説明

脱硫用活性炭素繊維ユニットおよび該活性炭素繊維ユニットを用いた脱硫装置

【課題】脱硫活性に優れ、使用水量に対する硫酸回収率が高い、高寿命な脱硫触媒用活性炭素繊維ユニットおよび該活性炭素繊維ユニットを用いた脱硫装置を提供する。
【解決手段】2種の形状の活性炭素繊維シートが複数積層されることにより、前記各活性炭素繊維シート間に多数の流路が形成されてなる脱硫用活性炭素繊維ユニットにおいて、前記流路を鉛直方向に対して傾斜させることにより、目的の脱硫用活性炭素繊維ユニットを構成する。また、この流路が鉛直方向に対して傾斜した脱硫用活性炭素繊維ユニットを触媒槽として用いることにより、目的の脱硫装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭や重油等の燃料を燃焼させるボイラ、ガスタービン、エンジンや焼却炉等から排出される排ガス中の硫黄酸化物(SOx)を除去するために好適に用いることのできる脱硫用活性炭素繊維ユニットおよび該活性炭素繊維ユニットを用いた脱硫装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、排ガス中のSOxを除去する装置として、活性炭素繊維に排ガス中のSOxを吸着させ、前記活性炭素繊維の触媒作用を利用して排ガス中に含まれる酸素により硫黄成分を酸化させ、これを水分に吸収させて硫酸として前記活性炭素繊維から除去する排煙脱硫装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この従来の脱硫装置は、図24に示すように、内部に活性炭素繊維層(ユニット)からなる触媒槽1001が収納された脱硫塔1002の下部導入口1003から硫黄酸化物を含有する排ガス1004を導入し、前記触媒層1001にて脱硫した排ガス1005を脱硫塔1002の上部排出口1006から取り出す構造の装置である。前記脱硫塔1002の内部には、前記触媒槽1001が収納されており、この触媒槽1001の上方に硫酸生成用の水の供給器である散水ノズル1007を備えるとともに、塔1002の下方側には前記下部導入口1003から供給された排ガス1004を整流化する分散穴1008aを有する整流板1008が配設されている。
【0004】
前記触媒槽1001は、図25に示すように、活性炭素繊維層1009を一単位(ユニット)として構成されている。この活性炭素繊維層1009は、平板状の平板活性炭素繊維シート1010と波板状の波板活性炭素繊維シート1011とが交互に積層され、間に形成される直線状に連通した空間が通路1012となって上下に延びた状態になっている。
【0005】
前記構成の脱硫装置では、散水ノズル1007から水が噴霧されて供給されるとともに、排ガス1004が下から送られ、活性炭素繊維層1009を流通した水は、硫酸を含み、径が数mm程度の滴となって落下する。排ガス1004は、平板活性炭素繊維シート1010および波板活性炭素繊維シート1011を交互に積層して形成された通路1012を流通するようになっているので、圧力損失の増大が抑制されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−144851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の脱硫装置では、触媒槽1001を構成する活性炭素繊維層1009における水の流路が上下に延びた構造となっている。この水の流路は、前述のように上下に流れるように設定されている。かかる水流路構造の活性炭素繊維層1009に上から水を噴射すると、上下に延びる水流路の流下抵抗が小さいため、噴射された水は、通路1012中を比較的早く流下してしまう。そのため、各活性炭素繊維シートの表面には、酸化硫黄を溶かし込む媒体である水分量が不足することになり、それにより活性炭素繊維層1009の脱硫活性が低下することになる。
【0008】
前記活性炭素繊維シートの表面水分の不足を補うために、散水ノズル1007から供給する水分量を増やすと、今度は、水分が過剰供給となり、それにより生成硫酸濃度が低下するという問題点が発生する。
【0009】
また、活性炭素繊維表面の水分量が不足しないように触媒槽の水分量を比較的多くした場合、前述のように硫酸濃度が薄くなるので、触媒槽ユニットを多段に積層し、上部ユニットから希硫酸溶液を下段のユニットにそのまま供給水として流すことにより生成硫酸の濃度を上げることが行われている。しかしながら、このような従来の多段構造の脱硫装置では、より下段の触媒槽ユニットに行くに従って流下する硫酸濃度が高くなる。その結果、特に最下段触媒槽の活性炭素繊維は高い濃度の硫酸に曝されることになり、早期に劣化してしまうという問題が発生する。
【0010】
さらに、活性炭素繊維層1009の通路1012は幅寸法が10mm、高さ寸法が5mm程度の比較的細い流路であるので、上下に延びる流路の途中に水膜や水壁が形成されることがあり、一旦、水膜や水壁が形成されると、その流路の水およびガスの流通が滞ってしまう。流通の滞った箇所以下の領域は脱硫処理を行えなくなり、その分だけ、活性炭素繊維層1009の脱硫率が低下することになる。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その課題は、脱硫活性に優れ、使用水量に対する硫酸回収率が高い、高寿命な脱硫触媒用活性炭素繊維ユニットおよび該活性炭素繊維ユニットを用いた脱硫装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明の第1の発明は、2種の形状の活性炭素繊維シートが複数積層されることにより、前記各活性炭素繊維シート間に多数の流路が形成されてなる脱硫用活性炭素繊維ユニットにおいて、前記流路が鉛直方向に対して傾斜していることを特徴とする脱硫用活性炭素繊維ユニットにある。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記流路の傾斜角度が鉛直方向に対して5°〜85°であることを特徴とする脱硫用活性炭素繊維ユニットにある。
【0014】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記2種の形状の活性炭素繊維シートの一方が平板形活性炭素繊維シートであり、他方が波板形活性炭素繊維シートであり、これらの間に形成される多数の流路が互いに平行であることを特徴とする脱硫用活性炭素繊維ユニットにある。
【0015】
