説明

膜電極構造体及びこれを用いたエネルギーデバイス

【課題】接触抵抗の増加による出力損失やガスリークの発生を防止するためにセルの積層荷重を増加したとしても、ゲル状電解質がゾル状態に相転移したとしても、変形したり、系外に流出したりするようなことなく、電解質膜としての形状、構造を維持することができる膜電極構造体と、このような膜電極構造体を用いた燃料電池などのエネルギーデバイスを提供する。
【解決手段】ゾル−ゲル相転移温度を有するゲル状イオン伝導体から成る電解質膜2の両面に電極3を配置すると共に、この電解質膜2の周囲に、上記両電極3,3間の距離を一定に保持するスペーサ4を電解質の周辺部において上記両電極3,3が投影面でこのスペーサ4と重なり合うように配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、燃料電池やリチウムイオン電池、色素増感太陽電池などのエネルギーデバイスに用いられる膜電極構造体に係わり、さらに詳しくは、可逆的のゾル−ゲル相転位温度を有するゲル状イオン伝導体から成る電解質膜を備えた膜電極構造体と、このような膜電極構造体を用いたエネルギーデバイス、例えば燃料電池やこれを積層した燃料電池スタックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
多数の燃料電池単セルを積層した燃料電池スタックにおいては、接触抵抗の増加による出力損失やガスリークの発生を防止するために、膜電極構造体とセパレータとを密着させるべく、各セル同士を積層方向に締め付ける必要があるが、この締め付け力が過大のものとなると、電解質膜やガス拡散層を損傷することがあるため、電解質膜やガス拡散層が受ける面圧をさほど増大させることなく、密着性を向上するための締め付け方法や、電極構造などが種々提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2004−079246号公報
【特許文献2】特開2004−241198号公報
【特許文献3】特開2005−079059号公報
【0003】
一方、近年、電気化学デバイスへのイオン液体の適用が種々提案されており、特にイオン液体をゲル化することによって、ハンドリングをより容易なものとし、二次電池やキャパシタ、エレクトロニクス素子用の固体電解質として適用する試みがなされている(例えば、特許文献4〜6参照)。
【0004】
なお、上記のイオン液体とは、イオン性液体、常温溶融塩とも呼称されるイオン伝導性を有する低融点の「塩」であって、その多くは、カチオンとしての有機オニウムイオン、アニオンとして有機、または無機アニオンを組み合わせることにより得られる比較的低融点の特性を示すものを指している。これらは、英語では“Ionoc Liquid”と表現され、最近、専門家の間で『イオン液体』との呼称に統一する動きができていていることから、本明細書では、イオン液体との呼称に統一する。
【特許文献4】特開2003−257240号公報
【特許文献5】特開2003−261586号公報
【特許文献6】特開2002−265428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、イオン液体から成るゲル状態の電解質は、応力を受けると容易に変形することから、上記のように、接触抵抗を低減するために、電解質に対して両側に配置される電極に荷重をかけ、電極と電解質との密着性を増した場合には、ゲル状電解質の形状を保持することが困難となる。
さらに、一定の応力を超え、ゲル電解質を潰しきってしまうと電気的な短絡が発生して、電気化学デバイスとしての機能を損なう恐れもある。
【0006】
また、上記のようなゲル状電解質における可逆的ゾル−ゲル相変化の特質を利用して、ピンホールによるクロスリークが発生した場合、あるいはピンホールや亀裂の発生による電解質膜の劣化が懸念される状況となった場合に対応することも考えられる。つまり、電解質膜を加熱して、電解質を一旦ゾル状態とすることによって電解質膜中のピンホールや亀裂を消滅させ、もって電解質膜を再生することが考えられるが、この場合には、ゾル化によって電解質が液状になるため、電解質が散逸して膜電極構造体の構成を維持することができなくなる怖れがある。
【0007】
本発明は、上記のような燃料電池を始めとする各種のエネルギーデバイスにおける電解質膜として、上記ゲル化イオン液体のように、可逆的にゾル−ゲル相転移するゲル状イオン伝導体を適用した場合における上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、接触抵抗低減やガスシール性改善のためにセルの積層荷重を増したとしても、デバイスの温度が作動条件や環境条件によって上昇したり、電解質膜の修復を目的に加熱したりすることによって、ゲル状電解質がゾル状態に相転移したとしても、変形したり、系外に流出したりするようなことなく、膜電極構造体としての形状、構造を維持することができる膜電極構造体と、このような膜電極構造体を用いた燃料電池などのエネルギーデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を繰り返した結果、電解質の周囲をスペーサで取り囲み、電解質の周辺部において上記両電極が投影面でスペーサと重なり合うようにスペーサを配設し、上記両電極とスペーサによって囲まれた電解質が配置される空間を確保することによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
本発明は上記知見に基づくものであって、本発明の膜電極構造体は、ゾル−ゲル相転移温度を有するゲル状イオン伝導体から成る電解質膜の両面に電極を配置すると共に、この電解質膜の周囲に、上記両電極間の距離を一定に保持するスペーサを電解質の周辺部において上記両電極が投影面でスペーサと重なり合うように配設したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のエネルギーデバイスは、本発明の上記膜電極構造体を使用したことを特徴とするものであり、本発明の燃料電池は、本発明の上記エネルギーデバイスを単セルとして備えたものであり、また、本発明の燃料電池スタックは、本発明の上記燃料電池を積層して成り、さらに本発明の燃料電池システムは、本発明の上記燃料電池又は燃料電池スタックを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ゾル−ゲル相転移温度を有するゲル状イオン伝導体から成る電解質膜の周囲にスペーサを配設し、このスペーサによって両電極間の距離を一定に保持するようにし、さらに電解質の周辺部において上記両電極が投影面でスペーサと重なり合うようにスペーサを配設したことから、スペーサと電極とで両面から電解質層を閉じ込めることになり、電解質が配置される空間を常に一定に保つことができる。
