説明

膜電極接合体

【課題】本発明ではガス拡散層に熱伝導性の高い材料を使用することでガス拡散層と電極触媒層との温度差を少なくし、ガス拡散層において水が凝縮することを抑制・防止する膜電極接合体を提供する。
【解決手段】電解質膜と、前記電解質膜を挟持する1対の電極触媒層と、前記1対の電極触媒層を挟持する1対のガス拡散層と、を有する膜電極接合体において
前記ガス拡散層は、撥水性を有する材料と熱伝導性を有する材料とを含む撥水層と、ガス拡散基材からなり、かつ前記撥水層は前記電極触媒層と前記ガス拡散基材との間に配置されることを特徴とする膜電極接合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜電極接合体、特に燃料電池用の膜電極接合体に関し、より詳細には熱伝導性に優れる膜電極接合体、特に燃料電池用の電解質膜に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、化石燃料の枯渇時代に入り、一方では地球温暖化問題は深刻さを増している。こうした中、新しいエネルギー源としては水素が最も有望であるが、水素はそのままではエネルギーに変換できないため、水素を媒介する新しいシステムの変革が必要である。その代表格として燃料電池が存在する。燃料電池は、一般的にリン酸型燃料電池(PAFC)、アルカリ型燃料電池(AFC)、固体高分子型燃料電池(PEFC)などがあり、なかでも固体高分子型燃料電池(PEFC)は、常温で起動でき、電解質の散逸の問題が少なく、高電流密度などの利点を有する。PEFCでは、膜の加湿とともにカソードで生成する水および膜内を移動する水を含めた総合的な水管理が、電池性能および寿命にとって極めて重要になってくる。
【0003】
何故なら、一般に燃料電池は、燃料極(アノード極)に水素、酸化剤極(カソード極)に空気または酸素を利用し、カソード極で水が生成される。液水の生成しやすい高加湿および高電流密度運転においては、カソードの生成水が電極層にたまり、その生成水に阻害されて反応物が電極に十分に供給されず、電池出力が低下(フラッディング現象)したりするからである。そのため、燃料電池の高出力化のためには、電極触媒層からの水の排出が必要である。
【0004】
一般的に、排水性を向上させるために、特許文献1では、疎水性の高分子材料を付加したガス拡散基材上に、さらなる撥水効果をもたせるためにカーボン撥水層を設ける手法がとられている。また、特許文献2では、ガス拡散基材に撥水処理と親水処理を施し、水排出のコントロールをする。
【0005】
しかし、特許文献1では排水性は向上するが、ガス拡散層などにおける水蒸気の凝縮により生ずる水を効果的に排水することができず、結果的にはフラッディング現象を抑制・防止することが困難である。
【0006】
また、特許文献2では、生成水は優先的に親水部に溜まり、電極からの排水は向上するが、常にその部位には水が存在することになり、一旦、水が溜まると、拡散層内のガスの通路がふさがれ、有効ガス流路面積が小さくなり、ガスが電極に十分に供給されないという問題があった。
【特許文献1】特開2003−89968号公報
【特許文献2】特表2002−313200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明ではガス拡散層に熱伝導性の高い材料を使用することでガス拡散層と電極触媒層との温度差をなくし、ガス拡散層において水が凝縮することを抑制・防止する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明者が鋭意研究を積み重ねた結果、電解質膜と、前記電解質膜を挟持する1対の電極触媒層と、前記1対の電極触媒層を挟持する1対のガス拡散層と、を有する膜電極接合体において
前記ガス拡散層は、撥水性を有する材料と熱伝導性を有する材料とを含む撥水層と、ガス拡散基材からなり、かつ前記撥水層は前記電極触媒層と前記ガス拡散基材との間に配置されることを特徴とする膜電極接合体が上記目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0009】
電極触媒層で熱を発生する燃料電池において、電極触媒層からガス流路にかけて、必ず温度勾配が生ずる。本発明によれば、ガス拡散層中の温度に関して、ガス拡散層は熱導電性の高いカーボン粒子で構成されているため、ガス拡散層中での温度低下が小さい。その結果、従来のガス拡散層に比べて、同じ電流密度に対して、ガス拡散層中が高温になり、相対湿度が高くなり、水蒸気が凝縮しにくくなり、液水によりガス流路を防ぐことを抑制・防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の第1は、電解質膜と、前記電解質膜を挟持する1対の電極触媒層と、前記1対の電極触媒層を挟持する1対のガス拡散層と、を有する膜電極接合体において前記ガス拡散層は、撥水性を有する材料と熱伝導性を有する材料とを含む撥水層と、ガス拡散基材からなり、前記電極触媒層との間に配置される膜電極接合体である。
【0011】
図2に本発明の実施形態であるカソード極(酸化剤極)側の構成を示す。固体高分子電解質膜1の両側に図示しないアノード極(燃料極)およびカソード極(酸化剤極)2が対設され、カソード極(酸化剤極)2側に、ガス拡散基材4に撥水層3を付与したガス拡散層5を備えた構成となっている。なお、この図はカソード極(酸化剤極)側を断面方向から見たものである。
【0012】
ガス拡散層は、撥水性を有する材料と熱伝導性を有する材料とを含む撥水層と、ガス拡散基材を有し、さらに熱伝導性の高い撥水層が電極触媒層と接するように配置されているため、撥水層中での温度低下を小さくすることができる。そのため、撥水層で水の凝縮を防止するだけではなく、撥水層においても水の蒸発を促すこともできるため、相対湿度(以下R.H.と称する。)を維持することができる。
【0013】
図1に触媒層およびガス拡散層の温度分布の概念図を示す。フラッディング現象は、生成水および凝縮した水蒸気による触媒層およびガス拡散層での水つまりによる反応ガスの輸送阻害だと考えられており、R.H.は重要なファクターである。
【0014】
つまり、電極触媒層で生じた反応熱がガス拡散層外部に伝熱される際に、撥水層の熱伝導性が低いと、撥水層で急激な温度低下が生じ、電極触媒層付近の温度が高く、ガス拡散基材付近の温度が低くなる。その結果、温度の低い部位では水が凝縮しやすくため、低温度部位で局所的に凝縮した水の量が増大し、多孔質体の孔を塞ぎフラッディング現象を引き起こす。これに対して、本発明は、熱伝導率の高い材料を撥水層に用いているため、撥水層は電極触媒層の温度とほぼ同じ温度に保たれ、R.H.の急激な増加を抑制し、局所的に水が凝縮する現象を防ぐ。そのため撥水層でのフラッディング現象を抑制できると考えられる。なお、本発明によるメカニズムは上記によって限定されるものではない。
【0015】
一般的に熱伝導に関する式は、以下のフーリエの式がある。
【0016】
【数1】

【0017】
