説明

脱穀装置

【課題】コンバインの姿勢が不安定となったり、揺動選別棚上の藁屑の流れを阻害して詰まりを起こすような不具合を少なくして、脱穀作業を能率良く行なうことができるものとする。
【解決手段】扱胴(37)及び排塵処理胴(40)の外周部に濾過部材(38,41)を夫々設けて、排塵処理胴(40)側の濾過部材(41)から漏下する被処理物を前方へ移送する螺旋式移送装置(46)の上部を、扱胴(37)側の濾過部材(38)と排塵処理胴(40)側の濾過部材(41)とを結ぶ接線(S)よりも上側に入り込ませて配置する。そして、螺旋式移送装置(46)の外周部に設ける受け部材(46b)の前端部を揺動選別棚(52)の前部上方において開口させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばコンバインの脱穀装置においては、扱胴の後部側方に排塵処理胴の始端部を望ませて該扱胴と排塵処理胴とを略平行に配置したものがある。このように構成することにより、扱胴の脱粒作用を受けて脱落した穀粒や藁屑等の混在する被処理物を、該扱胴の後端部から排塵処理胴の前端部に引き継いで、後方へ搬送しながら脱粒処理を行う。
【0003】
しかしながら、このように排塵処理胴に引き継がれて該排塵処理胴の後部まで搬送されてきた被処理物の中には、まだ多量の穀粒が混在している。従って、このような穀粒が排塵処理胴の後部から揺動選別棚の後部に漏下した場合、この穀粒が揺動選別棚上を後方へ移送されてきた藁屑に載って機外へ排出されてしまい、収穫損失となる問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1に示すように、扱胴の後部側方に排塵処理胴の前端部を臨ませて該扱胴と排塵処理胴とを略平行に配置し、該排塵処理胴の直下に、該排塵処理胴側から漏下する被処理物を前方へ移送する螺旋式移送装置を配置する技術が試みられている。
【特許文献1】特開2004−290206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、排塵処理胴は、扱胴後端部からの被処理物の引き継ぎ性を良好なものとするために、扱胴との高さ関係を任意に変更することができない。
また、上記特許文献1に記載された技術では、螺旋式移送装置が排塵処理胴の直下に配置されるために、該排塵処理胴と螺旋式移送装置とを可及的に接近させて配置したとしても、この排塵処理胴と螺旋式移送装置との上下方向の設置範囲が大きくなってしまう。
【0006】
このため、脱穀装置全体の高さが高くなって重心位置が高くなり、この脱穀装置を搭載するコンバインの姿勢が不安定となったり、螺旋式移送装置とこの下側の揺動選別棚との間隔が狭くなって揺動選別棚上の藁屑の流れを阻害し、詰まりを起こすような不具合が生じ得る欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上述の如き課題を解決するために、次のような技術的手段を講じる。
即ち、請求項1記載の発明は、扱胴(37)の後部側方に排塵処理胴(40)の前端部を臨ませて該扱胴(37)と排塵処理胴(40)とを略平行に配置し、該扱胴(37)と排塵処理胴(40)との間の下方の空間部に、該排塵処理胴(40)側から漏下する被処理物を前方へ移送する螺旋式移送装置(46)を配置したことを特徴とする脱穀装置としたものである。
【0008】
しかして、排塵処理胴40側から漏下する被処理物は螺旋式移送装置46によって前方へ移送され、例えば揺動選別棚の前部へ還元して選別される。また、扱胴37と排塵処理胴40との間の下方の空間部に、該排塵処理胴40側から漏下する被処理物を前方へ移送する螺旋式移送装置46を配置することによって、排塵処理胴40と螺旋式移送装置46との上下方向の設置範囲が小さく抑えられる。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、扱胴(37)の後部側方に排塵処理胴(40)の前端部を臨ませて該扱胴(37)と排塵処理胴(40)とを略平行に配置すると共に該扱胴(37)及び排塵処理胴(40)の外周部に濾過部材(38,41)を夫々設け、前記排塵処理胴(40)側の濾過部材(41)から漏下する被処理物を前方へ移送する螺旋式移送装置(46)の上部を、前記扱胴(37)側の濾過部材(38)と排塵処理胴(40)側の濾過部材(41)とを結ぶ接線(S)よりも上側に入り込ませて配置したことを特徴とする脱穀装置としたものである。
【0010】
