説明

腹持ち向上食品及びペットフード

【課題】ストレス無くダイエットすることが可能であり、また、本来の風味、食感を低下させることがない、ヒト又はペットの腹持ちを向上させる腹持ち向上用飲食品及びペットフードを提供する。
【解決手段】発酵性難消化性糖質及び/又は難発酵性難消化性糖質及び/又はグアー豆タンパク質を含む飲食品あるいはペットフードを調製する。発酵性難消化性糖質としては、グアーガム分解物が好ましい。発酵性難消化性糖質としては、ポリデキストロースが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト又は動物の腹持ちを向上させる発酵性難消化性糖質を含むことを特徴とする腹持ち向上用組成物及び、この組成物を含有する飲食品及びペットフードに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、飽食の時代といわれ肥満症の増加は重大な社会問題となっている。厚生労働省の平成14年国民栄養調査結果では、自分の体型を「太っている」「少し太っている」と評価する者の割合は、昭和54年、平成10年に比べ、ほとんどの年齢層で増加している。このことより、消費者のダイエットに関する意識は高く、厚生労働省の平成14年国民栄養調査結果では、体重を減らそうとしている人の割合は、男性が37.4%であり、女性が53.7%である。特に、若年女性では、低体重(やせ)であっても約40%が体重を減らそうとしている。しかしながら、ダイエットを成功させることは、空腹感によるストレスなどのため非常に難しく、失敗するのが大多数である。そこで、腹持ちを向上させることで食事量の低減と食事の間の間隔を延長させ、摂取するカロリーの量を減少させることでストレス無くダイエットするこことが可能である。また、ペットにおける肥満も問題になっており、人と同様にダイエットする必要性が求められている。
【0003】
腹持ちを向上する方法としてはいくつか報告されている。例えば、ホエイタンパク質を含有する方法(例えば特許文献1参照)やカゼインとカラギーナンなどのゲル形成の特性を利用した方法などがある(例えば特許文献2参照)。しかしながら、これらの方法では、味、応用できる食品が限られており、また、効果の面でも必ずしも満足いくものでなかった。
【0004】
【特許文献1】特表2005−5387043号
【特許文献2】特開1998−185339号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、飲食品、ペットフードが含有する本来の風味の変化、食感を低下させることなくヒト又はペットの腹持ちを向上させる飲食品組成物、及びこの組成物を含有する飲食品及びペットフードが未だ知られていない現状から、これらの問題点を解決した腹持ち向上用飲食品及びペットフードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前項記載の目的を達成すべく鋭意検討を重ねる中で、発酵性難消化性糖質を含有した組成物を用いることにより意外なことに問題点が解決し、優れた腹持ち向上用組成物及び、この組成物を配合した食品及びペットフードを提供できることを見出した。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、ヒト又はペットの腹持ちを向上させる発酵性難消化性糖質を含むことを特徴とする腹持ち向上用組成物及び、この組成物を含有する飲食品及びペットフードを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の腹持ち向上とは、食事における満腹感向上と食後の空腹感低減のことである。つまり、満腹感の向上かつ空腹感が低減することで食事量や間食を減らすことができる。
【0009】
本発明の飲食品とは、人が食用にする品物の総称である。つまり直接料理の材料としたり、そのまま食べたり飲んだりすることができる食用の品のことである。特に限定されるものではないが、例えば、果汁飲料、炭酸飲料、コーヒー飲料、食パン、乳製品、栄養バランスバーやご飯などである。
【0010】
本発明のペットフードとは、ペットが食べる品のことである。特に限定されるものではないが、例えば、イヌ、猫、うさぎや鳥用ペットフードなどである。
【0011】
ペットフードにおける腹持ち向上とは、特に限定されるものではないが満腹感の向上かつ空腹感が低減することで食事量が低減することである。
【0012】
本発明の難消化性糖質は、胃と腸を通り抜けて大腸に到達し腸内細菌に発酵・分解を受けて短鎖脂肪酸を生成する糖質を言う。ところで、難消化性糖質の発酵・分解性は、その性質により著しく異なり、セルロースのように腸内細菌による発酵・分解が25%未満でほとんど生成しないものとグアーガムのように腸内細菌による発酵・分解が25%以上のものがある。
【0013】
