説明

膜ろ過モジュール及び膜ろ過運転装置

【課題】
ろ過膜の機能劣化を検出するもので、被検水となるろ過水の性状をなるべく変えずに
in-situ で計測でき、膜ろ過モジュール等の交換時にセンサ敷設作業工数が多くならない膜ろ過モジュール及び膜ろ過運転装置を提供する。
【解決手段】
膜ろ過モジュールのケースハウジングのろ過水排出口にセンサデバイスの組み込み、通信装置を設置することにより、ろ過水の性状を計測でき、例えばアドホック通信を用いて、膜ろ過モジュールの交換があっても、改めて通信方式の調整が不要とした。ろ過膜からのリークがない状態では、不純物物質の捕捉は少なく、ろ過フィルタの通過光はあるレベルになるが、リークによりろ過水中に漏洩する不純物物質をろ過フィルタで捕捉し、不純物物質がろ過フィルタの捕捉不純物により光は遮光されるため、通過光は減少する。この通過光減少の時間的変化を観測することにより、ろ過膜破損によるリークを検出し、破損を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水処理,下水処理,廃水処理等に用いられる膜ろ過モジュール及び膜ろ過運転装置に係り、特にろ過膜エレメントの機能劣化(膜破損,ファウリング等)を検出するセンサデバイスを膜ろ過モジュール内に組み込むことにより、検出精度向上と運用コスト低減を実現できる膜ろ過モジュール及び膜ろ過運転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ろ過膜により被処理水をろ過して不純物含有率の低いろ過水を得る方法は、比較的簡単な構成の設備で清澄な水を得ることができる利点がある。この設備では、ろ過膜エレメント(中空糸膜等)をケースハウジングに内蔵した膜ろ過モジュールを複数設置して所定のろ過水量を得ている。ろ過膜モジュールは、ろ過膜の細孔による物理的な篩い分けを利用しているので、運転条件によらず安定したろ過水質を得られるのが特長である。
【0003】
しかし、ろ過膜の破損により、被処理水がろ過水側にリークし、本来除去されるべき不純物物質がろ過水中に混入する場合がある。膜の破損には、膜の切断,部分的な裂傷,腐食等がある。又、ろ過膜の支持機構等の接続部分での漏洩等もある。漏洩する不純物物質は被処理水の性状に依存するが、固形物,細菌,バクテリアやそれらの死骸等、原水中に懸濁する微細な粒子である。ろ過水中にこれらの不純物物質が混入すると、ろ過水質の低下を招くことから、ろ過膜の破損を早期に検知して運転を停止し、膜を交換あるいは補修することが必要である。
【0004】
また、ろ過膜の破損以外の機能劣化としては、ファウリングがある。この現象は、ろ過膜の細孔に被処理水中の物質が入り込んで目詰まりする、或いはろ過膜表面にケーク(ろ過された残渣物)が堆積して被処理水の透過性を低下させるものである。ファウリングの発生は、膜間差圧(ろ過膜前後の圧力差)によって検知でき、逆洗浄や薬液洗浄などの再生処理を適正に行うことが必要である。
【0005】
ろ過膜破損やファウリングの検知する従来の技術としては、例えば、(特許文献1)に開示されているように、膜ろ過モジュールの外部に高感度濁度計や圧力計などのセンサを設置し、その計測値を情報通信ネットワークによって監視制御システムに送信し、所定の演算処理を行うことで検知する方式が知られている。又、(特許文献2)に開示のように、中空糸膜モジュールの一次側に供給される洗浄用空気の圧力上昇度合いを検出する圧力検出機構を設けるものがある。
【0006】
【特許文献1】特開2005−87949号公報
【特許文献2】特開2004−188252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(特許文献1)に記載の従来の技術は、複数の膜ろ過モジュールのろ過水が合流した箇所での計測しているため、敷設するセンサ数が少なくて済む反面、破損したろ過膜からのろ過水とは異なる性状の被検水を計測することになり、破損が起こった膜ろ過モジュールの特定が速やかに行われないだけでなく、検知感度の低下も起こるという問題がある。また、膜ろ過モジュールとは別に、センサを外付けにするため、膜ろ過モジュール交換や配管の取り替えに当たってはセンサを取り外さなければならないケースがある。さらに、センサ交換やセンサ増設の際には、計測値を転送する情報通信ネットワークを繋ぎ変えや再敷設する必要があり、関連する作用工数が膨大となる。
【0008】
又、(特許文献2)に記載の従来の技術は、敷設するセンサ数が少なくて済む反面、破損したろ過膜からのろ過水とは異なる性状の被検水を計測することになり、破損が起こった膜ろ過モジュールの特定が速やかに行われないという問題がある。また、膜ろ過モジュール交換や配管の取り替えに当たってはセンサを取り外さなければならないケースがある。さらに、センサ交換やセンサ増設の際には、計測値を転送する情報通信ネットワークを繋ぎ変えや再敷設する必要があり、関連する作用工数が膨大となる。
