説明

膀胱細胞増殖性障害の分析のための方法及び核酸

本発明は、膀胱癌を検出するための方法、核酸及びキットを提供する。本発明は、上記障害の検出改善に有用なメチル化パターンを有するゲノム配列を開示し、これによって患者の診断及び治療の改善が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正常な状態に比べて疾患状態において発現パターンの変化を示すゲノムDNA配列に関する。特定の実施の形態が、膀胱癌を検出又は診断するのに有用な方法、核酸、核酸アレイ及びキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
CpGアイランドメチル化。
CpGアイランドの異常なメチル化によって、これまでに膀胱癌を含む様々な細胞増殖性障害の発症に関係するとされてきた或る特定の遺伝子の転写サイレンシングが引き起こされることが分かっている。CpGアイランドは、CpGジヌクレオチドに豊富にある配列であり、通常全てのヒト遺伝子のおよそ50%の5’領域で見出すことができる。これらのアイランドにおけるシトシンのメチル化は、遺伝子発現の欠失をもたらし、X染色体の不活性化及びゲノムインプリンティングで報告されている。
【0003】
医学的検査の発展。
任意の医学的スクリーニング又は診断検査の2つの鍵となる評価基準は、その感度及び特異度であり、これらによって、例外なく、また誤って標的疾患(予測値)を有しない個体を包含することなく、全ての罹患個体を正確に検出するのに試験がどのくらい効果的であるかが評価される。歴史的に、感度及び特異度が低いため、多くの診断検査が批判されている。
【0004】
真陽性(TP)結果は、検査が陽性であり、かつ症状がある場合である。偽陽性(FP)結果は、検査が陽性であるが、症状がない場合である。真陰性(TN)結果は、検査が陰性であり、かつ症状がない場合である。偽陰性(FN)結果は、検査が陰性であるが、症状がある場合である。これに関して、感度=TP/(TP+FN)、特異度=TN/(FP+TN)、及び予測値=TP/(TP+FP)である。
【0005】
感度は、検査対象の個体において標的疾患を正確に検出する検査能の評価基準である。感度が低い検査では、偽陰性、すなわち疾患であるのに、この特定の疾患ではないと誤って特定される個体の割合が高くなる。偽陰性の潜在的な危険性は、罹患個体が一定期間、診断及び治療されず、その間に疾患が後期に進行し、そのような場合に治療を行ったとしても効果が低くなる可能性があることである。感度が低い検査の例は、HIVに関するタンパク質ベースの血液検査である。この種の検査は、疾患が確定され、相当数のウイルスが血流に侵入するまでウイルスの存在を検出することができないため、低感度を示す。これに対して、感度が高い検査の例は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用したウイルス量(viral-load)検出である。この種の検査は、ごく少量のウイルスを検出することができるために、高感度が達成される。結果として診断を誤る可能性が高い場合に、高感度は特に重要である。
【0006】
他方で特異度は、疾患状態にない患者を正確に特定する検査能の評価基準である。特異度が低い検査では、偽陽性、すなわち疾患であるとして誤って特定される個体の割合が高くなる。偽陽性の難点は、付帯リスク、感情及び金銭的なストレスを伴い、かつ患者の健康に対して悪影響を与える可能性がある、不必要な医療処置、治療を受けることを患者に強いることである。特異度が高い診断検査を開発することを難しくしている疾患の特徴は、特に細胞増殖性障害における疾患機構に複数の遺伝子及びタンパク質が関与することが多いことである。さらに、疾患状態に関係のない理由から或る特定のタンパク質が上昇する可能性がある。更なる診断法又は更なる医学的介入に伴うコスト又はリスクが非常に高い場合に、特異度は重要である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、被験体において膀胱癌を検出する方法であって、上記被験体から単離した生体試料においてAC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の発現レベルを決定することを含み、高メチル化及び/又は低発現が上記障害の存在の指標となる、被験体において膀胱癌を検出する方法を提供する。本発明の様々な態様が有効かつ特別な遺伝子マーカーを提供し、そのため上記マーカーの発現分析により、感度、特異度及び/又は予測値が特に高い膀胱癌の検出が可能になる。
【0008】
本発明は、膀胱癌を検出する方法であって、被験体から単離した生体試料においてAC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のメチル化状態及び/又は発現レベルを決定することを含み、高メチル化及び/又は低発現が上記障害の存在の指標となる、膀胱癌を検出する方法も提供する。
【0009】
一実施の形態では、本発明は、被験体において膀胱癌を検出する方法であって、上記被験体から単離した生体試料において、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の発現レベルを決定することを含み、低発現及び/又はCpGメチル化が、上記障害の存在の指標となる、被験体において膀胱癌を検出する方法を提供する。一実施の形態では、上記遺伝子から転写されるmRNAの有無又はレベルを検出することによって、上記発現レベルを決定する。更なる実施の形態では、上記遺伝子によってコードされるポリペプチド又はその配列の有無又はレベルを検出することによって、上記発現レベルを決定する。
【0010】
更に好ましい実施の形態では、上記遺伝子内のCpGメチル化の有無を検出することによって、上記発現を決定し、低発現が膀胱癌の存在を示す。
【0011】
上記方法は、i)被験体から得られた(好ましくは膀胱組織試料、組織片(histological slides)、パラフィン包埋組織、血漿又は血清等の体液、細胞株、尿検体からなる群から選択される)生体試料から単離したゲノムDNAを、ゲノムDNAの少なくとも1つの標的領域内でメチル化CpGジヌクレオチドと非メチル化CpGジヌクレオチドとを識別する少なくとも1つの試薬又は試薬群に接触させる工程であって、上記標的領域のヌクレオチド配列が、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のCpGジヌクレオチド配列を少なくとも1つ含む、接触させる工程と、ii)膀胱癌を少なくとも一部検出する工程とを含む。好ましくは標的領域は、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列の少なくとも16個の連続したヌクレオチドの配列を含むか、又はストリンジェントな条件下でこの配列とハイブリダイズする。
【0012】
遺伝子の上記使用は、遺伝子の発現の任意の分析により、mRNA発現分析又はタンパク質発現分析により可能となり得る。しかしながら本発明の最も好ましい実施の形態では、膀胱癌の検出は、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列、並びにそのプロモータ又は制御要素のメチル化状態の分析により可能となる。
【0013】
本発明は、膀胱癌の発症に関連する特徴に関して生体試料を分析する方法であって、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される核酸又はその断片を、ゲノム配列内でメチル化CpGジヌクレオチドと非メチル化CpGジヌクレオチドとを識別することのできる試薬又は試薬群に接触させることを特徴とする、膀胱癌の発症に関連する特徴に関して生体試料を分析する方法を提供する。
【0014】
本発明は、膀胱癌の発症に関連するゲノムDNAのエピジェネティックパラメータを確認する方法を提供する。本方法は、上記疾患の検出及び診断の改善に有用である。
【0015】
好ましくは、検査試料の供給源は、膀胱組織試料、組織片、パラフィン包埋組織、血漿又は血清等の体液、細胞株、尿検体、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0016】
具体的には本発明は、診断ツールでの使用に適した膀胱癌を検出する方法であって、ゲノム核酸(複数も可)を含む生体試料を得ること;該核酸(複数も可)又はその断片を、被験体の核酸の標的配列内でメチル化CpGジヌクレオチド配列と非メチル化CpGジヌクレオチド配列とを識別するのに十分な試薬又は複数の試薬に接触させることであって、該標的配列が、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列の少なくとも16個の連続したヌクレオチドを含む配列を含むか、又はストリンジェントな条件下でこの配列とハイブリダイズし、上記連続したヌクレオチドがCpGジヌクレオチド配列を少なくとも1つ含む、接触させること;並びに少なくとも一部上記識別に基づき、少なくとも1つの標的となるCpGジヌクレオチド配列のメチル化状態、又は複数の標的となるCpGジヌクレオチド配列のメチル化状態の平均、又はその平均を反映する値を求めることを含む、診断ツールでの使用に適した膀胱癌を検出する方法を提供する。
【0017】
好ましくは、標的配列内でメチル化CpGジヌクレオチド配列と非メチル化CpGジヌクレオチド配列とを識別することは、配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75からなる群から選択される配列、及び標的配列に対応するそれらの連続した領域内での少なくとも1つのこのようなCpGジヌクレオチド配列の対応する変換又は非変換のジヌクレオチド配列へのメチル化状態依存性の変換又は非変換を含む。個々の配列番号に対応するヌクレオチド配列を表1、表2及び表3にまとめる。
【0018】
本発明によるヌクレオチド配列の少なくとも一部を、膀胱癌の検出、サブクラス間の(between or among)検出及び分類、診断、予後診断、治療、モニタリング、治療及びモニタリング、治療のモニタリング、治療結果の予測、及び段階分類のうちの少なくとも1つに利用するのが特に好ましい。
【0019】
更なる実施の形態によって、膀胱癌を検出する方法であって、被験体のゲノムDNAを有する生体試料を得ること、ゲノムDNAを抽出すること、ゲノムDNA又はその断片を1つ又は複数の試薬で処理することであって、5位の非メチル化シトシン塩基を、ウラシル残基又はハイブリダイゼーション特性に関してシトシンと異なることが検出可能な別の塩基に変換する、処理すること、処理ゲノムDNA又はその処理断片を、増幅酵素、並びにそれぞれの場合、配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75からなる群から選択される配列に相補的であるか、又は適度にストリンジェントな条件若しくはストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長の連続した配列及びその相補体を含む少なくとも2つのプライマーに接触させることであって、処理DNA又はその断片のいずれかを増幅して増幅産物を産生するか、又は増幅しない、接触させること、並びに上記増幅産物の有無又は特性に基づき、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列の少なくとも1つ、しかしより好ましくは複数のCpGジヌクレオチドのメチル化状態、又はその平均、又はメチル化レベルの平均を反映する値を決定することを含む、膀胱癌を検出する方法が提供される。
【0020】
好ましくは、決定には、i)配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75からなる群から選択される配列に相補的であるか、又は適度にストリンジェントな条件若しくはストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長の連続した配列及びその相補体を含む少なくとも1つの核酸分子をハイブリダイズすること、ii)固相と結合し、配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75からなる群から選択される配列に相補的であるか、又は適度にストリンジェントな条件若しくはストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長の連続した配列及びその相補体を含む少なくとも1つの核酸分子をハイブリダイズすること、iii)配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75からなる群から選択される配列に相補的であるか、又は適度にストリンジェントな条件若しくはストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長の連続した配列及びその相補体を含む少なくとも1つの核酸分子をハイブリダイズするとともに、少なくとも1つのこのようなハイブリダイズした核酸分子を、少なくとも1ヌクレオチド塩基伸長させること、並びにiv)増幅産物をシークエンシングすることからなる群から選択される少なくとも1つの方法の使用が含まれる。
【0021】
更なる実施の形態によって、膀胱癌の分析(すなわち検出又は診断)方法であって、被験体のゲノムDNAを有する生体試料を得ること、ゲノムDNAを抽出すること、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される1つ又は複数の配列、又はストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする配列を含むゲノムDNA又はその断片を、1つ又は複数のメチル化感受性制限酵素と接触させることであって、それによってゲノムDNAを消化し消化断片を産生するか、又はそれによっては消化しない、接触させること、並びに少なくとも1つのこのような断片の有無又は特性に基づき、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列のメチル化状態、又はその複数のCpGジヌクレオチド配列のメチル化状態の平均、又はその平均を反映する値を決定することを含む、膀胱癌の分析(すなわち検出又は診断)方法が提供される。好ましくは、上記決定前に、消化ゲノムDNA又は非消化ゲノムDNAを増幅する。
【0022】
更なる実施の形態は、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列内でのシトシンのメチル化パターンの分析のための新規のゲノム核酸配列及び化学修飾した核酸配列、並びにオリゴヌクレオチド及び/又はPNA−オリゴマーを提供する。
【0023】
発明の詳細な説明
定義
「実測値/期待値の比(Expected Ratio)」(「O/E比」)という用語は、特定のDNA配列内のCpGジヌクレオチドの頻度を表し、それぞれの断片に関して[CpG部位の数/(C塩基の数×G塩基の数)]/バンド長に対応する。
【0024】
「CpGアイランド」という用語は、(1)0.6を超えた「実測値/期待値の比」に対応するCpGジヌクレオチド頻度を有し、かつ(2)0.5を超える「GC含量」を有するという基準を満たすゲノムDNAの連続した領域を表す。CpGアイランドの長さは、いつもというわけではないが、通常約0.2KB〜約1KB又は約2kbである。
【0025】
「メチル化状態」又は「メチル化状況」という用語は、DNA配列内の1つ又は複数のCpGジヌクレオチドでの5−メチルシトシン(「5−mCyt」)の有無を表す。DNA配列内の1つ又は複数の特定のCpGメチル化部位(それぞれが2つのCpGジヌクレオチド配列を有する)でのメチル化状態としては、「非メチル化」、「完全メチル化」及び「ヘミ−メチル化」が挙げられる。
【0026】
「ヘミ−メチル化」又は「ヘミメチル化」という用語は、1つの鎖だけがメチル化している二本鎖DNAのメチル化状態を表す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「AUC」という用語は、曲線下面積の略語である。特に、AUCは、受信者動作特性(Receiver Operating Characteristic)(ROC)曲線下面積を表す。ROC曲線は、診断検査の異なり得る切点に関する、偽陽性率に対する真陽性率のプロットである。このプロットは、選択された切点に応じた感度と特異度との間のトレードオフを示す(任意の感度増大は、特異度の減少を伴う)。ROC曲線下面積(AUC)は、診断検査の正確性の評価基準である(面積が大きければ大きいほど良好であり、最適値は1であり、無作為検査は、面積が0.5の対角線上に位置するROC曲線を有する。J.P. Egan. Signal Detection Theory and ROC Analysis, Academic Press,New York, 1975を参照されたい)。
【0028】
「マイクロアレイ」という用語は、当該技術分野で認識されるように、広く「DNAマイクロアレイ」と「DNAチップ(複数も可)」との両方を表し、当該技術分野で認識される固体支持体を全て包含し、またその固体支持体に核酸分子を付加する方法、又はその固体支持体上で核酸を合成する方法を全て包含する。
【0029】
「遺伝的パラメータ」は、その調節に更に必要となる遺伝子及び配列の突然変異及び多型である。突然変異と規定されるものは、特に挿入、欠失、点突然変異、反転及び多型、特に好ましくは一塩基変異多型(SNP)である。
【0030】
「エピジェネティックパラメータ」は特に、シトシンのメチル化である。しかし、更なるエピジェネティックパラメータには、例えば記載の方法を使用して直接分析することはできないが、同様にDNAメチル化と相関するヒストンのアセチル化が含まれる。
【0031】
「重亜硫酸試薬」という用語は、本明細書に開示されるようにメチル化CpGジヌクレオチド配列と非メチル化CpGジヌクレオチド配列とを識別するのに有用である、重亜硫酸塩、二亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、又はこれらの組合せを含む試薬を表す。
【0032】
「メチル化アッセイ」という用語は、DNAの配列内の1つ又は複数のCpGジヌクレオチド配列のメチル化状態を決定する任意のアッセイを表す。
【0033】
「MS.AP−PCR」という用語(メチル化感受性任意プライムポリメラーゼ連鎖反応(Methylation-Sensitive Arbitrarily-Primed Polymerase Chain Reaction))は、CpGジヌクレオチドを含有する可能性が最も高く、かつGonzalgo et al., Cancer Research 57:594-599, 1997に記載の領域に焦点を当てるのに高CGプライマーを使用して、ゲノムの広域精査を可能にする当該技術分野で認識される技術を表す。
【0034】
「MethyLight(商標)」という用語は、Eads et al., Cancer Res. 59:2302-2306, 1999に記載の当該技術分野で認識される蛍光ベースのリアルタイムPCR法を表す。
【0035】
本明細書で実施される、その実施の形態における「HeavyMethyl(商標)」アッセイという用語は、増幅プライマー間のCpG位置をカバーする、又は増幅プライマーによってカバーされる、メチル化特異的な遮断プローブ(本明細書でブロッカー(blockers)とも称される)によって、核酸試料のメチル化特異的な選択増幅が可能になるアッセイを表す。
【0036】
本明細書で実施される、その実施の形態における「HeavyMethyl(商標)MethyLight(商標)」アッセイという用語は、MethyLight(商標)アッセイを、増幅プライマー間のCpG位置をカバーするメチル化特異的な遮断プローブと組合せたMethyLight(商標)アッセイの変法である、HeavyMethyl(商標)MethyLight(商標)アッセイを表す。
