説明

腫瘍増殖阻害化合物及びそれらの使用方法

特定のCpGオリゴヌクレオチド配列は、皮下的に与えられる場合、特に粘膜に、例えば鼻腔内、膣内、又は直腸的に、投与される場合、動物実験においてインビボで、及び健常な被験者及びCLL又はFLに苦しむ患者由来の血液から収集されたヒトPBMCにおいてインビトロで確認されたように、種々のヒトがん形態に対して甚大な効果を有する。本化合物はまた、好ましくは、放射線治療、ホルモン治療、外科的介入、化学療法、免疫学的療法、光線力学療法、レーザー療法、温熱療法、寒冷療法、血管新生阻害、又はそれらのいずれかの組み合わせの中から選択されるがん療法と組み合わせて使用され、最も好ましくは、免疫学的治療であり、患者への抗体の投与を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、医学の分野、特に単独での又は現存する及び将来の療法と組み合わせてのがんの治療に使用するための新規な化合物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がん治療は、標的化アプローチの時代に入っている。1つのこのようなアプローチは、悪性細胞を認識する及び排除する免疫系の使用である。合成CpGオリゴヌクレオチド(CpG DNA)は、強力な組織化された腫瘍特異的免疫応答を刺激する能力を有する比較的新しいクラスの薬剤である(非特許文献1、2)。
【0003】
最近の研究は、各々が異なる物理的特性及び生物学的効果を有する、少なくとも3つのクラスのCpG DNA配列が存在することを実証している。いくつかのがん動物モデルにおける予備研究は、CpG DNAががん免疫療法において多くの用途を有し得ることを示唆している。CpG DNAは、先天免疫を活性化させ、抗体依存性細胞傷害性を増強し、特異的な保護的免疫反応を誘発する強力なワクチンアジュバントとして役立つことによって、腫瘍退縮を誘導する能力を有する。初期臨床試験はCpG DNAがヒトへ安全に投与され得ることを示しており、どのようにそれらの薬剤ががん免疫療法において役割を果たし得るかを理解するために、研究が行われている(非特許文献3)。
【0004】
先の特許(特許文献1)は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを示し、インビトロでの腫瘍細胞のアンチセンス阻害、並びに同系C57B1/6マウスにおけるインビボでの腫瘍増殖のアンチセンス阻害を示す動物実験を開示した。マウスは、センス及びアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド40mg/gの腹腔内注射で処置された。組織学的分析は、巣状腫瘍壊死、続いての広範囲の分節状壊死を示した。
【0005】
B細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)は、西洋社会において最も一般的な白血病である。B−CLLは、血球、特にBリンパ球の制御されない増殖及び/又は減少した細胞死(アポトーシス)を特徴とする、白血球及び骨髄のがんであり、成人白血病の最も一般的な形態である。その罹患率は、70歳を過ぎると、100,000人当たり50人に近づく。白血病は、通常、数年、さらには数十年もの長期にわたる自然経過を有するが、細胞が連続的な遺伝的欠陥を獲得するので、最終的に加速する。恐らく欠陥B−CLL細胞とそれらの環境との変更された相互作用の結果である、異常に長い寿命に起因して、モノクローナルB−CLL細胞が容赦なく蓄積する点で、B−CLLは、多くの他の悪性疾患とは相違する。サイトカインは、細胞恒常性及び細胞−細胞対話(cell-cell dialogue)において必須の因子であり、この環境において重要であると提案されている(非特許文献4、5)。
【0006】
B−CLLについて共通の初期トランスフォーミング事象は見られていない。主に遺伝子再構成過程の間に生じると考えられ、他のリンパ性悪性疾患においては一般的な、染色体転座は、B−CLLにおいては稀である。核型異常は、疾患の経過の間、頻度及び数が増加する傾向にある。転座が見られる場合、それらは、融合遺伝子の形成又はがん遺伝子の過剰発現よりも遺伝子喪失を生じさせる傾向にある。B−CLLにおいて最も一般的な遺伝子異常は、13q欠失(事例の50%)、13q4欠失(無痛経過に関連する)、トリソミー12(12q13−15;p53を抑制するMDMQオンコプロテインの過剰発現を伴う)、及び1lq22−q23欠失(事例の20%)である(非特許文献6、7)。
【0007】
B−CLL細胞は、CD23(IgEについての低親和性受容体)、CD25(IL−2R α鎖)、及びCD27(共刺激分子)などの表面分子を発現し、これらは、他の設定において、活性化の状態を示す。いくつかのタンパク質の発現及び会合は、アポトーシスのプロセスを密接に調節する。これらのタンパク質の相対的バランスが、細胞寿命を制御する。このシステムを担う遺伝子としては、BCL−2ファミリー、腫瘍壊死因子受容体、並びにMyc及びp53などの遺伝子が挙げられる(非特許文献8)。これらの遺伝子によって促進される死経路は全て、プロテアーゼファミリーであるカスパーゼによって代表される、共通の「破壊」カスケードを有するようである。B−CLL細胞は、高レベルのBCL−2ファミリーの抗アポトーシスメンバー(bad−2、bcl−n、bax)の生成物を持続的に発現し、同時に、Bcl−2機能阻害剤であるBcl−6は著しく減少される。Bcl−2の過剰発現に関与するメカニズムは、現在のところ不明である。B−CLLの白血病細胞は、Fasについて陰性又は弱陽性である。それらは、一般的に、刺激によってFas発現が誘導された後でさえ、抗Fas抗体仲介死に耐性のままである。稀な感受性の症例では、細胞死は、未だキャラクタライズされていないメカニズムによって、Bcl−2発現とは無関係に起こる。Bcl−2過剰発現及びFas経路は、B−CLLの病態生理学に関与するメカニズムであるが、必ずしも重大な原因事象ではないようである。サイトカインを含むメディエーターは、最初の病因因子とアポトーシスの最終経路とをつなぐ可能性が高い。
【0008】
大抵のB−CLL細胞は、細胞周期のG0期にあり、正常なリンパ球の増殖を誘導する、コンカナバリンA、ホルボールエステル、又は受容体架橋などの従来の方法によっては増殖期へ入るように誘導され得ない。ほんの一部の細胞のみが、未知の促進シグナルに反応してクローン集団を拡大するようである。増殖促進サイトカインは、インビボでこの刺激を提供し得る(非特許文献9)。
【0009】
B−CLL細胞は、正常なB細胞プールを犠牲にして蓄積する。他方で、総T細胞は、通常、増加される。骨髄Tリンパ球は、サルコイドーシス及び関節リウマチなどの自己免疫疾患において見られるように、主にCD4+細胞である。末梢血中には、しばしばTh2優位サイトカイン表現型が存在する。TCRレパートリーの異常もまた報告された。報告は、Tリンパ球及び間質細胞が、B−CLL細胞の寿命を永続させることができる環境を支えることにおいて重要な役割を有し得ることを示している。悪性細胞及びそれらのT細胞環境は両方とも、種々の(a vanity of)表面分子及びそれらの受容体:CD5並びにそのリガンドCD72、CD27及びCD70を発現する。これらの知見は、直接的に又は間接的に(サイトカイン)細胞自己保存を生じさせ得る相互作用の種々の可能性を開く。このような長い生存は、次に、遺伝子突然変異及び遺伝子的不安定性の蓄積についての機会を増加させ、このことは、細胞周期チェックポイントの調節不全、及び細胞毒性治療に対する耐性による、疾患の進行に好都合である(非特許文献10)。
【0010】
B−CLL細胞とそれらの環境との共生的相互作用は、ほぼ確実に、サイトカインの分泌によって仲介され、接着分子によって調節される。B−CLLにおけるサイトカイン関与の研究によって、この白血病における増殖及び長寿命のメディエーターとしての種々のサイトカインを支持又は反証するデータの実体が作製された。サイトカイン産生研究によって、IL1、IL2、IL3、1L4、IL5、IL7、TNF−β、及びTNF−αについての逆転写ポリメラーゼ連鎖反応シグナルが実証された(非特許文献11)。これらの知見は、IL4、IL3及びIL6についての陰性結果を示した他の研究によって否定された(非特許文献12)。対照的に、TGF−β、及びIL10分泌が正常なBリンパ球中において示された。これらの細胞について構成的であると報告された他のサイトカイン産生はない。
