説明

脱水装置、脱水システム及び脱水方法

【課題】 膜性能の向上を図った脱水システム及び脱水方法を提供する。
【解決手段】 脱水装置本体1内に、液体を通すための上下に延びる一以上の流路を有す
る水分離膜の下部に液体入口を、上部に液体出口を有してなる水分離膜部10と、該水分
離膜部の外側面と、装置本体内壁とで規定されるシェル部11とを備え、該液体の出口付
近の該シェル部に加熱手段12が設けられ、該液体の入口付近の該シェル部に減圧手段1
3との接続口14が設けられ、該液体が該水分離膜を上昇するにつれて、該液体中の水分
が、該水分離膜を透過してシェル部に移動し、該液体が脱水される脱水装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水装置、脱水システム及び脱水方法に関する。さらに詳しくは、水との共
沸組成を持つエタノールやプロパノールと水との混合物、あるいは酸と水との混合物など
を効率的に脱水することができる脱水装置、脱水システム及び脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油燃料を代替する燃料源として、エタノールが注目されており、その市場規模は、2
010年に5500万キロリットルと予測されている。しかし、メタノールを燃料として
採用するためには、トウモロコシ等のバイオ原料から得た粗製物を蒸留精製し、少なくと
も99.7wt%以上に脱水しなければならない。
従来、脱水にあたっては、希薄エタノール水溶液を、蒸留塔で蒸留することにより、エ
タノール/水系の共沸点近くまで濃縮し、次いで脱水するといったことが行われている。
【0003】
脱水するための手法としては、エントレーナを加え、共沸蒸留で脱水する方法がある。
しかし、この方法では、三成分系を共沸蒸留し、さらにエントレーナを回収するといった
工程を踏む必要があり、多大の熱エネルギーを必要とするといったような幾つかの欠点が
あった。
【0004】
また、モレキュラーシーブ槽を複数並列し、これらをバッチ切替しながら脱水する方法
もある。しかし、この方法でも、モレキュラーシーブ槽の再生に多大なエネルギーを消費
するという難点があった。
【0005】
さらに、膜分離器を用いたパーベーパレーション法膜分離により、完全に相互溶解する
液体混合物から水を分離する方法が知られている(特許文献1:特開平7−124444
号公報)。パーベーパレーション法膜分離は、相互溶解する液体混合物の分離において、
分離性のよさ、省エネルギーといった利点を有する。
【特許文献1】特開平7−124444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パーベーパレーション法膜分離は、エタノール燃料等の精製において有望な方法である
が、実用化に向けて、さらなる性能が求められている。特に、高純度のエタノール無水物
等をさらに高い効率で得ることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、チューブラ型またはモノリス型の水分離膜反応器を用いてパーベーパレ
ーション法膜分離を行った場合に、処理対象となる液体が、水分離膜反応器の入口から出
口に向かうにつれて、液体の温度が低下することを見出した。図7に、水分離膜反応器の
膜入口からの距離と、温度との関係を示す。液体温度の低下は、水分離膜の膜性能を表す
透過フラックス(単位はkg/m2h)の低下につながる。すなわち、水分離膜反応器の
後段である液体の出口付近で、膜性能が特に低下していることを見出し、本発明を完成す
るに至った。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、脱水装置であって、脱水装置本体内に、液体を
通すための上下に延びる一以上の流路を有する水分離膜の下部に液体入口を、上部に液体
出口を有してなる水分離膜部と、該水分離膜部の外側面と、装置本体内壁とで規定される
シェル部とを備え、該液体の出口付近の該シェル部に加熱手段が設けられ、該液体の入口
付近の該シェル部に減圧手段との接続口が設けられ、該液体が該水分離膜を上昇するにつ
れて、該液体中の水分が、該水分離膜を透過してシェル部に移動し、該液体が脱水される
ことを特徴とする。
【0009】
本発明の脱水装置は、他の形態においては、前記液体の出口付近のシェル部に不活性ガ
スの入口をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の脱水装置は、他の形態においては、脱水装置本体内に、液体を通すための上下
に延びる一以上の流路を有する水分離膜の下部に液体入口を、上部に液体出口を有してな
る水分離膜部と、該水分離膜部の外側面と、装置本体内壁とで規定されるシェル部とを備
え、該液体の出口付近の該シェル部に不活性ガス入口が設けられ、該液体の入口付近の該
シェル部に不活性ガス出口が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の脱水装置は、他の形態においては、脱水装置本体内に、液体を通すための上下に延びる一以上の流路を有する水分離膜の下部に液体入口を、上部に液体出口を有してなる水分離膜部と、該水分離膜部の外側面と、装置本体内壁とで規定されるシェル部とを備え、該水分離膜に一以上の加熱手段が設けられ、該液体の入口付近の該シェル部に減圧手段との接続口が設けられ、該液体が該水分離膜を上昇するにつれて、該液体中の水分が、該水分離膜を透過してシェル部に移動し、該液体が脱水されることを特徴とする。
【0012】
本発明の脱水装置は、他の形態においては、脱水装置本体内に、液体を通すための上下に延びる一以上の流路を有する水分離膜の下部に液体入口を、上部に液体出口を有してなる水分離膜部と、該水分離膜部の外側面と、装置本体内壁とで規定されるシェル部とを備え、該水分離膜に一以上の加熱手段が設けられ、該液体の出口付近の該シェル部に不活性ガス入口が設けられ、該液体の入口付近の該シェル部に不活性ガス出口が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明の脱水装置は、他の形態においては、前記液体の出口付近の前記シェル部に加熱手段がさらに設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の脱水装置は、他の形態においては、前記脱水装置本体内に、少なくとも二つの
