説明

脱水、濃縮用ベルトおよびその製造方法

【課題】濃縮用ベルトで生じる織物の上下層の剥離、経糸破断による無端状織物の破断、ガイド突起の脱落、不十分なガイド性能、ガイド取り付け部と織物の境界で生じる織物の切断等を改善方法と改善されたベルトを提供する。
【解決手段】合成樹脂フィラメントで製織した織物からなる無端状織物と、抗屈曲エレメントと、ガイド突起とからなる脱水、濃縮用ベルトにおいて、織物が上下に配置した上面側緯糸と下面側緯糸を経糸接結糸で接結した二層織物であって、巾が30〜60mmの抗屈曲エレメントを、織物耳部の織物空間の85%以上にウレタン樹脂で充填することで織物に取り付け、ガイド突起を抗屈曲エレメントが取り付けられた抗屈曲部に融着により取り付けてなる、脱水、濃縮用ベルトとその方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に新聞紙等の故紙から脱墨、脱灰分等により再生した紙資料の水溶液からインキ粒子、灰分等を除去する洗浄工程、またそれを脱水したり、パルプ原料を濃縮するためのベルト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新聞紙や雑誌等の故紙から脱墨、脱灰分等により再生した紙資料の水溶液からインキ粒子、灰分等を除去する洗浄処理や、パルプ原料を脱水、濃縮する行程では濃縮機が使用されている。
濃縮機には幾つかの種類があるが、いずれも紙資料やパルプ原料等の水分量を減らすための機構となっている。その一つとして、2つのロールとそれに掛けられた織物からなる無端状のベルトを用いた濃縮機がある。これはロールとベルトの間にパルプ原料等を供給し、インナーロールとベルト間のニップ圧と高速回転による遠心力を利用して連続的に紙資料の水溶液からインキ粒子、灰分、紙を形成しない微細繊維、余剰水分等を除去するものである。
故紙等の紙資料の濃縮は製紙とは異なり、資料がベルト上に均一に少量づつ供給されるのではなく、固形分が不均一に分散した状態で放出される。そのため織物に不均一に大きな荷重がかかり、回転する無端状ベルトが斜行するとベルトが変形して裂けてしまうこともある。この現象を防止するため織物の巾方向端部にガイド突起を設け、またガイド突起と織物との境界面の織物の切断を防止する目的で抗屈曲エレメントを設けることが試みられた。
【0003】
そのような技術としては、特許文献1にガイドを織物に縫いつけた構成のものが示されている。縫合による固着はガイドと織物の間に遊びができるため織物端部の切断がいくらか緩和される利点があるが、逆にガイド性能が低くベルトが蛇行してしまったり、ガイド突起が脱落したり、抗屈曲エレメントと織物の境界面でベルトが裂けてしまうことがある。また、特許文献2にはガイドを織物本体に融着した構成のものが示されている。この方法は縫合よりもガイド性が高く、またガイド突起が織物から脱落しにくい。しかしながら、特許文献1、特許文献2に示されているいずれのベルトにおいても、織物本体の構造によっては織物構成糸が織物内部で摩耗して上下層が分離してしまったり、抗屈曲エレメントとの境界面で織物が裂けてしまうことがある。特に、脱水、濃縮用ベルトとして一般的に使用されている上下層を緯糸接結糸で織り合わせた織物の場合には、接結糸が上下層間で揉まれて摩耗切断し、上下層が分離してしまうことがある。
それを改善するために三層に配置された緯糸を経糸と織り合わせた織物を用いた濃縮用ベルトが開発された。特許文献3の図1には織物の経糸に沿った断面図が示されている。この技術は従来の緯糸接結糸を用いた二層構造の織物で生じる、緯糸接結糸の内部摩耗による上下層の分離の対策として考えられたものである。張力の掛かる縦方向の糸で各緯糸を織り合わせた構造のため、接結糸となる経糸が内部で揉まれて切断してしまうことは少ないが、表裏の擦過摩耗により経糸が一部で切断されると張力が掛けられて走行している無端状織物はその部分から破断してしまうことがある。
このように現在では、ガイド性能、ガイド突起の固着強度、織物の破断、境界面の切断等、濃縮用ベルトとして要求される性能を併せ持つベルトは開発されていなかった。