(式中、Q:通過する熱量[W]、λ:熱伝導率[W/m・K]、A:撥水層の断面積[m]、dT/dr:温度勾配[K/m])
例えば、1A/cmでの運転における反応熱が37W、断面積が25cm、電極触媒層の温度が70℃、撥水層の厚さ50μm、従来の撥水層の熱伝導率が0.1W/m・Kの場合、撥水層のガス拡散基材側の端面および電極触媒層側の端面で約7℃の温度差が生ずる。これは、電極触媒層の温度70℃に対して、R.H.70%の反応ガスを導入した場合、撥水層で水蒸気が凝縮することに相当する。これに対して、熱伝導性の比較的に高い材料、具体的には、0.2W/m・K程度以上の材料を撥水層に用いれば、撥水層での温度低下は小さくなり、水蒸気の凝縮は抑制される。
【0018】
熱伝導を有する材料の熱伝導率は、0.2〜100(W/m・K)が好ましく、0.5〜10(W/m・K)がより好ましく、1〜5(W/m・K)がさらに好ましい。熱伝導を有する材料の熱伝導率が、0.2(W/m・K)未満だと、撥水層中での温度低下が大きくなり、水蒸気が凝縮しやすくフラッディング現象が起こりやすくなるおそれがある。また100(W/m・K)超だと、カーボンの疎水性が強くなり、親水性になりにくく、水を触媒層から引き寄せにくくなり、フラッディング現象が起こりやすくなるおそれがある。
【0019】
なお、熱伝導性を有する材料の熱伝導率が、0.2〜100(W/m・K)の範囲のものに用いた場合、撥水層中での温度低下(電極触媒層に接した端部とガス拡散基材に接した端部との温度差であり、撥水層中で徐々に温度低下し、0.2W/mKでは4℃低下、100W/mKでは0.1℃低下する。)は0.1〜4℃となり、熱伝導を有する材料の熱伝導率が、0.5〜10(W/m・K)の範囲のものに用いた場合、撥水層中での温度低下(電極触媒層に接した端部とガス拡散基材に接した端部との温度差であり、撥水層中で徐々に温度低下し、0.5W/mKでは1.5℃低下、10W/mKでは0.1℃低下する。)は0.15〜1.5℃となり、熱伝導を有する材料の熱伝導率が、1〜5(W/m・K)の範囲のものに用いた場合、撥水層中での温度低下(電極触媒層に接した端部とガス拡散基材に接した端部との温度差であり、撥水層中で徐々に温度低下し、1W/mKでは1℃低下、5W/mKでは0.2℃低下する。)は0.2〜1℃となる。
【0020】
本発明におけるガス拡散層の厚さは、100〜400μmが好ましく、150〜350μmがより好ましく、200〜300μmが最も好ましい。撥水層の厚さは10〜100μmが好ましく、30〜80μmがより好ましい。ガス拡散基材は、100〜300μmが好ましく、150〜200μmがより好ましい。撥水層の厚さが、10μm未満であると、充分な排水性能を有さず、100μm超であると、充分なガス拡散性が得られない。
【0021】
また、撥水層の空孔率は50〜90%が好ましく、60〜80%がより好ましい。空孔率が50%未満であると、充分な拡散性が得られない。90%超であると、十分な強度が得られない。
【0022】
本発明に係る熱伝導性を有する材料は、公知のものを使用することができるが、グラファイト化カーボンであることが好ましく、その例としてはカーボンブラック(オイルファーネスブラック、アセチレンブラック等、一般的なカーボンブラック)を3000℃程度で不活性ガス中、熱処理することにより調製されるグラファイト化カーボンブラック、気相成長炭素繊維、VGCF、グラファイト化ケッチェンブラック(電気化学工業(株)製)などを挙げることができる。
【0023】
前記熱伝導性の高い材料がグラファイト化カーボンである場合、前記グラファイト化カーボンは熱伝導率が高く(λ=5W/m・K)、(数式1)式によれば、温度の低下は約0.2℃となり、よりフラッディング現象を抑制できる。
【0024】
本明細書における「グラファイト化」の構造とは、平面状に炭素が6角形状につながり、それが積層されたものをいう。したがって、本発明に係る熱伝導性を有する材料は、上記の例示だけではなく「グラファイト化」の構造を有するカーボンであれば本発明の目的を達成することができる。
【0025】
また、本発明に係る前記グラファイト化カーボンは、撥水層全体の質量に対して、5〜50質量%の割合で撥水層中に含まれることが好ましく、10質量%〜40質量%がより好ましく、20質量%〜30質量%がさらに好ましい。5質量%未満だと、充分な熱伝導性が得られず、50質量%超だと、疎水性が大きくなり、液水を触媒層から誘導しにくくなる。
【0026】
また本発明は、ガス拡散基材の少なくとも片面に、撥水性を有する材料および熱伝導性を有する材料を含む撥水層を設けてなるガス拡散層を提供する。
【0027】
カソード側では、アノード側で生成されたプロトンが水を伴って移動し、更に、酸素および移動してきたプロトンの反応により水が生成されるため、カソード側電極では大量の水が存在している。このため、本発明に係るガス拡散層はアノードおよびカソードのいずれの側または双方の側に配置されてもよいが、好ましくは少なくともカソード側に配置される。
【0028】
本発明に係る撥水性を有する材料としては、公知のものを使用することができるが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが例として挙げられ、これらのうち、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、PTFEがより好ましく使用される。
【0029】
本発明に係るガス拡散基材に用いられる材料としては、カーボンペーパ、不織布、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルトなどからなるシート状材料が挙げられる。ガス拡散基材が優れた電子伝導性を有していると、発電反応により生じた電子の効率的な運搬が達成され、燃料電池の性能が向上する。またガス拡散基材が優れた撥水性を有していると、生成した水が効率的に排出される。
【0030】
尚、高い撥水性を確保するために、ガス拡散基材を構成する材料を撥水処理する技術も提案されている。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂を含む溶液中にカーボンペーパなどのガス拡散基材を構成する材料を含浸させ、大気中または窒素などの不活性ガス中で乾燥させる。場合によっては、親水化処理がガス拡散基材を構成する材料に施されてもよい。
【0031】
本発明において用いられる高分子電解質膜は、特に限定されず公知のものを用いることができるが、その例としては電極触媒層に用いられたものと同様の材料が挙げられ、少なくとも高いプロトン伝導性を有する材料であればよい。この際高分子電解質は、高分子骨格の全部又は一部にフッ素原子を含むフッ素系電解質と、高分子骨格にフッ素原子を含まない炭化水素系電解質とに大別される。
【0032】
