説明

膀胱内における耐容性を備えた植込み型装置及び治療方法

治療を必要とする患者の膀胱内で完全に展開可能な、且つ患者に良好に耐容される膀胱内装置が提供される。この装置は、(i)膀胱内での可動性を提供し、且つ尿道を通じた医療装置の排泄を防止する寸法と、(ii)医療装置が尿管口に入り込むのを妨げる寸法、浮力、又はその双方とを有する留置形状を有する弾性本体を含み得る。弾性本体は、任意寸法において3cmの最大寸法を有する形状に圧縮されたとき1N未満の最大作用力を及ぼし得る。この装置は、膀胱又は局部組織を治療するための、膀胱内で制御放出される薬物を含み得る。治療の耐容性が第一の関心事項である場合の膀胱における治療を必要とする患者を選択する工程を含む治療方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本願は、2009年12月17日に出願された米国仮特許出願第61/287,649号、及び2010年4月19日に出願された米国仮特許出願第61/325,713号の利益を主張する。
【0002】
背景
[0002]本開示は、概して植込み型医療装置及び方法の分野であり、より詳細には膀胱内で展開可能な薬物送達装置の分野である。
【背景技術】
【0003】
[0003]全身的な薬物送達方法は望ましくない副作用が生じ得るとともに、生理学的過程による薬物の分散及び代謝が引き起こされ、最終的に所望の部位に到達する薬物の分量が低下し得る。薬物をより標的化された方法で、例えば局所的又は局部的に送達するための様々な装置及び方法が開発されており、それらは全身的な薬物送達に付随する問題の多くに対処し得る。しかしながらいくつかの組織部位への薬物の局所送達には、特に最小侵襲性の装置及び方法による患者の不快感を最小限に抑えた長期の薬物送達に関して、改良の余地がある。
【0004】
[0004]間質性膀胱炎(IC)、膀胱痛症候群(PBS)、及び慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群(CP/CPPS)は慢性的な有痛性障害であり、点滴投与によって膀胱にリドカイン溶液を送達して治療されることが多い。持続的な緩和を得るには、週3回を2週間など、反復して点滴投与することが必要であり得る。このような点滴投与頻度は、点滴投与の度に不便を強いられ、不快感が引き起こされ、及び尿道カテーテル法に関連して感染症のリスクを伴うため、望ましくないものであり得る。同様に、間欠的カテーテル法を用いて神経因性膀胱の症状を軽減する薬物を膀胱に送達し得る。しかしながら、カテーテル法はとりわけ上記の欠点を抱える。従って治療には、膀胱に植え込まれる膀胱内薬物送達装置が有益であり得る。
【0005】
[0005]改良された膀胱内薬物送達装置は他の治療法にも有益であり、特に薬物を膀胱に局所送達することが好ましい、又は必要である場合−例えば、全身的な薬物送達に付随する副作用が耐容されないとき、及び/又は経口投与によるバイオアベイラビリティが低過ぎるときに有益であり得る。
【0006】
[0006]Situs Corporationは、オキシブチニン(過活動膀胱の治療用)及びマイトマイシンC(膀胱癌の治療用)などの薬物の医薬品溶液を送達するための膀胱内薬物送達システム(UROS注入装置)を開発した。UROS注入装置及び装置の植込み方法が、米国特許第6,171,298号、同第6,183,461号、及び同第6,139,535号に開示されている。かかる装置の一つの問題は、十分な量の薬物溶液と入口/出口バルブ機構との双方を収容するために比較的大容量の装置が必要であるため、こうした装置が比較的大きいことである。
【0007】
[0007]これまでに企図された膀胱薬物送達装置が示すところによれば、患者の関心及び技術的な障害は装置の膀胱内での耐容性にある。特定の病態又は疾患については、例えば、治療せずに放置すれば死に至る可能性がある疾患又は病態(例えば癌)の場合には、耐容性は二次的な考慮事項であり得る。しかしながらそれ以外の適応については、耐容性は第一の考慮事項であり得る。残念ながら、公知の膀胱装置は、おそらくはそのサイズの大きさ又は他の機械的特性に起因して患者の耐容性が不十分であり、耐容性が第一の関心事項となる適応、特に治療プロセスが望ましくは長期間にわたる展開及び薬物放出を必要とし得る適応には不適であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008]従って、装置を患者体内で展開する間及び展開した後の不要な不快感及び痛みが回避されるよう十分に小さく、植込み及び治療期間にわたる薬物送達に必要な外科的手技又はインターベンション手技の回数を低減することができ−例えば長期間にわたり制御された送達を提供し、且つ十分に小さいペイロード容積の中に長期間に対する有効量の薬物を保持する膀胱内薬物送達装置が必要とされている。膀胱に対する適用では、この装置は望ましくは、薬物を数日間又は数週間の期間にわたって送達しなければならない場合であっても、薬物ペイロードを少なくとも実質的に放出することができるまでは膀胱に維持され、排泄されないものでなければならない。一般に、薬物を制御して膀胱に送達するには、より優れた装置が必要となる。望ましくはこの植込み型装置は、患者に対する痛み又は不快感を抑えながらも、膀胱への送達(及び必要であればそこからの除去)が容易なものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
[0009]改良された膀胱内装置及び治療方法が提供される。一態様において、治療を必要とするヒトなどの患者の膀胱内で完全に展開可能な、且つ患者に良好に耐容される医療装置が提供される。一実施形態において、この装置は、(i)膀胱内での可動性を提供し、且つ尿道を通じた医療装置の排泄を防止する寸法と、(ii)医療装置が尿管口に入り込むのを妨げる寸法、浮力、又はその双方とを有する留置形状を有する弾性本体を含む。弾性本体は、任意寸法における最大寸法が3cm、又は1.5cmである形状に圧縮されたとき、1N未満の最大作用力を及ぼし得る。留置形状にあって圧縮されていない装置は、任意の方向に10cm未満、例えば5cm未満の最大寸法を有し得る。乾燥した状態の装置は、約1.5g/mL以下、例えば約0.5g/mL〜約1.3g/mLの密度を有し得る。一実施形態において、弾性本体は、膀胱内で制御放出される薬物を格納し、又は他の形で含む。好ましい実施形態において、薬物は、弾性本体に格納された複数の圧縮錠剤の形態の製剤の一部である。
【0010】
[0010]一態様において、ヒト患者の膀胱内で完全に展開可能な、且つ患者に良好に耐容される薬物送達装置が提供される。この装置は固形薬物製剤を格納する弾性本体を含み、ここでこの装置は、装置を尿道に挿通するための展開形状と、尿道を通じた装置の排泄を防止するための留置形状との間を変形可能であり、留置形状は圧縮されていない状態にあるとき任意寸法において5cmの最大寸法を有し、及び留置形状が任意寸法において3cmの最大寸法を有する形状に圧縮されたとき、この装置は1N未満の最大作用力を及ぼす。薬物製剤はリドカイン、別の麻酔薬、又は他の薬物を含み得る。
【0011】
[0011]別の態様において、ヒト患者を治療する方法が提供され、この方法は、(i)治療の耐容性が第一の関心事項である場合の膀胱における治療を必要とする患者を選択する工程と;(ii)患者の尿道を通じて患者の膀胱内まで薬物送達装置を展開する工程と;(iii)治療期間にわたり展開された薬物送達装置から膀胱内に薬物を放出する工程とを含む。一実施形態において、患者は治療期間の少なくとも大部分において、自身の膀胱内にある展開された装置を感知することができない。選択された患者は、過活動膀胱;膀胱痛症候群;間質性膀胱炎;膀胱、前立腺、又は尿道の感染症;神経因性膀胱;前立腺炎若しくは尿道炎;又は患者に対する泌尿器手術に付随する周術期疼痛若しくは術後疼痛の治療が必要であることを指示される。
【0012】
[0012]別の態様において、患者における泌尿生殖器組織部位の治療方法が提供される。一実施形態において、この方法は、薬物送達装置を患者の膀胱内まで展開する工程と;薬物を薬物送達装置から膀胱内に所定量及び所定速度で放出する工程であって、それにより治療有効量の薬物を膀胱以外の少なくとも1つの泌尿生殖器組織部位に投与する工程とを含む。例えば、泌尿生殖器組織部位は、尿道、尿管、腎臓、陰茎、精巣、前立腺、精嚢、射精管、輸精管、腟、子宮、卵巣、ファロピウス管、又はそれらの組み合わせであり得る。この方法は、膀胱内で展開される薬物送達装置の耐容性が第一の関心事項である場合の治療を必要とする患者を選択する工程を含み得る。薬物は、リドカイン又は別の麻酔剤を含み得る。選択された患者は、患者に対する泌尿器手術に付随する周術期疼痛又は術後疼痛の治療が必要であることが指示され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は薬物送達装置の実施形態の平面図である。
【図2】図2は図1に示される薬物送達装置の平面図であり、展開器具の中にある薬物送達装置を示す。
【図3】図3は図1に示される薬物送達装置の、図1の線3−3に沿った断面図である。
【図4】図4は、膀胱三角部領域の近似形と比較した薬物送達装置の実施形態のサイズを示す図である。
【図5】図5は薬物送達装置の留置フレーム形状の例を示す。
【図6】図6は、少なくとも1つの薬物送達部分と留置フレーム部分とを有する薬物送達装置の構成例を示す。
【図7】図7は薬物送達装置の植込み方法を示す。
【図8】図8は男性患者の矢状断面図であり、展開器具を出て患者の膀胱に入る薬物送達装置を示す。
【図9】図9は薬物送達装置の実施形態の詳細な断面平面図である。
【図10】図10は薬物送達装置の別の実施形態の詳細な断面平面図である。
【図11】図11は、様々な装置についての長軸に沿った圧縮、すなわち装置にその長い方の軸に沿って圧縮力を加えたときに装置の形状をその長い方の軸に沿って変化させる傾向を有する圧縮のグラフである。
【図12】図12は、様々な装置についての短軸に沿った圧縮、すなわち装置にその短い方の軸に沿って圧縮力を加えたときに装置の形状をその短い方の軸に沿って変化させる傾向を有する圧縮を示すグラフである。
【図13】図13は、ウサギにおいてインビボで実施した試験の体内分布グラフであり、種々の試料採取位置における組織中リドカイン濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
[0026]1つ以上の薬物を長期間にわたり放出するため、患者の管腔又は体腔、例えば膀胱又は別の泌尿生殖器部位に植え込むことのできる植込み型装置が提供される。意外にも、且つ有利には、ある種の特質を備える膀胱内装置は、患者の膀胱内で完全に展開されたときに患者に良好に耐容され得ることが見出された。実際、意外なことにいくつかの実施形態では、患者にとって膀胱内の装置の存在は認識できないものであり得る。この装置は、その機能性と耐容性との双方を促進する特徴の組み合わせを有する。以下に詳述するとおりのそれらの特徴としては、とりわけ装置のサイズ及び形状が、その圧縮性及びある場合にはその密度との組み合わせで含まれ、それらにより装置の膀胱内での可動度及び装置の三角部領域又は膀胱壁との接触程度が決定される。
【0015】
[0027]一般に、装置の可動性が高いほど、その装置の耐容性は高くなると考えられる。加えて、寸法は、尿道を通じた医療装置の排泄を防止し、且つ医療装置の尿管口への侵入を防止するのに十分な大きさである。別の特徴は装置の密度であり、密度は例えば、装置が膀胱内で尿に浮くかどうかを決定し、また装置が患者の膀胱でどのように感じ取られるかにも影響する。耐容性に影響すると考えられるさらに別の特徴は、展開形状にあるときの装置の剛性、すなわちばね定数である。この装置は、好ましい実施形態において、膀胱からの医療装置の排泄を防止するのに十分なサイズ、形状、及び/又は最小ばね定数を有する。例えば装置は、排尿中の流体力学的力が装置を屈曲させたり、又は装置に低プロファイル構成をとらせて、装置が排尿中に膀胱から送り出されることを可能にしたりする効果を有するほど柔軟な(すなわち、低いばね定数などを有する)ものであってはならない。加えてこの装置は、装置が膀胱壁と接触したときに患者に不快感又は痛みを引き起こすほど硬く柔軟さを欠くものであってはならない。
【0016】
[0028]耐容性について見出された別の側面は、従って有利には、膀胱における装置の耐容性が第一の関心事項であるヒト患者集団に対してある種の治療法が好適となることである。
【0017】
[0029]植込み型装置は、身体の一部分、例えば膀胱の中に展開して留置するように設計される。装置は可撓性を有し得るため、挿入のために装置を変形させることができ、しかし植込み後は、装置は排尿の力又は他の力を受けても排泄に抵抗し得る。詳細な実施形態において、植込み型薬物送達装置には、複数の固形単位薬物、例えば錠剤又はペレットの形態である1つ以上の薬物が装填される。有利には、好ましい実施形態において薬物が装填された装置は、固形薬物を装填されるにもかかわらず、各単位薬物が隣接する単位薬物に対して動くことが許容され得るため、可撓性又は変形性を有する。
【0018】
[0030]詳細な実施形態において、薬物送達装置は小さく、例えば、尿道を通じて膀胱内まで延在する展開器具に挿通するのに十分な小ささである。かかる装置には、従来の薬物錠剤より実質的に小さい固形薬物錠剤が装填されてもよく、薬物錠剤はまた、従来の錠剤とは異なり大部分が薬物で構成され、賦形剤がほとんど又は全くなくてもよく、従って薬物錠剤は錠剤サイズに比して多量の薬物を含有する。詳細な実施形態において、薬物送達装置は、IC/PBS、神経因性膀胱、又は術後痛等の疼痛などの病態の治療のため、リドカイン又は別のコカイン類似体を膀胱に局所的に比較的長期間にわたり送達し得る。
【0019】
[0031]本装置は非外科的に植え込まれてもよく、植込み手技が終了してから時間が経った後に薬物を送達してもよい。例えば装置は、身体の天然の管腔、例えば尿道に位置決めされた展開器具、例えばカテーテル又は膀胱鏡を通って体腔内、例えば膀胱内まで展開されてもよい。
【0020】
[0032]薬物送達装置は、薬物を体内の1つ以上の泌尿生殖器部位に局所的及び/又は局部的に送達し得る。装置は全体が膀胱に植え込まれることで、薬物を膀胱に局所的に、及び隣接部位に局部的に送達し得る。従って、ある泌尿生殖器部位への薬物送達が、別の泌尿生殖器部位に植え込まれた薬物送達装置を使用して実現され得る。
【0021】
[0033]この装置が膀胱に植え込まれるとき、頻回に行わなければならない点滴投与による送達;植込み後に補充しなければならない従来の装置による送達;細菌の膀胱内への移動経路をもたらすカテーテルによる送達、並びに副作用の関連リスク及び標的部位への薬物送達の減少を伴う全身送達などの、従来の治療の多くの欠点は解消される。むしろ逆に、本装置は一回の植込みでよく、外科手術又は頻繁なインターベンションなしに薬物を長期間にわたり放出することができるため、感染症及び副作用の可能性が低減され、膀胱に局所的又は局部的に送達される薬物量が増加し、及び治療過程における患者のクオリティ・オブ・ライフが向上する。その後、装置は取り出され得る。或いは侵襲的な回収手技を回避し得るように、装置は部分的又は実質的に生体侵食性であってもよい。
【0022】
[0034]本明細書に開示される装置及び方法は、男性か女性か、成人か子供かを問わずヒトにおける使用、又は獣医学用途若しくは畜産用途などの動物における使用に適合し得る。
【0023】
[0035]本明細書に開示される装置及び方法は、以下の米国特許出願に記載されるものを基礎とする:2006年8月11日に出願された米国特許出願第11/463,956号;2008年12月11日に出願された米国特許出願第12/333,182号;2009年8月10日に出願された米国特許出願第12/538,580号;2010年6月28日に出願された米国特許出願第12/825,215号;2010年6月28日に出願された米国特許出願第12/825,238号;2010年8月5日に出願された米国特許出願第12/851,494号;2010年8月27日に出願された米国特許出願第12/870,261号;2010年9月9日に出願された米国特許出願公開第2010/48266号;2010年9月10日に出願された米国特許出願第12/879,638号;2010年12月8日に出願された米国特許出願第12/963,621号;2010年3月5日に出願された米国仮特許出願第61/311,103号;2010年8月5日に出願された米国仮特許出願第61/370,902号;2010年8月5日に出願された米国仮特許出願第61/371,139号;2010年10月6日に出願された米国仮特許出願第61/390,495号;2010年10月6日に出願された米国仮特許出願第61/390,549号;及び2010年10月21日に出願された米国仮特許出願第61/405,379号。
【0024】
I.植込み型薬物送達装置
[0036]図1に薬物送達装置100の実施形態を示す。装置100は薬物リザーバ部分102と留置フレーム部分104とを含む。図1では、装置100は体内への留置に好適な比較的拡張した形状で示され、図2では、装置100は膀胱鏡又は他のカテーテルなどの展開器具のチャンネル200を通じて展開するための比較的低プロファイルの形状で示される。体内に展開後、装置100は比較的拡張した形状をとり、薬物送達装置を体腔又は管腔に維持し得る。
【0025】
[0037]本開示の目的上、「比較的拡張した形状」、「比較的高プロファイルの形状」、又は「留置形状」などの用語は、概して、限定はされないが装置を膀胱に留置するのに適した図1に示されるプレッツェル形状を含め、目的とする植込み位置への装置の留置に適した任意の形状を指す。同様に、「比較的低プロファイルの形状」又は「展開形状」などの用語は、概して、尿道などの体管腔に配置されたカテーテル、膀胱鏡、又は他の展開器具のワーキングチャンネルを介して装置を展開するのに適した図2に示される直線状の、又は細長い形状を含め、薬物送達装置を体内に展開するのに適した任意の形状を指す。実施形態において薬物送達装置は自然には比較的拡張した形状をとってもよく、及び体内に挿入するため手動で、或いは外部機器を用いて比較的低プロファイルの形状に変形されてもよい。展開後、装置は自発的に又は自然に初めの比較的拡張した形状を回復し、体内に留置され得る。
【0026】
[0038]例示される実施形態では、薬物送達装置100の薬物リザーバ部分102と留置フレーム部分104とは長手方向に整列し、互いにそれらの長さに沿って結合されているが、他の構成も可能である。例えば、薬物リザーバ部分102が不連続な点で留置フレーム部分104に取り付けられ、しかしその他の点では留置フレーム部分104と分離又は離間していてもよい。
【0027】
[0039]特に、薬物送達装置100は、薬物リザーバルーメン108と留置フレームルーメン110とを画成する弾性又は可撓性の装置本体106を含む。薬物リザーバルーメン108は薬物製剤、例えば複数の固形薬物錠剤112を格納するように設計され、それにより薬物リザーバ部分102を形成する。留置フレームルーメン110は留置フレーム114を格納するように設計され、それにより留置フレーム部分104を形成する。例示されるルーメン108、110は互いに別個のものであるが、他の構成が可能である。
【0028】
