説明

膜処理装置およびその運転方法

【課題】各膜モジュールの負荷量をできるだけ均等にすることが可能な膜処理装置を提供する。
【解決手段】複数段の膜モジュールバンク2,3が備えられ、夫々の膜モジュールバンク2,3は原水から逆浸透膜を透過した透過水を得る複数の膜モジュール5を有し、下流段側の膜モジュールバンク3は上流段側の膜モジュールバンク2から排出される濃縮水を原水として逆浸透膜を透過した透過水を得る膜処理装置1であって、上流段側の膜モジュールバンク2から下流段側の膜モジュールバンク3に供給される上流段側の濃縮水の流量を変化させることが可能な流量調整弁16と、夫々の膜モジュールバンク2,3の透過水の電気伝導度を測定する電気伝導度計19,21と流量を測定する流量計20,22とが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数段の膜モジュールバンクを備えた膜処理装置およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の膜処理装置としては、例えば、図12に示すように、上流側から下流側にわたり第1および第2段の膜モジュールバンク81,82が備えられたものがある。第1段の膜モジュールバンク81には2個の膜モジュール83が並列に配置され、第2段の膜モジュールバンク82には1個の膜モジュール83が配置されている。これら膜モジュール83は、配管で互いに接続されてクリスマスツリー型に配置され、内部に逆浸透膜の膜エレメント84を備えている。また、膜モジュール83には、原水を導入する原水供給口86と、膜エレメント84を透過した透過水が排出される透過水回収口87と、原水から透過水が除かれた後の濃縮水を排出する濃縮水排出口88とが設けられている。
【0003】
また、第1段の膜モジュールバンク81の上流側には、第1段の膜モジュールバンク81の膜モジュール83に供給される原水を圧入するポンプ90が設けられている。
これによると、原水は、ポンプ90で昇圧された後、第1段の膜モジュールバンク81の両膜モジュール83に供給され、膜エレメント84の逆浸透膜を透過した透過水と、逆浸透膜を透過しない濃縮水とに分離される。このうち、透過水は透過水回収口87から第1段の膜モジュールバンク81の膜モジュール83の外部に回収される。
【0004】
また、濃縮水は、濃縮水排出口88から第1段の膜モジュールバンク81の膜モジュール83の外部に排出された後、第2段の膜モジュールバンク82の原水として第2段の膜モジュールバンク82の膜モジュール83に供給され、透過水と濃縮水とに分離される。
【0005】
尚、第2段の膜モジュールバンク82に比べて、第1段の膜モジュールバンク81の方は、原水の供給圧力が高いことに加えて、原水の浸透圧が低いので、透過水の量が多く得られる。
【0006】
また、複数段の膜モジュールバンクが備えられ、複数の膜モジュールがクリスマスツリー型に配置された膜処理装置についは、例えば下記特許文献1,2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−347372
【特許文献2】特開2000−218135
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記の従来形式では、第1段の膜モジュールバンク81で得られた濃縮水を、第2段の膜モジュールバンク82の原水として、そのまま成り行きで第2段の膜モジュールバンク82に供給しているため、第2段の膜モジュールバンク82の膜モジュール83の負荷量が第1段の膜モジュールバンク81の膜モジュール83の負荷量よりも高くなり、第2段の膜モジュールバンク82の膜モジュール83の膜エレメント84が、第1段の膜モジュールバンク81の膜モジュール83の膜エレメント84よりも、早期の段階で汚染されてしまうといった問題がある。
【0009】
尚、本発明における負荷量とは、膜モジュールの分離膜の単位面積および単位時間当りに分離膜を透過する溶解成分量を表すものであり、溶解成分量の単位としては「g」又は「mol」のどちらでもよい。また、実際の負荷量の測定においては、膜透過水の流量と膜透過水中の溶解成分濃度との積を分離膜の面積で除して求めることができ、溶解成分が塩等のイオン性のものであれば、膜透過水の溶解成分濃度の代用として電気伝導度を用いることができる。
【0010】
このように、各膜モジュール83の膜エレメント84の汚染度合にばらつきがあると、膜エレメント84を薬液洗浄する洗浄時期の判断が難しくなり、第2段の膜モジュールバンク82の膜モジュール83の膜エレメント84が汚染され過ぎて、薬液洗浄を行っても、十分に汚染を除去することができなかったり、或は、ほとんど汚染されておらず薬液洗浄の必要の無い第1段の膜モジュールバンク81の膜モジュール83の膜エレメント84に対して、不必要な薬液洗浄を行ってしまうといった問題がある。
【0011】
このような問題の対策として、汚染の進行した膜モジュール83の膜エレメント84から順次薬液洗浄すれば良いのであるが、どの膜モジュール83の膜エレメント84の汚染が進行しているのかを判断することは困難であるとともに、各膜モジュールバンク81,82或は各膜モジュール83毎に薬液洗浄をしようとすると、配管構造が複雑になり、現実的ではない。
【0012】
本発明は、各膜モジュールの負荷量をできるだけ均等にすることが可能な膜処理装置およびその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本第1発明は、上流側から下流側にわたり複数段の膜モジュールバンクが備えられ、
夫々の膜モジュールバンクは原水から逆浸透膜又はナノ濾過膜を透過した透過水を得る1以上の膜モジュールを有し、
下流段側の膜モジュールバンクは上流段側の膜モジュールバンクから排出される濃縮水を原水として逆浸透膜又はナノ濾過膜を透過した透過水を得る膜処理装置の運転方法であって、
上流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と下流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度との比、又は、上流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量と下流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量との比、或は、上流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と流量の積と下流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と流量の積との比のいずれかの比が所定値に保たれるように、上流段側の膜モジュールバンクから下流段側の膜モジュールバンクに供給される上流段側の膜モジュールバンクの濃縮水の流量又は下流段側の膜モジュールバンクから排出される透過水の流量を変化させるものである。
