説明

脱脂綿における異物混入の検査方法および検査装置

【課題】脱脂綿を搬送ベルト上に載置して移送することなく、X線放射管と検知機との間に、脱脂綿のみを、順次移送して脱脂綿の表面に付着し、あるいは脱脂綿の内部に混入した異物を検査するための脱脂綿における異物混入の検査方法および検査装置を開発・提供することにある。
【解決手段】長尺状に形成した脱脂綿(1)を、そのまま複数のローラ(X)(Y)(Z)で移送する中途に、無底の筐体(2)を設け、該脱脂綿(1)を、筐体(2)内に迂回して入り込むよう配備し、該筐体(2)内の上部に設けた,軟X線を用いたX線放射管(3)を設け、該筐体(2)内の下部には、脱脂綿(1)を挟んで下方に検知機(4)を設け、X線漏えい範囲を超えた下方に、前記筐体(2)の下端部が位置するようにしたことを特徴とする脱脂綿における異物混入の検査方法及び検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、化粧用コットンやフェースマスク等の原料である脱脂綿に混入された異物を検査する,脱脂綿における異物混入の検査方法および検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、製品の原料となる素材や完成品等については、大抵が、素材や完成品以外の異物が混入していないか、否か、逐一、検査し、原料あるいは完成品の安全性を確保しており、そのため種々の装置が開発され、かつ、使用されている。
【0003】
しかし、前述のように、人の顔に接触する化粧用コットンやフェースマスク等の原料となる脱脂綿については、より注意深く検査をする必要がある。即ち,化粧用コットンやフェースマスク等は、化粧品を塗布したり、浸漬したりして顔に当てたり、顔を擦ったりすることものであり、異物の混入によりそのまま顔を擦ったりすると顔を傷つけ、大変な事故となる恐れがある。
【0004】
そのため、脱脂綿中の異物を、より厳格に検査をする必要があるが、目視による検査では、素材と同色の異物は発見できず、また、マグネットを利用するものもあるが、アルミニューム等の非鉄金属では、吸着して取り除くことができないものであった。
【0005】
そのため、検査をより厳重に期するため、X線を用いて異物を調査することを考えたが、既に、X線を利用した検査装置は存在している。例えば、特許文献1のように。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−82070号公報
【0007】
しかしながら、この技術内容は、搬送ベルト上に、被検査物を載置して検査をする物であり、このような検査には、エネルギーの高く透過力の強いX線を使用する必要があり、本願のように、被検査物は、極めて軟質である脱脂綿であり、このような物質を検査するという場合には適しないものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、低エネルギーで透過性の弱いX線を利用して検査し、より安全な製品を購買者に提供できるようにした脱脂綿における異物混入の検査方法および検査装置を開発・提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、脱脂綿を搬送ベルト上に載置して移送することなく、X線放射管と検知機との間に、脱脂綿のみを、順次移送して脱脂綿の表面に付着し、あるいは脱脂綿の内部に混入した異物を検査するための脱脂綿における異物混入の検査方法および検査装置を開発・提供することにある。
【発明の効果】
【0010】
この発明によると、被検査物である脱脂綿を適宜な厚みと幅を有する帯状に形成して、X線異物検出装置を通すことにより、この脱脂綿のみを検査し、連続して脱脂綿の表面あるいは内部の異物を、軟X線を用いて検査することにより、連続的に、かつ、異物を確実に検査することができる等の極めて有益なる効果を奏するものである。
【0011】
また、脱脂綿を移送するローラを、X線異物検出装置を設けた筐体内に入り込むよう構成することにより、外部にX線が漏えいせず、安全に検知できる等の効果も奏する。
【0012】
さらに、この発明によると、約0.1〜50nmの比較的長波長のX線である,軟X線を使用することにより、金属異物以外の石・ガラス・樹脂・骨・貝殻等の検出が可能であり、透過性が弱くても被検査物を検査でき、被検査物へのダメージも少ない等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の全体を示す説明図である。
【図2】この発明の一実施例を示す縦断面図である。
【図3】この発明の一実施例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明は、長尺状に形成した脱脂綿を、そのまま複数のローラで移送する中途に、無底の筐体を設け、該脱脂綿を、筐体の下端部付近から筐体内に迂回して入り込むよう配備し、該筐体内の上部に設けた,軟X線を用いたX線放射管を設け、該筐体内の下部には、脱脂綿を挟んで下方に検知機を設け、X線漏えい範囲を超えた下方に、前記筐体の下端部が位置するように調整するよう構成した脱脂綿における異物混入の検査方法および検査装置から構成される。
【実施例】
【0015】
そこで、この発明の一実施例を図面に従って詳述すと、長尺状に形成した脱脂綿(1)を、そのまま複数のローラ(X)(Y)(Z)で移送する中途に、無底の筐体(2)を設け、該脱脂綿(1)を、筐体(2)の下端より下付近より、筐体(2)内に迂回して入り込むよう配備し、該筐体(2)内の上部に設けた,軟X線を用いたX線放射管(3)を設け、該筐体(2)内の下部には、脱脂綿(1)を挟んで下方に検知機(4)を設け、X線漏えい範囲を超えた下方に、前記筐体(2)の下端部が位置するようにしたことを特徴とする脱脂綿における異物混入の検査方法から構成される。因みに(A)は、X線漏えい範囲を示す印しである。