[0040]図3の断面図に示されるとおり、装置本体106は、薬物リザーバルーメン108を画成するチューブ又は壁122と、留置フレームルーメン110を画成するチューブ又は壁124とを含む。チューブ122、124及びルーメン108、110は実質的にシリンダ状であってよく、薬物リザーバルーメン108は留置フレームルーメン110と比べて比較的大きい直径を有するが、しかしながら、例えば送達する薬物の量、留置フレームの直径、及び展開器具の内径などの展開上の考慮事項に基づき他の構成が選択されてもよい。装置本体106は成形又は押出しなどにより一体形成されてもよいが、チューブ122、124を別個に作製して組み立てることも可能である。留置フレームルーメン110を画成する壁124は、薬物リザーバルーメン108を画成する壁122の全長に沿って延在してもよく、従って留置フレームルーメン110は図示されるとおり薬物リザーバルーメン108と同じ長さを有するが、他の実施形態では一方の壁が他方の壁より短くてもよい。さらに、例示される実施形態では2つの壁122、124は装置の全長に沿って取り付けられているが、断続的な取付けを用いてもよい。一例において、薬物リザーバルーメン108の壁122は約1.5mmの内径及び約1.9mmの外径を有し、一方、留置フレームルーメン110の壁124は、約0.5mmの内径及び約0.9mmの外径を有する。装置106の本体全体の断面積は約0.035cm以下であってもよい。
【0029】
[0041]薬物リザーバルーメン108を画成する壁124を貫通して開口部118が形成されてもよい。開口部118は、以下にさらに記載するとおり、薬物リザーバルーメン108から薬物を放出するための通路を提供し得る。しかしながら、実施形態によっては開口部118は省略され得る。
【0030】
[0042]図1に示すとおり、薬物リザーバルーメン108には複数の単位薬物112が順次一列に並べて装填される。例えば、約10〜約100個の単位薬物112、例えば約30〜約70個の単位薬物112、又はより詳細には約50〜60個の単位薬物112が装填されてもよい。しかしながら、任意の数の単位薬物を用いることができる。薬物リザーバルーメン108は入口130と出口132とを含み、これらは薬物リザーバルーメン108の両端にある比較的円形の開放部として図示される。入口130は、装置の装填及び組立て中に、加圧ガス流によるなどして薬物リザーバルーメン108内に置かれる単位薬物112の入る手段を提供し、加圧ガス流による場合、それが薬物リザーバルーメン108から抜け出るための出る手段を出口132が提供する。単位薬物112が装填されると、少なくとも2つの端部プラグ120が入口130及び出口132を閉塞する。端部プラグ120は入口130及び出口132に挿入されるシリンダ状のプラグであってもよく、各々が薬物リザーバルーメン108の内径より僅かに大きい外径を有し、従ってプラグは入口130及び出口132を実質的に密封し、緊密に嵌まって適所に維持される。ある場合には、入口130又は出口132に複数の端部プラグ120を配置することができる。端部プラグ120はシリコーンプラグであってもよい。端部プラグ120はまた省略されてもよく、その場合入口130及び出口132は、接着剤などの、加工可能な形態で薬物リザーバルーメン108に置いてそこで硬化させる材料で閉鎖されてもよい。
【0031】
[0043]いくつかの実施形態において、薬物錠剤112が薬物リザーバルーメン108の全てを充填しなくてもよい。かかる実施形態では、薬物リザーバルーメン108の残りの部分の充填に充填材料が使用され得る。例えば、薬物錠剤112が薬物リザーバルーメン108の中心部分に装填されてもよく、充填材料が薬物リザーバルーメン108の残りの端部分に装填されてもよい。充填材料は、ルーメンに薬物錠剤112が充填された後に、薬物リザーバルーメン108の端部分に挿入されてもよい。充填材料はポリマー材料であってもよい。ポリマー材料は加工可能な形態で薬物リザーバルーメン108内に置かれてもよく、そこで硬化させてもよい。好適なポリマー材料は、室温で、又は熱などの外的刺激に応答して硬化し得る。ある場合には、充填材料が入口130及び出口132を密封してもよく、その場合、端部プラグ120は提供されても、又は提供されなくてもよい。充填材料はまた、薬物リザーバルーメン108の端部分に挿入された複数の端部プラグ120であってもよい。
【0032】
[0044]単位薬物112が装填されると、隣接する単位薬物112の間に間隙116又は切れ間が形成され得る。間隙又は切れ間116は、保管及び展開中に個々の単位薬物112をその固形剤形に維持することを可能としながらも装置100の変形又は動きに適応する緩衝として働き得る。このように、薬物送達装置100は、固形薬物が装填されるにもかかわらず、各単位薬物112が隣接する単位薬物112に対して動くことが可能であり得るため、比較的可撓性又は変形性が高くなり得る。単位薬物112は、装置の薬物リザーバルーメン108の長さに沿って同じ組成を有してもよく、又は組成が異なってもよく、及びある場合には異なる組成の単位薬物112が、薬物リザーバルーメン108の長さに沿って軸方向或いは半径方向に分離された個別のリザーバ内にあってもよい。
【0033】
[0045]留置フレームルーメン110には留置フレーム114が装填され、留置フレーム114は弾性ワイヤであり得る。留置フレーム110は、留置形状、例えば例示される「プレッツェル」形状又は別のコイル状に巻かれた形状を自発的に回復するように構成され得る。詳細には、留置フレーム114は装置100を体内、例えば膀胱内に維持し得る。例えば、留置フレーム114の弾性限界及び弾性率は、装置100を比較的低プロファイルの形状で体内に導入することができ、体内に置かれると装置100が比較的拡張した形状に戻ることを可能にし、及び装置が排尿筋の収縮及び排尿に伴う流体力学的力などの予想される力を受けて体内で比較的低プロファイルの形状をとることを妨げるものであってよい。従って、装置100は一度植え込まれると体内に維持され、偶発的に排出されることが抑制又は防止され得る。
【0034】
[0046]装置本体106の形成に使用される材料は、装置100が展開形状と留置形状との間で動くことを可能にする弾性又は可撓性を有してもよい。装置が留置形状にあるとき、留置フレーム部分104は図示されるとおり薬物リザーバ部分102の内側に位置する傾向を有し得るが、他の場合には留置フレーム部分104は薬物リザーバ部分102の内側、外側、上側、又は下側に配置されてもよい。可撓性材料によりまた、以下に記載するとおり装置本体106が薬物装填中に薬物リザーバルーメン108を通る加圧ガス流を受けて外側に撓曲し、又は周方向に拡張することも可能となる。装置本体106の形成に使用される材料はまた、透水性又は多孔質であってもよく、従って装置の植込み後、可溶化流体が薬物リザーバ部分102に浸入して単位薬物112を可溶化することができる。例えば、シリコーン又は別の生体適合性エラストマー材料が使用されてもよい。
【0035】
[0047]薬物送達装置100が膀胱に植え込まれるように設計される一実施形態において、薬物送達装置100は経膀胱鏡的に尿道から膀胱に挿入(及び任意選択によりそこから回収)されるように設計される。従って装置は、カテーテル又は膀胱鏡などの展開器具の細い管路中に適合するサイズ及び形状とされ得る。典型的には、成人ヒト用の膀胱鏡は約5mmの外径を有し、ワーキングチャンネルが約2.4mm〜約2.6mmの内径を有する。実施形態において、内径がより大きい、例えば内径が4mm以上であるワーキングチャンネルを有する膀胱鏡。従って、装置はサイズが比較的小さいものであってよい。例えば、装置を弾性変形させて比較的低プロファイルの形状にするとき、成人患者用装置は全外径が約2.6mm未満、例えば約2.0mm〜約2.4mmであり得る。小児患者用には装置の寸法はさらに小さく、例えば、例として成人患者と小児患者との解剖学的サイズの差及び/又は薬物投薬量の差に基づき比例するものと予想される。挿入を可能にすることに加え、比較的小さいサイズの装置はまた、患者の不快感及び膀胱に対する外傷も低減することができる。
【0036】
[0048]装置が患者にとって耐容可能であるよう確実にすることは、装置の全体的な構成によって促進される。本装置は患者にとって耐容可能であってもなお認識可能であり得ることに留意しなければならない。好ましい実施形態では、装置は耐容可能であるとともに認識不可能であるが、他の実施形態では、装置は耐容可能であるものの認識可能である。それでもなお認識可能な装置は、その装置が適切に構成された場合には、患者にとって耐容可能であり得る。例えば装置は、膀胱壁と接触する可能性が低下するように、且つ実際に接触が起こったときに装置が膀胱壁に及ぼす圧力が低減されるように構成され得る。膀胱壁の接触は膀胱刺激作用を引き起こすことがあり、この刺激作用は患者によっては不快感を覚え、及びIC/PBSに罹患している患者などの敏感な患者にとっては耐え難いものであり得る。従って認識可能性及び耐容性は、患者の解剖学的構造並びに痛み及び不快感の知覚の差に依存し得る。しかしながら、装置の全体的な構成により、ほとんどの患者に対して耐容性が確保され得る。
【0037】
[0049]耐容性を促進するため、装置のサイズは、多くの膀胱充満レベル下にある膀胱より小さくてもよい。ヒト膀胱のサイズは、膀胱が充満しているか、又は空かによって変化する。例えば、典型的な膀胱は充満時に約500mLを保持し、空のとき約0〜30mL、例えば約15mLを保持し得る。膀胱は充満時はおおよそ球形であり、空又はほぼ空のときは形状が様々で、多くの場合に空のときはほぼ楕円形をとる。典型的な充満状態の膀胱は約10cm〜約13cmの直径を有し得る一方、空の膀胱は約3×4×2cmの寸法を有し得るが、空の膀胱の寸法は任意の方向に約2cmほども変わり得る。例えば、空の膀胱は約5×5×1cmの寸法を有し得る。典型的な空の膀胱は少なくとも1つの方向に約3cmの寸法を有し得ることから、本開示の目的上、空の膀胱の直径は約3cmと近似する。
【0038】
[0050]膀胱の充満はまた、そこでの膀胱内圧にも影響する。膀胱圧は膀胱壁の神経により感知され、それにより膀胱充満感及び尿意が適切に生じる。典型的には膀胱に約100〜200mLの尿が入っているとき、膀胱内の圧力は約8〜15cm HO(約0.79〜1.47kPa)である。このような圧力では初発膀胱充満感は起こるが、膀胱壁の神経はより低い圧力を仲介するため、膀胱充満感は生じない。膀胱が充満すると、明確な膀胱充満感及び尿意切迫が生じ得る。充満状態の膀胱は約40〜100cm HO(約3.92kPa〜9.8kPa)の膀胱内圧に対応し得る。
【0039】
[0051]より詳細には、尿意切迫感は膀胱三角部領域内で生じる。この領域は、膀胱において膀胱頸部と尿管口との間に画定される範囲である。三角部は、膀胱頸部に相当する上側の頂点と尿管口に相当する2つの下側の頂点とを有する三角形として近似することができる。図4は、成人ヒト男性の三角部を近似する例示的な三角形を示す。ヒト男性では、膀胱頸部から一方の尿管口までの距離は約2.75cmであり、2つの尿管口間の距離は約3.27cmである。従って、図4では、上側の頂点から一方の下側の頂点までの距離は約2.8cmであり、一方、2つの下側の頂点間の距離は3.3cmである。三角部領域のサイズは動物によって異なり得る。例えば成人女性では、2つの尿管口間の距離は約2.68cmであり、膀胱頸部から一方の尿管口までの距離は約2.27cmである。小さい動物ほどより小さい三角部領域を有し得る。
【0040】
[0052]これらの膀胱の特徴を考慮して、本装置は膀胱内で耐容可能であるように構成される。特に本装置は、装置が留置形状にあるとき、装置が多くの膀胱充満状態における膀胱より小さくなるサイズである。多くの膀胱充満状態における膀胱より小さい装置は膀胱壁との接触が低減され、膀胱壁の刺激作用、及び膀胱充満として感知され得る接触圧を低減し得る。しかしながら本装置が留置形状にあるとき、装置の全体的なサイズ及び形状は、装置を膀胱三角部領域の近似三角形に重ねたときに装置がその近似三角形より大きくなるように選択されるものであり得る。かかるサイズ設定により、敏感であり得る三角部領域内に装置が留まる能力が抑制される。またかかるサイズ設定により、装置の一部分が膀胱頸部及び尿管口の中に侵入したり、又は嵌まり込んだりする可能性も抑制される。
【0041】
[0053]いくつかの実施形態において、留置形状にある装置はあらゆる方向に3cm未満の寸法を有してもよく、従って膀胱が空のとき、この装置は必ずしも膀胱壁に接触しなくても膀胱内に収まる。他の実施形態において、留置形状にある装置は3cmより大きい少なくとも1つの寸法を有してもよく、従ってより大きい薬物ペイロードを送達することができる。かかる実施形態では、膀胱壁が装置に対し、装置を空の膀胱内に収めるよう装置を少なくとも1つの方向に圧縮する圧力を及ぼし得るとともに、圧縮された装置は膀胱壁に対して戻り圧力を及ぼし得る。この戻り圧力は尿意切迫感又は膀胱充満感に関連する圧力を超えないものであってよく、そのため本装置は依然として耐容可能である。従って装置のサイズ及び形状は、装置の圧縮時に装置が膀胱壁に対して約9.8kPa未満の圧力を及ぼすように選択され得る。いくつかの実施形態では、装置のサイズ及び形状は、装置の圧縮時に装置が膀胱壁に対して約3.92kPa未満の圧力を及ぼすように選択され得る。詳細な実施形態では、装置のサイズ及び形状は、装置の圧縮時に装置が膀胱壁に対して約1.47kPa未満の圧力、及び0.79kPa未満であってもよい圧力を及ぼすように選択され得る。これらの圧力は、装置の全体的なサイズ及びその表面積の広さを変えることにより実現することができる。例えば、装置の表面積を増加させると、接触時に膀胱壁に及ぶ圧力を低下させることができ、しかしながら装置の全体的な断面積を、尿道を通じて展開可能なサイズを上回って増加させることはなくてもよい。
【0042】
[0054]膀胱が装置に与え得る圧縮力であって、次に装置が膀胱を9.8kPa、より詳細には1.47kPaの外側限界を超える圧力に曝露することのない圧縮力を近似することが可能である。例えば、球形の膀胱に配置された球形の装置が、膀胱壁とそのほぼ赤道面で接触している。かかる装置は、膀胱が装置を合計約7Nの圧縮力で圧縮するとき、膀胱壁に対して約9.8kPaの圧力を及ぼすものとして近似することができる。同様にかかる装置は、膀胱が装置を合計約1Nの圧縮力で圧縮するとき、膀胱壁に対して約1.47kPaの圧力を及ぼすものとして近似することができる。当然ながら、より小さい表面積を有する他の装置は、より小さい圧縮荷重の吸収で膀胱に対して同等の圧力を及ぼし得る。
【0043】
[0055]このように、留置形状の装置によって占有される三次元空間の範囲内で、任意の方向における装置の最大寸法は、充満時の膀胱の近似直径である10cmより小さい。いくつかの実施形態において、任意の方向における装置の最大寸法は約9cm未満、例えば、約8cm、7cm、6cm、5cm、4.5cm、4cm、3.5cm、3cm、2.5又はそれ以下であってもよい。詳細な実施形態において、任意の方向における装置の最大寸法は約7cm未満、例えば、約6cm、5cm、4.5cm、4cm、3.5cm、3cm、2.5cm又はそれ以下である。好ましい実施形態において、任意の方向における装置の最大寸法は約6cm未満、例えば、約5cm、4.5cm、4cm、3.5cm、3cm、2.5cm又はそれ以下である。
【0044】
[0056]より詳細には、装置によって占有される三次元空間は3つの垂直な方向により画定される。装置はそれらの3つの方向のうちの1つに沿ってその最大寸法を有し、及び装置は他の2つの方向に沿ってより小さい寸法を有し得る。例えば、他の2つの方向におけるより小さい寸法は約4cm未満、例えば、約3.5cm、3cm又はそれ以下であってもよい。好ましい実施形態において、装置はそれらの方向のうちの少なくとも1つにおいて3cm未満の寸法を有する。
【0045】
[0057]いくつかの実施形態において、本装置は3つの方向のうちの少なくとも2つにおいて、及びある場合には3つの方向の各々において異なる寸法を有してもよく、従って装置は形状が不均一である。この不均一な形状により、同様に形状が不均一な空の膀胱において装置が圧縮の低減した向きを実現することが可能となり得る。換言すれば、空の膀胱にある装置について、装置が膀胱壁に及ぼす接触圧がより小さく、そのため患者にとっての装置の耐容可能性がより高い特定の配置があり得る。
【0046】
[0058]装置の全体的な形状により、装置が膀胱内でその配置を変えて膀胱壁とのその係合又は接触を低減することが可能となり得る。例えば、装置の全体的な外形は湾曲していてもよく、装置の外表面又は露出した表面の全て又は大部分が実質的に丸みを帯びたものであってもよい。装置はまた、実質的に鋭い縁部がないものであってよく、及び外表面が膀胱壁との摩擦係合の低下を受ける材料で形成されてもよい。かかる構成により、装置が空の膀胱内でその位置を変え、装置により膀胱壁に加わる接触圧が小さくなるようにすることが可能となる。換言すれば、装置は膀胱壁に対して摺動又は転動してより低いエネルギー位置、すなわち装置の被る圧縮がより小さい位置をとる。
【0047】
[0059]これらの特徴をほぼ満足する装置の例を図1に示し、及びこれらの特徴を満足する具体的な装置構成の例を、以下に実施例1及び実施例3を参照して記載する。詳細には、例示される装置は、装置が三次元空間を占有するにもかかわらず略平坦な形状である。かかる装置は、それに関して装置が実質的に対称となる短径軸と、短径軸と実質的に垂直な長径軸とを画定し得る。装置は長径軸の方向に約6cmを超えない最大寸法、詳細な実施形態では5cm未満、例えば、約4.5cm、約4cm、約3.5cm、約3cm、又はそれ以下である最大寸法を有し得る。装置は短径軸の方向に約4.5cmを超えない最大寸法、詳細な実施形態では4cm未満、例えば、約3.5cm、約3cm、又はそれ以下である最大寸法を有し得る。装置は長径断面平面及び短径断面平面の双方で、実質的にその全外周に関して湾曲している。換言すれば、装置の全体的な外形は湾曲しており、装置の断面形状は丸みを帯びている。従って装置には実質的に縁部がなく、例外的に2つの平坦な端部に縁部があるが、それらは装置が平面に位置するとき装置の内側の範囲内に完全に保護される。これらの特徴により、装置は空の膀胱内にあるときその配置を圧縮が低下した位置に変えることが可能となる。
【0048】
[0060]かかる装置は、圧縮試験に供したとき特定の挙動を呈し得る。この圧縮試験では、装置が2つのプラテン間に圧縮され、2つのプラテン間の距離の関数として圧縮荷重が取られる。プラテン間の距離は圧縮荷重の方向における装置の寸法に対応する。かかる圧縮試験の例を、以下に実施例8に関連して記載し、この例は、以下の実施例1及び実施例3に記載する装置が約1N以下の作用力で約3cmの寸法に圧縮され得ることを示す。このような装置は、以下に実施例4、5、6、及び7を参照して記載するとおり、膀胱内で耐容可能であることが分かった。従って装置は、約1N以下の作用力で任意の方向に約3cmの最大寸法に圧縮可能な場合に耐容可能であり得る。場合によっては装置は、約0.5N、約0.2N、約0.1N、約0.01N、又はそれより小さい作用力で任意の方向に約3cmの最大寸法に装置を圧縮することができる場合に耐容可能であり得る。その場合、装置が膀胱に及ぼす圧力は、尿意切迫又は膀胱充満感をもたらす範囲を下回り得ると考えられる。例として、以下に実施例1に関連して記載する装置は、3cmの最大寸法に圧縮されるとき膀胱壁に対して約770Paの圧力を及ぼすと計算された。この圧力は、充満感が最初に現れる圧力を下回るものであり得る。同様に、以下に実施例3に関連して記載する装置は、3cmの最大距離に圧縮されるとき膀胱壁に対して約2.7kPaの圧力を及ぼすと計算された。この圧力は、患者にとって快適に認識可能であり得る。
【0049】
[0061]本装置はまた、留置形状において膀胱内での可動性を許容するのに十分に小さいものであり得る。特に展開されたときの装置は、膀胱内を動くのに十分に小さい、例えば多くの膀胱充満状態における膀胱全体にわたり自在に、又は妨げなく動くのに十分に小さいものであってよく、装置の患者耐容性が促進される。装置の自在な動きはまた、放出口の近傍にある特定の膀胱位置とは対照的に、膀胱全体にわたる均一な薬物送達も促進する。しかしながら他の場合には膀胱内において自在に動く装置も、膀胱が完全に空のときには自在な動きが妨げられ得るが、しかし装置は、上記に記載したとおり十分に圧縮可能である場合には、なお耐容可能であり得る。
