説明

脱穀装置

【課題】扱ぎ残しを防止すると共に、脱穀処理後の排藁中に刺さり込んだ穀粒を回収できるものとして、穀粒回収効率を高める
【解決手段】上扱胴軸(13)で軸支した大径扱胴(12)の下側に、下扱胴軸(15)で軸支した小径扱胴(14)を設け、大径扱胴(12)と小径扱胴(14)とが最も近接する間隙部にて、脱穀する穀稈の稈身方向と、大径扱胴(12)及び小径扱胴(14)の接線方向とを略一致させ、後方から見て大径扱胴(12)を反時計回りに、小径扱胴(14)を時計回りに回転駆動する構成とし、大径扱胴(12)と小径扱胴(14)との周速を略同一速度に設定し、大径扱胴(12)と小径扱胴(14)の下側に受網(16)を夫々沿わせて設け、大径扱胴(12)の移送終端部を下側の該小径扱胴(14)の移送終端部よりも後方へ延長して設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示すように、脱穀装置の脱穀室内には、回転自在に軸支内装した外周部に多数本の扱歯を植設した扱胴を軸支して設け、該扱胴の回転により、穀粒を脱穀処理する構成であると共に、該脱穀室の横側の後側部には、該脱穀室内で未脱穀処理の未脱穀処理物の供給を受けて再脱穀処理する回転自在に処理胴を軸支した排塵処理室を設けている。又、該排塵処理室の前側で、該脱穀室の横側には、二番処理室の供給を受けて再脱穀処理する回転自在に二番処理胴を設け、脱穀済み穀粒の機外への飛散防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−45850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
穀稈を脱穀する脱穀装置の脱穀室内へ回転自在に軸支した扱胴の外径部には、多数本の扱歯を植設し、この多数本の扱歯の回転によって脱穀される、該脱穀室内へ一度に多量の穀稈が供給されることが発生したり、又、扱胴の回転数が大幅に低下したりすることが発生すると、扱ぎの残しが発生したり、ささり粒が発生することがあったが、これらの問題点を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述のような課題を解決するために、この発明は、次のような技術手段を講じる。
請求項1記載の発明は、刈取り穀稈を脱穀する脱穀装置(2)の扱胴室(11)内に、上扱胴軸(13)で軸支した大径扱胴(12)の下側に、下扱胴軸(15)で軸支した小径扱胴(14)を設け、該大径扱胴(12)と小径扱胴(14)とが最も近接する間隙部にて、脱穀する穀稈の稈身方向と、大径扱胴(12)及び該小径扱胴(14)の接線方向とを略一致させ、後方から見て大径扱胴(12)を反時計回りに、小径扱胴(14)を時計回りに回転駆動する構成とし、該大径扱胴(12)と小径扱胴(14)との周速を略同一速度に設定し、該大径扱胴(12)と小径扱胴(14)の下側に受網(16)を夫々沿わせて設け、大径扱胴(12)の移送終端部を下側の該小径扱胴(14)の移送終端部よりも後方へ延長して設けたことを特徴とする脱穀装置としたものである。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記大径扱胴(12)の後部を受網(16)よりも後方まで延長したことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置としたものである。
請求項3記載の発明は、前記受網(16)には大径扱胴(12)及び小径扱胴(14)の軸心方向と直交する仕切板(25)を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀装置としたものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によると、扱胴室(11)内に設けた上側の大径扱胴(12)と下側の小径扱胴(14)との間で穀稈を脱穀処理することにより、扱ぎ残しを防止できる。又、大径扱胴(12)の後方延長部分で、脱穀処理後の排藁中に刺さり込んだ穀粒を落とすことができ、穀粒の回収効率を高めることができる。
【0008】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果を奏するうえに、大径扱胴(12)の後方延長部分で、脱穀処理後の排藁中に刺さり込んだ穀粒を受網(16)を通過することなく円滑に落とすことができ、穀粒の回収効率を高めることができる。