しかして、排塵処理胴40側から漏下する被処理物は螺旋式移送装置46によって前方へ移送され、例えば揺動選別棚の前部へ還元して選別される。また、排塵処理胴40側の濾過部材41から漏下する被処理物を前方へ移送する螺旋式移送装置46の上部を、扱胴37側の濾過部材38と排塵処理胴40側の濾過部材41とを結ぶ接線Sよりも上側に入り込ませて配置することによって、排塵処理胴40及び該排塵処理胴40側の濾過部材41と螺旋式移送装置46との上下方向の設置範囲が小さく抑えられる。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、扱胴(37)の後部側方に排塵処理胴(40)の前端部を臨ませて該扱胴(37)と排塵処理胴(40)とを略平行に配置すると共に該排塵処理胴(40)の前側に二番還元処理胴(43)を同軸上に軸支して設け、前記扱胴(37)及び排塵処理胴(40)の外周部に濾過部材(38,41)を夫々設けて、前記排塵処理胴(40)側の濾過部材(41)から漏下する被処理物を前方へ移送する螺旋式移送装置(46)の上部を、前記扱胴(37)側の濾過部材(38)と排塵処理胴(40)側の濾過部材(41)とを結ぶ接線(S)よりも上側に入り込ませて配置し、該螺旋式移送装置(46)の外周部に設ける受け部材(46b)の前端部を揺動選別棚(52)の前部上方において開口させたことを特徴とする脱穀装置としたものである。
【0012】
しかして、排塵処理胴40側から漏下する被処理物は、螺旋式移送装置46の外周部に設ける受け部材46bに取り込まれて、該螺旋式移送装置46によって前方へ移送され、揺動選別棚52の前部へ還元して選別される。また、排塵処理胴40側の濾過部材41から漏下する被処理物を前方へ移送する螺旋式移送装置46の上部を、前記扱胴37側の濾過部材38と排塵処理胴40側の濾過部材41とを結ぶ接線Sよりも上側に入り込ませて配置することによって、排塵処理胴40及び該排塵処理胴40側の濾過部材41と螺旋式移送装置46との上下方向の設置範囲が小さく抑えられる。また、揺動選別棚52を経て回収されたに二番物は、二番還元処理胴43によって再処理される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によると、排塵処理胴40側から漏下する被処理物を螺旋式移送装置46によって前方へ移送して、例えば揺動選別棚の前部へ還元して選別できるものでありながら、扱胴37と排塵処理胴40との間の下方の空間部に、該排塵処理胴40側から漏下する被処理物を前方へ移送する螺旋式移送装置46を配置することによって、排塵処理胴40と螺旋式移送装置46との上下方向の設置範囲を小さく抑えることができる。これによって、脱穀装置全体の高さが低くなって重心位置が下がり、この脱穀装置を搭載するコンバインの姿勢を安定化でき、螺旋式移送装置46とこの下側の揺動選別棚との間隔が広くなって揺動選別棚上の藁屑の流れを阻害しにくく、詰まりを起こすような不具合を少なくして、脱穀作業を能率良く行なうことができる。
【0014】
また、請求項2記載の発明によると、排塵処理胴40側から漏下する被処理物を螺旋式移送装置46によって前方へ移送して、例えば揺動選別棚の前部へ還元して選別できるものでありながら、排塵処理胴40側の濾過部材41から漏下する被処理物を前方へ移送する螺旋式移送装置46の上部を、扱胴37側の濾過部材38と排塵処理胴40側の濾過部材41とを結ぶ接線Sよりも上側に入り込ませて配置することによって、排塵処理胴40及び該排塵処理胴40側の濾過部材41と螺旋式移送装置46との上下方向の設置範囲を小さく抑えることができる。これによって、脱穀装置全体の高さが低くなって重心位置が下がり、この脱穀装置を搭載するコンバインの姿勢を安定化でき、螺旋式移送装置46とこの下側の揺動選別棚との間隔が広くなって揺動選別棚上の藁屑の流れを阻害しにくく、詰まりを起こすような不具合を少なくして、脱穀作業を能率良く行なうことができる。
【0015】
また、請求項3記載の発明によると、排塵処理胴40側から漏下する被処理物を螺旋式移送装置46によって前方へ移送して揺動選別棚52の前部へ還元して選別できるものでありながら、排塵処理胴40側の濾過部材41から漏下する被処理物を前方へ移送する螺旋式移送装置46の上部を、前記扱胴37側の濾過部材38と排塵処理胴40側の濾過部材41とを結ぶ接線Sよりも上側に入り込ませて配置することによって、排塵処理胴40及び該排塵処理胴40側の濾過部材41と螺旋式移送装置46との上下方向の設置範囲を小さく抑えることができる。これによって、脱穀装置全体の高さが低くなって重心位置が下がり、この脱穀装置を搭載するコンバインの姿勢を安定化でき、螺旋式移送装置46とこの下側の揺動選別棚52との間隔が広くなって揺動選別棚52上の藁屑の流れを阻害しにくく、詰まりを起こすような不具合を少なくして、脱穀作業を能率良く行なうことができる。そして、螺旋式移送装置46の外周部に設ける受け部材46bの前端部を揺動選別棚52の前部上方において開口させることにより、排塵処理胴40側の濾過部材41から漏下した被処理物を二番還元処理胴43側からの漏下物と共に揺動選別棚52の前部へ還元して選別し、穀粒の回収効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明における脱穀装置の実施の形態を、コンバインに搭載された脱穀装置を例示して説明する。
図1、図2、図3に示すように、コンバインの機体は、機台フレーム1の下側に走行装置2を設け、該機台フレーム1の左側に脱穀装置3を搭載し、機台フレーム1上における該脱穀装置3の側部に穀粒貯留装置4を搭載し、機台フレーム1上における該穀粒貯留装置4の前側にエンジン5を搭載すると共に該エンジン5を被覆するエンジンカバー6を設け、該エンジンカバー6の前側に操縦部7を設け、該操縦部7及び前記脱穀装置3の前側に刈取装置8を設けて構成する。
【0017】
