説明

膜形成方法、光学素子の形成方法、導電膜の形成方法、光学素子及び配線

【課題】吐出順序によらずに品質良く膜を形成できる膜形成方法、光学素子の形成方法、導電膜の形成方法、光学素子、配線を提供する。
【解決手段】少なくとも1方向に長い塗布領域2eに液滴30を吐出して膜を形成する膜形成方法に係り、塗布領域2eを囲んでバンク2を形成するバンク形成工程と、塗布領域2eに液滴30を吐出する塗布工程と、塗布された液滴30を固化する固化工程と、を有し、塗布領域2eには凸状の流動抑止部3が形成され、塗布工程において流動抑止部3を挟んで液滴30を塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成方法、光学素子の形成方法、導電膜の形成方法、光学素子及び配線に係り、特に、膜の端を品質良く形成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタのインクジェット方式(液滴吐出法)を応用して、例えば液晶表示装置におけるカラーフィルタや有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置を製造する方法が提案されている。例えば、特許文献1に液滴吐出法を用いて有機EL装置の有機EL素子を形成する方法が開示されている。これによれば、基板に配線及び画素回路を形成し、その上に有機EL素子を形成する。
【0003】
有機EL素子を形成する工程では、有機EL素子を形成する領域を囲んでバンクを形成する。次に、バンクで囲まれた塗布領域に薄膜材料液をノズルから吐出して充填する。塗布領域の端で濡れ性が悪いとき、薄膜材料液が充填されない濡れ不良が発生することがある。その濡れ不良を防止するため、塗布領域の端に吐出した後、端と端との間に吐出して充填した。
【0004】
【特許文献1】特開2005−293915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塗布領域の端に吐出した後、端と端との間に吐出する方法では、塗布領域に吐出する順序の制約がある。そして、順序の制約をふまえて吐出するためにはノズルを複数回走査することが必要である。このとき、1回の走査で行う方法に比べて生産性が悪くなるという課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
本適用例にかかる膜形成方法は、少なくとも1方向が長い塗布領域に膜材料液を吐出して膜を形成する膜形成方法であって、前記塗布領域を囲んでバンクを形成するバンク形成工程と、前記塗布領域に前記膜材料液を吐出する塗布工程と、塗布された前記膜材料液を固化する固化工程と、を有し、前記塗布領域には凸状の流動抑止部が形成され、前記塗布工程において前記流動抑止部を挟んで前記膜材料液を塗布することを特徴とする。
【0008】
この膜形成方法によれば、バンク内に流動抑止部が形成される。そして、流動抑止部を挟んで膜材料液が塗布される。このとき、流動抑止部を挟んでいる膜材料液は流動抑止部により流動し難くなっている。従って、流動抑止部を挟んでいる膜材料液を移動させる力が加わるときにも、膜材料液が移動せずに膜を形成することができる。その結果、吐出する順序に影響されずに膜材料液を塗布する場所に膜を形成することができる。
【0009】
[適用例2]
上記適用例にかかる膜形成方法において、前記流動抑止部は前記塗布領域の長手方向における端に近い場所に形成されていることを特徴とする。
【0010】
この膜形成方法によれば、塗布領域の端に近い場所に流動抑止部が形成され、流動抑止部を挟んで膜材料液が塗布される。塗布領域の端に塗布される膜材料液は流動抑止部により移動し難くなっている。その結果、塗布領域の端に近い場所においても、膜を形成することができる。
【0011】
[適用例3]
上記適用例にかかる膜形成方法において、前記塗布工程では1つの前記塗布領域において複数回の吐出を行い、前記塗布領域に吐出する液滴の中で最後に吐出する前記液滴は前記流動抑止部に近い場所に吐出されることを特徴とする。
【0012】
この膜形成方法によれば、塗布領域において複数回の吐出を行い、最後に流動抑止部に近い場所に塗布している。つまり、流動抑止部が形成されていない場所に膜材料液を塗布しておき、最後に流動抑止部がある場所に塗布する。塗布領域の長手方向に沿って順次吐出するとき、最後はバンクの端に近い場所に吐出して塗布することが多い。膜材料液に対してバンクの濡れ性が悪いとき、塗布された膜材料液に表面張力が働くので膜材料液が流動し易くなる。バンクの端に近い場所に最後に塗布するときにも、流動抑止部により膜材料液が移動し難い為、最後に塗布した場所に膜を形成することができる。
【0013】
[適用例4]
上記適用例にかかる膜形成方法において、吐出された前記膜材料液の1つの液滴が前記塗布領域に広がる液溜りの半径を液溜半径とするとき、前記流動抑止部と前記塗布領域の端との距離は液溜半径の1〜3倍の場所に位置することを特徴とする。
【0014】
この膜形成方法によれば、塗布領域の端と流動抑止部との距離が液溜半径のとき、塗布された液溜りの端が塗布領域の端になるように塗布すると、液溜りの中心の場所に流動抑止部が位置する。従って、流動抑止部を挟んで膜材料液を塗布することができる。塗布領域の端と流動抑止部との距離が液溜半径より小さいとき、膜材料液に表面張力が働くことにより液溜りの液が塗布領域の端から流出する可能性が高くなる。
【0015】
塗布領域の端と流動抑止部との距離が液溜半径の3倍より小さいとき、塗布領域の端と流動抑止部との間の距離は短くなっている。そして、塗布領域の端と流動抑止部との間に1〜2滴の膜材料液を吐出するとき、吐出された膜材料液は一方に偏り難い。従って、塗布領域の端にも膜を確実に形成することができる。
【0016】
[適用例5]
上記適用例にかかる膜形成方法において、前記流動抑止部の一端は前記バンクと接続して配置され、前記流動抑止部の前記バンクと離れている場所は、前記バンクと近い場所に比べて、前記バンクの底面からの高さが低くなるように形成されていることを特徴とする。
【0017】
この膜形成方法によれば、流動抑止部のバンクに近い場所ではバンクの底面からの流動抑止部の高さが高く形成されているので、膜材料液が流動し難くなっている。そして、バンクと離れている場所の流動抑止部はバンクの底面からの高さが低く形成されているので、流動抑止部を挟んで塗布される膜材料液はバンクと離れている場所で分離し難くなっている。従って、流動抑止部を挟んで塗布される膜材料液は分離し難く且つ流動し難くすることができる。
【0018】
[適用例6]
上記適用例にかかる膜形成方法において、前記流動抑止部は、前記バンクに近い場所から前記バンクから遠い場所まで、前記底面からの高さが連続して低くなるように形成されていることを特徴とする。
【0019】
この膜形成方法によれば、流動抑止部はバンクの底面からの高さが高い場所と低い場所とが連続的に形成されている。つまり、膜材料液が流動し難いが分離し易い場所と膜材料液が流動し易いが分離し難い場所とが連続的に切り換わっている。そして、塗布する膜材料液の量が少ないときは、分離し難い状態にして、量が多くなるにつれて流動し難くすることができる。従って、膜材料液が少ないときには分離し難く、量が増えるにしたがい徐々に流動し難くすることができる。その結果、膜材料液を分離させずに流動し難くする状態を形成することができる。
【0020】
[適用例7]
上記適用例にかかる膜形成方法において、前記流動抑止部と前記バンクの側面とが接する場所における前記バンクの側面が接する面の方向に対する前記流動抑止部の長さを前記流動抑止部の幅とするとき、前記流動抑止部の幅は、前記バンクに近い場所から前記バンクから離れるにしたがい連続して小さくなるように形成されていることを特徴とする。
【0021】
この膜形成方法によれば、流動抑止部は幅が広い場所と狭い場所とが連続的に形成されている。つまり、膜材料液が流動し難いが分離し易い場所と膜材料液が流動し易いが分離し難い場所とが連続的に切り換わっている。そして、塗布する膜材料液の量が少ないときは、分離し難い状態にして、量が多くなるにつれて流動し難くすることができる。従って、膜材料液が少ないときには分離し難く、量が増えるにしたがい徐々に流動し難くすることができる。その結果、膜材料液を分離させずに流動し難くする状態を形成することができる。
【0022】
[適用例8]
上記適用例にかかる膜形成方法において、前記バンク形成工程において、前記バンクの上面及び側面と前記流動抑止部には前記膜材料液に対する撥液処理を行い、前記バンクの底面には前記膜材料液に対する親液処理を行うことを特徴とする。
【0023】
この膜形成方法によれば、バンクの底面では膜材料液に対する親液処理がされているので、バンクの底面に近い膜材料液は分離し難くなっている。そして、バンクの上面及び側面と流動抑止部は膜材料液に対して撥液性を有している。バンクの上面及び側面と流動抑止部で分離している膜材料液は表面エネルギの差によりバンクの底面方向へ移動し易くなっている。その結果、膜材料液はバンクの底面でまとまり易くなるので、まとまった膜を形成することができる。
【0024】
[適用例9]
上記適用例にかかる膜形成方法において、前記塗布領域の長手方向と略直交する方向に2つの前記流動抑止部が対向して配置されることを特徴とする。
【0025】
この膜形成方法によれば、2つの流動抑止部が対向して配置される。そして、2つ流動抑止部の間はバンクから離れた場所となる。この場所は、膜材料液が溜り易い場所であるので、膜材料液が流動抑止部により分離され難くすることができる。