【0037】
「Ms−SNuPE」(メチル化感受性単一ヌクレオチドプライマー伸長)という用語は、Gonzalgo & Jones, Nucleic Acids Res. 25:2529-2531, 1997で記載された当該技術分野で認識されるアッセイを表す。
【0038】
「MSP」(メチル化特異的PCR)という用語は、Herman et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:9821-9826, 1996及び米国特許第5,786,146号で記載された当該技術分野で認識されるメチル化アッセイを表す。
【0039】
「COBRA」(複合重亜硫酸制限分析)という用語は、Xiong & Laird, Nucleic Acids Res. 25:2532-2534, 1997で記載された当該技術分野で認識されるメチル化アッセイを表す。
【0040】
「MCA」(メチル化CpGアイランド増幅)という用語は、Toyota et al., Cancer Res. 59:2307-12, 1999、及び国際公開第00/26401号で記載されたメチル化アッセイを表す。
【0041】
「ハイブリダイゼーション(hybridisation)」という用語は、オリゴヌクレオチドと、二本鎖構造を形成する試料DNAにおいて一連のワトソン−クリック塩基対合に沿った相補的な配列との結合と理解される。
【0042】
本明細書で規定される場合、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、5×SSC/5×デンハート溶液/1.0%SDS中、68℃でハイブリダイズすること、及び0.2×SSC/0.1%SDS中、室温で洗浄することを伴うか、又は当該技術分野で認識されるその等価物(例えば、2.5×SSCバッファー中、60℃でハイブリダイゼーションを行った後に、低いバッファー濃度における37℃での幾つかの洗浄工程を行い、安定状態を保つ条件)を伴う。本明細書で規定される場合、適度にストリンジェントな条件は、3×SSC中、42℃での洗浄、又は当該技術分野で認識されるその等価物を含むことを伴う。塩濃度及び温度のパラメータを変更し、プローブと標的核酸との間に最適な同一性レベルを達成することができる。このような条件に関するガイダンスが、例えばSambrook et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, ColdSpring Harbor Press, N.Y.、及びAusubel et al.(eds.), 1995, Current Protocols in MolecularBiology,(John Wiley & Sons, N.Y.)at Unit 2.10によって当該技術分野で利用可能である。
【0043】
「メチル化特異的制限酵素」又は「メチル化感受性制限酵素」という用語は、その認識部位のメチル化状態によって選択的に核酸を消化する酵素を意味するものとする。認識部位がメチル化又はヘミメチル化されないと特異的に切断するこのような制限酵素の場合、切断が起こらないか、又は認識部位がメチル化されると効率は大幅に低減する。認識部位がメチル化されると特異的に切断するこのような制限酵素の場合、切断が起こらないか、又は認識部位がメチル化されないと効率が大幅に低減する。メチル化特異的制限酵素が好ましく、その認識配列は、CGジヌクレオチド(例えばcgcg又はcccggg)を含有する。シトシンがこのジヌクレオチドにおいて炭素原子C5でメチル化されても切断しない制限酵素が幾つかの実施の形態では更に好ましい。
【0044】
「非メチル化特異的制限酵素」又は「非メチル化感受性制限酵素」は、効率がほぼ同一であるメチル化状態に関係なく核酸配列を切断する制限酵素である。これらは、「メチル化非特異的制限酵素」とも呼ばれる。
【0045】
複合アレイ配列に関して、「連続したヌクレオチド」という語句は、複合アレイの任意の個々の連続した配列の連続した配列領域を表すが、本明細書中の上記で規定されるように、「ノード」を含む複合アレイ配列領域は含まない。
【0046】
「AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列」という用語は、その全ての転写変異型と、その全てのプロモータ及び調節要素とを含むものとする。さらに、複数のSNPが上記遺伝子内で知られているので、この用語は、その全ての配列変異型を含むものとする。
【0047】
概説
本発明は、被験体において膀胱癌を検出する方法であって、上記被験体から単離した生体試料においてAC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の発現レベルを決定することを含み、高メチル化及び/又は低発現が上記障害の存在の指標となる、方法を提供する。上記マーカーは、膀胱癌の診断に使用し得る。
【0048】
PRDM14は、ヒストンのメチルトランスフェラーゼ活性を発揮することにより胚性幹細胞におけるエピジェネティック遺伝子の発現の制御に関与すると考えられる転写因子をコードする。またDMRT2は、細胞発達プロセスに関与し、かつ泌尿系を含む多くの器官で発現する転写因子をコードする。CYP1B1の遺伝子産物はモノオキシゲナーゼのシトクロムp450スーパーファミリーに属し、胚発生及び出生後早期発生中にレチノイン酸の供給源として働く。SOX1は、神経細胞の分化及び細胞運命決定を調節する複数の経路に関与する転写因子をコードする。分子レベルで、SOX1はHES1のプロモータと結合することにより作用し、それによりHES1転写を阻害し、続いてNotchシグナル伝達を低減する。AC051635.7の配列は、Ensemblデータベース内の項目と一致する(www.ensembl.org)。本明細書で使用される場合、「AC051635.7」という用語は配列番号96と同じ意味である。しかしながら、AC051635.7及びその遺伝子産物の生物学的機能はこれまでに知られていない。
【0049】
AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のメチル化分析を分析する上記の実施の形態に加えて、本発明は、膀胱癌の検出に対して新規の有用性を有する、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列を含む更なる遺伝子パネルを提示している。
【0050】
DNAの重亜硫酸修飾は、CpGメチル化状態を評価するのに使用される当該技術分野で認識されたツールである。5−メチルシトシンの存在に関してDNAを分析するのに最も頻繁に使用される方法は、重亜硫酸塩とシトシンとの反応に基づいており、これにより続くアルカリ加水分解の際、シトシンが塩基対合挙動においてチミンに対応するウラシルへと変換される。しかしながら重要なことには、5−メチルシトシンはこれらの条件下では修飾されないままである。結果として、ここでは元々そのハイブリダイゼーション挙動ではシトシンとは識別することができないメチルシトシンを、標準的な当該技術分野で認識された分子生物学的技法を用いて、例えば増幅及びハイブリダイゼーションにより、又はシークエンシングにより残る唯一のシトシンとして検出することができるように、元のDNAが変換される。これらの技法は全て、異なる塩基対合特性に基づいており、ここではそれを十分に活用することができる。
【0051】
当該技術分野で認識される5−メチルシトシンを検出する方法の概略は、Rein, T., et al., Nucleic Acids Res., 26:2255, 1998で与えられる。
【0052】
幾つかの例外を除いて(例えばZeschnigk M, et al., Eur J Hum Genet. 5:94-98, 1997)、重亜硫酸技法は、現在研究においてのみ使用されている。概して、重亜硫酸処理後に、既知の遺伝子の短く特異的な断片を増幅し、完全にシークエンシングして(Olek & Walter, Nat Genet. 1997 17:275-6, 1997)、1つ又は複数のプライマー伸長反応を行い(Gonzalgo & Jones, Nucleic Acids Res., 25:2529-31, 1997、国際公開第95/00669号、米国特許第6,251,594号)、個々のシトシン位置を分析するか、又は酵素消化によって処理する(Xiong & Laird, Nucleic Acids Res., 25:2532-4, 1997)。ハイブリダイゼーションによる検出も、当該技術分野で記載されている(Olek et al.、国際公開第99/28498号)。さらに、個々の遺伝子に対するメチル化検出のための重亜硫酸技法の使用が記載されている(Grigg & Clark, Bioessays, 16:431-6, 1994、Zeschnigk M, et al., Hum Mol Genet., 6:387-95, 1997、Feil R, et al., Nucleic Acids Res., 22:695-, 1994、Martin V, et al., Gene, 157:261-4, 1995、国際公開第9746705号及び国際公開第9515373号)。
【0053】
本発明は、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列内のCpGジヌクレオチド配列のメチル化状況を決定するための1つ又は複数のメチル化アッセイと組合せた重亜硫酸技法の使用を提供する。ゲノムCpGジヌクレオチドをメチル化又は非メチル化(代替的には、それぞれ上方メチル化及び下方メチル化として知られている)することができる。しかし、本発明の方法は、不均一性を有する生体試料(例えば血液又は精液のバックグラウンド内の低濃度の腫瘍細胞)の分析に好適である。したがって、このような試料内のCpG位置のメチル化状況を分析する際、当業者は、メチル化状態に対して特定のCpG位置のメチル化のレベル(例えばパーセント、分数、比、割合又は程度)を決定するのに定量的アッセイを使用してもよい。したがって、「メチル化状況」又は「メチル化状態」という用語は、CpG位置のメチル化度を反映する値も意味するものとする。特に記述がない限り、「高メチル化」又は「上方メチル化」という用語は、特定のカットオフ点のメチル化レベルを超えるメチル化レベルを意味するものとし、上記カットオフは、所定の集団に対する平均若しくは中央値のメチル化レベルを表す値であり得るか、又は最適化されたカットオフレベルであるのが好ましい。「カットオフ」は、本明細書で「閾値」とも称される。本発明に関して、「メチル化」、「高メチル化」又は「上方メチル化」という用語は、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列内、及び(例えばプロモータ又は調節領域において)これらと関連する全てのCpG位置に対して、カットオフを超えるメチル化レベルが、0%(又はそれと同等の)メチル化であることを含むものとする。
【0054】
本発明によれば、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列内のCpGジヌクレオチド配列のメチル化状況の決定は、膀胱癌の診断及び検出に有用である。
【0055】
メチル化アッセイ法。
様々なメチル化アッセイ法が当該技術分野で既知であり、本発明と併せて使用することができる。これらのアッセイによって、DNA配列内の1つ又は複数のCpGジヌクレオチド(例えばCpGアイランド)のメチル化状態の決定が可能になる。このようなアッセイは、数ある技法の中でも重亜硫酸処理DNAのDNAシークエンシング、(配列特異的な増幅のための)PCR、サザンブロット分析、及びメチル化感受性制限酵素の使用を伴う。
【0056】
例えば、重亜硫酸処理を利用することによって、DNAメチル化パターンの分析及び5−メチルシトシン分布のためのゲノムシークエンシングを単純化している(Frommer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1827-1831, 1992)。さらに、重亜硫酸変換されたDNAから増幅したPCR産物の制限酵素消化、例えばSadri & Hornsby(Nucl. Acids Res.24:5058-5059, 1996)に記載されている方法、又は複合重亜硫酸制限分析(COBRA)(Xiong& Laird, Nucleic Acids Res. 25:2532-2534, 1997)を利用する。
【0057】
COBRA。
COBRA(商標)分析は、少量のゲノムDNAで特定遺伝子座のDNAメチル化レベルを決定するのに有用である定量的メチル化アッセイである(Xiong & Laird, Nucleic Acids Res. 25:2532-2534, 1997)。要するに、制限酵素消化を利用して、重亜硫酸ナトリウム処理したDNAのPCR産物においてメチル化依存的配列差異を明らかにする。初めに、Frommer et al.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA89:1827-1831, 1992)で記載された手法に従った標準的な重亜硫酸処理によって、ゲノムDNAにメチル化依存的配列差異を導入する。それから、対象となるCpGアイランドに特異的なプライマーを使用して、重亜硫酸変換したDNAのPCR増幅を行った後、制限エンドヌクレアーゼ消化、ゲル電気泳動、及び特異的な標識ハイブリダイゼーションプローブを使用した検出を行う。元のDNA試料のメチル化レベルは、広範なDNAメチル化レベルにわたって一次定量的に、消化及び非消化PCR産物の相対量で表す。また、この技法は確実に、顕微解剖したパラフィン包埋組織試料から得られたDNAに適用することができる。
【0058】
COBRA(商標)分析に典型的な試薬(例えば典型的なCOBRA(商標)ベースキットで見出され得るような)には、これらに限定されないが、特定遺伝子(又は重亜硫酸処理DNA配列若しくはCpGアイランド)に関するPCRプライマー、制限酵素及び適切なバッファー、遺伝子ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチド、対照ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチドプローブのためのキナーゼ標識キット、及び標識ヌクレオチドが含まれ得る。また、重亜硫酸変換試薬には、DNA変性バッファー、スルホン化バッファー、DNA回収試薬又はキット(例えば析出カラム、限外濾過カラム、アフィニティカラム)、脱スルホン化バッファー、及びDNA回収成分が含まれ得る。
【0059】
好ましくは、「MethyLight(商標)」等のアッセイ(蛍光ベースのリアルタイムPCR法)(Eads et al., Cancer Res. 59:2302-2306, 1999)、Ms−SNuPE(商標)(メチル化感受性単一ヌクレオチドプライマー伸長)反応(Gonzalgo & Jones, Nucleic Acids Res. 25:2529-2531, 1997)、メチル化特異的PCR(「MSP」、Herman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:9821-9826, 1996、米国特許第5,786,146号)、及びメチル化CpGアイランド増幅(「MCA」、Toyota et al., Cancer Res. 59:2307-12, 1999)を、単独で又は他のこれらの方法と組合せて使用する。
【0060】
「HeavyMethyl(商標)」アッセイ法は、重亜硫酸処理DNAのメチル化特異的増幅に基づき、メチル化の差異を評価する定量的方法である。増幅プライマー間のCpG位置をカバーする、又は増幅プライマーによってカバーされる、メチル化特異的な遮断プローブ(本明細書でブロッカーとも称される)によって、核酸試料のメチル化特異的な選択増幅が可能になる。
【0061】
本明細書で実施される、その実施の形態における「HeavyMethyl(商標)MethyLight(商標)」アッセイという用語は、MethyLight(商標)アッセイを、増幅プライマー間のCpG位置をカバーするメチル化特異的な遮断プローブと組合せたMethyLight(商標)アッセイの変法である、HeavyMethyl(商標)MethyLight(商標)アッセイを表す。HeavyMethyl(商標)アッセイは、メチル化特異的な増幅プライマーと組合せて使用することもできる。
【0062】
HeavyMethyl(商標)分析に典型的な試薬(例えば典型的なMethyLight(商標)ベースキットで見出され得るような)には、これらに限定されないが、特定遺伝子(又は重亜硫酸処理DNA配列若しくはCpGアイランド)に関するPCRプライマー、遮断オリゴヌクレオチド、最適化したPCRバッファー及びデオキシヌクレオチド、並びにTaqポリメラーゼが含まれ得る。
【0063】
MSP。
MSP(メチル化特異的PCR)によって、メチル化感受性制限酵素の使用と関係なく、CpGアイランド内の実質的に任意の群のCpG部位のメチル化状況の評価が可能になる(Herman et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:9821-9826, 1996、米国特許第5,786,146号)。要するに、メチル化シトシンではなく、全ての非メチル化シトシンをウラシルに変換する重亜硫酸ナトリウムによってDNAを修飾し、その後非メチル化DNAに対してメチル化DNAに特異的なプライマーで増幅する。ごく少量のDNAしか必要としないMSPは、所定のCpGアイランド座の0.1%メチル化対立遺伝子に感受性であり、パラフィン包埋試料から抽出したDNAで行うことができる。MSP分析に典型的な試薬(例えば典型的なMSPベースキットで見出され得るような)には、これらに限定されないが、特定遺伝子(又は重亜硫酸処理DNA配列若しくはCpGアイランド)に関するメチル化PCRプライマー及び非メチル化PCRプライマー、最適化したPCRバッファー及びデオキシヌクレオチド、並びに特異的プローブが含まれ得る。
【0064】
MethyLight(商標)。
MethyLight(商標)アッセイは、PCR工程後に更に操作を必要としない蛍光ベースのリアルタイムPCR(TaqMan(登録商標))法を利用するハイスループット定量的メチル化アッセイである(Eads et al., Cancer Res. 59:2302-2306, 1999)。要するに、MethyLight(商標)プロセスはゲノムDNAの混合試料から始め、これは、標準的な手法に従って、重亜硫酸ナトリウム反応中にメチル化依存的な配列差異がある混合プールに変換される(重亜硫酸プロセスによって、非メチル化シトシン残基がウラシルに変換される)。それから、蛍光ベースのPCRを「偏向(biased:バイアス)」(既知のCpGジヌクレオチドと重複するPCRプライマーによる)反応中に行う。配列識別(discrimination)は、増幅プロセスのレベルと蛍光検出プロセスのレベルとの両方で行うことができる。
【0065】
MethyLight(商標)アッセイは、ゲノムDNA試料におけるメチル化パターンに関する定量的検査として使用してもよく、配列識別はプローブハイブリダイゼーションのレベルで起こる。この定量的なバージョンでは、PCR反応によって、特定の推定メチル化部位と重複する蛍光プローブの存在下でメチル化特異的な増幅が与えられる。プライマーもプローブも全くCpGジヌクレオチドに重ならない反応によって、DNAの導入量に対する不偏制御が与えられる。代替的に、既知のメチル化部位を「カバー」しない対照オリゴヌクレオチド(HeavyMethyl(商標)法及びMSP法の蛍光ベースのバージョン)、又は潜在的なメチル化部位をカバーするオリゴヌクレオチドのいずれかで偏向PCRプールをプローブ化することによって、ゲノムメチル化に関する定性的検査を行う。
【0066】
