説明

脱細胞化網マトリックス及びその使用

網を脱脂するための方法、及び、哺乳類系へと移植するための細胞外マトリックスを含む無細胞網、即ち不活化又は脱細胞化された網を調製するためのプロセス。更に、脱細胞化網を含む、医療用途のための構築物。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は一般に、組織の修復及び再生のためのバイオマトリックスの分野に関する。本発明は、網から脂肪を抽出するための方法、脱細胞化網の調製のためのプロセス、並びに組織修復及び組織工学のための脱細胞化網の応用に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
細胞外マトリックス(ECM)は結合組織の重要な構造成分である。細胞によって作り上げられたECMは、これらの及び他の細胞が、分化することにより又はそれらの分化状態を維持することにより応答する、微小環境を作り出す。ECMは、それに接着している細胞の組織化のための基材を提供する。
【0003】
組織利用(tissue based)ECM生体材料及びデバイスは、心臓弁、ブタSIS、ヒト真皮、及びウシ心膜など、種々の医学用途のために使用される。しかしながら、再生医療のための組織工学足場としての脱細胞化組織の応用は、組織の内方成長並びに播種細胞の生存能力及び機能性のために不可欠な、脈管形成のための血管軌道の欠如に起因して制限されている。血管が発達していて脱細胞化プロセスの間血管軌道が維持される組織は、当該技術において歓迎される。
【0004】
大網は、腹腔内臓器を覆う最大の腹膜ひだである。大網は、血管が非常に発達しており、通常は薄く弾力性があり、そして常にいくらかの脂肪を含有する。大網は、それ自体、腸の手術、胸部食道の手術、慢性の非回復性皮膚創傷、ヘルニア及び骨盤底修復、膀胱修復等のような、臨床的用途に使用されてきた。
【0005】
脱細胞化網の脈管は新血管形成のための軌道として機能することができるため、網は臨床的用途のための望ましい材料である。しかしながら、網内の脂肪は、柔軟な哺乳類の組織を脱細胞化するための技術分野において既知の方法及び手順を使用して取り除くことが難しい。したがって、組織利用型ECM生体材料としての使用を包含するバイオマトリックスのための脱細胞化網の効果的な使用は、1つには、当該技術分野で説明された組織を再活性化するためのプロセス及び方法では網からの脂肪抽出が効果的にできないために、制限されている。
【0006】
〔発明の簡潔な概要〕
本発明は、網から脂肪を抽出するための方法、脱細胞化網を調製するためのプロセス、及びそのプロセス済み脱細胞化網マトリックスの医学的応用に関する。1つの態様では、網を脱細胞化するためのプロセスは、(1)網から脂肪を抽出する工程と、(2)免疫応答又は移植片拒絶を引き起こすおそれのある細胞を網から除去する工程と、(3)消毒工程と、(4)最終滅菌工程と、を伴う。
【0007】
本明細書に記載される脱細胞化プロセス内で適用でき、並びに他の脱細胞化における不活化プロセスでもある、網からの脂肪抽出法が、本発明の態様である。一実施形態では、脂肪抽出方法は、アルコール類などの低分子量の有機溶媒のような1種以上の脱水溶媒による網の脱水と、その後の非極性溶媒、極性溶媒、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の抽出溶媒を用いた脂肪の抽出とを包含する。脱脂後に網を再水和してもよい。本発明の方法では、脂肪の一部、脂肪のすべて、及び/又は実質的にすべての脂肪が網から抽出される。
【0008】
脱細胞化網は、「そのままで」使用され得る。また、脱細胞化網は、細胞、細分化組織、生物活性剤、及び他の組織工学足場と組み合わせて、組織工学及び再生医療のためのフィルム、多孔質3D足場、粒子状及び管状構造体へと処方するなどして、他の用途に使用することもできる。網の膜はまた、高い組織因子(TF)濃度に起因して止血性も有する。それ故、脱細胞化網は止血剤として使用することができる。
【0009】
網は、多くの用途にとって、真皮などの他の組織利用ECM生体材料及びデバイスよりも好ましい。網は、本明細書に記載する脂肪抽出法及び脱細胞化プロセス中に保存される多くの脈管を有する。これらの脈管は、新血管形成のための軌道として機能することができる。本発明は、網からの脂肪の効果的な抽出を提供する。網から効果的に脂肪を抽出する能力は、バイオマトリックスとしての網の使用を強化する。
【0010】
本明細書及び特許請求の範囲に記載されたすべての部及び比率は、特に指定のない限り重量対重量を基準とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による脱細胞化プロセスのフローチャート。
【図2】脱細胞化の前後の網の画像。
【図3】脱細胞化の前後の網のヒストグラム。
【0012】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、哺乳類に移植するための細胞外マトリックスを含む、無細胞網、即ち不活化された又は脱細胞化された網を調製するためのプロセスに関する。本プロセスは一般に、組織、特に網を脱脂及び脱細胞化する工程を有する。本発明の1つの態様は、網を脱脂するための方法に関する。
【0013】
本発明の目的のための脱脂とは、組織中の脂質部分を抽出することを言う。本発明の目的のための脱細胞化又は不活化とは、単離された臓器、又は臓器の一部の細胞成分を、細胞外マトリックスに対しいずれの顕著な損傷も与えずに除去することを言う。脱細胞化された又は脱細胞化、及び、不活化された又は不活化との用語は、本明細書においては交換可能に使用されるものとする。不活化組織は、繁殖的に及び/又は代謝的に生存可能な細胞を本質的に含まない。しかし、繁殖的に生存可能な細胞を持たない網は、減数分裂又は有糸分裂の正常な過程を通して代謝的に生存可能な細胞の数を増加させる能力のない代謝的に生存可能な細胞を含有する可能性がある。また、代謝的に生存可能な細胞を持たない網でも、代謝的に死んだ組織細胞が組織学的部分において、顕微鏡を使用して見たときに代謝的に生存している細胞、更には核酸、小分子量タンパク質、脂質、及び多糖類を包含する細胞残留物と同じように見えるが、不活化された組織は繁殖的に生存不能な細胞及び/若しくは代謝的に生存不能な細胞並びに/又は大分子量細胞質タンパク質を保持し、こうしたタンパク質としては、例えば化学誘引物質として作用するアクチンが挙げられる。脱細胞化網又は不活化網とは、すべての、いくらかの、又は相当量の脂肪及び核及び細胞成分が除去された網を指す。
【0014】
網は、ヒト、ブタ、ウシ、ヤギなどの哺乳類種から採取されてよい。組織を採取した後、すぐに処理するためにその組織を0.9%の生理食塩水中に入れるか、又は後で使用するために、好ましくは約−20℃〜約80℃の温度で保存することができる。
【0015】
本発明による不活化網を得るためのプロセスを図1に記載する。このプロセスは、網を脱脂する工程と、その脱脂された網を脱細胞化する工程とを有し、更に任意で消毒及び汚染物質の除去の工程を有する。このプロセスにより得られる不活化網はその後、使用のために必要となるまで保存されてもよく、又は不活化プロセスが完了した直後に使用されてもよい。
【0016】
本明細書に記載された脱細胞化プロセスとともに適用されても、又は不活化された又は脱細胞化された網を得るための他の手順とともに適用されてもよい、網を脱脂するための本方法は、脱水し、続いて脂肪を抽出することと、その後に任意でその脱脂網を再水和することと、を包含する。脱水は、網を1種以上の脱水溶媒で処理すること、例えば脱水溶媒(類)及び/又は含水溶液中のこのような溶媒(類)による網のこのような1回以上の処理を伴う。その1回以上の処理は、一連の処理の各々に対し溶液中の水の量を徐々に減少させるなどして、異なる比率の脱水溶媒(類)と水とを有する溶液で行われる方法における一連の工程であってよく、最後の処理は純粋な溶媒、即ち含水溶液中ではない溶媒の使用を伴ってよい。脱水後に、1種以上の抽出溶媒(類)を使用して網から脂肪を抽出してよく、これは1回以上の抽出工程において行われてもよい。
【0017】
低分子量有機溶媒を脱水溶媒に使用してもよい。一実施形態では、脱水溶媒はメタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるもののような、1種以上のアルコールである。脱水溶媒は、約60%〜約70%のアルコール及び約30%〜約40%の水を有する含水溶液中にあってもよい。
【0018】