前記走行装置2は、エンジン5の駆動力を静油圧式無段変速装置を介して変速するミッションと、該ミッションから駆動される左右の駆動スプロケット9,9と、機台フレーム1側に連結された左右の転輪フレーム10,10と、該転輪フレーム10,10に軸支された転輪11,11群と、該駆動スプロケット9,9及び転輪11,11群にわたって巻き掛けたクローラ12,12とによって構成する。後述する操縦部7に設ける操向操作レバー13の左右傾動操作によって、この傾動側の駆動スプロケット9が停止ないし差動機構を介して減速駆動されることによって、機体を左右に操向する構成である。
【0018】
前記刈取装置8は、前低後高の傾斜姿勢とした主フレーム14の後上端部を機台フレーム1側から立設した刈取懸架台(図示省略)上に左右回動軸によって軸支し、該主フレーム14の下部後側を油圧シリンダ(図示省略)によって押し上げ可能に構成する。前記油圧シリンダは、前記操向操作レバー13の前後傾動操作に連繋して伸縮する構成である。そして、前記主フレーム14の前端部に左右方向姿勢の下部ギヤケース15の左右中間部を固定し、該下部ギヤケース15の前側に分草フレーム16を固定する一方、該下部ギヤケース15の左側端部から側部縦伝動軸(図示省略)を立ち上げる。前記分草フレーム16は前後方向姿勢の7本の分草杆を有し、各分草杆の先端部に分草体17を取り付ける。また、前記側部縦伝動軸の上端部に左右方向姿勢の上部横伝動軸の左端部を連動連結し、該上部横伝動軸から吊下げ状に設ける引起し伝動軸(図示省略)によって6基の引起装置18を駆動するように構成する。また、前記分草フレーム16の基部下側には刈刃19を設け、該刈刃19の上側から後方にわたって、下段の株元側搬送装置(図示省略)及び上段の穂先側搬送装置20を設ける。前記分草体17によって分草し、引起装置18で引起し、刈刃19で刈り取った穀稈を、該株元側搬送装置および穂先側搬送装置20によって後方へ搬送して、脱穀装置3へ供給する構成である。
【0019】
前記穀粒貯留装置4は、脱穀装置3によって脱穀された穀粒を一時的に貯留するもので、内側上部に穀粒投入口を形成した箱型のグレンタンク21に対して、穀粒排出装置22を備えて構成する。該穀粒排出装置22は、前記グレンタンク21の底部の谷部に前後方向に軸架して設けた底部搬送螺旋(図示省略)と、該底部搬送螺旋のグレンタンク外への突出端部から穀粒を引き継いで揚穀する揚穀螺旋を内装した縦軸回動自在の揚穀筒23と、該揚穀筒23の上端部に上下回動自在に連通する伸縮自在の排出筒24とから構成する。25は、前記排出筒24の伸縮用駆動装置である。また、該排出筒24を格納位置にて受け止め支持する受け台26を脱穀装置3の上面に固定すると共に、該受け台26を、前記グレンタンク21の穀粒投入口へ接続して設ける一番揚穀筒27に連結する。
【0020】
前記操縦部7は、前記エンジンカバー6の上面側に座席28を取り付け、該座席28の前方に立設したフロント操作ポスト29の右側一側に前記操向操作レバー13を立設すると共に該操向操作レバー13の後側に手首載せ台30を設け、前記座席28の左側方に、主変速レバー、副変速レバー、刈取クラッチレバー、脱穀クラッチレバー、穀粒排出装置22の穀粒排出クラッチレバー、旋回操作レバー及び伸縮操作スイッチ等を設けて構成する。
【0021】
しかして、図4、図5、図6に示すように、前記脱穀装置3は、上部に設ける扱室31、排塵処理室32、二番処理室33、排稈室34と、下部に設ける選別室35とから構成する。
【0022】
前記扱室31内には、線状の扱歯36を植設した扱胴37を軸架すると共に、該扱胴37の下側外周に沿って扱網(濾過部材)38を張設する。
また、前記排塵処理室32は、その前端部を前記扱室31の後端部側方に開口した連通口39に連通させ、螺旋体を外周に巻き回した排塵処理胴40を軸架すると共に、該排塵処理胴40の下側から側部にわたる外周部に沿って網状または格子状の濾過部材41を張設する。該濾過部材41の後端部は、後述する揺動選別棚の後端部上側において開口する。
【0023】
また、前記二番処理室33内には、多数の処理歯42を有する二番還元処理胴43を前記排塵処理胴40と同軸にて回転するように軸架すると共に、該二番還元処理胴43の下側外周部に沿って盲板を設置する。更に、前記二番処理室33における後端部上側に二番揚穀筒45の二番還元口を連通させて設ける。前記処理歯42は、所定の送り角を有しており、二番還元された二番還元物は、該二番還元処理胴43の回転によって前方へ移送されながら処理され、該二番還元処理胴43の前端部に設けた放出用の羽根によって、前記盲板の前端部に開口した還元口から揺動選別棚の前部へ放擲落下する構成である。
【0024】
しかして、前記扱胴37と排塵処理胴40との間の下方の三角形状の仮想空間部に、該排塵処理胴40の濾過部材41から漏下する被処理物を受け入れて後方へ移送する螺旋式移送装置46を設ける。
【0025】