本発明の発酵性難消化性糖質とは、腸内細菌による発酵・分解が25%以上である難消化性の糖質である。例えば、グアーガム、グアーガム分解物、湿熱処理でんぷん(難消化性でんぷん)、水溶性大豆食物繊維、プルラン、アラビアガム、難消化性デキストリン、ビートファイバー、タマリンドシードガム、小麦胚芽などを挙げることができる。効果と物性の面で好ましくはグアーガム分解物、グアーガム及びプルランから選ばれる1種又は2種類以上である。特に好ましくはグアーガム分解物である。
【0014】
本発明の難発酵性難消化性糖質とは、腸内細菌による発酵・分解が25%未満である難消化性の糖質である。例えば、セルロース、低分子アルギン酸ナトリウム、寒天、キサンタンガム、ジュランガム、サイリウム種皮、セルロース、ポリデキストロースなどを挙げることができる。物性の面で好ましくは、寒天、ポリデキストロースと低分子アルギン酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種類以上である。特に好ましくはポリデキストロースである。
【0015】
発酵・分解率の測定は、特に限定されないが糞中への排出量から求める方法や糞便培養法などにより求めることができる。
【0016】
本発明の発酵性難消化性糖質の摂取量は、0.5g以上であるが、好ましくは5g以上であり、さらに好ましくは8g以上であると効果の面で優れた腹持ち向上用食品及びペットフードを提供できるため一層好ましい。
【0017】
本発明の発酵性難消化性糖質と難発酵性難消化性糖質との比率は、発酵性難消化性糖質1に対して、0.01〜10が好ましく、さらに好ましくは、0.1〜1である。それ以下の難発酵性難消化性糖質含量では効果が弱く、それ以上の難発酵性難消化性糖質含量になると物性の問題が生じる。
【0018】
前記ガラクトマンナンとしては、ガラクトマンナンを主成分とするグアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、カシアガム、セスバニアガム、フェヌグリーク、グアーガム分解物などの天然粘質物が挙げられる。粘度の面から特に好ましくはグアーガム分解物である。グアーガム分解物は、前記のガラクトマンナンを加水分解し低分子化することにより得られるものである。加水分解の方法としては、酵素分解法、酸分解法など、特に限定するものではないが、分解物の分子量が揃い易い点から酵素分解法が好ましい。酵素分解法に用いられる酵素は、マンノース直鎖を加水分解する酵素であれば市販のものでも天然由来のものでも特に限定されるものではないが、アスペルギルス属菌やリゾップス属菌などに由来するβ−マンナナーゼが好ましい。
【0019】
市販品としては、サンファイバー(太陽化学社製)、ファイバロン(大日本住友製薬社製、グアファイバー(明治フードマテリアル社製)などが挙げられる。
【0020】
本発明のタンパク質は、グアー豆のタンパク質であり、それ自体に腹持ち向上効果は確認されないが、ガラクトマンナン分解物との併用により始めて腹持ち向上効果を示すものであり、有効性については、原料由来のものであっても後から添加したものであっても問題は無い。組成物中のガラクトマンナン分解物とグアー豆タンパク質との比率は、ガラクトマンナン分解物1に対して、1/1000〜1/10が好ましく、さらに好ましくは、1/500〜1/100である。それ以下のタンパク質含量では効果が無く、それ以上のタンパク質量になると味の問題が生じる。その調製方法は、特に限定されるものではないが、グアー豆を原料とし、まず水又はアルカリ分散液のpH7〜9で可溶成分を溶かしだす。不溶成分を遠心分離して除き、抽出液に酸を加えてpH4.5でタンパク質を沈殿させる。遠心分離して上澄み液と沈殿物を分ける。沈殿物に水を加えてこの操作を繰り返す。水及び通常アルカリでpH7に中和溶解した後噴霧乾燥する。グアー豆の30〜40%がグアー豆由来のタンパク質として回収されタンパク質含量90%以上である。
【0021】
発酵性難消化性糖質を含むことを特徴とする腹持ち向上食品及びペットフードの併用物質としては、特に限定されるものではないが、タンパク質、アミノ酸、ペプチド、食物繊維などが挙げられ、好ましくは、食物繊維である。
【実施例】
【0022】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれなどによって限定されるものではない。
【0023】
試験例1
試験食の調製法については、表1の配合処方により、液体食(1食100g)を調製し、それぞれ試験食とした。なお、発酵性難消化性糖質には、グアーガム分解物(太陽化学社製)を用いた。このものの発酵・分解率は、90%であった。
試験実施においては、健康な成人20名(男性10名、女性10名)を対象とした。満腹感の評価は、5段階評価にて(1;非常に空腹感有り、2;少し空腹感有り、3;空腹時有り、4;空腹感無し、5;空腹感全く無し)、液体食摂取前、直後と摂取30、60、120、180分後に行った。
また、食感、風味についても、3段階評価(1;比較品より悪い、2;比較品と同じ、3;比較品より良い)にて評価した。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
【表3】