【0011】
がんの免疫療法は1世紀以上の間探求されているが、種々の抗体ベースの産物ががんの多様な形態を有する患者のマネージメントへ導入されたのは、ほんのここ10年のことである。現在、これは臨床研究の最も活発な分野の1つであり、8個の治療薬品が腫瘍学において既に認可されている。腫瘍関連マーカーに対する抗体は、数十年間、免疫組織学及びインビトロイムノアッセイにおける医療行為の一部であり、現在、がんの検出及び治療についての重要な生物学的薬剤としてますます認識されるようになっている(非特許文献13)。分子工学は、このような抗体ベースの治療学についての将来性を改善し、頻繁に投与され得る種々の構築物並びにヒト化又はヒト抗体を生じさせた。
【0012】
CD20は、CLL患者のB細胞の表面上に不定に発現され、ある患者のB細胞は非常に低レベルのCD20抗原を発現する。CD20(ヒトBリンパ球限定分化抗原)は、プレB及び成熟Bリンパ球上にある約35kDの分子量を有する疎水性膜貫通タンパク質である。前記抗原はまた、非ホジキンリンパ腫(NHL)中の90%超のB細胞上において発現されるが、造血幹細胞、プロB細胞、正常な形質細胞又は他の正常な組織上においては見られない。CD20は、細胞周期開始及び分化についての活性化プロセスにおける初期段階を調節し、恐らく、カルシウムイオンチャネルとして機能する。CD20は、細胞表面から分離されず、抗体結合時にインターナライズしない。遊離CD20抗原は、循環中に見られない(非特許文献14)。
【0013】
ヒトCD20に対して指向された遺伝子操作されたキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体である、抗CD20抗体リツキシマブ(Rituxan(登録商標)又はMabThera(登録商標)、Genentech, Inc., South San Francisco, California, U.S.)は、再発性又は難治性・低悪性度又は濾胞性、CD20陽性、B細胞非ホジキンリンパ腫及びB−CLLを有する患者の治療のために使用される。リツキシマブは、身体の自然防御をリクルートし、CD20抗原を介してそれが結合するB細胞を攻撃しそして死滅させることによって、働く。インビトロ作用機構研究によって、リツキシマブはヒト補体に結合し、補体依存性細胞傷害性(CDC)を介してリンパ系B細胞株を溶解することが実証された(非特許文献15)。さらに、それは、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)についてのアッセイにおいて著しい活性を有する。インビボ前臨床試験によって、リツキシマブは、恐らく補体及び細胞媒介プロセスによって、カニクイザルの末梢血、リンパ節、及び骨髄からB細胞を激減させることが示された(非特許文献16)。リツキシマブはCLL患者においてある程度成功して使用されてきたが、CLL患者の分析は、B−CLL細胞の表面上におけるCD20の密度はかなり可変であり、ある患者のB細胞は非常に低レベルのCD20抗原を発現することを示している。B細胞悪性疾患の典型的な治療は、リツキシマブに加えて、放射線療法及び化学療法剤の投与である。CLLの場合、従来の外部放射線療法が、悪性細胞を破壊するために使用される。しかし、副作用が、この治療における制限因子である。血液学的悪性疾患についての別の広く使用される治療は、化学療法である。併用化学療法は、部分又は完全寛解に達することにおいてある程度成功している。残念ながら、化学療法によって得られるこれらの寛解は、しばしば長持ちしない。
【0014】
逆に、CD23発現は、B−CLLにおいてより高いレベルで持続的に存在することがわかった。CD23白血球分化抗原は、いくつかの造血系細胞上において発現される45kD II型膜貫通糖タンパク質であり、これは、IgEについての低親和性受容体(FcγRII)として機能する(非特許文献17)。それは、C型レクチンファミリーのメンバーであり、細胞外レクチン結合ドメインと膜貫通領域との間にαヘリカルコイルドコイルストークを含有する。ストーク構造は、そのリガンド(例えば、IgE)への結合の間、三量体への膜結合CD23のオリゴマー化に寄与すると考えられている。タンパク質分解時、膜結合CD23は、いくつかの可溶性CD23(sCD23)分子量種(37kD、29kD及び16kD)を生じさせる。IgEの産生の調節に関与することに加えて、CD23はまた、胚中心B細胞の生存を促進すると推測された。CD23の発現は、通常の活性化された濾胞性B細胞及びB−CLL細胞において、非常にアップレギュレートされた。
【0015】
ルミリキシマブは、マカク可変領域及びヒト定常領域(IgG1,κ)を有し、活性化ヒト血中B細胞によるIgEの産生を阻害するために元々は開発された、モノクローナルキメラ抗CD23抗体(Biogen Idec製、現在、臨床試験を受けている)である。それは、現在、B−CLL患者における使用についての第III相試験中である。インビトロ研究によって、ルミリキシマブは、ミトコンドリア死経路を介してB−CLL細胞においてカスパーゼ依存性アポトーシスを誘導することが示された(非特許文献18)。従って、それは、リツキシマブとは異なるメカニズムによって腫瘍細胞のアポトーシスを誘導するようである。
【0016】
いくつかの他の抗体が、がんの治療について最近認可された。アレムツズマブ(Campath(登録商標)又はMabCampath(登録商標)、Ilex Pharmaceuticals製の抗CD52)(非特許文献19)は、CLLの治療について2001年に認可された。ベバシズマブ(Avastin(登録商標)、Genentech, Inc., South San Francisco, CA)は、結腸直腸がん、小細胞肺がん及び乳がんの治療において使用される血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に対して指向されたヒト化IgG1 mAbである。トラスツズマブ(Herceptin(登録商標)、Roche製)は、HER−2標的を過剰発現する転移性乳がん腫瘍に対して有効であるヒト化IgG1 mAbである(非特許文献20)。
【0017】
抗体薬物をより効率的にするために、腫瘍細胞の表面上の特異的抗原標的のアップレギュレーションが役立ち得る。このような効果を得るための1つの方法は、免疫調節オリゴヌクレオチドで細胞を刺激することであり得る。免疫刺激効果は、非メチル化CpGモチーフを含有する合成DNAベースのオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)の使用によって得られ得る。このようなCpG ODNは、以下を含む、ヒト及びマウス白血球に対して非常に高い免疫刺激効果を有する:B細胞増殖、サイトカイン及び免疫グロブリン分泌;ナチュラルキラー(NK)細胞溶解活性及びIFN−γ分泌;並びに、補助刺激分子を発現させ、サイトカイン、特に、Th1様T細胞応答の発達を促進させることにおいて重要であるTh1様サイトカインを分泌させるための、樹状細胞(DC)及び他の抗原提示細胞の活性化(非特許文献21)。CpG−ODNによる受容体密度の増加は、細胞に対するオリゴヌクレオチドの直接効果によって、又はサイトカインの誘導によって媒介され得る。抗原密度の増加又は標的受容体を発現する細胞の集団の増加は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)又は補体依存性細胞傷害性(CDC)のいずれかを増強することによって、抗体が腫瘍細胞をより効率的に死滅させることを可能にする。
【0018】
CpGモチーフ単独では、オリゴヌクレオチドの効能の説明ができないという指摘がある。このモチーフは、所望の機能について必要ではないという指摘さえある。
【0019】
オリゴヌクレオチドに基づくがんへの治療アプローチの開発に費やされた相当な努力、及び今まで報告された時折の成功にかかわらず、改善された効能を示し副作用が最小であるか又は無い、新規な化合物及び投与様式についての必要性が依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】US 6,498,147 B, THE SCRIPPS INSTITUTE, 2002-12-24
