説明

膜ろ過装置及び膜ろ過装置の膜損傷検知方法

【課題】
漏出感度を向上させて確実に損傷を検知でき、低コストな膜ろ過装置及び膜ろ過装置の膜損傷検知方法を提供する。
【解決手段】
ろ過モードの後に、制御設備34により、原水供給装置2からの原水の供給を停止し、空気供給装置5により原水室に空気を供給して原水室に接続される排出管9に排出して、膜付着濁質を剥離して高濁度水を得る剥離工程を設定された時間実施し、開閉弁15を閉じて空気の排出を停止して透過水を生成し、この透過水の濁質状態を前記濁質検出装置19の検出値に基づいて膜モジュール1の損傷有無を判定する透過,検知工程を実行する膜損傷検知モードを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水に含まれる濁質や病原性原虫等の分離除去のために設置される浄水場の膜ろ過プロセスに用いられる膜ろ過装置及び膜ろ過装置の膜損傷検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜ろ過プロセスは、地下水や河川表流水などの原水を浄化する浄水施設等に設置される。この膜ろ過プロセスには、原水に含まれる濁質や病原性原虫等(以下、濁質と総称する)を分離除去するろ過膜を内蔵した膜モジュールが設置され、清澄で、安全なろ過水を生成する。膜ろ過プロセスには、複数の膜モジュールを並列に接続するユニット方式や、複数のユニットを並列に配置した系列方式などの方式があり、浄水量の規模に応じた膜モジュール数で構成される。
【0003】
このような膜ろ過プロセスでは、ろ過,逆洗,化学洗浄などの操作が繰り返し実行され
、これらの操作に伴う圧力変化や長時間の使用による膜材質劣化などが原因で、膜モジュール内のろ過膜が損傷,破損,破断(以下、損傷と総称する)する場合がある。ろ過膜の損傷が生じると、損傷部分から原水が流出するため、ろ過水に濁質が混入する。
【0004】
このように、膜の損傷が発生した場合、浄水となるろ過水側に原水の濁質が直接漏出し、安全性が損なわれる。そのため、膜ろ過プロセスでは、ろ過膜が損傷したことの検出と、損傷が発生した膜モジュールを迅速に特定して早期対策を講じ、損傷していない正常な膜モジュールにより浄水能力を維持することが重要である。
【0005】
膜の損傷を検知する方法としては、加圧気体を供給して、その圧力減少状態から把握する直接法と、ろ過水の濁度や微粒子,生物状態から把握する間接法がある。
【0006】
直接法には、例えば〔特許文献1〕,〔特許文献2〕に記載のように、原水側あるいはろ過水側を加圧気体で置換し、漏出する空気流量や印加圧力の変化を検知する方式など多数提案されている。
【0007】
間接法には、〔特許文献3〕に記載のように、原水に膜洗浄排水や膜濃縮水を注入して原水の濁質濃度を高めてろ過水中の粒子数や濁度を測定する方法がある。また、〔特許文献4〕に記載のように、無害な濁質(カオリン,珪藻土類)を原水に注入して膜損傷時のろ過水濁度を高めて検知する方法、〔特許文献5〕に記載のように、膜モジュールを清澄な気体で充満させた後に微粒子を含む気体を供給して通過微粒子を測定する方法などの濁質源注入方式がある。
【0008】
一方、浄水の膜ろ過施設の要件として、〔非特許文献1〕に記載のように、膜の両面における水圧差,ろ過水流量及びろ過水の濁度を監視する設備がある。また、〔非特許文献2〕に記載のように、膜損傷検知方法は直接法と間接法を併用し、それぞれの長所を生かしたシステムが推奨されている。
【0009】
【特許文献1】特開2006−68634号公報
【特許文献2】特開2004−2122230号公報
【特許文献3】特開2005−87948号公報
【特許文献4】特開平6−320157号公報
【特許文献5】特開2004−216311号公報
【非特許文献1】厚生省令第15号:水道施設の技術的基準を定める省令(平成12年2月23日)
【非特許文献2】財団法人 水道技術研究センター:膜ろ過浄水施設維持管理マニュアル(平成17年3月)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
〔特許文献1〕,〔特許文献2〕に記載の直接法は、加圧気体置換に加えて、ろ過再開するのに原水やろ過水で置換する必要があり、その間は、ろ過処理が停止される。また、正常な膜は空気など気体を透過しないため、加圧気体の注入は膜を伸縮して、ストレスを与えることになり、劣化を早める。このように、直接法をオンサイトで毎回実施すると、浄水製造効率を低下させるとともに、膜を傷め、早期損傷の原因となる。さらに、〔特許文献1〕に記載のものは、常設のろ過水流量計では気体流量が計測困難なため、新たに気体用流量計を設置する必要があるが、同伴するろ過水が影響して気体量の正確な計測が困難であるという問題がある。〔特許文献2〕で提案されているものは、ろ過水側に加圧気体を印加することは一般的でなく、新たな配管系とその操作設備を設ける必要があり、設備コストが嵩むという問題がある。
【0011】
間接法である〔特許文献3〕に記載の従来の技術は、洗浄排水や濃縮水を貯留しておく貯留設備と、その貯留設備から原水に移送するための新たな設備が必要であり、設備及び運転コストが嵩み、これらの貯留水は清澄なろ過水を逆流させて得られるため、結果的には希釈された低濃度水となり、効果的でないという問題がある。
【0012】
〔特許文献4〕に記載の従来の技術は、新たな濁質を添加するので、濁質源とその供給設備が必要となり、設備及び運転コストが嵩むという問題がある。
【0013】
〔特許文献5〕に記載の従来の技術は、気体と混合させる設備が新たに必要であり、気体の流動に同伴させるためには気体の比重と同等な、稀有な物質の微粒子が必要となる。このように、間接法である従来技術は、新たな濁質源とその貯留設備や移送設備が必要で、設備や運転コスト面に関する配慮がなされていないという問題があった。
【0014】
本発明の目的は、新たな濁質源や設備の必要がなく、現状の設備で高濁度原水を生成し、この原水をろ過処理させることで膜損傷時のろ過水濁質濃度を高めることができる膜ろ過装置及び膜ろ過装置の膜損傷検知方法を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、漏出感度を向上させて確実に損傷を検知でき、低コストな膜ろ過装置及び膜ろ過装置の膜損傷検知方法を提供することにある。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、間接法で膜損傷を早期判定し、直接法でその判定の正否と損傷状態を正確に把握して、低コストで、確実に膜ろ過プロセスの膜損傷を検出できる膜ろ過装置及び膜ろ過装置の膜損傷検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために本発明は、ろ過,逆洗,フラッシング(リンス)を繰り返す通常ろ過モードに加えて膜損傷検知モードを設け、膜損傷検知モードでは、ろ過処理で原水側の膜表面に捕捉,付着した濁質を剥離させ、この剥離した濁質でモジュール内の原水側濁度を高めた状態でろ過処理を実行し、ろ過水(透過水)の濁質変化に基づいて損傷の発生有無、並びに損傷した膜モジュールを特定するものである。
【0018】
