膜ろ過システムの洗浄方法
【課題】膜の洗浄効果が高い膜ろ過システムの洗浄方法を提供する。
【解決手段】中空糸膜を備えた膜モジュールと、原水を前記膜モジュールに供給する原水供給手段と、前記中空糸膜の膜破断を検知する膜破断検知手段とを備えた内圧式の膜ろ過システムの洗浄方法において、中空糸膜の逆洗工程と、前記逆洗工程に引き続いて中空糸膜の内側に気体を導入した上で中空糸膜の破断を検知する膜破断検知工程と、前記膜破断検知工程に引き続き前記中空糸膜内側に液体を通流させる空気抜き工程であって、前記中空糸膜の長手方向の一方端から他方端へ液体を通流させる第1空気抜き工程と、前記中空糸膜の長手方向の前記他方端から前記一方端へ液体を通流させる第2空気抜き工程とを、交互に行う空気抜き工程であることを特徴とする。
【解決手段】中空糸膜を備えた膜モジュールと、原水を前記膜モジュールに供給する原水供給手段と、前記中空糸膜の膜破断を検知する膜破断検知手段とを備えた内圧式の膜ろ過システムの洗浄方法において、中空糸膜の逆洗工程と、前記逆洗工程に引き続いて中空糸膜の内側に気体を導入した上で中空糸膜の破断を検知する膜破断検知工程と、前記膜破断検知工程に引き続き前記中空糸膜内側に液体を通流させる空気抜き工程であって、前記中空糸膜の長手方向の一方端から他方端へ液体を通流させる第1空気抜き工程と、前記中空糸膜の長手方向の前記他方端から前記一方端へ液体を通流させる第2空気抜き工程とを、交互に行う空気抜き工程であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中の懸濁物を除去するろ過処理に関して、内圧式の中空糸膜モジュールを備えた膜ろ過システムの洗浄方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
また、外圧式中空糸膜モジュールにおける膜破断検出工程後にフラッシング工程を行うことが知られている(特許文献1、[0032]段落)。しかし、外圧式では、中空糸膜同士の間に懸濁物質が蓄積しやすく、フラッシングで懸濁物質を十分除去できない問題点があった。
また、懸濁物質を含む原水が供給される濃縮循環槽と、外筒の内部に複数本の筒状の膜フィルタが配置されて形成されており、モジュール入口部から供給された前記原水が各膜フィルタの入口端面から流入して各膜フィルタの内部空間を流通し各膜フィルタの出口端面から流出してモジュール出口部から外部に流出すると共に、膜フィルタの内周面から外周面に向かって透過してきた透過水が前記原水と分離して取り出される膜フィルタモジュールと、前記濃縮循環槽と前記膜フィルタモジュールのモジュール入口部とを連通する第1の配管系に介装されており、前記原水を前記膜フィルタモジュールに向けて圧送するポンプと、前記膜フィルタモジュールのモジュール出口部から流出してきた原水を前記濃縮循環槽に戻す第2の配管系とでなる濾過装置において前記第1の配管系から原水の一部が流入すると共に流入してきた原水を再び第1の配管系に戻すバイパス配管を、第1の配管系のうち前記ポンプと前記膜フィルタモジュールとの間に配置し、前記バイパス配管には、前記モジュール入口部での水圧よりも高い空気圧でもって空気を原水中に混入することにより原水中に微細気泡を発生させるミキサーを介装したことを特徴とする濾過装置の目詰まり防止装置が知られている(特許文献2)。この方法は、微細気泡を発生させるミキサーと気体を供給するコンプレッサをさらに設けなければならず、設備がより高価になるという問題点がある。
【0003】
また、中空糸膜の二次側を満水状態とし、一次側より一定の気体を圧送し、一定の圧力保持後に中空糸膜の一次側から二次側へ押出される水量を測定する中空糸膜モジュールの安全性試験方法であって、安全性試験工程を、ろ過運転後の逆圧洗浄工程終了後に行う方法が知られている(特許文献3)。この方法は、内圧式の中空糸膜モジュールであり、かつ、中空糸膜を縦方向に懸架した状態にしなければならないので、中空糸膜にかかる力が大きくなり破損するリスクが高いという問題点がある。
【特許文献1】特開2004−188252号公報
【特許文献2】特開2000−197884号公報
【特許文献3】特開2005−13992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、膜の洗浄効果が高い膜ろ過システムの洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鋭意研究した結果、膜破断検知試験後、1次側の空気抜き工程を行ったとき、中空糸膜の内側(1次側)を通流させる原水の通流方法を工夫する事により、中空糸膜内面に付着する懸濁物質を効果的に除去できることを見出した。
すなわち、本発明は、中空糸膜を備えた膜モジュールと、原水を前記膜モジュールに供給する原水供給手段と、前記中空糸膜の膜破断を検知する膜破断検知手段とを備えた内圧式の膜ろ過システムの洗浄方法において、中空糸膜の逆洗工程と、前記逆洗工程に引き続いて中空糸膜の内側に気体を導入した上で中空糸膜の破断を検知する膜破断検知工程と、前記膜破断検知工程に引き続き前記中空糸膜内側に液体を通流させる空気抜き工程であって、前記中空糸膜の長手方向の一方端から他方端へ液体を通流させる第1空気抜き工程と、前記中空糸膜の長手方向の前記他方端から前記一方端へ液体を通流させる第2空気抜き工程とを、交互に行う空気抜き工程であることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の一形態として、請求項1の前記空気抜き工程において、薬品を添加された液体を中空糸膜の内側に通流させることを特徴とする(請求項2)。薬品としては、次亜塩素酸ナトリウム溶液などの酸化剤、塩酸や硫酸などの無機酸、クエン酸などの有機酸、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性溶液等の薬品が用いられる。