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】KRIEG, A M. Lymphocyte activation by CpG dinucleotide motifs in prokaryotic DNA. Trends Microbiol. 1996, vol.4, no.2, p.73-6
【非特許文献2】KRIEG, A M, et al. Mechanisms and therapeutic applications of immune stimulatory CpG DNA. Pharmacol Ther. 1999, vol.84, no.2, p.113-20
【非特許文献3】WOOLDRIDGE, J E , et al. CpG DNA and cancer immunotherapy: orchestrating the antitumour immune response. Curr Opin Oncol. 2003 Nov, vol.15, no.6, p.440-5
【非特許文献4】CALIGARIS-CAPPIO et al., 1999
【非特許文献5】ROZMAN et al., 1995
【非特許文献6】GAIDAN et al., 1991
【非特許文献7】DOHNER et al., 1999
【非特許文献8】OSORIO et al., 1999
【非特許文献9】DANCESCU et al., 1992
【非特許文献10】KLEIN et al., 2000
【非特許文献11】PISTOIA et al., 1997
【非特許文献12】TANGYE et al., 1999
【非特許文献13】STROME et al., 2007
【非特許文献14】PESCOVITZ, 2006
【非特許文献15】REFF et al., 1994
【非特許文献16】REFF et al., 1994
【非特許文献17】PATHAN et al., 2008
【非特許文献18】PATHAN et al., 2008
【非特許文献19】KEATING et al., 2002
【非特許文献20】STROME et al., 2007
【非特許文献21】KRIEG et al, 1995
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者は、驚くべきことに、特定のオリゴヌクレオチド配列が、皮下的に与えられると、又は特に、粘膜に局所的に、例えば経口的、経肺的、鼻腔内、直腸的、又は膣内に投与されると、動物実験においてインビボで、及びCLL患者及び健常な被験者由来のPBMCを使用してインビトロで確認されたように、種々のヒトがん形態に対して甚大な効果を有することを見出した。
【0023】
さらに、新規な配列を開発及び試験しており、これらは単独で又は他の治療と組み合わせて顕著な治療効果を示した。該オリゴヌクレオチドは、アポトーシスを誘導するため、NK細胞を活性化するため、好中球遊走移動を阻害するため、及び特に細胞表面受容体の発現を増加させるために、使用される。本発明のオリゴヌクレオチドは、がんを治療するための免疫学的アプローチ、例えば特定の受容体に向けられたモノクローナル抗体と組み合わせて使用され得る。本発明の実施態様は、参照により本明細書に組み入れられる、添付の特許請求の範囲において定義される。
【0024】
本発明を、添付の図面を参照して、以下の説明、非限定的な実施例、及び特許請求の範囲において、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】誘発皮下RMAリンパ腫を有するマウスについて、コントロール(PBS)と比較しての、配列番号6の物質150μgの皮下投与後の時間に対する腫瘍体積(mm3)として測定した腫瘍増殖を示すグラフである。
【図2】図1と同様のグラフであり、ここで、コントロール(PBS)と比較しての、皮下的に(50μgボーラス)及び鼻腔内(50μg)に与えられた、配列番号6の物質との比較を示す。
【図3】誘発皮下RMAリンパ腫を有するマウスについて、コントロール(PBS)と比較しての、配列番号7の物質50μgの皮下投与後の時間に対する腫瘍体積(mm3)として測定した腫瘍増殖を示すグラフである。
【図4】誘発皮下RMAリンパ腫を有するマウスについて、コントロール(PBS)と比較しての、配列番号1の物質50μgの皮下投与後の時間に対する腫瘍体積(mm3)として測定した腫瘍増殖を示すグラフである。
【図5】誘発皮下RMAリンパ腫を有するマウスについて、コントロール(PBS)と比較しての、配列番号2の物質50μgの皮下投与後の時間に対する腫瘍体積(mm3)として測定した腫瘍増殖を示すグラフである。
【図6】誘発皮下RMAリンパ腫を有するマウスについて、コントロール(PBS)と比較しての、配列番号3の物質50μgの皮下投与後の時間に対する腫瘍体積(mm3)として測定した腫瘍増殖を示すグラフである。
【図7】誘発皮下RMAリンパ腫を有するマウスについて、コントロール(PBS)と比較しての、配列番号4の物質50μgの皮下投与後の時間に対する腫瘍体積(mm3)として測定した腫瘍増殖を示すグラフである。
【図8】配列番号1〜7の化合物を投与後の、インビトロでのヒト結腸がん細胞株HCT116に対する増殖減少効果を示す棒グラフであり、ここで、「+」及び「−」は、それぞれ、ポジティブ及びネガティブコントロールを意味する。
【図9】配列番号1〜7の化合物を投与後の、インビトロでのヒト結腸がん細胞株HCT116におけるアポトーシス誘導を示す棒グラフであり、ここで、「+」及び「−」は、それぞれ、ポジティブ及びネガティブコントロールを意味する。
【図10a】配列番号1〜7に従う化合物の投与後の、インビトロでのヒトB細胞リンパ腫モデルにおけるB細胞増殖マーカーであるCD20の発現に対する効果を示す棒グラフからなる。
【図10b】配列番号1〜7に従う化合物の投与後の、インビトロでのヒトB細胞リンパ腫モデルにおけるB細胞増殖マーカーであるCD40の発現に対する効果を示す棒グラフからなる。
【図10c】配列番号1〜7に従う化合物の投与後の、インビトロでのヒトB細胞リンパ腫モデルにおけるB細胞増殖マーカーであるCD54の発現に対する効果を示す棒グラフからなる。
【図11a】配列番号1〜7に従う化合物の投与後の、インビトロでのヒトB細胞リンパ腫モデルにおけるB細胞活性化マーカーであるCD69、及びCD80の発現に対する効果を示す棒グラフからなる。
【図11b】配列番号1〜7に従う化合物の投与後の、インビトロでのヒトB細胞リンパ腫モデルにおけるB細胞活性化マーカーであるD69、及びCD86の発現に対する効果を示す棒グラフからなる。
【図12】配列番号1〜7に従う化合物の投与後の、インビトロでのヒトB細胞リンパ腫モデルにおけるアポトーシスマーカーであるCD95の発現に対する効果を示す棒グラフである。
【図13】実験化合物がCLL患者由来のB細胞上のCD20nのアップレギュレーションをどの程度誘導するかを示すグラフである。試験濃度の10μMで、化合物IDXs0022、0038及び0071は全て、有意な効果を示す。これらの化合物は、表1の配列番号3、8、及び9に対応する。
【図14】同様に、CLL患者由来のB細胞上のCD80のアップレギュレーションを示す。ここでまた、表1の配列番号3、8、及び9によって示される化合物は、未処置コントロールと比較した効果を示す。
【図15】実験化合物がCLL患者由来のPBMC中においてNK細胞の活性化をどの程度誘導するかを示す。また、表1の配列番号3、8、及び9によって示される化合物は、未処理コントロールと比較した効果を示す。
【図16】実験化合物がCLL患者由来のPBMCにおいてT細胞のアポトーシスを誘導することを示す。試験した化合物は効果を示し、配列番号3に対応する化合物IDXs0022は、試験濃度の10μMで最も強力である。
【図17】実験化合物がCLL患者由来のPBMC中においてB細胞のアポトーシスも誘導することを示す。試験した化合物は全て効果を示し、配列番号3に対応する化合物IDXs0022はまた、試験濃度の10μMで最も強力である。
