説明

膜厚測定装置、及び膜厚測定方法

【課題】CMP加工等において、デバイスウェーハに形成されている素子等に強い磁束を及ぼすことなく、導電性膜の膜厚を精度よく測定できる膜厚測定装置を提供する。
【解決手段】 ウェーハ102の表面に対向してコイル103を離間配置させ、ウェーハステージ101をX,Y方向及びR、θ方向へ移動させる。インピーダンスアナライザ105によって周波数を掃引させながらコイル103に交流電流を供給すると、コイル103に誘起させた磁場がウェーハ102の導電性膜に作用する。導電性膜の表皮効果に影響するパラメータ(周波数又は角度)を変化させてコイル103に与えることにより、磁場をウェーハ102の膜内へ相対的に貫通させない状態と、膜内へ相対的に貫通させる状態とを形成することができる。導電性膜の表皮効果に影響される状態変化に基づいて誘起される渦電流に対応する諸量の変化から、ウェーハ102の膜厚を精度よく測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨完了時点の膜厚を測定する膜厚測定装置及び膜厚測定方法に関するものであり、特に、化学機械研磨加工(CMP:Chemical Mechanical Polishing)等においてデバイスウェーハに形成されている素子等に強い磁束を及ぼすことなく渦電流によるジュール熱損を極小に抑えた上で、研磨完了時点の膜厚を精度よく測定する膜厚測定装置及び膜厚測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハの表面に例えば酸化膜を形成し、該酸化膜にリソグラィ及びエッチングを施して配線パターンに対応した溝パターンを形成し、この上に前記溝パターンを充填するためのCu等からなる導電性膜を成膜し、該導電性膜のうち前記溝パターンやスルーホール部分等の埋め込み部以外の不要部分を化学機械研磨により除去して配線パターンを形成するプロセスが知られている。この配線パターンの形成では、不要部分の導電性膜が適正な厚さ除去されたときの研磨終点を確実に検出してプロセスを停止することが極めて重要である。導電性膜の研磨が過剰であると配線の抵抗が増加し、研磨が過少であると配線の絶縁障害につながる。
【0003】
これに関連する従来技術として、例えば次のようなフィルム厚の変化のその場での監視方法が知られている。この従来技術は、下地本体(半導体ウェーハ)上から化学機械研磨によって導電性フィルムを除去する方法において該導電性フィルムの厚さ変化をその場で監視するための方法であって、電磁界に指向性をもたらすように整形するためのフェライト・ポット型コアに巻回されたコイルからなるインダクタとコンデンサとの直列又は並列共振回路を含むセンサを前記導電性フィルムに近接して配置し、励振信号源からの20Hz〜40.1MHzの周波数からなる掃引出力を、動作点設定用インピーダンス手段を介して前記センサへ印加する。これにより、センサが励起されると発振電流がコイルに流れて交番電磁界が発生する。この交番電磁界は、次いで導電性フィルム中に渦電流を誘導する。渦電流が導電性フィルムに誘導されると、二つの効果が生じることになる。まず第1に、導電性フィルムが損失抵抗として作用し、その効果はセンサ回路に対する抵抗負荷であり、これは共振信号の振幅を下げ、共振周波数を下げる。第2に、導電性フィルムの厚さが減少すると、金属ロッドがインダクタのコイルから引き抜かれるかのような効果が生じ、これによってインダクタンスの変化並びに周波数シフトを引き起こす。このようにして前記導電性フィルムの厚さ変化に起因するセンサ共振ピークに関連した周波数シフトの変化を監視することにより、該導電性フィルムの厚さ変化を連続的に検出するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、他の従来技術として、例えば次のような渦電流センサが知られている。この従来技術は、導電性膜又は導電性膜が形成される基体の近傍に配置されるセンサコイル(渦電流センサ)と、該センサコイルに8〜32MHz程度で一定周波数の交流信号を供給して前記導電性膜に渦電流を形成する交流信号源と、前記導電性膜を含めたリアクタンス成分及び抵抗成分を計測する検出回路とを備え、前記センサコイルは、前記信号源に接続する発振コイルと、該コイルの前記導電性膜側に配置する検出コイルと、前記発振コイルの前記導電性膜側の反対側に配置するバランスコイルとを具備し、前記検出コイルとバランスコイルとは互いに逆相となるように接続されている。そして、前記検出回路で検出した抵抗成分及びリアクタンス成分から合成インピーダンスを出力し、該インピーダンスの変化から前記導電性膜の膜厚の変化を広いレンジでほぼ直線的な関係として検出するようにしている。(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、他の従来技術として、例えば次のような渦電流センサが知られている。この従来技術も先に示した特許文献2の従来技術と同様に、[0008]には、センサコイルが形成する磁束がそのセンサコイル全面に配置された基板上の導電性膜を貫通し、交番的に磁束が変化することで該導電性膜中に渦電流を生じさせ、その渦電流が導電性膜中に流れることで渦電流損失が生じ、等価回路的にみるとセンサコイルのインピーダンスのリアクタンス成分を低下させることになるとしている。また、[0009]には、発振回路の発振周波数の変化を観察することで、研磨の進行に伴い、導電性膜が徐々に薄くなると、これにより発振周波数が低下し、導電性膜が研磨により完全になくなるタンク回路の自己発振周波数となり、それ以降は発振周波数が略一定となる。それ故、この点を検出することにより、導電性膜の化学機械的研磨(CMP)による終点を検出することができるとある。また、[0025]には、導電性膜の研磨が進行するとこれに伴って渦電流損が変化し、センサコイルの等価的な抵抗値が変化する。したがって、発振回路の発振周波数が変化するので、この発振信号を分周回路により分周し、又は減算器により減算することにより、検出幅の周波数の大きさに対応した信号をモニタに表示する。これにより、特許文献3の図2に示すような周波数軌跡の推移が得られる(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
以上述べた従来技術は、研磨という、膜厚が時間と共に減少していく過程において、その膜厚の減少量を渦電流でモニタする内容について開示されたものである。
【0007】
次に、単純な静止状態における膜厚測定装置に関する公知例について述べる。例えば、特許文献4に開示された従来の導電性フィルムにおける膜厚測定装置は、渦電流による磁界を検出する渦電流コイルセンサと、前記渦電流コイルセンサと前記測定対象膜との間の変位を測定するための変位センサとを備えて、渦電流センサにおけるインダクタンス変化量と、変位センサにて測定された変位量とに基づいて前記測定対象膜の厚さを測定するように構成されている。
【0008】
しかし、ここでの渦電流コイルセンサとは、導電性膜にセンサを近接させて磁束を導入させ、導電性膜内に渦電流を誘起させて、その渦電流量をインダクタンスメータのインダクタンスの変化量から算出して膜厚を求めるものである。この技術ではインダクタンスの変化量について言及している。すなわち、インダクタンス変化量ΔLが渦電流損失に対応し、その渦電流損失は、導電性膜の比抵抗が既知であれば、渦電流量損失に対応して膜厚を求めることができる(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
また、特許文献5に開示された導電性膜の膜厚測定装置は、測定対象物の近くに測定用コイルを配置し、前記測定用コイル部に交流電圧を印加し、前記対象物内に渦電流を生じさせて、前記渦電流の影響により生じた前記測定用コイルのインピーダンス値の変化を電圧として測定し、前記測定対象物の値を求めるように構成された膜厚測定装置の技術を開示している。
【0010】
この技術によれば、平面コイルを用いることによって、次のような作用効果を呈することができる。先ず第一に、同一の基板上にフォトリソグラフィーを用いて薄膜で形成することで、コイルと変位センサの相対位置精度が飛躍的に向上し、相対的な位置を合わせるための治具やそのための作業が不要になる。
【0011】
第二に、平面コイルを用いることで膜厚計の空間分解能を向上させることができる。例えば、周波数を5MHzに上げれば、平面三重巻きコイルの感度をさらに一桁以上増大させることができる。また、周波数が増すことで薄膜での鎖交磁束の時間変化が大きくなって渦電流が増大するが、径方向の分布状態が変化している。即ち、渦電流が径の小さい領域に集中していることになる。このとき測定される膜厚は、渦電流が生じている領域の平均膜厚になるので、渦電流が生じる領域が小さいことは狭い領域の平均膜厚を測定することになり、結果的に空間分解能が向上することになる。
【特許文献1】特許第2878178号公報(第2〜7頁、図1〜15)。
【特許文献2】特許第3587822号公報(第3頁、図1〜11)。
【特許文献3】特開2003−21501号公報
【特許文献4】特開2002−148012号公報
【特許文献5】特開2005−227256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の従来技術においては、センサには、電磁界に指向性をもたらすためのフェライト・ポット型コアに巻回されたコイルからなるインダクタとコンデンサとの直列又は並列共振回路が備えられている。そして、研磨初期において20Hz〜40.1MHzの周波数からなる掃引出力をセンサへ印加し、前記コイルから発生した指向性を持つ交番電磁界により、導電性フィルムを貫通する漏洩磁束を生じさせて該導電性フィルムの膜厚に対応した大きな渦電流を研磨初期から誘導させている。導電性フィルムの膜厚に対応した大きな渦電流を誘導するためには大きな交番電磁界、即ち導電性フィルムを貫通する程度の大きな磁束を形成することが必要であり、導電性フィルムの厚さ変化の監視は研磨初期から研磨終期まで導電性フィルム内に誘起された渦電流を利用して行われている。このため、膜厚変化の監視の間、導電性フィルムの厚さ方向に向かって磁束を貫通させることが必要である。特許文献1にかかる公報の図面中には、全ての導電性フィルムの部分に該導電性フィルムを貫通する磁束線が記載されていることからも、このことは明らかである。
【0013】
研磨初期におけるウェーハの表面には、無垢なCu膜(導電性フィルム)が最上層にあるのが一般的である。これら無垢なCu膜の全てに渦電流を誘起させるためには非常に大きな漏洩磁束が必要である。しかし、その漏洩磁束は、渦電流を誘起するが、それらはいずれ渦電流損という形でジュール熱になって消費される。このジュール熱損は、最表層の無垢なCu膜に対しては、体積抵抗が小さいため、発熱は比較的小さいが、内部の既に配線されている部分では、配線断面積が小さく体積抵抗が小さいため、貫通する磁束により大きな渦電流が誘起され、その結果、局部的に大きなジュール熱損を生むことになる。これは、時として一部配線が溶融、断線してしまう問題に発展する。いわゆる誘導加熱の状態になり、特に内部に熱がこもってしまう現象になる。特に、Cu配線などでは、Cuが加熱されるとTaなどのバリア膜にCuが拡散する場合や、場合によっては、バリア膜を突き破ってCuが拡散してしまう懸念がある。
【0014】
また、ウェーハの表面部に幾層にも配線が施されている場合では、表層のCu膜の心配だけではなく、すでに処理が完了している内部の配線部分が局部的に暖められて周囲に拡散したり、半導体基板内のp型、n型を形成しているドーパントがさらに拡散して、基板内素子の特性を変えてしまうこともある。また、熱が発生しない場合でも、過剰な渦電流が微細配線に流れる場合は、エレクトロマイグレーションを引き起こして断線することがある。
【0015】
さらに、例えば、研磨終了時点付近のある所定の残膜量になった時点で、研磨条件を変えて処理を行う場合に、所定の残膜量であるか否かを見極めることは困難である。初期膜厚からの変化分で推測することは可能であるが、初期膜厚がばらつく場合は所定の残膜量の見積もりがばらつくことになるからである。この研磨終了時点付近の判断に関し、センサと導電性フィルム間のギャップが研磨の振動によって微小に変化すると、センサ回路系全体の浮遊容量が変化して共振周波数全体がシフトする。このため、仮に、ある設定の共振周波数になったときに閾値を設定して、研磨終点を判別する設定をしていても、全体的に共振周波数がシフトすれば、その閾値の設定による研磨終了時点の判断は難しくなる。このように、従来方法において、単調かつ連続的に増加もしくは減少変化する共振周波数において、ある値に閾値を設定していたとしても、センサと導電性フィルム間のギャップが微小に変化したり、その間に何等かの誘電体が介在したりすることで、その波形自体が全体的に上下に平行移動することは度々存在し、その結果、予め設定した閾値が意味をなさないことが度々存在した。
【0016】
渦電流センサを用いた特許文献2に記載の従来技術においても、導電性膜の膜厚変化の監視を、研磨初期から研磨終期まで渦電流の変化でみていることは、上記特許文献1に記載の従来技術とほぼ同様である。
【0017】
また、研磨初期から研磨終期まで渦電流を利用して導電性膜の膜厚を監視する上記の従来技術では、膜内で渦電流を引き起こすのに膜内に浸透する程度の十分強い磁束を作る必要があり、インダクタの形状は磁束に指向性を持たせるために三次元となっている。このため、センサを研磨装置等に組み込む上で、一般的に次のような問題がある。コイルに流す電流が大きくなって消費電力が多くなり、電源装置も大型になる。磁束が周辺に漏れてノイズが発生し易い。導線をコイル状に巻く工程等が必要になってコスト高になる。
【0018】
また、特許文献3に記載の渦電流センサからなる従来技術においては、まず、この従来技術で使用しているセンサ部のハードウェアについて、まず、センサコイルは導電性膜を貫通することを前提とした構成である。したがって、導電性膜を貫通しない程度の磁場しか発生しないハードウェアでは、渦電流が形成できず目的を達成できない。また、導電性膜が研磨により減少することで、渦電流が形成される領域が単調に減少し、そのため、発振周波数が単調に減少する挙動が記載されており、その発振周波数が略一定になったときを終点とみなしてこの部分を検出するとしている。即ち、この従来技術で使用するソフトウェアのアルゴリズムでは、発振周波数の変化とは、減少から略一定になる変化を、発振周波数の変化としているのであって、例えば、この発振周波数が変曲点を有するような変化をした場合には、到底検出できるアルゴリズムではない。また、特許文献3の図2に示すように研磨の初期から磁束が導電性膜を貫通し、常時渦電流が発生する状態である。ここで、渦電流センサは、終始渦電流を積極的に発生させ、その渦電流変化から膜厚変化に算出し直す方法を概して、渦電流センサとしている。
