説明

膜蒸留装置

【課題】膜蒸留装置のスタックが内部の圧力によって膨らむのを防止する。
【解決手段】膜蒸留装置1のスタック10を圧力容器30内に収容する。圧力容器30内に加圧流体を封入する。圧力容器30は、好ましくは楕円筒形状である。好ましくは、スタック10の高温側を上にし、低温側を下にする。加圧流体は、好ましくは液体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、海水等の溶液から溶媒を膜蒸留法(MD;Membrane Distillation法)にて蒸留して取り出す膜蒸留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ギャップ式の膜蒸留装置は、2種類の膜と、第1、第2、第3の3種類の枠とを積層したスタックにて構成されている(特許文献1等参照)。2種類の膜の一方は、気体も液体も通さない不透過膜(伝熱板)であり、もう片方は気体を通すが液体を通さない蒸留膜である。枠の厚さ、ひいては枠内の室の厚さは、例えば5mm程度である。これら膜及び枠が、第1枠、不透過膜、第3枠、蒸留膜、第2枠、蒸留膜、第3枠、不透過膜、第1枠…の順に積層されている。積層体の両外側には、板状の外壁が設けられている。各膜の周縁部が、その両隣の枠によって挟持され、かつ接着や熱融着によって各枠内の液密性又は気密性が確保されている。さらに、スタックの周縁部には、複数のボルトがスタックの周方向に間隔を置いて設けられている。各ボルトが、スタック全体を積層方向に貫通して緊締されている。これらボルトによって耐圧性能を出している。
【0003】
第1枠内に海水等の溶液を通す。第1枠から出た溶液を熱源にて加温したうえで、第2の枠内に通す。このとき、溶液中の水蒸気等の溶媒ガスが蒸留膜を透過して第3枠の枠内に入る。この溶媒を、不透過膜を介して第1枠内の溶液にて冷却して凝縮させて取り出す。
【0004】
また、不透過膜を省略したダイレクト式の膜蒸留装置も知られている(特許文献2等参照)。ダイレクト式の膜蒸留装置では、一次液路が抽出室を兼ねている。一次液路(ないしは抽出室)に液体溶媒を流し、二次液路に溶液を流し、これら液路を蒸留膜にて仕切る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−197205号公報
【特許文献2】特開昭60−118205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の膜蒸留装置においては、各枠内の溶液及び抽出溶媒の圧力によってスタックの特に中央部分が膨らんでしまうという問題があった。そのため、溶液の流れがスタックの主に膨らんだ部分に偏った状態になり、蒸留膜の利用効率が悪く、溶媒抽出性能が低かった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、溶液(例えば海水)の溶媒(例えば淡水)を膜蒸留法にて抽出する膜蒸留装置であって、
膜蒸留のための膜を枠を挟んで積層してなるスタックと、
前記スタックを収容する圧力容器と、
を備え、前記圧力容器内に加圧流体を封入したことを特徴とする。
スタックの内圧が高くなっても、スタックの外面に加圧流体の圧力が作用することによって、スタックが膨らむのを防止できる。よって、スタック内を溶液が偏りなく流れることができ、溶媒の抽出効率を高めることができる。
【0008】
前記加圧流体は、気体でもよいが、安全性の観点からは液体が好ましい。
前記加圧流体は、蒸留前又は蒸留後の前記溶液でもよい。
前記加圧流体は、好ましくは前記溶媒と同一物質からなる液体である。
たとえば、前記加圧流体として、水、海水等が挙げられる。
【0009】
前記スタックには、前記溶液が相対的に低温で供給される一次供給ポートと、前記一次供給ポートから供給された前記溶液を導出する導出ポートと、前記溶液が相対的に高温で供給される二次供給ポートと、前記二次供給ポートから供給されて前記溶媒が抽出された後の前記溶液を排出する排出ポートと、前記溶媒を導出する溶媒ポートが設けられている。
前記加圧流体が前記溶媒と同一物質からなる液体である場合、前記溶媒ポートが、前記圧力容器内に開口されていてもよい。