【特許文献1】特開平2−14090号公報
【特許文献2】特開平4−361682号公報
【特許文献3】特開平8−144185公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の濃縮用ベルトで生じる織物の上下層の剥離、経糸破断による無端状織物の破断、ガイド突起の脱落、不十分なガイド性能、ガイド取り付け部と織物の境界で生じる織物の切断等の、従来技術の濃縮用ベルトで解決できなかった多くの問題を改善したものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
「1. 合成樹脂フィラメントで製織した織物からなる無端状織物と、この無端状織物の巾方向耳部の少なくとも一端に配設した抗屈曲エレメントと、ガイド突起とからなる脱水、濃縮用ベルトにおいて、織物が上下に配置した上面側緯糸と下面側緯糸を接結する経糸接結糸を有する二層織物であって、少なくとも上面側経糸と下面側経糸のいずれかを配置し、前記抗屈曲エレメントはエーテル系またはエステル系のポリウレタン樹脂で構成され、巾が30〜60mmであって、織物耳部の織物空間の85%以上にウレタン樹脂を充填することで抗屈曲エレメントを織物に取り付け、ガイド突起はエーテル系またはエステル系のポリウレタン樹脂から構成され、ガイド突起を抗屈曲エレメントが取り付けられた抗屈曲部に融着により取り付けたことを特徴とする脱水、濃縮用ベルト。
2. 二層織物が、上面側経糸と下面側経糸が上下に配置した経糸の組と、上経糸接結糸と下面側経糸とからなる上経糸接結糸の組及び/または下経糸接結糸と上面側経糸とからなる下経糸接結糸の組とから構成されたことを特徴とする1項に記載された脱水、濃縮用ベルト。
3. 二層織物が、上経糸接結糸と下面側経糸とからなる上経糸接結糸の組及び/または下経糸接結糸と上面側経糸とからなる下経糸接結糸の組とから構成されたことを特徴とする1項に記載された脱水、濃縮用ベルト。
4. 二層織物が、上面側経糸と下面側経糸が上下に配置された経糸の組と、上経糸接結糸と下経糸接結糸とからなる上下経糸接結糸の組とから構成されたことを特徴とする1項に記載された脱水、濃縮用ベルト。
5. 抗屈曲エレメントの外側端部を、織物の端部と同じか、それよりも外側に位置するように取り付けてなることを特徴とする1項ないし4項のいずれか1項に記載された脱水、濃縮用ベルト。
6. 抗屈曲エレメントが、厚さ1〜3mmのウレタンシートであることを特徴とする1項ないし5項のいずれか1項に記載された脱水、濃縮用ベルト。
7. 抗屈曲エレメントの内側端部が直線状でないことを特徴とする1項ないし6項のいずれか1項に記載された脱水、濃縮用ベルト。
8. 抗屈曲エレメントの内側端部が波形であることを特徴とする7項に記載された脱水、濃縮用ベルト。
9. 抗屈曲エレメントの内側端部と織物本体との境界に樹脂を塗布してなることを特徴とする1項ないし8項のいずれか1項に記載された脱水、濃縮用ベルト。
10. 抗屈曲エレメントがウレタンシートであって、該ウレタンシートを織物に加熱圧着して織物内部に充填させて取り付けたことを特徴とする、6項ないし9項のいずれか1項に記載された脱水、濃縮用ベルトの製造方法。
11. 合成樹脂フィラメントで製織した織物からなる無端状織物の耳部の少なくとも一端に、抗屈曲エレメントと、ガイド突起を融着により固着した、1項ないし9項のいずれか1項に記載された脱水、濃縮用ベルトの製造方法。」に関する。
【発明の効果】
【0006】
ガイド性と耐切断強度、ガイド突起の固着強度、織物の耐剥離性、織物の経糸破断によるベルトの耐破断性、等の濃縮用ベルトとして要求される性能に優れた脱水、濃縮用ベルトを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、新聞紙や雑誌等の故紙から脱墨、脱灰分等により再生した紙資料の水溶液からインキ粒子、灰分等を除去する洗浄処理や、パルプ原料を脱水、濃縮する濃縮機で使用される濃縮用ベルトに関するものであり、合成樹脂フィラメントで製織した織物を周知の方法で無端状とした無端状織物の巾方向耳部の少なくとも一端に抗屈曲エレメントと、ガイド突起とを固着したものである。