また、本発明の一形態として、請求項2における前記空気抜き工程後のろ過工程において、ろ過開始から所定時間までのろ過水を廃棄することを特徴とする(請求項3)。
【0007】
また、本発明の一形態として、請求項1ないし3のいずれか1項の前記膜破断検知工程の直前に行う前記逆洗工程は、少なくとも下記(1)および(2)の工程を含み、下記(1)および(2)の工程を交互に行うことを特徴とする(請求項4)。
(1)前記中空糸膜の内側について、一方端から他方端へ液体を通流させる工程。
(2)前記中空糸膜の内側について、前記他方端から前記一方端へ液体を通流させる工程。
また、本発明の一形態として、請求項4の前記逆洗工程において、薬品を添加された液体を中空糸膜の外側に通流させることを特徴とする(請求項5)。薬品としては、次亜塩素酸ナトリウム溶液などの酸化剤、塩酸や硫酸などの無機酸、クエン酸などの有機酸、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性溶液等の薬品が用いられる。
【発明の効果】
【0008】
上記発明によれば、空気抜き工程初期には、空気抜き工程の前に行われた膜破断検知工程により導入された気体が中空糸膜内側にある。そして、空気抜き工程で液体を中空糸膜内側に通流することで前記気体と前記液体の複合物が中空糸膜内側を通流する。この際、液体の通流方向を交互に逆に切替えることで中空糸膜内側に付着した懸濁物質を遊離させる。膜破断検知工程により導入された気体が中空糸膜内側にある状態で、空気抜き工程を行うこととしたので、別途、中空糸膜内側に空気を導入する動作をすることなく中空糸膜内側を洗浄することができる。そして、本発明は、膜モジュールを1本の膜エレメントで形成する場合のみならず、前記膜モジュールを複数の膜エレメントから構成し、この膜エレメントを直列に複数本並べて設置する場合に特に効果的である。膜エレメント間に空気が滞留しやすいからである。そして、膜エレメント1個1個を小さくできるので、持ち運びが容易になり、メンテナンス性が向上でき、大規模な膜ろ過システムを構築し易くなる効果もある。
【0009】
また、請求項2の発明によれば、空気抜き工程において、薬品を添加された液体を用いることで、中空糸膜内側に付着した懸濁物質を遊離させる効果を向上させ、空気抜き工程以降に行われるろ過工程の前に膜モジュールを殺菌できる。
また、請求項3の発明によれば、空気抜き工程時に通流する液体に薬品が添加されている場合、空気工程後のろ過工程において、濾過開始から所定時間までのろ過水を分岐させる制御手段と弁および配管を膜ろ過システムに備えておき、薬品の溶解したろ過水を廃棄するようにすれば、膜ろ過システムで生産されるろ過水に薬品が混入することを防止でき、安全なろ過水を供給できる。
【0010】
また、請求項1ないし3のいずれか1項の発明において、膜破断検知工程の直前に行う逆洗工程で、液体の通流方向を切替えると共に圧力変動も与えられるので、中空糸膜に付着した懸濁物質をより効果的に除去できる。
また、逆洗工程において、薬品を添加された液体を用いることで、中空糸膜内側に付着した懸濁物質を遊離させる効果を向上させ、逆洗工程後の膜破断検知工程の膜破断検知能力を向上させる。なぜならば、膜破断検知工程では中空糸膜内側から加圧するため、中空糸膜内側に懸濁物質が残留していると、破損してできた中空糸膜の孔に懸濁物質が接着して前記破損孔を閉塞させ、見かけ上中空糸膜が破損していないと誤判定される恐れがあるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、膜ろ過システムの洗浄方法を適用した実施例について具体的に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1に、本発明の実施例1にかかる膜ろ過システムの概略構成図を示す。 まず、装置構成について説明する。
原水タンク8には、圧力容器6の両端へ接続する配管が配設されており、その配管の途中に設置したろ過ポンプ7より原水タンク側に弁15を備え、ろ過ポンプ7と圧力容器6の両端とのそれぞれの間に弁16、17を備えている。
【0013】
圧力容器6内には、膜エレメント1が少なくとも1つ備えられている。ろ過処理量を増加させるために膜エレメントを複数直列に接続してもよい。図3に、膜エレメントのA−A断面の矢視図を示す。膜エレメントは、図を解りやすくするために中空糸膜を少数しか記載していないが、実際は、例えば、数千本の中空糸膜を束ねたものである。膜モジュールは、膜エレメントを圧力容器6内に納めたもののことである。原水が通流する圧力容器6の両端は、中空糸膜の内側を通して連通している。膜エレメントにおいて、接着層4は、中空糸膜の両端を保持すると共に、原水とろ過水を隔離している。中空糸膜2の両端の接着層4で囲まれ、かつ、中空糸膜の外側3の空間は、ろ過水が通流する。膜モジュールは、垂直方向に設置しても、水平方向に設置してもよい。
【0014】
ろ過水は、集水管5を通り、膜モジュールから排出される。圧力容器6の両端の集水管5から延設した配管には、それぞれ弁18と弁19を備え、弁18,19から延設した両配管は集約されてろ過水タンク10に接続されている。前記集約部分からろ過水タンク10の間の配管には、弁22と、逆洗ポンプ9と、弁21とを順に設置している。弁19と弁22の間の配管からろ過水タンク10の上部空間へ接続する配管には、弁20を備えている。
【0015】
圧力容器6の端の集水管5から弁19まで延設した配管の間には、大気開放できる配管と弁34を備えている。圧力容器6の両端上部から延設した両配管には弁23,24が備えられ、この両配管を集約した配管に弁25が備えられている。
圧力容器6の端で上向きに配向しており大気開放できる配管と弁31が備えてある。さらに、弁31と接続している圧力容器6の反対側の端には、下向きに配向した配管と弁32を備えている。
