説明

脳変性疾患の処置のためのスフィンゴシン−1−ホスフェート(S1P)受容体アゴニストの使用

【課題】本発明は、特に進行性認知症または脳変性疾患の処置における、スフィンゴシン−1−ホスフェート(S1P)受容体アゴニストの新規使用を提供することを課題とするものである。
【解決手段】(a)スフィンゴシン−1−ホスフェート(S1P)受容体アゴニストである第一剤および(b)脳変性または進行性認知症の軽減または処置に有用な第二剤を含む、組合せ剤を提供することにより、本願発明の上記課題が解決される。該第二剤は特に第二剤がAMPA受容体アゴニスト、向知性剤、鎮痛剤および抗炎症剤から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に進行性認知症または脳変性疾患の処置における、スフィンゴシン−1−ホスフェート(S1P)受容体アゴニストの新規使用に関する。
【背景技術】
【0002】
S1P受容体アゴニストは、1個またはそれ以上のスフィンゴシン−1−ホスフェート受容体、例えばS1P1からS1P8でアゴニストとして信号を送る化合物である。S1P受容体に結合するアゴニストは、例えば細胞内ヘテロ三量体G−タンパク質のGα−GTPおよびGβγ−GTPへの解離、および/またはアゴニストが占有した受容体のリン酸化および下流シグナル伝達経路/キナーゼの活性化に帰着し得るか、またはスーパーアゴニズム(super-agonism)の結果として受容体の内在化/非感受性化を、従って、天然リガンドS1Pによる受容体シグナル伝達の拮抗作用に帰着し得る。
【0003】
個々のヒトS1P受容体に対するS1P受容体アゴニストの結合親和性を下記アッセイで決定し得る:
化合物のS1P受容体アゴニスト活性を、ヒトS1P受容体S1P、S1P、S1P、S1PおよびS1Pで試験する。機能的受容体活性化を、適当なヒトS1P受容体を安定に発現するトランスフェクトしたCHOまたはRH7777細胞から調製した膜タンパク質への化合物が誘発するGTP[γ−35S]結合の定量により評価する。使用するアッセイ技術はSPA(シンチレーション近接アッセイ(scintillation proximity based assay)である。簡単に言うと、DMSOに溶解した化合物を連続希釈し、SPAビーズ(Amersham-Pharmacia)固定化S1P受容体発現膜タンパク質(10−20μg/ウェル)に、50mM Hepes、100mM NaCl、10mM MgCl、10μM GDP、0.1%無脂肪BSAおよび0.2nM GTP[γ−35S](1200Ci/mmol)の存在下で添加する。96ウェルマイクロタイタープレート中、RTで120分インキュベーション後、非結合GTP[γ−35S]を遠心分離工程により分離する。膜結合GTP[γ−35S]により惹起されたSPAビーズの蛍光をTOPcountプレートリーダー(Packard)で定量する。EC50を標準曲線適合ソフトウェアを使用して計算する。このアッセイにおいて、該S1P受容体アゴニストは、好ましくは<50nMのS1P受容体に対する結合親和性を有する。
【0004】
S1P受容体の内在化および非感受性化は、例えばmyc標識ヒトS1P受容体でトランスフェクトしたチャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞を使用して決定する。アゴニストの刺激による内在化を、蛍光標識した抗myc抗体を使用したFACS分析により決定する。
【0005】
好ましいS1P受容体アゴニストは、例えばS1P結合特性に加えて、また増進されたリンパ球ホーミング特性を有する化合物、例えば、リンパ球の、循環から二次リンパ組織への、好ましくは可逆性の再分布に起因するリンパ球減少症を、広汎性の免疫抑制の惹起なしに誘発する化合物である。未処置細胞は隔絶されている;血液由来のCD4およびCD8 T細胞およびB細胞は刺激されて、リンパ節(LN)およびパイエル板(PP)に移動する。
【0006】
該リンパ球帰巣特性は、下記血液リンパ球枯渇アッセイにおいて測定し得る:
S1P受容体アゴニストまたは媒体をラットに強制胃管栄養法により経口投与する。血液学的モニタリングのための尾血液を、個々の値の基線を得るために−1日に、および投与2、6、24、48および72時間後に得る。このアッセイにおいて、S1P受容体アゴニストは末梢血リンパ球を、例えば<20mg/kgの用量で投与したとき、例えば50%まで枯渇させる。好ましいS1P受容体アゴニストは、さらに、S1P結合特性に加えて、S1P受容体を内在化/非感受性化し、それにより、脈管構造細胞、例えば内皮細胞上の、リゾリン脂質(すなわちスフィンゴシン−1−ホスフェート(S1P)、スフィンゴホスホリルコリン(SPC)、リゾホスファチジン酸(LPA)、およびその他を含む)により誘発される炎症工程に拮抗する。化合物の該内在化/非感受性化能は、ヒトmyc標識S1P受容体でトランスフェクトしたCHO細胞を使用して決定するであろう。
【0007】
適当なS1P受容体アゴニストは、例えば下記のものである:
−EP627406A1に記載の化合物、例えば式I
【化1】

〔式中、
は直線状または分枝した(C12−22)炭素鎖であり
−これは、鎖中に二重結合、三重結合、O、S、NR(式中、RはH、アルキル、アラルキル、アシルまたはアルコキシカルボニルである)、およびカルボニルから選択される結合またはヘテロ原子を有してよく、および/または
−これは、置換基としてアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アシルアミノ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アシルオキシ、アルキルカルバモイル、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシイミノ、ヒドロキシまたはカルボキシを有してよい;または

−フェニルアルキル(ここで、アルキルは直線状または分枝した(C6−20)炭素鎖である);または
−フェニルアルキルであり、ここで、アルキルは直線状または分枝した(C1−30)炭素鎖であって、該フェニルアルキルは
−所望によりハロゲンで置換されていてよい直線状または分枝した(C6−20)炭素鎖、
−所望によりハロゲンで置換されていてよい直線状または分枝した(C6−20)アルコキシ鎖、
−直線状または分枝した(C6−20)アルケニルオキシ、
−フェニルアルコキシ、ハロフェニルアルコキシ、フェニルアルコキシアルキル、フェノキシアルコキシまたはフェノキシアルキル、
−C6−20アルキルで置換されているシクロアルキルアルキル、
−C6−20アルキルで置換されているヘテロアリールアルキル、
−ヘテロ環式C6−20アルキルまたは
−C2−20アルキルで置換されているヘテロ環式アルキル
で置換されており、そして
該アルキル部分は
−炭素鎖中、二重結合、三重結合、O、S、スルフィニル、スルホニル、またはNR(ここで、Rは上記で定義の通りである)から選択される結合またはヘテロ原子を有してよく、かつ
−置換基として、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アシルアミノ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アシルオキシ、アルキルカルバモイル、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシを有してよく、そして
、R、RおよびRの各々は、独立して、H、C1−4アルキルまたはアシルである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩;
【0008】
−EP1002792A1に記載の化合物、例えば式II
【化2】