ろ過モードの後に、制御設備により、原水供給装置からの原水の供給を停止し、空気供給装置により原水室に空気を供給して原水室に接続される排出管に排出して、膜付着濁質を剥離して高濁度水を得る剥離工程を設定された時間実施し、開閉弁を閉じて空気の排出を停止して透過水を生成し、この透過水の濁質状態を前記濁質検出装置の検出値に基づいて膜モジュールの損傷有無を判定する透過,検知工程を実行する膜損傷検知モードを有するものである。
【0019】
又、ろ過処理,逆洗処理,リンス処理を繰り返す通常の膜ろ過運転において、ろ過処理工程で膜面に捕捉された濁質を利用して高濁度水を膜モジュール内の原水室で形成させ、この高濁度水をろ過処理し、ろ過水の濁度変化で膜損傷有無を早期把握し、膜損傷の可能性が高い場合に空気供給ろ過に切替えて、ろ過水に同伴する空気気泡も含めた濁質状態により膜損傷状態を把握し、膜損傷発生の判定不能な場合に被透過水(原水室内の残留原水)のない状態で原水室側の空気を密封し、原水室の圧力変化で膜損傷発生の正否とその損傷状態を正確に判定するものである。又、第1割込運転を実施し、高濁度水ろ過工程の透過水中の濁質変化に基づいて膜の損傷有無を早期に判定するものである。
【0020】
又、第1割込運転において膜損傷無しと判定された場合には、割込み運転を解除して通常運転に戻し、膜損傷有りと判定された場合には、割込みにより、原水室に空気を供給してろ過する空気供給ろ過工程を第2割込運転として実施し、空気供給ろ過工程のろ過水中の濁質変化に基づいて膜の損傷状態を診断するもので、間接法と直接法を同時併用するものである。
【0021】
又、第2割込運転における空気供給ろ過工程でのろ過水中の濁質状態で膜の損傷状態を診断できない場合には、割込みにより、原水室の原水を全て透過させた後に、空気供給を停止して原水室を密封する空気封入工程を第3割込運転を実施し、空気封入工程の原水室の圧力変化に基づいて膜損傷の正否を診断するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高濁度原水を容易に生成でき、膜損傷の検知感度を向上できる。また、高濁度原水は、現状の設備で生成出来るので、新たな濁質源や設備の必要がなく、初期設備費がかからず、運転コストも低コストで、膜損傷を確実に検知できる。
【0023】
又、設備変更や新たな設備建設を行わなくても、直接法と間接法の長所を生かし、低コストで膜ろ過プロセスの膜損傷を確実に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の各実施例を図面により説明する。
【実施例1】
【0025】
本発明の実施例1を図1から図4により説明する。図1は、本実施例の膜ろ過処理設備の構成図である。
【0026】
本実施例は、外圧型の中空糸膜モジュールを用いた例を示しており、図1に示すように、膜ろ過処理設備40は、N本の膜モジュール1a〜1n,原水供給装置2,ろ過水槽3,洗浄水供給装置4,空気供給装置5を主な構成要素としている。
【0027】
膜モジュール1aは、上下に透過室13a(ろ過室13aともいう)と透過室13a′が設けられ、透過室13aと透過室13a′の間に原水室12aが配設されている。原水室12aには、数千本の中空糸膜が実装されたろ過膜11aが設けられ、中空糸膜の両端が透過室13aと透過室13a′に開口するように取付けられている。透過室13aと原水室12a,透過室13a′と原水室12aは、それぞれ固定壁14aと固定壁14a′で仕切られており、内蔵されたろ過膜11aを介して原水室12aと透過室13a,13a′間で液が透過するようになっている。
【0028】
原水室12aの下方には、空気分岐管10aが接続され、空気分岐管10aは開閉弁17aを介して空気供給管10に接続され、空気供給管10は空気供給装置5に接続されている。空気分岐管10aには分岐管である原水分岐管36aが設けられ、原水分岐管36aは開閉弁16aを介して原水供給管6に接続され、原水供給管6は原水供給装置2に接続されている。
【0029】
原水室12aの上方には、排出分岐管9aが接続され、排出分岐管9aは開閉弁15aを介して排出管9に接続されている。上部の透過室13aには濁質検出装置19aを有する透過水管37aが接続され、透過水管37aはろ過水管7に接続されている。ろ過水管7は開閉弁22を介してろ過水槽3にろ過水を導くようになっており、ろ過水管7から分岐された開閉弁23を有する分岐管24は洗浄水供給装置4に接続され、洗浄水供給装置4はろ過水槽3に接続されている。
【0030】
膜モジュール1aを例にとり、膜モジュールの構成を説明したが、他の膜モジュール1b〜1nも同様の構成であり、それぞれの膜モジュール1a〜1nの原水分岐管36a〜36nは、原水供給装置2からの原水供給管6に、空気分岐管10a〜10nは空気供給装置5からの空気供給管10に、排出分岐管9a〜9nは排出管9に、透過水管37a〜37nはろ過水管7に接続されている。開閉弁22は、ろ過水管7と透過水管37nの合流点の下流側に設けられている。
【0031】
濁質検出装置19a〜19nは、信号線又は無線により診断設備32に接続され、診断設備32は制御設備34と接続され、制御設備34は、原水供給装置2,洗浄水供給装置4,空気供給装置5,各開閉弁15,16,17,19,22,23と接続されている。
【0032】
このように構成された膜ろ過処理設備40の通常の運転操作を説明する。運転操作は、図2の通常ろ過モード42で示すように、ろ過工程51,逆洗工程52,フラッシング工程53(リンス工程53ともいう)の3工程が繰り返し実施される。
【0033】
ろ過工程51では、開閉弁16a〜16nと開閉弁22を開にし、他の開閉弁を閉じて原水供給装置2を作動させ、濁質を含む原水を原水分岐管36a〜36nを通じて各膜モジュール1a〜1nに供給する。原水は、原水室12a〜12n側のろ過膜11a〜11n表面で濁質が捕捉除去され、ろ過膜の内部に透過する。ろ過膜を透過した原水は清澄な透過水となり、透過水は、透過室13a〜13nに接続された透過水管37a〜37nを介してろ過水管7で合流する。合流ろ過水は、ろ過水槽3に一定量貯留され、大部分は浄水として水道水に供される。ろ過工程51が設定された時間運転されると逆洗工程52に移る。
【0034】
逆洗工程52では、原水供給装置2を停止し、開閉弁15a〜15n,開閉弁17a〜17nと開閉弁23を開にし、他の開閉弁を閉じて空気供給装置5と洗浄水供給装置4を作動させる。空気供給装置5の作動により、加圧空気が空気分岐管10a〜10nを通じて各膜モジュール1a〜1nの原水室12a〜12nに供給され、上方の排出分岐管9a〜9nから排出される。また、洗浄水供給装置4の作動により、ろ過水槽3に一定量貯留されていたろ過水が、各膜モジュール1a〜1nの透過水室13a〜13nに供給され、ろ過膜11a〜11nの内部から原水室側に透過し、空気と一緒に排出分岐管9a〜9nから排出される。
【0035】
原水室12a〜12nに供給された空気は、膜表面に捕捉,付着された濁質を剥離し、膜内部から原水室12a〜12nに透過した洗浄水は、膜内に入り込んだ濁質の排除と、原水室12側の膜表面に捕捉,付着された濁質の剥離を促進させる。剥離した濁質は、空気及び透過洗浄水とともに洗浄排水として排出管9で合流し、系外に排出される。
【0036】