一実施形態では、脱脂の方法は、網を、少なくとも約30分、典型的には約30分〜約72時間などの時間の間、脱水溶媒と接触させること包含する。網と脱水溶媒との重量比は、約1:5〜約1:100、例えば約1:5〜約1:50、典型的には約1:10〜約1:25であってよい。網は、脱溶媒内に完全に沈められてもよい。脱水は周囲温度で起こる場合もあるが、周囲温度よりも高い及びそれよりも低い温度での脱水は本発明の範囲内である。脱脂方法の実施形態は、同じ又は異なる条件及び網と脱水溶媒との重量比下での、同じ又は異なる脱水溶媒を用いた、脱水溶媒中での1回以上の脱水処理を包含する。各脱水処理中に、周期的に溶媒を交換しても又はリフレッシュしてもよい。
【0019】
本発明の一実施形態では、脱脂の方法は、最初に、アルコールと水とを有する第1の脱水溶媒、例えば約60%〜約70%のアルコールと約30%〜約40%の水とを有する溶液中に網を接触させることを伴う。周囲温度で約30分間、網を第1の脱水溶媒と接触させなければならないが、周囲温度よりも低い又は高い温度は本発明の範囲内である。網と第1の脱水溶媒との重量比は、約1:5〜約1:50、例えば約1:10〜約1:25であってよい。この第1の処理においては、網を第1の脱水溶媒中に完全に沈めてもよい。
【0020】
網を第1の脱水溶媒で処理した後、網を純アルコールのような第2の脱水溶媒と接触させる。この第2の脱水工程では、少なくとも30分間、例えば約30分〜約24時間、網を第2の脱水溶媒と接触させてよい。第2の脱水工程は、周囲温度で行われてもよいが、周囲温度よりも低い又は高い温度でこの処理を行うことは、本発明の範囲内である。網と第2の脱水溶媒との重量比は、約1:5〜約1:100、例えば約1:10〜約1:25であってよい。網は第2の脱水溶媒と完全に接触させてよい。
【0021】
別の実施形態では、第2の脱水処理後に、網を任意で1回以上の更なる脱水処理に供してもよい。これらの更なる脱水処理は、第2の脱水処理に関して上記で説明したものと同じ条件下で並びに同じ材料及び量を使用して行われる。例えば、一実施形態では、第2の脱水処理後に、第3の脱水処理を行い、この際、第2の脱水処理からの網を、少なくとも約30分、例えば約30分〜約24時間の間、純アルコールなどの第3の脱水溶媒と接触させ、また、その第3の脱水溶媒中に完全に沈めてもよい。網と第3の脱水溶媒との重量比は、約1:5〜約1:100、例えば約1:10〜約1:25であってよい。他の実施形態では、第3の脱水処理後に、第4の脱水処理を行い、この際、第3の脱水処理からの網を、少なくとも約30分、例えば約30分〜約24時間の間、純アルコールなどの第4の脱水溶媒と接触させ、また、その第4の脱水溶媒中に完全に沈めてもよい。網と第4の脱水溶媒との重量比は、約1:5〜約1:100、例えば約1:10〜約1:25であってよい。
【0022】
脱水後、1種以上の抽出溶媒を使用する抽出によって、網から脂肪を抽出する。抽出溶媒は、非極性溶媒、極性非プロトン性溶媒などの極性溶媒、又はこれらの組み合わせであってよい。非極性溶媒の例には、ヘキサン、キシレン、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、及びこれらの組み合わせなどの非極性有機溶媒がある。抽出溶媒のために有用な極性溶媒としては、アセトン、ジオキサン、アセトニトリル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、抽出溶媒は、アセトン、ヘキサン、キシレン、及びこれらの組み合わせから選択される。抽出溶媒は、約50%〜約90%の非極性溶媒、例えばヘキサン、キシレン、及びこれらの組み合わせ、並びに約10%〜約50%の極性溶媒、例えばアセトンを有していてよい。特定の実施形態では、抽出溶媒は約50%〜約70%のアセトンと約30%〜約50%のヘキサンとを有していてよい。
【0023】
脂肪の抽出は、脂肪抽出工程において、脱水済みの網を、抽出溶媒と所与の時間接触させることにより行われる。同じ又は異なる抽出溶媒(類)を使用して同じ又は異なる条件下で同じ又は異なる時間の間、1回以上の脂肪抽出工程を行ってもよい。実施形態において、脂肪抽出は、脱水済みの網を、1種以上の抽出溶媒又は抽出溶媒の組み合わせと、少なくとも約30分、例えば少なくとも約60分から約24時間まで、又は約48時間まで、又は更に長時間の間、接触させることを包含してもよい。別の実施形態は、脱水済みの網を、抽出溶媒中に沈めることを伴う。各抽出工程中に、周期的に溶媒を交換したり又はリフレッシュしたりしてもよい。本発明の実施形態では、脱水済みの網と抽出溶媒との重量比は約1:3〜約1:50である。
【0024】
一実施形態では、脂肪抽出は複数回の脂肪抽出工程において行われる。上述の第2の脱水処理、第3の脱水処理、又は第4の脱水処理などの最後の脱水処理の後、最初に、その脱水済みの網を、極性溶媒、例えば極性非プロトン性溶媒などの第1の抽出溶媒と、少なくとも約30分、典型的には約30分〜約24時間の間、接触させる。その脱水済みの網は第1の抽出溶媒中に完全に沈められてもよい。本発明の1つの態様では、脱水済みの網と第1の抽出溶媒との重量比は、約1:3〜約1:50、例えば約1:5〜約1:15である。一実施形態では、第1の抽出溶媒はアセトンである。
【0025】
第1の抽出工程後に、脱水済みの網を、約30%〜約50%の極性溶媒と約50%〜約70%の非極性溶媒との混合物のような第2の抽出溶媒と、少なくとも約60分、例えば約60分〜約24時間の間、接触させる。一実施形態では、第2の抽出溶媒は約30%〜約50%のヘキサンと約70%〜約50%のアセトンとを有する。その脱水済みの網は第2の抽出溶媒中に完全に沈められてもよい。本発明の1つの態様では、脱水済みの網と第2の抽出溶媒との重量比は、約1:3〜約1:50、例えば約1:5〜約1:15である。
【0026】
次いで脱水済みの網は、この脱水済みの網を、第3の抽出溶媒と接触させることを伴う第3の抽出工程に供される。一実施形態では、脱水済みの網を、第3の抽出溶媒と、約24時間〜約48時間の間接触させ、また、第3の抽出溶媒中にその時間の間沈めてもよい。第3の抽出溶媒は、約70%〜約90%の非極性溶媒と、約10%〜約30%の極性溶媒、例えば極性非プロトン性溶媒とを有していてよい。本発明の一実施形態は、約70%〜約90%のヘキサンと約10%〜約30%のアセトンとを有する第3の抽出溶媒を伴う。本発明の1つの態様では、脱水済みの網と第3の抽出溶媒との重量比は、約1:3〜約1:50、例えば約1:5〜約1:15である。
【0027】
脂肪抽出の後、脱脂済みの網を任意で再水和する。脱脂済みの網は、その脱脂済みの網を、アルコール又はアルコールの水溶液、例えば約60%〜約70%のアルコールを有するアルコール溶液のような再水和溶媒と接触させることにより再水和されてもよい。低分子量のアルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、及びこれらの組み合わせを使用してよい。本発明の一実施形態では、再水和は1回以上の再水和処理、例えば2回の処理において行われる。本発明の1つの態様では、再水和処理のすべて又は一部における脱脂済みの網と再水和溶媒との重量比は、約1:5〜約1:100、例えば約1:10〜約1:25である。脱脂済みの網は、再水和溶媒と、少なくとも30分、例えば約30分〜約72時間の間接触され、再水和溶媒中に完全に沈められてもよい。
【0028】
一実施形態では、脱脂済みの網の再水和は、2回の再水和処理において行われる。第1の再水和処理では、脱脂済みの網を第1の再水和溶媒、典型的にはエタノールなどの低分子量アルコールと、少なくとも約30分、例えば約30〜約72時間の間、接触させる。本発明の1つの態様では、脱脂済みの網と第1の再水和溶媒との重量比は、約1:5〜約1:100、例えば約1:10〜約1:25である。第1の再水和溶媒は純アルコールであってもよく、即ち含水溶液中になくてもよい。脱脂済みの網は、第1の再水和溶媒中に完全に沈められてもよい。
【0029】
次いで第2の再水和処理において、脱脂済みの網を第2の再水和溶媒と接触させるが、この第2の再水和溶媒は、低分子量アルコール、特に含水溶液中、例えば約60〜約70%の溶液中の低分子量アルコールであってよい。一実施形態では、第2の再水和溶媒はエタノール、例えば約60%〜約70%のエタノールと残部の水とを有する溶液である。少なくとも約30分間、例えば約30分〜約72時間の間、脱脂済みの網を第2の再水和溶媒と接触させてよい。本発明の1つの態様では、脱脂済みの網と第2の再水和溶媒との重量比は、約1:5〜約1:100、例えば約1:10〜約1:25である。脱脂済みの網は、第2の再水和溶媒中に完全に沈められてもよい。