【0019】
また、特許文献4に記載の渦電流センサにおいては、原理的に導電性膜に磁場を導入することを前提とした技術である。ここでは、渦電流の取り出し方が、インダクタンスメータを用いてインダクタンス変化量を算出して求めることを述べたものであって、現象論としては、導電性膜内部に磁場を侵入させ、導電性膜に対応した渦電流量を検出する一般的な原理であることには変わりはない。
【0020】
その結果、デバイス素子上に形成された導電性膜の膜厚を測定する場合、導電性膜に磁場を侵入させると同時に内部のデバイス素子にまで磁場を与えることになる。このとき、導電性膜が厚い場合には、導電性膜で磁場を渦電流形成によるジュール熱損として磁場のエネルギーを吸収するが、導電性膜が極めて薄くなった場合では、与えられた磁場は、表面の導電性膜に遮られることなく、そのままデバイス素子内に侵入することになることから、デバイス内部での配線部で過剰な渦電流が形成され、結果的に配線内部でのエレクトロマイグレーションなどの問題を誘発する。また、渦電流量の変化で膜厚を測定する場合、極めて薄い膜厚になると、誘起される渦電流自体も徐々に微弱になっていくため、結果として測定感度が非常に低下することになる。
【0021】
また、特許文献5に記載の技術においては、膜厚測定原理として、測定用平面コイル11のインダクタンス成分の変化最ΔLと、測定用平面コイル11と導電性膜51との間の距離を用い、予め求めておいたこれらの相関関係のデータベースに基づいて導電膜51上の当該部位の膜厚を算出している。従って、基本的には、渦電流量に対応して膜厚が決定されるものである。
【0022】
ここでは、渦電流の変化が変曲点を有することや、その変曲点を利用して膜厚測定に利用することなどの記述は見られない。さらに、導電性膜に対して、表皮効果に基づいて磁束が貫通する場合と貫通しない場合の二つの局面を持たせ、その二つの局面での渦電流状態の変化を利用して、膜厚を求めるようなことなどは記述されていない。
【0023】
また、この技術では、順コイルと、逆向きに巻線した逆コイルとを有している。この逆コイルにより、順コイルによって外側に広がる磁界は逆コイルによって打ち消されるようにしている。すなわち、逆コイルによって、発散する磁束は逆コイルによって打ち消し、磁来が順コイルの中央位置に集中するので、分解能を向上させることができる。また、ここでは、平面インダクタを使用するとしても、純粋にコイル央部付近の導体膜を貫通する磁束だけを選びだして、その他の、導体膜内を貫通しないであろう磁束を打ち消す役割を持たせている。
【0024】
このような方式は、磁束を導電性膜に侵入させないようにするため、コイルの中央部の磁束よりは周辺に位置する磁束を使用するものではない。コイルの中央部の付近で積極的に磁束を貫通させ、貫通磁束を局所的に導くものである。、導電性膜内の一部分には、積極的に磁場を侵入させることを前提としている。
【0025】
以上のことから、特許文献5の技術は、コイルの中央部の磁束を使用して、導体膜内に積極的に磁場を侵入させ、コイルの周辺は取り除き、直下部分のみに磁束を導体膜内に入射させている。基本的に導体内に磁場を侵入させることが重要であり、コイル外周部の導体内に侵入しない磁束部分を排除することを目的に構成している。特許文献5は、平面インダクタを使用したものであるが、磁束を常時貫通させることを前提に、磁束が侵入しない部分を取り除くことが基本となっている。。。
しかし、先にも述べたように、磁場を局所的でも、導体内を貫通させると、導体内で多くの磁場が渦電流となって消費されるため、特に表面の導電性膜の下に存在する配線部分では、印加された磁場により急激に発熱し、場合によっては、エレクトロマイグレーションによって、断線することも考えられる。
【0026】
ここで、平面インダクタを使用することが、すなわち、そのまま表皮効果を得ることにはつながらない。表皮効果を得るためには、平面インダクタを利用した分散磁場を形成することも重要であるが、用いる交流磁場の周波数や導電性膜の導電率、透磁率に影轡されるし、コイルと導電性膜の距離にも依存される。
【0027】
よって、ここで表皮効果によって、磁束が相対的に貫通する状態と磁束が相対的に貫通しない状態を形成することは、インダクタの形状のみならず、用いる周波数、導電性膜の導電率、透磁率などを加味して、設定しなければならない。
【0028】
こうした設定を適正化することによって、導電性膜内を相対的に磁場が貫通する状態と、導電性膜内を相対的に磁場が貫通しない状態を形成することが重要であり、その二つの状態変化を利用することで、研磨の遷移過程に基づく導電性膜の諸量(膜厚、導電率、透磁率)を求めることが可能となる。また、表皮効果は、電磁波が導体の内部にまで侵入しない現象を表わしたものであるが、ここでの表皮効果は、磁場が導体膜内を貫通している状態と、貫通しない状態の臨界状態に対応する意味でも使用する。
【0029】
また、導電性膜の膜厚を測定する方法としては、こうした公知例以外にも4探針で導電性膜の比抵抗を測定して、その比抵抗から膜厚を測定する方法もある。しかし、導電性膜に直接接触して測定するため、導電性膜表面を傷つけるほか、探針先端の金属皮膜の状態や、探針先端とウェーハ表面との接触抵抗などによって、膜厚値が大幅に狂うこともある。
【0030】
そこで、上述のような従来技術を改善するために、次のような課題が生じてくる。すなわち、膜内に形成されている微細な配線まで強い磁束を及ぼすことなく、その結果、電磁誘導によって誘起される渦電流の発生を抑制して、渦電流によるジュール熱損を極小に抑える必要がある。さらに、デバイス素子内の配線を渦電流形成によるエレクトロマイグレーションにより断線することをなくす必要がある。また、センサと導電性膜のギャップの変化やスラリー等の誘電物質が介在することによって、誘起される渦電流量が全体的にシフトして、閾値の設定が大幅に変化して検出しにくくなるといった事態をなくす必要がある。
【0031】
また、デバイスウェーハを貫通しない程度の微細な磁場であっても、十分に精度よく検出することができるようにする必要がある。さらに、フィルムに接触することなく、非接触で、素子表面を傷つけることなく測定することができるようにする必要がある。また、所望の薄膜量を感度よく測定することができるようにする必要がある。
【0032】
従って、研磨終了時点を精度よく予測・検出し、また除去すべき残膜量及び研磨レート等をその場で精度よく算出して、所定の導電性膜が適正に除去されて所望の膜厚になっているかを正確に評価するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明は、この課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明は上記の目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載の発明は、基板上に形成された導電性膜の膜厚を測定する膜厚測定方法において、導電性膜の表面にコイルを対向させ、コイルに供給する交流電流によってコイルに誘起させた磁場を導電性膜に作用させ、その導電性膜の表皮効果に影響するパラメータを変化させてコイルに与えることにより、磁場を膜内へ相対的に貫通させない状態と、磁場を膜内へ相対的に貫通させる状態とを形成し、表皮効果に影響される状態変化に基づいて誘起される渦電流、及び誘起される渦電流に対応する諸量の変化から、薄膜構成及び膜諸量を測定する膜厚測定方法を提供する。
【0034】
このような膜厚測定方法によれば、表皮効果によって、ある条件においては磁場が導電性膜の膜内へ相対的に貫通しない状態を形成し、また、別なある条件においては、磁場が導電性膜内を貫通する状態を形成する。これによって、誘起される渦電流が大きく変化する。例えば、ここで、膜諸量として「膜厚」を測定するとして、表皮効果に影轡するパラメータとして「周波数」を変化させるとする。周波数を変化させることによって、ある周波数では、表皮効果によって磁場が導電性膜内に侵入しない。このとき、導電性膜を磁束が貫通しないため渦電流はほとんど発生しない。それに対して、周波数を低下させていくと、ある周波数から磁束が導電性膜を貫通するようになる。その磁束状態の変化に基づく渦電流の変化の結果、変化の臨界周波数をモニタすることで、膜諸量(例えば、膜厚)を精度良く測定することが可能となる。表皮効果の式は後述するが、それによると、電磁波(電場、磁場を含む)が、導体膜内に入り込む深さ、いわゆる表皮深さ(浸透深さ)は、その導体の誘電率、透磁率、及び与える周波数に依存して変化する。
【0035】
また、これらの値(表皮深さ)は、電磁波が導体に対して垂直に入射する際の値であるが、電磁波が導体に対してある一定の角度で侵入する場合などは、侵入可能な深さも変化するため、電磁波の侵入角度なども磁場が導体膜内に入り込む深さに影響する。こうしたことから、電磁波が表皮効果によって貫通しなくなる状態と貫通する状態とを形成するためには、周波数や磁束の入射角などの諸量が影響する。
【0036】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、表皮効果に影響するパラメータは、交流電圧の周波数、対向するコイルの角度、又は対向するコイルと導電性膜の距離、の少なくとも1つであることを特徴とする膜厚測定方法である。
【0037】
このような膜厚測定方法によれば、例えば、コイルに印加する交流電圧の周波数を変化させて周波数の変曲点をサーチし、その変曲点から膜厚を求めることができる。具体的には、発振回路を形成して、その発振回路の周波数を変化させることにより、表皮効果の影響による渦電流の変化をモニタして膜厚を測定する方法を提供することができる。尚、発振回路を使用した場合は、共振周波数の変化によって渦電流量をコイルの相互インダクタンスとして検出することができる。
【0038】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、誘起される渦電流に対応する諸量は、導電性膜による相互インダクタンス、共振回路の共振周波数、導電性膜のインピーダンス、導電性膜に発生する反発磁束量、の少なくとも1つであることを特徴とする膜厚測定方法である。
【0039】
このような膜厚測定方法によれば、コイルに誘起させた磁場を導電性膜に作用させて、その磁場を膜内へ貫通させて導電性膜に渦電流を発生させている。そして、その渦電流によって生じた導電性膜の相互インダクタンスや、共振回路の共振周波数や、導電性膜のインピーダンスや、導電性膜に発生する反発磁束量などに基づいて膜厚を測定することができる。
【0040】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1,2,又は3記載の発明において、膜諸量は、導電性膜の膜厚、導電性膜の導電率分布、又は導電性膜の透磁率分布、の少なくとも1つであることを特徴とする膜厚測定方法である。
【0041】
このような膜厚測定方法によれば、コイルによって発生させた磁束を導電性膜に貫通させない状態と貫通させる状態とを形成して、導電性膜に渦電流を発生させることにより、導電性膜の膜厚や、導電性膜の導電率分布や、導電性膜の透磁率分布などを測定することができる。
【0042】
また、請求項5に記載の発明は、基板上に形成された導電性膜の膜厚を測定する膜厚測定装置であって、導電性膜の表面にコイルを対向させ、そのコイルに交流電圧をかけてそのコイルに誘起させた磁湯を該導電性膜に作用させ、コイルに与える周波数を掃引させて、磁場を膜内へ相対的に貫通させない状態と、磁場を該膜内へ相対的に貫通させる状態とを形成し、交流電圧の周波数変化に対応して、表皮効果に其づいた前記導体性膜の渦電流の変化部分から薄膜構成及び膜諸量を測定することを特徴とする膜厚測定装置である。
【0043】
このような膜厚測定装置によれば、表皮効果によって、ある条件においては磁場が導電性膜の膜内へ相対的に貫通しない状態を形成し、ある条件においては、磁場が導電性膜内を貫通する状態を形成する。これによって、誘起される渦電流が大きく変化する。例えば、膜厚を測定する場合、表皮効果に影轡するパラメータとして周波数を変化させることによって、ある周波数では、表皮効果によって磁場が導電性膜内に侵入しないので渦電流はほとんど発生しない。また、周波数を低下させていくと、ある周波数から磁束が導電性膜を貫通するようになるので渦電流が変化する。その結果、渦電流が変化する臨界周波数をモニタすることで、膜諸量(例えば、膜厚)を精度良く測定することができる。
【0044】
また、請求項6に記載の発明は、基板上に形成された導電性膜の膜厚を測定する膜厚測定装置であって、導電性膜の表面にコイルを対向させ、コイルに交流電圧をかけてそのコイルに誘起させた磁場を導電性膜に作用させ、コイルに与える表皮効果に影響するパラメータを変化させることにより、磁場を膜内へ相対的に貫通させない状態から、磁場を膜内へ相対的に貫通させる状態を形成すると共に、磁場が膜内へ相対的に貫通させることにより、渦電流に変化部分を検知した際に、磁場の膜内への侵入を軽減乃至は無くすと共に、渦電流の変化部分に基づいて膜構成及び膜諸量を測定することを特徴とする膜厚測定装置である。
【0045】
このような膜厚測定装置によれば、電磁波が導体膜内に入り込む表皮深さは、その導体の誘電率、透磁率、及び与える周波数に依存して変化する。また、表皮深さの値は、電磁波が導体に対して垂直に入射する際の値であるが、電磁波が導体に対してある一定の角度で侵入する場合などは、侵入可能な深さも変化するため、電磁波の侵入角度なども磁場が導体膜内に入り込む深さに影響する。こうしたことから、電磁波が表皮効果によって貫通しなくなる状態と貫通する状態とを形成するためには、周波数や磁束の入射角などの諸量が影響する。
【0046】