前記フッ素系電解質として、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系高分子、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系高分子、パーフルオロカーボンホスホン酸系高分子、トリフルオロスチレンスルホン酸系高分子、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系高分子、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子などが好適な例として挙げられる。
【0033】
前記炭化水素系電解質として、具体的には、ポリスルホンスルホン酸、ポリアリールエーテルケトンスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸、ポリフェニルスルホン酸等が好適な例として挙げられる。
【0034】
高分子電解質は、耐熱性、化学的安定性などに優れることから、フッ素原子を含むのが好ましく、なかでも、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などのフッ素系電解質が好ましく挙げられる。
【0035】
本発明に係るアノード側電極触媒層およびカソード側電極触媒層は、電極触媒およびプロトン伝導性高分子を含み必要により撥水材料を含む。また本発明において電極触媒は、触媒成分が導電性材料に担持されてなるものである。
【0036】
本発明に係る電極触媒層に用いられる触媒成分は、カソード触媒層では、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく、公知の触媒が使用できる。また、アノード触媒層に用いられる触媒成分もまた、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。具体的には、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、およびそれらの合金等などから選択される。これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましく用いられる。
【0037】
前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金が30〜90原子%、合金化する金属が10〜70原子%とするのが好ましい。カソード触媒として合金を使用する場合の合金の組成は、合金化する金属の種類などによって異なり、当業者が適宜選択できるが、白金が30〜90原子%、合金化する他の金属が10〜70原子%とすることが好ましい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。
【0038】
合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、本発明ではいずれであってもよい。この際、前記カソード触媒層に用いられる触媒成分および前記アノード触媒層に用いられる触媒成分は、上記の中から適宜選択できる。以下の説明では、特記しない限り、カソード触媒層およびアノード触媒層用の触媒成分についての説明は、両者について同様の定義であり、一括して「触媒成分」と称する。しかしながら、カソード触媒層およびアノード触媒層用の触媒成分は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択される。
【0039】
触媒成分の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒成分と同様の形状および大きさが使用できるが、触媒成分は、粒状であることが好ましい。この際、触媒スラリーに用いられる触媒成分の平均粒子径は、小さいほど電気化学反応が進行する有効電極面積が増加するため酸素還元活性も高くなり好ましいが、実際には平均粒子径が小さすぎると却って酸素還元活性が低下する現象が見られる。したがって、触媒スラリーに含まれる触媒成分の平均粒子径は、1〜30nm、より好ましくは1.5〜20nm、さらに好ましくは2〜10nm、特に好ましくは2〜5nmの粒状であることが好ましい。担持の容易さという観点から1nm以上であることが好ましく、触媒利用率の観点から30nm以下である。なお、本発明における「触媒成分の平均粒径」は、X線回折における触媒成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径あるいは透過型電子顕微鏡像より調べられる触媒成分の粒子径の平均値により測定することができる。
【0040】
前記導電性材料としては、触媒成分を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として十分な電子導電性を有しているものであればよく、主成分がカーボンであるのが好ましい。具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。また、かようなカーボン材料として、より具体的には、アセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ブラックパール、黒鉛化アセチレンブラック、黒鉛化バルカン、黒鉛化ケッチェンブラック、黒鉛化カーボン、黒鉛化ブラックパール、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、およびカーボンフィブリルから選ばれる少なくとも一種を主成分として含むものが挙げられる。なお、本発明において「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3質量%程度以下の不純物の混入が許容されることを意味する。
【0041】
前記導電性材料のBET比表面積は、触媒成分を高分散担持させるのに十分な比表面積であればよいが、好ましくは20〜1600m/g、より好ましくは80〜1200m/gとするのがよい。前記比表面積が、20m/g未満であると前記導電性材料への触媒成分および高分子電解質の分散性が低下して十分な発電性能が得られない恐れがあり、1600m/gを超えると触媒成分および高分子電解質の有効利用率が却って低下する恐れがある。
【0042】
また、前記導電性材料の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さ、触媒利用率、電極触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均粒子径が5〜200nm、好ましくは10〜100nm程度とするのがよい。
【0043】
前記導電性材料に触媒成分が担持された電極触媒において、触媒成分の担持量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%とするのがよい。前記担持量が、80質量%を超えると、触媒成分の導電性材料上での分散度が下がり、担持量が増加するわりに発電性能の向上が小さく経済上での利点が低下する恐れがある。また、前記担持量が、10質量%未満であると、単位質量あたりの触媒活性が低下し、所望の発電性能を得るために多量の電極触媒が必要となり好ましくない。なお、触媒成分の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって調べることができる。
