説明

脱穀機

【課題】脱穀機の脱穀作業能率と穀粒回収率を高めると共に、安価に提供できるものとする。
【解決手段】2番処理胴(15)は脱穀選別後に還元される2番物を受け入れて2番処理室(16)内を前方に向けて搬送しながら脱粒処理し、排塵処理胴(18)は扱室(3)からの排塵処理物を受け入れて排塵処理室(19)内を後方に向けて搬送しながら処理する構成とする。そして、2番処理胴(15)と排塵処理胴(18)は外径を同径とし、2番処理胴(15)の外周部に不連続の2番物処理歯(14)を設ける一方、排塵処理胴(18)の外周部には連続の排塵物処理歯(17)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、扱室内で発生する2番物や排塵処理物を脱粒処理する脱粒処理装置を備えた脱穀機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、扱室内で発生する2番物を受け入れて脱粒処理する2番処理胴と、扱室終端からの排塵処理物を受け入れて脱粒処理する排塵処理胴を同一軸芯上に設け、そして、2番処理胴は外径を小さくし、排塵処理胴は2番処理胴のそれよりも外径を大きくして処理する脱粒処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−79567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の脱粒処理装置では、2番処理胴と排塵処理胴とは外径を異にしているため、処理胴自体を共用化することができず、それぞれ別個に製作しなければならないため、コストアップになっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、扱室(3)内に軸架した扱胴(5)と平行に2番処理胴(15)と排塵処理胴(18)を同一軸芯上に軸架させて設け、2番処理胴(15)は脱穀選別後に還元される2番物を受け入れて2番処理室(16)内を前方に向けて搬送しながら脱粒処理し、排塵処理胴(18)は扱室(3)からの排塵処理物を受け入れて排塵処理室(19)内を後方に向けて搬送しながら処理する構成とし、2番処理胴(15)と排塵処理胴(18)は外径を同径とし、2番処理胴(15)の外周部に不連続の2番物処理歯(14)を設ける一方、排塵処理胴(18)の外周部には連続の排塵物処理歯(17)を設けたことを特徴とする脱穀機とする。
【0006】
扱室(3)内では扱胴(5)の回転によって穀稈の穂先部が脱穀処理される。扱室(3)内で発生し選別された後の枝梗付着粒などの未処理物を含む2番物は、2番還元装置を介して2番処理室(16)内へ還元され、2番処理胴(15)の回転によって前方に向けて搬送されながら不連続の処理歯(14)で脱粒処理される。また、扱室(3)内で発生した排塵物は、この扱室(3)の終端から排塵処理室(19)の始端部に取り込まれ、排塵処理胴(18)の回転によって後方に向けて搬送されながら連続の処理歯(17)で脱粒処理される。
【0007】
2番処理胴(15)と排塵処理胴(18)の外径が同径であっても、2番処理胴(15)側では不連続の2番物処理歯(14)で効果的に脱粒処理することができ、排塵処理胴(18)側では連続の排塵物処理歯(17)で速やかに送りながら脱粒処理することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、2番処理胴(15)と排塵処理胴(18)の外径を同一径としたため、この2つの処理胴自体を共用化することができ、また、両者を一体化して製造することもでき、安価に提供することができる。また、2番処理胴(15)では不連続の2番物処理歯(14)によって処理するため、2番物の処理効果を高めることができ、排塵処理胴(18)では連続の排塵物処理歯(17)によって処理するため、扱室(3)内の排塵処理物を速やかに取り込んで効率よく後方搬送しながら処理することができ、脱穀作業の能率と穀粒回収率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】脱穀装置の側断面図
【図2】図1のS1−S1断面図
【図3】図1のS2−S2断面図
【図4】脱穀装置の要部の平面図
【図5】排塵処理胴の正面図
【図6】排塵処理胴軸受部の一部破断平面図
【図7】脱穀部の要部の背断面図
【図8】脱穀部の要部の背断面図
【図9】受網枠要部の平面図
【図10】受網枠要部の平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、脱穀装置の側断面図を示すものであり、次のような構成になっている。
すなわち、脱穀装置(脱穀部)1は、脱穀フィードチエン2により株元を挟持しながら搬送される穀稈の穂先部を扱室3内で駆動回転する扱歯4付扱胴5により脱穀処理するよう構成している。扱室3の下半周部には受網6が張設され、扱室上部には扱胴カバー7が揺動開閉可能に設けられている。扱室3の終端側には多量のわら屑や未処理物を含む排塵処理物を下方に落下させる排塵口8が設けられている。なお、10は排ワラカッターを示す。
【0011】
前記扱室3のフィードチエン2側とは反対側一側には、扱室3からの2番物を受け入れて脱粒処理し外周に不連続の2番物処理歯14を備えた2番処理胴15を内装軸架した2番処理室16を並設している。また、前記2番処理胴15の後方にはこれと同一軸芯上において外周に連続する排塵物処理歯17を備えた排塵処理胴18を内装軸架した排塵処理室19を構成して設けている。2番処理胴15と排塵処理胴18は外径を共に同径とし、2番処理胴15は、外周に不連続の2番物処理歯14…をラセン状に所定間隔おきに植設し、2番還元装置20を介して2番処理室16内に還元された2番物を前方に向けて搬送しながら脱粒処理するように構成している。また、排塵処理胴18は、外周に連続するラセン形状の排塵物処理歯17を設け、前記扱室3終端の排塵口8に対応する部位の送塵口9から排塵処理室19の始端へ受け入れた排塵処理物を後方に向けて搬送しながら脱粒処理するように構成している。なお、排塵処理胴18始端側のラセン処理歯を他のそれよりも径大とし、周方向適当間隔おきに切欠部17aを設けて前記送塵路9内に介入するようにし、排塵処理室19内への排塵物の取込みが容易に行えるように構成している。排塵処理室19内で脱粒処理された穀粒は底部の受け網から下方に漏下し、排塵処理室19の終端まで送られてきた排塵処理物は排塵処理胴18の終端に設けられた排出羽根21によって排塵処理室19終端の横側部の排出口から下方の揺動選別棚上に排出するようになっている。
