説明

脱臭性組成物及びそれを用いた脱臭性塗料

【課題】 被塗装物表面に塗布する塗料の成分として使用でき、脱臭効果が高く、脱臭性能を長期間維持できる脱臭性組成物及びそれを用いた脱臭性塗料を提供する。
【解決手段】 トルマリン粉末、ジルコニウム金属又は化合物粉末及び吸着性多孔体粉末との混合物である脱臭性組成物、並びに、合成樹脂塗料に、前記脱臭性組成物と分散剤とを配合した脱臭性塗料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗装物表面に塗布する塗料の成分として使用できる脱臭性組成物及びそれを用いた脱臭性塗料に関し、特に脱臭効果が高く、脱臭性能を長期間維持できる脱臭性組成物及びそれを用いた脱臭性塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、悪臭物質や有害物質等を除去するために、脱臭剤が用いられていた。脱臭剤は、例えば、吸着物質を担持させて悪臭物質等を吸着させるなどして、悪臭物質等を除去するものである。また、脱臭剤は、一般的には、容器に入れて、室内などに配置したり、塗料に配合して、被塗装物表面に塗布するなどして利用されている。脱臭性塗料の例としては、例えば、特許文献1に、(a)ケイ酸質粉体及び/又はアルミナ質粉体と、(b)化石礁を粉砕して得られる化石礁粉砕物及び/又は(c)トルマリン粉体と、(d)水ガラスとを含有する無機塗料組成物が記載されている。しかし、これよりも、さらに高い脱臭性能を有する塗料として使用可能な脱臭性塗料が望まれていた。また、従来の脱臭剤は、吸着物質が悪臭物質等で飽和することにより吸着性能の劣化が早いという問題があった。
【特許文献1】特開2003−96335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、被塗装物表面に塗布する塗料の成分として使用でき、脱臭効果が高く、脱臭性能を長期間維持できる脱臭性組成物及びそれを用いた脱臭性塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、トルマリン粉末、ジルコニウム金属又は化合物粉末及び吸着性多孔体粉末を含有する組成物を用いることにより前記の目的を達成することを見出し本発明を完成したものである。
すなわち、本発明は、トルマリン粉末、ジルコニウム金属又は化合物粉末及び吸着性多孔体粉末を含むことを特徴とする脱臭性組成物、並びに、合成樹脂塗料に、前記脱臭性組成物と分散剤とを配合してなる脱臭性塗料を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の脱臭性組成物は、被塗装物表面に塗布する脱臭性塗料の成分として使用でき、脱臭効果が高く、脱臭性能を長期間維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の脱臭性組成物は、トルマリン粉末、ジルコニウム金属又は化合物粉末及び吸着性多孔体粉末を含有する組成物である。
また、本発明の脱臭性塗料は、合成樹脂塗料に、前記脱臭性組成物と分散剤とを配合したものである。
本発明の脱臭性組成物において、吸着性多孔体粉末は、悪臭物質を吸着するものであり、トルマリン粉末はマイナスイオン生成体として機能し、ジルコニウム金属又は化合物粉末はトルマリン粉末にマイナスイオンを生成させる触媒として作用する。
本発明の脱臭性組成物における脱臭過程は、吸着性多孔体に吸着された悪臭物質を、トルマリン粉末及びジルコニウム金属又は化合物粉末の作用により発生したマイナスイオンの活性作用により多方位から分解促進(電気化学的反応)させ、多孔体中の悪臭物質を効果的に分解し、さらに脱臭性組成物又は脱臭性塗料からの脱離に導く。
【0007】
さらに、具体的に、悪臭物質がアンモニアである場合を例として説明すると、悪臭物質の脱臭過程は、明確に解明はされていないものの以下のようであると考えられる。
(1)吸着性多孔体へのアンモニア(NH3)及び水分(H2O)の吸着
(2)悪臭物質の分解・脱離