これにより、スタックにて抽出された溶媒が、溶媒ポートから圧力容器とスタックとの間に出され、加圧流体となる。
【0010】
前記スタックが前記積層の方向と直交する長手方向を上下に向けて配置され、前記一次供給ポート及び前記排出ポートが前記スタックの下端部に配置され、前記導出ポート及び前記二次供給ポートが前記スタックの上端部に配置されていることが好ましい。前記圧力容器内の下側部分の加圧流体が相対的に低温であり、前記圧力容器内の上側部分の加圧流体が相対的に高温であることが好ましい。
これにより、スタックの低温部には低温の加圧流体が接し、スタックの高温部には高温の加圧流体が接することにより、スタックの断熱性を高めることができる。一般に加圧流体となる液体(水、海水等)の比重は高温であるほど軽いから、自然対流が殆ど起きず、低温の加圧流体は圧力容器内の下側部分に留まり、高温の加圧流体は圧力容器内の上側部分に留まるようにできる。よって、断熱材の断熱劣化を防止できる。
【0011】
前記溶媒ポートが、前記スタックの上端部と下端部にそれぞれ設けられ、かつ前記圧力容器内に開口されていてもよい。
これにより、スタックにて抽出された溶媒のうち高温のものを、スタックの上端部の溶媒ポートから圧力容器とスタックとの間に出し、高温の加圧流体と混合一体化できる。そして、圧力容器の上側部から高温の溶媒を取り出すことができる。また、スタックにて抽出された溶媒のうち低温のものを、スタックの下端部の溶媒ポートから圧力容器とスタックとの間に出し、低温の加圧流体と混合一体化できる。そして、圧力容器の下側部から低温の溶媒を取り出すことができる。
【0012】
前記圧力容器が、楕円筒形状であることが好ましい。これにより、耐圧性を確保できる。また、圧力容器を真円筒形状にするよりもコンパクトにできる。
前記スタックが、前記積層の方向と直交する長手方向を前記圧力容器の筒軸方向に向け、前記積層方向を前記圧力容器の短径方向に向け、前記長手方向及び前記積層方向と直交する幅方向を前記圧力容器の長径方向に向けて配置されていることが好ましい。これにより、圧力容器内にスタックを収まり良く収容できる。
【0013】
前記圧力容器に断熱材を設けることが好ましい。これにより、加圧流体及びスタックの断熱性を確保できる。
【0014】
前記断熱材が、前記圧力容器の外面に設けられていることが好ましい。これにより、断熱材が加圧流体と接触しないようにすることができ、加圧流体に対する耐性を考慮することなく断熱材の材質を選択できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スタックが内部の圧力によって膨らむのを防止できる。これにより、溶液がスタック内に偏りなく流れるようにでき、溶媒抽出性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る膜蒸留装置の正面断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う、上記膜蒸留装置の平面断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る膜蒸留装置の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、例えば海水(溶液)から淡水(溶媒)を抽出する膜蒸留装置1を示したものである。膜蒸留装置1は、スタック10を備えている。図2に示すように、スタック10は、第1〜第3の枠11,12,13と、伝熱板14と、蒸留膜15と、一対の外壁16を所定の順に積層したものである。これら要素11〜16は、互いに同じ大きさの四角形(長方形)になっている。スタック10の全体形状は直方体になっている。
【0018】
スタック10の幅(図1の左右方向の寸法)は、例えば500mm程度であり、スタック10の長さ(図1の上下方向の寸法)は、例えば1000mm程度である。スタック10の厚さ(積層方向の寸法)は要素11〜15の積層数にもよるが、例えば100mm程度である。勿論、本発明が上記寸法に限定されるものではない。
【0019】