例えば「TaqMan(登録商標)」、Lightcycler(登録商標)等の任意の好適なプローブとともにMethyLight(商標)プロセスを使用することができる。例えば、二本鎖ゲノムDNAを重亜硫酸ナトリウムで処理し、TaqMan(登録商標)プローブを使用して、例えばMSPプライマー及び/又はHeavyMethylブロッカーオリゴヌクレオチド及びTaqMan(登録商標)プローブで、2組のPCR反応の1つを行う。TaqMan(登録商標)プローブは、蛍光「レポータ」及び「消光(quencher:クエンサ)」分子で二重標識し、このプローブがフォワードプライマー又はリバースプライマーよりも約10℃高い温度でPCRサイクル中に溶融するように、比較的GC含量が高い領域に特異的になるように設計する。これによって、TaqMan(登録商標)プローブをPCRアニーリング/伸長工程中、十分なハイブリダイズ状態に維持することが可能になる。Taqポリメラーゼが、PCR中に新規の鎖を酵素的に合成するので、最終的には、アニーリングしたTaqMan(登録商標)プローブに達する。それから、Taqポリメラーゼ5’→3’エンドヌクレアーゼ活性によって、リアルタイム蛍光検出システムを使用して、現時点で消光していないシグナルを定量的に検出するために、蛍光レポータ分子を放出するように消化することによって、TaqMan(登録商標)プローブが置き換わる。
【0067】
MethyLight(商標)分析に典型的な試薬(例えば典型的なMethyLight(商標)ベースキットで見出され得るような)には、これらに限定されないが、特定遺伝子(又は重亜硫酸処理DNA配列若しくはCpGアイランド)に関するPCRプライマー、TaqMan(登録商標)又はLightcycler(登録商標)プローブ、最適化したPCRバッファー及びデオキシヌクレオチド、並びにTaqポリメラーゼが含まれ得る。
【0068】
QM(商標)(定量的メチル化)アッセイは、ゲノムDNA試料におけるメチル化パターンに関する代替的な定量的検査であり、配列識別はプローブハイブリダイゼーションのレベルで起こる。この定量的なバージョンでは、PCR反応によって、特定の推定メチル化部位と重複する蛍光プローブの存在下で不偏増幅が与えられる。プライマーもプローブも全くCpGジヌクレオチドに重ならない反応によって、DNAの導入量に対する不偏制御が与えられる。代替的に、既知のメチル化部位を「カバー」しない対照オリゴヌクレオチド(HeavyMethyl(商標)法及びMSP法の蛍光ベースのバージョン)、又は潜在的なメチル化部位をカバーするオリゴヌクレオチドのいずれかで偏向PCRプールをプローブ化することによって、ゲノムメチル化に関する定性的検査を行う。
【0069】
増幅プロセスにおいて例えば「TaqMan(登録商標)」、Lightcycler(登録商標)等の任意の好適なプローブとともにQM(商標)プロセスを使用することができる。例えば、二本鎖ゲノムDNAを重亜硫酸ナトリウムで処理し、不偏プライマー及びTaqMan(登録商標)プローブに曝す。TaqMan(登録商標)プローブは、蛍光「レポータ」及び「消光」分子で二重標識し、このプローブがフォワードプライマー又はリバースプライマーよりも約10℃高い温度でPCRサイクル中に溶融するように、比較的GC含量が高い領域に特異的になるように設計する。これによって、TaqMan(登録商標)プローブをPCRアニーリング/伸長工程中、十分なハイブリダイズ状態に維持することが可能になる。Taqポリメラーゼが、PCR中に新規の鎖を酵素的に合成するので、最終的には、アニーリングしたTaqMan(登録商標)プローブに達する。それから、Taqポリメラーゼ5’→3’エンドヌクレアーゼ活性によって、リアルタイム蛍光検出システムを使用して、現時点で消光していないシグナルを定量的に検出するために、蛍光レポータ分子を放出するように消化することによって、TaqMan(登録商標)プローブが置き換わる。
【0070】
QM(商標)分析に典型的な試薬(例えば典型的なQM(商標)ベースキットで見出され得るような)には、これらに限定されないが、特定遺伝子(又は重亜硫酸処理DNA配列若しくはCpGアイランド)に関するPCRプライマー、TaqMan(登録商標)又はLightcycler(登録商標)プローブ、最適化したPCRバッファー及びデオキシヌクレオチド、並びにTaqポリメラーゼが含まれ得る。
【0071】
Ms−SNuPE。
Ms−SNuPE(商標)法は、DNAの重亜硫酸処理に基づき、特定のCpG部位でのメチル化差異を評価した後に、単一ヌクレオチドプライマー伸長を行う、定量的方法である(Gonzalgo & Jones, Nucleic Acids Res. 25:2529-2531, 1997)。要するに、ゲノムDNAを重亜硫酸ナトリウムと反応させて、非メチル化シトシンをウラシルに変換させるが、5−メチルシトシンは変わらない。それから、重亜硫酸変換したDNAに特異的なPCRプライマーを使用して、所望の標的配列の増幅を行い、得られた産物を、対象となるCpG部位(複数も可)のメチル化分析のための鋳型として単離及び使用する。少量のDNA(例えば顕微解剖した病理切片)を分析することができ、CpG部位のメチル化状態を決定するのに、制限酵素の利用が回避される。
【0072】
Ms−SNuPE(商標)分析に典型的な試薬(例えば典型的なMs−SNuPE(商標)ベースキットで見出され得るような)には、これらに限定されないが、特定遺伝子(又は重亜硫酸処理DNA配列若しくはCpGアイランド)に関するPCRプライマー、最適化したPCRバッファー及びデオキシヌクレオチド、ゲル抽出キット、陽性対照プライマー、特定遺伝子に対するMs−SNuPE(商標)プライマー、(Ms−SNuPE反応のための)反応バッファー並びに標識ヌクレオチドが含まれ得る。さらに、重亜硫酸変換試薬には、DNA変性バッファー、スルホン化バッファー、DNA回収試薬又はキット(例えば析出カラム、限外濾過カラム、アフィニティカラム)、脱スルホン化バッファー、及びDNA回収成分が含まれ得る。
【0073】
配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列によるゲノム配列(複数も可)及び配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75によるその非天然処理変異型には、膀胱癌の検出に新規の有用性があることを求めた。
【0074】
1つの実施の形態において、本発明の方法は、i)AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の発現を決定する工程と、ii)膀胱癌の有無を決定する工程とを含む。
【0075】
本発明の方法は、それから転写したRNA又は上記RNAから翻訳したポリペプチド若しくはタンパク質の発現分析のいずれか、好ましくはmRNA発現分析又はポリペプチド発現分析によって可能になり得る。しかしながら、本発明の最も好ましい実施の形態では、膀胱癌の検出は、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列、並びに/若しくはそのプロモータ又は制御要素のメチル化状態の分析によって可能になる。
【0076】
したがって、本発明は、被験体におけるAC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の発現の検出、及びそれからの上記被験体における膀胱癌の有無の決定に関する定量的かつ定性的な診断アッセイ及び方法も提供する。
【0077】
AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列から転写したmRNAの異常な発現は、被験体において膀胱癌の存在に関連する。本発明によれば、高メチル化及び/又は低発現は、膀胱癌の存在に関連する。
【0078】
遺伝子又はゲノム配列をコードするmRNAの存在を検出するために、患者から試料を得る。試料は腫瘍の細胞物質(cellular matter)を含む任意の好適な試料であり得る。好適な試料型としては、膀胱組織試料、組織片、パラフィン包埋組織、血漿又は血清等の体液、細胞株、及びその全ての可能のある組合せが挙げられる。上記試料型が尿検体であるのが好ましい。
【0079】
試料を処理して、そこに含有されるRNAを抽出することができる。それから、試料から得られる核酸を分析する。遺伝子発現の絶対レベル及び相対レベルを決定する多くの技法が現行の技術水準で知られており、本発明に使用するのに適した一般的に使用される技法としては、in situハイブリダイゼーション(例えばFISH)、ノーザン分析、RNase保護アッセイ(RPA)、マイクロアレイ及びPCRベースの技法(定量的PCR及び示差表示PCR又は任意の他の核酸検出法等)が挙げられる。
【0080】
逆転写/ポリメラーゼ連鎖反応法(RT−PCR)の使用が特に好ましい。RT−PCRの方法は当該技術分野で既知である(例えば、Watson and Fleming(上記)を参照されたい)。
【0081】
RT−PCR法は、以下のように行うことができる。例えば標準的なイソチオシアネートグアニジウム法によって総細胞RNAを単離し、総RNAを逆転写する。逆転写法は、逆転写酵素及び3’末端オリゴヌクレオチドdTプライマー及び/又はランダム六量体プライマーを使用したRNA鋳型上でのDNA合成を伴う。それから、このようにして産生したcDNAをPCRによって増幅する(Belyavsky et al, Nucl Acid Res 17:2919-2932, 1989、Krug and Berger, Methods in Enzymology, Academic Press, N.Y.,Vol.152, pp. 316-325, 1987、参照により援用される)。PCR産物をハイブリダイゼーションプローブ(例えばTaqMan、Lightcycler、Molecular Beacons及びScorpion)又はSYBRグリーンで検出する、RT−PCRの「リアルタイム」変法が更に好ましい。それから、検量線を参照するか、又はCt値と較正基準の値とを比較することによって、プローブ又はSYBRグリーンから検出されるシグナルを定量化する。結果を正規化するのには、ハウスキーピング遺伝子分析が使用されることが多い。
【0082】
ノーザンブロット分析において、総mRNA又はポリ(A)+ mRNAを変性アガロースゲル上に泳動し、乾燥ゲル自体における又は膜上の標識プローブとのハイブリダイゼーションによって検出する。得られたシグナルは、RNA集団において標的RNAの量に比例する。
【0083】
2つ以上の細胞集団又は組織からのシグナルを比較することによって、遺伝子発現レベルの相対的差異が明らかになる。シグナルと、標的RNAに対応する既知の量のin vitro転写産物を使用して作成した検量線とを比較することによって、絶対的定量化を行うことができる。発現レベルが条件に関係なく相対的に一定のままであると予測される遺伝子である、ハウスキーピング遺伝子の分析は、結果を正規化し、RNAの膜への不均衡な移動、又はゲル上のRNAの不均衡な充填によって引き起こされるあらゆる見掛けの差異を取り除くのに使用されることが多い。
【0084】
ノーザン分析の第1工程は、対象となる細胞又は組織から純粋で無傷のRNAを単離することである。ノーザンブロットは、サイズによってRNAを識別するので、試料の完全性は、シグナルが単一バンドに局在化する程度に影響を与える。部分的に分解したRNA試料によって、シグナルが塗抹されるか、又は幾つかのバンドにわたって分散され、全体的に感度が失われ、データが誤って解釈される可能性がある。ノーザンブロット分析では、DNA、RNA及びオリゴヌクレオチドプローブを使用することができ、これらのプローブを標識するのが好ましい(例えば放射線標識、質量標識又は蛍光標識)。プローブではない標的RNAのサイズによって、検出バンドのサイズが決定されるため、可変長のプローブを作製するランダムプライム化標識のような方法がプローブ合成に好適である。プローブの比活性によって、感度レベルが決定されるため、比活性が高いプローブを使用するのが好ましい。
【0085】
RNase保護アッセイにおいて、RNA標的及び規定長のRNAプローブを溶液中でハイブリダイズする。ハイブリダイゼーション後、一本鎖核酸に特異的なRNaseでRNAを消化し、任意のハイブリダイズしていない一本鎖の標的RNA及びプローブを除去する。RNaseを不活性化し、例えば、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、RNAを分離する。無傷のRNAプローブの量は、RNA集団における標的RNAの量に比例する。RPAは、遺伝子発現の相対的及び絶対的定量化、並びにまたRNA構造(イントロン/エキソン境界及び転写開始部位等)のマッピングに使用することができる。RNase保護アッセイは、一般的に検出限界がより低いのでノーザンブロット分析よりも好ましい。
【0086】
RPAに使用するアンチセンスRNAプローブは、規定の終点を有するDNA鋳型のin vitro転写によって作製し、通常は50ヌクレオチド〜600ヌクレオチドの範囲内である。標的RNAと相同ではない付加的配列を含むRNAプローブの使用によって、保護断片を完全長プローブと識別することが可能になる。一本鎖RNAプローブを作製するのが容易であり、かつRNaseによるRNA:RNA二本鎖消化に再現性及び信頼性があるので(Ausubel et al. 2003)、通常はDNAプローブの代わりにRNAプローブを使用し、比活性が高いプローブが特に好ましい。
【0087】
マイクロアレイの使用が特に好ましい。マイクロアレイ分析プロセスは、2つの主要部に分けることができる。初めに、スライドガラス又は他の固体支持体上に既知の遺伝子配列を固定した後、スライドガラス(又は他の固相)上に固定した既知の遺伝子に対して、蛍光標識したcDNA(検索する配列を含む)をハイブリダイゼーションする。ハイブリダイゼーション後、蛍光マイクロアレイスキャナを使用して、アレイを精査する。異なる遺伝子の相対的蛍光強度を分析することは、遺伝子発現の差異の評価基準を与える。
【0088】
準備したスライドガラス又は他の固体表面上に前合成したオリゴヌクレオチドを固定化することによって、DNAアレイを作製することができる。この場合、標準的なオリゴヌクレオチド合成法及び精製法を使用して、代表的な遺伝子配列を製造及び調製する。これらの合成遺伝子配列は、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のRNA転写産物(複数も可)に相補的であり、25ヌクレオチド〜70ヌクレオチドの範囲内でより短い配列である傾向がある。代替的に固定化オリゴは、スライド表面上にin situで化学合成することができる。in situオリゴヌクレオチド合成は、適切なヌクレオチドをマイクロアレイ上のスポットに逐次付加することを伴い、ヌクレオチドを受けていないスポットは、物理的マスク又は仮想マスクを使用して、各プロセス段階中で保護される。好ましくは、上記合成核酸は、ロックド(locked)核酸である。
【0089】
発現プロファイリングマイクロアレイの実験において、使用するRNA鋳型は、研究中の細胞又は組織の転写プロファイルの代表的なものである。初めに、比較する細胞集団又は組織からRNAを単離する。それから逆転写反応を介して蛍光標識cDNAを作製するために、各RNA試料を鋳型として使用する。cDNAの蛍光標識は、直接標識法又は間接標識法のいずれかで達成することができる。直接標識中、蛍光修飾ヌクレオチド(例えばCy(登録商標)3−dCTP又はCy(登録商標)5−dCTP)は、逆転写中にcDNAに直接組み込まれる。代替的に、間接標識は、cDNA合成中、アミノアリル修飾ヌクレオチドを組み込み、それから逆転写反応が完了した後、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル色素と、アミノアリル修飾cDNAとを結合することによって達成することができる。代替的に、プローブは、標識しなくてもよく、直接又は間接的に標識したリガンドとの特異的結合によって検出することもできる。リガンド(及びプローブ)を標識するのに適した標識及び方法は当該技術分野で既知であり、例えば既知の方法(例えばニックトランスレーション又はキナージング(kinasing))によって組み込まれ得る放射性標識が含まれる。他の好適な標識としては、ビオチン、蛍光基、化学発光基(例えばジオキセタン、特に誘発ジオキセタン)、酵素、抗体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
差次的遺伝子発現分析を行うために、様々なRNA試料から作製したcDNAをCy(登録商標)3で標識する。得られた標識cDNAを精製し、組み込まれなかったヌクレオチド、遊離色素及び残留RNAを除去する。精製後、標識cDNA試料をマイクロアレイとハイブリダイズする。ハイブリダイゼーション中、及び洗浄手順中、多くの因子(温度、イオン強度、時間の長さ、ホルムアミド濃度を含む)によって、ハイブリダイゼーションの緊縮性を決定する。これらの因子は、例えばSambrook et al.(Molecular Cloning: ALaboratory Manual, 2nd ed., 1989)で概説される。ハイブリダイゼーション後、蛍光マイクロアレイスキャナを使用して、マイクロアレイを精査する。各スポットの蛍光強度は分析遺伝子の発現レベルを示し、明るいスポットは強く発現する遺伝子に対応し、暗いスポットは弱い発現を示す。
【0091】
画像を得たら、生データを分析する必要がある。初めに、各スポットの蛍光からバックグラウンド蛍光を差し引く必要がある。それから、データを制御配列(外から加えられた核酸(好ましくはRNA又はDNA)、又は任意の非特異的ハイブリダイゼーション、アレイセットアップにおけるアレイ不完全性又は変動性、cDNA標識化、ハイブリダイゼーション又は洗浄の原因となる(account for)ハウスキーピング遺伝子パネル等)に正規化する。データの正規化によって、複数のアレイ結果の比較が可能になる。
【0092】
本発明の別の態様は、本発明の方法に従って、被験体において膀胱癌を検出又は診断するのに使用するキットであって、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の転写レベルを測定する手段を含む、キットに関する。好ましい実施の形態では、転写レベルを測定する手段は、ストリンジェントな条件又は適度にストリンジェントな条件下で、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の転写産物とハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む。最も好ましい実施の形態では、ノーザンブロット分析、逆転写酵素PCR、リアルタイムPCR、RNAse保護、及びマイクロアレイの群から選択される技法によって転写レベルを決定する。本発明の別の実施の形態ではキットは、患者の生体試料を得る手段を更に含む。転写レベルを測定する手段及び患者の生体試料を収容するのに好適であるのが最も好ましいコンテナを更に含み、最も好ましくはキット結果を利用及び解釈するための取扱説明書を更に含むキットが好ましい。
【0093】