前記水分離膜部が平行に設置され、ひとつの水分離膜部の液体の出口が、別の水分離膜部
の液体の入口に接続されている直列処理型であることを特徴とする。
【0015】
本発明の脱水装置は、他の形態においては、前記シェル部にバッフル板が設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明は、別の側面で、脱水システムであって、前述のいずれかに記載の脱水装置と、
該脱水装置の前段に設けられる液体の加熱手段と、該当する場合には、該脱水装置の前記
液体の出口付近のシェル部に接続された減圧手段とを備えてなることを特徴とする。
【0017】
本発明の脱水システムは、他の形態においては、前記脱水装置の後段に設けられる液体
の濃度分析装置をさらに備えてなることを特徴とする。
【0018】
本発明の脱水システムは、他の形態においては、前記脱水装置の前段に設けられ、前記
濃度分析装置に接続されている液体の流量調節装置をさらに備えてなることを特徴とする

【0019】
本発明の脱水システムは、他の形態においては、前記脱水装置が、並列に接続した二以
上の前記水分離膜部を有し、該脱水装置が二以上直列に接続されており、隣り合う前後の
二つの脱水装置を接続する管に、前段の脱水装置で回収された液体の混合機を備えてなる
ことを特徴とする。
【0020】
本発明は、別の側面で、脱水方法であり、液体を通すための上下に延びる一以上の流路
を有する水分離膜の下部入口から上部出口に向けて液体を流し、該水分離膜の外側を減圧
して、該液体中の水分を水分離膜に透過させる脱水方法であって、該水分離膜の外側にお
いて、該水分離膜の上部出口付近を加熱するとともに、該水分離膜の下部入口付近を減圧
吸引して、該水分離膜の外側に上部から下部への熱対流を発生させることを特徴とする。
【0021】
本発明の脱水方法は、他の形態においては、前記水分離膜の外側において、加熱した不
活性ガスを上部から下部へ流すことをさらに含むことを特徴とする。
【0022】
本発明の脱水方法は、他の形態においては、液体を通すための上下に延びる一以上の流
路を有する水分離膜の下部入口から上部出口に向けて液体を流し、該水分離膜の外側を減
圧して、該液体中の水分を水分離膜に透過させることによる脱水方法であって、該水分離
膜の外側において、加熱した不活性ガスを上部から下部へ流して、該水分離膜の外側に上
部から下部への対流を発生させることを特徴とする。
【0023】
本発明の脱水方法は、他の形態においては、液体を通すための上下に延びる一以上の流路を有する水分離膜の下部入口から上部出口に向けて液体を流し、該水分離膜の外側を減圧して、該液体中の水分を水分離膜に透過させる脱水方法であって、該水分離膜の内側において、該水分離膜を加熱するとともに、該水分離膜の下部入口付近を減圧吸引して、該水分離膜の外側に上部から下部への熱対流を発生させることを特徴とする。
【0024】
本発明の脱水方法は、他の形態においては、脱水された液体中の無水物または水分濃度
を測定し、該濃度に応じて、前記水分離膜に流す液体の量を調節する工程をさらに含むこ
とを特徴とする。
【0025】
本発明の脱水方法は、他の形態においては、前記水分離膜を二以上並列し、各分離膜で
脱水を行う工程と、各水分離膜から回収された液体を混合する工程と、混合された液体を
さらに水分離膜を用いて脱水する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、水分離膜部後段における液体温度の低下を防止することにより、水分
離膜部後段における膜分離性能を増大させ、全体として高い脱水性能を実現する脱水装置
、脱水システムおよび脱水方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明に係る脱水装置、脱水システム及び脱水方法について、その実施の形態
を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0028】
図1に、本発明に係る脱水装置の一実施の形態を示す。
図1に示す脱水装置は、主たる構成要素として、脱水装置1本体内に、水分離膜部10
と、シェル部11と、加熱手段12と、真空ダクト14とを備え、脱水装置本体には減圧
装置13が接続される。
【0029】
図1Aは本発明に係る脱水装置1の概念図であり、図1Bは、図1AのA−Aにおける
断面である。水分離膜部10は、水分離膜10dから構成されており、液体の入口10a
が下端に、出口10bが上端にあって、その内部には液体の流路10cとして、液体を通
すための上下に延びる一以上の中空部が形成されている。シェル部11は、水分離膜部1
0の側面の周囲に位置する。シェル部11内の上方であって、液体の出口10b付近には
、加熱手段12が設けられている。いっぽう、シェル部11の下方であって、液体の入口
10a付近には、真空ダクト14が設けられている。真空ダクト14は減圧装置13に接
続されている。
【0030】
水分離膜部10は、液体を無水物と水とに分離する。かかる水分離膜部10としては、
様々な形態のものが知られており、市販されている。本実施形態による水分離膜部として
は、一例として、モノリス型のものと、チューブラ型の水分離膜部を用いることができる

【0031】
図8Aおよび図8Bにモノリス型の水分離膜部110の例を挙げて説明する。図8Bは
、図8AのC−Cにおける断面である。モノリス型の水分離膜部は、円柱状の水分離膜1
10dに液体を通すための上下に延びる一以上の中空部である液体の流路110cを複数
設けたものである。通常、かかる形態の水分離膜においては、水分離膜内部の液体の流路
110cを、膜の一次側、または供給側といい、水分離膜110dの外側を、膜の二次側
、または透過側とよぶ。
【0032】
このような水分離膜部を用いたパーベーパレーション法膜分離においては、水分離膜部
110を、好ましくは流路の方向が鉛直方向と平行になるように設置する。そして、水分
離膜部110の透過側を減圧しながら、鉛直方向下側の入口110aから液体を供給し、
重力と逆の向きに流して、鉛直方向上側の出口110bから液体を排出する。かかる操作