【0014】
これによると、上流段側の膜モジュールバンクから下流段側の膜モジュールバンクに供給される上流段側の濃縮水の流量又は下流段側の膜モジュールバンクから排出される透過水の流量を流量変化手段で変化させて、例えば、上流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と流量の積Aと下流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と流量の積Bとの比を所定値に保つことにより、上流段側の膜モジュールの負荷量と下流段側の膜モジュールの負荷量とをほぼ均等にすることができる。
【0015】
尚、上記積Aと積Bとはそれぞれ上流段側の膜モジュールバンクの膜モジュールの負荷量と下流段側の膜モジュールバンクの膜モジュールの負荷量の指標となる。ここで、上流段側の膜モジュールバンクの膜モジュールの負荷量と下流段側の膜モジュールバンクの膜モジュールの負荷量とが均等である場合、上記積Aと積Bとの比がある定まった所定値を示すことを発明者は見い出した。
【0016】
従って、予め上流段側および下流段側の膜モジュールバンクの負荷量が均等となる上記積Aと積Bとの比の所定値(以下、所定積比とも言う)を求めておき、上流段側の膜モジュールバンクから下流段側の膜モジュールバンクに供給される上流段側の濃縮水の流量又は下流段側の膜モジュールバンクから排出される透過水の流量を変化させることにより、上記積Aと積Bとを所定積比に保つことができる。これにより、上流段側の膜モジュールの負荷量と下流段側の膜モジュールの負荷量とをほぼ均等にすることができる。
【0017】
したがって、上流段側の膜モジュールの膜の汚染と下流段側の膜モジュールの膜の汚染とがほぼ均等に進行し、膜を薬液洗浄する際の最適な洗浄時期を容易に判断することができる。
【0018】
また、上記の運転方法では、積Aと積Bとの比に着目しているが、下記のように、透過水の溶解成分濃度の比に着目してもよい。すなわち、上流段側の膜モジュールの負荷量と下流段側の膜モジュールの負荷量とが均等である場合、上述したように積Aと積Bとが上記所定積比となり、この状態では、上流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と下流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度との比が所定値(以下、所定濃度比とも言う)になる。
【0019】
したがって、予め負荷量が均等である場合の所定濃度比を求めておき、上流段側の膜モジュールバンクから下流段側の膜モジュールバンクに供給される上流段側の濃縮水の流量又は下流段側の膜モジュールバンクから排出される透過水の流量を変化させ、上流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と下流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度とを所定濃度比に保つ。これにより、上流段側の膜モジュールの負荷量と下流段側の膜モジュールの負荷量とをほぼ均等にすることができる。
【0020】
また、上記の運転方法では、積Aと積Bとの比に着目しているが、下記のように、透過水の流量の比に着目してもよい。すなわち、上流段側の膜モジュールの負荷量と下流段側の膜モジュールの負荷量とが均等である場合、上述したように積Aと積Bとが上記所定積比となり、この状態では、上流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量と下流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量との比が所定値(以下、所定流量比とも言う)になる。
【0021】
したがって、予め負荷量が均等である場合の所定流量比を求めておき、上流段側の膜モジュールバンクから下流段側の膜モジュールバンクに供給される上流段側の濃縮水の流量又は下流段側の膜モジュールバンクから排出される透過水の流量を変化させ、上流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量と下流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量とを所定流量比に保つ。これにより、上流段側の膜モジュールの負荷量と下流段側の膜モジュールの負荷量とをほぼ均等にすることができる。
【0022】
本第2発明における膜処理装置の運転方法は、溶解成分濃度を電気伝導度の測定により求めるものである。
これによると、測定された透過水の電気伝導度から透過水の溶解成分濃度を求めることができる。
【0023】
本第3発明における膜処理装置の運転方法は、上流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と流量の積と下流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と流量の積との比が、上流段側の膜モジュールバンクが有する分離膜の膜面積と下流段側の膜モジュールバンクが有する分離膜の膜面積との比に略等しいものである。
【0024】
これによると、上流段側の膜モジュールバンクから下流段側の膜モジュールバンクに供給される上流段側の濃縮水の流量又は下流段側の膜モジュールバンクから排出される透過水の流量を流量変化手段で変化させて、上記積同士の比を上記膜面積同士の比に略等しくなるように保つことによって、上流段側の膜モジュールの負荷量と下流段側の膜モジュールの負荷量とをほぼ均等にすることができる。
【0025】
本第4発明は、上流側から下流側にわたり複数段の膜モジュールバンクが備えられ、
夫々の膜モジュールバンクは原水から逆浸透膜又はナノ濾過膜を透過した透過水を得る1以上の膜モジュールを有し、
下流段側の膜モジュールバンクは上流段側の膜モジュールバンクから排出される濃縮水を原水として逆浸透膜又はナノ濾過膜を透過した透過水を得る膜処理装置であって、
上流段側の膜モジュールバンクから下流段側の膜モジュールバンクに供給される上流段側の濃縮水の流量又は下流段側の膜モジュールバンクから排出される透過水の流量を変化させることが可能な流量変化手段と、
夫々の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度を測定する溶解成分濃度測定手段と夫々の膜モジュールバンクの透過水の流量を測定する流量測定手段との、少なくともいずれかの測定手段が備えられているものである。
【0026】