本明細書において、ベルトや織物の方向については走行方向、そしてそれと直交する向きを巾方向と表現しており、走行方向とは無端状の織物の円周方向に相当するものである。また、織物の説明の中で巾方向端部または織物端部、耳端部、耳部等とあるが、それらは全て同じ部分を示している。また、抗屈曲エレメントの説明の中で内側端部、外側端部と表現している部分があるが、巾を持った抗屈曲エレメントにおいて、織物の耳端に近い側を外側端部と表現しており、脱水、濃縮するエリアに近い側を内側端部と表現している。また、ガイド突起の端部についても同じように外側端部、内側端部と表現している。織物の上下については上面側層、下面側層等としているが、どちらをロール接触面としても構わない。
【0008】
織物は上面側には上面側緯糸、下面側には下面側緯糸が配置されており、上面側緯糸の上と下面側緯糸の下を通って上下層を織り合わせる経糸接結糸で接結した二層織物である。上面側を形成する糸としては上面側緯糸、経糸接結糸があり、その他に上面側経糸が配置されていても、なくても構わない。また、下面側を形成する糸としては下面側緯糸、経糸接結糸があり、その他に下面側経糸が配置されていても、なくても構わない。
上面側層を資料の供給面とすると、下面側層は水分等の出口側となる。一般的には資料供給面は繊維を留めるために線径が小さく目が細かい構造とすればよく、水分の出口側は水はけをよくするためと、織物剛性を確保するために線径が大きく目の粗い構造とすればよい。このように、上下層からなる2つの層を接結糸で織り合わせた構造の場合、独立した各層に応じた織物デザインを選択できるため、好ましい。これは従来の緯糸三層経糸一層織物や、緯糸二層経糸一層織物、単層織物からなるベルトではなし得なかったものである。
また、従来の緯糸三層経糸一層構造の織物では経糸の全てが上下緯糸を織り合わせる接結糸であったため、1本またはその付近の2、3本またはそれ以上の経糸が、ロールやスクレーパー等の擦過や、織物内部で糸がもまれて摩耗切断すると、その近辺の経糸から資料の重さや張力に耐えられなくなった経糸が徐々に切断していき、穴があいたり、最終的には織物全体が破断してしまうことがあった。ところが、本発明のように経糸接結糸の他に上面側経糸、及び/または下面側経糸が独立して存在すれば、例え1本の経糸接結糸が切断しても、組織や機能等が異なるその他の経糸が存在するため、それらの経糸が縦方向の張力を受け持ち、それ以上多くの縦方向の糸が破断することは少ない。特に下面側経糸に太くて剛性の高い糸を用いれば破断防止効果は向上する。
二層織物を構成する経糸は、上下に配置している上面側緯糸と下面側緯糸、そして経糸接結糸を有し、接結糸の組織や配置割合、配置場所等は特に限定はされない。好ましい実施例としては、上経糸接結糸と下面側経糸とからなる上経糸接結糸の組を配置したものや、下経糸接結糸と上面側経糸とからなる下経糸接結糸の組を配置したもの、上経糸接結糸と下経糸接結糸とからなる上下経糸接結糸の組を配置したもののいずれかを配置すればよい。上面側経糸と下面側経糸のいずれかと、経糸接結糸が配置していれば、どのようなものであっても構わない。
【0009】
本明細書において上経糸接結糸は、本来配置されるべき上面側経糸を接結糸として置き換えたものであり、特別なものではない。上経糸接結糸は少なくとも1本の上面側緯糸の上と、少なくとも1本の下面側緯糸の下を通る組織のものである。同様に、下経糸接結糸は、本来配置されるべき下面側経糸を接結糸として置き換えたものであり、特別なものではない。下経糸接結糸は少なくとも1本の上面側緯糸の上と、少なくとも1本の下面側緯
糸の下を通る組織のものである。これらは、各経糸接結糸がどの糸に代わって上下層を接結しているか、またどの糸とペアを組んでいるかを明確にするために表現したものである。