フラッシング工程53は、逆洗工程52の終了後、空気供給装置5と洗浄水供給装置4を停止し、開閉弁15a〜15nと開閉弁16a〜16nを開にし、他の開閉手段を閉じて原水供給装置2を作動させる。原水室12a〜12nに供給された原水は、ろ過膜を透過することなく、排出分岐管9a〜9nから排出され、原水室12及び膜表面をリンスするとともに原水室12の残留空気を排除する。
【0037】
ろ過工程51からフラッシング工程53までを1サイクルとし、フラッシング工程53の終了後、次サイクルのろ過工程51に移る。これらの運転操作を通常ろ過モードと称し、制御設備34から各工程の所要時間や各種手段の作動,停止や開閉動作のタイミングが指示される。
【0038】
膜損傷検知方法について図2及び図3で説明する。図2は、制御設備34からの指令で定期的に通常ろ過モード42を膜損傷検知モード44に切り替えて損傷の有無と損傷膜モジュールを特定する処理フローを示す図である。
【0039】
膜損傷検知モード44は、通常ろ過モード42のろ過工程51が終了する段階で切り替わり、剥離工程54が実施される。
【0040】
剥離工程54では、ろ過工程51の操作状態から原水供給装置2を停止し、開閉弁16a〜16nを閉じ、開閉弁15a〜15n,開閉弁17a〜17nを開にして、空気供給装置5を作動させる。空気供給装置5の作動により、加圧空気が空気分岐管10a〜10nを通じて各膜モジュールの原水室12a〜12nに供給される。原水室12は、満水状態であるが、上方の開閉弁15a〜15nが開放されているので、上昇した空気が排出分岐管9a〜9nから排出される。この上昇空気流は、原水室12a〜12nのろ過膜11a〜11n表面に付着した濁質を剥離し、剥離濁質を残存する原水に均質混合させる効果がある。
【0041】
発明者らの実験による知見では、剥離工程での空気洗浄は30秒以下でよい。原水室12の原水は、固定壁14a〜14nと空気分岐管10a〜10nの水頭に相当する容積分だけ減少するが、大部分の原水は残留し、高濁質化される。その割合は、ほぼろ過工程での透過水量と原水室容積の比となる。
【0042】
透過,検知工程55では、開閉弁15a〜15nを閉じ、他の開閉弁は開けて空気供給を継続させることで、高濁質化原水を加圧し、ろ過膜11a〜11nに透過させる。ろ過膜の一部に損傷があれば、高濁質化原水が損傷部より直接漏出し、損傷膜モジュールの透過水全体の濁質度合を高める。
【0043】
一方、透過が進むに連れて高濁質化原水が透過された分、原水室の空気層が増す。空気層の下部位置が損傷部の位置より低下した場合、空気気泡が透過水に混入し、気泡を含む濁質が透過水と一緒に透過水室から排出される。各モジュールの透過水室13の近くに濁質検出装置19が設置されており、濁質の有無や変化を検知する。
【0044】
濁質検出装置19には、超音波や光電,音響,電気抵抗などのセンサーが用いられる。濁質検出装置19a〜19nでの検出値は、パソコンなどの診断設備32に入力され、膜モジュール間での比較評価や、原水固有の濁質か、気泡を含む濁質かの判定により損傷度合の診断評価,気泡を含む濁質の排出遅れによる損傷位置の予測評価を行う。
【0045】
原水固有の濁質の判定と気泡を含む濁質の判定は、一例として図4に示す方法で実現できる。図4に示す例は、透過水の濁度を判定の指標としている。
【0046】
損傷していない正常な膜モジュールの濁度は時間的変化がなく、損傷している膜モジュールの透過水の濁度は、初めは正常な膜モジュールと同等か、若干高く、時間が経過するにつれて膜モジュール内の高濁質化原水が流出して徐々に増加する。空気層の下部が損傷位置に達すると気泡が流出し始め、濁度が急激に増加する。この初期の濁度変化で損傷の有無を把握し、濁度が急変する時間Aと急変した後の増加傾向で損傷位置や損傷度合が評価できる。
【0047】
濁質の指標としては、センサーにより計測された濁度の他に粒子数,光や超音波の減衰,反射,散乱量,電力,電流値などを利用できる。診断設備32では、損傷の有無の表示,損傷有りの警報や損傷モジュールとその度合や予測位置などを出力し、制御設備34に膜ろ過処理設備40への操作指令を出力する。
【0048】
処置工程56では、制御設備34が、診断設備32からの出力情報に基づいて膜ろ過処理設備40の次の運転操作を実行する。損傷が発生していない場合は、通常ろ過モード42に切り替え、逆洗工程52から実施するよう運転操作する。損傷が発生し、損傷した膜モジュールを特定した場合、例えば膜モジュール1bが損傷したことを特定した場合には、開閉弁15b,16b,17bを閉ロックした後、通常ろ過モード42に切り替え、逆洗工程52から実施するように運転操作する。図示していないが、損傷した膜モジュールの閉ロックは、透過水管に設けた開閉弁も行うことで、他の正常損傷膜モジュールの通常ろ過モード42の運転に影響を与えずにモジュール交換や修復作業を実施できる。閉ロックは交換や修復作業終了後に解除される。
【0049】
このように、本実施例の膜損傷検知方法によれば、新たな濁質を供給することなく、高
濁質化原水を一時的に生成させて透過水の漏出感度を高めた検知ができ、ある時間帯から気泡を含む濁質に変化するので損傷度合やその位置を特定できる。
【0050】
図3は、通常ろ過モード42のろ過工程51における濁質検出装置19a〜19nの検出値に基づいて、診断設備32で膜損傷検知の割込み処理が必要か否かを判定し、割込み処理が必要と判定した場合には、制御設備34を介して一時的に膜損傷検知モード44を実行するフローを示している。
【0051】
濁質検出装置19a〜19nの検出値が設定された値より高い、あるいは特定の検出値が他の検出値と異なる場合に、割込みが必要と判定する。膜損傷検知モード44での処理手順は、図2に示す手順と同様である。
【0052】
膜損傷検知モード44では、ろ過水の生成が中断されるので、もし、膜損傷が発生していないと判定された場合にはその運転操作が無駄となるが、この膜損傷検知方法によれば、必要な時に実施されるので効率的な膜ろ過運転を提供できる。
【実施例2】
【0053】
図5は、内圧型の中空糸膜モジュールを対象とした実施例2を示す図である。本実施例は、図1に示す実施形態と同様に構成されているが、膜モジュールの構成と配管の一部が相違する。
【0054】
膜モジュール1aを例にとり、本実施例の膜モジュールの構成を説明する。原水室12a,12a′が上下に設置され、その間に透過水室13aが設置されている。透過水室13aには、多数の中空糸膜から成るろ過膜11aが設けられ、中空糸膜の両端が原水室12aと原水室12a′に開口するように取付けられている。透過室13aと原水室12a,透過室13aと原水室12a′は、それぞれ固定壁14aと固定壁14a′で仕切られており、内蔵されたろ過膜11aを介して透過室13aと原水室13a,13a′間で液が透過するようになっている。
【0055】
透過水室13aの上方には、透過水管37aが接続され、透過水管37aは濁質検出装置19aを介してろ過水管7に接続される。上方の原水室12aには、排出分岐管9aが接続され、排出分岐管9aは開閉弁15aを介して排出管9に接続される。下方の原水室12a′には原水分岐管36aと空気分岐管10aが接続され、原水分岐管36aは開閉弁16aを介して原水供給管6に、空気分岐管10aは開閉弁17aを介して空気供給管10に接続されている。他の膜モジュール1b〜1nも同様に構成されている。