【0030】
脱脂済みの網は脱細胞化されるが、この脱脂済みの網を脱細胞化するためには当業者には既知の脱細胞化プロセスを適用してもよい。一実施形態では、核及び細胞質成分を可溶化することによって脱脂済みの網を脱細胞化してもよい。例えば、脱脂済みの網を、脱細胞化緩衝液、例えば非イオン性界面活性剤と酸中に溶解された金属塩とを有するものに、所与の時間、典型的には少なくとも約30分間浸漬してもよい。本発明で有用な非イオン性界面活性剤としては、トウィーン(TWEEN)80などのポリソルベート類、トリトン(TRITON)(登録商標)X−100などのエトキシ化アルコール類、及びHP40及びイゲパール(IGEPAL)CA−630などのポリエタノール類、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。使用してよい金属塩としては、塩化マグネシウム、リン酸塩、酢酸塩、及びクエン酸塩、並びにこれらの組み合わせが挙げられ、これらの金属塩類は典型的にはトリス(Tris)−HCLに溶解されている。例えば、脱細胞化緩衝液としては、トリトン(TRITON)(登録商標)X−100(1%w/V)、及び50mMのトリス(Tris)−HCl(pH7.2)中に溶解したMgCl(1%)を挙げてよい。次に脱脂済みの網を脱細胞化緩衝液から取り出し、酵素溶液、例えばベンゾナーゼ(Benzonase)などのエンドヌクレアーゼと脱細胞化緩衝液の構成成分とを有するものと接触させる。一実施形態では、脱脂済みの網は、酵素溶液中で所与の時間、例えば少なくとも約20時間、典型的には約20時間〜約48時間の間回転される。脱脂済みの網を次いで1回以上、例えば2回、酸、金属塩、及び非イオン性界面活性剤を有するもののようなすすぎ溶液中で洗浄する。酸、金属塩、及び非イオン性界面活性剤は、トリス(Tris)−HClとMgClとトリトン(TRITON)(登録商標)X−100との組み合わせを包含する上述の物質と同じであってもよい。その後、網を、NaCl及びEDTAなどの塩類とトリトン(TRITON)(登録商標)X−100などの非イオン性界面活性剤とを有する細胞抽出溶液と、所与の時間、例えば少なくとも約1時間、典型的には約1時間〜約48時間の間接触させる。典型的な脱細胞化プロセスの例は、全体が本明細書に参照により組み込まれる米国特許第4,776,853号及び同第4,801,299号に更に記載されている。
【0031】
次いで脱細胞化網は、汚染物質を除去するために消毒されてもよい。一実施形態では、脱細胞化網を、脱細胞化済みの網を消毒するのに十分に有効な時間、例えば少なくとも約0.5時間、典型的には約1時間〜約12時間、消毒溶液と接触させる。脱細胞化済みの網を消毒溶液中に完全に沈めてもよい。消毒溶液は、アルコール、又はアルコール水溶液を有していてよく、更に酸を包含していてもよい。消毒溶液は、次の、エタノール、メタノール、イソプロパノール、プロパノール、過酸化水素、過酢酸、及びこれらの組み合わせうちの1種以上のものを包含していてよい。一実施形態では、消毒溶液はエタノール、例えば80%エタノール溶液、及び過酢酸を有する。任意で、脱細胞化網を、超純水で1回以上洗浄することができる。
【0032】
図2は、未処理のブタの網1と脱細胞化済みのブタの網2との比較を示している。未処理のブタの網1は、血管軌道4に隣接して脂肪3を有し、一方脱細胞化済みのブタの網では、血管軌道5はそれに隣接した脂肪を全く有さないか又は実質的な量では有さない。
【0033】
脱細胞化された網は組織工学、並びに腎臓、肝臓、脾臓、及び膀胱などの内臓の再生に適用されてよい。脱細胞化網は、骨質、軟骨、及び腱などの骨格組織の修復及び再生のためにも使用することができる。脱細胞化網の他の使用としては、生体適合性のメッシュと組み合わせた軟組織の強化及び修復、例えば硬膜移植、ヘルニア修復、及び骨盤底修復、末梢神経再生のための管状構造体のような神経再生、組織増大、細胞及び生物活性剤の送達、慢性創傷の修復、並びに骨修復が挙げられる。脱細胞化網のこれらの使用及び適用は、いくつかの可能な使用の例示であり、本明細書で記載した方法及びプロセスによって調製される脱細胞化網の使用及び応用の種類を限定するものと解釈されるべきではない。
【0034】
脱細胞化網は、強化された構築物を製造するために合成構築物と組み合わせることができる。例えば、脱細胞化網マトリックスを、組織修復のための足場のような、哺乳類の身体への移植のための足場構造体として使用することができる。それは、生物活性剤、細胞、小分子、細分化組織、及び細胞可溶化物によって更に改善することができる。脱細胞化網は、脱細胞化網のいくつかの追加の用途を指定するために、ポリマーとともに凍結乾燥して3Dフォーム(foam)を作製することができ、又はフィルム若しくはメッシュへと熱溶融されることができる。更に、網上に繊維を静電的に紡糸し、「そのまま」使用するか、又は強化構造体を作製するべく合成構築物とともに使用してもよい。
【0035】
一実施形態では、脱細胞化網は、強化し又は強化せずに管状構造体へと処方される。管状の網マトリックスには、内皮細胞を播種することができ、この際、不活化網は、細胞接着足場及び増殖促進基材として機能する。脱細胞化網上に播種された内皮細胞は、血管再構築のためのビルディングブロック物質として有用である。
【0036】
他の実施形態では、脱細胞化網は、ヒト腎臓由来細胞(hKDC)と共培養することができ、この際、脱細胞化網は、細胞接着足場及び増殖促進基材として機能する。脱細胞化網上に播種されたHKDCは、腎臓組織工学用途のためのビルディングブロック物質として有用である。
【0037】
別の実施形態では、脱細胞化網は、尿路上皮細胞と共培養することができ、この際、脱細胞化網は、細胞接着足場及び増殖促進基材として機能する。脱細胞化網上に播種された尿路上皮細胞は、膀胱再構築のためのビルディングブロック物質として有用である。
【0038】
生物活性剤は、組織足場内に組み込まれ及び/若しくは組織足場に対して適用されてよく、並びに/又はその後に足場へと組み込まれる生存可能な細分化組織に対して適用されることができる。生物活性剤は、足場に生存可能組織を加えるに先立って足場に組み込まれるか、又は足場上に被覆されることが好ましい。生物活性剤(類)は、傷害部位に存在した場合に、冒された組織の治癒及び/又は再生を促進する様々なエフェクタの中から選択することができる。治癒を促進又は早める化合物又は薬剤であることに加えて、エフェクタはまた、感染を防ぐ化合物又は薬剤(例えば抗菌剤及び抗生物質)、炎症を減少させる化合物又は薬剤(例えば抗炎症剤)、酸化再生セルロースなどの癒着の形成を防止し又は最小限に抑える化合物(例えば、インターシード(INTERCEED)(登録商標)及びサージセル(SURGICEL)(登録商標)(エシコン(Ethicon, Inc.)(米国ニュージャージー州、サマービル(Somerville))から入手可能)、免疫系を抑制する化合物又は薬剤(例えば免疫抑制剤)、及びこれらの組み合わせを包含してもよい。
【0039】
非限定例として、脱細胞化網を有する本発明の移植片内に存在するエフェクタの他の種類は、異種又は自己増殖因子、タンパク質(マトリックスタンパク質を包含)、ペプチド、抗体、酵素、血小板、多血小板血漿、糖タンパク質、ホルモン、サイトカイン、グリコサミノグリカン、核酸、鎮痛剤、ウイルス、ウイルス粒子、細胞型物質(cell types)、及びこれらの組み合わせを包含することができる。同じ又は異なる機能の1種以上のエフェクタを移植片に組み込んでもよい。
【0040】