【図18】未処置と比較しての、配列番号3について25μMの濃度で30分、2時間及び6時間曝露後の、健常なコントロール由来のPBMCにおけるサイトカインIL−6のアップレギュレーションを示す。
【図19】未処置と比較しての、配列番号3について25μMの濃度で30分、2時間及び6時間曝露後の、健常なコントロール由来のPBMCにおけるサイトカインIL−10のアップレギュレーションを示す。
【図20】未処置と比較しての、配列番号3について25μMの濃度で30分、2時間及び6時間曝露後の、健常なコントロール由来のPBMCにおけるサイトカインIP−10のアップレギュレーションを示す。
【図21】未処置及び72時間曝露と比較しての、配列番号3について濃度0.1、1、10及び25μMで30分、2時間及び6時間曝露後の、健常なコントロール由来のPBMCにおけるCD20発現のアップレギュレーションを示す。
【図22】未処置及び72時間曝露と比較しての、配列番号3を使用して、種々の濃度で30分、2時間及び6時間曝露後の、健常なコントロール由来のPBMCにおけるNK細胞の活性化を示す。
【図23】10μMで配列番号3を投与することによって達成された、3人の健常なコントロール由来のPBMCにおいて測定されたCD20の発現を示す。
【図24】未処置及びポジティブコントロール、配列番号6と比較しての、10μMでの配列番号3によって達成された、NK細胞活性化(CD69)の誘導を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
説明
本明細書を詳細に説明する前に、本発明は、このようなデバイス及び方法は変化し得るので、記載されるデバイスの特定の構成部品又は記載される方法のプロセス工程に限定されないと当然ながら理解すべきである。本明細書において使用される用語は、特定の実施態様を説明する目的のために過ぎず、限定することを意図していないと当然ながら理解すべきである。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「ア(a)」、「アン(an)」及び「ザ(the)」はまた、文脈が明確にそうではないように指示しない限り、複数形の概念をも含むことに留意しなければならない。従って、例えば、「配列(a sequence)」への言及は、2個以上のこのような配列を含むなどである。
【0027】
さらに、用語「約」は、適用可能な場合、所定の値の+/−2%、好ましくは+/−5%、最も好ましくは数値の+/−10%の偏差を示すために使用される。
【0028】
用語「がん」は、任意の悪性新生物性疾患、即ち異常な制御されない細胞分裂によって引き起こされる任意の悪性増殖又は腫瘍を意味するものとする。用語「がん」は、特に本明細書に含まれる動物実験において例示されるような固形限局性腫瘍と、これらに限定されないが、実施例において研究した2つの形態の白血病である慢性リンパ球性白血病(CLL)及び濾胞性リンパ腫(FL)などの、非固形がん形態との両方を含むものとする。
【0029】
本発明者は、以下の少なくとも1つが可能な新規なオリゴヌクレオチド配列を同定した:アポトーシスの誘導、NK細胞の活性化、好中球の阻害、及び特定の細胞表面マーカーの発現のアップレギュレーション。本発明者はまた、新規な治療方法を利用可能にし、驚くべきことに、用量の減少(150μgから50μgへ)が皮下投与における反応を有意に改善したこと、及び粘膜における適用(本明細書において、経鼻投与の形態で試験した)が、投与の等しく有効な方法を提供することを、発見した。
【0030】
いかなる理論にも拘束されることを望まないが、本発明者は、本明細書において示されるオリゴヌクレオチド配列が、腫瘍部位への、細胞、特に好中球、の遊走を阻害することができ、したがって腫瘍の増殖を阻害することができると考えられる。さらに、インビトロでのヒト細胞株に対する実験は、本発明に従うオリゴヌクレオチドが、増殖を減少させかつアポトーシスを誘導することができることを示している。
【0031】
好中球遊走の障害ががんの作用であり、このために個体を感染症にかかりやすくするという理論に反して、本発明者は、腫瘍が、状況を有利にするように身体の防御システム、特に炎症反応を使用することができるか、又はある程度、これから恩恵を受けることを意図した。本発明の化合物である、表1に示される配列番号1〜5及び8〜9は、このようなメカニズムを阻害する可能性を提供する。
【0032】
本発明者はまた、驚くべきことに、本化合物が、本明細書ではCD20、CD23、CD25、CD40、CD54、CD69、CD80、及びCD86によって示される、細胞表面マーカーの発現を誘発する又は増加させることができることを示す。
【0033】
従って、本発明者は、本発明の1実施態様として、がんの治療のための化合物及び方法を利用可能にし、ここで、表1に示される本発明の化合物は、アポトーシスを増加させるため、NK細胞を活性化するため、細胞表面マーカーであるCD20、CD23、CD25、CD40、CD54、CD69、CD80、及びCD86の1つ又はそれ以上の発現をアップレギュレートするため;単独で使用されるか;又は腫瘍の外科的切除、放射線治療、ホルモン治療、外科的介入、化学療法、免疫学的療法、光線力学療法、レーザー療法、温熱療法、寒冷療法、血管新生阻害、又はそれらのいずれかの組み合わせの中から選択される抗腫瘍療法と組み合わせて使用される。最も好ましくは、抗腫瘍治療は、免疫学的治療であり、患者への抗体の投与を含む。
【0034】
現在入手可能な抗体の例としては、リツキシマブ(Rituxan(登録商標)、MabThera(登録商標))、ルミリキシマブ、アレムツズマブ(Alentuzumab)(Campath(登録商標)、MabCampath(登録商標)、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、及びトラスツズマブ(Herceptin(登録商標))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
抗腫瘍療法と組み合わせて提供される場合、本発明の化合物は、好ましくは、抗腫瘍療法の前に、好ましくは該療法の30分、1時間、2時間、3時間、6時間又は12時間前に、投与される。免疫学的療法、特に抗体の投与を含む療法と組み合わせて提供される場合、本発明の化合物は、好ましくは患者への抗体の投与の前に、最も好ましくは特異的抗体を標的化させる細胞表面分子又は細胞表面マーカーのアップレギュレーションを可能にするために十分に前に、投与される。
【0036】
本発明は、特定のヌクレオチド、即ち、配列番号1〜5及び8〜9のいずれか1つに従う単離されたオリゴヌクレオチド配列を利用可能にする。表1を参照のこと。
【0037】
表1.配列情報
【表1】

【0038】
上記配列、配列番号1〜5及び8〜9は、本発明者によって合成され、本発明者の知る限りでは、以前に知られていない。配列番号6は、US 6,498,147において初めて公開され、配列番号7は、特にSOKOLOSKI , J A, et alによって公開された。NF−kBのp65サブユニットに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドは、CD11b発現をブロックし、分化HL−60顆粒球の接着性を変更させる。Blood. 15 July 1993, vol.82, no.2, p.625-632。
【0039】
配列番号1〜5及び8〜9のいずれか1つに従うオリゴヌクレオチド配列は、リン酸骨格修飾を有する少なくとも1つのヌクレオチドを含み得る。リン酸骨格修飾は、好ましくはホスホロチオエート又はホスホロジチオエート修飾である。
【0040】
本発明はまた、がんの治療用の、特に腫瘍増殖の阻害を通して、例えば腫瘍部位への好中球遊走の阻害を通してがんを治療する、薬剤を製造するための、配列番号1〜5及び8〜9のいずれか1つに従う単離されたオリゴヌクレオチド配列の使用を含む。
【0041】
好ましい実施態様によれば、薬剤は、がんの治療において、細胞表面マーカーのアップレギュレーション、アポトーシスの誘導、NK細胞の活性化、及び好中球遊走の阻害のうちの少なくとも1つを達成するに有効な用量で経鼻投与される。用量は、好ましくは、がんの治療について約1〜約100μgの範囲内にある。
【0042】