好ましい実施の形態において、キットは、(a)ストリンジェントな条件又は適度にストリンジェントな条件下で、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の転写産物とハイブリダイズすることができる複数のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドと、(b)好ましくは、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド及び転写産物を含む患者の生体試料を収容するのに好適であるコンテナであって、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドは、ストリンジェントな条件又は適度にストリンジェントな条件下で転写産物とハイブリダイズすることができる、コンテナと、(c)(b)のハイブリダイゼーションを検出する手段と、任意で(d)キット結果を利用及び解釈するための取扱説明書とを含む。キットは、(a)ストリンジェントな条件又は適度にストリンジェントな条件下で、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99及び配列番号100、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の転写産物とハイブリダイズすることができる複数のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドと、(b)好ましくは、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド及び転写産物を含む患者の生体試料を収容するのに好適であるコンテナであって、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドは、ストリンジェントな条件又は適度にストリンジェントな条件下で転写産物とハイブリダイズすることができる、コンテナと、(c)(b)のハイブリダイゼーションを検出する手段と、任意で(d)キット結果を利用及び解釈するための取扱説明書とを含むことも好ましい。
【0094】
キットは、別々のコンテナに入った状態で、ハイブリダイゼーションバッファー等の他の成分(オリゴヌクレオチドはプローブとして使用する)を含有してもよい。代替的に、標的領域を増幅するのにオリゴヌクレオチドを使用する場合、キットは、ポリメラーゼと、ポリメラーゼによって媒介されるプライマー伸長(PCR等)のために最適化した反応バッファーとを別々のコンテナに入った状態で含有してもよい。上記ポリメラーゼは逆転写酵素であるのが好ましい。上記キットはRnase試薬を含有するのが更に好ましい。
【0095】
本発明は、患者から得られた試料において上記遺伝子配列によってコードされるポリペプチドの存在を検出する方法を更に提供する。
【0096】
AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列によってコードされるポリペプチドの異常なレベルのポリペプチド発現は、膀胱癌の存在に関連する。
【0097】
本発明によれば、上記ポリペプチドの低発現は、膀胱癌の存在に関連する。
【0098】
ポリペプチドを検出する当該技術分野で既知の任意の方法を使用することができる。このような方法としては、質量分析法(masss-spectrometry)、免疫拡散法、免疫電気泳動法、免疫化学法、バインダ−リガンドアッセイ、免疫組織化学技法、凝集及び補体アッセイ(例えばBasic and Clinical Immunology, Sites and Terr, eds., Appleton &Lange, Norwalk, Conn. pp 217-262, 1991(参照により援用される)を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。抗原をエピトープ(単数又は複数)と反応させること、及び標識ポリペプチド又はその誘導体を競合的に置き換えることを含むバインダ−リガンドイムノアッセイ法が好ましい。
【0099】
本発明の或る特定の実施の形態は、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列によってコードされるポリペプチド(複数も可)に特異的な抗体の使用を含む。
【0100】
このような抗体は、膀胱癌の診断に有用である。或る特定の実施の形態では、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体の産生は、抗原(antigene)としてAC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のポリペプチドによってコードされるエピトープの使用によって誘導することができる。そのような抗体は更に、細胞増殖性障害、好ましくは膀胱癌の診断用のマーカーとして発現ポリペプチドを検出するのに使用してもよい。存在するこのようなポリペプチドのレベルは従来方法によって定量化することができる。抗体−ポリペプチド結合は、当該技術分野で既知の様々な手段(蛍光リガンド又は放射性リガンドによる標識化等)によって検出及び定量化することができる。本発明は、上述の手順を行うためのキットを更に含み、このようなキットは、研究するポリペプチドに特異的な抗体を含有する。
【0101】
多くの競合ポリペプチド結合イムノアッセイ及び非競合ポリペプチド結合イムノアッセイが、当該技術分野で既知である。このようなアッセイで利用する抗体は、例えば凝集検査で使用される場合、標識されず、又は多種多様なアッセイ法を使用する場合は標識され得る。使用することができる標識としては、放射性核種、酵素、蛍光因子(fluorescers)、化学発光因子(chemiluminescers)、酵素基質又は補因子、酵素阻害剤、粒子、色素等が挙げられる。好ましいアッセイとしては、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ、例えば酵素免疫測定法(ELISA)、蛍光イムノアッセイ等が挙げられるが、これらに限定されない。当該技術分野で既知の多くの方法のいずれかによってイムノアッセイに使用するために、ポリクローナル抗体若しくはモノクローナル抗体又はそのエピトープを作製することができる。
【0102】
本方法の代替的な実施の形態において、タンパク質をウェスタンブロット分析で検出することができる。上記分析は、当該技術分野で標準的なものであり、簡潔に言えば電気泳動(例えばSDS−PAGE)によってタンパク質が分離される。それから、分離タンパク質を好適な膜(又は紙)、例えばニトロセルロースに移し、電気泳動によって達成された空間的分離を維持する。その後、膜上で粘性の残る場所と結合させるために、膜を遮断剤とインキュベートする。一般的に使用される作用物質にはジェネリックタンパク質(例えば乳タンパク質)が含まれる。それから、対象となるタンパク質に特異的な抗体を添加し、上記抗体は、例えば色素又は酵素的手段(例えばアルカリホスファターゼ又はホースラディッシュペルオキシダーゼ)によって検出可能に標識する。その後、膜上の抗体位置を検出する。
【0103】
本方法の代替的な実施の形態において、タンパク質を免疫組織化学法(試料におけるプローブ特異的な抗原に抗体を使用すること)によって検出することができる。上記分析は、当該技術分野で標準的なものであり、組織における抗原の検出が免疫組織化学法として知られている一方で、培養細胞における検出は一般的に、免疫細胞化学法と呼ばれている。簡単に言うと一次抗体は、その特異的な抗原と結合することで検出する。それから、抗体−抗原複合体は、酵素結合した二次抗体によって結合する。必要となる基質及び色原体の存在下では、抗体−抗原結合部位での発色沈殿物によって、結合酵素を検出する。様々な好適な試料の種類、抗原−抗体親和性、抗体の種類、及び検出増大法が存在する。このため、免疫組織化学的検出又は免疫細胞化学的検出に最適な条件は、各々の場合で当業者が決定しなければいけない。
【0104】
ポリペプチドに対する抗体を調製するアプローチの1つは、アミノ酸配列を化学的に合成し、それを適切な動物(通常はウサギ又はネズミ)に注射する、ポリペプチドの全て又は一部のアミノ酸配列の選択及び調製である(Milstein and Kohler Nature 256:495-497, 1975、Gulfre and Milstein, Methods in Enzymology: ImmunochemicalTechniques 73:1-46, Langone and Banatis eds., Academic Press, 1981、その全体が参照により援用される)。ポリペプチド又はそのエピトープを調製する方法としては、化学合成、組み換えDNA技法、又は生体試料からの単離が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
本方法の最終工程では、患者の診断を決定し、それにより(mRNA又はポリペプチドの)低発現は、膀胱癌の存在の指標となる。「低発現」という用語は、平均、中央値又は最適化した閾値からなる群から選択され得る所定のカットオフ値よりも低い検出レベルでの発現を意味するものとする。「過剰発現」という用語は、平均、中央値又は最適化した閾値からなる群から選択され得る所定のカットオフ値よりも高い検出レベルでの発現を意味するものとする。
【0106】
本発明の別の態様は、本発明の方法に従って、被験体において膀胱癌を診断するのに使用するキットであって、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列、並びに上記ゲノム配列によりコードされるポリペプチドを検出する手段を含む、キットを提供する。ポリペプチドを検出する手段は、抗体、抗体誘導体、又は抗体断片を含むのが好ましい。標識抗体を利用するウェスタンブロッティングによって、ポリペプチドを検出するのが最も好ましい。本発明の別の実施の形態ではキットは、患者の生体試料を得る手段を更に含む。患者の生体試料においてポリペプチドを検出する手段を収容するのに適したコンテナを更に含み、最も好ましくはキット結果を利用及び解釈するための取扱説明書を更に含むキットが好ましい。好ましい実施の形態ではキットは、(a)AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列、並びに上記遺伝子及びゲノム配列によりコードされるポリペプチドを検出する手段と、(b)上記手段及びポリペプチドを含む患者の生体試料を収容するのに適したコンテナであって、該手段が、ポリペプチドと複合体を形成することができる、コンテナと、(c)(b)の複合体を検出する手段と、任意で(d)キット結果を利用及び解釈するための取扱説明書とを含む。(a)配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99及び配列番号100、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列、並びに上記遺伝子及びゲノム配列によりコードされるポリペプチドを検出する手段と、(b)上記手段及びポリペプチドを含む患者の生体試料を収容するのに適したコンテナであって、該手段は、ポリペプチドと複合体を形成することができる、コンテナと、(c)(b)の複合体を検出する手段と、任意で(d)キット結果を利用及び解釈するための取扱説明書とを含むキットも好ましい。
【0107】
キットは、別々のコンテナに入った状態で、遮断、洗浄又はコーティングに適したバッファー又は溶液等の他の成分を含有してもよい。
【0108】
本発明の特定の実施の形態は、膀胱癌の正確な検出、特徴付け及び/又は治療を可能にする、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列内のメチル化のレベル及び/又はパターンの分析の新規の用途を提供する。膀胱癌の早期検出は、疾患の予後診断に直接関係し、これによって開示の方法により、医師及び患者がより良好かつ多くの情報を得た上で治療法を決定することが可能となる。
【0109】
本方法の最も好ましい実施の形態において、膀胱癌の有無を、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の1つ又は複数のCpGジヌクレオチドのメチル化状況の分析によって決定する。
【0110】
1つの実施の形態において、上記本発明の方法は、i)被験体から得られた(好ましくは尿検体から単離した)ゲノムDNAを、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列(そのプロモータ及び調節領域を含む)内でメチル化CpGジヌクレオチドと非メチル化CpGジヌクレオチドとを識別する、少なくとも1つの試薬又は試薬群に接触させる工程と、ii)膀胱癌を検出する工程とを含む。
【0111】
AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の上記1つ又は複数のCpGジヌクレオチドが、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される、少なくとも1つの各ゲノム標的配列及びそれらの相補体内に含まれることが好ましい。本発明は、シトシンのメチル化を分析することによって、被験体内でAC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列、及び/又は配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列の遺伝的パラメータ及び/又はエピジェネティックパラメータを確かめる方法を更に提供する。上記方法は、上記被験体から得られた生体試料において配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列を含む核酸を少なくとも1つの試薬又は試薬群に接触させることであって、上記試薬又は試薬群が標的核酸内でメチル化CpGジヌクレオチドと非メチル化CpGジヌクレオチドとを識別する、接触させることを含む。
【0112】
好ましい実施の形態では、上記方法は以下の工程を含む。第1の工程では、分析対象の組織試料を得る。供給源は任意の好適な供給源、例えば膀胱組織試料、組織片、パラフィン包埋組織、血漿又は血清等の体液、細胞株、及びその全ての可能のある組合せであり得る。上記DNA源が尿検体であるのが好ましい。
【0113】
その後、試料からゲノムDNAを単離する。ゲノムDNAは、市販のキットの使用を含む、当該技術分野で標準的な任意の手段によって単離してもよい。要するに、対象となるDNAが、細胞膜によってその中に封入され、生体試料は、酵素的手段、化学的手段又は機械的手段によって破壊及び溶解される必要がある。それから、例えばプロテイナーゼKによる消化で、DNA溶液からタンパク質及び他の汚染物質を除去してもよい。その後、溶液からゲノムDNAを回収する。塩析、有機抽出、又はDNAと固相支持体との結合を含む様々な方法によって、これを行ってもよい。方法の選択は、時間、費用、要求されるDNA量を含む幾つかの因子の影響を受ける。
【0114】
試料DNAは膜中に封入されず(例えば血液試料由来の循環DNA)、DNAの単離及び/又は精製のために当該技術分野で標準的な方法を利用してもよい。このような方法としては、タンパク質変性試薬(例えばカオトロピック塩、例えば塩酸グアニジン又は尿素)、又は界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、臭化シアン)の使用が挙げられる。代替的な方法としては、エタノール析出又はプロパノール析出、特に遠心分離による減圧濃縮が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、濾過装置(例えば限外濾過、シリカ表面又はシリカ膜、磁性粒子、ポリスチロール粒子、ポリスチロール表面、正に荷電した表面、及び正に荷電した膜、荷電膜、荷電表面、荷電スイッチ膜(charged switch membranes)、荷電切り替え表面(chargedswitched surfaces))等の装置を使用してもよい。
【0115】
核酸を抽出したら、ゲノム二本鎖DNAを分析に使用する。
【0116】
本方法の第2の工程において、5’位で非メチル化したシトシン塩基を、ウラシル、チミン、又はハイブリダイゼーション挙動がシトシンと異なる別の塩基に変換するように、ゲノムDNA試料を処理する。これは、本明細書中では「前処理」又は「処理」と理解される。
【0117】
重亜硫酸試薬による処理によってこれを達成するのが好ましい。「重亜硫酸試薬」という用語は、本明細書に開示されるようにメチル化CpGジヌクレオチド配列と非メチル化CpGジヌクレオチド配列とを識別するのに有用である、重亜硫酸塩、二亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、又はこれらの組合せを含む試薬を表す。上記治療方法は、当該技術分野で既知である(例えば国際出願PCT/EP2004/011715号、その全体が参照により援用される)。例えばこれらに限定されないが、n−アルキレングリコール、特にジエチレングリコールジメチルエーテル(DME)等の変性溶媒の存在下、又はジオキサン若しくはジオキサン誘導体の存在下で重亜硫酸処理を行うのが好ましい。好ましい実施の形態では、変性溶媒は、1%〜35%(v/v)の濃度で使用する。例えばこれらに限定されないが、クロマン誘導体(例えば、6−ヒドロキシ−2,5,7,8,−テトラメチルクロマン2−カルボン酸、又はトリヒドロキシ安息香酸(trihydroxybenzoe acid)及びその誘導体(例えば没食子酸)等のスカベンジャの存在下で重亜硫酸反応を行うのも好ましい(国際出願PCT/EP2004/011715号(その全体が参照により援用される)を参照されたい)。重亜硫酸変換は、30℃〜70℃の反応温度で行うのが好ましく、それにより反応中、短時間で85℃を超えるまで温度が増大する(国際出願PCT/EP2004/011715号(その全体が参照により援用される)を参照されたい)。定量化の前に重亜硫酸処理DNAを精製するのが好ましい。例えばこれに限定されないが、限外濾過等の当該技術分野で既知の任意の手段によって、これを行ってもよく、Microcon(商標)カラム(Millipore(商標)製)によって行うのが好ましい。改良した製造業者のプロトコルに従って精製を行う(国際出願PCT/EP2004/011715号(その全体が参照により援用される)を参照されたい)。
【0118】
本方法の第3の工程において、本発明によるプライマーオリゴヌクレオチド組と、増幅酵素とを使用して、処理DNA断片を増幅する。1つの同じ反応容器で、幾つかのDNAセグメントの増幅を同時に行うことができる。通常、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、増幅を行う。好ましくは、上記増幅産物は、100塩基対長〜2000塩基対長である。プライマーオリゴヌクレオチド組は、それぞれの配列が、配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75の内の1つの塩基配列及びこれに相補的な配列の少なくとも16塩基対長のセグメントと逆相補的、同一であるか、又はストリンジェントな条件若しくは高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを含む。
【0119】
本方法の代替的な実施の形態において、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列内、並びに好ましくは配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列による核酸配列内の予め選択されたCpG位置のメチル化状況は、メチル化特異的なプライマーオリゴヌクレオチドの使用によって検出することができる。この技法(MSP)は、Hermanへの米国特許第6,265,171号に記載されている。重亜硫酸処理DNAの増幅のためのメチル化状況に特異的なプライマーの使用によって、メチル化核酸と非メチル化核酸との識別が可能になる。MSPプライマー対は、重亜硫酸処理CpGジヌクレオチドとハイブリダイズする少なくとも1つのプライマーを含有する。したがって、上記プライマー配列は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含む。非メチル化DNAに特異的なMSPプライマーは、CpGにおけるC位の位置で「T」を含有する。好ましくはしたがって、上記プライマーの塩基配列は、配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75の内の1つによる処理核酸配列及びこれに相補的な配列とハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長の配列を含むことが要求され、上記オリゴマーの塩基配列は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含む。本方法の更なる好ましい実施の形態は、ブロッカーオリゴヌクレオチド(HeavyMethyl(商標)アッセイ)の使用を含む。このようなブロッカーオリゴヌクレオチドの使用は、Yu et al., BioTechniques 23:714-720, 1997に記載されている。遮断プローブオリゴヌクレオチドは、PCRプライマーと同時に重亜硫酸処理核酸とハイブリダイズする。遮断プローブに相補的な配列が存在する場合に核酸の増幅が抑制されるように、核酸のPCR増幅は遮断プローブの5’位で終結する。プローブは、メチル化状況に特異的に重亜硫酸処理核酸とハイブリダイズするように設計され得る。例えば非メチル化核酸集団内のメチル化核酸の検出のために、メチル化核酸の増幅抑制が望まれる場合、「CpG」に対して対象となる位置で「CpA」又は「TpA」を含む遮断プローブを使用することによって、対象となる位置で非メチル化する核酸の増幅抑制を起こす。