【0056】
このような膜モジュール構成において、通常ろ過モード42と膜損傷検知モード44は、図1に示す外圧型で説明した手順で実施できる。ただし、内圧型では空気供給装置5が常設されていない場合があり、この場合は、空気供給装置5に圧縮機ではなく、ボンベを用いることで設備コストを低減できる。ボンベは、開閉弁を開にするだけで加圧空気を供給でき、運転コストを大幅に削減できる。
【0057】
一般に、内圧型は、外圧型に比べて原水室側の容積が小さく、より少ない空気量で濁質の剥離混合が可能である。また、図3に示す膜損傷検知モードを適用することにより、空気の使用頻度が少なくできるのでボンベで十分対応できる。なお、ボンベ内の圧力を監視し、所定圧力以下の場合にボンベ交換の指示表示や警報を出すことを診断設備32で行っても良い。
【0058】
図5に示す例では、ろ過水管7に濁質検知器30を設置し、濁質検知器30の検出値を診断設備32に出力している。この濁質検知器30は、レーザ式で小数点3〜4桁までの濁度や数十個の微粒子数を計測する高感度の濁度計や微粒子センサーである。これらの検知手段は高価であるため、複数のモジュールに1台の割合で設置される。
【0059】
これに対して、濁質検出装置19a〜19nは検出精度が落ちるものの安価な装置を採用する。このような検知方法により、濁質検知器30は、膜ろ過処理設備40全体のろ過水監視をし、濁質検出装置19a〜19nは各膜モジュールの透過水を個別に管理している。このように、原水の濁質状態により、濁質検出装置19a〜19nでは透過水の異常を感知できない場合でも、高精度な濁質検知器30では感知できる。
【0060】
濁質検知器30と濁質検出装置19を併用した場合の膜損傷検知方法について説明する。診断設備32では、濁質検知器30の計測値の変化傾向や予め設定した値以上の計測値となった場合に、膜ろ過処理設備40の膜モジュールに損傷が発生したと判断し、図3に示す割込み処理により膜損傷検知モード44を実行させる。膜損傷検知モード44により各膜モジュールで高濁質化原水を生成させ、その透過水の濁質状態を濁質検出装置19a〜19nで計測する。
【0061】
計測値が異常となった濁質検出装置19と対応する膜モジュールを損傷膜と特定する。特定した後の運転操作は、図3で説明した手順と同様である。本実施例で用いる濁質検出装置19a〜19nは、膜モジュール数をN、膜損傷検知モード44での高濁質化原水と原水供給装置2から供給された原水の濁質濃度比Mとすると、濁質検知器30の検出感度Dに対してD*N*Mの感度でよく、非常に安価な方式を適用できる。このため、設備費をかけずに損傷した膜モジュールを容易に特定できる。
【実施例3】
【0062】
図6は、膜損傷検知モード実行時の実施例3を説明する図である。本実施例は、図1に示す実施例と同様に構成されているが、本実施例では、過水管7のろ過水槽3側に濁質検知器30を設置し、ろ過水管7の他端に開閉弁25を設けている。開閉弁25は、開閉弁22と逆方向で透過水合流点の下流となるろ過水管7に設置し、開閉弁25を通ったろ過水を系外に排出するようになっている。
【0063】
このような構成において、膜損傷検知モード44は図7に示す手順で実施する。膜損傷検知モード44への切り替え,モード内の剥離,透過,検知,処置工程56の内容は、図2及び図3と同様であるが、ろ過水切替工程I61とろ過水切替工程II63と逆洗工程62を追加した点が異なる。
【0064】
ろ過水切替工程I61は、剥離工程54、あるいは透過,検知工程55を実行する前に、制御設備34により開閉弁22を閉じて、開閉弁25を開にする制御を行う。この切り替え操作により、透過,検知工程55における各膜モジュールからの透過水は、ろ過水槽3に送水されなく、系外に排出される。逆洗工程52は、開閉弁22を閉、開閉弁25を開の状態とし、他は図1で示す実施例で説明した逆洗工程52と同様の操作を実行する。この逆洗工程52を所定時間実施した後、開閉弁25を閉じて、開閉弁22を開に切り替えるろ過水切替工程II63を実施する。本実施例では、ろ過水切替工程II63が実行された後、通常ろ過モード42のリンス洗浄工程53に戻るようにする。
【0065】
このようにすることにより、損傷した膜モジュールから漏出する濁質が、ろ過水槽3に一切入ることなく、安全で清澄なろ過水を維持できる。
【実施例4】
【0066】
通常ろ過モード42のろ過工程51中に、任意の濁質検出装置19a〜19nの計測値が所定値以上となる、あるいは徐々に増加する傾向を示し、異常あるいは損傷の可能性がある場合の実施例4を図8に示す。
【0067】
図8は、膜モジュール1bの周辺を図示している。図8に示す膜モジュール1bは、透過水管7bに開閉弁18bを設け、この開閉弁18bと濁質検出装置19b間に分岐管7b′を接続して開閉弁18b′を配置し、分岐管7b′を排出水管9に接続している点が図6に示す実施例の構成と相違している。他の膜モジュールも膜モジュール1bと同様の構成である。
【0068】
膜損傷検知モード44は、図3に示したフローで実施するが、図7に示すフローで、膜モジュール1bの濁質検出装置19bが異常値を示した場合は、異常値を示した膜モジュール1bを対象とし、他の正常な膜モジュールは通常ろ過モードを継続して実行させる。膜モジュール1bに対して、剥離工程54では開閉弁16b,18bを閉じ、開閉弁15b,17bを開とし、空気供給装置5を作動させて付着濁質を剥離して高濁度化原水を生成する。透過,検知工程55では、開閉弁15bを閉じ、開閉弁18b′を開にして高濁度化原水を透過させ、透過水の濁質状態を濁質検出装置19bで計測する。計測値が図4に示す損傷膜と同様の変化を示した場合、膜損傷と判定する。膜モジュールも特定されているので、以降、通常ろ過モードを実行しないようにして、交換や修復作業を実施する。
【0069】
このような手順によれば、正常な膜モジュールのろ過水製造を中断させることなく、特定の膜モジュールの損傷を正確に検知できる。また、特定の膜モジュールに空気を供給すればよく、運転コストを低減できる。
【0070】
以上、各実施例を説明したが、膜損傷検知モード44の剥離工程54を空気での洗浄としたが、空気洗浄中に一時的に逆洗洗浄水を供給してもよい。また、透過,検知工程55で空気を用いたが、原水を供給してもよい。なお、各実施例において、原水及び洗浄水供給装置はポンプ、開閉弁は電磁弁、あるいは空気作動弁である。
【実施例5】
【0071】
本発明の実施例5を図9から図11を用いて説明する。図9は、本実施例の膜ろ過装置の構成図である。
【0072】
本実施例は、外圧型の中空糸膜モジュールを用いた例を示しており、図9に示すように、膜ろ過処理設備40は、膜モジュール1,原水供給装置2,ろ過水槽3,洗浄水供給装置4,空気供給装置5を主な構成要素としている。
【0073】
膜モジュール1は、上部にろ過水室13が設けられ、下方に原水室12が設けられている。原水室12には、数千本の中空糸膜が実装されたろ過膜が設けられ、中空糸膜の一端側がろ過水質13に開口するように取付けられており、ろ過膜11及び固定壁14により原水室12とろ過水室13に分離されている。このため、内蔵されたろ過膜11を介して原水室12とろ過水室13間で液が透過するようになっている。
【0074】