枠11,12,13は、海水等の溶液に対し耐腐蝕性を有していることが好ましく、ここではパッキン用のゴム材にて構成されているが、これに限られず、樹脂、その他の材料にて構成されていてもよい。第1枠11の内部が一次液路11aになっている。第2枠12の内部が二次液路12aになっている。第3枠13の内部が溶媒抽出室13aになっている。各枠11,12,13の厚さは、例えば5mm程度である。
液路又は室11a,12a,13aの内圧(すなわちスタック10の内圧)は、例えば5kPa〜20kPa程度になる。
【0020】
伝熱板14は、気体も液体も通さない不透過膜であり、かつ良好な伝熱性を有する。不透過膜からなる伝熱板14は、特許請求の範囲の「膜蒸留のための膜」の1つを構成する。伝熱板14は、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂フィルムにて構成されているが、その他の材料からなるフィルムにて構成されていてもよい。伝熱板14の厚さは、例えば20μm〜200μm程度である。
【0021】
蒸留膜15(膜蒸留のための膜)は、例えば多孔質の膜で構成され、気体の透過を許容し、液体の透過を阻止する。蒸留膜15の材料としては、例えばPVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂が挙げられる。蒸留膜15の厚さは、例えば30μm〜300μm程度である。
【0022】
これらスタック要素11〜15が、第1枠11、伝熱板14、第3枠13、蒸留膜15、第2枠12、蒸留膜15、第3枠13、伝熱板14、第1枠11…の順に積層されている。枠11,12,13によって、隣接する板ないし膜14,15どうし間の間隔が維持されている。伝熱板14によって一次液路11aと溶媒抽出室13aが仕切られている。蒸留膜15によって、二次液路12aと溶媒抽出室13aが仕切られている。
【0023】
スタック10の積層方向の両外側には、それぞれ第1枠11が配置され、更にその外側に外壁16が配置されている。外壁16は、海水等の溶液に対し耐腐蝕性を有していることが好ましく、ここでは樹脂にて構成されているが、その他の材料にて構成されていてもよい。外壁16の厚さは、数mm程度である。
【0024】
伝熱板14及び蒸留膜15の周縁部が、その両隣の枠11,12,13によって挟持され、かつ上記枠11,12,13に接着されている。接着に代えて、熱融着でもよい。
【0025】
図示は省略するが、スタック10の周縁部には、複数のボルトがスタック10の周方向に間隔を置いて設けられている。各ボルトが、スタック10全体を積層方向に貫通して緊締されている。
【0026】
図1に示すように、スタック10には6つのポート21〜26が設けられている。そのうち、3つのポート21,25,24が、スタック10の長手方向の一端部に配置されている。これらポート21,25,24は、スタック10の幅方向に互いに離れている。残り3つのポート23,26,22が、スタック10の長手方向の他端部に配置されている。これらポート23,26,22は、スタック10の幅方向に互いに離れている。
【0027】
図1及び図2に示すように、膜蒸留装置1は、圧力容器30を更に備えている。圧力容器30は、楕円筒形状をなし、筒軸方向を上下(鉛直、垂直)に向けて配置されている。圧力容器30の上下両端は閉塞されている。これにより、圧力容器30の内部が密閉されている。圧力容器30は、ステンレス等の金属にて構成され、耐圧構造になっている。圧力容器30の周壁31と底板32との接合部分、及び周壁31と天板33との接合部分は、応力集中が起きないよう、R加工されている。
【0028】
圧力容器30の高さは、スタック10の長さ寸法(1000mm程度)より大きく、例えば1200mm程度である。圧力容器30の長径は、スタック10の幅寸法(500mm程度)より大きく、例えば700mm程度である。圧力容器30の短径は、スタック10の厚さ寸法(100mm程度)より大きく、例えば300mm程度である。圧力容器30の周壁31、底板32、天板33の厚さは、例えば0.1mm〜10mm程度である。
【0029】
