説明

腸管障害及び/又は下痢用の経口組成物

【課題】複合糖質及び抗菌性タンパク質を使用した、腸疾患を予防、治療する有効な製剤の提供。抗菌物質を製剤中に添加することを含んでなる経口剤の調製方法の提供。
【解決手段】消化器官の障害、腸疾患及び関連する症状の予防又は治療に用いる経口剤。腸の病原体の制御に有用な経口剤。有益な腸内細菌フローラの成長の促進に有効な経口剤。これらにより、良好な水分補給、下痢の発症又は再発の防止、下痢の期間短縮及び/又は便量の減少、C.difficileなどの腸内病原体の制御、及び有益な腸内細菌フローラの成長の促進が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微生物体によって、又は他の給源の媒介により発症する消化器官の障害を予防及び治療するための抗菌物質の製造方法、及び経口剤の成分としてのその使用に関する。当該経口剤は、様々な腸の疾患及び症状の治療及び/又は予防、腸の病原体の制御、並びに下痢を患う患者の水分補給に使用できる。
【背景技術】
【0002】
下痢による5歳未満の児童の病的症状及び死亡率は依然として高く、発展途上国のみならず、先進国においても社会経済的に下層の国民にとっても大きな衛生上の問題となっている。下痢は、1950年代までは、5歳未満の児童の病的症状、及び死亡率の大きな原因ではなかった。世界保健機構(WHO)は、2000年には、5歳未満のほぼ150万人の児童が下痢で死亡したと報告している。
【0003】
1970年代初期において、WHO/ユニセフは、症状の原因又は年齢層にかかわりなく、下痢による脱水症状を防止又は治療するため、グルコースベースの経口水分補給溶液(ORS)(塩/ナトリウム、糖/炭水化物及び水)の単回投与を推奨していた。ORSのアプリケーションは結果的に世界で何百万もの児童の命を救った。今日、ORSは20世紀で最も重要な医学的進歩の1つであると考えられている。下痢及びそれによる脱水症状に罹患する児童の治療の基礎ともなった。下痢関連の脱水の治療の際のその使用は、1984年の15%未満から、1993年では40%にまで増加した。
【0004】
この初期のORS組成物は、コレラ患者の便中のナトリウム濃度に基づいており、脱水症状(下痢でない)の治療用に設計されていた。従って、水分状態が維持されるにもかかわらず、下痢症状の期間は変わらなかった。ゆえに、ORSの理想的な組成物と全ての種類の下痢に対するその適合性に関する論争(コレラ及び非コレラ、栄養不良と栄養良好、児童及び成人、並びに児童及び乳児)が盛んに行われていた。
【0005】
そこで多くの研究者は、安価、安全、効果、長期保存安定性などの鍵となる特徴を有し、水分補給と同様に下痢止め効果(下痢の量及び期間の減少)を有する、新規なORSの組成物の開発をこれまで行ってきた。開発の対称となった最初の領域の1つは、炭水化物(グルコース)の供給源及び形態である。多くの文化において、米及び米水が、家庭における下痢の民間医療として使用されている。炊かれた米、粉末状の米、米粉又はシロップによるグルコースの置換は、1980年の初めに最初に試験され、コレラ患者の便量及び下痢期間の減少をもたらした。その後、多くの臨床試験及びフィールド試験が、米ベースのORSと推奨されたWHOグルコースベースのORSとの比較に続いて行われ、それら全てにおいて、米ベースのORSの試験では、便量の減少、下痢期間の減少及び静脈内補液による予定外の介入の減少という結果が得られた。
【0006】
ORSのグルコースの代わりに米及び他の複合糖質を使用した臨床試験のメタアナリシスにより、グルコースと比較した複合糖質の効果を説明しうる以下の7つの因子が示唆されている:
1)基質利用性の向上、
2)グルコースポリマーによる、グルコース吸収における動力学的効果、
3)小腸によるグルコースモノマー及びポリマーの、差動的な処理、
4)低い浸透性、
5)ペプチド及びアミノ酸による、溶質との結合によるナトリウム吸収促進効果、
6)米における抗分泌成分の存在、及び
7)内腔栄養による粘膜の修復及び再生の促進。
1994年に、「joint WHO/lnternational Centre for Diarrhea Disease Research,Bangladesh(ICDDR,B) Consultative Meeting」がダッカにおいて開催され、米ベースのORSを使用した22の臨床試験の結果がレビューされた。報告において、米ベースのORSがコレラに罹患する成人及び児童では優れていたにもかかわらず、急性の非コレラ性の下痢に罹患する児童では優れ効果が見られなかった。更にそのグループは、米ベースの材料ではコストが増加するため、WHO推薦の製剤を変更することは正当ではないと結論付けた。しかしながらこのコストに関する結論に対して、より短い治療期間、より少ないORSの使用、下痢期間の短縮化は、コストに見合うものであるという反論がなされた。また、若干の発展途上国ではグルコースの供給が手軽に受けられないこともある点も指摘されている。
【0007】
米ベースのORSの改良された機能及びその浸透性の低さが明らかになると、今度は浸透性の低い新規なグルコースベースの製剤の開発に矛先が向けられた。低浸透性のORSの試験は、ナトリウム及びグルコース濃度を変化させることにより行われた。2,397人の患者を用いて15の無作為試験を行い、低浸透性の水分補給溶液の使用により、標準的なWHO製剤よりも、予定外の静脈内点滴の減少、少ない便量及び嘔吐の減少がもたらされた。2001年、経口水分補給溶液に関する専門家の協議が、ニューヨークにおいて行われ、ナトリウム及びグルコース含量の少ない低浸透性製剤と、WHO/ユニセフにより推奨される単回用のグルコースベースの製剤との比較データに関してレビューされた。その会議の後、WHO/ユニセフは、単回組成用の推薦品の低浸透性製剤への変更を提唱した。
【0008】
下痢は一時的な症状(感染症など)による場合もあり、慢性的な症状(腸疾患など)による場合もある。下痢性疾患は大きく分けて、浸透性(過剰な吸入又は吸収減弱によって、腸のルーメンに加わる浸透圧負荷が増加することによる)、炎症性若しくは粘膜性(腸の粘膜内壁の炎症による)、分泌性(更なる分泌活動が生じることによる)、運動性(腸の運動性障害によって生じる)に区分される。一般的な下痢の原因としては、以下のものが挙げられる:
【0009】
(1)細菌感染症:汚染された食品又は水を介して消費される数種類のバクテリアは下痢を生じさせる。一般的な病原体としてはクロストリジウム属、カンピロバクター属、サルモネラ属、赤痢菌及び大腸菌が挙げられる。
【0010】
(2)ウイルス感染症:多くのウイルスは下痢を生じさせ、例えばロータウイルス、ノーウォークウイルス、サイトメガロウイルス、単純疱疹ウイルス及び肝炎ウイルスが挙げられる。
【0011】
(3)食物不適合:一部の人間は、食品中の何らかの成分(例えばラクトース、乳中の糖)を消化することができない。
【0012】
(4)寄生虫:寄生虫は食品又は水を介して生体中に寄生し、消化器系に定住する。下痢を生じさせる寄生虫としては、ランブル鞭毛虫、エントアメーバ ヒストリティカ及びクリプトスポリジウムが挙げられる。
【0013】
(5)薬剤への反応(例えば抗生物質、血圧調節剤及びマグネシウムを含有する制酸剤)。
【0014】
(6)腸疾患(炎症性腸疾患(IBD)又は小児脂肪便病など)。
【0015】
(7)機能性腸障害(過敏性大腸症候群など。通常腸が十分機能しない。)。