【0120】
ブロッカーオリゴヌクレオチドを使用したPCR法のために、ポリメラーゼ媒介性増幅の効果的な破壊には、ブロッカーオリゴヌクレオチドがポリメラーゼでは伸長しないことが要求される。好ましくは、3’−デオキシオリゴヌクレオチド、すなわち「遊離」ヒドロキシル基以外で3’位で誘導体化したオリゴヌクレオチドであるブロッカーを使用することによって、これを達成する。例えば、3’−O−アセチルオリゴヌクレオチドは、好ましいブロッカー分子クラスの代表的なものである。
【0121】
さらに、ブロッカーオリゴヌクレオチドのポリメラーゼ媒介性分解を防ぐ必要がある。好ましくは、このような防止には、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を失ったポリメラーゼの使用、又は例えばブロッカー分子をヌクレアーゼ耐性にする、その5’末端(terminii)にチオエート架橋を有する修飾ブロッカーオリゴヌクレオチドの使用のいずれかが含まれる。特定の用途には、ブロッカーのこのような5’修飾は要求され得ない。例えば、ブロッカー結合部位及びプライマー結合部位が重複し、それによりプライマーが(例えば過剰なブロッカーと)結合するのを防ぐ場合、ブロッカーオリゴヌクレオチドの分解が実質的に防がれる。これは、ポリメラーゼがプライマーをブロッカーに向かって又はブロッカーを通って(5’−3’方向に)伸長させないため、通常ハイブリダイズするブロッカーオリゴヌクレオチドの分解をもたらすプロセスである。
【0122】
本発明のために、及び本明細書中で行われるように、特に好ましいブロッカー/PCRの実施の形態には、遮断オリゴヌクレオチドとしてのペプチド核酸(PNA)オリゴマーの使用が含まれる。このようなPNAブロッカーオリゴマーは、ポリメラーゼでは分解も伸長もしないので理想的に適している。
【0123】
好ましくはしたがって、上記遮断オリゴヌクレオチドの塩基配列には、配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75の内の1つによる処理核酸配列及びこれに相補的な配列とハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長の配列を含むことが要求され、上記オリゴヌクレオチドの塩基配列が、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド、TpGジヌクレオチド又はCpAジヌクレオチドを含む。
【0124】
増幅によって得られる断片は、直接又は間接的に検出可能な標識を保有し得る。蛍光標識、放射性核種、又は質量分析計で検出することができる通常の質量を有する分離型分子断片の形態での標識が好ましい。上記標識が質量標識である場合、標識された増幅産物が、質量分析計でのより良好なディレクタビリディ(delectability:検出能)を可能にする、単一の正の正味電荷又は負の正味電荷を有することが好ましい。例えばマトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI)によって、又は電子噴霧(electron spray)質量分析(ESI)を使用して、検出を行い可視化することができる。
【0125】
マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI−TOF)は、生体分子の分析に非常に効果的な進歩である(Karas & Hillenkamp, Anal Chem., 60:2299-301, 1988)。検体は吸光マトリクスに包埋される。マトリクスは、短レーザーパルスで蒸発し、これにより検体分子を非断片化して気相に移す。マトリクス分子による衝突によって、検体をイオン化する。印加電圧が、フィールドフリー飛行管へとイオンを加速させる。これらの異なる質量により、イオンが異なる速度で加速する。小さいイオンは、大きいイオンよりも早く検出器に到達する。MALDI−TOF質量分析は、ペプチド及びタンパク質の分析に十分適している。核酸の分析は幾らか難しい(Gut & Beck, Current Innovations and Future Trends, 1:147-57,1995)。核酸分析に対する感度は、ペプチドに対する感度よりもおよそ100倍小さく、断片の大きさが増大するにつれ不均衡に減少する。さらに、多価に負に荷電した骨格を有する核酸に対しては、マトリクスを介したイオン化プロセスはほとんど有効ではない。MALDI−TOF質量分析では、マトリクスの選択は、極めて重要な役割を果たす。ペプチドの脱離に対して、非常に精細な結晶体を作製する非常に効果的なマトリクスが幾つか見出されている。現在、DNAに対して幾つかの反応性マトリクスが存在するが、ペプチドと核酸との感度の差は低減されていない。しかし、ペプチドと類似になるようにDNAを化学修飾することによって、この感度の差を低減することができる。例えば、骨格の通常のリン酸塩をチオリン酸塩に置換したホスホロチオエート核酸は、単純なアルキル化化学反応を用いて電荷が中性のDNAに変換させることができる(Gut & Beck, Nucleic Acids Res. 23: 1367-73, 1995)。荷電タグとこの修飾DNAとのカップリングによって、ペプチドで見出されるのと同じレベルまでMALDI−TOF感度が増大する。荷電タグ付けの更なる利点は、非修飾基質の検出を極めて困難なものにする不純物に対する分析の安定性の増大である。
【0126】
本方法の第4の工程において、処理前にCpGジヌクレオチドのメチル化状況を確かめるために、本方法の第3の工程中に得られた増幅産物を分析する。
【0127】
MSP増幅によって増幅産物が得られた実施の形態において、増幅産物の有無自体が、上記プライマーの塩基配列に従って、該プライマーがカバーするCpG位置のメチル化状態の指標となる。
【0128】
標準的なPCR及びメチル化特異的PCRの両方によって得られた増幅産物は、例えばこれらに限定されないが、アレイ技法及びプローブベースの技法等の客観的(based-based)方法によって、並びにシークエンシング及び鋳型指向性伸長等の技法によって更に分析してもよい。
【0129】
本方法の1つの実施の形態において、工程3で合成された増幅産物を次に、アレイ又はオリゴヌクレオチド組、及び/又はPNAプローブ組とハイブリダイズする。これに関して、ハイブリダイゼーションは以下のように行う:ハイブリダイゼーション中に使用されるプローブ組は、少なくとも2つのオリゴヌクレオチド又はPNA−オリゴマーから構成されるのが好ましく、プロセス中、増幅産物は、予め固相と結合したオリゴヌクレオチドとハイブリダイズするプローブとして働き、続いて、ハイブリダイズしなかった断片を除去し、上記オリゴヌクレオチドは、本発明の配列表で指定される塩基配列のセグメントと逆相補的又は同一である少なくとも9ヌクレオチド長の少なくとも1つの塩基配列を含有し、該セグメントは、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド、TpGジヌクレオチド又はCpAジヌクレオチドを含む。ハイブリダイズする核酸のハイブリダイズ部分は通常、少なくとも9ヌクレオチド長、15ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、25ヌクレオチド長、30ヌクレオチド長又は35ヌクレオチド長である。しかし、より長い分子が本発明に有用であり、このため本発明の範囲内である。
【0130】
好ましい実施の形態において、上記ジヌクレオチドがオリゴマーの中央部3分の1内にある。例えば、オリゴマーは、1つのCpGジヌクレオチドを含み、上記ジヌクレオチドは、13merの5’末端から5番目〜9番目のヌクレオチドであるのが好ましい。配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15からなる群から選択される配列、及び配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75の内の等価位置内の各CpGジヌクレオチドの分析に対して、1つのオリゴヌクレオチドが存在する。上記オリゴヌクレオチドは、ペプチド核酸形態でも存在し得る。その後、ハイブリダイズしなかった増幅産物を除去する。次いで、ハイブリダイズした増幅産物を検出する。これに関して、増幅産物に付着する標識は、オリゴヌクレオチド配列が位置する各固相位置で同定可能であるのが好ましい。
【0131】
本方法のまた更なる実施の形態において、CpG位置のゲノムメチル化状況は、PCR増幅プライマー(上記プライマーは、メチル化に特異的、又は標準的なものであり得る)と同時に重亜硫酸処理DNAとハイブリダイズする(上記で詳述されたように)オリゴヌクレオチドプローブで確かめることができる。
【0132】
本方法の特に好ましい実施の形態は、二重標識蛍光オリゴヌクレオチドプローブ(ABI Prism 7700配列検出システム(Perkin Elmer Applied Biosystems, Foster City, California)を使用するTaqMan(商標)PCR)を利用した蛍光ベースのリアルタイム定量PCRの使用である(Heid et al., Genome Res. 6:986-994, 1996、米国特許第6,331,393号も参照されたい)。TaqMan(商標)PCR反応は、好ましい実施の形態でフォワード増幅プライマーとリバース増幅プライマーとの間に位置する高CpG配列とハイブリダイズするように設計した、TaqMan(商標)プローブと呼ばれる非伸長性検索オリゴヌクレオチドの使用を利用する。TaqMan(商標)プローブは、TaqMan(商標)オリゴヌクレオチドのヌクレオチドに付着したリンカー部分(例えばホスホルアミダイト(phosphoramidites))と共有結合する蛍光「レポータ部分」と「消光部分」とを更に含む。重亜硫酸処理後の核酸内のメチル化分析のために、プローブが、MethyLight(商標)アッセイとしても知られる米国特許第6,331,393号(その全体が参照により援用される)で記載されるように、メチル化特異的であることが要求される。また、記載の本発明とともに使用するのに適したTaqMan(商標)検出法の変法には、二重プローブ技術(Lightcycler(商標))又は蛍光増幅プライマー(Sunrise(商標)技術)の使用が含まれる。これらの技法の両方は、重亜硫酸処理DNAとの使用、更にCpGジヌクレオチド内のメチル化分析に好適になるように適合し得る。
【0133】
本方法の更に好ましい実施の形態において、本方法の第4の工程には、鋳型指向性のオリゴヌクレオチド伸長(例えばGonzalgo & Jones, Nucleic Acids Res. 25:2529-2531, 1997に記載されるMS−SNuPE)の使用が含まれる。
【0134】
本方法のまた更なる実施の形態において、本方法の第4の工程には、本方法の第3の工程で生成した増幅産物のシークエンシング及びその後の配列分析が含まれる(Sanger F., et al., Proc Natl Acad Sci USA 74:5463-5467, 1977)。
【0135】
最良の形態
本方法の最も好ましい実施の形態において、上記で概説された方法の最初の3つの工程に従ってゲノム核酸を単離及び処理する、すなわち:
a)被験体のゲノムDNAを有する生体試料を被験体から得ること、
b)ゲノムDNAを抽出、又はそうでなければ単離すること、
c)b)のゲノムDNA又はその断片を1つ又は複数の試薬で処理することであって、その5位がメチル化していないシトシン塩基を、ウラシル残基又はハイブリダイゼーション特性に関してシトシンと異なることが検出可能な別の塩基に変換する、処理すること、また
d)c)での処理後に、メチル化特異的に、すなわちメチル化特異的プライマー又は遮断オリゴヌクレオチドを使用することによって増幅を行い、さらに
e)上記のように、リアルタイム検出プローブによって、増幅産物の検出を行う。
【0136】
好ましくは、上記のように、メチル化特異的プライマーによって、d)のその後の増幅が行われる場合、上記メチル化特異的プライマーは、配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75の内の1つによる処理核酸配列及びこれに相補的な配列とハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長の配列を含み、上記オリゴマーの塩基配列は、少なくとも1つのCpGジヌクレチドを含む。
【0137】
本方法の工程e)、すなわち配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列による1つ又は複数のCpG位置のメチル化状況の指標となる特定の増幅産物の検出は、上記のようなリアルタイム検出法によって行われる。
【0138】
最も好ましくは本発明は、膀胱癌を検出する方法であって、被験体から単離した生体試料において配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99及び配列番号100、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のメチル化状態及び/又は発現レベルを決定することを含み、高メチル化及び/又は低発現が上記障害の存在の指標となる、膀胱癌を検出する方法を提供する。
【0139】
本発明の更なる実施の形態は、重亜硫酸変換を必要とせずに、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される、好ましくは配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列及びその相補体由来の少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のメチル化状況を分析する方法を提供する。メチル化感受性制限酵素試薬、又は標的領域内でメチル化CpGジヌクレオチドと非メチル化CpGジヌクレオチドとを識別するメチル化感受性制限酵素試薬を含む制限酵素試薬群を、メチル化を決定するのに利用する方法、例えばこれに限定されないが、示差的メチル化ハイブリダイゼーション(DMH)が当該技術分野で既知である。
【0140】
このような更なる実施の形態の第1の工程において、組織源又は細胞源からゲノムDNA試料を単離する。ゲノムDNAは、市販のキットの使用を含む、当該技術分野で標準的な任意の手段によって単離することができる。要するに、対象となるDNAが、細胞膜によってその中に封入され、生体試料は、酵素的手段、化学的手段又は機械的手段によって破壊及び溶解する必要がある。次いで、例えばプロテイナーゼKによる消化で、DNA溶液からタンパク質及び他の汚染物質を除去することができる。その後、溶液からゲノムDNAを回収する。塩析、有機抽出、又はDNAと固相支持体との結合を含む様々な方法によって、これを行ってもよい。方法の選択は、時間、費用、要求されるDNA量を含む幾つかの因子の影響を受ける。新生物性物質又は潜在的に新生物性の物質を含む全ての臨床試料の種類は、本発明の方法に使用するのに適しており、好ましくは、膀胱組織試料、組織片、パラフィン包埋組織、血漿又は血清等の体液、細胞株、及びこれらの組合せである。体液が好ましいDNA源であり、尿検体が特に好ましい。
【0141】
核酸を抽出したら、ゲノム二本鎖DNAを分析に使用する。
【0142】
好ましい実施の形態において、DNAは、メチル化感受性制限酵素による処理の前に切断され得る。このような方法は、当該技術分野で既知であり、物理的手段及び酵素的手段の両方を含み得る。メチル化感受性ではない1つ又は複数の制限酵素の使用が特に好ましく、その認識部位は高ATであり、CGジヌクレオチドを含まない。このような酵素の使用によって、断片化DNAにおけるCpGアイランド及び高CpG領域の変換が可能になる。非メチル化特異的制限酵素は、MseI、BfaI、Csp6I、Tru1I、Tvu1I、Tru9I、Tvu9I、MaeI及びXspIからなる群から選択されるのが好ましい。2つ又は3つのこのような酵素の使用が特に好ましい。MseI、BfaI及びCsp6Iの組合せの使用が特に好ましい。
【0143】
それから、続く酵素増幅を容易にするために、断片化DNAをアダプタオリゴヌクレオチドにライゲートすることができる。平滑末端DNA断片及び付着末端DNA断片へのオリゴヌクレオチドのライゲーションは、当該技術分野で既知であり、(例えば仔ウシ又はエビのアルカリホスファターゼを使用した)末端の脱リン酸化手段、及びdATPの存在下でリガーゼ酵素(例えばT4 DNAリガーゼ)を使用した続くライゲーションによって行われる。アダプタオリゴヌクレオチドは通常、少なくとも18塩基対長である。
【0144】
次いで、第3の工程において、1つ又は複数のメチル化感受性制限酵素で、DNA(又はその断片)を消化する。制限部位でのDNAの加水分解が、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の特定CpGジヌクレオチドのメチル化状況の情報を与えるように、消化が行われる。
【0145】
好ましくは、メチル化特異的制限酵素は、Bsi E1、Hga I HinPI、Hpy99I、Ava I、Bce AI、Bsa HI、BisI、BstUI、BshI236I、AccII、BstFNI、McrBC、GlaI、MvnI、HpaII(HapII)、HhaI、AciI、SmaI、HinP1I、HpyCH4IV、EagI及び2つ以上の上記酵素の混合物からなる群から選択される。制限酵素BstUI、HpaII、HpyCH4IV及びHinP1Iを含有する混合物が好ましい。
【0146】
任意ではあるが、好ましい実施の形態である第4の工程において、制限断片を増幅する。ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、これを行うのが好ましく、上記増幅産物は、上述のように好適な検出可能な標識、すなわちフルオロフォア標識、放射性核種及び質量標識を保有し得る。増幅酵素と、それぞれの場合で配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される配列に相補的であるか、又は適度にストリンジェントな条件若しくはストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする少なくとも16ヌクレオチド長の連続した配列、並びにその相補体を含む少なくとも2つのプライマーとによる増幅が特に好ましい。好ましくは、上記連続した配列は、少なくとも16ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長又は25ヌクレオチド長である。代替的な実施の形態では、上記プライマーは、断片と連結した任意のアダプタに相補的であり得る。