該螺旋式移送装置46は、前記排塵処理胴40とこれに同軸で続く二番還元処理胴43との長さに相当する長尺の連続螺旋に形成し、左右横側および下側に沿って受樋(受け部材)46bを設ける。該受樋46bのうち、右側の壁部は排塵処理胴40の濾過部材41側に向かって上がり傾斜させ、該受樋46bの左側の壁部は扱胴37の扱網38側に向かって上がり傾斜させて設ける。尚、前記受樋46bは、盲板または目抜き板のいずれに形成してもよい。目抜き板に形成すれば、被処理物を前方へ移送しながら処理して揺動選別棚上へ漏下させることができる。尚、前記扱胴37下側外周の扱網(濾過部材)38と排塵処理胴40外周部の濾過部材41とを結ぶ接線Sよりも、前記螺旋式移送装置46の上部が上側に入り込むように設定するものである。また、前記螺旋式移送装置46及び受樋46bの後端部(移送始端部)は前記排塵処理室32の後端部近傍に設定すると共に、該螺旋式移送装置46及び受樋46bの前端部は前記二番還元処理胴43及び該二番還元処理胴43の下側外周部の盲板の前端部近傍位置に設定する。そして、前記螺旋式移送装置46の受樋46bの前端部に開口部を設けて、螺旋式移送装置46によって後方から前方へ移送されてきた被処理物が、該螺旋式移送装置46の前端部に設けた放出用の羽根によって、該開口部から揺動選別棚の前端部に放擲落下するように構成する。
【0026】
尚、前記扱室31の外側面に扱口47を形成し、該扱口47に沿ってフィードチェン48を張設する。また、前記排稈室34には、前記フィードチェン48の後端部に連続する排藁搬送装置49を設ける。該排藁搬送装置49は、株元側搬送チェンとラグ式の穂先側搬送装置とから成る。また、該排藁搬送装置49の下側には横断流ファン形態の排塵ファン50を設ける。51は、前記排藁搬送装置49によって排出される排藁を細断して圃場に放出する排藁カッターである。
【0027】
また、前記選別室35には、移送棚とシーブ110と排藁ラック111を有する揺動選別棚52を駆動揺動自在に設け、該揺動選別棚52の下側には、前側から、唐箕53と、一番螺旋54と、二番螺旋55とを配置する。112は第二唐箕である。前記一番螺旋54の機体内側端部に前記一番揚穀筒27の下端部を連通させ、前記二番螺旋55の機体内側端部に前記二番揚穀筒45の下端部を連通させた構成である。
【0028】
次に、上記脱穀装置3の伝動について説明する。
まず、エンジン5の出力軸56から静油圧式無段変速装置57の入力軸58へベルト伝動機構を設ける。該入力軸58の外端部には冷却ファン59を取り付ける。該入力軸58によって油圧ポンプ60を駆動し、該油圧ポンプ60からの送油によって油圧モータ61が駆動される構成であり、前記油圧ポンプ60の斜盤角度を前記操縦部7に設ける主変速レバーの傾動操作によって変更することにより、該油圧ポンプ60からの吐き出し油量が変更されて、油圧モータ61の回転出力が変速される構成である。そして、この油圧モータ61の出力軸62から減速ギヤ機構63を介してミッションケース64の入力軸65へ入力されるのであるが、この減速ギヤ機構63の中間軸をフィードチェン出力軸66とし、更にミッションケース64の入力軸65からワンウェイクラッチKを介して刈取出力プーリ67を駆動するように構成する。また、前記入力軸65から副変速機構68を介してセンターギヤ69に入力し、該センターギヤ69に対して係合離脱操作自在な左右のサイドクラッチギヤ70,70を介して左右の車軸71,71及び駆動スプロケット9,9が駆動される構成である。
【0029】
前記フィードチェン出力軸66からベルトテンションクラッチ機構72とワンウェイクラッチK2とカウンタ軸73とベルト伝動機構とを介してギヤケース74へ入力し、該ギヤケース74から駆動されるスプロケット75によって前記フィードチェン48を駆動するように構成する。
【0030】
また、前記エンジン5の出力軸56から脱穀装置3の前壁に取り付けた処理胴伝動ケース76の入力軸77へベルト伝動機構を設け、該処理胴伝動ケース76によって前記二番還元処理胴43及び排塵処理胴40を同軸で駆動するように構成すると共に、該処理胴伝動ケース76によって前記螺旋式移送装置46を駆動するように構成する。尚、前記螺旋式移送装置46は排塵処理胴40の後端部から連動して駆動するように構成してもよい。また、前記処理胴伝動ケース76の出力軸78から扱胴伝動ケース79の入力軸80へベルト伝動機構を設け、該扱胴伝動ケース79を介して扱胴37を駆動するように構成する。更に、前記扱胴37の軸の後端部からベルト伝動機構を介して前記排藁搬送装置49を駆動するように構成する。
【0031】
以上の構成により、走行装置2を前進駆動しながら、圃場に植立する穀稈を分草体17によって分草し、引起装置18によって引起し、刈刃19によって刈り取り、株元側搬送装置および穂先側搬送装置20によって後方へ搬送してフィードチェン48へ引き継ぐ。そして、このフィードチェン48によって穀稈の穂先側が扱口47から扱室31内に挿入された状態で後方へ搬送され、この際に穀稈の穂先部が扱胴37の扱歯36の作用を受けて脱粒される。一部の精粒は扱網38から漏下して揺動選別棚52の前部の移送棚に漏下するが、この扱網38から漏下しなかった被処理物は、扱室31後部の連通口39から排塵処理胴40の螺旋の作用によって排塵処理室32の前端部に取り込まれ、該排塵処理室32内の排塵処理胴40によって再処理される。そして、排塵処理胴40側の濾過部材41から漏下する被処理物は螺旋式移送装置46の受樋46bに取り込まれて該螺旋式移送装置46の螺旋の作用によって前方へ移送され、揺動選別棚52前部の移送棚上へ還元して選別される。この際、前記螺旋式移送装置46の上部を、前記扱胴37側の濾過部材38と排塵処理胴40側の濾過部材41とを結ぶ接線Sよりも上側に入り込ませて配置することによって、排塵処理胴40及び該排塵処理胴40側の濾過部材41と螺旋式移送装置46との上下方向の設置範囲が小さく抑えられる。また、揺動選別棚52を経て回収されたに二番物は、二番還元処理胴43によって再処理される。
