説明

脱硫装置及び燃料電池システム

【課題】再起動までの時間の短縮を図ることができる脱硫装置、及びそのような脱硫装置を備える燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システム1の脱硫装置3においては、レベラー20から一時停止信号が入力された場合に、脱硫器7内から貯留容器19への液体燃料の供給が停止されるように、制御部15が、入口弁9、ポンプ11及び出口弁12を制御する。このとき、温度計13によって測定される温度、すなわち脱硫器7内の液体燃料の温度が、常温よりも高く且つ通常運転時の温度Aよりも低い所定の温度Bに維持されるように、制御部15が、ヒータ8を制御する。これにより、脱硫装置3を停止させ常温まで温度を低下させた場合と比べて、通常運転時の温度A、すなわち所定の脱硫温度に加熱するまでの時間が短縮されるので、再起動までの時間の短縮を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料から硫黄分を除去する脱硫装置、及びそのような脱硫装置を備える燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムにおいては、改質器によって、水素を含有する改質ガスが生成され、燃料電池スタックによって、その改質ガスが用いられて発電が行われる。このような燃料電池システムには、改質原料として灯油等の液体燃料が改質器に供給される場合に改質触媒の劣化を防止するために、液体燃料から硫黄分を除去する脱硫器を設ける必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−323285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、脱硫器においては、触媒反応を促進させるために脱硫触媒を加熱することが必要となるが、脱硫触媒を常温から所定の脱硫温度(例えば200℃)に上昇させるのに相当の時間を要する。そのため、一度停止させてしまうと再起動するまでに時間がかかるといった問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、再起動までの時間の短縮を図ることができる脱硫装置、及びそのような脱硫装置を備える燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る脱硫装置は、水素を含有する改質ガスを生成する改質器に供給するための液体燃料から硫黄分を除去する脱硫触媒を収容する脱硫器と、脱硫触媒を加熱する加熱手段と、脱硫器内に液体燃料を導入させる液体燃料導入手段と、脱硫器内から液体燃料を導出させる液体燃料導出手段と、脱硫器内の液体燃料の温度を測定する温度測定手段と、加熱手段、液体燃料導入手段及び液体燃料導出手段を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、一時停止信号が入力された場合には、脱硫器内からの液体燃料の供給を停止させるように液体燃料導入手段及び液体燃料導出手段の少なくとも一方を制御すると共に、温度測定手段によって測定される温度が常温よりも高く且つ通常運転時の温度よりも低い所定の温度となるように、加熱手段を制御することを特徴とする。
【0006】
この脱硫装置では、一時停止信号が入力された場合に、液体燃料導入手段及び液体燃料導出手段の少なくとも一方が制御手段によって制御されることで、脱硫器内からの液体燃料の供給が停止される。このとき、加熱手段が制御手段によって制御されることで、温度測定手段によって測定される温度、すなわち脱硫器内の液体燃料の温度が、常温よりも高く且つ通常運転時の温度以下の所定の温度に維持される。これにより、脱硫装置を停止させ常温まで温度を低下させた場合と比べて、通常運転時の温度、すなわち所定の脱硫温度に加熱するまでの時間が短縮されるので、再起動までの時間の短縮を図ることができる。なお、硫黄分とは、硫黄や硫黄化合物を含む意味である。
【0007】
本発明に係る脱硫装置においては、液体燃料導出手段によって導出された液体燃料を一時貯留する貯留容器と、貯留容器に貯留された液体燃料の貯留量を測定する貯留量測定手段と、を更に備え、貯留量測定手段は、貯留量が所定の貯留量に達した場合には、制御手段に一時停止信号を出力することが好ましい。この構成によれば、液体燃料を一時貯留容器で貯留することで、改質器等への液体燃料の供給を安定化することができる。また、貯留容器内の貯留量が所定の貯留量になった場合には、貯留量測定手段が一時停止信号を制御手段に出力するので、例えば貯留量オーバーによる貯留容器の破損等を防止することができる。