トルマリンから放出したマイナスイオンが多孔体に吸着されたNH3の電気分解を促進する。
2NH3 → N2 + 3H2
その一方で、空気中の水分(H2O)と多孔体中の水分(H2O)がアンモニアと反応しアンモニア水となる。
NH3 + H2O → NH4OH
トルマリンから常時放出されるマイナスイオンにより多孔体中の(i)アンモニア水及び(ii)水分は以下のような反応でアンモニアを分解、脱離に導く。
(i)NH4OH → 1/2N2↑ + H2O + 3/2H2
生成したN2及びH2はガスとして気化し、H2Oは(ii)の反応に従う。
(ii)H2O → H+ + OH-
生成したH+ はマイナスイオンに引き寄せられ電子と結合し、水素ガスとして気化し、OH- は水分子と結合してH32-のマイナスイオンとなる。
【0008】
本発明で用いる吸着性多孔体粉末としては、例えば、アルミナ粉末、活性炭素系粉末及びゼオライト粉末等が挙げられ、前記活性炭素系粉末としては、竹炭、備長炭及び白炭粉末等が挙げられる。これらの中でも、アルミナ粉末は、塗料中で浮上する性質があり、塗料によって形成した皮膜表面に凹凸が形成されやすく、外気と触れやすいという好条件が得られることから好ましい。また、竹炭粉末は、マイナスイオン効果、遠赤外線効果によりカビ、ダニ等の発生を防ぐ防かび・防虫作用、アンモニア、ホルムアルデヒド等の有害物質も吸着する効果も有することから好ましいため、アルミナ粉末及び竹炭粉末を併用するとさらに好ましい。
本発明においては、前記トルマリン粉末100重量部に対して、吸着性多孔体粉末が3〜20重量部配合されてなると好ましい。
【0009】
トルマリンは、従来から永久電極と称される電気的特性を備え、この特性を利用することで、水の電気分解を行い、その結果、界面活性機能を備えた水を得ることができることが知られている。このトルマリン電極による電気分解は、空気中に含まれる微弱な水分(湿気)に対しても生じることから、空気中の水分を電気分解して、OH-e(水酸イオン)及びH2Oと結合してヒドロキシルイオン(H32-eのマイナスイオンを発生させる。また、気体分子、特に電子親和性の高い酸素イオンに対しても電離作用によりマイナスイオン化する。
【0010】
このトルマリンのマイナスイオン発生機能を効果的に発揮させるには、トルマリンを粉末化して空気との接触面積を大きくすることが必要である。さらにトルマリンを粉末化しても、一般的に、トルマリン粉末に対して、空気の乱流、温度差、湿度差、圧力、摩擦力等の外的作用が働かないと、その電気的特性を発揮せず、マイナスイオンを発生する機能が極めて微弱なものとなる。また、外的作用を加えても継続的にはその電気的特性を発揮しないものである。しかし、本発明においては、トルマリン粉末と共に、ジルコニウム金属又は化合物粉末を使用することから、その触媒作用によりトルマリンからのマイナスイオン発生が極めて多量となるのである。このトルマリンは室内空気のイオン化に有効であることは公知である。
【0011】
本発明で用いるトルマリンとしては、例えば、一般式:(Na,Ca,K)(Al,Fe,Li,Mg,Mn)3(BO33(Al,Cr,Fe,V)6(Si263(O,OH,F)4 で表される珪酸塩鉱物であり、電荷の自発分極性を有し、著しい圧電性や焦電性を示すことから電気石とも称されるものである。
このトルマリンとしては、さらに具体的には、一般式:Na(Li,Al)3(BO33Al6(Si263(OH)4で示されるエルバイトトルマリン(リチア電気石)、一般式:NaFe3(BO33Al6(Si263(OH)4で示されるショールトルマリン、一般式:NaMg3(BO33Al6(Si263(OH)4で示されるドラバイトトルマリン等が使用できる。
【0012】
トルマリンの粉末粒子は自発分極により静電気を発生する。またその電流は生体電流に近い0.006mAとされている。その特性を利用することで水の電気分解を行い、その結果、界面活性機能を備えた水を得ることができることが知られている。このトルマリンによる電気分解は空気中に含まれる微弱な水分(湿気)に対しても生じることから、空気中の水分を電気分解して水素イオン及びヒドロキシルイオンを発生させ、気体分子(酸素分子)に対しても電離作用によりマイナスイオンを発生させる。