第4の発明は、第1または第2の発明において、前記2種の形状の活性炭素繊維シートの両方が互いに平行な多数の溝を有してなる波板形活性炭素繊維シートであり、これら活性炭素繊維シートが隣接シート間で各シートが有する溝が互いに交差するように積層されており、それによって隣接シート間で互いに交差する多数の流路が形成されていることを特徴とする脱硫用活性炭素繊維ユニットにある。
【0016】
第5の発明は、第4の発明において、前記互いに交差する流路の一方の鉛直方向に対する角度Aが5°〜85°に調整されていることを特徴とする脱硫用活性炭素繊維ユニットにある。
【0017】
第6の発明は、第5の発明において、前記互いに交差する流路の一方の鉛直方向に対する角度Aが5°〜85°に調整されるとともに、他方の流路の鉛直方向に対する角度Bが355°〜275°に調整されていることを特徴とする脱硫用活性炭素繊維ユニットにある。
【0018】
第7の発明は、第1〜第6のいずれか一項に記載の脱硫用活性炭素繊維ユニットを脱硫触媒槽として用いる脱硫装置であって、前記脱硫用活性炭素繊維ユニット内の鉛直方向に対して傾斜した多数の流路に水を流す散水ノズルと、該散水ノズルから供給された水が流れる前記流路中に排ガスを流す排ガス供給手段と有することを特徴とする脱硫装置にある。
【0019】
第8の発明は、第7の発明において、前記散水ノズルが前記脱硫用活性炭素繊維ユニットの上部から水を流す位置に取り付けられていることを特徴とする脱硫装置にある。
【0020】
第9の発明は、第7の発明において、前記散水ノズルが前記脱硫用活性炭素繊維ユニットの側部から水を流す位置に取り付けられていることを特徴とする脱硫装置にある。
【0021】
第10の発明は、第7〜第9のいずれか一項の発明において、前記排ガス供給手段が前記散水ノズルの供給側と反対側から排ガスを装置内に流入させるものであることを特徴とする脱硫装置にある。
【0022】
第11の発明は、第7〜第9のいずれか一項の発明において、前記排ガス供給手段が前記散水ノズルの供給側と同一側から排ガスを装置内に流入させるものであることを特徴とする脱硫装置にある。
なお、前記散水ノズルの供給側と同一側とは、散水ノズルが前記第9の発明のように脱硫用活性炭素繊維ユニットの側部から流す場合であっても、前記第8の発明のように脱硫用活性炭素繊維ユニットの上部から流す場合であっても、装置の前面側を意味する。
【0023】
第12の発明は、第7〜第11のいずれか一項の発明において、前記脱硫触媒槽が複数個、縦方向または横方向に連接されてなり、各脱硫触媒槽間に該各脱硫触媒槽にて生成する硫酸を下流の脱硫触媒槽に流出させない仕切手段が設けられ、各脱硫触媒槽毎に生成硫酸を分取可能となっていることを特徴とする脱硫装置にある。
【発明の効果】
【0024】
前記構成の本発明は、以下のような効果を奏する。
すなわち、本発明の脱硫活性炭素繊維ユニットでは、水の流路が鉛直線に対して傾斜した構造となっている。かかる傾斜水流路構造の活性炭素繊維ユニットに上もしくは横からから水を噴射すると、傾斜した水流路の流下抵抗が大きいので、噴射された水は、水流路中を比較的ゆっくり流下する。そのため、各活性炭素繊維シートの表面には、酸化硫黄を溶かし込む媒体である水分量が常に適当量存在することになり、それにより活性炭素繊維の脱硫活性を常に適正な値に維持できる。
【0025】
また、前述のように、活性炭素繊維シートの表面には適当量の水分が存在するため、散水ノズルから供給する水分量を増やす必要がないので、ユニットへの供給水分量が過剰になることがなく、生成硫酸濃度が低下する虞がない。
【0026】
また、前述のように、活性炭素繊維表面に常に適正量の水分が供給され、活性炭素繊維ユニットの脱硫活性は良好に維持されるので、各ユニットでの生成硫酸濃度は比較的高くなる。そのため、ユニットを多段にした場合、続けて下段に希硫酸水溶液を流す必要がなく、各段のユニット毎に生成硫酸を分取可能となる。各段毎に生成硫酸を分取することによって、下段の活性炭素繊維を濃硫酸によって劣化させる虞がなくなり、使用する活性炭素繊維の長寿命化を図ることができる。
【0027】
さらに、活性炭素繊維ユニットの流路は傾斜しているので、水の流れが緩やかになり、急速に流れる場合に、流路の後半に生じやすい水壁(水膜)発生による流路目詰まりを回避することができる。また、隣接する活性炭素繊維シート間で流路が交差する構成では、各流路は隣接流路と交差部分で連通しており、いわば各流路は次々に枝分かれした分岐流路を構成している状態にある。そのため、万一、流路の一部に目詰まりが生じても迂回路が自然に形成され、水の流れが阻害されることがない。その結果、活性炭素繊維ユニットは常に良好な脱硫率が維持可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明を好適に説明する例示にすぎず、なんら本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0029】
図1は、本発明の実施例1を示す図であり、本発明に係る脱硫用活性炭素繊維ユニットの一形態を示す要部斜視図である。
【0030】
この脱硫用活性炭素繊維ユニットIは、波板形の活性炭素繊維シート1と、平板形の活性炭素繊維シート2とが交互に多数枚積層されてなる。各シート1,2間には、流路3が多数形成される。この流路3が鉛直線に対して5°〜85°傾斜するように、ユニットIの全体形状が整形されている。前記傾斜角度が5°未満になると、流路を流れる水の流速が脱硫に適切な範囲より遅くなる。また、85°を超えると、水の流速が早くなり、従来の垂直方向に流下させていた場合の問題点が発生しやすくなる。この傾斜角度は、より好ましくは、15°〜45°の範囲である。
【0031】
この脱硫用活性炭素繊維ユニットIは、脱硫触媒として使用する場合には、図示のように各流路3内に上部から水を流し、この水の流れと対抗する方向に排ガスを流す構成が好ましいが、水の流れと排ガスの流れを同一方向に設定してもよい。
【実施例2】
【0032】
図2は、本発明の実施例2を示す図であり、本発明に係る脱硫用活性炭素繊維ユニットの他の一形態を示す要部斜視図である。
【0033】
この脱硫用活性炭素繊維ユニットIIは、各溝が矩形の波板形の活性炭素繊維シート4と、同じく各溝が矩形の波板形の活性炭素繊維シート5とが、隣接シートの各溝が互いに交差するようにして、交互に多数枚積層されてなる。各シート4,5間には、相互に交差する多数の流路6が形成される。これら流路6が鉛直線に対して5°〜85°傾斜するように、ユニットIIの全体形状が整形されている。
【0034】
