説明

膜濾過の逆洗排水を濃縮する装置および方法

【課題】既存のサイフォン式濃縮装置に対して大幅な改造あるいは設備の増設等を施すことなしに、効率的な後処理が可能な濾過膜の逆洗排水を濃縮するための装置および方法を提供する。
【解決手段】濾過膜の逆洗排水を濃縮するための装置であって、原水を膜濾過するための膜濾過装置11と、膜濾過による逆洗排水を貯留するための逆洗排水貯留槽7と、該逆洗排水貯留槽内の逆洗排水を受け入れるための汚泥槽1と、該汚泥槽内に設けられるサイフォン式濾過濃縮手段2であって、前記汚泥槽内の逆洗排水を前記逆洗排水貯留槽に戻すための逆洗排水戻し管6と、前記汚泥槽の底部に接続され、濾過濃縮された汚泥を排出するための濃縮汚泥排出管とを有する装置において、6は、逆洗排水に含有し前記汚泥槽の底に溜まる沈降性の高い圧密性ペレット状固形物が、6を通じて7に戻されないように、前記汚泥槽の底から上方の所定レベルで前記汚泥槽に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜濾過の逆洗排水を濃縮する装置および方法に関し、より詳細には、膜濾過の洗浄排水を濃縮する際、膜表面に付着した固形物とともに、膜濾過特有に生成する沈降性の高い圧密性ぺレット状固形物を濃縮することが可能な膜濾過の逆洗排水を濃縮する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浄水場や工場等では水処理により水道水や純水、中水などを得ている。例えば、浄水場では、一般的には、原水に対して薬品を注入したうえで、重力沈降操作を用いた凝集沈殿濾過などが行われるが、近年クリプトスポリジウム等にみられる細菌類の混入による食中毒等が問題化し、より高度な浄水処理が求められている。その中の方法の一つとして膜による浄水処理がある。これは0.1μm程度以下の微細孔径な膜により濾過を行うものであり、これにより安全で安定的な水道水を作ることが可能となっている。
【0003】
この膜濾過により水処理を行う場合、その処理工程の中で徐々に膜面に固形分が付着して膜濾過能力を低下させる。そのため、定期的な洗浄操作を行い、これを除去する。より具体的には、膜濾過対象である原水の流入方向と逆方向に洗浄水を流すことにより、膜面に付着した固形分を除去するものであり、このような洗浄水は逆洗水とも呼ばれている。
【0004】
この洗浄によって発生する逆洗排水中の固形物は、一般的に重力沈降による濃縮操作を行った後に機械脱水あるいは天日乾燥などを経て固化し産業廃棄物として廃棄処理あるいは園芸用土壌等の形で再利用され、脱水液は水道水の原水として用いられる。また工場やデパート、ビル等では水道水や井戸水をより安全性の高く純度の高い水にするために、あるいは廃水を中水として再利用するために、近年では膜濾過装置がよく用いられている。この場合でも膜濾過能力低下を防止するために定期的な洗浄操作を行っており、発生する逆洗排水に対して濃縮や脱水操作を行っている。
【0005】
ところで、凝集沈澱濾過による浄水工程から排出される汚泥は、97〜99%の水分が含まれているので一旦重力沈降槽で濃縮した後、加圧や真空などによる機械脱水を行って80%以下の含水率のケーキとし、このケーキを埋立てなどの処分をしている。
しかし、機械脱水だけでは処理に要するエネルギーが大きいため、特許文献1、特許文献2、および特許文献3に記載の濾過濃縮装置などを用いて、予め機械脱水前の水分負荷(含水率)を減少させて省力化が図られている。
特に、特許文献1に記載の汚泥濃縮では、汚泥槽内に吸収性の材料で作られた中板の両側に濾布を貼り付けた濾過板を配置し、これに濾液排出手段を取り付けることより濾過濃縮を行う。これをサイフォン式ろ過濃縮装置という。
【0006】
サイフォン式濾過濃縮装置は、汚泥槽内に1枚あるいは複数の濾過板を配置し、この濾過板に濾液排出管の一端を接続し、その他端を汚泥槽の外部に引出し、この装置の汚泥槽内に汚泥を充填すると、汚泥自身の重力または濾液排出管内に作用する負圧力(サイフォン力)により、濾過板の表面の汚泥が圧力を受けるので、汚泥粒子が濾過板表面に溜まり、汚泥の水分が濾過板内部に侵入し、濾液排出管を通って汚泥槽外部に排出される。これにより濾布表面に半固形状の濃縮汚泥が形成されるが、濃縮されていない汚泥が汚泥槽に残留しているので、このままでは濃縮汚泥を取出す事が出来ないため、この未濃縮の汚泥をポンプ等を用いて汚泥槽外部へ排出した後、例えば濾液排出管を通して濾過板内部に加圧空気を吹き込むことにより、濃縮汚泥を濾布表面から剥離することができる。
剥離した濃縮汚泥は汚泥槽の底部に落下するので、これを槽外に排出し濃縮汚泥を得る。
【0007】
そこで、本発明者は、従来の凝集沈澱濾過による浄水工程から排出される汚泥に対してではなく、膜濾過の洗浄排水に対してこのようなサイフォン式濾過濃縮装置を適用することにより、膜濾過の洗浄排水を濃縮することが可能ではないかと考え、以下に示すように、試験を試みた。
本装置は、例えば、図17のように、短形状の汚泥室を内部に備えた汚泥槽1、汚泥槽内に垂直に懸架された濾過板2、濾過板によりろ過された濾液を排出する濾液管3、濾液を排出する濾液バルブ4、汚泥槽内の未濃縮排水を槽外に排出するための排水ポンプ5、汚泥槽内の未濃縮排水を槽外に排出するための排水管6、排出した未濃縮排水を保管する貯留槽7、濾過板により濃縮された濃縮汚泥を排出する排出バルブ8、濾液を排出するサイフォンを形成する為の真空ポンプ9、濾液を排出するサイフォンを形成する為の真空バルブ10、により構成される。ここで、洗浄排水を排出する膜濾過装置11は、セラミック製で縦型にセットされ、膜装置下部の膜内面より原水を送水し、全量を濾過するデッドエンド方式となっており、一定時間浄水を濾過した後に膜濾過水あるいは浄水を膜透過面より供給して膜表面に付着した不純物及び固形分を剥離させた後に濾過濃縮装置を構成する貯留槽7へ洗浄排水として送水する。この洗浄排水は、貯留槽7よりポンプや高低差を利用した自重落下等より汚泥槽1へ送水されるようになっている。汚泥槽1は、槽内に濾過板2を有し、槽下部に排水管6及び排出バルブ8を接続している。濾過板2は、結合された濾布内部の上部には濾過液を通水する管を設けており、この管は濾布上部で濾過板外部へ貫通しており、貫通した後に濾液管3に接続されている。