【0013】
したがってトルマリン粉末粒子の大きさは、小さいほど空気中の水分子と接触する面積が大きくなり、マイナスイオン発生が効果的の行われることになり好ましいものである。トルマリン粉末の好適な大きさは平均粒子径で、0.01〜50μmである。特に樹脂塗料中に配合させ、その塗料に透明性を確保するためにはトルマリン粉末の粒子径は小さなもであることが肝要である。透明性を有する樹脂塗料とするためには、その平均粒径は、0.01〜0.6μmであると好ましく、0.05μm程度であるとさらに好ましく、合成樹脂塗料の樹脂成分に対して3〜10重量%含有させることが好ましい。
なお、合成樹脂塗料に透明性を確保する必要がない場合には、トルマリン粉末は、平均粒径50μmまでのものを使用することができる。50μmを越えると、合成樹脂塗料に含有させて塗膜を作製したときに、平滑な表面が得られにくくなる。また、塗料として非透明なものでもよい場合は、合成樹脂塗料の樹脂成分に対して7〜30重量%程度含有させればよい。30重量%以下であれば塗料の密着性が良好である。
【0014】
本発明で用いるトルマリンとしては、リチア電気石が好ましい。このリチア電気石はエルバイトトルマリンと呼ばれ、おおよそ淡色のピンク、緑、青色を呈したエルバイトトルマリンを粉末化したものは、光の散乱によってほぼ白色を呈するものである。すなわち、リチア電気石を粉末化したものを塗料や合成樹脂に分散させれば、任意の染料や顔料を塗料や合成樹脂に含有させることによって、塗料や合成樹脂の色合いを淡色から農色まで自由に設計できるものである。
淡色系に着色する場合には、エルバイトトルマリンを単独で使用するのが最も好ましいが、ショールトルマリンやドラバイトトルマリンと混合して使用することも可能である。使用可能なエルバイトトルマリンとショールトルマリンやドラバイトトルマリンとの混合比率は、重量比で通常50/50〜100/0であり、好ましくは70/30〜100/0であり、さらに好ましくは80/20〜100/0である。
【0015】
本発明で用いるジルコニウム金属又は化合物粉末としては、ケイ酸ジルコニウム、金属ジルコニウム、酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、オキシ塩化ジルコニウム、電融安定化酸化ジルコニウム、安定化ジルコニアなどの粉末を挙げることができる。
これらのジルコニウム金属又は化合物粉末は、純度100%のものが最も好ましいが、必ずしも純度100%でなくても前記トルマリンのマイナスイオン発生機能を励起活性させ、マイナスイオン発生の向上が認められるものであればよく、純度70%以上であれば本発明の効果が認められ、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
これらのジルコニウム金属又は化合物粉末の中でも、電融安定化酸化ジルコニウム溶液は、特にトルマリンのマイナスイオン発生機能を励起活性させる作用が強いため好ましい。
【0016】
前記ケイ酸ジルコニウム粉末は、ジルコンサンドを鉄ボールなどで粉砕し、粉砕物から鉄粉を除去し、分級することにより得られる。前記金属ジルコニウム粉末は、ジルコンサンドから炭化ジルコニウムを調製し、これを四塩化ジルコニウムとし金属ジルコニウム粉末を得ることができる。前記酸化ジルコニウム粉末は、ジルコンサンドをアルカリ分解してジルコン酸アルカリとし、これを酸に溶解させジルコニル溶液とし、これから水酸化ジルコニルを得て、これを酸化することにより得られる。前記酸化ジルコニウム粉末はパデライトを原料とし、これから不純物を除去して得ることもできる。前記炭酸ジルコニルアンモニウム粉末は、ジルコニル溶液から炭酸ジルコニルを得て、これから炭酸ジルコニルアンモニウム粉末を得ることができる。また、ジルコンサンドを、石炭を添加してアーク溶融すると安定化ジルコニア粉末を得ることができる。