【0016】
クロストリジウムディフィシール(C.difficile)は、院内下痢(すなわち院内感染性)の主要な原因の1つである、グラム陽性胞子形成嫌気性細菌である。この生物は最初に健常な新生児の糞便フローラにおいて同定された。この生物は最高50%の健康な乳児中に存在するが、通常の成人非入院患者ではほとんど検出されない。1970年代になり、C.difficileが、広スペクトル抗生物質の使用により生じる下痢及び大腸炎を媒介することが「再発見」された。今日、C.difficileは先進諸国の成人の入院患者下痢の大きな原因と認められている。
【0017】
市中においてC.difficileに感染する危険は非常に低いが、コロニー形成及び明白な疾患(下痢から偽膜性大腸炎)に至る危険性は、入院期間の長さ及び抗生物質の治療的使用により直接的に増加する。広スペクトル抗菌物質の使用により、腸内の通常のフローラが破壊され、C.difficileの定着が助長される。これまで、この危険性は一週間以上入院する人では20%を超えると推定されていたが、毒素A及びBを認識する新規な単クローン抗体を用いた簡易ELISAによる解析の結果、この危険性が2倍にもなりうることが明らかとなった。
【0018】
C.difficileの治療の選択肢としては、可能な場合、原因となる広スペクトル抗生物質の使用の中断と、メトロニダゾール又はバンコマイシンの投与が挙げられる。大部分の患者において、特異的な治療による効果が示されるにもかかわらず、薬剤に対する不寛容及び薬剤耐性の増加の問題が残されている。更に、5%〜30%の患者では再発及び再度の感染を経験する。
【0019】
1998年、C.difficileに関する3つの未解決の問題が確認された。第1は、高感度及び特異性の高い試験方法が存在しないことである。しかしながらこの問題は、毒素A及びBに対するより高感度及び特異的なELISA検査の開発により克服された。第2は、病院内感染の管理障壁の改良の必要である。1つの示唆される点としては、病院における抗生物質の使用パターンの管理である。更に、手洗い及び他の標準的な感染症管理プロトコルの厳守が効果的であると考えられる。第3は、疾患の再発である。抗生使用法によってもたらされる症状の治療方法が、他の抗生物質の使用であるという事実は、連続的に入院する患者の疾患の再発をもたらすと考えられる。
【0020】
IBDは、顕著な罹患率及び生活の質に対するインパクトとなる生涯性の症状である。診断される患者の20〜30%は児童である。IBDの病因は完全には解明されていないが、遺伝子的、微生物的及び免疫的な要因が重要な役割を演じることが知られている。従来の免疫調節剤(ステロイドを含む)による治療は、成長及び発達にとり顕著な負の影響を及ぼしうる。
【0021】
母乳育ちの児童では、他の感染症と同様に下痢発生率が低い。母乳は多くの抗菌性タンパク質を元々含有し、それにより下痢の減少及び健康的な共生ミクロフローラを有する消化管コロニー形成の促進という効果が発揮され、進行中の及び将来生じうる下痢症状に対する抑止力として機能しうる。in vitroデータは、乳タンパク質ラクトフェリン(LF)及びリゾチーム(LZ)が母乳による抗菌機能において重要な役割を果たすことを示唆する。LF及びLZは、広範囲のバクテリア、ウイルス、寄生虫及び菌類に対して個々に、あるいは組み合わせにより抗菌活性を示す。LFはまた免疫調節物質としての特性を有し、抗炎症性サイトカインを上方制御し、腸管の炎症誘発性サイトカインを下方制御する。
【0022】
但しかかる効果を有する、安全かつ費用効果的な生理活性乳タンパク質の良好な供給源は、現在までに存在しない。かかるタンパク質の要件としては、以下のものが挙げられる:
a.タンパク質は生理活性でなければならないこと。
b.タンパク質は費用効果的なシステムで調製、単離されなければならないこと。
c.これらの生理活性乳タンパク質の十分な供給が必要であること。
d.ヒト病原体及び/又は毒素を実質的に含まない宿主において産生すること。提供されたヒト母乳は病原体を含むため、遺伝子導入した細菌、酵母、菌類、動物及び培養細胞におけるこれらの分子の産生が望ましい。
e.製剤された状態でも生物活性が保持されうること。
f.製剤後の保存安定性を有すること。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、これらの要件を充足させるものである。
【0024】
すなわち、より有効な製剤(例えば複合糖質及び抗菌性タンパク質)を使用して、腸疾患を予防、治療することに対するニーズが存在する。更に、複合糖質又は抗菌性タンパク質の組成が、生来の免疫系における場合と同様の濃度である場合には、かかる治療により、例えば腸内微生物(例えばC.difficile)の制御などの、有益な相乗効果が得られる。かかる治療は、それ単独で行ってもよく、又は標準的な抗生物質による治療との組み合わせで行ってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の一態様は、消化器官の障害、腸疾患及び関連する症状の予防又は治療に用いる経口剤である。当該疾患・症状の例としては、下痢、コレラ、クリプトスポリジウム症、食物性疾患、胃腸炎、潰瘍、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎を含むがこれに限定されない)、サルモネラ症、腸チフス及びエイズが挙げられる。
【0026】
本発明の別の態様は、腸の病原体の制御に有用な経口剤である。当該病原体の例としては、クロストリジウム属、カンピロバクター属、サルモネラ属、赤痢菌、及び大腸菌細菌が挙げられる。
【0027】
本発明の更なる態様は、有益な腸内細菌フローラの成長の促進に有効な経口剤である。
【0028】
本発明の更なる態様は、約0.5〜約5.0g/Lの量のrhLF、及び約0.1〜約1.0g/Lの量のrhLZを含有する経口剤である。好ましくは、当該経口剤は約200〜約310mOsm/Lのオスモル濃度を有する。当該経口剤により、水分補給及び栄養補給と同時に好適な抗菌活性が付与され、腸疾患又は症状の期間短縮及び/又は重症度の低減、回復速度の増加などの主な利点が提供される。
【0029】
本発明の他の態様は、抗菌物質を製剤中に添加することを含んでなる、経口剤の調製方法の提供に関し、当該製剤は少なくとも以下のうちの1つの利点を有することを特徴とする:良好な水分補給、下痢の発症又は再発の防止、下痢の期間短縮及び/又は便量の減少、C.difficileなどの腸内病原体の制御、及び有益な腸内細菌フローラの成長の促進。
【0030】
他の新規な本発明の特徴及び効果は、以下に示す本発明の実施によって、又はそこから得られた知見を基に、当業者であれば容易に想到できるであろう。本発明は、添付の図を参照することにより詳細に示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
植物細胞が「安定に形質転換される」という用語は、植物細胞のゲノムに、非天然(異種)核酸配列が取り込まれ、2以上世代にわたり維持されていることを意味する。
【0032】
「宿主細胞」という用語は、ベクターを含有し、異種核酸配列の複製及び/又は転写及び/又は発現を支持する細胞のことを意味する。好ましくは、本発明に係る宿主細胞は植物細胞、最も好ましくは単子葉植物(例えば米又はオオムギ)の植物細胞である。他の宿主細胞を第二の宿主として使用してもよく、例えば細菌、酵母、昆虫、両生類又は哺乳動物の細胞を用いてDNAを所望の植物宿主細胞へ導入してもよい。