原水室12の下方には供給管70が接続され、供給管70の一方は開閉弁22を介して原水供給装置2に、他方は開閉弁23を介して空気供給装置3に接続されており、原水供給装置2から原水を、空気供給装置3から空気を供給できるようになっている。
【0075】
原水室12の上方には開閉弁28を設けた排出管71が接続されている。ろ過水室13には、開閉弁29を介して洗浄水供給装置4が接続され、洗浄供給装置4には洗浄水管72を介してろ過水槽3に接続されている。又、ろ過水室13には、濁質監視装置21が接続され、開閉弁27が設けられたろ過水管7により、ろ過槽3の上部にろ過水を導くようになっている。ろ過槽3には浄水管73が接続されている。
【0076】
このように構成された膜ろ過処理設備40の通常の運転操作を説明する。運転操作は、図10の通常ろ過モード42で示すように、ろ過工程51,逆洗工程52,リンス工程53の3工程が繰り返し実施される。
【0077】
ろ過工程51では、開閉弁22と開閉弁27を開にし、他の開閉弁を閉じて原水供給装置2を作動させ、濁質を含む原水を供給管70を通じて膜モジュール1に供給する。供給された原水は、原水室12側のろ過膜11表面で濁質が捕捉除去され、ろ過膜の内部に透過する。ろ過膜を透過した原水は清澄なろ過水となり、ろ過室13に接続されたろ過水管7を介してろ過水槽3に一定量貯留され、越流したろ過水は浄水管73を経て、消毒処理等を施されて浄水となる。
【0078】
ろ過工程51が設定された時間運転されると逆洗工程52に移る。逆洗工程52では、原水供給装置2を停止し、開閉弁23,開閉弁28及び開閉弁29を開にし、他の開閉弁を閉じて空気供給装置5と洗浄水供給装置4を作動させる。空気供給装置5の作動により、加圧空気が供給管70を通じて膜モジュール1の原水室12に供給され、上方の排出管71から排出される。また、洗浄水供給装置4の作動により、ろ過水槽3に一定量貯留されていたろ過水が、洗浄水として洗浄水管72を介して膜モジュール1のろ過水室13に供給され、ろ過膜11の内部から原水室側に透過し、空気と一緒に排出管71から排出される。
【0079】
原水室12に供給された空気は、膜表面に捕捉,付着した濁質を剥離し、膜内部から原水室12に透過した洗浄水は、透過する過程で膜内に入り込んだ濁質を同伴排除し、原水室12側の膜表面に捕捉,付着した濁質の剥離を促進させる。剥離した濁質は、空気及び透過洗浄水とともに洗浄排水として排出管71から膜モジュール系外に排出される。
【0080】
リンス工程53は、逆洗工程52の終了後に、空気供給装置3と洗浄水供給装置5を停止し、開閉弁22と開閉弁28を開にし、他の開閉弁を閉じて原水供給装置2を作動させる。原水室12に供給された原水はろ過膜を透過することなく、排出管71から排出され、原水室12及び原水室側の膜表面を濯ぎ洗浄するとともに原水室12の残留空気を排除する。
【0081】
ろ過工程51からリンス工程53までを1サイクルとし、リンス工程53の終了後、次サイクルのろ過工程51に移る。これらの操作を通常運転モードと称し、入力装置60から入力された各工程の所要時間や各供給装置の作動,停止と各開閉弁の動作タイミングを診断装置50から制御設備70に指示され、実行される。診断装置50は、タイマー機能も有し、各処理工程の実行時間を計数して次工程、及び次サイクルへの移行を決定する。
【0082】
次に膜損傷検知方法について説明する。通常運転モードにおいて、ろ過工程51におけるろ過水の濁質状態を濁質監視装置21で計測し、計測値が異常であれば膜損傷発生と判断できる。しかし、濁質監視装置21の計測感度や原水の濁度,膜モジュールの仕様等により膜損傷を明確に捉えることは非常に困難である。
【0083】
濁質監視装置21が小数点4桁の0.0001度まで表示可能な超高感度濁度計,原水濁度として通常の河川表流水が有する1度、中空糸数1万本の膜モジュールを例に、中空糸数1本損傷時のろ過水濁度を試算すると、単純計算によれば0.0001度となる。損傷部は膜抵抗がなくなって漏出し易くなることを考慮しても、小数点4桁目での濁度変化となる。複数本の膜モジュールを対象とする濁質監視装置21では、さらにその変化が小さくなり、益々困難な検知になる。
【0084】
本実施例における膜損傷検知は、濁質監視装置21の計測値、あるいは入力装置60からの設定情報で通常運転モードに割込ませて実行する。割込みの運転は、間接法から間接と直接の併用法、併用法から直接法への3段階であり、それぞれ第1割込運転モード100,第2割込運転モード110,第3割込運転モード120と言う。その手順と内容を図10に示す。
【0085】
診断装置50の割込実行指令により、第1割込運転モード100に移行し、予め設定された手順で制御装置70を介して膜ろ過処理装置40が操作される。
【0086】
第1割込運転モード100では、通常運転モード42のろ過工程51中、あるいはろ過工程51後に開閉弁23と開閉弁28を開き、その他の開閉弁を閉にして、空気供給装置5を所定時間稼動させる高濁度化工程101を初めに実行する。この高濁度化工程101により、加圧空気が原水室12に供給される。原水室12は満水状態であるが、上方の開閉弁28が開放されているので、上昇した空気が排出管71から排出される。この上昇空気流は、原水室12のろ過膜11表面に捕捉,付着された濁質を剥離し、剥離濁質を残存する原水に均質に混合させる効果がある。本発明者らの実験知見によれば、高濁度化工程101での空気洗浄は1分以下でよい。
【0087】
原水室12の原水は、固定壁14と排出管71の水頭に相当する容積分だけ減少するが、大部分は原水室12内に残留し、高濁度水となる。その割合は、ほぼろ過工程51でのろ過水量と原水室容積の比となる。例えば、膜面積25m2,原水室容積10Lの膜モジュールで、ろ過流束2m/dで1時間運転した場合、高濁度水の濁度は原水の約200倍となる。高濁度化工程101は空洗でなく、開閉弁28と開閉弁29を開とし、洗浄水供給装置4を所定時間稼動させて高濁度水を生成させても良いが、洗浄水の希釈作用により濁度が低下し、効果が薄れる。
【0088】
高濁度水ろ過工程101では、通常のろ過工程51と同様に、開閉弁22と開閉弁27を開とし、原水供給装置2を稼動させる。この操作により、高濁度水が初めにろ過処理され、膜損傷が発生していれば、ろ過水に含まれる濁質が増加する。
【0089】
判定工程A103では、濁質監視装置21の計測値から損傷有無を判定し、その判定結果に基づいて次の運転を指示する。判定は、例えば、直前の通常運転モード42におけるろ過工程51の濁質監視装置21の計測値と、高濁度水ろ過工程102の計測値との偏差αに、3つの基準値α1<α2<α3を設定しておき、α<α1であれば損傷無しと判定し、通常運転モード42に戻る。α1<α<α2であれば損傷発生の可能性が大と判定し、後述する第2割込運転モード110を実行させる。α>α3の場合、明らかに損傷発生と判定し、膜ろ過処理装置40を停止し、警報や損傷発生情報を出力装置80に出力する。
【0090】
基準値は、α1が濁質監視装置21の計測値が同レベルの桁数、α2が1桁変化、α3が2桁変化のように設定できる。高濁度水ろ過工程102は、高濁度水の影響がろ過水に表れるような運転条件、例えば、高濁度水の半分(原水室容積の半量)程度がろ過される時間、あるいはろ過水流量となるように設定する。
【0091】