【0016】
圧力容器6の端に連通した配管にコンプレッサ13と、減圧弁37と、弁33を備えている。
ろ過ポンプ7と圧力容器6の間の配管に薬品を注入するために、薬品タンク12から配管が接続され、その配管に弁26と、薬品ポンプ11と、弁27が順に備えられている。さらに、薬品ポンプ11と、弁27との間の配管から分岐して、弁35を経由して逆洗ポンプ9と弁22との間の配管に接続している。
【0017】
圧力容器6の両端から延設された後集約した配管から分岐して、排水処理タンク14の上部空間に連通した配管に弁28を備えている。排水処理タンク14は、内部が網で分割されており、網を通過しない物質は、弁30を備える配管から外部に排出できる。網を通過できた液体は、弁29を備える配管を通流して、ろ過ポンプ7と弁15の間の配管に通流できるように配管が接続されている。
【0018】
また、弁18から弁20の間、かつ、弁19から弁20の間にあたる部分の配管からろ過水を本装置外部に排出できる配管を分岐させて、弁26を備えている。
次に、膜ろ過システムのろ過手順から膜の洗浄方法について、順を追って説明する。
まず、ろ過工程と、中空糸膜の内側および外側が液体に接触している状態で中空糸膜2の外側から内側に向けて圧力をかける逆洗工程とを所定回数繰り返して、ろ過水を得る。
より詳細には、ろ過工程時は、弁15,16,17,18,19,20を開け、その他の弁は閉じ、ろ過ポンプ7を動かし、原水を膜モジュールで全量ろ過する(図3参照)。ろ過工程の終了判断は、予め所定の継続時間を決める。例えば、上水処理の場合、ろ過工程を数分〜数時間行う。
ろ過工程後、逆洗工程を行う。逆洗工程は、ろ過ポンプ7を停止後、弁18,19,21,22,23,24,25を開け、それ以外の弁は閉じた状態で逆洗ポンプ9を運転する(図4参照)。
【0019】
前記逆洗工程の別の態様として、少なくとも下記(1)および(2)の工程を含み、下記(1)および(2)の工程を交互に行うことがより望ましい(図5,6参照)。
(1)前記中空糸膜の内側について、一方端から他方端へ液体を通流させる工程。
(2)前記中空糸膜の内側について、前記他方端から前記一方端へ液体を通流させる工程。
【0020】
すなわち、弁21,22,18,24,25を開け、その他の弁を閉じ、逆洗ポンプ9を動かし、ろ過水を膜エレメントの2次側(外側)から1次側(内側)に通流させて逆洗し、続いて、弁21,22,19,23,25を開け、その他の弁を閉じ、逆洗ポンプ9を動かし、ろ過水を膜エレメントの2次側(外側)から1次側(内側)に通流させて逆洗する動作を繰り返す。
【0021】
このような上記ろ過工程と逆洗工程を繰り返してろ過水を得る。
また、上記ろ過工程と逆洗工程を繰り返す過程で、ろ過工程の膜差圧が所定値(以下、薬品洗浄膜差圧値と記す)を超えた場合、中空糸膜に付着した懸濁物質を除去させる薬品を中空糸膜の外側を通流する液体に添加する薬品添加逆洗工程を実施することが望ましい(図4,5,6参照)。または、上記薬品添加逆洗工程を予め定めた期間毎に実施することが望ましい。より詳細には、図4,5,6において、弁26を開け、薬品ポンプ11を動かし、薬品をろ過水中に添加する。使用する薬品は、中空糸膜の薬品耐性にもよるが、例えば、次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度120,000mg/L以上)、無機酸(47%(w/v)硫酸など)、クエン酸(100,000mg/L)、アルカリ(20%(w/v)水酸化ナトリウムなど)などを使用することが望ましい。前記薬品は、流路内で希釈されて、例えば、次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度10〜1000mg/L)、無機酸(硫酸など。pH2〜4)、クエン酸(10〜10,000mg/L)、アルカリ(水酸化ナトリウムなど。pH8〜12)になるように薬品注入量を事前に検討の上で所望の量を添加することが望ましい。
【0022】
次に、膜破断検知工程を行う。なお、膜破断検知工程を行う前の逆洗工程は、上記薬品添加を行うことがより望ましい。
以下に膜破断検知工程の手順を説明する。弁31,32を開き、他の弁は閉じた状態にし、膜モジュールの原水側を排水する。排水後は、弁18,19,20,34を開け、他の弁は閉じた状態にし、膜モジュールの原水側(中空糸膜の内側に連通する部分)の圧力が安定した後、弁34を閉じる。次に、弁33を開け、コンプレッサ13を作動させて、膜モジュールの原水側を減圧弁37で設定した所定圧力まで加圧後、弁33を閉じる。膜モジュールの原水側の圧力を継続的に測定し、所定時間内にこの圧力が予め定めた閾値圧力以下になった場合、膜が破断していると判断して警報を発信する。
【0023】
膜破断検知工程として、前記圧力保持試験の代わりに、拡散流量試験を行っても良い。具体的には、弁18,19,20,33を開け、予め減圧弁37を所定圧力に設定しておき、コンプレッサ13を動作させ、膜モジュールの原水側の圧力を一定に維持させる。所定時間内に弁20から流出する水量を、図示していない流量計で測定する。
膜破断検知工程終了時には、弁31,34,18,19,20を開け、その他の弁を閉じ、装置内の圧力を大気圧に戻す。
【0024】
そして、前記膜破断検知工程に引き続き前記中空糸膜内側に液体を通流させる空気抜き工程であって、前記中空糸膜の長手方向の一方端から他方端へ液体を通流させる第1空気抜き工程と、前記中空糸膜の長手方向の前記他方端から前記一方端へ液体を通流させる第2空気抜き工程とを、交互に行う空気抜き工程を実施する。
上記のように行うことで、中空糸膜2に付着していた懸濁物質を前記空気抜き工程時に除去できる。
【0025】