【0050】
[0062]本装置はまた、浮くことを促進するように選択される密度も有する。装置は乾燥した未装填の状態、すなわち装置に薬物が装填されておらず、装置の壁又はルーメンに流体が存在しない状態で最小密度を有する。以下の実施例2は、かかる未装填の構成、すなわちプラセボ構成の装置について記載する。装置に薬物が装填されると装置の密度は増加する。以下の実施例1及び実施例3は、かかる装填済みの構成、すなわち動作時の構成の装置について記載する。装置の密度はまた、装置が湿潤した状態にあるとき、すなわち装置の壁及びルーメンに流体が存在するときも増加する。装置は膀胱に植え込まれると、装置が尿に取り囲まれるようになるため湿潤した状態になる。使用時、装置には最大薬物ペイロードが負荷され、液体が壁及びルーメンに存在する全ての空気に取って代わると、装置は植込み後の最大密度を有し得る。続いて装置の密度は本質的に同じままか、又は薬物が可溶化して放出され、尿に置き換わるに従い、低下し得る。
【0051】
[0063]一般に、乾燥した装填済みの状態の装置は、約0.5g/mL〜約1.5g/mL、例えば約0.7g/mL〜約1.3g/mLの範囲の密度を有し得る。いくつかの実施形態において、乾燥した装填済みの装置は、約1g/mL未満の密度など、水の密度より低い密度を有する。かかる密度は膀胱における浮力及び移動を促進する。必要に応じてより軽い、又はより低密度の材料を装置に組み込んで任意の高密度薬物又は装置における他のペイロードを補償してもよく、それにより耐容性のための浮力を促進する全体の密度が維持される。加えて、装置の一部に空気又は他の気体を閉じ込めることで、全体の密度を低下させ得る。例えば、留置フレームルーメンの壁を不透水性にし、留置フレームルーメンにおいて弾性ワイヤの周りにエアポケットが形成されるようにしてもよい。壁の内側か、或いは外側に、透水性を低減するコーティング又はシースが適用されてもよい。
【0052】
[0064]一つの例示的な装置は、未装填時に約0.40グラム以下の質量及び約0.7g/mL以下の密度を有し得る。装置には、約275mg以下の質量の薬物が装填され得る。かかる実施形態において、装填時の装置は約0.675グラム以下の質量及び約1.1g/mL以下の密度を有し得る。かかる装置は膀胱において良好に耐容され得る。より小さい質量及び密度の装置であれば、同様に良好に耐容され得る。
【0053】
[0065]膀胱内薬物送達装置の正確な構成及び形状は、具体的な展開/植込み部位、植込み経路、薬物、投薬レジメン、及び装置の治療上の適用を含む様々な要因に応じて選択され得る。装置の設計により、患者の痛み及び不快感は最小限に抑えられながらも、治療上有効な用量の薬物が患者の組織部位(例えば、尿路上皮組織)に局所送達され得る。
【0054】
[0066]植込み型薬物送達装置は、完全に又は部分的に生体侵食性で、従って薬物製剤の放出後に装置の摘出又は回収が不要であるように作製することができる。本明細書で使用されるとき、用語「生体侵食性」は、装置又はその一部が、溶解、酵素加水分解、侵食、吸収又はそれらの組み合わせにより生体内で分解することを意味する。一実施形態では、この分解は装置からの目的とする薬物放出動態を妨げない時点で起こる。例えば、装置の実質的な侵食は、薬物製剤の実質的な又は完全な放出が終わるまで起こらなくてもよい。別の実施形態では、装置は被侵食性であり、薬物製剤の放出は少なくとも一部において被侵食性装置本体の分解又は侵食特性により制御される。
【0055】
[0067]或いは、植込み型薬物送達装置は少なくとも部分的に非生体侵食性であってもよい。いくつかの実施形態において、装置は、医療級シリコーン、天然ラテックス、PTFE、ePTFE、PLGA、PGS、ステンレス鋼、ニチノール、エルジロイ(elgiloy)(非強磁性金属合金)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ナイロン、又はそれらの組み合わせなどの、泌尿器科用途に適した材料で形成される。薬物製剤の放出後、装置及び/又は留置フレームは、実質的に完全体のまま取り出されても、又は複数の部分片ごとに取り出されてもよい。いくつかの実施形態において、装置は部分的に生体侵食性であり、従って装置は部分的に侵食されると、膀胱から排泄されるのに十分な小ささの侵食を受けない破片に崩壊する。有用な生体適合性の被侵食性である及び被侵食性ではない構造材料は、当該技術分野において公知である。
【0056】
[0068]好ましい実施形態において、薬物送達装置は、例えば装置の製造/組立て後、及び装置の植込み前に、滅菌される。場合によっては装置は、装置の包装後に、例えばパッケージをγ線照射又はエチレンオキシドガスに供することにより滅菌されてもよい。
【0057】
薬物リザーバ部分
[0069]一実施形態において、装置の薬物リザーバ部分は細長いチューブを含む。チューブの内側は1つ以上の薬物リザーバを画成してもよく、その1つ又は複数の薬物リザーバ内に薬物製剤が格納され得る。別の実施形態では、薬物リザーバ部分はチューブ以外の形態である。
【0058】
[0070]薬物リザーバ部分からの薬物の放出速度は、概して、限定はされないがとりわけ薬物リザーバ部分の材料、寸法、表面積、及び開口部、並びに詳細な薬物製剤及び総薬物装填質量を含め、装置構成要素の組み合わせの設計により制御される。
【0059】
[0071]かかる薬物リザーバ部分の例が図1〜図3に示される。図示されるとおり、薬物リザーバ部分102はエラストマーチューブ122で形成される本体を含み得る。チューブ122は、複数の薬物錠剤112を収容するリザーバ108を画成する。チューブ122の端部は密閉構造120により密閉されてもよい。チューブ122には少なくとも1つの開口部118が配置されてもよい。開口部118が提供される場合、開口部118は分解性時限膜により閉鎖されてもよく、この膜がリザーバからの薬物製剤の放出開始を制御し得る。場合によってはチューブ122の少なくとも一部分の周りにシース又はコーティングを配置して、浸透圧性のチューブ表面積を低減することによるか、又はチューブ壁を通じた拡散を低減することによるなどして、放出速度を制御又は低減してもよい。簡単にするため、分解性時限膜及びシース又はコーティングは図示しない。
【0060】
[0072]一実施形態において、薬物リザーバ部分は浸透圧ポンプとして動作する。かかる実施形態では、チューブはシリコーンなどの透水性材料で形成されてもよく、又はチューブは多孔質構造を有してもよく、又はその双方であってもよい。植込み後、水又は尿が、チューブ壁、チューブを貫通して形成された1つ以上の開口部、又は多孔質チューブを貫通して形成された1つ以上の透過孔を透過する。水はリザーバに入り、薬物製剤によって吸収される。可溶化された薬物はリザーバにおける浸透圧により駆動され、リザーバから1つ以上の開口部を介して制御された速度で分注される。浸透圧ポンプの送達速度及び全体的な能力は、数ある要因の中でも特に、チューブの表面積;チューブの形成に使用される材料の液体に対する透過性;開口部の形状、サイズ、数及び配置;並びに薬物製剤の溶解プロファイルなどの装置パラメータにより影響を受ける。送達速度は、例えばTheeuwes, J. Pharm. Sci., 64(12):1987-91 (1975)に記載される公知の原理に従い、特定の薬物送達系を定義する物理化学的パラメータから予測することができる。いくつかの実施形態において、装置は最初にゼロ次放出速度を呈してもよく、続いて低下した非ゼロ次放出速度を呈してもよく、その場合、全体の薬物放出プロファイルは最初のゼロ次放出速度及び総ペイロードにより決定され得る。浸透圧ポンプ設計の代表的な例、及びかかる設計を選択するための式が、米国特許出願公開第2009/0149833号に記載されている。
【0061】
[0073]代替的実施形態では、本装置は本質的に、(i)チューブ壁に形成された1つ以上の個別の開口部、又は多孔質チューブ壁に形成された透過孔を通じた、又は(ii)薬物に対して透過性であってもよいチューブ壁それ自体を通じた、又は(iii)それらの組み合わせによる、チューブからの薬物の拡散により動作し得る。壁を通じて拡散が起こる実施形態では、開口部又は透過孔は含まれなくてもよい。さらに他の実施形態では、装置は浸透圧と拡散との組み合わせにより動作し得る。
【0062】
[0074]薬物リザーバ部分はエラストマー材料で形成されてもよく、それにより、装置を患者に挿入するために、例えば膀胱鏡又はカテーテルなどの展開器具に通してそれを展開する間、装置を弾性変形させることが可能となり得る。例えば、以下にさらに詳細に記載するとおり、膀胱内に植え込むためチューブを留置フレームと共に弾性変形させてもよい。
【0063】
[0075]好ましい実施形態において、薬物リザーバ部分は、エラストマー性及び透水性の双方である材料で形成される。エラストマー性及び透水性の双方である一つの材料はシリコーンであるが、他の生体適合性材料が使用されてもよい。
【0064】
[0076]チューブの長さ、直径、及び厚さは、特に、収容される薬物製剤の容量、チューブからの薬物の所望の送達速度、体内での装置の目的とする植込み部位、装置に求められる機械的完全性、所望の放出速度又は水及び尿に対する透過性、初期放出が始まるまでの所望の誘導時間、並びに体内への所望の挿入方法又は経路に基づき選択され得る。チューブ壁の厚さは、チューブ壁が薄過ぎると機械的完全性が不十分となり得る一方、チューブ壁が厚過ぎると装置からの初期薬物放出に望ましくない長い誘導時間がかかり得るため、チューブ材料の機械的特性及び透水性に基づき決定され得る。
【0065】
[0077]一実施形態において、装置本体は非吸収性である。これは、当該技術分野において公知のとおりの医療級シリコーンチューブ材から形成されてもよい。好適な非吸収性材料の他の例には、ポリ(エーテル)、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ウレタン)、セルロース、酢酸セルロース、ポリ(シロキサン)、ポリ(エチレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)及び他のフッ素化ポリマー、ポリ(シロキサン)、それらの共重合体、及びそれらの組み合わせから選択される合成ポリマーが含まれる。
【0066】
[0078]いくつかの実施形態において、装置本体は生体侵食性である。生体侵食性装置の一実施形態において、本体のチューブは生分解性又は生体吸収性ポリマーから形成される。好適なかかる材料の例には、ポリ(アミド)、ポリ(エステル)、ポリ(エステルアミド)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリホスファゼン、擬似ポリ(アミノ酸)、ポリ(グリセロール−セバシン酸)(PGS)、それらの共重合体、及びそれらの混合物から選択される合成ポリマーが含まれる。好ましい実施形態において、吸収性合成ポリマーは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)、及びそれらの混合物から選択される。他の硬化性生体吸収性エラストマーには、ポリ(カプロラクトン)(PC)誘導体、アミノアルコールベースのポリ(エステルアミド)(PEA)及びポリ(オクタンジオールシトレート)(POC)が含まれる。PCベースのポリマーは、エラストマー特性を得るためリジンジイソシアネート又は2,2−ビス(ε−カプロラクトン−4−イル)プロパンなどの追加的な架橋剤が必要であり得る。
【0067】
[0079]薬物リザーバ部分チューブのチューブは略直線状であってもよく、ある場合には円形断面を有する略シリンダ状であってもよいが、特に、四角形、三角形、六角形、及び他の多角形断面形状を用いることもできる。
【0068】
[0080]チューブの端部は、薬物の漏出を抑制するため、密閉構造又は他の密閉手段などにより密閉されてもよい。密閉構造は、図1に示されるとおりのシリンダ120、ボール、又はディスクなど、チューブ端部を栓塞又は閉鎖するのに適した任意の形状を有し得る。いくつかの実施形態において、密閉構造はチューブの内径より大きい直径を有してもよく、従ってチューブが引き伸ばされて密閉構造の周りに緊密に嵌まることによりチューブが閉鎖され、密閉構造が所定位置に維持される。密閉構造は、特に、ステンレス鋼などの金属、シリコーンなどのポリマー、セラミック、サファイア、又は接着剤、又はそれらの組み合わせを含めた生体適合性材料で形成されてもよい。材料は生分解性又は生体侵食性であってもよい。医療級シリコーン接着剤又は他の接着剤が加工可能な形態でチューブに装填されてもよく、次にチューブ内で硬化されて端部を密閉してもよい。
【0069】
[0081]いくつかの実施形態において、チューブは複数のリザーバを有し得る。各リザーバは、チューブの内表面の一部分と少なくとも1つの仕切り壁とにより画成され得る。仕切り壁は、とりわけシリンダ、球体、又はディスクなどの、チューブに挿入された仕切り構造又はプラグであってよく、その場合、仕切り構造はチューブより大きい断面を有することができ、仕切り構造が所定位置に固定されて隣接するリザーバを分離する。例えば、チューブ端部を閉鎖する図1のシリンダ状プラグ120が、代わりに、チューブの長さに沿って互いに隣接して位置する2つのリザーバを分離する仕切り構造として機能してもよい。仕切り壁は非多孔質又は半多孔質、非吸収性又は吸収性であってよく、シリンダ状プラグ120に関連して上記に記載する材料で形成され得る。仕切り壁はまた、成形によるなどしてチューブに形成されてもよい。例えば、図6の例J〜Lに示されるとおり、チューブの長さに沿って延在する軸方向リザーバを分離する1つ以上のウェブが、チューブの中をその長さに沿って延在してもよい。仕切り壁はまた、図6の例M〜Oに示されるとおり、別個のリザーバとして機能する2つの異なるチューブをつなぎ合わせる構造であってもよい。
【0070】
[0082]複数のリザーバにより、2つ以上の異なる薬物製剤を異なるリザーバに分離すること、単一の薬物を異なるリザーバから異なる速度若しくは植込み後の時点で送達すること、又はそれらの組み合わせが可能となる。例えば、2つの異なるリザーバが異なる構成、特に、異なる材料、異なる透過性、異なる数若しくは配置の開口部(若しくは開口部がない)、開口部における異なる時限膜、又はそれらの組み合わせを有してもよい。2つの異なるリザーバはまた、同じ又は異なる形態の(液体、半固体、及び固体など)、又はそれらの組み合わせの同じ又は異なる薬物製剤を格納してもよい。2つの異なるリザーバは、さらに、開口部を通じた浸透圧と、開口部を完全に欠いていてもよい薬物リザーバ壁を通じた拡散とによるなど、異なる放出機構により薬物を放出するように構成されてもよい。単一の薬物リザーバの異なる部分に沿って、又は同じ若しくは異なる薬物製剤を格納する異なる薬物リザーバに沿って、コーティング又はシースもまた提供され得る。これらの実施形態を組み合わせて変形することにより、所望の薬物の所望の放出プロファイルを実現することができる。
【0071】
[0083]例えば、異なるリザーバの2つの用量の放出開始は、チューブのうち異なるリザーバを画成する部分について異なる材料を使用すること、異なるリザーバの1つ又は複数の開口部を異なる時限膜と連係させること、リザーバに異なる溶解度の薬物を置くこと、又は即時放出用の液状剤形と放出前に可溶化される固形剤形など、リザーバに異なる剤形の薬物を置くことによるなど、装置を適宜構成することにより段階的に行うことができる。従って、装置は一部の薬物を植込み後比較的急速に放出し得る一方、他の薬物は放出が始まるまでに誘導時間を経ることができる。
【0072】
[0084]一実施形態において、リザーバ(又は組み合わされたリザーバ)の総容積は、単一の治療コースにわたる局所送達に必要な全ての薬物を収容するのに十分であり、特定の病態の治療に必要な手技の回数が低減される。
【0073】
開口部
[0085]いくつかの実施形態において、装置は、とりわけ浸透圧、拡散、又はそれらの組み合わせによるなどして薬物を分注するための1つ又は複数の開口部又は穴を含む。開口部はチューブに沿って離間され、薬物製剤を放出するための通路を提供し得る。開口部又は穴は側壁又はチューブの端部を貫通して配置されてもよい。開口部は1つ以上のリザーバと流体連通していてもよい。開口部118の実施形態は、図1及び図3の薬物リザーバ部分に図示される。
【0074】
[0086]開口部は薬物リザーバ部分の中央辺りに位置しても、又はその出口に隣接して位置してもよく、これは以下に記載するとおり、薬物リザーバ部分への固形単位薬物の装填し易さに影響し得る。開口部は、チューブのうち挿入中に折り畳まれ得る部分から離れて位置決めされてもよく、それにより開口部の分解性膜が破れることが抑制される。
【0075】
[0087]図3に示される実施形態などの、薬物リザーバルーメンと留置フレームルーメンとの双方を画成する装置本体を含む装置の実施形態では、以下にさらに記載するとおり、1つ又は複数の開口部が薬物リザーバルーメンの壁上で留置フレームルーメンの壁に対して様々な位置を有し得る。
【0076】
[0088]開口部のサイズ、数、及び配置は、薬物の制御された放出速度を提供するように選択され得る。主に浸透圧ポンプとして動作する装置は、1つ又は複数の開口部を通じた薬物の拡散を低減するには十分に小さいが、しかしチューブ内の静水圧の上昇を低減するには十分に大きいサイズの、チューブに沿って適切に離間された1つ以上の開口部を有し得る。これらの制約の範囲内で、特定の放出速度を実現するよう単一の装置(又はリザーバ)の開口部のサイズ及び数を変えることができる。例示的実施形態において、開口部の直径は約20μm〜約500μmであり、例えば約25μm〜約300μm、及びより詳細には約30μm〜約200μmである。ある特定の例では、開口部は約100μm〜約200μm、例えば約150μmの直径を有する。装置が主に拡散により動作する実施形態では、開口部はこの範囲又はそれ以上であってもよい。単一の装置が2つ以上の異なるサイズの開口部を有してもよい。開口部は円形であってもよく、しかしながら他の形状も可能で想定され、形状は典型的には製造上の考慮事項に依存する。開口部の形成方法の例には、機械的な打ち抜き、レーザードリル加工、レーザーアブレーション、及び成形が含まれる。開口部はチューブの外側から内側に向かって僅かに縮径してもよく、及び開口部はチューブへの薬物の装填前又は装填後のいずれに設けられてもよい。開口部はまた、例えば、Bird Precision Orifice, Swiss Jewel Companyからのルビー又はサファイア精密穴構造などの、チューブの端部に配置された穴構造として形成されてもよい。
【0077】
[0089]いくつかの実施形態において、薬物リザーバ部分は開口部を全く有しなくてもよく、その場合薬物は、薬物リザーバ部分の壁を通じた拡散などの、浸透圧以外の放出機構によって放出され得る。同様に、複数の個別の薬物リザーバを有する薬物リザーバ部分は、薬物リザーバの全てと連係するか、一部と連係するか、又はいずれとも連係しない開口部を有することができ、その場合、異なる薬物リザーバからの放出は異なる放出機構によって行われ得る。
【0078】
分解性膜
[0090]一実施形態において、分解性膜、すなわち時限膜が、開口部を覆って、又は開口部内に(例えば、開口部と位置を揃えて)配置され、薬物製剤の放出開始を制御する。分解性膜は、チューブの外表面の全面若しくは一部を覆うコーティングであっても、又は開口部の上側若しくは範囲内にある個別の膜であってもよい。また、1つの開口部からの放出の制御に2つ以上の分解性膜が用いられてもよい。膜は、例えば、吸収性合成ポリマー(ポリエステル、ポリ(無水物)、又はポリカプロラクトンなど)又は吸収性生体材料(コレステロール、他の脂質及び脂肪など)から形成されてもよい。さらなる詳細は米国特許出願公開第2009/0149833号に記載される。
【0079】
