説明

腫瘍細胞増殖を阻害するための改善された組成物

本発明は、特定の処理によってエキソビボで成熟へとすでに刺激されていた炎症誘発性樹状細胞(DC)を準備することによる癌免疫療法、そのような処理のための方法およびこの炎症誘発性DCを含む組成物に関する。このDCは、腫瘍細胞の増殖を阻害するための細胞ベースの免疫療法として使用されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、癌治療の分野に関する。より具体的には、本発明は、癌免疫療法に、より具体的には腫瘍細胞増殖を阻害するための細胞ベースの免疫療法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチンは、ウイルス感染または微生物感染などの感染症の予防のために長い間使用されてきた。免疫系の細胞介在性アームは、宿主に、感染から防御し回復する能力、および同じ抗原によるさらなる感染を予防する能力を与えることに広く関与している。細胞介在性の免疫機構は、癌に対しても有用であると考えられる。
【0003】
最も強力な抗原提示細胞(APC)である樹状細胞(DC)は、免疫反応の開始および制御において中心的な役割を果たす。樹状細胞(DC)は、ナイーブT細胞をプライミングする能力、ならびに効果的な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の応答を誘発および誘導する能力というユニークな能力を有する。DC前駆体は、循環血液の中に存在し、感染または炎症の部位へと素早く動員されることができる。DC前駆体が未熟DCへと分化するとき、DC前駆体は、外因性のタンパク質抗原を取り込みしプロセシングする上で非常に有効になる。Toll様受容体(TLR)リガンドを発現する細菌性およびウイルス性の成分、炎症性サイトカインならびに/または特異的T細胞相互作用(CD40/CD40リガンド相互作用)などの種々の成熟刺激に応答して、DC前駆体は分化プロセスを開始し、抗原の取り込みおよびプロセシング能力の減少ならびに共起刺激分子およびMHC分子の発現の増大を導く。重要なことは、直接の病原体認識(例えば、TLR)またはCD40ライゲーションによって誘導されるシグナルのシグナル強度および持続性は、特定のDC機能の非常に重要な決定因子であると示されているとうことである。それゆえ、DCは、末梢部位で活性化因子によって末期に誘導され、2つの相互に排他的な機能のうちの1つ −つまり、効率的なT細胞相互作用のためにリンパ節へと(成熟した遊走DCとして)遊走するか、または(成熟した炎症誘発性DCとして)ケモカインおよびサイトカインなどの大量の炎症メディエーターを産生することにより微小環境を調節するかのいずれか− を果たす。
【0004】
DCに焦点を当てた既存の癌免疫療法戦略はすべて、T細胞反応の質は、遊走DCが、二次性リンパ性器官において腫瘍抗原をプロセシングして腫瘍抗原をT細胞へと提示し、従って腫瘍特異的CTL応答(これは、癌細胞への免疫学的な攻撃を導く)を作り出す能力に主に依存するという前提に基づく。異なるマウス腫瘍モデルからのデータは、このような応答は、当業者にとっては周知である3つの主要な戦略のうちの1つに従って引き金を引かれうるということを示した。これらの免疫療法的抗癌戦略は、ヒトにおいて現在活発に試験されているが、すべて限定的な成功しか収めていない。
【0005】
第1の戦略は、腫瘍保有患者からの抗原を負荷された遊走DCをエキソビボで活性化し成熟させて、その後それらを同じ患者に再導入することである。抗原負荷は、典型的には、腫瘍関連抗原(溶解した腫瘍細胞、タンパク質、ペプチドまたはこのような抗原をコードする核酸)を単球由来の未熟DCに加え、次いで、抗原を負荷されたDCを、起炎因子の異なる組み合わせを用いて活性化し/成熟させることにより、実施される。再導入されたDCは、流入領域リンパ節へと遊走して、そこでDCは腫瘍特異的Tリンパ球をプライミングすると想定される。DCによってプライミングされたTリンパ球、特にCTLは、その後腫瘍部位へと移動し、そこでTリンパ球、特にCTLは、その後、腫瘍細胞アポトーシスを誘導する。
【0006】
しかしながら臨床の現場では、患者自身の、すなわち自家の、DCのエキソビボ操作は時間がかかり、患者を感染のリスクの増加に曝す。また、DCが腫瘍抗原でパルスされ腫瘍抗原を効率的に提示する遊走DCへと活性化される操作プロセスは、単調で退屈である。
【0007】
第2の主要な戦略は、患者由来の遊走DCのエキソビボでの増殖の必要性を回避するが、この戦略は、無傷の正常な組織への、腫瘍抗原(照射された同種異系の腫瘍細胞を含む)、または腫瘍抗原をコードするプラスミドの投与(皮下注射または筋肉内注射を含む)を含む。腫瘍抗原は、DC介在性免疫反応をインビボで誘発することが意図された、いわゆるアジュバントが補われる。最も一般的には、ケモカイン、サイトカインもしくはこれらの因子をコードするプラスミド、および/または腫瘍壊死因子α(TNF−α)などのDC成熟化因子、および/またはTLRアゴニストがアジュバントとして使用される。
【0008】
しかしながら、外因性の腫瘍抗原の投与は、単調で退屈なプロセスである。
【0009】
第3の主要な戦略は、同じく、第1の主要な戦略に含まれる患者由来の遊走DCのエキソビボでの増殖の必要性を回避し、加えて、第2の主要な戦略に含まれる外因性の腫瘍抗原の必要性を回避するが、この戦略は、腫瘍へと直接注入されるアジュバントに関する。つまり、アジュバントはインビボで標的指向化DCに向けられ、患者の腫瘍は腫瘍関連抗原の源として作用する。試験されたアジュバントは、第2の主要な戦略で記載したものと同様である:ケモカイン、サイトカインまたはこれらの因子をコードするプラスミド、および/またはTNF−αなどのDC成熟化因子、およびTLRアゴニスト。しかしながら、生きた腫瘍は、これらのDCによって飲み込まれうる(好ましくはアポトーシスによって誘導された)臨死腫瘍細胞の数が不十分であるために、動員された未熟DCにとっては腫瘍関連抗原の質の悪い供給源である可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の3つの戦略はすべて、ヒトの癌患者で試験されたが、限られた成功しか収めなかった。従って、より効率的な治療ワクチンおよび癌の改善された処置方法についての明らかなニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は、好ましくは、単独のまたはいずれかの組み合わせの当該技術分野の上で特定した欠点を克服することを目指し、そして、高レベルの望ましいケモカインおよびインターロイキン12(IL−12)を産生する炎症誘発性の成熟した樹状細胞、このような炎症誘発性樹状細胞を含む組成物、このような炎症誘発性樹状細胞を製造するための方法、医薬としての、この炎症誘発性樹状細胞またはこの組成物の使用、ならびに癌を処置するための、この樹状細胞またはこの組成物の使用を提供することにより、少なくとも上記の課題を解決する。
【0012】
従って、第1の態様では、物質ポリイノシン酸−ポリシチジル酸ナトリウム塩(ポリ−I:C)、レシキモド(R848)およびインターフェロンγ(IFN−γ)を用いた処理によってエキソビボで成熟へとすでに刺激された炎症誘発性樹状細胞(DC)が提供される。
【0013】
第2の態様では、第1の態様に係る炎症誘発性DCと、末梢血単核球(PBMC)とを含む組成物が提供される。
【0014】
第3の態様では、第1の態様に係る炎症誘発性DCを製造するための方法が提供される。この方法は、末梢血単核球(PBMC)を準備する工程と、上記PBMCから単球を単離する工程と、この単球から未熟DC(iDC)を生成する工程と、ポリ−I:C、R848およびIFN−γをiDCに加えることによりこのiDCの成熟を誘導して、炎症誘発性DCを得る工程とを含む。
【0015】
第4の態様では、第2の態様に係る組成物を製造するための方法が提供される。この方法は、末梢血単核球(PBMC)を準備する工程と、第1の態様に係る炎症誘発性成熟DCを得る工程と、このPBMCおよびこの炎症誘発性成熟DCを混合する工程とを含む。