また、請求項7に記載の発明は、基板上に形成された導電性膜の膜厚を測定する膜厚測定装置であって、基板上において連続的に導体膜を除去又は堆積させる過程において、導電性膜の表面にコイルを対向させ、交流電流によってコイルに誘起させた磁場を対向する導電性膜に作用させ、その導電性膜の表皮効果に影響するパラメータを変化させてコイルに与えることにより、磁場を膜内へ相対的に貫通させない状態と、磁場を核膜内へ相対的に貫通させる状態とを形成し、その状態変化に基づいて誘起される渦電流の変化及び渦電流に対応する諸量の変化から、導電性膜の残り膜厚、除去膜厚、及びそれらの変化量、変化速度を測定して膜構成及び膜諸量を測定することを特徴とする膜厚測定装置である。
【0047】
このような膜厚測定装置によれば、コイルが高周波で駆動され、そのコイルから高周波の周期に対応して変化する磁束が発生する。従って、研磨により所定の導電性膜が表皮深さに対応した膜厚に至るまでは、所定の導電性膜に誘起される磁束は、表皮深さの領域を膜面に沿ってほぼ平行に通過する。研磨が進行して所定の導電性膜が表皮深さと同等もしくはその付近の膜厚になると、所定の導電性膜を貫通する漏洩磁束が生じ始める。この磁束の変化により所定の導電性膜中に電磁誘導によって誘起される渦電流量が変化する。該渦電流は膜厚が減少していくにつれて、膜を貫通する漏洩磁束が増大していくため、徐々に誘起される渦電流が増大する。この広い領域に発生した渦電流により、該所定の導電性膜内に大きな相互インダクタンスが発生する。この相互インダクタンスは、高周波インダクタ型センサにおけるセンサ回路系の自己インダクタンスを減少させるように作用する。このように、初期は、導電性膜の膜厚が減少しても、導電性膜に入射した磁束がウェーハを貫通しない程度である場合は、一定の渦電流が形成される。その後、膜厚がさらに減少して表皮深さに対応した膜厚以下になった場合、一部の磁束がウェーハ上の導電性膜を貫通してウェーハの裏面にまで漏洩する磁束が生じる。このとき漏洩磁束の増加と共に膜内に誘起される渦電流が大きくなる。次に、ある一定の膜厚までウェーハ表面に形成される渦電流は増大するが、その後、さらに導電性膜が除去されるにしたがって、渦電流を発生する導電性膜自身が減少するため、渦電流は減少する。結果的に、単調な膜厚減少過程であるにも関わらず、一度貫通磁束増大とともに渦電流は増大し、その後さらなる膜厚の減少に伴って、渦電流を生じる体積自体が減少することに伴って急速に減少するため、誘起される渦電流に対応した相互インダクタンスには極大点が現われる。この渦電流の急速な減少により前記相互インダクタンスも急速に減少してセンサ回路系のインダクタンスは増加に転じる。このように、研磨の進行により所定の導電性膜が表皮深さと同等もしくはその付近の膜厚になった以降において、渦電流が発生しその後の急速な減少によりセンサ回路系のインダクタンスが一旦減少してその後増加に転じる。この挙動により高周波インダクタ型センサから発振される共振周波数の波形にピーク(変曲点)が発生する。このピークを基に研磨完了点手前の基準点が検出され、該基準点から研磨完了時点が予測される。言い換えると、導電性膜の膜厚を測定することができる。
【0048】
このピークは、表皮深さに対応した膜厚で現われるため、先に述べたような誘起された渦電流量が全体的にシフトすることによる閾値の設定が変動するといった問題はなく、絶えず、残りの膜厚に対応した位置にピークが出現する。特に、導電性膜が、例えば、Cuの場合、Cuの残り膜が710Åの付近にピークが出現する。また、W膜の場合は、Wの残り膜がもう少し厚い部分2500Åにピークが出現する。この膜厚は、実際の表皮深さとは異なるが、表皮深さに対応した数値になっている。表皮深さδは、電磁波の強度が1/eの大きさになる深さを便宜的に示した指標であるが、このピーク位置は、材料の導電率、透磁率、印加する周波数等によって決定されることからも、表皮効果によってもたらされている。本発明は、この材料の表皮効果によって現われる特異な現象を巧みに利用して、達成した技術である。特に、配線材料のCMPにおいて配線材料は高導電率を有するため、ピーク位置は比較的終点付近(710Å)で鋭いピーク(極大点)となって現われる。そのため、様々な外乱に対しても揺らぐことなく、ロバストな終点検出・終点予測が可能になる。
【0049】
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、予め、実際に測定する導電性膜のサンプル、又は対応するサンプルを用いて、導電性膜の表皮効果に影響するパラメータを変化させて前記コイルに与えると共に、磁場を該膜内へ相対的に貫通させない状態と、磁場を該膜内へ相対的に貫通させる状態とを形成し、その表皮効果に影響される誘起される渦電流、乃至は誘起される渦電流に対応する諸量を予め測定して得られたサンプルのリファレンス波形の変化との対比から、実サンプルにおける膜構成及び膜諸量を測定・判別することを特徴とする膜厚測定装置である。
【0050】
このような膜厚測定装置によれば、膜内に故意に積極的に渦電流を生じさせて、膜厚をモニタするものではない。従来の公知のセンサでは、導電性膜を貫通させるような磁場を与えるために、該磁場に指向性を持たせるようにセンサコイルを形成しているが、本発明における膜厚測定装置では、平面インダクタを使用している。これにより、磁場に指向性を与えるのではなく、導電性膜に対して、導電性膜に深く浸透しないように適度に磁場を発散させることができる。これは、磁場が深く浸透した場合、又は磁場を深く浸透させるために強力な磁場を与えた場合は、内部の配線が渦電流によって、局部的に過熱される場合や、エレクトロマイグレーション等によって、配線自体が断線してしまうからである。よって、導電性膜に極力磁場を浸透させず、言い換えれば素子にダメージを与えるような渦電流を発生させない程度の、適度の磁束分布を形成する平面インダクタの構成としている。また、導電性膜が除去される間際で導電性膜が薄くなると、適度に発散させる磁場を与えたとしても、一部は導電性膜を貫通する磁束が現われる。この終点付近の薄い導電性膜状態になったときに現われる急激な変化をモニタする。よって、周波数、インダクタ及びその信号を検出するアルゴリズムは、終点付近の変曲点を最大化する構成としている。
【0051】
また、請求項9に記載の発明は、基板上に形成された導電性膜の膜厚を測定する膜厚測定装置において、導電性膜を有する導電性基板を保持する保持手段と、導電性基板に対して一定の距離を隔てて対向させるコイルと、コイルと並列に接続されたコンデンサと、コイルとコンデンサとによって形成される共振回路に信号を与える発信器と、共振回路の共振周波数を求める周波数カウント手段と、コイルに高周波の交流電流を与えて、コイルに誘起させた磁場を対向する前記導電性膜に作用させ、導電性膜の表皮効果に影響するパラメータを変化させるパラメータ変化手段と、膜内へ相対的に磁場を貫通させない状態と、該膜内へ相対的に磁場を貫通させる状態とを形成し、その表皮効果に基づく状態変化によって誘起される渦電流の変化又は誘起される渦電流に対応する諸量の変化を測定する測定手段とを備え、基板上に形成された膜厚構成及び膜諸量を測定することを特徴とする膜厚測定装置である。
【0052】
このような膜厚測定装置によれば、表皮効果によって磁場が導電性膜の膜内へ貫通しない状態と貫通する状態を形成することができるので、誘起される渦電流が大きく変化する。従って、膜厚を測定する場合、表皮効果に影轡するパラメータとして周波数を変化させることにより、ある周波数では、表皮効果によって磁場が導電性膜内に侵入しないので渦電流はほとんど発生しない。また、周波数を低下させていくと、ある周波数から磁束が導電性膜を貫通するようになるので渦電流が変化する。その結果、渦電流が変化する臨界周波数をモニタすることで、膜諸量(例えば、膜厚)を精度良く測定することができる。
【0053】
また、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、パラメータ変化手段は、高周波の交流電流の周波数、コイルと導電性膜の間の距離、又は導電性膜の面に対するコイルの角度の少なくとも1つを変化させることを特徴とする膜厚測定装置である。
【0054】
このような膜厚測定装置によれば、例えば、周波数を変化させて、その変曲点から膜厚を求めることができる。具体的には、発振回路を形成して、その発振回路の周波数を変化させることにより、表皮効果の影響による渦電流の変化をモニタして膜厚を測定する膜厚測定装置を提供することができる。尚、発振回路を使用した場合は、共振周波数の変化によって渦電流量をコイルの相互インダクタンスとして検出することができる。
【0055】
また、請求項11に記載の発明は、請求項5、6、7、8、9、又は10記載の発明において、膜諸量は、導電性膜の膜厚、導電率分布、又は透磁率分布、の少なくとも1つであることを特徴とする膜厚測定装置である。
【0056】
このような膜厚測定装置によれば、コイルによって発生させた磁束を導電性膜に貫通させない状態と貫通させる状態とを形成して、導電性膜に渦電流を発生させることにより、導電性膜の膜厚や、導電性膜の導電率分布や、導電性膜の透磁率分布などを測定することができる。
【0057】
また、請求項12に記載の発明は、請求項5、6、7、8、9、10、又は11記載の発明において、コイルは、2次元の平面インダクで形成されていることを特徴とする膜厚測定装置である。
【0058】
このような膜厚測定装置によれば、導電性膜に対向するコイルには平面コイルを使用している。これにより、磁場に指向性を与えるのではなく、導電性膜に対して、導電性膜に深く浸透しないように適度に磁場を発散させることができる。これは、磁場が深く浸透した場合、又は磁場を深く浸透させるために強力な磁場を与えた場合、内部の配線が渦電流によって、局部的に過熱される場合や、エレクトロマイグレーション等によって、配線自体が断線してしまうからである。よって、導電性膜に極力磁場を浸透させず、言い換えれば素子にダメージを与えるような渦電流を発生させない程度の、適度の磁束分布を形成する平面インダクタの構成としている。また、導電性膜が除去される間際で導電性膜が薄くなると、適度に発散させる磁場を与えたとしても、一部は導電性膜を貫通する磁束が現れる。この終点付近の薄い導電性膜状態になったときに現われる急激な変化をモニタする。よって、周波数、インダクタ及びその信号を検出するアルゴリズムは、終点付近の変曲点を最大化する構成としている。
【発明の効果】
【0059】
請求項1に記載の発明によれば、周波数を変化させることによって磁場が導電性膜の膜内へ貫通する状態と貫通しない状態を形成することができるので、導電性膜に誘起される渦電流が大きく変化する。このような磁束状態の変化に基づく渦電流の変化によって、その変化の臨界周波数をモニタすることで、例えば、膜厚を精度良く測定することができる。このとき、臨界周波数の変曲点は鋭いピーク値を持っているので、様々な外乱などによって変曲点が揺らぐことがない。このため、変曲点に基づいて測定された膜厚は極めて精度のよいものとなる。
【0060】
請求項2に記載の発明によれば、コイルに印加する発振回路の周波数を変化させることにより、その周波数の変曲点を求めれば、自動的に導電性膜の膜厚を求めることができる。従って、簡単な検出回路の構成によって高精度に膜厚を求めることが可能となる。
【0061】
請求項3に記載の発明によれば、コイルに誘起させた磁場を導電性膜に作用させて導電性膜に渦電流を発生させたとき、その渦電流によって生じた導電性膜の相互インダクタンス、共振回路の共振周波数、導電性膜のインピーダンス、あるいは導電性膜に発生する反発磁束量などを測ることによって膜厚を測定することができる。従って、簡単な測定回路によって導電性膜の膜厚を測定することができる。
【0062】
請求項4に記載の発明によれば、コイルによって発生させた磁束を導電性膜に貫通させない状態と貫通させる状態とを形成して、導電性膜に渦電流を発生させることにより、導電性膜の膜厚を測定することができるだけではなく、導電性膜の導電率分布や導電性膜の透磁率分布などを測定することができる。従って、研磨時における導電性膜の研磨状態を多方面から評価することができるので、半導体ウェーハの生産歩留りを向上させることができる。
【0063】
請求項5に記載の発明によれば、例えば、半導体ウェーハの膜厚を測定する場合、表皮効果に影轡するパラメータとして周波数を変化させることによって、ある周波数では、表皮効果によって磁場が導電性膜内に侵入しないので渦電流はほとんど発生しない。また、周波数を低下させていくと、ある周波数から磁束が導電性膜を貫通するようになるので渦電流が変化する。その結果、渦電流が変化する臨界周波数をモニタすることで、膜厚を精度良く測定することができる。
【0064】
請求項6に記載の発明によれば、周波数を変化させるだけでなく、導電性膜の膜内に入射する磁束の入射角を変化させることによって、電磁波が表皮効果によって膜内を貫通しなくなる状態と貫通する状態とを形成することができる。従って、多面的な測定方法によって精度よく導電性膜の膜厚を測定することができる。
【0065】
請求項7に記載の発明によれば、導電性膜にコイル近接させ、そのコイルで形成される磁束により導電性膜に誘起される磁束変化をモニタし、研磨中の膜厚が導電性膜の材質を一因子として決まる表皮効果による磁束変化を基に研磨完了時点を予測することができる。このとき、測定周波数の変曲点には鋭いピークが発生するので、様々な外乱に対しても揺らぐことなく、絶えず、残りの膜厚に対応した位置に出現する。このため、変曲点を基に検出された基準点から研磨完了時点を精度よく予測して検知することができる。
【0066】
請求項8に記載の発明によれば、平面型のコイル(インダクタ)を用いることによって、導電性膜に極力磁場を浸透させないようにしている。言い換えれば、素子にダメージを与えるような渦電流を発生させない程度の、適度の磁束分布を形成することができる。
【0067】
請求項9に記載の発明によれば、表皮効果によって磁場が導電性膜の膜内へ貫通しない状態と貫通する状態を形成することができるので、誘起される渦電流が大きく変化する。従って、表皮効果に影轡するパラメータとして周波数を変化させることにより、渦電流が変化する臨界周波数をモニタして膜厚を精度良く測定することができる。
【0068】
請求項10に記載の発明によれば、発振回路の周波数を変化させてコイルに印加することにより、表皮効果の影響による渦電流の変化をモニタして膜厚を測定することができる。このとき、発振回路を使用した場合は、共振周波数の変化によって渦電流量をコイルの相互インダクタンスとして検出することができるので、検出手段を極めて容易に実現することが可能となる。