圧力容器30には、断熱材50が設けられている。断熱材50は、圧力容器30の外面の全体を覆っている。断熱材50は、ロックウール、発泡ウレタン、発泡スチロール等にて形成されている。
【0030】
圧力容器30の内部にスタック10が収容されている。容器30内のスタック10は、長手方向を圧力容器30の筒軸方向(上下)に向けて配置されている。しかも、スタック10のポート21,25,24が設けられた端部が下側に位置され、ポート23,26,22が設けられた端部が上側に位置されている。更に、スタック10の幅方向は、圧力容器30の長径方向に向けられ、スタック10の厚さ方向(各要素11〜16の積層方向)は、圧力容器30の短径方向に向けられている。スタック10は、図示しない支持手段によって周壁31の内側及び底板32の上方に離れて鉛直に支持されているが、周壁31又は底板32に接していてもよい。スタック10の長手方向が、圧力容器30の筒軸方向(又は鉛直方向)に対し斜めに傾いていてもよい。
【0031】
圧力容器30内のスタック10の周りの密閉空間35には、加圧流体が封入されている。加圧流体が、スタック10を囲繞している。ここでは、加圧流体として、水が用いられている。したがって、加圧流体と抽出対象の溶媒とが、互いに同一の物質にて構成されている。密閉空間35内の水圧(流体圧)は、スタック10の内圧より好ましくは高圧であり、例えば0.1MPa〜5MPa程度である。上記水の加圧手段としては、コンプレッサ等を用いることができる。
【0032】
海水の供給管61が、外部から圧力容器30内に導入され、一次供給21に接続されている。導出ポート22から加熱往路管62が延びている。加熱往路管62は、圧力容器30の外部に引き出されて、熱源40に連なっている。熱源40は、例えば太陽熱集熱器にて構成されている。熱源40として、太陽熱集熱器に代えて、各種工場の設備機械やエンジン(内燃機関)等から出る排熱の回収部、電熱ヒーター、熱交換器等を用いてもよい。熱源40からの加熱復路管63が、圧力容器30内に導入され、二次供給ポート23に連なっている。排出ポート24から排出管64が延びている。排出管64は、圧力容器30の外部に引き出されている。
【0033】
スタック10の溶媒ポート25,26は、それぞれ圧力容器30内に開口され、密閉空間35に連なっている。下側の溶媒ポート25は、密閉空間35の下側部に直接的に連なっている。上側の溶媒ポート26は、密閉空間35の上側部に直接的に連なっている。溶媒ポート25,26に逆止弁を設けてもよい。
【0034】
圧力容器30の下側部から溶媒取り出し管65が引き出されている。溶媒取り出し管65の基端部は、密閉空間35の下側部に直接的に連なっている。
圧力容器30の上側部から溶媒取り出し管66が引き出されている。溶媒取り出し管66の基端部は、密閉空間35の上側部に直接的に連なっている。
【0035】
上記構成の膜蒸留装置1の動作を説明する。
常温(例えば30℃程度)の海水が、供給管61を経て一次供給ポート21に供給される。この海水が、複数の一次液路11aの各々に分配され、各液路11a内を流通する。このとき、海水は、後述する水蒸気(溶媒)の凝縮熱により加温される。その後、海水は、各液路11aから導出ポート22に集められる。導出ポート22における海水の温度は、例えば75℃程度である。この海水が、往路管62を経て、熱源40からの熱によって更に加温され、例えば80℃程度になる。加温後の海水が、復路管63を経て、二次供給ポート23に供給される。この海水が、複数の二次液路12aの各々に分配され、各二次液路12a内を流通する。このとき、海水中の水蒸気(溶媒ガス)が、蒸留膜15を透過して溶媒抽出室13aに入る。この水蒸気を、伝熱板14を介して一次液路11aの海水にて冷却して凝縮させる。こうして海水(溶液)から淡水(溶媒)を抽出できる。抽出された淡水(溶媒)は、各溶媒抽出室13aから溶媒ポート25,26に集められ、導出される。各二次液路12a内の海水は、溶媒抽出に伴って濃縮され、かつ蒸発熱を奪われて冷却されて、例えば35℃程度になる。この高濃度かつ低温の海水が、排出ポート24に集められて、排出管64から排出される。
【0036】