【0008】
また、本発明に係る燃料電池システムは、上記脱硫装置と、脱硫装置によって硫黄分が除去された液体燃料を用いて、水素を含有する改質ガスを生成する改質器と、改質器によって生成された改質ガスを用いて発電を行う燃料電池スタックと、を備えることを特徴とする。
【0009】
この燃料電池システムによれば、上記脱硫装置を備えているため、再起動までの時間の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、再起動までの時間の短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、本発明に係る燃料電池システムの一実施形態の構成図である。図1に示されるように、燃料電池システム1は、水素を含有する改質ガスを生成する改質装置2と、改質装置2に供給するための液体燃料から硫黄分を除去する脱硫装置3と、改質装置2によって生成された改質ガスを用いて発電を行う燃料電池スタック4と、を備えている。燃料電池システム1は、例えば、家庭用の電力供給源として利用されるものであり、容易に入手することができ且つ独立して貯蔵することができるという観点から、液体燃料として灯油が用いられている。
【0013】
改質装置2は、液体燃料を水蒸気改質して改質ガスを生成する改質器5と、改質器5内に収容された改質触媒を加熱するバーナ6と、を有している。バーナ6は、水蒸気改質反応を促進する改質触媒を加熱することで、触媒反応を効果的に発揮させるために必要な熱を改質触媒に供給する。改質器5では、脱硫装置3から導入された液体燃料が気化して原料ガスとなり、改質触媒によって、原料ガスと水蒸気(水)との水蒸気改質反応が促進されて、水素リッチな改質ガスが生成される。
【0014】
燃料電池スタック4は、複数の電池セルが積み重ねられて構成された固体高分子形燃料電池スタックであり、改質装置2で得られた改質ガスを用いて発電を行う。各電池セルは、アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間に配置された電解質である高分子のイオン交換膜と、を有している。各電池セルにおいては、アノードに改質ガスが導入されると共にカソードに空気が導入されて、電気化学的な発電反応が行われる。
【0015】
図2は、図1の燃料電池システムが備える脱硫装置の構成図である。図2に示されるように、脱硫装置3は、改質器5に供給するための液体燃料から硫黄分を除去する脱硫触媒7aを収容する脱硫器7を有している。脱硫触媒7aは、ヒータ(加熱手段)8によって所定の温度に加熱される。脱硫器7の上流側には、脱硫器7内への液体燃料の導入量を調節する入口弁(液体燃料導入手段)9が設けられている。更に、入口弁9の上流側には、脱硫器7内に液体燃料を圧送するポンプ(液体燃料導入手段)11が設けられている。一方、脱硫器7の下流側には、脱硫器7内からの液体燃料の導出量を調節する出口弁(液体燃料導出手段)12が設けられている。
【0016】
また、脱硫器7には、脱硫器7内の液体燃料の温度を測定する温度計(温度測定手段)13が設けられている。更に、脱硫器7と入口弁9との間には、脱硫器7内の液体燃料の圧力を測定する圧力計(圧力測定手段)14が設けられている。制御部(制御手段)15は、所定の信号が出力されると、その信号に応じて、ヒータ8、入口弁9、ポンプ11及び出口弁12を制御する。なお、所定の信号とは、起動信号、停止信号、一時停止信号、運転再開信号である。
【0017】
図1に示されるように、脱硫装置3には、硫黄分が除去された液体燃料が流通する液体燃料流通ライン16の一端が接続されており、液体燃料流通ライン16の他端は、脱硫装置3よりも上方に配置された貯留容器19の側壁に接続されている。貯留容器19には、貯留量を測定するレベラー(貯留量測定手段)20が設けられている。レベラー20は、貯留容器19内の貯留量が第1貯留量に達した場合には、制御部15に一時停止信号を出力し、貯留容器19内の貯留量が第1貯留量よりも低位の第2貯留量に減少して達した場合には、制御部15に運転再開信号を出力する。
【0018】
また、貯留容器19の底壁には、貯留容器19内において下方に貯留された液体燃料を改質器5に導入するためのポンプ22が設けられた液体燃料流通ライン23、及び同液体燃料をバーナ6に導入するためのポンプ24が設けられた液体燃料流通ライン25が接続されている。なお、バーナ6には、バーナ6に空気を導入するためのポンプ26が設けられた空気流通ライン27が接続されている。このように、貯留容器19に液体燃料を一旦貯留することで、ポンプ22による改質器5への液体燃料の供給、及びポンプ24によるバーナ6への液体燃料の供給を安定化させることができる。