【0069】
請求項11に記載の発明によれば、コイルによって発生させた磁束を導電性膜に貫通させない状態と貫通させる状態とを形成して、導電性膜に渦電流を発生させることにより、導電性膜の膜厚や、導電性膜の導電率分布や、導電性膜の透磁率分布などを測定することができるので、半導体ウェーハの薄膜構成を多方面から観測することができる。
【0070】
請求項12に記載の発明によれば、磁束を発生させるコイルは2次元の平面インダクで形成されているので、導電性膜に極力磁場を浸透させないようにすることができる。すなわち、半導体素子にダメージを与えるような渦電流を発生させない程度の、適度の磁束分布を形成して膜厚を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
本発明はウェーハの研磨終了時点を精度良く予測・検出し、又、除去すべき残膜量及び研磨レート等をリアルタイムで精度良く算出し、所定の導電性膜が適正に除去されて所望の膜厚に形成させるという目的を達成するために、基板上に形成された導電性膜の膜厚を測定する膜厚測定方法において、前記導電性膜の表面にコイルを対向させ、前記コイルに供給する交流電流によって該コイルに誘起させた磁場を該導電性膜に作用させ、該導電性膜の表皮効果に影響するパラメータを変化させて前記コイルに与えることにより、前記磁場を該膜内へ相対的に貫通させない状態と、該磁場を該膜内へ相対的に貫通させる状態とを形成し、前記表皮効果に影響される状態変化に基づいて誘起される渦電流、及び誘起される渦電流に対応する諸量の変化から、薄膜構成及び膜諸量を測定することを特徴とする膜厚測定方法及び装置を提供することによって実現した。
【実施例】
【0072】
以下、本発明の好適な実施例を図1乃至21に従って詳述する。
先ず、原理図を用いて、本発明に係る膜厚測定装置について説明する。図1は、本発明の膜厚測定装置の構成を示す概念図である。図1に示すように、X,Y方向又はR,θに移動できるウェーハステージ101の表面にウェーハ102が搭載されている。そして、ウェーハ102に対して空間を隔てて対向する位置にコイル103を備えるセンサ104が配置されている。すなわち、ウェーハ102とコイル103が空間を隔てて対向配置されている。さらに、センサ104とインピーダンスアナライザ(又は、ネットワークアナライザ)105が接続され、センサ104から膜厚検出信号が外部に出力されている。
【0073】
図2は、図1に示す膜厚測定装置において、インピーダンスアナライザ(又は、ネットワークアナライザ)105によって周波数を掃引したときのインピーダンスの変化を示す特性図であり、横軸に掃引する周波数を示し、縦軸にウェーハ103の導電性膜のインピーダンスを示している。
【0074】
すなわち、コイル103によって発生させた磁束がウェーハ103の導電性膜を進入する状態においては、進入する磁束の大きさに応じてウェーハ103の導電性膜に発生する渦電流が増大する。そして、磁束の周波数が上昇するにつれて渦電流によって消費されるジュール熱も増大する。さらに、インピーダンスアナライザ(又は、ネットワークアナライザ)105によって周波数を増加させて行くと、ウェーハ103の導電性膜の表皮効果によって周波数の上昇と共に磁束がウェーハ103の導電性膜の内部に侵入し難くなる。それに伴って導電性膜に形成される渦電流も急激に減少する。このとき、ウェーハ103の導電性膜に与える交流磁場は、主として、ウェーハ103の導電性膜の表面を伝搬することによって損失する表面インピーダンスによって消費されるが、これは、渦電流で消費されるエネルギーに比べて極めて小さい。
【0075】
従って、コイル103に印加する交流電圧の周波数を上昇させて行くと、ある周波数を変曲点(つまり、臨界周波数)としてモードが切り替わって渦電流量が大きく変化するので、図2に示すようにインピーダンスに変曲点が現われる。このインピーダンスの変曲点を利用して、ウェーハ103の導電性膜の膜諸量(例えば、膜厚)と表皮効果に影響するパラメータ(例えば、周波数)との関係からウェーハ103の膜厚を求めることができる。
【0076】
すなわち、インピーダンスアナライザ(又は、ネットワークアナライザ)105によって周波数を掃引して、コイル103で消費するインピーダンスの変曲点(又は、変化率)に達したところで周波数(つまり、臨界周波数)をモニタする。このときの周波数の掃引方向としては、ウェーハ102内にコイル103からの磁束が侵入しないようにするため、周波数が高い領域から低い領域へ掃引させる方がベターである。これによって、インピーダンスの変化又は共振周波数の変化の変曲点(つまり、臨界周波数)によってウェーハ103の膜厚を測定することができる。すなわち、センサ104に対してウェーハ103をX,Y方向又はR,θに移動させることにより、ウェーハ103の全面における膜厚を測定して、センサ104から外部の測定機器(図示せず)へ膜厚信号を送出することができる。
【0077】
図3は、図1に示す膜厚測定装置において、ウェーハ103の導電性膜の膜厚をパラメータとしたときの周波数の変曲点の変化を示した特性図であり、横軸に掃引する周波数を示し、縦軸にウェーハ103の導電性膜のインピーダンスを示している。すなわち、図3に示すように、導電性膜の膜厚が薄いほど(例えば、膜厚が10nmのときに)周波数の変曲点のピークが顕著に現われている。これは、膜厚が薄いほど表皮効果に影響される状態変化が顕著に現われているためである。
【0078】
図4は、図1に示す膜厚測定装置において、膜厚と変曲点の周波数(臨界周波数)との関係を表わした特性図であり、横軸に膜厚を示し、縦軸に変曲点の周波数(臨界周波数)を示している。図4から分かるように、膜厚が10μm程度に厚いときは変曲点の周波数が低く且つ顕著に現われないので膜厚の検出精度が悪くなる。一方、膜厚が10nm程度と薄いときは、変曲点の周波数が高く且つ顕著に現われるので膜厚の検出精度がよくなる。以上のように、コイル103に与える表皮効果に影響するパラメータ(例えば、周波数)を変化させることによって、臨界周波数をインピーダンス変化の変曲点として求めることで、ウェーハ102の導電性膜の膜厚を高精度に求めることができる。
【0079】
図5は研磨完了時点の予測装置が組み込まれた化学機械研磨装置の斜視図、図6は研磨ヘッドの拡大縦断面図、図7は研磨完了時点の予測装置がプラテンに組み込まれた状態を説明するための一部破断して示す概略側面図、図8は研磨完了時点の予測装置が研磨ヘッドに組み込まれた状態を説明するための一部破断して示す概略側面図である。
【0080】
まず、本実施例に係る研磨完了時点の予測方法とその装置の構成を、これに適用される化学機械研磨装置の構成から説明する。図5において化学機械研磨装置1は、主としてプラテン2と、研磨ヘッド3とから構成されている。前記プラテン2は、円盤状に形成され、その下面中央には回転軸4が連結されており、モータ5の駆動によって矢印A方向へ回転する。前記プラテン2の上面には研磨パッド6が貼着されており、該研磨パッド6上に図示しないノズルから研磨剤と化学薬品との混合物であるスラリーが供給される。
【0081】
前記研磨ヘッド3は、図6に示すように、主としてヘッド本体7、キャリア8、リテーナリング9、リテーナリング押圧手段10、弾性シート11、キャリア押圧手段16及びエアー等の制御手段で構成されている。
【0082】
前記ヘッド本体7は前記プラテン2よりも小形の円盤状に形成され、その上面中央に回転軸12(図5参照)が連結されている。該ヘッド本体7は前記回転軸12に軸着されて図示しないモータで駆動され図5の矢印B方向に回転する。
【0083】
前記キャリア8は円盤状に形成され、前記ヘッド本体7の中央に配設されている。該キャリア8の上面中央部とヘッド本体7の中央下部との間にはドライプレート13が設けられており、ピン14,14を介してヘッド本体7から回転が伝達される。
【0084】
前記ドライプレート13の中央下部と前記キャリア8の中央上部との間には作動トランス本体15aが固定されており、さらに前記キャリア8の中央上部には作動トランス15のコア15bが固定され、図示しない制御部に連結されてウェーハW上(図6の下方側)に形成されたCu等からなる導電性膜の研磨状態信号を該制御部に出力している。
【0085】
前記キャリア8の上面周縁部にはキャリア押圧部材16aが設けられており、該キャリア8は該キャリア押圧部材16aを介してキャリア押圧手段16から押圧力が伝達される。
【0086】
前記キャリア8の下面にはエアーフロートライン17から弾性シート11にエアーを噴射するためのエアー吹出し口19が設けられている。該エアーフロートライン17にはエアーフィルタ20及び自動開閉バルブV1を介してエアー供給源である給気ポンプ21に接続されている。前記エアー吹出し口19からのエアーの吹出しは前記自動開閉バルブV1の切替えによって実行される。
【0087】
前記キャリア8の下面にはバキューム及び必要によりDIW(純水)又はエアーを吹き出すための孔22が形成されている。該エアーの吸引は真空ポンプ23の駆動によって実行され、そして、自動開閉バルブV2をバキュームライン24に設け、該自動開閉バルブV2の切替えによって該バキュームライン24を介し、バキューム及びDIWの送給が実行される。
【0088】
前記エアーフロートライン17からのエアー送給及びバキュームライン24からのバキューム作用及びDIWの送給等は制御部からの指令信号によって実行される。
【0089】
なお、前記キャリア押圧手段16は、ヘッド本体7下面の中央部周縁に配置され、キャリア押圧部材16aに押圧力を与えることにより、これに結合されたキャリア8に押圧力を伝達する。このキャリア押圧手段16は、好ましくはエアーの吸排気により膨脹収縮するゴムシート製のエアバック25で構成される。該エアバック25にはエアーを供給するための図示しない空気供給機構が連結されている。
【0090】
前記リテーナリング9はリング状に形成され、キャリア8の外周に配置されている。このリテーナリング9は研磨ヘッド3に設けられたリテーナリングホルダ27に取り付けられ、その内周部に前記弾性シート11が張設されている。
【0091】
前記弾性シート11は円形状に形成され、複数の孔22が開穿されている。該弾性シート11は、周縁部がリテーナリング9とリテーナリングホルダ27との間で挟持されることにより、リテーナリング9の内側に張設される。
【0092】
前記弾性シート11が張設されたキャリア8の下部には、キャリア8と弾性シート11との間にエアー室29が形成されている。導電性膜が形成されたウェーハWは該エアー室29を介してキャリア8に押圧される。前記リテーナリングホルダ27はリング状に形成された取付部材30にスナップリング31を介して取り付けられている。該取付部材30にはリテーナリング押圧部材10aが連結されている。リテーナリング9は、このリテーナリング押圧部材10aを介してリテーナリング押圧手段10からの押圧力が伝達される。
【0093】
リテーナリング押圧手段10はヘッド本体7の下面の外周部に配置され、リテーナリング押圧部材10aに押圧力を与えることにより、これに結合しているリテーナリング9を研磨パッド6に押し付ける。このリテーナリング押圧手段10も好ましくは、キャリア押圧手段16と同様に、ゴムシート製のエアバック16bで構成される。該エアバック16bにはエアーを供給するための図示しない空気供給機構が連結されている。
【0094】
そして、図7又は図8に示すように、化学機械研磨装置1におけるプラテン2の上部の部分又は研磨ヘッド3のキャリア8の部分に、研磨完了時点の予測装置33がそれぞれ一つずつ組み込まれている。研磨完了時点の予測装置33がプラテン2側に組み込まれたとき、該研磨完了時点の予測装置33からの特徴的な変化等の検出信号は、スリップリング32を介して外部に出力される。
【0095】
なお、研磨完了時点の予測装置33は、プラテン2の上部の部分又は研磨ヘッド3のキャリア8の部分に、それぞれ二つ以上を組み込んでもよい。研磨完了時点の予測装置33を二つ以上を組み込んで、回転方向前方側の研磨完了時点の予測装置33から、時系列的に膜厚情報を採取することで、ウェーハW面内における導電性膜28の膜厚変化の分布情報等が得られる。
【0096】
図9は研磨完了時点の予測装置33の構成例を示す図であり、(a)はブロック図、(b)は平面状インダクタの他の構成例を示す図、(c)は図(b)の平面状インダクタの断面図である。該研磨完了時点の予測装置33における高周波インダクタ型センサ34の主体を構成している発振回路35は、インダクタンスLとなる二次元の平面状インダクタ36に、キャパシタンスCとなる集中定数キャパシタ37が直列に接続されて、LC回路が構成されている。前記平面状インダクタ36は、絶縁物からなる方形状等の基板36a上に、Cu等の導電物質を用いてメアンダ形に構成されている。
【0097】
該平面状インダクタ36は、図9(a)に示すメアンダ形の他に、図9(b)に示す平面状インダクタ41のように、方形状の基板41a上に、角形のスパイラルで構成してもよい。また、図示しない丸形のスパイラルとしてもよい。二次元の平面状インダクタ36,41は、ガラス・エポキシや紙・フェノール等の絶縁物からなる基板36a,41a上にCu等の導電膜を成膜後、エッチング等で製作することで、線幅を非常に微細化して製作することができ、全体形状も図9(c)に示すように、一辺が23mm程度の方形状等に小型化することができる。そして、平面状インダクタ36,41の小形化により微小な磁場を効率よく発生させることができ、磁場を導電性膜28の内部に深く浸透させることなく、該導電性膜28が除去される終点付近の変化挙動を精度よく検出することが可能となる。
【0098】
前記LC回路からの出力信号はオペアンプ等で構成された増幅器38に入力され、該増幅器38の出力は抵抗等で構成されたフィードバック・ネットワーク39に入力されている。フィードバック・ネットワーク39の出力信号が、平面状インダクタ36にポジティブ・フィードバックされることにより、該平面状インダクタ36を含めて発振回路35が構成されている。
【0099】
該発振回路35は、基本的には、図10の構成例に示すように、その発振周波数帯fが、次式(1)に示すように、平面インダクタ36のインダクタンスLと集中定数キャパシタ37のキャパシタンスCで決まるコルピッツ型等の発振回路となっている。
【0100】
【数1】