【0008】
次に、この装置による運転方法を図18、図19、図20、図21、図22を用いて説明する。
【0009】
まず、図18に示すように、膜濾過装置11より排出された排水は貯留槽7に一旦貯留された後、濾液バルブ4と排出バルブ8、真空バルブ10が閉じた状態において汚泥槽1へ供給される。
【0010】
次に、図19に示すように、汚泥槽1内部を洗浄排水で満たした後に真空バルブ10を開け真空ポンプ9を運転する。すると濾液管3内が負圧になり、これと結合されている濾過板2の内部も同様に負圧になる。すると濾過板表面の逆洗排水が圧力を受け、逆洗排水の水分が濾布を通じて濾過板内部に侵入して濾液となり、濾液が濾液管3内に流入し、真空バルブ10を通り真空ポンプ9を通って外部へ排出される。ここで濾液管3内が濾液で満たされた後に真空バルブ10を閉じ真空ポンプ9を停止し、濾液管3内が濾液で満たされた後に濾液バルブ4を開けると、サイフォン力により濾液が管外へ流れ出し、濾過板2表面の逆洗排水の水分が濾布を通じて濾過板2内部に侵入し始め、逆洗排水の固形分が濾過板2表面に凝集し始め、濃縮汚泥となってくる。運転を続けると汚泥槽1内の洗浄排水量が減るので、濾過板2が液面より上に露出しないように貯留槽7より洗浄排水を供給する。
【0011】
一定時間運転を続けると、濾過板表面に凝集した濃縮汚泥が板状に形成されてくる。この時間は、膜濾過処理する前の原水の水質や処理する膜の能力や膜の経年的変化などにより変わってくる。濾過板表面に板状の濃縮汚泥が形成された後に、図20に示すように、汚泥槽1内にある未濃縮の洗浄排水を排水ポンプ5及び排水管6により貯留槽7へ送水し汚泥槽1内より排出し、汚泥槽1内を空の状態にする。
【0012】
次に、図21に示すように、濾液バルブ4を閉じた後にこの濾液管3内に圧縮された空気を供給し、濾過板2表面に形成された濃縮された汚泥を剥離させ汚泥槽1下部へ落下させる。
【0013】
次に、図22に示すように、汚泥槽1下部に溜まっている前述の剥離した汚泥を濃縮汚泥として排出バルブ8を通じて槽外へ排出する。
以上の操作により、膜濾過の逆洗排水を濃縮する事が可能である。

【0014】
以上のように、本発明者は、セラミック膜を用いて膜濾過した後の逆洗排水をサイフォン濾過濃縮装置を用いて実験を行い、濃縮が可能である事を確認したが、膜濾過した後の逆洗排水には、膜表面に付着する汚泥状の固形分とは別に、膜濾過特有の固形物が大量に含まれており、このことに起因して、膜濾過した後の逆洗排水をサイフォン濾過濃縮装置によって濃縮することが困難であることを見出すに至った。
【0015】
より詳細には、膜濾過特有の固形物とは、主として、濾過すべき処理液を濾過膜に通すために圧送することに起因して生成される圧密性のペレット状固形物であり、大きさおよび形状は、膜の貫通孔に依存するが、通常直径1mm、長さ3〜10mm程度の円筒状であり、このペレット状固形物は、沈降性が高いため、逆洗排水が汚泥槽内に供給される際、膜表面に付着する汚泥状の固形分とは異なり、濾過板に向かって吸引濾過されることなく、汚泥槽の底に沈殿する。
【0016】
この場合、汚泥槽の底に沈殿したペレット状固形物を濾過板に吸引濾過された濃縮汚泥とは分離して、たとえば排出バルブ8を開いて外部に排出し、一方濃縮汚泥は、その後に濾過板から剥離して外部に排出し、それぞれ別々に後処理である搬送処理、脱水処理等を行うとすれば、このような後処理の効率性を低下させる。
【0017】
より具体的には、汚泥槽において濃縮された汚泥は、外部に排出され、搬送され脱水処理が行われて、最終的に処分可能な固化ケーキに形成されるが、濃縮汚泥の濃度に応じて、必要な搬送形態、あるいは脱水形態が影響を受ける。すなわち、濃度が高いペレット状固形物を単独で搬送し、脱水するとすれば、一般的な遠心ポンプでなく、モーノポンプ等の特殊ポンプが必要となるとともに、搬送配管の径を大きくする必要がある一方、フィルタープレス等の一般的な機械式脱水を行う場合、効果的な脱水が困難となる。さらに、これらの事情に起因して、後処理におけるメンテナンス性、信頼性、あるいはスペース性が損なわれ、全体として、効率的な後処理を行うことが困難となる。
【0018】
一方において、ペレット状固形物をも吸引濾過するために、サイフォン式濃縮装置による吸引力を増大させるとすれば、汚泥槽自体の高さが必要となり、大幅な設備の交換、改造が余儀なくされ、仮に吸引力を増大させるとしても、濾過板に付着する汚泥層の厚みが汚泥槽の高さ方向に一様でなくなり、特に底部で厚くなり、それに起因して、付着した汚泥層の部分的な剥離が生じ、そこからの空気漏れにより後工程における圧縮空気の供給による汚泥層の剥離が困難となる。
【0019】
さらに、圧密性のペレット状固形物の発生量は、原水に添加する薬品の種類、量、あるいは季節等に応じて変動する。このため、汚泥槽の底に沈殿するペレット状固形物と吸引濃縮汚泥とを混合した状態で、汚泥槽から外部に排出し、後処理を行うとしても、変動するペレット状固形物の量に応じて、吸引濃縮汚泥、および上澄み液である未濃縮の逆洗水の混合割合を調整して、所望濃縮濃度の濃縮汚泥として後処理する必要がある。
【特許文献1】特公昭60-59002号
【特許文献2】特公昭62-49087号
【特許文献3】特公昭62-49088号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
