説明

脱穀機

【課題】排わら処理装置から飛散するわら屑が選別室の飛び込むのを防止すると共に、選別風の流れを阻害することなく、良好な選別を行えるようにした脱穀機を提供する。
【解決手段】フィードチェーン2により給送される穀稈を扱室10内の扱胴12にて脱穀し、該脱穀された脱穀物を、前記扱室10の下方に設けた揺動選別体21と送風ファン35により選別し、選別された排塵物を、前記揺動選別体21の上方に配置された排塵室37を経て排塵口57から排出すると共に、前記フィードチェーン2からの排わらをカッタ43で切断するように構成され、切断されたわらが前記排塵口57から選別室へ侵入することを防止する可撓性のカバー体51を、前記カッタ43と前記排塵室37との間に、下方が揺動し得るように配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等の収穫機に搭載される脱穀機に係り、詳しくは脱穀後の排わらを細かく切断して圃場に排出する排わら処理装置を備えた脱穀機に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバイン等に搭載される脱穀機は、複数の扱歯が立設された扱胴が配置され、穀稈から穀粒を脱穀する扱室、扱室で脱穀された脱穀物から穀粒を選別して取出す選別室、選別された穀粒を一時貯蔵するグレンタンク、複数の回転刃を有し高速回転する一対のカッタが配置され、排わらを細断して圃場に排出する排わら処理装置等を備えている。前記排わら処理装置で裁断されたわら屑は、下方に排出されるが、一部が前記揺動選別体やグレンタンクに向けて高速で飛散する。
【0003】
前記排わら処理装置で細断されたわら屑が前記選別室に飛び込むと、前記揺動選別体による穀粒の選別効率が低下するため、前記選別室と前記排わら処理装置との間にガイド板を配置して、前記選別室への排わらの進入を防止するようにした脱穀機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−18913号公報(第3頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記選別室と前記排わら処理装置との間に配置された前記ガイド板が鉄板等で形成されているため、前記ガイド板を前記選別室に近接して配置した場合には、該選別室からの選別風の流れが阻害され、脱穀物の選別効率が低下する。また、前記ガイド板を選別風の流れを阻害しない位置に取付けた場合には、前記カッタとの間隔が狭くなりわら屑が詰まりやすくなるなどの課題がある。
【0006】
前記の事情にかんがみ、本発明は、排わら処理装置から飛散するわら屑が選別室に飛び込むのを防止すると共に、選別風の流れを阻害することなく、良好な選別を行えるようにした脱穀機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、請求項1に係る本発明は、フィードチェーン(2)により給送される穀稈を扱室(10)内の扱胴(12)にて脱穀し、該脱穀された脱穀物を、前記扱室(10)の下方に設けた揺動選別体(21)と送風ファン(35)により選別し、選別された排塵物を、前記揺動選別体(21)の上方に配置された排塵室(37)を経て排塵口(57)から排出すると共に、前記フィードチェーン(2)からの排わらをカッタ(43)で切断してなる、脱穀機(1)において、
前記カッタ(43)で切断されたわらが前記排塵口(57)へ侵入することを防止するカバー体(51)を、前記カッタ(43)と前記排塵室(37)との間に配置し、
前記カバー体(51)は、可撓体からなると共に下方が揺動し得るように吊下げ支持されてなる、
ことを特徴とする脱穀機にある。
【0008】
請求項2に係る本発明は、前記カバー体(51)は、その下端が前記揺動選別体(21)の上端位置近傍まで吊下がってなる、
請求項1記載の脱穀機にある。
【0009】
請求項3に係る本発明は、前記カバー体(51)と前記揺動選別体(21)の後端との間に、排塵物を落下し得るスペースを有してなる、
請求項1又は2記載の脱穀機にある。
【0010】
なお、前記した括弧内の符号等は、図面を参照するためのものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明によると、カッタで切断された排わらが排塵口へ侵入することを防止するカバー体を、前記カッタと排塵室との間に配置し、前記カバー体は、可撓体からなると共に下方が揺動し得るように吊下げ支持するようにしたので、排わら処理装置から飛散するわら屑が選別室に飛び込むことを確実に防止することができる。また、排わら処理装置で裁断されたわら屑の落下スペースを確保することができる。さらに、選別室からの選別風により、前記カバー体の下部が揺動して選別風の流れを確保することができるので、良好な選別を行うことができる。
【0012】
請求項2に係る本発明によると、前記カバー体は、その下端が前記揺動選別体の上端位置近傍まで吊下るようにしたので、選別室へのわら屑の侵入を防止しながらカバー体の下部を揺動し易くして選別風の流れを確保することができる。
【0013】