〔式中、
mは1から9であり、そしてR'、R'、R'およびR'の各々は、独立して、H、アルキルまたはアシルである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩;
【0009】
−EP0778263A1に記載の化合物、例えば式III
【化3】

〔式中、
WはH;C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニル;非置換であるか、またはOHで置換されているフェニル;R''O(CH);またはハロゲン、C3−8シクロアルキル、フェニルおよびOHで置換されているフェニルから成る群から選択される1個から3個の置換基で置換されているC1−6アルキルであり;
XはHまたはp個の炭素原子を有する非置換もしくは置換直鎖アルキル、または、(p−1)個の炭素原子を有する非置換もしくは置換直鎖アルコキシであって、例えばC1−6アルキル、OH、C1−6アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、アシルアミノ、オキソ、ハロC1−6アルキル、ハロゲン、非置換フェニルならびにC1−6アルキル、OH、C1−6アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、アシルアミノ、ハロC1−6アルキルおよびハロゲンから成る群から選択される1個から3個の置換基で置換されているフェニルから成る群から選択される1個から3個の置換基で置換されており;YはH、C1−6アルキル、OH、C1−6アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、アシルアミノ、ハロC1−6アルキルまたはハロゲンであり、Zは一重結合またはq個の炭素原子数を有する直鎖アルキレンであり、
pおよびqの各々は、独立して、1から20の整数であるが、ただし、6p+q23であり、m'は1、2または3であり、nは2または3であり、
R''、R''、R''およびR''の各々は、独立して、H、C1−4アルキルまたはアシルである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩;
【0010】
−WO02/18395に記載の化合物、例えば式IVaまたはIVb
【化4】

〔式中、
はO、S、NR1sまたは基−(CH)na−(ここで、該基は非置換であるか、または1個から4個のハロゲンで置換されている)であり;nは1または2であり、R1sはHまたは(C1−4)アルキル(ここで、該アルキルは非置換であるか、またはハロゲンで置換されている)であり;R1aはH、OH、(C1−4)アルキルまたはO(C1−4)アルキル(ここで、該アルキルは非置換であるか、または1個から3個のハロゲンで置換されている)であり;R1bはH、OHまたは(C1−4)アルキル(ここで、該アルキルは非置換であるか、またはハロゲンで置換されている)であり;各R2aは独立してHまたは(C1−4)アルキルから選択され、該アルキルは非置換であるか、またはハロゲンで置換されており;R3aはH、OH、ハロゲンまたはO(C1−4)アルキル(ここで、該アルキルは非置換であるか、またはハロゲンで置換されている)であり;そしてR3bはH、OH、ハロゲン、(C1−4)アルキル(ここで、該アルキルは非置換であるかもしくはヒドロキシで置換されている)、またはO(C1−4)アルキル(ここで、該アルキルは非置換であるか、またはハロゲンで置換されている)であり;Yは−CH−、−C(O)−、−CH(OH)−、−C(=NOH)−、OまたはSであり、そしてR4aは(C4−14)アルキルまたは(C4−14)アルケニルである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物;
【0011】
−WO02/076995に記載の化合物、例えば式V
【化5】

〔式中、
は1、2または3であり;
はOまたは直接結合であり;
1cはH;所望によりOH、アシル、ハロゲン、C3−10シクロアルキル、フェニルまたはヒドロキシ−フェニレンで置換されていてよいC1−6アルキル;C2−6アルケニル;C2−6アルキニル;または所望によりOHで置換されていてよいフェニルであり;
2c
【化6】

(式中、R5cはHまたは所望により1個、2個もしくは3個のハロゲン原子で置換されていてよいC1−4アルキルであり、そしてR6cはHまたは所望によりハロゲンで置換されていてよいC1−4アルキルである)
であり;
3cおよびR4cの各々は、独立して、H、所望によりハロゲンで置換されていてよいC1−4アルキル、またはアシルであり、そして
は、鎖中に所望により酸素原子を有してよく、かつ所望によりニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されていてよいC13−20アルキルであるか;または式(a)
【化7】

(式中、R7cはH、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり、そしてR8cは置換C1−20アルカノイル、フェニルC1−14アルキル(ここで、該C1−14アルキルは所望によりハロゲンまたはOHで置換されていてよい)、シクロアルキルC1−14アルコキシまたはフェニルC1−14アルコキシ(ここで、該シクロアルキルまたはフェニル環は所望によりハロゲン、C1−4アルキルおよび/またはC1−4アルコキシで置換されていてよい)、フェニルC1−14アルコキシ−C1−14アルキル、フェノキシC1−14アルコキシまたはフェノキシC1−14アルキルである)
の残基であるか、
はまた、R1cがC1−4アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであるとき、R8cがC1−14アルコキシである式(a)の残基でもある。〕
の化合物、または
【0012】
式VI
【化8】

〔式中、
は2、3または4であり、
1xはH;所望によりOH、アシル、ハロゲン、シクロアルキル、フェニルまたはヒドロキシ−フェニレンで置換されていてよいC1−6アルキル;C2−6アルケニル;C2−6アルキニル;または所望によりOHで置換されていてよいフェニルであり;
2xはH、C1−4アルキルまたはアシルであり、
3xおよびR4xの各々は、独立してH、所望によりハロゲンまたはアシルで置換されていてよいC1−4アルキルであり、
5xはH、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシであり、そして
6xはシクロアルキルで置換されていているC1−20アルカノイル;シクロアルキルC1−14アルコキシ(ここで、該シクロアルキル環は所望によりハロゲン、C1−4アルキルおよび/またはC1−4アルコキシで置換されていてよい);フェニルC1−14アルコキシ(ここで、該フェニル環は所望によりハロゲン、C1−4アルキルおよび/またはC1−4アルコキシで置換されていてよい)であり、
6xはまた、R1xがOHで置換されているC2−4アルキルであるとき、C4−14アルコキシでもあり、またはR1xがC1−4アルキルであるとき、ペンチルオキシまたはヘキシルオキシでもある。
ただし、R5xがHであるかまたはR1xがメチルである何れかのとき、R6xは、フェニル−ブチレンオキシ以外である。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩;
【0013】
−WO02/06268AIに記載の化合物、例えば式VII
【化9】