【0044】
本発明に係る電極触媒層におけるプロトン伝導性高分子は、特に限定されず公知のものを用いることができるが、高分子電解質に用いられたものと同様の材料が挙げられ、少なくとも高いプロトン伝導性を有する材料であればよい。本発明のカソード触媒層/アノード触媒層(以下、単に「触媒層」とも称する)には、電極触媒の他に、高分子電解質が含まれる。この際使用できる高分子電解質は、高分子骨格の全部又は一部にフッ素原子を含むフッ素系電解質と、高分子骨格にフッ素原子を含まない炭化水素系電解質とに大別される。
【0045】
前記フッ素系電解質として、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系高分子、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系高分子、パーフルオロカーボンホスホン酸系高分子、トリフルオロスチレンスルホン酸系高分子、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系高分子、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子などが好適な例として挙げられる。
【0046】
前記炭化水素系電解質として、具体的には、ポリスルホンスルホン酸、ポリアリールエーテルケトンスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸、ポリフェニルスルホン酸等が好適な例として挙げられる。
【0047】
前記高分子電解質は、耐熱性、化学的安定性などに優れることから、フッ素原子を含むのが好ましく、なかでも、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などのフッ素系電解質が好ましく挙げられる。
【0048】
また、導電性材料への触媒成分の担持は公知の方法で行うことができる。例えば、含浸法、液相還元担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法が使用できる。または、電極触媒は、市販品を用いてもよい。
【0049】
尚、高分子電解質膜および電極層で用いる高分子電解質は、異なってもよいが、膜と電極との間の接触抵抗などを考慮すると同じものを用いるのが好ましい。
【0050】
前記高分子電解質は、接着の役割をする高分子として電極触媒を被覆しているのが好ましい。これにより、電極の構造を安定に維持できるとともに、電極反応が進行する三相界面を十分に確保して、高い触媒活性を得ることができる。電極中に含まれる前記固体高分子電解質の含有量は、特に限定されないが、触媒成分の全量に対して25〜35質量%とするのがよい。
【0051】
前記電極触媒層の空孔率は、30〜70%が好ましく、より好ましくは40〜60%である。空孔率が30%未満では、ガスの拡散が十分ではなく、高電流域でのセル電圧が低下する。また、空孔率が70%超では、電極触媒層の強度が十分ではなく、転写プロセスにおいて空孔率が低下する。
【0052】
本発明に係る前記撥水層は、さらに親水性を有する材料を含み、かつ前記親水性を有する材料の相に熱伝導性を有する材料を含むことが好ましい。
【0053】
図3および図4に本発明の好ましい実施形態である撥水層3の平面図および断面図を示す。撥水層3は、通常のカーボンブラックを用いた疎水性の部位6と熱伝導性の大きなカーボンブラックを用いた親水性の部位7を有する。
【0054】
前記撥水層に親水性を有する材料を含むため、電極触媒層で生成された水は、自由エネルギーにより親水性を有する材料の相に誘導される。また、親水性を有する材料の層(以下親水性層とも称する)には熱伝導性を有する材料を含んでいるため、親水性層は高い温度の触媒層と同等の温度が維持されており、親水性層に誘導された水は蒸発しやすくなる。これにより余分な水分を水蒸気化することができ、電極触媒層の水分量を管理でき、電極触媒層の水つまりの抑制や撥水層中での水つまりによるガス通路の低減も抑制され、フラッディング現象は抑制されると考えられる。
【0055】
前記親水性を有する材料の撥水層中の含有量は、撥水層の全体の質量に対して、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましく、20〜30質量%がさらに好ましい。5質量%未満だと、親水性の部位は少なく、水を触媒層から誘導しにくく、触媒層で水が溜まる。また50質量%超だと、親水性の部位が多く水を蒸発しきれない。
【0056】
本発明に係る親水性を有する材料は、公知のものを用いることができるが、例えば上記電解質膜の成分と同じナフィオン(登録商標)溶液(デュポン社製)、SiO分散液(フジシリシア製、SiOおよび水またはアルコールの分散液(メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールおよびこれらの混合アルコールが用いられる))、TiO分散液、Al分散液などが挙げられる。好ましくはSiO分散液およびTiO分散液であり、より好ましくはSiO分散液である。
【0057】
本発明は、前記ガス拡散層において、ガス流路の入り口側に含まれる熱伝導性を有する材料の量が、ガス流路の出口側に含まれる熱伝導性を有する材料の量より少ないことが好ましい。また、アノード側、カソード側のガス拡散層の両方において、ガス流路の入り口側に含まれる熱伝導性を有する材料の量が、ガス流路の出口側に含まれる熱伝導性を有する材料の量より少ないことが好ましいが、より好ましくはカソード側のガス拡散層においてである。
【0058】
図6に本発明の好ましい実施形態であるカソード極(酸化剤極)側の構成を示す。図2との相違は、撥水層3が、通常のカーボンブラックを用いた疎水性の部位6と熱伝導性の大きなカーボンブラックを用いた親水性の部位7にガス流れ方向に分割されており、ガス出口側に親水性の部位7、ガス入口側に疎水性の部位6を配したことである。
【0059】
すなわち、アノード側で生成されたプロトンがクラスター化した水分子とともにカソード側に移動して、カソード側で酸素およびプロトンが反応し水が生成されるため、カソード側電極触媒内に水が滞留する。この生成水は、濃度拡散や気化した水蒸気の拡散などを駆動力としてガス拡散層側に移動し、排出されるが、特に高電流を供給する場合、水の生成反応がより進行するため、水の排出量より生成水の量が増えて大量の水が滞留する。これがいわゆるフラッディング現象の要因の一つとなっている。このため、本発明に係るガス拡散層はアノード、カソードいずれの側、又は双方の側に配置されてもよいが、好ましくはカソード側に配置される。
【0060】
