説明

膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法および処理装置

【課題】 大気空気の工業的利用の際に必要な、除湿、除二酸化炭素を効率的に行うためのゼオライト分離膜を利用した膜分離による大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法、および処理装置を提供する。
【解決手段】 膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法は、水(水蒸気)および二酸化炭素を含む大気空気を、除湿用分離膜3を具備する除湿ゾーン1に導入し、膜透過により空気中の水分を選択的に除去するとともに、膜の非透過側に、二酸化炭素を含む乾燥空気を形成する工程と、引き続き、二酸化炭素を含む乾燥空気を、多孔質基体上にゼオライト膜が形成された乾燥状態のゼオライト分離膜4を具備する除二酸化炭素ゾーン2に導入し、膜透過により空気中の二酸化炭素を選択的に除去するとともに、膜の非透過側に、水(水蒸気)および二酸化炭素が低減した乾燥浄化空気を形成する工程とよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気空気の工業的利用の際に必要な、除湿、除二酸化炭素を効率的に行うためのゼオライト分離膜を利用した膜分離による大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法および処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気は、例えば酸素ガス等のガス製造、空気圧機器、電池の製造など、その工業的用途は多岐にわたる。
【0003】
しかし、大気空気を工業用途として利用可能とするためには、大気空気中に含まれる、例えば水(水蒸気)および二酸化炭素(CO)などの不純物の全部または一部を前処理により除去する必要がある。
【0004】
従来、大気空気の除湿のシステムとしては、膜式プロセスが実用化されている。これは、例えば下記の特許文献1に記載のように、高分子の中空糸膜を利用し、空気中から水蒸気のみを選択的に膜透過除去することによって、除湿を行うシステムで、膜式エアドライヤーとして知られている。
【0005】
膜式エアドライヤーは、1990年代中ごろに市場形成されて以降、吸着式に対してランニングコストやメンテナンス性に優れることから、着実に市場を拡大してきている。
【0006】
一方で、これら高分子中空糸膜を利用した膜式エアドライヤーでは、除二酸化炭素までは行われないため、特に二酸化炭素の存在が製品に悪影響を与える電池の製造・利用などの分野に関しては、二酸化炭素除去のため、膜式エアドライヤーの後工程で、吸着式ガス除去を行う必要があった。
【0007】
大気空気の除二酸化炭素(除CO)を行うシステムとしては、ゼオライトなどの吸着剤を利用した吸着式である温度スイング吸着(TSA)プロセス、または圧力スイング吸着(PSA)プロセスなどが利用されている。
【0008】
例えば図6に示すように、従来の有機高分子中空糸膜モジュールを利用した膜式エアドライヤーによる除湿処理では、除二酸化炭素までは行われないため、大気空気の除湿処理後に、ゼオライトなどの吸着剤を利用した除二酸化炭素(除CO)処理を実施すると、吸着剤の再生のための昇温、昇圧を頻繁に繰り返す必要があり、ランニングコストが非常に高くつくという難点があった。
【0009】
なお、除二酸化炭素を行うための技術としては、下記の特許文献2において、ゼオライト分離膜、ゼオライト分離膜の製造方法、及びゼオライト分離膜によるガス混合体の分離方法が提案されており、多孔質基材の表面に形成したY型ゼオライト分離膜により、水の存在下、すなわち、ゼオライト分離膜に水が吸着している状態において、二酸化炭素と窒素とを含むガスの混合体から、二酸化炭素を分離することが提案されている。
【0010】
また、下記の特許文献3に記載のガス分離用ゼオライト膜複合体の製造方法では、DDR型またはY型のガス分離用ゼオライト膜複合体の片側(ゼオライト膜側)に炭酸混合ガスを置き、その反対側(多孔質支持体表面側)の二酸化炭素分圧をゼオライト膜側の二酸化炭素分圧以下にすれば、ガス分離用ゼオライト膜複合体中を二酸化炭素が選択的に透過し、炭酸混合ガス中にある二酸化炭素を多孔質支持体表面側に分離することができること(特許文献3の段落番号[0023]参照)、また前記炭酸混合ガスとして、二酸化炭素を含有しているガスであれば特に限定されず、例えば二酸化炭素と、水素、酸素、窒素、ヘリウム、水(水蒸気)などとの混合ガスが挙げられている(特許文献3の段落番号[0024]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平07−232024号公報
【特許文献2】特開平10−36113号公報
【特許文献3】特開2009−11980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、本発明者らが、上記特許文献に記載のように、多孔質基体上にゼオライト膜を形成したゼオライト分離膜を用いて大気空気の除二酸化炭素を試みたところ、水の存在下、すなわちゼオライト膜に水が吸着している状態においては、二酸化炭素の透過量が小さく、大気空気中の二酸化炭素を低減させる効果は、ほとんど得られないという問題があった。