〔式中、
1dおよびR2dは、独立して、Hまたはアミノ−保護基であり;
3dは水素、ヒドロキシ−保護基または式
【化10】

の残基であり;
4dは低級アルキルであり;
は1から6の整数であり;
はエチレン、ビニレン、エチニレン、式−D−CH−(式中、Dはカルボニル、−CH(OH)−、O、SまたはNである)、アリールまたは下記に定義の群から選択される3個までの置換基で置換されているアリールであり;
は一重結合、C1−10アルキレン、グループaおよびbから選択される3個までの置換基で置換されているC1−10アルキレン、炭素鎖の中央または末端にOまたはSを有するC1−10アルキレン、またはグループaおよびbから選択される3個までの置換基で置換されている炭素鎖の中央または末端にOまたはSを有するC1−10アルキレンであり;
5dは水素、シクロアルキル、アリール、ヘテロ環、グループaおよびbから選択される3個までの置換基で置換されているシクロアルキル、グループaおよびbから選択される3個までの置換基で置換されているアリール、またはグループaおよびbから選択される3個までの置換基で置換されているヘテロ環であり;
6dおよびR7dの各々は、独立して、Hまたはグループaから選択される置換基であり;
8dおよびR9dの各々は、独立して、Hまたは所望によりハロゲンで置換されていてよいC1−4アルキルであり;
<グループa>はハロゲン、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、カルボキシル、低級アルコキシカルボニル、ヒドロキシ、低級脂肪族アシル、アミノ、モノ−低級アルキルアミノ、ジ−低級アルキルアミノ、低級脂肪族アシルアミノ、シアノまたはニトロであり;そして
<グループb>はシクロアルキル、アリール、ヘテロ環であり、各々、グループaから選択される3個までの置換基で置換されていてよい;
ただし、R5dが水素であるとき、Yは一重結合または直鎖C1−10アルキレンの何れかである。〕
の化合物、またはその薬理学的に許容される塩もしくはエステル;
【0014】
−特開2002−316985に記載の化合物、例えば式VIII:
【化11】

〔式中、
1e、R2e、R3e、R4e、R5e、R6e、R7e、n、XおよびYは特開2002−316985に記載の通りである。〕
の化合物またはその薬理学的に許容される塩もしくはエステル;
【0015】
−WO03/29184およびWO03/29205に記載の化合物、例えば式IX
【化12】

〔式中、
はOまたはSであり、そしてR1f、R2f、R3fおよびnはWO03/29184およびO3/29205に記載の通りであり、R4fおよびR5fの各々は、独立してHまたは式
【化13】

(式中、R8fおよびR9fの各々は、独立して、Hまたは所望によりハロゲンで置換されていてよいC1−4アルキル;例えば2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオールまたは2−アミノ−2−[4−(ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオールである)
の残基である。〕
の化合物、またはその薬理学的塩;
【0016】
−WO03/062252A1に記載の化合物、例えば式X
【化14】

〔式中、
Arはフェニルまたはナフチルであり;mgおよびngの各々は独立して0または1であり;AはCOOH、PO、POH、SOH、PO(C1−3アルキル)OHおよび1H−テトラゾール−5−イルから選択され;R1gおよびR2gの各々は独立してH、ハロゲン、OH、COOHまたは所望によりハロゲンで置換されていてよいC1−4アルキルであり;R3gはHまたは所望によりハロゲンもしくはOHで置換されていてよいC1−4アルキルであり;各R4gは、独立してハロゲン、または所望によりハロゲン置換されていてよいC1−4アルキルもしくはC1−3アルコキシであり;そして、RおよびMの各々は、WO03/062252A1でそれぞれBおよびCについて示された意味の一つを有する。〕
の化合物;
【0017】
−WO03/062248A2に記載の化合物、例えば式XI
【化15】

〔式中、
Arはフェニルまたはナフチルであり;nは2、3または4であり;AはCOOH、1H−テトラゾール−5−イル、PO、PO、−SOHまたはPO(R5h)OH(式中、R5hはC1−4アルキル、ヒドロキシC1−4アルキル、フェニル、−CO−C1−3アルコキシおよび−CH(OH)−フェニルから選択され、ここで、該フェニルまたはフェニル部分は所望により置換されていてよい)であり;R1hおよびR2hの各々は、独立してH、ハロゲン、OH、COOH、または所望によりハロゲノ置換されていてよいC1−6アルキルもしくはフェニルであり;R3hはHまたは所望によりハロゲンおよび/またはOHで置換されていてよいC1−4アルキルであり;各R4hは、独立してハロゲノ、OH、COOH、C1−4アルキル、S(O)0、1もしくは21−3アルキル、C1−3アルコキシ、C3−6シクロアルコキシ、アリールまたはアラルコキシ(ここで、該アルキル部分は、所望により1−3個のハロゲンで置換されていてよい)であり;そしてRおよびMの各々は、WO03/062248A2でそれぞれBおよびCについて示された意味の一つを有する。〕
の化合物;
【0018】
−WO04/026817に記載の化合物、例えば式XII
【化16】

〔式中、
1jはハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、アラルキル、または所望により置換されていてよいフェノキシもしくはアラルキルオキシであり、R2jはH、ハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、アラルキルまたはアラルキルオキシであり、R3jはH、ハロゲン、トリフルオロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオまたはベンジルオキシであり、R4jはH、C1−4アルキル、フェニル、所望により置換されていてよいベンジル、1個から5個のCを有する低級脂肪族アシルまたは所望により置換されていてよいベンゾイルであり、R5jはH、モノハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、フェニル、アラルキル、C2−4アルケニルまたはC2−4アルキニルであり、R6jおよびR7jの各々は、独立して、HまたはC1−4アルキルであり、XはO、S、SOまたはSOであり、そしてnjは1、2、3または4である。〕
の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0019】
本発明のさらなる態様によって、本発明の組み合わせ物において使用するためのS1P受容体アゴニストはまた、選択的S1P1受容体、35S−GTPγS結合アッセイで評価するようなS1P1受容体に対するEC50対S1P3受容体に対するEC50で測定して、例えばS1P3受容体の少なくとも20倍、例えば100倍、500倍、1000倍または2000倍のS1P1受容体に対する選択性を有する化合物であり、該化合物は35S−GTPγS結合アッセイにより評価して、100nMまたはそれ未満のS1P1受容体の結合についてのEC50を有する。代表的S1P1受容体アゴニストは、例えばWO03/061567(その内容は引用により本明細書に包含する)に列記の化合物、例えば、式
【化17】