第1割込運転モード100では、膜損傷がないと判定されれば、高濁度水ろ過工程102で得られたろ過水を、通常運転モード42と同様に安全と判断し、浄水として利用するので、造水効率の低下を招くことはない。
【0092】
なお、高濁度水ろ過工程102の原水室12への供給源として、原水に替えて空気を用いることで、生成された高濁度水が希釈されることなくろ過処理できるので、損傷時のろ過水濁質感度をさらに向上できる。また、高濁度水ろ過工程102での、ろ過流束を低く設定すれば、ろ過水濁質の感度向上とその変化時間をより継続させることができ、膜損傷時の検知精度を高める効果がある。
【0093】
第1割込運転モード100で膜損傷発生の可能性が大と判定された場合、第2割込運転モード110を実行する。第2割込運転モード110では、開閉弁23と開閉弁27を開にし、空気供給装置5を稼動させ、空気の押込み圧力を利用してろ過処理する空気供給ろ過工程111を実施する。空気供給ろ過工程111が進むに連れて、供給された空気で原水室12の上部に形成される空気層の容積が増加し、原水層が減少する。空気層の下部が損傷位置より低下した場合、原水層からのろ過水と損傷部からの漏出空気がろ過水室13に流入し、気液混合のろ過水が、ろ過水管7を流れる。
【0094】
濁質監視装置21は、液中の空気気泡も濁質として計測するもので、特に限定しないが超音波や光電,音響,電気抵抗などのセンサーを利用できる。判定工程B112は、濁質監視装置21の計測値の変曲点とその出現時間、さらに変曲後の計測値上昇速度を求め、それらの演算値から膜損傷位置と損傷の大きさを診断し、膜ろ過処理装置40を停止するとともに、警報やその診断結果を出力装置80に出力表示する。なお、膜損傷の可能性があるにも係らず、空気供給ろ過工程で計測値の変曲点や計測値上昇が認められかった場合には、第3割込運転モード120を実行させる。
【0095】
第3割込運転モード120は、原水室12の原水を全てろ過させた後に、空気供給を停止して原水室12を密封する空気封入工程121を実施する。空気封入工程121における装置構成を図11に示す。
【0096】
図9に示す装置構成との相違点は、膜モジュール1と開閉弁27間のろ過水管7にろ過水の流量監視装置26を設け、膜モジュール1と開閉弁28間の排出管71に圧力監視装置25を配設していることである。
【0097】
第2割込運転モード110では、開閉弁23と開閉弁27を開にし、空気供給装置5からの空気でろ過水が得られる。空気供給を継続すると、原水室12は、原水が全てろ過されてなくなり、空気層となる。この時点で、流量監視装置26の計測値は0となり、原水室12が全て空気に置換されたと判断し、開閉弁23を閉じ、空気供給装置5を停止する。この工程を空気封入工程121と称す。
【0098】
空気封入工程121において、開閉弁27は開状態であり、膜が損傷している場合、原水室12内の空気が損傷部から漏出してろ過水管7から排出し、封入空気圧力が低下する。損傷のない正常な膜の場合は、原水室12内の空気はろ過水室13側に漏出せず、空気圧力も変化しない。判定工程C122では、原水室12を計測対象とした圧力監視装置25の圧力計測値に基づいて、損傷発生の有無と損傷度合を診断装置50で診断する。
【0099】
損傷発生の有無は圧力が低下したか否かで、損傷度合は損傷面積に応じて変化する圧力低下速度から診断できる。これらの診断結果は出力装置80に出力表示される。なお、圧力が低下しなかった場合は、濁質監視装置21が異常等との診断を下すことができる。
【0100】
このように、第3割込運転モード120では、第1割込運転モード100で膜損傷の可能性があり、第2割込運転モード110で膜損傷の有無や損傷度合が不明な場合でも正確に把握でき安心,安全性を高めることができる。また、膜モジュールを圧力空気で満たす割込運転は最終的なモードであるので、ろ過膜に与えるストレスを極力抑制することができる。
【実施例6】
【0101】
本発明の実施例6を図12,図13により説明する。図12は、本実施例の膜ろ過装置の構成図である。
【0102】
図9に示す実施例5との相違点は、原水供給装置2の上流側に、供給される原水の濁質濃度を計測する濁質監視装置24を設け、ろ過水管7途中にろ過水の流量監視装置26を設置していることである。
【0103】
本実施例は、濁質監視装置24の計測値等に基づいて、高濁度水の生成状態を把握し、生成された高濁度水で膜損傷発生有無の把握が可能か否かを事前に判定し、効果的な割込運転モードを設定するものである。
【0104】
まず、予め適用した膜モジュール1の原水室12の容積Vと、中空糸数の本数や内外径等の仕様と、濁質監視装置21の計測感度及び検知対象とする損傷度合から必要となる高濁度水(例えば濁度目標値Dm)を入力装置60から診断装置50に設定しておく。濁度目標値Dmは、流体式を用いて容易に演算可能であるが、想定した損傷状態の膜モジュールでの実験結果を用いて設定できる。
【0105】
診断装置50では、濁質監視装置24の原水濁度dと、流量監視装置26のろ過水量qと、診断装置50に記憶されている通常運転におけるろ過処理工程の運転時間設定値tmなどを用いて高濁度水の形成濁度値Duを数1,数2により演算する。
【0106】
(数1)
Du=k・d・q・tm/V ・・・(1)
【0107】
ここで、k(=〜1.0)は高濁度化係数である。
【0108】
又、診断装置50では、高濁度水の濁度値Duが目標値Dmとなるのに必要なろ過処理時間tnを数2から求めておく。
【0109】
(数2)
tn=Dm・V/k・d・q ・・・(2)
【0110】
本実施例での割込運転手順と内容を図13に示す。実施例5と同様な割込運転指令がなされた場合、診断装置50は、通常運転モード42を実行しながら事前判定工程104で、Dm≦Duであれば、予定通りの条件で、通常運転のろ過工程51の後に第1割込運転モード100に移行する。Dm>Duであれば、必要なろ過処理時間tnと設定値tmの比率C(=tn/tm)で運転を変更する。
【0111】
運転変更は、例えば、比率Cが設定値Cm(<1.0〜5.0)以下の場合、ろ過処理時間を長くすれば目標の高濁度水が得られるので、割込運転に移行する直前の通常運転におけるろ過工程51の時間をtmからtnに変更し、ろ過処理時間tn後に第1割込運転モード100に移行する。
【0112】
C>Cmの場合、ろ過工程51の時間を延ばしても目標の高濁度水が得られないと判断し、第1割込運転100を実行せず、第2割込運転モード110から実施する。この場合、第3割込運転120は、第2割込運転110で濁質監視装置21の計測値に変化が認められたが、気泡漏出による変曲点や増加傾向が明確でない場合に実施する。第2割込運転110及び第3割込運転120における判定工程B112及び判定工程C122の出力装置80への出力情報は、実施例5と同様である。なお、第1割込運転100の変更情報も出力装置80に出力表示する。
【0113】
このような手順によれば、膜モジュール1の濁質を有効に利用して膜損傷を検知できる。また、捕捉濁質を利用しても期待する効果が望めない場合、ろ過膜へのストレスがかかるが、空気供給ろ過方式から実施することで、浄水プロセスに必要な早期検知による安全を確保できる効果がある。
【0114】