【0009】
本発明の第1の目的は、被検水となるろ過水の性状をなるべく変えずにin-situ で計測でき、検知感度のよい膜ろ過モジュール及び膜ろ過運転装置を提供することにある。
【0010】
本発明の第2の目的は、膜ろ過モジュール等の交換時にセンサ敷設作業工数が多くならない運用コストが低い膜ろ過モジュール及び膜ろ過運転装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明の膜ろ過モジュールは、膜ろ過モジュールのケースハウジングのろ過水排出口にセンサデバイスの組み込み、通信装置を設置したものである。これにより、ろ過水の性状を変えることなく計測することが可能となり、例えばアドホック通信方式を用いることにより、膜ろ過モジュールの交換があっても、改めて通信方式の調整が不要となる。
【0012】
又、膜ろ過運転装置は、ろ過膜の破損によるリークを検出するセンサ部分と、検出信号を通信によって集中管理する部分で構成される。ろ過膜の破損によるリークを検出するセンサ部分では、ろ過膜の破損の有無を検出する。ろ過膜の破損によるリークがない状態では、不純物物質の捕捉は少なく、ろ過フィルタの通過光はあるレベルになるが、リークによりろ過水中に漏洩する不純物物質をろ過フィルタで捕捉し、不純物物質がろ過フィルタに捕捉され始めると、この捕捉不純物により光は遮光されるため、通過光は減少する。この通過光減少の時間的変化を観測することにより、ろ過膜破損によるリークを検出し、破損を検出する。
【0013】
このセンサを膜ろ過モジュールに組み込みことで、検出結果から破損した膜ろ過モジュールを同定することが可能となる。透過光のデータは、通信装置で計算機に送信され一括管理される。また、計算機側からセンサ側に対し、測定間隔・測定タイミングや、データ送信要求などの制御情報を送信することもできる。機能劣化の検知対象がファウリングの場合には、圧力センサを用いることで対応することができる。
【0014】
この結果、破損が発生した膜ろ過モジュールを遅滞なく検知できるほか、必要に応じて破損モジュールへの原水供給停止など、水質確保に向けた対策を可能とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の膜ろ過モジュールは、無線通信機能付きのセンサデバイスを組み込んでいるので、被検水の性状を変えることなくin-situ の計測を実現でき、破損検知の感度を向上することができる。また、各モジュールでの計測ができることから、破損したモジュールの同定を行うことができ、処理水質悪化を回避するために対策を迅速に行える。
【0016】
また、膜ろ過モジュールの交換等の際にも、計測値を送信するための情報通信ネットワークを再設定する必要が無いため、センサ敷設に係る作業工数を削減することができ、低コストな運用が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本実施例は、浄水処理,下水処理,廃水処理などに用いられる膜ろ過モジュールの機能劣化を感度良く、低コストで検出する方法を提供するものである。膜ろ過モジュールには、ろ過膜エレメントの機能劣化を計測するセンサデバイスと、このセンサデバイスの計測値を無線で通信できる通信デバイスとを一体化した無線通信機能付きセンサデバイスを組み込んでいる。各センサデバイスで検出した計測値の時間的変化などからリークの発生した膜ろ過モジュールを検知し、ろ過停止などの必要な対策をたてる。また、膜ろ過設備の監視制御用計算機側からセンサデバイス側に対し、測定間隔・測定タイミングや、データ送信要求などの制御情報を送信することもできる。対象となるろ過膜エレメントは、有機膜,無機膜(セラミック膜,金属膜)などである。また、センサデバイスとしては、透過光を計測する光学的センサや圧力センサなどが適用される。
【実施例】
【0018】
本発明の一実施例を図1〜図5により説明する。図1は、本実施例の膜ろ過モジュールの構成を示す図である。
【0019】
図1では、ろ過装置の主要な構成を示している。図1に示すように、ろ過装置は、原水が貯留されている原水タンク1と、原水タンク1に接続され、原水を膜ろ過モジュール
12に送水する送水ポンプ2と、送水ポンプ2に接続され分岐された配管10と、配管
10の分岐管それぞれに設置されたバルブ7−1,7−2,…7−Nと、それぞれのバルブ7に接続されたろ過モジュール3−1,3−2,…3−Nと、ろ過モジュール3−1,3−2,…3−Nのそれぞれに接続された出口配管5を合流する配管11と、各ろ過モジュール3−1,3−2,…3−Nに設けられた通信モジュール6とデータ通信を行う通信装置8と、通信装置8に接続された計算機9で構成される。