【0013】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、大気空気の工業的利用の際に必要な、除湿、除二酸化炭素を効率的に行うためのゼオライト分離膜を利用した膜分離による大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法および処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、水(水蒸気)および二酸化炭素を含む大気空気を、除湿用分離膜を具備する除湿ゾーンに導入し、膜透過により空気中の水分を選択的に除去するとともに、膜の非透過側に、二酸化炭素を含む乾燥空気を形成し、引き続き、この二酸化炭素を含む乾燥空気を、多孔質基体上にゼオライト膜が形成された乾燥状態のゼオライト分離膜を具備する除二酸化炭素ゾーンに導入し、膜透過により空気中の二酸化炭素を選択的に除去するとともに、膜の非透過側に、水(水蒸気)および二酸化炭素が低減した乾燥浄化空気を形成することによって、従来の吸着式ガス処理負荷の低減あるいは撤廃により、省エネルギー化によるランニングコストの低減が可能となることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0015】
上記の目的を達成するために、請求項1の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法の発明は、水(水蒸気)および二酸化炭素を含む大気空気を、除湿用分離膜を具備する除湿ゾーンに導入し、膜透過により空気中の水分を選択的に除去するとともに、膜の非透過側に、二酸化炭素を含む乾燥空気を形成する工程と、引き続き、二酸化炭素を含む乾燥空気を、多孔質基体上にゼオライト膜が形成された乾燥状態のゼオライト分離膜を具備する除二酸化炭素ゾーンに導入し、膜透過により空気中の二酸化炭素を選択的に除去するとともに、膜の非透過側に、水(水蒸気)および二酸化炭素が低減した乾燥浄化空気を形成する工程とよりなることを特徴としている。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法であって、除湿ゾーンの除湿用分離膜が、多孔質基体上にゼオライト膜が形成されたゼオライト分離膜、または中空糸高分子分離膜であることを特徴としている。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法であって、除湿ゾーンに加圧した大気空気を導入して、膜の非透過側に、二酸化炭素を含む加圧乾燥空気を形成し、続いて、二酸化炭素を含む加圧乾燥空気を、除二酸化炭素ゾーンに導入することを特徴としている。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法であって、除二酸化炭素ゾーンにおいて、温度100〜400Cに加熱した乾燥ゼオライト分離膜を用いることを特徴としている。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法であって、除二酸化炭素ゾーンにおいてゼオライト分離膜の膜透過により形成した二酸化炭素高含有乾燥空気を、除湿ゾーンの除湿用分離膜の透過側のスイープガスとして用いることを特徴としている。
【0020】
請求項6の発明は、膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理装置であって、除湿用分離膜を具備し、かつ水(水蒸気)および二酸化炭素を含む大気空気が導入されて、膜透過により空気中の水分が選択的に除去されるとともに、膜の非透過側に、二酸化炭素を含む乾燥空気が形成される除湿ゾーンと、管状の多孔質基体上にゼオライト膜が形成された乾燥状態のゼオライト分離膜を具備し、かつ連通路を介して除湿ゾーンからの二酸化炭素を含む乾燥空気が、引き続き導入されて、膜透過により空気中の二酸化炭素が選択的に除去されるとともに、膜の非透過側に、水(水蒸気)および二酸化炭素が低減した乾燥浄化空気が形成される除二酸化炭素ゾーンとを備えていることを特徴としている。
【0021】
請求項7の発明は、請求項6に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理装置であって、除湿ゾーンの除湿用分離膜が、多孔質基体上にゼオライト膜が形成されたゼオライト分離膜、または中空糸高分子分離膜であることを特徴としている。
【0022】
請求項8の発明は、請求項6または7に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理装置であって、除湿ゾーンにコンプレッサーにより加圧された大気空気が導入されて、膜の非透過側に、二酸化炭素を含む加圧乾燥空気が形成され、続いて、除二酸化炭素ゾーンに、二酸化炭素を含む加圧乾燥空気が導入されることを特徴としている。
【0023】
請求項9の発明は、請求項6〜8のうちのいずれか一項に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理装置であって、除二酸化炭素ゾーンに、ゼオライト分離膜を温度100〜400Cに加熱する加熱器が具備せられていることを特徴としている。
【0024】
請求項10の発明は、請求項6〜9のうちのいずれか一項に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理装置であって、除二酸化炭素ゾーンにおいてゼオライト分離膜の膜透過により形成された二酸化炭素高含有乾燥空気が、除湿ゾーンの除湿用分離膜の透過側のスイープガスとして用いられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