の化合物である。
【0020】
式IからXIVの化合物が分子中に1個またはそれ以上の不斉中心を有するとき、本発明は様々な光学異性体、ならびにラセミ体、ジアステレオ異性体およびそれらの混合物を包含することは理解されるべきである。式IIIまたはIVbの化合物は、アミノ基を担持する炭素原子が不斉である場合、好ましくはこの炭素原子でR−立体配置を有する。
【0021】
式IからXIVの化合物は遊離形または塩形で存在し得る。式IからXIIIの化合物の薬学的に許容される塩の例は、塩酸塩、臭化水素酸塩および硫酸塩のような無機酸との塩、酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、メタンスルホン酸塩およびベンゼンスルホン酸塩のような有機酸との塩、または、適当なとき、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびアルミニウムのような金属との塩、トリエチルアミンのようなアミンとの塩、およびリシンのような二塩基性アミノ酸との塩を含む。本発明の組み合わせ物の化合物および塩は、水和物および溶媒和物形態を含む。
【0022】
特許明細書の引用をしている各場合、化合物に関する対象を引用により本明細書に包含させる。
【0023】
アシルは、残基R−CO−(式中、RはC1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、フェニルまたはフェニル−C1−4アルキルである)であり得る。特記しない限り、アルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルキニルは、直鎖または分枝鎖であり得る。
【0024】
式Iの化合物において、Rとしての炭素鎖が置換されているとき、それは好ましくはハロゲン、ニトロ、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されている。炭素鎖が所望により置換されていてよいフェニレンで中断されているとき、該炭素鎖は好ましくは非置換である。フェニレン部分が置換されているとき、それは好ましくはハロゲン、ニトロ、アミノ、メトキシ、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されている。
【0025】
好ましい式Iの化合物は、Rが所望によりニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されていてよいC13−20アルキルであるもの、そしてより好ましくはRが所望によりハロゲンで置換されていてよいC6−14−アルキル鎖で置換されているフェニルアルキルであり、かつ該アルキル部分が所望によりヒドロキシで置換されているC1−6アルキルであるものである。より好ましくは、Rはフェニル上を、直線状または分枝した、好ましくは直線状C6−14アルキル鎖で置換されているフェニル−C1−6アルキルである。該C6−14アルキル鎖はオルト、メタまたはパラであり得、好ましくはパラである。
好ましくはRからRの各々はHである。
【0026】
好ましい式Iの化合物は2−アミノ−2−テトラデシル−1,3−プロパンジオールである。特に好ましい式IのS1P受容体アゴニストは遊離形または薬学的に許容される塩形、例えば下記に示す通りの塩酸塩のFTY720、すなわち2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール(本明細書で、以後化合物Aと呼ぶ)である:
【化18】