請求項3に係る本発明によると、前記カバー体の下端位置と揺動選別体の後端との間に、排塵物を落下し得るスペースを有しているので、選別室で発生する排塵物を停滞させることなく排出することができ、穀稈が濡れている場合でも良好な選別を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図1乃至図4は、本発明の実施の形態を示すもので、図1は、排わら処理装置側から見た脱穀機の斜視図、図2は、脱穀機の構成を示す側面図、図3は、脱穀機の構成を示す平面図、図4は、本発明によるカバー体の取付け状態を示す拡大図である。
【0016】
図1に示すように、脱穀機1は、機体フレーム1a上に、フィードチェーン2により移送される穀稈の脱穀を行う扱室10と、該扱室10の側方から後方に配置された処理室15と、前記扱室10及び処理室15で脱穀された脱穀物から穀粒を選別する選別室20と、穀粒が脱穀された排わらを搬送する排わら搬送チェーン3と、該排わら搬送チェーン3で搬送された排わらを細断する排わら処理装置40と、前記選別室20で選別された穀粒を一時的に貯蔵するグレンタンク5と、該グレンタンク5内に貯蔵された穀粒を排出するオーガ6とを備えている。なお、図1では、前記排わら処理装置40を、カッタ支持フレーム41回りに回動させた状態で示してある。
【0017】
図2及び図3に示すように、前記扱室10には、複数の扱歯11が立設された扱胴12が回転自在に配置され、前記フィードチェーン2により移送される穀稈の脱穀を行う。前記扱胴12の下方には、受網13が配置され、前記扱胴12により脱穀された脱穀物の一部を漏下させるように構成されている。
【0018】
前記処理室15には、複数の羽根が立設された処理胴16が回転自在に配置され、前記フィードチェーン2及び排わら搬送チェーン3で搬送される排わらの中に残る脱穀物の処理を行う。前記処理胴16の前記選別室20側の側面から下方に亘り処理網(図示せず)が配置され、排わらから落下した脱穀物の一部を漏下させる。前記処理胴16で処理された脱穀物の一部は、前記処理室15の前記扱室10側に形成された送塵口17から前記選別室20へ落下さるようになっている。また、前記処理室15の後端部に形成された排出口15aは、排塵室37に向けて開口し、わら屑等の排塵物を排出するようになっている。前記排出口15aから排出される排塵物は、排塵口57の前記揺動選別体21の後端部とカバー体51の間に形成される落下スペースを通して機外に排出される。
【0019】
前記選別室20には、揺動選別体21を有し、該揺動選別体21は、所定の間隔で配置された一対の揺動側板22の間に固定された無孔移送板23と、前記揺動側板22に所定の間隔で揺動自在に支持された複数のフィンで構成されるチャフシーブ25と、前記揺動側板22の間に所定の間隔で配置された複数のラックで構成されるストローラック26と、前記揺動側板22に前記チャフシーブ25の下方に位置するように配置されたグレンシーブ27を備えている。
【0020】
前記グレンシーブ27の下方には、該グレンシーブ27を漏下した穀粒を収容する一番樋30が配置されている。前記一番樋30には、収容した穀粒を揚穀スクリュー(図示せず)を介して前記グレンタンク5に搬送するための一番スクリュー31が配置されている。また、前記ストローラック26の下方には、該ストローラック26を漏下した脱穀物を収容する二番樋32が配置されている。前記二番樋32には、収容した脱穀物を前記無孔移送板23上に還元する二番スクリュー33が配置されている。
【0021】
前記無孔移送板23の下方には、送風ファン(唐箕ファン)35が配置され、前記グレンシーブ27及びチャフシーブ25に向けて選別風を送風する。また、前記一番樋30と二番樋32の間には、送風ファン36が配置され、前記ストローラック26に向けて選別風を送風する。なお、前記送風ファン35及び送風ファン36から吹出される選別風の風量は、前記揺動選別体21上に投入される脱穀物の量に応じて自動的に調整されるようになっている。
【0022】
前記ストローラック26の上方には、排塵室37が形成され、その側面に吸引排塵ファン38が取付けられ、前記選別選別体21の後部で発生する細かな排塵物を吸引し前記脱穀機1の後方に向けて吹出し機外に排出するようになっている。比較的大きなわら屑は、前記送風ファン35、36からの選別風によって排塵口57から機外に排出される。
【0023】
前記排わら処理装置40は、前記機体フレーム1aの後部に立設されたカッタ支持フレーム41に支持軸42を介して揺動自在に支持されている。前記排わら処理装置40の内部には一対のカッタ43が回転自在に配置され、カッタ43には、複数の円盤状の切断刃43aが所定の間隔で配置されている。前記排わら処理装置40の上部には、切換板44が回動可能に配置されている。前記切換板44を回動させ、前記排わら処理装置40の上部を開放すると、該排わら処理装置40に排わらを投入することができる。
【0024】
また、前記排わら処理装置40には、前記選別室20及びグレンタンク5に向けて切断したわら屑を排出する排出口40aが形成されている。従って、前記カッタ43が回転している状態で、上部から排わらが投入されると、前記切断刃43aにより排わらを細かく切断することができ、切断されたわら屑は、前記排出口40aから前記選別室20及びグレンタンク5に向けて飛散しながら、圃場に排出される。
【0025】
燃料タンク45は、前記機体フレーム1a上の前記グレンタンク5の後方の空間に、その後部が前記排わら処理装置40の下方に張り出すように配置されている。前記排わら処理装置40の下方の空間を利用して前記燃料タンク45を配置することにより、該燃料タンク45の容量を大きくすることができ、燃料補給の間隔を長くして作業性を向上させることができる。