スタック10の内圧は、溶媒抽出によって高圧になる。このスタック10を取り囲む密閉空間35内の加圧流体は、スタック10の内圧より更に高圧であり、この加圧流体の圧力がスタック10の外面に作用する。これによって、スタック10が内圧により膨らむのを防止できる。したがって、スタック10内の各液路(又は室)11a,12a,13aの厚さを全体的に一定にできる。よって、各液路11a,12a内に海水(溶液)を偏りなく流すことができ、溶媒抽出室13aから淡水(溶媒)を偏りなく抽出できる。この結果、熱効率を良好にでき、蒸留膜15の利用効率を高めることができ、ひいては、淡水(溶媒)の抽出効率を高めることができる。
【0037】
スタック10の各溶媒抽出室13aの上側部分では淡水(溶媒)が比較的高温の状態で抽出される。この高温の淡水が、各溶媒抽出室13aから溶媒ポート26に集められて導出され、圧力容器30内の密閉空間35の上側部分の水(加圧流体)と混合される。スタック10の各溶媒抽出室13aの下側部分では淡水(溶媒)が比較的低温の状態で抽出される。この低温の淡水が、各溶媒抽出室13aから溶媒ポート25に集められて導出され、圧力容器30内の密閉空間35の下側部分の水(加圧流体)と混合される。
【0038】
したがって、密閉空間35内の上下方向に温度勾配が形成され、密閉空間35の上側部分の水(加圧流体)は高温になり、下側部分の水(加圧流体)は低温になる。高温の水は低温の水より比重が軽いから、密閉空間35内に自然対流が起きることがなく、上記温度勾配が維持される。更に、断熱材50によって圧力容器30からの放熱を防止でき、密閉空間35内の温度を維持できる。そして、上側の溶媒取り出し管66からは、比較的高温(例えば70℃程度)の水を取り出すことができる。下側の溶媒取り出し管65からは、比較的低温(例えば40℃程度)の水を取り出すことができる。
【0039】
断熱材50が外側に設けられているから、加圧流体と接触して劣化するのを防止でき、断熱性能を確保できる。
【0040】
圧力容器30が楕円筒形状であるから、真円筒形状よりコンパクトであり、かつ耐圧性を十分に確保できるだけでなく、スタック10の収まりがよい。
【0041】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する内容に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
図3に示す第2実施形態では、スタック10の下側の溶媒ポート25に溶媒取り出し管65が直接に接続されている。上側の溶媒ポート26に溶媒取り出し管66が直接に接続されている。圧力容器30内の密閉空間35には、蒸留対象の溶液と同じ液体(加圧流体)すなわち海水が加圧状態で封入されている。加圧流体としての海水は、蒸留前の通常濃度の海水であってもよく、蒸留後、排出管64に出された高濃度の海水であってもよい。
【0042】
本発明は、上記実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変をなすことができる。
例えば、圧力容器30が、断面真円、その他の筒形状でもよい。
圧力容器30の筒軸方向が、鉛直方向に対し斜めになっていてもよく、水平になっていてもよい。
断熱材50が、圧力容器30の内面に設けられていてもよい。
圧力容器30内の密閉空間35に封入する加圧流体は、蒸留対象の溶液又は溶媒と同一の液体に限られず、他の液体でもよく、気体でもよく、ゲル状体でもよい。
上記第1、第2実施形態を組み合わせてもよい。例えば、図3の配管構成において、圧力容器30内の密閉空間35に封入する加圧流体として、抽出した溶媒と同じ液体(淡水)を用いてもよい。
抽出対象の溶液は、海水に限られず、塩水、泥水、汚水、灌水等でもよい。
実施形態の膜蒸留装置1のスタック2は、いわゆるギャップ式であったが、本発明は、いわゆるダイレクト式の膜蒸留装置にも適用できる。ダイレクト式の膜蒸留装置では、蒸留膜50を第1、第2枠11,12にて挟む。伝熱板(不透過膜)14及び第3枠13は不要であり、第1枠11の一次液路11aが抽出室13aを兼ねる。一方の枠内空間11aに淡水(液体溶媒)を流し、他方の枠内空間12aに海水(溶液)を流す。二次液路12aの海水中の水蒸気(溶媒蒸気)が蒸留膜50を透過して一次液路11aの淡水に混じる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、例えば海水から淡水を取り出す淡水化装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 膜蒸留装置