【0033】
「植物細胞」とは、植物の種、花粉、胎芽、胚、懸濁液培養組織、成長点の領域、葉、根、根、配偶体、胞子体及び花粉、あるいは未分化組織(例えばカルス)などの、植物に由来するいかなる細胞であってもよい。
【0034】
「成熟した植物」という用語は、完全に分化した植物のことをいう。
【0035】
「種生成物」という用語には、外皮を除去された全種子粒、穀物粉(ミリングによって非外皮を除去され、粉にされた種子)、種抽出物、好ましくはタンパク質抽出物(小麦粉のタンパク質フラクションを炭水化物フラクションから分離したもの)、モルト(麦芽エキス又はモルトシロップを含む)、及び/又はトランスジェニック穀物に由来する精製されたタンパク質フラクションなどが包含されるが、これらに限定されない。
【0036】
「生物学的活性」という用語は、タンパク質に起因する当業者に公知のあらゆる生物学的活性のことを指す。
【0037】
「単子葉植物の種子成分」とは、単子葉植物の種(通常は、成熟単子葉植物の種子)からの炭水化物、タンパク質及び脂質成分の抽出物のことを指す。
【0038】
「種子成熟」とは、受精から始まり、代謝可能な貯蔵物質(例えば糖、オリゴ糖類、澱粉、フェノール性物質、アミノ酸及びタンパク質)が、空胞の有無とは無関係に、種子(穀物)の様々な組織に(例えば内乳、外殻、糊粉層及び胚盤上皮など)が蓄積し、穀物の肥大、穀物の充填及び穀物の乾燥に至る期間のことを指す。
【0039】
「成熟特異的タンパク質プロモータ」とは、種子成熟の間、実質的に上方制御された活性(25%超)を生じさせるプロモータのことを指す。
【0040】
「異種DNA」とは、他の供給源から植物細胞に導入されたDNAを指すこともあり、又は、植物の供給源(同じ植物供給源を含む)に由来するDNAであるが、その異種DNAの発現を通常制御しないプロモータの制御下にあるDNAを指すこともある。
【0041】
「異種タンパク質」とは、異種DNAによってコードされるタンパク質のことを指す。当該タンパク質としては、限定されないが抗菌性タンパク質及びペプチド、ラクトフェリン(ラクトフェリシンで置換されてもよい)、リゾチーム、ハプトコリン、ラクタヘドリン、デフェンシン、カテリシジン及びラクトペルオキシダーゼが挙げられる。
【0042】
本発明において、細胞、ポリペプチド、核酸、性質又は表現型に関して使用する「天然型」又は「野生型」という用語は、天然において通常見られる形質のことを指す。
【0043】
本発明における「精製する」という用語は、「単離する」という用語と同義的に用いられ、通常、ある特定の成分が、それが同定若しくは産生された環境から、他の1つ以上の成分から分離されることを指す。例えば、組換えタンパク質を、それが産生された植物細胞から精製するということは、遺伝子導入されたタンパク質含有植物材料を、分離技術(例えば沈殿、遠心分離、濾過及びクロマトグラフィ)に供することを意味する。1つ以上の精製若しくは単離工程の結果物中には、他の成分が未だに含有されていることもありうるが、かかる精製若しくは単離工程の前と比較すれば、当該他の成分(混入成分)の量は減少している。
【0044】
本発明における「形質転換」又は「トランスジェニック」宿主細胞という用語は、当該宿主細胞が、天然の宿主細胞には存在しない、非天然若しくは異種の核酸配列を含有することを指す。更に、本発明における「安定的に形質添加された」という用語は、導入された核酸配列(好ましくは宿主ゲノムへの配列の組み込みに起因する(必須ではない))が、2世代以上にわたり宿主中で維持されることを指す。
【0045】
「ORS」とは、脱水症状を予防又は治療するために用いる溶液のことを指す。ORSは通常、必須ではないが、疾患又は症状により失われた体液を補充するための塩、糖、カリウム及び他のミネラル混合物を含有する。
【0046】
「経口剤成分」とは、タンパク質、ペプチド、ホルモン類、炭水化物、アミノ酸、脂質、ビタミン、有機塩及び無機塩のうちの1つ以上のことを指す。
【0047】
「経口剤活性成分」又は「経口剤成分」とは、経口剤に添加又は補充されるあらゆる抗菌物質、タンパク質及び非タンパク質(組換え及び非組換え体)を意味する。
【0048】
「経口剤補助剤」とは、経口剤へ添加するための、1つ又は2つ以上の経口剤成分の組合せ(他の成分の有無とは無関係)のことを指す。
【0049】
「抗菌物質」とは、抗菌性、抗真菌性、抗原虫性及び/又は抗ウイルス性活性を有する化学物質の群のことを指す。
【0050】
「組換えタンパク質」とは、組み換えDNA技術を使用して生産される異種タンパク質のことを指す。
【0051】
「腸疾患又は症状」には、下痢(あらゆる原因(例えば上記した個々の原因)によるもの)、クローン病、憩室症及び憩室炎、胃癌、胃炎、潰瘍性大腸炎、消化性潰瘍、腸潰瘍、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、過敏性腸疾患、過敏性大腸症候群、便秘、腸の病原体感染、慢性ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、後天性免疫不全症候群(エイズ)及び/又はその治療に関連する胃腸障害、及び痔核が包含される。
【0052】
経口溶液へのラクトフェリン及びリゾチームの添加の結果、下痢症の持続期間短縮及び腸粘膜の回復速度の向上がもたらされる。
【0053】
ラクトフェリンは、HT−29細胞(エンテロサイトなどの細胞系)のロータウイルス感染症に対してin vitro抗ウイルス効果を有することが示されている。抗ウイルス活性機構は、2つに分けられると考えられている。ラクトフェリンは直接ウイルス断片と結合し、標的細胞に対するその結合を妨げる。細胞結合処理の後、ラクトフェリンに曝露されたとき、ウイルス抗原の産生及びウイルス生成の抑制効果が生じる。この第2の機構は、特異的な細胞受容体によるラクトフェリンの取り込みを必要とする。他の重要な観察結果としては、ロータウイルスに対するウシラクトフェリンの活性が、脱シアリル化により増加したことが挙げられる。なお、米において産生される組換えヒトラクトフェリンはシアル酸を有しない。通常検出されないが、アデノウイルスは下痢と関係することもある。ラクトフェリンは、グリコサミノグリカン受容体へ結合し、細胞膜へのウイルス結合をブロックすることによって、細胞のアデノウイルス感染症を阻害できる。
【0054】
ラクトフェリンはまた、赤痢菌による毒性を能動的に打ち消すことが示されている。バングラデシュの疫学研究では、母乳育ちの乳児では、赤痢菌感染症の発病率及び重症度が低いことが証明されている。in vitro試験では、ラクトフェリンはバクテリアの表面で、浸潤抗原の放出を促し、プロテアーゼによる感受性を高めることが示唆されている。同じ研究において、浸潤抗原の損失が、鉄の飽和又はラクトフェリンのN末端カチオン性ペプチドの存在とは関係しないことが証明されている。
【0055】