これによると、例えば、溶解成分濃度測定手段と流量測定手段とが共に備えられている場合、溶解成分濃度測定手段により測定された上流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と流量測定手段により測定された上流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量との積Aを求めると共に、溶解成分濃度測定手段により測定された下流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と流量測定手段により測定された下流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量との積Bを求める。
【0027】
尚、上記積Aと積Bとはそれぞれ上流段側の膜モジュールバンクの膜モジュールの負荷量と下流段側の膜モジュールバンクの膜モジュールの負荷量の指標となる。ここで、上流段側の膜モジュールバンクの膜モジュールの負荷量と下流段側の膜モジュールバンクの膜モジュールの負荷量とが均等である場合、上記積Aと積Bとの比がある定まった所定値を示すことを発明者は見い出した。
【0028】
従って、予め上流段側および下流段側の膜モジュールバンクの負荷量が均等となる上記積Aと積Bとの比の所定値(以下、所定積比とも言う)を求めておき、上流段側の膜モジュールバンクから下流段側の膜モジュールバンクに供給される上流段側の濃縮水の流量又は下流段側の膜モジュールバンクから排出される透過水の流量を流量変化手段で変化させることにより、上記積Aと積Bとを所定積比に保つことができる。これにより、上流段側の膜モジュールの負荷量と下流段側の膜モジュールの負荷量とをほぼ均等にすることができる。
【0029】
これにより、上流段側の膜モジュールの膜の汚染と下流段側の膜モジュールの膜の汚染とがほぼ均等に進行し、膜を薬液洗浄する際の最適な洗浄時期を容易に判断することができる。
【0030】
本第5発明における膜処理装置は、溶解成分濃度測定手段と流量測定手段とが備えられ、
溶解成分濃度測定手段により測定された上流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と流量測定手段により測定された上流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量との積を積Aとし、溶解成分濃度測定手段により測定された下流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と流量測定手段により測定された下流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量との積を積Bとし、
積Aと積Bとが所定積比に保たれるように、流量変化手段によって上流段側の濃縮水の流量を変化させる制御手段が備えられているものである。
【0031】
これによると、制御手段が、流量変化手段によって、上流段側の膜モジュールバンクから下流段側の膜モジュールバンクに供給される上流段側の濃縮水の流量を変化させ、積Aと積Bとを所定積比に保つ。これにより、上流段側の膜モジュールの負荷量と下流段側の膜モジュールの負荷量とをほぼ均等にすることができる。
【0032】
本第6発明における膜処理装置は、制御手段は、積Aと積Bとの比を、上流段側の膜モジュールバンクが有する分離膜の膜面積と下流段側の膜モジュールバンクが有する分離膜の膜面積との比に略等しくなるように、流量変化手段によって上流段側の濃縮水の流量を変化させるものである。
【0033】
本第7発明における膜処理装置は、溶解成分濃度測定手段が備えられ、
溶解成分濃度測定手段により夫々測定された上流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と下流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度とが所定濃度比に保たれるように、流量変化手段によって上流段側の膜モジュールバンクの濃縮水の流量を変化させる制御手段が備えられているものである。
【0034】
これによると、上流段側の膜モジュールの負荷量と下流段側の膜モジュールの負荷量とが均等である場合、上述したように積Aと積Bとが上記所定積比となり、この状態では、上流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と下流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度との比が所定値(以下、所定濃度比とも言う)になる。
【0035】
したがって、予め負荷量が均等である場合の所定濃度比を求めておき、制御手段が、流量変化手段によって、上流段側の膜モジュールバンクから下流段側の膜モジュールバンクに供給される上流段側の濃縮水の流量を変化させ、上流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と下流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度とを所定濃度比に保つ。これにより、上流段側の膜モジュールの負荷量と下流段側の膜モジュールの負荷量とをほぼ均等にすることができる。
【0036】
本第8発明における膜処理装置は、流量測定手段が備えられ、
流量測定手段により夫々測定された上流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量と下流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量とが所定流量比に保たれるように、流量変化手段によって上流段側の膜モジュールバンクの濃縮水の流量を変化させる制御手段が備えられているものである。
【0037】
これによると、上流段側の膜モジュールの負荷量と下流段側の膜モジュールの負荷量とが均等である場合、上述したように積Aと積Bとが上記所定積比となり、この状態では、上流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量と下流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量との比が所定値(以下、所定流量比とも言う)になる。
【0038】
したがって、予め負荷量が均等である場合の所定流量比を求めておき、制御手段が、流量変化手段によって、上流段側の膜モジュールバンクから下流段側の膜モジュールバンクに供給される上流段側の濃縮水の流量を変化させ、上流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量と下流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量とを所定流量比に保つ。これにより、上流段側の膜モジュールの負荷量と下流段側の膜モジュールの負荷量とをほぼ均等にすることができる。