より詳細には、第1空気抜き工程として、弁15,16,24,25を開け、他の弁は閉じた状態で、ろ過ポンプ7を高流速で運転し、中空糸膜の内側の一方端から他方端に原水を通過させる(図12参照)。一定時間継続したら、第2空気抜き工程として、弁15,17,23,25を開け、他の弁は閉じた状態で、ろ過ポンプ7を動かし、今後は前記他方端から前記一方端に水が通過するようにする(図13参照)。この動作により、膜の内側に付着し、通常の前記逆洗工程では落としきれなかった濁質を効果的に除去することができる。上記第1空気抜き工程を行う前に、弁15,16,17,23,24,25を開け、他の弁は閉じた状態で、ろ過ポンプ7を動かし、膜モジュールの両端を水で満たしてもよい(図11参照)。
【0026】
また、空気抜き工程の際、殺菌効果のある薬品を中空糸膜の内側を通流する液体に添加することがさらに望ましい(図14,15参照)。殺菌効果のある薬品としては、次亜塩素酸溶液ナトリウム溶液が望ましい。
具体的には、弁16,24,28,29を開けて他の弁は閉じた状態、または、弁17,23,28,29を開けて他の弁は閉じた状態として、ろ過ポンプ7を所定時間動かし、排水処理タンク14を経由して循環する流れを維持すると共に、弁26,27を開け、薬品ポンプ11を駆動し、装置内を循環している水に薬品を添加し、前記循環する流れにより薬品濃度を均一化させる。前記薬品濃度に到達する必要量の薬品を注入後、薬品ポンプ11を停止すると共に、弁26,27を閉じる。薬品注入が終わった後も、ろ過ポンプ7を断続的、あるいは連続的に動かすことが望ましい。こうすることで、薬品が膜面の濁質と反応して、薬品濃度が低下する場合であっても薬品を含んだ水を循環させているので薬品濃度の局部的な低下を防ぐことができる。
【0027】
前記薬品を排水するときは、原水側とろ過水側を順に排水する。原水側の排水手順としては、弁15,16,17,23,24,28を開き、他は閉じた状態でろ過ポンプ7を動かし、原水側の薬品含有水を排出する(図17参照)。続いて、ろ過水側の排水手順としては、弁21,22,18,19,23,24,28を開き、他の弁は閉じた状態で逆洗ポンプ9を動かし、ろ過水側の薬品含有水を排出する(図17参照)。
【0028】
また、前記空気抜き工程(殺菌効果のある薬品を添加した場合も含む)後のろ過工程において、ろ過開始から所定時間までのろ過水を廃棄することがより望ましい(図18参照)。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1にかかる膜ろ過システムの概略構成図。
【図2】図1および2における膜エレメントのA−A断面の矢視図。
【図3】本発明の実施例1におけるろ過工程時の物質の流れを示す図。
【図4】本発明の実施例1における逆洗工程時の物質の流れを示す図。
【図5】本発明の実施例1における逆洗工程時の物質の流れを示す図。
【図6】本発明の実施例1における逆洗工程時の物質の流れを示す図。
【図7】本発明の実施例1における薬品添加した逆洗工程において、薬品を排出する際の物質の流れを示す図。
【図8】本発明の実施例1における膜破断検知工程時の物質の流れを示す図。
【図9】本発明の実施例1における膜破断検知工程時の物質の流れを示す図。
【図10】本発明の実施例1における膜破断検知工程時の物質の流れを示す図。
【図11】本発明の実施例1における空気抜き工程時の物質の流れを示す図。
【図12】本発明の実施例1における空気抜き工程時の物質の流れを示す図。
【図13】本発明の実施例1における空気抜き工程時の物質の流れを示す図。
【図14】本発明の実施例1における薬品添加した空気抜き工程時の物質の流れを示す図。
【図15】本発明の実施例1における薬品添加した空気抜き工程時の物質の流れを示す図。
【図16】本発明の実施例1における薬品添加した空気抜き工程において、原水側の薬品含有水を排出する際の物質の流れを示す図。
【図17】本発明の実施例1における薬品添加した空気抜き工程において、ろ過水側の薬品含有水を排出する際の物質の流れを示す図。
【図18】本発明の実施例1におけるろ過工程初期にろ過水を廃棄する際の物質の流れを示す図。
【符号の説明】
【0030】
1 膜エレメント
2 中空糸膜
3 中空糸膜の外側
4 接着層
5 集水管
6 圧力容器(圧力容器に膜エレメントを格納した状態を膜モジュールと呼ぶ)
7 ろ過ポンプ
8 原水タンク
9 逆洗ポンプ
10 ろ過水タンク
11 薬品ポンプ
12 薬品タンク
13 コンプレッサ
14 排水処理タンク(汚泥除去・中和・還元処理するタンクである)
15〜36 弁
37 減圧弁
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中の懸濁物を除去するろ過処理に関して、内圧式の中空糸膜モジュールを備えた膜ろ過システムの洗浄方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
また、外圧式中空糸膜モジュールにおける膜破断検出工程後にフラッシング工程を行うことが知られている(特許文献1、[0032]段落)。しかし、外圧式では、中空糸膜同士の間に懸濁物質が蓄積しやすく、フラッシングで懸濁物質を十分除去できない問題点があった。
また、懸濁物質を含む原水が供給される濃縮循環槽と、外筒の内部に複数本の筒状の膜フィルタが配置されて形成されており、モジュール入口部から供給された前記原水が各膜フィルタの入口端面から流入して各膜フィルタの内部空間を流通し各膜フィルタの出口端面から流出してモジュール出口部から外部に流出すると共に、膜フィルタの内周面から外周面に向かって透過してきた透過水が前記原水と分離して取り出される膜フィルタモジュールと、前記濃縮循環槽と前記膜フィルタモジュールのモジュール入口部とを連通する第1の配管系に介装されており、前記原水を前記膜フィルタモジュールに向けて圧送するポンプと、前記膜フィルタモジュールのモジュール出口部から流出してきた原水を前記濃縮循環槽に戻す第2の配管系とでなる濾過装置において前記第1の配管系から原水の一部が流入すると共に流入してきた原水を再び第1の配管系に戻すバイパス配管を、第1の配管系のうち前記ポンプと前記膜フィルタモジュールとの間に配置し、前記バイパス配管には、前記モジュール入口部での水圧よりも高い空気圧でもって空気を原水中に混入することにより原水中に微細気泡を発生させるミキサーを介装したことを特徴とする濾過装置の目詰まり防止装置が知られている(特許文献2)。この方法は、微細気泡を発生させるミキサーと気体を供給するコンプレッサをさらに設けなければならず、設備がより高価になるという問題点がある。