【0101】
前記増幅器38の出力端子には、周波数カウンタ40が接続されている。該周波数カウンタ40から後述する基準点を示す特徴的な変化の検出信号等がデジタルで外部に出力される。検出信号出力をデジタルで伝送することで、ノイズの影響及び出力の減衰が防止される。また、膜厚データの管理容易性が得られる。
【0102】
前記平面状インダクタ36を含む高周波インダクタ型センサ34と該周波数カウンタ40とを含めて研磨完了時点の予測装置33が構成されている。高周波インダクタ型センサ34おける発振回路35と、その発振(共振)周波数の変化をモニタするための周波数カウンタ40とを近接して配置することで、該発振回路35と周波数カウンタ40間の配線・結線部分で分布定数回路を形成してインダクタンスやキャパシタンスが不要に大きくなるのが防止されて、高周波インダクタ型センサ34付近にもたらされる導電性膜28の研磨の進行に伴う磁束の変化を精度よく検出することが可能となる。
【0103】
該研磨完了時点の予測装置33は、平面状インダクタ36を除いた他の構成部品ないしは回路がIC(集積回路)化されてパッケージ33aに内装されている。前記平面状インダクタ36は、薄い絶縁膜で被覆されてパッケージ33aの表面に固定される。パッケージ化された研磨完了時点の予測装置33が前記化学機械研磨装置1に組み込まれるとき、前記図7、図8に示したように、平面状インダクタ36がウェーハW表面部の導電性膜28と対峙するように組み込まれる。
【0104】
また、発振回路35を構成している前記集中定数キャパシタ37はキャパシタンスが可変となっており、高周波インダクタ型センサ34は前記発振周波数帯の範囲内で、発振周波数を選択できるようになっている。
【0105】
本実施例では研磨中の所定の導電性膜28が該所定の導電性膜28の表皮深さδに対応する膜厚になった場合の磁束変化を基に後述する特徴的な変化の検出を行っている。所定の導電性膜28における表皮深さδは、該所定の導電性膜28の材質と高周波インダクタ型センサ34の発振周波数fとに依存して式(2)のように決まる。
【0106】
【数2】