【0016】
第5の態様では、医薬として使用するための、第1の態様に係る炎症誘発性DCまたは第2の態様に係る組成物が提供される。
【0017】
第6の態様では、上記炎症誘発性成熟DCまたはPBMCの源以外の個体において医薬として使用するための、第1の態様に係る炎症誘発性DCまたは第2の態様に係る組成物が提供される。
【0018】
第7の態様では、癌の処置において使用するための、第1の態様に係る炎症誘発性DC、または第2の態様に係る組成物が提供される。
【0019】
第8の態様では、上記炎症誘発性成熟DCまたはPBMCの源以外の個体において癌の処置において使用するための、第1の態様に係る炎症誘発性DC、または第2の態様に係る組成物が提供される。
【0020】
本発明のさらなる実施形態は、独立請求項において定められる。
【0021】
本発明が、活性化刺激を取り除いた後に高レベルの望ましいサイトカイン、例えばケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド9(CXCL9)(MIGとしても知られる)、C−Cモチーフケモカイン3(CCL3)(マクロファージ炎症タンパク質1−α(ΜΙΡ−1α)としても知られる)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、IL−1β、およびIL−12を産生するという点で、本発明は先行技術とは異なり、従って、外因性の成熟刺激因子の存在なしに例えば注射などの使用に好適である。
【0022】
同種異系の様式で患者に腫瘍内に注入されるとき、すなわち患者が炎症誘発性DCまたはこの炎症誘発性DCを作り出すために使用されたPBMCが由来するドナーとは異なるとき、このような炎症誘発性DCは、その患者自身のDCが腫瘍を負荷された遊走DCへと発育するように、その患者自身のDCを活性化するであろう。この効果は、注入された炎症誘発性DCの、大量の、望ましいサイトカインおよびIL−12の組み合わせ、例えばDC、NK細胞および記憶T細胞の動員ケモカインMIP−1α/CCL3、NK細胞および記憶T細胞の動員ケモカインMIG/CXCL9、ならびにNK活性化サイトカインIL−12を産生する能力に起因する。さらに、未熟DCに勝る、成熟したDC、例えば炎症誘発性成熟DCを用いる優位点によって、細胞−細胞接触によりNK細胞活性化を増進できる。当該炎症誘発性DCが強力な外因性の活性化(例えば成熟化)因子を含まないという事実は優位点である。なぜなら、腫瘍内での強力な外因性の活性化因子の存在は、本発明とは異なる機構で、患者自身の腫瘍内に動員されたDCを、望ましい患者特異的な、すなわち自身の、遊走DCへではなく、患者特異的な炎症誘発性DCへの分化へと引き金を引く可能性があるからである。従って、NK細胞を活性化する最適能力を成熟するDCに与えるために、成熟するDC上でのCD86のような分子の高発現を成し遂げるために少なくとも18時間の刺激がおそらく必要とされよう。先行技術によれば、活性化された/成熟したDCは、18時間後には顕著な量のIL−12を産生することができない。わずか8時間後に活性化を打ち切れば、産生は残る。しかしながら、これらのDCは、関連するNK活性化分子を上方制御するための時間を持っていない。
【0023】
同種異系の器官、組織または成熟したDCを用いた移植は、強い免疫化を誘導し、自己MHCクラスII分子上に提示された同種異系のMHC由来のペプチドに特異的である同種抗原反応性のCD4+ T細胞の膨張を導く(非自己認識の間接的経路と呼ばれる)ことがさらに公知である。腫瘍内注入に関して同種異系の炎症誘発性DCを使用することにより、このDCは、その後、宿主免疫系によって死滅し(拒絶され)、これにより、非常に免疫原性のCD4+ ヘルパーT細胞エピトープ(同種異系のMHC由来のペプチド)の供給源になるであろう。このCD4+ ヘルパーT細胞エピトープは、動員された自身のDCによって捕捉されるであろうし、非常に高い可能性で、腫瘍保有患者において腫瘍抗原に対するCD8耐性を破ることに寄与するであろう。従って、炎症誘発性DCは、アジュバントとして作用し、遊走DCとしては作用せず、このことは、先行技術と比較して有利でもあり異なる点でもある。例えば、プロスタグランジンE2(PGE2)が異なるDC成熟カクテルに含まれる場合、成熟したDCは、注入部位(腫瘍)をすぐに離れるであろう遊走DCとなるであろうが、これは、本発明に関する限りでは、不利である。
【0024】
同種異系のDCを、すなわち炎症誘発性成熟DCまたはPBMCの源、またはドナー以外の個体においてDCを使用することにより、そのような潜在的なアジュバントは、各特定の患者に対して個々に調製される必要はなく、後のより低い製造原価でもって大規模生産が可能になる。加えて、当該ワクチンは凍結して長い距離を輸送することができ、このことは、当該ワクチンの商業上の実現性をさらに高める。
【0025】
本発明がすることができるもののこれらおよび他の態様、特徴および利点は、添付の図面を参照してなされる以下の本発明の実施形態の説明から明らかであろうし、説明もされる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第3の態様に係る方法の概略図である。
【図2】第4の態様に係る方法の概略図である。
【図3】第1の態様に係る炎症誘発性成熟DCによる、CCL3/MIP−1α(図3C)、CCL5/RANTES(図3A)およびCXCL9/MIG(図3B)の産生を示すグラフである。
【図4】第1の態様に係る炎症誘発性成熟DCによる、IL−12の産生を示すグラフである。
【図5】第2の態様に係る組成物による、IL−1βおよびTNF−αの産生を示すグラフである。
【図6】第2の態様に係る組成物による、IL−1βおよびTNF−αの産生を示すグラフである。
【図7】第2の態様に係る組成物による、IFN−γの産生を示すグラフである。
【図8】iDCの成熟に対する異なる物質の影響を示すFACSグラフである。
【図9】iDCの成熟に対する第1の態様に係る炎症誘発性成熟DC、または第2の態様に係る組成物の影響を示すFACSグラフである。
【図10】1つの実施形態に関する研究における腫瘍体積を示すグラフである。
【図11】1つの実施形態に関する研究における、病理組織学的な結果(原発性腫瘍)の写真を示す。
【図12】1つの実施形態に関する研究における、病理組織学的な対照結果(原発性腫瘍)の写真を示す。
【図13】1つの実施形態に関する研究における、病理組織学的な結果(続発性腫瘍)の写真を示す。
【図14】1つの実施形態に関する研究における、病理組織学的な対照結果(続発性腫瘍)の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
当業者が本発明を実施することができるために、本発明のいくつかの実施形態が、添付の図面を参照して、以降でより詳細に記載される。しかしながら、本発明は多くの異なる形態で具体化されてもよく、本願明細書に示される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が十分かつ完全であるように、および本発明の範囲を十分に当業者に伝えるように与えられる。実施形態は本発明を限定せず、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。さらには、添付の図面に示される特定の実施形態の詳細な説明の中で使用される専門用語は、本発明を限定するものであるとは意図されていない。
【0028】
効率的な抗腫瘍性の免疫反応を誘導することを意図した腫瘍内に注入されたアジュバントは、非常に高い可能性で、注入された腫瘍内部で、すべてCTL介在性腫瘍の根絶を成し遂げるために重要である3つの事象を誘導する必要がある。
【0029】
第一に、未熟DC(iDC)は、腫瘍抗原に曝されるために、腫瘍へと動員される必要がある。ケモカインMIP−1α/CCL3が、インビボでのiDCの腫瘍内動員を含めて、iDCの動員を刺激する強い能力を有するということが、当該技術分野で十分に確立されている。