【0027】
好ましい式IIの化合物は、遊離形または薬学的に許容される塩形、例えば塩酸塩の、R'からR'の各々がHであり、そしてmが4であるもの、すなわち2−アミノ−2−{2−[4−(1−オキソ−5−フェニルペンチル)フェニル]エチル}プロパン−1,3−ジオール(本明細書で、以後化合物Bと呼ぶ)である。
【0028】
好ましい式IIIの化合物は、遊離形または薬学的に許容される塩形、例えば塩酸塩の、WがCHであり、R''からR''の各々がHであり、Zがエチレンであり、Xがヘプチルオキシであり、そしてYがHであるもの、すなわち2−アミノ−4−(4−ヘプチルオキシフェニル)−2−メチル−ブタノール(本明細書で、以後化合物Cと呼ぶ)である。R−エナンチオマーが特に好ましい。
【0029】
好ましい式IVaの化合物は、FTY720−ホスフェート(R2aがHであり、R3aがOHであり、XがOであり、R1aおよびR1bがOHである)である。好ましい式IVbの化合物は、化合物C−ホスフェート(R2aがHであり、R3bがOHであり、XがOであり、R1aおよびR1bがOHであり、YがOであり、そしてR4aがヘプチルである)である。好ましい式Vの化合物は、化合物B−ホスフェートである。
【0030】
好ましい式Vの化合物は、リン酸モノ−[(R)−2−アミノ−2−メチル−4−(4−ペンチルオキシ−フェニル)−ブチル]エステルである。
【0031】
好ましい式VIIIの化合物は、(2R)−2−アミノ−4−[3−(4−シクロヘキシルオキシブチル)−ベンゾ[b]チエン−6−イル]−2−メチルブタン−1−オールである。
好ましい式XIIの化合物は、R1jがCFまたはベンジルオキシであり、そしてR6jがHであるものである。
【0032】
式Iの化合物からXIVは、例えばEP−A1−627,406に記載の通りの、観察された活性に基づき、例えば免疫抑制剤として、例えば急性同種移植片拒絶反応または自己免疫疾患の処置に有用であることが判明している。
【0033】
脳変性疾患は、人口における老齢者の数がどんどん増えているため、先進国では一般的な問題になってきている。この疾患の既知の原因はない。なぜ一部の人たちには30代または40代ほど若い年齢で認知症が現れ、他方は遅れて70代または80代になるまで現れないかは、不明である。アルツハイマー病は、潜行性の認知症の発症により特徴付けられる脳の進行性変性疾患である。記憶、判断、注意持続時間、および問題解決技能の障害が、認知能の全体的な損失に続く。このような疾患および障害の処置に、例えば、疾患進行を減少または予防するおよび/または症状を軽減するおよび/または生活の質を改善するのに有効な薬剤の医学的必要性が残っている。本発明により、S1P受容体アゴニストが進行性認知症および脳変性の処置に有用となる、興味深い特性を有することが判明した。
【0034】
本発明の特定の発見に従い、下記が提供される:
1.1 処置を必要とする対象における進行性認知症または脳変性の処置法であって、該対象に治療的有効量のスフィンゴシン−1−ホスフェート(S1P)受容体アゴニスト、例えば式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法。
【0035】
1.2 処置を必要とする対象におけるβ−アミロイド関連炎症性疾患または障害の処置法であって、該対象に治療的有効量のスフィンゴシン−1−ホスフェート(S1P)受容体アゴニスト、例えば式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法。
【0036】
このような疾患および障害の例は、例えばアルツハイマー病、アミロイド症、レビ小体疾患多発脳梗塞性認知症、ピック病または脳のアテローム性動脈硬化症である。
【0037】
1.3 処置を必要とする対象における認知能の損失の減少または阻害の方法であって、該対象に治療的有効量のスフィンゴシン−1−ホスフェート(S1P)受容体アゴニスト、例えば式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法。
【0038】
2. 上記1.1から1.3の下に定義の何れかの方法で使用するための医薬組成物の製造に使用するためのスフィンゴシン−1−ホスフェート(S1P)受容体アゴニスト、例えば式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0039】
3. スフィンゴシン−1−ホスフェート(S1P)受容体アゴニスト、例えば式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を1個またはそれ以上の薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む、上記1.1から1.3の下に定義の何れかの方法に使用するための医薬組成物。
【0040】
好ましくは該進行性認知症または脳変性は老人性認知症以外である。
【0041】
スフィンゴシン−1−ホスフェート(S1P)受容体アゴニスト、例えば式Iの化合物の上記に特記した疾患の処置における有用性は、動物試験法ならびに病院で、例えば、後記の方法に従い証明し得る。
【実施例】
【0042】
A.1 末梢血単核細胞を、健常ボランティアの末梢静脈血から得る(EDTAで抗凝血処置)。Lymphoprep密度勾配遠心分離後、末梢血単核細胞を回収し、3回生理食塩水で洗浄する。単球の正の選択を、モノクローナル抗ヒトCD14抗体と接合したMACSコロイド状超常磁性マイクロビーズを、MACS緩衝液(5mM EDTAおよび0.5%ウシ血清アルブミン添加PBS)中の冷却した、新たに調製した末梢血単核細胞調製物に、製造業者の指示に従い添加することにより行う。細胞およびマイクロビーズを15分、4−6℃でインキュベートする。その間に、分離カラムをMACS磁場中に置き、MACS緩衝液で室温で洗浄する。該細胞をMACS緩衝液で洗浄し、再懸濁し、分離カラムの頂上に負荷する。CD14細胞含有溶離剤を回収し、カラムを磁場から離した後、捕捉された単球(CD14)を6倍量の冷MACS緩衝液で溶出し、遠心分離し、0.5%BSA含有培地に再懸濁する。免疫細胞化学によると、調製物は約98%の純度である。
【0043】
走化性アッセイ
白血球移動を、単球走化性のための5μm孔径ニトロセルロースフィルターを備えた改変48−ブラインドウェル・マイクロケモタキシス・チャンバー(48-blindwell microchemotaxis chamber)を使用して行う。ある実験において、細胞を20分、GFX[500nM]、スタウロスポリン[10ng/mL]、チルホスチン−23[10ng/mL]、ウォルトマニン[10nM]、コレラ毒素[1nM]、DMS[20pg/mLから20μg/mL]または百日咳毒素[1nM]とインキュベートする。fMLPへの単球走化性に影響するAβの効果を決定するために、細胞とAβ[1aMから1μM]を20分インキュベートする。2回洗浄後、50μlの細胞懸濁液[1×10細胞/mL]を走化性チャンバーの上部区画に置き、細胞をfMLPに向けて90分移動させる。これらの移動時間の後、フィルターを脱水し、固定し、ヘマトキシリン−エオシンで染色する。移動の深さを顕微鏡で、定量し、フィルター表面から3細胞の先端までの距離を測定する。データを指向性移動と非指向性移動の間の比率である“走化性指数”として示す。
【0044】
半定量的RT−PCR
全RNAを8×10細胞からフェノール−クロロホルム−イソアミルアルコール抽出(RNACleanTM;Hybaid-AGS, Ulm, Germany)により単離する。逆転写酵素反応を、1μgのRNA上で、無作為ヘキサマー逆転写酵素(Gibco BRL, Life Technologies, Vienna, Austria)を使用して行う。10μLの該逆転写酵素反応混合物を、次いで、Perkin-Elmerサーモサイクラー中で、1pmolのセンスおよびアンチセンスプライマー対を含む50μL 反応混合物を、35サイクルのPCRに付す:95℃−30秒(変性)、53℃−60秒(アニーリング)、72℃−30秒(伸長)。Hot Start TaqポリメラーゼはQiagen Inc. (Valencia, CA, USA)からである。プライマー(MWG Biotech, Ebersdorf, Germany)を、受容体の約400bp コード配列の増幅のために設計する。プライマーは下記の通り設計する:スフィンゴシン−1−ホスフェート受容体(S1PR)1センス:CTG TGA ACA ATG CAC TGG、アンチセンス:CCT ACG TAC TCA ACA TAG CC。S1PR 3センス:ATC TGC AGC TTC ATC GTC、アンチセンス:AGA TTG AGG CAG TTC。S1PR 2センス:ACC ACG CAC AGC ACA TAA TG、アンチセンス:AAA CAG CAA GTT CCA CTC GG。S1PR 4センス:TGA ACA TCA CGC TGA GTG、アンチセンス:ATC ATC AGC ACC GTC TTC。S1PR 5センス:GAA ATG CAG CCA AAG GTG、アンチセンス:TT ATC ACC CAC AAG GTC CTT C。PCR産物をアガロースゲル分析に付す。
【0045】
結果
Aβ−およびAβ前駆体タンパク質誘導走化性
Aβが単球走化性を誘導することを確認するためおよびAβ前駆体タンパク質(Aβ−PP)が同等に作用するか否かを調べるために、単球を異なる濃度のAβ[10nmol/Lから1μmol/L]またはAβ−PP[10nmol/Lから1μmol/L]に対して90分移動させた。単球の指向性移動を、単球走化性のための5μm孔径ニトロセルロースフィルターを備えた改変48−ブラインドウェルマイクロケモタキシスチャンバーを使用して測定する。移動の深さを顕微鏡で定量し、フィルター表面から3細胞の先端までの距離を測定する。データを指向性移動と非指向性移動の間の比率である“走化性指数”として示す。非指向性移動の距離は57±4.5μmであった。結果はAβは、ヒト単球で走化性を誘導し、最大応答が1pmol/Lであることを確認する。Aβ−PPは、走化性を濃度依存的方法で誘導し、最大応答はまた1pMである。
【0046】
ニューロペプチドによるAβおよびAβ−前駆体タンパク質誘導単球移動の阻害
単球誘引性ニューロペプチドがAβ−およびAβ−PP誘導単球移動に影響するか否かを線引きするために、細胞をニューロペプチド、例えばボンベシン、CGRP、SP、SNまたはVIPに暴露し、AβおよびAβ−PPに向かう走化性を上記の通り試験する。全てのニューロペプチドは、走化性を濃度依存的に阻害する。
【0047】
シグナル伝達酵素阻害剤はAβ誘導移動に影響する
単球を数種の酵素遮断剤とインキュベートする。タンパク質キナーゼC阻害剤GFX、チロシンキナーゼ阻害剤チルホスチン−23、およびホスホリパーゼ−3阻害剤WTNを、最初に、シグナル伝達酵素阻害に使用する;次いで、Gタンパク質の関与をGiタンパク質を誘導することが既知のPTX、およびGsタンパク質を誘導することが既知のCTXで試験する。洗浄後、Aβ(1pmol/l)およびAβ−PP(1pmol/l)に対する走化性実験を行う。データを指向性移動と無作為移動の間の比率である走化性指数で示す。無作為移動の平均距離は54±3.2μmである。
【表1】