ラクトフェリンの抗炎症効果及び免疫調節効果は、この「食品」が、腸の疾患又は症状(例えば軽度から中度のIBD)を有する児童及び/又は成人のための栄養的なサポートとしての良好な候補であることを物語っている。ラクトフェリンの使用により、標準的な抗菌物質による治療に対して、IBD治療の補助的手段及び/又は天然の免疫系タンパク質を使用した腸の病原体(例えばC.difficile)の制御手段を組み合わせることが可能となる。このタンパク質は上皮分泌物中に存在し、バリアに対する保護機能を助長する機能を有するものと推定される。ラクトフェリンは、トランスフェリンファミリーの鉄結合型糖タンパク質であり、粘膜のレベルにおける抗菌特性及び免疫のブースティングと関係する。ラクトフェリン及びラクトフェリンから生成するペプチド(特にペプシン)は、ビフィドバクテリウム属の増殖を刺激する。ラクトフェリンは、ラット大腸炎モデル系において、腸の炎症性サイトカイン反応を調節する能力が示されている。健常なボランティアにおいて、インドメタシンによる傷害も低減させることが示されている。
【0056】
本発明の一実施形態では、ラクトフェリン(好ましくは組換えヒトラクトフェリン)は、米穀物ベースのタンパク質発現及び精製システムにおいて産生される。そのようにして産生されるラクトフェリンは、母乳から精製される未変性タンパク質と同等の活性を有するか否かに関して、詳細に試験された。更なる実施形態では、当該ラクトフェリンは組換え手法により産生されてもよく、又はヒト、ウシ、豚及びヤギの供給源のうちの1つ以上に由来する乳から単離されてもよい。
【0057】
本発明の他の実施形態は、腸の病原体による感染の治療、制御又は予防のための、ラクトフェリンの使用の提供に関する。例えば、入院患者におけるC.difficileへの感染症の治療、制御又は予防にラクトフェリンを使用してもよい。平均的な母乳における濃度以上の天然タンパク質(1mg/mL以上のラクトフェリン)の使用により、患者(特に広スペクトル抗生物質治療を必要とする、入院患者若しくは長期療養患者)における病原コロニーの形成を制御若しくは防止できる。in vitro試験からの予備的データでは、臨床分離株が、組換えヒトラクトフェリンに対する感受性を有することを示した。病原菌(好ましくは、C.difficile)感染の治療又は予防方法においては、24時間毎に約0.5〜10g、好ましくは約2〜8g、最も好ましくは3gのラクトフェリンを、付随する抗生物質治療の有無にかかわらず、感染症の治療又は予防に十分な期間行う投与計画とする。
【0058】
関連する実施形態では、ラクトフェリンの使用により、単独の場合又はリゾチームとの組み合わせの場合であっても、健全な腸内フローラの形成及び維持を促進できる。かかる腸内細菌の例としては、乳酸桿菌属、ビフィドバクテリウム属、ラクトコッカス属、エンテロコッカス属、サッカロミセス属及びアシドフィラス属が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
リゾチームは、1,4−β−N−アセチルムラミダーゼのことを指す。それはグラム陽性バクテリアの細胞膜のペプチドグリカン中のグリコシド結合を酵素的に分解する。リゾチームはそれ単独であっても、幾つかのグラム陽性微生物を溶菌させて殺す。しかしながら、グラム陰性バクテリアの外側の膜は通常、リゾチームからそれらを保護する機能を有する。一方、ラクトフェリンはグラム陰性バクテリアの膜に結合し、変化させる。母乳及び他の粘膜分泌物中に存在するこれらの2つのタンパク質は、それら単独でも静菌活性を示すが、両者が存在する場合には、それらの相乗効果で強い殺菌効果を発揮することができる。ラクトフェリン単独でも静菌特性を示す。ラクトフェリンの1つの作用機構は、鉄の奪取によって、微生物から基本的な栄養分を奪うことである。しかしながら、ラクトフェリンはまた、殺菌効果及びリポ多糖類(LPS)結合活性を有するN末端領域を有する。コレラ菌に関する試験においては、リゾチーム単独では不活性であったが、ラクトフェリン単独では静菌効果を示し、またこれらのタンパク質を組み合わせた場合には殺菌効果を示した。同様の結果が、ネズミチフス菌及び大腸菌においても観察された。ラクトフェリン及びリゾチームは、個々に、また組み合わせにおいても大腸菌に対して効果的である。
【0060】
また、ヒト乳及びラクトフェリンの抗寄生虫活性に関する試験が行われた。両方とも、ランブル鞭毛虫栄養体に対して殺虫活性を示した。クリプトスポリジウム症の場合、母乳養育が有効な抑止力であった。これは、抗菌特性及びサイトカイン調節による抗炎症特性によるものであると考えられる。
【0061】
ラクトフェリンは、下痢の間、腸粘膜の保護という機能を発揮することができる。ラクトフェリンを経口投与した動物を用いた試験において、免疫系の調節を介した大腸炎の進行に対する保護効果が示された。これは、ラクトフェリン誘導による、抗炎症性サイトカインIL−4及びIL−10の増加、並びに炎症誘発性サイトカインIL−6、TNF−α及びIL−1βの放出抑制によりなされるものであった。この保護機構により、粘膜組織の傷害軽減及び迅速な修復がなされ、通常の透過性及び成長が確保される。ラクトフェリンはまた、マウスの腸粘膜を、細菌リポ多糖類の影響から保護する機能を有する。抗炎症及び免疫調節タンパク質としてのラクトフェリンに関する研究から、本発明の経口剤へのヒトラクトフェリンの使用は、それ単独で、又は炎症性腸疾患(例えばクローン疾患又は潰瘍性大腸炎)を治療するための周知の方法と組み合わせて投与するのが効果的であることが裏づけられている。
【0062】
ヒト母乳からのラクトフェリン及びリゾチームの精製は、経済的に好ましくない。これらのタンパク質はまた、ウシ、豚及び/又はヤギなどの供給源のうちの1つ以上に由来する乳から単離することもできる。植物(好ましくは米のような単子葉植物植物)におけるヒトラクトフェリン及びリゾチームの発現は魅力的な方法である。その理由としては、米が、乳児への使用を推奨された最初の食品の1つであることが挙げられる。更に米は栄養価が高く、低いアレルゲン性を有する。精製後の米に含まれるいかなる残留タンパク質又は炭水化物も危険性を有さず、栄養的に良好であると考えられる。ヒトラクトフェリン及びリゾチームが母乳育ちの乳児の食事の主要部分であるため、食事に対する組換えヒトラクトフェリン及びリゾチームの添加は、それらの通常の摂取をさらに増大させるものとなる。
【0063】
経口剤又はORSは0.0001%〜10重量%の抗菌性タンパク質(好ましくはラクトフェリン、リゾチーム、デフェンシン、カテリシジン及びラクトペルオキシダーゼからなる群から選択される)を含有するのが好適である。好ましくは、これらのタンパク質は経口剤又はORSの約0.001%〜1重量%の量において提供される。好ましくは、ラクトフェリン及び/又はリゾチームを利用する場合、それらは少なくともヒト母乳中に含有される量で存在する。更なる実施形態では、当該抗菌性タンパク質は組換え技術により産生してもよく、又はヒト、ウシ、ブタ及びヤギなどの供給源のうちの1つ以上に由来する乳から単離してもよい。
【0064】
抗菌性タンパク質及びペプチド(例えばラクトフェリン及びリゾチーム)の産生は、米国特許出願第10/077381号、第10/411395号、PCT/US2004/041083号及び/又はPCT/US2003/39107号の教示を基に実施することができる(それらの全開示内容を本願明細書に援用する)。このようにして調製された抗菌性タンパク質及びペプチドは、更なる精製の有無にかかわらず、経口剤に添加して利用することができる。
【0065】
単子葉植物種の抗菌性タンパク質及びペプチドを産生する好ましい方法は、以下ステップを含んでなる。
(a)単子葉植物細胞を、以下の(i)から(iii)を含んでなるキメラ遺伝子で形質転換するステップと、