【0026】
[適用例10]
上記適用例にかかる膜形成方法において、前記塗布工程では、前記流動抑止部上に前記膜材料液の一部が載るように塗布することを特徴とする。
【0027】
この膜形成方法によれば、流動抑止部上に膜材料液の一部が載り、流動抑止部に載った膜材料液は流動抑止部を挟んでいる膜材料液と連結して、膜材料液を流動し難くしている。その結果、流動抑止部付近に確実に膜を形成することができる。
【0028】
[適用例11]
上記適用例にかかる膜形成方法において、前記塗布工程では、挟んで塗布された前記膜材料液の一部が前記流動抑止部上に載るように吐出することを特徴とする。
【0029】
この膜形成方法によれば、流動抑止部を挟んで膜材料液が塗布される。そして、塗布される膜材料液の一部が流動抑止部上に載る。そして、流動抑止部に載った膜材料液は流動抑止部を挟んでいる膜材料液を連結して、膜材料液を流動し難くしている。その結果、流動抑止部付近に確実に膜を形成することができる。
【0030】
[適用例12]
上記適用例にかかる膜形成方法において、前記流動抑止部は前記バンクに囲まれた中に配置され、前記流動抑止部の前記バンクと近い場所は、前記バンクと離れている場所に比べて、前記バンクの底面からの高さが低くなるように形成されていることを特徴とする。
【0031】
この膜形成方法によれば、塗布領域の長手方向と直交する方向の幅が広いとき、流動抑止部のバンク底面からの高さの低い場所を複数形成することができる。従って、膜材料液を分離し難くする場所と流動し難くする場所を設計し易くすることができる。
【0032】
[適用例13]
本適用例にかかる光学素子の形成方法は、1対の電極の間に発光膜を有する光学素子の形成方法であって、前記電極を形成する電極形成工程と、前記発光膜を形成する発光膜形成工程と、を有し、上記に記載の膜形成方法を用いて前記発光膜を形成することを特徴とする。
【0033】
この光学素子の形成方法によれば、発光膜が上記の適用例により形成されるので、発光膜を形成する予定の場所総てに発光膜を形成することができる。
【0034】
[適用例14]
上記適用例にかかる光学素子の形成方法において、前記発光膜には発光する光が放射する窓部を有し、前記窓部は前記流動抑止部と異なる場所に配置されていることを特徴とする。
【0035】
この光学素子の形成方法によれば、光を放射する窓部と流動抑止部とが異なる場所に配置されている。流動抑止部では、表面張力が作用することより発光膜の膜厚が薄くなる場合があるので、発光する光量の少ない場所がある。窓部と対応する場所の発光膜は膜厚が薄くなり難いので、品質の良い光量の発光を行うことができる。
【0036】
[適用例15]
本適用例にかかる光学素子の形成方法は、通過する光の光路を変える光学素子の形成方法であって、光透過性の基板上に、光透過性膜を凸状又は凹状に形成する膜形成工程を有し、上記に記載の膜形成方法を用いて前記光透過性膜を形成することを特徴とする。
【0037】
この光学素子の形成方法によれば、凸状又は凹状の光透過性膜を形成することにより光学レンズの機能を有する膜を形成することができる。このとき、光透過性膜が上記の適用例により形成されるので、光透過性膜を形成する予定の場所総てに光透過性膜を形成することができる。
【0038】
[適用例16]
本適用例にかかる光学素子の形成方法は、通過する光の波長分布を変える光学素子の形成方法であって、光透過性の基板上に、色素を含有する膜材料液を用いて光透過性膜を形成する膜形成工程を有し、上記に記載の膜形成方法を用いて前記光透過性膜を形成することを特徴とする。
【0039】
この光学素子の形成方法によれば、色素を含有する光透過性膜を形成することによりカラーフィルタの機能を有する膜を形成することができる。このとき、光透過性膜が上記の適用例により形成されるので、光透過性膜を形成する予定の場所総てに光透過性膜を形成することができる。
【0040】
[適用例17]
本適用例にかかる導電膜の形成方法は、基板上に、導電性材料を含有する膜材料液を用いて導電膜を形成する膜形成工程を有し、上記に記載の膜形成方法を用いて前記導電膜を形成することを特徴とする。
【0041】
この導電膜の形成方法によれば、導電膜が上記の適用例により形成されるので、導電膜を形成する予定の場所総てに導電膜を形成することができる。
【0042】
[適用例18]
本適用例にかかる光学素子は、光学的特性を有し少なくとも1方向が長い光学膜を有する光学素子であって、前記光学膜の周囲に形成されたバンクと、前記光学膜の長手方向における端に近い場所に凸状に形成された流動抑止部と、を有し、前記流動抑止部と前記光学膜とが重ねて配置されていることを特徴とする。
【0043】
この光学素子によれば、流動抑止部に重ねて光学膜の膜材料液が塗布されて、光学膜が形成されている。流動抑止部は凸状に形成されており、流動抑止部の周囲にも膜材料液が塗布される。このとき、流動抑止部の周囲の膜材料液は流動抑止部が抵抗となるので、流動し難くなる。従って、光学膜を形成する範囲の端に塗布される膜材料液は移動し難く配置され、固化される。その結果、吐出する順序に影響されずに光学膜の端に近い場所においても、光学膜が品質良く形成された光学素子とすることができる。
【0044】
[適用例19]
上記適用例にかかる光学素子において、前記流動抑止部の一端は前記バンクと接続して配置され、前記流動抑止部の前記バンクと離れている場所は、前記バンクと近い場所に比べて、前記流動抑止部の厚さが薄くなるように形成されていることを特徴とする。
【0045】
この光学素子によれば、光学膜の膜材料液を塗布するとき、流動抑止部のバンクに近い場所ではバンクの底面からの流動抑止部の厚さが厚く形成されているので、膜材料液が流動し難くなっている。そして、バンクと離れている場所の前記流動抑止部はバンクが薄く形成されているので、流動抑止部を挟んで塗布される膜材料液はバンクと離れている場所では分離し難くなっている。従って、膜材料液が分離し難く且つ流動し難い状態にして固化された光学膜を有する光学素子とすることができる。
【0046】
[適用例20]
上記適用例にかかる光学素子において、前記流動抑止部は、前記バンクに近い場所から前記バンクから離れるにしたがい前記流動抑止部の前記厚さが連続して小さくなるように形成されていることを特徴とする。
【0047】
この光学素子によれば、光学膜の膜材料液を塗布するとき、膜材料液が流動し難いが分離し易い場所と膜材料液が流動し易いが分離し難い場所とが連続的に切り換わっている。そして、塗布する膜材料液の量が少ないときは、分離し難い状態にして、量が多くなるにつれて流動し難くすることができる。従って、膜材料液が少ないときには分離し難く、量が増えるにしたがい徐々に流動し難くすることができる。その結果、膜材料液を分離させずに流動し難い状態にして固化された光学膜を有する光学素子とすることができる。
【0048】
[適用例21]
上記適用例にかかる光学素子において、前記流動抑止部と前記バンクの側面とが接する場所における前記バンクの側面が接する面の方向に対する前記流動抑止部の長さを前記流動抑止部の幅とするとき、前記流動抑止部の幅は、前記バンクに近い場所から前記バンクから離れるにしたがい連続して小さくなるように形成されていることを特徴とする。
【0049】
この光学素子によれば、光学膜の膜材料液を塗布するとき、膜材料液が流動し難いが分離し易い場所と膜材料液が流動し易いが分離し難い場所とが連続的に切り換わっている。そして、塗布する膜材料液の量が少ないときは、分離し難い状態にして、量が多くなるにつれて流動し難くすることができる。従って、膜材料液が少ないときには分離し難く、量が増えるにしたがい徐々に流動し難くすることができる。その結果、膜材料液を分離させずに流動し難い状態にして固化された光学膜を有する光学素子とすることができる。
【0050】
[適用例22]
上記適用例にかかる光学素子において、前記光学膜は有機ELを含有する材料から形成されていることを特徴とする。
【0051】
この光学素子によれば、有機ELを含有する材料から形成された光学膜を有しているので、多色に発光する光学素子となっている。そして、この光学素子は上記の適用例に記載の光学素子であることから形成される光学膜の膜厚が品質良く形成された光学素子とすることができる。
【0052】
[適用例23]
上記適用例にかかる光学素子において、前記光学膜が発光する光の一部を透過する窓部を有し、前記窓部から光が透過する範囲外に前記流動抑止部が配置されていることを特徴とする。
【0053】
この光学素子によれば、窓部と流動抑止部とが異なる場所に配置されている。流動抑止部では、表面張力により発光膜の膜厚が薄くなる場所があるので、発光する光量が少ない場合がある。窓部と対応する場所の発光膜は膜厚が薄くなり難いので、この光学素子は品質の良い光量の発光を行うことが可能な光学素子とすることができる。
【0054】
[適用例24]
上記適用例にかかる光学素子において、前記光学膜は凸状又は凹状に形成され、前記光学膜を通過する光の光路が変わることを特徴とする。
【0055】
この光学素子によれば、凸状又は凹状の光学膜により光学レンズの機能を有する光学素子となっている。このとき、光学膜が上記の適用例により形成されるので、光学膜を形成する予定の場所総てに光学膜が形成された光学素子とすることができる。
【0056】
[適用例25]
上記適用例にかかる光学素子において、前記光学膜は色素を含有する光透過性膜であり、前記光学膜を通過する光の波長分布を変えることを特徴とする。
【0057】