【0048】
N,N−ジメチルスフィンゴシンはAβ−およびAβ−PP誘導単球移動を阻害する
ヒト単球を様々な濃度(例えば100fmol/lから100nmol/l)の選択的スフィンゴシンキナーゼ阻害剤、DMSで処置する。fMLPを対照誘引剤として使用する。DMSでの処置は、Aβ−およびAβ−PP誘導走化性を阻害し、一方fMLP誘導走化性には影響しない。
【0049】
S1P受容体アゴニストは、ヒト単球のAβおよびケモカインに対する移動を不活性化する
単球をDMS、化合物Aまたは培地と20分インキュベートする。洗浄後、Aβ[1pmol/L]に対する走化性実験を行う。データは指向性移動と無作為移動の間の比率である走化性指数で示す。無作為移動の平均距離は56±5.6μmである。DMSおよびS1P受容体アゴニスト単独では、細胞移動を阻害しないが、両剤での併用処置はAβおよびAβ−PPの走化性作用を回復させる。化合物Aでの結果は下記の通りである:
【表2】

【0050】
S1P受容体mRNA発現はAβにより制御される
様々な濃度[20pg/mLから20μg/mL]の化合物Aでの20分の前処置後、細胞を洗浄し、AβおよびAβ−PP[1pM]に対する走化性を上記の通り試験する。データを指向性移動と非指向性移動の間の比率である“走化性指数”として示す。インキュベーション時間の後、RT−PCRを行い、等量のcDNAをアガロースゲル電気泳動に付す。S1PR2およびS1PR5 mRNAのAβ処置細胞での誘導を観察する。
【0051】
B. 臨床試験
治験を、軽度から中程度のアルツハイマー型認知症を示すと同定された6名から10名の対照を含む群を用いて、DSM−III(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 3rd edition)に従って行い、重度の心臓血管疾患、低血圧、重度の内分泌疾患、重度の肝臓疾患、腎不全を示す対象を除外する。本治験は0時のEEGおよび神経心理試験で開始する。次いで対照は下記の通りプラセボ、または治験薬投与を受け、EEGおよび神経心理試験を投与後60分、120分および180分に繰り返す。用いる神経心理試験は下記を含む:
(i)Buschkeの選択的記憶試験(The Selective Reminding Test/Buschke):“Selective Reminding for Analysis of Memory and Learning”, J. Verbal Learning and Verbal Behaviour 12, 543-550(1973);
(ii)作文能の試験(Measurement of Constructional Ability)(Muratomo et al.:“Effect of Physiostigmin on Constructional and Memory Tasks in Alzheimer's disease”, Arch. Neurol. 36, 501-503(1973);および
(iii)幾何学図形の記憶(ベントン視覚記銘検査)。
【0052】
治験の進行中、対象はプラセボまたはS1P受容体アゴニスト、例えば化合物Aの何れかを約0.25から約10mgの用量でp.o.投与で1回または分割用量で2または3回受ける。
【0053】
下記の付加的パラメータをモニターする:
血液学:R.B.C.、HB、HCT、W.B.C、白血球分画、沈降速度、血中グルコース。
尿:アルブミン、グルコース。
血清:アルカリホスファターゼ、ALT、AST、S−GT、S−ビリルビン、S−T4、S−T3、S−TSH、クレアチニン。
【0054】
上記要領でS1P受容体アゴニスト、例えば化合物Aを投与されている対象は、EEGの結果および神経心理試験の結果により証明される通り、プラセボを投与されている対象と比較して、状態の改善を示す。
【0055】
S1P受容体アゴニストを使用するとき、本発明の方法の実施に必要な1日投与量は、例えば、使用する化合物、宿主、投与の形態および処置すべき状態の重症度に依存して変化するであろう。好ましい1日投与量範囲は、1回量または分割用量で、約0.1から100mgである。患者のための適当な1日投与量は、例えば0.1から50mg p.o.の桁である。本S1P受容体アゴニストは任意の慣用の経路で、特に経腸的に、例えば経口で、例えば錠剤、カプセル、飲用液、経鼻、肺(吸入による)の形で、または非経腸的に、例えば注射用溶液または懸濁液の形で投与し得る。経口投与用の適当な単位投与形態は、約0.1から30mg、通常0.25から30mgのS1P受容体アゴニスト、例えば化合物Aを、1個またはそれ以上の薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む。
【0056】
本S1P受容体アゴニストは任意の慣用の経路で、特に経腸的、例えば経口で、例えば飲用液、錠剤またはカプセルの形で、または非経腸的に、例えば注射用溶液または懸濁液の形で、または局所的に投与し得る。S1P受容体アゴニスト、例えば式Iの化合物を含む医薬組成物は慣用法で、例えばEP−A1−627,406またはEP−A1−1,002,792に記載の通り製造し得る。
【0057】
本S1P受容体アゴニストは、唯一の成分として、または、他の脳変性疾患または進行性認知症の軽減または処置に有用な薬剤、例えばAMPA受容体アゴニスト、向知性剤、鎮痛剤または抗炎症剤と共に投与し得る。
【0058】
本明細書で使用する用語“AMPA受容体アンタゴニスト”は、例えばWO98/17672に記載のキノキサリン−ジオンアミノアルキルホスホネート、またはEGIS 8332(7−アセチル−5−(4−アミノフェニル)−8,9−ジヒドロ−8−メチル−7H−1,3−ジオキソロ[4,5−h][2,3]ベンゾジアゼピン−8−カルボニトリル)、GYKI 47261 4−(7−クロロ−2−メチル−4H−3,10,10a−トリアザ−ベンゾ[f]アズレン−9−イル)−フェニルアミン)、イランパネル(irampanel)(BIIR 561;N,N−ジメチル−2−[2−(3−フェニル−1,2,4−オキサジアゾル−5−イル)フェノキシ]エタナミン)、KRP 199(7−[4−[[[[(4−カルボキシフェニル)−アミノ]カルボニル]オキシ]メチル]−1H−イミダゾル−1−イル]−3,4−ジヒドロ−3−オキソ−6−(トリフルオロメチル)−2−キノキサリンカルボン酸)、NS 