【0032】
これにより、排塵処理胴40側から漏下する被処理物を螺旋式移送装置46によって前方へ移送して揺動選別棚52の前部へ還元して選別できるものでありながら、排塵処理胴40側の濾過部材41から漏下する被処理物を前方へ移送する螺旋式移送装置46の上部を、前記扱胴37側の濾過部材38と排塵処理胴40側の濾過部材41とを結ぶ接線よりも上側に入り込ませて配置することによって、排塵処理胴40及び該排塵処理胴40側の濾過部材41と螺旋式移送装置46との上下方向の設置範囲を小さく抑えることができる。これによって、脱穀装置全体の高さが高くなって重心位置が高くなり、この脱穀装置を搭載するコンバインの姿勢が不安定となったり、螺旋式移送装置46とこの下側の揺動選別棚52との間隔が狭くなって揺動選別棚52上の藁屑の流れを阻害し、詰まりを起こすような不具合を少なくして、脱穀作業を能率良く行なうことができる。そして、螺旋式移送装置46の外周部に設ける受け部材46bの前端部を揺動選別棚52の前部上方において開口させることにより、排塵処理胴40側の濾過部材41から漏下した被処理物を二番還元処理胴43側からの漏下物と共に揺動選別棚52の前部へ還元して選別し、穀粒の回収効率を高めることができる。
【0033】
尚、前記排塵処理胴40の軸芯を、脱穀装置の機体奥側の側壁91と略同じ位置とし、該排塵処理胴40の機体奥側の半周部を、脱穀装置の機体奥側の側壁91から外側(機体内側)へ突出させ、該排塵処理胴40の突出部を包囲するように排塵処理室32の壁Wを膨出させて形成してもよい。これにより、排塵処理胴40の軸芯より内側の半周部が揺動選別棚52の上側に臨む。この結果、上記穀粒の回収効率の向上に加え、脱穀装置の全体幅をコンパクトに構成することができる。
【0034】
また、上記排塵処理胴40と同軸に設ける二番還元処理胴43の機体奥側の半周部を、脱穀装置の機体奥側の側壁91から外側(機体内側)へ突出させ、該二番還元処理胴43の突出部を包囲するように二番処理室33の壁を膨出させて形成してもよい。これにより、二番処理室33の軸芯より内側の半周部が揺動選別棚52の上側に臨む。この結果、上記穀粒の回収効率の向上に加え、脱穀装置の全体幅をコンパクトに構成することができる。
【0035】
また、前記螺旋式移送装置46の受樋46bは、扱網(濾過部材)38の下側にも臨んでいるため、該扱網38を通過した濾過物の一部も、排塵処理室32からの漏下物と共にこの受樋46b内に取り込まれて螺旋式移送装置46によって前方へ移送され、揺動選別棚52前部に還元されて再選別される。尚、受樋46bの上側に臨む扱網38の目合いを、これ以外の部分の目合いよりも大きく設定してもよい。また、これとは逆に、受樋46bの上側に臨む扱網38の目合いを、これ以外の部分の目合いよりも小さく設定してもよい。これにより、上記穀粒回収効率の向上に加え、枝梗が除去でき、脱穀精度及び脱穀能力を向上させることができる。
【0036】
また、図7、図8に示すように、前記二番還元処理胴43の前端部位置及び盲板の還元口T位置よりも、螺旋式移送装置46の前端部位置及び受樋46bの開口部C位置を後方に設定し、該前後に位置のずれた還元口T及び開口部Cから被処理物を揺動選別棚52の移送棚の中央側(左側)へ向けて放擲するように構成してもよい。これにより、二番処理室33から放擲される被処理物と螺旋式移送装置46から放擲される被処理物とが集中せずに移送棚上に円滑に拡散されるため、選別精度および選別能力を向上させることができる。
【0037】
また、前記扱室31の後側壁から排藁搬送装置49の穂先側にわたって、該排藁搬送装置49によって搬送中の排藁から落下する刺さり粒を落下案内して回収する回収板92を設けてもよい。該回収板92は、右端縁を前記受樋46bの側壁に連続して設置し、自由端となる左端縁を上がり傾斜姿勢にして設ける。また、脱穀装置の背面視において、扱胴37は反時計回りに回転し、排塵処理胴40及び二番還元処理胴43は時計周りに回転するように構成する。これにより、排藁搬送装置49によって搬送中の排藁から刺さり粒が落下しても、これを直接揺動選別棚52上に落下させることなく、螺旋式移送装置46に取り込んで前方へ移送して揺動選別棚52の前部に供給することができ、選別能力の向上および脱穀損失の低減を図ることができる。
【0038】
また、平面視において、前記回収板92の縁部形状を、排藁搬送装置49と略平行に設定してもよい。これにより、排藁搬送装置49によって搬送中の排藁から落下する刺さり粒を、螺旋式移送装置46へ効率良く回収することができる。
【0039】
次に、図9、図10、図11に示すように、前記螺旋式移送装置46に代えて、ベルト式移送装置93を設けてもよい。