【0107】
ω:2πf、μ:透磁率、σ:導電率である。
【0108】
そして、該表皮深さδが、所定の導電性膜28の初期膜厚よりも小さく研磨終期において埋め込み部を除いた部分の所定の導電性膜28の膜厚より大になるように高周波インダクタ型センサ34の発振周波数fが選択されている。研磨除去対象の導電性膜28の材質がCuの場合において、前記発振周波数帯は、20MHz以上が選択される。
【0109】
上記の式(2)の関係によると周波数ωによって、磁場が導電性膜28に侵入できる深さδが決定される。周波数ωが大きくなると、磁場が侵入できる探さが制限されるようになる。磁場が導電性膜内に侵入しなくなる場合、導電性膜を鎖交する磁場によって生まれる渦電流の形成が劇的に減少する。その結果、相互インダクタンスが減少し、共振周波数が大きく変化する。
【0110】
導電性膜の透磁率及び導電率が一定もしくは既知である場合、周波数を掃引していくことで、所定の膜厚で大きく渦電流形成の変化点が生まれる。なぜなら、この変化点は、上式の表皮深さに対応するからであり、その表皮探さδに対応した膜厚で磁場が貫通するか、貫通しないかの状態において大きく分かれるからである。その結果、その磁場が貫通する場合と貫通しない場合の臨界周波数と、そのときの膜厚量は、一定の相関関係をもつ。この相関関係をあらかじめ、既知の導電性膜を有するウェーハに対して求め、その相関関係を元に、実際に評価するウェーハの臨界周波数を測定することによって、膜厚値を求めることが可能となる。
【0111】
ここで、臨界周波数を求めて膜厚値を求める方法としては、例えば、特開平8−285515号公報にあるように、発振器として周波数を掃引可能なスペクトルアナライザを使用してもよい。この場合、タンク回路及び監視中の基板上の金属フィルムに関連するその特性周波数ωに共振ピークを有している。膜厚の状態に応じて総インダクタンスLが変化し、金属フィルムが存在する場合、Q値が変化する。その変化をモニタしても良い。
【0112】
また、それ以外にも、特開2005−227256号公報に示すように、インピーダンスブリッジを形成し、コイルのインピーダンス変化をモニタして、導電性膜状態をモニタしてもよい。膜に誘起された渦電流をモニタする方法は、こうした公知の技術によって容易に達成することが可能となる。ただし、これらの方法と本発明が決定的に異なる部分は、センサ形状の部分や使用する周波数帯によって、導電性膜に対する表皮効果によって、与えられた高周波の磁場が導電性膜を貫通するか、しないかといった部分を利用し、その部分における回路系のインダクタンスやインピーダンスを利用してモニタするものか否かで根本的に大きく異なる。
【0113】
本発明では、平面インダクタを使用することで、磁束が導体膜を相対的に貫通する状態と、相対的に貫通しない状態とを形成し、その状態変化に基づいて検出する。その状態変化は、インダクタンスの極大点や、インピーダンスの極大点など、回路系の変化によって如実に現われるので、これを検出すればよい。
【0114】
尚、特開2005−227256号公報には、径の大きい領域での渦電流が空間分解能を低下させることが述べられており、さらに、外側に逆巻きのコイルを設けることで、径の大きい領域での渦電流を小さくすることが述べられている。一方、本発明では、磁束は、導体膜に対して分散して存在し、径の大きい部分では表皮効果によって導体膜に対して入り込まないため、径の大きい部分では渦電流をほとんど発生させない。
【0115】
ここで、前記「表皮深さに対応する膜厚」及び「表皮効果によって生じる磁束変化」について、図11の(a)〜(d)を用いて説明する。図11はコイルから発生した磁場が導体膜上でどのような向き((a)〜(d)各図中下方の矢印→)に配列しているかを電磁シミュレーションした結果を示す図である。これは、コイルに流れる電流が最大になる場合を示している。同図(a)はセンサからの発振周波数が1MHzで導体膜の膜厚が0.2μmの場合、同図(b)はセンサからの発振周波数が1MHzで導体膜の膜厚が1μmの場合、同図(c)はセンサからの発振周波数が40MHzで導体膜の膜厚が0.2μmの場合、同図(d)はセンサからの発振周波数が40MHzで導体膜の膜厚が1μmの場合である。
【0116】
電磁シミュレーションの設定は、磁場を形成するインダクタは指向性を持たない平面状インダクタとした。前記「表皮深さに対応する膜厚」とは、「表皮効果によって磁束変化が生じる膜厚」のことである。センサの発振周波数が1MHzではコイルの下側に存在する導体膜上の磁束は縦方向を向いている。この周波数では、膜厚が1μm及び0.2μmであっても、導体膜内を磁束が貫通している(図11(a)、(b))。こうした導体膜内を磁束が貫通する場合は、従来例に示されているように、導体膜内部に発生する渦電流は、膜厚減少に伴って減少する。よって、1MHzの場合、1μm以下の膜厚では、単調な挙動であるため、表皮効果は現われず、「表皮深さに対応する膜厚」も少なくとも1μmよりも厚い膜厚と考えられる。
【0117】
これに対し、センサの発振周波数が40MHzでは、明らかに導体表面での磁束向きが水平であり、膜厚が1μmでは、殆ど導体内部に入り込んでいない(図11(d))。明らかに、先の発振周波数が1MHzで膜厚が1μmの場合(図11(b))と比較すると、導体膜に入り込む磁束の向きが異なることが分かる。
【0118】
しかし、発振周波数が40MHzで導体膜が0.2μmまで薄くなると(図11(c))、一部の磁束のみが導体膜内部方向へ向いている。これは導体膜がCuでも、ある薄さになると一部の磁束が導体膜内を貫通することを示している。
【0119】
この40MHzの交番変化する磁束の場合、表皮効果に対応して、導体膜内の磁束の貫通状態が変化する。貫通磁束が徐々に増加する影響で、周波数は約700Å前後まで急激に上昇する。なお、膜厚が1μm以上では磁束は殆ど貫通していない。よって、この場合、「表皮深さに対応した膜厚」は、磁束が貫通するか・しないかの境界の膜厚とすると、約1μmということができる。このことからも、発振周波数を40MHzと高くし、平面状インダクタを使用すると、1μm厚みのCu導体膜内に磁束は殆ど入り込まず、これは表皮効果によるものである。
【0120】
Cu導体膜で発振周波数が40MHzの場合、Cuの導電率を58×106S/mとすると、表皮深さδは9.34μmになる。計算上は、膜厚が1μmだと磁束は導体膜内に十分入り込む計算になるが、平面状インダクタを使用しており、磁束に指向性がないことから、実際は発振周波数が40MHzの場合、膜厚が1μmでも表皮効果によって磁場は導体膜内に侵入しない。導体膜が薄くなるにつれて一部の磁束が導体膜内に入り込み、わずかに渦電流が発生する。このことより、渦電流を積極的に利用して膜厚測定するのではなく、終点付近の薄い膜厚になったときに、表皮効果により、わずかに漏洩・貫通する磁束を利用して、導体膜内に誘起される相互インダクタンスの変曲点(極大点)を利用して該導体膜の終点付近の膜厚状態をモニタすることが可能となる。
【0121】
この相互インダクタンスは、一次側コイル(センサ回路系の平面状インダクタで構成されるコイル)のインピーダンス成分にも対応する。コイル回路系(センサ回路系)のインピーダンス変化を求めるにあたり、導体膜に誘起される渦電流の変化とコイル側インピーダンス変化の関係を求める。図12に示すように等価回路を形成し、それぞれの構成要素を設定した場合、回路方程式は次のように表される。
【0122】
【数3】