接結糸の配置として好ましい実施例は、各接結の組を構成する2本の経糸を上面側経糸、下面側経糸の一部として機能させたものがある。詳しく説明すると、上下経糸接結糸の組において、一方の上経糸接結糸が上面側緯糸と織り合わされて上面側層の一部を形成しているとき、その下側では下経糸接結糸が下面側緯糸と織り合わされて下面側層の一部を形成する組織とし、逆に下経糸接結糸が下面側緯糸と織り合わされて下面側層の一部を形成しているとき、その上側で上経糸接結糸が上面側緯糸と織り合わされて上面側層の一部を形成する組織とすると、他の上面側経糸、下面側経糸と同じように上面側層、下面側層の一部を形成するため均一な表面とすることができ、部分的な摩耗や、部分的な繊維の刺さり込み、不均一な脱水等がなく好ましい。しかし、これらの接結糸が常に緯糸と織り合わされている必要はなく、例えば上経糸接結糸が上面側緯糸と織り合わされている時、対になっている下経糸接結糸が上面側緯糸と下面側緯糸の間を通っている部分を持つ組織や、上面側経糸が上面側緯糸の上を通る場所で、対になっている下経糸接結糸が該上面側緯糸の上を通る組織であってもよい。その他、経糸接結糸の線径や組織を上面側経糸と同じにすると均一な脱水表面が形成され、また局所的な摩耗もないため好ましい。しかし、本発明は脱水、濃縮用のベルトであって、表面均一なパルプシート等を形成することが目的でないため、製紙用織物等に要求されるような厳しい均一性等は必要とはされていなく、そのため線径や組織等特に限定されない。
【0010】
本発明に使用される糸は用途や目的に応じて選択すればよいが、例えば、モノフィラメントの他、マルチフィラメント、スパンヤーン、捲縮加工や嵩高加工等を施した一般的にテクスチャードヤーン、バルキーヤーン、ストレッチヤーンと称される加工糸、あるいはこれらを撚り合わせる等して組み合わせた糸が使用できる。また、糸の断面形状も円形だけでなく四角形状や星型等の短形状の糸や楕円形状、中空等の糸が使用できる。また、糸の材質としても、自由に選択でき、一般的に使用されているポリエステル、ポリアミドのみならず、化学繊維、合成繊維、天然繊維等が使用できる。もちろん、共重合体や目的に応じてさまざまな物質をブレンドしたり含有させた糸を使用してもよい。
濃縮用ベルトとしては一般的には、経糸には剛性があり、寸法安定性に優れるポリエステルモノフィラメントを用いるのが好ましい。また、緯糸にはポリエステルモノフィラメントとポリアミドモノフィラメントを交互に配置する等、交織してもよい。
【0011】
ここでは上下に配置された上面側経糸、下面側経糸が同比率で配置されているように示しているが、その他にも上面側経糸の配置比率を下面側経糸よりも多くしても構わなく、またその逆も可能である。さらに経糸接結糸が上面側、または下面側の組織を形成する経糸として機能していても、していなくても構わない。経糸接結糸が表面組織を補完しようとも、補完せず崩した組織としても何ら問題はない。経糸接結糸の配置比率も、織物の完全組織の中で1本以上配置すればよい。
このようにして製織された織物は、周知の方法により無端状とする。
そして、織物の耳部の少なくとも一端に抗屈曲エレメントとガイド突起を取り付ける。抗屈曲エレメントは、織物上に取り付けたガイドと織物の境界に生じる織物の切断を防止するためのものである。ガイドはベルトの走行を安定させる目的で配置するので剛性を必要とする。織物耳端部に取り付けるガイドは剛性があるため、ガイドを取り付けた織物の境界、また織物のロール端部と接触する部分に応力が集中し、そこから織物が切断してしまうことがある。これらを防止する目的で抗屈曲エレメントは取り付けられている。
抗屈曲エレメントの材質はエーテル系またはエステル系のポリウレタン樹脂製とする。この材料は強度が高く、耐摩耗性も良好で、織物との結合も良く、可撓性が大きいのでインナーロールでの折り返しが良好であるからである。樹脂の剛性や量、硬さによっては連続のものであってもよく、さらにベルトを折り返しやすくさせるために抗屈曲エレメント
を走行方向に不連続に配置しても構わない。
【0012】