同様に、本発明はまた、がんの治療において、細胞表面マーカーのアップレギュレーション、アポトーシスの誘導、NK細胞の活性化、及び好中球遊走の阻害のうちの少なくとも1つを達成するに有効な用量での皮下投与用の薬剤を製造するための、配列番号1〜8のいずれか1つに従う単離されたオリゴヌクレオチド配列の使用を含む。用量は、好ましくは、がんの治療について約1〜約100μgの範囲内にある。
【0043】
本発明の1実施態様は、抗腫瘍治療が、オリゴヌクレオチドの投与の前、後、又は本質的に同時に与えられる、上記に定義される使用を含む。この抗腫瘍治療は、放射線治療、ホルモン治療、外科的介入、化学療法、免疫学的療法、光線力学療法、レーザー療法、温熱療法、寒冷療法、血管新生阻害、又はそれらのいずれかの組み合わせの中から選択される。
【0044】
抗腫瘍治療は、好ましくは患者への抗体の投与を含む免疫学的療法である。
【0045】
従って、本発明はまた、配列番号1〜5及び8〜9のいずれか1つに従う単離されたオリゴヌクレオチド配列が、その必要がある患者へ投与される、がんの治療のための方法を含む。
【0046】
上記で定義されたように、配列番号1〜5及び8〜9のいずれか1つにおける少なくとも1つのヌクレオチドは、リン酸骨格修飾を含み得る。該リン酸骨格修飾は、好ましくはホスホロチオエート又はホスホロジチオエート修飾である。
【0047】
本発明治療方法の実施態様によれば、オリゴヌクレオチドは、経粘膜的に、即ちその必要がある患者の粘膜へ局所的に、投与される。経粘膜投与としては、経口、経肺、経直腸、経膣、および経鼻投与が挙げられる。
【0048】
別の実施態様によれば、オリゴヌクレオチドは、その必要がある患者へ皮下投与される。
【0049】
本発明の上記実施態様のいずれか1つにおいて、オリゴヌクレオチドは、がんの治療で、例えば細胞表面マーカーのアップレギュレーション、アポトーシスの誘導、NK細胞の活性化、及びがんの治療の好中球遊走の阻害の少なくとも1つを通して、腫瘍増殖を阻害するに有効な用量で投与される。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、約1〜約100μgの用量で投与される。
【0050】
本発明のヌクレオチドは単独で試験しているが、がんの治療への他のアプローチと組み合わせて使用する場合、それらは相加効果又は相乗効果さえ示すことが考えられる。従って、本発明の実施態様によれば、オリゴヌクレオチドは、抗腫瘍治療の前、後、又は本質的に同時に投与される。
【0051】
上記で概説したように、この抗腫瘍治療は、放射線治療、ホルモン治療、外科的介入、化学療法、免疫学的療法、光線力学療法、レーザー療法、温熱療法、寒冷療法、血管新生阻害、又はそれらのいずれかの組み合わせの中から選択される。
【0052】
抗腫瘍治療は、好ましくは、患者への抗体の投与を含む免疫学的療法である。
【0053】
本発明の上記実施態様のいずれか1つにおいて、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの細胞表面分子又は細胞表面マーカー、特に、CD20、CD23、CD25、CD40、CD52、CD69、CD80、及びCD86の中から選択される細胞表面マーカーの発現を誘発するか又は増加させるか又はアップレギュレートさせるに有効な用量で投与される。
【0054】
当業者は、がんの治療には多数のアプローチが存在するという事実を十分承知している。がんのタイプ、その位置及び進行の状態、並びに患者の状態に依存して、いくつかの療法が使用されることは、がんとの闘いについて特徴的である。いくつかの療法を、続けて、又は組み合わせて使用するのがしばしばそうである。外科的介入、放射線療法及び化学療法などのいくつかの療法が数十年間実施されてきたと同時に、他のものも最近考えられており、多くは依然として実験的使用状態にある。当然ながら、新しいアプローチが絶えず開発されており、本発明に従うオリゴヌクレオチド、それらの使用及び治療方法は、将来の治療と組み合わせても有用であると考えられる。本発明者は、現在、本発明のオリゴヌクレオチド、それらの使用及び治療方法が、以下の抗腫瘍治療と組み合わせて有用であると考えるが、これらに限定されることを望まない;放射線治療、ホルモン治療、外科的介入、化学療法、免疫学的療法、光線力学療法、レーザー療法、温熱療法、寒冷療法、血管新生阻害、又はそれらのいずれかの組み合わせ。
【0055】
抗腫瘍治療は、好ましくは、患者への抗体の投与を含む免疫学的療法である。
【0056】
オリゴヌクレオチドは、治療有効量で投与される。「治療有効量」の定義は、疾患及び治療方法の設定に依存し、「治療有効量」は、単独で又は他の治療と組み合わせて、患者の状態の測定可能な改善を生じさせる用量である。
【0057】
がんを治療するためのオリゴヌクレオチドの有効量は、レシピエント哺乳動物の体重1kg当たり、約0.01μg〜約100μg/kg体重、好ましくは約0.1μg〜約10μg、最も好ましくは約1μg〜約5μgの広範囲に及ぶ。オリゴヌクレオチドは、単回用量又は反復用量で投与され得る。現在最も好ましい実施態様は、50μgの量で、粘膜投与、例えば鼻腔内、経口的、経直腸的又は膣内に投与される、本発明ヌクレオチドの1単回用量を要する。
【0058】
本発明のヌクレオチドは、皮下的に又は粘膜に局所的に送達され得る。用語「粘膜に局所的に」は、経口、経肺、直腸、経膣、及び経鼻投与を含む。本発明の1実施態様によれば、ヌクレオチドは、鼻腔内送達される。アクセスのしやすさ及び鼻の脈管構造のため、経鼻薬物送達は、全身的に及び血液脳関門を通過させてCNSへ、小分子薬物及び生物製剤の両方を送達するための魅力的な方法であることがよく知られている。ヌクレオチドは、任意の好適な製剤で、例えば好適な水性緩衝液、例えばしかしこれに限定されないが、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で送達され得る。ヌクレオチドが、粘膜への付着を向上させるように設計された好適な製剤、例えば好適なゲル形成ポリマー、例えばキトサンなど;ヌクレオチドの細胞取り込みを促進する製剤、例えば親油性送達ビヒクル、リポソーム若しくはミセル;又は両方で投与されることが考えられる。
【0059】
経鼻投与に利用可能ないくつかの方法及びデバイスが存在する;局所的又は全身的作用のいずれかを有する、液体及び粉末の両方の製剤の単回又は反復投与。適切なデバイス又は投与技術を使用して、CNSへの送達のために嗅球領域を標的化することが可能である。本発明は、鼻粘膜へヌクレオチドを投与するための特定の方法又はデバイスに限定されない。初期動物研究によって、ピペットによる簡単な点滴注入で十分に機能することが示されているが、ヒトに使用するためには、信頼できる単回又は反復用量投与のためのデバイスが好ましい。
【0060】
本発明の別の実施態様によれば、オリゴヌクレオチドは、直腸点滴注入を通して例えば好適な緩衝液に懸濁したオリゴヌクレオチドを含む水性浣腸剤の形態で結腸の粘膜へ投与される。
【0061】
本発明の別の実施態様によれば、オリゴヌクレオチドは、好適な緩衝液に懸濁したオリゴヌクレオチドを含む、エアゾール剤の吸入によって、又はこれもまた好適な緩衝液に懸濁化したオリゴヌクレオチドを含む、洗浄を行うことによって、肺又は気道の粘膜へ投与される。
【0062】
本発明のなお別の実施態様によれば、オリゴヌクレオチドは、好適なビヒクルに懸濁したオリゴヌクレオチドを含む、液剤、緩衝液剤、ゲル剤、軟膏剤、パスタ剤などの適用によって、尿生殖路、例えば、尿道、膣などの粘膜へ投与される。
【0063】
鼻粘膜への適用からの効果は全身性であることが示されているが、他の部位、例えば尿生殖路、気道又は腸の粘膜への適用が、それらの器官又はそれらの近くに位置する腫瘍の治療にとってより好適であると考えられる。
【0064】
本発明が、実験のセクションにおいて示されるインビボ及びインビトロデータによってサポートされかつ添付の図において示されるように、がんの治療に有用であることがわかる。
【0065】