【0019】
以上のように構成された燃料電池システム1においては、液体燃料は、まず脱硫装置3の脱硫器7に導入され、高温・高圧の状態で脱硫触媒7aによって硫黄分が除去される。脱硫器7から導出された液体燃料は、液体燃料流通ライン16を介して貯留容器19に貯留される。貯留容器19に貯留された液体燃料は、液体燃料流通ライン23を介して改質器5に導入される。このとき、バーナ6には、液体燃料流通ライン25を介して液体燃料が導入されると共に、空気流通ライン27を介して空気が導入される。これにより、改質器5では、燃焼するバーナ6によって改質触媒が加熱され、液体燃料が用いられて改質ガスが生成される。改質器5で生成された改質ガスは、燃料電池スタック4に導入され、燃料電池スタック4では、改質ガスが用いられて発電が行われる。
【0020】
次に、脱硫装置3の動作について説明する。図3は、図2の脱硫装置における運転状態と設定温度との関係の一例を示す図であり、図4は、図2の脱硫装置の動作を示すフローチャートである。
【0021】
図3に示されるように、制御部15は、運転状態毎に、脱硫器7内の温度の目標値をデータテーブルとして記憶している。温度の目標値は、例えば通常運転時では、190℃〜210℃(脱硫触媒7aの触媒反応を促進させ得る所定の脱硫温度:温度A)であり、一時停止時では、180℃〜190℃(温度B)である。一時停止時の温度B(所定の温度)は、停止時の温度(5℃〜35℃)よりも高く且つ通常運転時の温度Aよりも低く設定されている。
【0022】
図4に示されるように、脱硫装置3が起動されている通常運転時において、レベラー20から一時停止信号が入力されたか否かを制御部15が判断する(ステップS11)。その結果、一時停止信号が入力された場合には、脱硫器7内への液体燃料の導入を停止させるために制御部15がポンプ11を停止させると共に、入口弁9及び出口弁12を閉じる(ステップS12)。そして、脱硫器7内の液体燃料の温度が温度Bになるように、制御部15がヒータ8を制御する(ステップS13)。
【0023】
ステップS13の処理の後、レベラー20から運転再開信号が入力されたか否かを制御部15が判断する(ステップS14)。その結果、運転再開信号が入力された場合には、脱硫器7内の液体燃料の温度が温度Aになるように、制御部15がヒータ8を制御する(ステップS15)。そして、温度Aで脱硫を行って、硫黄分が除去された液体燃料を改質装置2に再び供給するために、ポンプ11を作動させると共に、入口弁9及び出口弁12を開き(ステップS16)、ステップS11の判断処理に戻る。一方、ステップS17において、運転再開信号が入力されなかった場合には、運転再開信号が入力されるまで同処理を繰り返す。
【0024】
一方、ステップS11の判断処理の結果、一時停止信号が入力されなかった場合には、停止信号が入力されたか否かを制御部15が判断する(ステップS17)。その結果、停止信号が入力された場合には、制御部15がポンプ11を停止させると共に、入口弁9及び出口弁12を閉じ(ステップS18)、更にヒータ8を停止させ(ステップS19)、脱硫装置3の運転が終了となる。一方、停止信号が入力されなかった場合には、ステップS11の判断処理に戻る。なお、停止信号は、脱硫装置3の動作を停止させるための例えばボタンが押下されることによって、制御部15に入力される。
【0025】
以上説明したように、燃料電池システム1の脱硫装置3においては、レベラー20から一時停止信号が入力された場合に、脱硫器7内から貯留容器19への液体燃料の供給が停止されるように、制御部15が、入口弁9、ポンプ11及び出口弁12を制御する。このとき、温度計13によって測定される温度、すなわち脱硫器7内の液体燃料の温度が、常温よりも高く且つ通常運転時の温度Aよりも低い所定の温度B(すなわち目標値)に維持されるように、制御部15が、ヒータ8を制御する。これにより、脱硫装置3を停止させ常温まで温度を低下させた場合と比べて、通常運転時の温度A、すなわち所定の脱硫温度に加熱するまでの時間が短縮されるので、再起動までの時間の短縮を図ることができる。
【0026】
また、図3に示すように、一時停止時の温度Bを通常運転時の温度Aよりも低い温度とすることで、消費エネルギーの削減が図られる。更に、一時停止時に温度Bを常温まで下げないことで、通常運転時との温度差に起因する脱硫触媒7aの劣化を防止することができる。
【0027】