(i)成熟特異的な単子葉植物における貯蔵タンパク質の遺伝子由来のプロモータ、
(ii)第1のDNA配列(前記プロモータと制御可能な状態で連結し、単子葉植物特異的なシグナル配列をコードし、単子葉植物の種内乳細胞に結合するポリペプチドを標的とすることができる)、
(iii)第2のDNA配列(前記第1のDNA配列とインフレームで連結し、抗菌性タンパク質及び/又はペプチドをコードする)(前記第1のDNA配列及び第2のDNA配列は共に、N末端シグナル配列と抗菌性タンパク質及び/又はペプチドを含む融合タンパク質をコードする)、
(b)単子葉植物細胞を、抗菌性タンパク質及び/又はペプチドを含有する種子が形成されるのに十分な期間、当該単子葉植物を栽培するステップと、
(c)当該植物から種子を収穫するステップ。
【0066】
好ましくは、抗菌性タンパク質及び/又はペプチドは種子生成物の全可溶性タンパク質に対して少なくとも3.0%、又は全重量に対して少なくとも0.1%を構成する。
【0067】
穀物種子(例えば米及びオオムギ)における組換えヒトラクトフェリンの発現により、ラクトフェリンの産生及び単離のための費用効果的な方法が実施可能となる。米において産生されるヒトラクトフェリンは、実質的に母乳由来のヒトラクトフェリンと実質的に同等であることが示されている。更に、多くの研究により、グリカンパターンの違いにより、アレルゲン性が非常に低下していることが証明されている。抗菌性、抗炎症性及び免疫調節タンパク質としてのラクトフェリンに関する研究結果に基づき、胃腸疾患に対するヒトラクトフェリンの使用という理想的な用途が提供される。本発明の栄養サポート的な生成物は、患者下痢の症状を治療し、予防し、低減させるためのそれらの使用に加えて、患者における好ましい腸内フローラの形成の促進のために投与することもできる。
【0068】
ヒトラクトフェリンを含有する経口水分補給溶液を、第2の母乳タンパク質(リゾチーム)との組合せで使用し、水便を伴う急性の下痢に罹患する児童の治療を行ってもよい。ヒトラクトフェリン及び/又はリゾチームはまた、長期療養中の老人患者の下痢を防止する際にも有益である。本発明の他の実施形態では、ヒトラクトフェリン及び/又はリゾチームを用い、旅行者及び軍隊の栄養サポート及び下痢の予防を行うことができる。更なる実施形態では、本発明の経口水分補給溶液は、ヒト、ウシ、ブタ及びヤギなどの供給源のうちの1つ以上に由来する乳から単離されたタンパク質を使用して調製してもよい。
【0069】
本発明の製剤は所望の効果を発生するために適切ないかなる方法で投与してもよく、当該効果としては、水分補給、腸疾患又は症状の治療、腸疾患又は症状の発症又は再発の予防、C.difficileなどの腸内病原体の制御、及び腸管内の共生ミクロフローラの形成促進などが挙げられる。当該製剤は溶液として調製してもよく、あるいは水、ジュース、ヨーグルトなどに添加して再調製するための乾燥形態(粉)、濃縮液形態として調製してもよく、あるいは栄養バー、カプセル、錠剤、ウェーハなどとして調製してもよい。
【実施例】
【0070】
<実施例1:組換えヒトラクトフェリンの発現>
A.トランスジェニック米におけるヒトラクトフェリン発現用ベクター:
【0071】
ヒト乳腺ラクトフェリンの全ヌクレオチド配列は、Operon Technologies(CA、米国)によってコドン最適化され、合成されている。ヒト乳ラクトフェリン遺伝子(Genbank登録番号:HSU07642)は、米種子タンパク質の翻訳において最適発現レベルを得るために、最も多用されるコドンにより再合成されている。コドン改変数が全配列の22.46%を占めるにもかかわらず、アミノ酸組成は遺伝的組換の結果を示さず、ヒトラクトフェリンと同一であった。コドン最適化された遺伝子を含有するプラスミドをLac−gerと命名した。Lac−gerをSmal/Xholにより切断し、ラクトフェリン遺伝子を含有する断片を部分的にNaeIで切断し、XhoIによって完全に切断されたpAPI141にクローニングした。米の種子におけるhLFの発現用にコドン最適化された遺伝子を、米内乳特異的なグルテリン(Gt1)プロモータ及びNOSターミネータに、制御可能に連結した。結果として生じるプラスミドをpAPI164と命名した。
【0072】
B.産生系:
米の一種である台北309(イネ、ジャポニカ)を、組換えヒトラクトフェリン(rhLF)の産生系として選択し、プラスミドpAPI164及び選択可能な標識としてハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子を含有するコンパニオン標識プラスミドを、胚から増殖させた米のカルスに対して、パーティクルガンで処理し、トランスジェニック米を作製した。この方法により、完全に育種され、生長した米が得られた。
【0073】
C.米種子における組換えヒトラクトフェリンタンパクの高レベルでの発現:
種成熟特異的なプロモータGt1の制御下で、組換えヒトラクトフェリンを発現させた。組換えヒトラクトフェリンの高レベルな発現が確認された。成熟した米の種子の抽出液に含まれる全可溶性タンパク質を、Laemliゲルで電気泳動し、クーマシーブルー染色し、タンパク質を染色した。染色ゲルに示されるように、〜80kDの組換えラクトフェリンタンパク質が、全てのトランスジェニック株において確認された。組換えヒトラクトフェリンの発現レベルは種子に対して0.5重量%であった。組換えヒトラクトフェリンの安定発現が10世代にわたり確認された。発現レベルは玄米においては5g/kg程度で維持された。
【0074】
<実施例2:組換えヒトラクトフェリンの精製>
組換えヒトラクトフェリンを補充した経口水分補給溶液の調製に際して、組換えヒトラクトフェリンを米粉から精製した。高レベルでrhLFを発現するトランスジェニック米の株(164−12)を選択した。この株(本発明ではLF164と命名)を1年で2世代経代し、夏におけるフィールド栽培と、冬におけるグリーンハウス栽培を交互に行った。タンパク質精製において、rhLFを発現する稲田米を脱穀機(Rice Mill、PS−160、Rimac、FL)を用いて外皮を除去し、ハンマーミル(8WA、Schutte−Buffalo、NY)を使用して粉末状となるまで(100メッシュの平均粒径)挽いた。
【0075】
トランスジェニック米粉からのタンパク質抽出は、2kgの米粉及び20Lの抽出緩衝液(0.02Mのリン酸ナトリウム(pH6.5)及び0.3Mの塩化ナトリウム)を50Lタンクに添加し1時間撹拌することにより実施した。混合終了後、懸濁液を一晩沈殿させ、又は3750回転/分で遠心分離した。いずれの場合においても、それぞれM−05プレート及びフレームフィルター(Ertel Alsop、8S、NY)及びM−70セルロース/パーライトベースフィルター(Ertel Alsop、NY)を使用して、上澄を濾過した。
【0076】
rhLF及び他の米粉中の可溶性タンパク質を含有する濾過液をイオン交換カラム上へロードし、更に精製した。SP−セファロース ファストフロー(Amersham Pharmacia Biotech、NJ)をパックしたINDEX200/500プロセスカラム(Amersham Pharmacia Biotech、NJ)を使用した。カラムの流速を、150〜200cm/時の線形流速とした。製造業者の説明書に従い、カラムへの充填、洗浄及び試験を行った。濾過液を175cm/時の線形流速でカラムにロードし、A280がベースラインに戻るまで、0.3MのNaCl、0.02Mのリン酸ナトリウムを含有するバッファー(pH6.5)で洗浄した。組換えhLFは、0.8MのNaClを含有する20mMのリン酸ナトリウムバッファー(pH6.5)を使用して溶出した。洗浄及び溶出はそれぞれ200cm/時及び150cm/時で実施した。