により、液体中の水が、水蒸気となって、円柱状の水分離膜110dの側面から、透過側
に引き抜かれる。その結果、水分離膜部出口110bから回収される液体は、脱水された
ものとなっている。
【0033】
図示したモノリス型の水分離膜部110は、概略的なものであるが、一例として、直径
が30mmの円柱状の水分離膜に対して、直径が3mmの穴を30個設けた水分離膜部を
用いることができる。別の例として、直径が150〜200mmの水分離膜部に対して、
直径が2mmの穴を200個設けた水分離膜部を用いることができる。水分離膜部の長さ
は、所望の膜性能に応じて当業者が適宜決定することができるが、一例として、150m
mから1mのものを用いることができる。
【0034】
別の例として、図9Aおよび図9Bにチューブラ型の水分離膜部を挙げて説明する。図
9Bは、図9AのD−Dにおける断面である。チューブラ型の水分離膜部210は、内部
に液体の流路210cがひとつだけ設けられた管状の水分離膜210dである。チューブ
ラ型の水分離膜部210も、その設置態様および作用効果は、モノリス型の水分離膜部と
同様である。チューブラ型の水分離膜部の一例としては、外径が10mm、内径が7mm
のものを用いることができ、別の例としては、外径が30mm、内径が22mmのものを
用いることができる。長さは、一例として、150mmから1mのものを用いることがで
きる。
【0035】
水分離膜部を構成する水分離膜の材質としては、無機材でナノオーダーまたはそれより
小さい孔径が精密に制御された微細孔多孔膜を用いることができる。微細孔多孔膜は、小
分子ガスを通し、大分子ガスを排除する分子ふるい効果を発現し、その透過係数は温度上
昇とともに増加する活性化拡散の挙動を示す。微細孔多孔膜の例としては、炭素膜、シリ
カ膜、ゼオライト膜が挙げられる。本実施形態においては、水分離膜としては、細孔径1
0オングストローム以下のシリカ系又はゼオライト系の無機水分離膜が好適である。
【0036】
また、特許第2808479号記載の無機水分離膜も適用可能である。該特許第280
8479号の無機水分離膜は、無機多孔体の細孔内に、エトキシ基又はメトキシ基を含む
アルコキシシランの加水分解を経て得られたシリカゲルを担持することによって得られる
耐酸性複合分離膜である。
【0037】
水分離膜部の形態、サイズ、および材質は、使用目的に応じて当業者が適宜選択するこ
とができる。
【0038】
シェル部11は、水分離膜部10の周囲にあって、水分離膜の透過側にあたり、水分離
膜部10の側面から放出される水蒸気51の流路となる部分である。本実施形態において
、シェル部11は、水分離膜部10の側面と、脱水装置1本体の内壁とにより規定される
空間部分である。シェル部11は、水分離膜部10に供給する前の液体、または水分離膜
部10から回収される液体50が流れ込むことがないように構成されている。
【0039】
シェル部11内部の上方であって、水分離膜部10の液体出口10b付近には、加熱手
段12が設けられている。出口10b付近とは、水分離膜部10の出口10bを通過する
液体を所望の温度に加熱することができる程度に近い場所をいう。加熱手段は、好ましく
は出口10b付近の周囲に設置するが、一部に設置してもよい。加熱手段12は、水分離
膜部10の出口付近の液体および、水分離膜部10からシェル部11に放出された水蒸気
51を加熱する。加熱手段12としては、電熱ヒータやスチームなどの一般的なものを用
いることができる。水分離膜部10を流れる液体50を、共沸点に達しない共沸点付近に
まで、あるいは共沸点のない酢酸などと水の混合物の場合は100〜150℃まで加熱す
ることができるものであればよい。
【0040】
シェル部11の下方であって、水分離膜部10の入口10a付近には、真空ダクト14
が設けられる。真空ダクト14は、減圧装置13に接続するための接続口となる。真空ダ
クト14から、シェル部11に放出された水蒸気51を回収する。真空ダクト14は、図
示するように横向きに設けられてもよく、鉛直方向下向きに設けられてもよく、その向き
が限定されるものではないが、シェル部11の最下面であって、加熱手段12から遠い箇
所に設けられることが好ましい。シェル部11の一番下まで熱を対流させるためである。
また、真空ダクト14は、複数ではなく、一つだけ設けることが好ましい。加熱手段12
から真空ダクト14への一方向への、水蒸気51及び熱の対流を形成するためである。し
かし、実質的に一方向への水蒸気51及び熱の対流を形成することができる位置、向きで
あれば、複数の真空ダクト14を設けることもできる。
【0041】
減圧装置13は、シェル部11を減圧して、水分離膜部10から放出された水蒸気を吸
引する手段である。圧力を、10〜100torr(1333.22〜13332.2P
a)程度にまで減圧するものであればよく、通常の減圧ポンプ等を用いることができる。
【0042】
次に、本実施の形態に係る脱水装置1により液体を脱水する方法の一形態を説明する。
本実施の形態に係る脱水装置1の対象とする液体は、一般的には、水と相互溶解する液体
と、水との混合物である。具体的には、エタノールと水との混合物、プロパノールと水と
の混合物、又は酢酸などの酸と水との混合物が挙げられる。本実施形態にかかる方法によ
れば、これらを、例えば燃料用途に好適な99.7%の無水物にまで脱水し、または半導
体基板洗浄用途の99.99%以上にまで脱水する。液体は、原料となる混合物を、蒸留
塔やアルコール選択膜で処理して、アルコールまたは酸の濃度を、80〜95wt%とし
たものである。なお、処理対象となる液体は、加圧した液体であってもよい。加圧した液
体を用いることで、本実施の形態に係る脱水装置1に供給する液体をガス化させることな
く、液体の温度を上げることができる。この場合、例えば、1.5atmから10atm
、好ましくは2atmから3atmに加圧した液体を用いることができる。以下、燃料と
して有用なエタノールと水との混合物を液体の一例として脱水方法を説明する。本実施の
形態に係る脱水装置に供給する液体におけるエタノール濃度は、好ましくは、95wt%
である。
【0043】
図1に示すように、95wt%のエタノールと、5wt%の水との混合物である液体5