【0030】
第二に、腫瘍抗原を動員されたiDCに利用できるようにするために、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することが重要である。これを成し遂げるためのいくつかの異なる方法が、ナチュラルキラー(NK)細胞の腫瘍内動員および活性化を誘発する方法を含めて、当該技術分野に存在する。異なるマウスモデルにおける、主にアポトーシスの誘導に起因する、感受性のある腫瘍細胞のNK細胞介在性の初期の死滅は、その後の、親の、NK細胞耐性の腫瘍細胞に対する腫瘍特異的な細胞毒性T細胞反応のDC介在性発生を効率的に惹起することが繰り返し示されている。NK細胞は、ケモカイン受容体CXCR3を発現することが公知であり、NK細胞のCXCR3依存的動員は、いくつかの動物モデルで実証されている。1つの周知のCXCR3リガンドはMIG/CXCL9であり、MIG/CXCL9の腫瘍内注入後にNK細胞が蓄積するというエビデンスがある。
【0031】
動員されたNK細胞が効果的に腫瘍細胞を死滅させるために、インビトロおよびインビボでのNK細胞死滅活性の強力な活性化因子であるIL−12などのNK細胞活性化因子の存在も必要である可能性が非常に高い。
【0032】
第三に、動員されたiDCの成熟した遊走DCへの成熟が誘導される必要がある。
【0033】
ウイルス感染症(通常、Th1に偏った免疫反応を導く)の初期段階は、通常は、DCおよびNK細胞の両方の局所的な動員および活性化と関連づけられる。最近の研究では、短い(一晩の)インキュベーションの間IL−12またはIL−4のいずれかに曝露されたことがあるヒトの末梢血NK細胞が、DCの成熟を誘導する能力に関して検討された。注目すべきことに、IL−12で刺激されたNK細胞だけが、実質的なDC成熟を誘導することができた。それゆえ、インビボ応答と適合する時間間隔のあいだIL−12に曝露されたNK細胞は、二次性リンパ性器官(5)におけるその後のTh1細胞プライミングのための適切な成熟したDCの選択に好都合である可能性があると結論された。これらのヒトのインビトロデータは、抗原を負荷されたDCをマウスへ注入した後にNK細胞の蓄積された動員が起こるとき、NK動員が観察されない状況と比較してTh1応答が著しく高められるということを示すマウスモデルからのインビボデータと一致する。
【0034】
Th1へと偏向するDCの成熟は、ポリクローナルに活性化されたT細胞によって産生される可溶性因子によって誘導されることも示されている。抗CD3活性化T細胞、または抗CD3および抗CD28での二重刺激によって活性化されたT細胞の無細胞上清から調製されるT細胞馴化培地(TCCM)で未熟DCを処理したものは、CD40−リガンド、TNF−α、およびIFN−γなどのいくつかの可溶性因子を含有することが示されている。個々のサイトカインまたは単球馴化培地の添加による共起刺激分子の中程度の上方制御とは対照的に、未熟DCをTCCMで処理すると、共起刺激分子の発現の顕著な増大が用量依存的に誘導されるということが示されている。このような表現型の変化を誘導するというTCCMの能力は、CD40L、TNF−αおよびIFN−γに特異的な中和抗体によってさらに排除され、これは、TCCMの中に存在するこれらの因子がDCの成熟に主に関与しているということを示す。重要なことは、TCCMで処理したDCが高レベルのTh1に偏らせるIL−12を産生することができるということである。
【0035】
最後に、CD4+ T細胞は、流入領域リンパ節の中での遊走DCと抗原特異的CD8+ T細胞との同種の相互作用の際に遊走DCを「助ける」ことにより、CD8+ CTLのプライミング、膨張、および記憶および生存において非常に重要な役割を果たすということが知られている。癌免疫療法の領域内でのいくつかの研究は、野生型腫瘍抗原由来のMHCクラスIIペプチドのCD4+ T細胞認識は、CTL誘導のために必要とされる助けを提供するであろうというアプローチに依拠してきた。しかしながら、腫瘍抗原由来のペプチドによってもたらされる助けは、腫瘍進行の間に進化するこれらの自己タンパク質に対するCD4+ T細胞の耐性誘導に起因して弱いかまたは存在しないことが多いであろう。これは、ワクチンの治療効果を妨げる可能性がある。最近の知見は、マウスモデルにおいて、ワクチン接種部位で非自己CD4+ ヘルパーTエピトープを腫瘍関連自己タンパク質に添加することが、確立された、腫瘍関連抗原に対するCD8耐性を破壊するのには十分であるということを実証した。
【0036】
まとめると、すべてのこれらのデータは、効率的な抗腫瘍性の適応性のある(T細胞介在性)免疫反応を誘導することを意図した腫瘍内に注入されたアジュバントは、MIP−1α/MIP−1α/CCL3の高くかつ持続的な産生(DC、NKおよび記憶T細胞の動員)、MIG/CXCL9(NK細胞および記憶T細胞の動員)、IL−12p70(腫瘍抗原のNK細胞介在性放出および遊走DCのNK細胞介在性成熟)ならびに最後に、流入領域リンパ節の中での腫瘍特異的CD8+ T細胞のDC介在性プライミングの際にCD4+ヘルパーT細胞エピトープとして作用する可能性がある免疫原性の非自己タンパク質の存在によって特徴づけられるべきであるということを示す。
【0037】
ヒトの単球由来のDCは、同じくそれらの成熟を導く特定のTLR−リガンドによる持続的な刺激の間に高レベルのMIP−1α/CCL3、IL−12p70およびMIG/CXCL9を産生する潜在的可能性を有する。このような持続的に活性化された炎症誘発性成熟DCを腫瘍内に注入するために、それら炎症誘発性成熟DCは、腫瘍内導入に先立って洗浄される必要がある。洗浄されなければ、(エキソビボで炎症誘発性DCを誘導することを意図した)刺激剤の同時の投与は、腫瘍内に動員される未熟DCの強くかつ持続的な活性化も導き、これが未熟DCの、遊走性の成熟したDCへの所望の分化ではなく炎症誘発性成熟DCへの分化を導くであろう可能性が非常に高い。残念ながら、DCが成熟したDCへと分化した時点(通常、刺激から12時間よりも長く経過した後)でのTLR4リガンドまたはCD40Lのような成熟化刺激の停止は、炎症性サイトカイン産生(IL−12産生を含む)の迅速な下方制御を誘導することが知られている。それゆえ、活性化誘導性因子の停止後、望ましい因子の持続的な産生を伴ってDCを炎症誘発性成熟DCへと活性化する活性化方法が使用される必要がある。
【0038】
本発明者らは、強い活性化因子による持続的な刺激を取り除いた後、従ってDCを刺激因子を含まないようにした後で、驚くべきことに高レベルの望ましいケモカインおよびIL−12を産生する炎症誘発性成熟DCを生成するための方法を見出した。この炎症誘発性成熟DCは、同種異系の態様で患者に、すなわちこのDCの源以外の患者に投与されてもよい。
【0039】
この炎症誘発性成熟DCは、末梢血単核球(PBMC)と混合され、従って組成物を形成してもよい。この炎症誘発性成熟DCは、PBMC集団内でT細胞のポリクローナル活性化を引き起こすであろう超抗原、例えば黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB(Staphylococcus aureus Enterotoxin B、SEB)でコーティングされてもよい。
【0040】
患者に投与されたとき、当該炎症誘発性成熟DCまたは組成物は、腫瘍を死滅させる、腫瘍に対する細胞免疫反応を導くであろう免疫反応を誘導するであろう。
【0041】
この効果は、患者がPBMCそれ自体のまたは炎症誘発性成熟DCの源としてのドナーではない場合、すなわちそれらが患者にとって同種異系である場合、非常に強い。この場合、炎症誘発性成熟DCまたは組成物は、非自己CD4+ ヘルパーTエピトープとして作用するであろう。
【0042】
当該炎症誘発性成熟DCまたは組成物は、炎症誘発性成熟DCの、高レベルの関連するケモカイン、例えばMIP−1α/CCL3を産生し、動員されたNK細胞を細胞−細胞依存的な相互作用によって活性化する能力、および炎症誘発性成熟DCの、高レベルのサイトカインIL−12(これは、患者自身の動員されたDCを、NK細胞によって死滅した腫瘍細胞由来の免疫原性の腫瘍物質で抗原負荷することを導くであろう)を産生する能力によって、患者自身のDC、NK細胞およびT細胞を注入部位に引き付けることに寄与するであろう。