【0020】
膜ろ過モジュール12は、複数のろ過モジュール3で構成されており、その内部のろ過膜の破断,破損を検出するためのセンサであるろ過膜破損検出センサ4が、ろ過モジュール3内に組み込まれている。通信モジュール6も同様に組み込み型であり、ろ過膜破損検出センサ4の検出データを通信装置8を介して計算機9に送信する通信用のモジュールである。通信モジュール6は、計算機9から通信装置8を介して、ろ過膜破損検出センサ4に計測パラメータなどを送信する。計算機9には、ろ過プラントの状態を示すプラントデータが入力される。
【0021】
ろ過モジュール3のろ過膜の破断,破損がろ過膜破損検出センサ4で検出された場合、破断,損傷の程度により計算機9からの制御信号によりバルブ操作する、或いは人手でバルブ7を操作することにより送水が制御される。
【0022】
図2,図3は、ろ過膜破損検出センサ4、及び通信モジュール6の詳細を示す図である。図2に示すように、ろ過膜破損検出センサ4は、ろ過モジュール3のろ過膜エレメントでろ過された水が流出する配管である出口配管5内の導水路41に設置される。道水路
41は筒状に形成され、導水路41には、光を透過する不純物物質の捕捉用フィルタ42が備えられている。ろ過フィルタは適切な透過粒径を持ち、光透過性を有するものを用いる。
【0023】
図2は、ろ過水が左から右に流れる場合を示しており、ろ過膜の破損がない場合ろ過は正常に行われ、ろ過水の中に不純物物質の混入はない。しかし、ろ過膜の破損があると、原水の一部がろ過されずに直接ろ過水側にリークし、原水中の不純物物質51の量が増大する。不純物物質51は捕捉用フィルタ42で捕捉される。ここで、これら道水路41内に設けられるセンサ構成部品を便宜上センサデバイスという。
【0024】
捕捉用フィルタ42をはさんで、対向させるように発光素子43と受光素子44を設置してある。発光素子43からの光は、光を透過する不純物物質の捕捉用フィルタ42を通過し、受光素子44で検出される。この例では発光素子と受光素子を対向させているが、発光された光がフィルタを透過して受光されるように鏡などを用いて光路を形成してもよい。また、捕捉用フィルタ42は圧力などで変形しないように、硬質フィルタの使用や、光透過を大きく妨げない補強剤で挟むなどの処置を施してもよい。
【0025】
ろ過膜破損検出センサ4には、電源回路45が設けられており、発光素子43と受光素子44に電源を供給する。
【0026】
電源回路45と通信モジュール6の詳細を図3に示す。電源回路45は、電池などの電源451と、電源の切り替え器452で構成される。通信モジュール6は、マイクロプロセッサ61と通信回路62で構成している。マイクロプロセッサ61の制御により、切り替え器452は発光素子43,受光素子44に電源を供給する。また、マイクロプロセッサ61,通信回路62には電源451から電源が常時供給される。マイクロプロセッサ
61は、アナログ−デジタル変換器(以下ADC)を備え、受光素子44からの検出電流信号を取り込み、通信回路62を使って外部の通信装置8との通信を行う。マイクロプロセッサ61の制御情報(データ採取間隔,電源制御情報)は、通信回路62を介して通信装置8から受信する。
【0027】
一方、発光素子44からの発光量の信号,受光素子44での受光量の信号は、通信モジュール6により例えば電波を使って通信装置8に通信される。
【0028】
ここで、ろ過膜破損検出センサ4の計測内容について説明する。発光素子43を一定の光量で発光させると、原水のリークがない正常時では捕捉用フィルタ42の材質に応じてある程度減衰した光量が受光素子44で検出される。ろ過膜が破損し、原水がろ過水側にリークすると、原水中の不純物物質の一部は捕捉用フィルタ42に堆積し、発光素子43の光を遮光することになる。このため、原水のリークにより受光素子44で検出される光量は減少する。受光素子44で検出される光量の減少からリークの発生,ろ過膜の破損を検出できる。
【0029】
このように、ろ過膜の破損によってフィルタ透過光の減衰が大きくなり、これをろ過膜破損検出センサ4で検出することによりろ過膜の破損を検出できる。
【0030】
次に、ろ過膜破損検出センサ4の検出信号をもとに、ろ過プラント全体を監視する方法について説明する。この監視ネットワークは、プラント全体の監視のため、ろ過膜破損検出センサ4のデータ収集と共に、各ろ過膜破損検出センサ4の計測タイミングなどの制御も考慮している。
【0031】
図4は、計算機9のフローチャートを示す図である。処理を開始すると、ステップ901で処理パラメータを設定する。これは、監視するろ過モジュール数や、そのモジュールとパラメータ,データの対応付けなど監視に必要な計算機9の設定を行うものである。この設定には、後述するリーク発生の判断パラメータも含まれる。