したがって、ゲル状態においては言うまでもなく、エネルギーデバイスの運転条件や使用環境条件によって、あるいは電解質膜の修復を目的とする積極的な加熱によって、電解質膜がゾル状態に相転移したとしても、ゾル状態の電解質膜にセル積層の荷重が直接伝わることを防ぐことができ、電解質の変形、散逸、染み出しを防止することができる。
【0012】
また、本発明のエネルギーデバイス、とりわけ燃料電池、燃料電池スタック及び燃料電池システムは、いずれも本発明の上記膜電極構造体を備えたものであるから、ガスシール性の向上や接触抵抗の低減を目的に、積層荷重を高めたとしても、何らかの理由で電解質がゾル化したとしても、電解質膜の変形や損傷、散逸を防止することができ、これらデバイスの長寿命化を図ることができるという優れた効果がもたらされる。
【0013】
さらに、ゾル化したとしても電解質を配置した空間からの流出や染み出しの惧れがないことから、例えば加熱手段をシステムに組み込むことによって、定期的に、あるいはピンホール検出手段によってピンホール発生を検出した時に、加温冷却のサイクルを行ない、電解質膜を一旦ゾル化することによって、発生したピンホールや亀裂の修復を行うことができ、さらなる長寿命化を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の膜電極構造体について、さらに詳細かつ具体的に説明する。
【0015】
本発明の膜電極構造体は、上記したように、ゾル−ゲル相転移温度を有するゲル状イオン伝導体から成る電解質膜を電極とスペーサとで挟持した構造をなすものであるが、ここで、まず本発明の膜電極構造体において、解質膜を構成するゲル状イオン伝導体について説明する。
【0016】
ゲル状イオン伝導体は、上記のようにゾル−ゲル転移温度を有しており、これにより構造体の形成が容易となる。すなわち、加熱溶解することにより液化でき、塗布あるいは型に流し込み、冷却することにより固定化することができる。
したがって、スクリーン印刷、ドクターブレード、デカール法などといった種々のプロセスに対して、ゾル状態でハンドリングを行うことができ、容易な操作(冷却)で電解質膜としての所望形状に形成することが可能となる。
【0017】
そして、所定の温度を境にゾル−ゲル相変化を生じるため、通常使用しているゲル状態の電解質膜にピンホールが発生したとしても、一旦ゾル状態を生じさせてピンホールを自己修復させ、その後、ゲル化することにより、電解質膜として継続使用することが可能となる。
【0018】
また、ゲル状イオン伝導体は、ナノサイズの繊維状会合体で形成される3次元網目構造体と、このような構造体で包接されたカチオン成分とアニオン成分から成る電解質により形成され、上記3次元網目構造体がゾル−ゲル相転移温度を有していることが望ましい。
このように、3次元架橋体で電解質を抱接することで、その特性を損なうことなく電解質を固体化(ゲル化)することができ、さらに、カチオン成分とアニオン成分で構成される電解質を用いることによって、電解質自身のイオン伝導メカニズムを利用することができる。
【0019】
ここで、上記3次元網目構造体は、単位構成物が会合して、ナノサイズ(1〜30nm程度)の繊維状会合体を形成していることが好ましい。
例えば、多糖類に代表されるカラギーナンでは、図1及び2に示すように、単位構成物が二重らせんを生成してから会合体となるもの(c)や、単位構成物が一重らせんを生成してから会合体となるもの(f)が挙げられる。
【0020】
さらに、廃てんぷら油の固化剤として実用化されている1,2−ヒドロキシステアリン酸、trans−1,2−ジアミノシクロヘキサンのジアミド誘導体、L−イソロイシン誘導体やL−バリン誘導体といった分子化合物は広範囲の溶剤、油をゲル化することが知られており、そのゲル化は分子間に働く水素結合、長鎖アルキル基のファンデルワールス力のような非共有結合を通じて分子が自己会合し繊維状の会合体を形成する。
これら例示した会合体は、最終的に3次元網目構造体を形成することで、その網目構造体の間に溶媒分子を取り込むことでゲルを形作ることができる。
【0021】
このように、上記単位構成物はゲル化材として作用するため、配合具合を調整すれば、電解質の粘度に関係なく、所望の粘度(硬さ)のイオン伝導ゲルを作製することができ、液状の電解質であっても、上記単位構成物を溶解、混合するだけの簡易な操作でゲル化することができる。
なお、上記単位構成物は、ゲル状イオン伝導体1Lあたり1〜400g程度の割合で使用することができる。
【0022】
また、上記3次元網目構造体を構成する単位構成物は、分子量1000以下の低分子ゲル化材であることが好ましく、これによって、取り扱いがより容易なものとなる。
また、ポリマーなどと比べて、均質で、高純度な材料を入手できる。さらに、低分子化合物の会合状態である3次元網目架橋構造で、電解質が包接されるため、電解質保持に伴うイオン伝導度の低下を抑制することができる。なお、ポリマーや化学反応を伴う架橋体で形成されたゲル状イオン伝導体では、イオン伝導度の低下が大きくなることがある。
【0023】
さらに、上記単位構成物としては、3次元網目構造を形成するものであれば特に限定されないが、例えば、以下の化学式1〜3に示すような、κ−カラギーナン、アガロースなどの多糖類型や、環状ジペプチド誘導体型(cyclo(L−Asp(OR)−L−Phe))などが挙げられ、汎用的材料であって入手が容易であると共に、ゲル化及びハンドリングが容易であることから、特に環状ジペプチド誘導体を用いることが望ましい
【0024】
【化1】