取り付け方はポリウレタン樹脂を溶融させ、織物空間の85%以上に充填し固着する。85%未満では抗屈曲効果が小さく、固着強度も不充分である。抗屈曲エレメントは、シート状のものを用いても、熱硬化性の樹脂を用いても構わない。シート自体を熱融着させてもよく、シートを熱融着させるための樹脂を織物内に充填し、それを介して固着させてもよい。シートの厚さは1mm〜3mm程度のもので十分であり、シートを織物端部に重ね加熱圧着して樹脂を織物の内部に充分浸透させ、反対側の表面近傍まで浸透させる。また、抗屈曲エレメントを取り付けた後、抗屈曲エレメントの内側端部と織物本体との境界に樹脂を塗布することで、抗屈曲エレメントをよりしっかりと織物に取り付け、はがれを防止することができる。この樹脂の種類、塗布量は限定されなく、境界面から少し内側にかけて塗布するとよい。また、シート状のものを織物の耳部に重ねて折り返し、耳部をシート状物で挟み熱融着してもよい。
そして、抗屈曲エレメントの巾は30〜60mmとする。巾が少なくとも30mm以上ないと単にガイドだけを配設した織物と同じように、抗屈曲エレメントの内側端部に負荷がかかり、ここから織物が切断してしまう。一方、60mmを超えると、抗屈曲エレメントは脱水する通水孔を埋めて取り付けるため、あまり広すぎるとワーク面が小さくなってしまい操業性に問題を来す。
【0013】
抗屈曲エレメントの取り付け位置は織物耳端部付近であればよく、織物の両端にそれぞれ取り付けても、片側だけに取り付けてもよい。抗屈曲エレメントの外側端部は、織物の端部よりもわずかに外側に位置するように取り付けると、織物端部が外側に露出しないので糸ホツレの心配がなく好ましい。もちろん、抗屈曲エレメントの外側端部と織物端部が揃っていても構わない。また、抗屈曲エレメントの内側端部は、ロールに少しかかるくらいの位置となるように取り付ける。抗屈曲エレメントの内側端部がロール端部よりも外側にあると、その部分に応力が集中し境目で織物が切断しまうためである。また、内側端部を直線状にしても構わないが、波形や鋸型等にすることで応力が分散され織物がより切断しにくくなる。
このように、取り付け位置と巾、形状を調整して取り付ければよい。
抗屈曲エレメントは織物のどちら側から取り付けてもよく、ロール接触面側から取り付ければロール端部との擦過で生じる摩耗を抗屈曲エレメントに受け持たせ、織物の切断を防止できる。しかし、その反対側からであっても、織物の内部空間の85%以上に剛性、耐摩耗性に優れたポリウレタン樹脂を充填しているため屈曲はしにくく、摩耗も十分防ぐことができる。
【0014】
同様にガイド突起もエーテル系またはエステル系のポリウレタン樹脂製とし、抗屈曲エレメントが取り付けられた抗屈曲部に融着により固着させる。これらのポリウレタン樹脂は強度が高く、耐摩耗性も良好で、織物との結合も良く、可撓性が大きいのでインナーロールでの折り返しが良好であるからである。抗屈曲エレメントは織物内部にポリウレタン樹脂を充填して固着させたのだが、ガイド突起をその充填された樹脂と一体に融着結合して固着させてもよい。例えば、抗屈曲エレメントとなるポリウレタン樹脂製のシートを織物端部に重ね加熱圧着して樹脂を織物の内部に充分浸透させ、反対側の表面近傍まで浸透させ、次いで織物のシートを圧着した反対面からポリウレタン樹脂製のガイド突起を加熱圧着して、織物内部で両ポリウレタン樹脂を融着して一体とすることにより製造できる。その際、ガイド突起を構成するポリウレタン樹脂と、織物内に充填したポリウレタン樹脂を同じ材質にすると固着強度が増してより好ましい。その他にも、織物を介さずに抗屈曲エレメントを配設した側に融着して取り付けても構わない。ガイド突起の取り付け位置は、ガイド突起の内側端部が抗屈曲エレメントの内側端部よりも外側に配置されていればよく、ガイド突起の外側端部を抗屈曲エレメントの外側端部に合わせた位置でも、またそれよりも内側であっても構わない。
ガイド突起の形状はベルトの蛇行を防止するための案内ガイドとなる形状であればよく断面矩形、円形、三角形等であってもよいが、断面が台形状の突起とすれば融着面積が大きいので好適である。ガイド突起は連続した棒状体でも良く、不連続な何本かの棒状体で形成してもよいが、不連続状とするとインナーロールでの折り返しが一層良好になる。