【0027】
表2より、比較品に比べ本発明品の腹持ちが高いことが確認された。また、表3より風味と食感も比較品と同等であった。
【0028】
試験例2
試験食の調製法については、表4の配合処方により、クッキー(1食50g)を調製し、それぞれ試験食とした。なお、発酵性難消化性糖質には、グアーガム分解物(商品名:サンファイバー、太陽化学社製)を用いた。
試験実施においては、健康な成人20名(男性10名、女性10名)を対象とした。満腹感の評価は、5段階評価にて(1;非常に空腹感有り、2;少し空腹感有り、3;空腹時有り、4;空腹感無し、5;空腹感全く無し)、摂取180分後に行った。
【0029】
【表4】

【0030】
【表5】

【0031】
表5より、比較品に比べ本発明品の腹持ちが高いことが確認された。
【0032】
試験例3
試験食の調製法については、表6の配合処方により、コーヒー(1食100g)を調製し、それぞれ試験食とした。なお、発酵性難消化性糖質には、グアーガム分解物(商品名:サンファイバー、太陽化学社製)を用いた。
試験実施においては、健康な成人20名(男性10名、女性10名)を対象とした。満腹感の評価は、5段階評価にて(1;非常に空腹感有り、2;少し空腹感有り、3;空腹時有り、4;空腹感無し、5;空腹感全く無し)、摂取180分後に行った。
【0033】
【表6】

【0034】
【表7】

【0035】
表7より、比較品に比べ本発明品の腹持ちが高いことが確認された。
【0036】
試験例4
試験食の調製法については、表8の配合処方により、食パン(1食100g)を調製し、それぞれ試験食とした。なお、発酵性難消化性糖質には、グアーガム分解物(商品名:サンファイバー、太陽化学社製)を用いた。
試験実施においては、健康な成人20名(男性10名、女性10名)を対象とした。満腹感の評価は、5段階評価にて(1;非常に空腹感有り、2;少し空腹感有り、3;空腹時有り、4;空腹感無し、5;空腹感全く無し)、摂取180分後に行った。
【0037】
【表8】

【0038】
【表9】

【0039】
表9より、比較品に比べ本発明品の腹持ちが高いことが確認された。
【0040】
試験例5
試験食の調製法については、表10の配合処方により、ヨーグルト(1食100g)を調製し、それぞれ試験食とした。なお、発酵性難消化性糖質には、グアーガム分解物(商品名:サンファイバー、太陽化学社製)を用いた。
試験実施においては、健康な成人20名(男性10名、女性10名)を対象とした。満腹感の評価は、5段階評価にて(1;非常に空腹感有り、2;少し空腹感有り、3;空腹時有り、4;空腹感無し、5;空腹感全く無し)、ヨーグルト摂取前、直後と摂取30、60、120、180分後に行った。
【0041】
【表10】

【0042】
【表11】

【0043】
表11より、比較品に比べ本発明品の腹持ちが高いことが確認された。
【0044】
試験例6
試験食の調製法については、表12の配合処方により、うどん(1食100g)を調製し、それぞれ試験食とした。なお、発酵性難消化性糖質には、グアーガム分解物(商品名:サンファイバー、太陽化学社製)を用いた。
試験実施においては、健康な成人20名(男性10名、女性10名)を対象とした。満腹感の評価は、5段階評価にて(1;非常に空腹感有り、2;少し空腹感有り、3;空腹時有り、4;空腹感無し、5;空腹感全く無し)、うどん摂取前、直後と摂取30、60、120、180分後に行った。
【0045】
【表12】