本発明の実施態様は、多くの利点を有する。今までのところ、本発明者によって規定された用量でのオリゴヌクレオチドの投与は、いかなる顕著な副作用をも誘発していない。さらに、経粘膜投与は、容易であり、迅速であり、かつ痛みが無く、驚くべきことに、全身性効果を生じさせる。例えば、腫瘍部位への好中球遊走の阻害を通じての、腫瘍の部位での状態に対する影響が、実験において見られた増殖の減少及びアポトーシスの誘導に関与する、1つの、しかし唯一ではない、要因であると考えられる。この効果は、単独で、又は現存する若しくは将来の抗がん治療と組み合わせて、がん攻撃への将来有望なアプローチを提供するものと考えられる。
【実施例】
【0066】
実施例
1.動物実験
オリゴヌクレオチドの投与後の、RMAリンパ腫細胞の皮下増殖の効果を、同系C57BL/6(B6)マウスにおいて、インビボで調べた。研究の目的は、皮下腫瘍増殖のマウス実験モデルにおける種々のオリゴヌクレオチドの腫瘍増殖阻害効果を調べることであった。実験用皮下腫瘍は、インビボで維持されたRMA腫瘍細胞をレシピエントB6マウスに接種することによって誘発され得ることが公知である。
研究は、一群C57BL/6(B6)マウス8匹の10群、合計80匹のマウスを含んだ。
【0067】
1.1 テストシステム
腫瘍細胞型及び誘発
マウスにおける皮下腫瘍の誘発は、インビボ増殖されたRaucherウイルス誘発リンパ腫細胞(RMA)の細胞懸濁液(103)を動物の右側腹部内に接種することによって達成された。
【0068】
テスト品製剤及び調製
調べる予定のオリゴヌクレオチドは、“レディー・トゥー・ユース”(ready to use)濃度(2.5〜1.25μg/μL)で室温にてIndex Pharmaceuticals AB, Stockholm,
Swedenによって供給及び送達され、これを点滴注入の日まで−20℃で維持した。
【0069】
1.2 動物材料及び条件
種、系統及び供給業者
使用したマウスは、MTC, Karolinska Institutet, Stockholm, Swedenでインハウスブリーディングによって得られた近交系のC57BL/6/Byマウスであった。
【0070】
詳細
マウスの体重はおよそ20グラムであった。10実験群に分割した80匹のマウスを、実験において使用した。マウスを、MTC動物施設での免疫応答性動物についての通常手順に従って取り扱い、これは、オープンケージに収容し、オープンベンチにおいて手袋で取り扱うことを含んだ。
【0071】
環境
マウスを、M3タイプ(w:l:h=25:40:16cm)の標準オープンケージ中に維持した。ケージを、プラスチック・カーテンの後ろの連続的な空気流下で、オープンラックに収容した。標準床敷を、Scanbur-BK, Sollentuna, Swedenから購入した。床敷を週1回交換した。動物室の温度を、18℃〜22℃の範囲に維持し、実験室の周囲換気システムを介して制御した。明周期は、12時間暗及び12時間明とした(06:00に点灯)。
【0072】
食餌及び水
マウスに、Scanbur-BK, Sollentuna, Swedenから購入した標準的なマウス食餌を与えた。馴化及び実験の間、必要に応じて、給水ビンを補充した。食餌及び水は自由に与えた。
【0073】
1.3 予備実験手順
馴化及び健康手順(health procedure)
適切な馴化を確認するために、実験手順の開始の少なくとも5日前に、マウスを実験室へ移した。
【0074】
処置群への無作為割付け
検査及びヘルスクリアランスの後、マウスを箱から無作為に選び、耳標によって個々にマークし、そして実験群内に割付けた。
【0075】
1.4. 実験手順/実験計画
セットアップ
実験手順を、研究ユニットへのマウスの到着の少なくとも5日後に開始した。前記群を無作為に割り当て、実験プロトコルに従って処置した。
【0076】
実験手順
要約すると、実験は以下の行為を含んだ:RMA腫瘍細胞をB6マウスの腹水腫瘍として増殖させ、インビボ増殖に適合された腫瘍細胞の供給源を得た。回復後、低用量のRMA腫瘍細胞を、レシピエントB6/Byマウスの右側腹部内に接種した。103細胞の腫瘍細胞用量を、この実験のために使用した。
【0077】
腫瘍細胞接種後、全てのマウスを、注射の部位での触診によって、週2回モニタリングした。いずれかのマウスにおける腫瘍増殖の最初の兆候で、マウスを群に再分し、3日ごとに試験物質1用量で3用量(100μl)与えた。試験物質を、動物の左側腹部に皮下的に与えた。マウスの1群において、試験物質をまた鼻腔内投与した。この群については、物質50μg(40μl)を投与した。
【0078】
コントロール動物には、ビヒクルのみ(PBS)を3日ごとに1用量で分割して、合計3用量を受容させた。レシピエントマウスの数は、合計10群について、1実験群当たり8匹、即ち合計80匹のマウスであった。マウスを継続的にモニタリングし、皮下腫瘍の増殖を測定し、がん塊体積として表した。
【0079】
皮下RMA腫瘍の処置
動物に、左側腹部において、合計3回の皮下注射(100μL)のオリゴヌクレオチドを受容させ、1回の注射は、測定可能な腫瘍増殖の最初の兆候の時点から開始して3日ごとであった。腫瘍サイズを、カリパスを使用して測定し、がん塊体積(mm3)として表した。
【0080】
腫瘍増殖速度の評価
各マウスを手触診によって追跡した。腫瘍が出現するとすぐに、そのサイズを、毎日、カリパスを使用して測定した。
【0081】
最終手順
その増殖中の腫瘍のサイズが1500mm3に達したときに、担腫瘍動物を犠牲にした。腫瘍を発症しなかった動物を最長2ヶ月間モニタリングし、その時点でマウスを犠牲にした。
【0082】
マウス腫瘍全体検体収集
全ての測定を行った後、手袋、滅菌メス及び鉗子を使用して、腫瘍を切除した。腫瘍塊の一部、約400〜500mgを切り取り、滅菌メスでスライスし、準備され標識されたエッペンドルフチューブ中の保存溶液中に移した。チューブを固く閉じ、内容物を反転によって5〜6回混合した。収集したサンプルを分析まで4℃で保管した。
【0083】
1.5 結果
各試験した化合物は、最長10日の観察期間の間、腫瘍増殖に対して効果を示した。配列番号7について、驚くべきことに、より低い用量(150μgに対して50μg)が腫瘍増殖を顕著に減少させたことがわかった。非常に驚くべきことに、同一の用量(50μg)が、経鼻投与した場合、等しく大きな増殖減少をもたらした(図1及び2を参照のこと)。
【0084】
配列番号1、2、3、4及び7(図3〜7)の中で、少なくともこの実験設定において、配列番号1及び7について、効果が最も顕著であった。
【0085】
2.ヒト細胞株を用いてのインビトロ実験
ヒトがんについての2つの認められているモデル細胞株を使用した。研究の目的は、腫瘍細胞増殖を阻害し、腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導する、種々のオリゴヌクレオチドの能力を調べることであった。別の目的は、動物実験において得られたデータを、ヒトのがんに対する効果について予測的な別のセットアップと相関させることであった。ポジティブコントロール(市販の免疫刺激オリゴヌクレオチド)、及びネガティブコントロール(逆CpG部位を含有する人工配列)を使用した。
【0086】
2.1 ヒトリンパ腫細胞株
ヒトバーキットリンパ腫細胞株Daudiを、組織培養培地中において、48及び72時間、本発明のヌクレオチドである配列番号1〜6の各々で刺激した。種々の表面発現マーカーの発現を、FACSアレイ機器(BD Biosciences, San Jose, CA, USA)を使用して、文献(例えば、GURSEL, et al. Differential and competitive activation of human immune cells by distinct classes of CpG oligodeoxynucleotide. J Leuk Biol. 2002, vol.71, p.813-820.;JAHRSDORFER, et al. CpG DNA increases primary malignant B cell expression of costimulatory molecules and target antigens. J Leuk Biol. 2001, vol.69, p.81-88.;JAHRSDORFER, et al. B-cell lymhomas differ in their responsiveness to CpG oligodeoxynucleotides. Clin Can Res. 2005, vol.11, p.1490-1499.;及びJAHRSDORFER, et al. Immunostimulatory oligodeoxynucleotides induce apoptosis of B cell chronic lymphocytic leukemia cells. J Leuk Biol. 2005, vol.77, p.378-387を参照のこと)に記載されるようにFACSによって分析した。