そこで、以上の技術的問題に鑑み、本発明の目的は、既存のサイフォン式濃縮装置に対して大幅な改造あるいは設備の増設等を施す必要なしに、膜濾過装置の逆洗排水に含有する沈降性の高い圧密性ペレット状固形物と吸引濃縮汚泥とを混合することにより、後処理である搬送処理、脱水処理等一連の処理を効率的に実施することが可能な濾過膜の逆洗排水を濃縮するための装置および方法を提供することにある。
【0021】
以上の技術的問題に鑑み、本発明の目的は、既存のサイフォン式濃縮装置に対して大幅な改造あるいは設備の増設等を施す必要なしに、膜濾過装置の逆洗排水に含有する沈降性の高い圧密性ペレット状固形物と吸引濃縮汚泥とを混合することにより、後処理である搬送処理、脱水処理等一連の処理を効率的に実施することが可能なように、混合した濃縮汚泥を所望の濃縮濃度とすることが可能な濾過膜の逆洗排水を濃縮するための装置および方法を提供することにある。

【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、本発明に係る濾過膜の逆洗排水を濃縮するための装置は、
濾過膜の逆洗排水を濃縮するための装置であって、
内部に原水を受け入れるケーシングと、このケーシング内に設けられ、原水を膜濾過するための膜濾過手段とを有する膜濾過装置と、
該ケーシングに接続され、膜濾過による逆洗排水を貯留するための逆洗排水貯留槽と、
該逆洗排水貯留槽の下流側に接続され、該逆洗排水貯留槽内に貯留する逆洗排水を受け入れるための汚泥槽と、
該汚泥槽内に設けられるサイフォン式濾過濃縮手段であって、前記汚泥槽内の逆洗排水を吸引濾過することにより、濃縮汚泥を前記汚泥槽内で生成する一方、濾過水を外部に排出するサイフォン式濾過濃縮手段と、
前記逆洗排水貯留槽と前記汚泥槽とを接続し、前記汚泥槽内の逆洗排水を前記逆洗排水貯留槽に戻すための逆洗排水戻し管と、
前記汚泥槽の底部に接続され、前記サイフォン式濾過濃縮手段によって濾過濃縮された汚泥を排出するための濃縮汚泥排出管とを有する装置において、
前記逆洗排水戻し管は、逆洗排水に含有し前記汚泥槽の底に溜まる沈降性の高い圧密性ペレット状固形物が、前記逆洗排水戻し管を通じて前記逆洗排水貯留槽に戻されないように、前記汚泥槽の底から上方の所定レベルで前記汚泥槽に接続される、
構成としている。

【0023】
本発明は、濾過すべき処理液を圧送することにより膜に設けられた無数の小径の貫通穴を通過させる形態で濾過を行う膜濾過特有の問題として、原水を膜濾過することにより膜に付着する固形物を逆洗浄する際、逆洗浄水には、膜表面に付着する固形物以外に、所定濾過圧のもとで圧密されたペレット状固形物が含まれるところ、ペレット状固形物は通常の固形物と性状が異なり、既に濃縮されているが、反面沈降性が高いことに注目して、このようなペレット状固形物を含めて、逆洗浄水を濃縮汚泥処理しようとするものである。
【0024】
以上の構成を有する濾過膜の逆洗排水を濃縮するための装置によれば、逆洗排水が貯留された逆洗浄水槽から逆洗排水を受け入れた汚泥槽内で、サイフォン式濾過濃縮手段により逆洗排水を吸引濾過することにより、濃縮汚泥を汚泥槽内で生成する一方、濾過水を外部に排出することが可能である。一方、この間に、ペレット状固形物は、サイフォン式濾過濃縮手段により吸引されずに、汚泥槽の底に沈殿し、時間経過とともに、汚泥槽内の逆洗排水が、汚泥槽の底に溜まったペレット状固形物と、上澄み液とに分離される。この場合、生成した濃縮汚泥を剥離する前に、汚泥槽内の未濃縮の逆洗排水を逆洗排水戻し管を通じて一旦逆洗浄水槽に戻す必要がある。
【0025】
このとき、逆洗排水戻し管は、汚泥槽の底から上方の所定レベルで汚泥槽に接続されているので、汚泥槽の底に溜まる沈降性の高い圧密性ペレット状固形物が、逆洗排水戻し管を通じて逆洗排水貯留槽に戻されないようにすることが可能であり、それにより、汚泥槽内の上澄み液だけを逆洗排水貯留槽に戻した状態で、濃縮汚泥を剥離し、汚泥槽の底に沈殿したペレット状固形物と混合することにより、濃縮汚泥とペレット状固形物との混合物として、新たな濃縮汚泥を生成し、その状態で汚泥槽から外部に排出することが可能となる。このように汚泥槽内で濃縮汚泥とペレット状固形物とを混合することにより、既存のサイフォン式濾過濃縮手段に対して大幅な改造あるいは施設の追加等をする必要なしに、後処理である濃縮汚泥の搬送処理および脱水処理等の一連の後処理を効率的に行うことが可能となる。

【0026】
また、前記逆洗排水戻し管は、互いに並列に前記逆洗排水戻し管に接続された複数の分岐管を有し、各分岐管は、前記汚泥槽の底から上方の異なるレベルで、排出バルブを介して、前記汚泥槽に接続されているのがよい。
【0027】
以上の構成を有する装置によれば、汚泥槽の底に溜まる沈降性の高い圧密性ペレット状固形物の沈殿高さに応じて、複数の分岐管のうちどの分岐管から逆洗排水の上澄み液を逆洗排水戻し管から排出するかを選択することが可能となる。より詳細には、たとえば、複数の分岐管を3つ設けた場合、圧密性ペレット状固形物の沈殿高さが、そのうち汚泥槽の底から2番目のレベルの分岐管に最も近いときには、1番低レベルの分岐管の排出バルブを閉じる一方、2番目および3番目のレベルの分岐管の排出バルブを開くことにより、汚泥槽の底に溜まる沈降性の高い圧密性ペレット状固形物を逆洗排水戻し管から外部に排出することなしに、逆洗排水の上澄み液だけを外部に排出し、逆洗排水に戻すことが可能となる。さらに、原水の水質変動による濃縮汚泥濃度や圧密性ペレット状固形物の発生量が変動した場合に、排出バルブを切り替えることにより、汚泥槽内に残留する未濃縮の洗浄排水量を調整することが可能であり、それにより、汚泥槽から外部に排出される新たな濃縮汚泥の濃度を変えることが可能である。

【0028】
さらに、前記逆洗排水戻し管は、前記逆洗排水戻し管の下端部が、前記汚泥槽の底から上方の所定レベルとなるように、前記汚泥槽の上部開口から前記汚泥槽内で下方に向かって延びるように設けられるのでもよい。
【0029】