請求項1の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法の発明は、水(水蒸気)および二酸化炭素を含む大気空気を、除湿用分離膜を具備する除湿ゾーンに導入し、膜透過により空気中の水分を選択的に除去するとともに、膜の非透過側に、二酸化炭素を含む乾燥空気を形成する工程と、引き続き、二酸化炭素を含む乾燥空気を、多孔質基体上にゼオライト膜が形成された乾燥状態のゼオライト分離膜を具備する除二酸化炭素ゾーンに導入し、膜透過により空気中の二酸化炭素を選択的に除去するとともに、膜の非透過側に、水(水蒸気)および二酸化炭素が低減した乾燥浄化空気を形成する工程とよりなるもので、請求項1に記載の発明によれば、除湿ゾーンおよび除二酸化炭素ゾーンにおいて、大気空気の除湿および除二酸化炭素を連続的に行うことによって、従来の吸着式ガス処理負荷の低減あるいは撤廃により、省エネルギー化によるランニングコストの低減が可能となるという効果を奏する。
【0026】
請求項2の発明は、請求項1に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法であって、除湿ゾーンの除湿用分離膜としては、多孔質基体上にゼオライト膜が形成されたゼオライト分離膜、および中空糸有機高分子分離膜のいずれを用いてもよい。
【0027】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法であって、除湿ゾーンに加圧した大気空気を導入して、膜の非透過側に、二酸化炭素を含む加圧乾燥空気を形成し、続いて、二酸化炭素を含む加圧乾燥空気を、除二酸化炭素ゾーンに導入するもので、請求項3に記載の発明によれば、例えばコンプレッサーにより加圧した大気空気を除湿ゾーンに供給させ、透過の駆動力である膜内外の圧力差を大きくすることによって、除湿ゾーンにおいて空気中の水分の選択的膜透過除去を、および除二酸化炭素ゾーンにおいて二酸化炭素の選択的膜透過除去を、それぞれ促進させることができるという効果を奏する。
【0028】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法であって、除二酸化炭素ゾーンにおいて、温度100〜400Cに加熱した乾燥ゼオライト分離膜を用いるもので、請求項4に記載の発明によれば、ゼオライト分離膜中の残存吸着水分を除去することができて、二酸化炭素の選択的膜透過除去を大幅に促進させることができるという効果を奏する。
【0029】
特に、大気空気の除二酸化炭素ゾーンにおいて、水の存在下、すなわちゼオライト分離膜に水が吸着している状態では、二酸化炭素の透過量が小さく、大気空気中の二酸化炭素を低減させる効果はほとんど得られないが、前段で除湿を行い、後段で加熱乾燥させたゼオライト分離膜を用いることにより、顕著な除二酸化炭素効果が発現し、回収空気中の二酸化炭素濃度を400ppm程度から100ppm以下まで低減することが可能であるという効果を奏する。
【0030】
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法であって、除二酸化炭素ゾーンにおいてゼオライト分離膜の膜透過により形成した二酸化炭素高含有乾燥空気を、除湿ゾーンの除湿用分離膜の透過側のスイープガスとして用いるもので、請求項5に記載の発明によれば、除湿ゾーンの除湿用分離膜の透過側にスイープガスを流すことで、水(水蒸気)および二酸化炭素が低減した乾燥浄化空気の透過速度を上げることができ、大気空気の除湿・除二酸化炭素処理を、非常に効率よく実施することができるという効果を奏する。
【0031】
請求項6の発明は、除湿用分離膜を具備し、かつ水(水蒸気)および二酸化炭素を含む大気空気が導入されて、膜透過により空気中の水分が選択的に除去されるとともに、膜の非透過側に、二酸化炭素を含む乾燥空気が形成される除湿ゾーンと、管状の多孔質基体上にゼオライト膜が形成された乾燥状態のゼオライト分離膜を具備し、かつ連通路を介して除湿ゾーンからの二酸化炭素を含む乾燥空気が、引き続き導入されて、膜透過により空気中の二酸化炭素が選択的に除去されるとともに、膜の非透過側に、水(水蒸気)および二酸化炭素が低減した乾燥浄化空気が形成される除二酸化炭素ゾーンとを備えているもので、請求項6に記載の発明によれば、除湿ゾーンおよび除二酸化炭素ゾーンにおいて、大気空気の除湿および除二酸化炭素を連続的に行うことができて、従来の吸着式ガス処理負荷の低減あるいは撤廃により、省エネルギー化によるランニングコストの低減が可能となるという効果を奏する。
【0032】
請求項7の発明は、請求項6に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理装置であって、除湿ゾーンの除湿用分離膜としては、多孔質基体上にゼオライト膜が形成されたゼオライト分離膜、および中空糸有機高分子分離膜のいずれを用いてもよい。
【0033】
請求項8の発明は、請求項6または7に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理装置であって、除湿ゾーンにコンプレッサーにより加圧された大気空気が導入されて、膜の非透過側に、二酸化炭素を含む加圧乾燥空気が形成され、続いて、除二酸化炭素ゾーンに、二酸化炭素を含む加圧乾燥空気が導入されるもので、請求項8に記載の発明によれば、コンプレッサーにより加圧した大気空気を除湿ゾーンに供給させ、透過の駆動力である膜内外の圧力差を大きくすることによって、除湿ゾーンにおいて空気中の水分の選択的膜透過除去を、および除二酸化炭素ゾーンにおいて二酸化炭素の選択的膜透過除去を、それぞれ促進させることができるという効果を奏する。