【0039】
本第9発明における膜処理装置は、溶解成分濃度測定手段は電気伝導度計であるものである。
これによると、電気伝導度計で測定された透過水の電気伝導度から透過水の溶解成分濃度を求めることができる。
【発明の効果】
【0040】
以上のように本発明によると、膜モジュールバンク毎の負荷量をほぼ均等にすることができるため、上流段側の膜モジュールの膜の汚染と下流段側の膜モジュールの膜の汚染とがほぼ均等に進行し、これにより、膜を薬液洗浄する際の最適な洗浄時期を容易に判断することができるとともに、薬液洗浄の頻度を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施の形態における膜処理装置の構成を示す模式図である。
【図2】同、膜処理装置の制御系のブロック図である。
【図3】(a)は、同、膜処理装置の第1段の膜モジュールバンクにおける運転日数と、透過水の電気伝導度および流量と、これら電気伝導度と流量との積の関係を示すグラフであり、(b)は、同、膜処理装置の第2段の膜モジュールバンクにおける運転日数と、透過水の電気伝導度および流量と、これら電気伝導度と流量との積の関係を示すグラフである。
【図4】(a)は、同、膜処理装置の運転日数と積比との関係を示すグラフであり、(b)は、同、膜処理装置の運転日数と標準化透過流量初期比との関係を示すグラフである。
【図5】(a)は参考例として挙げた膜処理装置の第1段の膜モジュールバンクにおける運転日数と、透過水の電気伝導度および流量と、これら電気伝導度と流量との積の関係を示すグラフであり、(b)は参考例として挙げた膜処理装置の第2段の膜モジュールバンクにおける運転日数と、透過水の電気伝導度および流量と、これら電気伝導度と流量との積の関係を示すグラフである。
【図6】(a)は参考例として挙げた膜処理装置の運転日数と積比との関係を示すグラフであり、(b)は参考例として挙げた膜処理装置の運転日数と標準化透過流量初期比との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第2の実施の形態における膜処理装置の構成を示す模式図である。
【図8】本発明の第3および第4の実施の形態における膜処理装置の運転日数と電気伝導度比および流量比との関係を示すグラフである。
【図9】参考例として挙げた膜処理装置の運転日数と電気伝導度比および流量比との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の第5の実施の形態における膜処理装置の構成を示す模式図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態における膜処理装置の構成を示す模式図である。
【図12】従来の膜処理装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1,図2に示すように、1は上流側から下流側にわたり第1段および第2段の膜モジュールバンク2,3を備えた膜処理装置である。第1段の膜モジュールバンク2(上流段側の膜モジュールバンクの一例)は並列に配置された三台(複数台の一例)の膜モジュール5を有し、第2段の膜モジュールバンク3(下流段側の膜モジュールバンクの一例)は並列に配置された二台(複数台の一例)の膜モジュール5を有し、これら膜モジュール5はクリスマスツリー型に設置されている。
【0043】
各膜モジュール5は、構成や大きさが同一であり、耐圧容器6と、耐圧容器6内に収納された膜エレメント7と、原水を耐圧容器6内に導入する原水供給口8と、膜エレメント7を透過した透過水を耐圧容器6の外部に排出する透過水回収口9と、原水から透過水を除いた後の濃縮水を耐圧容器6の外部に排出する濃縮水排出口10とを備えている。膜エレメント7は逆浸透膜又はナノ濾過膜からなる。
【0044】
第1段の膜モジュールバンク2の各膜モジュール5の原水供給口8には原水供給管路12が接続されている。原水供給管路12は、主管路12aと、主管路12aから分岐して各原水供給口8に接続された複数の分岐管路12bとを有している。主管路12aには、原水の圧力を昇圧して供給するポンプ11が設けられている。
【0045】
第1段の膜モジュールバンク2の各膜モジュール5の透過水回収口9には透過水回収管路13が接続されている。透過水回収管路13は、主管路13aと、各透過水回収口9に接続されて主管路13aに合流する複数の合流管路13bとを有している。
【0046】
第1段の膜モジュールバンク2の各膜モジュール5の濃縮水排出口10には濃縮水排出管路14が接続されている。濃縮水排出管路14は、第1段の膜モジュールバンク2の各膜モジュール5の濃縮水排出口10から排出された濃縮水を原水として、第2段の膜モジュールバンク3の各膜モジュール5の原水供給口8に供給するものである。
【0047】
濃縮水排出管路14は、主管路14aと、第1段の膜モジュールバンク2の各膜モジュール5の濃縮水排出口10に接続されて主管路14aに合流する複数の合流管路14bと、主管路14aから分岐して第2段の膜モジュールバンク3の各膜モジュール5の原水供給口8に接続された複数の分岐管路14cとを有している。
【0048】
濃縮水排出管路14の主管路14aには、第1段の膜モジュールバンク2から第2段の膜モジュールバンク3に供給される第1段側の濃縮水(上流段側の濃縮水の一例)の流量を変化させることが可能な流量調整弁16(流量変化手段の一例)が設けられている。
【0049】
第2段の膜モジュールバンク3の各膜モジュール5の透過水回収口9にも、第1段の膜モジュールバンク2と同様に、透過水回収管路13が接続されている。
第2段の膜モジュールバンク3の各膜モジュール5の濃縮水排出口10にも、濃縮水排出管路14が接続されている。濃縮水排出管路14は、主管路14aと、第2段の膜モジュールバンク3の各膜モジュール5の濃縮水排出口10に接続されて主管路14aに合流する複数の合流管路14bとを有している。尚、第2段の膜モジュールバンク3の濃縮水排出管路14の主管路14aには透過水流量調整弁17が設けられている。
【0050】
第1段の膜モジュールバンク2の透過水回収管路13の主管路13aには、第1段の膜モジュールバンク2の透過水の溶解成分濃度(透過水濃度)を測定する第1段の電気伝導度計19(溶解成分濃度測定手段の一例)と、透過水の流量を測定する第1段の流量計20(流量測定手段の一例)とが接続されている。
【0051】
同様に、第2段の膜モジュールバンク3の透過水回収管路13の主管路13aには、第2段の膜モジュールバンク2の透過水の溶解成分濃度(透過水濃度)を測定する第2段の電気伝導度計21(溶解成分濃度測定手段の一例)と、透過水の流量を測定する第2段の流量計22(流量測定手段の一例)とが接続されている。