以上の構成を有する装置によれば、原水の水質変動による濃縮汚泥濃度や沈降性の高い圧密性ペレット状固形物の量が変動して、汚泥槽の底に溜まる沈降性の高い圧密性ペレット状固形物の沈殿高さが変動する場合、それに応じて、このような立ち下がり管を簡易に交換することにより、汚泥槽の底に溜まる沈降性の高い圧密性ペレット状固形物を逆洗排水戻し管から外部に排出することなしに、逆洗排水の上澄み液だけを外部に排出し、逆洗排水に戻すことが可能となる。さらに、原水の水質変動による濃縮汚泥濃度や圧密性ペレット状固形物の発生量が変動した場合に、それに応じて、このような立ち下がり管を簡易に交換することにより、汚泥槽内に残留する未濃縮の洗浄排水量を調整することが可能であり、それにより、汚泥槽から外部に排出される新たな濃縮汚泥の濃度を変えることが可能である。

【0030】
さらにまた、前記逆洗排水戻し管には、その下端部にフレキシブルホースが連通可能に接続され、前記逆洗排水戻し管の下端部が、前記汚泥槽の底から上方の所定レベルとなるように、該フレキシブルホースの長さが調節可能であるのでもよい。
【0031】
以上の構成を有する装置によれば、原水の水質変動による濃縮汚泥濃度や沈降性の高い圧密性ペレット状固形物の量が変動して、汚泥槽の底に溜まる沈降性の高い圧密性ペレット状固形物の沈殿高さが変動する場合、それに応じて、このような立ち下がり管の下端部に設けたフレキシブルホースの長さを調節することにより、逆洗排水戻し管自体を交換する必要なしに、汚泥槽の底に溜まる沈降性の高い圧密性ペレット状固形物を逆洗排水戻し管から外部に排出することなしに、逆洗排水の上澄み液だけを外部に排出し、逆洗排水に戻すことが可能となる。さらに、原水の水質変動による濃縮汚泥濃度や沈降性の高い圧密性ペレット状固形物の量が変動して、汚泥槽の底に溜まる沈降性の高い圧密性ペレット状固形物の沈殿高さが変動する場合、それに応じて、このような立ち下がり管の下端部に設けたフレキシブルホースの長さを調節することにより、排水管自体を交換する必要なしに、汚泥槽内に残留する未濃縮の洗浄排水量を調整することが可能であり、それにより、汚泥槽から外部に排出される新たな濃縮汚泥の濃度を変えることが可能である。

【0032】
上記目的を達成するために、本発明に係る濾過膜の逆洗排水を濃縮するための方法は、
濾過膜の逆洗排水を濃縮するための方法であって、
濾過膜の逆洗排水を汚泥槽内に供給する段階と、
逆洗排水を汚泥槽内で吸引濾過することにより、濃縮汚泥を汚泥槽内で生成する段階と、
汚泥槽の底に沈殿した、逆洗排水に含有する沈降性の高い圧密性ペレット状固形物を含まないように、吸引濾過後の未濃縮の逆洗排水を汚泥槽外に排出する段階と、
吸引濾過された濃縮汚泥を剥離させることにより、汚泥槽内に残留する圧密性ペレット状固形物と混合して、新たな濃縮汚泥とする段階と、
新たな濃縮汚泥を汚泥槽の外部に排出する段階と、
を有する構成としている。
【0033】
さらに、最終の混合段階において、新たな濃縮汚泥の濃縮度が所定濃度となるように、逆洗排水の前記供給段階と、濃縮汚泥の前記生成段階と、逆洗排水の前記排出段階と、圧密性固形物と濃縮汚泥との前記混合段階とを繰り返し行うのでもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る濾過膜の逆洗排水を濃縮するための装置によれば、汚泥槽内で逆洗浄水をサイフォン式濾過濃縮手段により吸引濾過する際、逆洗排水戻し管が、汚泥槽の底から上方の所定レベルで汚泥槽に接続されているので、汚泥槽の底に溜まる沈降性の高い圧密性ペレット状固形物が、逆洗排水戻し管を通じて逆洗排水貯留槽に戻されないようにすることが可能であり、それにより、汚泥槽内の上澄み液だけを逆洗排水貯留槽に戻した状態で、濃縮汚泥を剥離し、汚泥槽の底に沈殿したペレット状固形物と混合することにより、濃縮汚泥とペレット状固形物との混合物として、新たな濃縮汚泥を生成し、その状態で汚泥槽から外部に排出することが可能となる。このように汚泥槽内で濃縮汚泥とペレット状固形物とを混合することにより、既存のサイフォン式濾過濃縮手段に対して大幅な改造あるいは施設の追加等をする必要なしに、後処理である濃縮汚泥の搬送処理および脱水処理等の一連の後処理を効率的に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。以下の実施形態においては、膜濾過装置としては、セラミック膜を用いたデッドエンド方式の濾過膜装置、一方膜濾過装置の逆洗水の濾過濃縮装置としては、従来既知のサイフォン式濾過濃縮装置を採用している。
【0036】
本発明の第1の実施形態を図面(図1)を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態にかかる濾過濃縮装置の基本構成図である。本発明の濾過濃縮装置は、短形状の汚泥室を内部に備えた汚泥槽1内に垂直に懸架された濾過板2によりろ過された濾液を排出する濾液管3、濾液を排出する濾液バルブ4、汚泥槽1内の未濃縮排水を槽外に排出するための排水ポンプ5、汚泥槽1内の未濃縮排水を槽外に排出するための排水管6、排出した未濃縮排水を貯留する貯留槽7、濾過板2により濃縮された濃縮汚泥を排出する排出バルブ8、濾液を排出するサイフォンを形成する為の真空ポンプ9、真空バルブ10、により構成される。濾過板2は図1では1枚だが、複数枚入っている場合が一般的に用いられる。濾過板2は、結合された濾布内部の上部には濾過液を通水する管を設けており、この管は濾布上部で濾過板2外部へ貫通しており、貫通した後に濾液管3に接続されている。
【0037】
また、膜濾過装置11はセラミック製の円筒状の膜が縦型にセットされ、膜装置下部の膜内面より原水を送水し、全量を濾過するデッドエンド方式となっており、一定時間濾過した後に膜濾過水を膜透過面より供給して膜表面に付着した不純物及び固形分を剥離させた後に濾過濃縮装置を構成する貯留槽7へ洗浄排水として送水する。この洗浄排水は、貯留槽7より汚泥槽1へ送水されるようになっている。