【0123】
【数4】

【0124】
ここで、i、iは、それぞれ一次側と二次側に流れる電流であり、一次側には、vの電圧がコイルに印加されているとする。一定の角振動数ωをもつ交流の場合、それぞれ
【0125】
【数5】

【0126】
【数6】

【0127】
【数7】

【0128】
と表され、前記(3)、(4)式は次のように表される。
【0129】
【数8】

【0130】
この式を解くと次式になる。
【0131】
【数9】

【0132】
【数10】

【0133】
コイル側から見たインピーダンスZは以下のようになる。
【0134】
【数11】

【0135】
【数12】

【0136】
これより、コイル側の抵抗Rは、殆どゼロとみなされるため、インピーダンスZの実部は、導体膜に誘起される渦電流によって生じる相互インダクタンスMの二乗に比例し、対応していることが分かる。よって、ここでは、相互インダクタンスMの変化量、即ち、導電性膜に誘起される渦電流の変化を、一次側センサ回路系のインピーダンス実部の変化として示す。
【0137】
図13に、平面インダクタを使用した場合のインピーダンス実部の膜厚依存性について、二次元電磁シュミュレーションによって得た結果を示す。40MHzの場合では0.1μm以下に変曲点を有し、その後急激にインピーダンスは減少する。それに対して、1MHzの場合では膜厚に依存して単調に減少していることが分かる。これより、本題にあるような変曲点は、まず扱う周波数の大小によって現われることが分かる。また、このような変曲点の出現は、先の図11に示したような表皮効果の影響によることが磁束の向きによる変化から理解できる。
【0138】
しかし、周波数を40MHzとして、並びにインダクタ形状を平面インダクタにしさえすれば、表皮効果の影響によって変曲点が現われるかといっても必ずしもそうではない。ここで、表皮効果の影響によって、磁場が導体膜を相対的に貫通する状態と相対的に貫通しない状態を形成し、その差で評価する際に、膜厚に応じた表皮深さを変更させる手段とするパラメータとして、周波数しか存在しないかといえば、必ずしもそうではない。表皮高価の影響を変化させる手段として、インダクタと導体膜の距離、インダクタの大きさ、あるいはインダクタの形状によっても変化する。その事例として、平面インダクタを導電性膜に十分に近付けた場合において、同様に二次元有限要素シュミュレーションによって確認した。ここでは、平面インダクタを先に示した距離よりも1/1000近付け、2.4μmとした。コイルの大きさも1/1000として、半径を11μmとして計算した。先と同様に、コイルの周波数を40MHzとして、導体膜をCuとし膜厚を1μmとして計算したところ、1μmの膜厚であっても、先とは違い多くの磁束が貫通している。しかし、周波数を1GHzにまで引き上げると、殆どの磁束は貫通しなくなる。先と同様に、コイル径を1/1000、コイルと導電性膜距離1/1000とした場合において、一次コイル側インピーダンス実部の変化を示すと、40MHzの周波数であっても、変曲点を持たないことが分かる。1GHzまで周波数を上げると、1μm付近に変曲点が生じる。これは、先の導体膜内に入り込む磁場の向きからも表皮効果の影響で変曲点が生じたことが分かる。このことから、コイルの大きさや形状、あるいは、コイルと導電膜の間の距離によっても、膜厚に対応する変曲点位置が変化することが分かる。
【0139】
また、たとえ、コイルの形状や大きさ、距離によって、その変曲点位置がシフトしたとしても、周波数を変化させることにより、やはり同様にその周波数に応じて変曲点位置が変化する挙動はそのまま存在している。ここで、変曲点位置は周波数やコイルの形状、大きさ、距離などによってシフトする。よって、例えば、使用する周波数帯が、よく似た領域を使用しているから、同じ原理といえるものではない。ポイントとして、どのような状態(コイル形状、周波数帯)であっても、磁場が相対的に貫通する状態と相対的に貫通しない状態とを、表皮効果に影響するパラメータを適正化することによって作り出し、その表皮効果による臨界状態を効果的に利用して、劇的に変化する基準部分を形成し、その基準部分で膜厚を求めることを達成したものである。
【0140】
以上の実験結果から、表皮効果の影響を受けて変曲点を形成するには、ただ単に、周波数を高くして、平面インダクタを使用すればよいというわけではない。コイル(平面インダクタ)と導電性膜の距離やコイルの大きさなども適正に保つことも重要となる。また、被研磨対象膜の導電率及び透磁率など、その材料の物性に起因することは、タングステンを同様に研磨した場合の波形から、明らかになっている。
【0141】
よって、表皮効果によって、導電性膜内に磁束が侵入する・しないといった挙動を利用するためには、周波数、インダクタの形状や大きさ、インダクタと導電性膜間の距離、導電性膜の導電率、透磁率を適正に選択することで達成することができる。こうした表皮効果の影響による変曲点の出現を終点検出付近に現われるように設定し、その変曲点を検出するアルゴリズムを設定して、精度よく研磨完了点を予測する方法を新たに見出だし、本発明の骨子とするものである。
【0142】
先に示した従来技術と構成的に大きく異なる部分として、(イ)フェライトコアなど磁場を整形するインダクタではなく、磁場に指向性をなくし、研磨初期には表皮効果によって導電性膜内に積極的に磁場を侵入させない二次元の平面インダクタを使用したこと、(ロ)周波数を表皮効果が働く程度に高く設定したこと、(ハ)一次側インダクタの形状や大きさ及びインダクタと除去対象の導電性膜との距離について、導電性膜の導電率、透磁率を考慮して、表皮効果が働く程度に適正化したこと、(ニ)研磨対象膜の材質に基づく磁束の侵入する臨界深さを考慮して平面インダクタ、周波数、平面インダクタ−導電性膜間距離を設定したこと、が挙げられる。
【0143】
従来は、そうした表皮効果の影響が現われるような状態で装置の各要素を設定し、そのような表皮効果に基づく変曲点を伴う特徴的な変化の出現を故意に形成して、それを基に研磨完了点を予測したものはない。また、そのピークの存在を巧みに利用して、そのピークの部分を基準位置として、研磨完了点を予測する方法は従来示されていない。また、従来にない顕著な効果として、渦電流の消費部分として、導電性膜で消費されているのか、それとも導電性膜で消費されず、素子に磁場が漏れ、それを導電性膜で消費されない状態になっているのかなど、変曲点を伴う特徴的な変化を得ることで、磁場の侵入に関する状況を顕著に理解することが可能であるが、従来の方法では、磁場の素子に対する侵入に関する状況が分からず、素子への磁場のエネルギによるダメージを考慮していないこと、などが大きな違いとして考えられる。本発明はそうした明らかに異なる作用効果の違いに基づいて構成されたハ−ドウェア及びその検出アルゴリズムに基づくものである。
【0144】
次に、上述のように構成された研磨完了時点の予測装置が組み込まれた化学機械研磨装置の研磨作用及び研磨完了時点の予測方法を、図14、図15(a)〜(e)及び該図15の比較例としての図16(a)〜(e)を用いて説明する。図14は高周波インダクタ型センサにおける電磁結合で発生する磁場によるインダクタンスの変化作用を説明するための図、図15は導電性膜の研磨削除に伴う磁束及び渦電流の変化例及び膜厚基準点の検出作用を説明するための組図であり、(a)〜(d)は導電性膜の研磨削除に伴う磁束及び渦電流の変化例を示す図、(e)は導電性膜の膜厚変化に対する共振周波数の変化例を示す特性図である。図15(a)〜(d)では、平面状インダクタ36が、図を見やすくするため、スパイラル形に表示されている。
【0145】
まず、化学機械研磨装置1における研磨ヘッド3を図示しない移動機構により所定箇所に待機中の導電性膜28が非研磨のウェーハW上に載置する。そして、該研磨ヘッド3のバキュームライン24を作動させ、バキューム口19a及び孔22(バキューム孔)を介して弾性シート11下面のエアー室29を真空にし、これにより前記導電性膜28が非研磨のウェーハWを吸着保持し、そして、前記移動機構により、該導電性膜28が非研磨のウェーハWを吸着保持した研磨ヘッド3をプラテン2上に運び、該ウェーハWを、導電性膜28が研磨パッド6に対接するようにプラテン2上に載置する。
【0146】
前記バキュームライン24はウェーハW上部の導電性膜28の研磨作業が終了したとき、再び、該バキュームライン24の作動により前記ウェーハWを該研磨ヘッド3によって吸着保持し、図示しない洗浄装置へ搬送するときにも用いられる。
【0147】
次いで、前記バキュームライン24の作動を解除し、図示しないポンプからエアバック25にエアーを供給して該エアバック25を膨らませる。これと同時にキャリア8に設けたエアー吹出し口19からエアー室29にエアーを供給する。これにより、エアー室29の内圧が高くなる。
【0148】
前記エアバック25の膨らみによって、前記ウェーハW上部の導電性膜28とリテーナリング9が所定の圧力で研磨パッド6に押し付けられる。この状態でプラテン2を図5の矢印A方向に回転させるとともに研磨ヘッド3を図5の矢印B方向に回転させ、回転する研磨パッド6上に図示しないノズルからスラリーを供給してウェーハW上部の所定の導電性膜28を研磨する。
【0149】
ここで、周波数を固定して膜厚を薄い側へ変化させた場合を考える。次のように、高周波インダクタ型センサ34における平面インダクタ36で形成される磁束により研磨に伴う所定の導電性膜28の膜厚変化がモニタされて基準点となる特徴的な変化42が検出される。
【0150】
平面状インダクタ36が発振回路35から発振される高周波で駆動され、該平面状インダクタ36からその高周波の周期に対応して時間的に変化する磁束φが発生する。研磨初期において所定の導電性膜28に誘起される磁束φは、前記表皮深さδの領域のみを膜面に沿ってほぼ平行に通過し、所定の導電性膜28における表皮深さδを超えた領域への磁束φの侵入は回避される(図15(a))。また、高周波インダクタ型センサ34から発振される共振周波数も所定の導電性膜28の膜厚変化に関係なく一定に保持される(図15(e)のa領域)。
【0151】
研磨が進行して所定の導電性膜28が前記表皮深さδと同等もしくはその付近の膜厚になると、一部の磁束φが所定の導電性膜28を貫通して漏洩磁束φが生じ始める。所定の導電性膜28を貫通しない磁束φは、そのまま膜面に沿ってほぼ平行に通過する。そして、所定の導電性膜28中に貫通した漏洩磁束φ数に比例して渦電流Ieが発生する(図15(b))。
【0152】
さらに研磨が進行すると、漏洩磁束φが増えて渦電流Ieが導電性膜28の膜面に沿った広い領域に発生する(図15(c))。この広い領域に発生した渦電流Ieが、図14に示すように、さらに磁場Mを作り、その磁場Mが元の平面状インダクタ36から発生した磁束φを打ち消すように作用する。結果的に導電性膜28が形成した磁場Mによって、相互インダクタンスLmが上昇し、元の平面状インダクタ36の見かけ上のインダクタンスLが低下する。その結果、高周波インダクタ型センサ34から発振される発振周波数fは、式(13)のように増大する。
【0153】
【数13】