【0043】
好ましくは、組成物100は、腫瘍へと直接注入される。DCを腫瘍へとおよび腫瘍全体にわたって引き付ける能力は重要である。なぜなら、ほとんどの検討された癌患者において、DCは、主に腫瘍の周辺で見出されており、この主に腫瘍の周辺で見出されるということは、DCと腫瘍細胞との相互作用を限定する可能性があるからである。重要なことは、患者自身の循環しているDCを腫瘍部位へと動員するケモカインの能力は、(局所的なDCとは反対に)腫瘍細胞を新しく生成された/動員されたDCへと曝し、これは、免疫抑制性の腫瘍環境によってあまり影響を受けない可能性があるということである。
【0044】
図1に係る実施形態では、末梢血単核球(PBMC)101が準備される11方法10が与えられる。単球102は、PBMC 101から単離12される。未熟DC(iDC)103は、単球102から生成13され、iDC 103の成熟は、活性化誘導因子ポリ−I:C、R848およびIFN−γをiDC 103に添加することにより誘導14され、次いで洗浄してすべての活性化因子を除去され、こうして刺激因子を含まない炎症誘発性成熟DC 104を生じる。
【0045】
1つの実施形態では、iDC 103の成熟の誘導14は、IFN−α、IL−1βおよびTNF−αからなる群から選択される物質のうちの少なくとも1つを添加することをさらに含む。
【0046】
1つの実施形態では、iDCの生成13は、単球を、IL−4およびGM−CSFを含む水系媒体の中で2〜7日間、例えば3〜5日間、または3日間もしくは5日間培養することにより誘導される。
【0047】
図2Aに係る実施形態では、組成物100、例えば炎症誘発性DC104およびPBMC101の共培養物、を製造するための方法20が提供される。この方法は、末梢血単核球(PBMC)101を準備21する工程と、炎症誘発性成熟DC 104を得る22工程と、PBMC 101および炎症誘発性成熟DC 104を混合23する工程とを含む。
【0048】
図2Bに係る実施形態では、組成物100を製造するための方法20は、混合する工程の前に、炎症誘発性成熟DC 104を超抗原200で処理する22b工程をさらに含む。
【0049】
上記の実施形態は、以下でさらに詳細に説明される。
【実施例】
【0050】
以下の実験の実施形態は、本願明細書に示された具体的な形態に限定されることは意図されていない。むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、具体的な上述の実施形態以外の実施形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内で等しく可能である。
【0051】
PBMCおよび単球の単離
健康なドナーから入手した末梢血(サールグレンスカ大学総合病院(Sahlgrenska sjukhuset)、スウェーデン、エーテボリ(Goteborg))から、当業者にとっては周知であるLymphoprep(Nycomed、Pharma、ノルウェー、オスロ)を使用する密度勾配遠心分離によって末梢血単核球(PBMC)101を分離した。PBMC 101を、Cellgro培地(Cell Genix、ドイツ、フライブルク(Freiburg))に2.5×10/mLの最終濃度で再懸濁させ、次いで37℃、6% COの中、平底の24穴プレート(1ml/ウェル)の中でインキュベーションした。2時間後、浮遊細胞を取り除き、一方で、残っている接着細胞をPBSで2回洗浄し、単離された単球102(主にCD14+細胞からなる)を得た。
【0052】
DCの生成
単球102を未熟DC 103へと分化させるために、上記単離工程から得た単球102を、新しい水系媒体、例えば誘導因子、すなわち1000U/mL組み換えヒトIL−4および1000U/mL組み換えヒトGM−CSF(すべて、Cell Genix、ドイツ、フライブルク(Freiburg)製)を補ったCellgro培地の中で3日間または5日間のいずれか、培養した。
【0053】
IL−4およびGM−CSF中での単球由来の未熟DC(iDC)103の生成は十分に受け容れられたインビトロモデルであり、これらの細胞は末梢組織DCと同様であると考えてもよい。
【0054】
DCの成熟
IL−4およびGM−CSFを補ったCellgro培地中での3日間または5日間の培養の後、20μg/mL polyI:C(Sigma、ドイツ、シュタインハイム(Steinheim))、ポリイノシン酸:ポリシチジル酸またはポリイノシン酸−ポリシチジル酸ナトリウム塩としても知られる、TLR−3受容体に特異的な免疫刺激物質、および2.5μg/mL R848(Sigma、ドイツ、シュタインハイム(Steinheim))、レシキモドとしても知られるtoll様受容体7/8−リガンド、または1000U/mlインターフェロンγ(IFN−γ、R&D systems、米国、ミネアポリス)を補ったpolyI:CおよびR848の組み合わせのいずれかを培地に添加して未熟DC 103の成熟を誘導した。18時間のインキュベーション後、細胞を3回洗浄し、(外因性の活性化因子の添加なしの)新しい培地の中で24時間さらにインキュベーションし、1つの態様に係る炎症誘発性成熟DC 104を得た。
【0055】
この培養物の培養物上清を、当業者にとっては周知であるプロトコルに従って回収した。
【0056】
ケモカインCCL3/MIP−1α、CCL5/RANTES、CXCL9/MIG、CCL2/単球走化性タンパク質−1(MCP−1)、およびサイトカイン インターロイキン12(IL−12)のレベルを分析するために、後述するようにして、この上清に対してELISA分析を実施した。
【0057】
DCおよびPBMCの共培養
PBMC 101を上記に従って得て、炎症誘発性成熟DC 104も上記に従って得た。
【0058】
PBMC 101由来のT細胞の迅速な成熟およびポリクローナル活性化を成し遂げるために、0.01μg/ml SEB(R&D systems、米国、ミネアポリス)を、上記成熟工程でのDC培養物に加え、30分後に洗浄した。PBS中で3回洗浄した後、炎症誘発性成熟DC 104(2.5×10細胞/mL)を、1×10細胞/mLの同種異系のPBMC(上記のとおり、健康なドナーの末梢血から単離した)とともに、全量1mLで、24時間、共培養した。
【0059】
炎症誘発性成熟DC 104および同種異系のPBMCの共培養物の培養物上清、いわゆるMLR上清、を回収し、その後−80℃で保存した。これらの上清を、あとで記載するELISAによって、周知のDC活性化/成熟化因子IFN−γ、TNF−αおよびIL−1βの存在について分析した。これらの上清は、iDCの表現型上の成熟の誘導についても検討した(後述のとおり)。
【0060】
ELISA
R&D systems、米国、ミネアポリス製のDuo Set ELISA Development Systemを製造業者の取扱説明書に従って使用して、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)によってCCL3/MIP−1α、CCL5/RANTES、CXCL9/MIG、CCL2/MCP−1、IL−12、TNF−α、IL−1βおよびIFN−γのレベルを測定した。
【0061】
表現型上の成熟の検討
単球由来の樹状細胞103(iDC)を上記のとおりにして生成した。IL−4およびGM−CSFを補ったCellgro中での5日間のインキュベーションの後、未熟DC 103を、300μlの上記のMLR上清および100μlの新しいCellgro培地の中で、37℃で24時間インキュベーションした。上清を加えることなく培養したDCを対照として使用した。MLR上清が成熟を誘導しているかどうかを判定するために、試料を、FITC抗ヒトCD83と組み合わせたPE抗ヒトCD86で染色した。FITCおよびPEで染色したマウスIgG1およびIgG2をアイソタイプ対照として使用した(すべて、BD Biosciences、米国、カリフォルニア州製)。これらの試料を、Cell Questソフトウェア(BD Bioscience、米国、カリフォルニア州)を使用してフローサイトメトリ(FACS)によって分析した。