【0003】
また、中空糸膜の二次側を満水状態とし、一次側より一定の気体を圧送し、一定の圧力保持後に中空糸膜の一次側から二次側へ押出される水量を測定する中空糸膜モジュールの安全性試験方法であって、安全性試験工程を、ろ過運転後の逆圧洗浄工程終了後に行う方法が知られている(特許文献3)。この方法は、内圧式の中空糸膜モジュールであり、かつ、中空糸膜を縦方向に懸架した状態にしなければならないので、中空糸膜にかかる力が大きくなり破損するリスクが高いという問題点がある。
【特許文献1】特開2004−188252号公報
【特許文献2】特開2000−197884号公報
【特許文献3】特開2005−13992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、膜の洗浄効果が高い膜ろ過システムの洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鋭意研究した結果、膜破断検知試験後、1次側の空気抜き工程を行ったとき、中空糸膜の内側(1次側)を通流させる原水の通流方法を工夫する事により、中空糸膜内面に付着する懸濁物質を効果的に除去できることを見出した。
すなわち、本発明は、中空糸膜を備えた膜モジュールと、原水を前記膜モジュールに供給する原水供給手段と、前記中空糸膜の膜破断を検知する膜破断検知手段とを備えた内圧式の膜ろ過システムの洗浄方法において、中空糸膜の逆洗工程と、前記逆洗工程に引き続いて中空糸膜の内側に気体を導入した上で中空糸膜の破断を検知する膜破断検知工程と、前記膜破断検知工程に引き続き前記中空糸膜内側に液体を通流させる空気抜き工程であって、前記中空糸膜の長手方向の一方端から他方端へ液体を通流させる第1空気抜き工程と、前記中空糸膜の長手方向の前記他方端から前記一方端へ液体を通流させる第2空気抜き工程とを、交互に行う空気抜き工程であることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の一形態として、請求項1の前記空気抜き工程において、薬品を添加された液体を中空糸膜の内側に通流させることを特徴とする(請求項2)。薬品としては、次亜塩素酸ナトリウム溶液などの酸化剤、塩酸や硫酸などの無機酸、クエン酸などの有機酸、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性溶液等の薬品が用いられる。
また、本発明の一形態として、請求項2における前記空気抜き工程後のろ過工程において、ろ過開始から所定時間までのろ過水を廃棄することを特徴とする(請求項3)。
【0007】
また、本発明の一形態として、請求項1ないし3のいずれか1項の前記膜破断検知工程の直前に行う前記逆洗工程は、少なくとも下記(1)および(2)の工程を含み、下記(1)および(2)の工程を交互に行うことを特徴とする(請求項4)。
(1)前記中空糸膜の内側について、一方端から他方端へ液体を通流させる工程。
(2)前記中空糸膜の内側について、前記他方端から前記一方端へ液体を通流させる工程。
また、本発明の一形態として、請求項4の前記逆洗工程において、薬品を添加された液体を中空糸膜の外側に通流させることを特徴とする(請求項5)。薬品としては、次亜塩素酸ナトリウム溶液などの酸化剤、塩酸や硫酸などの無機酸、クエン酸などの有機酸、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性溶液等の薬品が用いられる。
【発明の効果】
【0008】
上記発明によれば、空気抜き工程初期には、空気抜き工程の前に行われた膜破断検知工程により導入された気体が中空糸膜内側にある。そして、空気抜き工程で液体を中空糸膜内側に通流することで前記気体と前記液体の複合物が中空糸膜内側を通流する。この際、液体の通流方向を交互に逆に切替えることで中空糸膜内側に付着した懸濁物質を遊離させる。膜破断検知工程により導入された気体が中空糸膜内側にある状態で、空気抜き工程を行うこととしたので、別途、中空糸膜内側に空気を導入する動作をすることなく中空糸膜内側を洗浄することができる。そして、本発明は、膜モジュールを1本の膜エレメントで形成する場合のみならず、前記膜モジュールを複数の膜エレメントから構成し、この膜エレメントを直列に複数本並べて設置する場合に特に効果的である。膜エレメント間に空気が滞留しやすいからである。そして、膜エレメント1個1個を小さくできるので、持ち運びが容易になり、メンテナンス性が向上でき、大規模な膜ろ過システムを構築し易くなる効果もある。
【0009】
また、請求項2の発明によれば、空気抜き工程において、薬品を添加された液体を用いることで、中空糸膜内側に付着した懸濁物質を遊離させる効果を向上させ、空気抜き工程以降に行われるろ過工程の前に膜モジュールを殺菌できる。
また、請求項3の発明によれば、空気抜き工程時に通流する液体に薬品が添加されている場合、空気工程後のろ過工程において、濾過開始から所定時間までのろ過水を分岐させる制御手段と弁および配管を膜ろ過システムに備えておき、薬品の溶解したろ過水を廃棄するようにすれば、膜ろ過システムで生産されるろ過水に薬品が混入することを防止でき、安全なろ過水を供給できる。