【0009】
請求項3記載の発明によると、上記請求項1又は請求項2記載の発明の効果を奏するうえに、扱胴室(11)内で流動する穀粒や排藁の混ざった脱粒物を仕切板(25)で遮断し、この仕切板(25)の後側で、大径扱胴(12)の後方延長部分による刺さり粒の回収を行なうことができ、穀粒の回収効率を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】脱穀機の正面断面図
【図2】脱穀機の側面断面図
【図3】脱穀装置の穀稈移送チェン部の正面図
【図4】脱穀装置の穀稈移送チェン部の平面図
【図5】詰り検出装置部の平面図
【図6】脱穀装置の穀稈移送チェン部の正面図
【図7】脱穀装置の穀稈移送チェン部の平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
脱穀機1は、図1〜図5で示すように、穀稈挿入側を前側とすると、前下側板3と、前上側板4と、後側板5と、入口側板6と、出口側板7と、コ字形状の扱室カバー板8等とにより、略箱形状に形成した構成である。該扱室カバー板8の右側には、複数個を左右方向に連結して、上下移動自在なコ字形状の挟持杆9を設け、該挟持杆9の下側には、穀稈移送チェン10を設け、該穀稈移送チェン10と該挟持杆9との間に、脱穀する穀稈を挟持して、該脱穀機1の脱穀装置2の扱胴室11内を挟持移送する。該扱胴室11内には、上下二段で前後方向に上側に大径扱胴12を上扱胴軸13で軸支して設けると共に、該大径扱胴12の下側には、小径扱胴14を下扱胴軸15で軸支して設けている。
【0012】
又、脱穀する穀稈の搬送保持部から前記大径扱胴12、及び該小径扱胴14の接線方向が略同一になるように、該大径扱胴12と、該小径扱胴14とを配設し、後方部より見て該大径扱胴12を反時計回りに、更に、該小径扱胴14を時計回りに回転駆動すべく設け、該大径扱胴12と該小径扱胴14との周速は、略同一になるように構成し、脱穀済み穀粒と、機外へ排出する一部の藁屑等が漏下する受網16は、二段の該大径扱胴12と、該小径扱胴14との外周部に植設する各種の扱歯17の先端部と所定の隙間を設けて沿わせて張設し、更に該大径扱胴12の移送終端部を下側の該小径扱胴14の移送終端部より所定長さ延長して設け、該大径扱胴12の延長部には、該受網16を設けない構成にした脱穀機1の選別機構16とした構成であり、該選別機構16を主に図示して説明する。
【0013】
前記脱穀機1は、図1〜図3で示すように、該脱穀機1の脱穀装置2は、脱穀する穀稈が該脱穀装置2前側の上下に設けている、挟持杆9と穀稈移送チェン10との間の入口側へ供給されて、出口側へと移送されると、この移送中に穀稈の穂先側へ付着した穀粒は、該大径扱胴12の外周部と、該小径扱胴14の外周部との円周方向と横方向とに所定の間隔を設けて、各種類の各扱歯17が植設された、この各種の扱歯17により脱穀される構成であり、脱穀済み穀粒と脱穀で発生した藁屑とに風選別されて、脱穀済み穀粒は機外へ排出され、所定の収納装置内へ収納される。又、藁屑等は機外へ排出される。脱穀済み穀稈は、該穀稈移送チェン10と、該挟持杆9とで移送終端部まで移送され、機外へ排出される。該穀稈移送チェン10の移送終端部側には、テンション装置10hを移動自在に設け、該穀稈移送チェン10の伸びに対応させている。
【0014】
前記扱胴室11の下側に設けた受網16から漏下する脱穀処理物を受け、揺動選別する揺動選別装置18を設け、該揺動選別装置18で選別された穀粒は、下部へ漏下する。この漏下中に、該揺動選別装置18下側の左部前巾にわたり、気風が発生する送風装置19を設け、該揺動選別装置18から漏下する漏下物を、穀粒と藁屑等とに風選別する構成である。
【0015】
前記送風装置19の右側には、一番選別装置20を設け、この一番選別装置20は、一番選別棚20aと接続する一番受樋20bを設け、一番受樋20b内には、一番移送螺旋20cを回転自在に軸支して設け、脱穀済みの一番穀粒を外側へ設けた揚穀装置21内へ移送供給し、この揚穀装置21で機外の穀粒受装置内へ移送供給する構成としている。
【0016】