【0034】
請求項9の発明は、請求項6〜8のうちのいずれか一項に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理装置であって、除二酸化炭素ゾーンに、ゼオライト分離膜を温度100〜400Cに加熱する加熱器が具備せられているもので、請求項9に記載の発明によれば、ゼオライト分離膜中の残存吸着水分を除去することができて、二酸化炭素の選択的膜透過除去を大幅に促進させることができるという効果を奏する。
【0035】
特に、大気空気の除二酸化炭素ゾーンにおいて、水の存在下、すなわちゼオライト分離膜に水が吸着している状態では、二酸化炭素の透過量が小さく、大気空気中の二酸化炭素を低減させる効果はほとんど得られないが、前段で除湿を行い、後段で加熱乾燥させたゼオライト分離膜を用いることにより、顕著な除二酸化炭素効果が発現し、回収空気中の二酸化炭素濃度を400ppm程度から100ppm以下まで低減することが可能であるという効果を奏する。
【0036】
請求項10の発明は、請求項6〜9のうちのいずれか一項に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理装置であって、除二酸化炭素ゾーンにおいてゼオライト分離膜の膜透過により形成された二酸化炭素高含有乾燥空気が、除湿ゾーンの除湿用分離膜の透過側のスイープガスとして用いられるもので、請求項10に記載の発明によれば、除湿ゾーンの除湿用分離膜の透過側にスイープガスを流すことで、水(水蒸気)および二酸化炭素が低減した乾燥浄化空気の透過速度を上げることができ、大気空気の除湿・除二酸化炭素処理を、非常に効率よく実施することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法を実施する装置のフローシートである。
【図2】本発明による膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法を実施する装置の具体例を示す概略拡大断面図である。
【図3】多孔質アルミナ管上に形成したゼオライト分離膜(FAU型)表面の走査型電子顕微鏡写真像である。
【図4】A型ゼオライト分離膜を用いた大気空気の除湿結果を示す曲線図である。
【図5】ゼオライト分離膜の加熱処理が二酸化炭素除去能に与える影響を示す曲線図である。
【図6】従来法により有機高分子膜モジュールを用いた大気空気の除湿処理後に、吸着剤を用いた除二酸化炭素処理を実施する従来の処理装置のフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
図1は、本発明による膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法を実施する装置の実施形態の一例を示すフローシートである。
【0040】
同図を参照すると、本発明による膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法は、水(水蒸気)および二酸化炭素を含む大気空気を、除湿用分離膜を具備する除湿ゾーンに導入し、膜透過により空気中の水分を選択的に除去するとともに、膜の非透過側に、二酸化炭素を含む乾燥空気を形成する工程と、引き続き、二酸化炭素を含む乾燥空気を、多孔質基体上にゼオライト膜が形成された乾燥状態のゼオライト分離膜を具備する除二酸化炭素ゾーンに導入し、膜透過により空気中の二酸化炭素を選択的に除去するとともに、膜の非透過側に、水(水蒸気)および二酸化炭素が低減した乾燥浄化空気を形成する工程とよりなることを特徴とするものである。
【0041】
除湿ゾーンの除湿用分離膜としては、多孔質基体上にゼオライト膜が形成されたゼオライト分離膜、および中空糸有機高分子分離膜のいずれを用いてもよい。なお、図1は、除湿ゾーンおよび除二酸化炭素ゾーンのいずれにもゼオライト分離膜を用いた場合を例示しており、分離膜全体がゼオライト膜モジュールとして記載されている。
【0042】
本発明において、膜式空気処理におけるゼオライト膜部材として、無機ミクロ多孔質膜の一種であるA型、FAU型、CHA型、ZSM−5型などのゼオライト膜を用いる。望ましくは、除湿ゾーンには、A型ゼオライト分離膜、除二酸化炭素ゾーンには、FAU型ゼオライト分離膜を用いるのが好ましい。
【0043】
ゼオライト膜の形成は、例えば多孔質α−アルミナ管などの多孔質基体の表面に、ゼオライトの粉末(種結晶)の懸濁水溶液を塗布した、所定の温度で乾燥したのち、水熱合成させることによって行われる。ゼオライト膜の形成のための塗布方法は、特に限定されないが、ラビング(擦り込み)法や、浸漬法が好ましい。
【0044】
除湿ゾーンの除湿用分離膜として、中空糸有機高分子分離膜を用いることができ、このような中空糸有機高分子分離膜としては、フッ素系イオン交換膜(商品名フレミオン、サンセップ社製)、ポリイミド膜、および酢酸セルロース膜などが挙げられる。
【0045】
本発明の方法によれば、除湿ゾーンおよび除二酸化炭素ゾーンにおいて、大気空気の除湿および除二酸化炭素を連続的に行うことによって、従来の吸着式ガス処理負荷の低減あるいは撤廃により、省エネルギー化によるランニングコストの低減が可能となる。
【0046】
本発明の方法においては、除湿ゾーン(1)において、例えばコンプレッサーにより0.1〜0.6MPaに加圧した水(水蒸気)および二酸化炭素を含む大気空気を1〜40L/minの供給量で供給し、透過の駆動力である膜内外の圧力差を大きくすることによって、除湿ゾーンにおいて空気中の水分の選択的膜透過除去を、および除二酸化炭素ゾーンにおいて二酸化炭素の選択的膜透過除去を、それぞれ促進させることができる。