この傾斜角度をさらに正確に定義すると、図3に示すように、一方の活性炭素シート4の溝の鉛直線に対する傾斜角度Aを5°〜85°とした場合、他方の活性炭素シート5の溝の鉛直線に対する傾斜角度Bは355°〜275°に設定される。前記傾斜角度が5°未満になると、流路を流れる水の流速が脱硫に適切な範囲より遅くなる。また、85°を超えると、水の流速が早くなり、従来の垂直方向に流下させていた場合の問題点が発生しやすくなる。この傾斜角度は、より好ましくは、15°〜45°の範囲である。
【0035】
この脱硫用活性炭素繊維ユニットIIは、脱硫触媒として使用する場合には、図示のように互いに交差する各流路6内に上部または側方から水を流し、この水の流れと対抗する方向に排ガスを流す構成が好ましいが、水の流れと排ガスの流れを同一方向に設定してもよい。
【0036】
また、この脱硫用活性炭素繊維ユニットIIでは、各流路6は隣接流路と交差部分で連通しており、いわば各流路6は次々に枝分かれした分岐流路を備えた構成となっている。そのため、万一、いずれかの流路6の一部に水壁(水膜)形成などにより目詰まりが生じても迂回路が自然に形成され、水の流れが阻害されることがない。その結果、この活性炭素繊維ユニットIIは常に良好な脱硫率を維持可能である。
【実施例3】
【0037】
図4は、本発明の実施例3を示す図であり、本発明に係る脱硫用活性炭素繊維ユニットのさらに他の一形態を示す要部斜視図である。
【0038】
この脱硫用活性炭素繊維ユニットIIIは、各溝が湾曲形の波板形の活性炭素繊維シート7と、同じく各溝が湾曲形の波板形の活性炭素繊維シート8とが、隣接シートの各溝が互いに交差するようにして、交互に多数枚積層されてなる。各シート7,8間には、相互に交差する多数の流路9が形成される。これら流路9が鉛直線に対して5°〜85°傾斜するように、ユニットIIIの全体形状が整形されている。この傾斜角度をさらに正確に定義すると、図5に示すように、一方の活性炭素シート7の溝の鉛直線に対する傾斜角度Aを5°〜85°とした場合、他方の活性炭素シート8の溝の鉛直線に対する傾斜角度Bは355°〜275°に設定される。前記傾斜角度が5°未満になると、流路を流れる水の流速が脱硫に適切な範囲より遅くなる。また、85°を超えると、水の流速が早くなり、従来の垂直方向に流下させていた場合の問題点が発生しやすくなる。この傾斜角度は、より好ましくは、15°〜45°の範囲である。
【0039】
この脱硫用活性炭素繊維ユニットIIIは、脱硫触媒として使用する場合には、図示のように互いに交差する各流路9内に上部または側方から水を流し、この水の流れと対抗する方向に排ガスを流す構成が好ましいが、水の流れと排ガスの流れを同一方向に設定してもよい。
【0040】
また、この脱硫用活性炭素繊維ユニットIIIでは、各流路9は隣接流路と交差部分で連通しており、いわば各流路9は次々に枝分かれした分岐流路を備えた構成となっている。そのため、万一、いずれかの流路9の一部に水壁(水膜)形成などにより目詰まりが生じても迂回路が自然に形成され、水の流れが阻害されることがない。その結果、この活性炭素繊維ユニットIIIは常に良好な脱硫率を維持可能である。
【0041】
以下、前記実施例1の脱硫活性炭素繊維ユニットIを用いた脱硫装置の実施形態を実施例4〜8に示し、前記実施例2および3の脱硫用活性炭素繊維ユニットIIおよびIIIを用いた脱硫装置の実施形態を実施例9〜21に示す。
【実施例4】
【0042】
図6は、本発明の実施例4の脱硫装置の要部を示すものである。本実施例4では、触媒槽10を構成する脱硫用活性炭素繊維ユニットとして前述の脱硫用活性炭素繊維ユニットIを用いており、前記触媒槽10を3ユニット横置きに脱硫塔11内に配置している。
【0043】
前記各触媒槽10の上部は脱硫塔11のハウジングの上部に固定されており、下部にはガス及び硫酸仕切板(仕切手段)12が設けられており、各触媒槽10にて生成された硫酸13を分取するようになっている。この硫酸分取のために、各段の触媒槽10が存在する脱硫塔11の下部には、それぞれ開閉弁14を有する硫酸抜き取り管15が取り付けられている。
【0044】
前記脱硫塔11の上部には、前記各触媒槽10に、それぞれの水の流れを基準にした場合の上流側の側部から水を噴射、供給するための散水ノズル16が設けられている。これらの散水ノズル16には水タンク17からポンプ18を介して適量の水が供給される。
【0045】
一方、排ガス19は、押込ファン20と増湿冷却装置21とからなる排ガス供給手段22によって脱硫塔11の上流側の前面11aから脱硫塔11内に供給され、脱硫塔11の下流側の端面11bから抜き出されるようになっている。
【0046】
前記脱硫塔11内では、各散水ノズル16からの噴霧水は、各触媒槽10を構成している前記脱硫用活性炭素繊維ユニットI内の傾斜流路3を緩やかに流れ、同時に同じ流路3内を水の流れと同一方向に排ガス19が流通する。その結果、各傾斜流路3から流れ出る水には活性炭素繊維の触媒作用により生成した硫酸が含有されて、下部の仕切板12によって仕切られた貯水空間23に流れ込む。得られる硫酸は、反応流路3が適度に傾斜しているため、鉛直方向に流下する場合に比べて水の流速が緩やかになっていることから、従来形式の触媒槽ユニットから得られる硫酸溶液に比べて、濃度が高くなっている。前記各貯水空間23中の硫酸溶液は、前記抜き取り管15によって、分取される。
【0047】
本実施例4の脱硫装置では、以下のような効果が得られる。
すなわち、本実施例4の脱硫装置では、触媒槽10として用いた活性炭素繊維ユニットIの水の流路3が鉛直線に対して傾斜した構造となっている。かかる傾斜水流路構造の活性炭素繊維ユニットに横からから水を噴射する構成であり、噴射された水は、流路3が傾斜しているので、水流路中を比較的ゆっくり流下する。そのため、各活性炭素繊維シートの表面には、酸化硫黄を溶かし込む媒体である水分量が常に適当量存在することになり、それにより活性炭素繊維の脱硫活性を常に適正な値に維持できる。
【0048】
また、前述のように、活性炭素繊維シートの表面には適当量の水分が存在するため、散水ノズル16から供給する水分量を増やす必要がないので、各触媒槽10への供給水分量が過剰になることがなく、生成硫酸濃度が低下する虞がない。
【0049】
また、前述のように、活性炭素繊維表面に常に適正量の水分が供給され、活性炭素繊維ユニットの脱硫活性は良好に維持されるので、各触媒槽10での生成硫酸濃度は比較的高くなる。そのため、各段の触媒槽10毎に生成硫酸を分取可能となる。各段毎に生成硫酸を分取することによって、下流の活性炭素繊維を濃硫酸によって劣化させる虞がなくなり、使用する活性炭素繊維の長寿命化を図ることができる。
【0050】
さらに、活性炭素繊維ユニットIの流路3は傾斜しているので、水の流れが緩やかになり、急速に流れる場合において流路の後半に生じやすい水壁発生による流路目詰まりを回避することができる。