【0032】
ステップ902で、各ろ過モジュールのろ過膜破損検出センサ4に対し、その測定条件を設定する。すなわち、センシングの間隔,センシング時間,1回のセンシングに対するデータ採取回数,データの通信条件など監視に必要なろ過膜破損検出センサ4のセンシングパラメータを通信装置8を通してろ過膜破損検出センサ4に送信する。
【0033】
ステップ901,902により、計算機9の監視に必要なパラメータ設定が終了し、ステップ903以降、監視のためのループ処理に移行する。ステップ903で、ろ過プラントの運転状態を示すプラント信号を取得する。
【0034】
プラント信号は、圧力,流量などの動作状況である。ステップ904で、ろ過膜破損検出センサ4からの信号を受信しているか否かを判定する。ろ過膜破損検出センサ4はN個あり、そのいずれかからの信号を受信すればステップ905以降の処理に進む。信号が受信されなければ、受信されるまで待機してステップ903でプラント信号を入力し、プラントの動作条件を常に更新する。
【0035】
ステップ904でろ過膜破損検出センサ4からの信号受信があると、ステップ905で、受信データ(計測時刻,計測値)を該当するセンサ番号の記憶領域に記憶する。計測値は、前述のように捕捉用フィルタ42を透過した光量であり、ステップ906で、記録された計測時刻,計測値のデータにより、その時間的な変化を計算する。
【0036】
ステップ907で、計測値である光量変化の時間変化率が、あらかじめ設定した範囲内にあるかを判定する。設定範囲内であれば、光量変化が少ない、あるいは外乱によって変化したと判定し、ステップ903に戻る。
【0037】
光量の時間的変化が設定値範囲を超える場合は、リーク発生の可能性があり、ステップ908で、光量変化の継続する時間が設定範囲であるかを判定する。設定範囲からはずれると、そのろ過モジュールにリークが発生したと判定し、ステップ909で、当該ろ過モジュールでリークが発生したことを警報などで表示する。
【0038】
ステップ908での判定が、光量変化の継続する時間が設定範囲内であれば、当該ろ過モジュールにリークが発生している可能性があるものの、まだ、確定ではない状況と判断できる。
【0039】
このため、ステップ911で、必要に応じて計測間隔をより短くするなど、当該モジュールのセンサパラメータを変更するかを判定し、ステップ912で、判定結果に応じてパラメータを送信する。これら一連の動作によって、各モジュールの監視を実行し、リークが発生した場合、ただちに破損ろ過モジュールを決定する。
【0040】
図1には図示していないが、この時、通信などによって当該ろ過モジュールのバルブ7を閉じ、ろ過動作の停止を行うことも可能である。監視時間の終了や、操作員の監視終了動作などでプログラムは終了する。このプログラム動作とは別個に、各センサやセンサ全体のデータの表示,トレンド表示のほか、プラントデータの表示なども行うが、通常の計算機処理であるのでその処理フローは割愛する。また、計算機9をろ過プラント内の通信ネットワークや、インターネットに接続し、プラント情報,ろ過膜破損情報を操作員が共有することもある。ここでは特にアドホックな通信機能、すなわち、アクセスポイントを介さずに通信モジュール6同士が直接通信を行うことで、ろ過モジュール3に組み込まれた通信モジュール6の移動や交換があっても、改めて通信方式の調整を行うことなく通信できる方式を用いることが望ましい。
【0041】
図5は、各ろ過モジュールに設置したろ過膜破損検出センサ4のマイクロプロセッサ
61のフローチャートを示す図である。動作を開始すると、ステップ501で、マイクロプロセッサ自体のパラメータ設定、例えば、使用メモリ領域,動作のための設定情報エリアなどの設定を行い、ステップ502で、通信装置8から通信回路62を介して計算機9からのセンシング設定パラメータの受信を待つ。ステップ503で、パラメータを受信,設定された後、ステップ504で、タイマーで計測時刻となるのを待ち、計測を開始する。
【0042】
ステップ505で、フィルタの透過光の計測では、まず、計測を実施していない状況では電源を遮断している、発光素子,受光素子に電源を供給し、ステップ506で、ろ過膜破損検出センサ4から受光素子の検出光量を求める。
【0043】
計測データは、光量値をADCでアナログ−デジタル変換したデータであり、データを採取後、ステップ507で、発光素子,受光素子の電源供給を停止する。その後、ステップ508で、計測した時刻と、計測データを通信回路62から通信装置8を介して計算機9に送信する。ステップ509での終了判定を待って、終了する。図4のステップ912で述べたように、該当するセンサのパラメータを変更する場合もあり、これは割り込み動作として図5に示すステップ510でマイクロプロセッサ61のパラメータ変更を実行する。