【0047】
また、除二酸化炭素ゾーンにおいて、温度100〜400Cに加熱した乾燥ゼオライト分離膜を用いることにより、ゼオライト膜中の残存吸着水分を除去することができて、二酸化炭素の選択的膜透過除去を大幅に促進させることができる。
【0048】
特に、大気空気の除二酸化炭素ゾーンにおいて、水の存在下、すなわちゼオライト膜に水が吸着している状態では、二酸化炭素の透過量が小さく、大気空気中の二酸化炭素を低減させる効果はほとんど得られないが、前段で除湿を行い、後段で加熱乾燥させたゼオライト分離膜を用いることにより、顕著な除二酸化炭素効果が発現し、回収空気中の二酸化炭素濃度を400ppm程度から100ppm以下まで低減することが可能である。
【0049】
さらに、本発明による膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法において、除二酸化炭素ゾーンにおいてゼオライト分離膜の膜透過により形成した二酸化炭素高含有乾燥空気を、除湿ゾーンの除湿用分離膜の透過側のスイープガスとして流すことにより、水(水蒸気)および二酸化炭素が低減した乾燥浄化空気の透過速度を上げることができ、大気空気の除湿・除二酸化炭素処理を、非常に効率よく実施することができる。
【0050】
図2は、本発明による膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法を実施する装置の具体例を示す概略拡大断面図である。
【0051】
同図を参照すると、本発明による膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理装置は、管状の多孔質基体上にゼオライト膜が形成されたゼオライト分離膜(3)を具備し、かつ水(水蒸気)および二酸化炭素を含む大気空気が導入されて、膜透過により空気中の水分が選択的に除去されるとともに、膜の非透過側に、二酸化炭素を含む乾燥空気が形成される除湿ゾーン(1)と、管状の多孔質基体上にゼオライト膜が形成された乾燥状態のゼオライト分離膜(4)を具備し、かつ連通路(5)を介して除湿ゾーン(1)からの二酸化炭素を含む乾燥空気が、引き続き導入されて、膜透過により空気中の二酸化炭素が選択的に除去されるとともに、膜の非透過側に、水(水蒸気)および二酸化炭素が低減した乾燥浄化空気が形成される除二酸化炭素ゾーン(2)とを備えている。
【0052】
本発明による膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理装置によれば、ゼオライト分離膜(3)(4)をそれぞれ具備した除湿ゾーン(1)および除二酸化炭素ゾーン(2)において、大気空気の除湿および除二酸化炭素を連続的に行うことができて、従来の吸着式ガス処理負荷の低減あるいは撤廃により、省エネルギー化によるランニングコストの低減が可能である。
【0053】
本発明による膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理装置では、除湿ゾーン(1)の管状ゼオライト分離膜(3)の後端部と、除二酸化炭素ゾーン(2)の管状ゼオライト分離膜(4)の前端部とが、両ゾーン(1)(2)の隣接側壁部を貫通する管状ゼオライト分離膜と同径の連通パイプ(6)を介して接続されている。
【0054】
また、除湿ゾーン(1)の管状ゼオライト分離膜(3)の前端部には、同径の延長パイプ部(7)が接続されていて、この延長パイプ部(7)の先端部が、除湿ゾーン(1)の前壁を貫通して、除湿ゾーン(1)の外側に開口せしめられている。一方、除二酸化炭素ゾーン(2)の管状ゼオライト分離膜(4)の後端部は、後壁(8)によって塞がれている。
【0055】
なおここで、除湿ゾーン(1)および除二酸化炭素ゾーン(2)のケーシングは、例えばステンレス鋼製であり、除湿ゾーン(1)の管状ゼオライト分離膜(3)(4)同士を連通する連通パイプ(6)、管状ゼオライト分離膜(3)前端部の延長パイプ部(7)、および管状ゼオライト分離膜(4)後端部の後壁(8)は、例えば無孔質のα−アルミナまたはステンレス鋼によって作製されている。
【0056】
除湿ゾーン(1)の前端寄り部分には、コンプレッサー(9)が設置され、除湿ゾーン(1)には、コンプレッサー(9)により加圧された大気空気が導入されるようになされている。
【0057】
また、本発明においては、除二酸化炭素ゾーン(2)に、ゼオライト分離膜(4)を温度100〜400Cに加熱する加熱器(10)が具備せられている。
【0058】
さらに、除二酸化炭素ゾーン(2)の後端部の乾燥浄化空気の排出路には、圧力調整用の圧力調整弁(11)が設けられている。
【0059】
本発明の装置によれば、除湿ゾーン(1)にコンプレッサー(9)により加圧された大気空気を供給すると、ゼオライト分離膜(3)の非透過側に、二酸化炭素を含む加圧乾燥空気が形成され、続いて、除二酸化炭素ゾーン(2)に、二酸化炭素を含む加圧乾燥空気が導入され、コンプレッサー(9)により供給する大気空気を加圧することにより、膜透過の駆動力である膜内外の圧力差を大きくすることができて、除湿ゾーン(1)において空気中の水分の選択的膜透過除去を、および除二酸化炭素ゾーン(2)において二酸化炭素の選択的膜透過除去を、それぞれ促進させることができる。
【0060】
また、本発明の装置によれば、除二酸化炭素ゾーン(2)に、ゼオライト分離膜(4)を温度100〜400C、好ましくは200〜300℃に加熱する加熱器(10)が具備することにより、ゼオライト分離膜(4)中の残存吸着水分を除去することができて、二酸化炭素の選択的膜透過除去を大幅に促進させることができる。