【実施例5】
【0051】
図7は、本発明の実施例5の脱硫装置の要部を示すものである。本実施例5は、前記実施例4の脱硫装置に比べると、ガス及び硫酸仕切板12の替わりに、仕切板の下端部に硫酸の流通孔24aを形成してガスのみを仕切るガス仕切板24を設けたことと、それに伴って硫酸抜き取り管15を脱硫塔11の最後部に取り付けたことの2つ構成のみが異なるだけで、残りの構成は、前記実施例4の脱硫装置と同一である。なお、前記ガス仕切板24に、その流通孔24aの開閉を行う開閉機構を設けても良い。
【0052】
本実施例5の脱硫装置の特徴は、各触媒槽10で生成した硫酸溶液を個々の貯水空間から採取するのではなく、一箇所から纏めて採取する点にあり、このような分取方法によって、硫酸抜き取り管15を始めとして硫酸抜き取り手段を簡略化することができる。
【実施例6】
【0053】
図8は、本発明の実施例6の脱硫装置の要部を示すものである。本実施例6は、前記実施例4の脱硫装置に比べると、排ガス供給手段22を用いた排ガス19の供給を脱硫塔11の下流側の端面11bから脱硫塔11内に注入し、脱硫塔11の前面11aから抜き出す構成のみが異なるだけで、残りの構成は、前記実施例4の脱硫装置と同一である。
【0054】
本実施例6の脱硫装置の特徴は、各触媒槽10を構成する活性炭素繊維ユニットIの流路3内で水の流れに排ガスの流れを対向させる点にあり、この構成によって、水と排ガスの接触がより高められて、硫酸生成の反応効率を向上させることができる。
【実施例7】
【0055】
図9は、本発明の実施例7の脱硫装置の要部を示すものである。本実施例7では、触媒槽30を構成する脱硫用活性炭素繊維ユニットとして前述の脱硫用活性炭素繊維ユニットIを用いており、前記触媒槽30を3ユニット縦置きに脱硫塔31内に配置している。
【0056】
前記各触媒槽30の内、最も上に位置する触媒槽30の上部は脱硫塔31のハウジングの上部に固定されており、下部はガスおよび硫酸仕切板(仕切手段)32が設けられている。その下部の触媒槽30は前記ガスおよび硫酸仕切板32を介して下部に連設され、さらにその下部の触媒槽30もガス仕切板32を介して下部に連設されている。最下段の触媒槽30の下部にもガス及び硫酸仕切板(仕切手段)33が設けられている。積層した各触媒槽30と脱硫塔31のハウジング側壁との間には間隙が形成されている。また、前記第1,2,3段の各触媒槽30は、それぞれを構成する活性炭素繊維ユニットIをそれぞれの流路3の傾斜方向が上下に隣接する触媒槽30同士に互いに逆向きになるように設置されている。
【0057】
前記脱硫塔31の側部には、前記各触媒槽30に、それぞれの傾斜仰角上流側の側部から水を噴射、供給するための散水ノズル34が設けられている。これらの散水ノズル34には水タンク17からポンプ18を介して適量の水が供給される。
【0058】
一方、排ガス19は、押込ファン20と増湿冷却装置21とからなる排ガス供給手段22によって脱硫塔31の上部の前面31aから脱硫塔31内に供給され、脱硫塔31の下部の下流側の端面31bから抜き出されるようになっている。
【0059】
前記脱硫塔31内では、各散水ノズル34からの噴霧水は、各触媒槽30を構成している前記脱硫用活性炭素繊維ユニットI内の傾斜流路3を緩やかに流れ、同時に同じ流路3内を水の流れと同一方向に排ガス19が流通する。各傾斜流路3から流れ出る水には活性炭素繊維の触媒作用により生成した硫酸が含有されており、この硫酸溶液は、触媒槽30と脱硫塔31の側壁との間の間隙を流下する。最上段の触媒槽30で生成され、流下した硫酸溶液は、第2段目の触媒槽30と第3段目の触媒槽30との間に設けた仕切板32によって遮られ、この仕切り板32上に貯留される。第2段目および第3段目の触媒槽30からそれぞれ流下した硫酸溶液は、脱硫塔31の底部に流れ込む。各触媒槽30で得られる硫酸溶液は、反応流路3が適度に傾斜しているため、鉛直方向に流下する場合に比べて水の流速が緩やかになっていることから、従来形式の触媒槽ユニットから得られる硫酸溶液に比べて、濃度が高くなる。前記中段の仕切り板32上に貯留した硫酸溶液および脱硫塔31の底部に貯まった硫酸溶液は、それぞれ抜き取り管15によって、抜き出される。
【0060】
本実施例7の脱硫装置では、以下のような効果が得られる。
すなわち、本実施例7の脱硫装置では、触媒槽30として用いた活性炭素繊維ユニットIの水の流路3が鉛直線に対して傾斜した構造となっている。かかる傾斜水流路構造の活性炭素繊維ユニットに横からから水を噴射する構成であり、噴射された水は、流路3が傾斜しているので、水流路中を比較的ゆっくり流下する。そのため、各活性炭素繊維シートの表面には、酸化硫黄を溶かし込む媒体である水分量が常に適当量存在することになり、それにより活性炭素繊維の脱硫活性を常に適正な値に維持できる。
【0061】
また、活性炭素繊維ユニットIの流路3は傾斜しているので、水の流れが緩やかになり、急速に流れる場合において流路の後半に生じやすい水壁発生による流路目詰まりを回避することができる。
【実施例8】
【0062】
図10は、本発明の実施例8の脱硫装置の要部を示すものである。本実施例8は、前記実施例7の脱硫装置に比べると、排ガス供給手段22を用いた排ガス19の供給を脱硫塔31の下部の下流側の端面31bから脱硫塔31内に注入し、脱硫塔31の上部の前面31aから抜き出す構成のみが異なるだけで、残りの構成は、前記実施例7の脱硫装置と同一である。
【0063】
本実施例8の脱硫装置の特徴は、各触媒槽30を構成する活性炭素繊維ユニットIの流路3内で水の流れに排ガスの流れを対向させる点にあり、この構成によって、水と排ガスの接触がより高められて、硫酸生成の反応効率を向上させることができる。
【実施例9】
【0064】
図11は、本発明の実施例9の脱硫装置の要部を示すものである。本実施例9では、触媒槽40を構成する脱硫用活性炭素繊維ユニットとして前述の脱硫用活性炭素繊維ユニットIIまたはIIIを用いており、前記触媒槽40を3ユニット横置きに脱硫塔41内に配置している。
【0065】
前記各触媒槽40の上部は脱硫塔41のハウジングの上部に固定されており、下部にはガス及び硫酸仕切板(仕切手段)42が設けられており、各触媒槽40にて生成された硫酸を分取するようになっている。この硫酸分取のために、各段の触媒槽40が存在する脱硫塔41の下部には、それぞれ開閉弁14を有する硫酸抜き取り管15が取り付けられている。
【0066】
前記脱硫塔41の上部には、前記各触媒槽40に、それぞれの上流側の側部から水を噴射、供給するための散水ノズル46が設けられている。これらの散水ノズル46には水タンク17からポンプ18を介して適量の水が供給される。