【0010】
また、請求項1ないし3のいずれか1項の発明において、膜破断検知工程の直前に行う逆洗工程で、液体の通流方向を切替えると共に圧力変動も与えられるので、中空糸膜に付着した懸濁物質をより効果的に除去できる。
また、逆洗工程において、薬品を添加された液体を用いることで、中空糸膜内側に付着した懸濁物質を遊離させる効果を向上させ、逆洗工程後の膜破断検知工程の膜破断検知能力を向上させる。なぜならば、膜破断検知工程では中空糸膜内側から加圧するため、中空糸膜内側に懸濁物質が残留していると、破損してできた中空糸膜の孔に懸濁物質が接着して前記破損孔を閉塞させ、見かけ上中空糸膜が破損していないと誤判定される恐れがあるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、膜ろ過システムの洗浄方法を適用した実施例について具体的に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1に、本発明の実施例1にかかる膜ろ過システムの概略構成図を示す。 まず、装置構成について説明する。
原水タンク8には、圧力容器6の両端へ接続する配管が配設されており、その配管の途中に設置したろ過ポンプ7より原水タンク側に弁15を備え、ろ過ポンプ7と圧力容器6の両端とのそれぞれの間に弁16、17を備えている。
【0013】
圧力容器6内には、膜エレメント1が少なくとも1つ備えられている。ろ過処理量を増加させるために膜エレメントを複数直列に接続してもよい。図3に、膜エレメントのA−A断面の矢視図を示す。膜エレメントは、図を解りやすくするために中空糸膜を少数しか記載していないが、実際は、例えば、数千本の中空糸膜を束ねたものである。膜モジュールは、膜エレメントを圧力容器6内に納めたもののことである。原水が通流する圧力容器6の両端は、中空糸膜の内側を通して連通している。膜エレメントにおいて、接着層4は、中空糸膜の両端を保持すると共に、原水とろ過水を隔離している。中空糸膜2の両端の接着層4で囲まれ、かつ、中空糸膜の外側3の空間は、ろ過水が通流する。膜モジュールは、垂直方向に設置しても、水平方向に設置してもよい。
【0014】
ろ過水は、集水管5を通り、膜モジュールから排出される。圧力容器6の両端の集水管5から延設した配管には、それぞれ弁18と弁19を備え、弁18,19から延設した両配管は集約されてろ過水タンク10に接続されている。前記集約部分からろ過水タンク10の間の配管には、弁22と、逆洗ポンプ9と、弁21とを順に設置している。弁19と弁22の間の配管からろ過水タンク10の上部空間へ接続する配管には、弁20を備えている。
【0015】
圧力容器6の端の集水管5から弁19まで延設した配管の間には、大気開放できる配管と弁34を備えている。圧力容器6の両端上部から延設した両配管には弁23,24が備えられ、この両配管を集約した配管に弁25が備えられている。
圧力容器6の端で上向きに配向しており大気開放できる配管と弁31が備えてある。さらに、弁31と接続している圧力容器6の反対側の端には、下向きに配向した配管と弁32を備えている。
【0016】
圧力容器6の端に連通した配管にコンプレッサ13と、減圧弁37と、弁33を備えている。
ろ過ポンプ7と圧力容器6の間の配管に薬品を注入するために、薬品タンク12から配管が接続され、その配管に弁26と、薬品ポンプ11と、弁27が順に備えられている。さらに、薬品ポンプ11と、弁27との間の配管から分岐して、弁35を経由して逆洗ポンプ9と弁22との間の配管に接続している。
【0017】
圧力容器6の両端から延設された後集約した配管から分岐して、排水処理タンク14の上部空間に連通した配管に弁28を備えている。排水処理タンク14は、内部が網で分割されており、網を通過しない物質は、弁30を備える配管から外部に排出できる。網を通過できた液体は、弁29を備える配管を通流して、ろ過ポンプ7と弁15の間の配管に通流できるように配管が接続されている。
【0018】
また、弁18から弁20の間、かつ、弁19から弁20の間にあたる部分の配管からろ過水を本装置外部に排出できる配管を分岐させて、弁26を備えている。
次に、膜ろ過システムのろ過手順から膜の洗浄方法について、順を追って説明する。
まず、ろ過工程と、中空糸膜の内側および外側が液体に接触している状態で中空糸膜2の外側から内側に向けて圧力をかける逆洗工程とを所定回数繰り返して、ろ過水を得る。
より詳細には、ろ過工程時は、弁15,16,17,18,19,20を開け、その他の弁は閉じ、ろ過ポンプ7を動かし、原水を膜モジュールで全量ろ過する(図3参照)。ろ過工程の終了判断は、予め所定の継続時間を決める。例えば、上水処理の場合、ろ過工程を数分〜数時間行う。
ろ過工程後、逆洗工程を行う。逆洗工程は、ろ過ポンプ7を停止後、弁18,19,21,22,23,24,25を開け、それ以外の弁は閉じた状態で逆洗ポンプ9を運転する(図4参照)。
【0019】
前記逆洗工程の別の態様として、少なくとも下記(1)および(2)の工程を含み、下記(1)および(2)の工程を交互に行うことがより望ましい(図5,6参照)。
(1)前記中空糸膜の内側について、一方端から他方端へ液体を通流させる工程。
(2)前記中空糸膜の内側について、前記他方端から前記一方端へ液体を通流させる工程。
【0020】
すなわち、弁21,22,18,24,25を開け、その他の弁を閉じ、逆洗ポンプ9を動かし、ろ過水を膜エレメントの2次側(外側)から1次側(内側)に通流させて逆洗し、続いて、弁21,22,19,23,25を開け、その他の弁を閉じ、逆洗ポンプ9を動かし、ろ過水を膜エレメントの2次側(外側)から1次側(内側)に通流させて逆洗する動作を繰り返す。
【0021】
このような上記ろ過工程と逆洗工程を繰り返してろ過水を得る。