【0062】
結果
以下で、この実験部から得た結果を論じる。
【0063】
望ましい炎症性ケモカインの持続的な産生
図3に示すように、3人の検討した血液ドナー由来の炎症誘発性成熟DC 104によるCCL3/MIP−1α(図3C)、CCL5/RANTES(図3A)およびCXCL9/MIG(図3B)の産生は、iDCが、複合TLR刺激、すなわち成熟の誘導14の前に、GM−CSFおよびIL−4の中での5日間の培養によって誘導された場合、GM−CSFおよびIL−4の中での3日間の培養と比較して、高かった。さらに、IFN−γの添加による複合TLR刺激は、最高レベルのCCL3/MIP−1αおよびCXCL9/MIGを与えたが、CCL5/RANTESの産生はIFN−γの添加によって影響を受けなかった。
【0064】
従って、物質ポリイノシン酸−ポリシチジル酸ナトリウム塩(ポリ−I:C)、レシキモド(R848)およびインターフェロンγ(IFN−γ)を用いた処理によってエキソビボで成熟へとすでに刺激された炎症誘発性樹状細胞(DC)。
【0065】
1つの実施形態では、炎症誘発性樹状細胞(DC)は、加えて、インターフェロンα(IFN−α)、インターロイキン1、β(IL−1β)および腫瘍壊死因子α(TNF−α)からなる群から選択される物質のうちの少なくとも1つですでに刺激されている。
【0066】
注目すべきことに、高レベルを記録した関連するケモカインは、成熟刺激を取り除いた後に産生された。炎症誘発性成熟DC 104が強い外因性の活性化(例えば、成熟化)因子を含まないという事実は優位点である。なぜなら、腫瘍内での強い外因性の活性化因子の存在は、本発明とは異なる機構で、患者自身の腫瘍内に動員されたDCを、望ましい患者特異的な、すなわち自身の、遊走DCへではなく、患者特異的な炎症誘発性DCへの分化を誘発する可能性があるからである。
【0067】
当該炎症誘発性成熟DCは、刺激を取り除いた後24時間の間に、少なくとも25 000pg IL−12/mL/10細胞、例えば120 000pg/mL/10細胞、少なくとも100 000pg CXCL9/mL/10細胞、例えば400 000pg/mL/10細胞、および少なくとも40 000pg CCL3/mL/10細胞、例えば180 000pg/mL/10細胞を産生する。
【0068】
当該炎症誘発性成熟DCは、刺激を取り除いた後24時間の間に、CCL5/RANTES、例えば17500pg/mL/10細胞も産生する可能性がある。
【0069】
検出可能なレベル(検出レベル312pg/mL)のCCL2/MCP−1は見出されなかった(データは示さず)。図3は、ELISA分析によって得られた、CCL3/MIP−1α(図3C)、CCL5/RANTES(図3A)およびCXCL9/MIG(図3B)のレベルを示す。示した結果は3人の個体からの平均値±SDである。それぞれのY軸は、刺激を取り除いた後24時間の間の、産生したそれぞれの物質の量をpg/mL/2.5×10細胞単位で示す。X軸は、測定した異なる組み合わせを示す。
【0070】
IL−12p70持続的な産生
IFN−γによる同時の刺激を伴うかまたは伴わない複合TLR刺激、すなわち成熟の誘導14は、炎症誘発性成熟DC 104においてNK細胞を動員するケモカイン(CCL3/MIP−1α、CCL5/RANTESおよびCXCL9/MIG)の持続的かつ強い産生を誘導することが見出されたので、そのようなDCが同時にIL−12、例えば周知のNK細胞活性化因子であるIL−12p70を放出することができるのかどうかを検討することに興味が持たれた。図4に示すように、TLRの二重刺激(例えばR848およびPolyI:C)は、活性化誘導因子などの成熟刺激を取り除いた後、IL−12p70の強くかつ持続的な産生を誘導することが示された。さらに、活性化の際にIFN−γを添加するとIL−12p70の産生がさらに増進した。ケモカインの産生と同様に、IL−12p70産生は、単球を活性化の前にGM−CSFおよびIL−4の中で5日間培養したとき、3日間と比較して、最適であった(4つの実験のうちで3つ)。図4は、DC成熟の誘導後のIL−12p70の産生を示す。提示したデータは、異なるドナーによる3つの実験の平均±SDである。Y軸は、刺激を取り除いた後24時間の間の、産生した物質の量をpg/mL/2.5×10細胞単位で示す。X軸は、測定した異なる組み合わせを示す。
【0071】
成熟したDCまたはSEBコーティングした成熟したDCと同種異系のPBMCとの共培養は、DC成熟化因子の産生を誘導する
活性化されたNK細胞およびT細胞によって産生される炎症誘発性の可溶性因子は、バイスタンダー(bystander)の未熟DCの成熟を促進することが知られている。それゆえ、炎症誘発性成熟DC 104が、組成物100の中で(動員される免疫細胞を模倣する)同種異系のPBMCと共培養されたとき、DCの成熟にとって重要であることが公知のサイトカインの産生を誘導することができるかどうかを調べることに興味が持たれた。DCによって誘導されたT細胞の活性化を最適化するために、二重のTLRアゴニストおよびIFN−γによる刺激期間の最後(洗浄の30分前)にSEBをDC培養物に加えることにより、DCを超抗原であるブドウ球菌エンテロトキシンB(Staphylococcal enterotoxin B)(SEB)でコーティングした。SEBなどの超抗原は、APC上でMHCクラスIIと複合体を形成し、T細胞受容体を介してT細胞を刺激することが公知である。CD4+およびCD8+ T細胞の両方の迅速なポリクローナル活性化が、SEBに応答して起こり、TNF−α、IL−1およびIFN−γなどの炎症メディエーターの産生の増加が導かれる。T細胞レパートリーのうちの20%もの割合をSEBによって刺激することができ、一般に、SEBへの曝露後の48時間以内にT細胞の「過剰活性化」が起こる。
【0072】
繰り返し洗浄した後、SEBによる同時の「コーティング」を伴うかまたは伴わない炎症誘発性成熟DC 104を同種異系のPBMCとともに24時間共培養し、上清中に放出されたTNF−α、IL−1βおよびIFN−γのレベルをELISAによって測定した。他の種類の超抗原、例えばブドウ球菌エンテロトキシン(Staphylococcal enterotoxin)A、C、D、E、F、G、HおよびJ、ならびにブドウ球菌性毒素ショック症候群毒素1(Staphylococcal toxic shock syndrome toxin−1)(TSST−1)も使用してよい。図5Aに示すように、(複合されたTLRリガンドで刺激された)SEBコーティングした、しかし未熟DCではない炎症誘発性成熟DC 104の共培養物は、同種異系のPBMCとの共培養の後に、IL−1βの実質的な産生を誘導した。SEBコーティングした未熟DCと同種異系のPBMCとの共培養は、成熟したDCを使用することによってはほとんど増大させることができなかったTNF−αの実質的な産生を誘導した。IL−1βまたはTNF−αの産生は、DC成熟の際の二重TLR刺激にIFN−γを加えることによっては、実質的に影響を受けなかった。注目すべきことに、SEBコーティングは、当該共培養モデルではIL−1βおよびTNF−αの放出に顕著に寄与した(図6)が、これは、これらのサイトカインの際立った供給源としてのポリクローナルに活性化されたT細胞を示す。
【0073】
このように、当該炎症誘発性成熟DCは、刺激を取り除いた後24時間の間に、少なくとも2 000pg TNF−α/mL/10細胞、例えば32 000pg/mL/10細胞、および少なくとも500pg IL−1β/mL/10細胞、例えば2500pg/mL/10細胞を産生する可能性がある。
【0074】