0を熱交換器で昇温した後、水分離膜部10の液体入口10aから供給する。液体50の
水分離膜部10への供給流速は、0.5〜1m/secとすることが好ましい。しかし、
供給流速は、透過フラックスとの関係で、当業者が適宜決定することができる。また、液
体50の供給時の温度は、エタノールと水との共沸点に近いが共沸点(約80℃)未満で
ある70℃から80℃未満とすることが好ましい。液体50の温度が高いほど、透過フラ
ックスが大きくなり、膜性能が上がるいっぽうで、共沸点より高い温度では、液体50の
一部が気化し、蒸発潜熱を奪うためである。
【0044】
水分離膜部10に50液体を供給するとき、シェル部11を減圧する。このとき、シェ
ル部11の圧力が、10〜100torr(1333.22〜13332.2Pa)程度
となるように減圧することが好ましい。水分離膜の供給側と透過側の差圧により分離を促
進するためである。減圧は、シェル部11下方に設けた真空ダクト14より行う。シェル
部11の上方では、加熱手段12により水分離膜部10の出口付近を加熱する。液体50
が共沸点付近であって共沸点未満になるまで加熱することが好ましい。具体的には、液体
が70℃から80℃未満となるように加熱することが好ましい。
【0045】
液体50は、水分離膜部10の下から上へ流路10cを流れる。このあいだに、液体5
0中の水が、分離膜10dを介してシェル部11へ水蒸気51として取り出される。水の
気化により液体51は、随時気化熱を奪われるが、出口10b付近が加熱されているため
温度が低下することなく保たれる。したがって、出口10bから回収される液体50は、
温度は供給時と同程度で、含有水濃度が低下したものとなっている。
【0046】
シェル部11へ放出された水蒸気51は、シェル部11の上方から下方へと対流する。
これは、シェル部11上方を加熱していると同時に、シェル部11下方から減圧吸引して
いるためである。水蒸気51は、図1Bに示すように、ダクト14に向かって対流しなが
ら、分離膜10dを介して流路10c内の液体50を昇温する。そして、水蒸気51はシ
ェル部11下方の真空ダクト14から回収される。回収された水蒸気51は、その後段で
、熱交換器等の冷却器で凝縮される。図1には、二つの加熱手段12が設けられている形
態を示したが、ダクト14からいちばん遠い位置、すなわち図1Aのシェル部11の左上
に一つの加熱手段が設置されれば、図1Aのシェル部11の右下のダクト14まで、熱が
対流することとなる。
【0047】
本実施形態では、説明を簡単にするため、一つの水分離膜部10を備える脱水装置1の
形態を図示したが、本発明にかかる脱水装置は、脱水装置本体内に複数の水分離膜部を並
列に接続して備えるものであってもよい。この場合、複数の水分離膜部は、脱水装置本体
内に平行に設置する。すなわち、複数の水分離膜部の液体入口10aが装置本体内で略同
じ高さに位置し、同様に、複数の水分離膜部の液体出口10bが略同じ高さに位置するこ
とになる。そして、加熱手段は、各水分離膜部の出口付近を、いずれも同じ温度にまで加
熱昇温することができるような位置、態様で設けることができる。そして、かかる形態に
おいても、シェル部11は、脱水装置本体の内壁と、複数の水分離膜部10の外側面とで
規定される一つの連続した空間となっていて、その内部を熱および水蒸気が上部から下部
に向けて対流することができる。脱水装置本体内に複数の水分離膜部を並列に接続して設
けることにより、一つの脱水装置にて一度に処理する液体の量を増やすことができる。
【0048】
図1に示す本実施の形態にかかる方法によれば、液体を水分離膜部10の出口付近で加
熱することにより、膜性能を上げることができる。
膜性能は、透過フラックスで評価することができ、透過フラックスは温度に比例するこ
とが知られている。本実施形態において好ましく用いられる水分離膜は、約40℃から約
80℃まで変化させると、透過フラックスが約3倍まで増加する。液体を、水分離膜部1
0の入口10aから出口10bに至るまで70℃から80℃未満に保持することによって
、水分離膜部10の全ての箇所で、高い透過フラックスを得ることができ、膜性能を高め
ることができる。具体的には、従来技術と比較して、透過フラックスを約50%上げるこ
とができる。そして、液体中のエタノール濃度が、燃料に適する99.7wt%以上とな
るまで脱水することができる。
【0049】
次に、図2に本発明に係る脱水装置の他の実施の形態を示す。
本実施の形態では、シェル部11の上方に不活性ガス入口15を備え、加熱手段が設け
られていない。また、シェル部11の下方には不活性ガス出口となる排気ダクト14を備
え、排気ダクトに減圧装置は接続されていない。他の構成要素は、図1について説明した
実施の形態と同様であり、同一番号を付した構成要素は、同一の構成・作用を持つ。
【0050】
本実施の形態にかかる脱水装置101を用いたエタノールと水との混合物の脱水方法に
おいて、不活性ガス52を、不活性ガス入口15から供給する。不活性ガス52としては
、一例として、窒素、アルゴンなどを用いることができる。供給される不活性ガス52の
流速は、例えば、5〜15m/secとすることが好ましい。しかし、かかる速度は、シ
ェル部11の容積との関係で当業者が適宜決定することができる。不活性ガス52は、脱
水装置101の外部に設けられた加熱手段19により加熱、昇温することができる。供給
時の不活性ガス52の温度は、出口10b付近の液体温度を70から80℃未満に昇温で
きる温度とすることができる。
【0051】
高温でシェル部11に供給された不活性ガス52は、水分離膜10dを介して出口10
b付近を流れる液体50を昇温する。そして、不活性ガス52はシェル部11を上から下
へ流れ、排気ダクト14から回収される。このとき、シェル部11において上方から下方
へ向かう、不活性ガス52および熱の対流が形成される。分離膜10dから放出される水
蒸気51は、この対流により、不活性ガス52といっしょに排気ダクト14から回収され
る。
【0052】
また、図2に示した本発明に係る脱水装置の変形形態として、不活性ガス52の加熱手
段を、脱水装置101本体の外部ではなく、脱水装置101本体内部のシェル部11の上
方に備えることもできる。
【0053】