前記一番選別装置20の横側には、二番選別装置22を設け、この二番選別装置22は、二番選別棚22aと、左側の一番選別棚20aと接続する二番受樋22bを設け、この二番受樋22b内には、二番移送螺旋22cを回転自在に軸支して設け、二番処理物を前外側に設けた二番還元装置22d内へ移送供給し、この二番還元装置22dで扱胴室11内へ還元されて、再処理する構成である。
【0017】
前記扱胴室11の後方部で、該揺動選別装置18上側の一方側には、脱穀処理時に発生した、藁屑。稈切、及び塵埃等を機外へ排出する吸引装置23を設けている。
前記小径扱胴14の穀稈移送の終端部には、図1で示すように、プレートファン24を設けると共に、該小径扱胴14の移送終端部の右側と、該小径扱胴14の略中央部とには、所定の間隔を設けて仕切板25を設けている。又、該大径・小径扱胴12、14の下部側で、脱穀方向の移送終端部の受網16の後端部には、図1で示す如くプレートファン24を設けた構成である。
【0018】
上記により、下側の前記小径扱胴14の右側下部から出る排塵物を揺動選別装置18上に広く散し、右方上部、及び上側の大径扱胴12の移送終端部の藁屑を処理胴26に送ることができる。又、上側、下側のそれぞれの扱胴12、14に沿い、該上・下扱胴軸13、15と平行に切刃11aや該仕切板25を設けたことにより、発生する藁屑のこなしを助長し、穀粒の稈へのささりを低減することができる構成としている。
【0019】
上記の該受網16の移送後端部側には、図1で示すように、該扱胴室11内には、該仕切板25を設け、この仕切板25と、該受網16とを一体に形成している。又、上側、下側のそれぞれの大径扱胴12、小径扱胴14に沿い、軸と直角に切刃11aや該仕切板25を設けた構成である。
【0020】
これにより、発生した藁屑をこなす作用を増したり、脱粒した籾粒が後方へ流れず、受網16から流下するのを助長する。
穀稈を挟持して入口側から出口側へ移送中に脱穀処理するために挟持移送する穀稈移送チェン10は、図3〜図5で示すように、移送ギャーケース10cに設けた駆動プーリ10hへ回転が入力されることにより、この移送ギャーケース10c内に軸支して設けた、駆動軸10bに軸支した入口スプロケット10aと、出口側のコ字形状の支持板10eに設けた出口軸10fに軸支したプーリ10dとに掛け渡して設けた、該穀稈移送チェン10が回転駆動される構成であり、供給穀稈が脱穀装置2内を挟持移送されて、脱穀される構成である。
【0021】
前記穀稈移送チェン10と、この穀稈移送チェン10の下側に設けた挟持杆27との間に穀稈が供給されて、脱穀装置2内を挟持移送中に、穀稈の穂先側の穀粒は脱穀される構成である。
【0022】
前記挟持杆27には、入口側に入口支持杆27aにスプリング27cを挿入して、入口受板28aで支持して設けると共に、出口側に出口支持杆27bに該スプリング27cを挿入して、出口受板28bで支持して設けている。これにより、脱穀する穀稈は、該穀稈移送チェン10と該挟持杆27との間の移送始端部へ供給されると、該穀稈移送チェン10と該挟持杆27との間に挟持されて、移送終端部側へ向けて、扱胴室11内を移送され、途中で穀稈の穂先に付着した穀粒は、脱穀される構成であり、該穀稈移送チェン10と該挟持杆27との間に供給される穀稈の供給量により、該挟持杆27が上下移動する構成である。
【0023】
前記穀稈移送チェン10の上下両側間には、支持板29を設けて、該穀稈移送チェン10を保持すると共に、該支持板29に設けた検出板30bを下方に、図6で示すように、下方に押しつけるように設けた構成において、該穀稈移送チェン10が一定量以上押し上げられた時には、検出できるように、検出センサ30cを設けた構成である。
【0024】
これにより、横刈をしたり、収量の多い稲を刈り取った場合等は、穀稈の層の厚みが大きくなり、前記穀稈移送チェン10の該支持板29が押し上げられて、変形することが発生するが、これを防止することができる。
【0025】
前記穀稈移送チェン10の上下両側間には、支持板29を設けて、該穀稈移送チェン10を保持させると共に、該穀稈移送チェン10の移送終端部の上側には、図6、及び図7で示すように、支持杆30を設け、この支持杆30には、下方へ向けて支持軸30aを設けると共に、該支持軸30aには、スプリング30dを設け、この支持軸30aの下端部には、略コ字形状の検出板30bを設け、又、該支持杆30の下側面には、該検出板30bの当接により、ON−OFFする検出センサ30cを設け、該検出板30bが所定値以上上昇すると、該検出センサ30cがONされて、該穀稈移送チェン10が自動停止制御される構成としている。