薬物製剤及び固形薬物錠剤
[0091]薬物製剤は、体腔若しくは管腔への局所送達又は体腔若しくは管腔周辺への局部送達に有用であり得るものなどの、本質的に任意の治療剤、予防剤、又は診断剤を含み得る。薬物製剤は薬物のみからなってもよく、又は1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤が含まれてもよい。薬物は生物学的なものであってもよい。薬物は代謝産物であってもよい。本明細書で使用されるとき、本明細書に記載される任意の特定の薬物に関連して用語「薬物」は、塩形態、遊離酸形態、遊離塩基形態、及び水和物などの、その代替的な形態を含む。薬学的に許容可能な賦形剤は当該技術分野において公知であり、滑剤、粘度改質剤、表面活性剤、浸透圧剤、希釈剤、及び薬物の取扱い性、安定性、分散性、湿潤性、及び/又は放出動態を促進することを目的とした製剤の他の非有効成分を含み得る。
【0080】
[0092]好ましい実施形態において、薬物製剤は固形又は半固形剤形であり、それにより薬物製剤の全体的な容量が低減され、従って装置のサイズが低減されて植込みが促進される。半固形剤形は、例えば、乳剤又は懸濁液;ゲル又はペーストであり得る。多くの実施形態において、薬物製剤は望ましくは、同じく容量/サイズを最小限に抑えるという理由から、賦形剤を全く、又は最小限の分量しか含まない。
【0081】
[0093]いくつかの実施形態において、薬物は高溶解度の薬物である。本明細書で使用されるとき、用語「高溶解度」は、水中37℃での溶解度が約10mg/mLを上回る薬物を指す。他の実施形態において、薬物は低溶解度の薬物である。本明細書で使用されるとき、用語「低溶解度」は、水中37℃での溶解度が約0.01mg/mL〜約10mg/mである薬物を指す。薬物の溶解度は少なくとも一部においてその形態に影響され得る。例えば、水溶性塩の形態の薬物は高い溶解度を有し得る一方、塩基形態の同じ薬物は低い溶解度を有し得る。一例はリドカインであり、これは水溶性塩である塩酸リドカイン一水和物の形態のとき約680mg/mLの高い溶解度を有するが、リドカイン塩基の形態のときは約8mg/mLの低い溶解度を有する。高溶解度の薬物は、装置の壁を貫通する1つ以上の開口部又は透過孔を介するなど、浸透圧勾配による放出に好適であり得る一方、低溶解度の薬物は、装置の壁を直接通り抜けるか、又は装置の壁における1つ以上の開口部若しくは透過孔を通り抜けるなど、拡散による放出に好適であり得る。例えば、リドカイン塩基は薄いシリコーン壁を直接通り抜けて拡散し得るが、塩酸リドカインはそのようには拡散しないものであり得る。従って、目的とする放出方式に応じて薬物が高溶解度又は低溶解度を有するように製剤化され得る。一実施形態において、薬物は、膀胱内の尿中におけるその見かけの溶解度など、植込み環境でのその見かけの溶解度が向上するように製剤化される。
【0082】
[0094]詳細な実施形態において、本装置は患者に痛みの緩和を提供する。様々な麻酔剤、鎮痛剤、及びそれらの組み合わせを使用することができる。実施形態において、装置は1つ以上の局所麻酔剤を送達する。局所麻酔剤はコカイン類似体であってもよい。詳細な実施形態において、局所麻酔剤は、アミノアミド、アミノエステル、又はそれらの組み合わせである。アミノアミド又はアミドクラスの麻酔剤の代表的な例には、アルチカイン、ブピバカイン、カルチカイン、シンコカイン、エチドカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、ロピバカイン、及びトリメカインが含まれる。アミノエステル又はエステルクラスの麻酔剤の代表的な例には、アミロカイン、ベンゾカイン、ブタカイン、クロロプロカイン、コカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン、ヘキシルカイン、ラロカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、オルトカイン、ピペロカイン、プロカイン、プロパラカイン、プロポキシカイン、プロキシメタカイン、リソカイン、及びテトラカインが含まれる。これらの局所麻酔薬は典型的には弱塩基であり、塩、例えば塩酸塩として製剤化されて水溶性にされ得るが、しかしながら麻酔薬はまた、遊離塩基又は水和物の形態で使用することもできる。ロントカイン(lontocaine)などの他の麻酔薬もまた用いられ得る。薬物はまた、オキシブチニン又はプロピベリンなどの、麻酔効果を示す抗ムスカリン化合物であってもよい。薬物はまた、本明細書に記載される他の薬物を、単独で、又は局所麻酔剤との組み合わせで含んでもよい。
【0083】
[0095]特定の実施形態において、鎮痛剤はオピオイドを含む。オピオイド作動薬の代表的な例には、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルフィン、ベジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、デソモルフィン、デキストロモラミド、デゾシン、ジアンプロミド、ジアモルフォン(diamorphone)、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルフィン、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアンブテン、ジオキサフェチルブチラート、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアンブテン、エチルモルヒネ、エトニタゼン フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レボルファノール、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メサドン、メトポン、モルヒネ、ミロフィン、ナルブフィン、ナルセイン、ニコモルフィン、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ナロルフィン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、アヘン、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェノモルファン、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロヘプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジン、トラマドール、その薬学的に許容可能な塩、及びそれらの混合物が含まれる。他のオピオイド薬、例えば、μ、κ、δ、及び侵害受容オピオイド受容体作動薬などが企図される。
【0084】
[0096]他の好適な疼痛緩和剤の代表的な例には、サリチルアルコール、塩酸フェナゾピリジン、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、フルフェニサール、イブプロフェン、インドプロフェン、インドメタシン、ナプロキセンなどの薬剤が含まれる。
【0085】
[0097]特定の実施形態において、薬物送達装置を使用して、間質性膀胱炎、放射線膀胱炎、膀胱痛症候群、前立腺炎、尿道炎、術後痛、及び腎結石などの炎症性の病態が治療される。これらの病態に特異的な薬物の非限定的な例には、リドカイン、グリコサミノグリカン(例えば、コンドロイチン硫酸、スロデキシド)、ペントサンポリ硫酸ナトリウム(PPS)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、オキシブチニン、マイトマイシンC、ヘパリン、フラボキサート、ケトロラク、又はそれらの組み合わせが含まれる。腎結石については、疼痛を治療し、及び/又は腎結石の溶解を促進するように1つ以上の薬物が選択され得る。
【0086】
[0098]ICの治療に用いられ得る薬物の他の非限定的な例には、タネズマブなどの神経成長因子モノクローナル抗体(MAB)拮抗薬、及びカルシウムチャネルα−2−Δ修飾薬、例えばPD−299685又はガベペンチン(gabepentin)が含まれる。エビデンスでは、外因的に膀胱に送達された神経成長因子(NGF)が膀胱の過活動を誘発し、解離した膀胱求心性神経の興奮性を上昇させることから(Nature Rev Neurosci 2008; 9:453-66)、膀胱はNGFを局所的に発現することが示唆される。従って、記載される送達装置を使用してMAB又はNGFに対する他の薬剤を局所送達すれば、治療効果に必要な総用量が大幅に低減されて有利となり得る。エビデンスからはまた、電位感受性カルシウムチャネルのα−2−Δユニットの、例えばガバペンチンとの結合が、線維筋痛症などの神経因性疼痛の疾患の治療に有効であり得ること、及びICと神経因性疼痛の疾患との間に共通した機構が存在し得ることも示唆される(Tech Urol. 2001 Mar, 7(1):47-49を参照のこと)。従って、記載される送達装置を使用してPD−299685又はガベペンチン(gabepentin)などのカルシウムチャネルα−2−Δ修飾薬を局所送達すれば、ICの治療における用量関連性の全身毒性が最小限に抑えられて有利となり得る。
【0087】
[0099]他の膀胱内癌治療には、小分子、例えば、アパジコン、アドリアマイシン、AD−32、ドキソルビシン、ドクセタキセル(doxetaxel)、エピルビシン、ゲムシタビン、HTI−286(ヘミアステリン類似体)、イダルビシン、γ−リノレン酸、ミトザントロン、メグルミン、及びチオテパ;巨大分子、例えば、活性化マクロファージ、活性化T細胞、EGF−デキストラン、HPC−ドキソルビシン、IL−12、IFN−a2b、IFN−γ、α−ラクトアルブミン、p53アデノベクター、TNFα;併用、例えば、エピルビシン+BCG、IFN+ファルマルビシン(farmarubicin)、ドキソルビシン+5−FU(経口)、BCG+IFN、及び百日咳毒素+膀胱切除術;マクロファージ及びT細胞などの活性化細胞;IL−2及びドキソルビシンなどの膀胱内注入;化学増感剤、例えば、BCG+アンチフィリノリティクス(antifirinolytics)(パラメチル安息香酸又はアミノカプロン酸)及びドキソルビシン+ベラピミル(verapimil);診断剤/造影剤、例えば、ヘキシルアミノレブリネート、5−アミノレブリン酸、ヨードデキシウリジン(Iododexyuridine)、HMFG1 Mab+Tc99m;及び局所毒性を管理するための薬剤、例えばホルマリン(出血性膀胱炎)が含まれる。
【0088】
[0100]詳細な一実施形態において、薬物送達装置は尿管ステントの留置に関連して、例えば尿管ステント留置により引き起こされる痛み、尿意切迫又は尿意頻数を治療するために使用される。かかる治療に特異的な薬物の非限定的な例には、特に、抗ムスカリン薬、α遮断薬、麻薬、及びフェナゾピリジンが含まれる。
【0089】
[0101]薬物送達装置を使用して、例えば、急迫性尿失禁及び神経性失禁を含む尿失禁、尿意頻数、又は尿意切迫、並びに膀胱三角炎を治療することができる。用いられ得る薬物には、抗コリン剤、鎮痙剤、抗ムスカリン剤、β2アゴニスト、αアドレナリン作動薬、抗痙攣薬、ノルエピネフリン取り込み阻害薬、セロトニン取り込み阻害薬、カルシウムチャネル遮断薬、カリウムチャネル開口薬、及び筋弛緩剤が含まれる。失禁の治療に好適な薬物の代表的な例には、オキシブチニン、S−オキシブチチン(S-oxybutytin)、エメプロニウム、ベラパミル、イミプラミン、フラボキサート、アトロピン、プロパンテリン、トルテロジン、ロシベリン、クレンブテロール、ダリフェナシン、テロジリン、トロスピウム、ヒヨスチアミン、プロピベリン、デスモプレシン、バミカミド、臭化クリジニウム、ジサイクロミンHCl、グリコピロレートアミノアルコールエステル、臭化イプラトロピウム、臭化メペンゾラート、臭化メトスコポラミン、臭化水素酸スコポラミン、臭化イオトロピウム(iotropium bromide)、フマル酸フェソテロジン、YM−46303(山之内製薬株式会社、日本)、ランペリゾン(日本化薬株式会社、日本)、イナペリゾン、NS−21(Nippon Shinyaku Orion、Formenti、日本/イタリア)、NC−1800(日本ケミファ株式会社、日本)、ZD−6169(Zeneca Co.、英国)、及びヨウ化スチロニウムが含まれる。
【0090】
[0102]別の実施形態では、薬物送達装置を使用して、膀胱癌及び前立腺癌などの尿路癌が治療される。用いられ得る薬物には、抗増殖剤、細胞傷害剤、化学療法剤、又はそれらの組み合わせが含まれる。尿路癌の治療に好適であり得る薬物の代表的な例には、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)ワクチン、シスプラチン、ドキソルビシン、バルルビシン、ゲムシタビン、マイコバクテリア細胞壁−DNA複合体(MCC)、メトトレキサート、ビンブラスチン、チオテパ、マイトマイシン、フルオロウラシル、ロイプロリド、ジエチルスチルベストロール、エストラムスチン、酢酸メゲストロール、シプロテロン、フルタミド、選択的エストロゲン受容体修飾薬(すなわちタモキシフェンなどのSERM)、ボツリヌス毒素、及びシクロホスファミドが含まれる。薬物は生物学的なものであってもよく、モノクローナル抗体、TNF阻害薬、抗ロイキン(anti-leukin)などを含み得る。薬物はまた、イミキモド又は別のTLR7アゴニストを含めた、TLRアゴニストなどの免疫調節薬であってもよい。薬物はまた、特に、線維芽細胞成長因子受容体−3(FGFR3)選択的チロシンキナーゼ阻害薬、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害薬、又はマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)阻害薬などのキナーゼ阻害薬、又はそれらの組み合わせであってもよい。他の例には、セレコキシブ、エロロチニブ(erolotinib)、ゲフィチニブ、パクリタキセル、ポリフェノンE、バルルビシン、ネオカルチノスタチン、アパジコン、ベリノスタット(Belinostat)、インゲノールメブテート、ウロシジン(Urocidin)(MCC)、プロキシニウム(Proxinium)(VB 4845)、BC 819(BioCancell Therapeutics)、キーホールリンペットヘモシアニン、LOR 2040(Lorus Therapeutics)、ウロカニン酸、OGX 427(OncoGenex)、及びSCH 721015(Schering-Plough)が含まれる。薬物治療は、癌性組織を標的とする従来の放射線療法又は外科療法と併用されてもよい。
【0091】
[0103]さらに別の実施形態において、本膀胱内薬物送達装置を使用して、膀胱、前立腺、及び尿道の関与する感染症が治療される。かかる感染症の治療には、抗生物質、抗細菌薬、抗真菌薬、抗原虫薬、消毒薬、抗ウイルス薬及び他の抗感染剤を投与することができる。感染症治療用の薬物の代表的な例には、マイトマイシン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、メタンアミン、ニトロフラントイン、アンピシリン、アモキシシリン、ナフシリン、トリメトプリム、スルホンアミド系のトリメトプリム・スルファメトキサゾール合剤、エリスロマイシン、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、テトラサイクリン、カナマイシン、ペニシリン、セファロスポリン、及びアミノグリコシドが含まれる。
【0092】
[0104]他の実施形態において、本薬物送達装置を使用して、膀胱又は子宮などの泌尿生殖器部位の線維症が治療される。類線維腫治療用の薬物の代表的な例には、ペントクスフィリン(pentoxphylline)(キサンチン類似体)、抗TNF剤、抗TGF剤、GnRH類似体、外因性プロゲスチン、抗黄体ホルモン、選択的エストロゲン受容体修飾薬、ダナゾール及びNSAIDsが含まれる。
【0093】
[0105]植込み型薬物送達装置を使用して、神経因性膀胱もまた治療され得る。神経因性膀胱治療用の薬物の代表的な例には、リドカイン、ブピバカイン、メピバカイン、プリロカイン、アルチカイン、及びロピバカインなどの鎮痛薬又は麻酔薬;抗コリン薬;オキシブチニン又はプロピベリンなどの抗ムスカリン薬;カプサイシン又はレシニフェラトキシンなどのバニロイド;抗ムスカリン薬、例えばM3ムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)に作用するものなど;バクロフェンなどのGABA作動薬を含む鎮痙剤;ボツリヌス毒素;カプサイシン;αアドレナリン拮抗薬;抗痙攣薬;アミトリプチリンなどのセロトニン再取り込み阻害薬;及び神経成長因子拮抗薬が含まれる。様々な実施形態において、薬物は、Reitz et al., Spinal Cord 42:267-72 (2004)に記載されるとおり、膀胱求心性神経に作用するもの又は遠心性コリン作動性伝達に作用するものであってもよい。
【0094】
[0106]神経因性膀胱の治療に有用な考えられ得る薬物は、2つの一般的なタイプのうちの一方に分類することができる:痙性神経因性膀胱の治療用及び弛緩性神経因性膀胱の治療用。一実施形態において、薬物は、神経学的な排尿筋過活動及び/又は排尿筋の柔軟性の低さに起因する失禁の治療用として公知のものから選択される。このタイプの薬物の例には、膀胱弛緩薬(例えば、オキシブチニン(顕著な筋弛緩活性及び局所麻酔活性を有する抗ムスカリン剤)、プロピベリン、インプラトロプリウム(impratroprium)、チオトロピウム、トロスピウム、テロジリン、トルテロジン、プロパンテリン、オキシフェンサイクリミン、フラボキサート、及び三環系抗うつ薬;膀胱及び尿道を支配する神経を遮断する薬物(例えば、バニロイド(カプサイシン、レシニフェラトキシン)、ボツリヌス毒素A);又は排尿筋収縮強度、排尿反射、排尿筋括約筋協調不全を調節する薬物(例えば、GABAb作動薬(バクロフェン)、ベンゾジアザピン(benzodiazapine))が含まれる。別の実施形態において、薬物は、神経学的な括約筋不全に起因する失禁の治療用として公知のものから選択される。このような薬物の例には、αアドレナリン作動薬、エストロゲン、βアドレナリン作動薬、三環系抗うつ薬(イミプラミン、アミトリプチリン)が含まれる。さらに別の実施形態において、薬物は、排尿を促進することが公知のものから選択される(例えば、αアドレナリン拮抗薬(フェントラミン)又はコリン作動薬)。さらに別の実施形態において、薬物は、抗コリン薬(例えば、ジサイクロミン)、カルシウムチャンネル遮断薬(例えば、ベラパミル)トロパンアルカロイド(例えば、アトロピン、スコポラミン)、ノシセプチン/オルファニンFQ、及びベタネコール(例えば、m3ムスカリン作動薬、コリンエステル)の中から選択される。
【0095】
[0107]薬物製剤の賦形剤は、リザーバからの薬物の放出速度を調節又は制御するように選択されるマトリックス材料であってもよい。一実施形態では、マトリックス材料は吸収性又は非吸収性ポリマーであり得る。別の実施形態では、賦形剤は、脂質(例えば、脂肪酸及び誘導体、モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロール及びステロイド誘導体、油、ビタミン及びテルペン)など、疎水性又は両親媒性化合物を含む。薬物製剤は、時間的に調節された放出プロファイル又はより連続的な若しくは一貫した放出プロファイルを提供し得る。他の治療法には他の薬物及び賦形剤が用いられ得る。
【0096】