図2に示した本発明に係る脱水装置の別の変形形態として、脱水装置101のシェル部
11の上方に加熱手段をさらに備え、ダクトに減圧装置を接続した形態の脱水装置とする
こともできる。かかる脱水装置を用いた脱水方法において、不活性ガスを不活性ガス入口
15からシェル部に供給する。このとき、不活性ガスの流速は、例えば、0.1〜5m/
secとすることが好ましく、0.1〜1m/secとすることがより好ましい。同時に
、減圧装置によりシェル部を減圧する。このとき、シェル部の圧力が、10〜100to
rr(1333.22〜13332.2Pa)程度となるように減圧することが好ましい

【0054】
図2に示した本発明に係る脱水装置およびその変形形態によれば、シェル部11へ不活
性ガス52を供給することにより、シェル部11において上方から下方へ向かう、不活性
ガス52及び水蒸気51の対流および熱の対流を形成して、水分離膜部10の出口10b
付近で液体50を昇温することができ、図1にかかる実施の形態と同様の効果が得られる

【0055】
次に、図3に本発明に係る脱水装置の他の実施の形態を示す。
本実施の形態では、複数の水分離膜部10が脱水装置201本体内に平行に配置され、
一の水分離膜部10の出口10bと別の水分離膜部10の入口10aとが、管17によっ
て直列に接続されている直列処理型である。複数の水分離膜部10を脱水装置201本体
内に平行に設置することにより、全ての水分離膜部10の入口10aが脱水装置201の
下方の略同じ高さに位置し、出口10bが脱水装置201の上方の略同じ高さに位置する
。したがって、各水分離膜部10の入口10a付近のシェル部11にダクト14が位置し
、出口10b付近のシェル部11に加熱手段12が位置している。直列に接続する水分離
膜部10の数は、例えば、3〜5とすることができる。しかし、各水分離膜部10の仕様
や性能、処理対象となる液体の所望の純度によって、当業者が接続する数を適宜決定する
ことができる。
【0056】
各水分離膜部10の前段の管17には、好ましくは、熱交換器19を設ける。複数の水
分離膜部10が図示するような位置関係で設置されているため、熱交換器19は、脱水装
置201本体の外側に一つだけ設け、複数の管17をいっしょに加熱、昇温することがで
きる。
【0057】
本実施の形態にかかる脱水装置201を用いたエタノールと水の混合液体の脱水方法に
おいて、ある水分離膜部10の出口10bから回収された液体50を、別の水分離膜部1
0の入口10aに供給し、次いでまた別の水分離膜部10の入口10aに供給する。この
とき、水分離膜部10から回収された液体50を、好ましくは熱交換器19等で冷却防止
し、又は昇温してから次の水分離膜部10に供給する。各水分離膜部10は、図1にかか
る実施の形態と同様にシェル部11の加熱手段12により、出口10b付近が加熱される
。これにより、直列に接続された各水分離膜部10を流れる液体50は、すべて、エタノ
ールの共沸点付近であって、共沸点未満の温度に保持される。したがって、各水分離膜部
10において図1にかかる実施の形態と同様の効果が得られる。そして、そのような水分
離膜部10が直列に複数接続されていることで、全体としてより高い膜性能が得られ、液
体を純度の高いエタノールにまで脱水することができる。
【0058】
次に、図4Aおよび4Bに本発明に係る脱水装置の他の実施の形態を示す。図4Bは、
図4AをB−Bで切断した断面図である。
本実施の形態では、図4Aに示すように、図1に示す脱水装置のシェル部11にさらに
バッフル板18が設けられている。バッフル板18は、熱交換器で用いられる通常のもの
を用いることができる。また、その数は、脱水装置の規模に応じて設計的に数を変更する
ことができる。
【0059】
本実施の形態にかかる脱水装置301を用いた脱水方法において、図4Aおよび4Bに
示すように、水蒸気51はバッフル板により規定された流路を流れていく。シェル部11
を流れる水蒸気51は、バッフル板18を設けることで、流路が長くなり、流速が上昇す
ることになる。これによりシェル部11の伝熱量を上げることができる。そして、水蒸気
51は、水分離膜部10を流れる液体をシェル部11から昇温しながらダクト14から回
収される。このように、伝熱量の上昇により、液体50を効率的に昇温し、膜性能を高め
ることができる。
【0060】
次に、図10Aおよび図10Bに本発明に係る脱水装置の他の実施の形態を示す。図10Bは、図10AのE―Eにおける断面である。
本実施の形態では、図10Aおよび図10Bに示すように、水分離膜部に一以上のヒータ20が液体の流路10cと平行方向に設置される。各ヒータ20は脱水装置401本体の外部に設けられたヒータ本体21と接続される。シェル部11の上方には加熱手段は設けられていない。他の構成要素は、図1について説明した実施の形態と同様であり、同一番号を付した構成要素は、同一の構成・作用を持つ。本実施形態においては、ヒータ20が水分離膜部10に組み込まれていることを特徴とする。
【0061】
ヒータ20は棒状であり、ヒータ本体21はヒータ20を加熱するための装置である。ヒータ20とヒータ本体21は加熱手段を構成する。ヒータ本体21は、脱水装置401の外側またはシェル部11に設けられ、各ヒータ20と接続される。ヒータとしては、電熱ヒータやスチーム熱交換器などの一般的なものを用いることができる。ヒータの材質は、鉄、銅、ステンレス等を用いることができるがこれらに限定されない。ヒータ20の材質は水分離膜の材質に悪影響を与えないものであることが好ましい。ヒータ20のサイズは直径0.1mmから10mm、長さ10mmから2mのものを用いることができる。水分離膜部10に設置されるヒータの本数は1本から2000本とすることができるが、これに限定されない。
【0062】
水分離膜部10におけるヒータ20の設置位置は、流路10cを流れる液体の温度を所望の温度に加熱できるものであればよい。図10Aにおいて、ヒータは水分離膜部の下端10aまで達していないが、下端10aまで達していてもよい。ヒータは水分離膜部上端10bから全長の2分の1の位置に設置されていてもよい。好ましくは、上端10bから全長の3分の1から4分の1までの位置である。ヒータの材質、サイズ、および本数は、水分離膜部の性能および使用目的に応じて当業者が適宜変更することができる。