【実施例】
【0015】
次に本発明を図面を用い具体的に説明する。
図1は本発明の脱水、濃縮用ベルトを用いた濃縮機の側面図を示している。脱水用ベルト1は2つのロール11に張力が掛けられた状態で掛けられており、紙資料の水溶液12を、資料供給口13からロール11とベルト1の間に向けて供給し、インナーロールとベルト間のニップ圧と高速回転による遠心力を利用して、連続的に紙資料の水溶液からインキ粒子、灰分、紙を形成しない微細繊維、余剰水分等を除去する。故紙等の紙資料の濃縮は製紙とは異なり、資料がベルト上に均一に少量づつ供給されるのではなく、固形分が不均一に分散した状態で放出される。そのため織物に不均一に大きな荷重がかかり、回転する無端状ベルトが斜行するとベルトが変形して裂けてしまうこともある。
そのため、織物2の端部近傍にガイド突起4と、ガイド突起と織物との境界面の織物の切断を防止する目的で抗屈曲エレメント3を設けた(図2参照)。抗屈曲エレメント3とガイド突起4は、織物の両耳端に融着により取り付けた。
本実施例では織物の目の粗い側から抗屈曲エレメントとなるポリウレタン樹脂シートを重ね加熱圧着して溶融させ、織物の内部、そして織物の反対側の表面近傍に到達するくらいまで浸透させる。次いで織物のシートを圧着した反対面からポリウレタン樹脂で成形したガイド突起を加熱圧着し、織物内部で両ポリウレタン樹脂を融着して一体とした。
本発明のベルトは紙資料の水溶液を脱水するものであるため、ベルトに使用する織物は図2に示されているような、上層と下層を有する織物が好ましく、一般的には資料供給面は繊維を留めるために線径が小さく目が細かい構造とし、その反対側は水はけをよくするためと、織物剛性を確保するために線径が大きく目の粗い構造とするとよい。特に、本発明では接結糸の内部摩耗による上下層の剥離を防止する目的で、経糸接結糸を用いた2層織物とした。
【0016】
図3には本発明の織物を構成する経糸接結糸の組と、経糸の組の断面図を示した。下図が経糸の組で、上面側経糸7と下面側経糸8が上下に配置している。そして、図3の上図が上下層を織り合わせる経糸接結糸の組であり、経糸の組を構成する上面側経糸の代わりに、上面側緯糸と下面側緯糸の両方を織り合わせる上経糸接結糸5を配置し、そして下面側経糸の代わりに上面側緯糸と下面側緯糸の両方を織り合わせる下経糸接結糸6を配置したものである。経糸接結糸の組では、これら2本が協働して上面側表面では上面側経糸として機能し、下面側表面では下面側経糸として機能する。この経糸接結糸の組を経糸の組の代わりに、完全組織中に少なくとも1組以上配置する。
そして、図7、8、9には本発明に使用する他の織物の経糸に沿った断面図を示した。図7は上経糸接結糸と下面側経糸からなる上経糸接結糸の組からなり、全ての経糸をこの組として織物を構成しても構わなく、また図3に示した経糸の組と組み合わせて配置しても構わない。
図8は下経糸接結糸と上面側経糸からなる下経糸接結糸の組からなり、全ての経糸をこの組として織物を構成しても構わなく、また図3に示した経糸の組と組み合わせて配置しても構わない。
【0017】
図9は上面側経糸と下面側経糸からなる経糸の組に、別途経糸接結糸を配置したものであり、経糸接結糸は単に上下層を織り合わせるだけであり、他の実施例と違って表面組織を形成するものではない。しかし、本発明の織物は紙資料の脱水、濃縮用織物であるため表面組織の均一性等は特に問題はない。
本発明のように経糸接結糸の他に上面側経糸、下面側経糸が独立して存在すれば、例え
経糸接結糸が内部摩耗や表裏面での擦過摩耗により切断しても、その他の組織や機能等が異なる上面側経糸や下面側経糸が存在するため、それらの経糸が縦方向の張力を受け持ち、それ以上多くの縦方向の糸が破断することはほとんどない。特に下面側経糸に上面側経糸よりも太くて剛性の高い糸を用いれば破断防止効果は向上する。