【0017】
前記電融安定化酸化ジルコニウム粉末は、ジルコンサンドをアーク溶融してSi(シリカ)を蒸発することにより得ることができる。この電融安定化酸化ジルコニウム粉末は、無機質材料メーカー等が既に多くのセラミックス等の無機質材料として使用している化合物であり、放射線(γ線)の放射も極めて微量なものであり、安全なものである。一般的な希土類鉱石と無機材(電融安定化酸化ジルコニウム)の放射線量の放射線(γ線)測定結果は、希土類鉱石が(トリウム系列:100±1Bq/g、ウラン系列:11±0.2Bq/g)、無機材が(トリウム系列:0.83±0.01Bq/g、ウラン系列が4.0±0.04Bq/g)である。
前記ジルコニウム金属又は化合物は、粉砕してジルコニウム金属又は化合物粉末とし、これをトルマリン粉末と混合することにより、トルマリンのマイナスイオン発生機能を向上でき、しかも放射線放射のない混合粉体組成物が得られる。
【0018】
特に、電融安定化酸化ジルコニウムを除くジルコニウム金属又は化合物粉末が、トルマリン粉末の個数の1/3以上存在するとマイナスイオン発生機能が向上し、トルマリン粉末の個数の2倍以上存在するときに最もマイナスイオン発生機能が向上する。トルマリン粉末の個数よりも当該ジルコニウム金属又は化合物粉末の個数が少なくなるに従って、マイナスイオン生成機能は減少し、トルマリン粉末の個数の1/3未満になるとマイナスイオンの発生機能は急速に少なくなる。
【0019】
一方、ジルコニウム金属又は化合物粉末が電融安定化酸化ジルコニウム粉末の場合には、トルマリン粉末に作用してマイナスイオン発生させる機能が強いので、他のジルコニウム金属又は化合物粉末と異なり、トルマリン粉末の個数の1/4未満になるまではマイナスイオンの発生機能は急速に少なくなることはない。
なお、電融安定化酸化ジルコニウムを除くジルコニウム金属又は化合物粉末や電融安定化酸化ジルコニウム粉末の個数がトルマリン粉末の個数より10倍以上多くなった場合には、マイナスイオン発生機能の向上はわずかとなり、経済的な面から有利ではない。
したがって、本発明においては、電融安定化酸化ジルコニウムを除くジルコニウム金属又は化合物粉末の個数は、トルマリン粉末の1/3〜10/1の個数を存在させるのが好ましく、電融安定化酸化ジルコニウム粉末の場合にはトルマリン粉末の1/4〜10/1の個数を存在させるのが好ましいものである。
【0020】
すなわち、前記トルマリン粉末[比重A、平均粒子径a(μm)]100重量部に対して、電融安定化酸化ジルコニウムを除くジルコニウム金属又は化合物粉末[比重B、平均粒子径b(μm)]が下記(1)式で示される量の割合で含むものであると好ましい。
100Bb3 /3Aa3 〜1000Bb3 /Aa3 重量部 (1)
さらに好ましい配合量は、50Bb3 /Aa3 〜500Bb3 /Aa3 重量部であり、最も好ましくは、100Bb3 /Aa3 〜300Bb3 /Aa3 重量部である。
また、前記トルマリン粉末[比重A、平均粒子径a(μm)]100重量部に対して、電融安定化酸化ジルコニウム化合物粉末[比重C、平均粒子径c(μm)]が下記(2)式で示される量の割合で含むものであると好ましい。
25Cc3 /Aa3 〜1000Cc3 /Aa3 重量部 (2)
さらに好ましい配合量は、40Cc3 /Aa3 〜400Cc3 /Aa3 重量部であり、最も好ましくは、70Cc3 /Aa3 〜250Cc3 /Aa3 重量部である。
【0021】
トルマリン粉末と電融安定化酸化ジルコニウムを除くジルコニウム金属又は化合物粉末あるいは電融安定化酸化ジルコニウム粉末は、上記したとおりの混合比率で混合することにより、マイナスイオン発生機能は向上するが、さらにその機能の向上を効率的にするには、トルマリン粉末1個に対して電融安定化酸化ジルコニウムを除くジルコニウム金属又は化合物粉末が1/3個(電融安定化酸化ジルコニウムを除くジルコニウム金属又は化合物粉末1個に対してトルマリン粉末3個)〜10個、又はトルマリン粉末1個に対して電融安定化酸化ジルコニウム粉末が1/4個(電融安定化酸化ジルコニウム粉末1個に対してトルマリン粉末4個)〜10個が精密に分散されるのが好ましい。