IL−1βおよびTNF−αの産生と同様に、IFN−γ産生は、共培養の中でSEBでコーティングされている成熟したDCを使用するとき最も豊富に産生されることが示されたが(図7)、これは、T細胞のポリクローナル活性化に起因する可能性が最も高い。PBMCをTLRおよびIFN−γで刺激したDCに加えることで、IFN−γの産生がわずかに誘導されたが、これはおそらく、炎症誘発性成熟DC 104によって産生されるIL−12によって活性化されたNK細胞によって分泌されたものである。
【0075】
図5は、ELISAによって測定した、IL−1β(図5A)およびTNF−α(図5B)のサイトカインレベルを示す。図6は、ELISAによって測定した、しかし培地、PBMCまたはPBMC/SEBが添加されている場合の、IL−1β(図6A)およびTNF−α(図6B)のサイトカインレベルを示す。図5に示すデータは4人の個体からの平均値±SDであり、図6は1つの実験からの結果を示す。
【0076】
図7は、ELISAによって測定した、上清中のIFN−γのサイトカインレベルを示す。図7に示すデータは1つの実験に由来する。
【0077】
図5、6および7のそれぞれのX軸は、刺激を取り除いた後24時間の間の、産生されたそれぞれの物質の量をpg/mL/2.5×10細胞単位で示す。それぞれのY軸は、測定した異なる組み合わせを示す。
【0078】
バイスタンダーの未熟DCの表現型上の成熟
コーティングしていないまたはSEBコーティングした炎症誘発性成熟DC 104と同種異系のPBMC 101との共培養物からの上清を、その後、バイスタンダーの未熟DCの表現型上の成熟を誘導する能力について検討した。従って、先行する請求項のいずれか1項に係る炎症誘発性成熟DC 104と末梢血単核球(PBMC)101とを含む組成物100が準備される。これらの細胞共培養物からの上清を、GM−CSFおよびIL−4の中で5日間培養した付着単球から得た未熟のバイスタンダーDCを刺激するために使用した。刺激の24時間後、細胞をFACS分析のために回収した。抗ヒトCD86およびCD83を使用して、それぞれ共起刺激分子(CD86)および成熟マーカー(CD83)の発現を調べた。複合TLR刺激によって、すなわちポリ−I:C、R848をiDC 103に加えることによって成熟し、次いでSEB−コーティングした炎症誘発性成熟DC 104の共培養物からの上清は、図8に示すように、バイスタンダーDCのCD86およびCD83の際立った発現を誘導した。従って、組成物100は超抗原を含んでもよい。ワクチンDCのTLR介在性成熟の際のIFN−γの添加は、図8Cに見られるとおり、バイスタンダーの未熟DCのいずれのさらなる、上清によって誘導される、表現型上の成熟にも寄与しなかった。
【0079】
図8は、未熟DC 103に対する、SEBおよびTLRリガンド、すなわち成熟の誘導因子の影響を示す。付着単球をGM−CSFおよびIL−4の中で5日間インキュベーションしiDC 103を得た。SEB/TLRで刺激した炎症誘発性成熟DC 104およびPBMC 101を用いたMLRからの上清を5日目に加え、その後、さらに24時間インキュベーションした。上記共起刺激分子および成熟マーカーを検討するために、細胞を回収し、抗ヒトCD86およびCD83で染色した。成熟および共起刺激表面マーカーは、TLRリガンドおよびSEBによって高く誘導された。示した結果は、2つのうちの1つの代表的な実験に由来する。
【0080】
複合TLR刺激+IFN−γで成熟させた炎症誘発性成熟DC 104を含有するだけの細胞培養液からの上清は、図9Bに見られるとおり、バイスタンダーDC上でCD83の実質的な発現を誘導した。図9Cに見られるとおり、CD83発現は、同種異系のPBMCおよび炎症誘発性成熟DC 104を用いた共培養物からの上清によってさらに増進された。最後に、SEBコーティングした炎症誘発性成熟DC 104および同種異系のPBMC 101を用いた共培養物からの上清は、図9Dに見られるとおり、CD83の最も強い発現を誘導し、これらは、炎症誘発性成熟DC 104−同種異系のPBMC 101の共培養物100にSEBを含めることが、未熟のバイスタンダーDCの最大の、上清によって誘導される成熟を誘導するために重要であるということを示す。
【0081】
上述の結果を考慮して、1つの態様によれば、医薬として使用するための、炎症誘発性成熟DC 104、または組成物100が提供される。
【0082】
1つの態様によれば、癌の処置において使用するための、炎症誘発性成熟DC 104、または組成物100が提供される。
【0083】
1つの態様によれば、癌の処置のための医薬の製造のための炎症誘発性成熟DC 104、または組成物100の使用が提供される。
【0084】
炎症誘発性成熟DC 104、または組成物100は、腫瘍内に注入されてもよい。
【0085】
1つの実施形態では、癌は、乳癌、前立腺癌、腎癌、腸癌、悪性神経膠腫、骨肉腫、悪性黒色腫、膵臓癌、悪性リンパ腫および食道癌からなる群から選択される。
【0086】
1つの態様によれば、炎症誘発性成熟DC 104またはPBMC 101の源(例えばドナー)以外の個体において医薬として使用するための、炎症誘発性成熟DC 104、または組成物100が提供される。
【0087】
1つの態様によれば、炎症誘発性成熟DC 104またはPBMC 101の源(例えばドナー)以外の個体における癌の処置において使用するための、炎症誘発性成熟DC 104、または組成物100が提供される。
【0088】
腫瘍内注入
上記のように、炎症誘発性成熟DC 104、または組成物100は、腫瘍成長に対する阻害効果を生成するために腫瘍内に注入されてもよい。
【0089】
これを示すために、以下の説明に従ってスウェーデン、ウプサラ(Uppsala)のVisionar Preclinical ABでラット研究を実施した。
【0090】
15匹の雌のFischerラットをこの研究で使用した。馴化(最低1週間)後、RPMI培地中に10 MAT B III細胞(もともとはラットの乳腺癌から単離された)を含む細胞懸濁液100μlを、動物の左脾腹に皮下注射した(−4日目)。4日後、第2の腫瘍を右脾腹に誘導した(0日目)。炎症誘発性成熟DC 104(上記のとおりに生成した)またはビヒクルのみ(10%(体積)ウシ胎仔血清(FCS)を含むPBSバッファー)を、第2の(右脾腹の)腫瘍を導入してから4日後(4日目)に、第1の(左脾腹の)腫瘍に注入した。炎症誘発性成熟DC 104の投与量は、動物1匹あたり20μlであり、これは10の炎症誘発性成熟DC細胞104を含んでいた。第1および第2の腫瘍の成長を、この研究全体にわたって記録した。この研究の動物実験の部は、スウェーデン、ウプサラ(Uppsala)の地域動物実験倫理委員会(regional animal experimental ethics committee)によって承認された(C320/9)。
【0091】
実験計画の概略は下記表1にある。
【表1】

表1。実験計画。それぞれ、第1の縦列は群であり、次いで、関与しているラットの数(N)、関与しているラットの固有のID、腫瘍1および2の誘導の仕様、そして最後に処置の仕様である。
【0092】
第1の、左脾腹の腫瘍での腫瘍内ワクチン接種の日(4日目)に、動物を、左の腫瘍の体積に基づいて2つの異なる群へと無作為化した。対照群および炎症誘発性成熟DC 104群の両方において、10%(体積)ウシ胎仔血清を含むPBSバッファーのビヒクルを用いて腫瘍内注入を行った。
【0093】
1日おきに、動物を腫瘍成長についてチェックした。触知できるときは、カリパスを使用して腫瘍のサイズを測定した。腫瘍の長さおよび幅を記録した。腫瘍体積を次式によって算出した:長さ(cm)×幅(cm)×幅(cm)×0.44。
【0094】
もともとの計画は、炎症誘発性成熟DC 104群からの3匹の動物を7日目に安楽死させ、すべての他の動物を15日目(第2の腫瘍の注入後11日間)に安楽死させることであった。しかしながら、7日目に、1匹の対照動物において、および炎症誘発性成熟DC 104群の7匹の動物において(それぞれ、ビヒクルまたはビヒクル+ワクチン細胞を与えた)、左の腫瘍は2cmよりも大きくなり、それゆえこれらの8匹の動物は、安楽死させた。2日後(9日目)、残りの7匹の動物の左の(第1の)腫瘍も倫理的限界を超えて成長したので、これらの動物は安楽死させた。