この光学素子によれば、色素を含有する光透過性膜を形成することによりカラーフィルタの機能を有する光学素子となっている。このとき、光学膜が上記の適用例により形成されるので、光学膜を形成する予定の場所総てに光学膜が形成された光学素子とすることができる。
【0058】
[適用例26]
本適用例にかかる配線は、少なくとも1方向に長い導電膜などからなる配線であって、前記導電膜の周囲に形成されたバンクと、前記導電膜の長手方向における端に近い場所に凸状に形成された流動抑止部と、を有し、前記流動抑止部と前記導電膜とが重ねて配置されていることを特徴とする。
【0059】
この配線によれば、流動抑止部に重ねて導電膜の膜材料液を塗布した後、固化することにより導電膜が形成されている。流動抑止部は凸状に形成されており、流動抑止部の周囲にも膜材料液が塗布される。このとき、流動抑止部の周囲の膜材料液は流動抑止部が抵抗となるので、流動し難くなる。従って、導電膜を形成する範囲の端に塗布される膜材料液は移動し難く配置され、固化される。その結果、導電膜の端に近い場所においても、導電膜が品質良く形成された配線とすることができる。
【0060】
[適用例27]
上記適用例にかかる配線において、前記流動抑止部の一端は前記バンクと接続して配置され、前記流動抑止部の前記バンクと離れている場所は、前記バンクと近い場所に比べて、前記流動抑止部の厚さが薄くなるように形成されていることを特徴とする。
【0061】
この配線によれば、導電膜の膜材料液を塗布するとき、流動抑止部のバンクに近い場所ではバンクの底面からの流動抑止部の厚さが厚く形成されているので、膜材料液が流動し難くなっている。そして、バンクと離れている場所の流動抑止部は薄く形成されているので、流動抑止部を挟んで塗布される膜材料液はバンクと離れている場所では分離し難くなっている。従って、膜材料液が分離し難く且つ流動し難い状態にして固化された導電膜を有する光学素子とすることができる。
【0062】
[適用例28]
上記適用例にかかる配線において、前記流動抑止部は、前記バンクに近い場所から前記バンクから離れるにしたがい前記流動抑止部の前記厚さが連続して薄くなるように形成されていることを特徴とする。
【0063】
この配線によれば、導電膜の膜材料液を塗布するとき、膜材料液が流動し難いが分離し易い場所と膜材料液が流動し易いが分離し難い場所とが連続的に切り換わっている。そして、塗布する膜材料液の量が少ないときは、分離し難い状態にして、量が多くなるにつれて流動し難くすることができる。従って、膜材料液が少ないときには分離し難く、量が増えるにしたがい徐々に流動し難くすることができる。その結果、膜材料液を分離させずに流動し難い状態にして固化された導電膜を有する光学素子とすることができる。
【0064】
[適用例29]
上記適用例にかかる配線において、前記流動抑止部と前記バンクの側面とが接する場所における前記バンクの側面が接する面の方向に対する前記流動抑止部の長さを前記流動抑止部の幅とするとき、前記流動抑止部の幅は、前記バンクに近い場所から前記バンクから離れるにしたがい連続して小さくなるように形成されていることを特徴とする。
【0065】
この配線によれば、導電膜の膜材料液を塗布するとき、膜材料液が流動し難いが分離し易い場所と膜材料液が流動し易いが分離し難い場所とが連続的に切り換わっている。そして、塗布する膜材料液の量が少ないときは、分離し難い状態にして、量が多くなるにつれて流動し難くすることができる。従って、膜材料液が少ないときには分離し難く、量が増えるにしたがい徐々に流動し難くすることができる。その結果、膜材料液を分離させずに流動し難い状態にして固化された導電膜を有する光学素子とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
以下、実施形態について図面に従って説明する。
尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
(第1の実施形態)
本実施形態では液滴吐出装置とこの液滴吐出装置を用いて膜を形成する場合の特徴的な例について図1〜図10に従って説明する。
【0067】
図1(a)は、膜の構成を示す模式平面図であり、図1(b)及び図1(c)は、膜の構成を示す模式断面図である。図1(b)は、図1(a)のA−A’における断面であり、図1(c)は、図1(a)のB−B’における断面である。図1に示すように、基板1上にバンク2が形成されている。バンク2は1方向に長く形成されており、このバンク2の長手方向をY方向とし、同Y方向と直交する方向をX方向とする。バンク2は閉曲線を形成し、この閉曲線の内側で長手方向の両端であるバンク端部2aは円弧状に形成されている。
【0068】
バンク2の側面としての内側側面2bに接続して2つのバンク端部2aの近くには流動抑止部3が形成されている。この流動抑止部3は中心を通る面にて2つに分割された略円錐の形状となっている。バンク2と離れている場所の流動抑止部3はバンク2と近い場所に比べて、底面としてのバンク底面2dからの高さが低くなるように形成されている。そして、流動抑止部3は、バンク2に近い場所からバンク2から遠い場所まで、バンク底面2dからの高さが連続して低くなるように形成されている。また、流動抑止部3の幅は、バンク2に近い場所からバンク2から離れるにしたがい連続して小さくなるように形成されている。
【0069】
そして、バンク2の内側に膜4が形成されている。この膜4の一部は流動抑止部3の上面3aに載るように形成されている。膜4は膜4を構成する材料により膜4の機能が決まる。従って、膜4を構成する材料を変えることにより膜4の機能が切り換わる。膜4には例えば、有機EL素子を構成する膜、金属配線を構成する膜などを適用することができる。
【0070】
(液滴吐出装置)
図2は、液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図である。液滴吐出装置10により、膜を構成する材料を含む機能液が吐出されて塗布される。図2に示すように、液滴吐出装置10には、直方体形状に形成される基台11が備えられている。本実施形態では、この基台11の長手方向をY方向とし、同Y方向と直交する方向をX方向とする。
【0071】
基台11の上面11aには、Y方向に延びる1対の案内レール12a,12bが同Y方向全幅にわたり凸設されている。その基台11の上側には、1対の案内レール12a,12bに対応する図示しない直動機構を備えた走査手段を構成するステージ13が取付けられている。そのステージ13の直動機構は、例えば案内レール12a,12bに沿ってY方向に延びるネジ軸(駆動軸)と、同ネジ軸と螺合するボールナットを備えたネジ式直動機構であって、その駆動軸が、所定のパルス信号を受けてステップ単位で正逆転するY軸モータ(図示しない)に連結されている。そして、所定のステップ数に相対する駆動信号がY軸モータに入力されると、Y軸モータが正転又は逆転して、ステージ13が同ステップ数に相当する分だけ、Y軸方向に沿って所定の速度で往動又は、復動する(Y方向に走査する)ようになっている。
【0072】
さらに、基台11の上面11aには、案内レール12a,12bと平行に主走査位置検出器14が配置され、ステージ13の位置が計測できるようになっている。そのステージ13の上面には、載置面15が形成され、その載置面15には、図示しない吸引式の基板チャック機構が設けられている。そして、載置面15に基板1を載置すると、基板チャック機構によって、その基板1が載置面15の所定位置に位置決め固定されるようになっている。
【0073】
基台11のX方向両側には、1対の支持台16a,16bが立設され、その1対の支持台16a,16bには、X方向に延びる案内部材17が架設されている。案内部材17は、その長手方向の幅がステージ13のX方向よりも長く形成され、その一端が支持台16a側に張り出すように配置されている。案内部材17の上側には、吐出する液体を供給可能に収容する収容タンク18が配設されている。一方、その案内部材17の下側には、X方向に延びる案内レール19がX方向全幅にわたり凸設されている。
【0074】
案内レール19に沿って移動可能に配置されるキャリッジ20は、略直方体形状に形成されている。そのキャリッジ20の直動機構は、ステージ13が備える機構と同様な機構であり、その機構が備える駆動軸が、所定のパルス信号を受けてステップ単位で正逆転するX軸モータ(図示しない)に連結されている。そして、所定のステップ数に相当する駆動信号をX軸モータに入力すると、X軸モータが正転又は逆転して、キャリッジ20が同ステップ数に相当する分だけX方向に沿って往動又は復動する(X方向に走査する)。案内部材17とキャリッジ20との間には、副走査位置検出装置21が配置され、キャリッジ20の位置が計測できるようになっている。そして、キャリッジ20のステージ13側に向いている下面20aには、液滴吐出ヘッド22が凸設されている。
【0075】
X方向と逆の基台11側面であってキャリッジ20の移動範囲と対向する場所には、保守装置23が配置され、液滴吐出ヘッド22をクリーニングする機構が形成されている。そして、液滴吐出ヘッド22が正常に吐出可能な状態に保って吐出することが可能となっている。
【0076】
図3は、キャリッジを示す模式平面図である。図3に示すようにキャリッジ20には9個の液滴吐出ヘッド22が配置され、液滴吐出ヘッド22の下面には、それぞれノズルプレート24が備えられている。そのノズルプレート24には、それぞれ複数のノズル25がX方向に所定の間隔で配列されている。
【0077】