しかし、本発明のように、予め生成水が溜まりやすい、ガス流路出口近傍に熱導電性材料を用いることで、ガス流路出口付近の温度を上昇させ、生成水の気化を促し、水の排出速度を上げることで、効率よくフラッディング現象を抑制・防止することができる。
【0061】
すなわち、撥水層においてガス拡散基材の出口方向からガス拡散基材の入り口方向に、熱伝導性を有する材料の濃度勾配があり、ガス拡散基材の入り口方向に向かって濃度が減少していることが好ましく、また、ガス拡散基材の出口近傍にだけ熱伝導性を有する材料が含まれていることも好ましい。撥水層中で、ガス拡散基材出口側からガス拡散基材入り口側に向かって熱伝導性を有する材料の濃度分布は、離散的に変化してもよく、また連続的に変化してもよいが、好ましくは離散的に変化することである。
【0062】
ガス流路出口近傍に熱導電性材料を用いる範囲は、ガス流路出口(0%)からガス流路入り口(100%)までの水平方向の長さを100%とすると、ガス流路出口を基準に、ガス流路出口である一端からガス流路入り口方向に向かって5%の長さの領域ないしガス流路出口である一端からガス流路入り口方向に向かって50%の長さの領域が好ましく、ガス流路出口である一端からガス流路入り口方向に向かって10%の長さの領域ないしガス流路出口である一端からガス流路入り口方向に向かって40%の長さの領域がより好ましく、ガス流路出口である一端からガス流路入り口方向に向かって20%の長さの領域ないしガス流路出口である一端からガス流路入り口方向に向かって30%の長さの領域がさらに好ましい。
【0063】
ガス流路出口を基準に、ガス流路出口である一端からガス流路入り口方向に向かって5%未満の領域に熱導電性材料が含まれている場合だと親水性の部位が少なく、水を触媒層から誘導しにくく、触媒層で水が溜まる。また、ガス流路出口を基準に、ガス流路出口である一端からガス流路入り口方向に向かって50%超の領域に熱導電性材料が含まれている場合だと親水性の部位が多く、水を蒸発しきれないからである。
【0064】
また、ガス拡散基材の出口付近における熱伝導性を有する材料の体積%(単位体積あたりの熱伝導性を有する材料が占める割合)とガス拡散基材の入り口付近における熱伝導性を有する材料の体積%との差、すなわち上記のガス流路出口近傍に熱導電性材料を用いる範囲とその範囲外の体積%との差は、20体積%〜100体積%が好ましい。20体積%〜100体積%の範囲であれば、親水性の部位の量が適度に存在し、効果的に水を誘導し、誘導した水を蒸発しやすいからである。
【0065】
前記撥水層において、ガス拡散基材側に含まれる熱伝導性を有する材料の量が、電極触媒層側に含まれる熱伝導性を有する材料の量より少ないことが好ましい。
【0066】
図5に本発明の好ましい実施形態であるカソード極(酸化剤極)側の構成を示す。図2との相違は、撥水層3が、通常のカーボンブラックを用いた疎水性の部位6と熱伝導性の大きなカーボンブラックを用いた親水性の部位7に断面方向に分割されており、電極触媒層側に親水性の部位7、ガス拡散基材側に疎水性の部位6を配したことである。
【0067】
すなわち、撥水層において電極触媒層からガス拡散基材方向に、熱伝導性を有する材料の濃度勾配があり、ガス拡散基材方向に向かって濃度が減少している。
【0068】
電極触媒層および撥水層の境界において、電極触媒層に対して面直方向にそって、撥水層内の電極触媒層との境界近傍に熱伝導性を有する材料を含ませると、この境界近傍の領域の温度を高くすることができる。また、電極触媒層およびガス拡散層の境界付近では生成水がたまりやすいため、この領域で生成水を蒸気化でき、効率よく、フラッディング現象を抑制できると考えられる。
【0069】
撥水層中で、ガス拡散基材側に向かって電極触媒層の面直方向における熱伝導性を有する材料の濃度分布は、離散的に変化してもよく、また連続的に変化してもよいが、好ましくは離散的に変化することである。
【0070】
もちろん、撥水層とは別に、電極触媒層および撥水層の間に熱伝導性を有する材料からなる層を設けてもよい。尚、この場合の熱伝導性を有する材料からなる層の厚さは5〜25μmが好ましい。
【0071】
また、離散的に濃度勾配を変化させる場合、撥水層中において、撥水層および電極触媒層の境界近傍に熱伝導性を有する材料を含ませる範囲は、撥水層と電極触媒層との境界を基準として、撥水層全体の厚さを100体積%とすると、撥水層と電極触媒層との境界である一端から面直方向であるガス拡散基材方向に向かって5体積%の厚さの領域ないし撥水層と電極触媒層との境界である一端から面直方向であるガス拡散基材方向に向かって50体積%の厚さの領域が好ましく、撥水層と電極触媒層との境界である一端から面直方向であるガス拡散基材方向に向かって10体積%の厚さの領域ないし撥水層と電極触媒層との境界である一端から面直方向であるガス拡散基材方向に向かって40体積%の厚さの領域がより好ましく、撥水層と電極触媒層との境界である一端から面直方向であるガス拡散基材方向に向かって5体積%の厚さの領域ないし撥水層と電極触媒層との境界である一端から面直方向であるガス拡散基材方向に向かって50体積%の厚さの領域がさらに好ましい。5体積%未満だと親水性の部位が少なく、水を触媒層から誘導しにくく、触媒層で水が溜まりやすい。また50体積%未満だと親水性の部位が多く水を蒸発しきれない。
【0072】
前記撥水層において、熱伝導性を有する材料の含有量は、撥水層の全質量に対して、5〜50質量%が好ましく、20〜30質量%がより好ましい。
【0073】
電極触媒層側に含まれる熱伝導性を有する材料の体積%(単位体積あたりの熱伝導性を有する材料が占める割合)とガス拡散基材側に含まれる熱伝導性を有する材料の体積%との差は(上記の撥水層に熱伝導性を有する材料を含ませる範囲と熱導電性材料を含ませない範囲との体積%の差)、20体積%〜100体積%が好ましい。
20体積%〜100体積%の範囲であれば親水性の部位の量が適度に存在し、効果的に水を誘導し、誘導した水を蒸発しやすいからである。
【0074】
以下、本発明に係る実施態様について作製方法を説明する。
【0075】
まず、本発明の触媒スラリーを転写用台紙上に塗布・乾燥して、電極触媒層を形成する。この際、転写用台紙としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シート、PET(ポリエチレンテレフタレート)シート、ポリエステルシートなどの公知のシートが使用できる。なお、前記転写用台紙は、使用する触媒スラリー(特にインク中のカーボン等の導電性材料)の種類に応じて適宜選択される。また、上記工程において、電極触媒層の厚みは、水素の酸化反応(アノード側)および酸素の還元反応(カソード側)の触媒作用が十分発揮できる厚みであれば特に制限されず、従来と同様の厚みが使用できる。具体的には、電極触媒層の厚みは、5〜20μm、より好ましくは10〜15μmである。
【0076】