[0108]いくつかの実施形態において、薬物製剤は固形剤形である。例えば薬物製剤は、薬物リザーバ部分に装填される固形単位薬物となるように形成される。単位薬物の各々は、選択的に付与された形状を(送達装置が植込み前の組立て、保管、及び取扱いの間に通常曝露され得る温度及び圧力条件で)実質的に維持する固形の個別的な物体である。単位薬物は、錠剤、ペレット、又はビーズの形態であってもよく、しかしながら他の構成も可能である。例えば図1及び図2は、薬物送達装置100の薬物リザーバルーメン108に装填された、植込みに適した複数の固形単位薬物112を示す。
【0097】
[0109]直接圧縮打錠法、成形法、又は製薬分野で公知の他の方法により作製される薬物錠剤。錠剤は、任意選択により、錠剤の取扱い、装置の組立て及び保管中の酸素若しくは湿度に対する破壊的な曝露からの錠剤の保護;装置の装填の促進;審美性;又は生体内での溶解及び薬物放出特性の促進、遅延、若しくはその他の制御のため、当該技術分野において公知の1つ以上の材料で被覆されてもよい。薬物製剤はまた、加工可能な形態で薬物リザーバに装填されてもよく、及びそこで硬化させてもよい。その後、固化した薬物が薬物リザーバの長さに沿って分割され、装置の変形を可能にする間隙又は切れ間が形成されてもよい。例えば、薬物製剤が溶融されて固化されるように構成される実施形態では、薬物製剤を溶融し、溶融した形態で薬物リザーバに注入し、薬物リザーバ内で固化させ、及び装置の変形又は動きに適応するよう薬物リザーバにおいて小さく分割することができる。薬物製剤はまた、薬物リザーバと共に押出してもよく、薬物リザーバ内で硬化させてもよく、及び続いて装置の変形に適応するようリザーバの長さに沿って分割してもよい。
【0098】
[0110]薬物錠剤は薬物含有分を含み、及び賦形剤含有分を含んでもよい。薬物含有分は1つ以上の薬物又は医薬品有効成分(API)を含み、一方で賦形剤含有分は1つ以上の賦形剤を含む。用語「賦形剤」は当該技術分野において公知であり、本薬物錠剤に有用な賦形剤の代表的な例には、結合剤、潤滑剤、流動促進剤、崩壊剤、着色剤、充填剤又は希釈剤、コーティング及び防腐剤などの成分、並びに薬物錠剤の製造、保存、又は投与を促進する他の成分が含まれ得る。
【0099】
[0111]特定の(小さい)サイズの所与の薬物送達装置に保存し、及びそこから放出することのできる薬物の量を最大化するため、薬物錠剤は好ましくは高重量分率の薬物又はAPIを含み、錠剤の製造上並びに装置の組立て及び使用上の考慮事項に対して必要とされるとおりの賦形剤の重量分率は低減され、又は低い。本開示の目的上、薬物、又はAPIを参照するときの「重量分率」、「重量百分率」、及び「重量による百分率」などの用語は、用いられる形態、例えば塩形態、遊離酸形態、遊離塩基形態、又は水和物形態の薬物又はAPIを指す。例えば90重量%の塩形態の薬物を有する薬物錠剤は、90重量%未満の遊離塩基形態の当該薬物を含み得る。
【0100】
[0112]一実施形態において、薬物錠剤は50重量%超の薬物である。好ましい実施形態において、薬物錠剤の重量の75%以上が薬物であり、残りの重量は、薬物錠剤の作製を促進する滑剤及び結合剤などの賦形剤を含む。本開示の目的上、薬物又はAPIを参照するときの用語「高重量分率」は、賦形剤が薬物錠剤の25wt%未満、好ましくは20wt%未満、より好ましくは15wt%未満、及びさらにより好ましくは10wt%未満を構成することを意味する。ある場合には、薬物含有分は薬物錠剤の重量の約75%以上を含む。より詳細には、薬物含有分は薬物錠剤の重量の約80%以上を含み得る。例えば、薬物含有分は薬物錠剤の重量の約85%〜約99.9%を含み得る。いくつかの実施形態において、賦形剤含有分は完全に省略されてもよい。
【0101】
[0113]一実施形態において、薬物及び賦形剤は水溶性となるように選択及び錠剤配合され、従って薬物錠剤は、装置が膀胱内にあるとき可溶化して薬物を放出することができる。好ましい実施形態において、薬物錠剤は、薬物送達装置の中で、或いはその外部で、薬物錠剤の化学的又は物理的組成に実質的な又は有害な変化をもたらすことなく滅菌可能であるように配合される。かかる薬物錠剤は従来の薬物錠剤とは全く異なるものであってよく、従来の薬物錠剤は、典型的には50重量%未満の薬物錠剤含有分を構成する有効成分を含み、薬物錠剤の残りは、不溶性であることが多い、及び/又は従来の滅菌には不適であり得る賦形剤を含む。さらに、本薬物錠剤は植込み型薬物送達装置で使用されるサイズ及び形状とされ得る。例えば薬物錠剤は「ミニ錠剤」であってもよく、これは従来の錠剤と比べてはるかに小さく、それにより薬物錠剤を尿道などの管腔を通じて膀胱などの体腔に挿入することが可能となる。膀胱内挿入用又は他の生体内植込み用の固形薬物錠剤112の実施形態が図1〜図3に示される。
【0102】
[0114]1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤が含まれる実施形態では、賦形剤によって装置への固形単位薬物の装填が促進され得る。例えば賦形剤は、単位薬物が薬物リザーバ部分のルーメン内壁に対して摺動することができるように、単位薬物の潤滑性を増加させてもよい。賦形剤によりまた、1つ又は複数の治療剤を、薬物リザーバ部分に装填することのできる固形薬物錠剤にする形成が促進され得る。賦形剤はまた、単位薬物の溶解度又は溶解速度を増加又は遅延させるなどして、装置からの薬物放出動態にも影響を与え得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、薬物放出速度は主として薬物リザーバの特性、例えば管厚及び水又は尿に対する透過性によって制御され、一方で単位薬物の賦形剤含有分は、固形の、且つ比較的高い重量分率の薬物を含む単位薬物の確実な生成を可能にすることを第一に選択される。
【0103】
[0115]個々の単位薬物は、本質的に装置内部に収まる任意の特定の形状及び寸法を有し得る。一実施形態において、単位薬物は、薬物リザーバ部分が特定数の単位薬物で実質的に充填されるサイズ及び形状とされる。各単位薬物は、薬物リザーバ部分の断面形状と実質的に一致する断面形状を有してもよい。例えば、単位薬物112は、図1に示される実質的にシリンダ状の薬物リザーバルーメン108に配置されるよう、図1及び図3に示されるとおり実質的にシリンダ形状である。単位薬物112は装填後、薬物リザーバルーメン108を実質的に充填して薬物リザーバ部分102を形成する。
【0104】
[0116]単位薬物は、薬物リザーバ部分の内寸とほぼ同じか、それより僅かに小さいか、又はそれを僅かに上回る外寸を有してもよい。単位薬物の外寸が薬物リザーバ部分の内寸を上回る実施形態では、加圧ガス流下に薬物リザーバ部分を外側に拡張させ、そこを通じて単位薬物を進めることで、単位薬物を薬物リザーバ部分に装填し得る。加圧ガス流を取り除くと、薬物リザーバ部分が元に戻って単位薬物を特定の軸方向位置に保持し得る。用いる単位薬物の直径が大きいほどペイロード、ひいては所与のサイズの薬物送達装置から送達することのできる薬物量が増加し得る。例えば、図1〜図3に示される単位薬物112は、図3に示される薬物リザーバルーメン108の内径を僅かに上回る外径を有する。かかる単位薬物112は、加圧ガス流下に薬物リザーバ壁122を半径方向に拡張させ、薬物リザーバルーメン108を通じて単位薬物112を軸方向に進め得るようにしてルーメン108に装填されてもよく、及び加圧ガス流を取り除くと壁122が元に戻り、図1に示されるとおり、単位薬物112がルーメン108の長さに沿った特定の軸方向位置に維持され得る。単位薬物112がルーメン108より小さく図示されているのは、単に2つの部分を視覚的に区別する目的に過ぎないことに留意されたい。単位薬物の外寸が薬物リザーバ部分の内寸より小さい実施形態では、単位薬物は薬物リザーバ部分との接触が少なくなり得る。従って、加圧ガス流が摩擦力を上回らなくてもよいため、単位薬物は比較的低い圧力の加圧ガス流を使用して装填することができる。
【0105】
[0117]実施形態において、単位薬物は、薬物リザーバに格納されたとき一列に整列する形状とされる。各単位薬物は薬物リザーバの断面形状と一致する断面形状を有し、且つ各単位薬物は隣接する単位薬物の端面と一致する端面形状を有し得る。従って薬物錠剤を薬物リザーバに装填すると、一直線状の又は一列の薬物錠剤が薬物リザーバを実質的に充填することができ、隣接する単位薬物間には間隙又は切れ間が形成される。この間隙又は切れ間により、展開中などの装置の変形又は動きに適応しながらも、個々の単位薬物はその固形剤形を維持することが可能となる。従って薬物送達装置は、固形薬物が装填されるにもかかわらず、各単位薬物が隣接する単位薬物に対して動くことが可能であり得るため、比較的可撓性又は変形性が高くなり得る。
【0106】
[0118]図1〜図3に例が図示され、これらの図には、円形の平坦な端面とシリンダ状の側壁とを有する単位薬物112が示される。従って単位薬物112は、図1及び図2に示されるとおりのシリンダ状の薬物リザーバルーメン108に装填されるよう他の単位薬物112と一列に整列することができる。このように装填されると、単位薬物112は薬物リザーバルーメン108を実質的に充填し、単位薬物112の間には間隙又は切れ間116が形成されて変形又は動きに適応する。平坦な端面により装置は区分的な可撓性を有することが可能となる一方、間隙又は切れ間116に当てられる薬物リザーバ部分内の容積又は空間は抑制される。従って装置は、その可撓性を維持しながら固形薬物で実質的に充填することができる。比較的一様なサイズ及び形状の薬物錠剤などの、複数の薬物錠剤112を装置に装填することで、有利には、植込み中及び植込み後に予想される力を受けたとき予想どおり動き、且つ植込み後に予想される薬物放出特性を呈する装置を製造することが可能となる。すなわち、錠剤の一様性により有利には医療製品の製造において再生産が可能となり、従って概して信頼性が高く再現性のある薬物放出特性がもたらされる。
【0107】
[0119]いくつかの実施形態において、本単位薬物は比較的高さがあって細長いものであり、短く押し縮まったものになりがちな従来の薬物錠剤とは異なる。単位薬物は、薬物リザーバへの装填後に傾いたり又は転がったりすることが少ない、その向きを維持するのに十分な高さであってよい。他方で単位薬物は、装置をその長さに沿って曲げたり又は動かしたりすることができるのに十分な間隙又は切れ間を提供するのに十分な短さであってもよい。詳細には、各単位薬物はその幅を上回る長さを有してもよく、すなわち高さ:幅のアスペクト比が1:1より大きくてもよい。単位薬物に好適なアスペクト比は約3:2〜約5:2の範囲であり得るが、従来の薬物錠剤のような1:1未満のアスペクト比を含め、他のアスペクト比も可能である。図1に示される例は、長さがその直径を上回る単位薬物112を示す。
【0108】
[0120]固形薬物錠剤が膀胱などの身体の管腔又は体腔に、図1〜図3を参照して上記に記載されるタイプの装置などの薬物送達装置を用いて挿入又は植込みされるように設計される実施形態では、薬物錠剤は、尿道などの身体の天然の管腔に挿通するのに好適なサイズ及び形状の「ミニ錠剤」であってもよい。本開示の目的上、用語「ミニ錠剤」は、概して、比較的平面状の又は平坦な端面と実質的にシリンダ状の側面とを有する略シリンダ形状の固形薬物錠剤を指す。例示的ミニ錠剤が図1に示される。ミニ錠剤112は、約1.0〜約3.2mm、例えば約1.5〜約3.1mmの範囲の、端面に沿って延在する直径を有する。ミニ錠剤は、約1.7mm〜約4.8mm、例えば約2.0mm〜約4.5mmの範囲の、側面に沿って延在する長さを有する。錠剤の摩損度は約2%未満であってよい。固形薬物錠剤の実施形態並びにそれを作製するシステム及び方法は、上記の米国特許出願文献を参照して以下にさらに記載する。
【0109】
[0121]好ましい実施形態において、薬物錠剤はリドカインを含む。主としてリドカインを含む薬物錠剤を有する薬物送達装置は、特に、間質性膀胱炎、神経因性膀胱、又は痛みの治療を必要とする患者の膀胱に完全に展開され得る。他の疾患又は病態もまた、この装置を使用して治療され得る。他の実施形態では、他の薬物が、単独で、又はリドカインとの組み合わせで、間質性膀胱炎又は膀胱の関与する他の疾患及び病態の治療に使用されてもよい。
【0110】
[0122]固形薬物錠剤の形成後、薬物錠剤は薬物送達装置に装填され得る。装置が装填された後、装置は好ましくは滅菌される。選択される滅菌法は、固形薬物錠剤又は装置の他の構成要素の物理的又は化学的組成を望ましくない形で変えることがないものである。好適な滅菌法の例にはγ線照射又はエチレンオキシド滅菌が含まれるが、他の滅菌法が用いられてもよい。例えば、約8KGy〜約40KGy、例えば約25KGyの強度のγ線照射を用いることができる。
【0111】
[0123]薬物錠剤は、安定したスケール調整可能な製造法を用いて形成することができ、使用目的に好適なものである。特に、薬物錠剤は、患者の膀胱又は別の体腔、管腔、若しくは組織部位内に侵襲性が最小の方法で展開することができる薬物送達装置に、錠剤を直線状の配列で装填して効率的に格納するためのサイズ及び形状とされる。
【0112】
[0124]加えて、薬物錠剤は薬物送達装置への装填/組立ての前又はその後に滅菌することができ、薬物錠剤は商業的に妥当な有効期間を有する。植込み後、薬物錠剤の組成は目的とする投与経路に適切で、酸性条件下で安定であり、且つ事前に選択された再現性のある薬物放出動態を提供する。例えば、薬物錠剤は膀胱で可溶化され、長期間にわたり好適に安定した速度で薬物を連続的に放出し得る。
【0113】
[0125]ミニ錠剤及び他の固形薬物錠剤は、上記では、高重量分率の薬物又はAPIと低重量分率の賦形剤とを有するものとして説明されるが、固形薬物錠剤は、特に錠剤が、とりわけ極めて強力な薬物、安定化剤、若しくは薬物の溶解度を増加させる薬剤、又はそれらの組み合わせを含む場合には、任意の重量分率の薬物を有してもよい。
【0114】
留置フレーム部分
[0126]薬物送達装置は留置フレーム部分を含み得る。留置フレーム部分は薬物リザーバ部分と連係し、膀胱内など体内での薬物リザーバ部分の留置を可能にする。留置フレーム部分は、比較的拡張した形状と比較的低プロファイルの形状との間で変形可能な留置フレームを含み得る。例えば、留置フレームは自然に比較的拡張した形状をとってもよく、体内に挿入するために比較的低プロファイルの形状に操作されてもよく、及び体内に挿入後は比較的拡張した形状を自発的に回復してもよい。比較的拡張した形状の留置フレームは体腔内に留置するための形状を有してもよく、及び比較的低プロファイルの形状の留置フレームは、カテーテル又は膀胱鏡などの展開器具のワーキングチャンネルを通じて体内に挿入するための形状を有してもよい。このような結果を得るため、留置フレームは、植込み後に装置が比較的低プロファイルの形状をとることを妨げるように選択される弾性限界、弾性率、及び/又はばね定数を有し得る。かかる構成により、装置が予想される力を受けて体内から偶発的に排出されることが抑制又は防止され得る。例えば、装置は排尿中又は排尿筋の収縮中も膀胱内に維持され得る。
【0115】
[0127]好ましい実施形態において、留置フレームは弾性ワイヤを含むか、又は弾性ワイヤからなる。一実施形態において、弾性ワイヤは、Langer et al.に対する米国特許第6,160,084号に記載されるとおりの生体適合性形状記憶材料又は生分解性形状記憶ポリマーを含み得る。弾性ワイヤはまた、比較的低い弾性率のエラストマーを含んでもよく、これにより膀胱又は他の植込み部位を刺激したり、又はその中に潰瘍を引き起こしたりする可能性を比較的小さくすることができ、及び生分解性であってもよく、それにより装置を取り出す必要がなくなる。低弾性率エラストマーの例には、ポリウレタン、シリコーン、スチレン系熱可塑性エラストマー、及びポリ(グリセロール−セバシン酸)(PGS)が含まれる。弾性ワイヤは、シリコーン、ポリウレタン、スチレン系熱可塑性エラストマー、シリテック(Silitek)、テコフレックス(Tecoflex)、C−フレックス(C-flex)、及びパーキュフレックス(Percuflex)の1つ以上から形成されるコーティングなど、生体適合性ポリマーで被覆されてもよい。
【0116】
[0128]例えば、図1〜図2に示される実施形態において、留置フレーム114は、ニチノールなどの超弾性合金から形成された、且つ留置フレームルーメン110の壁124に取り囲まれる弾性ワイヤであり、この壁124は留置フレーム114の周囲の保護シースを形成する。壁124はシリコーンなどのポリマー材料から形成され得る。他の実施形態において、留置フレームは、ニチノールなどの超弾性合金から形成された、シリコーンシースなどのポリマーコーティングで被覆され、且つ薬物リザーバ部分に取り付けられた弾性ワイヤであってもよい。
【0117】
[0129]いくつかの実施形態において、留置フレームルーメン110は、留置フレーム114と、ポリマー充填剤などの充填材料とを含み得る。例示的な充填材料はシリコーン接着剤、例えばNusil Technology LLCのMED3-4213であるが、他の充填材料が用いられてもよい。充填材料は、留置フレームルーメン110において留置フレーム114の周囲にある空隙を充填し得る。例えば、充填材料は留置フレームルーメン110の中へと留置フレーム114の周囲に注入してもよく、そこで硬化させてもよい。充填材料により、薬物リザーバルーメン108が留置フレーム114に沿って伸びたり、又はその周りに捩れたり、若しくは回転したりする傾向が低減される一方、薬物リザーバルーメン108が留置フレーム114に対して選択された配置に維持され得る。しかしながら充填材料は必須ではなく、省略されてもよい。
【0118】
[0130]留置フレームが、図1に示されるコイル状に巻かれた形状などの比較的拡張した形状にあるとき、装置は、膀胱からの排出を妨げるのに適した寸法を有する空間を占有し得る。留置フレームが、図2に示される細長い形状などの比較的低プロファイルの形状にあるとき、装置は、展開器具のワーキングチャンネルを介するなどして体内に挿入するのに適した範囲を占有し得る。弾性ワイヤの特性によって装置はばねとして機能し、圧縮荷重を受けると変形するが、しかし荷重が取り除かれると自発的にその元の形状を回復する。ポリマーコーティングにより留置フレームの外表面は比較的平滑で軟質とされてもよく、膀胱又は他の植込み部位の刺激作用を低減し得る。
【0119】
[0131]プレッツェル形状をとる留置フレームは、圧縮力に対して比較的高い抵抗性を有し得る。プレッツェル形状は本質的に2つの小環部を含み、各々がそれ自体のより小さいアーチを有し、且つ共通のより大きいアーチを共有する。プレッツェル形状が最初に圧縮されると、大きい方のアーチが圧縮力の大部分を吸収して変形し始め、しかし圧縮が続くと、小さい方のアーチが重なり、続いて3つのアーチ全てが圧縮力に抵抗する。装置の全体としての圧縮に対する抵抗性は2つの小環部が重なると増加し、排尿中の膀胱の収縮時における装置の圧潰及び排泄を妨げる。
【0120】
[0132]留置フレームが形状記憶材料を含む実施形態では、フレームの形成に使用される材料は比較的拡張した形状を「記憶」しており、膀胱に入って体温に曝露されたときなど、装置に熱が加わると、自発的にその形状をとり得る。
【0121】
[0133]留置フレームは、装置を膀胱などの体腔内に維持するのに十分な高さのばね定数を有する形態であってもよい。高弾性率の材料が使用されても、又は低弾性率の材料が使用されてもよい。特に低弾性率材料が使用される場合、留置フレームは、それなしには排尿の力を受けてフレームが著しく変形し得るばね定数を提供する直径及び/又は形状を有し得る。例えば、留置フレームは、約3N/m〜約60N/mの範囲、又はより詳細には約3.6N/m〜約3.8N/mの範囲のばね定数などの、望ましいばね定数を実現するよう特別に設計された1つ以上の巻き、コイル、らせん、又はそれらの組み合わせを含み得る。かかるばね定数は、以下の技術の1つ又は複数により実現され得る:フレームの形成に使用される弾性ワイヤの直径を増加させる、弾性ワイヤの1つ以上の巻きの曲率を増加させる、及び弾性ワイヤにさらなる巻きを追加する。フレームの巻き、コイル、又はらせんは、数多くの構成を有することができる。例えばフレームは、1つ以上のループ、カール又は小環部を含むカール構成であってもよい。弾性ワイヤの端部は、軟質にする、鈍端にする、内側に向ける、一体につなぎ合わせる、又はそれらの組み合わせなどにより、組織を刺激したり傷付けたりすることを回避するように構成され得る。