【0052】
尚、透過水の溶解成分濃度は、予め求められた溶解成分濃度と電気伝導度の間の相関図に基いて、各々の電気伝導度計19,21で測定された透過水の電気伝導度から求めることができる。溶解成分が塩等の電気伝導性を示すものであれば、溶解成分濃度と電気伝導度とはほぼ比例する関係にあるので、相対比較の対象として溶解成分濃度を用いる場合、電気伝導度の測定値をそのまま溶解成分濃度として使用しても問題はない。
【0053】
また、第1段の流量計20で測定された透過水の流量を第1段の膜モジュールバンク2の膜モジュール5の台数(図1では三台)で割ることにより、第1段の膜モジュールバンク2における膜モジュール5一台当りの透過水の流量が求められる。同様に、第2段の流量計22で測定された透過水の流量を第2段の膜モジュールバンク2の膜モジュール5の台数(図1では二台)で割ることにより、第2段の膜モジュールバンク2における膜モジュール5一台当りの透過水の流量が求められる。
【0054】
流量調整弁16の開度は、電気伝導度計19,21で測定された電気伝導度と流量計20,22で測定された流量とに基いて、制御手段18により制御される。制御手段18が流量調整弁16の開度を増大させることにより、濃縮水の流量が増え、開度を減少させることにより、濃縮水の流量が減る。
【0055】
以下、上記構成における作用を説明する。
原水は、原水供給管路12から第1段の膜モジュールバンク2の各々の膜モジュール5に供給され、膜エレメント7の逆浸透膜を透過した透過水と、逆浸透膜を透過しない濃縮水とに分離される。
【0056】
このうち、透過水は透過水回収口9から第1段の膜モジュールバンク2の透過水回収管路13を通って外部に回収される。この際、第1段の電気伝導度計19により透過水の電気伝導度E1が測定される。また、第1段の流量計20により、第1段の膜モジュールバンク2における膜モジュール5一台当りの透過水の流量F1が求められる。
【0057】
また、濃縮水は、濃縮水排出口10から第1段の膜モジュールバンク2の膜モジュール5の外部に排出された後、濃縮水排出管路14を流れ、原水として、第2段の膜モジュールバンク3の膜モジュール5の原水供給口8に供給され、膜モジュール5内で透過水と濃縮水とに分離される。
【0058】
このうち、透過水は透過水回収口9から第2段の膜モジュールバンク3の透過水回収管路13を通って外部に回収される。この際、第2段の電気伝導度計21により透過水の電気伝導度E2が測定される。また、第2段の流量計22により、第2段の膜モジュールバンク3における膜モジュール5一台当りの透過水の流量F2が求められる。
【0059】
また、濃縮水は、濃縮水排出口10から濃縮水排出管路14を流れて、第2段の膜モジュールバンク3の膜モジュール5の外部に排出される。
次に、膜処理装置1の運転方法について説明する。
【0060】
制御手段18は、第1段の膜モジュールバンク2において測定された透過水の電気伝導度E1(すなわち溶解成分濃度に相当)と膜モジュール5一台当りの透過水の流量F1との積A(A=E1×F1)を求めると共に、第2段の膜モジュールバンク3において測定された透過水の電気伝導度E2(すなわち溶解成分濃度に相当)と膜モジュール5一台当りの透過水の流量F2との積B(B=E2×F2)を求める。
【0061】
積Aは第1段の膜モジュールバンク2の膜モジュール5の負荷量の指標となり、積Bは第2段の膜モジュールバンク3の膜モジュール5の負荷量の指標となる。ここで、積Aと積Bとの比R(すなわちR=A/B)が1(所定積比の一例)になるように流量調整弁16の開度を調整して膜処理装置1を運転すると、実際に、膜の汚れ方が均等になることを発明者は見い出した。
【0062】
このように、負荷量が均等になる場合の比Rを予め所定値(=1)として求めておき、これに基いて、制御手段18が、流量調整弁16の開度を調整して、第1段の膜モジュールバンク2から濃縮水排出管路14を通って第2段の膜モジュールバンク3に供給される濃縮水の流量を調整することにより、積Aと積Bとの比Rを1に保つことができる。これにより、第1段の膜モジュールバンク2の各膜モジュール5の負荷量と第2段の膜モジュールバンク3の各膜モジュール5の負荷量とをほぼ均等にすることができる。
【0063】
具体的には、比Rが1より小さくなった場合、制御手段18は、流量調整弁16の開度を小さくして、濃縮水排出管路14から第2段の膜モジュールバンク3に供給される濃縮水の流量を減らす。これにより、第1段の膜モジュールバンク2における膜モジュール5一台当りの透過水の流量F1が増加すると共に第2段の膜モジュールバンク3における膜モジュール5一台当りの透過水の流量F2が減少し、積Aが大きくなると共に積Bが小さくなり、比Rが増大する。
【0064】
反対に、比Rが1より大きくなった場合、制御手段18は、流量調整弁16の開度を大きくして、濃縮水排出管路14から第2段の膜モジュールバンク3に供給される濃縮水の流量を増やす。これにより、流量F1が減少すると共に流量F2が増加し、積Aが小さくなると共に積Bが大きくなり、比Rが減少する。
【0065】
このように制御手段18が流量調整弁16の開度を変えることで、比Rを1に保つことができる。
図3,図4は上記膜処理装置1の運転方法の一例を示すグラフであり、図3(a)は、第1段の膜モジュールバンク2において測定された透過水の電気伝導度E1と、膜モジュール5一台当りの透過水の流量F1と、両者の積Aと、膜処理装置1の運転日数との関係を示すグラフである。また、図3(b)は、第2段の膜モジュールバンク3において測定された透過水の電気伝導度E2と、膜モジュール5一台当りの透過水の流量F2と、両者の積Bと、膜処理装置1の運転日数との関係を示すグラフである。
【0066】
尚、電気伝導度E1,E2の単位はμS/cmであり、流量F1,F2の単位はm/日/Moであり、Moは膜モジュール5一台当りを意味している。
さらに、図4(a)は、積Aと積Bとの比Rと、膜処理装置1の運転日数との関係を示すグラフである。
【0067】
また、図4(b)は、膜処理装置1の運転日数と標準化透過流量初期比との関係を示すグラフである。標準化透過流量初期比とは、膜処理装置1の運転日数が0日(すなわち運転開始時)における各膜モジュール5の標準化透過流量を1としたときの、各運転日数に対する各膜モジュール5の標準化透過流量の値を示しており、運転日数が経過するほど、各膜モジュール5の膜面の汚染(目詰まり)が進行するため、標準化透過流量初期比が低下していく。
【0068】
尚、標準化透過流量とは、所定濃度の原水、所定の原水温度、所定の原水供給圧力のもとでの透過流量を示すものである。逆浸透膜の透過流量は原水の組成や供給圧力又は水温等に依存して変化するため、通常、ファウリングや劣化の度合いを評価するには、一定の条件下で透過流量を測定するか、或は、これらの因子の影響を除く補正を行う必要がある。