【0022】
本発明において、吸着性多孔体粉末及びトルマリン粉末と電融安定化酸化ジルコニウムを除くジルコニウム金属又は化合物粉末や、電融安定化酸化ジルコニウム粉末とを均一に分散する方法としては、通常使用されている撹拌翼型の混合機、空気流型混合機で粉末状態のままで混合してもよいし、粉末を水などの液体中に分散させ、撹拌翼を使用して混合したり、液流で混合してもよい。さらには、精密分散状態に混合するための特殊混合機、例えば、ラモンドスターラーを使用したラモンドミキサーなどを使用して混合してもよい。
【0023】
通常使用されている混合機を使用する場合には、吸着性多孔体粉末及びトルマリン粉末と電融安定化酸化ジルコニウムを除くジルコニウム金属又は化合物粉末、又は電融安定化酸化ジルコニウム粉末との平均粒径が同じである場合には、比重の大きい粉末が下層に集中することになり、精密分散状態にすることが難しくなる傾向があるので、吸着性多孔体粉末、トルマリン粉末、ジルコニウム金属又は化合物粉末の比重に応じて適宜その平均粒径を調整して配合すると好ましい。
このようにして得られた本発明の脱臭性組成物の平均粒径は、脱臭効果及び塗料成分として用いる場合の分散性などの点から、0.01〜0.6μmであると好ましく、0.01〜0.3であるとさらに好ましく、0.001〜0.1であると特に好ましい。
【0024】
本発明で用いる合成樹脂塗料としては、例えば、ニトロセルロースラッカー、フタル酸樹脂塗料、アミノアルキド酸樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ビニル樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、不飽和ポリエステル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、ケイ素樹脂塗料、フェノール樹脂塗料等を挙げることができる。
これら塗料に、脱臭性組成物を配合するには、塗料を製造する原材料中に配合し、その後塗料を製造するようにしてもよいし、製造された塗料に配合するようにしてもよい。
また、透明性を有する樹脂塗料とするためには、脱臭性組成物の平均粒径は0.01〜0.6μmであると好ましく、0.05μm程度であるとさらに好ましく、合成樹脂塗料の樹脂成分に対して3〜10重量%含有させることが好ましい。
なお、合成樹脂塗料に透明性を確保する必要がない場合には、脱臭性組成物は、平均粒径50μmまでのものを使用することができる。50μmを越えると、合成樹脂塗料に含有させて塗膜を作製したときに、平滑な表面が得られにくくなる。また、塗料として非透明なものでもよい場合は、合成樹脂塗料の樹脂成分に対して7〜30重量%程度含有させればよい。30重量%以下であれば塗料の密着性が良好である。
【0025】
本発明の脱臭性塗料は、合成樹脂塗料中へ脱臭性組成物の分散性を確保するために、分散剤が配合される。その分散剤の配合量は、合成樹脂塗料に対して0.5〜5.0重量%であることが好ましい。
分散剤の配合量が0.5重量%以上であれば脱臭性組成物の分散が十分であり、十分な脱臭効果が得られ、5.0重量%以下であれば脱臭性組成物の分散が十分であり、十分な脱臭効果が得られ、塗料の性質に影響を与えることもない。
【0026】
本発明で用いる分散剤としては、カチオン型分散剤、アニオン型分散剤、非イオン系分散剤、両性イオン系分散剤の中から選ばれる一種又は2種以上の混合物で構成したものである。分散剤は、分散するべき物質を細かく解き分散媒中に懸濁するのを助ける分散媒の成分であり、固−液界面に吸着して界面の性質を著しく変化させる性質を有した界面活性剤の一種である。
【0027】
前記カチオン型分散剤は、陽イオン分散剤とも称され、水溶液においてイオンに解離し、分散性を示す原子団がカチオンとなる分散剤であり、前記アニオン型分散剤は、陰イオン分散剤とも称され、水溶液中でイオンに分離し、分散性を示す部分がアニオンとなるような分散剤であり、前記非イオン系分散剤は、水溶液中でイオンに解離することなく分離性を示す分散剤で、両性イオン系分散剤は、2種類の性質を同時に備えた分散剤である。
