説明

脱穀機

【課題】4番処理胴からの処理物と排塵処理胴からの処理物を互いに衝突させて分散し、回収効率の向上を図る。
【解決手段】扱室(3)の終端の排塵口(8)よりも後側の位置にささり粒を回収するささり回収室(9)を設け、このささり回収室(9)の内部に扱胴(5)と同一軸芯の4番処理胴(11)を設け、排塵処理胴(18)を内装した排塵処理室(19)を扱室(3)の後側方に設け、4番処理胴(11)の回転方向と排塵処理胴(18)の回転方向を同じ回転方向に設定すると共に、ささり回収室(9)と排塵処理室(19)との互いに対向する側を開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀処理後の排ワラ中に混入するささり粒を扱き落として回収する4番処理胴を備えた脱穀機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、扱胴を内装軸架した扱室の後部にささり粒を回収するささり回収室を設け、ささり回収室の内部には、扱胴と略同径で扱胴軸と同一軸芯回りに強制回転する4番処理胴を軸架させて設け、脱穀処理後の排ワラ中に混入するささり粒を4番処理胴の回転により扱き落として回収する構成のささり粒回収装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−34152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成のささり回収室内では、扱き落とされたささり粒とワラ屑とが一緒に持ち回りされることが多く、これらが速やかに受網から漏下せず、回収効率の低下を招く問題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点を解消することにあり、4番処理胴からの処理物と排塵処理胴からの処理物を互いに衝突させて分散し、回収効率の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、扱胴(5)を内装した扱室(3)の終端に排塵口(8)を開口し、該排塵口(8)よりも後側の位置にささり粒を回収するささり回収室(9)を設け、このささり回収室(9)の内部には前記扱胴(5)と同一軸芯回りに駆動回転する4番処理胴(11)を架設し、前記扱室(3)の終端部からの排塵処理物を受け入れて軸芯方向後方に搬送しながら脱粒処理する排塵処理胴(18)を内装した排塵処理室(19)を扱室(3)の後側方に設け、前記4番処理胴(11)の回転方向と排塵処理胴(18)の回転方向を同じ回転方向に設定すると共に、前記ささり回収室(9)と排塵処理室(19)との互いに対向する側を開放したことを特徴とする脱穀機とする。
【0007】
扱室(3)内を通過する穀稈は扱胴(5)の回転によって脱穀処理され、扱室後部のささり回収室(9)内では、脱穀処理後の排ワラ中に混入するささり粒が4番処理胴(11)の駆動回転により扱き落とされる。
【0008】
扱室(3)終端より排塵処理室(19)内に取り込まれた排塵処理物は、扱胴(3)と同方向に回転する排塵処理胴(18)によって軸芯方向後方に搬送されながら脱粒処理される。
【0009】
そして、ささり回収室(9)と排塵処理室(19)は、互いに対向する側が開放されているので、ささり回収室(9)の開放口から投出される処理物と排塵処理室の開放口から投出される処理物とが互いに交差し、衝突しあって広く分散されることになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ささり回収室(9)内では、処理物の持ち回りがなく、ささり粒をささり回収室(9)の開放口から速やかに落下させて回収することができるものでありながら、ささり回収室(9)と排塵処理室(19)は、互いに対向する側が開放されているので、それぞれの開放口から投出される処理物が互いに干渉し、衝突しあって分散されることになり、ささり粒の回収効果をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】脱穀装置の側断面図
【図2】脱穀装置の一部破断せる平面図
【図3】図1のS1−S1断面図
【図4】図1のS2−S2断面図