転写用台紙上への触媒スラリーは、特に制限されず、スクリーン印刷法、沈積法、あるいはスプレー法などの公知の方法が同様にして適用できる。また、塗布された電極触媒層の乾燥条件もまた、電極触媒層から極性溶剤を完全に除去できる条件であれば特に制限されない。具体的には、触媒スラリーの塗布層(電極触媒層)を真空乾燥機内にて、室温〜100℃、より好ましくは50〜80℃で、30〜60分間、乾燥する。この際、触媒層の厚みが十分でない場合には、所望の厚みになるまで、上記塗布・乾燥工程を繰り返す。次に下記の工程に進む。
【0077】
このようにして作製された固体高分子電解質膜を挟持した後、当該積層についてホットプレスを行なう。この際、ホットプレス条件は、電極触媒層及び固体高分子電解質膜が十分密接に接合できる条件であれば特に制限されないが、100〜200℃、より好ましくは110〜170℃で、電極面に対して1〜5MPaのプレス圧力で行なうのが好ましい。これにより固体高分子電解質膜および電極触媒層の接合性を高めることができる。
【0078】
ホットプレスを行なった後、転写用台紙を剥がすことにより、電極触媒層および固体高分子電解質膜を含む電極を得ることができる。
【0079】
次いで、ガス拡散層を作製するが、撥水層として、熱伝導性の大きなグラファイト化カーボンおよびPTFE、ガス拡散基材として、カーボンペーパまたはカーボン不織布またはカーボンクロスを用いる。
【0080】
撥水層の作製方法を以下に述べる。
【0081】
まず、カーボンブラックの粉末を所望の粒子径に粉砕し、疎水剤であるPTFE(ダイキン工業社製)の分散液を質量比60:40で混合してインク(I)作製する。ここで、カーボンブラックの粉末を1〜3μmの粒子径に粉砕する。
【0082】
また必要に応じて、さらに、カーボンブラックの粉末を所望の粒子径(1〜3μmが好ましく、1.5〜2.5μmがさらに好ましい。)に粉砕し、親水剤の分散液を質量比60:40で混合してインク(I)を作製する。
【0083】
前記インク(I)および前記インク(II)体積%以上の親水剤の部位を設けると、断面方向にパスがつながることが分かっている。
【0084】
以上のようにして作製した撥水層のインクのガス拡散基材4への塗布方法は、インクをスプレーコータやバーコータ等のコータ装置を用いる方法、スプレー噴霧などで、ガス拡散基材4に塗布する方法である。または、前記インクを乾燥粉砕後、粉末をガス拡散基材4に散布する。なお、撥水層の空孔径は(50〜200)nmに、厚さは(25〜100)μmとする。
【0085】
次に上記で作製したガス拡散層2枚を用い、撥水層を内側にして電極触媒層および固体高分子電解質膜を含む電極を挟持することにより膜電極接合体を作製する。
【0086】
尚、上記親水剤は、本発明に係る親水性を有する材料と同様に、公知のものを使用することができるが、例えば上記電解質膜の成分と同じナフィオン(登録商標)溶液(デュポン社製)、SiO分散液(フジシリシア製、SiOおよび水またはアルコールの分散液(メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールおよびこれらの混合アルコールが用いられる))、TiO分散液、Al分散液などが挙げられる。
【0087】
本発明の触媒スラリーにおいて、電極触媒は、所望の作用、即ち、水素の酸化反応(アノード側)および酸素の還元反応(カソード側)を触媒する作用を十分発揮できる量であればいずれの量で、使用されてもよい。電極触媒が、触媒スラリー中、10〜50質量%、より好ましくは20〜30質量%となるような量で存在することが好ましい。
【0088】
本発明の触媒スラリーには、電極触媒、プロトン伝導性高分子、及び溶剤に加えて、必要があればポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体といった撥水性高分子、増粘剤などが含まれてもよい。これにより、得られる電極触媒層の撥水性を高めることができ、発電時に生成した水などを速やかに排出することができる。撥水性高分子を使用する際の、撥水性高分子の添加量は、本発明の上記効果を妨げない程度の量であれば特に制限されないが、触媒スラリーの全質量に対して、好ましくは1〜10質量%である。
【0089】
上記撥水性高分子に代えてまたは上記撥水性高分子に加えて、本発明の触媒スラリーは、増粘剤を含んでもよい。増粘剤の使用は、触媒スラリーなどが転写用台紙上にうまく塗布できない場合などに有効である。この際使用できる増粘剤は、特に制限されず、公知の増粘剤が使用できるが、例えば、グリセリン、(EG(エチレングリコール)、PVA(ポリビニルアルコール))などが挙げられる。増粘剤を使用する際の、増粘剤の添加量は、本発明の上記効果を妨げない程度の量であれば特に制限されないが、触媒スラリーの全質量に対して、好ましくは1〜5質量%である。さらに、本発明で使用される触媒スラリーを構成する溶剤としては、特に制限されず、触媒層を形成するのに使用される通常の溶剤が使用できる。具体的には、水、またはシクロヘキサノール、エタノールもしくは2−プロパノール等の低級アルコールが使用できる。
【0090】
本発明で使用される溶剤の量は、電解質を完全に溶解できる量であれば特に制限されないが、電解質が、溶剤中、好ましくは30〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%の濃度になるような量である。この際、電解質の濃度が70質量%を超えると、電解質を完全には溶解せずに一部コロイドが形成される可能性があり、逆に30質量%未満であると、含まれる電解質量が少なすぎて、電解質高分子の分子鎖が十分に絡むことができず、形成される電極触媒層の機械的強度が劣る可能性がある。また、触媒スラリーにおいて、電極触媒および固体高分子電解質などを合わせた固形分の濃度は、触媒スラリー中、10〜50質量%、より好ましくは20〜30質量%程度とするのがよい。
【0091】
本発明の触媒スラリーは、カソード側電極触媒層またはアノード側電極触媒層のいずれか一方のみに使用されてもあるいは双方に使用されてもよいが、アノード側は特に出力変動による生成水量の変化により乾湿の変化を受けて、初期状態における電極触媒層の多孔構造が崩れ、空隙率が低下して、電極触媒層への反応ガス供給量が低下する危険性が高いため、少なくともカソード側電極触媒層に使用されることが好ましく、特にカソード及びアノード双方の側の電極触媒層に使用されることが好ましい。
【0092】
本発明の第2は、本発明の第1である電極を用いた燃料電池である。
【0093】
本発明に係る電極を用いた前記燃料電池は、下記に詳述されるように、一般的にガス拡散層をさらに有しており、この際、ガス拡散層は、上記方法において、転写用台紙を剥がし、得られた接合体をさらにガス拡散層で挟持することによって、電極触媒層と固体高分子電解質膜との接合後にさらに各電極触媒層に接合することが好ましい。または、電極触媒層を予めガス拡散層表面上に形成して電極触媒層−ガス拡散層接合体を製造した後、上記と同様にして、この電極触媒層−ガス拡散層接合体で固体高分子電解質膜をホットプレスにより挟持・接合することもまた好ましい。
【0094】