【0038】
ここで、膜濾過した後の逆洗排水(洗浄排水)には、膜表面に付着する汚泥状の固形分とは別に、膜濾過特有の固形物が大量に含まれており、膜濾過特有の固形物とは、主として、圧密性のペレット状固形物17であり、大きさおよび形状は、濾過圧等に依存するが、通常直径1mm、長さ3〜10mm程度の円筒状であり、このペレット状固形物17は、沈降性が高いため、逆洗排水が汚泥槽1内に供給される際、膜表面に付着する汚泥状の固形分とは異なり、濾過板2に向かって吸引濾過されることなく、汚泥槽1の底に沈殿する。
デッドエンド方式の場合、それぞれ無数のミクロン径の貫通孔(図示せず)を側面に備えた管束が、縦置の状態でケーシング(図示せず)内に収納され、管束の一端から濾過すべき原液が管内を閉鎖端である他端に向かって流れることにより、原液は無数の貫通穴を通過し、それにより濾過され、ケーシング内で管束の外部に導かれ、ケーシングに設けられた排出口より濾液が流出するようにしている。このとき、各管内で原液が閉鎖端である他端に向かって圧送されることにより、他端の近傍に圧密性ペレットが形成される。したがって、形成される圧密性ペレットの径および数は、管の内径および管束の数に相当する。このようにして形成された圧密性ペレットを逆洗水により除去する場合、濾過の場合とは逆向きに、ケーシングに設けられた排出口より洗浄水を各管束に向かって流すことにより、各管において無数の貫通孔を通過して、管内に導かれた洗浄水により、他端の近傍に圧密性ペレットが洗い流され、洗浄水とともに管内から開放端である一端に向かって流出する。
一方、クロスフロー方式の場合、デッドエンド方式の場合と異なり、管束のそれぞれは、ケーシングを縦に貫通する形態をとり、ケーシング内に閉鎖端である他端を有さず、原液は管束の一端から濾過すべき原液が管内を流れることにより、原液は無数の貫通穴を通過し、それにより濾過され、ケーシング内で管束の外部に導かれ、ケーシングに設けられた排出口より濾液が流出する一方、貫通穴を通過しない原液は、そのまま管内を流れ、ケーシングの外部に排出される。このとき、デッドエンド方式の場合と異なり、閉鎖端である他端の近傍に圧密性ペレットは形成されないが、無数の貫通穴を通過する直前の管の内壁部において、有機物や粘性物等の付着を原因とする同様な圧密性ペレットが形成される。このようにして形成された圧密性ペレットを逆洗水により除去する場合、デッドエンド方式の場合と同様に、濾過の場合とは逆向きに、ケーシングに設けられた排出口より洗浄水を各管束に向かって流すことにより、各管において無数の貫通孔を通過して、管内に導かれた洗浄水により、管内壁に付着した圧密性ペレットが洗い流され、洗浄水とともに管内から開放端である一端に向かって流出する。あるいは、各管内において、原液と逆向きに洗浄水を流すことにより、圧密性ペレットを除去してもよい。
このようなペレット状固形物17が、排水管6を通じて貯留槽7へ戻されないように、排水管6は、汚泥槽1の底から上方の所定レベルで、汚泥槽1に接続されるようにしている。この意味において、排水管6の設置高さは、あらかじめ実験等により装置形状および装置規模、運転方案を設定したうえで、その場合のペレット状固形物17の沈殿した時の沈殿高さを把握してそれより高い位置に設定することが必要である。
【0039】
次に、この装置による運転方法を図2、図3、図4、図5、図6を用いて説明する。
まず、図2に示すように、膜濾過装置11より排出された逆洗排水は、貯留槽7に一旦貯留された後、濾液バルブ4と真空バルブ10が閉じた状態において汚泥槽1へ供給される。
【0040】
次に、図3に示すように、汚泥槽1内部を洗浄排水で満たした後に真空バルブ10を開け真空ポンプ9を運転し濾布内部を負圧とし、洗浄排水を濾過板2を通じて濾過し濾液を濾液管3内に流入させ、濾液管3内を濾液で満した後に真空バルブ10を閉じ、濾液バルブ4を開け、サイフォン力により濾液を管外へ排出する。運転を続けると汚泥槽1内の洗浄排水量が減るので、濾過板2が液面より上に露出しないように貯留槽7より洗浄排水を供給する。ここで、逆洗排水内には圧密性ペレット状固形物17が含まれており、圧密性ペレット状固形物17は時間の経過と共に重力沈降により汚泥槽1内部に蓄積し、運転を続けることにより徐々に蓄積量が増加していく。
【0041】
一定時間運転を続けると、濾過板2表面に凝集した濃縮汚泥16が板状に形成されてくる。濾過板2表面に板状の濃縮汚泥16が形成された後に、図4に示すように、汚泥槽1内にある未濃縮の洗浄排水を排水ポンプ5及び排水管6により貯留槽7へ送水し汚泥槽1内より排出する。ここで、排水管6の設置高さを汚泥槽1の底から上方の所定レベルとしていることから、圧密性ペレット状固形物17が排水管6により貯留槽7へ戻されることが防止される。その結果、汚泥槽1内には槽下部に圧密性ペレット状固形物17及び未濃縮の洗浄排水が残った状態になる。
【0042】
ここで、図5に示すように、濾液バルブ4を閉じた後にこの濾液管3内に圧縮された空気を供給し、濾過板2表面に形成された濃縮された汚泥を剥離させ汚泥槽1内の下部へ落下させる。この汚泥は前述の円筒状固形分及び未濃縮の洗浄排水と混合される。
【0043】
次に、図6に示すように、汚泥槽1下部に溜まっている前述の剥離した汚泥及び圧密性ペレット状固形物17及び前述の未濃縮の洗浄排水を汚泥槽1内で混合し、新たな濃縮汚泥として排出バルブ8を通じて槽外へ排出する。
【0044】
次に、槽外へ排出された新たな濃縮汚泥は、後処理として、たとえば、機械式脱水装置まで搬送され、そこで脱水処理が行われ、最終的に処分可能な固化ケーキが生成される。
【0045】