【0044】
以上、説明したように、本実施例によれば、光透過型のフィルタでトラップされた不純物物質による透過光の減光で、ろ過膜の破断・損傷により原水がろ過水側にリークしたことを迅速に検知できる。また、各センサのデータを一括管理して膜ろ過プラントを監視できる。これより、不純物物質のリークを介して、どの膜ろ過モジュールの膜に損傷が発生したかを検知することができ、ろ過水の水質確保の観点,迅速な膜ろ過モジュールの補修の観点から実用的な膜ろ過モジュールを提供できる。
【0045】
ろ過膜の破断,損傷を圧力によって検出する場合には、ろ過膜破損検出センサ4を上述した光学的センサに代わって圧力センサによって構成する。また、ろ過モジュール3に加えて、バルブ7などの制御機器と通信装置8,計算機9とを組み合わせた構成により、膜ろ過の運転制御を行う膜ろ過運転制御システムを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本実施例の膜ろ過モジュールは、無線通信機能付きのセンサデバイスを組み込んでいるので、被検水の性状を変えることなくin-situ の計測を実現するため、破損検知の感度を向上することができる。また、各モジュールでの計測ができることから、破損したモジュールの同定を行うことができ、処理水質悪化を回避するために対策を迅速に行える。また、膜ろ過モジュールの交換等の際にも、計測値を送信するための情報通信ネットワークを再設定する必要が無いため、センサ敷設に係る作業工数を削減することができ、低コストな運用を可能にする。このため、処理水質確保とコスト低減の観点から産業上有効な手段であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施例である膜ろ過モジュールの構成を示す図である。
【図2】本実施例のろ過膜破損検出用センサの構成を示す縦断面図である。
【図3】本実施例の電源回路と通信モジュールの詳細構成を示す図である。
【図4】本実施例の計算機のフローチャートを示す図である。
【図5】本実施例のマイクロプロセッサのフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 原水タンク
2 送水ポンプ
3 ろ過モジュール
4 ろ過膜破損検出センサ
5 配管
6 通信モジュール
7 バルブ
8 通信装置
9 計算機
41 導水路
42 捕捉用フィルタ
43 発光素子
44 受光素子
45 電源回路
46 駆動機
47 駆動用電源
51 不純物物質
52 導水配管
53 配水管
61 マイクロプロセッサ
451 電源
452 切り替え器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜ろ過モジュールを構成する複数のろ過モジュール内に設けられた道水路内にろ過膜エレメントの破断,破損を検出するセンサデバイスと、前記ろ過モジュールに設置され前記センサデバイスに電源を供給する電源装置と前記センサデバイスで検出した信号を送信するための通信モジュールを具備した膜ろ過モジュール。
【請求項2】
前記センサデバイスが光を透過する不純物物質の捕捉用フィルタと、該捕捉用フィルタを挟んで対向配置された発光素子及び受光素子で構成された請求項1に記載の膜ろ過モジュール。
【請求項3】
前記センサデバイスが、前記ろ過膜エレメントの破損を光学的なセンサによって計測するものである請求項1に記載の膜ろ過モジュール。
【請求項4】
前記通信モジュールが、隣接するろ過モジュールに具備された通信モジュールとの間でアドホック通信を行うものである請求項1〜3のいずれかに記載の膜ろ過モジュール。
【請求項5】
膜ろ過モジュールを構成する複数のろ過モジュール内に設けられた道水路内にろ過膜エレメントの破断,破損を検出するセンサデバイスと、前記ろ過モジュールに設置され前記センサデバイスに電源を供給する電源装置と前記センサデバイスで検出した信号を送信するための通信モジュールを具備した膜ろ過モジュールと、計算機と、該計算機に接続され前記通信モジュールと通信を行う通信装置を備え、前記計算機により前記通信モジュールから送信される前記センサデバイスの信号を受信してろ過モジュールの破断,破損の監視を行い、前記ろ過モジュールのセンサデバイスの処理パラメータを設定して膜ろ過モジュールの運転制御を行う膜ろ過運転制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−80254(P2008−80254A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263716(P2006−263716)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】