【0028】
本発明の脱臭性塗料は、建築材料(板材、壁材等)の表面、製品を構成する材料の表面、既成の製品の外面に塗布して用いられるものであり、その塗布方法は、公知の方法であれば特に限定されないが、製造効率を考慮するとスプレーガンを用いて吹き付ける方法が最適である。また、本発明の塗料は、通常、液体塗料にマイナスイオンを発生する粉末を配合しているのでスプレーガンによって吹き付けるのに適した状態になっている。
【0029】
また、本発明の脱臭性塗料を塗布する被塗装物については、その表面固有抵抗値が、マイナスイオンの発生に大きく影響を与えており、トルマリンによるマイナスイオンの発生が影響され、表面固有抵抗値が108 Ω以下である被塗装物に用いると好ましく、106 Ω以下である被塗装物に用いるとさらに好ましい。
例えば、被塗装物表面の表面固有抵抗値が大きなもの、例えば、プラスチック、ゴム、合成紙等は、表面抵抗値が1012〜1018Ωと非常に大きく、静電気を帯びやすい。したがって、塗料中に配合されたトルマリンからマイナスイオンが発生したとしても、かかる静電気によりマイナスイオンが相殺される恐れがある。
【0030】
このため、被塗装物表面の表面固有抵抗値が108 Ω以下の場合には、静電気の発生も見られず、発生したマイナスイオンの相殺はないが、108 Ωを超える場合には、塗料に導電性材料を配合し、マイナスイオンの相殺を抑えると好ましい。
そのような導電性材料としては、例えば、導電性酸化チタン(酸化チタン表面をSn−Sb系化合物で処理したもの)粉末、導電性カーボン(伝化学工業社製:デンカブラック、HS−100)粉末、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、鉄などの金属からなる粉末、金属細片、金属短繊維、さらには有機繊維、無機繊維、合成樹脂粉末又は無機粉末の表面を金属又は金属酸化物などで被覆したもの等が挙げられる。
なお、透明性を有する塗料とする場合に配合される導電性材料は、透明性の導電性材料であることが肝要である。そのような透明性を有する導電性材料としては、例えば、透明導電材(石原産業社製:SN、FSシリーズ)、白色導電性酸化チタン(石原産業社製:ET、FTシリーズ)等が挙げられる。
【実施例】
【0031】
次に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。
実施例1
(1)脱臭性塗料の製造
トルマリン粉末としてリチアトルマリン粉末(平均粒径1.2μm)を10重量部使用し、ジルコニウム化合物粉末としてジルコニア粉末(平均粒径1.0μm)を25重量部使用し、吸着性多孔体粉末として活性アルミナ粉末(住友化学社製AF−115(商標))10重量部使用して、合計45重量部にて混合して平均粒径が1.0μmの脱臭性組成物を得た。
次に、アクリルエマルジョンからなる合成樹脂塗料に、樹脂成分に対して前記脱臭性組成物45重量%と、合成樹脂塗料に対して特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤からなる分散剤2〜3重量%とをボールミルにて混合して脱臭性塗料を得た。
【0032】
(2)脱臭性塗料の評価
(I)マイナスイオン発生量の測定
上記(1)で得られた脱臭性塗料を、被塗装物として大きさ70mm×150mm×厚み0.8mmのアルミ板(昭和電工株式会社製A1100−H24(商標))に、乾燥厚みが25μmになるように塗布し、加熱乾燥することにより測定サンプルを作製した。
このサンプルについて、測定室(温度23℃、湿度67%、無風状態、測定器以外の電気製品の電源を切った状態)でIC−1000マイナスイオンカウンターを使用して120秒間のマイナスイオン発生数を測定したところ、マイナスイオン発生量は1820(個/cm3 )であった。その結果を表1に示す。