図4は、液滴吐出ヘッドの構造を示す要部模式断面図である。図4に示すように、ノズルプレート24の上側であってノズル25と相対する位置には、キャビティ26が形成されている。そして、キャビティ26には収容タンク18に貯留されている膜材料液としての機能液27が供給される。キャビティ26の上側には、上下方向に振動して、キャビティ26内の容積を拡大縮小する振動板28と、上下方向に伸縮して振動板28を振動させる圧電素子29が配設されている。圧電素子29が上下方向に伸縮して振動板28を振動し、振動板28がキャビティ26内の容積を拡大縮小する。それにより、キャビティ26内に供給された機能液27はノズル25を通って吐出されるようになっている。
【0078】
液滴吐出ヘッド22は、機能液27の液滴30を吐出する。そして、液滴吐出ヘッド22が圧電素子29を制御駆動するためのノズル駆動信号を受けると、圧電素子29が伸張して、振動板28がキャビティ26内の容積を縮小する。その結果、液滴吐出ヘッド22のノズル25からは、縮小した容積分の機能液27が液滴30となって吐出される。
【0079】
(膜の形成方法)
次に、上述した液滴吐出装置10を用いて、基板1に機能液を吐出して塗布することにより膜を形成する方法について図5〜図9にて説明する。図5は、基板に液滴を吐出して塗布することにより膜を形成する製造工程を示すフローチャートである。図6〜図9は、膜の形成方法を説明する図である。
【0080】
ステップS1は、バンク膜形成工程に相当し、基板にバンク材料を塗布して固化することによりバンク膜を形成する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は、露光工程に相当し、固化されたバンク膜に所定のパターン形状に相当する光を照射する工程である。次にステップS3に移行する。ステップS3は、現像工程に相当し、照射されたパターン形状にバンクを形成する工程である。ステップS1〜ステップS3のステップによりステップS11のバンク形成工程が構成される。次にステップS4に移行する。ステップS4は、表面処理工程に相当し、基板及びバンクの表面を改質する工程である。次にステップS5に移行する。ステップS5は、塗布工程に相当し、バンクに囲まれた場所に機能液を塗布する工程である。次にステップS6に移行する。ステップS6は、固化工程に相当し、塗布された機能液を乾燥して固化する工程である。以上のステップにより膜を形成する工程を終了する。
【0081】
図6(a)はステップS1に対応する図である。図6(a)に示すように、基板1にバンク形成材料36を塗布する。バンク形成材料36は特に限定されないが、フロロカーボンガスプラズマ処理によりテフロン(登録商標)化でき、バンク2に塗布する機能液27に対して耐久性の良い有機系感光性材料を用いることが好ましい。例えば、感光性アクリル樹脂、感光性エポキシ樹脂、感光性ポリイミドなどを用いることができる。本実施形態においては、例えば、感光性ポリイミドを採用している。そして、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコートなどの方法で、基板1上にバンク形成材料36を塗布する。次に、塗布されたバンク形成材料36を乾燥してバンク膜36aを形成する。
【0082】
図6(b)〜図6(d)はステップS2に対応する図である。図6(b)は、マスクを基板に重ねたときの平面図である。図6(c)は、図6(b)のA−A’における模式断面図であり、図6(d)は、図6(b)のB−B’における模式断面図である。図6(b)〜図6(d)に示すように、マスク37は基板37aに遮光パターン37bが形成されている。遮光パターン37bは略楕円の輪形状に形成されている。そして、図1に示す流動抑止部3に相当する4箇所の場所では略三角形の凸部37cが形成されている。
【0083】
基板1とマスク37とを重ねた状態で、紫外光38を照射する。遮光パターン37bに遮光されずにマスク37を通過する紫外光38はバンク膜36aを照射する。照射されたバンク膜36aは紫外線により変質した変質部36bが形成される。遮光パターン37bの周囲付近を通過する紫外光38は回折することにより進行方向が若干変更する。凸部37cでは3角形の2辺で回折する光が交差するので、凸部37cの先端部37dでは根元部37eより変質部36bが遮光パターン37bの内側に形成され易くなっている。
【0084】
ステップS3において、基板1を現像する。基板1をアルカリ現像液に浸漬して、変質部36bを除去する。アルカリ現像液としては、例えば、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)、コリン、珪酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを用いることができる。本実施形態ではTMAHを採用している。変質部36bを除去した後、純水にてリンスして乾燥する。図7はステップS3の現像後のバンクを示す概略斜視図である。図7に示すように、現像することにより基板1上にバンク2が形成される。流動抑止部3は凸状の先側が一部除去され、バンク上面2cからバンク底面2dにかけて連続的に変化する曲線にて形成される。このバンク底面2dではバンク2が除去されているので、基板上面1aと同じ面となっている。
【0085】
ステップS4において、基板1及びバンク2の表面を改質する。まずバンク底面2dの親液性を改善するために大気圧プラズマ処理を行う。具体的には、例えば、ヘリウムに酸素を20%加えた混合ガスに高電圧を印加することによりプラズマ雰囲気を形成する。このプラズマ雰囲気中に基板上面1aを通過させて表面洗浄することにより表面エネルギが上がり濡れ性が向上する。
【0086】
次に、バンク上面2c、内側側面2b、流動抑止部3を撥液性にする表面改質を行う。表面改質としては、例えば導入ガスにフッ素又はフッ素化合物を含んだガスを使用し、減圧雰囲気下や大気厚雰囲気下でプラズマ照射をする減圧プラズマ処理や大気圧プラズマ処理を行う。フッ素系化合物を含んだガス中でプラズマ処理を行うとき、有機材料表面においてフッ素系化合物分子が有機材料表面に入り込む混入化現象により表面が非極性化される。従って有機材料をフッ素系化合物が過多の条件でプラズマ処理すると、極性分子を含んだ流動体に対して非親和性を示し、非極性分子を含んだ流動体に対して親和性を示すようになる。フッ素又はフッ素化合物を含んだガスとしては、例えばCF4、SF6、CHF3などのハロゲンガスを用いることができる。本実施形態では、例えば、CF4を採用している。
【0087】
図8(a)〜図9(b)はステップS5に対応する図である。図8(a)及び図8(b)に示すように、バンク2により囲われた塗布領域2eにノズル25から液滴30を吐出する。このとき、液滴吐出ヘッド22はバンク2のバンク端部2aと流動抑止部3との間に液滴30aを吐出する。そして、流動抑止部3の上に液滴30の一部が載るように吐出する。この液滴30aを構成する機能液27の溶媒又は分散媒は非極性分子を含んでいる。そして、液滴30aはバンク2の内側側面2bに対して撥液性を有している。そのため、液滴30aはバンク端部2aの内側側面2bから離れる力が働く。一方、バンク端部2aと対向する場所には流動抑止部3が形成されており、流動抑止部3の表面にも液滴30aに対して撥液性を有している。従って、液滴30aはバンク端部2a付近に留まることとなる。
【0088】
次に、図8(c)に示すように、吐出されている液滴30aと隣接する場所に液滴30bを吐出する。このとき、液滴30aと液滴30bとが流動抑止部3を挟んで塗布される場所に吐出する。そして、挟んで塗布された液滴30の一部が流動抑止部3上に載るように吐出する。吐出された液滴30bは液滴30aと連結する。このとき、流動抑止部3により最初に吐出された液滴30aは移動し難くなっているので、最初に吐出された液滴30aはバンク端部2a付近に留まる。
【0089】
次に、図8(d)に示すように、右側のバンク端部2a付近に液滴30cを吐出する。この液滴30cは塗布領域2eに吐出する液滴30の中で最後に吐出する液滴30となる。吐出された液滴30cは中央に塗布されている液滴30bと連結して表面張力が作用するので、中央側へ移動する力が働く。しかし、液滴30cは流動抑止部3に近い場所に吐出されている。そして、撥液性を有する流動抑止部3によって阻まれるので、右側のバンク端部2a付近に吐出された液滴30cはバンク端部2a付近に留まる。図9(a)及び図9(b)は機能液27を塗布した後の状態を示す図である。図9(b)は、図9(a)のC−C’における断面図である。そして、図9(a)及び図9(b)に示すように、バンク2の内側の塗布領域2eに機能液27が充填される。このとき、バンク2のバンク端部2a付近にも機能液27が充填され、流動抑止部3の上面3aの上にも機能液27が載るように配置される。
【0090】
図9(c)はステップS6に対応する図である。図9(c)に示すように、基板1を乾燥させることにより、機能液27に含まれる溶媒又は分散媒を気化させる。そして機能液27が固化して膜4が形成される。基板1を乾燥させる方法としては、ホットプレート、電気炉などによる加熱処理、光を照射するランプアニール、減圧したチャンバ内に放置する減圧乾燥などの方法を用いることができる。本実施形態では、例えば、電気炉を用いた加熱処理を採用している。
【0091】
(比較例)
