説明

膜のモノ過硫酸塩処理

好ましくは疎水性/親水性ブレンド膜、例えばPVdF/PVP、である多孔質ポリマー精密濾過膜または限外濾過膜の水の透過性および/または洗浄を改善する方法であって、多孔質ポリマー膜をモノ過硫酸塩源、好ましくは2KHSO.KHSO.K2SO、と接触させる段階を含む方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は疎水性/親水性ポリマーブレンド膜を処理してその水透過性を制御するための後処理工程、およびその方法によって調製された、処理された疎水性/親水性ポリマーブレンド膜に関する。前記工程は、ポリマー膜を洗浄するのにも適する。
【背景技術】
【0002】
以下の議論は、共通の一般的な知見の状況を容認するものとして解釈されるものではない。
【0003】
合成ポリマー膜は様々な水濾過用途に関する限外濾過(UF)および精密濾過(MF)の分野で知られる。膜の性質は膜の物理的性質、すなわち対称性または非対称性、孔形状、孔サイズ、およびポリマーの化学的性質、ならびに膜を形成するために使用された材料に依存する。
【0004】
特に重要なのは、膜の親水性または疎水性である。
【0005】
疎水性表面は「水を嫌う」ものとして定義され、一方で親水性表面は「水を好む」ものとして定義される。
【0006】
親水性膜は一般的に疎水性膜と比較して吸着性の付着物が少ないことがよく認識されている。しかしながら、疎水性膜は一般的により優れた化学的、熱的および生物学的安定性を提供する。水濾過膜の開発において、親水性ポリマーの低汚染性と疎水性ポリマーの安定性とを兼ね備えることが必要であると長い間考えられてきた。
【0007】
親水性および疎水性膜の双方の所望される性質を有する多孔質ポリマー膜を調製するための一つの方法は、単純に疎水性/親水性ポリマーの様々なブレンドから様々な膜を作ることであった。
【0008】
水の透過性を増加するために疎水性/親水性ブレンド膜を処理するための従来の工程は、例えば米国特許第6,596,167号明細書に開示される例えばポリ(エーテルスルホン)/ポリビニルピロリドン膜、ポリスルホン/ポリビニルピロリドン膜およびポリフッ化ビニリデンブレンド膜のCl処理など、詳しく述べられてきた。
【特許文献1】米国特許第6,596,167号明細書
【特許文献2】米国特許第6,159,373号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願人は、疎水性/親水性膜の水透過性を増加する試みの中で、例えばFenton剤、ヒドロキシルラジカル源など、他の酸化力を有する化学種を用いて、これまで親水化膜という選択肢について検討してきた。
【0010】
しかしながら、当分野において、水透過性を増大するための単純な膜処理工程に対する必要性は相変わらず存在する。そのような処理が膜の機械的性質または他の化学的性質を低減しないことは重要である。また、前記処理が可能な限り経済的であることも重要である。さらに、水濾過において多孔質ポリマー膜が広範囲で使用されることを考えると、前記処理が潜在的な毒物または環境に有害な化学種を膜環境内で使用しないことが非常に望ましい。
【0011】
もしも膜を処理する工程が、他の有益な方法において、例えば膜の洗浄において使用可能であるならば、効率という観点から非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様によると、本発明はポリマーを親水化する方法を提供し、該方法は前記ポリマーをモノ過硫酸塩源と接触させて(ポリマーをHSOと接触させる)ポリマーを親水性にする段階を含む。
【0013】
より詳細には、本発明は多孔質ポリマー膜の水透過性を改善する方法を提供し、該方法は前記多孔質ポリマー膜をモノ過硫酸塩源と接触させる(多孔質ポリマー膜をHSOと接触させる)段階を含む。
【0014】
他の態様によると、本発明は多孔質ポリマー膜を洗浄する方法を提供し、該方法は前記多孔質ポリマー膜をモノ過硫酸塩源と接触させる(多孔質ポリマー膜をHSOと接触させる)段階を含むことを必要とする。膜は有機物質、無機物質またはそれらの混合物で汚染される可能性がある。
【0015】
多孔質ポリマー膜は精密濾過膜または限外濾過膜であることが好ましい。
【0016】
ポリマー膜は疎水性および親水性ポリマーのブレンドから調製されるのが最も好ましい。
【0017】
適切な疎水性ポリマーには、フッ化ポリマー、ポリスルホン類ポリマー、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニルなどが含まれる。
【0018】
ポリマーはポリフッ化ビニリデン(PVdF)およびPVdFコポリマーなどのフルオロポリマーであるのが最も好ましい。
【0019】
他の好ましい実施形態では、疎水性ポリマーはポリスルホン、ポリエーテルスルホン、およびポリフェニルスルホンなどのポリスルホン類ポリマーである。