【0033】
(II)脱臭性能試験
(i)悪臭物質:アンモニア
上記(1)で得られた脱臭性塗料を、被塗装物として大きさ70mm×150mm×厚み0.8mmのアルミ板(昭和電工株式会社製A1100−H24(商標))に、乾燥厚みが25μmになるように塗布し、加熱乾燥することにより試験片を作製した。
この試験片を栓付きデシケーターに入れ、悪臭物質としてアンモニアを3000ml入れて密閉し、初期濃度45ppm、25℃で北川式ガス検知管法で経過時間(24時間、4時間ごと)に対するアンモニア濃度を測定した。その結果を表2及び図1に示す。
(ii)悪臭物質:ホルムアルデヒド
上記(i)において、悪臭物質としてアンモニアの代わりにホルムアルデヒドを3000ml入れて密閉し、初期濃度30ppm、25℃で北川式ガス検知管法で経過時間(24時間、4時間ごと)に対するホルムアルデヒド濃度を測定した。その結果を表2及び図2に示す。
(iii) 悪臭物質:硫化水素
上記(i)において、悪臭物質としてアンモニアの代わりに硫化水素を3000ml入れて密閉し、初期濃度10ppm、25℃で北川式ガス検知管法で経過時間(24時間、4時間ごと)に対する硫化水素濃度を測定した。その結果を表2及び図3に示す。
(iv)悪臭物質:アセトアルデヒド
上記(i)において、悪臭物質としてアンモニアの代わりにアセトアルデヒドを3000ml入れて密閉し、初期濃度15ppm、25℃で北川式ガス検知管法で経過時間(24時間、4時間ごと)に対するアセトアルデヒド濃度を測定した。その結果を表2及び図4に示す。
【0034】
比較例1〜3
実施例1において、トルマリン粉末及び吸着性多孔体粉末を表1に記載の量とし、ジルコニウム化合物粉末を用いなかったこと以外は同様にして脱臭性塗料を得た。
得られた脱臭性塗料について、実施例1(2)(I)と同様にしてマイナスイオン発生量を測定した結果を表1に示す。また、実施例1(2)(II)(i)〜(iv)と同様にして悪臭物質の脱臭性能試験を行った結果をそれぞれ表2及び図1〜4に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

※表2中、数字の単位はppm。
【0037】
表1に示したように、実施例1の脱臭性塗料がマイナスイオンの発生量が多いのに対し、比較例1〜3の脱臭性塗料では発生していない。この理由は、従来からトルマリンがマイナスイオンを発生することが知られているものの、これは大気中でトルマリンに圧力を加えることにより発生するピエゾ電気や、高温度により発生するピロ電気によるものであり、全くの静止状態ではマイナスイオンが発生しないことによると判断できる。これに対し、実施例1では、ジルコニアがトルマリンのマイナスイオン発生性能を励起活性させる作用を有するために、マイナスイオンを発生させている。
そして、表2に示したように、マイナスイオンが発生していない比較例1〜3の脱臭性塗料では、悪臭物質の電気分解作用が生じないため、吸着性多孔体粉末が飽和して悪臭物質の脱臭効果が短時間で消失するが、実施例1の脱臭性塗料では、吸着性多孔体を常時活性状態に維持できるため、極めて長時間脱臭性能が維持されている。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上詳細に説明したように、本発明の脱臭性組成物は、被塗装物表面に塗布する脱臭性塗料の成分として使用でき、吸着性多孔体を常時活性状態に維持できるため、脱臭効果が高く、脱臭性能を長期間維持できる。このため、住宅用の脱臭性塗料などとして極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】悪臭物質としてアンモニアを用いた場合の脱臭性塗料の評価結果を示す図である。
【図2】悪臭物質としてホルムアルデヒドを用いた場合の脱臭性塗料の評価結果を示す図である。
【図3】悪臭物質として硫化水素を用いた場合の脱臭性塗料の評価結果を示す図である。