又、通常は、新たな濁質源を用いずに、膜モジュール内の濁質を効果的に利用することで、ろ過水濁質感度を向上でき、容易に膜損傷の発生有無を把握できる。この検知過程で膜損傷発生の可能性有りの場合に初めて空気を利用した膜損傷の詳細判定を実行するが、ろ過処理の停止は最終時の直接法時であるため、浄水製造効率の低下を最大限に抑制できる。
【0115】
第1割込運転モード100における一例を図14に示す。適用した膜モジュールは実施例5で説明した実プロセス向けの大型の種類である。損傷膜は、長さ方向がほぼ中間部の中空糸を1本損傷させ、正常な膜モジュールと高濁度水供給ろ過工程の結果と比較した。ろ過水濁度は、正常膜に対して、損傷膜で大きく変化している。また、損傷膜のろ過水濁度は、高濁度水を空気及び原水を供給した工程でも増加し、高濁度水ろ過工程102で損傷膜を容易に確認、評価できる。また、損傷膜に対する高濁度水のろ過水への影響は、空気及び原水供給時にも短時間で表れている。
【0116】
このように、原水室を高濁度化し、その高濁度水をろ過することで、ろ過水は損傷位置に関係なく影響され、膜損傷しているか否かを早期に把握できることがわかる。
【0117】
第2割込運転モード110における一例を図15に示す。実施例5と同様に、損傷膜と正常膜の、ろ過水流量とろ過水に漏出した空気量の空気供給ろ過工程111での比較結果である。ろ過水流量は、空気供給の継続で膜ろ過面積の減少によって低下する。損傷膜と正常膜のろ過水流量に相違を見出すことが困難であるが、漏出空気量に明白な相違を確認できる。
【0118】
正常膜は、ろ過水流量が0になっても、空気は漏出していない。損傷膜は空気層が損傷部の中間付近に差し掛かった時点で空気漏出が発生している。空気漏出が開始されても、損傷部の原水室下方に原水が残留しているため、原水がなくなるまで気液共存のろ過水となっている。このような気液混合水は、超音波や光電,音響,電気抵抗などの原理を利用したセンサーで容易に検知できる。
【0119】
なお、ろ過水流量は、水用の流量監視装置25で計測しているが、損傷膜では原水が全ては排除され、漏出空気が排出されているにも係らず、流量は0となっている。このことから、水用の流量監視装置25は、空気流量を計測していないことが明らかである。
【0120】
なお、原水及び洗浄水供給装置はポンプ、空気供給装置は空気用ポンプ、開閉弁は電磁弁、あるいは空気作動弁である。また、これらの供給装置及び開閉弁は流量の自動調節が可能であり、特に、第2割込運転及び第3割込運転時の空気供給ろ過工程及び空気封入工程の終了後に、排出の開閉弁を一気に開放せず、所定時間かけて操作することで、ろ過膜へのストレスを防止できる。
【0121】
なお、各実施例は外圧型の膜モジュールを対象に説明したが、本発明者らは内圧型膜モジュールでも同様の効果を確認しており、内圧型にも支障なく適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の実施例1である外圧型中空糸膜モジュールを用いた膜ろ過装置の構成図である。
【図2】本実施例の膜ろ過装置の膜損傷検知手順を示す流れ図である。
【図3】本実施例の膜ろ過装置の他の膜損傷検知手順を示す流れ図である。
【図4】本実施例の膜損傷の有無や損傷状態を判定方法を説明する図である。
【図5】本発明の実施例2である内圧型中空糸膜モジュールを用いた膜ろ過装置の構成図である。
【図6】本発明の実施例3である膜ろ過装置の構成図である。
【図7】本実施例の膜ろ過装置の膜損傷検知手順を示す流れ図である。
【図8】本発明の実施例4である膜ろ過装置の一部の構成図である。
【図9】本発明の実施例5である外圧型中空糸膜モジュールを対象とした膜ろ過装置の構成図である。
【図10】実施例5の膜損傷検知手順を説明する流れ図である。
【図11】実施例5における第3割込運転の構成図である。
【図12】本発明の実施例6である膜ろ過装置の構成図である。
【図13】実施例6の膜損傷検知手順を説明する流れ図である。
【図14】膜ろ過装置の実験特性図である。
【図15】膜ろ過装置の実験特性図である。
【符号の説明】
【0123】
1 膜モジュール
2 原水供給装置
3 ろ過水槽
4 洗浄水供給装置
5 空気供給装置
6 原水供給管
7 ろ過水管
9 排出分岐管
10 空気分岐管
11 ろ過膜
12 原水室
13 透過水室(ろ過水室)
14 固定壁
15,16,22,23 開閉弁
19 濁質検出装置
24 分岐管
30 濁質検知器
32 診断設備
34 制御設備
36 原水分岐管
37 透過水管
40 膜ろ過処理設備
42 通常ろ過モード
44 膜損傷検知モード
51 ろ過工程
52 逆洗工程
53 フラッシング工程
54 剥離工程
55 透過,検知工程
56 処置工程
61 ろ過水切替工程I
63 ろ過水切替工程II
62 逆洗工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水供給装置から第1の開閉弁を介して原水が供給される原水室と、該原水室の原水をろ過膜により透過する膜モジュールと、該膜モジュールにより透過された透過水を貯留する透過室と、前記原水室に第2の開閉弁を介して接続される排出管と、前記透過室に濁質検出装置、第3の開閉弁を介して接続されるろ過水槽と、前記原水室に第4の開閉弁を介して接続される空気供給装置と、前記第1の開閉弁及び第3の開閉弁を閉、前記第2の開閉弁及び第4の開閉弁を開として、前記空気供給装置を作動させ、前記第3の開閉弁を開、前記第2の開閉弁を閉、第3の開閉弁、又は第4の開閉弁を開にして、前記濁質検出装置の検出値の変化により損傷している膜モジュールを判定し、該損傷していると判定された膜モジュールの前記第1〜第4の開閉弁を閉ロックする制御を行う制御設備を備えた膜
ろ過装置。
【請求項2】
原水供給装置から第1の開閉弁を介して原水が供給される原水室と、該原水室の原水をろ過膜により透過する膜モジュールと、該膜モジュールにより透過された透過水を貯留する透過室と、前記原水室に第2の開閉弁を介して接続される排出管と、前記透過室に濁質検出装置、第3の開閉弁を介して接続されるろ過水槽と、前記原水室に第4の開閉弁を介して接続される空気供給装置と、前記第1,第3の開閉弁を開放して原水供給装置を作動させるろ過モード後に、前記原水供給装置を停止し、前記第2の開閉弁を開放して前記空気供給装置を設定された時間作動させる剥離工程を実施し、前記第2の開閉弁を閉じて透過水を生成させ、前記濁質検出装置により生成透過水中の濁質の計測値に基づいて膜モジュールの損傷有無を判定する透過,検知工程を実行する膜損傷検知モードを実施する制御設備を備えた膜ろ過装置。
【請求項3】
前記膜損傷検知モードが、損傷した膜モジュールを特定する工程を実行する請求項2に記載の膜ろ過装置。
【請求項4】
前記ろ過水槽の前段に高感度の濁質検出器を具備するものであって、該濁質検出器による計測値に基づいて膜モジュールの損傷の発生があったと判断された場合に、前記濁質検出装置による膜モジュールの損傷有無の判定を行う請求項1から3のいずれかに記載の膜ろ過装置。
【請求項5】
前記濁質検出装置に接続され第5の開閉弁を有するろ過水を外部に排出するための配管を設け、前記第3の開閉弁を閉じ、前記第5の開閉弁を開放して前記膜損傷検知モードが、損傷した膜モジュールを特定する工程を実行する請求項2に記載の膜ろ過装置。
【請求項6】