【0061】
さらに、本発明の装置によれば、除二酸化炭素ゾーン(2)において管状ゼオライト分離膜(4)の膜透過により形成された二酸化炭素高含有乾燥空気が、連通パイプ(6)を通過して除湿ゾーン(1)の管状ゼオライト分離膜(3)の透過側のスイープガスとして用いられているので、除湿ゾーン(1)においてゼオライト分離膜(3)の透過側に、除二酸化炭素ゾーン(2)からの二酸化炭素高含有乾燥空気をスイープガスとして流すことで、水(水蒸気)および二酸化炭素が低減した乾燥浄化空気の透過速度を上げることができ、大気空気の除湿・除二酸化炭素処理を、非常に効率よく実施することができる。
【0062】
なお、図示は省略したが、除湿ゾーン(1)の除湿用分離膜としては、中空糸有機高分子分離膜を用いることもできる。この場合、除湿ゾーン(1)の中空糸有機高分子分離膜と、除二酸化炭素ゾーン(2)の管状のゼオライト分離膜(4)とが、図示しない連通手段を介して連通されており、除二酸化炭素ゾーン(2)においてゼオライト分離膜(4)の膜透過により形成された二酸化炭素高含有乾燥空気が、連通手段を通って除湿ゾーン(1)の中空糸有機高分子分離膜の透過側のスイープガスとして用いられる。
【実施例】
【0063】
つぎに、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
実施例1
図2に示す装置を用いて、本発明による膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法を実施した。
【0065】
除湿ゾーン(1)のゼオライト分離膜(3)としては、多孔質α−アルミナ管基体上にA型ゼオライト膜が形成されたゼオライト分離膜を使用し、除二酸化炭素ゾーン(2)のゼオライト分離膜(4)としては、管状の多孔質α−アルミナ管基体上にFAU型ゼオライト膜が形成されたゼオライト分離膜を使用した。
【0066】
そして、除湿ゾーン(1)の管状ゼオライト分離膜(3)の後端部と、除二酸化炭素ゾーン(2)の管状ゼオライト分離膜(4)の前端部とが、両ゾーン(1)(2)の隣接側壁部を貫通する管状ゼオライト分離膜と同径のステンレス鋼製の連通パイプ(6)を介して接続されている。
【0067】
また、除湿ゾーン(1)の管状ゼオライト分離膜(3)の前端部には、同径のステンレス鋼製の延長パイプ部(7)が接続されていて、この延長パイプ部(7)の先端部が、除湿ゾーン(1)の前壁を貫通して、除湿ゾーン(1)の外側に開口せしめられている。一方、除二酸化炭素ゾーン(2)の管状ゼオライト分離膜(4)の後端部は、無孔質のα−アルミナ製の後壁(8)によって塞がれている。
【0068】
なおここで、除湿ゾーン(1)および除二酸化炭素ゾーン(2)のケーシングは、ステンレス鋼製である。
【0069】
除湿ゾーン(1)の前端寄り部分には、コンプレッサー(9)が設置され、除湿ゾーン(1)には、コンプレッサー(9)により加圧された大気空気が導入されるようになされている。
【0070】
また、本発明においては、除二酸化炭素ゾーン(2)に、ゼオライト分離膜(4)を温度100〜400Cに加熱する加熱器(商品名マントルヒーター、大科電器株式会社製)(10)が具備せられている。
【0071】
さらに、除二酸化炭素ゾーン(2)の後端部の乾燥浄化空気の排出路には、圧力調整用の圧力調整弁(11)が設けられている。
【0072】
ここで、除湿ゾーン(1)に用いるA型ゼオライト分離膜(3)は、以下に示す条件により水熱合成反応処理をすることで製造した。
【0073】
(A型ゼオライト分離膜の製造)
A型ゼオライト種結晶(東ソー社製)を表面に塗付した多孔質α−アルミナ管(直径16 mm、長さ1000 mm)を、モル組成比(HO/NaO =75、 NaO/SiO=1、 SiO/Al=2)の合成溶液中に浸漬させ、密閉したステンレス鋼製のオートクレーブ内にて、温度105Cで、4時間15分保持することにより、多孔質α−アルミナ管基体上にA型ゼオライト膜が形成されたゼオライト分離膜(3)を製造した。
【0074】
一方、除二酸化炭素ゾーン(2)に用いるFAU型ゼオライト分離膜(4)は、以下に示す条件により水熱合成反応処理をすることで製造した。
【0075】
(FAU型ゼオライト分離膜の製造)
FAU型ゼオライト粉末(種結晶)(東ソー社製)を表面に塗付した多孔質α−アルミナ管(直径16mm、長さ1000 mm)を、モル組成比(HO/NaO=57.4、 NaO/SiO=1.3、 SiO/Al=12.8))の合成溶液中に浸漬させ、密閉したステンレス鋼製のオートクレーブ内にて、温度100Cで、4時間45分保持することにより、多孔質α−アルミナ管基体上にFAU型ゼオライト膜が形成されたゼオライト分離膜(4)を製造した。
【0076】
ここで、図3に、多孔質アルミナ管上に形成したゼオライト分離膜(FAU型)表面の走査型電子顕微鏡写真像を示す。
【0077】
つぎに、除湿ゾーン(1)のA型ゼオライト分離膜(3)を用いて大気空気の除湿試験を実施した。試験条件は、下記の通りである。
【0078】

なお、除湿ゾーン(1)の管状ゼオライト分離膜(3)には、コンプレッサー(9)により加圧した空気を供給させ、透過の駆動力である膜内外の圧力差を大きくすることによって、除湿ゾーン(1)において大気空気中の水分選択的膜透過除去を促進させるようにした。そして、管状ゼオライト分離膜(3)のスイープガスには乾燥空気を用いた。得られた結果を図4に記載した。
【0079】
(除湿試験条件)
大気空気供給量:1〜4L/min