【図4】悪臭物質としてアセトアルデヒドを用いた場合の脱臭性塗料の評価結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルマリン粉末、ジルコニウム金属又は化合物粉末及び吸着性多孔体粉末を含むことを特徴とする脱臭性組成物。
【請求項2】
平均粒径が0.01〜0.6μmである請求項1に記載の脱臭性組成物。
【請求項3】
前記吸着性多孔体粉末が、アルミナ粉末、活性炭素系粉末及びゼオライト粉末の中から選ばれる少なくとも一種類である請求項1又は2に記載の脱臭性組成物。
【請求項4】
前記活性炭素系粉末が、竹炭粉末、備長炭粉末及び白炭粉末の中から選ばれる少なくとも一種類である請求項3に記載の脱臭性組成物。
【請求項5】
前記吸着性多孔体粉末が、アルミナ粉末及び竹炭粉末の組み合わせである請求項3又は4に記載の脱臭性組成物。
【請求項6】
前記トルマリン粉末100重量部に対して、吸着性多孔体粉末3〜20重量部を含む請求項1〜5のいずれかに記載の脱臭性組成物。
【請求項7】
前記トルマリン粉末[比重A、平均粒子径a(μm)]100重量部に対して、電融安定化酸化ジルコニウムを除くジルコニウム金属又は化合物粉末[比重B、平均粒子径b(μm)]を下記(1)式で示される量の割合で含む請求項1〜6のいずれかに記載の脱臭性組成物。
100Bb3 /3Aa3 〜1000Bb3 /Aa3 重量部 (1)
【請求項8】
前記トルマリン粉末[比重A、平均粒子径a(μm)]100重量部に対して、電融安定化酸化ジルコニウム化合物粉末[比重C、平均粒子径c(μm)]を下記(2)式で示される量の割合で含む請求項1〜6のいずれかに記載の脱臭性組成物。
25Cc3 /Aa3 〜1000Cc3 /Aa3 重量部 (2)
【請求項9】
合成樹脂塗料に、請求項1〜8のいずれかに記載の脱臭性組成物と分散剤とを配合してなる脱臭性塗料。
【請求項10】
平均粒径0.01〜0.6μmの前記脱臭性組成物を、合成樹脂塗料の樹脂成分に対して3〜10重量%の割合で含む透明性を有する請求項9に記載の脱臭性塗料。
【請求項11】
前記脱臭性組成物を、合成樹脂塗料の樹脂成分に対して7〜30重量%の割合で含む非透明性を有する請求項9に記載の脱臭性塗料。
【請求項12】
前記分散剤の含有量が、合成樹脂塗料に対して0.5〜5.0重量%である請求項9〜11のいずれかに記載の脱臭性塗料。
【請求項13】
前記分散剤が、カチオン型分散剤、アニオン型分散剤、非イオン系分散剤及び両性イオン系分散剤の中から選ばれる少なくとも一種類である請求項9〜12のいずれかに記載の脱臭性塗料。
【請求項14】
前記合成樹脂塗料が、ニトロセルロースラッカー、フタル酸樹脂塗料、アミノアルキド酸樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ビニル樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、不飽和ポリエステル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、ケイ素樹脂塗料及びフェノール樹脂塗料の中から選ばれる少なくとも一種類である請求項9〜13のいずれかに記載の脱臭性塗料。
【請求項15】
被塗装物の表面抵抗値が108 Ω以下の場合に用いられる請求項9〜14のいずれかに記載の脱臭性塗料。
【請求項16】
被塗装物の表面抵抗値が108 Ωを超える場合に、さらに導電性材料を配合する請求項9〜14のいずれかに記載の脱臭性塗料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−181287(P2006−181287A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381277(P2004−381277)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(598028051)株式会社 日本ハネック (16)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】