【0025】
【化2】

【0026】
【化3】

【0027】
なお、化学式3に示した単位構成物は、次の化学式4に示すように、L−フェニレンアラニン化合物(L−aspartyl−L−phenylalanine methyl ester)から合成することができる。
【0028】
【化4】

【0029】
上記のような単位構成物は、材料が汎用的であって入手が容易であると共に、ゲル化が比較的容易である。さらにハンドリングが容易である。
また、後述するような常温溶融塩(イオン液体)でも容易にゲル化することができる。
なお、上述の特性を有する材料であれば、単位構成物は特に限定されず、ポリマーでも利用できる。
【0030】
一方、繊維状会合体から成る3次元網目構造体に包接される電解質は、カチオン成分とアニオン成分から成るものであるが、これらは分子性カチオン、分子性アニオンのいずれか一方又は双方を含むことが好ましい。これら分子性カチオンや分子性アニオンは、より多様性があり、目的に応じて、より好適な電解質を選択することができるようになる。
なお、電解質としては、原子性のもの(代表的にNaClなど)も挙げられるが、そのままでは液状の電解質となる組み合わせが乏しく、そのため電解質膜の構成が制限されることがある。さらに、原子性のものは水溶液にすることにより電解質溶液とすることができるが、水溶液から成る電解液は溶媒である水が乾燥するなどといった状態変化を受けるため、電解質の性状を一定に保持することが困難である。
【0031】
また、上記電解質は、分子性カチオンと分子性アニオンで構成される常温溶融塩、いわゆるイオン液体であることがより好ましい。
これによって、電解質を溶解する手順を省略でき、ハンドリング、構造体形成プロセスが簡略化できる。また、常温溶融塩の特性、具体的には、蒸気圧が非常に低く、蒸発し難いこと、難燃性であること、高い熱分解温度(>250〜300℃)を有すること、低い凝固点(<−20℃)を有することなどの特性が燃料電池用の電解質として好都合なものとなる。
【0032】
ここで、上記電解質を構成するカチオン成分とアニオン成分の具体例について説明すると、先ず、カチオン成分としては、例えば、以下の化学式5〜7に示すイミダゾリウム誘導体(Imidazolium Derivatives、1〜3置換体)、化学式8に示すピリジニウム誘導体(Pyridinium Derivatives)、化学式9に示すピロリジニウム誘導体(Pyrrolidinium Derivatives)、化学式10に示すアンモニウム誘導体(Ammonium Derivatives)、化学式11に示すホスフォニウム誘導体(Phosphonium Derivatives)、化学式12に示すグアニジニウム誘導体(Guanidinium Derivatives)、化学式13に示すイソウロニウム誘導体(Isouronium Derivatives)、化学式14に示すチオウレア誘導体(Thiourea Derivatives)、などが挙げられる。
【0033】
【化5】

【0034】
上記式中のRは、炭素数が1〜18の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アルコキシアルキル基又は複素環式基を示す。
これらのうち、特に、Rがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基であるものを好適に使用することができる。
【0035】
【化6】

【0036】
上記式中のR、Rは、少なくとも1つ以上のRについて炭素数が1〜18の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アルコキシアルキル基又は複素環式基を示す。
これらのうち、特に、Rが水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ノニル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、ベンジル基であるものを好適に使用することができる。
【0037】
【化7】