【図5】図1のS3−S3断面図
【図6】扱胴及び4番処理胴の平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、脱穀装置の側断面図を示すものであり、次のような構成になっている。
すなわち、脱穀装置(脱穀部)1は、脱穀フィードチエン2により株元を挟持しながら搬送される穀稈の穂先部を扱室3内で駆動回転する扱歯4付扱胴5により脱穀処理するよう構成している。扱室3の下半周部には受網6が張設され、扱胴5の上部を覆う扱胴カバー7は、扱室の一側を支点として揺動開閉する構成である。扱室3の終端側には多量のわら屑や未処理物を含む排塵処理物を下方に落下させる排塵口8が設けられている。扱室3終端の排塵口8より後方部には、排ワラ中のささり粒を掻き落して回収するささり回収室9を構成して設け、このささり回収室9には、前記扱胴5と略同径で同一軸芯回りに強制回転する外周にささり落し歯10を有した4番処理胴11を内装軸架している。4番処理胴11は、実施例では前記扱胴5と一体構成としてあり、該扱胴を扱室終端より長く延出させた構成としている。扱室3の始端から中仕切板12間における扱室受網部幅(A)と、扱室の中仕切板12から扱室終端の後仕切板13間における排塵口部幅(B)と、ささり回収室幅(C)との各作用幅を(A)>(B)>(C)との関係に構成している。つまり、(A)部の穀稈を脱穀処理する部分の作用幅を最も大きくし、ついで(B)部の排塵処理室へのワラ屑を送塵する作用幅とし、(C)部のささり粒の回収を行う部分はそれらの作用幅より小さくして、各部の作用負荷を同等に分担するようにしている。また、脱穀部全長に対する扱胴4の長さを4番処理胴10部を含めて半分以上に構成することで、扱室の作用長さが充分に確保され、処理能力が向上する。
【0013】
前記扱室3のフィードチエン2側とは反対側一側には2番処理胴15を内装軸架した2番処理室16を並設している。また、前記2番処理胴15の後方にはこれと同一軸芯上において外周に排塵処理歯17を備えた排塵処理胴18を内装軸架した排塵処理室19を構成して設けている。前記扱室終端の排塵口8に対応する部位から排塵処理室19始端への送塵路20には、排塵処理胴18の始端部に固着されたスパイラー形状の取込羽根21が介入するように設けて、排塵処理室内への排塵物の取込みが容易に行えるようにしている。排塵処理胴18の終端には排出羽根22が設けられ、処理室終端まで送られてきた排塵処理物を前記排出羽根22によって処理室終端の横側部の排出口から下方の揺動選別棚上に排出する構成としている。
【0014】
ささり回収室9の4番処理胴11の下側部分には、これと対向する排塵処理胴側が大きく開放されて4番開放口23が設けられ、排塵処理室19の排塵処理胴18の下側部分には、これと対向する4番処理胴11側が大きく開放されて排塵開放口24が設けられている。従って、4番処理胴によって扱き処理されたさりり粒を含む4番処理物は、4番開放口23から排塵処理胴18側に向けて勢い良く投出され、排塵処理胴18によって処理される処理物の一部は、排塵開放口24から4番処理胴側に向けて勢い良く投出される。
【0015】
4番処理胴11部の側面を通過する脱穀フィードチエン2は、4番処理胴11の軸芯(扱胴軸5aと同一軸芯)と同一位置若しくはそれよりも上方に位置させている。これによって、4番処理胴部を搬送される穀稈は、株元側が上で穂先側を下にした略垂下姿勢で4番処理胴外周に沿うことになり、脱穀後の排ワラにささり込んでいる穀粒が回収され易くなる。
【0016】
扱室終端(扱胴終端)の排塵口8部の前送塵ガイド25とささり回収室9の4番処理胴11下方の後送塵ガイド26とは、送塵角度方向が逆向きとなるように構成してあり、排塵口部下方で揺動選別棚上に落下する処理物と4番処理胴部(ささり回収室)で揺動選別棚上に落下する処理物を揺動選別棚上に分散して排出落下させることができ、選別負荷を均分化できてロスの低減が図れる。
【0017】
4番処理胴11のささり落し歯10は、ソリッド歯とし、4番処理胴円周方向に所定間隔おきに配設すると共に、扱胴軸芯方向に対して適宜傾斜させて設け、4番処理胴の回転により起風し易くし、ささり回収室9の後側板27の下部より揺動選別棚40上へ送風できるように構成している。これにより、揺動棚上での風選別により穀粒とワラ塵の分離が良好に行える。