前記のホットプレス方法以外に、ガス拡散層上に逐次を塗布にすることより電極触媒層−高分子電解質膜−電極触媒層−ガス拡散層を積層する方法を用いても良い。
【0095】
本発明では、熱処理を従来公知の方法と同様の方法によって電極(膜電極接合体)が製造できる。例えば、調製された触媒スラリーを所望の厚さで転写用台紙上に塗布・乾燥することによって、カソード側およびアノード側の電極触媒層を形成し、さらにこの電極触媒層が内側にくるように高分子電解質膜を上記電極触媒層で挟持してホットプレス等により接合した後、転写用台紙を剥がすことによって、電解質膜に触媒層を取り付けた。
【0096】
このようにして作製した触媒層コート済の電解質膜の触媒層側およびガス拡散層(カーボン層コート済のカーボンペーパのカーボン層側を貼り合わせて電極(MEA:膜電極接合体)を作製した。
【0097】
前記燃料電池の種類としては、特に限定されず、上記の説明中では高分子電解質型燃料電池を例に挙げて説明したが、この他にも、アルカリ型燃料電池、リン酸型燃料電池に代表される酸型電解質の燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などが挙げられる。なかでも小型かつ高密度・高出力化が可能であるから、固体高分子電解質型燃料電池が好ましく挙げられる。また、前記燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用であるが、特にシステムの起動/停止や出力変動が頻繁に発生する自動車用途で特に好適に使用できる。
【0098】
前記高分子電解質型燃料電池は、定置用電源の他、搭載スペースが限定される自動車などの移動体用電源などとして有用である。なかでも、比較的長時間の運転停止後に高い出力電圧が要求されることによるカーボン担体の腐食、および、運転時に高い出力電圧が取り出されることにより高分子電解質の劣化が生じやすい自動車などの移動体用電源として用いられるのが特に好ましい。
【0099】
前記燃料電池の構成としては、特に限定されず、従来公知の技術を適宜利用すればよいが、一般的には電極(膜電極接合体)をセパレータで挟持した構造を有する。
【0100】
前記セパレータの材料としては、緻密カーボングラファイト、炭素板等の炭素材料や、ステンレス等の金属材料など、従来公知のものであれば制限なく用いることができる。セパレータは、空気および燃料ガスを分離する機能を有するものであり、それらの流路を確保するための流路溝が形成されてもよい。セパレータの厚さや大きさ、流路溝の形状などについては、特に限定されず、得られる燃料電池の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
【0101】
また、各触媒層に供給されるガスが外部にリークするのを防止するために、ガスケット層上の触媒層が形成されていない部位にさらにガスシール部が設けられてもよい。前記ガスシール部を構成する材料としては、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリイソブチレンゴム等のゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系の高分子材料、ポリオレフィンやポリエステル等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。また、ガスシール部の厚さとしては、50μm〜2mm、望ましくは100μm〜1mm程度とすればよい。
【0102】
さらに、燃料電池が所望する電圧等を得られるように、セパレータを介して電極(膜電極接合体)を複数積層して直列に繋いだスタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されることはない。また、当該実施例において、「%」は特記しない限り質量百分率を表わすものとする。
【0104】
(第1実施例)
(1)ガス拡散層の作製
撥水層として、熱伝導性の大きなグラファイト化カーボンおよびPTFE、ガス拡散基材として、カーボンペーパを用いた。
【0105】
カーボンペーパ(東レ株式会社製 カーボンペーパTGP−H−060、厚さ200μm)を50mm角に打ち抜いた基材を準備した。この基材を、PTFEの水性分散液(ダイキン工業社製 ポリフロンD−1E、PTFE60%含有)を純水で所定の濃度に調製した溶液中に1分浸漬させた後、オーブン内にて80℃、20分間乾燥させることにより、前記基材中にPTFEを分散させた。このとき、PTFE含有量は10%であった。これにより、撥水処理したガス拡散基材を得た。
【0106】
一方撥水層の作製方法は、以下に示す。
【0107】
グラファイト化ケッチェンブラックの粒子径(熱導電率1(W/m・K))を所望の径に粉砕し、疎水剤であるPTFEの分散液(ダイキン工業社製 ポリフロンD−1E、PTFE60%含有)を質量比60:40(グラファイト化ケッチェンブラック:PTFE分散液)出混合して撥水層インクを調製した。ここで、カーボンブラックの粉末を3μmの粒子径に粉砕した。そして、ホモジナイザーにて1時間混合分散し、撥水層インクをさらに調製した。このインクを、先に作製した撥水処理基材の一方の面にスプレーコータにより均一に塗布し、オーブン内にて80℃、1時間乾燥させた後、さらにマッフル炉にて350℃、1時間熱処理を行った。なお、撥水層の空孔径は100nmに、厚さは50μmとした。
【0108】
電極触媒層(2)
白金担持カーボン(田中貴金属工業株式会社製 TEC10E50E、白金含量50wt%)と、ナフィオン(登録商標)(デュポン社製、ナフィオン5wt%含有)のn−プロピルアルコール溶液と、純水と、イソプロピルアルコールと、を質量比で1:1:5:5として、25℃で保持するよう設定したウォーターバス中のガラス容器にてホモジナイザーを用いて1時間混合分散することで、触媒スラリーを調製した。次に、前記触媒層インクを、テフロンシート上にスクリーンプリンターを用いて塗布し、大気中、25℃で6時間乾燥させることにより、テフロンシート上に触媒層(面積1cmあたりの白金質量0.4mg)を作製した。
【0109】
膜電極接合体(3)
上記(2)で作製した触媒層2枚を、固体高分子電解質膜(ナフィオン211(登録商標))の両側に配置した後、ホットプレス法により130℃、2MPaで10分間ホットプレスした後にテフロンシートを剥がして接合体とした。上記(1)に作製したガス拡散層2枚を用いてカーボン粒子層を内側にして前記接合体を挟持することにより膜電極接合体を作製した。これをカーボンセパレータ、集電板で挟み、評価用セルとした。
【0110】
(第2実施例)
撥水層の作製方法を以下に述べる。
【0111】
ガス拡散層の作製
ケッチェンブラックの粒子径を所望の径に粉砕し、疎水剤であるPTFE(ダイキン工業社製 ポリフロンD−1E、PTFE60wt%含有)の分散液を質量比60:40で混合して撥水層インク(1)を調製した。
【0112】