【0063】
図11Aおよび図11Bに本実施形態に係るモノリス型の水分離膜部310の例を挙げて説明する。図11Aは平面図であり、ヒータ本体21およびヒータ20とヒータ本体21との接続手段は図示していない。図11Bは、図11AのF―Fにおける断面である。同一番号を付した構成要素は、同一の構成・作用を持つ。本実施形態に係るモノリス型の水分離膜部は、図8に示す水分離膜部310の水分離膜310dに、ヒータ20が液体の流路310cと平行方向に設置される。これにより、流路を流れる液体が加熱、昇温され、高い膜性能が得られる。本実施形態に係るモノリス型の水分離膜部の一例としては、図8で説明したのと同様に、直径30mm、長さ150mmであり、直径3mmの穴が30個設けられており、直径が3.0mm、長さ50mmのヒータ20が水分離膜部の上端310bから50mmまでの位置に3本設置され、200℃に加熱されるものを用いることができるが、これに限定されない。
【0064】
水分離膜部310の製造過程において、ヒータ20を水分離膜310dに設置することにより得た水分離膜部を適用することもできる。
【0065】
本実施形態に係るモノリス型の水分離膜部の別の例としては、図12Aおよび図12Bに示すように、ヒータ20は水分離膜410dに設置されるのではなく、液体の流路410c中に挿入されたものを用いることもできる。図12Bは、図12AのG−Gにおける断面である。ヒータ20が流路410c中に設置される場合は、ヒータ20が設置された流路410cには液体50は流れ込まないように構成される。ヒータ20の直径および流路410cの直径は図示した寸法には限定されない。本実施形態による加熱の効果が達成される限り、ヒータ20と流路410cの内壁との間に空隙があってもよい。具体的には、ヒータ20と流路410cの内壁との間の隙間は0.1mmから2.0mmあってもよい。一例としては、図8で説明したのと同様に、直径30mm、長さ150mmの水分離膜部に設けられた直径3mmの30個の穴のうち9個の穴に、直径0.5mm、長さが50mmのヒータ20が水分離膜部の上端410bから50mmまでの位置に設置され、200℃に加熱されるものを用いることができるが、これに限定されない。
【0066】
別の例として、図13Aおよび図13Bに本実施形態に係るチューブラ型の水分離膜部510の例を挙げて説明する。図13Bは、図13AのH―Hにおける断面である。本実施形態に係るチューブラ型の水分離膜部510は、図9Aおよび図9Bに示す水分離膜部210の水分離膜210dに、ヒータ20が液体の流路510cと平行方向に設置される。その設置態様および作用効果は、図11のモノリス型の水分離膜部と同様である。本実施形態におけるチューブラ型の水分離膜部510の一例としては、図9で説明したのと同様に、外形10mm、内径7mm、長さ150mmの水分離膜部の水分離膜510dに、直径3.0mm、長さ50mmのヒータ20を上端510bから50mmまでの位置に1本設置し、200℃に加熱するものを用いることができるが、これに限定されない。
【0067】
本実施形態に係るチューブラ型の水分離膜部510はモノリス型の水分離膜部310と同様の方法によって製造されたものを適用することができる。
【0068】
本実施形態に係る脱水装置401を用いたエタノールと水との混合物の脱水方法において、水分離膜部に設置したヒータ20は水分離膜の内側において分離膜を介して流路10cを流れる液体50を昇温する。ヒータ20は液体50の温度を70から80℃未満に昇温できる温度とすることができる。膜内部から加熱することにより、効率的に液体を昇温し、水分離膜部後段においても高い膜性能を得ることができる。水分離膜10dからシェル部へ放出される水蒸気51及び熱は、シェル部11の下方において減圧吸引しているため、シェル部11の上方から下方へ対流し、真空ダクト14から回収される。シェル部の圧力は10〜100torr(1333.22〜13332.2Pa)程度となるように減圧することが好ましい。本実施形態に係る脱水装置401により効率的に液体50を昇温することができ、単位膜面積あたりの脱水量が増加するという利点が得られる。
【0069】
次に、図5に、本発明に係る脱水システムの一実施の形態を示す。
図5の脱水システムは、主たる構成要素として、脱水装置1と、液体中の無水物または
水分の濃度分析装置2と、流量調節装置3と、熱交換器と、減圧装置13とを備えている
。無水物または水分の濃度分析装置2は脱水装置1の後段に設けられている。流量調節装
置3は脱水装置1の前段に設けられている。そして、無水物または水分の濃度分析装置2
と流量調節装置3とが接続されている。熱交換器は、脱水装置1の前段であって、流量調
節装置3の後段に設けられている。減圧装置13は脱水装置1に接続されている。
【0070】
脱水装置1は、図1から図4について説明した任意の実施の形態のものとすることがで
き、同一の構成・作用を持つ。なお、図5に示した脱水装置1は模式的なものであって、
液体の流れの向きや、複数の水分離膜部の設置方向や入口及び出口の位置を正確に示した
ものではない。
無水物または水分の濃度分析装置2は、脱水装置1から回収された液体50中の、無水
物または水分の濃度を測定することにより、脱水の効果を測定するものである。具体的に
は、ガスクロマトグラフィー分析装置、密度計などを用いることができる。オンラインで
測定することができるものが好ましい。
流量調節装置3は、脱水装置1に供給する液体50の量を調節する。流量調節装置3は
無水物または水分の濃度分析装置2からの濃度情報に応じて、脱水装置1に供給する液体
50の量を増減させるように、バルブ4をコントロールするものを使用することができる

【0071】
次に、本実施の形態に係る脱水システムにより、エタノールと水の混合物である液体を
脱水する方法の一形態を説明する。
図5に示すように、95wt%のエタノールは、熱交換器を経て昇温され、脱水装置1
に送られる。脱水装置1では、液体50から水が分離され、エタノール濃度が高くなった
液体が回収される。脱水装置1の後段の無水物または水分濃度分析装置2であるガスクロ
マトグラフィーでは、回収された液体50中のエタノール濃度を測定する。エタノール濃