【0147】
第5の工程において、増幅産物を検出する。例えばこれらに限定されないが、ゲル電気泳動分析、ハイブリダイゼーション分析、PCR産物内の検出可能なタグの組み込み、DNAアレイ分析、MALDI又はESI分析等の当該技術分野で標準的な任意の手段によって検出が行われ得る。好ましくは、それぞれの場合で配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される配列に相補的であるか、又は適度にストリンジェントな条件若しくはストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする少なくとも16ヌクレオチド長の連続した配列、並びにその相補体を含む少なくとも1つの核酸又はペプチド核酸とのハイブリダイゼーションによって、上記検出が行われる。好ましくは、上記連続した配列は、少なくとも16ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長又は25ヌクレオチド長である。
【0148】
ゲノム核酸のメチル化状態又はレベルの決定の後に、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列のメチル化状態若しくはレベル、又は配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列の複数のCpGジヌクレオチド配列のメチル化状態の平均、又はその平均を反映する値に基づき、膀胱癌の有無を推測し、メチル化は、膀胱癌の存在に関連する。定量的手段によって上記メチル化を決定し、上記メチル化の存在を決定するためのカットオフ値は0であるのが好ましい(すなわち、試料は任意のメチル化度を示し、分析されるCpG位置でメチル化状況を有すると決定される)。それにもかかわらず、当業者は、特に好ましい感度又は特異度のアッセイを与えるために、上記カットオフ値を調整することを望み得ると予測される。したがって、上記カットオフ値は増大してもよく(このようにして特異度を増大させる)、上記カットオフ値は、0%〜5%、5%〜10%、10%〜15%、15%〜20%、20%〜30%及び30%〜50%からなる群から選択される範囲内にあり得る。カットオフ値は、10%、15%、25%及び30%が特に好ましい。
【0149】
AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のメチル化及び/又は発現の決定の際に細胞増殖性障害、好ましくは膀胱癌の有無を決定し、高メチル化及び/又は低発現が、膀胱癌の存在を示し、低メチル化及び/又は過剰発現が、被験体内での膀胱癌の非存在を示す。
【0150】
更なる改善点
開示された本発明は、ゲノムの配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列に由来する処理核酸であって、この処理が、ゲノムDNA配列の少なくとも1つの非メチル化シトシン塩基を、ウラシル、又はハイブリダイゼーションに関してシトシンと検出可能に異なる検出可能な別の塩基に変換するのに適した、処理核酸を提供する。対象となるゲノム配列は、1つ又は複数の連続したメチル化CpG位置を含み得る。上記処理は、重亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、二亜硫酸塩及びその組合せからなる群から選択される試薬の使用を含むのが好ましい。本発明の好ましい実施の形態では本発明は、配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75からなる群から選択される配列の少なくとも16ヌクレオチド塩基長の連続した配列を含む非天然修飾核酸を提供する。本発明の更に好ましい実施の形態では、上記核酸は、配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75で開示された核酸配列のセグメントの少なくとも50塩基対長、100塩基対長、150塩基対長、200塩基対長、250塩基対長又は500塩基対長である。配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択されるゲノム配列ではなく、配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75の配列の全て若しくは一部と同一若しくは相補的ではない核酸分子、又は他の天然DNAが特に好ましい。
【0151】
上記配列は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド、TpAジヌクレオチド又はCpAジヌクレオチド及びこれに相補的な配列を含むことが好ましい。配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75の配列によって、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列による核酸の非天然修飾型が与えられ、各ゲノム配列の修飾によって、以下のように特有で、かつ上記ゲノム配列とは異なる配列を有する核酸が合成される。各センス鎖のゲノムDNA(例えば配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列に由来する)に対して、4つの変換型が開示される。「C」が「T」に変換するが、「CpG」は「CpG」のままである(すなわち、ゲノム配列に関して、CpGジヌクレオチド配列の全ての「C」残基がメチル化し、したがって変換しない場合に対応する)第1の型が与えられ、第2の型は、開示されたゲノムDNA配列の相補体(すなわちアンチセンス鎖)を開示し、「C」が「T」に変換するが、「CpG」は「CpG」のままである(すなわち、CpGジヌクレオチド配列の全ての「C」残基がメチル化し、したがって変換しない場合に対応する)。配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列の「上方メチル化」変換配列は、配列番号16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45に対応する。「CpG」ジヌクレオチド配列のものを含む全ての「C」残基に関して「C」が「T」に変換される(すなわちゲノム配列に関して、CpGジヌクレオチド配列の全ての「C」残基がメチル化していない場合に対応する)各ゲノム配列の化学変換した第3の型が与えられ、各配列の化学変換した最後の型は、開示されたゲノムDNA配列の相補体(すなわちアンチセンス鎖)を開示し、ここで「CpG」ジヌクレオチド配列のものを含む全ての「C」残基に関して「C」が「T」に変換される(すなわち各ゲノム配列の相補体(アンチセンス鎖)に関して、CpGジヌクレオチド配列の全ての「C」残基がメチル化していない場合に対応する)。配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列の「下方メチル化」変換配列は、配列番号46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75に対応する。
【0152】
重要なことは、これまで配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75による核酸配列及び分子は、膀胱癌の検出又は診断に関与又は相関していなかった。
【0153】
代替的な好ましい実施の形態において、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、又はその相補体に従って、ゲノムDNA又は処理(化学修飾)DNA内のシトシンのメチル化状態を検出するために、本発明の方法で使用するのに適したオリゴヌクレオチド又はオリゴマーを更に提供する。上記オリゴヌクレオチド又はオリゴマー核酸は、新規の診断手段を提供する。上記オリゴヌクレオチド又はオリゴマーは、配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75による処理核酸配列及び/又はこれに相補的な配列、若しくは配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列によるゲノム配列及び/又はこれに相補的な配列と同一であるか、又は(本明細書で上記で規定のように)適度にストリンジェントな条件若しくはストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長の核酸配列を含む。
【0154】
したがって本発明は、適度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件及び/又はストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75の配列の全て若しくは一部、又はその相補体とハイブリダイズする核酸分子(例えばオリゴヌクレオチド及びペプチド核酸(PNA)分子(PNA−オリゴマー))を含む。適度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件及び/又はストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択されるゲノム配列ではなく、配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75の配列の全て若しくは一部、又は他のヒトゲノムDNAとハイブリダイズする核酸分子が特に好ましい。
【0155】
ハイブリダイズする核酸の同一部分又はハイブリダイズ部分は通常、少なくとも9ヌクレオチド長、16ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長、25ヌクレオチド長、30ヌクレオチド長又は35ヌクレオチド長である。しかし、より長い分子が本発明に有用であり、このため本発明の範囲内である。
【0156】
好ましくは、本発明のハイブリダイズする核酸のハイブリダイズ部分は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75の配列若しくはその一部、又はその相補体に対して少なくとも95%、又は少なくとも98%、又は100%同一である。
【0157】
本明細書に記載の種類のハイブリダイズする核酸は、例えばプライマー(例えばPCRプライマー)、又は診断プローブ若しくはプライマーとして使用することができる。好ましくは、ストリンジェントな条件下で、オリゴヌクレオチドプローブと核酸試料とのハイブリダイゼーションを行い、プローブは、標的配列と100%同一である。核酸二本鎖又はハイブリッド安定性は、溶融温度すなわちTmで表し、これはプローブが標的DNAから解離する温度である。この溶融温度は、要求されるストリンジェントな条件を規定するのに使用する。
【0158】
同一ではなく、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列に関連し、実質的にこれと同一である標的配列(対立遺伝子変異型及びSNP等)に関して、初めに相同ハイブリダイゼーションだけが特定濃度の塩(例えばSSC又はSSPE)で起こる最小温度を確立することが有用である。それから、ミスマッチが1%であると仮定すると、Tmが1℃減少し、そのためハイブリダイゼーション反応の最終洗浄の温度が減少する(例えば、プローブとの同一性が95%を超える配列が求められる場合、最終洗浄温度は5℃減少する)。実際、Tmの変化は、1%のミスマッチ当たり0.5℃〜1.5℃であり得る。
【0159】
例えば配列番号1を参照してポリヌクレオチド位置によって示されるように、X(ヌクレオチド)長の本発明のオリゴヌクレオチドの例には、長さがXの連続した重複オリゴヌクレオチドの組(センス組及びアンチセンス組)に対応するものが含まれ、ここで、連続して重複した各組内のオリゴヌクレオチド(所定のX値に対応する)が、ヌクレオチド位置からZ個のオリゴヌクレオチドの有限組と規定される:n〜(n+(X−1))、(式中、n=1、2、3、・・・(Y−(X−1))、Yは配列番号1の(ヌクレオチド又は塩基対の)長さに等しく(3300)、Xは、この組における各オリゴヌクレオチドの一般的な(ヌクレオチドの)長さに等しく(例えば、連続して重複した20merの組ではX=20)、かつ長さがYの所定の配列番号1に対する、長さがXの連続して重複したオリゴマーの数(Z)は、Y−(X−1)に等しい)。例えばX=20の場合、配列番号1のセンス組又はアンチセンス組のいずれかに関して、Z=3300−19=3281である。
【0160】
好ましくはこの組は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド、TpGジヌクレオチド又はCpAジヌクレオチドを含むこれらのオリゴマーに限定されない。
【0161】
本発明の20merオリゴヌクレオチドの例としては、配列番号1を参照してポリヌクレオチド位置で示される以下の組の3281個のオリゴマー(及びこれに相補的なアンチセンス組)が挙げられる:1〜20、2〜21、3〜22、4〜23、5〜24、・・・及び3281〜3300。
【0162】
好ましくはこの組は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド、TpGジヌクレオチド又はCpAジヌクレオチドを含むこれらのオリゴマーに限定されない。
【0163】
同様に、本発明の25merオリゴヌクレオチドの例としては、配列番号1を参照してポリヌクレオチド位置で示される以下の組の3276個のオリゴマー(及びこれに相補的なアンチセンス組)が挙げられる:1〜25、2〜26、3〜27、4〜28、5〜29、・・・及び3276〜3300。
【0164】
好ましくはこの組は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド、TpGジヌクレオチド又はCpAジヌクレオチドを含むこれらのオリゴマーに限定されない。
【0165】
本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63(センス及びアンチセンス)のそれぞれに対して、長さがX(例えばX=9、10、17、20、22、23、25、27、30又は35ヌクレオチド)の複数の連続して重複したオリゴヌクレオチド組又は修飾オリゴヌクレオチド組を包含する。
【0166】
本発明によるオリゴヌクレオチド又はオリゴマーは、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列の遺伝的パラメータ及びエピジェネティックパラメータを確かめるのに有用な効果的ツールを構成する。このような好ましい長さがXのオリゴヌクレオチド組又は修飾オリゴヌクレオチド組は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63(及びその相補体)に対応する、連続して重複したオリゴマー組である。好ましくは、上記オリゴマーは、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド、TpGジヌクレオチド又はCpAジヌクレオチドを含む。
【0167】
特に好ましい本発明によるオリゴヌクレオチド又はオリゴマーは、CpGジヌクレオチド(又は対応する変換TpG若しくはCpAジヌクレオチド)配列のシトシンが、オリゴヌクレオチドの中央部3分の1内にある、すなわちオリゴヌクレオチドが、例えば13塩基長であり、CpGジヌクレオチド、TpGジヌクレオチド又はCpAジヌクレオチドが、5’末端から5番目〜9番目のヌクレオチド内に位置しているものである。
【0168】
本発明のオリゴヌクレオチドはまた、オリゴヌクレオチドと1つ又は複数の部分又は複合体とを化学的に結合させることによって修飾して、オリゴヌクレオチドの活性、安定性又は検出を高めることができる。このような部分又は複合体としては、クロモフォア、フルオロフォア、コレステロール等の脂質、胆汁酸、チオエーテル、脂肪族鎖、リン脂質、ポリアミン、ポリエチレングリコール(PEG)、パルミチル部分、及び例えば米国特許第5,514,758号、同第5,565,552号、同第5,567,810号、同第5,574,142号、同第5,585,481号、同第5,587,371号、同第5,597,696号、及び同第5,958,773号で開示されるような他のものが挙げられる。プローブはまた、特に好ましい対合性があるペプチド核酸(PNA)形態で存在し得る。このように、オリゴヌクレオチドは、ペプチド等の他の付随基(appended groups)を含んでもよく、ハイブリダイゼーション誘起切断剤(Krolet al., Bio Techniques 6:958-976, 1988)又は挿入剤(Zon,Pharm. Res. 5:539-549, 1988)を含んでもよい。このために、オリゴヌクレオチドは、別の分子、例えばクロモフォア、フルオロフォア、ペプチド、ハイブリダイゼーション誘起架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘起切断剤等と複合体を形成してもよい。
【0169】
オリゴヌクレオチドはまた、少なくとも1つの当該技術分野で認識される修飾糖及び/若しくは塩基部分を含み得るか、又は修飾骨格若しくは非天然ヌクレオシド間連結を含み得る。
【0170】
本発明の特定の実施の形態によるオリゴヌクレオチド又はオリゴマーは通常、「組」で使用し、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15からなる群から選択される少なくとも1つのゲノム配列及びこれに相補的な配列の各CpGジヌクレオチドの分析のために、又は配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75による処理核酸の配列及びこれに相補的な配列内の対応するCpGジヌクレオチド、TpGジヌクレオチド若しくはCpAジヌクレオチドの分析のために少なくとも1つのオリゴマーを含有する。しかし、経済的要因又は他の要因のために、好ましくは、上記配列内のCpGジヌクレオチドの限定選択を分析してもよく、それに応じてオリゴヌクレオチド組の含有量が変わることが予測される。
【0171】
したがって、特定の実施の形態では本発明は、処理ゲノムDNA(配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75)において、又はゲノムDNA(配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列、並びにこれに相補的な配列)においてシトシンのメチル化状態を検出するのに有用な、少なくとも2つの(オリゴヌクレオチド及び/又はPNA−オリゴマー)組を提供する。これらのプローブによって、膀胱癌の診断及び検出が可能になる。オリゴマー組はまた、処理ゲノムDNA(配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75)において、又はゲノムDNA(配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列、並びにこれに相補的な配列)において一塩基多型(SNP)を検出するのに使用することができる。
【0172】
好ましい実施の形態において、オリゴヌクレオチド組の少なくとも1つ、より好ましくは全ての成員が固相に結合する。
【0173】
更なる実施の形態において、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63の内の1つのDNA配列及びこれに相補的な配列、又はそのセグメントを増幅するための「プライマー」オリゴヌクレオチドとして使用する、少なくとも2つのオリゴヌクレオチド組を提供する。
【0174】