【0038】
上記式中のR、R、Rは、水素、炭素数が1〜18の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アルコキシアルキル基又は複素環式基を示す。
これらのうち、特に、R、Rがメチル基、Rが水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はヘキシル基であるものを好適に使用することができる。
【0039】
なお、上記の化学式5〜化学式7に記載されるイミダゾリウム環では、4位、5位のいずれか一方、あるいは両方にアルキル基を導入することも可能である。この場合も炭素数が1〜18の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アルコキシアルキル基又は複素環式基の中から適宜適用することができる。
【0040】
【化8】

【0041】
上記式中のRは、炭素数1〜18の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アルコキシアルキル基又は複素環式基を示す。また、式中のR、R、Rは、少なくとも1つのRが水素(H)であり、残りのRが炭素数1〜18の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アルコキシアルキル基又は複素環式基を示す。
特に、Rがエチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基であり、R、R、Rのうち全てが水素であるもの、あるいは1つ又は2つがメチル基であるものを好適に使用できる。
【0042】
【化9】

【0043】
上記式中のR、Rは、少なくとも1つ以上のRについて炭素数が1〜18の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アルコキシアルキル基又は複素環式基を示す。
これらのうち、特に、R、Rがメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基又はオクチル基であるものを好適に使用することができる。さらには、Rのうち1つが水素であっても好適に使用できる。
【0044】
【化10】

【0045】
上記式中のR、R、R、Rは、炭素数1〜18の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アルコキシアルキル基又は複素環式基を示す。
これらのうち、特に、R、R、R、Rのすべてがメチル基又はブチル基であるものや、さらには少なくとも1つ、ないしは2つの官能基がエチル基、ブチル基、メトキシエチル基であるものを好適に使用できる。
【0046】
【化11】

【0047】
上記式中のR、R、R、Rは、炭素数1〜18の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アルコキシアルキル基又は複素環式基を示す。
これらのうち、特に、R、R、R、Rのすべてがブチル基であるものや、ヘキシル基と少なくとも1つ以上テトラデシル基を備えるものを好適に使用できる。
【0048】
【化12】

【0049】
上記式中のR、R、R、R、R、Rは、水素、炭素数1〜18の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アルコキシアルキル基又は複素環式基を示す。
これらのうち、特に、R、R、R、R、R、Rのすべてが水素であるもの、R、R、R、R、R、Rのうちのいずれか1つがメチル基、イソプロピル基、フェニル基であるものを好適に使用することができる。
【0050】
【化13】

【0051】
上記式中のR、R、R、R、Rは、水素、炭素数1〜18の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アルコキシアルキル基又は複素環式基を示す。
これらのうち、特に、R、R、R、R、Rのすべてがメチル基であるもの、R、R、R、Rがメチル基であり、R5がエチル基であるものを好適に使用することができる。
【0052】
【化14】

【0053】
上記式中のR、R、R、R、Rは、水素、炭素数1〜18の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基、アルコキシアルキル基又は複素環式基を示す。
これらのうち、特に、R、R、R、Rがメチル基であり、Rがエチル基であるものを好適に使用することができる。
【0054】
また、アニオン成分としては、例えば、以下の化学式15に示すハロゲン類(Halogenides)、化学式16及び17に示すスルフェート類およびスルホン酸類(Sulfates and sulfonates)、化学式18に示すアミド類及びイミド類(Amides and imides)、化学式19に示すメタン類(Methanes)、化学式20〜25に示すホウ酸塩類(Borates)、化学式26及び27に示すリン酸塩類及びアンチモン類(Phosphates and Antimonates)、化学式28に示すその他の塩類、などが挙げられる。
【0055】
【化15】