そして、図4のように織物の両耳端に抗屈曲エレメント3とガイド突起4を融着により取り付けた。取り付け方はポリウレタン樹脂シートを溶融させ、織物空間の85%以上に充填し固着した。85%未満では抗屈曲効果が小さく、固着強度も不充分なためである。取り付け方は、シートを織物端部に重ね加熱圧着して樹脂を織物の内部に充分浸透させ、反対側の表面近傍まで浸透させ、次いで織物のシートを圧着した反対面からポリウレタン樹脂で成形した突起を加熱圧着して、織物内部で両ポリウレタン樹脂を融着して一体とする。図2に示してあるように、抗屈曲エレメントの外側端部3aは糸ホツレの問題を軽減させるために織物の端部4aよりもわずかに外側に位置するように取り付けた。また、抗屈曲エレメントの内側端部3bは、ロール11に少しかかるくらいの位置となるようにした。抗屈曲エレメントの内側端部3bがロール端部11aよりも外側にあると、その部分に応力が集中し境目で織物が切断してしまうためである。
【0018】
次に図2、図3に示した本発明の経糸接結タイプの二層織物からなる脱水、濃縮用ベルトと、従来の緯糸接結タイプの二層織物からなる脱水、濃縮用ベルトを用いて内部摩耗試験を行った。織物の構造以外のその他の条件は同じとし、濃縮機は図1のマシンとほぼ同等な機構のマシンを用い、故紙等の紙資料の水溶液をインナーロールとベルト間に供給し、プレスと円心脱水により脱水、濃縮した。そして、試験終了後に織物の一部を適当な大きさにカットし、その織物の上下層の間で接結糸を切断して上下層を剥離し、剥離した織物の内部の摩耗を確認した。図5に従来例の上面側層の内部の表面写真を、そして図6に本実施例の上面側層の内部の表面写真を示した。
【0019】
図5の従来例のベルトは接結糸の緩みから織物内部の糸が擦れ、糸が荒れた状態となっている。この状態では接結糸のみならず他の経糸、緯糸も直に摩耗破断してしまうような、かなり摩耗限界に近いレベルであるといえる。また、糸が毛羽立ってしまうと繊維がつまったりするため脱水性にも悪影響を与えてしまうことがある。
それに対して、本発明のベルトは接結糸の緩みが起こらないため、上下層の経糸、緯糸が擦れることがなくほとんど摩耗していないことが見て取れる。経糸接結糸を用いた本発明の織物は従来の織物に比べ内部摩耗が極めて少なく、非常に優れたベルトであるといえる。
その他、過酷な条件で内部摩耗試験を行ったが、ガイド突起、抗屈曲エレメント共に脱落することもなく、耳端部が切断することもなかった。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、特に新聞紙等の故紙から脱墨、脱灰分等により再生した紙資料の水溶液からインキ粒子、灰分等を除去し、それを脱水したり、パルプ原料を濃縮するためのベルトとして、織物の剥離や織物切断、破断、そしてガイド突起の脱落等がなく、特に故紙等を脱水、濃縮する洗浄機や濃縮機に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】脱水、濃縮用ベルトを用いた濃縮機の側面図である。
【図2】ロール上に張架した本発明のベルトの耳端部の詳細図である。
【図3】本発明のベルトを構成する織物を構成する経糸接結糸の組と経糸の組の断面図である。
【図4】本発明のベルトをロールに掛けた状態のロール上の断面図である。
【図5】内部摩耗試験後の従来例のベルトの上面側層内部表面写真である。
【図6】内部摩耗試験後の本発明のベルトの上面側層内部表面写真である。
【図7】本発明のベルトを構成する織物を構成する上経糸接結糸の組の断面図である。
【図8】本発明のベルトを構成する織物を構成する下経糸接結糸の組の断面図である。
【図9】本発明のベルトを構成する織物を構成する経糸の組と経糸接結糸の断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 脱水用ベルト
2 織物
2a 織物の巾方向端部
3 抗屈曲エレメント
3a 抗屈曲エレメントの外側端部
3b 抗屈曲エレメントの内側端部
4 ガイド突起
4a ガイド突起の外側端部
4b ガイド突起の内側端部