ここで筆者らによる実験では、セラミックを材料とする膜を用いた濾過装置の洗浄排水にサイフォン式濾過濃縮装置を用いて濃縮を行ったところ、セラミック膜を用いたデッドエンド方式の膜濾過装置の洗浄排水のSS濃度が約0.3%で、これに含まれる圧密性ペレット状固形物17は、直径1mm、長さ3ないし10mm程度の円筒状に形成されており、圧密性ペレット状固形物17は、濾過板2に形成される濃縮汚泥には含まれずに汚泥槽1下部に沈殿した。このとき、サイフォン式ろ過濃縮装置の濾過板2に付着した濃縮汚泥のSS濃度は約6.1%であった。
【0046】
上記の運転方法によって、このような濃縮汚泥を圧密性ペレット状固形物17を含む洗浄排水と混合した場合、SS濃度4.0%以上の濃縮汚泥となることを確認した。ここで取出した濃縮汚泥を後にフィルタープレスなどの機械脱水にかける場合、濃縮汚泥のSS濃度は4.0%以上であれば効果的に機械脱水が可能なことが分かっており、またSS濃度が4.0%程度であれば、渦巻ポンプでの搬送が可能であり、スネーク式ポンプ等の高価な装置を使わずに済むというメリットもある。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、逆洗排水が貯留された貯留槽7から逆洗排水を受け入れた汚泥槽1内で、サイフォン式濾過濃縮手段により逆洗排水を吸引濾過することにより、濃縮汚泥を汚泥槽1内で生成する一方、濾過水を外部に排出することが可能である。一方、この間に、ペレット状固形物は、サイフォン式濾過濃縮手段により吸引されずに、汚泥槽1の底に沈殿し、時間経過とともに、汚泥槽1内の逆洗排水が、汚泥槽1の底に溜まったペレット状固形物17と、上澄み液とに分離される。この場合、生成した濃縮汚泥を剥離する前に、汚泥槽1内の未濃縮の逆洗排水を逆洗排水戻し管を通じて一旦逆洗浄水槽に戻す必要がある。
【0048】
このとき、逆洗排水戻し管は、汚泥槽の底から上方の所定レベルで汚泥槽に接続されているので、汚泥槽の底に溜まる沈降性の高い圧密性ペレット状固形物が、排水管6を通じて貯留槽7に戻されないようにすることが可能であり、それにより、汚泥槽1内の上澄み液だけを貯留槽7に戻した状態で、濃縮汚泥を剥離し、汚泥槽1の底に沈殿したペレット状固形物17と混合することにより、濃縮汚泥とペレット状固形物17との混合物として、新たな濃縮汚泥を生成し、その状態で汚泥槽1から外部に排出することが可能となる。このように汚泥槽1内で濃縮汚泥とペレット状固形物17とを混合することにより、既存のサイフォン式濾過濃縮手段に対して大幅な改造あるいは施設の追加等をする必要なしに、後処理である濃縮汚泥の搬送処理および脱水処理等の一連の後処理を効率的に行うことが可能となる。

【0049】
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。以下の実施形態においては、同様な要素、部品には、同様な参照番号を付することによりその説明は省略し、以下では、第2の実施形態の特徴部について詳細に説明する。
【0050】
本実施形態の濾過濃縮装置は、第1の実施形態と共通であり、本実施形態の特徴部は、このような濾過濃縮装置を用いた濾過濃縮方法にある。そこで、この装置による運転方法を図2、図3、図4、図5、図7、図8、図9、図10、図11を用いて説明する。
まず、第1の実施形態と同じく図2から図5に示すように、膜濾過装置11より排出された排水を汚泥槽1内で濾過濃縮を行い、汚泥槽1下部にペレット状固形物17及び未濃縮の洗浄排水が残った状態で、濾過板2の表面に形成された濃縮された汚泥を剥離させ汚泥槽1下部へ落下させ、汚泥をペレット状固形物17及び未濃縮の洗浄排水と混合させる。
【0051】
次に、図7に示すように、汚泥槽1内部にペレット状固形物17及び未濃縮の洗浄排水及び剥離した濃縮汚泥が残ったままの状態で、膜濾過装置11より排出され貯留槽7に保管された洗浄排水が汚泥槽1に供給される。
次に、図8に示すように、汚泥槽1内部が洗浄排水で満たされた後に真空バルブ10を開け真空ポンプ9を運転し濾布内部を負圧とし、洗浄排水が濾過板2を通じて濾過され濾液が濾液管3内に流入し、濾液管3内が濾液で満たされた後に真空バルブ10を閉じ、濾液バルブ4を開けサイフォン力により濾液を管外へ排出する。運転を続けると汚泥槽1内の洗浄排水量が減るので、濾過板2が液面より上に露出しないように、貯留槽7より洗浄排水を供給する。
【0052】
次に、図9に示すように、一定時間図3の状態を続けた後に汚泥槽1内にある未濃縮の洗浄排水を排水ポンプ5及び排水管6により貯留槽7へ送水し汚泥槽1内より排出し、汚泥槽1内には槽下部に前回の剥離された濃縮汚泥及び2回分のペレット状固形物17及び未濃縮の洗浄排水が残った状態になる。
ここで、図10に示すように、濾液バルブ4を閉じた後に濾液管3内に圧縮された空気を供給し、濾過板2表面に形成された濃縮された汚泥を剥離させ汚泥槽1下部へ落下させる。この汚泥をペレット状固形物17及び未濃縮の洗浄排水と混合させる。
【0053】
次に、図11に示すように、汚泥槽1下部に溜まっている前述の剥離した汚泥及びペレット状固形物17及び前述の未濃縮の洗浄排水を混合して、新たな濃縮汚泥として排出バルブ8を通じて槽外へ排出される。このとき、濃縮汚泥にはペレット状固形物17と前述の剥離された汚泥が2回分含まれており、より高濃度の汚泥となる。また、ここでは1回繰り返して2回分まとめているが、これを複数回繰り返してもよい。浄水場では季節によって原水や逆洗排水の濃度が変動するため、逆洗排水の濃度の変動に合わせて繰返し回数を変える事で常に一定の濃度の濃縮汚泥を作る事が可能になる。
この方法は、混合した汚泥の濃度は、汚泥槽1の大きさ、容量、濾過板2の面積、濾過時間、逆洗排水濃度などで異なってくる。よって、あらかじめ実験などにより最適値を選定した上でこれらの形状及び運転時間を設定していくのが好ましい。

【0054】
ここで、第1および第2の実施形態に対する変形例について、図12、図13、図14、図15、図16、図17を参照して説明する。
【0055】