【0077】
1ft250kDaのポリエーテルスルホン(Pall Biopharmaceutical、MA)膜を有するCentramateモジュール(Pall Biopharmaceutical、MA)を用い、hLF溶出液を濃縮及び(濾過)脱塩した。濾過は、約1.5L/分のクロス流速及び10psigの平均膜内外差圧で実施した。溶出されたrhLFを最終0.25Lに濃縮し、脱塩し、凍結乾燥した。典型的には、約3gの精製組換えヒトラクトフェリンが、トランスジェニック米粉1kgから回収された。
【0078】
米粉から精製された組換えヒトラクトフェリンは、約50%の鉄飽和度(部分的ラクトフェリン)であった。50%飽和組換えヒトラクトフェリンに鉄を取り込ませ、>90%の鉄飽和にまで上昇させてホロ−ラクトフェリンとし、更に、結合する鉄を除去するために酸処理を行い、鉄飽和度を<10%としたアポ−ラクトフェリンも調製した。
【0079】
<実施例3:組換えヒトリゾチームの産生及び精製>
組換えヒトリゾチームを、Oryza sativa、Japonica、Taipei 309に由来するLZ159米変異体を用いて調製した。食品業界における通常の方法を使用して、米を脱穀し、平均100メッシュとなるまで微粉砕した。0.3MのNaClを含む0.02Mの酢酸バッファー(pH4.5)を使用して、組換えヒトリゾチームを稲田米の米粉から抽出した。1.0〜2.0時間の抽出後、固形状の米粉を遠心分離によって液相から分離した。可溶性タンパク質を含有する液相をフィルターで濾過し、濃縮した。この時点において、>10%リゾチームタンパク質を含有するタンパク質濃縮物が得られた。濃縮物をイオン交換クロマトグラフィを使用して分離し、更に精製した。濃縮物を、SPセファロースBig Bead Mediaを充填したカラムにロードし、カラムを洗浄し、結合したリゾチームを0.8M塩化ナトリウムで溶出した。分離物を限外濾過器で濾過して過剰な塩を除去し、凍結乾燥前に濃縮した。単離されたリゾチームの形態をHPLC分析により測定した結果、>80%の純度のリゾチームタンパク質であった。
【0080】
<実施例4:標準的ORSと、組換えタンパク質を含有ORSとの比較>
表1:
【0081】
【表1】

【0082】
水便を伴う急性の下痢に罹患する児童の二重盲検試験を行い、他の成分(表1に示す)と共に、ヒト母乳と同様の濃度(1mg/mLのラクトフェリン及び0.2mg/mLのリゾチーム)で組換えヒトラクトフェリン(rhLF)及び組換えヒトリゾチーム(rhLZ)を含有するORSと、標準的ORSとを比較した。ORSの小袋を煮沸し、冷却した1Lの水に溶解させた。新鮮なORSを毎日調製した。
【0083】
水の急性の下痢を有する140人の児童を用い、14日にわたり、本発明によるORS又はWHOガイドラインに従って調製した標準的ORSを投与した。投与後2日又は14日において下痢が沈静するまで処理を継続した。その結果、ラクトフェリン及びリゾチームを含んでいるORSにおいて、下痢持続期間の短縮及び下痢量の低下が、標準的ORSより顕著であることが示された(図1から図5)。
【0084】
<実施例5:組換えヒトラクトフェリンの抗菌効果>
組換えヒトリゾチームの抗菌活性を、大腸菌をモデルとして使用して測定した。培養した大腸菌K12株を培養プレートから調製した。約105のCFUの大腸菌懸濁液1mLを、1mgのrhLFと混合し、一方コントロールではラクトフェリンを含有させなかった。混合物を250回転/分で振とうし、37℃で120分間インキュベートした。次に混合物5μlを平板培養した。図6から明らかなように、rhLFを添加した培養において、コロニー形成単位が顕著に減少した。
【0085】
rhLF及び天然hLFの抗菌性効果を比較するために、同じ実験を3群によって繰り返し実施した(陰性コントロール(培地のみ)、陽性コントロール(天然hLFを有する培地)、及び処理群(rhLFを有する培地))。図7に示すように、培地中では大腸菌の顕著な増殖が見られたが、陰性コントロールでは見られなかったが、天然及び組換えhLFによる処理群では増殖が顕著に抑制され、すなわち、rhLFは陽性コントロールと同様の、培地中における大腸菌の抑制効果を有することが示された。
【0086】
<実施例6:組換えヒトリゾチームの抗菌効果>
組換えヒトリゾチームの抗菌活性を、大腸菌をモデルとして使用して測定した。培養した大腸菌K12株を培養プレートから調製した。約105のCFUの大腸菌懸濁液1mLを、20μgのrhLZと混合し、一方コントロールではリゾチームを含有させなかった。混合物を250回転/分で振とうし、37℃で120分間インキュベートした。次に混合物5μlを平板培養した。図8から明らかなように、rhLZを添加した培養において、コロニー形成単位が顕著に減少した。
【0087】
rhLZ及び天然hLZの抗菌性効果を比較するために、同じ実験を3群によって繰り返し実施した(陰性コントロール(バッファのみ)、陽性コントロール(天然hLZを有するバッファ)、及び処理群(rhLZを有するバッファ))(図9参照)。陰性コントロールでは見られなかったが、陽性コントロールでは、大腸菌コロニー形成単位の顕著な減少が見られた。すなわち、60分のインキュベーション時間においてコロニー形成単位が100に減少し、120分においてはゼロに近づいた。rhLZによる処理群では、陽性コントロールと同様の効果が見られ、rhLZ及びhLZが殺菌活性を有することが示された。
【0088】
<実施例7:ラクトフェリンによるin vitroでのC.difficileの制御>
本実施例は、C.difficileに対するラクトフェリンの活性を測定するために実施した。試験は、50の異なるC.difficileの菌株の、ラクトフェリンに対するin vitro感受性試験により行った。
【0089】
50の菌株のうちの46は、4mg/mlのラクトフェリンにより増殖が阻害された。1つの分離株に対しては、16mg/mlでも活性が示されず、他の3つの分離株では増殖せず、中間的であると考えられた。
【0090】
<実施例8:ラクトフェリンによるin vivoでのC.difficileの制御>
本実施例は、経腸栄養投与を受けている長期療養患者の腸における、抗生物質投与後のC.difficileの定着制御、及びその結果として生じる炎症反応に対する、米由来のヒトラクトフェリンの使用を試験するために実施した。
【0091】
腸内供給システムを介して栄養を摂取している患者の特異的な集団を用いて、組換えヒトラクトフェリンを試験した。この集団は、C.difficileに対するより高い感染性を有するとして報告されている。広スペクトル抗生物質治療を8週間継続した際に、処理を開始した。毒素A/Bに対する簡易ELISAによる陽性反応の存在によって、患者のC.difficileをモニターした。全ての患者は、胃造瘻術又は空腸造瘻術管によって腸内フィードを受けている。患者に対して、米由来の組換えヒトラクトフェリン/50mMのNaClを含む腸内供給液(600mlの0.3%食塩水中の5mg/mlのラクトフェリンを、試験期間の8週間にわたり、24時間ごとに投与)又はコントロールとして600mLの0.3%の食塩水のいずれかを供給した。