即ち、前記扱胴37と排塵処理胴40との間の下方位置において、排塵処理室32後端部の排塵口よりも前側の位置に大径の後部ローラ94を横軸によって軸支すると共に、前記扱室31の後端部の下側の位置に小径の前部ローラ95を横軸によって軸支し、これら後部ローラ94と前部ローラ95とにわたって無端状の広幅の平ベルト96を巻き掛けて設ける。
【0040】
これにより、排塵処理室32の後端部の排塵口から落下する大きな藁屑が平ベルト96上に落ちることなく、濾過部材41を通過した細かい被処理物だけを平ベルト96によって前方へ移送して揺動選別棚52の中間部(グレンシーブ上)へ供給することができ、選別精度及び選別能力を向上させることができる。
【0041】
また、前記前記後部ローラ94を前部ローラ95よりも高い位置に設置することにより、ベルト式移送装置93を後上がり傾斜姿勢に設定する。これにより、該ベルト式移送装置93による被処理物の前方への移送を促進し、被処理物を速やかに揺動選別棚52の中間部へ供給でき、ベルト式移送装置93上での被処理物の堆積を少なくして、選別精度及び選別能力を向上させることができる。
【0042】
また、揺動選別棚52後部のストローラック97上側と排塵ファン50との上下間隔部の空間を利用して大径の後部ローラ94を配置し、該大径の後部ローラ94へ駆動入力する構成とすることにより、ベルト式移送装置93の駆動力を大きくすることができる。この場合、前記後部ローラ94の駆動軸100を、脱穀装置の奥側の側壁99に取り付けた軸受101によって片持ち支持し、該駆動軸100の突出端部に取り付けた入力プーリ102と、前記二番螺旋55の軸の突出端部に取り付けた出力プーリ103との間に伝動ベルト104を巻き掛ける。尚、前部ローラ95の従動軸105も、脱穀装置の奥側の側壁99に取り付けた軸受(図示省略)によって片持支持する構成である。このように、ベルト式移送装置93の伝動機構を脱穀装置の奥側外側面に配置することにより、該ベルト式移送装置93への伝動機構を簡素に構成することができる。
【0043】
また、前記ベルト式移送装置93は、排藁搬送装置49の下側にも臨んでいるため、該排藁搬送装置49によって搬送中の排藁から落下する刺さり粒をこのベルト式移送装置93上に落下させて、揺動選別棚52の中間部へ供給することができ、穀粒の回収損失を低減させて脱穀能力を向上させることができる。
【0044】
また、図11に示すように、前記ベルト式移送装置93の側部に沿って回収板98の基部を固定し、該回収板98の上端縁が排藁搬送装置49の下側へ指向するような傾斜姿勢に設けてもよい。これにより、排藁搬送装置49によって搬送中の排藁から落下する刺さり粒をこのベルト式移送装置93上により正確に落下させて、揺動選別棚52の中間部へ供給することができ、揺動選別棚52におけるシーブ負荷を低減させ、穀粒の回収損失を低減させて脱穀能力を向上させることができる。
【0045】
また、図12、図13に示すように、前記扱胴37の後部を後方へ延長して四番処理胴106を形成してもよい。該四番処理胴106の周面には、前記扱歯36よりも狭いピッチで処理歯107を植設し、該処理歯107を扱室31から出た排藁の穂先側に作用させて、該穂先側に刺さり込んでいる穀粒を脱落させて前記ベルト式移送装置93上に落下させるものである。これにより、排藁に刺さり込んだ穀粒を揺動選別棚52上へ直接落下させることなく、ベルト式移送装置93によって前方へ移送して揺動選別棚52の中間部へ供給することができ、穀粒の回収損失を低減させて脱穀能力を向上させることができる。
【0046】
また、図14、図15に示すように、前記回収板98を設けずに、揺動選別棚52上における前記四番処理胴106と一番螺旋54との間に相当する位置に、前記扱室31後端の排稈口108から排出される藁屑を一旦受けてから揺動選別棚52上へ落とす受け装置109を取り付けてもよい。該受け装置109は、揺動選別棚52の側壁部に連結する支持部109aと、該支持部109aの上部に支持されて後方の排塵ファン50下側へ向けて延出する6本の藁屑ラック109bとから構成する。これにより、前記扱室31の排稈口108から排出された藁屑の塊は、受け装置109の藁屑ラック109bによって篩い選別され、穀粒を含む細かな被選別物は藁屑ラック109bの隙間から揺動選別棚52のシーブ110中間部上に落下して更に選別され、藁屑ラック109bの隙間から落下しない大きな藁屑は、該藁屑ラック109b上を後方へ移送されて該藁屑ラック109bの後端部から揺動選別棚52のシーブ110終端部上に落下して排藁ラック111に引き継がれて篩い選別される。しかして、四番処理胴106によって処理される排藁に刺さり込んだ穀粒は、単粒が主であり、二番処理を行なう必要がないため、上記のように構成することにより、四番処理胴106の作用を受けて落下した穀粒をそのまま一番螺旋54に取り込んで回収してグレンタンク21へ貯留することができ、二番処理を行なわないことによって、回収穀粒の損傷を防止することができ、品質の高い穀粒を収穫することができる。また、前記受け装置109は揺動選別棚52と一体で揺動するため、該受け装置109の藁屑ラック109bが、四番処理胴106の作用を受ける排藁の穂先部のガイドとして作用し、四番処理胴106による刺さり粒の回収を促進させることができる。