また、上記ろ過工程と逆洗工程を繰り返す過程で、ろ過工程の膜差圧が所定値(以下、薬品洗浄膜差圧値と記す)を超えた場合、中空糸膜に付着した懸濁物質を除去させる薬品を中空糸膜の外側を通流する液体に添加する薬品添加逆洗工程を実施することが望ましい(図4,5,6参照)。または、上記薬品添加逆洗工程を予め定めた期間毎に実施することが望ましい。より詳細には、図4,5,6において、弁26を開け、薬品ポンプ11を動かし、薬品をろ過水中に添加する。使用する薬品は、中空糸膜の薬品耐性にもよるが、例えば、次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度120,000mg/L以上)、無機酸(47%(w/v)硫酸など)、クエン酸(100,000mg/L)、アルカリ(20%(w/v)水酸化ナトリウムなど)などを使用することが望ましい。前記薬品は、流路内で希釈されて、例えば、次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度10〜1000mg/L)、無機酸(硫酸など。pH2〜4)、クエン酸(10〜10,000mg/L)、アルカリ(水酸化ナトリウムなど。pH8〜12)になるように薬品注入量を事前に検討の上で所望の量を添加することが望ましい。
【0022】
次に、膜破断検知工程を行う。なお、膜破断検知工程を行う前の逆洗工程は、上記薬品添加を行うことがより望ましい。
以下に膜破断検知工程の手順を説明する。弁31,32を開き、他の弁は閉じた状態にし、膜モジュールの原水側を排水する。排水後は、弁18,19,20,34を開け、他の弁は閉じた状態にし、膜モジュールの原水側(中空糸膜の内側に連通する部分)の圧力が安定した後、弁34を閉じる。次に、弁33を開け、コンプレッサ13を作動させて、膜モジュールの原水側を減圧弁37で設定した所定圧力まで加圧後、弁33を閉じる。膜モジュールの原水側の圧力を継続的に測定し、所定時間内にこの圧力が予め定めた閾値圧力以下になった場合、膜が破断していると判断して警報を発信する。
【0023】
膜破断検知工程として、前記圧力保持試験の代わりに、拡散流量試験を行っても良い。具体的には、弁18,19,20,33を開け、予め減圧弁37を所定圧力に設定しておき、コンプレッサ13を動作させ、膜モジュールの原水側の圧力を一定に維持させる。所定時間内に弁20から流出する水量を、図示していない流量計で測定する。
膜破断検知工程終了時には、弁31,34,18,19,20を開け、その他の弁を閉じ、装置内の圧力を大気圧に戻す。
【0024】
そして、前記膜破断検知工程に引き続き前記中空糸膜内側に液体を通流させる空気抜き工程であって、前記中空糸膜の長手方向の一方端から他方端へ液体を通流させる第1空気抜き工程と、前記中空糸膜の長手方向の前記他方端から前記一方端へ液体を通流させる第2空気抜き工程とを、交互に行う空気抜き工程を実施する。
上記のように行うことで、中空糸膜2に付着していた懸濁物質を前記空気抜き工程時に除去できる。
【0025】
より詳細には、第1空気抜き工程として、弁15,16,24,25を開け、他の弁は閉じた状態で、ろ過ポンプ7を高流速で運転し、中空糸膜の内側の一方端から他方端に原水を通過させる(図12参照)。一定時間継続したら、第2空気抜き工程として、弁15,17,23,25を開け、他の弁は閉じた状態で、ろ過ポンプ7を動かし、今後は前記他方端から前記一方端に水が通過するようにする(図13参照)。この動作により、膜の内側に付着し、通常の前記逆洗工程では落としきれなかった濁質を効果的に除去することができる。上記第1空気抜き工程を行う前に、弁15,16,17,23,24,25を開け、他の弁は閉じた状態で、ろ過ポンプ7を動かし、膜モジュールの両端を水で満たしてもよい(図11参照)。
【0026】
また、空気抜き工程の際、殺菌効果のある薬品を中空糸膜の内側を通流する液体に添加することがさらに望ましい(図14,15参照)。殺菌効果のある薬品としては、次亜塩素酸溶液ナトリウム溶液が望ましい。
具体的には、弁16,24,28,29を開けて他の弁は閉じた状態、または、弁17,23,28,29を開けて他の弁は閉じた状態として、ろ過ポンプ7を所定時間動かし、排水処理タンク14を経由して循環する流れを維持すると共に、弁26,27を開け、薬品ポンプ11を駆動し、装置内を循環している水に薬品を添加し、前記循環する流れにより薬品濃度を均一化させる。前記薬品濃度に到達する必要量の薬品を注入後、薬品ポンプ11を停止すると共に、弁26,27を閉じる。薬品注入が終わった後も、ろ過ポンプ7を断続的、あるいは連続的に動かすことが望ましい。こうすることで、薬品が膜面の濁質と反応して、薬品濃度が低下する場合であっても薬品を含んだ水を循環させているので薬品濃度の局部的な低下を防ぐことができる。
【0027】
前記薬品を排水するときは、原水側とろ過水側を順に排水する。原水側の排水手順としては、弁15,16,17,23,24,28を開き、他は閉じた状態でろ過ポンプ7を動かし、原水側の薬品含有水を排出する(図17参照)。続いて、ろ過水側の排水手順としては、弁21,22,18,19,23,24,28を開き、他の弁は閉じた状態で逆洗ポンプ9を動かし、ろ過水側の薬品含有水を排出する(図17参照)。
【0028】
また、前記空気抜き工程(殺菌効果のある薬品を添加した場合も含む)後のろ過工程において、ろ過開始から所定時間までのろ過水を廃棄することがより望ましい(図18参照)。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1にかかる膜ろ過システムの概略構成図。
【図2】図1および2における膜エレメントのA−A断面の矢視図。
【図3】本発明の実施例1におけるろ過工程時の物質の流れを示す図。
【図4】本発明の実施例1における逆洗工程時の物質の流れを示す図。
【図5】本発明の実施例1における逆洗工程時の物質の流れを示す図。