【0122】
[0134]図5に例を示す。留置フレームは、平面に限定される二次元構造、回転楕円体の内部を占有する構造などの三次元構造、又はそれらの何らかの組み合わせを有し得る。詳細には、例A〜Gが、直線的に、或いは半径方向に接続され、同じ方向に、或いは互い違いの方向に曲げられた、重なっている、或いは重なりのない1つ以上のループ、カール、又は小環部を含むフレームを示す。例H〜Nは、二次元又は三次元構成で配置された1つ以上の環又は楕円を含むフレームを示し、これらの環又は楕円は閉環状か、或いは開環状であり、サイズが同じか、或いは異なり、重なっているか、或いは重なりがなく、及び1つ以上の接続点で一体につなぎ合わされている。留置フレーム部分はまた、球形の空間、扁長回転楕円形(prorate spheroid shape)を有する空間、又は扁平回転楕円形を有する空間などの回転楕円形の空間を占有する、又はその周りを巻回するように付形された三次元構造であってもよい。例O〜Rは、球空間を占有する、又はその周りを巻回するように付形された留置フレーム部分を示し、上記に示される各留置フレーム部分が球におけるフレームを表すものである。留置フレーム部分は概して、例Oに示されるとおり、異なる平面にある2つの交差する環、例Pに示されるとおり、内側に丸まった端部を有する異なる平面にある2つの交差する環、例Qに示されるとおり、異なる平面にある3つの交差する環、又は例Rに示されるとおり球状のらせんの形状をとることができる。これらの例のいずれにおいても、展開器具を介して展開するため留置フレーム部分は直線形状に延ばされ得る。留置フレーム部分は様々な他の方法で、球空間、又は他の回転楕円形の空間の周りに、又はその中に通して巻回され得る。留置フレーム及び留置ハウジングの一方又は双方が省略されてもよく、その場合に留置部分は、留置形状をとり得る、若しくはそれに変形させ得る薬物部分それ自体の構成要素であってもよく、又は留置部分は薬物部分と連係されるアンカーであってもよい。代替的な構成例が、上記で参照される米国特許出願に記載される。
【0123】
装置の他の特徴
[0135]薬物リザーバ部分はコーティング又はシースを含むことができ、これは実質的に不透水性であるか、又は薬物リザーバ部分と比べて透水性が低くてもよく、それにより装置本体の浸透圧性又は拡散性の表面積が低減され、又は変化する。従って、所望の装置特性、とりわけ、サイズ、形状、材料、透過性、容量、薬物ペイロード、可撓性、及びばね定数の調整を低減しながら、放出速度を独立して制御し、又はその目標を定めることができる。放出速度を実現するため、コーティング又はシースは装置本体の全て又は任意の部分を被覆してもよく、及びコーティング又はシースは比較的一様であっても、又はとりわけ、厚さ、サイズ、形状、位置、配置、向き、及び材料、並びにその組み合わせを変化させてもよい。さらに、同じ薬物リザーバ、又は同じ若しくは異なる薬物製剤を格納する異なる薬物リザーバの周りの、装置本体の異なる部分に沿って、複数のコーティング又はシースが提供されてもよい。薬物リザーバ部分がシリコーンチューブ材から形成される場合、例えばコーティングはパリレンから形成されてもよく、一方、シースはポリウレタン若しくは硬化性シリコーンなどのポリマーから形成されてもよく、又は当該技術分野において公知の別の生体適合性コーティング若しくはシース材料から形成されてもよい。いくつかの実施形態において、コーティング又はシースは、チューブにおいて端部と穴との間に位置決めされてもよく、それにより端部に隣接してチューブを透過する水がチューブのうちシースによって被覆された部分を通り過ぎて穴から抜け出ることができ、シースの下側に薬物が隔離されたり、又は停滞したりすることが低減又は回避される。コーティング及びシース、並びにかかる設計を選択するための式が、米国特許出願公開第2009/0149833号に記載される。
【0124】
[0136]一実施形態において、装置は少なくとも1つの放射線不透過性の部分又は構造を含み、植込み又は回収手技の一環としての医療従事者による装置の検出又は視認(例えば、X線イメージング又は蛍光透視による)を促進する。一実施形態において、チューブは、硫酸バリウムなどの放射線不透過性の充填材料又は当該技術分野において公知の別の放射線不透過性材料を含む材料から作製される。チューブ材によっては、チューブ材の加工中に硫酸バリウム又は別の好適な材料などの放射線不透過性充填剤を混合することによって放射線不透過性にされてもよい。放射線不透過性材料はまた、留置フレームに関連付けられてもよい。例えば、白金ワイヤが弾性ワイヤの端部の周りに巻回され、平滑化用材料で被覆されてもよい。超音波イメージングが使用されてもよい。蛍光透視は、手技を行う従事者に装置の位置及び向きの正確なリアルタイムイメージングを提供することから、被侵食性でない装置の展開/回収中に好ましい方法であり得る。
【0125】
[0137]一実施形態において、植込み型薬物送達装置の本体は、例えば薬物製剤の放出後に非吸収性装置本体を取り出すための、体腔からの装置の取り出しを促進する構造などの少なくとも1つの回収機構をさらに含む。
【0126】
[0138]回収機構の一例は、生体適合性材料で形成されたストリングである。ストリングは薬物送達装置の中央部分又は端部分に取り付けられ得る。いくつかの実施形態において、ストリングは膀胱から尿道に沿って体外まで延在するサイズであり、その場合、装置が膀胱に配置されると、ストリングの近位端は体外に位置し得る。ストリングはまた、より短いサイズであってもよく、従って装置が膀胱に配置されると、ストリングの近位端は尿道において医師が到達可能な場所に位置する。いずれの場合にも装置は、ストリングを係合し、尿道を通じて装置を引き込むことによって膀胱から取り出され得る。かかる実施形態において、ストリングの直径は、植え込まれている期間中、尿道に不快感なく収まるサイズとされ得る。他の実施形態では、ストリングは装置と共に膀胱に完全に植え込まれるサイズであり、その場合にストリングは、膀胱鏡又はカテーテルなどの尿道に配置された取り出し器具を使用した膀胱内での装置の位置特定及び把持を促進する。
【0127】
[0139]ストリングが薬物送達装置の中央部分に取り付けられる実施形態では、装置は、それが取り出し器具又は尿道に入るときに折り畳まれ得る。中央部分での折り畳みは、薬物送達装置が薬物の少なくとも一部分を放出すると、又は空になると、促進され得る。ストリングが薬物送達装置の端部分に取り付けられる実施形態では、装置は、それが取り出し器具又は尿道に入るときに展開形状に移り得る。従って、かかる実施形態では展開形状は同時に回収形状と見なすこともできる。
【0128】
[0140]回収機構の実施形態は、米国特許出願公開第2007/0202151 A1号に記載される。これらの及び他の実施形態において、装置は、ワニ口鉗子、三叉又は四叉光学式把持具などの従来の内視鏡把持器具を使用して回収され得る。例えば、装置がO字型の又はコイル状に巻かれた部分を有する場合、これらの把持器具によって装置の取り出しが容易となり得る。
【0129】
構成要素の組み合わせ
[0141]薬物リザーバ部分と留置フレーム部分とは、互いに連係して薬物送達装置を形成する。様々な異なる連係が想定される。例えば、薬物リザーバ部分と留置フレーム部分とは少なくとも部分的に整列してもよい。換言すれば、薬物リザーバ部分が留置フレーム部分の一部分又は全長に沿って、留置フレーム部分と実質的に平行に又はそれと一致して延在し得る。かかる実施形態の例が図1〜図3に示される。図6もまた、いくつかの代替的実施形態を断面図で示す。例F、G、H、及びIに示されるとおり、留置フレームワイヤは、薬物リザーバ壁の外表面全体に沿って、薬物リザーバ壁の内表面に沿って、薬物リザーバ壁を通じて、或いは壁の内側又は外側の補強領域の中に延在し得る。例J、K、及びLに示されるとおり、弾性ワイヤはまた、ウェブにより支持されたチューブの内部の範囲内に位置決めされてもよく、ウェブはチューブを複数の画室に仕切るものであり得る。ウェブは、画室が互いに連通するよう有孔であるか、若しくは他の形で非連続的であってもよく、又はウェブは、画室が互いに分離されて異なるリザーバを形成し、異なる薬物製剤を保持するのに好適となり得るように、比較的連続的であってもよい。実施形態に応じて、ウェブはチューブと同じ材料から形成されても、又は水若しくは尿に対して異なる透過性を有する材料から形成されてもよい。例M、N、及びOに示されるとおり、弾性ワイヤはチューブに沿って、又はチューブの間に延在して、複数のチューブと連係されてもよい。弾性ワイヤは、複数の個別のチューブを一体に接合する補強領域に埋設されてもよい。チューブは、同じ又は異なる薬物製剤を保持してもよく、また、同じ又は異なる構造材料、例えば、尿又は他の水性流体若しくは体液に対する透過性が異なる材料で形成されてもよい。
【0130】
[0142]他の実施形態において、薬物リザーバ部分は留置フレームの一部分にのみ取り付けられてもよい。薬物リザーバ部分は留置フレームの一部分に取り付けられる第1の端部分と第2の端部分とを有し得る。薬物リザーバの端部分は留置フレームで終端となってもよく、端部分は留置フレームに重ね合わされてもよく、又はそれらの組み合わせであってもよい。薬物リザーバ部分は留置フレーム部分に対して、薬物リザーバ部分が留置フレーム部分の周囲より中に位置するか、留置フレーム部分の周囲を越えて位置するか、又はそれらの組み合わせで位置するように配設され得る。加えて、複数の薬物リザーバ部分が単一の留置フレーム部分と連係されてもよい。図6の例A〜Eが、かかる実施形態を示す。
【0131】
[0143]他の実施形態において、薬物リザーバ部分と留置フレーム部分とは、いくつかの実施形態で同じ構成要素であってもよい。その場合に装置は、上記に記載したとおり装置を体内に維持するのに十分なばね定数を有する構成で形成されるチューブを含み得る。また、薬物リザーバ部分は留置フレーム部分の周りに1回又は任意の回数だけ巻回されてもよい。
【0132】
[0144]本明細書に記載される実施形態は、組み合わせて変形することにより、本開示の範囲内に包含される他の薬物送達装置をもたらすことができる。例えば、薬物リザーバ部分は、留置フレーム部分の任意の部分に任意の方法で取り付けることができる。複数の薬物リザーバ部分が提供されてもよく、単一の薬物リザーバ部分が仕切られてもよく、又はそれらの組み合わせであってもよく、それにより体内への複数の異なる薬物の送達、体内への異なる形態の薬物の送達、体内への様々な速度での薬物の送達、又はそれらの組み合わせが促進され得る。
【0133】
[0145]さらに、装置が留置形状にあるとき、留置フレーム部分は薬物リザーバ部分に対して任意の配置を有し、薬物リザーバ部分の内側、外側、上側、若しくは下側のいずれに位置しても、又は装置が植込み部位を通って動くに従い薬物リザーバ部分に対して動いてもよい。例えば装置100は、薬物リザーバ部分の外周の内側に位置する留置フレーム部分を含む。他の実施形態において、装置は薬物リザーバ部分より下側に位置する留置フレーム部分(従って図1では留置フレーム部分が見えない)を含む。留置フレームの装填後に留置フレーム部分をシリコーン接着剤などの充填材料で充填することにより、2つの部分間の特定の配置を維持することができる。充填材料を硬化又は固化させると、一方の部分が他方に対して動くことを防止することができる。薬物リザーバ部分に対する留置フレーム部分の配置を維持する他の手段もまた用いられ得る。
【0134】
[0146]開口部は、装置の周囲の内側、装置の周囲の外側、又は装置の上面若しくは下面に位置決めされ得る。例えば、装置100は装置の外周に位置する開口部118を含むが、他の実施形態では開口部は装置の上面に位置する。装置の周囲の内側又は上面若しくは下面に位置決めされる開口部は、有利には、膀胱壁などの植込み部位の一部分に直接隣接して位置決めされた状態になって多量の薬物が一つの特定の位置に送達される可能性が低減され得る。開口部はまた、薬物リザーバ部分の壁と留置フレーム部分の壁との間に画成される溝又は刻み目として形成されてもよく、従って壁が緩衝材として機能し、開口部が植込み部位に直接隣接して位置決めされた状態になることが防止される。例えば、装置100の開口部118は、代わりに壁122と壁124との間の溝又は刻み目として形成され得る。
【0135】
[0147]製造が容易であることから、開口部は図3に示されるとおり、留置フレーム部分の反対側にある薬物リザーバ部分の壁を貫通して形成されてもよい。開口部が留置フレーム部分の反対側に位置決めされるとき、上記に記載したとおり留置フレーム部分を装置の下側に固定して、開口部が装置の上側に位置決めされた状態となるようにすることで、開口部が装置の外周に位置決めされた状態となるリスクを低減することが望ましいものであり得る。しかしながら、他の構成が可能である。
【0136】
[0148]図4に示される装置400は、図1に示される装置100と僅かに異なる形状及び構成を有することに留意しなければならない。例えば、装置400の端部は装置100の端部と比べて比較的直線状である。装置100の留置フレームは比較的湾曲した端部分を有するが、装置400の留置フレームは比較的直線状の端部分を有し、そのためより直線状の端部となり得る。比較的直線状の端部分を有する留置フレームは、薬物の装填中及びその後に装置本体の壁を穿刺する可能性が低く、植込み後の装置の故障リスクが低減され得る。しかしながら、いずれの留置フレーム形状が使用されてもよい。
【0137】
[0149]例えば図1に示される実施形態では、薬物送達装置100は膀胱への薬物送達に適している。薬物リザーバルーメン108は約1.3〜約3.3mm、例えば約1.5〜約3.1mmの内径、約1.7〜約3.7mm、例えば約1.9〜約3.4mmの外径、及び約12〜21cm、例えば約14〜16cmの長さを有し得る。薬物リザーバルーメン108は約10〜100個のシリンダ状薬物錠剤、例えばミニ錠剤を保持し得る。ミニ錠剤は、各々が約1.0〜約3.3mm、例えば約1.5〜約3.1mmの直径、及び約1.5〜約4.7mm、例えば約2.0〜約4.5mmの長さを有し得る。かかるミニ錠剤は約3.0〜約40.0mgのリドカインペイロードを有し得る。ミニ錠剤のある詳細な例は、約1.52mmの直径、約2.0〜2.2mmの長さ、及び約4.0〜4.5mgのリドカイン質量を有し得る。ミニ錠剤の別の詳細な例は、約2.16mmの直径、約2.9〜3.2mmの長さ、及び約11.7〜13.1mgのリドカイン質量を有し得る。ミニ錠剤のさらに別の詳細な例は、約2.64mmの直径、約3.5〜3.9mmの長さ、及び約21.3〜23.7mgのリドカイン質量を有し得る。ミニ錠剤のさらに別の詳細な例は、約3.05mmの直径、約4.1〜4.5mmの長さ、及び約32.7〜36.9mgのリドカイン質量を有し得る。しかしながら、他の直径、長さ、及び質量を用いることもできる。
【0138】
[0150]これらの範囲内で、装置は膀胱に約150mg〜1000mgのリドカイン、例えば、約200mg、約400mg、約600mg、又は約800mgのリドカインを送達するように設計されてもよい。例えば、ペイロードが小さいほど、それをより小型の装置から、又は装填される錠剤がより少ない装置から送達することができ、装置の残りのスペースにはスペーサー又は充填材料が装填される。
【0139】
[0151]前述の具体的な構成は、単に当業者が本開示を読んで作成し得る装置タイプの可能性に過ぎない。例えば、いくつかの実施形態において薬物リザーバ部分は完全に省略されてもよく、及び留置フレーム部分が、膀胱などの体内に留置するための別の構成要素と連係されてもよい。別の構成要素の例には、特に、診断機器、検査材料、及び小型の電子デバイス、例えばカメラ及びセンサが含まれる。
【0140】
II.装置の作製方法
[0152]植込み型薬物送達装置の作製方法の実施形態は、薬物送達装置を形成する工程と、複数の薬物錠剤を形成する工程と、薬物錠剤を薬物送達装置に装填する工程とを含み得る。
【0141】
[0153]実施形態において、薬物送達装置を形成する工程は、以下のサブ工程の1つ以上を含み得る:装置本体を形成すること、留置フレームを形成すること、装置本体を留置フレームと連係すること、及び装置本体に1つ以上の開口部を形成すること。
【0142】
[0154]装置本体の形成は、薬物リザーバルーメンと留置フレームルーメンとを画成する壁を有する可撓性本体を形成することを含み得る。例えば、装置本体は、シリコーンなどのポリマーを押出し又は成形することにより形成されてもよい。詳細には、装置本体の形成は、長手方向縁部に沿って実質的に整列して隣接する2つのチューブ又は壁を一体形成することを含み得る。或いは、2つのルーメンは別個に形成され、接着剤などで互いに取り付けられてもよい。他の装置本体形成方法もまた用いられ得る。
【0143】
[0155]留置フレームの形成は、例えば超弾性合金又は形状記憶材料で弾性ワイヤを形成すること、及び比較的拡張した形状を自然に取るよう弾性ワイヤを「仕込む」ことを含み得る。拡張した形状をとるよう弾性ワイヤを仕込むには、熱処理を用いてもよい。例えば留置フレームは、弾性ワイヤをプレッツェル形状に形成し、その弾性ワイヤを500℃を上回る温度で5分間超にわたり熱処理することにより形成されてもよい。留置フレームが低い弾性率のエラストマーを含む実施形態では、膀胱留置フレームを形成する工程は、フレームがばねとして機能するようにフレームに1つ以上の巻き、コイル、ループ又はらせんを形成することを含み得る。例えば留置フレームは、特に、押出し、液状射出成形、トランスファー成形、又はインサート成形により形成されてもよい。
【0144】
[0156]装置本体の留置フレームとの連係は、留置フレームを装置本体の留置フレームルーメンに挿入することを含み得る。いくつかの実施形態において、留置フレームをルーメンに挿入する間、留置フレームの遠位端は断面がより大きい滑面球状に鈍端にされるか、又は被覆されている。この球により、装置本体の壁を穿刺することなく留置フレームルーメンを通じて留置フレームを送り込むことが容易となり得る。同様にいくつかの実施形態では、留置フレームを挿入する間、装置本体は2つの表面間が僅かに圧縮されてもよい。装置本体を圧縮することにより留置フレームルーメンに入る開口が引き伸ばされ、装填が容易となる。
【0145】
[0157]いくつかの実施形態において、装置本体の留置フレームとの連係は、留置フレームを装填した後に留置フレームルーメンに充填材料を充填することをさらに含む。充填材料は、留置フレームによって占有されないルーメンの残りの部分を占有し、装置本体が留置フレームに沿って伸びたり、又はその周りに捩れたり、若しくは回転したりする能力を低減する。例えば、シリコーン又は別のポリマーを留置フレームルーメンに注入し、又は流し込んでもよく、及びそこで硬化させてもよい。他の実施形態において、装置本体の留置フレーム部分との連係は、装置本体を留置フレームの周りにオーバーモールディングするなどして、2つの部分を合わせて一体形成することを含み得る。
【0146】
[0158]装置本体における1つ以上の開口部の形成は、装置本体に1つ以上の穴をレーザードリル加工するか、又は機械的に打ち抜くことを含み得る。開口部はまた、Richards et al.に対する米国特許第6,808,522号に記載されるとおりインデンタと共に成形するなどして、装置本体と同時に形成されてもよい。
【0147】
[0159]直接圧縮打錠法、成形法、又は製薬分野で公知の他の方法により作製される薬物錠剤。好適な薬物錠剤形成方法は、上記で参照される米国特許出願に記載される。
【0148】