【0020】
好ましくは、疎水性/親水性ポリマーブレンドにおいて、親水性ポリマーはポリビニルピロリドン(PVP)およびPVPコポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などである。
【0021】
多孔質ポリマー膜は疎水性および親水性ポリマーのブレンドから調製されることが好ましい。膜調製前のポリマーブレンドにおける疎水性ポリマー/親水性ポリマーの比は、10:1から0.5:1であってよい。前記比は5:1から0.5:1であることが好ましく、3:1から0.5:1であることがさらに好ましい。前記比は通常最終ポリマーにおける比よりも高い。膜形成の間、親水性ポリマーの量は疎水性ポリマーの量に対して減少するためである。しかしながら、膜が親水性である場合、ある程度の親水性ポリマーは保持されている。全ての条件が同じとして、ポリマーブレンドにおける当初の親水性ポリマーの比率が高いと、通常最終の多孔質ポリマー膜における親水性ポリマーまたはコポリマーの取り込みの程度は高くなるだろう。
【0022】
疎水性/親水性膜が本明細書において議論されるが、親水性ポリマーまたはコポリマーは膜に親水性を付与するのに十分な量膜に存在すると理解される。例えば、PVdF/PVP多孔質ポリマー膜は十分なPVPを有して膜に親水性を付与するだろう。
【0023】
膜の好ましい形態は、中空繊維膜、管状膜または平らなシート状の膜である。
【0024】
膜は、ドライ膜、ウェット膜またはリウェット膜(rewetted membrane)であってよい。膜は独立していてよく、または束状に配置され、または中空繊維モジュール若しくはスパイラル型モジュールなどのモジュールであってよい。
【0025】
疎水性/親水性ブレンド膜は、PVdF/PVPブレンド膜またはPVdF/PVPコポリマーブレンド膜であるのが最も好ましい。これらの膜は転相プロセスによって形成されることが好ましく、拡散誘起相分離によって形成されるのが最も好ましい。膜は非対称であることが好ましい。
【0026】
一つの好ましい実施形態において、膜はキャスティングまたは押出の直後に処理される。膜はPVdF/PVP(またはPVdF/PVPコポリマー)溶媒濃厚溶液(solvent dope)からキャストされ、クエンチバス内で非溶媒と接触され、ウォッシュバス内でさらに洗浄され、初期のウェット膜を形成する。
【0027】
この好ましい実施形態において、初期のウェット膜において親水化処理が行なわれる。この場合、初期のウェット膜は、処理工程を実行するためにモノ過硫酸塩源と接触される。
【0028】
好ましくは、モノ過硫酸塩はモノ過硫酸アニオンの水溶液の形態で添加される。モノ過硫酸塩はモノ過硫酸カリウムとして添加されるのが最も好ましく、硫酸水素カリウムおよび硫酸カリウムとともにあるのが好ましい。モノ過硫酸塩の濃度は0.1重量%から10重量%の範囲であるのが好ましく、0.2重量%から5重量%の範囲が最も好ましい。
【0029】
別の方法として、前記工程はドライ膜において実行されてよい。ドライ膜は、孔充填剤(pore filling agent)処理を行なわずに直接乾燥する、またはグリセロールなど孔充填剤で処理した後乾燥する、どちらか二つの工程のうち一つによって調製されてよい。
【0030】
前記工程はリウェット膜において実行されてよい。これらは乾燥(孔充填剤あり、または孔充填剤なしのどちらかで)された後、水または他の液体で再度湿らせた膜である。
【0031】
添加剤がモノ過硫酸塩溶液中に存在していてもよい。添加剤は、例えば、親水性ポリマーの酸化を強めるために、または他の方法では反応を触媒するために添加されてよい。適切な添加剤は、有機酸および/または金属イオンを含む。理論に拘束されることは望まないが、有機酸は親水性ポリマーに関する酸化力の強化をもたらすと考えられている。最も好ましい有機酸はクエン酸である。理論に拘束されることは望まないが、金属イオンはモノ過硫酸塩が親水性ポリマーを酸化または架橋するときの触媒であると考えられている。最も好ましい金属イオンはNi2+、Cu2+およびFe2+である。前記添加剤の濃度は、0.01重量%と1重量%の間であってよく、最も好ましくは0.05重量%から0.5重量%の範囲である。
【0032】
処理は5℃から95℃の間の温度で実行されることが好ましく、15℃から60℃の範囲が最も好ましい。
【0033】
膜はモノ過硫酸塩溶液と接触されることが好ましく、溶液を吸収してよい。好ましくは、溶液は室温において10時間を越える間膜に接触させられてよい。
【0034】
他の好ましい実施形態において、モノ過硫酸塩溶液は40℃を越える温度において1時間未満膜に接触させられてよい。
【0035】
本発明の他の態様によると、前記第1の態様の方法によって調製された親水化ポリマーを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