【0016】
尚、X線放射管(3)を通過した脱脂綿(1)に異物が混入されていれば、テレビモニタ画面(図示せず)にマーカーにより、異物の有無を知らせたり、検知機(4)により検知された異物は、画像処理され、異物の混入した箇所の脱脂綿(1)と共に切り取って処理するものである。
【0017】
また、検知機(4)とは測定部であり、半導体ラインセンサーを使用したもであり、X線放射管(3)であるX線管球から発生したX線を特殊なスリットを通すことにより、細いビーム(約1mm)に絞り連続照射させ、その中を、被検査物である脱脂綿(1)を通過させながら、混入した異物と被検査物との「密度の差」を画像解析し自動判別を行うものである。
【0018】
次に、この発明の他の実施例を図面に従って詳述すると、適宜な厚みと幅を有する長尺状の脱脂綿(1)を設け、該脱脂綿(1)を複数のローラ(X)(Y)(Z)で移送する中途に、一対の漏えい防止用の位置決めローラ(Y)(Y)を介在させ、これらローラ(Y)(Y)間の上方に、上面部と四周である側面部とを囲む無底の筐体(2)を設け、該無底部を、通過用開口部(2a)とし、前記脱脂綿(1)を、該通過用開口部(2a)から筐体(2)内に迂回して入り込むよう、筐体(2)の内部に一対の水平維持ローラ(X)(X)を上部方向に移動可能に配置して設け、該筐体(2)内の上部には、軟X線を用いたX線放射管(3)を設け、該筐体(2)内の下部には、脱脂綿(1)を挟んで下方に検知機(4)を設け、X線漏えい範囲(A)を超えた下方に、前記筐体(2)の下端部が位置するよう前記水平維持ローラ(X)(X)の位置を設けたことを特徴とする脱脂綿における異物混入の検査装置から構成される。
【0019】
筐体(2)の各壁面は、二重構造となっており、内側は、鉛、あるいはベリリウム合金からなる漏えいX線遮蔽吸収板(1a)を設け、外側には、ステンレスあるいは鉄製のカバー(1b)を設けた構造とし、また、下端部はそれぞれ内部に向けた縁部を設け、X線を遮蔽するものである。
【0020】
また、一対の漏えい防止用の位置決めローラ(Y)(Y)の上方に位置する筐体(2)には、該筐体(2)内に、一対の水平維持ローラ(X)(X)を設けており、これら両ローラ(Y)(X)間の高さ方向の寸法は、それぞれ100mm以上を保ち、これにより、筐体(2)の通過用開口部(2a)より下部に、X線漏えい範囲(A)が拡がらないよう構成するものである。
【0021】
さらに、軟X線とは、低エネルギーで透過性の弱いX線であり、管電圧が15KV〜30KVであり、8mA〜2mAの比較的長波長のX線で、真空紫外線同様に物質に吸収されやすい性質を持ち、被検査物へのダメージが少ない性質を利用して使用するものである。
【0022】
尚、被検査物である脱脂綿(1)は、図1中に示す乾燥機(5)より出て、X線放射管(3)に向かう途中に、基台(6)上に配置された搬送コンベア(7)で搬送され、それ以降は、シワ、たるみ防止ローラ(Z)(Z)により、シワ、たるみをなくして、帯状に形成された脱脂綿(1)のみが、ローラの動力により移送され、筐体(2)内で検査されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
この発明の脱脂綿における異物混入の検査装置および検査方法の技術を確立し、それを利用して実施・販売することにより産業上利用の可能性がある。
【符号の説明】
【0024】
1 脱脂綿
1′脱脂綿
2 筐体
2a 漏えいX線遮蔽吸収板
2b カバー
2c 通過用開口部
3 X線放射管
4 検知機
5 乾燥機
6 基台
7 搬送コンベア
A X線漏えい範囲
X 水平維持ローラ
Y 漏えい防止の位置決めローラ
Z シワ、たるみ防止ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状に形成した脱脂綿(1)を、そのまま複数のローラ(X)(Y)(Z)で移送する中途に、無底の筐体(2)を設け、
該脱脂綿(1)を、筐体(2)内に迂回して入り込むよう配備し、
該筐体(2)内の上部に設けた,軟X線を用いたX線放射管(3)を設け、
該筐体(2)内の下部には、脱脂綿(1)を挟んで下方に検知機(4)を設け、
X線漏えい範囲(A)を超えた下方に、前記筐体(2)の下端部が位置するようにした ことを特徴とする脱脂綿における異物混入の検査方法。
【請求項2】
適宜な厚みと幅を有する長尺状の脱脂綿(1)を設け、
該脱脂綿(1)が移動する中途上方に、
上面部と四周である側面部とを囲む無底の筐体(2)を設け、
該無底部を、通過用開口部(2a)とし、
前記脱脂綿(1)が、通過用開口部(2a)から筐体(2)内に迂回して入り込むよう漏えい防止の位置決めローラ(Y)(Y)を移動可能に配置して設け、
筐体(2)内の上部には、軟X線を用いたX線放射管(3)を設け、
筐体(2)内の下部には、脱脂綿(1)を挟んで下方に検知機(4)を設けたことを
特徴とする脱脂綿における異物混入の検査装置。
【請求項3】
筐体(2)の外部を移動する脱脂綿(1)と、水平維持ローラ(X)(X)によって、筐体の内部を移動する脱脂綿(1′)との高低差が、1000mm以上に形成することを特徴とする請求項2記載の脱脂綿における異物混入の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−57621(P2013−57621A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197047(P2011−197047)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(597134636)
【Fターム(参考)】