【0095】
これらの腫瘍を切開し、秤量し、ドライアイスの中で凍結し、後の組織病理学のために−70℃で保存した。
【0096】
病理組織学的な分析のためにMicroMorphに送った凍結した腫瘍(左および右の両方)を下記表2に示す。8μmの凍結切片を調製し、当業者にとっては周知である方法に従って、ヘマトキシリン/エオシンを用い、DC/マクロファージ(マウス抗ラットCD68)、NK細胞(マウス抗ラットCD161a)、ならびにCD8陽性細胞(CD8+ T細胞およびCD8+ DC/マクロファージ)について染色した。
【0097】
異なる腫瘍における免疫原性細胞の数を盲検的に以下のとおり採点した:いくつかの陽性細胞(1+)、中程度の数の陽性細胞(2+)または多数の陽性細胞(3+)。
【表2】

表2。病理組織学的な分析のために送った凍結腫瘍。縦列は、それぞれラットID、群および安楽死の実験日を示す。
【0098】
腫瘍体積に関する異なる群からの結果の分析を、t検定および反復測定ANOVA(HP Compac dc 7700pコンピューター上でのPASW v 18)を使用して実施した。腫瘍体積の記述統計学を下記表3および4に提示する。
【表3】

表3。異なる日(d*)における腫瘍体積(TV)。この表は、この研究全体にわたる平均腫瘍体積(mL)、標準誤差(SEM)、および動物の数(N)を示す。
【0099】
反復測定ANOVAは、6日目〜9日目に腫瘍体積を分析するために使用した。第1および第2の腫瘍は、別々に分析した。反復測定分析における欠落値の取り扱いのため、最後に測定した値は、繰り越した。
【表4】

表4。平均腫瘍体積(mL)、標準誤差(SEM)、および動物の数(N)(最後に測定した値は繰り越してある)。P<0.05 群内の6日目と比較した。#P<0.05 全体にわたって対照群の中の対応する腫瘍と比較した。‡P<0.05 対照群の中の対応する腫瘍と比較した。
【0100】
腫瘍重量の記述統計学を下記表5に提示する。
【表5】

表5。異なる安楽死の日における平均腫瘍重量(TW、g)、標準誤差(SEM)、および動物の数(N)。P<0.05 対照群の中の対応する腫瘍と比較した(t検定)。
【0101】
図10は、異なる群における異なる腫瘍の腫瘍体積(mL)を示すグラフである(COMBIG−DCは炎症誘発性成熟DC 104を表す)。動物がこの研究から除外されたとき、最後に測定した値は繰り越した。値は平均±SEMである。炎症誘発性成熟DC 104で処置したラットは、第1および第2の腫瘍の両方に関して、より小さい腫瘍体積を有するということが明確に分かる。
【0102】
第1の腫瘍は、非常に早く成長し、大きい腫瘍体積のため、すべての動物を、計画したよりも早く安楽死させる必要があった。炎症誘発性成熟DC 104群の中の9匹の動物のうちの7匹および対照群の中の6匹の動物のうちの1匹は、7日目に安楽死させる必要があり、残りの動物は9日目に安楽死させる必要があった。これらの材料に対して統計解析を実施することができるように、7日目からの最後に測定した腫瘍体積を9日目へ繰り越した。これにより、なんとか9日目の第1の(ワクチン注入した)腫瘍の不実に小さい体積を与えることができたが、第1の(左の)腫瘍の体積および重量に関する結果を分析するときに、より多くの動物が炎症誘発性成熟DC 104群から除外されたという事実が考慮されるべきである。次いで反復測定ANOVAを使用して6日目〜9日目の腫瘍体積を分析した。第1および第2の腫瘍を別々に分析した。
【0103】
7日目の炎症誘発性成熟DC 104群の第1の腫瘍のより大きい腫瘍体積は、注入した樹状細胞に対する進行中の炎症反応によって説明することができた。なぜなら、免疫組織化学により、対照群と比較して、炎症誘発性成熟DC 104群のこれらの第1の腫瘍における浸潤する炎症細胞の数の増加が明らかになったからである(下記を参照)。
【0104】
炎症誘発性成熟DC 104群の第2の腫瘍は、対照群と比較して、腫瘍体積の統計的に有意な減少を有した。さらには、対照群と比較して、炎症誘発性成熟DC 104群の9日目に除外した2つの第2の腫瘍の統計的に有意な低い重量が判明した。
【0105】
これらの腫瘍を凍結し、凍結切片を調製し、ヘマトキシリン/エオシンを用い、DC/マクロファージ(マウス抗ラットCD68)、NK細胞(マウス抗ラットCD161a)、およびCD8陽性細胞(CD8+ T細胞およびCD8+ DC/マクロファージ)について染色した。これらの腫瘍は、様々な厚さの緩く結合するカプセルによって取り囲まれた悪性の腫瘍細胞から構成されていた。結合する線維のストランドは、腫瘍細胞と相互に混ざり合っていることが判明した。壊死腫瘍細胞の領域が、すべての試料で見て取れる。結晶化した材料のプールが、第1の腫瘍(注入した)のいくつかにおいて見て取れる。これは第1の腫瘍でのみ見出されるので、これは、注入した材料の残骸である可能性が最も高い。
【0106】
この要約を下記表6に提示する。
【表6】

表6。異なる安楽死の日(実験日)における組織病理学的分析の結果。値は、DC/マクロファージ(CD68)、NK細胞(CD161a)、DC/マクロファージ(CD8a)および細胞毒性T細胞(CD8a)の数のスコアである。H/E染色を用いて、切片に対して腫瘍の形態学的な評価を行った。
【0107】
腫瘍に浸潤するCD8a、CD68およびCD161a陽性細胞は、すべての分析した試料で見出された。陽性細胞は、腫瘍を取り囲むカプセルの中および腫瘍細胞領域の中の両方に見られた。これらの結果は決定的なものではないが、炎症誘発性成熟DC 104で処置した動物は、当該検討した細胞のより高い存在を有していたという傾向があるようである。
【0108】
従って、炎症誘発性成熟DC 104の腫瘍内注入を用いた処置は腫瘍への、DC/マクロファージ、NK細胞および細胞毒性T細胞の動員の増加を誘導し、このあと第2の腫瘍の体積および重量の減少を伴うという傾向があった。
【0109】
図11は、原発性腫瘍に炎症誘発性成熟DC 104を腫瘍内注入して3日後のマクロファージ、NK細胞、細胞毒性T細胞(DC/CD8+)についての病理組織学的な結果の写真を示す。
【0110】
図12は、ビヒクルのみの腫瘍内注入による対応する対照の病理組織学的な結果の写真を示す。
【0111】
このように、炎症誘発性成熟DC 104を用いた注入の後にDC/マクロファージ、NK細胞および細胞毒性T細胞が腫瘍に動員されたが、ビヒクルのみの注入後は動員されなかったということが分かる。図13は、原発性腫瘍に炎症誘発性成熟DC 104を腫瘍内注入して5日後の、続発性腫瘍のDC/マクロファージ、NK細胞および細胞毒性T細胞についての病理組織学的な結果の写真を示す。
【0112】
図14は、ビヒクルのみの腫瘍内注入による対応する対照の病理組織学的な結果の写真を示す。
【0113】
このように、原発性腫瘍での炎症誘発性成熟DC 104を用いた注入の後にDC/マクロファージ、NK細胞および細胞毒性T細胞が続発性腫瘍(転移)にさえも動員されたが、ビヒクルのみの注入後はより低い程度にしか動員されなかったということが分かる。
【0114】
まとめると、腫瘍モデルにおけるこのワクチン研究は、炎症誘発性成熟DC 104の腫瘍内注入により、注入部位(第1の腫瘍)への、DC、NK細胞およびT細胞などの炎症細胞の際立った動員が誘導されるということを示した。このような、炎症細胞の強力な動員は、おそらく、注入後の最初の2〜3日間の観察された腫瘍体積の増加を説明する。炎症誘発性成熟DC 104の腫瘍内注入は、さらに、離れた腫瘍(右の腫瘍)の減少を誘導し、これは全身性抗腫瘍性効果を示す。
【0115】
1つの実施形態では、癌は、乳癌、前立腺癌、腎癌、腸癌、悪性神経膠腫、骨肉腫、悪性黒色腫、膵臓癌、悪性リンパ腫および食道癌からなる群から選択される。
【0116】
1つの実施形態では、上記の炎症誘発性成熟DC 104、または組成物100は、薬学的に許容できる賦形剤、例えば担体、防腐剤、アジュバントなどをさらに含む。
【0117】