【図6】本発明の実施例1における逆洗工程時の物質の流れを示す図。
【図7】本発明の実施例1における薬品添加した逆洗工程において、薬品を排出する際の物質の流れを示す図。
【図8】本発明の実施例1における膜破断検知工程時の物質の流れを示す図。
【図9】本発明の実施例1における膜破断検知工程時の物質の流れを示す図。
【図10】本発明の実施例1における膜破断検知工程時の物質の流れを示す図。
【図11】本発明の実施例1における空気抜き工程時の物質の流れを示す図。
【図12】本発明の実施例1における空気抜き工程時の物質の流れを示す図。
【図13】本発明の実施例1における空気抜き工程時の物質の流れを示す図。
【図14】本発明の実施例1における薬品添加した空気抜き工程時の物質の流れを示す図。
【図15】本発明の実施例1における薬品添加した空気抜き工程時の物質の流れを示す図。
【図16】本発明の実施例1における薬品添加した空気抜き工程において、原水側の薬品含有水を排出する際の物質の流れを示す図。
【図17】本発明の実施例1における薬品添加した空気抜き工程において、ろ過水側の薬品含有水を排出する際の物質の流れを示す図。
【図18】本発明の実施例1におけるろ過工程初期にろ過水を廃棄する際の物質の流れを示す図。
【符号の説明】
【0030】
1 膜エレメント
2 中空糸膜
3 中空糸膜の外側
4 接着層
5 集水管
6 圧力容器(圧力容器に膜エレメントを格納した状態を膜モジュールと呼ぶ)
7 ろ過ポンプ
8 原水タンク
9 逆洗ポンプ
10 ろ過水タンク
11 薬品ポンプ
12 薬品タンク
13 コンプレッサ
14 排水処理タンク(汚泥除去・中和・還元処理するタンクである)
15〜36 弁
37 減圧弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空糸膜を備えた膜モジュールと、原水を前記膜モジュールに供給する原水供給手段と、前記中空糸膜の膜破断を検知する膜破断検知手段とを備えた内圧式の膜ろ過システムの洗浄方法において、
中空糸膜の逆洗工程と、
前記逆洗工程に引き続いて中空糸膜の内側に気体を導入した上で中空糸膜の破断を検知する膜破断検知工程と、
前記膜破断検知工程に引き続き前記中空糸膜内側に液体を通流させる空気抜き工程であって、
前記中空糸膜の長手方向の一方端から他方端へ液体を通流させる第1空気抜き工程と、
前記中空糸膜の長手方向の前記他方端から前記一方端へ液体を通流させる第2空気抜き工程とを、交互に行う空気抜き工程であることを特徴とする膜ろ過システムの洗浄方法。
【請求項2】
前記空気抜き工程のおいて、薬品を添加された液体を中空糸膜の内側に通流させることを特徴とする請求項1に記載の膜ろ過システムの洗浄方法。
【請求項3】
前記空気抜き工程後のろ過工程において、ろ過開始から所定時間までのろ過水を廃棄することを特徴とする請求項2に記載の膜ろ過システムの洗浄方法。
【請求項4】
前記膜破断検知工程の直前に行う前記逆洗工程は、少なくとも下記(1)および(2)の工程を含み、下記(1)および(2)の工程を交互に行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の膜ろ過システムの洗浄方法。
(1)前記中空糸膜の内側について、一方端から他方端へ液体を通流させる工程。
(2)前記中空糸膜の内側について、前記他方端から前記一方端へ液体を通流させる工程。
【請求項5】
前記逆洗工程において、薬品を添加された液体を中空糸膜の外側に通流させることを特徴とする請求項4に記載の膜ろ過システムの洗浄方法。
【請求項1】
中空糸膜を備えた膜モジュールと、原水を前記膜モジュールに供給する原水供給手段と、前記中空糸膜の膜破断を検知する膜破断検知手段とを備えた内圧式の膜ろ過システムの洗浄方法において、
中空糸膜の逆洗工程と、
前記逆洗工程に引き続いて中空糸膜の内側に気体を導入した上で中空糸膜の破断を検知する膜破断検知工程と、
前記膜破断検知工程に引き続き前記中空糸膜内側に液体を通流させる空気抜き工程であって、
前記中空糸膜の長手方向の一方端から他方端へ液体を通流させる第1空気抜き工程と、
前記中空糸膜の長手方向の前記他方端から前記一方端へ液体を通流させる第2空気抜き工程とを、交互に行う空気抜き工程であることを特徴とする膜ろ過システムの洗浄方法。
【請求項2】
前記空気抜き工程のおいて、薬品を添加された液体を中空糸膜の内側に通流させることを特徴とする請求項1に記載の膜ろ過システムの洗浄方法。
【請求項3】
前記空気抜き工程後のろ過工程において、ろ過開始から所定時間までのろ過水を廃棄することを特徴とする請求項2に記載の膜ろ過システムの洗浄方法。
【請求項4】
前記膜破断検知工程の直前に行う前記逆洗工程は、少なくとも下記(1)および(2)の工程を含み、下記(1)および(2)の工程を交互に行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の膜ろ過システムの洗浄方法。
(1)前記中空糸膜の内側について、一方端から他方端へ液体を通流させる工程。
(2)前記中空糸膜の内側について、前記他方端から前記一方端へ液体を通流させる工程。
【請求項5】
前記逆洗工程において、薬品を添加された液体を中空糸膜の外側に通流させることを特徴とする請求項4に記載の膜ろ過システムの洗浄方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−229471(P2008−229471A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71815(P2007−71815)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】
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