【0069】
図3(a)では、第1段の膜モジュールバンク2における電気伝導度E1と透過水の流量F1との積Aが約1000となり、図3(b)では、第2段の膜モジュールバンク2における電気伝導度E2と透過水の流量F2との積Bが約1000となり、積Aと積Bとが等しくなり、これにより、図4(a)に示すように、積Aと積Bとの比Rが1に保たれる。
【0070】
この状態において、図4(b)に示すように、第1段の膜モジュールバンク2における膜モジュール5の標準化透過流量初期比(実線にて表示)と第2段の膜モジュールバンク3における膜モジュール5の標準化透過流量初期比(点線にて表示)とが、運転日数に対して、同じ値で低下している。これは、第1段の膜モジュールバンク2における各膜モジュール5の目詰まりと第2段の膜モジュールバンク3における各膜モジュール5の目詰まりとがほぼ均等に進行しているためであり、これにより、第1段の膜モジュールバンク2の各膜モジュール5の負荷量と第2段の膜モジュールバンク3の各膜モジュール5の負荷量とがほぼ均等に保たれていることが示される。尚、上記図4(b)のグラフでは、実線しか表示されていないが、これは点線が実線に重複しているためである。
【0071】
また、図5,図6は、参考例であり、流量調整弁16が備えられていない場合のグラフである。すなわち、流量調整弁16が備えられていないため、第1段の膜モジュールバンク2から濃縮水排出管路14を通って第2段の膜モジュールバンク3に供給される濃縮水の流量を調整することができず、したがって、図5(a)では、第1段の膜モジュールバンク2における電気伝導度E1と透過水の流量F1との積Aが約750から約800となり、図5(b)では、第2段の膜モジュールバンク2における電気伝導度E2と透過水の流量F2との積Bが約1200から約1250となり、積Bが積Aよりも大きくなる。これは、第1段の膜モジュールバンク2で得られた濃縮水を、流量調整弁16を介さずに、原水として第2段の膜モジュールバンク3に供給しているため、第2段の膜モジュールバンク2における透過水の流量F2が大きくなるためである。
【0072】
このように、積Bが積Aよりも大きくなるため、図6(a)に示すように積Aと積Bとの比Rが0.6〜0.65となり、図6(b)に示すように、運転日数が増えるに従って、第2段の膜モジュールバンク3における膜モジュール5の標準化透過流量初期比(点線にて表示)が第1段の膜モジュールバンク2における膜モジュール5の標準化透過流量初期比(実線にて表示)よりも低下する。これは、第2段の膜モジュールバンク3における各膜モジュール5の汚染(目詰まり)が、第1段の膜モジュールバンク2における各膜モジュール5の汚染(目詰まり)に比べて、より進行しているためであり、これによって、第2段の膜モジュールバンク3の各膜モジュール5の負荷量が第1段の膜モジュールバンク2の各膜モジュール5の負荷量よりも大きく、両者の負荷量が不均等であることが示される。
【0073】
(第2の実施の形態)
先述した第1の実施の形態では、図1に示すように、第1段の膜モジュールバンク2の透過水の電気伝導度を第1段の電気伝導度計19で自動的に測定し、第2段の膜モジュールバンク3の透過水の電気伝導度を第2段の電気伝導度計21で自動的に測定し、流量調整弁16の開度が制御手段18によって自動的に調整されるが、第2の実施の形態では、図7に示すように、第1段および第2段の電気伝導度計19,21を設けず、第1段および第2段の膜モジュールバンク2,3の透過水の電気伝導度を、作業者が夫々手動で定期的に測定し、比Rが1になるように作業者が流量調整弁16を手動で操作する。
【0074】
(第3の実施の形態)
第1段の膜モジュールバンク2の各膜モジュール5の負荷量と第2段の膜モジュールバンク3の各膜モジュール5の負荷量とが均等である場合、第1の実施の形態にて説明したように、積Aと積Bとの比Rが1となり、この状態では、第1段の膜モジュールバンク2の透過水の電気伝導度E1(すなわち溶解成分濃度)と第2段の膜モジュールバンク3の透過水の電気伝導度E2(すなわち溶解成分濃度)との電気伝導度比ER(すなわちER=E1/E2であり、濃度比に相当)が所定電気伝導度比(所定濃度比に相当)になる。
【0075】
このようなことに基き、第3の実施の形態では、予め比Rが1となるときの所定電気伝導度比を求めておき、制御手段18は、流量調整弁16の開度を調整することによって、第1段の膜モジュールバンク2から第2段の膜モジュールバンク3に供給される濃縮水の流量を変化させ、電気伝導度比ERを所定電気伝導度比に保つ。これにより、第1段の膜モジュールバンク2の各膜モジュール5の負荷量と第2段の膜モジュールバンク3の各膜モジュール5の負荷量とをほぼ均等にすることができる。
【0076】
図8の実線は、先述した第1の実施の形態において比R=1となるように膜処理装置1を運転した場合の電気伝導度比ERの運転日数による変化を示しており、電気伝導度比ERが約0.7の所定比で一定に保たれていることがわかる。すなわち、電気伝導度比ERを所定電気伝導度比(例えば0.7)で一定に保つことで、負荷量を均等にすることが可能となることがわかる。
【0077】
尚、図9の実線は、参考例であって、流量調整弁16が備えられていない場合のグラフであり、膜処理装置1の運転日数と電気伝導度比ERとの関係を示しており、電気伝導度比ERが変化することがわかる。
【0078】
(第4の実施の形態)
第1段の膜モジュールバンク2の各膜モジュール5の負荷量と第2段の膜モジュールバンク3の各膜モジュール5の負荷量とが均等である場合、第1の実施の形態にて説明したように、積Aと積Bとの比Rが1となり、この状態では、第1段の膜モジュールバンク2の各膜モジュール5一台当りの透過水の流量F1と第2段の膜モジュールバンク3の各膜モジュール5一台当りの透過水の流量F2との流量比FR(すなわちFR=F1/F2)が所定流量比になる。
【0079】
このようなことに基き、第4の実施の形態では、予め比Rが1となるときの所定流量比を求めておき、制御手段18は、流量調整弁16の開度を調整することによって、第1段の膜モジュールバンク2から第2段の膜モジュールバンク3に供給される濃縮水の流量を変化させ、流量比FRを所定流量比に保つ。これにより、第1段の膜モジュールバンク2の各膜モジュール5の負荷量と第2段の膜モジュールバンク3の各膜モジュール5の負荷量とをほぼ均等にすることができる。
【0080】
図8の点線は、先述した第1の実施の形態において比R=1となるように膜処理装置1を運転した場合の流量比FRの運転日数による変化を示しており、流量比FRが約1.4の所定比で一定に保たれていることがわかる。すなわち、流量比FRを所定流量比(例えば1.4)で一定に保つことで、負荷量を均等にすることが可能となることがわかる。