負傷若しくは損傷した組織の治癒及び/又は再生を促進することで知られる多くの異なる種類の異種又は自己増殖因子を、足場に直接組み込んでもよく、あるいは足場は例えば血小板などの増殖因子の供給源を包含することもできる。生物活性剤としては、更に、以下のうちの1種以上を挙げてもよい。走化性物質、治療薬(例えば抗生物質、ステロイド性の及び非ステロイド性の鎮痛剤及び抗炎症剤、免疫抑制剤及び抗がん剤等の抗拒絶剤)、種々のタンパク質(例えば、短鎖ペプチド(short term peptides)、骨形成タンパク質、糖タンパク質、及びリポタンパク質)、細胞接着媒介物、生物学的に活性な配位子、インテグリン結合配列、配位子、種々の増殖剤及び/又は分化剤並びにそれらのフラグメント(例えば表皮増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(例えばbFGF)、血小板由来の増殖因子(PDGF)、インスリン由来の増殖因子(例えばIGF−1、IGF−II)、及び形質転換増殖因子(例えばTGF−βI−III)、副甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン関連ペプチド、骨形成タンパク質(例えばBMP−2、BMP−4、BMP−6、BMP−12)、ソニック・ヘッジホック、増殖分化因子(例えばGDF5、GDF6、GDF8)、組み換え型ヒト増殖因子(例えばMP52)、軟骨由来形成タンパク質(CDMP−1)、特定の増殖因子の上方調節に影響する小分子、テネイシン−C、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、デコリン、トロンボエラスチン(thromboelastin)、トロンビン由来ペプチド、ヘパリン結合ドメイン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、DNAフラグメント、並びにDNAプラスミド。同様に好適なエフェクタとしては、上記の剤の作用物質及び拮抗物質が挙げられる。増殖因子はまた、上記の増殖因子の組み合わせを包含することもできる。加えて、増殖因子は、通常血小板と関連付けられる種々の増殖因子を有する場合がある、血中の血小板により供給される自己増殖因子であることができる。こうした他の物質が整形外科の分野において治療的価値を有する場合、これらの物質の少なくとも一部は、本発明における用途を有することが期待され、こうした物質は、特に明確に限定されない限り、「生物活性剤」及び「生物活性剤類」の意味に包含されるべきである。
【0041】
脱細胞化網は更に、生体適合性の合成又は天然ポリマーと組み合わせて複合足場へと処方することができる。一実施形態では、脱細胞化網マトリックスは、その機械的強度を向上させるように強化されることができる。強化コンポーネントは、有孔の又は無孔の2−Dフィルム、繊維構造体、3Dフォーム(foam)等とすることができる。強化された脱細胞化網は、細胞、細分化組織、生物活性剤、及び他の組織工学足場と組み合わせて、組織工学及び再生医療のための2−Dフィルム、3−Dマトリックス、及び管腔中に3−Dマトリックスを有する及び有さない管状構造体へと処方することができる。
【0042】
本発明による脱細胞化網を有する不織の組織工学足場及びメッシュに対して種々の生体吸収性ポリマーを使用することができる。好適な生体適合性の生体吸収性ポリマーの例としては、脂肪族ポリエステル類、ポリ(アミノ酸類)、コポリ(エーテル−エステル類)、ポリアルキレン類オキサレート類、ポリアミド類、チロシン由来のポリカーボネート類、ポリ(イミノカーボネート類)、ポリオルトエステル類、ポリオキサエステル類、ポリアミドエステル類、アミン基含有ポリオキサエステル類、ポリ(無水物類)、ポリホスファゼン類、生体分子類(即ち、コラーゲン、エラスチン、生体吸収性デンプン類、等のようなバイオポリマー類)、及びこれらのブレンドからなる群から選択されるポリマー類が挙げられる。脂肪族ポリエステル類としては、ラクチドのホモポリマー類及びコポリマー類(乳酸、D−、L−、及びメソラクチドを包含)、グリコリド(グリコール酸を包含)、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、及びこれらのポリマーブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
種々の生体適合性の非吸収性ポリマーも、本発明による不織組織工学足場及びメッシュに使用することができる。一例は、エシコン(Ethicon, Inc.)(米国ニュージャージー州、サマービル(Somerville))から商標名プロレン(PROLENE)(登録商標)で市販されているポリプロピレンメッシュである。
【0044】
種々の生体適合性の天然バイオポリマーもまた、本発明による脱細胞化網を有する不織組織工学足場及びメッシュのために使用することができる。好適な生体適合性の天然ポリマーの例としては、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、ラミニン、及びゼラチンが挙げられる。
【0045】
下記の実施例は本発明の原理及び実践を説明するものであり、これらに限定されるものではない。本発明の範囲及び趣旨内の多くの追加の実施形態は、ひとたびこの開示の利益を得ると、当業者に明らかになるであろう。
【0046】
〔実施例〕
実施例1:ブタ脂肪の溶解性
およそ0.75gのブタ脂肪を0.5mLの選択された溶媒中に加えた。脂肪の溶解性を視覚的に観察し、完全な溶解が起こる時間を書き留めた。結果を表に示す。濁度の基準は、0が透明であり、5は濁度が高い。
【表1】

【0047】
実施例2:網の脱細胞化プロセス
脂肪抽出:ブタの網を採取後に0.9%の生理食塩水に入れた。生理食塩水溶液で3回すすいで血液及び他の外部からの残屑を洗い流した後、その網を70%エタノール中に30分間置いた。70%エタノールによる処理の後、100%エタノールで、新鮮なエタノールに2回交換しながら30分間、組織を脱水した。次いで組織を180分間アセトンに移し、60分毎に新鮮な溶液を使用した。続いて、組織を50:50アセトン−ヘキサン混合物中に60分間置いた後、同20:80混合物に24〜48時間置いて(3度新鮮な溶液に交換)、脂肪抽出を行った。次いで組織を100%エタノールに30分間移し、その後70%エタノールに移した。この際組織は、必要に応じて脱細胞化プロセスが開始されるまで4℃にて保存されることがきる。
【0048】
脱細胞化:組織を次に、トリトン(TRITON)(登録商標)X−100(1%w/V;非イオン性界面活性剤)と50mMトリス(Tris)−HCl(pH7.2)に溶解したMgCl(1%)との混合液を有する脱細胞化緩衝液中に30分間浸漬した。これを次に、脱細胞化緩衝液と混合されたエンドヌクレアーゼ(ベンゾナーゼ(Benzonase)、41.8U/mL)の混合液を有する酵素溶液中で処理した。組織はこの溶液中で20時間回転された。次に組織を50mMトリス(Tris)−HCl(pH7.2)、5mMのMgCl、及び1%(W/V)トリトン(TRITON)(登録商標)X−100を有する溶液中で2回(各2時間)洗浄した。次に組織を1MのNaCl、20mm EDTA、0.2%(W/V)トリトン(TRITON)(登録商標)X−100pH7.0を有する細胞抽出溶液中に1時間置き、次いで組織を超純水で洗浄した(4回、各5分)。
【0049】
消毒:組織を水洗(4回、各20分)後、80:20の水:エタノール(200プルーフ)と0.15%過酢酸(又は酢酸)とを有する消毒溶液に1時間移し、組織を70%アルコール中に4℃にて保存した。
【0050】
実施例3:組織学的評価
未処理の網及び実施例2に従って不活化された脱細胞化網のサンプルを10%緩衝中性ホルマリン中で2日間固定した。次いでこのサンプルを所定の組織学用に処理した(即ち、水洗し、アルコールにより脱水し、キシレン中で洗浄し、パラフィン中へ埋め込み、切片化し、その後ヘマトキシリン及びエオシンにより染色するためのスライドを処理した)。図3は、マトリックス8内に脂肪7を有する新鮮なブタの網6を示しており、一方脱細胞化網9においては、マトリックス11内の脂肪10はずっと少ない。
【0051】
実施例4:ブタ尿路上皮及びヒト臍帯部組織由来細胞(hUTC)の不活化ブタ網上での増殖
尿路上皮細胞はブタの膀胱から単離された。簡単に述べると、ブタの膀胱はファーム・ツー・ファーム(Farm-to-Pharm)(米国ニュージャージー州、ブリッジウォーター(Bridgewater))から入手され、PBSできれいに洗浄し、尿を取り出した。次にこの膀胱を、それらの長軸に沿って切断し、その尿路上皮側を上に向けて平たく置いた。それらを0.25%トリプシン(Trypsin)溶液でおよそ4時間被覆した。この温浸(digestion)の後、細胞スクラッパーを用いて尿路上皮側をこすって尿路上皮を剥離させ、この温浸液(digestion liquid)を、40マイクロメートルフィルターを通して篩過した。次いでこの液を遠沈させ、そして細胞をケラチノサイト無血清(Keratinocyte Serum Free)(KSF)培地(インビトロゲン(Invitrogen)、米国カリフォルニア州、カールスバッド(Carlsbad))で洗浄した。KSF培地を使用して細胞をT−75組織培養フラスコ中に置いた。この培地は2〜3日毎に交換した。
【0052】
