク29は、仕切板30により、その内部が2つに分割され、それぞれが前記補給水貯留部3および前記復水貯留部23に割り当てられている。前記補給水貯留部3に対応する部分には、前記補給水供給経路5,前記給水供給経路9および前記復水取出経路20がそれぞれ接続されている。一方、前記復水貯留部23に対応する部分には、前記復水回収経路13および前記復水供給経路24がそれぞれ接続されている。さらに、前記補給水貯留部3に対応する部分には、前記第一水位センサ26が設けられているとともに、前記復水貯留部23に対応する部分には、前記第二水位センサ27が設けられている。
【0072】
第三実施例に係る前記脱気システム28の作用については、前記第二実施例と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明の第一実施例に係る脱気システムの概略構成図。
【図2】この発明の第二実施例に係る脱気システムの概略構成図。
【図3】この発明の第三実施例に係る脱気システムの概略構成図。
【符号の説明】
【0074】
1 脱気システム
2 第一脱気部
3 補給水貯留部
4 第二脱気部
8 ボイラ
22 脱気システム
23 復水貯留部
28 脱気システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱気処理された給水をボイラへ供給する脱気システムであって、
補給水を脱気処理する第一脱気部と、
脱気処理された補給水を貯留する補給水貯留部と、
前記ボイラで発生させた蒸気の復水を脱気処理する第二脱気部とを備え、
前記第二脱気部で脱気処理された復水を前記補給水貯留部へ供給し、
補給水と復水とが混合された給水を前記ボイラへ供給することを特徴とする脱気システム。
【請求項2】
脱気処理された給水をボイラへ供給する脱気システムであって、
補給水を脱気処理する第一脱気部と、
脱気処理された補給水を貯留する補給水貯留部と、
前記ボイラで発生させた蒸気の復水を貯留する復水貯留部と、
この復水貯留部内の復水を脱気処理する第二脱気部とを備え、
前記第二脱気部で脱気処理された復水を前記補給水貯留部へ供給し、
補給水と復水とが混合された給水を前記ボイラへ供給することを特徴とする脱気システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−283988(P2006−283988A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100344(P2005−100344)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】