疎水性/親水性ポリマー膜のどのようなブレンドが使用されてもよいことは当業者には明白であるが、本発明はPVdF/PVPおよびPVdF/PVPコポリマーブレンドに関して記述されるだろう。本発明は、市販のモノ過硫酸塩源である、Du Pont productが登録商標権を有し、モノ過硫酸カリウム、硫酸水素カリウムおよび硫酸カリウムを含有する、Oxone(登録商標)、に関して記述されるであろう。しかしながら、どのような適切なモノ過硫酸塩(HSO5−)が使用されてもよいことは当業者には明白であろう。
【0037】
Oxone(登録商標)中の活性成分はKHSOである。構造的には、モノ過硫酸イオンは以下に示される。
【0038】
【化1】

【0039】
固体の形態では、Oxone(登録商標)は化学式2KHSO・KHSO・KSOのトリプルソルト(triple salt)として存在する。
【0040】
好ましい実施形態において、PVdF/PVPの混合物、またはPVdF/PVPコポリマーの混合物は、標準的な膜調製手順にしたがって溶媒中で調製され、様々な添加剤が必要に応じて加えられ、膜濃厚溶液を製造する。濃厚溶液はその後拡散誘起相分離プロセスによって平面シート膜にキャストされるか、または中空の繊維に押出される、すなわちキャスティングまたは押出は適切な非溶媒中で起こる。膜がキャストまたは押し出されると、製造を容易にするために使用される溶媒および様々な添加剤は、クエンチバス内で非溶媒との交換によって除去され、その後バスはウォッシュバス内で洗浄され初期のウェット膜を生じる。初期のウェット膜は典型的にはその後Oxone(登録商標)を含む溶液で、所定の濃度、温度および時間条件下で処理される。pHは、1から10の範囲のどれかであってよく、必要に応じて塩基の添加によって調整されてよい。
【0041】
本発明の好ましい実施形態の一つでは、膜はまずOxone(登録商標)を吸収させておき、溶液を充填された膜はその後10時間を越える間室温にて湿った状態で保持される。このプロセスは束状またはモジュールに関して膜に特に影響を受けやすく、所定の時間モノ過硫酸塩溶液に浸漬されてよく、その後溶液から除去され、単に10時間超湿ったままで保持される。
【0042】
しかしながら、前述のように、処理時間は温度に依存して変えられてよい。適切な処理時間は温度に依存して典型的には30分から24時間の範囲であってよい。温度が40℃を超えるとき、時間は1時間未満であってよい。好ましくは、金属イオンおよび有機イオンの添加剤はOxone(登録商標)溶液に加えられ、処理プロセスを容易にする。膜が処理されると、その後乾燥されてよい。一つの特別なプロセスにおいて、孔充填剤処理をすることなしに、ウェット膜は単に直接乾燥される。他のプロセスにおいて、ウェット膜はまずグリセロールなどの孔充填剤で処理され、その後乾燥される。膜はその後水または他の適切な液体で再度湿らされてよい。
【0043】
透過性を増大するための膜の処理のほかに、モノ過硫酸塩溶液は限外濾過および精密濾過膜の洗浄にも有利であることがわかった。典型的には、水を含有する溶質および沈殿物は、大抵高い圧力下で、モジュール内に収容された半透過性管状膜の列を通過させられる。濾過された水は引き抜かれかつ集められ、膜の孔中にまたは膜の濾過されていない側に固体の残渣を残す。
【0044】
膜の孔は比較的汚染されていない状態で保持されるのが望ましい。孔の妨害物の量が増加するとき、モジュールの濾過効率は減少し、液体の実行可能な処理量を維持するために必要な圧力の大きさは増加する。圧力が増加すると、膜が破壊する可能性はより大きくなる。
【0045】
ある場合には、不純物を含有する水は、濾過の前に凝集剤で前処理され、分散したコロイドを「凝集粒子(flocs)」に凝集させる。凝集粒子は、より小さなコロイド粒子をトラップするという有利な点を有し、それによって濾過をより効率的にする。それらは溶解粒子の除去においても助けとなる可能性がある。凝集剤の影響の下で、溶解され、懸濁された粒子は、凝集し、水から沈殿し、それによって色および混濁を除去する。
【0046】
このように、実際上は、懸濁粒子不純物、コロイド、バクテリア、凝集粒子などを含有する濾液は、圧力下で濾過ユニットを通過させられ、強制的に水を濾過し、ユニット内部に、より詳細には膜の不用側におよび膜の孔内に、トラップされた残渣を残す。凝集粒子は膜の妨害物の原因となるという点で特に問題であり、膜の性能は膜の洗浄が必要となるまで使用とともに徐々に下がる。問題の程度は不純物の量、不純物の性質および膜のタイプに依存する。
【0047】
「逆洗」、すなわち水流(ガス流)を通常の流れの方向とは逆に流すことによって、膜からある程度の汚染物質を除去することができるが、特に凝集剤が使用されたときには、粒子物質を完全に除去することは難しい。
【0048】