度の測定は、オンラインで随時行う。そして、ガスクロマトグラフィーは、測定結果を、
ガスクロマトグラフィーに接続されている流量調節装置3に送信する。流量調節装置3で
は、エタノール濃度の測定結果に応じて、脱水装置1に供給する液体50量を調節する。
具体的には、エタノール濃度が低いときには、脱水装置1に供給する液体50量を低減さ
せるようにする。かかる操作により、脱水装置1出口のエタノール濃度をモニタリングし
、流量調節装置3にフィードバックすることで、安定した品質のエタノールを得るシステ
ムを実現することが可能となる。
【0072】
図5に示す本実施形態の変形形態として、濃度分析装置2のみを含み、流量調節装置を
含まない脱水システムとすることもできる。このとき、ガスクロマトグラフィーなどの濃
度分析装置は、回収されるエタノールの濃度を単にモニタリングすることができ、場合に
より、例えば水分離膜の取替え時期の指標を得ることができる。
【0073】
図5に係る実施の形態およびその変形形態によれば、濃度分析装置2を備えることによ
り、脱水装置1出口でのエタノールなどの無水物の濃度または水分の濃度を検出すること
ができるため、安定した脱水システムとすることができる。
【0074】
次に、図6に、本発明に係る脱水システムの別の実施の形態を示す。
図6の脱水システムは、主たる構成要素として、第一の脱水装置1と、第二の脱水装置
1と、混合機5とを備えている。隣り合う二つの脱水装置1は、管で直列に接続されてい
る。そして、混合機5は、第一の脱水装置の後段であって、第二の脱水装置の前段に設け
られる。
【0075】
脱水装置1は、図1から図4について説明した任意の実施の形態のものとすることがで
き、同一の構成・作用を持つ。特に、図6の脱水システムにおいては、第一の脱水装置1
が、装置本体内に複数の水分離膜部10を並列に備るものである。
混合機5は、第一の脱水装置1から回収された、脱水された液体を混合するものである
。混合機5としては、たとえば、管中に設けられた羽根状のものを用いることができる。
【0076】
次に、本実施の形態に係る脱水システムにより、エタノールと水の混合物を脱水する方
法の一形態を説明する。
図6に示すように、95wt%のエタノールを含む液体50は、熱交換器を経て昇温さ
れた後、第一の脱水装置1に送られる。第一の脱水装置1では、各水分離膜部で液体50
から水が水蒸気51として分離され、エタノール濃度が高くなった液体50が回収される
。液体50は、各水分離膜部の個体差によりエタノール濃度が異なる場合がある。これら
の液体50は、次いで、一つの管に集められて混合機5に供給される。そして、混合機5
で十分に混合され、均一の濃度になって、第二の脱水装置1に供給される。第二の脱水装
置1では、液体50からさらなる水が水蒸気51として分離され、さらに純度の高い無水
エタノールが回収される。
【0077】
本実施形態の変形形態として、三以上の脱水装置1が管で直列に接続されているもので
あってもよい。この場合も、同様に二段目以降の各脱水装置の前段に混合機が設けられる
。また、本実施の形態に係る脱水システムでは、濃度測定装置2及び流量調節装置3を含
まないものであってもよい。また、脱水装置1が減圧装置に接続される代わりに、図2に
示すような不活性ガスを流す形態のものであってもよい。
【0078】
図6にかかる実施の形態およびその変形形態によれば、混合機5を備えることにより、
複数の水分離膜部を備える脱水装置1において生じうる、各水分離膜部から回収される液
体50の無水物濃度のばらつきをなくし、均一化したうえで、次の脱水装置1に送ること
ができる。かかる操作をしないと、第一の脱水装置での脱水が無駄になってしまう場合が
ある。例えば、ある水分離膜部では、回収されたあとの液体の無水物濃度が目的濃度以上
の99.9%にまで脱水されており、別の水分離膜部では目的濃度に達しない97.0%
にまでしか脱水されなかった場合、混合機5がないと、それらは、そのままの濃度で第二
の脱水装置に供給することになる。このとき、無水物濃度が99.9%の液体を二段目の
水分離膜部に供給し、脱水しても、大きな脱水効果が得られることはなく、かかる処理が
無駄になってしまう一方、無水物濃度が97.0%の液体を二段目の水分離膜部に供給し
、脱水しても、目的濃度に達することができず、最終的に得られる無水物濃度が全体とし
て目的濃度に達しない場合がある。これに対し、混合機5で液体50中の無水物濃度を均
一化し、第二の脱水装置1に供給した場合、少なくとも無駄な工程は生じず、第一の脱水
装置1での脱水効果が次の脱水装置1で生かされることになる。このように、混合機5を
備えることで、一つの脱水装置1での脱水効果を確実に次の装置に反映させ、総合的な脱
水システムとしての安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る脱水装置の一実施の形態を説明する概念図である。
【図2】本発明に係る脱水装置の他の実施の形態を説明する概念図である。
【図3】本発明に係る脱水装置の他の実施の形態を説明する概念図である。
【図4】本発明に係る脱水装置の他の実施の形態を説明する概念図である。
【図5】本発明に係る脱水システムの一実施の形態を説明する概念図である。
【図6】本発明に係る脱水システムの他の実施の形態を説明する概念図である。
【図7】水分離膜の入口から出口までの液体の温度分布を示すグラフである。
【図8】本発明に係る水分離膜部の一実施の形態を説明する概念図である。
【図9】本発明に係る水分離膜部の他の実施の形態を説明する概念図である。
【図10】本発明に係る脱水装置の他の実施の形態を説明する概念図である。
【図11】本発明に係る水分離膜部の他の実施の形態を説明する概念図である。
【図12】本発明に係る水分離膜部の他の実施の形態を説明する概念図である。
【図13】本発明に係る水分離膜部の他の実施の形態を説明する概念図である。
【符号の説明】
【0080】
1、101、201、301、401 脱水装置
2 濃度測定装置
3 流量調節装置
4 バルブ
5 混合機
10、110、210、310、410、510 水分離膜部
10a、110a、210a、310a、410a、510a 液体の入口
10b、110b、210b、310b、410b、510b 液体の出口