【0067】
一方、排ガス19は、押込ファン20と増湿冷却装置21とからなる排ガス供給手段22によって脱硫塔41の上流側の前面41aから脱硫塔41内に供給され、脱硫塔41の下流側の端面41bから抜き出されるようになっている。
【0068】
前記脱硫塔41内では、各散水ノズル36からの噴霧水は、各触媒槽40を構成している前記脱硫用活性炭素繊維ユニットIIもしくはIII内の交差傾斜流路6もしくは9を緩やかに流れ、同時に同じ流路6(9)内を水の流れと同一方向および対向する方向の両方向に排ガス19が流通する。その結果、各傾斜流路6(9)から流れ出る水には活性炭素繊維の触媒作用により生成した硫酸が含有されて、下部の仕切板12によって仕切られた貯水空間47に流れ込む。得られる硫酸は、反応流路6(9)が適度に傾斜しているため、鉛直方向に流下する場合に比べて水の流速が緩やかになっていることから、従来形式の触媒槽ユニットから得られる硫酸溶液に比べて、濃度が高くなっている。前記各貯水空間47中の硫酸溶液は、前記抜き取り管15によって、分取される。
【0069】
本実施例9の脱硫装置では、以下のような効果が得られる。
すなわち、本実施例9の脱硫装置では、触媒槽40として用いた活性炭素繊維ユニットIIもしくはIIIの水の流路6もしくは9が鉛直線に対して傾斜した構造となっている。かかる傾斜水流路構造の活性炭素繊維ユニットに横からから水を噴射する構成であり、噴射された水は、流路6(9)が傾斜しているので、水流路中を比較的ゆっくり流下する。そのため、各活性炭素繊維シートの表面には、酸化硫黄を溶かし込む媒体である水分量が常に適当量存在することになり、それにより活性炭素繊維の脱硫活性を常に適正な値に維持できる。
【0070】
また、前述のように、活性炭素繊維シートの表面には適当量の水分が存在するため、散水ノズル46から供給する水分量を増やす必要がないので、各触媒槽40への供給水分量が過剰になることがなく、生成硫酸濃度が低下する虞がない。
【0071】
また、前述のように、活性炭素繊維表面に常に適正量の水分が供給され、活性炭素繊維ユニットの脱硫活性は良好に維持されるので、各触媒槽40での生成硫酸濃度は比較的高くなる。そのため、各段の触媒槽40毎に生成硫酸を分取可能となる。各段毎に生成硫酸を分取することによって、下流の活性炭素繊維を濃硫酸によって劣化させる虞がなくなり、使用する活性炭素繊維の長寿命化を図ることができる。
【0072】
さらに、活性炭素繊維ユニットIIもしくはIIIの流路6もしくは9は傾斜しているので、水の流れが緩やかになり、急速に流れる場合において流路の後半に生じやすい水壁発生による流路目詰まりを回避することができる。また、隣接する活性炭素繊維シート間で流路が交差する構成では、各流路は隣接流路と交差部分で連通しており、いわば各流路は次々に枝分かれした分岐流路を構成している状態にある。そのため、万一、流路の一部に目詰まりが生じても迂回流路が自然に形成され、水の流れが阻害されることがない。その結果、活性炭素繊維ユニットは常に良好な脱硫率が維持可能である。
【実施例10】
【0073】
図12は、本発明の実施例10の脱硫装置の要部を示すものである。本実施例10は、前記実施例9の脱硫装置に比べると、ガス及び硫酸仕切板42の替わりに、仕切板の下端部に硫酸の流通孔48aを形成してガスのみを仕切るガス仕切板48を設けたことと、それに伴って硫酸抜き取り管15を脱硫塔11の最後部に取り付けたことの2つ構成のみが異なるだけで、残りの構成は、前記実施例9の脱硫装置と同一である。
【0074】
本実施例10の脱硫装置の特徴は、各触媒槽40で生成した硫酸溶液を個々の貯水空間から採取するのではなく、各貯水空間から一旦一箇所の集め、そこから纏めて採取する点にあり、かかる分取方法によって、硫酸抜き取り管15を始めとして硫酸抜き取り手段を簡略化することができる。
【実施例11】
【0075】
図13は、本発明の実施例11の脱硫装置の要部を示すものである。本実施例11は、前記実施例9の脱硫装置に比べると、排ガス供給手段22を用いた排ガス19の供給を脱硫塔41の後端41bから脱硫塔41内に注入し、脱硫塔41の前端41aから抜き出す構成のみが異なるだけで、残りの構成は、前記実施例9の脱硫装置と同一である。
【0076】
本実施例11の脱硫装置の特徴は、各触媒槽40を構成する活性炭素繊維ユニットII(III)の流路6(9)内で水の流れに排ガスの流れを十分に対向させる点にあり、この構成によって、水と排ガスの接触がより高められて、硫酸生成の反応効率を向上させることができる。
【実施例12】
【0077】
図14は、本発明の実施例12の脱硫装置の要部を示すものである。本実施例12では、触媒槽50を構成する脱硫用活性炭素繊維ユニットとして前述の脱硫用活性炭素繊維ユニットIIもしくはIIIを用いており、前記触媒槽50を3ユニット縦置きに脱硫塔51内に配置している。
【0078】
前記各触媒槽50の内、最も上に位置する触媒槽50の上部は脱硫塔51のハウジングの上部に固定されており、下部はガスおよび硫酸仕切板(仕切手段)52が設けられている。その下部の触媒槽50は前記ガスおよび硫酸仕切板52を介して下部に連設され、さらにその下部の触媒槽50もガス仕切板52を介して下部に連設されている。最下段の触媒槽50の下部にもガス及び硫酸仕切板(仕切手段)53が設けられている。前記第1,2,3段の各触媒槽50は、それぞれを構成する活性炭素繊維ユニットII(III)をそれぞれの流路6(9)のうち主に水流路として使用する流路6(9)の傾斜方向が上下に隣接する触媒槽50同士において互いに逆向きになるように設置されている。
【0079】
前記脱硫塔51の側部には、前記各触媒槽50に、それぞれの流路の傾斜仰角上流側の側部から水を噴射、供給するための散水ノズル54が設けられている。これらの散水ノズル54には水タンク17からポンプ18を介して適量の水が供給される。
【0080】
一方、排ガス19は、押込ファン20と増湿冷却装置21とからなる排ガス供給手段22によって脱硫塔51の上部の前面51aから脱硫塔51内に供給され、脱硫塔51の下部の下流側の端面51bから抜き出されるようになっている。
【0081】