前記膜損傷検知モードは、定期的、ろ過モード中の透過水の濁質計測装置の計測値に基づいて実行する請求項2に記載の膜ろ過装置。
【請求項7】
前記損傷していると判定された膜モジュールを切り離す第6の開閉弁を具備する請求項1から8のいずれかに記載の膜ろ過装置。
【請求項8】
原水供給装置から第1の開閉弁を介して原水を原水室に供給し、該原水室の原水を膜モジュールのろ過膜により透過して透過室から濁質検出装置、第3の開閉弁を介してろ過水槽に貯留するろ過モードの後に、制御設備により、前記第1の開閉弁と第3の開閉弁を閉、前記原水室に接続される排出管に設けられる第2の開閉弁を開、前記原水室と空気供給装置を接続する配管に設けられる第4の開閉弁を開として前記空気供給装置を作動し、前記第3の開閉弁を開、前記第2の開閉弁を閉、第3の開閉弁、又は第4の開閉弁を開として、前記濁質検出装置の検出値の変化により損傷している膜モジュールを判定し、該損傷していると判定された膜モジュールの前記第1〜第4の開閉弁を閉ロックする制御を行う膜ろ過装置の膜損傷検知方法。
【請求項9】
原水供給装置から第1の開閉弁を介して原水を原水室に供給し、該原水室の原水を膜モジュールのろ過膜により透過して透過室から濁質検出装置、第3の開閉弁を介してろ過水槽に貯留するろ過モードの後に、制御設備により、前記原水供給装置からの原水の供給を停止し、前記空気供給装置により原水室に空気を供給して前記原水室に接続される排出管に排出して、膜付着濁質を剥離して高濁度水を得る剥離工程を設定された時間実施し、第2の開閉弁を閉じて空気の排出を停止して透過水を生成し、この透過水の濁質状態を前記濁質検出装置の検出値に基づいて膜モジュールの損傷有無を判定する透過,検知工程を実行する膜損傷検知モードを有する膜ろ過装置の膜損傷検知方法。
【請求項10】
前記第3の開閉弁の前段に設けた高感度の濁質検出器による計測値に基づいて膜モジュールの損傷の発生があったと判断された場合に、前記濁質検出装置による膜損傷検知モードを行う請求項8又は9に記載の膜ろ過装置の膜損傷検知方法。
【請求項11】
膜モジュールに損傷が有り、損傷膜モジュールが特定された場合に、該膜モジュールへの原水供給を停止する請求項8から10のいずれかに記載の膜ろ過装置の膜損傷検知方法。
【請求項12】
膜により原水室とろ過水室に分画される膜モジュールを具備し、通常運転として、濁質を含有する原水を前記原水室に供給して前記ろ過水室から清澄なろ過水を得るろ過工程と、前記ろ過水室にろ過水を供給して原水室側に透過させ、その透過過程で前記原水室側の膜面に捕捉された濁質を剥離し、洗浄排水として膜モジュール外に排出する逆洗工程と、前記原水室に原水を供給して直接膜モジュール外に排出するリンス工程とを繰返すものであって、前記通常運転のろ過工程中あるいはろ過工程後に、割込みにより、前記原水室側の膜面に捕捉された濁質を前記原水室の原水に剥離させた高濁度水を生成させる高濁度化工程と、該黄濁度化工程で生成された高濁度水を前記ろ過水室に設定された時間又は設定された量透過させる高濁度水ろ過工程を運転する第1割込運転を実施し、前記高濁度水ろ過工程の透過水中の濁質変化に基づいて膜の損傷有無を判定する膜ろ過装置の膜損傷検知方法。
【請求項13】
前記第1割込運転を実施した結果、膜損傷無しと判定された場合には、前記第1割込運転を解除して通常運転に戻し、膜損傷有りと判定された場合には、割込みにより、原水室に空気を供給してろ過する空気供給ろ過工程を運転する第2割込運転を実施し、前記空気供給ろ過工程のろ過水中の濁質変化に基づいて膜の損傷状態を診断する請求項12に記載の膜ろ過装置の膜損傷検知方法。
【請求項14】
前記空気供給ろ過工程のろ過水中の濁質状態で膜の損傷状態を診断できない場合には、割込みにより、前記原水室の原水を全て透過させた後に、空気供給を停止して原水室を密封する空気封入工程を運転する第3割込運転を実施し、前記空気封入工程の原水室の圧力変化に基づいて膜損傷の正否を診断する請求項13に記載の膜ろ過装置の膜損傷検知方法。
【請求項15】
前記第1割込運転は定期的あるいは通常運転時のろ過水中の濁質状態に基づいて実行されるものであって、予め設定した高濁度水の濁度目標値と実行直前の通常運転時の原水濁度に基づいて前記ろ過工程の運転時間を演算し、演算された前記ろ過工程の運転時間経過後に前記第1割込運転が実行される請求項12に記載の膜ろ過装置の膜損傷検知方法。
【請求項16】
請求項15において、
前記演算されたろ過工程の運転時間が予め設定した時間以上である場合には、割込みにより、前記第2割込運転から運転する請求項15に記載の膜ろ過装置の膜損傷検知方法。
【請求項17】
前記第2割込運転及び第3割込運転により供給された前記原水室の空気は、徐々に膜モジュール外に排出する請求項13又は14に記載の膜ろ過装置の膜損傷検知方法。
【請求項18】
ろ過膜を介して原水室とろ過水室に分画する膜モジュールと、前記原水室と供給管により接続された原水供給装置と、前記原水室に接続された空気供給装置と、前記ろ過水室と濁質監視装置が設けられたろ過水管により接続されたろ過水槽とを備え、診断装置の割込実行指令により、前記原水供給装置から原水を前記膜モジュールに供給してろ過する通常運転のろ過工程の途中又はろ過工程後に、前記空気供給装置から空気を前記原水室に供給して前記ろ過膜表面の濁質を剥離させた後、前記原水供給装置から原水を前記原水室に供給する第1割込運転を実施して前記濁質監視装置の計測値に基づいて前記ろ過膜の損傷を判定する膜ろ過装置。
【請求項19】
前記第1割込運転を実施した結果、膜損傷無しと判定された場合には、前記割込運転を解除してろ過工程,逆洗工程,リンス工程を繰返す通常運転に戻し、膜損傷有りと判定された場合には、前記空気供給装置から前記原水室に空気を供給する第2割込運転を実施して、前記濁質監視装置の計測値に基づいて前記ろ過膜の損傷を判定する請求項18に記載の膜ろ過装置。
【請求項20】
前記第2割込運転を実施した結果、膜ろ過の損傷の判定ができない場合は、前記空気供給装置から供給される空気が原水室を満たしたと判断された後、前記原水室を密封する第3割込運転を実施して前記原水室の圧力を計測する圧力監視装置の計測値に基づいて前記ろ過膜の損傷を判定する請求項19に記載の膜ろ過装置。
【請求項21】
前記第1割込運転を実施する前に、予め設定した高濁度水の濁度目標値と前記第1割込運転を実行する前の通常運転時の原水濁度に基づいて必要なろ過時間を演算し、演算したろ過時間経過後のろ過工程に前記第1割込運転を実施する請求項18に記載の膜ろ過装置。
【請求項22】
前記第1割込運転で必要なろ過時間が予め設定した時間以上である場合には、前記空気供給装置から前記原水室に空気を供給する第2割込運転を実施する請求項21に記載の膜ろ過装置。
【請求項23】
前記第2割込運転又は第3割込運転の実行後に、原水室の供給空気の排出時間を調整する手段を有する請求項19又は20に記載の膜ろ過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−72756(P2009−72756A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13231(P2008−13231)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】