オリゴヌクレオチドは、「アレイ」又は「DNAチップ」(すなわち固相に結合した様々なオリゴヌクレオチド及び/又はPNA−オリゴマーの配置)の全て又は一部を構成し得ることが予測される。様々なオリゴヌクレオチド−オリゴマー配列及び/又はPNA−オリゴマー配列のこのようなアレイは、例えば長方形又は六方格子の形態で固相上に配置されることを特徴とし得る。固相表面は、ケイ素、ガラス、ポリスチレン、アルミニウム、スチール、鉄、銅、ニッケル、銀、又は金で構成され得る。また、ニトロセルロース、並びにペレット状で又は樹脂マトリクスとして存在し得るナイロン等のプラスチックを使用してもよい。オリゴマーアレイの製造における従来技術の概説は、Nature Genetics(Nature Genetics Supplement,Volume 21, January 1999)の特別版から、及びそれに言及される文献から収集することができる。固定化DNAアレイの精査に、蛍光標識プローブを使用することが多い。Cy3色素及びCy5色素と、特異的なプローブの5’−OHとの単純な連結は、蛍光標識に特に好適である。例えば、共焦点顕微鏡によって、ハイブリダイズするプローブの蛍光の検出を行うことができる。他の多くのものに加えて、Cy3色素及びCy5色素が市販されている。
【0175】
オリゴヌクレオチド又はその特定の配列は、「仮想アレイ」(オリゴヌクレオチド又はその特定の配列は、例えば「指定子」として検体の複合混合物を分析するために、多様な特別に標識したプローブ集団の一部として、又はこれと組合せて使用する)の全て又は一部を構成し得ることも予測される。例えば、このような方法は、米国特許出願公開第2003/0013091号(2003年1月16日に公開された米国特許出願第09/898,743号)に記載されている。このような方法において、複合混合物における各核酸(いわゆる各検体)が、特有の標識と独自に結合し、それにより検出することができるように、十分な標識が生成される(各標識を直接計測し、それにより混合物中の各分子種をデジタルで読み取る)。
【0176】
本発明のオリゴマーは、膀胱癌を検出又は診断するのに利用するのが特に好ましい。
【0177】
キット
さらに、本発明の更なる態様は、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のメチル化を決定する手段を備えるキットである。AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のメチル化を決定する手段は、好ましくは重亜硫酸含有試薬と、それぞれの場合で配列が、配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75から選択される配列の9塩基長又はより好ましくは18塩基長のセグメントと同一であるか、又はこれに相補的であるか、又はストリンジェントな条件若しくは高ストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする1つ又は複数のオリゴヌクレオチドと、任意で記載のメチル化分析方法を実行及び評価するための取扱説明書とを含む。1つの実施の形態では、上記オリゴヌクレオチドの塩基配列は、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド、CpAジヌクレオチド又はTpGジヌクレオチドを含む。
【0178】
更なる実施の形態において、上記キットは、CpG位置特異的なメチル化分析を行うのに標準的な試薬を更に含んでもよく、上記分析は、1つ又は複数の以下の技法を含む:MS−SNuPE、MSP、MethyLight(商標)、HeavyMethyl、COBRA、及び核酸シークエンシング。しかし、本発明に沿ったキットは、上述の成分の一部分だけを含有することもできる。
【0179】
好ましい実施の形態において、キットは、DNA変性バッファー、スルホン化バッファー、DNA回収試薬又はキット(例えば析出カラム、限外濾過カラム、アフィニティカラム)、脱スルホン化バッファー、及びDNA回収成分からなる群から選択される、更なる重亜硫酸変換試薬を含み得る。
【0180】
更なる代替的な実施の形態において、キットは、ポリメラーゼと、ポリメラーゼによって媒介されるプライマー伸長(PCR等)のために最適化した反応バッファーとを別々のコンテナに入った状態で含有し得る。本発明の別の実施の形態では、キットは、患者の生体試料を得る手段を更に含む。患者の生体試料において、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のメチル化を決定する手段を収容するのに適したコンテナを更に含み、最も好ましくはキット結果を利用及び解釈するための取扱説明書を更に含むキットが好ましい。好ましい実施の形態では、キットは、(a)重亜硫酸試薬と、(b)上記重亜硫酸試薬及び患者の生体試料を収容するのに適したコンテナと、(c)それぞれの場合で配列が、配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75から選択される配列の9塩基長、又はより好ましくは18塩基長のセグメントと同一であるか、又はこれに相補的であるか、又はストリンジェントな条件若しくは高ストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする、2つのオリゴヌクレオチドを含有する少なくとも1つのプライマーオリゴヌクレオチド組と、任意で(d)キット結果を利用及び解釈するための取扱説明書とを含む。代替的な好ましい実施の形態では、キットは、(a)重亜硫酸試薬と、(b)上記重亜硫酸試薬及び患者の生体試料を収容するのに適したコンテナと、(c)少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、及び/又は配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75の内の1つによる前処理核酸配列及びこれに相補的な配列と同一であるか、又はこれとハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長又は16ヌクレオチド長のPNA−オリゴマーと、任意で(d)キット結果を利用及び解釈するための取扱説明書とを含む。
【0181】
代替的な実施の形態では、キットは、(a)重亜硫酸試薬と、(b)該重亜硫酸試薬及び患者の生体試料を収容するのに適したコンテナと、(c)それぞれの場合で配列が、配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75から選択される配列の9塩基長、又はより好ましくは18塩基長のセグメントと同一であるか、又はこれに相補的であるか、又はストリンジェントな条件若しくは高ストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする、2つのオリゴヌクレオチドを含有する少なくとも1つのプライマーオリゴヌクレオチド組と、(d)少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、及び/又は配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75の内の1つによる前処理核酸配列及びこれに相補的な配列と同一であるか、又はこれとハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長又は16ヌクレオチド長のPNA−オリゴマーと、任意で(e)キット結果を利用及び解釈するための取扱説明書とを含む。
【0182】
またキットは、別々のコンテナに入った状態で、遮断、洗浄又はコーティングに適したバッファー又は溶液等の他の成分を含有してもよい。
【0183】
本発明の別の態様は、膀胱癌の存在を決定し、かつ/又は膀胱癌を診断する際に使用されるキットであって、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の転写レベルを測定する手段と、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列を決定する手段とを備える、膀胱癌の存在を決定し、かつ/又は膀胱癌を診断する際に使用されるキットに関する。
【0184】
COBRA(商標)分析に典型的な試薬(例えば典型的なCOBRA(商標)ベースキットで見出され得るような)には、これらに限定されないが、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列に関するPCRプライマー、制限酵素及び適切なバッファー、遺伝子ハイブリダイゼーションオリゴ、対照ハイブリダイゼーションオリゴ、オリゴプローブのためのキナーゼ標識キット、及び標識ヌクレオチドが含まれ得る。MethyLight(商標)分析に典型的な試薬(例えば典型的なMethyLight(商標)ベースキットで見出され得るような)には、これらに限定されないが、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の重亜硫酸変換配列に関するPCRプライマー、重亜硫酸特異的プローブ(例えばTaqMan(商標)又はLightcycler(商標))、最適化したPCRバッファー及びデオキシヌクレオチド、並びにTaqポリメラーゼが含まれ得る。
【0185】
Ms−SNuPE(商標)分析に典型的な試薬(例えば典型的なMs−SNuPE(商標)ベースキットで見出され得るような)には、これらに限定されないが、特定遺伝子(又は重亜硫酸処理DNA配列若しくはCpGアイランド)に関するPCRプライマー、最適化したPCRバッファー及びデオキシヌクレオチド、ゲル抽出キット、陽性対照プライマー、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の重亜硫酸変換配列に対するMs−SNuPE(商標)プライマー、(Ms−SNuPE反応のための)反応バッファー、並びに標識ヌクレオチドが含まれ得る。
【0186】
MSP分析に典型的な試薬(例えば典型的なMSPベースキットで見出され得るような)には、これらに限定されないが、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の重亜硫酸変換配列に対するメチル化及び非メチル化PCRプライマー、最適化したPCRバッファー及びデオキシヌクレオチド、並びに特異的プローブが含まれ得る。
【0187】
さらに、本発明の更なる態様は、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列メチル化(methylation)からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列を決定する手段を含む代替的キットであり、上記手段は、少なくとも1つのメチル化特異的制限酵素と、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含む配列の増幅に適した、1つ又は複数のプライマーオリゴヌクレオチド(好ましくは1つ又は複数のプライマー対)と、任意で記載のメチル化分析方法を実施及び評価するための取扱説明書とを含むのが好ましい。1つの実施の形態では、上記オリゴヌクレオチドの塩基配列は、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つの配列の少なくとも18塩基長のセグメントと同一であるか、又はこれに相補的であるか、又はストリンジェントな条件若しくは高ストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする。
【0188】
更なる実施の形態において、上記キットは、消化断片の分析のための1つ又は複数のオリゴヌクレオチドプローブを含んでもよく、好ましくは上記オリゴヌクレオチドは、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つの配列の少なくとも16塩基長のセグメントと同一であるか、又はこれに相補的であるか、又はストリンジェントな条件若しくは高ストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする。
【0189】
好ましい実施の形態において、キットは、バッファー(例えば制限酵素、PCR、保存バッファー又は洗浄バッファー)、DNA回収試薬又はキット(例えば析出カラム、限外濾過カラム、アフィニティカラム)及びDNA回収成分を含む群から選択される更なる試薬を含み得る。
【0190】
更なる代替的な実施の形態において、キットは、ポリメラーゼと、ポリメラーゼによって媒介されるプライマー伸長(PCR等)のために最適化した反応バッファーとを別々のコンテナに入った状態で含有し得る。本発明の別の実施の形態では、キットは、患者の生体試料を得る手段を更に含む。好ましい実施の形態では、キットは、(a)メチル化感受性制限酵素試薬と、(b)上記試薬及び患者の生体試料を収容するのに適したコンテナと、(c)配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つの配列の少なくとも9塩基長のセグメントと同一であるか、又はこれに相補的であるか、又はストリンジェントな条件若しくは高ストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする、1つ又は複数の核酸又はペプチド核酸を含有する少なくとも1つのオリゴヌクレオチド組と、任意で(d)キット結果を利用及び解釈するための取扱説明書とを含む。
【0191】
代替的な好ましい実施の形態において、キットは、(a)メチル化感受性制限酵素試薬と、(b)上記試薬及び患者の生体試料を収容するのに適したコンテナと、(c)配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列から選択される配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含む配列の増幅に適した少なくとも1つのプライマーオリゴヌクレオチド組と、任意で(d)キット結果を利用及び解釈するための取扱説明書とを含む。
【0192】
代替的な実施の形態では、キットは、(a)メチル化感受性制限酵素試薬と、(b)上記試薬及び患者の生体試料を収容するのに適したコンテナと、(c)配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列から選択される配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含む配列の増幅に適した少なくとも1つのプライマーオリゴヌクレオチド組と、(d)配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列から選択される配列の少なくとも9塩基長のセグメントと同一であるか、又はこれに相補的であるか、又はストリンジェントな条件若しくは高ストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする、1つ又は複数の核酸又はペプチド核酸を含有する少なくとも1つのオリゴヌクレオチド組と、任意で(e)キット結果を利用及び解釈するための取扱説明書とを含む。
【0193】
またキットは、別々のコンテナに入った状態で、遮断、洗浄又はコーティングに適したバッファー又は溶液等の他の成分を含有してもよい。
【0194】
本発明は更に、メチル化感受性制限酵素分析によって被験体において膀胱癌の有無の診断を与えるのに使用するキットに関する。上記キットは、コンテナとDNAマイクロアレイ成分とを含む。上記DNAマイクロアレイ成分は、複数のオリゴヌクレオチドが設計位置で固定化される表面であり、オリゴヌクレオチドは少なくとも1つのCpGメチル化部位を含む。少なくとも1つの上記オリゴヌクレオチドは、AC051635.7、PRDM14、DMRT2、CYP1B1及びSOX1、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列に特異的であり、少なくとも15塩基対長の配列を含むが、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列による配列を200bp以下しか含まない。好ましくは上記配列は、少なくとも15塩基対長であるが、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15の1つによる少なくとも1つの配列を80bp以下しか含まない。上記配列が、少なくとも20塩基対長であるが、配列番号7、1、4、10及び13、好ましくは配列番号8、2、5、11、14、並びに最も好ましくは配列番号9、3、6、12、15の1つによる少なくとも1つの配列を30bp以下しか含まないのが更に好ましい。
【0195】
上記検査キットは、1つ又は複数のメチル化感受性制限酵素を含む制限酵素成分を更に含むのが好ましい。
【0196】
更なる実施の形態において、上記検査キットはさらに、少なくとも1つのメチル化特異的制限酵素を含むことを特徴とし、オリゴヌクレオチドは、上記の少なくとも1つのメチル化特異的制限酵素の制限部位を含むことを特徴とする。
【0197】
キットは、DNA濃縮に関して当該技術分野で知られている以下の成分の1つ又は幾つかを更に含み得る:タンパク質成分(上記タンパク質は、メチル化DNAと選択的に結合する)、任意で好適な溶液中の三重鎖形成核酸成分である1つ又は複数のリンカー、ライゲーションを行うための物質又は溶液(例えばリガーゼ、バッファー)、カラムクロマトグラフィを行うための物質又は溶液、免疫学に基づく濃縮(例えば免疫沈降)を行うための物質又は溶液、核酸増幅(例えばPCR)を行うための物質又は溶液、カップリング試薬に適用可能な場合、溶液中で適用可能な場合の色素又は幾つかの色素、ハイブリダイゼーションを行うための物質又は溶液、並びに/若しくは洗浄工程を行うための物質又は溶液。
【0198】
記載の本発明は、膀胱癌を検出又は診断するのに有用な物質の組成物を更に提供する。上記組成物は、少なくとも1つの核酸と、配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75に開示の核酸配列の18塩基対長のセグメントと、1mM〜5mMの塩化マグネシウム、100μM〜500μMのdNTP、0.5単位〜5単位のtaqポリメラーゼ、ウシ血清アルブミン、オリゴマー、特にオリゴヌクレオチド又はペプチド核酸(PNA)−オリゴマー(上記オリゴマーはそれぞれの場合、配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75の1つによる前処理ゲノムDNAに相補的であるか、又は適度にストリンジェントな条件若しくはストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチド長の少なくとも1つの塩基配列及びそれに相補的な配列を含む)を含む群から選択される1つ又は複数の物質とを含むのが好ましい。上記物質の組成物は、水溶液中での上記核酸の安定化に適切なバッファー溶液を含み、上記溶液中でポリメラーゼに基づく反応が可能であることが好ましい。好適なバッファーは当該技術分野で既知であり、市販されている。
【0199】
本発明の更に好ましい実施の形態において、上記少なくとも1つの核酸は、少なくとも50塩基対長、100塩基対長、150塩基対長、200塩基対長、250塩基対長又は500塩基対長の配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75に開示の核酸配列のセグメントである。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】MSPアッセイの技術的評価による結果を示す図である。mDNA=完全にメチル化したDNA。MDA=多重置換増幅法(これにより完全にメチル化していないDNAが生じる)。メチル化DNAと非メチル化DNAとの1:1000混合物を相対感度を評価するのに使用する。USED=尿沈渣プール。3〜5人の異なる健常なヒト由来のDNAの入った3つのプールを分析したが、これによりそれぞれのプールは特有の試料を示す。NTC=鋳型を含まない対照(No template controls)(この試料は陰性であるとする)。Pat1〜Pat5:DMHに使用された膀胱腫瘍組織試料。このためこれらの試料で陽性アッセイを行うことにより、DMH結果の確認が得られる。これらの値は交点(CP)として示されるqPCRデータである。50のCPは検出されるメチル化DNAがないことを意味し、CPがより小さいことは、各アッセイにより検出されたメチル化DNAの量の増大に対応していた。