図10(a)〜図10(c)は比較例における膜の形成方法を説明する図であり、図10(a)及び図10(b)はステップS5に対応する図である。そして、図10(b)及び図10(c)は図10(a)のD−D’における断面図である。図10(a)及び図10(b)に示すように、塗布領域42を囲んでバンク43が形成され、塗布領域42に機能液27が吐出されて塗布されている。バンク43には流動抑止部3が形成されていないので、機能液27は塗布領域42内を移動し易くなっている。そして、バンク上面43aとバンク内側側面43bは機能液27に対する撥液処理がされており、バンク底面43cは機能液27に対する親液処理がされている。機能液27には表面張力が働くことにより一方に偏ることがある。このとき、例えば、右側の端部43dでは、機能液27が充填されない状態になる。
【0092】
そして、図10(c)はステップS6に対応する図である。図10(c)に示すように、端部43d付近に機能液27が充填されない状態で固化するとき、端部43d付近には膜4が形成されないので形成不良となる。
【0093】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、バンク2内に流動抑止部3が形成される。そして、流動抑止部3を挟んで機能液27が塗布される。このとき、流動抑止部3を挟んでいる機能液27は流動抑止部3により流動し難くなっている。従って、流動抑止部3を挟んでいる機能液27を移動させる力が加わるときにも、機能液27が移動せずに膜4を形成することができる。その結果、吐出する順序に影響されずに機能液27を塗布する場所に膜4を形成することができる。
【0094】
(2)本実施形態によれば、塗布領域2eのバンク端部2aに近い場所に流動抑止部3が形成され、流動抑止部3を挟んで機能液27が塗布される。塗布領域2eの端に塗布される機能液27は流動抑止部3により移動し難くなっている。その結果、塗布領域2eのバンク端部2aに近い場所においても、膜4を形成することができる。
【0095】
(3)本実施形態によれば、機能液27に対してバンク2の濡れ性が悪いとき、塗布された機能液27に表面張力が働くので機能液27が流動し易くなる。バンク2のバンク端部2aに最後に塗布するときにも、流動抑止部3により機能液27が移動し難い為、最後に塗布した場所に膜4を形成することができる。
【0096】
(4)本実施形態によれば、流動抑止部3のバンク2に近い場所ではバンク底面2dからの流動抑止部3の高さが高く形成されているので、機能液27が流動し難くなっている。そして、バンク2と離れている場所の流動抑止部3はバンク底面2dからの高さが低く形成されているので、流動抑止部3を挟んで塗布される機能液27はバンク2と離れている場所で分離し難くなっている。従って、流動抑止部3を挟んで塗布される機能液27は分離し難く且つ流動し難くすることができる。
【0097】
(5)本実施形態によれば、流動抑止部3はバンク底面2dからの高さが高い場所と低い場所とが連続的に形成されている。つまり、機能液27が流動し難いが分離し易い場所と機能液27が流動し易いが分離し難い場所とが連続的に切り換わっている。そして、塗布する機能液27の量が少ないときは、分離し難い状態にして、量が多くなるにつれて流動し難くすることができる。従って、機能液27が少ないときには分離し難く、量が増えるにしたがい徐々に流動し難くすることができる。その結果、機能液27を分離させずに流動し難くする状態を形成することができる。
【0098】
(6)本実施形態によれば、流動抑止部3は幅が広い場所と狭いとが連続的に形成されている。つまり、機能液27が流動し難いが分離し易い場所と膜材料液が流動し易いが分離し難い場所とが連続的に切り換わっている。そして、塗布する機能液27の量が少ないときは、分離し難い状態にして、量が多くなるにつれて流動し難くすることができる。従って、機能液27が少ないときには分離し難く、量が増えるにしたがい徐々に流動し難くすることができる。その結果、機能液27を分離させずに流動し難くする状態を形成することができる。
【0099】
(7)本実施形態によれば、バンク底面2dでは機能液27に対する親液処理がされているので、バンク底面2dに近い機能液27は分離し難くなっている。そして、バンク上面2c及び内側側面2bと流動抑止部3は機能液27に対して撥液性を有している。バンク上面2c及び内側側面2bと流動抑止部3で分離している機能液27は表面エネルギの差によりバンク底面2d方向へ移動し易くなっている。その結果、機能液27はバンク底面2dでまとまり易くなるので、まとまった膜4を形成することができる。
【0100】
(8)本実施形態によれば、2つの流動抑止部3が対向して配置されている。そして、2つ流動抑止部3の間はバンク2から離れた場所となる。この場所は、機能液27が溜り易い場所であるので、機能液27が流動抑止部3により分離され難くすることができる。
【0101】
(9)本実施形態によれば、流動抑止部3上に機能液27の一部が載り、流動抑止部3に載った機能液27は流動抑止部3を挟んでいる機能液27と連結して、機能液27を流動し難くしている。その結果、流動抑止部3付近に確実に膜4を形成することができる。
できる。
【0102】
(第2の実施形態)
次に、膜を形成する方法の一実施形態について図11(a)〜図11(j)の塗布領域の要部模式平面図を用いて説明する。この実施形態が第1の実施形態と異なるところは、流動抑止部3の位置が異なる点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0103】
すなわち、本実施形態では、図11(a)〜図11(j)に示すように、バンク2のバンク端部2aと流動抑止部3の距離が異なる場合の例を示している。バンク底面2dに液滴30が吐出されて広がった液溜り30eの液溜半径30dとする。そして、バンク端部2a及び流動抑止部3の中心との距離である抑止部距離46が液溜半径30dより短いとき、液溜半径30dの1倍、2倍、3倍のときの例を示す。図11(a)は、抑止部距離46が液溜半径30dより短い場合を示している。このとき、液溜り30eの重心は流動抑止部3の右側、つまりバンク端部2aと離れる方向にある。そして、流動抑止部3表面は撥液性を有しているので、機能液27は流動抑止部3の上を流動し易い。従って、図11(b)に示すように、液溜り30eはバンク端部2aと離れる方向へ移動して、バンク端部2aに機能液27が配置されなくなり、塗布不良の要因となる。
【0104】
図11(c)は、抑止部距離46が液溜半径30dと略同じ場合を示している。このとき、液溜り30eの重心は流動抑止部3の中心と略同じ場所となる。そして、液溜り30eは流動抑止部3を挟んで位置するので、機能液27は流動抑止部3の上で安定する。従って、図11(d)に示すように、液溜り30eはバンク端部2aまで広がって配置される。
【0105】
図11(e)は、抑止部距離46が液溜半径30dの略2倍の場合を示している。このとき、液溜り30eの重心は流動抑止部3の左側、つまりバンク端部2aに近寄る方向にある。そして、図11(f)に示すように、液溜り30eはバンク端部2aと近寄る方向へ移動して、液溜り30eはバンク端部2aまで広がって配置される。図11(g)は、次に流動抑止部3の右側、つまり、バンク端部2aと離れる側の場所に液滴30を吐出した状態を示している。このとき、図11(h)に示すように、液溜り30eが流動抑止部3を挟んで連結するので移動し難くなる。そして、液溜り30eはバンク端部2aまで広がって配置された状態で安定する。
【0106】
図11(i)は、抑止部距離46が液溜半径30dの略3倍の場合を示している。そして、バンク端部2aと隣接する場所に液滴30が塗布され、流動抑止部3上に液滴30が塗布されている。このとき、流動抑止部3上の液溜り30eは流動抑止部3を挟んで配置された状態で安定する。そして、液溜り30eはバンク端部2aまで広がって配置された状態で安定する。
【0107】
つまり、抑止部距離46が液溜半径30dより短いときは、塗布不良となる可能性が高く、抑止部距離46が液溜半径30dの1倍から3倍の間では、液溜り30eがバンク端部2aまで広がって配置される。そして、バンク端部2aまで膜4を形成することができる。
【0108】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、抑止部距離46を液溜半径30dの1倍から3倍の間にすることにより、バンク端部2aまで膜4を形成することができる。
【0109】
(第3の実施形態)
次に、第1の実施形態及び第2の実施形態の膜形成方法を応用して有機EL装置を製造する一実施形態について図12を用いて説明する。尚、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の部分は説明を省略する。
【0110】
まず、電気光学装置の一つである有機EL装置について説明する。図12は、有機EL装置の構造を示す概略分解斜視図である。
【0111】
図12に示すように、電気光学装置としての有機EL装置50は、光透過性の材料からなる基板51を備えている。基板51の上側には、絶縁膜52が形成されている。絶縁膜52上には、コンタクト電極53がマトリクス状に形成され、各コンタクト電極53と隣接する場所には、スイッチング機能を有する半導体としてのTFT素子54が形成されている。そして、TFT素子54のドレイン端子にコンタクト電極53が接続されている。
【0112】
各コンタクト電極53及びTFT素子54を囲むように、走査線55及びデータ線56が格子状に形成されている。そして、走査線55は、TFT素子54のゲート端子と接続され、データ線56は、TFT素子54のソース端子と接続されている。
【0113】