10 スタック
11 第1枠
11a 一次液路
12 第2枠
12a 二次液路
13 第3枠
13a 溶媒抽出室
14 伝熱板(不透過膜、膜蒸留のための膜)
15 蒸留膜(膜蒸留のための膜)
16 外壁
21 一次供給ポート
22 導出ポート
23 二次供給ポート
24 排出ポート
25 溶媒ポート
26 溶媒ポート
30 圧力容器
31 周壁
32 底部
33 天板
35 圧力空間
40 熱源
50 断熱材
61 供給管
62 加熱往路管
63 加熱復路管
64 排出管
65 溶媒取り出し管
66 溶媒取り出し管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液の溶媒を膜蒸留法にて抽出する膜蒸留装置であって、
膜蒸留のための膜を枠を挟んで積層してなるスタックと、
前記スタックを収容する圧力容器と、
を備え、前記圧力容器内に加圧流体を封入したことを特徴とする膜蒸留装置。
【請求項2】
前記加圧流体が、液体であることを特徴とする請求項1に記載の膜蒸留装置。
【請求項3】
前記加圧流体が、前記溶媒と同一の物質からなる液体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の膜蒸留装置。
【請求項4】
前記スタックには、抽出された溶媒を導出する溶媒ポートが設けられており、前記溶媒ポートが、前記圧力容器内に開口されていることを特徴とする請求項3に記載の膜蒸留装置。
【請求項5】
前記スタックには、前記溶液が相対的に低温で供給される一次供給ポートと、前記一次供給ポートから供給された前記溶液を導出する導出ポートと、前記溶液が相対的に高温で供給される二次供給ポートと、前記二次供給ポートから供給されて前記溶媒が抽出された後の前記溶液を排出する排出ポートと、前記溶媒を導出する溶媒ポートが設けられ、前記スタックが前記積層の方向と直交する長手方向を上下に向けて配置され、前記一次供給ポート及び前記排出ポートが前記スタックの下端部に配置され、前記導出ポート及び前記二次供給ポートが前記スタックの上端部に配置されており、前記圧力容器内の下側部分の加圧流体が、前記圧力容器内の上側部分の加圧流体より低温であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の膜蒸留装置。
【請求項6】
前記溶媒ポートが、前記スタックの上端部と下端部にそれぞれ設けられ、かつ前記圧力容器内に開口されていることを特徴とする請求項5に記載の膜蒸留装置。
【請求項7】
前記圧力容器が、楕円筒形状であり、
前記スタックが、前記積層の方向と直交する長手方向を前記圧力容器の筒軸方向に向け、前記積層方向を前記圧力容器の短径方向に向け、前記長手方向及び前記積層方向と直交する幅方向を前記圧力容器の長径方向に向けて配置されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の膜蒸留装置。
【請求項8】
前記圧力容器に断熱材を設けたことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の膜蒸留装置。
【請求項9】
前記断熱材が、前記圧力容器の外面に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の膜蒸留装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−173098(P2011−173098A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40767(P2010−40767)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】