【0056】
【化16】

【0057】
【化17】

【0058】
【化18】

【0059】
【化19】

【0060】
【化20】

【0061】
【化21】

【0062】
【化22】

【0063】
【化23】

【0064】
【化24】

【0065】
【化25】

【0066】
【化26】

【0067】
【化27】

【0068】
【化28】

【0069】
また、多価アニオンは、例えば、以下の化学式29に示すものなどを好適に使用できる。
【0070】
【化29】

【0071】
なお、上述のカチオン成分やアニオン成分は、それぞれ単独で使用するばかりでなく、2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。
【0072】
さらに、上記ゲル状イオン伝導体においては、キャリアーイオンとしてプロトンが使用されることが好ましい。これによって、当該伝導体を燃料電池の電解質として好適に使用することができるようになる。
なお、プロトン以外のキャリアーイオンとしては、カチオン成分、その他の陽イオンを使用することができる。
【0073】
また、本発明における電解質膜として用いるゲル状イオン伝導体のゾル−ゲル相転移温度としては、80℃以上200℃以下であることが好ましい。
【0074】
すなわち、本発明の膜電極構造体を適用するエネルギーデバイスの中には、あまり温度を上げないで常用されるものがある。
このようなものを加温するためには、熱湯を使うことを考えると80℃以上でゾル化するものは利便性が高いが、80℃未満では、常用温度との閾値が狭くなるため、ゲル状体を保証することが困難になる。
【0075】
一方、ゲル化温度が200℃を超えると、当該ゲル状イオン伝導体に含まれている電解質自身あるいはゲル化材が劣化する可能性が高くなるため、200℃以下が好ましい。また、200℃以上に温度を上げるのは、エネルギー的な面から見てもロスが大きく好ましくない。
【0076】
また、従来の固体高分子形燃料電池(PEFC)においては、常用100℃以下での運転となるため、ゾル−ゲル相転移温度を100℃以上200℃以下とすることにより、このゾル−ゲル相転移を利用した電解質膜の修復ができるようになる。
さらには、120℃までの燃料電池運転を実現可能とするためには、ゾル転位温度の下限値を150℃のより高い温度とすることが好ましく、上限を180℃とすることにより、スタックを高温にする際に要するエネルギーを低減することができる。
【0077】
本発明の膜電極構造体においては、上記電解質膜とスペーサの界面形状を互いに入り組んだ凹凸形状とすることが望ましく、これによって電解質膜とスペーサとの密着性を向上させることができ、スペーサと電解質を一体化した中間製品の取り扱いを容易なものとし、スペーサからの電解質の脱落を防止して、ハンドリング性の向上を図ることができる。
【0078】
本発明の上記膜電極構造体は、各種のエネルギーデバイスに適用することによって、電解質膜の変形や損傷、電解質の散逸を防止することができ、これらデバイスの信頼性の向上、長寿命化によるコストダウンを図ることができる。
【0079】
例えば、燃料電池に適用して、当該膜電極構造体の両側にガス拡散層と共にセパレータを配設し、スペーサが両電極(電極触媒層)の間に介在して両電極の間隔を一定に保持すると同時に、スペーサのセパレータとの当接面に一体的に設けたガスケットによってスペーサのセパレータとの間をシールする構造とすることによって、セル間の積層荷重を高めたとしても、電解質膜の変形や損傷を防止することができ、ガスシール性に優れ、接触抵抗の小さい高性能な燃料電池を構成することができる。
【0080】
また、電解質膜をそのゾル−ゲル相転移温度以上に昇温させることによってゾル化することによって、流動化した電解質を外部に流出させることなく、膜に発生しているピンホールや亀裂を修復することができ、継続使用による長寿命化及びこれに基づくコスト低減、信頼性向上が可能になる。
【0081】
図3は、本発明の膜電極構造体を適用した固体高分子電解質形燃料電池スタックのセル構造の一実施形態を示す断面図であって、図に示す燃料電池スタック1は、ゾル−ゲル相転移温度を有する、上記したようなゲル状イオン伝導体から成る電解質膜2と、この電解質膜2を挟持するようにその両面に配設された2つの電極触媒層3(燃料極と酸化剤極:電極)と、凸字形断面を有する枠状をなし、上記電解質膜2及び2つの電極触媒層3の周囲に配置されたスペーサ4を備え、これら電解質膜2、電極触媒層3及びスペーサ4によって本発明の膜電極構造体が構成されている。
【0082】
この膜電極構造体の両面にガス拡散層(GDL)5をそれぞれ配設すると共に、そのさらに両側には、燃料ガス流路6a、酸化剤ガス流路6b、冷却水路6cを備え、セル間の隔壁を成すセパレータ6を配設することにより燃料電池(単セル)が構成され、これら単セルを積層することによって燃料電池スタック1が構成されている。
【0083】
上記スペーサ4は、この例では上記のように凸字形断面を有し、その凸状部分4aが両電極触媒層3の間に介在して、両電極間の距離を一定に保持して、電解質層2の占有空間を確保しており、当該凸状部分4aの両側が電極3との当接面4bとなっている。
そして、上記スペーサ4の本体部分4cは、両スペーサ4の間に介在してその間隔を維持するようになっており、当該スペーサ4のセパレータ6との当接面4dには、シリコーンゴムやフッ素系ゴムなどのような弾性材料から成るガスケット7が一体的に設けてあり、セパレータ6に形成されたシール溝6dに嵌合してパレータ外縁部に沿ったシーリング領域を形成し、水素を含有する燃料ガスや酸素を含有する酸化剤ガス、さらに各種冷却水をシールしている。ガスケット材を当該スペーサと一体化する方法としては、ガスケットの焼付け、モールディングによる一体化成型、接着などが適宜適用される。また、接着においては、スペーサとガスケットの密着性向上のため、接着面をサンドブラスターなどによる面粗度を荒くすることなども有効である。