1209(2−[[[5−[4−[(ジメチルアミノ)−スルホニル]フェニル]−1,2,6,7,8,9−ヘキサヒドロ−8−メチル−2−オキソ−3H−ピロロ[3,2−h]イソキノリン−3−イリデン]アミノ]オキシ]−4−ヒドロキシブタン酸一ナトリウム塩、例えばWO98/14447に記載の通り製造)、トピラメイト(TOPAMAX、2,3:4,5−ビス−O−(1−メチルエチリデン)−ベータ−D−フルクトピラノーススルファメート、例えばUS535475に記載の通り製造)およびタランパネル(talampanel)(LY−300164、(R)−7−アセチル−5−(4−アミノフェニル)−8,9−ジヒドロ−8−メチル−7H−1,3−ジオキソロ[4,5−h][2,3]ベンゾ−ジアゼピン、例えばEP492485に記載の通り製造)、YM90K(6−イミダゾル−1−イル−7−ニトロ−1,4−ジヒドロ−キノキサリン−2,3−ジオン)、S−34730(7−クロロ−6−スルファモイル−2−(1H)−キノリノン−3−ホスホン酸)、Zonampanel(YM−872;(7−イミダゾル−1−イル−6−ニトロ−2,3−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−キノキサリン−1−イル)−酢酸)、GYKI−52466(4−(8−メチル−9H−1,3−ジオキサ−6,7−ジアザ−シクロヘプタ[f]インデン−5−イル)−フェニルアミン)、ZK−200775(MPQX、(7−モルホリン−4−イル−2,3−ジオキソ−6−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロ−2H−キノキサリン−1−イルメチル)−ホスホン酸)、CP−465022(3−(2−クロロ−フェニル)−2−[2−(6−ジエチルアミノメチル−ピリジン−2−イル)−ビニル]−6−フルオロ−3H−キナゾリン−4−オン)、SYM−2189(4−(4−アミノ−フェニル)−6−メトキシ−1−メチル−1H−フタラジン−2−カルボン酸プロピルアミド)、SYM−2206(8−(4−アミノ−フェニル)−5−メチル−5H−[1,3]ジオキソロ[4,5−g]フタラジン−6−カルボン酸プロピルアミド、RPR−117824((4−オキソ−2−ホスホノ−5,10−ジヒドロ−4H−イミダゾ[1,2−a]インデノ[1,2−e]ピラジン−9−イル)−酢酸)、LY−293558(6−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)−エチル]−デカヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸)を含むが、これらに限定されない。
【0059】
本明細書で使用する用語“向知性剤”は向知性植物抽出物、カルシウムアンタゴニスト、コリンエステラーゼ阻害剤、ジヒドロエルゴトキシン、ニセルゴリン、ピラセタム、プリン誘導体、ピリチノール、ビンカミンおよびビンポセチンを含むが、これらに限定されない。本明細書で使用する用語“向知性植物抽出物”は、イチョウ葉からの抽出物を含むが、これに限定されない。本明細書で使用する用語“カルシウムアンタゴニスト”は、シナリジンおよびニモジピンを含むが、これらに限定されない。本明細書で使用する用語“コリンエステラーゼ阻害剤”は、ドネペジル塩酸塩、リバスチグミンおよびガランタミン臭化水素酸塩を含むが、これらに限定されない。本明細書で使用する用語“プリン誘導体”は、ペンチフィリンを含むが、これに限定されない。本明細書で使用する鎮痛剤はイブプロフェンを含むが、これに限定されない。好適な抗炎症剤は、例えばNSAID、例えばナプロキセンである。
【0060】
イチョウ葉からの抽出物は、例えば商品名GinkodilatTMの下に、例えば市販されている形で、添付文書の情報に従い投与できる。シナリジンは、例えば商品名Cinnarizin forte-ratiopharmTMの下に、例えば、市販の形で投与できる。ニモジピンは、例えば商品名NimotopTMの下に、例えば、市販の形で投与できる。ドネペジル塩酸塩は、例えば商品名AriceptTMの下に、例えば、市販の形で投与できる。リバスチグミンはUS5,602,176に記載の通り製造できる。それは、例えば商品名ExelonTMの下に、例えば、市販の形で投与できる。ガランタミン臭化水素酸塩は、例えば商品名ReminylTMの下に、例えば、市販の形で投与できる。ジヒドロエルゴトキシンは、例えば商品名HyderginTMの下に、例えば、市販の形で投与できる。ニセルゴリンは、例えば商品名SermionTMの下に、例えば、市販の形で投与できる。ピラセタムは、例えば商品名CerebroforteTMの下に、例えば、市販の形で投与できる。ペンチフィリンは、例えば商品名CosaldonTMの下に、例えば、市販の形で投与できる。ピリチノールは、例えば商品名EncephabolTMの下に、例えば、市販の形で投与できる。ビンポセチンは、例えば商品名CavintonTMの下に、例えば、市販の形で投与できる。
【0061】
コード番号、一般名または商品名により同定した活性成分の構造式は、標準概論“The Merck Index”の現行版からまたはデータベース、例えばPatents International(例えばIMS World Publications)から取り得る。それらの対応する内容を引用により本明細書に包含させる。当業者は、活性成分を同定することが十分可能であり、これらの引用文献に基づき、同様に製造できる。
【0062】
S1P受容体アゴニストを他剤と共に投与するとき、併用投与する化合物の投与量は、もちろん、用いる併用剤のタイプ、用いる具体的薬剤、処置すべき状態などに依存して変化するであろう。本明細書で使用する用語“併用投与”または“組み合わせ投与”などは、選択した治療剤の単独の患者への投与を包含することを意味し、薬剤を必ずしも同じ投与経路でまたは同時に投与するものではない処置レジメンを含むことを意図する。
【0063】
前記によって、本発明はなおさらなる局面において、下記を提供する:
5. a)S1P受容体アゴニスト、例えば式Iの化合物、例えば化合物A、またはその薬学的に許容される塩である第一剤、およびb)併用剤、例えば上記で定義の通りの第二剤を含む医薬的組み合わせ物。
【0064】
6. 治療的有効量のS1P受容体アゴニスト、例えば式Iの化合物、例えば化合物A、またはその薬学的に許容される塩、および例えば上記で定義の通りの、第二医薬物質を併用投与、例えば同時または連続的に投与することを含む、上記で定義の方法。
【0065】
S1P受容体アゴニストは本発明に従った使用で必要な投与量で、十分に容認性である。例えば、化合物Aはラットおよびサルで10mg/kg p.o.より大きい急性LD50を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)スフィンゴシン−1−ホスフェート(S1P)受容体アゴニストである第一剤および(b)脳変性疾患または進行性認知症の軽減または処置に有用な第二剤を含む、組合せ剤。
【請求項2】
第二剤がAMPA受容体アゴニスト、向知性剤、鎮痛剤および抗炎症剤から選択される、請求項1に記載の組合せ剤。
【請求項3】
第一剤が式I
【化1】