【0047】
尚、図16に示すように、前記扱網(濾過部材)38を、上扱網38aと下扱網38bとの二重構成としてもよい。前記上扱網38aと下扱網38bとは、線状材を編んだ網に構成するか、若しくは鉄板に多数の漏下孔を穿設した目抜き板状に形成してもよい。鉄板に漏下孔を穿設した構成とすると、上扱網38aと下扱網38bとを二重合わせにした場合に、両者間の隙間が小さくすることができる。そして、該上扱網38a側を扱室31側に固定的に取り付ける一方、前記下扱網38bを上扱網38aの下面に沿わせて円弧方向に摺動調節可能に支持する。これにより、下扱網38bを円弧方向に摺動させると、上扱網38a側の漏下孔38aaと下扱網38b側の漏下孔38bbとが重合して、この重合度合いを変更することによって、扱網38の漏下目合い(漏下孔の連通面積)が大小に調節される。そして、刈取脱穀作業を行なう圃場の条件や作物の条件(濡れた穀稈または乾いた穀稈など)や刈取作業車速に応じて、扱網38の漏下目合いを変更することにより、扱室31内で発生する藁屑や穀粒の漏下性を変更して、脱穀作業を円滑に行なうことができる。また、前記下扱網38bを電動モータ(図示省略)によって円弧方向に摺動自在に構成し、コンバインの刈取作業車速を検出する車速センサを設けて、コントローラに対して、その入力側に前記車速センサを接続する一方、その出力側に前記電動モータを接続して構成してもよい。これにより、車速センサによって検出される車速が高速になるほど、電動モータへの出力によって下扱網38bを円弧方向へ摺動させて扱網38の漏下目合いが大きくなるように自動制御される。即ち、扱網38の目合いが一定であると、車速が遅い場合には、扱網38から穀粒の漏下が多いために穀粒が機外へ飛散して損失となり易い。これを解消するために、従来は、フィードチェン48を車速に追従させて変速し、車速が遅い場合に穀稈の搬送速度を低下させ、穀稈の層によって扱網38の目合いを塞ぎ、扱網38の目合いからの穀粒の漏下を減少させ、損失を低減するように試みていた。しかしながら、このような従来技術では、圃場の条件や作物条件によって、充分に対応できず、収穫損失を防ぐことができなかった。しかるに、上述のように扱網38の目合いを自動制御するように構成し、コンバインの車速が遅い場合には扱網38の目合いを小さくし、車速が高速になると扱網38の目合いを大きくすることによって、扱網38からの穀粒の漏下量を調節して、収穫損失を少なくすることができる。
【0048】
また、上記上扱網38a側を扱室31側に固定的に取り付ける一方、下扱網38bを上扱網38aの下面に沿わせて扱胴37の軸芯方向に摺動調節可能に支持する構成としてもよい。これにより、下扱網38bを扱胴37の軸芯方向に摺動させると、上扱網38a側の漏下孔38aaと下扱網38b側の漏下孔38bbとが重合して、この重合度合いを変更することによって、扱網38の漏下目合い(漏下孔の連通面積)が大小に調節される。そして、刈取脱穀作業を行なう圃場の条件や作物の条件(濡れた穀稈または乾いた穀稈など)や刈取作業車速に応じて、扱網38の漏下目合いを変更することにより、扱室31内で発生する藁屑や穀粒の漏下性を変更して、脱穀作業を円滑に行なうことができる。また、前記下扱網38bを電動モータ(図示省略)によって扱胴37の軸芯方向に摺動自在に構成し、コンバインの刈取作業車速を検出する車速センサを設けて、コントローラに対して、その入力側に前記車速センサを接続する一方、その出力側に前記電動モータを接続して構成してもよい。これにより、車速センサによって検出される車速が高速になるほど、電動モータへの出力によって下扱網38bを扱胴37の軸芯方向へ摺動させて扱網38の漏下目合いが大きくなるように自動制御される。即ち、扱網38の目合いが一定であると、車速が遅い場合には、扱網38から穀粒の漏下が多いために穀粒が機外へ飛散して損失となり易い。これを解消するために、従来は、フィードチェン48を車速に追従させて変速し、車速が遅い場合に穀稈の搬送速度を低下させ、穀稈の層によって扱網38の目合いを塞ぎ、扱網38の目合いからの穀粒の漏下を減少させ、損失を低減するように試みていた。しかしながら、このような従来技術では、圃場の条件や作物条件によって、充分に対応できず、収穫損失を防ぐことができなかった。しかるに、上述のように扱網38の目合いを自動制御するように構成し、コンバインの車速が遅い場合には扱網38の目合いを小さくし、車速が高速になると扱網38の目合いを大きくすることによって、扱網38からの穀粒の漏下量を調節して、収穫損失を少なくすることができる。
【0049】