【0018】
なお、このソリッド歯10は、図例のように、後方傾斜とすることにより、送風方向が後方向きとなり、4番処理胴を通過した排ワラに向けて送風することができるので、ささり粒除去が促進され性能が向上する。
【0019】
また、前記ソリッド歯10による起風に加えて、唐箕45と吸引排塵ファン48による選別風が作用するように構成することで、風選別能力が増大し、選別性能が向上する。更に、各ささり落し歯10…の4番処理胴円周方向における間隔密度は、扱胴5始端のソリッド扱歯4aの間隔密度よりも密にすることで、ささり粒除去性能の向上を図るようにしている。
【0020】
扱胴始端のソリッド扱歯4aは、扱胴軸芯方向に対して所定角度に傾斜して起風可能な構成とし、且つ、扱室内への穀稈の取り込みを容易にした構成としている。
また、ささり落し歯10のツース幅は、扱胴始端のソリッド扱歯4aの幅より幅狭くすることによって穀稈中に割り込み易くしている。
【0021】
4番処理胴11部のささり落し歯10のツース高さH1は、扱胴始端のソリッド扱歯4aのツース高さH2と略同等の高さとして送風効果が大きくなるように構成し、取付高さは、H1>H2となるように、ソリッド扱歯4aを扱胴始端のテーパ部に取り付けて低くすることで、扱胴への穀稈の取り込みが容易にスムースに行えるように構成している。
【0022】
扱胴軸5aからベルト伝動機構30、伝動ギヤケース31を介して排ワラ搬送装置32の排ワラ株元チエン32a、排ワラ穂先チエン32bを駆動する構成とし、前記伝動ギヤケース31を機体内方の穂先側に位置させ、排ワラ株元チエン32a及び排ワラ穂先チエン32bをできるだけ4番処理胴11側に接近させて設け、4番処理胴からでた排ワラを急激に上方に引き上げ、排ワラ株元チエン32a、排ワラ穂先チエン32bに引き継がせるように構成している。このような排ワラの急激な搬送姿勢の変化により、排ワラ中のささり粒を下方にふるい落すことができる。
【0023】
また、前記4番処理胴11部は、1番移送螺旋46の直上方に位置させて設けた構成であり、これにより、4番処理胴で回収されたささり粒を効率よく1番移送螺旋に回収することができる。
【0024】
揺動選別棚40は、脱穀処理後の処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別する構成であり、選別方向上手側から移送棚41、チャフシ−ブ42、ストロ−ラック43の順に配置し、且つ、前記チャフシ−ブ42の下方にグレンシ−ブ44を配置して設けた構成としている。また、揺動選別棚40の下方には選別方向の上手側から順に、唐箕45と、1番移送螺旋46、2番移送螺旋47と、その上方に排塵フアン48を設けて選別室を構成している。
【符号の説明】
【0025】
3 扱室
5 扱胴
8 排塵口
9 ささり回収室
11 4番処理胴
18 排塵処理胴
19 排塵処理室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(5)を内装した扱室(3)の終端に排塵口(8)を開口し、該排塵口(8)よりも後側の位置にささり粒を回収するささり回収室(9)を設け、このささり回収室(9)の内部には前記扱胴(5)と同一軸芯回りに駆動回転する4番処理胴(11)を架設し、前記扱室(3)の終端部からの排塵処理物を受け入れて軸芯方向後方に搬送しながら脱粒処理する排塵処理胴(18)を内装した排塵処理室(19)を扱室(3)の後側方に設け、前記4番処理胴(11)の回転方向と排塵処理胴(18)の回転方向を同じ回転方向に設定すると共に、前記ささり回収室(9)と排塵処理室(19)との互いに対向する側を開放したことを特徴とする脱穀機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−193752(P2010−193752A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40724(P2009−40724)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】