【0084】
上記スペーサ4としては、耐熱性に優れ、高温でも変形しにくいものが望ましく、さらに加工性に優れ、入手が容易で、絶縁性を備えた樹脂が好ましく、例えば加重たわみ温度が120℃以上、より好ましくは160℃以上、さらには200℃以上のものを使用するのがよい。具体的には、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの樹脂を例示することができる。
【0085】
また、上記スペーサ4と電解質膜2とを一体化した構造を採用することも望ましく、図4は、このような場合における両者の接合面を拡大表示したものである。
最も基本的な接合面としては、図4(a)に示すように、これらの境界面がフラットな形状のものが提案できる。この場合、スペーサ4の加工が容易で量産性に優れている。ここへ、膜状態の電解質であれば、例えば接着剤などを用いて一体化を行うことも可能であるが、ゾル−ゲル相転移が可能な電解質であれば、電解質を保持する空間を確保した状態でそこへゾル状態の電解質を流しこみ、電解質を冷却固化することで電解質とスペーサを一体化した電解質膜を得ることができる。
【0086】
一方、セルには積層方向に荷重がかかるばかりでなく、電解質膜2とスペーサ4の一体化構造物の積層作業において、スペーサ4を持ち上げた際に、スペーサ4との接合面での結着力が弱いとスペーサから電解質膜2が重力によって抜け落ちる恐れがある。
したがって、接合面を図4(b)〜(g)に示すように、スペーサ4の形状を電解質膜2の側に突出した構造、あるいは窪ませる構造とすることが望ましく、これによってスペーサ4と電解質膜2の接合力を向上させることができ、このような問題を解決することができる。
【0087】
上記両電極触媒層3は、それぞれの集電体を介して図示しない外部回路に接続されている。
【0088】
上記ガス拡散層5は、白金又は白金とその他の金属からなる触媒を含有する多孔質材、例えばカーボンクロスやカーボンペーパーから成り、電極触媒と接する面(電極触媒層3)が電解質膜2と接触するように形成されている。
【0089】
セパレータ6は、ガス不透過である緻密性カーボン材から構成されており、片面または両面に燃料ガスや酸化性ガス、あるいは冷却媒体の流路を確保するため、多数の溝が形成されている。酸化剤極(空気極)となるセパレータ6には、燃料電池自体から発生する熱の排熱用冷却水路6cが設けられている。冷却水水路6cは必ずしも、それぞれのセル毎に設置されてなくてもよいが、出力が大きくなると、燃料電池から除熱する熱量が大きくなるため、できるだけ多く配置されていることが望ましい。
【0090】
また、冷却水が循環する部位においてもセル周辺部に冷却水の漏れ防止を目的とするシール部が形成されている。ここでは、カソード極側の裏面に冷却水チャネルが形成されている例を示したが、必ずしもカソード極の裏面に限定されるものではなく、アノード極の裏面に形成されていてもよいし、両極のセパレータに形成されていても構わない。
酸化剤ガス、燃料ガスはそれぞれのガス入口から燃料電池の各セルへ供給され、ガス出口から排出される。
【0091】
すなわち、上記構成の燃料電池あるいは燃料電池スタックにおいては、スペーサ4がカソード極、アノード極のセパレータ6と物理的に接触し、セルを挟持し、かつ接触面圧を保持するために両側からセパレータに与えている荷重を受け止める構造を有している。
このとき、ガス拡散層5は、還元性ガス及び酸化性ガスを電極触媒層3に供給し、しかも電気的な抵抗損失が増さないようにするために、ある程度の面圧を受けていることが望ましく、その状態を実現できるようにセパレータ間を制御しておくように配置される。そして、各部材を上記セル構造となるように配置することによって、ゲル状の電解質膜はもとより、ゾル状態となった電解質膜に対しても余分な面圧を付与することなく、電解質膜の膜厚保持と十分なセル性能の発現を両立することが可能となる。
【実施例】
【0092】
以下に、本発明を実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0093】
まず、電解質として、イオン液体(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート:EMImBF4)を用い、これにゲル化材として、化学式3に示した環状ジペプチド誘導体(cyclo(L−Asp(OR)−L−Phe))が質量換算で1%の割合で含まれるように調製し、加熱溶解してイオン液体電解質のゾル溶液を得た。
このゾル状態の電解質溶液を所定の型に流し込み、室温中での自然冷却によって、ゾル−ゲル相転移温度が120℃のゲル状イオン伝導体とし、これを電解質膜として下記の各実施例に使用した。
【0094】
(実施例1)
図5は、上記によって得られたゲル状イオン伝導体を電解質膜として備えた本発明の第1の実施例に係わる膜電極構造体を適用した燃料電池スタックのセル構造を示す断面図であって、この実施例のセル構造は、図3に示したものと基本的に同様の構造を有しており、図5の断面図は、図1の切断面に対して直角をなす切断面での断面を示すものであって、このようなセルを同様に複数個積層し、積層方向に加圧することによって燃料電池スタックが構成されている。
【0095】
図に示すように、セパレータ6の4隅には、酸化性ガス及び還元性ガスを供給するマニフォールド8が形成されており、セパレータ6の中央部に形成されたガス流路部へガスの導入、排出を行うようになっている。
【0096】
また、図5では省略しているが、カソード極側のセパレータ6については、ガス流路6a(あるいは6b)と反対の面に、発生した熱を除去する冷却水路6cが形成され(図3参照)、ガス流路の上下に形成されているマニフォールド8を通じて温度調整が行われている。