図12は、排水管6の変形例である。排水管6は、互いに並列に排水管6に接続された3本の分岐管を有し、各分岐管は、汚泥槽1の底から上方の異なるレベルで、排出バルブ12a,12bおよび12cを介して、汚泥槽1に接続されている。
以上の構成を有する装置によれば、汚泥槽1の底に溜まる沈降性の高い圧密性ペレット状固形物17の沈殿高さに応じて、3本の分岐管のうちどの分岐管から逆洗排水の上澄み液を排水管6から排出するかを選択することが可能となる。より詳細には、たとえば、圧密性ペレット状固形物17の沈殿高さが、汚泥槽1の底から2番目のレベルの分岐管に最も近いときには、1番低レベルの分岐管の排出バルブ12cを閉じる一方、2番目および3番目のレベルの分岐管の排出バルブ12a,12bを開くことにより、汚泥槽1の底に溜まる沈降性の高い圧密性ペレット状固形物17を排水管6から外部に排出することなしに、逆洗排水の上澄み液だけを外部に排出し、逆洗排水に戻すことが可能となる。さらに、原水の水質変動による濃縮汚泥濃度や圧密性ペレット状固形物17の発生量が変動した場合に、排出バルブ12を切り替えることにより、汚泥槽1内に残留する未濃縮の洗浄排水量を調整することが可能であり、それにより、汚泥槽1から外部に排出される新たな濃縮汚泥の濃度を変えることが可能である。
【0056】
図13も、図12と同様に、排水管6の変形例である。図13に示すように、排水管6は、排水管6の下端部が、汚泥槽1の底から上方の所定レベルとなるように、汚泥槽1の上部開口から汚泥槽1内で下方に向かって延びるように設けられる。
以上の構成を有する装置によれば、汚泥槽1の底に溜まる沈降性の高い圧密性ペレット状固形物17を排水管6から外部に排出することなしに、逆洗排水の上澄み液だけを外部に排出し、逆洗排水に戻すことが可能となる。さらに、原水の水質変動による濃縮汚泥濃度や圧密性ペレット状固形物17の発生量が変動した場合に、それに応じて、このような立ち下がり管を簡易に交換することにより、汚泥槽1内に残留する未濃縮の洗浄排水量を調整することが可能であり、それにより、汚泥槽1から外部に排出される新たな濃縮汚泥の濃度を変えることが可能である。
【0057】
図14も、図12と同様に、排水管6の変形例である。図14に示すように、排水管6には、その下端部にフレキシブルホースが連通可能に接続され、排水管6の下端部が、汚泥槽1の底から上方の所定レベルとなるように、フレキシブルホースの長さが調節可能である。
以上の構成を有する装置によれば、汚泥槽1の底に溜まる沈降性の高い圧密性ペレット状固形物17を排水管6から外部に排出することなしに、逆洗排水の上澄み液だけを外部に排出し、逆洗排水に戻すことが可能となる。さらに、原水の水質変動による濃縮汚泥濃度や沈降性の高い圧密性ペレット状固形物の量が変動して、汚泥槽の底に溜まる沈降性の高い圧密性ペレット状固形物17の沈殿高さが変動する場合、それに応じて、このような立ち下がり管の下端部に設けたフレキシブルホースの長さを調節することにより、排水管6自体を交換する必要なしに、汚泥槽1内に残留する未濃縮の洗浄排水量を調整することが可能であり、それにより、汚泥槽1から外部に排出される新たな濃縮汚泥の濃度を変えることが可能である。
【0058】
図15は、排水管6と濃縮汚泥を排出する系統とに関連する変形例である。図15に示すように、排水管6は、濃縮汚泥を排出する系統にも接続され、汚泥槽1からの系統に排出バルブ12、濃縮汚泥を排出する系統に排水バルブ13が設けられている。これにより、排出バルブ12と排水バルブ13を切り替えることで従来の運転と本発明の運転を切り替えて運転を行うことが可能となる。例えば、将来膜濾過を導入予定で現在凝集沈澱処理を行っている浄水場へ排水処理装置を導入する場合、1台の装置で対応が可能となる。また、浄水処理が膜濾過を用いる方法と従来の凝集沈降濾過を用いる方法とを並行して行う場合、一定時間毎に排水系統を切り替える事で双方の排水を1台の装置で濃縮する事が可能となる。また季節によって膜濾過と凝集沈殿濾過を切り替える場合でも1台の装置で濃縮する事が可能となる。
【0059】
図16は、貯留槽7の設置位置に関する変形例である。図16に示すように、貯留槽7は、排水ポンプ5と汚泥槽1との間に設けられ、汚泥槽1より排出される未濃縮の洗浄排水は排水ポンプ5を用いることなく自重作用により貯留槽7へ供給される。また貯留槽7に供給された洗浄排水を汚泥槽1へ供給する場合は排水ポンプ5を用いる。これにより汚泥槽1と貯留槽7を上下方向に設置する事が可能となり、装置の設置スペースが小型化される。
【0060】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の修正あるいは変形が可能である。たとえば、本実施形態においては、デッドエンド方式のセラミック膜を前提とする膜濾過装置を例に説明したが、膜濾過装置特有に発生する沈降性の高い圧密性ぺレット状固形物は、このような膜濾過装置だけに生じるとは限らず、クロスフロー方式のセラミック膜の膜濾過装置、あるいは有機膜を用いた膜濾過装置においても、このような圧密性ぺレット状固形物が発生する可能性があり、その場合には、本発明が有効に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の膜ろ過装置の洗浄排水を濃縮するろ過濃縮装置の第1及び第2の実施形態を示す概略図である。
【図2】第1及び第2の実施形態について、図1のろ過濃縮装置を用いて洗浄排水を濃縮する動作図である。
【図3】第1及び第2の実施形態について、図1のろ過濃縮装置を用いて洗浄排水を濃縮する動作図である。
【図4】第1及び第2の実施形態について、図1のろ過濃縮装置を用いて洗浄排水を濃縮する動作図である。
【図5】第1及び第2の実施形態について、図1のろ過濃縮装置を用いて洗浄排水を濃縮する動作図である。
【図6】第1及び第2の実施形態について、図1のろ過濃縮装置を用いて洗浄排水を濃縮する動作図である。