前記脱硫塔51内では、各散水ノズル54からの噴霧水は、各触媒槽50を構成している前記脱硫用活性炭素繊維ユニットII(III)内の傾斜流路6(9)を緩やかに流れ、同時に同じ流路6(9)内を水の流れと同一方向、対向する方向、および交差方向に排ガス19が流通する。各傾斜流路6(9)から流れ出る水には活性炭素繊維の触媒作用により生成した硫酸が含有されており、この硫酸溶液は、触媒槽50と脱硫塔51の側壁との間の間隙を流下する。最上段の触媒槽50で生成され、流下した硫酸溶液は、第2段目の触媒槽50と第3段目の触媒槽50との間に設けた仕切板52によって遮られ、この仕切り板52上に貯留される。第2段目および第3段目の触媒槽50からそれぞれ流下した硫酸溶液は、脱硫塔51の底部に流れ込む。各触媒槽50で得られる硫酸溶液は、反応流路6(9)が適度に傾斜しているため、鉛直方向に流下する場合に比べて水の流速が緩やかになっていることから、従来形式の触媒槽ユニットから得られる硫酸溶液に比べて、濃度が高くなる。前記中段の仕切り板52上に貯留した硫酸溶液および脱硫塔51の底部に貯まった硫酸溶液は、それぞれ抜き取り管15によって、抜き出される。
【0082】
本実施例12の脱硫装置では、以下のような効果が得られる。
すなわち、本実施例12の脱硫装置では、触媒槽50として用いた活性炭素繊維ユニットII(III)の水の流路6(9)が鉛直線に対して傾斜した構造となっている。かかる傾斜水流路構造の活性炭素繊維ユニットに横から水を噴射する構成であり、噴射された水は、流路6(9)が傾斜しているので、水流路中を比較的ゆっくり流下する。そのため、各活性炭素繊維シートの表面には、酸化硫黄を溶かし込む媒体である水分量が常に適当量存在することになり、それにより活性炭素繊維の脱硫活性を常に適正な値に維持できる。
【0083】
また、活性炭素繊維ユニットII(III)の流路6(9)は傾斜しているので、水の流れが緩やかになり、急速に流れる場合において流路の後半に生じやすい水壁発生による流路目詰まりを回避することができる。
【実施例13】
【0084】
図15は、本発明の実施例13の脱硫装置の要部を示すものである。本実施例13は、前記実施例12の脱硫装置に比べると、排ガス供給手段22を用いた排ガス19の供給を脱硫塔51の下部の下流側の端面51bから脱硫塔51内に注入し、脱硫塔51の上部の前面51aから抜き出す構成のみが異なるだけで、残りの構成は、前記実施例12の脱硫装置と同一である。
【0085】
本実施例13の脱硫装置の特徴は、各触媒槽50を構成する活性炭素繊維ユニットII(III)の流路6(9)内で水の流れに排ガスの流れを十分に対向させる点にあり、この構成によって、水と排ガスの接触がより高められて、硫酸生成の反応効率を向上させることができる。
【実施例14】
【0086】
図16は、本発明の実施例14の脱硫装置の要部を示すものである。本実施例14は、前記実施例9の脱硫装置に比べると、脱硫塔41より高さ寸法の高い脱硫塔61を用い、各触媒槽40の上部と脱硫塔61の天井部61cとの間に空間を設けている点と、それに伴って、各触媒槽40の上部下流側端部にガス及び水の仕切板62を設けた点と、散水ノズル46の替わりに、前記各触媒槽40の上部に新たに設けた空間に、散水ノズル63を設けた点が異なるだけで、残りの構成は、前記実施例9の脱硫装置と同一である。
【0087】
本実施例14の脱硫装置の特徴は、各触媒槽40に水を上部から噴霧する点にあり、この構成によって、各触媒槽40を構成している活性炭素繊維ユニットII(III)内への水の取り込み効率を向上させることができる。
【実施例15】
【0088】
図17は、本発明の実施例15の脱硫装置の要部を示すものである。本実施例15は、前記実施例14の脱硫装置に比べると、ガス及び硫酸仕切板42の替わりに、仕切板の下端部に硫酸の流通孔70aを形成してガスのみを仕切るガス仕切板70を設けたことと、それに伴って硫酸抜き取り管15を脱硫塔61の最後部に取り付けたことの2つ構成のみが異なるだけで、残りの構成は、前記実施例14の脱硫装置と同一である。
【0089】
本実施例15の脱硫装置の特徴は、各触媒槽40で生成した硫酸溶液を個々の貯水空間から採取するのではなく、一箇所から纏めて採取する点にあり、かかる硫酸分取方法によって、硫酸抜き取り管15を始めとして硫酸抜き取り手段を簡略化することができる。なお、前記構成において、ガス仕切板70にその硫酸流通孔70aを開閉自在にする開閉機構を設けても良い。
【実施例16】
【0090】
図18は、本発明の実施例16の脱硫装置の要部を示すものである。本実施例16は、前記実施例11の脱硫装置に比べると、脱硫塔41より高さ寸法の高い脱硫塔61を用い、各触媒槽40の上部と脱硫塔61の天井部61cとの間に空間を設けている点と、それに伴って、各触媒槽40の上部下流側端部にガス及び水の仕切板62を設けた点と、散水ノズル46の替わりに、前記各触媒槽40の上部に新たに設けた空間に、散水ノズル63を設けた点が異なるだけで、残りの構成は、前記実施例11の脱硫装置と同一である。
【0091】
本実施例16の脱硫装置の特徴は、各触媒槽40に水を上部から噴霧する点にあり、この構成によって、各触媒槽40を構成している活性炭素繊維ユニットII(III)内への水の取り込み効率を向上させることができる。
【実施例17】
【0092】
図19は、本発明の実施例17の脱硫装置の要部を示すものである。本実施例17は、前記実施例12の脱硫装置に比べると、脱硫塔51より高さ寸法の高い脱硫塔71を用い、最上部の触媒槽50の上部と脱硫塔71の天井部71cとの間と、残りの触媒槽50の上部と各ガス及び硫酸仕切板52との間とに空間を設けている点と、それに伴って、最上部の触媒槽50の上部下流側端部にガス及び水の仕切板72を設けた点と、散水ノズル54の替わりに、前記各触媒槽50の上部に新たに設けた空間に、散水ノズル73を設けた点が異なるだけで、残りの構成は、前記実施例12の脱硫装置と同一である。
【0093】
本実施例17の脱硫装置の特徴は、各触媒槽50に水を上部から噴霧する点にあり、この構成によって、各触媒槽50を構成している活性炭素繊維ユニットII(III)内への水の取り込み効率を向上させることができる。
【実施例18】
【0094】
図20は、本発明の実施例18の脱硫装置の要部を示すものである。本実施例18は、前記実施例13の脱硫装置に比べると、脱硫塔51より高さ寸法の高い脱硫塔71を用い、最上部の触媒槽50の上部と脱硫塔71の天井部71cとの間と、残りの触媒槽50の上部と各ガス及び硫酸仕切板52との間とに空間を設けている点と、それに伴って、最上部の触媒槽50の上部下流側端部にガス及び水の仕切板72を設けた点と、散水ノズル54の替わりに、前記各触媒槽50の上部に新たに設けた空間に、散水ノズル73を設けた点が異なるだけで、残りの構成は、前記実施例13の脱硫装置と同一である。
【0095】
本実施例18の脱硫装置の特徴は、各触媒槽50に水を上部から噴霧する点にあり、この構成によって、各触媒槽50を構成している活性炭素繊維ユニットII(III)内への水の取り込み効率を向上させることができる。
【実施例19】
【0096】