【0012】
排塵処理胴18の排塵物処理歯17の回転径は、2番処理胴15の2番物処理歯14の回転径よりも大きくし、且つ、排塵処理胴18の排塵処理歯17の高さを該排塵処理胴18の径と略同じ若しくはそれ以上に構成することによって、排塵処理室19内での容量を充分確保しながら同一回転でも扱室3で発生した藁屑を迅速に処理することができる。そして、2番処理胴15の2番物処理歯14の突出高さも、できるだけ2番処理胴15の径に近い高さにすれば、2番処理室16内の充填量を高めることができ、枝梗の処理も迅速に行える。また、2番処理胴15の2番物処理歯14の高さを、排塵処理胴の排塵物処理歯17の高さ(外径)の半分程度の構成とすることで、同一回転数でも2番物処理歯14の周速度を適正にすることができ、枝梗の処理が迅速に行え、脱ぷも抑制することができる。
【0013】
排塵処理胴18の処理胴軸22後端部は、ベアリング23を介して軸受保持するベアリングホルダ24によって支持するようにし、ベアリングホルダ24は処理胴径よりも大きい外径でもって構成すると共に、ベアリングホルダ24の一部を排塵処理胴18内に臨ませた構成とすることで、排塵処理胴18を脱穀部の後壁部にぎりぎりまで延長することができ、ベアリングホルダ24による排塵物の排出作用の妨げを回避できる。また、排塵処理胴18の後部にベアリングホルダ24の外径と略同じ外径の円盤25を設け、ベアリングホルダ24の前面との隙間を少なくすることによって、ベアリングホルダ24への藁屑の巻き付きを防止することができる。更に、これに加えて、ベアリングホルダ24の一部を排塵処理胴18のハブ26の一部に臨ませることによって、ベアリングホルダ24への藁屑の巻き付きを確実に防止でき、ベアリングホルダ24内部への藁屑の侵入も防ぐことができる。
【0014】
図1において、揺動選別棚30は、脱穀処理後の処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別する構成であり、選別方向上手側から移送棚31、チャフシ−ブ32、ストロ−ラック33の順に配置し、且つ、前記チャフシ−ブ32の下方にグレンシ−ブ34を配置して設けた構成としている。また、揺動選別棚30の下方には選別方向の上手側から順に、唐箕35と、1番移送螺旋36、2番移送螺旋37と、その上方に排塵ファン38を設けて選別室を構成している。また、前記排塵口8の下方には排塵選別棚39を配設している。
【0015】
図7に示す実施例は、処理胴室を構成する受網枠40が一定以上の過負荷に起因して処理胴18から遠ざかる方向に変位するよう上下の板バネ41,41を介して移動可能に構成している。処理胴室内に大容量の藁屑が入ってくると、受網枠が過大負荷により処理胴から遠ざかる方向に逃げて負荷を軽減し、処理胴駆動部の破損を未然に防止することができる。また、この受網枠40は、図8に示すように、下端側を回動支点Pとして回動変位するようにしてもよく、逆に、上端側を回動支点として回動変位する構成であってもよい。
【0016】
処理胴の受網枠40は、処理胴の回転方向に直交する横方向の横桟40aと、処理胴の回転方向に沿う縦方向の縦桟40bとからなるように格子状に構成されたものであるが、縦方向の縦桟40bを、図9に示すように、排塵物の送り方向に対して同じ送り方向となるような傾きに斜設しておくと、処理胴にかかる負荷を軽減することができるし、図10に示すように、排塵物の送り方向に対して抵抗となる方向の傾きに斜設しておくと、処理室内での処理物の脱粒処理効果を高めることができる。
【0017】
また、図9に示す受網枠構造において、横方向の横桟40aを丸棒で、縦方向の縦桟40bを帯状鉄板で構成したり、逆に、横桟40aを帯状鉄板にし、縦桟40bを丸棒で構成することもできる。更に、図10に示す受網枠構造においても、上記と同様に、横桟40aを丸棒にし、縦桟40bを帯状鉄板で構成したり、横桟40aを帯状鉄板にし、縦桟40bを丸棒で構成するものであってもよく、任意設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0018】
3 扱室
5 扱胴
14 2番物処理歯
15 2番処理胴
16 2番処理室
17 排塵物処理歯
18 排塵処理胴
19 排塵処理室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(3)内に軸架した扱胴(5)と平行に2番処理胴(15)と排塵処理胴(18)を同一軸芯上に軸架させて設け、2番処理胴(15)は脱穀選別後に還元される2番物を受け入れて2番処理室(16)内を前方に向けて搬送しながら脱粒処理し、排塵処理胴(18)は扱室(3)からの排塵処理物を受け入れて排塵処理室(19)内を後方に向けて搬送しながら処理する構成とし、2番処理胴(15)と排塵処理胴(18)は外径を同径とし、2番処理胴(15)の外周部に不連続の2番物処理歯(14)を設ける一方、排塵処理胴(18)の外周部には連続の排塵物処理歯(17)を設けたことを特徴とする脱穀機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−227065(P2010−227065A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80705(P2009−80705)
【出願日】平成21年3月28日(2009.3.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】