【図7】第2の実施形態について、図1のろ過濃縮装置を用いて洗浄排水を濃縮する動作図である。
【図8】第2の実施形態について、図1のろ過濃縮装置を用いて洗浄排水を濃縮する動作図である。
【図9】第2の実施形態について、図1のろ過濃縮装置を用いて洗浄排水を濃縮する動作図である。
【図10】第2の実施形態について、図1のろ過濃縮装置を用いて洗浄排水を濃縮する動作図である。
【図11】第2の実施形態について、図1のろ過濃縮装置を用いて洗浄排水を濃縮する動作図である。
【図12】本発明の膜ろ過装置の洗浄排水を濃縮するろ過濃縮装置の第1及び第2の実施形態の第1の変形例を示す概略図である。
【図13】本発明の膜ろ過装置の洗浄排水を濃縮するろ過濃縮装置の第1及び第2の実施形態の第2の変形例を示す概略図である。
【図14】本発明の膜ろ過装置の洗浄排水を濃縮するろ過濃縮装置の第1及び第2の実施形態の第3の変形用例を示す概略図である。
【図15】本発明の膜ろ過装置の洗浄排水を濃縮するろ過濃縮装置の第1及び第2の実施形態の第4の変形例を示す概略図である。
【図16】本発明の膜ろ過装置の洗浄排水を濃縮するろ過濃縮装置の第1及び第2の実施形態の第5の変形例を示す概略図である。
【図17】膜ろ過装置の洗浄排水を濃縮するろ過濃縮装置の従来の実施形態を示す概略図である。
【図18】図17のろ過濃縮装置を用いて洗浄排水を濃縮する従来の動作図である。
【図19】図17のろ過濃縮装置を用いて洗浄排水を濃縮する従来の動作図である。
【図20】図17のろ過濃縮装置を用いて洗浄排水を濃縮する従来の動作図である。
【図21】図17のろ過濃縮装置を用いて洗浄排水を濃縮する従来の動作図である。
【図22】図17のろ過濃縮装置を用いて洗浄排水を濃縮する従来の動作図である。
【符号の説明】
【0062】
1 汚泥槽
2 濾過板
3 濾液管
4 濾液バルブ
5 排水ポンプ
6 排水管
7 貯留槽
8 排出バルブ
9 真空ポンプ
10 真空バルブ
11 膜ろ過装置
12 排出バルブ
13 排水バルブ
14 分岐バルブ
15 濃縮汚泥槽
16 濃縮汚泥
17 ペレット状固形物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過膜の逆洗排水を濃縮するための装置であって、
内部に原水を受け入れるケーシングと、このケーシング内に設けられ、原水を膜濾過するための膜濾過手段とを有する膜濾過装置と、
該ケーシングに接続され、膜濾過による逆洗排水を貯留するための逆洗排水貯留槽と、
該逆洗排水貯留槽の下流側に接続され、該逆洗排水貯留槽内に貯留する逆洗排水を受け入れるための汚泥槽と、
該汚泥槽内に設けられるサイフォン式濾過濃縮手段であって、前記汚泥槽内の逆洗排水を吸引濾過することにより、濃縮汚泥を前記汚泥槽内で生成する一方、濾過水を外部に排出するサイフォン式濾過濃縮手段と、
前記逆洗排水貯留槽と前記汚泥槽とを接続し、前記汚泥槽内の逆洗排水を前記逆洗排水貯留槽に戻すための逆洗排水戻し管と、
前記汚泥槽の底部に接続され、前記サイフォン式濾過濃縮手段によって濾過濃縮された汚泥を排出するための濃縮汚泥排出管とを有する装置において、
前記逆洗排水戻し管は、逆洗排水に含有し前記汚泥槽の底に溜まる沈降性の高い圧密性ペレット状固形物が、前記逆洗排水戻し管を通じて前記逆洗排水貯留槽に戻されないように、前記汚泥槽の底から上方の所定レベルで前記汚泥槽に接続される、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記逆洗排水戻し管は、互いに並列に前記逆洗排水戻し管に接続された複数の分岐管を有し、各分岐管は、前記汚泥槽の底から上方の異なるレベルで、排出バルブを介して、前記汚泥槽に接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記逆洗排水戻し管は、前記逆洗排水戻し管の下端部が、前記汚泥槽の底から上方の所定レベルとなるように、前記汚泥槽の上部開口から前記汚泥槽内で下方に向かって延びるように設けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記逆洗排水戻し管には、その下端部にフレキシブルホースが連通可能に接続され、前記逆洗排水戻し管の下端部が、前記汚泥槽の底から上方の所定レベルとなるように、該フレキシブルホースの長さが調節可能である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
濾過膜の逆洗排水を濃縮するための方法であって、
濾過膜の逆洗排水を汚泥槽内に供給する段階と、
逆洗排水を汚泥槽内で吸引濾過することにより、濃縮汚泥を汚泥槽内で生成する段階と、
汚泥槽の底に沈殿した、逆洗排水に含有する沈降性の高い圧密性ペレット状固形物を含まないように、吸引濾過後の未濃縮の逆洗排水を汚泥槽外に排出する段階と、
吸引濾過された濃縮汚泥を剥離させることにより、汚泥槽内に残留する圧密性ペレット状固形物と混合して、新たな濃縮汚泥とする段階と、
新たな濃縮汚泥を汚泥槽の外部に排出する段階と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項6】
最終の混合段階において、新たな濃縮汚泥の濃縮度が所定濃度となるように、逆洗排水の前記供給段階と、濃縮汚泥の前記生成段階と、逆洗排水の前記排出段階と、圧密性固形物と濃縮汚泥との前記混合段階とを繰り返し行うことを特徴とする請求項5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−131474(P2010−131474A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307064(P2008−307064)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】