【図2】健常な(crtl)個体から、及び膀胱癌(がん)と診断された患者から得られた全尿検体内の総DNAに対するメチル化DNAの比を示す図である。PCR産物(配列番号84、76、80、88、92)内でメチル化が検出されたが、そのそれぞれが示される遺伝子の配列断片を表す。
【符号の説明】
【0201】
図1
Sensitivityon Technical samples 技術的試料に対する感度
Assay アッセイ
Locus 遺伝子座
BackgroundMethylation in Biological Samples 生物学的試料におけるバックグラウンドのメチル化
pool プール
DMHConfirmation on Tissue Samples 組織試料に対するDMHの確認
図2
Percent MethylationRatio メチル化比(パーセント)
cancer がん
SEQ ID NO: 配列番号
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0202】
1.導入
再発性の膀胱癌の信頼性のある非侵襲的な診断は依然として、臨床業務における課題である。本発明者らは、非筋肉性の侵襲膀胱癌の早期診断に適したDNAメチル化ベースのバイオマーカーを発見する方法として示差的メチル化ハイブリダイゼーション(DMH)を用いた。腫瘍組織及び健常なヒトの尿沈渣由来のDNAを、発見するための試料材料として選択した。示差的にメチル化したとして同定されたゲノム遺伝子座をフィルターにかけ、腫瘍では高メチル化しており、かつ健常なヒトの尿沈渣由来のDNAでは、及び正常な末梢血リンパ球では大部分がメチル化していない候補を選択した。
【0203】
これらの候補マーカーのサブグループに対して、この発見のための研究の所見を検証するために、メチル化特異的なPCR(MSP)アッセイを開発した。最終的に最も良好に実行できるアッセイを、非筋肉性の侵襲膀胱癌を有する患者及び膀胱癌を有しない患者由来の尿試料集団で試験した。
【0204】
膀胱癌の非侵襲性でかつ早期の診断のために臨床的に有用なツールを得るために、更なるアッセイ開発に適した5つの候補マーカーに関する詳細な結果を示す。
【0205】
2.方法
2.1.示差的メチル化ハイブリダイゼーション
試料:腫瘍細胞量が70パーセント以上の6人の患者由来の膀胱癌腫瘍組織を1つの試験群として選択した。対照群として7人の健常なヒト由来の尿沈渣試料からDNAを抽出した。
【0206】
DMH:メチル化非特異的消化を用いて、全ゲノムライブラリを作製し、その後アダプタライゲーション及びメチル化感受性制限消化を行った。ジェネリックアダプタを適合させたプライマーを用いた増幅により増幅産物が得られ、続いてこの増幅産物を50000を超えるゲノム遺伝子座をカバーするマイクロアレイへとハイブリダイズした。それぞれの試料を独立して2回プロセシングし、2つのアレイへとハイブリダイズした。
【0207】
分析:オンチップ対照オリゴ及び更なる品質基準を用いて、データの品質管理を行った。品質管理を通ったそれぞれの試料のチップを既知のメチル化状況の技術的試料に基づき平均化及び正規化した。エフェクトサイズ及び2つの群の個々の遺伝子座間の群内変異に基づき、潜在的な候補バイオマーカーを選択した。DMH技術の詳細な説明は、FassbenderA. et al., Humana Press. Methods in Molecular Medicine.2009, Christian Pilarsky and Robert Gruetzmann (Editor) ISBN: 978-1-934115-76-3により及びLewin J. et al., lnt J Biochem Cell Biol. 2007;39(7-8):1539-50により与えられる。腫瘍で高メチル化し、かつ健常な尿沈渣及び正常な末梢血リンパ球では大部分がメチル化していない候補マーカーを、示差的メチル化の他のパターンを示す遺伝子座に対するより高いスコアによりタグ付けした。
【0208】
2.2.メチル化特異的なPCRアッセイ
技術的評価:最高スコアのDMH遺伝子座に対して62個のリアルタイムMSPアッセイを開発した。ほとんどのアッセイは2つのプライマー対により設計され、より良好に実行することができるプライマー対が選択された。
【0209】
それから全てのアッセイを以下のことを可能にするように設計された試験スキームに供した:
技術的試料を用いたアッセイ性能の評価
最低必要条件:絶対感度及び相対感度での少なくとも50pgのメチル化DNA、すなわち50ngの非メチル化DNAのバックグラウンドにおける50pgのメチル化DNAの検出。
生物学的対照におけるバックグラウンドのメチル化の推定
最低必要条件:健常な尿沈渣及び末梢血リンパ球のDNAのプールされた試料におけるメチル化レベルはメチル化DNAを有する技術的試料と比較して2交点分異なると予測された。
各遺伝子座に関するDMH結果の検証
最低必要条件:腫瘍組織試料の少なくとも70%での陽性のアッセイ応答
【0210】
臨床試料に対する評価:生物学的対照に対して十分な技術的性能及び許容可能なバックグラウンドのメチル化レベルを有するアッセイのみを、臨床尿試料での分析のために選択した。62個のアッセイの内、8つのアッセイを更なる分析のために選択した。これらのアッセイは、新たに診断されたか又は再発した20人の膀胱癌患者由来の全尿試料と、膀胱癌の病歴を有する症例を含む22個の対照試料とを分析するのに使用した。
【0211】
エピゲノミクスで開発されたプロトコルを用いて、抽出した全てのDNAを重亜硫酸処理に供した。リアルタイムPCR分析をABI 7300 TaqManプラットフォームで行った。メチル化非特異的アッセイを用いて、増幅可能なDNAの総量を定量した。
【0212】
3.結果
MSPアッセイの技術的評価及び5つのアッセイによる結果の概要を図1に示す。
【0213】
腫瘍組織でDMHにより最初に見出されたメチル化の差を検証することができるこれらのアッセイを用いると、尿検体においてもDNAメチル化レベルの上昇が見出された。これらの研究アッセイで達成された感度は40%〜65%の範囲であった。しかしながら、全ての標的となる遺伝子座がアッセイ設計を洗練することが可能であり、これによりアッセイの感度及び特異度を大きく改善することができる。さらに、パネルにおけるアッセイの組合せは、これまでに得られた結果に対して有望であると考えられる。
【0214】
4.結論
膀胱癌診断における臨床的適用の可能性がある新規のバイオマーカーを、DMH技術を用いて発見した。
がんを有しない個体由来の試料と比較してがん患者由来のほとんどの尿試料でDNAメチル化レベルが有意に高いことが見出された。
【0215】
【表1】

表1:ゲノム配列(配列番号)
(表中、英語は、遺伝子又はゲノム配列、ゲノム配列、好ましいゲノム領域、より好ましいゲノム領域、もっとも好ましいゲノム領域(DMH断片)を示す)
























【0216】
表2:メチル化重亜硫酸変換配列(配列番号)
(表中、英文は、遺伝子又はゲノム配列、メチル化したゲノム配列(センス)、メチル化したゲノム配列(アンチセンス)、メチル化した好ましいゲノム領域(ROI±300bp)(センス)、メチル化した好ましいゲノム領域(ROI±300bp)(アンチセンス)、メチル化したより好ましいゲノム領域(ROI)(センス)、メチル化したより好ましいゲノム領域(ROI)(アンチセンス)、メチル化した最も好ましいゲノム領域(DMH断片)(センス)、メチル化した最も好ましいゲノム領域(DMH断片)(アンチセンス)を示す。
【表2】















【0217】

表3:非メチル化重亜硫酸変換配列(配列番号)
(表中英文は、遺伝子又はゲノム配列、メチル化していないゲノム配列(センス)、メチル化していないゲノム配列(アンチセンス)、メチル化していない好ましいゲノム領域(ROI±300bp)(センス)、メチル化していない好ましいゲノム領域(ROI±300bp)(アンチセンス)、メチル化していないより好ましいゲノム領域(ROI)(センス)、メチル化していないより好ましいゲノム領域(ROI)(アンチセンス)、メチル化していない最も好ましいゲノム領域(DMH断片)(センス)、メチル化していない最も好ましいゲノム領域(DMH断片)(アンチセンス)を示す)


【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
膀胱癌を検出する方法であって、被験体から単離した生体試料において配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99及び配列番号100、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列のメチル化状態及び/又は発現レベルを決定することを含み、高メチル化及び/又は低発現が前記障害の存在の指標となる、膀胱癌を検出する方法。
【請求項2】
前記遺伝子から転写されるmRNAの有無又はレベルを検出することによって、前記発現レベルを決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遺伝子によってコードされるポリペプチド又はその配列の有無又はレベルを検出することによって、前記発現レベルを決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリペプチドを、ウェスタンブロット分析、クロマトグラフィ、イムノアッセイ、ELISAイムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、抗体及びそれらの組合せを含む群から選択される1つ又は複数の手段により検出する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記被験体から得られた生体試料から単離したゲノムDNAを、該ゲノムDNAの少なくとも1つの標的領域内でメチル化CpGジヌクレオチドと非メチル化CpGジヌクレオチドとを識別する、少なくとも1つの試薬又は試薬群に接触させることを含み、該標的領域が、それぞれ配列番号1の少なくとも16個の連続したヌクレオチドの配列を含むか、又はストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズし、前記連続したヌクレオチドが少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列を含み、これによって膀胱癌の検出が少なくとも一部もたらされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
a.ゲノムDNAを該被験体から得られた生体試料から抽出、又はそうでなければ単離すること、
b.a)のゲノムDNA又はその断片を、1つ又は複数の試薬で処理することであって、その5位がメチル化していないシトシン塩基を、ウラシル塩基又はハイブリダイゼーション特性に関してシトシンと異なることが検出可能な別の塩基に変換する、処理すること、
c.処理ゲノムDNA又はその処理断片を、増幅酵素、並びに配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75からなる群から選択される配列に相補的であるか、又は適度にストリンジェントな条件若しくはストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする少なくとも9ヌクレオチドの連続した配列及びその相補体を含む少なくとも1つのプライマーに接触させることであって、該処理ゲノムDNA又はその断片のいずれかを増幅し、少なくとも1つの増幅産物を産出するか又は増幅しない、接触させること、並びに
d.前記増幅産物の有無又は特性に基づき、配列番号7、1、4、10及び13、又は配列番号8、2、5、11、14、又は配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態若しくはレベル、又は前記ゲノム配列の少なくとも1つのうちの複数のCpGジヌクレオチドのメチル化状態若しくはレベルの平均、又はその平均を反映する値を決定することであって、膀胱癌の検出及び診断の少なくとも一方が少なくとも一部もたらされる、決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
b)で該ゲノムDNA又はその断片を処理することが、重亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、二亜硫酸塩、及びこれらの組合せからなる群から選択される試薬の使用を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
被験体から得られた該生体試料が、膀胱組織試料、組織片、パラフィン包埋組織、血漿又は血清等の体液、細胞株、尿検体、及びこれらの組合せを含む群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
a.ゲノムDNAを該被験体から得られた生体試料から抽出、又はそうでなければ単離すること、
b.a)のゲノムDNA又はその断片を、1つ又は複数のメチル化感受性制限酵素で消化すること、
b)のDNA制限酵素消化物を、増幅酵素、並びに配列番号7、1、4、10及び13、又は配列番号2、5、8、11、14、又は配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含む配列の増幅に適した少なくとも2つのプライマーに接触させること、
c.増幅産物の有無に基づき、配列番号7、1、4、10及び13、又は配列番号8、2、5、11、14、又は配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列の少なくとも1つのCpGジヌクレオチドのメチル化状態若しくはレベルを決定することであって、これによって前記障害の検出が少なくとも一部もたらされる、決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75からなる群から選択される配列の少なくとも16個の連続したヌクレオチド、及びそれらに相補的な配列を含む、膀胱癌の検出に使用される核酸。
【請求項11】
配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75からなる群から選択されるDNA配列の少なくとも50個の連続したヌクレオチド、及びそれらに相補的な配列を含む核酸。
【請求項12】
連続した塩基配列が、少なくとも1つのCpGジヌクレオチド配列、TpGジヌクレオチド配列又はCpAジヌクレオチド配列を含む、請求項10又は11に記載の核酸。
【請求項13】
請求項2に記載の方法を行うのに適したキットであって、(a)ストリンジェントな条件若しくは適度にストリンジェントな条件下で配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99及び配列番号100、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列の転写産物とハイブリダイズすることができる、複数のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドと、(b)該オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド及び該転写産物を含む該患者の生体試料を収容するのに適したコンテナであって、該オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドは、ストリンジェントな条件若しくは適度にストリンジェントな条件下で該転写産物とハイブリダイズすることができる、コンテナと、(c)(b)のハイブリダイゼーションを検出する手段と、任意で(d)キット結果を利用及び解釈するための取扱説明書とを含む、請求項2に記載の方法を行うのに適したキット。
【請求項14】
請求項3に記載の方法を行うのに適したキットであって、(a)配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99及び配列番号100、並びにこれらの制御配列からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子又はゲノム配列を検出する手段と、(b)前記手段及び該ポリペプチドを含む該患者の生体試料を収容するのに適したコンテナであって、該手段は、該ポリペプチドと複合体を形成することができる、コンテナと、(c)(b)の複合体を検出する手段とを含む、請求項3に記載の方法を行うのに適したキット。
【請求項15】
請求項1に記載の方法を行うのに適したキットであって、(a)重亜硫酸試薬と、(b)前記重亜硫酸試薬及び該患者の生体試料を収容するのに適したコンテナと、(c)それぞれの場合で配列が、配列番号28、29、30、31、32、33、58、59、60、61、62、63、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75から選択される配列の9塩基長又は18塩基長のセグメントと同一であるか、又はこれに相補的であるか、又はストリンジェントな条件若しくは高ストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする、2つのオリゴヌクレオチドを含有する少なくとも1つのオリゴヌクレオチド組とを含む、請求項1に記載の方法を行うのに適したキット。
【請求項16】
請求項1に記載の方法を行うのに適したキットであって、(a)メチル化感受性制限酵素試薬と、(b)前記試薬及び該患者の生体試料を含有するのに適したコンテナと、(c)配列番号7、1、4、10及び13、又は配列番号8、2、5、11、14、又は配列番号9、3、6、12、15を含む群から選択される少なくとも1つのゲノム配列の少なくとも9塩基長のセグメントと同一であるか、これに相補的であるか、又はストリンジェントな条件若しくは高ストリンジェントな条件下でこれとハイブリダイズする1つ又は複数の核酸又はペプチド核酸を含有する少なくとも1つのオリゴヌクレオチド組と、任意で(d)キット結果を利用及び解釈するための取扱説明書とを含む、請求項1に記載の方法を行うのに適したキット。
【請求項17】
膀胱癌の検出、診断、予後診断、治療、モニタリング、治療及びモニタリング、治療のモニタリング、治療結果の予測、サブクラス間の分類、及び段階分類のうちの少なくとも1つのための請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法、請求項10〜12のいずれか一項に記載の核酸、及び/又は請求項13〜16のいずれか一項に記載のキットの使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−530508(P2012−530508A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516772(P2012−516772)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059092
【国際公開番号】WO2010/149782
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(500247105)エピゲノミクス アーゲー (15)
【Fターム(参考)】