【0087】
2.2 ヒト結腸がん細胞株
ヒト結腸がん細胞株HCT116を、組織培養培地中において、72時間、本発明のヌクレオチドである配列番号1〜5及び7の各々で刺激した。細胞増殖及び細胞死を、それぞれ、Ki−67及び7−アミノアクチノマイシン(7−AAD)を使用し、当業者に公知の手順に従って染色し、FACS分析によって分析した。Ki−67は、増殖中の細胞によって発現され、7−AADを使用して、アポトーシス細胞を同定することができた。
【0088】
2.4 結果
図8において見られるように、配列番号1〜7に従う全ての化合物が、ある程度、腫瘍増殖を減少させることができた。しかし、特に配列番号2〜5及び7が、未処置細胞(ポジティブコントロール)と比較して、腫瘍増殖を著しく減少させた。
【0089】
図9は、アポトーシスを誘導する同一の化合物の能力を示しており、ここで、該化合物、特に配列番号1、5及び7は、未処置細胞と比較して高い率のアポトーシスを誘導した。
【0090】
図10に示されるように、配列番号7を除く全ての配列は、B細胞増殖マーカーであるCD20、CD40及びCD54の発現を刺激した。
【0091】
他方で、図11は、全ての配列で処置した後のB細胞活性化マーカーCD69、CD80及びCD86のアップレギュレーションを示しており、配列番号7は、B細胞活性化の最も弱いインデューサであった。
【0092】
図12は、全ての配列での処置が、配列番号7を除いて、アポトーシス受容体CD95(FAS受容体としても公知)を著しい増加をもたらすことを示している。
【0093】
1年の優先権期間に行われた実験
3.健常な被験者から分離されたPBMC中における受容体発現
3.1 材料及び方法
ヘパリン加末梢血を、健常な被験者(n=3)から得た。単核球フラクションを、Ficoll−Hypaque(Seromed, Berlin, Germany)勾配遠心分離によって分離した。細胞を、直ちに2×106細胞/mlの濃度で、48ウエルプレート中の、完全RPMI培地(10%FCS、1%PenStrep、2mM L−グルタミン、10mM HEPES及び1mMピルビン酸ナトリウムを含有)500μlの体積で、37℃で、インキュベートし、1、10及び25μMの10個の異なるオリゴヌクレオチド化合物の各々で処置した。細胞のフラクションを、FACSによる表面抗原発現の直接分析のために、4個の抗体の各(CD19、CD20、CD23、CD80、及びCD3、CD25、CD56 CD69)の2つのミックス々で染色した。
【0094】
48時間後、細胞200μlを、96ウエルプレート中に遠沈させ、2%FCS(PBS中)100μlに再懸濁し、2セットの抗体ミックス(上記の通り)と共に4℃で30分間インキュベートした。次いで、細胞を純粋なPBSで2回洗浄し、続いて表面抗原発現分析のためにFACSArrayバイオアナライザーを使用するFACSによって分析した。第0日から4日後、細胞の残りをアポトーシス分析のために採取した。細胞を96ウエルプレート中に遠沈させ、上記の2%FCS中に再懸濁し、CD19及びCD3の抗体ミックス(BD Pharmingen)と共に4℃で30分間インキュベートした。細胞をPBSで2回洗浄し、続いて、初期及び後期アポトーシスそれぞれの分析のために、アネキシンV及び7−AADでRTにて10分間染色した。細胞を上記のフローサイトメトリーによって分析した。
【0095】
3.2 結果
結果は、CD20及びCD23の発現は、10μMでの配列番号3の投与によってアップレギュレートされたこと(図23、データは示さず)、並びにNK細胞活性化(CD69)の誘導は、未処置及びポジティブコントロール、配列番号6と比較して、10μMでの配列番号3によって達成されたこと(図24)を示している。オリゴヌクレオチド化合物と共に4日間インキュベートした後、T及びB細胞のアポトーシスは変化されなかった(データは示さず)。
【0096】
4.CLL及びFL患者から分離したPBMC中における受容体発現
4.1 材料及び方法
ヘパリン加末梢血を、有意な循環疾患を有するB細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)及び濾胞性リンパ腫(FL)を有する患者から、インフォームドコンセント後に得た。全ての患者を、ルーチンな免疫表現型、形態学的及び臨床的基準によって診断した。
【0097】
単核球フラクションを、Ficoll−Hypaque(Seromed, Berlin, Germany)勾配遠心分離によって分離した。細胞を、直ちに、2×106細胞/mlの濃度で、48ウエルプレート中、完全RPMI培地(10%FCS、1%PenStrep、2mM L−グルタミン、10mM HEPES及び1mMピルビン酸ナトリウムを含有)500μlの体積で、37℃で、インキュベートし、1、10及び25μMの10個の異なるオリゴヌクレオチド化合物の各々で処置した。細胞のフラクションを、FACSによる表面抗原発現の直接分析のために、4個の抗体の2つのミックス(CD19、CD20、CD23、CD80、及びCD3、CD25、CD56 CD69)各々で染色した。
【0098】
48時間後、細胞200μlを、96ウエルプレート中に遠沈させ、2%FCS(PBS中)100μl中に再懸濁し、2セットの抗体ミックス(上記の通り)と共に4℃で30分間インキュベートした。次いで、細胞を純粋なPBSで2回洗浄し、続いて、表面抗原発現分析のためにFACSArrayバイオアナライザーを使用するFACSによって分析した。第0日から4日後、細胞の残りをアポトーシス分析のために採取した。細胞を96ウエルプレート中に遠沈させ、上記のように2%FCS中に再懸濁し、CD19及びCD3の抗体ミックス(BD Pharmingen)と共に4℃で30分間インキュベートした。細胞をPBSで2回洗浄し、続いて、初期及び後期アポトーシスそれぞれの分析のために、アネキシンV及び7−AADでRTにて10分間染色した。細胞を上記のフローサイトメトリーによって分析した。
【0099】
4.2 結果
結果は、配列番号3、8、及び9は、CLL−患者由来のB細胞上におけるCD20のアップレギュレーション(図13)、及びCLL−患者由来のB細胞上におけるCD80のアップレギュレーション(図14)を誘導することを示した。CD23及びCD25の発現もまたアップレギュレートされた(データは示さず)。
【0100】
配列番号3、8、及び9は、CD69染色によって測定されるNK細胞の活性化を誘導することも示された(図15)。
【0101】
結果はまた、配列番号3、8、及び9は、CLL−患者由来のPBMCのT細胞及びB細胞のアポトーシスを誘導することを示した(図16及び17)。
【0102】
5.パルス実験
5.1 実験セットアップ
サイトカインプロフィール及び表面マーカーの発現を、健常なコントロール由来のPBMCを使用して、いわゆるパルス実験において測定した。サイトカインプロフィールを、インビトロでの48時間培養後に測定し、表面マーカー染色(FACS)を72時間後に行った。
【0103】
実施例3及び4に記載されるように、PBMCを調製及び培養した。次いで、PBMCを、所定期間の間、実験化合物にさらし、続いて洗浄した。洗浄を以下のように行った:先ず、プレートを1500rpmで5分間遠心分離した。次いで、上清を捨て、新鮮な培地を添加した。遠心分離を繰り返し、第2の上清を捨て、新鮮な培地を添加した。その後、PBMCを、所望の時点である48時間(サイトカインプロフィール)又は72時間(表面マーカー染色)までさらに培養した。
【0104】