さらに、グラファイト化ケッチェンブラック(熱伝導率1W/m・K)を所望の粒子径に粉砕し、親水剤SiOの分散液を質量比60:40(グラファイト化ケッチェンブラック:SiOの分散液)で混合してインク(2)を調製した。インク1とインク2をインク(1):インク(2)=70:30の体積比で混合した。両方のカーボンブラックの粒子径は第1実施例と同様であり、ガス拡散基材は第1実施例と同様にカーボンペーパを用いた。
【0113】
以上のようにして作製した撥水層のインク(1)および(2)のガス拡散基材への塗布方法、その他の条件も第1実施例と同様に行い膜電極接合体、評価セルを作製した。なお、空孔径も厚さも第1実施例と同様である。
【0114】
(第3実施例)
撥水層の作製方法を以下に述べる。
【0115】
ガス拡散層の作製
ガス拡散層において、それぞれの層のインクの作製方法は第2実施例と同様であり、ガス拡散基材は第1実施例と同様にカーボンペーパを用いた。まず、通常のカーボンブラック(ケッチェンブラック 熱伝導率0.1W/m・K)を用いた疎水性のインク(3)をガス拡散基材(東レ株式会社製 カーボンペーパTGP−H−060、厚さ200μm)に塗布し、その後、熱伝導性の大きなカーボンブラック(グラファイト化ケッチェンブラック(熱伝導率1W/m・K))を用いた親水性のインク(4)をその上部から塗布した。
【0116】
ガス拡散基材への塗布方法も、第1実施例と同様に行い、膜電極接合体、評価セルを作製した。なお、空孔径は第1実施例と同様であり、親水性の層の厚さは10μm、疎水性の層の厚さは40μmとした。
【0117】
(第4実施例)
ガス拡散層において、それぞれの層のインクの作製方法は第2実施例と同様であり、ガス拡散基材は第1実施例と同様にカーボンペーパを用いた。ガス拡散基材をマスキングし、通常のカーボンブラック(ケッチェンブラック 熱伝導率0.1W/m・K)を用いた疎水性のインク(5)をガス拡散基材(実際用いたものを記載してください)に塗布し、その後、マスキングを疎水性の部位に変更して熱伝導性の大きなカーボンブラック((グラファイト化ケッチェンブラック(熱伝導率1W/m・K)を用いた親水性のインク(6)を塗布した。
【0118】
ガス拡散基材への塗布方法も、第1実施例と同様に行い、膜電極接合体、評価セルを作製した。なお、空孔径も厚さも第1実施例と同様で、親水性の層および疎水性の層のセパレータ流路方向の長さの比は1:4とした。
【0119】
(比較例)
カーボンブラック(熱伝導率0.1W/m・K)に、ケッチェンブラックを用いた以外は、第1実施例と同様にガス拡散層作製し、膜電極接合体、評価セルも同様に作製した。
【0120】
(セル評価)
セルの端子を負荷装置に取り付け、所定の電流負荷に対する電圧を計測した。なお、ガスの加湿方法はバブリング方式とした。
【0121】
第1実施例から第4実施例および比較例で作製したセルの発電評価結果を図.7に示す。なお、電解質膜および触媒層は同一のものを使用した。
【0122】
評価条件は、アノード/カソード=水素/空気、S.R.=1.5/2.5、セル温度70℃で、R.H.=100%/100%である。
【0123】
図7より、高加湿条件においては、熱伝導率の小さなカーボンブラックを用いて撥水層を作製した比較例は、高電流密度で電圧が低下した。これは、撥水層中で温度低下が生じ、水蒸気が凝縮し、フラッディング現象が起こりやすくなったためである。これに対し、熱伝導率の大きなカーボンブラックを用いて撥水層を作製した第1実施例は、高電流密度での電圧の低下が少ない。これは、撥水層中での温度低下が小さく、水蒸気が凝縮しにくく、フラッディング現象を抑制しているからである。一方、撥水層に親水処理を施し、かつ、その部位の熱伝導率を大きくした第2実施例は、フラッディング現象が生じにくく、第一実施例と同様に電圧は高い。これは、生成水を触媒層から親水の部位へ誘導し、かつ、温度低下が小さく、高温であるため、水が蒸発しやすく、効率的にフラッディング現象を抑制しているためである。
【0124】
また、第3、第4実施例は液水の溜まる部位に積極的に熱伝導性を高めたカーボンを使用した撥水層であり、第1、第2実施例に対して、さらに効率的にフラッディングによる電圧低下が抑制されている。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】熱伝導率の違いによる酸化剤極の温度分布を示す概念図である。
【図2】第1実施例の構成図である。
【図3】第2実施例の平面図である。
【図4】第2実施例の断面図である。
【図5】第3実施例の構成図である。
【図6】第4実施例の構成図である。
【図7】発電評価結果を示す図である。
【符号の説明】
【0126】
1…電解質膜
2…カソード触媒層
3…撥水層
4…ガス拡散基材
5…ガス拡散層
6…撥水層中の疎水性の部位
7…撥水層中の親水性かつ高熱伝導性の部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と、前記電解質膜を挟持する1対の電極触媒層と、前記1対の電極触媒層を挟持する1対のガス拡散層と、を有する膜電極接合体において
前記ガス拡散層は、撥水性を有する材料と熱伝導性を有する材料とを含む撥水層と、ガス拡散基材からなり、かつ前記撥水層は前記電極触媒層と前記ガス拡散基材との間に配置されることを特徴とする膜電極接合体。
【請求項2】
前記撥水層は、さらに親水性を有する材料を含み、かつ前記親水性を有する材料の層に熱伝導性を有する材料を含む、請求項1に記載の膜電極接合体。
【請求項3】
前記熱伝導性を有する材料は、グラファイト化カーボンである、請求項1または2に記載の膜電極接合体。
【請求項4】
前記グラファイト化カーボンは、撥水層全体の体積に対して、10〜50vol%の割合で撥水層中に含まれる、請求項3に記載の膜電極接合体。
【請求項5】
前記撥水層において、ガス流路の入り口側に含まれる熱伝導性を有する材料の量が、ガス流路の出口側に含まれる熱伝導性を有する材料の量より少ない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
【請求項6】
前記撥水層において、ガス拡散基材側に含まれる熱伝導性を有する材料の量が、電極触媒層側に含まれる熱伝導性を有する材料の量より少ない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
【請求項7】
ガス拡散基材の少なくとも片面に、撥水性を有する材料と熱伝導性を有する材料とを含む撥水層を設けてなるガス拡散層。
【請求項8】
請求項1〜6に記載の膜電極接合体および/または請求項7に記載のガス拡散層を含む燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−165025(P2007−165025A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356983(P2005−356983)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】