そして、コンタクト電極53、TFT素子54、走査線55、データ線56などからなる素子層57が形成されている。素子層57の上側には、絶縁膜58が形成され、絶縁膜58の上側には、バンク59が格子状に形成されている。バンク59が形成する矩形の端にあるバンク端部59aの近くには1対の流動抑止部59bが形成されている。この流動抑止部59bは第1の実施形態と同様に略円錐形を2等分した形状となっている。
【0114】
バンク59により形成される凹状領域の各底部には、電極としての画素電極60が形成され、画素電極60は、コンタクト電極53と電気的に接続されている。画素電極60の上面には、発光素子としての正孔輸送層61が形成され、正孔輸送層61の上面には、発光素子としての発光層62R,62G,62Bが形成されている。そして、正孔輸送層61と発光層62R,62G,62Bとにより発光素子及び発光膜としての機能層63が形成されている。
【0115】
発光素子としての発光層62Rは、赤色を発光する有機発光材料などにより構成された発光層であり、発光素子としての発光層62Gは、緑色を発光する有機発光材料などにより構成された発光層である。同様に、発光素子としての発光層62Bは、青色を発光する有機発光材料などにより構成された発光層である。
【0116】
機能層63及びバンク59の上側全面に渡って、光反射性を有する導電性材料などからなる電極としての陰極64が形成されている。本実施形態においては、陰極64は、例えば、アルミニウムを採用している。陰極64の上面には、封止膜65が形成され、陰極64及び機能層63が空気中の酸素により酸化されることを防止している。
【0117】
画素電極60と陰極64との間に電圧を印加するとき、正孔輸送層61は、正孔のみを流動する。そして、発光層62R,62G,62Bは、正孔輸送層61から供給される正孔と陰極64から供給される電子とが、合体するときのエネルギにより、発光する性質を持っている。TFT素子54は、スイッチング動作を行い、機能層63にかける電圧をコントロールすることにより、発光層62R,62G,62Bが発光する光量を制御する。このように、発光層62R,62G,62Bが発光する光量を制御することにより、画素毎に光量をコントロールし、画素を明滅させることにより、映像を表示させることができる。この発光層62R,62G,62B、画素電極60、陰極64などにより光学素子が構成されている。
【0118】
画素電極60は、TFT素子54のドレイン端子に電気的に接続されており、TFTを一定期間だけオン状態とすることにより、データ線56から供給される画素信号が各画素電極60に所定のタイミングで供給される。このようにして画素電極60に供給された所定レベルの画素信号の電圧レベルは、陰極64と画素電極60との間で保持され、画素信号の電圧レベルに応じて、発光層62R,62G,62Bが発光する光量が変化する。
【0119】
図13はバンク及び機能層を示す模式平面図である。図13に示すように、バンク59によって囲まれた領域に機能層63が形成されている。そして、機能層63の基板51側には絶縁膜52が形成されている。この絶縁膜52は窓部としての透過膜52aと遮光膜52bとから構成されている。バンク59及び流動抑止部59bが配置されている場所の近くには遮光膜52bが配置され、機能層63の中央には透過膜52aが配置されている。
【0120】
図14は有機EL装置の製造工程を示すフローチャートである。図14において、ステップS21は、素子層形成工程に相当する工程である。基板51上に絶縁膜52を形成する。そして、絶縁膜52上にTFT素子54、走査線55、データ線56などからなる素子層57を形成する工程である。次にステップS22に移行する。ステップS22は、画素電極形成工程に相当する工程である。素子層57の上に絶縁膜58を形成した後、絶縁膜58の上に画素電極60を形成する工程である。画素電極60は機能層63と略同等の形状に形成する。次にステップS23に移行する。ステップS23は、発光膜形成工程に相当する工程である。絶縁膜58及び画素電極60の上にバンク59を形成する。次にバンク59で区画された中に機能層63を形成する工程である。
【0121】
この工程において、第1の実施形態及び第2の実施形態における膜形成方法を用いる。具体的には、バンク59を形成するとき、バンク端部59aの近くに流動抑止部59bを形成する。そして、バンク59に撥液処理を行う。次に、正孔輸送層61の材料を、溶媒に溶解又は分散媒に分散することにより、正孔輸送層の材料液を製造する。次に、液滴吐出装置10を用いて、この正孔輸送層の材料液を画素電極60の表面に吐出して塗布する。このとき、塗布された正孔輸送層の材料液は流動抑止部59bによりバンク端部59a付近も確実に塗布される。その後、正孔輸送層の材料液を加熱乾燥して固化することにより正孔輸送層61を形成する。
【0122】
さらに、正孔輸送層61の表面に発光層62R,62G,62Bを形成する工程において、第1の実施形態及び第2の実施形態における膜形成方法を用いる。具体的には、発光層62R,62G,62Bの材料を、溶媒に溶解又は分散媒に分散することにより、発光層の材料液を製造する。次に、液滴吐出装置10を用いて、この発光層の材料液を正孔輸送層61の表面に吐出して塗布する。このとき、塗布された発光層の材料液は流動抑止部59bによりバンク端部59a付近も確実に塗布される。その後、発光層の材料液を加熱乾燥して固化することにより発光層62R,62G,62Bを形成する。次にステップS24に移行する。
【0123】
ステップS24は、陰電極形成工程に相当する工程である。この工程ではバンク59及び機能層63の上側に陰極64を形成する。成膜方法は特に限定されないが、陰極64はアルミニウムを原料にしてスパッタ又は蒸着することにより成膜しても良い。次に、陰極64の上に封止膜65を形成する。封止膜65は樹脂材料を溶媒に溶解した封止材料液を塗布した後、乾燥して成膜する。以上の工程により有機EL装置50が完成する。
【0124】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、機能層63が第1の実施形態及び第2の実施形態における膜形成方法を用いて形成されるので、機能層63がバンク59に囲まれた領域総てに形成することができる。
【0125】
(2)本実施形態によれば、光を放射する透過膜52aと流動抑止部59bとが異なる場所に配置されている。流動抑止部59bでは、表面張力により機能層63の膜厚が薄くなる場合があるので、発光する光量が少なくなる場合がある。透過膜52aと対向する場所の機能層63は膜厚が薄くなり難いので、品質の良い光量の発光を行うことができる。
【0126】
(第4の実施形態)
次に、第1の実施形態及び第2の実施形態の膜形成方法を用いて光学レンズを製造する一実施形態について図15を用いて説明する。図15(a)〜図15(c)は、柱状凸レンズの製造方法を説明する図であり、図15(d)及び図15(e)は、柱状凹レンズの製造方法を説明する図である。図15(a)はバンク模式平面図であり、図15(b)〜図15(e)は、図15(a)のE−E’における模式断面図である。尚、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の部分は説明を省略する。
【0127】
まず、凸レンズの製造方法を説明する。図15(a)に示すように、基板67上にバンク68が形成されている。バンク68のバンク端部68aの近くには流動抑止部68bが形成されている。バンク68に囲まれた塗布領域69に液滴吐出装置10を用いてレンズ材料液70を塗布する。レンズ材料液70は光透過性の樹脂材料を溶媒に溶解して製造する。この樹脂材料は、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などを用いることができる。
【0128】
図15(b)に示すように、レンズ材料液70はバンク上面68cを越えて塗布する。流動抑止部68b及びバンク上面68cには撥液処理がされ、レンズ材料液70はバンク上面68cに載り難くなっている。そして、レンズ材料液70の表面張力によりレンズ材料液70の表面は円弧状となる。次に、レンズ材料液70が塗布された基板67を乾燥して、レンズ材料液70を固化する。その結果、図15(c)に示すように、断面形状が凸状に形成された光学素子及び光透過性膜としての凸レンズ71が形成される。
【0129】
次に、凹レンズの製造方法を説明する。このときにも、図15(a)に示すバンク68を用いる。尚、バンク内側側面68dはレンズ材料液70に対して親液処理を行う。そして、図15(d)に示すように、バンク上面68cを越えない程度にレンズ材料液70を塗布する。そして、レンズ材料液70はバンク内側側面68dと親和性が良いので、レンズ材料液70がバンク内側側面68dに付着することによりレンズ材料液70の表面は円弧状となる。次に、レンズ材料液70が塗布された基板67を乾燥して、レンズ材料液70を固化する。その結果、図15(e)に示すように、断面形状が凹状に形成された光学素子及び光透過性膜としての凹レンズ72が形成される。
【0130】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、凸状又は凹状の光透過性膜を形成することにより光学レンズの機能を有する膜を形成することができる。このとき、光透過性膜が第1の実施形態及び第2の実施形態における膜の形成方法を用いて形成されるので、凸レンズ71及び凹レンズ72がバンク68に囲まれた領域総てに形成することができる。
【0131】
(第5の実施形態)
次に、第1の実施形態及び第2の実施形態の膜形成方法を用いてカラーフィルタを製造する一実施形態について図16を用いて説明する。図16は、カラーフィルタの製造方法を説明する図である。尚、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の部分は説明を省略する。