【0026】
図1乃至図4に示すように、前記排塵室37の後端部を覆うカバー体51は、可撓性を有する合成樹脂(例えば、ターポリン、ビニール、ゴム等、以下同様)で形成され、前記排塵室37の後端部に、その下端部が前記揺動選別体21の上端(終端)位置近傍まで吊下がるように、その上端部を丸パイプで構成され前記脱穀機1の左右の側板を連結するフレーム52に固定されたブラケット53にボルト55で固定されている。なお、前記カバー体51を前記排わら処理装置40の前端面に取付けるようにしても良い。
【0027】
前記カバー体51を吊下げるように配置することで、前記排わら処理装置40から飛散するわら屑が前記選別室20内に侵入するのを防止することができる。また、前記カバー体51が揺れることで前記カッタ43とカバー体51の距離を十分に確保し、カッタ43の詰まりを防止することができる。また、前記カバー体51の下部が後方へ揺れ、排塵室37内の選別風を逃がすことができるので、前記選別室20内の選別風の流れを阻害することなく、良好な選別を行わせることができる。さらに、メンテナンス等で前記揺動選別体21を機外へ引き出す場合にも、前記カバー体51を外すことなくそのまま引き出すことができ、作業性を低下させることがない。
【0028】
前記カバー体51の下端部と前記揺動選別体21の後端部との間には、前記ストローラック26の後端から排出される排塵物を落下させるための排塵口57が形成されているので、該排塵口57を通して排塵物をスムースに排出することができ、穀稈が濡れた濡れ材であっても良好な選別を行うことができる。また、前記処理室15の排出口15aから排出されるわら屑等の排塵物は、前記排塵口57に形成された前記落下スペースを通して機外に排出されるので、排塵物が前記揺動選別体21上に落下することがなく、該揺動選別体21における選別効率を低下させることがない。
【0029】
前記選別室20の下部を覆うカバー体56は、可撓性を有する合成樹脂で形成され、前記ストローラック26の下方に位置するように、前記揺動選別体21の下面に吊下げるようにその上端部が固定されている。
【0030】
前記カバー体56を前記揺動選別体21に吊下げるように配置することにより、前記排わら処理装置40から飛散するわら屑が前記選別室20の下部に侵入するのを防止することができる。
【0031】
前記燃料タンク45を覆うカバー体60は、可撓性を有する合成樹脂で形成され、その周縁部に所定の間隔で複数のスリット(釦ホール、図示せず)が形成されている。一方、前記機体フレーム1aの後端部に立設されたフレーム(カッターステイ等を含む、図示せず)には、後端にフランジ部が形成され、後方に向けて突出するように所定の間隔で複数のピン(釦)61が立設されている。
【0032】
前記カバー体60は、前記スリットを前記ピン61に掛けることにより取付けられる。従って、前記カバー体60の着脱は、工具を用いることなく手作業で行うことができ、作業性を向上させることができる。また、前記カバー体60を取付けることにより、前記排わら処理装置40から飛散するわら屑が前記グレンタンク5と燃料タンク45の間の空間に飛び込むのを防止することができ、わら屑の堆積を防止して整備作業の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】排わら処理装置側から見た脱穀機の斜視図である。
【図2】脱穀機の構成を示す側面図である。
【図3】脱穀機の構成を示す平面図である。
【図4】本発明によるカバー体の取付け状態を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0034】
1 脱穀機
2 フィードチェーン
10 扱室
12 扱胴
21 揺動選別体
35 送風ファン
37 排塵室
43 カッタ
51 カバー体
57 排塵口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードチェーンにより給送される穀稈を扱室内の扱胴にて脱穀し、該脱穀された脱穀物を、前記扱室の下方に設けた揺動選別体と送風ファンにより選別し、選別された排塵物を、前記揺動選別体の上方に配置された排塵室を経て排塵口から排出すると共に、前記フィードチェーンからの排わらをカッタで切断してなる、脱穀機において、
前記カッタで切断されたわらが前記排塵口へ侵入することを防止するカバー体を、前記カッタと前記排塵室との間に配置し、
前記カバー体は、可撓体からなると共に下方が揺動し得るように吊下げ支持されてなる、
ことを特徴とする脱穀機。
【請求項2】
前記カバー体は、その下端が前記揺動選別体の上端位置近傍まで吊下がってなる、
請求項1記載の脱穀機。
【請求項3】
前記カバー体と前記揺動選別体の後端との間に、排塵物を落下し得るスペースを有してなる、
請求項1又は2記載の脱穀機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−228650(P2008−228650A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72589(P2007−72589)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】