したがって、化学的洗浄はやはり有効である。
【0049】
モノ過硫酸塩アニオン溶液、特にOxone(登録商標)溶液は、汚染された膜の洗浄において非常に有効であることがわかった。本発明の方法は逆洗法とともに用いられてよく、または「CIP洗浄(cleaning−in−place)」を実行するのに適切な独立型洗浄方法として使用されてよい。CIPはその通常のインサイチュ操作現場から移動することなしに膜モジュールを洗浄することを含む。
【0050】
一般論として、CIP洗浄の1つの形態は、洗浄されるモジュールを、栓およびパイプなどによって、システムの他の部分と連通する流体から分離することを含む。通常濾過される水または液体は、その後洗浄液、この場合Oxone(登録商標)溶液、と置換される。Oxone(登録商標)溶液は、その後洗浄を行なうため膜モジュールを通過させられる。Oxone(登録商標)溶液は、モジュールを通って再生されてよく、または廃棄物として流出される前に一度だけモジュールを通過させられてよく、それはシステムの特殊な要件および除去される汚染物質の量に依存する。
【0051】
CIPの手順は、周囲温度で実行されてよく、または通常の濾過温度の範囲から外れた制御された温度で実行されてもよい。CIPは濾過で使用される通常の範囲から外れた様々な時間および圧力において実行されてよい。
【0052】
洗浄が完了すると、システムは通常の液体流に再接続されることによって使用可能な状態に戻される前に、Oxone(登録商標)溶液の痕跡を除去するために洗い流される。
【0053】
CIPは手動で実行されてよく、または圧力差に応答して若しくは所定のモジュール作動時間の後動作する完全自動システムによって実行されてもよい。
【0054】
洗浄されることができるモジュールの1つの例は、米国特許第6,159,373号明細書に記載されるような、膜モジュール内に収容された中空繊維PVDF膜の列であって、その内容は参照のためにここに組み込まれる。モジュールはシェルを含み、その内部には約2800から約30000の、直径500μmから650μmの中空繊維、および直径250μmから310μm、孔サイズ0.2μmのルーメンを含む束状構造が配置されるが、これらのサイズは必要に応じて変更されてよい。上述のものと異なる膜およびモジュール構成が、前記好ましい実施形態の方法とともに採用されてよいことが、当業者には明白だろう。
【0055】
繊維束の各末端において、埋め込み用樹脂が、ルーメンを妨害することなくおよびモジュールの各端部を塞ぐことなく、所定の位置で繊維端を保持する。液体の供給は、シェルと中空繊維の外側との間で、モジュール内部に注入されて行なわれる。供給された液体のある程度は繊維のルーメン内部を通過し、それがそうするように濾過される。きれいな液体がその後ルーメン内部に集まり、流れ、または浄化された液体として、モジュールの外側から引き抜かれ、および取得される。
【0056】
CIP処理の1つの形態において、モノ過硫酸塩アニオンの溶液は、非処理液体流の代わりに導入される。しかしながら、その流れが通常使用されるときの流れと反対に導入されてよいことを当業者は理解するだろう。
【0057】
得られた結果から、モノ過硫酸塩処理によって汚染された膜を洗浄することができ、その透過性は汚染前のレベルに、またはそれに近いレベルに戻ったことが示された。
【0058】
[実施例1]
PVdF/PVP繊維は1.2重量%のモノ過硫酸カリウム(5重量%のOxone(登録商標))溶液で、異なる温度で様々な時間処理された。結果は表1に示される。透過性はLMH/bar(=LMH/100kPa)の単位で与えられ、これは当業者によく知られており、膜を通過する純水の流束を、駆動圧力(bar)が1barのときの、膜の面積(M)あたり、1時間あたり(H)のリットル数(L)で表す。
【0059】
【表1】

【0060】
温度40℃において、約2時間後に最適な透過性が得られることがわかる。1080LHM/Paという透過性は、処理前の値30LHM/Paと比較して実質的に大きい。温度25℃において、最適な透過性は17時間後に達成された。
【0061】
[実施例2]
様々な異なる膜モジュールは、異なる濃度のOxone(登録商標)溶液で、室温で24時間処理された。モノ過硫酸塩溶液で処理される前および後の双方に関する透過性が測定された。結果は表2に示される。
【0062】
【表2】

【0063】
全てのケースで、モジュールの透過性はモノ過硫酸塩処理の後実質的に増加される。
【0064】
[実施例3]
モジュールは2%Oxone(登録商標)溶液に2時間浸漬され、取り出され、プラスチックバッグ内に室温で24時間乾燥することなく保存された。透過性は188LHM/100kPaから332LHM/100kPaに増加した。
【0065】