また、液体燃料を一旦貯留する貯留容器19を備え、貯留容器19の貯留量が第1貯留量に達した場合には、レベラー20は、制御部15に一時停止信号を出力する。一方、貯留容器19の貯留量が第1貯留量よりも低位の第2貯留量に減少して達した場合には、レベラー20は、制御部15に運転再開信号を出力する。これにより、例えば貯留量オーバーによる貯留容器19の破損等を防止することができる。また、第1貯留量よりも低位の第2貯留量に減少して達した場合には、運転再開信号が出力されて脱硫装置3の動作が再開されるので、作業の効率化を図ることができる。
【0028】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0029】
例えば、一時停止信号が入力された場合には、入口弁9及び出口弁12の両方を閉じずに、入口弁9のみを閉じてもよい。
【0030】
また、一時停止信号及び運転再開信号は、レベラー20からの入力ではなく、例えばボタンが押下されることで入力されてもよい。
【0031】
また、燃料電池スタック4は、固体高分子形燃料電池スタックに限定されず、固体酸化物形燃料電池スタック等であってもよい。
【0032】
また、改質器5は、水蒸気改質するものに限定されず、部分酸化改質や自己熱改質するものであってもよい。改質器5による改質方法は、灯油の他、ガソリン、ナフサ、軽油、メタノール、エタノール、DME(ジメチルエーテル)、バイオマスを利用したバイオ燃料等、液体燃料の特性に応じものとされる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る燃料電池システムの一実施形態の構成図である。
【図2】図1の燃料電池システムが備える脱硫装置の構成図である。
【図3】図2の脱硫装置における運転状態と設定温度との関係の一例を示す図である。
【図4】図2の脱硫装置における動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
1…燃料電池システム、3…脱硫装置、4…燃料電池スタック、5…改質器、7…脱硫器、7a…脱硫触媒、8…ヒータ(加熱手段)、9…入口弁(液体燃料導入手段)、11…ポンプ(液体燃料導入手段)、12…出口弁(液体燃料導出手段)、13…温度計(温度測定手段)、15…制御部(制御手段)、19…貯留容器、20…レベラー(貯留量測定手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を含有する改質ガスを生成する改質器に供給するための液体燃料から硫黄分を除去する脱硫触媒を収容する脱硫器と、
前記脱硫触媒を加熱する加熱手段と、
前記脱硫器内に前記液体燃料を導入させる液体燃料導入手段と、
前記脱硫器内から前記液体燃料を導出させる液体燃料導出手段と、
前記脱硫器内の前記液体燃料の温度を測定する温度測定手段と、
前記加熱手段、前記液体燃料導入手段及び前記液体燃料導出手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、一時停止信号が入力された場合には、前記脱硫器内からの前記液体燃料の供給を停止させるように前記液体燃料導入手段及び前記液体燃料導出手段の少なくとも一方を制御すると共に、前記温度測定手段によって測定される温度が常温よりも高く且つ通常運転時の温度よりも低い所定の温度となるように、前記加熱手段を制御することを特徴とする脱硫装置。
【請求項2】
前記液体燃料導出手段によって導出された前記液体燃料を一時貯留する貯留容器と、
前記貯留容器に貯留された前記液体燃料の貯留量を測定する貯留量測定手段と、を更に備え、
前記貯留量測定手段は、前記貯留量が所定の貯留量に達した場合には、前記制御手段に前記一時停止信号を出力することを特徴とする請求項1記載の脱硫装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の脱硫装置と、
前記脱硫装置によって硫黄分が除去された液体燃料を用いて、水素を含有する改質ガスを生成する改質器と、
前記改質器によって生成された前記改質ガスを用いて発電を行う燃料電池スタックと、を備えることを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−18467(P2010−18467A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179516(P2008−179516)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】