ヒト臍帯組織由来細胞(hUTC)は、全体が本明細書に参照により組み込まれる米国特許出願公開第US2005/0054098 A1号に記載されているようにして単離され、ゼラチンコーティングT75フラスコ中の増殖培地(DMEM−低グルコース(ギブコ(Gibco)、米国カリフォルニア州、カールスバッド(Carlsbad))、15%(v/v)ウシ胎児血清(カタログ番号SH30070.03、ハイクロン(Hyclone)、米国ユタ州、ローガン(Logan))、0.001%(v/v)βーメルカプトエタノール(シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)、米国ミズーリ州、セントルイス(St. Louis))、ペニシリン/ストレプトマイシン(ギブコ(Gibco))中で増殖させる。細胞は3〜4日毎に継代された。
【0053】
実施例2に従って調製された脱細胞化網を、およそ2.5×2.5平方センチメートルに切断し、超低クラスター6穴皿中に置いた。網を無水エタノール中で16時間(PDSフィルム)又は1時間(予め70%エタノール中に保存された網の場合)培養することによって滅菌した。材料を次いで3mLのPBS(Ca及びMgを含まない)中で3回洗浄した。
【0054】
ブタ尿路上皮細胞(P1)及びhUTCをPBSで洗浄し、4mLの0.25%トリプシン−EDTA(ギブコ(Gibco))を用いてトリプシン処理することにより採取した。尿路上皮細胞に対しては同体積のケラチノサイト−SFM(ギブコ(Gibco))、及びhUTCに対しては増殖培地を添加することによって反応を停止した。細胞を遠心分離によって収集し、細胞ペレットを培養培地中で再懸濁した。細胞を、グアバ機器(Guava instrument)(グアバテクノロジーズ(Guava Technologies)、米国カリフォルニア州、ヘーワード(Hayward))を用いて計数し、6穴プレート中の網膜上に1mL培地中100,000細胞を播種した。37℃で2時間培養した後、追加の2mLの培地を各穴に加えた。尿路上皮細胞又はhUTCを播種して10日後に免疫蛍光染色を行った。
【0055】
細胞播種後10日目に、網膜を3mLのPBSで洗浄し、次いで冷4%(w/v)パラホルムアルデヒド(シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich))を用いて室温にて10分間固定した。以下のエピトープに対する抗体を用いて免疫細胞化学を実施した。α平滑筋アクチン(1:200、ケミコンインターナショナル(Chemicon International)カタログ番号CBL171、米国カリフォルニア州テメキュラ(Temecula))及びサイトケラチンAE1/AE3(1:200、ケミコンインターナショナル、カタログ番号MAB3412)。
【0056】
培養物をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、細胞内抗原にアクセスするため、PBS、4%(v/v)ヤギ皮脂(ケミコン(Chemicon))、及び0.3%(v/v)トリトン(TRITON)(登録商標)(X−100)を含有するタンパク質ブロッキング溶液に1時間曝した。次にブロッキング溶液中に希釈された一次抗体を室温で1時間培養物に適用した。次に、一次抗体溶液を除去し、培養物をPBSで洗浄してから、ヤギ抗マウスlgG−FITC複合体(1:200、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich))とともにブロックを含有する二次抗体溶液を適用した(室温で1時間)。次いで培養物を洗浄し、10μM DAPI(分子プローブ)を10分間適用して細胞核を可視化した。
【0057】
免疫染色後に、オリンパス倒立エピ蛍光顕微鏡(Olympus inverted epi-fluorescent microscope)(オリンパス(Olympus)、米国ニューヨーク州、メルビル(Melville))上で適切な蛍光フィルターを使用して蛍光を可視化した。すべての場合において、陽性染色は、一次抗体溶液の適用を除いて上記で概説した全手順に従う対照染色(no.1対照)を上回る蛍光シグナルを表した。代表的な画像を、デジタルカラービデオカメラ及びイメージプロ(ImagePro)ソフトウェア(メディアサイバーネチックス(Media Cybernetics)、米国カリフォルニア州、カールスバッド(Carlsbad))を使用して取り込んだ。二重染色サンプルに関しては、発光フィルターを一度に1つだけ使用して各画像を撮影した。次いで、アドビフォトショップ(Adobe Photoshopソフトウェア(アドビ(Adobe)、米国カリフォルニア州、サンホゼ(San Jose))を用いて層状モンタージュを作製した。
【0058】
この実験の結果は、両方のタイプの細胞が脱細胞化ブタ網膜上で良好に増殖したことを示した。更に、両方の細胞タイプが単一層を確立し、キーマーカー、尿路上皮細胞についてはケラチン及びhUTCについては平滑筋アクチン、の強固な発現を保持した。
【0059】
実施例5:不活化ブタ網上でのヒト腎臓由来細胞の増殖
正常なヒト腎臓を、ナショナルディジーズリサーチインターチェンジ(National Disease Research Interchange(NDRI、米国ペンシルバニア州、フィラデルフィア(Philadelphia))から入手した。この研究で使用した腎臓は健康な21歳の男性から入手した。血液及び残屑を取り除くために、腎臓をダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagles medium)(DMEM−低グルコース、インビトロゲン(Invitrogen)、米国カリフォルニア州、カールスバッド(Carlsbad))又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS、インビトロゲン(Invitrogen))中で洗浄した。組織は腎臓の皮質領域から切り取った。次いで組織を微細なパルプへと細分化されるまで組織培養プレート中で機械的に解離させた。組織を次いで50ミリリットルの円錐管へと移した。次に組織を、0.25ユニットPZ活性/mLコラゲナーゼ(NB6、N0002779、サーバ・エレクトロフォレシス(Serva Electrophoresis GmbH)、ドイツ、ハイデルベルグ(Heidelberg))、2.5ユニット/mLディスパーゼ(ディスパーゼ(Dispase)II 165 859、ロシェ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics Corporation)、米国インディアナ州、インディアナポリス(Indianapolis))、及び1ユニット/mLヒアルロニダーゼ(ビトラーゼ、ISTAファーマシューティカルズ(Vitrase, ISTA Pharmaceuticals)、米国カリフォルニア州、アーバイン(Irvine))を含有するGMP(適正製造基準(good manufacturing practice))酵素混合物中に温浸した(digested)。酵素混合物を、腎臓上皮増殖培地(REGM)(カンブレックス(Cambrex))と組み合わせた。組織、培地、及び消化酵素(digestion enzymes)を含有する円錐管を、37℃にて軌道振とう器中で225rpmにて1〜2時間培養した。
【0060】
この消化された(digested)材料を150×gで5分間遠心分離し、上清を吸引した。次にペレットを20ミリリットルのREGM中に再懸濁させた。細胞懸濁液を40マイクロメートルのナイロンBDファルコン細胞ろ過器(BD FALCON Cell strainer)(BDバイオサイエンス(BD Biosciences)、米国カリフォルニア州、サンホゼ(San Jose))を通してろ過した。ろ液をREGM中に再懸濁させ(総体積50ミリリットル)、150×gで5分間遠心分離した。上清を吸引して細胞を50ミリリットルのREGM中に再懸濁させた。このプロセスを2度繰り返した。
【0061】
最終の遠心分離の後、上清を吸引して細胞ペレットを10ミリリットルのREGM中に再懸濁させた。生存可能な細胞の数を、グアバ機器(Guava instrument)(グアバテクノロジーズ(Guava Technologies))を用いて判定した。次いで細胞をゼラチン被覆した組織培養フラスコ上に蒔き、通常の周囲条件下で37℃にて培養した。細胞を更に、2〜3日毎に培地交換しながら被覆されていない組織培養フラスコ上に6回継代した。次いで細胞を液体窒素下で凍結保存した。
【0062】