サイトカインプロフィールを、48時間インビトロ培養の後に測定した。第1バッチにおいて、実験化合物にさらすことなく、PBMCを単に48時間培養した。第2バッチにおいて、PBMCを、配列番号3(IDXs0022)を用いての30分パルスにさらし、即ち換言すると配列番号3へ30分間曝露し、上述のように洗浄し、次いで48時間培養した。第3バッチにおいて、PBMCを2時間パルスにさらし、第4バッチにおいて、配列番号3へ60時間さらした。以下のサイトカインを分析した:Il−6、Il−10、及びIP−10。サイトカイン濃度をpg/mlとして与えた。
【0105】
表面マーカー染色をインビトロ培養の72時間後に行った。第1バッチにおいて、実験化合物にさらすことなく、PBMCを単に72時間培養した。第2バッチにおいて、PBMCを、配列番号3(IDXs0022)を用いての30分パルスにさらし、即ち換言すると、配列番号3へ30分間曝露し、上述のように洗浄し、次いで72時間培養した。第3バッチにおいて、PBMCを2時間パルスにさらし、第4バッチにおいて、配列番号3へ60時間さらした。表面マーカー分析を、FACSによるCD19、CD20、CD56及びCD69の表面抗原発現の直接分析によって行った。
【0106】
3.2.結果
結果は、オリゴヌクレオチドがわずか30分後に洗浄によって除去された場合も、顕著な長期効果が存在することを示し、このことは、経鼻投与の、又はオリゴヌクレオチドが約30分を超えて存在するとは予想されない他の粘膜への投与の実行可能性を支持した。
【0107】
結果はまた、2時間後、及び6時間後でさえ、オリゴヌクレオチドが洗浄によって除去された場合、顕著な効果を示し、これは、例えば、より長い滞留時間が期待される直腸投与に対応する。結果を、サイトカイン分析については図18、19、及び20に、表面マーカー染色については図21及び22に示す。
【0108】
この実験はヒトPBMCを使用して行なわれ、このことは、別の通常の実験設定である不死化ヒト細胞株を用いて行われる実験よりもより十分な正確さ、その結果をインビボ設定へ振替可能にすることもまた、留意すべきである。特に、患者から得られるPBMCは、例えばB細胞を含有しているであろうし、実験化合物の効果は、その療法のための関連標的に対して直接的に見られる。
【0109】
特定の実施態様を本明細書において詳細に開示したが、これは、例示目的のために実施例を用いてなされているだけであり、続いて添付の特許請求の範囲に関して限定することを意図するものではない。特に、種々の置換、変更及び修飾が、特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明に対してなされ得ることが、本発明者によって意図されている。
【0110】
参考文献
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of B cell chronic lymphocytic leukemia cells. J Leuk Biol. 2005, vol.77, p.378-387.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜5及び8〜9のいずれか1つに従う単離されたオリゴヌクレオチド配列。
【請求項2】
少なくとも1つのヌクレオチドがリン酸骨格修飾を有する、配列番号1〜5及び8〜9のいずれか1つに従う単離されたオリゴヌクレオチド配列。
【請求項3】
がんの治療用の薬剤を製造するための、配列番号1〜5及び8〜9のいずれか1つに従う単離されたオリゴヌクレオチド配列の使用。
【請求項4】
薬剤が、細胞表面マーカーであるCD20、CD23、CD25、CD40、CD52、CD69、CD80、及びCD86の少なくとも1つの発現をアップレギュレートするのに有効な用量で、粘膜へ局所的に又は皮下的に投与される、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
薬剤が、がんの治療において腫瘍部位への好中球遊走の阻害を通じて腫瘍増殖を阻害するのに有効な用量で、粘膜へ局所的に又は皮下的に投与される、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
薬剤が、アポトーシスを誘導するに有効な用量で、粘膜へ局所的に又は皮下的に投与される、請求項3に記載の使用。
【請求項7】
薬剤が、NK細胞を活性化するのに有効な用量で、粘膜へ局所的に又は皮下的に投与される、請求項3に記載の使用。
【請求項8】
用量が、がんの治療について約1〜約100μgの範囲内にある、請求項4〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
抗腫瘍治療が、オリゴヌクレオチドの投与の前、後、又は本質的に同時に行なわれる、請求項4〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
抗腫瘍治療が、放射線治療、ホルモン治療、外科的介入、化学療法、免疫学的療法、光線力学療法、レーザー療法、温熱療法、寒冷療法、血管新生阻害、又はそれらのいずれかの組み合わせの中から選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
抗腫瘍治療が、免疫学的療法であり、患者への抗体の投与を含む、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
配列番号1〜5及び8〜9のいずれか1つに従う単離されたオリゴヌクレオチド配列がその必要のある患者へ投与される、がんの治療のための方法。
【請求項13】
少なくとも1つのヌクレオチドがリン酸骨格修飾を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
オリゴヌクレオチドが、その必要のある患者の粘膜へ局所的に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
オリゴヌクレオチドが、その必要のある患者へ皮下投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
オリゴヌクレオチドが、細胞表面マーカーであるCD20、CD23、CD25、CD40、CD52、CD69、CD80、及びCD86の少なくとも1つの発現を誘発するに有効な用量で投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
オリゴヌクレオチドが、がんの治療において腫瘍部位への好中球遊走の阻害を通じて腫瘍増殖を阻害するのに有効な用量で投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
薬剤が、アポトーシスを誘導するのに有効な用量で投与される、請求項12に記載の使用。
【請求項19】
薬剤が、NK細胞を活性化するのに有効な用量で投与される、請求項12に記載の使用。
【請求項20】
オリゴヌクレオチドが、約1〜約100μgの用量で投与される、請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
オリゴヌクレオチドが、抗腫瘍治療の前、後、又は本質的に同時に投与される、請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
抗腫瘍治療が、放射線治療、ホルモン治療、外科的介入、化学療法、免疫学的療法、光線力学療法、レーザー療法、温熱療法、寒冷療法、血管新生阻害、又はそれらのいずれかの組み合わせの中から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
抗腫瘍治療が、免疫学的治療であり、患者への抗体の投与を含む、請求項21に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2010−525811(P2010−525811A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506140(P2010−506140)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【国際出願番号】PCT/SE2008/050501
【国際公開番号】WO2008/136748
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(508003011)インデックス・ファーマシューティカルズ・アクチエボラーグ (12)
【Fターム(参考)】