【0132】
図16に示すように、光学素子としてのカラーフィルタ75は光透過性の基板76を備えている。基板76の上側には、バンク77が格子状に形成されている。バンク77が形成する矩形の端であるバンク端部77aの近くには対向する場所に流動抑止部77bが形成されている。この流動抑止部77bは第1の実施形態と同様に略円錐形を2等分した形状となっている。バンク77によってマトリクス状に区画された凹部には、着色層78として、赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタ素子78R,78G,78Bが形成されている。
【0133】
白色光がカラーフィルタ75を通過するとき、この白色光は赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタ素子78R,78G,78Bを通過する。そして、各色の波長特性の波長帯域の光が選択的に通過するので、赤(R)のカラーフィルタ素子78Rからは赤色の光が通過する。同様に、緑(G)、青(B)のカラーフィルタ素子78G,78Bからは、それぞれ、緑色、青色の光が通過する。
【0134】
次に、カラーフィルタの製造方法を説明する。基板76上にバンク77が形成されている。バンク77のバンク端部77aの近くには流動抑止部77bが形成されている。次に、カラーフィルタ素子78R,78G,78Bの材料を、溶媒に溶解又は分散媒に分散することにより、各色のカラーインクを製造する。次に、液滴吐出装置10を用いて、このカラーインクをバンク77に囲まれた凹部に吐出して塗布する。このとき、塗布されたカラーインクは流動抑止部77bによりバンク端部77a付近も確実に塗布される。その後、カラーインクを加熱乾燥して固化することによりカラーフィルタ素子78R,78G,78Bを形成する。
【0135】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、着色層78が第1の実施形態及び第2の実施形態における膜の形成方法を用いて形成されるので、流動抑止部77bがバンク77に囲まれた領域総てに形成することができる。
【0136】
(第6の実施形態)
次に、第1の実施形態及び第2の実施形態の膜形成方法を用いて金属配線を製造する一実施形態について図17を用いて説明する。図17は、金属配線の製造方法を説明する図である。尚、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の部分は説明を省略する。
【0137】
図17に示すように、基板81上に略十字形の閉曲線状のバンク82が形成されている。バンク82が形成する十字形の端にあるバンク端部82aの近くには対向する場所に流動抑止部82bが形成されている。この流動抑止部82bは第1の実施形態と同様に略円錐形を2等分した形状となっている。バンク82によってマトリクス状に区画された凹部には、導電膜としての配線83が形成されている。配線83間に電圧をかけることにより電流を通すことにより配線83は電流の通路として用いることができる。
【0138】
次に、配線の製造方法を説明する。基板81上にバンク82が形成されている。バンク82のバンク端部82aの近くには流動抑止部82bが形成されている。次に、配線83の材料を、溶媒に溶解又は分散媒に分散することにより、配線材料液を製造する。次に、液滴吐出装置10を用いて、この配線材料液をバンク82に囲まれた凹部に吐出して塗布する。このとき、塗布された配線材料液は流動抑止部82bによりバンク端部82a付近も確実に塗布される。その後、配線材料液を加熱乾燥して固化することにより配線83を形成する。
【0139】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、配線83が、第1の実施形態及び第2の実施形態における膜の形成方法を用いて形成されるので、配線83がバンク82に囲まれた領域総てに形成することができる。
【0140】
尚、実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態において、バンク2は基板1上に凸状に配置したが、図18に示すように基板1上に膜85を形成し、膜85の一部を凹状に形成してバンク86としても良い。そして、バンク86の内側に機能液27を吐出して塗布した後、固化することにより膜4を形成しても良い。膜85を平坦化膜又は絶縁膜などの機能膜として用いることができる。尚、前記第2の実施形態〜第6の実施形態においても同様に膜85の一部を凹状に形成したバンク86を用いても良い。
【0141】
(変形例2)
前記第1の実施形態において、2つの略円錐形を半分にした形状をした流動抑止部3が対向する場所に配置されたが、他の形態でも良い。例えば、図19(a)では、バンク88のバンク端部88aの近くには1つの流動抑止部88bが形成されている。この流動抑止部88bは略円錐形を半分にした形状に形成され、その先端は対向する場所の側面88cの近くまで形成されている。
【0142】
例えば、図19(b)では、バンク89のバンク端部89aの近くには1対の流動抑止部89bが形成されている。この流動抑止部89bの先端は略平らの形状に形成され、根元が厚く先が薄く形成されている。例えば、図19(c)では、バンク90のバンク端部90aの近くには1つの流動抑止部90bが形成されている。この流動抑止部90bの先端は略平らの形状に形成され、根元が厚く先が薄く形成されている。そして、その先端は対向する場所の側面90cの近くまで形成されている。
【0143】
例えば、図19(d)では、バンク91のバンク端部91aの近くには1対の流動抑止部91bが形成されている。この流動抑止部91bの先端は略円弧状に形成され、根元が厚く先が薄く形成されている。例えば、図19(e)では、バンク92のバンク端部92aの近くには1つの流動抑止部92bが形成されている。この流動抑止部92bの先端は略円弧状に形成され、根元が厚く先が薄く形成されている。そして、その先端は対向する場所の側面92cの近くまで形成されている。
【0144】
例えば、図19(f)では、バンク93のバンク端部93aの近くには1つの流動抑止部93bが形成されている。この流動抑止部93bは略楕円状に形成され、中央が厚く両側の先が薄く形成されている。そして、流動抑止部93bはバンク内側側面93cと離れた場所に配置され、流動抑止部93bの両側の先がバンク内側側面93cに近くなるように配置されている。以上の例において、いずれの場合においても機能液27を塗布するとき、流動抑止部88b〜流動抑止部93bが機能液27を移動し難くするので、固化された膜4はバンク端部88a〜バンク端部93a近くにおいても形成することができる。尚、前記第2の実施形態〜第6の実施形態においても同様にこの流動抑止部88b〜流動抑止部93bを用いても良い。
【0145】
(変形例3)
前記第1の実施形態において、基板1はシートのように柔軟性のあるものでも良い。この場合においても同様の方法を用いることにより、同様の効果を得ることができる。
【0146】
(変形例4)
前記第1の実施形態において、フッ素系化合物が過多の条件でプラズマ処理することにより撥液性のあるバンク2及び流動抑止部3を形成したが、他の方法を用いても良い。例えば、撥液性のある溶液を塗布して固化することにより撥液性のある膜を形成しても良い。他にも、フッ素系化合物を含んだ材料を用いてバンク2を形成しても良い。いずれの方法においても撥液性のあるバンク2及び流動抑止部3を形成することができる。
【0147】
(変形例5)
前記第3の実施形態において、機能層63は正孔輸送層61と発光層62R,62G,62Bとにより形成されたが、他の構成でも良い。例えば、機能層63は正孔輸送層、発光層、電子注入層の組合せでも良い。又、機能層63は正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層の組合せでも良い。材料の構成に合わせて各層の構成を変えても良い。この場合においても各層の材料を塗布するとき、前記第3の実施形態と同様の方法を用いることにより、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】第1の実施形態に係り、(a)は、膜の構成を示す模式平面図、(b)及び(c)は、膜の構成を示す模式断面図。
【図2】液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図。
【図3】キャリッジを示す模式平面図。
【図4】液滴吐出ヘッドの構造を示す要部模式断面図。
【図5】膜を形成する製造工程を示すフローチャート。
【図6】膜の形成方法を説明する図。
【図7】膜の形成方法を説明する図。
【図8】膜の形成方法を説明する図。
【図9】膜の形成方法を説明する図。
【図10】比較例に係る膜の形成方法を説明する図。
【図11】第2の実施形態に係る膜の形成方法を説明する図。
【図12】第3の実施形態に係る有機EL装置の構造を示す概略分解斜視図。
【図13】バンク及び機能層を示す模式平面図。
【図14】有機EL装置の製造工程を示すフローチャート。
【図15】第4の実施形態に係り、(a)〜(c)は、柱状凸レンズの製造方法を説明する図、(d)及び(e)は、柱状凹レンズの製造方法を説明する図。
【図16】第5の実施形態に係るカラーフィルタの製造方法を説明する図。
【図17】第6の実施形態に係る金属配線の製造方法を説明する図。