〔式中、
は直線状または分枝状(C12−22)炭素鎖であり
−これは、鎖中に二重結合、三重結合、O、S、NR(式中、RはH、アルキル、アラルキル、アシルまたはアルコキシカルボニルである)、およびカルボニルから選択される結合またはヘテロ原子を有してよく、および/または
−これは、置換基としてアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アシルアミノ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アシルオキシ、アルキルカルバモイル、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシイミノ、ヒドロキシまたはカルボキシを有してよい;または

−フェニルアルキル(ただし、アルキルは直線状または分枝状(C6−20)炭素鎖である);または
−フェニルアルキル(ただし、アルキルは直線状または分枝状(C1−30)炭素鎖である)であって、該フェニルアルキルは
−所望によりハロゲンで置換されていてよい直線状または分枝状(C6−20) 炭素鎖、
−所望によりハロゲンで置換されていてよい直線状または分枝状(C6−20) アルコキシ鎖、
−直線状または分枝状(C6−20)アルケニルオキシ、
−フェニルアルコキシ、ハロフェニルアルコキシ、フェニルアルコキシアルキル、フェノキシアルコキシまたはフェノキシアルキル、
−C6−20アルキルで置換されているシクロアルキルアルキル、
−C6−20アルキルで置換されているヘテロアリールアルキル、
−ヘテロ環式C6−20アルキルまたは
−C2−20アルキルで置換されているヘテロ環式アルキル
で置換されており、そして
上記におけるアルキル部分は
−炭素鎖中、二重結合、三重結合、O、S、スルフィニル、スルホニル、またはNR(ここで、Rは上記で定義の通りである)から選択される結合またはヘテロ原子を有してよく、かつ
−置換基として、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アラルキルオキシ、アシル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アシルアミノ、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアミノ、アシルオキシ、アルキルカルバモイル、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシを有してよく、そして
、R、RおよびRの各々は、独立して、H、C1−4アルキルまたはアシルである。〕
で示される化合物またはその薬学的に許容される塩;または
式IVaまたはIVb
【化2】

〔式中、
はO、S、NR1sまたは基−(CH)na−(ここで、該基は非置換であるか、または1個から4個のハロゲンで置換されている)であり;nは1または2であり、R1sはHまたは(C1−4)アルキル(ここで、該アルキルは非置換であるか、またはハロゲンで置換されている)であり;R1aはH、OH、(C1−4)アルキルまたはO(C1−4)アルキル(ここで、該アルキルは非置換であるか、または1個から3個のハロゲンで置換されている)であり;R1bはH、OHまたは(C1−4)アルキル(ここで、該アルキルは非置換であるか、またはハロゲンで置換されている)であり;各R2aは独立してHまたは(C1−4)アルキルから選択され、該アルキルは非置換であるか、またはハロゲンで置換されており;R3aはH、OH、ハロゲンまたはO(C1−4)アルキル(ここで、該アルキルは非置換であるか、またはハロゲンで置換されている)であり;そしてR3bはH、OH、ハロゲン、(C1−4)アルキル(ここで、該アルキルは非置換であるか、またはヒドロキシで置換されている)、またはO(C1−4)アルキル(ここで、該アルキルは非置換であるか、またはハロゲンで置換されている)であり;Yは−CH−、−C(O)−、−CH(OH)−、−C(=NOH)−、OまたはSであり、そしてR4aは(C4−14)アルキルまたは(C4−14)アルケニルである。〕
で示される化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物である、
請求項1または2に記載の組合せ剤。
【請求項4】
第一剤が遊離形または薬学的に許容される塩形の2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオールまたはFTY720−ホスフェートである、請求項1または2に記載の組合せ剤。
【請求項5】
第一剤が2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール塩酸塩またはFTY720−ホスフェートである、請求項1または2に記載の組合せ剤。
【請求項6】
認知能の損失の減少または阻害のための、進行性認知症または脳変性の処置のための、またはβ−アミロイド関連炎症性疾患または障害の処置のための、請求項1〜5のいずれかに記載の組合せ剤。
【請求項7】
遊離形または薬学的に許容される塩形の2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオールまたはFTY720−ホスフェートである薬剤の、脳変性疾患または進行性認知症の軽減または処置に有用な第二剤と組み合わせた使用。
【請求項8】
第二剤がAMPA受容体アゴニスト、向知性剤、抗炎症剤および鎮痛剤から選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
第二剤を第一剤と同時にまたは連続的に併用投与する、請求項7または8に記載の使用。
【請求項10】
第一剤が2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール塩酸塩である、請求項7から9のいずれかに記載の使用。

【公開番号】特開2011−148830(P2011−148830A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100640(P2011−100640)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【分割の表示】特願2006−544366(P2006−544366)の分割
【原出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】