供給大気空気温度:30℃
大気空気供給圧力:0.6MPa
使用膜:A型ゼオライト分離膜
ゼオライト分離膜表面積:0.05m
ゼオライト分離膜温度:30
供給空気露点:10
スイープ乾燥空気量:2L/min
差圧:0.5MPa (透過側大気開放)
図4に示す試験結果から明らかなように、回収空気量1L/min、差圧0.5MPaの条件において、ゼオライト膜による除湿により、露点10℃の空気からから露点-20C以下の乾燥空気を連続的に回収した。
【0080】
つぎに、除二酸化炭素ゾーン(2)で使用する多孔質α−アルミナ管基体上にFAU型ゼオライト膜が形成されたゼオライト分離膜(4)について、加熱乾燥が、FAU型ゼオライト分離膜(4)の二酸化炭素透過度に及ぼす影響を試験した。試験条件は、下記の通りであり、二酸化炭素透過度の測定は、ステンレス鋼製モジュール(除二酸化炭素ゾーン)(2)内に取り付けた管状FAU型ゼオライト分離膜(4)に対し、加圧した二酸化炭素ガスを膜外側から供給し、大気開放にした管状FAU型ゼオライト分離膜(4)の内側に透過してくる二酸化炭素ガスの流量をガス流量計(商品名:ADM1000、Universal Gas Flowmeter、Agilent Technology社製)にて計測することにより行った。なお、管状FAU型ゼオライト分離膜(4)の加熱処理は、130℃で1h、および300Cで1h行い、また比較のために、加熱処理なしのFAU型ゼオライト分離膜(4)についても同様に試験を行った。加熱処理がFAU型ゼオライト分離膜(4)の二酸化炭素透過度に与える影響について、得られた結果を下記の表1に示した。
【0081】
(二酸化炭素透過度測定試験の条件)
ゼオライト分離膜の加熱処理条件:130℃で1h、および300Cで1h
供給二酸化炭素含有空気の露点:-20C以下
供給二酸化炭素含有空気の二酸化炭素分圧差:0.13 MPa
測定膜温度:40
使用膜:FAU型ゼオライト分離膜
膜面積:10 cm
【表1】

【0082】
表1に示す試験結果から明らかなように、FAU型ゼオライト分離膜(4)について、まず、ゼオライト分離膜(4)の加熱処理なし、すなわちゼオライト分離膜(4)に水が吸着している状態(水の存在下)では、二酸化炭素の透過量が小さく、大気空気中の二酸化炭素を低減させる効果はほとんど得られなかった。このような加熱処理なしの状態に比べ、FAU型ゼオライト分離膜(4)を、温度130Cで1h加熱処理した場合には、二酸化炭素透過度が100倍以上向上し、さらに、度300Cで1h加熱処理した場合には、二酸化炭素透過度が500倍以上向上した。
【0083】
なお、FAU型ゼオライト分離膜(4)を400Cまで加熱しても、更なる二酸化炭素透過度の向上は観察されなかったため、FAU型ゼオライト分離膜(4)の加熱処理は、300Cまでで十分であることが判明した。
【0084】
つぎに、本発明による膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法の効果を確認するために、下記の試験を行った。
【0085】
図2に示す装置において、除湿ゾーン(1)には、上記のようにして作製したA型ゼオライト分離膜(3)を使用し、除二酸化炭素ゾーン(2)には、上記のようにして作製したFAU型ゼオライト分離膜(4)を使用した。
【0086】
除湿ゾーン(1)においては、コンプレッサー(9)により0.5MPaに加圧した水(水蒸気)および二酸化炭素を含む大気空気を4L/minの供給量で供給し、A型ゼオライト分離膜(3)に対し水(水蒸気)透過の駆動力である膜内外の圧力差を大きくすることによって、A型ゼオライト分離膜(3)による水(水蒸気)の選択的膜透過除去を促進させた。
【0087】
除二酸化炭素ゾーン(2)においては、FAU型ゼオライト分離膜(4)中の残存吸着水を除去するため、加熱器(10)によってゼオライト分離膜(4)を温度300Cで加熱し、ゼオライト分離膜(4)を乾燥状態とした。
【0088】
本発明の方法により、A型ゼオライト分離膜(3)を具備する除湿ゾーン(1)において、膜透過により空気中の水分を選択的に除去するとともに、膜の非透過側に、二酸化炭素を含む乾燥空気を形成し、引き続き、この二酸化炭素を含む乾燥空気を、乾燥状態のゼオライト分離膜(4)を具備する除二酸化炭素ゾーン(2)に導入した。除二酸化炭素ゾーン(2)の処理条件下記の通りであった。
【0089】
この除二酸化炭素ゾーン(2)においては、膜透過により乾燥空気中の二酸化炭素を選択的に除去するとともに、膜の非透過側に、水(水蒸気)および二酸化炭素が低減した乾燥浄化空気を形成した。膜透過により形成した二酸化炭素高含有乾燥空気は、除湿ゾーン(1)の管状ゼオライト分離膜(3)のスイープガスとして使用した。
【0090】
(除二酸化炭素ゾーンの処理条件)
使用膜:FAU型ゼオライト分離膜
膜面積:0.05 m
ゼオライト分離膜乾燥のための前処理:300C、1h
供給空気の露点:-20C以下
ゼオライト分離膜温度:60
回収した乾燥浄化空気の量:1 L/min
上記のように、除湿ゾーン(1)に供給される大気空気がコンプレッサー(9)により加圧されている結果、除二酸化炭素処理ゾーン(2)に供給される二酸化炭素を含む乾燥空気も加圧されている。
【0091】
ここで、除二酸化炭素処理ゾーン(2)のゼオライト分離膜(4)に供給する加圧乾燥空気の圧力を変化させて、透過の駆動力である膜内外の圧力差を変化させ、得られた結果を図5に記載した。
【0092】
図5は、除二酸化炭素処理ゾーン(2)のゼオライト分離膜(4)の内外における空気の全圧差(MPa)と、回収乾燥浄化空気中の二酸化炭素濃度(ppm)との関係を示すものである。