図21は、本発明の実施例19の脱硫装置の要部を示すものである。本実施例19では、触媒槽80を構成する脱硫用活性炭素繊維ユニットとして前述の脱硫用活性炭素繊維ユニットIIもしくはIIIを用いており、前記触媒槽80を3ユニット縦置きに脱硫塔81内に配置している。
【0097】
前記各触媒槽80は、それらの両側面を脱硫塔81のハウジング側壁によって挟持されるように脱硫塔81内に固定されている。最上段の触媒槽80と脱硫塔81の天井部81cとの間と、各触媒槽80との間と、最下部の触媒槽80と脱硫塔81の底部81dとの間には、空間が形成されており、各触媒槽80の上部空間には、各触媒槽80に水を上部から噴霧する散水ノズル82が設けられている。
【0098】
前記第1,2,3段の各触媒槽80は、それぞれを構成する活性炭素繊維ユニットII(III)をそれぞれの流路6(9)のうち主に水流路として使用する流路6(9)の傾斜方向が上下に隣接する触媒槽50同士に互いに逆向きになるように設置されている。
【0099】
脱硫処理を行う排ガス19は、押込ファン20と増湿冷却装置21とからなる排ガス供給手段22によって脱硫塔81の下部の後側部81bから脱硫塔81内に供給され、脱硫塔81の上部の後側部81aから抜き出されるようになっている。
【0100】
前記脱硫塔81内では、各散水ノズル82からの噴霧水は、各触媒槽80を構成している前記脱硫用活性炭素繊維ユニットII(III)内の傾斜流路6(9)を緩やかに流れ、同時に同じ流路6(9)内を水の流れと対向する方向に排ガス19が流通する。各傾斜流路6(9)から流れ出る水には活性炭素繊維の触媒作用により生成した硫酸が含有されており、各触媒槽80で生成した硫酸溶液は、順次、下方の触媒槽80に流下する。最終的に最下段の触媒槽80から流下した全硫酸溶液は、脱硫塔81の底部に流れ落ちる。
【0101】
各触媒槽50で得られる硫酸溶液は、反応流路6(9)が適度に傾斜しているため、鉛直方向に流下する場合に比べて水の流速が緩やかになっていることから、従来形式の触媒槽ユニットから得られる硫酸溶液に比べて、濃度が高くなる。したがって、下段に行く程硫酸溶液の濃度は濃くなるが、本実施例では、各段毎に散水ノズル82が設けられて新たな水が上段からの硫酸溶液を薄めつつ各触媒槽80に流すことになるので、最下段においても触媒槽80中を流下する硫酸溶液は活性炭素繊維を劣化させる程には濃縮されない。脱硫塔81の底部に貯まった硫酸溶液は、抜き取り管15によって、抜き出される。
【0102】
本実施例19の脱硫装置では、以下のような効果が得られる。
すなわち、本実施例19の脱硫装置では、触媒槽80として用いた活性炭素繊維ユニットII(III)の水の流路6(9)が鉛直線に対して傾斜した構造となっている。かかる傾斜水流路構造の活性炭素繊維ユニットに上から水を噴射する構成であり、噴射された水は、流路6(9)が傾斜しているので、水流路中を比較的ゆっくり流下する。そのため、各活性炭素繊維シートの表面には、酸化硫黄を溶かし込む媒体である水分量が常に適当量存在することになり、それにより活性炭素繊維の脱硫活性を常に適正な値に維持できる。
【0103】
また、活性炭素繊維ユニットII(III)の流路6(9)は傾斜しているので、水の流れが緩やかになり、急速に流れる場合において流路の後半に生じやすい水壁発生による流路目詰まりを回避することができる。また、隣接する活性炭素繊維シート間で流路が交差する構成であるので、各流路6(9)は隣接流路と交差部分で連通しており、いわば各流路は次々に枝分かれした分岐流路を構成している状態にある。そのため、万一、流路の一部に目詰まりが生じても迂回流路が自然に形成され、水の流れが阻害されることがない。その結果、活性炭素繊維ユニットは常に良好な脱硫率が維持可能である。
【実施例20】
【0104】
図22は、本発明の実施例20の脱硫装置の要部を示すものである。本実施例20は、前記実施例11の脱硫装置に比べると、脱硫塔41より高さ寸法の高い脱硫塔91を用い、各触媒槽40の上部と脱硫塔91の天井部91cとの間に空間を設けている点と、それに伴って、各触媒槽40の上部下流側端部にガス及び水の仕切板92を設けた点と、散水ノズル46に、前記各触媒槽40の上部に向けて分岐ノズル46aを延出させ、新たに設けた空間に位置させた点が異なるだけで、残りの構成は、前記実施例11の脱硫装置と同一である。前記各分岐ノズル46aの先端は各触媒槽40の上部下流部分に噴射するように位置決めされている。
【0105】
本実施例20の脱硫装置の特徴は、各触媒槽40の上部下流部分に水を上部から追加的に噴霧する点にあり、この構成によって、各触媒槽40の上部下流部分において流路が短くなっていることから生じる常在水分量の不足傾向を補うことができ、より一層、活性炭素繊維ユニットII(III)内への水の取り込み効率を向上させることができる。
【実施例21】
【0106】
図23は、本発明の実施例21の脱硫装置の要部を示すものである。本実施例21は、前記実施例16の脱硫装置に比べると、各触媒槽40の上部に設けた散水ノズル63の替わりに下流よりのノズル孔の形成密度を増やした散水ノズル103を設けた点が異なるだけで、残りの構成は、前記実施例16の脱硫装置と同一である。前記各分岐ノズル103によって各触媒槽40の上部下流部分により多量の水が噴射されることになる。
【0107】
本実施例21の脱硫装置の特徴は、各触媒槽40の上部下流部分への噴射水量を選択的に増加させる点にあり、この構成によって、各触媒槽40の上部下流部分において流路が短くなっていることから生じる常在水分量の不足傾向を補うことができ、より一層、活性炭素繊維ユニットII(III)内への水の取り込み効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上のように、本発明にかかる脱硫用活性炭素繊維ユニットは、優れた水分保持率および水分流通特性を発揮することができ、このユニットを脱硫触媒槽として用いた脱硫装置は、優れた脱硫効率を発揮することができ、かつ長寿命化を実現することができる。したがって、本発明に係る脱硫用活性炭素繊維ユニットおよび脱硫装置は、排ガスの脱硫処理に用いることにより、経済的に脱硫効率を大幅に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明に係る脱硫用活性炭素繊維ユニットの一例を示す要部斜視図である。
【図2】本発明に係る脱硫用活性炭素繊維ユニットの他の一例を示す要部斜視図である。
【図3】図2に示した脱硫用活性炭素繊維ユニットを構成する2種の活性炭素繊維シートの積層条件を説明する模式図である。
【図4】本発明に係る脱硫用活性炭素繊維ユニットのさらに他の一例を示す要部斜視図である。