実施例2に従って脱細胞化された網膜を、数個の4cm片に切断し、その後70%エタノール中に4℃にて一晩沈めた。次に網膜の個々の片を6穴プレートのウェル中に堆積させた。残存エタノールを除去するために、網膜を3mLのPBSで3回洗浄し、その後3mLのREGMで1回洗浄した。次に継代6のhKDCを解凍して、網膜上へと10,000細胞/cmで播種し、REGM中で4日間培養した。2〜3日毎に培養物に新鮮な培地を加えた。
【0063】
細胞播種後4日目に、網膜を3mLのPBSで洗浄し、その後1μmのカルセイン−AM(分子プローブ)で染色するか、又は4%パラホルムアルデヒド中で、室温で一晩固定した。カルセイン−AM染色サンプルを、蛍光顕微鏡法によって可視化し、固定済みサンプルを組織学的処理及びH&E染色のためにベットパス・サービス(VetPath Services)に送付した。
【0064】
4日間培養した後に、hKDCは不活化網に優位な接着を示した。加えて、強いカルセイン−AM染色により証明されるように、細胞は生存可能であった。
【0065】
実施例6:不活化ブタ網上でのヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)の増殖
ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC、カタログ番号C2517A)を、カンブレックス(Cambrex)から入手し、本明細書に参照により組み込まれるメーカーの推奨に従う内皮増殖培地(EGM−2MV、カタログ番号3202)中で培養した。所定の継代のために、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS、インビトロゲン(Invitrogen)、カタログ番号14190)で一度洗浄し、トリプシン処理(0.25%トリプシン−EDTA、インビトロゲン、カタログ番号25200−056)により解離させる。細胞をグアバ機器(Guava instrument)(グアバテクノロジーズ(Guava Technologies))を用いて計数し、5000細胞/cmの密度で播種した。細胞を3〜4日毎に定期的に継代した。
【0066】
実施例2による脱細胞化網を、およそ2.5×2.5平方センチメートルに切断し、超低クラスター6穴皿中に置いた。網を、無水エタノール中で1時間培養することにより消毒した(網は前もって70%エタノール中で保存された)。網膜は、使用前に3mLのPBS(Ca及びMgを含まない)中で3回洗浄した。
【0067】
HUVECをPBSで洗浄し、4mLの0.25%のトリプシン−EDTA(ギブコ(Gibco))を用いてトリプシン処理することによって採取した。同体積のEGM−2MV培地を添加することによって反応を停止させた。細胞を遠心分離によって収集し、細胞ペレットを培養培地中で再懸濁した。細胞を、グアバ機器(Guava instrument)(グアバテクノロジーズ(Guava Technologies))を用いて計数し、6穴プレート中の網膜上に1mL培地中100,000細胞を播種した。37℃で2時間培養した後、追加の2mLの培地を各穴に加えた。
【0068】
HUVECを網膜上で10日間増殖させ、DAPI染色用にプロセスした。簡単にいうと、網膜を3mLのPBSで洗浄し、次いで冷4%(w/v)パラホルムアルデヒド(シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich))を用いて室温にて10分間固定した。培養物をPBSで洗浄し、細胞核を可視化するために10μMのDAPI(分子プローブ)で15分間染色した。生存能力判別染色のために、生/死染色キット(分子プローブ)を使用した。網膜を3mLのPBSで洗浄し、次いで1μMのカルセイン−AM及び1μMのヨウ化プロピジウムで10分間、室温で染色した。
【0069】
細胞核(DAPIで染色)及び生存可能細胞(カルセイン−AMで染色)を、オリンパス倒立エピ蛍光顕微鏡(Olympus inverted epi-fluorescent microscope)(オリンパス(Olympus))上で適切な蛍光フィルターを用いて可視化した。代表的な画像を、デジタルカラービデオカメラ及びイメージプロ(ImagePro)ソフトウェア(メディアサイバーネチックス(Media Cybernetics))を使用して取り込んだ。
【0070】
この研究の結果は、ヒト臍静脈内皮細胞が脱細胞化ブタ網膜上に接着しその上で増殖することができ、そしてこれらの細胞は生存可能であるということを示している。
【0071】
実施例7:不織足場と脱細胞化網との複合材へのGDF−5の組み込み
90/10PGA/PLA繊維で作製された平均長さ5cmのフェルトを実施例2に従って調製された脱細胞化網の両側に配置する。次いでこの構造体にニードルパンチにより、90/10PGA/PLA繊維のフェルトと脱細胞化網とのインターロックを作製した。この複合材料は厚さおよそ1mm、密度75mg/ccであった。10mMのHCl中200mg/mLの濃度のGDF−5を複合材足場へと添加し、次いで−25℃で凍結乾燥した。GDF−5を充填した複合材足場は、結合組織修復、例えば軟骨再生、骨修復、及び創傷治癒のために使用できる可能性がある。
【0072】
本発明はその詳細な実施形態に関して図示及び説明が行われたが、当業者には、当該形態及び詳細におけるさまざまな変更は、本請求発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行われ得ることが理解されるであろう。
【0073】
〔実施の態様〕
(1) 網を準備する工程と、該網を脱水する工程と、該網を少なくとも1種の脱水溶媒と接触させる工程と、該脱水済みの網から少なくとも1種の抽出溶媒を用いて脂肪を抽出する工程と、を含む、網を脱脂するための方法。
(2) 前記網内の実質的にすべての脂肪が抽出される、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記抽出溶媒が、非極性溶媒、極性溶媒、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記抽出溶媒が、ヘキサン、キシレン、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、アセトン、ジオキサン、アセトニトリル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記脱水溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様1に記載の方法。
(6) 前記網と脱水溶媒との重量比が、約1:5〜約1:100である、実施態様1に記載の方法。
(7) 脱水済みの網と抽出溶媒との重量比が、約1:3〜約1:50である、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記網が、1回以上の処理において脱水される、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記処理が、前記網を、アルコールと水とを含む第1の脱水溶媒と接触させる工程と、該網を、アルコールを含む第2の脱水溶媒と接触させる工程と、を含む、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記第1の脱水溶媒が、約60%〜約70%のアルコールと約30%〜約40%の水とを含み、前記第2の脱水溶媒が、純アルコールである、実施態様9に記載の方法。
【0074】
(11) 前記処理が、前記網を、アルコールを含む第3の脱水溶媒と接触させる工程と、次いで該網を、アルコールを含む第4の脱水溶媒と接触させる工程と、を更に含む、実施態様9に記載の方法。
(12) 前記第3の脱水溶媒及び第2の脱水溶媒が、純アルコールである、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記網と前記第1の脱水溶媒との重量比が、約1:5〜約1:50であり、前記網と前記第2の脱水溶媒との重量比が、約1:5〜約1:100であり、前記網と前記第3の脱水溶媒との重量比が、約1:5〜約1:100であり、前記網と前記第4の脱水溶媒との重量比が、約1:5〜約1:100である、実施態様11に記載の方法。
(14) 前記脂肪が、1回以上の脂肪抽出工程において前記脱水済みの網から抽出される、実施態様1に記載の方法。