また、上記上扱網38a側を扱室31側に固定的に取り付ける一方、下扱網38bを上扱網38aの下面に沿わせて円弧方向と扱胴37の軸芯方向との合成方向に摺動調節可能に支持する構成としてもよい。これにより、下扱網38bを円弧方向と扱胴37の軸芯方向との合成方向に摺動させると、上扱網38a側の漏下孔38aaと下扱網38b側の漏下孔38bbとが重合して、この重合度合いを変更することによって、扱網38の漏下目合い(漏下孔の連通面積)が大小に調節される。そして、刈取脱穀作業を行なう圃場の条件や作物の条件(濡れた穀稈または乾いた穀稈など)や刈取作業車速に応じて、扱網38の漏下目合いを変更することにより、扱室31内で発生する藁屑や穀粒の漏下性を変更して、脱穀作業を円滑に行なうことができる。また、前記下扱網38bを電動モータ(図示省略)によって円弧方向及び扱胴37の軸芯方向の合成方向に摺動自在に構成し、コンバインの刈取作業車速を検出する車速センサを設けて、コントローラに対して、その入力側に前記車速センサを接続する一方、その出力側に前記電動モータを接続して構成してもよい。これにより、車速センサによって検出される車速が高速になるほど、電動モータへの出力によって下扱網38bを円弧方向及び扱胴37の軸芯方向の合成方向へ摺動させて扱網38の漏下目合いが大きくなるように自動制御される。即ち、扱網38の目合いが一定であると、車速が遅い場合には、扱網38から穀粒の漏下が多いために穀粒が機外へ飛散して損失となり易い。これを解消するために、従来は、フィードチェン48を車速に追従させて変速し、車速が遅い場合に穀稈の搬送速度を低下させ、穀稈の層によって扱網38の目合いを塞ぎ、扱網38の目合いからの穀粒の漏下を減少させ、損失を低減するように試みていた。しかしながら、このような従来技術では、圃場の条件や作物条件によって、充分に対応できず、収穫損失を防ぐことができなかった。しかるに、上述のように扱網38の目合いを自動制御するように構成し、コンバインの車速が遅い場合には扱網38の目合いを小さくし、車速が高速になると扱網38の目合いを大きくすることによって、扱網38からの穀粒の漏下量を調節して、収穫損失を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】コンバインの正面図である。
【図2】コンバインの側面図である。
【図3】コンバインの平面図である。
【図4】脱穀装置およびその周辺部の説明用平面図である。
【図5】脱穀装置の説明用側面図である。
【図6】脱穀装置の説明用背面図である。
【図7】脱穀装置およびその周辺部の説明用平面図である。
【図8】脱穀装置の説明用背面図である。
【図9】脱穀装置およびその周辺部の説明用平面図である。
【図10】脱穀装置の説明用側面図である。
【図11】脱穀装置の説明用背面図である。
【図12】脱穀装置およびその周辺部の説明用平面図である。
【図13】脱穀装置の説明用背面図である。
【図14】脱穀装置およびその周辺部の説明用平面図である。
【図15】脱穀装置の説明用側面図である。
【図16】扱網部の斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
37 扱胴
38 扱網(濾過部材)
40 排塵処理胴
41 濾過部材
43 二番還元処理胴
46 螺旋式移送装置
46b 受け部材
52 揺動選別棚
S 接線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(37)の後部側方に排塵処理胴(40)の前端部を臨ませて該扱胴(37)と排塵処理胴(40)とを略平行に配置し、該扱胴(37)と排塵処理胴(40)との間の下方の空間部に、該排塵処理胴(40)側から漏下する被処理物を前方へ移送する螺旋式移送装置(46)を配置したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
扱胴(37)の後部側方に排塵処理胴(40)の前端部を臨ませて該扱胴(37)と排塵処理胴(40)とを略平行に配置すると共に該扱胴(37)及び排塵処理胴(40)の外周部に濾過部材(38,41)を夫々設け、前記排塵処理胴(40)側の濾過部材(41)から漏下する被処理物を前方へ移送する螺旋式移送装置(46)の上部を、前記扱胴(37)側の濾過部材(38)と排塵処理胴(40)側の濾過部材(41)とを結ぶ接線(S)よりも上側に入り込ませて配置したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項3】
扱胴(37)の後部側方に排塵処理胴(40)の前端部を臨ませて該扱胴(37)と排塵処理胴(40)とを略平行に配置すると共に該排塵処理胴(40)の前側に二番還元処理胴(43)を同軸上に軸支して設け、前記扱胴(37)及び排塵処理胴(40)の外周部に濾過部材(38,41)を夫々設けて、前記排塵処理胴(40)側の濾過部材(41)から漏下する被処理物を前方へ移送する螺旋式移送装置(46)の上部を、前記扱胴(37)側の濾過部材(38)と排塵処理胴(40)側の濾過部材(41)とを結ぶ接線(S)よりも上側に入り込ませて配置し、該螺旋式移送装置(46)の外周部に設ける受け部材(46b)の前端部を揺動選別棚(52)の前部上方において開口させたことを特徴とする脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−5740(P2008−5740A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178264(P2006−178264)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】