【0026】
上記により、前記穀稈移送チェン10が脱穀済みで、機外へ排出される排藁の詰りによって、下方から押し上げられた時には、該スプリング30dによって該穀稈移送チェン10が下方に押しつけられているが、該スプリング30dの圧縮によって、押し上げる力を吸収し、該穀稈移送チェン10用の支持板29部分の変形や破損を防止することができる。
【0027】
刈取り穀稈前記穀稈移送チェン10と、該穀稈移送チェン10の下側に設けた挟持杆27との間に挟持して、右側へ向けて移送することにより、この移送中に穀稈を脱穀する構成において、図3〜図5で示すように、該穀稈移送チェン10と挟持杆27とで挟持して移送する構成の脱穀装置2において、該脱穀装置2の該穀稈移送チェン10の外側には、穀稈の詰りを検出する詰り検出装置31を設けた構成である。
【0028】
前記詰り検出装置31は、該穀稈移送チェン10の外側で穀稈の挿入側と、穀稈の脱穀終了の手前側との2個所に所定間隔で設けている。
前記詰り検出装置31は、例えば、扱胴カバー板8の所定位置へ装着して設け、該詰り検出装置31は、装着用の中央部に取付穴を設けた取付ボス31aの外周下方部に丸棒で円形状のアーム31bと、上部にプレート31cとを設けた構成であり、これら2個所に設けた該プレート31c、31cは、連結ロット31dで接続した構成である。該プレート31cは詰りセンサ31eを「入」・「切」すべく挿入側に1個を設け、扱胴室11内へ供給された穀稈の挿入量を検出できる構成である。所定量以上が供給されたと検出すると、脱穀装置2は自動停止制御される構成である。
【0029】
これにより、一定量以上の穀稈が該脱穀装置2内へ供給されると、該脱穀装置2は自動停止制御されることにより、該穀稈移送チェン10部分の変形、及び破損を防止できる。
前記穀稈移送チェン10が一定量以上押し上げられた場合に、検出できるように該詰りセンサ31eを、該穀稈移送チェン10を掛け渡した該穀稈移送チェン10の移送始端部と略中央部位置との2個所に設けた構成である。該アーム31bが移送される穀稈に接触する下側部は、略円形状に形成して、接触抵抗の減少を図った構成である。
【符号の説明】
【0030】
2 脱穀装置
11 扱胴室
12 大径扱胴
13 上扱胴軸
14 小径扱胴
15 下扱胴軸
16 受網
25 仕切板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取り穀稈を脱穀する脱穀装置(2)の扱胴室(11)内に、上扱胴軸(13)で軸支した大径扱胴(12)の下側に、下扱胴軸(15)で軸支した小径扱胴(14)を設け、該大径扱胴(12)と小径扱胴(14)とが最も近接する間隙部にて、脱穀する穀稈の稈身方向と、大径扱胴(12)及び該小径扱胴(14)の接線方向とを略一致させ、後方から見て大径扱胴(12)を反時計回りに、小径扱胴(14)を時計回りに回転駆動する構成とし、該大径扱胴(12)と小径扱胴(14)との周速を略同一速度に設定し、該大径扱胴(12)と小径扱胴(14)の下側に受網(16)を夫々沿わせて設け、大径扱胴(12)の移送終端部を下側の該小径扱胴(14)の移送終端部よりも後方へ延長して設けたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記大径扱胴(12)の後部を受網(16)よりも後方まで延長したことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記受網(16)には大径扱胴(12)及び小径扱胴(14)の軸心方向と直交する仕切板(25)を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−155843(P2011−155843A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17558(P2010−17558)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】