5 上経糸接結糸
6 下経糸接結糸
7 上面側経糸
8 下面側経糸
9 上面側緯糸
10 下面側緯糸
11 インナーロール
11a ロール端部
12 紙資料
13 資料供給口
14 資料取り出し口
15 経糸接結糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂フィラメントで製織した織物からなる無端状織物と、この無端状織物の巾方向耳部の少なくとも一端に配設した抗屈曲エレメントと、ガイド突起とからなる脱水、濃縮用ベルトにおいて、織物が上下に配置した上面側緯糸と下面側緯糸を接結する経糸接結糸を有する二層織物であって、少なくとも上面側経糸と下面側経糸のいずれかを配置し、前記抗屈曲エレメントはエーテル系またはエステル系のポリウレタン樹脂で構成され、巾が30〜60mmであって、織物耳部の織物空間の85%以上にウレタン樹脂を充填することで抗屈曲エレメントを織物に取り付け、ガイド突起はエーテル系またはエステル系のポリウレタン樹脂から構成され、ガイド突起を抗屈曲エレメントが取り付けられた抗屈曲部に融着により取り付けたことを特徴とする脱水、濃縮用ベルト。
【請求項2】
二層織物が、上面側経糸と下面側経糸が上下に配置した経糸の組と、上経糸接結糸と下面側経糸とからなる上経糸接結糸の組及び/または下経糸接結糸と上面側経糸とからなる下経糸接結糸の組とから構成されたことを特徴とする請求項1に記載された脱水、濃縮用ベルト。
【請求項3】
二層織物が、上経糸接結糸と下面側経糸とからなる上経糸接結糸の組及び/または下経糸接結糸と上面側経糸とからなる下経糸接結糸の組とから構成されたことを特徴とする請求項1に記載された脱水、濃縮用ベルト。
【請求項4】
二層織物が、上面側経糸と下面側経糸が上下に配置された経糸の組と、上経糸接結糸と下経糸接結糸とからなる上下経糸接結糸の組とから構成されたことを特徴とする請求項1に記載された脱水、濃縮用ベルト。
【請求項5】
抗屈曲エレメントの外側端部を、織物の端部と同じか、それよりも外側に位置するように取り付けてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載された脱水、濃縮用ベルト。
【請求項6】
抗屈曲エレメントが、厚さ1〜3mmのウレタンシートであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載された脱水、濃縮用ベルト。
【請求項7】
抗屈曲エレメントの内側端部が直線状でないことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載された脱水、濃縮用ベルト。
【請求項8】
抗屈曲エレメントの内側端部が波形であることを特徴とする請求項7に記載された脱水、濃縮用ベルト。
【請求項9】
抗屈曲エレメントの内側端部と織物本体との境界に樹脂を塗布してなることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載された脱水、濃縮用ベルト。
【請求項10】
抗屈曲エレメントがウレタンシートであって、該ウレタンシートを織物に加熱圧着して織物内部に充填させて取り付けたことを特徴とする、請求項6ないし9のいずれか1項に記載された脱水、濃縮用ベルトの製造方法。
【請求項11】
合成樹脂フィラメントで製織した織物からなる無端状織物の耳部の少なくとも一端に、抗屈曲エレメントと、ガイド突起を融着により固着した、請求項1ないし9のいずれか1項に記載された脱水、濃縮用ベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−182663(P2007−182663A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329523(P2006−329523)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000229818)日本フイルコン株式会社 (58)
【Fターム(参考)】