【図18】変形例1に係るバンクの模式断面図。
【図19】変形例2に係るバンクの模式平面図。
【符号の説明】
【0149】
2,77,82,88,89,90,91,93…バンク、2b…側面としての内側側面、2d…底面としてのバンク底面、2e,42…塗布領域、3,59b,68b,82b,88b,93b…流動抑止部、27…膜材料液としての機能液、30a,30b,30c…液滴、30d…液溜半径、30e…液溜り、52b…窓部としての遮光膜、60…電極としての画素電極、63…発光膜としての機能層、64…電極としての陰極、71…光学素子及び光透過性膜としての凸レンズ、72…光学素子及び光透過性膜としての凹レンズ、75…光学素子としてのカラーフィルタ、83…導電膜としての配線、90a,91a,92a…バンク端部、92c…側面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1方向が長い塗布領域に膜材料液を吐出して膜を形成する膜形成方法であって、
前記塗布領域を囲んでバンクを形成するバンク形成工程と、
前記塗布領域に前記膜材料液を吐出する塗布工程と、
塗布された前記膜材料液を固化する固化工程と、を有し、
前記塗布領域には凸状の流動抑止部が形成され、
前記塗布工程において前記流動抑止部を挟んで前記膜材料液を塗布することを特徴とする膜形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の膜形成方法であって、
前記流動抑止部は前記塗布領域の長手方向における端に近い場所に形成されていることを特徴とする膜形成方法。
【請求項3】
請求項2に記載の膜形成方法であって、
前記塗布工程では1つの前記塗布領域において複数回の吐出を行い、
前記塗布領域に吐出する液滴の中で最後に吐出する前記液滴は前記流動抑止部に近い場所に吐出されることを特徴とする膜形成方法。
【請求項4】
請求項2に記載の膜形成方法であって、
吐出された前記膜材料液の1つの液滴が前記塗布領域に広がる液溜りの半径を液溜半径とするとき、
前記流動抑止部と前記塗布領域の端との距離は液溜半径の1〜3倍の場所に位置することを特徴とする膜形成方法。
【請求項5】
請求項2に記載の膜形成方法であって、
前記流動抑止部の一端は前記バンクと接続して配置され、
前記流動抑止部の前記バンクと離れている場所は、前記バンクと近い場所に比べて、前記バンクの底面からの高さが低くなるように形成されていることを特徴とする膜形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載の膜形成方法であって、
前記流動抑止部は、前記バンクに近い場所から前記バンクから遠い場所まで、前記底面からの高さが連続して低くなるように形成されていることを特徴とする膜形成方法。
【請求項7】
請求項5に記載の膜形成方法であって、
前記流動抑止部と前記バンクの側面とが接する場所における前記バンクの側面が接する面の方向に対する前記流動抑止部の長さを前記流動抑止部の幅とするとき、
前記流動抑止部の幅は、前記バンクに近い場所から前記バンクから離れるにしたがい連続して小さくなるように形成されていることを特徴とする膜形成方法。
【請求項8】
請求項1に記載の膜形成方法であって、
前記バンク形成工程において、前記バンクの上面及び側面と前記流動抑止部には前記膜材料液に対する撥液処理を行い、前記バンクの底面には前記膜材料液に対する親液処理を行うことを特徴とする膜形成方法。
【請求項9】
請求項5に記載の膜形成方法であって、
前記塗布領域の長手方向と略直交する方向に2つの前記流動抑止部が対向して配置されることを特徴とする膜形成方法。
【請求項10】
請求項1に記載の膜形成方法であって、
前記塗布工程では、前記流動抑止部上に前記膜材料液の一部が載るように塗布することを特徴とする膜形成方法。
【請求項11】
請求項10に記載の膜形成方法であって、
前記塗布工程では、挟んで塗布された前記膜材料液の一部が前記流動抑止部上に載るように吐出することを特徴とする膜形成方法。
【請求項12】
請求項2に記載の膜形成方法であって、
前記流動抑止部は前記バンクに囲まれた中に配置され、
前記流動抑止部の前記バンクと近い場所は、前記バンクと離れている場所に比べて、前記バンクの底面からの高さが低くなるように形成されていることを特徴とする膜形成方法。
【請求項13】
1対の電極の間に発光膜を有する光学素子の形成方法であって、
前記電極を形成する電極形成工程と、
前記発光膜を形成する発光膜形成工程と、を有し、
請求項1〜12のいずれか一項に記載の膜形成方法を用いて前記発光膜を形成することを特徴とする光学素子の形成方法。
【請求項14】
請求項13に記載の光学素子の形成方法であって、
前記発光膜には発光する光が放射する窓部を有し、
前記窓部は前記流動抑止部と異なる場所に配置されていることを特徴とする光学素子の形成方法。
【請求項15】
通過する光の光路を変える光学素子の形成方法であって、
光透過性の基板上に、光透過性膜を凸状又は凹状に形成する膜形成工程を有し、
請求項1〜12のいずれか一項に記載の膜形成方法を用いて前記光透過性膜を形成することを特徴とする光学素子の形成方法。
【請求項16】
通過する光の波長分布を変える光学素子の形成方法であって、
光透過性の基板上に、色素を含有する膜材料液を用いて光透過性膜を形成する膜形成工程を有し、
請求項1〜12のいずれか一項に記載の膜形成方法を用いて前記光透過性膜を形成することを特徴とする光学素子の形成方法。
【請求項17】
基板上に、導電性材料を含有する膜材料液を用いて導電膜を形成する膜形成工程を有し、
請求項1〜12のいずれか一項に記載の膜形成方法を用いて前記導電膜を形成することを特徴とする導電膜の形成方法。
【請求項18】
光学的特性を有し少なくとも1方向が長い光学膜を有する光学素子であって、
前記光学膜の周囲に形成されたバンクと、
前記光学膜の長手方向における端に近い場所に凸状に形成された流動抑止部と、を有し、
前記流動抑止部と前記光学膜とが重ねて配置されていることを特徴とする光学素子。
【請求項19】
請求項18に記載の光学素子であって、
前記流動抑止部の一端は前記バンクと接続して配置され、
前記流動抑止部の前記バンクと離れている場所は、前記バンクと近い場所に比べて、前記流動抑止部の厚さが薄くなるように形成されていることを特徴とする光学素子。
【請求項20】
請求項19に記載の光学素子であって、
前記流動抑止部は、前記バンクに近い場所から前記バンクから離れるにしたがい前記流動抑止部の前記厚さが連続して小さくなるように形成されていることを特徴とする光学素子。
【請求項21】
請求項19に記載の光学素子であって、
前記流動抑止部と前記バンクの側面とが接する場所における前記バンクの側面が接する面の方向に対する前記流動抑止部の長さを前記流動抑止部の幅とするとき、
前記流動抑止部の幅は、前記バンクに近い場所から前記バンクから離れるにしたがい連続して小さくなるように形成されていることを特徴とする光学素子。
【請求項22】
請求項18〜21のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記光学膜は有機ELを含有する材料から形成されていることを特徴とする光学素子。
【請求項23】
請求項22に記載の光学素子であって、
前記光学膜が発光する光の一部を透過する窓部を有し、
前記窓部から光が透過する範囲外に前記流動抑止部が配置されていることを特徴とする光学素子。
【請求項24】
請求項18〜21のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記光学膜は凸状又は凹状に形成され、前記光学膜を通過する光の光路が変わることを特徴とする光学素子。
【請求項25】
請求項18〜21のいずれか一項に記載の光学素子であって、
前記光学膜は色素を含有する光透過性膜であり、前記光学膜を通過する光の波長分布を変えることを特徴とする光学素子。
【請求項26】
少なくとも1方向に長い導電膜などからなる配線であって、
前記導電膜の周囲に形成されたバンクと、
前記導電膜の長手方向における端に近い場所に凸状に形成された流動抑止部と、を有し、
前記流動抑止部と前記導電膜とが重ねて配置されていることを特徴とする配線。
【請求項27】
請求項26に記載の配線であって、
前記流動抑止部の一端は前記バンクと接続して配置され、
前記流動抑止部の前記バンクと離れている場所は、前記バンクと近い場所に比べて、前記流動抑止部の厚さが薄くなるように形成されていることを特徴とする配線。
【請求項28】
請求項27に記載の配線であって、
前記流動抑止部は、前記バンクに近い場所から前記バンクから離れるにしたがい前記流動抑止部の前記厚さが連続して薄くなるように形成されていることを特徴とする配線。
【請求項29】
請求項27に記載の配線であって、
前記流動抑止部と前記バンクの側面とが接する場所における前記バンクの側面が接する面の方向に対する前記流動抑止部の長さを前記流動抑止部の幅とするとき、
前記流動抑止部の幅は、前記バンクに近い場所から前記バンクから離れるにしたがい連続して小さくなるように形成されていることを特徴とする配線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−64745(P2009−64745A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233693(P2007−233693)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】