[0160]薬物錠剤の薬物送達装置への装填は、1つ以上の薬物錠剤を薬物送達装置の上流に、その入口に隣接して配置し、加圧ガス流により薬物錠剤を薬物送達装置に推進させることにより行われ得る。好適な薬物錠剤装填方法及びシステムは、上記で参照される米国特許出願に記載される。他の薬物錠剤装填方法を用いることもできる。
【0149】
[0161]植込み型薬物送達装置の作製方法のいくつかの工程及びサブ工程は、他の順序で、又は同時に実施されてもよい。例えば留置フレームは、単位薬物を装置本体に装填する前、或いはその後に、装置本体と連係されてもよい。同様に開口部は、薬物錠剤が装填される前、或いはその後に、装置本体に形成されてもよい。
【0150】
[0162]実施形態において、植込み型薬物送達装置の作製方法は、薬物リザーバルーメン内への1つ以上の仕切り構造の配置を薬物錠剤の装填と交互に行うなどして、薬物リザーバルーメンを複数の個別の薬物リザーバに分割することをさらに含み得る。実施形態において、本方法は、薬物錠剤を装置本体に密封することをさらに含み得る。本方法はまた、1つ以上の放出制御構造、例えば、装置本体の表面の少なくとも一部分を覆って置かれることで薬物の放出速度を制御するシース若しくはコーティング、又は開口部の1つ又は複数を覆って、若しくはその中に配置されることでそこを通じた薬物の放出開始時間を制御する分解性膜などを、薬物リザーバルーメンと連係させることも含み得る。
【0151】
III.装置の使用及び応用
[0163]装置は体腔又は管腔に植え込まれてもよく、続いて1つ以上の病態を治療するための1つ以上の薬物を、展開部位における1つ以上の組織に対して局所的に、及び/又は展開部位から遠位の他の組織に対して局部的に放出してもよい。放出は長期間にわたり制御され得る。その後、装置は取り出されても、吸収されても、排泄されてもよく、又はそれらの何らかの組み合わせであってもよい。
【0152】
[0164]一例において装置は、薬物送達装置を展開器具に挿通し、装置を展開器具から体内に放すことにより植え込まれる。装置が膀胱などの体腔内で展開される場合、装置が展開器具から出て体腔内に入ると、装置は、拡張した、又はより高プロファイルの形状など、留置形状をとる。図7に例が示され、これは展開器具702を出るに従い留置形状をとる装置700を示す。展開器具702は、カテーテル、尿道カテーテル、又は膀胱鏡などの任意の好適なルーメン装置であってよい。これらの用語は、本明細書では、特に明示的に指示されない限り同義的に用いられる。展開器具1102は市販の装置であっても、又は本薬物送達装置に特別に適合された装置であってもよい。
【0153】
[0165]植込み後、装置は薬物を放出し得る。装置は、所望の所定時間にわたる所望の分量の薬物の持続的、連続的、間欠的、又は周期的な放出をもたらし得る。実施形態において、装置は、12時間、24時間、5日間、7日間、10日間、14日間、又は20、25、30、45、60、若しくは90日間、又はそれ以上など、長期間にわたり所望の用量の薬物を送達することができる。薬物の送達速度及び投薬量は、送達される薬物及び治療される疾患又は病態に応じて選択することができる。
【0154】
[0166]装置が固形剤形の薬物を含む実施形態では、装置からの薬物の溶出は、薬物が装置内で溶解した後に起こる。体液が装置に侵入し、薬物と接触して薬物を可溶化し、その後溶解した薬物が装置から拡散し、又は浸透圧下に、若しくは拡散によって装置から流出する。例えば、装置が膀胱に植え込まれる場合、薬物は尿との接触で可溶化され得る。
【0155】
[0167]続いて、装置が非吸収性であるか、又は他の形で除去が必要な場合など、装置は体内から回収され得る。このための回収装置は当該技術分野において公知であり、又は特別に作製することができる。装置はまた、装置全体が吸収されるか、或いは装置が排尿中に膀胱から排出されるのに十分なまで分解されるなど、完全に、又は部分的に生体吸収性であって、従って回収が不要であってもよい。装置は、薬物の一部、又は好ましくは薬物のほとんど若しくは全てが放出されるまで、回収又は吸収されなくてもよい。必要であれば、続いて薬物装填済みの新しい装置が、回収と同じ手技中に、又は後に、植え込まれてもよい。
【0156】
[0168]図8は装置800の膀胱への植込みを示し、ここでは例として成人男性の解剖学的構造を図示する。展開器具802が尿道から膀胱に挿入されてもよく、展開器具802に装置800を、例えばスタイレット又は滑剤若しくは他の流体の流れにより推進させて挿通し、最終的に装置800を膀胱内に出すことができる。このように装置は、成人或いは小児の、治療を必要とする男性又は女性ヒト患者の膀胱内に植え込まれる。
【0157】
[0169]装置は、独立した手技で、又は別の泌尿器科的若しくは他の手技若しくは手術と併せて、他の手技の前、その最中、或いはその後に、患者の膀胱内に展開され得る。装置は、治療又は予防のために局所組織及び/又は局部組織に送達される1つ以上の薬物を、周術期、術後、或いはその双方に放出し得る。
【0158】
[0170]一実施形態では、自蔵式薬物ペイロードを有する植込み型装置が膀胱内で完全に展開され、少なくとも1つの薬物の持続的な局所送達が有効量で局所的に膀胱に提供される。装置の生体内での展開後、薬物のペイロードの少なくとも一部分は、尿路上皮に対して、及び可能性としては近接組織に対して、治療の提供又は患者の膀胱機能の改善に有効な量で長期間にわたり実質的に連続的に装置から放出される。好ましい実施形態において、装置は膀胱内に留まりながら薬物を所定の期間にわたり、例えば2週間、3週間、4週間、1ヶ月、又はそれ以上放出する。
【0159】
[0171]その場合、装置を使用して、間質性膀胱炎、放射線膀胱炎、骨盤痛、過活動膀胱症候群、膀胱癌、神経因性膀胱、神経障害性若しくは非神経障害性膀胱括約筋不全、感染症、術後痛又は膀胱に送達される薬物で治療される他の疾患、障害、及び病態を治療することができる。装置は、膀胱容量、コンプライアンス、及び/又は無抑制収縮の頻度などの膀胱機能を改善する薬物、膀胱又は他の近接範囲における痛み及び不快感を低減する薬物、又は他の効果を有する薬物、又はそれらの組み合わせの薬物を送達し得る。膀胱で展開される装置はまた、治療有効量の1つ以上の薬物を体内の他の泌尿生殖器部位に、特に、腎臓の一方若しくは双方、尿道、尿管の一方若しくは双方、陰茎、精巣、精嚢の一方若しくは双方、輸精管の一方若しくは双方、射精管の一方若しくは双方、前立腺、腟、子宮、卵巣の一方若しくは双方、又はファロピウス管の一方若しくは双方、又はそれらの組み合わせを含めた、身体の泌尿器系又は生殖器系の範囲内における他の位置などに送達してもよい。例えば、膀胱内薬物送達装置は、数ある疾患、障害、及び病態の中でも特に、腎結石又は腎線維症、勃起障害の治療に使用することができる。
【0160】
[0172]いくつかの実施形態において、膀胱内薬物送達装置は1つ以上の近接した泌尿生殖器部位に局部的に薬物送達するため、患者の膀胱内に展開される。装置は薬物を膀胱に局所的に、及び膀胱に近接した他の部位に局部的に放出し得る。かかる送達は、望ましくない副作用を伴ったり、又は薬物のバイオアベイラビリティが不十分となったりし得る全身投与の代替手段を提供することができる。
【0161】
[0173]一実施形態において、膀胱内薬物送達装置は膀胱内に植え込まれ、泌尿生殖器組織における疾患又は障害などの任意の疼痛源に起因する痛み、又は任意の膀胱の手技、特に、外科手術、カテーテル処置、アブレーション、医療装置の植込み、又は結石若しくは異物の摘出から生じる痛みを管理するため、局所麻酔剤を局所的に送達する。
【0162】
[0174]ある場合には、以下の実施例9に記載するとおり、本装置は局所麻酔剤を膀胱内へと、近接部位に局部送達するために放出し得る。局所麻酔剤は、任意の疼痛源に起因する近接する痛みの管理を促進することができる。例えば装置は、膀胱から離れた部位の術後痛を治療する目的で局所麻酔剤を膀胱に放出し得る。一例において、膀胱に植え込まれた薬物送達装置が薬物を放出することで、尿管内の又は尿管を介した医療装置の通過に関連する術後痛が治療され得る。本装置はまた、局所麻酔剤以外の薬物の局部送達も実現することができ、及び装置が局部送達により術後痛以外の病態を治療することもできる。
【0163】
[0175]詳細な一実施形態において、リドカインのペイロードを有する装置が膀胱に送達されてもよく、リドカインが装置から長期間にわたり連続的に放出されてもよい。一実施形態において、膀胱の尿路上皮へのリドカインの局所送達は、膀胱内で展開された本明細書に開示される装置から、点滴投与によって長期間にわたり実現され得る濃度を上回るが、しかし点滴投与に認められる高い初期ピークはなく、且つ著しい全身濃度のない、持続的なレベルのリドカインを実現する方法で提供される。従って、植え込むペイロードは少なくてよく、装置故障時の全身作用のリスクが低減される。固形剤形のリドカインを植え込むことにより、装置のサイズを低減し、膀胱刺激作用及び患者の不快感を低減することがさらに可能となる。リドカインは尿のpHに関わらず送達され得る。一実施形態において、装置は、異なる時点で放出される2つのリドカインペイロードを有し得る。第1のペイロードは比較的急速に放出されるように構成されてもよく、一方で第2のペイロードはより継続的に放出されるように構成されてもよい。例えば、第1のペイロードは液状形態であってもよく、又は比較的薄い壁を有するシリコーンチューブなどの比較的速効性の浸透圧ポンプに格納されてもよく、一方で第2のペイロードは固形剤形であってもよく、又は比較的厚い壁を有するシリコーンチューブなどの、放出までに初期遅延又は誘導時間を経る浸透圧ポンプに格納されてもよい。従ってこの方法は、初期の急性相の間及び維持相の間にリドカインを膀胱内に継続的に放出し得る。かかる方法は、装置の初期誘導時間を補償し得る。
【0164】
耐容可能且つ認識不可能な装置の使用方法
[0176]実施例4、5、6、及び7は生体内試験について記載し、これらの試験から、本明細書に記載される薬物送達装置がヒト又はイヌの膀胱に展開されたとき、意外にも良好に耐容され得ること、及びヒトの場合、さらに予想外なことに、膀胱において本質的に認識不可能であり得ることが示される。すなわち、本明細書に記載される装置を患者は感知することができない。この耐容性の発見に基づき、ヒト患者の特定の新規治療方法が提供され得る。
【0165】
[0177]本装置のこの属性により、薬物の送達により得られる利益と比べて耐容可能であることそのものが重要でない場合の適応症に対し、医師が薬物療法を選択することが可能となる。本明細書に記載される高度に耐容可能な(認識不可能な)装置により、膀胱に対する局所的な薬物療法が、医学上の必要性が高いにもかかわらず未だ対処されていない患者に加えて、現行の戦略の代替となる治療法の検討を望み得る患者を含むまでに拡張され得る。例えば、活動性膀胱疾患に関して不応性の患者(無効力又は副作用に起因して1つ以上の抗コリン剤が不奏効)であれば、好適ではない耐容性プロファイルを有し得る薬物局所送達システムを耐容する可能性が高いものと思われる。しかしながら膀胱に認識できない装置により、治療は重症度が低い疾患の患者に拡張され、第一選択の経口抗コリン薬の使用に直ちに拮抗する。別の例は、慢性尿路感染症患者の治療用である。標準治療は、膀胱感染症を抑制すべきときに毎日経口抗生物質を数ヶ月間使用するものである。本明細書に記載される高度に耐容可能な装置は、菌耐性をもたらし得る患者コンプライアンス(服用忘れ)に対する懸念が少ないため、長期的な経口療法に取って代わり、優れた治療選択肢を提供し得る。膀胱の耐容性が第一の関心事項であるさらなる例には、間質性膀胱炎、放射線膀胱炎、膀胱痛症候群、前立腺炎、尿道炎、尿失禁、急迫性尿失禁、神経性失禁、膀胱三角炎、痙性神経因性膀胱、弛緩性神経因性膀胱、膀胱感染症、前立腺感染症、尿道感染症、泌尿器科的手技又は手術に関連する周術期疼痛、及び泌尿器科的手技又は手術に関連する術後疼痛が含まれる。
【0166】
[0178]一実施形態において、本方法は、治療の耐容性が第一の関心事項である場合の膀胱における治療を必要とする患者を選択する工程と;薬物送達装置を患者の膀胱に展開する工程と;展開された薬物送達装置から薬物を放出する工程とを含み、ここで展開された薬物送達装置は通常になく患者に良好に耐容される。本明細書で使用されるとき、語句「治療の耐容性が第一の関心事項である場合の膀胱における治療を必要とする患者」は、少なくとも1つの代替的な薬物療法、例えば経口薬物療法が、患者の治療上の必要性に対応することを目的とした患者に対する投与に利用可能であることを意味し、この代替的な治療法は患者の膀胱内への薬物送達装置の展開を含まない。かかる患者の選択は、代替的な経口薬物療法が特定の患者に有効であるかどうかが分かる前に行われる。患者が生命を脅かす病態の治療を必要としている場合、又は患者にとって経口薬物療法が利用不可能で効果がない場合、耐容性は第一の関心事項ではない。患者が慢性病態の治療を必要としている場合に代替的な第一選択の薬物治療が存在して利用可能である場合、耐容性が第一の関心事項である。
【0167】
[0179]一実施形態では、ヒト患者の治療方法が提供され、これは(i)治療の耐容性が第一の関心事項である場合の膀胱における治療を必要とする患者を選択する工程と;(ii)患者の尿道を通じて患者の膀胱内まで薬物送達装置を展開する工程と;(iii)数日間又は数週間継続し得る治療期間にわたり、展開された薬物送達装置から膀胱内に薬物を放出する工程とを含む。好ましい実施形態において、患者は治療期間の少なくとも大部分において自身の膀胱内に展開された装置を感知することができない。
【0168】
[0180]本発明は以下の非限定的な例を参照してさらに理解され得る。
【実施例】
【0169】
実施例1:薬物送達装置
[0181]上記に提供される記載に従い、図9に概略的に示される薬物送達装置を作製した。この装置は2つのルーメンを有するシリコーン本体を含んだ。大きい方のルーメンに、総薬物ペイロードを約275mgとして塩酸リドカインの固形錠剤を装填した。小さい方のルーメンに、直径が約0.23mmのニチノールワイヤフォームを装填した。ニチノールワイヤフォームは概して装置を示される定置形状に維持した。定置形状では、装置は概して、装置についての対称軸である短径軸又は短軸と、短径軸又は短軸に略垂直な長径軸又は長軸とにより画定される平面内に置かれた。装置の長径軸に沿った幅又は最大寸法は約35mmであり、装置の短径軸に沿った高さ又は最大寸法は約30mmであった。定置平面に垂直な方向の装置の厚さは約2.6mmであった。コイルを解くと、装置は約17cmの長さを有した。錠剤装填時且つ乾燥時の装置の密度は約1.15g/cmであった。
【0170】
実施例2:プラセボ装置
[0182]プラセボ装置もまた作製した。プラセボ装置は、装置がその大きい方のルーメンに薬物錠剤を全く含まないことを除き、上記に実施例1に関連して記載される装置と同じであった。従って、プラセボ装置の密度が約0.62g/cmであったことを除き、プラセボ装置は実施例1の装置と同じパラメータを有した。
【0171】
実施例3:別の薬物送達装置
[0183]上記に提供される記載に従い、図10に概略的に示される別の薬物送達装置を作製した。この装置は2つのルーメンを有するシリコーン本体を含んだ。大きい方のルーメンに、総薬物ペイロードを約895mgとして塩酸リドカインの固形錠剤を装填した。小さい方のルーメンに、直径が約0.28mmのニチノールワイヤフォームを装填した。ニチノールワイヤフォームは概して装置を示される定置形状に維持した。定置形状では、装置は概して、装置についての対称軸である短径軸又は短軸と、短径軸又は短軸に略垂直な長径軸又は長軸とにより画定される平面内に置かれた。装置の長径軸に沿った幅又は最大寸法は約45mmであり、装置の短径軸に沿った高さ又は最大寸法は約35mmであった。定置平面に垂直な方向の装置の厚さは約3.75mmであった。コイルを解くと、装置は約17cmの長さを有した。錠剤装填時且つ乾燥時の装置の密度は約1.20g/cmであった。
【0172】
実施例4:第1の耐容性試験
[0184]本開示に従う薬物送達装置の被験者による耐容性を評価する第1相試験(TAR−100−101)を実施した。この試験には10人の健常な成人女性ボランティア被験者が参加した。試験装置は、上記に実施例2に関連して記載するプラセボ装置と実質的に同様であった。7人の被験者が試験装置を受けた。装置は経膀胱鏡的に膀胱内への挿入及びそこからの回収を行った。装置は14日間挿入し、その後取り出した。3人の被験者はニセの膀胱鏡手技のみを受け、その間、被験者への装置の植込み又は取出しは行われなかった。
【0173】
[0185]被験者報告の症状は被験者耐容性評価(Subject Tolerability Assessment:STA)視覚アナログ尺度(VAS)により取った。STA VASは、左端に語句「いつもどおり」があり、且つ右端に語句「いつもと違う」がある100mmの水平線からなった。被験者は、最後の24時間における自身の排尿行動を表す線上の点に印を付けることにより、及び最後の24時間における自身の膀胱の感覚を表す線上の点に印を付けることにより、STA VASに記入するよう指示を受けた。加えて被験者には、上記の設問に対する自身の回答に関して任意のコメントを付すオプションが提供された。STAは、ベースラインとして試験1日目の挿入前から開始し、続く試験日全てに関して収集した。
【0174】
[0186]膀胱の感覚に関しては、試験装置を受けた被験者の体験は、ニセの手技を受けた被験者の体験とほぼ同様であった。排尿行動に関してもまた、試験装置を受けた被験者の体験は、ニセの手技を受けた被験者の体験とほぼ同様であった。この試験で重篤な有害イベントは観察されなかった。この試験から、試験装置は良好に耐容されることが示された。
【0175】
実施例5:第2の耐容性試験
[0187]上記に実施例1に関連して記載される装置に実質的に従う試験装置を使用して、イヌにおける動物試験を実施した。この試験には4匹の大型雑種ハウンドを用いた。各イヌに試験装置を14日間植え込んだ。試験装置は14日間の期間にわたり良好に耐容され、体重、摂食、又は排泄行動の変化など、顕著な臨床所見は特になかった。この試験から、試験装置がイヌにおいて良好に耐容されることが示された。
【0176】
実施例6:第3の耐容性試験
[0188]上記に実施例1に関連して記載される装置に実質的に従う試験装置を使用して、イヌにおける別の動物試験を実施した。この試験には9匹の雌の雑種ハウンドを用いた。経膀胱鏡的に各ハウンドの膀胱に試験装置を留置した。留置後14日目に試験装置を取り出し、同じ型の第2の試験装置をさらに14日間留置した。全ての試験装置が14日間の期間にわたり維持された。最初の治療期間に留置した試験装置はいずれも14日後に膀胱に確認され、経膀胱鏡的に取り出した。第2の治療期間に留置した試験装置はいずれも14日後に膀胱に確認され、経膀胱鏡的に又は解剖により取り出した。早まって排泄された試験装置はなかった。試験装置は雌の雑種ハウンド犬において14日間良好に耐容された。臨床所見、体重、摂食量、眼科検査、心電図、並びに血液学的パラメータ、凝固パラメータ、及び臨床化学パラメータの、試験装置に関連した変化はなかった。局所毒性又は全身毒性のエビデンスはなかった。
【0177】
実施例7:第4の耐容性試験
[0189]上記に実施例3に関連して記載される装置に実質的に従う試験装置を使用して、イヌにおける別の動物試験を実施した。この試験には7匹の雌の雑種ハウンドを用いた。経膀胱鏡的に一部のハウンドの膀胱に試験装置を留置し、残りのハウンドは、膀胱に装置を留置しないニセの膀胱鏡手技に供した。留置後14日目に試験装置を取り出し、同じ型の第2の試験装置をさらに14日間留置し、又はシャム群に対しては2回目のニセの手技を実施した。全ての試験装置が雌の雑種ハウンド犬において14日間維持された。最初の治療期間に留置した試験装置はいずれも14日後に膀胱に確認され、経膀胱鏡的に取り出した。第2の治療期間に留置した試験装置はいずれも14日後に膀胱に確認され、経膀胱鏡的に又は解剖により取り出した。早まって排泄された試験装置はなかった。試験装置は雌の雑種ハウンド犬において14日間良好に耐容された。臨床所見、体重、摂食量、眼科検査、心電図、並びに血液学的パラメータ、凝固パラメータ、及び臨床化学パラメータの、試験装置に関連した変化はなかった。局所毒性又は全身毒性のエビデンスはなかった。