10c、110c、210c、310c、410c、510c 流路
10d、110d、210d、310d、410d、510d 水分離膜
11 シェル部
12 加熱手段
13 減圧装置
14 ダクト
15 不活性ガス入口
16 不活性ガス供給手段
17 管
18 バッフル板
19 熱交換器
20 ヒータ
21 ヒータ本体
50 液体
51 水蒸気
52 不活性ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水装置本体内に、
液体を通すための上下に延びる一以上の流路を有する水分離膜の下部に液体入口を、上
部に液体出口を有してなる水分離膜部と、
該水分離膜部の外側面と、装置本体内壁とで規定されるシェル部と
を備え、
該液体の出口付近の該シェル部に加熱手段が設けられ、該液体の入口付近の該シェル部
に減圧手段との接続口が設けられ、
該液体が該水分離膜を上昇するにつれて、該液体中の水分が、該水分離膜を透過してシ
ェル部に移動し、該液体が脱水される脱水装置。
【請求項2】
前記液体の出口付近のシェル部に不活性ガスの入口をさらに備える請求項1に記載の脱
水装置。
【請求項3】
脱水装置本体内に、
液体を通すための上下に延びる一以上の流路を有する水分離膜の下部に液体入口を、上
部に液体出口を有してなる水分離膜部と、
該水分離膜部の外側面と、装置本体内壁とで規定されるシェル部と
を備え、
該液体の出口付近の該シェル部に不活性ガス入口が設けられ、該液体の入口付近の該シ
ェル部に不活性ガス出口が設けられている脱水装置。
【請求項4】
脱水装置本体内に、
液体を通すための上下に延びる一以上の流路を有する水分離膜の下部に液体入口を、上
部に液体出口を有してなる水分離膜部と、
該水分離膜部の外側面と、装置本体内壁とで規定されるシェル部と
を備え、
該水分離膜に一以上の加熱手段が設けられ、該液体の入口付近の該シェル部に減圧手段との接続口が設けられ、
該液体が該水分離膜を上昇するにつれて、該液体中の水分が、該水分離膜を透過してシェル部に移動し、該液体が脱水される脱水装置。
【請求項5】
脱水装置本体内に、
液体を通すための上下に延びる一以上の流路を有する水分離膜の下部に液体入口を、上部に液体出口を有してなる水分離膜部と、
該水分離膜部の外側面と、装置本体内壁とで規定されるシェル部と
を備え、
該水分離膜に一以上の加熱手段が設けられ、該液体の出口付近の該シェル部に不活性ガス入口が設けられ、該液体の入口付近の該シェル部に不活性ガス出口が設けられている脱水装置。
【請求項6】
前記液体の出口付近の前記シェル部に加熱手段がさらに設けられている請求項4または5に記載の脱水装置。
【請求項7】
前記脱水装置本体内に、少なくとも二つの前記水分離膜部が平行に設置され、ひとつの
水分離膜部の液体の出口が、別の水分離膜部の液体の入口に接続されている直列処理型で
ある請求項1から6のいずれかに記載の脱水装置。
【請求項8】
前記シェル部にバッフル板が設けられている請求項1から7のいずれかに記載の脱水装
置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の脱水装置と、
該脱水装置の前段に設けられる液体の加熱手段と、
該当する場合には、該脱水装置の前記液体の出口付近のシェル部に接続された減圧手段と
を備えてなる脱水システム。
【請求項10】
前記脱水装置の後段に設けられる液体の濃度分析装置をさらに備えてなる請求項9に記載の脱水システム。
【請求項11】
前記脱水装置の前段に設けられ、前記濃度分析装置に接続されている液体の流量調節装
置をさらに備えてなる請求項10に記載の脱水システム。
【請求項12】
前記脱水装置が、並列に接続した二以上の前記水分離膜部を有し、該脱水装置が二以上
直列に接続されており、隣り合う前後の二つの脱水装置を接続する管に、前段の脱水装置
で回収された液体の混合機を備えてなる請求項9から11のいずれかに記載の脱水システム。
【請求項13】
液体を通すための上下に延びる一以上の流路を有する水分離膜の下部入口から上部出口
に向けて液体を流し、該水分離膜の外側を減圧して、該液体中の水分を水分離膜に透過さ
せる脱水方法であって、
該水分離膜の外側において、該水分離膜の上部出口付近を加熱するとともに、該水分離
膜の下部入口付近を減圧吸引して、該水分離膜の外側に上部から下部への熱対流を発生さ
せる脱水方法。
【請求項14】
前記水分離膜の外側において、加熱した不活性ガスを上部から下部へ流すことをさらに
含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
液体を通すための上下に延びる一以上の流路を有する水分離膜の下部入口から上部出口
に向けて液体を流し、該水分離膜の外側を減圧して、該液体中の水分を水分離膜に透過さ
せることによる脱水方法であって、
該水分離膜の外側において、加熱した不活性ガスを上部から下部へ流して、該水分離膜
の外側に上部から下部への対流を発生させる脱水方法。
【請求項16】
液体を通すための上下に延びる一以上の流路を有する水分離膜の下部入口から上部出口に向けて液体を流し、該水分離膜の外側を減圧して、該液体中の水分を水分離膜に透過させる脱水方法であって、
該水分離膜の内側において、該水分離膜を加熱するとともに、該水分離膜の下部入口付近を減圧吸引して、該水分離膜の外側に上部から下部への熱対流を発生させる脱水方法。
【請求項17】
脱水された液体中の無水物濃度または水分濃度を測定し、該濃度に応じて、前記水分離
膜に流す液体の量を調節する工程をさらに含む請求項13〜16のいずれかに記載の脱水
方法。
【請求項18】
前記水分離膜を二以上並列し、各水分離膜で脱水を行う工程と、
各水分離膜から回収された液体を混合する工程と、
混合された液体をさらに水分離膜を用いて脱水する工程と
を含む請求項13〜16のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−253982(P2008−253982A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305646(P2007−305646)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】