【0081】
尚、図9の点線は、参考例であって、流量調整弁16が備えられていない場合のグラフであり、膜処理装置1の運転日数と流量比FRとの関係を示しており、流量比FRが変化することがわかる。
【0082】
(第5の実施の形態)
先述した第1の実施の形態では、図1に示すように、第1段の膜モジュールバンク2における透過水の流量を測定する流量測定手段の一例として、第1段の流量計20を用い、第2段の膜モジュールバンク3における透過水の流量を測定する流量測定手段の一例として、第2段の流量計22を用いているが、第5の実施の形態では、図10に示すように、第1段および第2段の流量計20,22の代りに、第1段および第2段の圧力計31,32を流量測定手段の別の例として設けている。
【0083】
すなわち、第1段の圧力計31は原水供給管路12の主管路12aに接続され、第2段の圧力計32は濃縮水排出管路14の主管路14aに接続されている。
これによると、予め、第1段の膜モジュールバンク2の膜モジュール5の負荷量と第2段の膜モジュールバンク3の膜モジュール5の負荷量とが等しくなる場合の第1段の圧力計31の測定値と第2段の圧力計32の測定値とを求めておく。これ以降、膜処理装置1の運転において、上記両測定値の比を保持するように流量調整弁16の開度を調節して、第1段の膜モジュールバンク2から濃縮水排出管路14を通って第2段の膜モジュールバンク3に供給される濃縮水の流量を調整すればよい。
【0084】
(第6の実施の形態)
上記第1〜第5の実施の形態では、流量調整弁16を濃縮水排出管路14に設けたが、第6の実施の形態では、図11に示すように、流量調整弁16を第2段の膜モジュールバンク3の透過水回収管路13の主管路13aに設けている。尚、この流量調整弁16は第2段の膜モジュールバンク3から排出される透過水の流量を変化させる流量変化手段の一例である。
【0085】
以下、上記構成における作用を説明する。
制御手段18は、第1段の膜モジュールバンク2において測定された透過水の電気伝導度E1と膜モジュール5一台当りの透過水の流量F1との積Aを求めると共に、第2段の膜モジュールバンク3において測定された透過水の電気伝導度E2と膜モジュール5一台当りの透過水の流量F2との積Bを求め、流量調整弁16の開度を調整して、第2段の膜モジュールバンク3の各膜モジュール5から透過水回収管路13に排出される透過水の流量を調整することにより、積Aと積Bとの比R(R=A/B)を1に保つことができる。これによって、第1段の膜モジュールバンク2の各膜モジュール5の負荷量と第2段の膜モジュールバンク3の各膜モジュール5の負荷量とをほぼ均等にすることができる。
【0086】
具体的には、比Rが1より小さくなった場合、制御手段18は、流量調整弁16の開度を小さくして、第2段の膜モジュールバンク3の各膜モジュール5から透過水回収管路13に排出される透過水の流量を減らす。これにより、第1段の膜モジュールバンク2における膜モジュール5一台当りの透過水の流量F1が増加すると共に第2段の膜モジュールバンク3における膜モジュール5一台当りの透過水の流量F2が減少し、積Aが大きくなると共に積Bが小さくなり、比Rが増大する。
【0087】
反対に、比Rが1より大きくなった場合、制御手段18は、流量調整弁16の開度を大きくして、第2段の膜モジュールバンク3の各膜モジュール5から透過水回収管路13に排出される透過水の流量を増やす。これにより、流量F1が減少すると共に流量F2が増加し、積Aが小さくなると共に積Bが大きくなり、比Rが減少する。
【0088】
このように制御手段18が流量調整弁16の開度を変えることで、比Rを1に保つことができる。
上記第1および第6の実施の形態では、所定積比の一例として、比Rを1に保っているが、厳密に1のみに限定されるものではなく、各膜モジュールバンク2,3毎の負荷量を同じにしても、原水の溶解成分濃度やクロスフロー強度或は膜処理装置1の透過水回収率等によって膜の汚染の程度が均等にならない場合もあり、このため、略1の範囲で実際の膜の汚染の程度が均等になる比Rを求める必要がある。この場合、略1とは0.8〜1.2程度の範囲が好適とされる。
【0089】
(第7の実施の形態)
第7の実施の形態における膜処理装置1の構成は、図1に示した第1の実施の形態と同様である。また、第1〜第6の実施の形態では、第1段および第2段の流量計20,22で夫々膜モジュール5一台当りの透過水の流量F1,F2を求めているが、第7の実施の形態では、第1段の流量計20で第1段の膜モジュールバンク2の全膜モジュール5(すなわち図1では三台分の膜モジュール5)から排出される透過水の総流量F3が測定され、第2段の流量計22で第2段の膜モジュールバンク3の全膜モジュール5(すなわち図1では二台分の膜モジュール5)から排出される透過水の総流量F4が測定される。
【0090】
また、第1段の膜モジュールバンク2が有する分離膜の総膜面積S1(すなわち図1では三台分の膜モジュール5の膜エレメント7の総膜面積)と第2段の膜モジュールバンク3が有する分離膜の総膜面積S2(すなわち図1では二台分の膜モジュール5の膜エレメント7の総膜面積)とを所定面積比SR(SR=S1/S2)とする。
【0091】
制御手段18は、第1段の膜モジュールバンク2において測定された透過水の電気伝導度E1と透過水の総流量F3との積J(J=E1×F3)を求めると共に、第2段の膜モジュールバンク3において測定された透過水の電気伝導度E2と透過水の総流量F4との積K(K=E2×F4)を求め、積Jと積Kとの比L(L=J/K)を求め、流量調整弁16の開度を調整して、第1段の膜モジュールバンク2から濃縮水排出管路14を通って第2段の膜モジュールバンク3に供給される濃縮水の流量を調整することにより、上記積比Lを上記所定面積比SRに等しく(又は略等しく)することができる。例えば、所定面積比SRが1.5の場合、上記比Lが1.5となるように流量調整弁16の開度を調整する。
【0092】
これにより、第1段の膜モジュールバンク2の各膜モジュール5の負荷量と第2段の膜モジュールバンク3の各膜モジュール5の負荷量とをほぼ均等にすることができる。
尚、第7の実施の形態における膜処理装置1の構成は、図1に示した第1の実施の形態と同様であるが、図11に示した第6の実施の形態と同様であってもよい。
また、全ての膜モジュールバンク2,3で同一の膜モジュール5が使用されている場合には、上記比Lを各膜モジュールバンク2,3に備えられた膜モジュール5の台数の比に等しくすればよい。
【0093】
上記各実施の形態では、膜処理装置1は第1段および第2段の膜モジュールバンク2,3を備えているが、第3段以上の膜モジュールバンクを備えてもよい。