(15) 前記脂肪抽出工程が、前記脱水済みの網を、極性溶媒である第1の抽出溶媒と接触させる工程と、次に該脱水済みの網を、約30%〜約50%の極性溶媒と約50%〜約70%の非極性溶媒とを含む第2の抽出溶媒と接触させる工程と、次に該脱水済みの網を、約70%〜約90%の非極性溶媒と約10%〜約30%の極性溶媒とを含む第3の抽出溶媒と接触させる工程と、を含む、実施態様14に記載の方法。
(16) 前記極性溶媒がアセトンであり、前記非極性溶媒がヘキサンである、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記脱水済みの網と前記第1の抽出溶媒との重量比が、約1:3〜約1:50であり、前記脱水済みの網と前記第2の抽出溶媒との重量比が、約1:3〜約1:50であり、前記脱水済みの網と前記第3の抽出溶媒との重量比が、約1:3〜約1:50である、実施態様15に記載の方法。
(18) 脂肪抽出後に前記網を再水和する工程を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(19) 網を不活化させるためのプロセスであって、i)a)該網を少なくとも1種の脱水溶媒と接触させることによって網を脱水することと、b)該脱水済みの網から少なくとも1種の抽出溶媒を用いて脂肪を抽出することと、を含む網を脱脂する工程と、ii)該脱脂済みの網を脱細胞化する工程と、を含む、プロセス。
(20) 前記網内の実質的にすべての脂肪が抽出される、実施態様19に記載のプロセス。
【0075】
(21) 前記脱細胞化された脱脂済みの網を消毒する追加の工程を含む、実施態様19に記載のプロセス。
(22) 前記脱細胞化された脱脂済みの網を滅菌する追加の工程を含む、実施態様19に記載のプロセス。
(23) 前記脱水溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様19に記載のプロセス。
(24) 前記抽出溶媒は、ヘキサン、キシレン、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、アセトン、ジオキサン、アセトニトリル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様19に記載のプロセス。
(25) 実施態様1に記載の方法に従って脱脂された脱細胞化網を含む、医療目的のための構築物。
(26) 内皮細胞を播種された脱細胞化網を含む、血管の再構築のための管状構造体であって、該脱細胞化網は細胞接着足場と増殖促進基材とを含む、管状構造体。
(27) 脱細胞化網を含む、哺乳類の身体における移植のための足場構造体。
(28) 前記脱細胞化網が、ヒト腎臓由来細胞と共培養され、該脱細胞化網は細胞接着足場と増殖促進基材とを含む、実施態様27に記載の足場構造体。
(29) 前記脱細胞化網が、尿路上皮細胞と共培養され、該脱細胞化網が、細胞接着足場と増殖促進基材とを含む、実施態様27に記載の足場構造体。
(30) 生物活性剤を更に含む、実施態様27に記載の足場構造体。
【0076】
(31) 前記生物活性剤が、治癒を促進するエフェクタ、組織の再生を促進するエフェクタ、治癒を促進する又は早めるエフェクタ、感染を防止する化合物又は薬剤、炎症を軽減させる化合物又は薬剤、癒着の形成を防止又は最小化する化合物、免疫系を抑制する化合物又は薬剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様30に記載の足場構造体。
(32) 前記生物活性剤が、異種増殖因子、自己増殖因子、タンパク質、ペプチド、抗体、酵素、血小板、多血小板血漿、糖タンパク質、ホルモン、サイトカイン、グリコサミノグリカン、核酸、鎮痛剤、ウイルス、ウイルス粒子、細胞型物質、治療薬、抗炎症剤、抗拒絶剤、走化性物質、増殖剤、分化剤、増殖剤フラグメント、分化剤フラグメント、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様30に記載の足場構造体。
(33) 前記生物活性剤が、抗生物質、ステロイド性鎮痛剤、非ステロイド性鎮痛剤、免疫抑制剤、抗がん剤、短鎖ペプチド、骨形成タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、細胞接着媒介物、生物学的に活性な配位子、インテグリン結合配列、配位子、表皮増殖因子、肝細胞増殖因子、血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、インスリン由来増殖因子、形質転換増殖因子、副甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン関連ペプチド、骨形成タンパク質、ソニック・ヘッジホック、増殖分化因子、組み換え型ヒト増殖因子、軟骨由来形成タンパク質、小分子、特定の増殖因子の上方調節に影響する小分子、テネイシン−C、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、デコリン、トロンボエラスチン、トロンビン由来ペプチド、ヘパリン結合ドメイン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、DNAフラグメント、DNAプラスミド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様30に記載の足場構造体。
(34) 前記脱細胞化網と、生体適合性の合成ポリマー及び天然ポリマーからなる群から選択されるポリマーと、の複合材料を含む、実施態様27に記載の足場構造体。
(35) 前記生体適合性のポリマーが、ポリプロピレン、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、チロシン由来のポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミン基を含有するポリオキサエステル、ポリ(無水物)、ポリホスファゼン、生体分子(即ち、コラーゲン、エラスチン、生体吸収性デンプン等のようなバイオポリマー)、及びこれらのブレンドからなる群から選択される、実施態様34に記載の足場構造体。
(36) 前記天然ポリマーが、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、ラミニン、及びゼラチンからなる群から選択される、実施態様34に記載の足場構造体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
網を準備する工程と、該網を脱水する工程と、該網を少なくとも1種の脱水溶媒と接触させる工程と、該脱水済みの網から少なくとも1種の抽出溶媒を用いて脂肪を抽出する工程と、を含む、網を脱脂するための方法。
【請求項2】
前記網内の実質的にすべての脂肪が抽出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抽出溶媒が、非極性溶媒、極性溶媒、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出溶媒が、ヘキサン、キシレン、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、アセトン、ジオキサン、アセトニトリル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記脱水溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記網と脱水溶媒との重量比が、約1:5〜約1:100である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