1つの実施形態では、賦形剤は生理NaCl溶液中で準備された2% ヒト血清アルブミンである。
【0118】
1つの実施形態では、成熟したDC 104および末梢血単核球(PBMC)101の両方が、対象(被験者)に関して同種異系である、すなわち対象に対してMHC非適合性である、例えば完全にMHC非適合性であるドナーに由来する。
【0119】
これは、当該治療用組成物を予め製造して、使用に先立って、例えば凍結状態で保存することができるという優位点を有する。また、患者に関する当該組成物の同種異系という特性は、上で論じたように、当該組成物をより効果的にするであろう。
【0120】
1つの態様では、腫瘍を有する哺乳類患者を処置する方法が提供される。この方法は、その患者に、1回または数回、治療上有効量の炎症誘発性成熟DC 104、または組成物100を投与することを含み、炎症誘発性成熟DC 104および/またはPBMC 101が採取されるドナーは当該患者ではない。
【0121】
この投与は腫瘍内注入であってもよい。
【0122】
特許請求の範囲では、用語「を含む」は、他の要素または工程の存在を排除しない。さらには、個々に列挙されているが、複数の要素または方法工程は、例えば、1つの工程で実施されてもよい。加えて、個々の特徴が異なる請求項に含まれてもよいが、これらは、可能であれば有利に組み合わされてもよく、異なる請求項に含まれていることは、特徴の組み合わせが実行可能ではなくかつ/または有利でないということを暗に含むものではない。加えて、単数形の指示対象は、複数形を排除しない。用語「1つの」、「第1の」、「第2の」などは複数形を除外しない。請求項の中の引用符号は、明快にする例としてのみ提供され、請求項の範囲をいくらかでも限定するとは解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質ポリイノシン酸−ポリシチジル酸ナトリウム塩(ポリ−I:C)、レシキモド(R848)およびインターフェロンγ(IFN−γ)を用いた処理によってエキソビボで成熟へとすでに刺激された炎症誘発性樹状細胞(DC)。
【請求項2】
加えて、インターフェロンα(IFN−α)、インターロイキン1、β(IL−1β)および腫瘍壊死因子α(TNF−α)からなる群から選択される物質のうちの少なくとも1つですでに刺激された、請求項1に記載の炎症誘発性成熟DC。
【請求項3】
刺激を取り除いた後24時間の間に、少なくとも25 000pg IL−12/mL/10細胞、少なくとも100 000pg CXCL9/mL/10細胞、および少なくとも40 000pg CCL3/mL/10細胞を産生する、請求項1または請求項2に記載の炎症誘発性成熟DC。
【請求項4】
刺激を取り除いた後24時間の間に、少なくとも2 000pg TNF−α/mL/10細胞および少なくとも500pg IL−1β/mL/10細胞をさらに産生する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の炎症誘発性成熟DC。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の炎症誘発性成熟DCと、末梢血単核球(PBMC)とを含む組成物。
【請求項6】
超抗原をさらに含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の炎症誘発性成熟DCを製造するための方法(10)であって、
末梢血単核球(PBMC、101)を準備(11)する工程と、
前記PBMC(101)から単球(102)を単離(12)する工程と、
前記単球(102)から未熟DC(iDC、103)を生成(13)する工程と、
ポリ−I:C、R848およびIFN−γを前記iDC(103)に添加することにより前記iDC(103)の成熟を誘導(14)し、炎症誘発性成熟DC(104)を得る工程と
を含む、方法。
【請求項8】
前記iDC(103)の成熟の前記誘導(14)は、IFN−α、IL−1βおよびTNF−αからなる群から選択される物質のうちの少なくとも1つを添加することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
iDCの前記生成(13)は、単球を、IL−4およびGM−CSFを含む水系媒体の中で2〜7日間培養することにより誘導される、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
iDCの前記生成(13)は、単球をIL−4およびGM−CSFの中で5日間培養することにより誘導される、請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項5または請求項6に記載の組成物(100)を製造するための方法(20)であって、
末梢血単核球(PBMC、101)を準備(21)する工程と、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の炎症誘発性成熟DC(104)を得る(22)工程と、
前記PBMC(101)および前記炎症誘発性成熟DC(104)を混合(23)する工程と
を含む、方法。
【請求項12】
前記混合する工程の前に、
炎症誘発性成熟DC(104)を超抗原(200)で処理(22b)する工程
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
医薬として使用するための、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の炎症誘発性成熟DC、または請求項5または請求項6に記載の組成物。
【請求項14】
前記炎症誘発性成熟DCまたは前記PBMCの源以外の個体において医薬として使用するための、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の炎症誘発性成熟DC、または請求項5または請求項6に記載の組成物。
【請求項15】
癌の処置において使用するための、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の炎症誘発性成熟DC、または請求項5または請求項6に記載の組成物。
【請求項16】
前記炎症誘発性成熟DCまたは前記PBMCの源以外の個体における癌の処置において使用するための、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の炎症誘発性成熟DC、または請求項5または請求項6に記載の組成物。
【請求項17】
前記癌は、乳癌、前立腺癌、腎癌、腸癌、悪性神経膠腫、骨肉腫、悪性黒色腫、膵臓癌、悪性リンパ腫および食道癌からなる群から選択される、請求項13から請求項16のいずれか1項に記載の炎症誘発性成熟DCまたは組成物。
【請求項18】
前記使用は腫瘍内注入である、請求項13から請求項17のいずれか1項に記載の炎症誘発性成熟DCまたは組成物。
【請求項19】
腫瘍を有する哺乳類患者を処置する方法であって、前記患者に、1回または数回、治療上有効量の請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の炎症誘発性成熟DC、または請求項5または請求項6に記載の組成物を投与することを含み、前記炎症誘発性成熟DCおよび/または前記PBMCが採取されるドナーは前記患者ではない、方法。
【請求項20】
前記投与は腫瘍内注入である、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2013−519363(P2013−519363A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552394(P2012−552394)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051952
【国際公開番号】WO2011/098516
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(512208556)イミュニカム アーベー (1)
【Fターム(参考)】