このプロセスはpH1からpH10の間の幅広い範囲のpHにおいて有効であることがわかった。このプロセスはウェット膜にも、リウェット膜にも適用可能であり、ドライ膜にも同様に適用可能である。膜は単一で、すなわち膜または中空繊維で処理されてよく、束状構造またはモジュールで処理されてもよい。
【0066】
処理された膜およびモジュールを調べたところ、膜の機械的強度および機械的性質、例えばバブルポイント、破断力および破断伸びはモノ過硫酸処理によって変化しなかった。
【0067】
Oxone(登録商標)溶液は洗浄処理によって容易に除去することができる性質を有するため、処理されたMFまたはUF膜は飲料水の濾過、ならびに廃水処理に使用されてよい。
【0068】
[実施例4]Oxone(登録商標)の遷移金属活性化
遷移金属がOxone(登録商標)を活性化する性能が調べられた。PVdF膜束は表3に示される組成を有する処理溶液内に配置された。透過性は2、4、6、8、10および24時間の間隔で測定された。
【0069】
【表3】

【0070】
結果は図1に示され、PVdF繊維に関する時間に対する透過性の変化を示す。
【0071】
他に試験されたのは、Oxone(登録商標)をコバルト(II)および鉄(II)の双方と結合させることであった。Oxone(登録商標)の存在下でCo(II)はCo(III)に酸化され硫酸塩ラジカルを生成し、Oxone(登録商標)でCo(III)がCo(II)に還元されペルオキシモノ硫酸塩ラジカルを生成することは、文献で立証されている。硫酸塩ラジカルは透過性を改善する反応の背後の原動力である。しかしながら、ペルオキシモノ硫酸塩ラジカルは硫酸塩ラジカルと比較してずっと弱く、したがって反応スキームへの寄与は無視できると仮定される。Co(III)をCo(II)に還元する試みにおいてFe(II)を添加することが決定され、より多くの硫酸塩ラジカルがOxone(登録商標)から生成された。この処理はPVdF繊維に関してよい結果を与えた。
【0072】
[実施例5]膜の洗浄
汚染されたPVdF/PVP中空繊維膜は、24時間以上、0.5重量%、1.0重量%および2重量%のOxone(登録商標)溶液で、室温21℃および冷蔵温度(4℃未満)で処理された(浸漬された)。
【0073】
冷蔵温度において、24時間後、透過性が30−70%増加した(図2)。しかしながら、24時間後、室温におけるサンプルの全てが100%の透過性の増加を示した。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】時間に対する透過性の変化を示す図である。
【図2】時間に対する透過性の増加を示す図である。
【図3】時間に対する透過性の増加を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質ポリマー膜をモノ過硫酸塩源と接触させる段階を含む、前記多孔質ポリマー膜の水透過性を改良する、および/または前記多孔質ポリマー膜を洗浄する方法。
【請求項2】
前記多孔質ポリマー膜が精密濾過膜または限外濾過膜である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー膜が疎水性および親水性ポリマーのブレンドから調製される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記疎水性ポリマーが、フッ化ポリマー、ポリスルホン類ポリマー、ポリイミド、ポリアクリロニトリルおよびポリ塩化ビニルからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記疎水性ポリマーが、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)およびPVdFコポリマーからなる群から選択されるフッ化ポリマーである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記疎水性ポリマーが、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンおよびポリフェニルスルホンからなる群から選択されるポリスルホン類ポリマーである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記親水性ポリマーが、ポリビニルピロリドン(PVP)およびPVPコポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコールおよびポリアクリル酸から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記親水性ポリマーは水可溶性ポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーまたはコポリマーである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマー膜がPVdF/PVPブレンド膜またはPVdF/PVPコポリマーブレンド膜である、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記モノ過硫酸塩源がモノ過硫酸カリウムである、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記モノ過硫酸塩源が硫酸水素カリウムおよび硫酸カリウムとともにあるモノ過硫酸カリウムである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記モノ過硫酸塩源が化学式2KHSO・KHSO・KSOのトリプルソルトである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記モノ過硫酸塩がモノ過硫酸アニオンの水溶液の形態である、請求項1から12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記モノ過硫酸塩の濃度が0.1重量%から10重量%の範囲である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記モノ過硫酸塩の濃度が0.2重量%から5重量%の範囲である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
5から95℃の間の温度で実行される、請求項1から15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
15から60℃の間の温度で実行される、請求項1から16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記モノ過硫酸塩溶液が添加剤をさらに含む、請求項1から17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記添加剤が有機酸および/または金属イオンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記有機酸がクエン酸である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記金属イオンがNi2+、Cu2+およびFe2+から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記膜が転相プロセスによって形成される、請求項1から21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記膜が拡散誘起相分離によって形成される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記多孔質ポリマー膜がキャスティングまたは押出の直後に処理される、請求項1から23の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記多孔質ポリマー膜がキャスティングまたは押出の直後に初期ウェット膜として処理される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記膜がドライ膜、ウェット膜またはリウェット膜として処理される、請求項1から24の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記膜がモノ過硫酸塩溶液と接触され、前記溶液を吸収する、請求項1から26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記膜が中空繊維膜、管状膜または平らなシート状の膜の形態である、請求項1から27の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
膜は独立している、または束状に配置される、または中空繊維モジュール若しくはスパイラル型モジュールなどのモジュールである、請求項1から28の何れか一項に記載の方法。
【請求項30】
請求項1から29の何れか一項に記載の方法によって調製された親水化されたポリマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−500169(P2009−500169A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520681(P2008−520681)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000997
【国際公開番号】WO2007/006104
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(507058144)シーメンス・ウォーター・テクノロジーズ・コーポレーション (23)
【Fターム(参考)】