【0093】
図5に示す試験結果から明らかなように、除二酸化炭素処理ゾーン(2)に供給される二酸化炭素を含む乾燥空気が加圧されていることにより、透過の駆動力である膜内外の圧力差を大きくなって、空気中の二酸化炭素の選択的膜透過除去を促進させることができた。また特に、前段の除湿ゾーン(1)で大気空気の除湿を行い、後段の除二酸化炭素ゾーン(2)で加熱乾燥させたゼオライト分離膜(4)を用いることにより、顕著な除二酸化炭素効果が発現した。その結果、膜内外の差圧を大きくすることで、回収空気中の二酸化炭素濃度を、400ppm程度から、100ppm以下まで低減することが可能となった。
【符号の説明】
【0094】
1:除湿ゾーン
2:除二酸化炭素処理ゾーン
3:ゼオライト分離膜
4:ゼオライト分離膜
5:連通路
6:連通パイプ
7:延長パイプ部
8:後壁
9:コンプレッサー
10:加熱器
11:圧力調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水(水蒸気)および二酸化炭素を含む大気空気を、除湿用分離膜を具備する除湿ゾーンに導入し、膜透過により空気中の水分を選択的に除去するとともに、膜の非透過側に、二酸化炭素を含む乾燥空気を形成する工程と、引き続き、二酸化炭素を含む乾燥空気を、多孔質基体上にゼオライト膜が形成された乾燥状態のゼオライト分離膜を具備する除二酸化炭素ゾーンに導入し、膜透過により空気中の二酸化炭素を選択的に除去するとともに、膜の非透過側に、水(水蒸気)および二酸化炭素が低減した乾燥浄化空気を形成する工程とよりなることを特徴とする、膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法。
【請求項2】
除湿ゾーンの除湿用分離膜が、多孔質基体上にゼオライト膜が形成されたゼオライト分離膜、または中空糸高分子分離膜であることを特徴とする、請求項1に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法。
【請求項3】
除湿ゾーンに加圧した大気空気を導入して、膜の非透過側に、二酸化炭素を含む加圧乾燥空気を形成し、続いて、二酸化炭素を含む加圧乾燥空気を、除二酸化炭素ゾーンに導入することを特徴とする、請求項1または2に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法。
【請求項4】
除二酸化炭素ゾーンにおいて、温度100〜400Cに加熱した乾燥ゼオライト分離膜を用いることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法。
【請求項5】
除二酸化炭素ゾーンにおいてゼオライト分離膜の膜透過により形成した二酸化炭素高含有乾燥空気を、除湿ゾーンの除湿用分離膜の透過側のスイープガスとして用いることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理方法。
【請求項6】
除湿用分離膜を具備し、かつ水(水蒸気)および二酸化炭素を含む大気空気が導入されて、膜透過により空気中の水分が選択的に除去されるとともに、膜の非透過側に、二酸化炭素を含む乾燥空気が形成される除湿ゾーンと、管状の多孔質基体上にゼオライト膜が形成された乾燥状態のゼオライト分離膜を具備し、かつ連通路を介して除湿ゾーンからの二酸化炭素を含む乾燥空気が、引き続き導入されて、膜透過により空気中の二酸化炭素が選択的に除去されるとともに、膜の非透過側に、水(水蒸気)および二酸化炭素が低減した乾燥浄化空気が形成される除二酸化炭素ゾーンとを備えていることを特徴とする、膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理装置。
【請求項7】
除湿ゾーンの除湿用分離膜が、多孔質基体上にゼオライト膜が形成されたゼオライト分離膜、または中空糸高分子分離膜であることを特徴とする、請求項6に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理装置。
【請求項8】
除湿ゾーンにコンプレッサーにより加圧された大気空気が導入されて、膜の非透過側に、二酸化炭素を含む加圧乾燥空気が形成され、続いて、除二酸化炭素ゾーンに、二酸化炭素を含む加圧乾燥空気が導入されることを特徴とする、請求項6または7に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理装置。
【請求項9】
除二酸化炭素ゾーンに、ゼオライト分離膜を温度100〜400Cに加熱する加熱器が具備せられていることを特徴とする、請求項6〜8のうちのいずれか一項に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理装置。
【請求項10】
除二酸化炭素ゾーンにおいてゼオライト分離膜の膜透過により形成された二酸化炭素高含有乾燥空気が、除湿ゾーンの除湿用分離膜の透過側のスイープガスとして用いられることを特徴とする、請求項6〜9のうちのいずれか一項に記載の膜分離を利用した大気空気の除湿・除二酸化炭素連続処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−106228(P2012−106228A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198596(P2011−198596)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】