【0092】
コントロール集団と比較し、ラクトフェリン治療を施された患者集団ではC.difficileの量が少ないことが確認された。
【0093】
<実施例9:クローン疾患の治療へのラクトフェリンの使用>
本実施例は、クローン病に罹患する患者の栄養サポートとしての組換えヒトラクトフェリンの使用による、児童性クローン疾患の活性インデックス(PCDAI)に対する効果及び医師による総合評価を解析するために実施した。
【0094】
PCDAIは、直線的な成長データを含み、主観的に報告された症状よりも、腸炎症に関する実験パラメータに重きを置く、マルチアイテムな計測方法である。このインデックスは、児童及び若年層用に開発されて、疾患活性の様々なレベルを区別するのに用いられる。PCDAIはベースライン、4週、8週及び12週において評価される。
【0095】
米由来の組換えヒトラクトフェリンを粉末形態で準備した。治療剤及びプラセボ材をそれぞれジュース又は水で再調製した1gのパッケージとして提供した。好適な再調製量は250mLであるが、全ての1gの投与量が確実に消費される限り、患者の嗜好に応じて適宜変化させてもよい。最小限の再調製量は150mLであった。投与は1日2回が好適である。
【0096】
この試験は、(発症したばかりの)軽度から中度のクローン病に罹患する児童に対する、標準的治療に加えて組換えヒトラクトフェリンを投与することにより、標準的治療のみの場合と比較して、PCDAI及び医師総合評価により評価されるように、疾患のより速い安定化及び/又は疾患からの回復がもたらされることを示すと考えられる。
【0097】
当然ながら、前記説明は例示的なものであり、本発明の範囲内において詳細な部分における修正・変更を任意に施すことができる。
【0098】
本特許出願の全体にわたって様々な特許文献及び刊行物を引用したが、これらの特許文献及び刊行物の開示を、本発明に関連する最高水準の技術としてより完全に記載するために、全開示内容を本願明細書に援用する。
【0099】
通常この開示により利益を受ける、関連技術分野の当業者であれば、本発明の形態及び機能に対して多くの修飾、変更及び同等物への置換を行うことができる。
【0100】
本発明では、現在好ましいと考えられる実施態様を記載したが、本発明はかかる態様に限定されるものではない。反対に、本発明には様々な変更態様、及び上記の詳細な説明の範囲内に含まれる均等な態様が包含される。例えば、リコンビナント合成されたヒト乳タンパク質が本発明の好ましい実施態様を表しているにもかかわらず、本発明は、組換え合成した、又はミルクから単離したタンパク質を使用して実施してもよく、当該ミルクはヒト、牛、豚、牛及びヤギなどのうちの1つ以上の供給源に由来してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明に従って調製される経口溶液と、標準的ORSとの間における、下痢の持続期間の違いを示す。
【図2】本発明に従って調製される経口溶液と、標準的ORSとの間における、下痢量の違いを示す。
【図3】標準的ORSとの比較における、本発明により調製される経口溶液を使用して48時間後に硬い便の排泄が見られなかった患者の%を示す。
【図4】標準的ORSとの比較における、本発明により調製される経口溶液を使用して再発した患者の%を示す。
【図5】標準的ORSとの比較における、本発明により調製される経口溶液の消費される溶液量を示す。
【図6】培地中の1mg/mlのrhLFの有無における、大腸菌コロニー形成の比較を示す(rhLFで処理された培地ではコロニーの減少が示された)。
【図7】ラクトフェリンによる細菌細胞の増殖阻害を示す折れ線グラフ(波長A630による光学濃度測定による)。3つの処理群:コントロール(培地のみ)、野生型(天然のヒトラクトフェリンを含有)、組換型(組換えヒトラクトフェリンを含有)。
【図8】培地中の20μg/mlのrhLFの有無における、大腸菌コロニー形成の比較を示す(rhLFで処理された培地ではコロニーの減少が示された)。
【図9】3つの処理群(バッファのみ(白い正方形の箱を有する黒い線)、バッファ+野生型ヒトリゾチーム(赤い線)、及びバッファ+組換ヒトリゾチーム(緑の線))における、大腸菌のコロニー形成単位を示す折れ線グラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消化器官障害を生じさせる物質により曝露された患者における、消化器官障害の発症又は再発を予防又は治療する方法であって、前記患者に乳タンパク質を含有する経口剤を投与するステップを含んでなる方法。
【請求項2】
前記消化器官障害が、コレラ、下痢、クリプトスポリジウム症、食物性疾患、胃腸炎、潰瘍、炎症性腸疾患、サルモネラ症、腸チフス及びエイズからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記乳タンパク質が乳から単離されるか又は組換え技術により産生される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記乳タンパク質が、ヒト、ウシ、豚及びヤギのうちの1つ以上の供給源に由来する乳から単離される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記乳タンパク質が植物細胞において、組換え技術により産生される、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記乳タンパク質が、ラクトフェリン、リゾチーム及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、組換え技術により産生されたヒト乳タンパク質である、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記経口剤が、更にデフェンシン、カテリシジン、ラクトフェリシン及びラクトペルオキシダーゼからなる群から独立に選択される1つ以上の更なるタンパク質を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記経口剤が溶液の形態である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記経口剤が栄養バーの形態である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記経口剤が水による再調製に適する粉末形態である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記経口剤がピル、錠剤又はカプセルの形態である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記消化器官障害を生じさせる物質が、バクテリア、ウイルス、菌類及び寄生虫からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記バクテリアがクロストリジウム属、カンピロバクター属、サルモネラ属、赤痢菌及びエシェリチア属からなる群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記ウイルスがロータウイルス、ノーウォークウイルス、サイトメガロウイルス、単純疱疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス及び肝炎ウイルスからなる群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記寄生虫がランブル鞭毛虫、エントアメーバ ヒストリティカ及びクリプトスポリジウムからなる群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項16】