【0154】
したがって、相互インダクタンスの発生により、センサ回路系のインダクタンスが等価的に減少して高周波インダクタ型センサ34から発振される共振周波数が上昇する(図15(e)のb、cの領域)。
【0155】
さらに研磨の進行により漏洩磁束φは増えて飽和する。しかし渦電流Ieは、所定の導電性膜28の膜厚体積の減少に伴い急速に減少する(図15(d))。この渦電流Ieの急速な減少により前記相互インダクタンスも急速に減少する。この相互インダクタンスの急速な減少は、前記式(13)におけるインダクタンスの減少分Lmの低下につながり、結果としてセンサ回路系のインダクタンスが等価的に増加し、高周波インダクタ型センサ34から発振される共振周波数が急速に低下する(図15(e)のd領域)。
【0156】
このように、研磨の進行により所定の導電性膜28が表皮深さδと同等もしくはその付近の膜厚になった以降において、渦電流Ieが発生して増大しその後の急速な減少によりセンサ回路系のインダクタンスが一旦減少してその後増加に転じる。この挙動により高周波インダクタ型センサ34から発振される共振周波数の波形に急峻な上昇と急峻な下降を伴った変曲点(ピーク)Pを持つ特徴的な変化42が発生する。この研磨完了点手前に発生する変曲点(ピーク)Pを伴った特徴的な変化42を基に研磨完了時点が予測される。
【0157】
なお、研磨完了時点の予測は、該特徴的な変化42における変曲点(ピーク)Pを用いる場合に限らず、該特徴的な変化42における上昇開始点、上昇率、上昇量もしくは上昇から下降の変化量の少なくともいずれかを用いても研磨完了時点を精度よく予測することができる。所定の導電性膜28がCuの場合、特徴的な変化42における変曲点Pが検出された時点の残膜量は、ほぼ1000Å程度であり、該残膜量に対し仕上げ研磨等が行われて研磨を完了する。
【0158】
該仕上げ研磨としては、例えば前記特徴的な変化42における変曲点Pから、該変曲点Pにおける残膜量である表皮深さに対応した膜厚を所要の研磨レートで予め設定した研磨時間分研磨した後に研磨完了とする。又は、前記特徴的な変化42における変曲点Pにおける残膜量である表皮深さに対応した膜厚を前記研磨レートで除することで変曲点P検出後の所要研磨時間を算出し、変曲点Pの検出後に、前記算出された研磨時間分だけ研磨することで研磨を完了する。
【0159】
次いで、図16(a)〜(e)の比較例を説明する。該比較例では、表皮深さδが、導電性膜28の初期膜厚よりも大になるような周波数が適用されている。このような周波数が適用されることで、研磨初期から研磨終期までの膜厚変化のモニタの間、導電性膜28に誘起される磁束φは全て該導電性膜28を貫通して絶えず漏洩磁束φが発生している。したがって、膜厚変化のモニタの間、該漏洩磁束φ数に比例した渦電流Ieが発生する(図16の(a)〜(d))。このため、この渦電流Ieにより導電性膜28と前記平面状インダクタとの間に大きな相互インダクタンスが発生し、この相互インダクタンスによるインダクタンスの減少分Lmにより、センサから発振される発振周波数fは、研磨初期から前記式(13)のようになる。
【0160】
そして、研磨の進行による膜厚の減少にしたがって渦電流Ieは急激に減少し(図16の(b)から(d))、これに伴って相互インダクタンスが減少して前記式(13)中のインダクタンスの減少分Lmも減少する。この結果、センサ回路系のインダクタンスが等価的に増加してセンサから発振される共振周波数が単調減少する(図16の(e))。
【0161】
このように、比較例では、共振周波数は単調減少カーブを描くため、研磨初期からの膜厚減少量を見積もることは可能だが、研磨完了時点もしくは研磨完了点手前の状態を厳密に判別することはできない。例えば、微妙な設定により浮遊容量Cが変化したとき、全体的な図16(e)の共振周波数は、波形全体にわたって上下にシフトする。このため、仮にある設定の周波数になったときに研磨完了点とする設定をしていても、全体的に共振周波数がシフトすれば、膜厚量はシフトする。また、基準膜厚からの変化を渦電流変化でモニタ下としても、基準膜厚校正が変化している場合、測定する膜厚もばらつくことになり、安定した膜厚測定を行うことができない。また、銅など酸化が進みやすく、基準となる膜厚の測定時に導電率も安定しない。そのため、膜厚量が正確であるか否かは不明である。
【0162】
次に、上述のような膜厚変化に伴う磁束の変化による磁場のエネルギ消費を図17〜図19を用いて説明する。図17は本実施例において、磁場のエネルギ消費に対応した磁束の変化を示す図であり、それぞれ(a)は研磨初期、(b)は研磨中期、(c)は研磨終期における図である。図18は図17の比較例としての図であり、それぞれ(a)は研磨初期、(b)は研磨中期、(c)は研磨終期における図である。図19は磁場のエネルギ消費を説明するための図であり、(a)は本実施例の場合、(b)は比較例としての従来例の場合である。
【0163】
本実施例における磁場のエネルギ消費を説明する。研磨初期においては、表皮効果によって磁束φは表面部の導電性膜28内に殆ど侵入せず、はね返される。このため、導電性膜28内で磁場のエネルギが消費される量は微量であり、磁場のエネルギは、殆どが空間に放出されて空間で消費される(図17の(a)、図19の(a)初期)。
【0164】
研磨中期においては、貫通磁束が増大し初め、該増大する貫通磁束に対応して表面部の導電性膜28に形成される渦電流も増大し、磁場のエネルギの殆どが、この導電性膜28で渦電流損(ジュール熱損)となって消費される。よって、多少の磁場は素子部43へ侵入するが、大部分は導電性膜28によって消費されるため、素子部43へ及ぼされる磁場のエネルギは表面部の導電性膜28により保護されて大幅に軽減される(図17の(b)、図19の(a)中期)。
【0165】
研磨終期においては、研磨の進行により膜厚が減少するにしたがって、磁場はさらに導電性膜28を貫通して渦電流が増大する。さらなる膜厚の減少により渦電流を形成する膜厚自体が減少するため渦電流は急速に減少に転じる。この渦電流の挙動により導電性膜28に誘起される磁束φに変曲点Pを伴う特徴的な変化42(図15参照)が発生する。この特徴的な変化42における渦電流が減少する過程において導電性膜28に誘起される磁束φを軽減するないしはオフにする。これにより、膜厚減少に伴う素子部43への磁場の侵入が防止される(図17の(c)、図19の(a)終期)。
【0166】
上記の変曲点Pを伴う特徴的な変化42を検知することによって、研磨完了時点を正確に予測することができる。そして、この変曲点Pを伴う特徴的な変化42が検知された時点から、磁場を導電性膜28内に入れる必要はない。研磨完了直前の変曲点Pを伴う特徴的な変化42を正確にモニタした時点で、殆ど研磨完了時点が時間で正確に見積もることが可能となるからである。よって、この特徴的な変化42が検知された時点で導電性膜28に誘起される磁束φを軽減するないしはオフにすることによって渦電流の形成を抑える、もしくは素子部43における素子や微細な配線等にダージを与えずに研磨完了時点を予測することが可能となる。
【0167】
例えば、研磨レートが5000Å/min前後であり、初期膜厚が7000Åで、その7000Å程度を研磨除去する必要がある場合、基準研磨レートが5000Å/minと仮定して、研磨処理時間は1.4min必要となる。その中で、基準点となる特徴的な変化42における変曲点P(残り710Å時点)を75.5sec後に経過したとすれば、殆ど5000Å/minで研磨されていることになり、問題はない。よって、残り710Åを8.5secで研磨すればよいことになり、トータルで84secかけて研磨を終了させる。しかし、例えば、研磨開始後、68.6secで基準点となる前記変曲点P(残り710Å時点)に到達したとすると、研磨レートは約(7000−710)/(68.6/60)で約5500Å/minの研磨レートで研磨されていることが分かる。よって、残りの710Åについても研磨レートが5500Å/minで進行すると考えて、710(Å)/5500(Å/min)により、7.7secで研磨すればよいことになる。
【0168】
上記本実施例に対する比較例における磁場のエネルギ消費を説明する。研磨初期においては、磁場に指向性があるため、殆どの磁束φが表面部の導電性膜を貫通して、磁場のエネルギは、その殆どが導電性膜内で消費される(図18の(a)、図19の(b)初期)。
【0169】
研磨中期においては、表面部の導電性膜の膜厚が減少し、その膜厚が減少する間、減少した膜厚量に対応して、形成される渦電流が減少する。その渦電流量が減少する分、導電性膜内で発生するジュール熱も減少するが、その時期の磁場のエネルギは、そのまま導電性膜の下に存在する素子部43に向けられることになる。即ち、導電性膜で渦電流損(ジュール熱損)として消費されなかった磁場のエネルギ分が、そのまま素子部43に向けられて、素子部43内の導体膜が存在する部分で消費されるようになる(図18の(b)、図19の(b)中期)。
【0170】
研磨終期においては、膜厚の減少により、殆どの磁場が素子部43内に侵入し、さらに、その磁場の一部は素子部43を貫通する。このため、磁場のエネルギは、空間で消費される分も一部あるが、その殆どは素子部43内で消費される(図18の(c)、図19の(b)終期)。
【0171】
図20の(a)〜(d)は、研磨対象となる導電性膜が材質及び導電率の点で異なっている2種のウェーハWa、Wbについて、基準点となる変曲点(ピーク)Pを伴った特徴的な変化42を評価した結果を示している。同図(a)はCu膜付きウェーハWa、(b)はCu膜の膜厚に対する共振周波数の変化特性、(c)はタングステン(W)膜付きウェーハWb、(d)はタングステン(W)膜の膜厚に対する共振周波数の変化特性をそれぞれ示す図である。図20の(b)、(d)における各縦軸のセンサ出力は共振周波数に対応する。
【0172】
Cu膜及びタングステン(W)膜のいずれも研磨の進行とともに一旦は共振周波数は増大し、その後、急激に減少して変曲点(ピーク)Pを伴った特徴的な変化42が発生する。この挙動は、図20(d)に示すタングステン(W)膜の場合に比べて、明らかに図20(b)に示す導電率の大きいCu膜の方が顕著である。
【0173】
図21の(a)、(b)は、研磨対象の導電性膜がCu膜の場合について膜厚と共振周波数との関係を示す図であり、(a)は研磨の進行に伴う膜厚と共振周波数との関係を示す図、(b)は静止状態における膜厚と共振周波数との関係を示す図である。図21の(a)、(b)における各縦軸のカウント値は共振周波数に対応する。
【0174】
図21(a)において、Cu膜の初期膜厚は、ほぼ1.5μm(15000Å)である。Cu膜は、研磨の進行に伴って共振周波数は膜厚が約1μm(10000Å)付近から徐々に上昇し、700Å付近で最大値をとって変曲点(ピーク)Pを伴った特徴的な変化42が検出される。共振周波数は最大値を取った後、急激に低下する。このように、Cu膜は、特徴的な変化42における変曲点(ピーク)Pが検出されたときの残り膜厚が精度よく検知される。
【0175】
図21(b)において、静止状態のCu膜の各膜厚に対して測定した共振周波数は、膜厚が710Åで最大値を示している。したがって、静止状態で共振周波数が最大になるCu膜の膜厚と、上記の研磨の進行中において共振周波数が最大となるCu膜の膜厚とは、ほぼ一致している。
【0176】
なお、本実施例は、前記共振周波数の他に相互インダクタンス、渦電流Ie、漏洩磁束φの変化、前記相互インダクタンスによる高周波インダクタ型センサ34におけるセンサ回路系のインダクタンス変化もしくはインピーダンス変化のうちの少なくともいずれかの変化を基に膜厚基準点Pを検出することができる。相互インダクタンスの変化は前記式(3)を利用して高周波インダクタ型センサ34の発振周波数の変化から求めることができ、渦電流Ieは前記相互インダクタンスと比例関係にあることから該渦電流Ieの変化は前記相互インダクタンスの変化を用いて求めることができ、また漏洩磁束φは渦電流Ieと比例関係にあることから該漏洩磁束φの変化は前記渦電流Ieの変化を用いて求めることができる。
【0177】
上述したように、本実施例に係る研磨完了時点の予測方法とその装置においては、研磨完了前の変曲点Pを伴う特徴的な変化42から研磨完了時点を正確に予測し検知することができる。
【0178】
変曲点Pを伴う特徴的な変化42の検出後、所定の導電性膜28に誘起される磁束を軽減するないしはオフにすることで、導電性膜下方のデバイスウェーハ上の素子や微細な配線等に対し強い磁束が及ぶのを防止することができる。
【0179】
研磨の進行により所定の導電性膜28が表皮深さδと同等もしくはその付近の膜厚になった以降における渦電流Ie、相互インダクタンス、センサ回路系のインダクタンスもしくはインピーダンス、又はインダクタ型センサ34が発振する共振周波数の少なくともいずれかの変化を用いることで、研磨完了点手前での磁束の特徴的な変化42の発生を容易明確に検出することができる。
【0180】
平面状インダクタ36に与える周波数、インダクタ形状、もしくは平面状インダクタ36と所定の導電性膜28間の距離の少なくともいずれかを適正化したことで、該導電性膜28に対する磁場の指向性を適正に設定することができる。したがって所定の導電性膜28の除去開始から除去終了までの間に表皮効果により渦電流の増大と減少の過程を生起させて研磨完了時点の直前に磁束の特徴的な変化42を生じさせることができる。
【0181】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】本発明の膜厚測定装置の構成を示す概念図。
【図2】図1に示す膜厚測定装置において、インピーダンスアナライザ(又は、ネットワークアナライザ)105によって周波数を掃引したときのインピーダンスの変化を示す特性図。
【図3】図1に示す膜厚測定装置において、ウェーハ103の導電性膜の膜厚をパラメータとしたときの周波数の変曲点の変化を示した特性図。
【図4】図1に示す膜厚測定装置において、膜厚と変曲点の周波数との関係を表わした特性図。
【図5】本発明の実施例に係る研磨完了時点の予測装置が組み込まれた化学機械研磨装置の斜視図。
【図6】図5の化学機械研磨装置における研磨ヘッドの拡大縦断面図。
【図7】本発明の実施例に係る研磨完了時点の予測装置がプラテンに組み込まれた状態を説明するための一部破断して示す概略側面図。
【図8】本発明の実施例に係る研磨完了時点の予測装置が研磨ヘッドに組み込まれた状態を説明するための一部破断して示す概略側面図。
【図9】本発明の実施例に係る研磨完了時点の予測装置の構成例を示す示す図であり、(a)はブロック図、(b)は平面状インダクタの他の構成例を示す図、(c)は図(b)の平面状インダクタの断面図。
【図10】図9の研磨完了時点の予測装置における発振回路の基本的な構成例を示す図であり、(a)は構成図、(b)は図(a)の等価回路。
【図11】本発明の実施例において、コイルから発生した磁場が導体膜上でどのような向きに配列しているかを電磁シミュレーションした結果を示す図であり、(a)はセンサからの発振周波数が1MHzで導体膜の膜厚が0.2μmの場合、(b)はセンサからの発振周波数が1MHzで導体膜の膜厚が1μmの場合、 (c)はセンサからの発振周波数が40MHzで導体膜の膜厚が0.2μmの場合、(d)はセンサからの発振周波数が40MHzで導体膜の膜厚が1μmの場合。
【図12】本発明の実施例において、導電性膜に誘起される渦電流の変化とセンサ回路系のインピーダンスの変化との関係を説明するための等価回路図。
【図13】本発明の実施例において、平面状インダクタを使用したときのセンサ回路系インピーダンス実部の膜厚依存性を示す特性図。
【図14】本発明の実施例に係る高周波インダクタ型センサにおける電磁結合で発生する磁場によるインダクタンスの変化作用を説明するための構成図。
【図15】図5の化学機械研磨装置による導電性膜の研磨削除に伴う磁束等の変化例及び膜厚基準点の検出作用を説明するための組図であり、(a)〜(d)は導電性膜の研磨削除に伴う磁束等の変化例を示す図、(e)は導電性膜の膜厚変化に対する共振周波数の変化例を示す特性図。
【図16】図13の比較例としての組図であり、(a)〜(d)は導電性膜の研磨削除に伴う磁束及び渦電流の変化例を示す図、(e)は導電性膜の膜厚変化に対する共振周波数の変化例を示す特性図。
【図17】本発明の実施例において、磁場のエネルギ消費に対応した磁束の変化を示す図であり、(a)は研磨初期における図、(b)は研磨中期における図、(c)は研磨終期における図。
【図18】図17の比較例としての図であり、(a)は研磨初期における図、(b)は研磨中期における図、(c)は研磨終期における図。
【図19】磁場のエネルギ消費を説明するための図であり、(a)は本実施例の場合の図、(b)は図(a)の比較例としての従来例の場合の図。
【図20】本発明の実施例において、研磨対象となる導電性膜が材質及び導電率の点で異なっているCu膜とタングステン(W)膜について膜厚基準点となるピークを評価した結果を示す図であり、(a)はCu膜付きウェーハを示す図、(b)はCu膜の膜厚に対する共振周波数の変化特性例を示す図、(c)はタングステン(W)膜付きウェーハを示す図、(d)はタングステン(W)膜の膜厚に対する共振周波数の変化特性例を示す図。
【図21】本発明の実施例において、研磨対象の導電性膜がCu膜の場合について膜厚と共振周波数との関係を示す図であり、(a)は研磨の進行に伴う膜厚と共振周波数との関係例を示す図、(b)は静止状態における膜厚と共振周波数との関係例を示す図。
【符号の説明】
【0183】
1 化学機械研磨装置
2 プラテン
3 研磨ヘッド
4 回転軸
5 モータ
6 研磨パッド
7 ヘッド本体
8 キャリア
9 リテーナリング
10 リテーナリング押圧手段
11 弾性シート
12 回転軸
13 ドライプレート
14 ピン
15 作動トランス
16 キャリア押圧手段
17 エアーフロートライン
19 エアー吹出し口
20 エアーフィルタ
21 給気ポンプ
22 孔
23 真空ポンプ
24 バキュームライン
25 エアバック
27 リテーナリングホルダ
28 導電性膜
29 エアー室
30 取付部材
31 スナップリング
32 スリップリング
33 研磨完了時点の予測装置
34 高周波インダクタ型センサ
35 発振回路
36 平面状インダクタ
37 集中定数キャパシタ
38 増幅器
39 フィードバック・ネットワーク
40 周波数カウンタ
41 平面状インダクタ
42 特徴的な変化
43 素子部
P 特徴的な変化中に生じる変曲点
W ウェーハ
101 ウェーハステージ
102 ウェーハ
103 コイル
104 センサ
105 インピーダンスアナライザ(ネットワークアナライザ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された導電性膜の膜厚を測定する膜厚測定方法において、
前記導電性膜の表面にコイルを対向させ、前記コイルに供給する交流電流によって該コイルに誘起させた磁場を該導電性膜に作用させ、該導電性膜の表皮効果に影響するパラメータを変化させて前記コイルに与えることにより、前記磁場を該膜内へ相対的に貫通させない状態と、該磁場を該膜内へ相対的に貫通させる状態とを形成し、
前記表皮効果に影響される状態変化に基づいて誘起される渦電流、及び誘起される渦電流に対応する諸量の変化から、薄膜構成及び膜諸量を測定することを特徴とする膜厚測定方法。
【請求項2】
上記表皮効果に影響するパラメータは、交流電圧の周波数、対向するコイルの角度、又は対向するコイルと導電性膜の距離、の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の膜厚測定方法。
【請求項3】
上記誘起される渦電流に対応する諸量は、上記導電性膜による相互インダクタンス、共振回路の共振周波数、該導電性膜のインピーダンス、該導電性膜に発生する反発磁束量、の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の膜厚測定方法。
【請求項4】
上記膜諸量は、上記導電性膜の膜厚、該導電性膜の導電率分布、又は該導電性膜の透磁率分布、の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1,2,又は3記載の膜厚測定方法。
【請求項5】
基板上に形成された導電性膜の膜厚を測定する膜厚測定装置であって、
前記導電性膜の表面にコイルを対向させ、該コイルに交流電圧をかけてそのコイルに誘起させた磁湯を該導電性膜に作用させ、
前記コイルに与える周波数を掃引させて、磁場を該膜内へ相対的に貫通させない状態と、磁場を該膜内へ相対的に貫通させる状態とを形成し、
前記交流電圧の周波数変化に対応して、表皮効果に其づいた前記導体性膜の渦電流の変化部分から薄膜構成及び膜諸量を測定することを特徴とする膜厚測定装置。
【請求項6】
基板上に形成された導電性膜の膜厚を測定する膜厚測定装置であって、
前記導電性膜の表面にコイルを対向させ、コイルに交流電圧をかけてそのコイルに誘起させた磁場を該導電性膜に作用させ、
前記コイルに与える表皮効果に影響するパラメータを変化させることにより、磁場を該膜内へ相対的に貫通させない状態から、磁場を該膜内へ相対的に貫通させる状態を形成すると共に、
磁場が該膜内へ相対的に貫通させることにより、渦電流に変化部分を検知した際に、磁場の該膜内への侵入を軽減乃至は無くすと共に、該渦電流の変化部分に基づいて膜構成及び膜諸量を測定することを特徴とする膜厚測定装置。
【請求項7】
基板上に形成された導電性膜の膜厚を測定する膜厚測定装置であって、
前記基板上において連続的に導体膜を除去又は堆積させる過程において、
前記導電性膜の表面にコイルを対向させ、交流電流によって前記コイルに誘起させた磁場を対向する該導電性膜に作用させ、該導電性膜の表皮効果に影響するパラメータを変化させて前記コイルに与えることにより、
磁場を該膜内へ相対的に貰通させない状態と、磁場を該膜内へ相対的に貫通させる状態とを形成し、
その状態変化に基づいて誘起される渦電流の変化及び渦電流に対応する諸量の変化から、前記導電性膜の残り膜厚、除去膜厚、及びそれらの変化量、変化速度を測定して膜構成及び膜諸量を測定することを特徴とする膜厚測定装置。
【請求項8】
予め、実際に測定する導電性膜のサンプル、又は対応するサンプルを用いて、該導電性膜の表皮効果に影響するパラメータを変化させて前記コイルに与えると共に、磁場を該膜内へ相対的に貫通させない状態と、磁場を該膜内へ相対的に貫通させる状態とを形成し、
その表皮効果に影響される誘起される渦電流、乃至は誘起される渦電流に対応する諸量を予め測定して得られたサンプルのリファレンス波形の変化との対比から、実サンプルにおける膜構成及び膜諸量を測定・判別することを特徴とする請求項7に記載の膜厚測定装置。
【請求項9】
基板上に形成された導電性膜の膜厚を測定する膜厚測定装置において、
導電性膜を有する導電性基板を保持する保持手段と、
前記導電性基板に対して一定の距離を隔てて対向させるコイルと、
前記コイルと並列に接続されたコンデンサと、
前記コイルと前記コンデンサとによって形成される共振回路に信号を与える発信器と、
前記共振回路の共振周波数を求める周波数カウント手段と、
前記コイルに高周波の交流電流を与えて、コイルに誘起させた磁場を対向する前記導電性膜に作用させ、該導電性膜の表皮効果に影響するパラメータを変化させるパラメータ変化手段と、
該膜内へ相対的に磁場を貫通させない状態と、該膜内へ相対的に磁場を貫通させる状態とを形成し、その表皮効果に基づく状態変化によって誘起される渦電流の変化又は誘起される渦電流に対応する諸量の変化を測定する測定手段とを備え、
基板上に形成された膜厚構成及び膜諸量を測定することを特徴とする膜厚測定装置。
【請求項10】
前記パラメータ変化手段は、
高周波の交流電流の周波数、上記コイルと上記導電性膜の間の距離、又は該導電性膜の面に対するコイルの角度の少なくとも1つを変化させることを特徴とする請求項9に記載の膜厚測定装置。
【請求項11】
前記膜諸量は、導電性膜の膜厚、導電率分布、又は透磁率分布、の少なくとも1つであることを特徴とする請求項5、6、7、8、9、又は10記載の膜厚測定装置。
【請求項12】
上記コイルは、2次元の平面インダクで形成されていることを特徴とする請求項5、6、7、8、9、10、又は11記載の膜厚測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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