さらに、ガス流路6a(6b)を取り囲むようにシール溝6dが形成されており、このシール溝6dに合致するようにガスケット7がMEA、すなわち電解質膜2、電極触媒層3及びガス拡散層5から成る膜電極接合体の周囲を取り囲むスペーサ4に一体的に配置されている。
【0097】
スペーサ4は、凸字形断面を有する枠状のものであって、電解質膜2の厚み、両極の電極触媒層3の厚み、ガス拡散層5の厚みを考慮して、所定の荷重で面圧を付与した時に必要となる厚みに設計されており、セパレータ6と電解質膜2が接するスペーサ4の内側には、ガス拡散層5と電極触媒層3の総厚みに相当する肉厚分が削ってあり、ガス拡散層5と電極触媒層3が余分な面圧を受けることなく安定して保持される空間が確保されている。
【0098】
つまり、ガス拡散層5の側から見たとき、ガス拡散層5の周縁部より内側の位置においてスペーサ4と電解質膜2が接するように配置され、その界面における電解質膜2とスペーサ4の凸状部分4aの厚みがほぼ均しくなるように配置されており、このような配置を取ることによって、スペーサ4のガス流路面に突出している凸状部分4aを両極の電極触媒層3とガス拡散層5が挟み込む構造とすることができ、電解質膜2に余分な面圧がかかることを防止すると共に、電解質膜2がゾル状態になったとしても、スペーサ4と両電極触媒層3によって確保される空間以外のところへ電解質が散逸することを防ぐことができる。
【0099】
この実施例においては、電解質膜2が正方形となっているガス拡散層5と相似な形状で確保され、例示したサーペンタイン形流路以外の形状であっても適宜利用することが可能となり、電解質膜2の面積を広く取ることができ、高い電流密度を確保することが可能となる。
【0100】
(実施例2)
図6は、本発明の第2の実施例に係わる膜電極構造体を適用したセル構造を示すものであって、ここでは、電解質膜2の形状をセパレータ6に形成したガス流路6a、6bの形状に一致させたこと以外は、上記実施例1と変わるところはない。
言い換えると、セパレータ6のガス流路6a、6bに相当する部分をくり抜くことによって、スペーサ4にガス流路6a、6bに一致する形状の開口部を形成し、これに電解質を充填することによって電解質膜2としたものである。
【0101】
したがって、ガス流路に相当する部位にのみ電解質膜2を配置したことから、流路面中央部にかかる荷重をスペーサ4によって受けることができ、発電面中央部であっても均一な電解質膜の空間を保持することができる。したがって、電解質膜を保持する空間を安定して確保することができる。
なお、この場合には、アノードとカソードのガス流路6aと6bとが電解質膜2に対して鏡面対象の形状となるようにすることが望ましい。
【0102】
(実施例3)
図7は、本発明の第3の実施例を示す断面図であって、この例においては、ガス拡散層5の形状を積層方向から見た流路の形状に相当するようにしたことを除いて、上記実施例2と同様に構成されている。つまり、電極触媒層3及びガス拡散層5の形状をも流路形状に一致させ、電解質膜2の投影面形状と電極触媒層3及びガス拡散層5の投影面形状がほぼ等しくなっている。
【0103】
すなわち、ガス拡散層5は、電解質膜2より若干サイズが大きく、この電解質膜2からはみ出た部位でスペーサ4を挟み込むことにより、電解質膜2を保持することができる。
【0104】
(実施例4)
図8は、本発明の第4の実施例に係わる膜電極構造体を適用したセル構造を示すものであって、この例においては、スペーサ4を平板から成る枠状のものとする共に、セパレータ6のガス流路6a,6bに相当する部位を電解質膜2及びスペーサ4と接触する面に対してガス流路側に凹状となるように加工を施し、加えて電解質膜2とスペーサ4の厚みが等しくなるようにしたこと以外は、上記実施例1と同様に構成されている。
すなわち、上記セパレータ6に施された凹状加工については、そのセパレータ6の流路面と電解質膜2及びスペーサ4との接触面との段差がガス拡散層5と電極触媒層3に所定面圧を付与できるような厚みに相当するように設計されている。
【0105】
このような加工をセパレータ6に施すことにより、上記実施例と同様の効果が得られる。
なお、当該実施例に係わる燃料電池においては、カソード極とアノード極での流路形状について、特に限定はないが、カソード極とアノード極での流路形状を鏡面対象の形状とすることによって、電解質保持の機能がより効果的に発揮されることになる。
【0106】
(実施例5)
図9は、本発明の第5の実施例に係わる膜電極構造体を適用したセル構造を示すものであって、この例においては、電解質膜2の形状をセパレータ6に形成したガス流路6a、6bの形状に一致させたこと以外は、上記実施例4と同様の膜電極構造体としている。
すなわち、上記実施例2と同様に、スペーサ4にガス流路6a、6bに一致する形状の開口部を形成し、この中に電解質を充填して、電解質膜2としたものである。
【0107】
したがって、ガス流路に相当する部位に電解質膜2が配置されているため、流路面中央部にかかる荷重をスペーサ4によって受けることができ、発電面中央部であっても均一な電解質膜の空間を安定して保持することができる。したがって、電解質膜を保持する空間をより安定して確保することができる。
当該実施例においても、アノードとカソードのガス流路6aと6bは、電解質膜2に対して鏡面対象の形状とすることが望ましい。
【0108】
(実施例6)
図10は、本発明の第6の実施例に係わる膜電極構造体を適用したセル構造を示す断面図であって、この例においては、電解質膜2の形状と共に、電極触媒層3及びガス拡散層5の形状をも積層方向から見た流路に相当する形状にしたものであり、これ以外は、実施例5と同様の膜電極構造体としている。