下痢を生じさせる物質により曝露された患者における、下痢の発症又は再発を予防又は治療する方法であって、前記患者に、組換え技術により単子葉植物の種子において産生されたヒト乳タンパク質を含有する経口剤を投与するステップを含んでなる方法。
【請求項17】
組換え技術により産生された前記ヒト乳タンパク質が、ラクトフェリン、リゾチーム及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記経口剤が、更に、デフェンシン、カテリシジン及びラクトペルオキシダーゼからなる群から独立に選択される1つ以上の更なるタンパク質を含有する、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記経口剤が溶液の形態である、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記経口剤が栄養バーの形態である、請求項16記載の方法。
【請求項21】
前記経口剤が水による再調製に適する粉末形態である、請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記下痢を生じさせる物質が、バクテリア、ウイルス、菌類及び寄生虫からなる群から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項23】
前記バクテリアがクロストリジウム属、カンピロバクター属、サルモネラ属、赤痢菌及びエシェリチア属からなる群から選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記ウイルスがロータウイルス、ノーウォークウイルス、サイトメガロウイルス、単純疱疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス及び肝炎ウイルスからなる群から選択される、請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記寄生虫がランブル鞭毛虫、エントアメーバ ヒストリティカ及びクリプトスポリジウムからなる群から選択される、請求項22記載の方法。
【請求項26】
炎症性腸疾患に罹患する患者における当該疾患の予防又は治療方法であって、前記患者に、組換え技術により単子葉植物の種子において産生されたヒト乳タンパク質を含有する経口剤を投与するステップを含んでなる方法。
【請求項27】
前記炎症性腸疾患が、クローン病及び潰瘍性大腸炎からなる群から選択される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
組換え技術により産生された前記ヒト乳タンパク質が、ラクトフェリン、リゾチーム及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記経口剤が、更に、デフェンシン、カテリシジン及びラクトペルオキシダーゼからなる群から独立に選択される1つ以上の更なるタンパク質を含有する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記経口剤が溶液の形態である、請求項26記載の方法。
【請求項31】
前記経口剤が栄養バーの形態である、請求項26記載の方法。
【請求項32】
前記経口剤が水による再調製に適する粉末形態である、請求項26記載の方法。
【請求項33】
患者の消化管における良好な腸内細菌フローラの成長を促進する方法であって、前記患者に、組換え技術により単子葉植物の種子において産生されたヒト乳タンパク質を含有する経口剤を投与するステップを含んでなる方法。
【請求項34】
組換え技術により産生された前記ヒト乳タンパク質が、ラクトフェリン、リゾチーム及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記経口剤が、更に、デフェンシン、カテリシジン及びラクトペルオキシダーゼからなる群から独立に選択される1つ以上の更なるタンパク質を含有する、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記経口剤が溶液の形態である、請求項33記載の方法。
【請求項37】
前記経口剤が栄養バーの形態である、請求項33記載の方法。
【請求項38】
前記経口剤が水による再調製に適する粉末形態である、請求項33記載の方法。
【請求項39】
約0.5〜約5.0g/Lの量の組換えヒトラクトフェリンと、約0.1〜約1.0g/Lの量の組換えヒトリゾチームを含有し、約200〜約310mOsm/Lのオスモル濃度を有する、経口水分補給溶液。
【請求項40】
前記組換えヒトラクトフェリン及び前記組換えヒトリゾチームが、単子葉植物の種子から得られる、請求項39記載の経口水分補給溶液。
【請求項41】
粉末形態の経口水分補給製剤であって、組換えヒトラクトフェリン及び組換えヒトリゾチームを含有し、水による再調製により経口水分補給溶液が得られ、当該経口水分補給溶液が、約0.5〜約5.0g/Lの量の組換えヒトラクトフェリンと、約0.1〜約1.0g/Lの量の組換えヒトリゾチームを含んでなり、経口水分補給溶液が約200〜約310mOsm/Lのオスモル濃度を有する、前記経口水分補給製剤。
【請求項42】
前記組換えヒトラクトフェリン及び前記組換えヒトリゾチームが単子葉植物の種子から得られる、請求項41記載の経口水分補給製剤。
【請求項43】
濃縮液の形態の経口水分補給製剤であって、組換えヒトラクトフェリン及び組換えヒトリゾチームを含有し、水による再調製により経口水分補給溶液が得られ、当該経口水分補給溶液が、約0.5〜約5.0g/Lの量の組換えヒトラクトフェリンと、約0.1〜約1.0g/Lの量の組換えヒトリゾチームを含んでなり、経口水分補給溶液が約200〜約310mOsm/Lのオスモル濃度を有する、前記経口水分補給製剤。
【請求項44】
前記組換えヒトラクトフェリン及び前記組換えヒトリゾチームが単子葉植物の種子から得られる、請求項43記載の経口水分補給製剤。
【請求項45】
下痢に罹患する患者における当該疾患の治療方法であって、前記患者に、請求項39、41又は43記載の経口水分補給溶液を投与するステップを含んでなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−513572(P2009−513572A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533579(P2008−533579)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/037720
【国際公開番号】WO2007/038623
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(503293525)ベントリア バイオサイエンス (5)
【Fターム(参考)】