また、第1段の膜モジュールバンク2は三台の膜モジュール5を有しているが、二台或は四台以上の膜モジュール5を有してもよい。また、第2段の膜モジュールバンク2は二台の膜モジュール5を有しているが、二台に限定されるものではなく、第1段の膜モジュールバンク2の膜モジュール5の台数よりも少ない台数か或は第1段の膜モジュールバンク2の膜モジュール5の台数と等しい台数の膜モジュール5を有していればよい。
【符号の説明】
【0094】
1 膜処理装置
2 第1段の膜モジュールバンク(上流段側の膜モジュールバンク)
3 第2段の膜モジュールバンク(下流段側の膜モジュールバンク)
5 膜モジュール
16 流量調整弁(流量変化手段)
18 制御手段
19,21 電気伝導度計(溶解成分濃度測定手段)
20,22 流量計(流量測定手段)
31,32 圧力計(流量測定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から下流側にわたり複数段の膜モジュールバンクが備えられ、
夫々の膜モジュールバンクは原水から逆浸透膜又はナノ濾過膜を透過した透過水を得る1以上の膜モジュールを有し、
下流段側の膜モジュールバンクは上流段側の膜モジュールバンクから排出される濃縮水を原水として逆浸透膜又はナノ濾過膜を透過した透過水を得る膜処理装置の運転方法であって、
上流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と下流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度との比、又は、上流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量と下流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量との比、或は、上流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と流量の積と下流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と流量の積との比のいずれかの比が所定値に保たれるように、上流段側の膜モジュールバンクから下流段側の膜モジュールバンクに供給される上流段側の膜モジュールバンクの濃縮水の流量又は下流段側の膜モジュールバンクから排出される透過水の流量を変化させることを特徴とする膜処理装置の運転方法。
【請求項2】
溶解成分濃度を電気伝導度の測定により求めることを特徴とする請求項1記載の膜処理装置の運転方法。
【請求項3】
上流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と流量の積と下流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と流量の積との比が、上流段側の膜モジュールバンクが有する分離膜の膜面積と下流段側の膜モジュールバンクが有する分離膜の膜面積との比に略等しいことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の膜処理装置の運転方法。
【請求項4】
上流側から下流側にわたり複数段の膜モジュールバンクが備えられ、
夫々の膜モジュールバンクは原水から逆浸透膜又はナノ濾過膜を透過した透過水を得る1以上の膜モジュールを有し、
下流段側の膜モジュールバンクは上流段側の膜モジュールバンクから排出される濃縮水を原水として逆浸透膜又はナノ濾過膜を透過した透過水を得る膜処理装置であって、
上流段側の膜モジュールバンクから下流段側の膜モジュールバンクに供給される上流段側の濃縮水の流量又は下流段側の膜モジュールバンクから排出される透過水の流量を変化させることが可能な流量変化手段と、
夫々の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度を測定する溶解成分濃度測定手段と夫々の膜モジュールバンクの透過水の流量を測定する流量測定手段との、少なくともいずれかの測定手段が備えられていることを特徴とする膜処理装置。
【請求項5】
溶解成分濃度測定手段と流量測定手段とが備えられ、
溶解成分濃度測定手段により測定された上流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と流量測定手段により測定された上流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量との積を積Aとし、溶解成分濃度測定手段により測定された下流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と流量測定手段により測定された下流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量との積を積Bとし、
積Aと積Bとが所定積比に保たれるように、流量変化手段によって上流段側の濃縮水の流量を変化させる制御手段が備えられていることを特徴とする請求項4に記載の膜処理装置。
【請求項6】
制御手段は、積Aと積Bとの比を、上流段側の膜モジュールバンクが有する分離膜の膜面積と下流段側の膜モジュールバンクが有する分離膜の膜面積との比に略等しくなるように、流量変化手段によって上流段側の濃縮水の流量を変化させることを特徴とする請求項5に記載の膜処理装置。
【請求項7】
溶解成分濃度測定手段が備えられ、
溶解成分濃度測定手段により夫々測定された上流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度と下流段側の膜モジュールバンクの透過水の溶解成分濃度とが所定濃度比に保たれるように、流量変化手段によって上流段側の膜モジュールバンクの濃縮水の流量を変化させる制御手段が備えられていることを特徴とする請求項4に記載の膜処理装置。
【請求項8】
流量測定手段が備えられ、
流量測定手段により夫々測定された上流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量と下流段側の膜モジュールバンクの透過水の流量とが所定流量比に保たれるように、流量変化手段によって上流段側の膜モジュールバンクの濃縮水の流量を変化させる制御手段が備えられていることを特徴とする請求項4に記載の膜処理装置。
【請求項9】
溶解成分濃度測定手段は電気伝導度計であることを特徴とする請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の膜処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−22544(P2013−22544A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161482(P2011−161482)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】