【0109】
ここでは、ガス拡散層5及び電極触媒層3のサイズが電解質膜2より若干大きくしてあり、この電解質膜2からはみ出た部位でスペーサ4を挟み込むことにより、電解質膜2を保持している。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の膜電極構造体に電解質膜として用いるゲル状イオン伝導体を構成する3次元網目構造体の一例を示す概略図である。
【図2】上記3次元網目構造体の他の例を示す概略図である。
【図3】本発明の膜電極構造体を適用した燃料電池スタックにおけるセル構造の一実施形態を示す断面説明図である。
【図4】(a)〜(g)は図3に示した膜電極構造体におけるスペーサと電解質膜との接合界面の形状例を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施例に係わる膜電極構造体を適用したセル構造を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施例に係わる膜電極構造体を適用したセル構造を示す断面図である。
【図7】本発明の第3の実施例に係わる膜電極構造体を適用したセル構造を示す断面図である。
【図8】本発明の第4の実施例に係わる膜電極構造体を適用したセル構造を示す断面図である。
【図9】本発明の第5の実施例に係わる膜電極構造体を適用したセル構造を示す断面図である。
【図10】本発明の第6の実施例に係わる膜電極構造体を適用したセル構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0111】
1 燃料電池スタック
2 電解質膜(膜電極構造体)
3 電極触媒層(膜電極構造体)
4 スペーサ(膜電極構造体)
4b 電極との当接面
4d セパレータ6との当接面
5 ガス拡散層
6 セパレータ
7 ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゾル−ゲル相転移温度を有するゲル状イオン伝導体から成る電解質膜の両面に電極を配置すると共に、上記電解質膜の周囲に、上記両電極間を一定の距離に保持するスペーサを、電解質の周辺部において上記両電極が投影面でスペーサと重なり合うように配設したことを特徴とする膜電極構造体。
【請求項2】
上記電解質膜とスペーサの界面が互いに入り組んだ凹凸形状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の膜電極構造体。
【請求項3】
上記ゲル状イオン伝導体がナノサイズの繊維状会合体で形成される3次元網目構造体と、該網目構造体で包接されたカチオン成分とアニオン成分から成る電解質により形成され、上記3次元網目構造体がゾル−ゲル相転移温度を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の膜電極構造体。
【請求項4】
上記3次元網目構造体を形成する繊維状会合体は、単位構造物が会合して成るものであることを特徴とする請求項3に記載の膜電極構造体。
【請求項5】
上記単位構造物が分子量1000以下の低分子ゲル化材であることを特徴とする請求項4に記載の膜電極構造体。
【請求項6】
上記単位構造物が環状ジペプチド誘導体であることを特徴とする請求項4又は5に記載の膜電極構造体。
【請求項7】
上記電解質を構成するカチオン成分及びアニオン成分がそれぞれ分子性カチオン及び分子性アニオンであることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1つの項に記載の膜電極構造体。
【請求項8】
上記電解質が常温溶融塩であることを特徴とする請求項7に記載の膜電極構造体。
【請求項9】
上記電解質のキャリアーイオンがプロトンであることを特徴とする請求項3〜8のいずれか1つの項に記載の膜電極構造体。
【請求項10】
上記ゲル状イオン伝導体のゾル−ゲル相転移温度が80℃以上200℃以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の膜電極構造体。
【請求項11】
上記ゲル状イオン伝導体のゾル−ゲル相転移温度が120℃以上200℃以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の膜電極構造体。
【請求項12】
上記ゲル状イオン伝導体のゾル−ゲル相転移温度が150℃以上180℃以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の膜電極構造体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1つの項に記載の膜電極構造体を用いたことを特徴とするエネルギーデバイス。
【請求項14】
請求項13に記載のエネルギーデバイスを単セルとして備えたことを特徴とする燃料電池。
【請求項15】
膜電極構造体の両側にガス拡散層及びセパレータがそれぞれ配設され、上記スペーサが電極との当接面と、セパレータとの当接面を有し、当該セパレータとの当接面に、該セパレータとの間をシールするガスケットを一体的に備えていることを特徴とする請求項14に記載の燃料電池。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の燃料電池を積層して成ることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項17】
請求項14若しくは15に記載の燃料電池、又は請求項16に記載の燃料電池スタックを備えたことを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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