【図5】図4に示した脱硫用活性炭素繊維ユニットを構成する2種の活性炭素繊維シートの積層条件を説明する模式図である。
【図6】本発明の実施例4にかかる脱硫装置の概略構成図である。
【図7】本発明の実施例5にかかる脱硫装置の概略構成図である。
【図8】本発明の実施例6にかかる脱硫装置の概略構成図である。
【図9】本発明の実施例7にかかる脱硫装置の概略構成図である。
【図10】本発明の実施例8にかかる脱硫装置の概略構成図である。
【図11】本発明の実施例9にかかる脱硫装置の概略構成図である。
【図12】本発明の実施例10にかかる脱硫装置の概略構成図である。
【図13】本発明の実施例11にかかる脱硫装置の概略構成図である。
【図14】本発明の実施例12にかかる脱硫装置の概略構成図である。
【図15】本発明の実施例13にかかる脱硫装置の概略構成図である。
【図16】本発明の実施例14にかかる脱硫装置の概略構成図である。
【図17】本発明の実施例15にかかる脱硫装置の概略構成図である。
【図18】本発明の実施例16にかかる脱硫装置の概略構成図である。
【図19】本発明の実施例17にかかる脱硫装置の概略構成図である。
【図20】本発明の実施例18にかかる脱硫装置の概略構成図である。
【図21】本発明の実施例19にかかる脱硫装置の概略構成図である。
【図22】本発明の実施例20にかかる脱硫装置の概略構成図である。
【図23】本発明の実施例21にかかる脱硫装置の概略構成図である。
【図24】従来の脱硫装置の概略構成図である。
【図25】従来の脱硫用活性炭素繊維ユニット(活性炭素繊維層)の要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0110】
I,II,III 脱硫用活性炭素繊維ユニット
1 波板形活性炭素繊維シート
2 平板形活性炭素繊維シート
3,6,9 流路
4,5 溝が矩形の波板形活性炭素繊維シート
7,8 溝が湾曲形の波板形活性炭素繊維シート
10,30,40,50,80 触媒槽
11,31,41,51,61,71,81,91 脱硫塔
11a,31a,41a,51a 脱硫塔の上流側の前面
11b,31b,41b,51b,81b 脱硫塔11の下流側の端面
12,32,42,52,53,92 ガス及び硫酸仕切板(仕切手段)
13 硫酸
14 開閉弁
15 硫酸抜き取り管
16,34,46,54,63,73,82,103 散水ノズル
17 水タンク
18 ポンプ
19 排ガス
20 押込ファン
21 増湿冷却装置
22 排ガス供給手段
23,47 貯水空間
24,48,70 ガス仕切板
24a,48a,70a 流通孔
46a 分岐ノズル
61c,71c,81c,91c 脱硫塔の天井部
62 ガス及び水の仕切板
81d 脱硫塔の底部
81a 脱硫塔の上部の後側部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種の形状の活性炭素繊維シートが複数積層されることにより、前記各活性炭素繊維シート間に多数の流路が形成されてなる脱硫用活性炭素繊維ユニットにおいて、
前記流路が鉛直方向に対して傾斜していることを特徴とする脱硫用活性炭素繊維ユニット。
【請求項2】
前記流路の傾斜角度が鉛直方向に対して5°〜85°であることを特徴とする請求項1に記載の脱硫用活性炭素繊維ユニット。
【請求項3】
前記2種の形状の活性炭素繊維シートの一方が平板形活性炭素繊維シートであり、他方が波板形活性炭素繊維シートであり、これらの間に形成される多数の流路が互いに平行であることを特徴とする請求項1または2に記載の脱硫用活性炭素繊維ユニット。
【請求項4】
前記2種の形状の活性炭素繊維シートの両方が互いに平行な多数の溝を有してなる波板形活性炭素繊維シートであり、これら活性炭素繊維シートが隣接シート間で各シートが有する溝が互いに交差するように積層されており、それによって隣接シート間で互いに交差する多数の流路が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の脱硫用活性炭素繊維ユニット。
【請求項5】
前記互いに交差する流路の一方の鉛直方向に対する角度Aが5°〜85°に調整されていることを特徴とする請求項4に記載の脱硫用活性炭素繊維ユニット。
【請求項6】
前記互いに交差する流路の一方の鉛直方向に対する角度Aが5°〜85°に調整されるとともに、他方の流路の鉛直方向に対する角度Bが355°〜275°に調整されていることを特徴とする請求項5に記載の脱硫用活性炭素繊維ユニット。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の脱硫用活性炭素繊維ユニットを脱硫触媒槽として用いる脱硫装置であって、
前記脱硫用活性炭素繊維ユニット内の鉛直方向に対して傾斜した多数の流路に水を流す散水ノズルと、該散水ノズルから供給された水が流れる前記流路中に排ガスを流す排ガス供給手段と有することを特徴とする脱硫装置。
【請求項8】
前記散水ノズルが前記脱硫用活性炭素繊維ユニットの上部から水を流す位置に取り付けられていることを特徴とする請求項7に記載の脱硫装置。
【請求項9】
前記散水ノズルが前記脱硫用活性炭素繊維ユニットの側部から水を流す位置に取り付けられていることを特徴とする請求項7に記載の脱硫装置。
【請求項10】
前記排ガス供給手段が前記散水ノズルの供給側と反対側から排ガスを装置内に流入させるものであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の脱硫装置。
【請求項11】
前記排ガス供給手段が前記散水ノズルの供給側と同一側から排ガスを装置内に流入させるものであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の脱硫装置。
【請求項12】
前記脱硫触媒槽が複数個、縦方向または横方向に連設されてなり、各脱硫触媒槽間に該各脱硫触媒槽にて生成する硫酸を下流の脱硫触媒槽に流出させない仕切手段が設けられ、各脱硫触媒槽毎に生成硫酸を分取可能となっていることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の脱硫装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2006−305456(P2006−305456A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−130459(P2005−130459)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】