【0178】
実施例8:種々の装置の耐圧縮性
[0190]種々の装置において、圧縮力を受けたときの装置の圧縮挙動を分析する圧縮試験を実施した。5つの異なる装置を圧縮試験に供した。試験結果を図11及び図12に要約する。試験した装置には、直径が約0.23mmのニチノールワイヤ(0.009インチ太さのワイヤフォームとして図11及び図12に示される)、直径が約0.28mm太さのニチノールワイヤ(図11及び図12には0.011インチ太さのワイヤフォームとして示される)、上記の実施例1に記載される装置と実質的に同様の薬物装填済み装置(図11及び図12には装置Aとして示される)、上記の実施例2に記載される装置と実質的に同様のプラセボ装置(図11及び図12には装置Aのプラセボ装置として示される)、及び上記の実施例3に記載される装置と実質的に同様の薬物装填済み装置(図11及び図12には装置Bとして示される)が含まれた。プラセボ装置及び装填済み装置の双方を線量25kGyでγ線照射した。
【0179】
[0191]これらの装置を圧縮試験に供した。1圧縮サイクルについてのデータを収集した。図11は長軸に沿った圧縮、すなわち装置にその長い方の軸に沿って圧縮力を加えたときに装置の形状をその長い方の軸に沿って変化させる傾向を有する圧縮を示し、一方、図12は短軸に沿った圧縮、すなわち装置にその短い方の軸に沿って圧縮力を加えたときに装置の形状をその短い方の軸に沿って変化させる傾向を有する圧縮を示す。
【0180】
[0192]本試験について圧縮速度は30mm/分に設定し、2つの圧縮プラテン間の間隙が変化する間の圧縮荷重を記録した。装置は、2つの圧縮プラテン間の間隙が15mmになるまで圧縮した。試験の結果を図11及び図12にプロットする。各グラフの各装置について、上側の曲線は圧縮中に得られ、下側の曲線は緩和中に得られた。
【0181】
[0193]30mmの間隙距離に圧縮する間に実施例1の装填済み装置によって及ぼされる力は、長軸及び短軸の双方に0.01N未満であった。圧縮中に実施例2のプラセボ装置によって及ぼされる力も同様に、同じ間隙距離で長軸及び短軸の双方に0.01N未満であった。最後に、30mmの間隙距離に圧縮する間に実施例3の装填済み装置によって及ぼされる力は、長軸及び短軸の双方に0.1Nであった。
【0182】
実施例9:局部的薬物送達
[0194]ウサギにおいて、膀胱に植え込まれた薬物送達装置から送達されるリドカインの体内分布を調べる試験を実施した。この実験には4匹のウサギを使用した。ウサギはそれぞれ、その膀胱に試験装置を植え込まれた。試験装置は図6に示す概略的な形状及び構成を有した。ウサギのうち2匹は2mgのリドカインを格納する試験装置を与えて3日後に犠牲にし、一方、残りの2匹のウサギは4mgのリドカインを格納する試験装置を与えて6日後に犠牲にした。
【0183】
[0195]2mgのリドカインを格納する試験装置には、ニチノールワイヤフォーム及び薬物装填済みシリコーンチューブが含まれた。ワイヤフォームは0.2286mmの太さを有し、0.508mmの内径及び約0.9398mmの外径を有するシリコーンチューブ材で被覆した。薬物装填済みシリコーンチューブは約0.3048mmの内径及び約0.635mmの外径を有した。チューブに約2mgのリドカインを装填し、両端を密閉した。チューブの中央付近に直径約50μmの穴を形成し、チューブをニチノールワイヤフォームに、その長手幅にわたって取り付けた。全体として装置は、その長径軸に沿って約30mm幅、その短径軸に沿って約25mm幅、及び約1mm厚であった。
【0184】
[0196]4mgのリドカインを格納する試験装置は、シリコーンチューブが約0.508mmの内径及び0.9398mmの外径を有し、且つチューブに約4mgのリドカインが装填されたことを除き、実質的に2mgのリドカインを格納する試験装置と同じ構成であった。
【0185】
[0197]それぞれのウサギから、詳細には各ウサギの膀胱、尿管、腎臓、心臓、脊髄、及び陰茎尿道から組織試料を採取した。尿管試料は各尿管の遠位部分から採取した。腎臓試料は一方の腎葉の皮質及び髄質から採取した。心臓試料は心尖の心筋層から採取した。脊髄試料は椎弓切除術によってL5〜L7から採取した。試料を酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)に供し、リドカイン及びその代謝産物を検出した。
【0186】
[0198]図13は体内分布グラフであり、試料採取位置の各々におけるウサギ毎のリドカイン/組織濃度を示す。各試料採取位置について、図13は、左端の第1の3日間のウサギ、中央左の第2の3日間のウサギ、中央右の第1の6日間のウサギ、及び右端の第2の6日間のウサギにおいて検出された濃度を示す。示されるとおり、膀胱に植え込まれた装置は、より高濃度のリドカインを膀胱組織及び近接する泌尿生殖器部位、例えば腎臓、尿管、及び陰茎尿道に送達した;一方、心臓及び脊髄などの遠い部位にはより低濃度のリドカインが送達された。6日後に安楽死させた2匹のウサギについては、安楽死直前にL7を脊髄穿刺することにより脳脊髄液もまた採取した。いずれのウサギの脳脊髄液においてもリドカインは検出されなかった。
【0187】
実施例10:排尿中の流体力学的力に対する抵抗性
[0199]上記に図1に関連して記載される形状の装置が排尿中の流体力学的力に耐えることができるかどうかを実験的に決定する排泄実験を実施した。排尿中に内尿道口の真上に位置するあらゆる装置部分が流体力学的力を受け得る。装置の連係するワイヤが十分な剛性を有するならば、各装置は排尿に伴う流体力学的力に抵抗し得るものと考えられた。
【0188】
[0200]2つの装置を試験した。一方は、上記に実施例1に関連して記載される装置と実質的に同様であり、他方は上記に実施例2に関連して記載される装置と実質的に同様であった。第1の装置は約890N/mの曲げばね定数を有すると計算され、及び第2の装置は約2000N/mの曲げばね定数を有すると計算された。曲げばね定数という用語は、概して、ワイヤの軸に対して垂直な曲げに関するばね定数を意味する。線形解析を使用して、力と変位との間の相関を求めた。
【0189】
[0201]この実験は、ドリル加工された穴を有するキャップにより所定位置に固定された、開放したラテックスバルーンを下端に備える垂直なPVCチューブで実施した。PVCチューブに石鹸水を所定の高さまで充填し、次にラテックスバルーンの首部を介して水を自由に流動させることにより、排泄をシミュレートした。女性の内尿道口の直径は約6mmであるため、首部はキャップのドリル加工された穴により制御して直径約6mmに制限した。モデル化して試験した双方の装置とも、実際に排泄実験中の流体力学的力に抵抗した。
【0190】
[0202]別の知見は、最も苛酷な流体力学的力が起こるときにも、装置がその過程の開始時に浮いていた場合には装置が排泄中の最も苛酷な流体力学的力を受けないことであった。浮いている装置は、排尿が終了に向かうに従い、開口部から出る水の流速及び流量が低下すると、その開口に近付いた。装置が排泄される可能性は、単純に、僅かに低い密度を有するなどして排尿の開始時に開口近傍に位置させないことにより回避され得ることが注目された。かかる装置は、排尿の終わりにおける低い流体力学的力に抵抗するための最小限のばね定数はなお必要であり得るが、要件は大幅に軽減され得る。
【0191】
[0203]また装置は、排尿が行われるときにその先端又は端部の一方が開口の真上に位置した場合には、その系から排泄され得ることも観察された。このリスクは、装置が端部を有しないように設計するか、又は装置が定置された状態にあるとき、或いは流体力学的力による抗力を受けるときに、その先端が尿道口に近付かないように設計することにより、低減され得る。
【0192】
[0204]従って、排尿中に尿道口の近傍に位置し得る装置の一部分が排尿中の最大流体力学的力に抵抗することが可能な場合;装置が先端を有しない場合、若しくは先端が尿道口に隣接して位置することができないように配置される場合;又は装置が尿より小さい密度であり、従って排尿中の最大の流体力学的力を受けない場合、装置は排尿中に膀胱に維持され得る。装置はまた、曲げ抵抗性を有する必要があり得る。
【0193】
[0205]前述の詳細な説明から、本明細書に記載される方法及び装置の改良例及び変形例が当業者に明らかであろう。かかる改良例及び変形例は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者の膀胱内で完全に展開可能な、且つ前記患者に良好に耐容される医療装置であって、
(i)膀胱内での可動性を提供し、且つ尿道を通じた前記医療装置の排泄を防止する寸法と、(ii)前記医療装置が尿管口に入り込むのを妨げる寸法、浮力、又はその双方とを有する留置形状を有する弾性本体、を含む装置。
【請求項2】
前記弾性本体が、任意寸法において3cmの最大寸法を有する形状に圧縮されたとき、1N未満の最大作用力を及ぼす、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記弾性本体が、任意寸法において1.5cmの最大寸法を有する形状に圧縮されたとき、1N未満の最大作用力を及ぼす、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
留置形状にあって圧縮されていない前記装置が、10cm未満の任意の方向における最大寸法を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
留置形状にあって圧縮されていない前記装置が、5cm未満の任意の方向における最大寸法を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
留置形状の前記装置が、2.8cm長さの2辺と3.3cm長さの1辺とを有する二等辺三角形の形状を有する開口に前記装置が通り抜けるように嵌まることを許容しない寸法である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記弾性本体が、一つの方向に約4mm未満の外径を有する低プロファイル形状をとるように弾性変形可能である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
乾燥した状態の前記装置が1.5g/mL未満の密度を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
乾燥した状態の前記装置が0.5g/mL〜1.3g/mLの密度を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記弾性本体が、膀胱内で制御放出するための少なくとも1つの薬物を格納し、又は含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記弾性本体が、複数の圧縮錠剤の形態の、少なくとも1つの薬物を含む薬物製剤を格納する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
固形薬物製剤を格納する弾性本体
を含む、ヒト患者の膀胱内で完全に展開可能な、且つ前記患者に良好に耐容される薬物送達装置であって、
前記装置が、前記装置を尿道に挿通するための展開形状と、尿道を通じた前記装置の排泄を防止するための留置形状との間で変形可能であり、前記留置形状が圧縮された状態にあるとき任意寸法において5cmの最大寸法を有し、及び前記留置形状が任意寸法において3cmの最大寸法を有する形状に圧縮されたとき、前記装置が1N未満の最大作用力を及ぼす、装置。
【請求項13】
ヒト患者の治療方法であって、
治療の耐容性が第一の関心事項である場合の膀胱における治療を必要とする患者を選択する工程と、
前記患者の尿道を通じて前記患者の膀胱内まで薬物送達装置を展開する工程と、
治療期間にわたり前記展開された薬物送達装置から膀胱内に薬物を放出する工程と
を含む方法。
【請求項14】
前記治療期間の少なくとも大部分において前記患者が自身の膀胱内にある前記展開された装置を感知することができない、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記選択された患者が、過活動膀胱の治療が必要であることを指示される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記選択された患者が、膀胱痛症候群の治療が必要であることを指示される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記選択された患者が、間質性膀胱炎の治療が必要であることを指示される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記選択された患者が、膀胱、前立腺、又は尿道の感染症の治療が必要であることを指示される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記選択された患者が、神経因性膀胱の治療が必要であることを指示される、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記選択された患者が、前立腺炎又は尿道炎の治療が必要であることを指示される、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記選択された患者が、前記患者に対する泌尿器手術に付随する周術期疼痛又は術後疼痛の治療が必要であることを指示される、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記薬物送達装置が、装置を尿道に挿通するための展開形状と、尿道を通じた前記装置の排泄を防止するための留置形状との間で変形可能であり、前記留置形状が圧縮された状態にあるとき任意寸法において5cmの最大寸法を有し、及び前記留置形状が任意寸法において3cmの最大寸法を有する形状に圧縮されたとき、前記装置が1N未満の最大作用力を及ぼす、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記薬物がリドカイン又は別の麻酔剤を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
患者における泌尿生殖器組織部位の治療方法であって、
前記患者の膀胱内に薬物送達装置を展開する工程と、
薬物を前記薬物送達装置から膀胱内に所定量及び所定速度で放出する工程であって、それにより治療有効量の前記薬物を膀胱以外の少なくとも1つの泌尿生殖器組織部位に投与する工程と、
を含む方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの泌尿生殖器組織部位が、尿道、尿管、腎臓、陰茎、精巣、前立腺、精嚢、射精管、輸精管、腟、子宮、卵巣、ファロピウス管、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
膀胱内で展開される前記薬物送達装置の耐容性が第一の関心事項である場合の治療を必要とする患者を選択する工程をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記薬物送達装置が薬物送達部分と留置フレーム部分とを含み、前記薬物送達部分が前記薬物を含む固形薬物製剤を格納し、前記留置フレーム部分が前記装置を膀胱に維持するように構成される、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記薬物送達装置が、前記装置を尿道に挿通するための展開形状と、尿道を通じた前記装置の排泄を防止するための留置形状との間で変形可能であり、前記留置形状が圧縮された状態にあるとき任意寸法において5cmの最大寸法を有し、及び前記留置形状が任意寸法において3cmの最大寸法を有する形状に圧縮されたとき、前記装置が1N未満の最大作用力を及ぼす、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記薬物がリドカイン又は別の麻酔剤を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記選択された患者が、前記患者に対する泌尿器手術に付随する周術期疼痛又は術後疼痛の治療が必要であることを指示される、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図5I】
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【図5J】
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【図5K】
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【図5L】
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【図5M】
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【図5N】
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【図5O】
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【図5P】
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【図5Q】
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【図5R】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図6H】
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【図6I】
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【図6J】
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【図6K】
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【図6L】
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【図6M】
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【図6N】
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【図6O】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−514837(P2013−514837A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544930(P2012−544930)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/061161
【国際公開番号】WO2011/084712
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(511305575)タリス バイオメディカル,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】