【0046】
【表13】

【0047】
表13より、比較品に比べ本発明品の腹持ちが高いことが確認された。
【0048】
試験例7
実験動物は、5匹のイヌを日本クレア社より購入した。表14の配合にてイヌに与えて摂取量を測定した。なお、グアーガム分解物(商品名:サンファイバー、太陽化学社製)を用いた。
【0049】
【表14】

【0050】
【表15】

【0051】
表15より、比較品に比べ本発明品の食事量が減ることが確認された。
【0052】
試験例8
試験食の調製法については、表16の配合処方により、液体食(1食100g)を調製し、それぞれ試験食とした。なお、発酵性食物繊維にはグアーガム分解物(商品名:サンファイバー、太陽化学社製)を、難発酵性食物繊維にはポリデキストロースを用いた。
試験実施においては、健康な成人10名(男性5名、女性5名)を対象とした。満腹感の評価は、5段階評価にて(1;非常に空腹感有り、2;少し空腹感有り、3;空腹時有り、4;空腹感無し、5;空腹感全く無し)にて摂取180分後に行った。
【0053】
【表16】

【0054】
【表17】

【0055】
表17より、発酵性難消化性糖質に難発酵性難消化性糖質を併用することで腹持ち向上効果がさらに高くなることが確認された。
【0056】
試験例9
試験食の調製法については、表18の配合処方により、液体食(1食100g)を調製し、それぞれ試験食とした。なお、発酵性食物繊維には、グアーガム(太陽化学社製)、グアーガム分解物(太陽化学社製)、難消化性デンプン(日本食品化工製)、水溶性大豆食物繊維(不二製油製)、プルラン、アラビアガム(コロイドナチュラルジャパン)、ビートファイバー(日本甜菜精糖社製)を用いた。
試験実施においては、健康な成人10名(男性5名、女性5名)を対象とした。満腹感の評価は、5段階評価にて(1;非常に空腹感有り、2;少し空腹感有り、3;空腹時有り、4;空腹感無し、5;空腹感全く無し)にて摂取180分後に行った。
【0057】
【表18】

【0058】
【表19】

【0059】
表19より、発酵性難消化性糖質を摂取することで腹持ち向上効果があることが確認された。
【0060】
試験例10
試験食の調製法については、表20の配合処方により、液体食(1食100g)を調製し、それぞれ試験食とした。なお、発酵性食物繊維にはグアーガム分解物(太陽化学社製)を、グアー豆タンパク質にはグアー豆タンパク質(太陽化学社製)を用いた。
試験実施においては、健康な成人10名(男性5名、女性5名)を対象とした。満腹感の評価は、5段階評価にて(1;非常に空腹感有り、2;少し空腹感有り、3;空腹時有り、4;空腹感無し、5;空腹感全く無し)にて摂取180分後に行った。
【0061】
【表20】

【0062】
【表21】

【0063】
表21より、グアーガム分解物にグアー豆タンパク質を併用することで腹持ち向上効果が高くなることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、ヒト又は動物の腹持ちを向上させる発酵性難消化性糖質を含むことを特徴とする腹持ち向上用飲食品及びペットフードを提供できる。これにより、腹持ちを向上させることで食事量の低減と食事の間の間隔を延長させ、摂取するカロリーの量を減少させることでストレス無くダイエットするこことが可能になり、本発明は食品産業の発展に貢献するところは多大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵性難消化性糖質を含むことを特徴とする腹持ち向上用組成物
【請求項2】
さらに、難発酵性難消化性糖質を併用することを特徴とする腹持ち向上用組成物
【請求項3】
発酵性難消化性糖質がガラクトマンナン分解物であることを特徴とする請求項1又は2記載の腹持ち向上用組成物
【請求項4】
さらに、グアー豆タンパク質を含有することを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の腹持ち向上用組成物
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の腹持ち向上用組成物を含むことを特徴とする飲食品
【請求項6】
請求項1〜4いずれか記載の腹持ち向上用組成物を含むことを特徴とするペットフード

【公開番号】特開2009−72077(P2009−72077A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241927(P2007−241927)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】