脱水済みの網と抽出溶媒との重量比が、約1:3〜約1:50である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記網が、1回以上の処理において脱水される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記処理が、前記網を、アルコールと水とを含む第1の脱水溶媒と接触させる工程と、該網を、アルコールを含む第2の脱水溶媒と接触させる工程と、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の脱水溶媒が、約60%〜約70%のアルコールと約30%〜約40%の水とを含み、前記第2の脱水溶媒が、純アルコールである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記処理が、前記網を、アルコールを含む第3の脱水溶媒と接触させる工程と、次いで該網を、アルコールを含む第4の脱水溶媒と接触させる工程と、を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第3の脱水溶媒及び第2の脱水溶媒が、純アルコールである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記網と前記第1の脱水溶媒との重量比が、約1:5〜約1:50であり、前記網と前記第2の脱水溶媒との重量比が、約1:5〜約1:100であり、前記網と前記第3の脱水溶媒との重量比が、約1:5〜約1:100であり、前記網と前記第4の脱水溶媒との重量比が、約1:5〜約1:100である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記脂肪が、1回以上の脂肪抽出工程において前記脱水済みの網から抽出される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記脂肪抽出工程が、前記脱水済みの網を、極性溶媒である第1の抽出溶媒と接触させる工程と、次に該脱水済みの網を、約30%〜約50%の極性溶媒と約50%〜約70%の非極性溶媒とを含む第2の抽出溶媒と接触させる工程と、次に該脱水済みの網を、約70%〜約90%の非極性溶媒と約10%〜約30%の極性溶媒とを含む第3の抽出溶媒と接触させる工程と、を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記極性溶媒がアセトンであり、前記非極性溶媒がヘキサンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記脱水済みの網と前記第1の抽出溶媒との重量比が、約1:3〜約1:50であり、前記脱水済みの網と前記第2の抽出溶媒との重量比が、約1:3〜約1:50であり、前記脱水済みの網と前記第3の抽出溶媒との重量比が、約1:3〜約1:50である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
脂肪抽出後に前記網を再水和する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
網を不活化させるためのプロセスであって、i)a)該網を少なくとも1種の脱水溶媒と接触させることによって網を脱水することと、b)該脱水済みの網から少なくとも1種の抽出溶媒を用いて脂肪を抽出することと、を含む網を脱脂する工程と、ii)該脱脂済みの網を脱細胞化する工程と、を含む、プロセス。
【請求項20】
前記網内の実質的にすべての脂肪が抽出される、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記脱細胞化された脱脂済みの網を消毒する追加の工程を含む、請求項19に記載のプロセス。
【請求項22】
前記脱細胞化された脱脂済みの網を滅菌する追加の工程を含む、請求項19に記載のプロセス。
【請求項23】
前記脱水溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項19に記載のプロセス。
【請求項24】
前記抽出溶媒は、ヘキサン、キシレン、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、アセトン、ジオキサン、アセトニトリル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項19に記載のプロセス。
【請求項25】
請求項1に記載の方法に従って脱脂された脱細胞化網を含む、医療目的のための構築物。
【請求項26】
内皮細胞を播種された脱細胞化網を含む、血管の再構築のための管状構造体であって、該脱細胞化網は細胞接着足場と増殖促進基材とを含む、管状構造体。
【請求項27】
脱細胞化網を含む、哺乳類の身体における移植のための足場構造体。
【請求項28】
前記脱細胞化網が、ヒト腎臓由来細胞と共培養され、該脱細胞化網は細胞接着足場と増殖促進基材とを含む、請求項27に記載の足場構造体。
【請求項29】
前記脱細胞化網が、尿路上皮細胞と共培養され、該脱細胞化網が、細胞接着足場と増殖促進基材とを含む、請求項27に記載の足場構造体。
【請求項30】
生物活性剤を更に含む、請求項27に記載の足場構造体。
【請求項31】
前記生物活性剤が、治癒を促進するエフェクタ、組織の再生を促進するエフェクタ、治癒を促進する又は早めるエフェクタ、感染を防止する化合物又は薬剤、炎症を軽減させる化合物又は薬剤、癒着の形成を防止又は最小化する化合物、免疫系を抑制する化合物又は薬剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項30に記載の足場構造体。
【請求項32】
前記生物活性剤が、異種増殖因子、自己増殖因子、タンパク質、ペプチド、抗体、酵素、血小板、多血小板血漿、糖タンパク質、ホルモン、サイトカイン、グリコサミノグリカン、核酸、鎮痛剤、ウイルス、ウイルス粒子、細胞型物質、治療薬、抗炎症剤、抗拒絶剤、走化性物質、増殖剤、分化剤、増殖剤フラグメント、分化剤フラグメント、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項30に記載の足場構造体。
【請求項33】
前記生物活性剤が、抗生物質、ステロイド性鎮痛剤、非ステロイド性鎮痛剤、免疫抑制剤、抗がん剤、短鎖ペプチド、骨形成タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、細胞接着媒介物、生物学的に活性な配位子、インテグリン結合配列、配位子、表皮増殖因子、肝細胞増殖因子、血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、インスリン由来増殖因子、形質転換増殖因子、副甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン関連ペプチド、骨形成タンパク質、ソニック・ヘッジホック、増殖分化因子、組み換え型ヒト増殖因子、軟骨由来形成タンパク質、小分子、特定の増殖因子の上方調節に影響する小分子、テネイシン−C、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、デコリン、トロンボエラスチン、トロンビン由来ペプチド、ヘパリン結合ドメイン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、DNAフラグメント、DNAプラスミド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項30に記載の足場構造体。
【請求項34】
前記脱細胞化網と、生体適合性の合成ポリマー及び天然ポリマーからなる群から選択されるポリマーと、の複合材料を含む、請求項27に記載の足場構造体。
【請求項35】
前記生体適合性のポリマーが、ポリプロピレン、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、チロシン由来のポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミン基を含有するポリオキサエステル、ポリ(無水物)、ポリホスファゼン、生体分子(即ち、コラーゲン、エラスチン、生体吸収性デンプン等のようなバイオポリマー)、及びこれらのブレンドからなる群から選択される、請求項34に記載の足場構造体。
【請求項36】
前記天然ポリマーが、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、ラミニン、及びゼラチンからなる群から選択される、請求項34に記載の足場構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−507608(P2011−507608A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539598(P2010−539598)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/085450
【国際公開番号】WO2009/085547
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(591286579)エシコン・インコーポレイテッド (170)
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
【Fターム(参考)】